平成18(わ)213

裁判年月日・裁判所
平成20年12月8日 神戸地方裁判所
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判決文本文51,347 文字)

- 1 -平成18年(わ)第213号,第1415号殺人,殺人未遂,現住建造物等放火,火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反,建造物損壊(変更後の訴因銃砲刀剣類所持等取締法違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,建造物損壊,威力業務妨害,覚せい剤取締法違)反被告事件判決主文被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中900日をその刑に算入する。 本件公訴事実中,銃砲刀剣類所持等取締法違反,建造物損壊(変更後の訴因銃砲刀剣類所持等取締法違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(平成17年3月4日起訴分)の点については,)被告人は無罪。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1分離前の相被告人A1から,同人の商売敵である有限会社D1(代表取締役B1)が「E1」の名称で営む神戸市内のテレホンクラブ店舗の営業を妨害することを依頼されてこれを引き受け,A2及びA3に指示するなどして,上記A1ら3名及びA4と順次共謀の上,上記店舗に火炎びんを用いて放火することを企てるとともに,同店舗内にいる店員や客が死亡するに至るかもしれないことを認識しながら,あえて,上記A3,A4及びA2が, 平成12年3月2日午前5時5分ころ,神戸市区c番地d所在のテレホabンクラブ「E1F1店(管理者有限会社D1)付近に赴いた上,同店におい」て,上記A4が,清酒一升びんにガソリンを入れ,その口にタオル様の布を取り付けて点火装置を施した火炎びん1本に所携のライターで点火した上,これ- 2 -を営業中の同店内に放り投げて発火炎上させて火を放ち,同店の床面,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせよってB2が所有し同店店員B3当,,,(時37歳)及び同B4(当時21 2 -を営業中の同店内に放り投げて発火炎上させて火を放ち,同店の床面,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせよってB2が所有し同店店員B3当,,,(時37歳)及び同B4(当時21歳)ほか同店客7名が現にいる木・鉄骨造ガード下2階建建物1階部分(床面積152.95平方メートル)のうち約15平方メートルを焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせたが,上記B4に対し加療約9日間を要する顔面・右手Ⅱ度熱傷の傷害を負わせたにとどまり,同人らを殺害するには至らなかった 同日午前5時15分ころ,神戸市区丁目番号ビル2階及び3階aefghG1「」(),所在のテレホンクラブE1F2店管理者有限会社D1付近に赴いた上同店において,上記A3及びA4がそれぞれ清酒一升びんにガソリンを入れ,その口にタオル様の布を取り付けて点火装置を施した火炎びん各1本に所携のライターでそれぞれ点火した上,これを営業中の同店内及び同店入口付近に放り投げるなどして発火炎上させて火を放ち,同店の床面,階段,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせ,よって,有限会社D2(代表取締役B5)が所有し,同店店長B6(当時27歳,同店店員B7(当時31歳,同店客B))8(当時31歳,同B9(当時30歳,同B10(当時23歳,同B11)))(当時29歳)及び同B12(当時22歳)が現にいる鉄骨造陸屋根地下1階付3階建建物(延床面積182.2平方メートル)の2階及び3階部分(面積合計約102平方メートル)を焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせ,そのころ,上記B8,B9,B10及びB11を一酸化炭 面積合計約102平方メートル)を焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせ,そのころ,上記B8,B9,B10及びB11を一酸化炭素中毒により死亡させて殺害し,上記B12に対し加療約40日間を要する顔,両上肢等熱傷(Ⅱ度ないしⅢ度)の傷害を,上記B7に対し加療約7日間を要する右手掌熱傷(Ⅱ度)の傷害を,上記B6に対し加療約3日間を要する右示指挫創等の傷害をそれぞれ負わせたにとどまり,同人らを殺害するに至らなかった- 3 -第2A5,分離前の相被告人A6及び同A7と共謀の上,上記A6及びA7が,平成15年11月5日午前2時50分ころ,広島市区丁目番号G2ビijkflル1階所在のコンビニエンスストア「E2F3店」前路上において,営業中の同店西側出入口ドア及びショーウィンドウに向けて,石等数個を投げ付け,有限会社D3が所有し同店店長B13が管理する同店西側出入口ドアガラス2枚及びショーウィンドウガラス3枚(損害額合計59万1010円相当)を割るとともに,同店内にガラス片を散乱させて,約17時間にわたり,同店の飲料品小売等の業務を中断させ,もって他人の建造物を損壊するとともに,威力を用いて同店の業務を妨害し第3上記A5,A8及び上記A7と共謀の上,営利の目的で,みだりに,平成16年12月17日,広島市区町丁目番所在の駐車場に駐車中の普mngog通乗用自動車内において,フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶粉末約420.077グラム(平成17年領第1467号符号114,115,119,121,122,145,157,158,160ないし168,172ないし183,186,188,190ないし194,197,209,2 