平成12(行ツ)191 損害賠償等,恩給請求棄却処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年7月18日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所 平成10(行コ)22
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判決文本文3,320 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 1 上告代理人小山千蔭,同坂和優,同中島俊則,同永井弘二,同武田信裕,同池上哲朗,同金京冨の上告理由第一並びに第二及び第三のうち憲法14条違反をいう点について憲法14条1項は,法の下の平等を定めているが,この規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何らこの規定に違反するものでない。このことは,当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁等)。 ところで,我が国は,昭和27年4月28日に発効した日本国との平和条約(以下「平和条約」という。)により,朝鮮の独立を承認して,済州島,巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利,権原及び請求権を放棄し(2条(a)),これらの地域の施政を行っている当局及び住民の日本国における財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は,日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とするものとされた(4条(a)前段)。 そして,平和条約の発効により,それまで日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位を有していた者は,日本国籍を喪失したものと解される。その後,昭和28年8月1日施行の恩給法の一部を改正する法律(同年法律第155号)により,旧軍人等及びその遺族に対する恩給の支給が復活したが,その時点においてこれらの者は- 1 -日本の国 れる。その後,昭和28年8月1日施行の恩給法の一部を改正する法律(同年法律第155号)により,旧軍人等及びその遺族に対する恩給の支給が復活したが,その時点においてこれらの者は- 1 -日本の国籍を喪失していたから,恩給法9条1項3号により恩給の受給資格を有しないこととなったものである。 以上の経緯に照らせば,平和条約の発効まで日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位を有していた旧軍人等について恩給法9条1項3号の例外を設けず,これらの者が同法の適用から除外されたのは,それまで日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位を有していた人々の請求権の処理は平和条約により日本国政府と朝鮮の施政当局との特別取極の主題とされたことから,上記旧軍人等に対する補償問題もまた両政府間の外交交渉によって解決されることが予定されたことに基づくものと解されるのであり,そのことには十分な合理的根拠があるというべきである。したがって,恩給法9条1項3号に基づき,日本の国籍を有する旧軍人等と平和条約の発効により日本の国籍を喪失し大韓民国の国籍を取得することとなった旧軍人等との間に区別が生じたとしても,それは上記のような根拠に基づくものである以上,同号の規定が憲法14条に違反するものとはいえない。 また,その後,日本国と大韓民国との間において,平和条約に基づく特別取極に相当するものとして,昭和40年6月22日,財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号。 以下「日韓請求権協定」という。)が締結されたが,日本国政府は,同協定2条2項(a)に該当する在日韓国人である旧軍人等の補償請求については同協定により解決済みであるとの立場をとり,他方で,大韓民国政府は,同項(a)に該当する在日韓国人である旧軍人等については 同協定2条2項(a)に該当する在日韓国人である旧軍人等の補償請求については同協定により解決済みであるとの立場をとり,他方で,大韓民国政府は,同項(a)に該当する在日韓国人である旧軍人等については,大韓民国の国内法による補償の対象から除外した。このため,これらの在日韓国人である旧軍人等に対しては,日本国からも大韓民国からも何らの補償もされないまま推移することとなった。しかしながら,旧軍人等の普通恩給は,旧軍人等の生活を援助するとともにその戦争犠牲ないし戦争損害に対する補償という性質を有するものであるところ,社会保障上の施策において- 2 -在留外国人をどのように処遇するかについては,国は,特別の条約の存しない限り,当該外国人の属する国との外交関係,変動する国際情勢,国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら,その政治的判断によりこれを決定することができるものであるし,戦争犠牲ないし戦争損害に対する補償の要否及び在り方は,事柄の性質上,財政,経済,社会政策等の国政全般にわたった総合的政策判断を待って初めて決し得るものであって,これらについては,国家財政,社会経済,戦争によって国民が被った被害の内容,程度等に関する資料を基礎とする立法府の裁量的判断にゆだねられたものと解される。そして,日韓請求権協定の締結後の経過や国際情勢の推移等にかんがみると,恩給法9条1項3号の規定を削除することも含めていわゆる在日韓国人の旧軍人等に対して何らかの措置を講ずることとするか否かは,大韓民国やその他の国々との間の高度な政治,外交上の問題でもあるということができ,その決定に当たっては,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断が要求されるところといわなければならない。これらのことからすれば,【要旨】いわゆる在日韓国人の旧軍人等に対して何らかの措置を講ずることなく き,その決定に当たっては,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断が要求されるところといわなければならない。これらのことからすれば,【要旨】いわゆる在日韓国人の旧軍人等に対して何らかの措置を講ずることなく恩給法9条1項3号を存置したとしても,いまだ上記のような立法府の裁量の範囲を逸脱したものとまではいうことができず,本件処分当時においても,同号が憲法14条に違反するに至っていたものとすることはできない。 以上のことは,前記各大法廷判決の趣旨に徴して明らかというべきである。所論の点に関する原審の判断は,以上の趣旨をいうものとして是認することができる。 論旨は採用することができない。 2 同第五についてシベリア抑留者が長期間にわたる抑留と強制労働によって受けた損害は,第2次世界大戦及びその敗戦によって生じた戦争犠牲ないし戦争損害に属するものであって,これに対する補償は,憲法29条3項の予想しないところといわざるを得ない。 - 3 -したがって,上告人が憲法29条3項に基づきその補償を求めることはできないというほかない。このことは,最高裁昭和40年(オ)第417号同43年11月27日大法廷判決・民集22巻12号2808頁の趣旨に徴して明らかである(最高裁平成5年(オ)第1751号同9年3月13日第一小法廷判決・民集51巻3号1233頁参照)。上告人が被った犠牲ないし損害が深刻かつ甚大なものであったことを考慮しても,他の戦争損害と区別して,憲法29条3項に基づき,その補償を認めることはできないものといわざるを得ない。 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。 3 その余の上告理由について論旨は,違憲をいう点を含め,原判決の結論に影響のない説示部分を論難するか,又は原判 是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。 3 その余の上告理由について論旨は,違憲をいう点を含め,原判決の結論に影響のない説示部分を論難するか,又は原判決の単なる法令違反を主張するものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷(裁判長裁判官横尾和子裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄裁判官町田顯裁判官深澤武久)- 4 -

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