グラム(平成17年領第1467号符号114,115,119,121,122,145,157,158,160ないし168,172ないし183,186,188,190ないし194,197,209,211,307ないし311,313ないし317,319ないし323はその鑑定残量)を所持したものである。 (事実認定の補足説明)第1判示第1の事実(テレホンクラブに対する放火殺人等事件)について弁護人は,判示第1の事実について,被告人は,分離前の相被告人A1の代理人ということで,分離前の相被告人A9から,被害店舗に対する営業妨害の依頼を引き受け,実行犯らに指示したことはあるものの,本件火炎びんを用いた犯行については,A1と共謀したことも実行犯らに指示したこともないと共謀を争う旨主張し,かつ,少なくとも被告人には殺人の故意はない旨予備的に主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。そこで,当裁判所が,被告人とA1や実行犯らとの共謀を認定し,かつ,被告人に殺人の未必の故意はあると- 4 -認定した理由を補足して説明する。 前提となる事実関係証拠を総合すると,以下の事実が認められる。 (1)本件関係者等ア被告人は,貸金業,不動産仲介業の会社を経営するかたわら,税金逃れのアドバイスや許認可事業への関与,風俗店等に対する出資などの仕事も行っていた者である。 ,,イA1は昭和62年ころから神戸市内でテレホンクラブの経営を開始し平成7年ころからは「E3」という名称のテレホンクラブ(以下「E3」という)数店舗を経営していた。 。 ウA9は,昭和63年ころ,A10の紹介でA1と知り合い,A1から資金の提供を受けて日掛け金融を行ったり,競馬ののみ行為をするなどし,これらに関連してA1から多額の借金をしていたこともあり,A1に付き従い,その手足と ころ,A10の紹介でA1と知り合い,A1から資金の提供を受けて日掛け金融を行ったり,競馬ののみ行為をするなどし,これらに関連してA1から多額の借金をしていたこともあり,A1に付き従い,その手足として行動していた。なお,A9はE3の経営等には関与していなかった。 ,,,エA3及びA2は本件以前から被告人のところによく出入りしておりA3とA2も,互いに面識があった。A4は,平成10年ころ,A3と知り合い,同人の運転手として働いていた。なお,A3は,本件前に,数名の者と共謀して火炎びんを投げつける事件を起こしたことがあるが,この際は,A3が実際に火炎びんを作って投げたわけではなく,A3は火炎びんの作り方を知らなかった。 (2)犯行に至る経緯等(特に断らない限り,年号は平成12年とする)。 ア「E1」の進出等平成10年7月,テレホンクラブ業界の最大手であった有限会社D1が「E1」の名称で営むテレホンクラブ(以下「E1」という)が神戸市。 内に進出し,E1は,A1が経営していたE3F4店が立ち退いた後,同- 5 -じビルに「E1F2店(以下「F2店」という)を開業し,さらにE」。 3F5店があった店舗に「E1F6店(以下「F6店」という)を,」。 E3F7店があった店舗に「E1F1店(以下「F1店」という)を」。 開業した。平成11年末ころには,E1の売上げが伸びる一方,E3の売上げは落ちており,同年12月のE3の売上高は,E1の5分の1にまで(,,落ち込んでいる状況であったまた兵庫県青少年愛護条例の改正により平成13年末にはE3の営業を継続することができなくなることも決まっていた。 。)イ被告人がA1らと知り合った経緯等A1は,平成11年12月7日,大阪国税局から,所得税法違反事件に関連して自宅等の強制捜査 はE3の営業を継続することができなくなることも決まっていた。 。)イ被告人がA1らと知り合った経緯等A1は,平成11年12月7日,大阪国税局から,所得税法違反事件に関連して自宅等の強制捜査を受けたA1はこの査察対応策以下国。 ,(,「税対策」という)についてA10に相談したところ,A10から「国。 ,税に対して強い人」として,同月9日,A9も同席のもと,被告人を紹介された。被告人は,これまでに税金対策や許認可工作を共に手掛けてきたA11に連絡を取ると,A11から,預貯金が凍結されないように現金を引き出した方がいいとのアドバイスを受けたので,A1にこれを伝えたところ,A1は現金約3億8000万円を引き出し,A9が住んでいたマンション(G3)に隠匿した。被告人は,平成11年12月10日,A1,A9,A10及びA12と共に上京し,A11に国税対策を依頼した。報,。 ,酬については納税等を免れた金額の3割という約束であった被告人はA9を介してA1から,国税対策の費用として200万円を受け取った。 ウ営業妨害の依頼平成11年12月11日,東京から神戸へ帰る新幹線の車内において,被告人,A1,A9,A10が新幹線の座席を回して向かい合う形になって座っていた。その車内で,A1らは,国税の話や,テレクラで儲けた話などをしているうちに,A1が,E1に対する愚痴を言うようになり,そ- 6 -の話の流れで,A1又はA9から,E1の店舗に対し汚物をまくという話が出た。被告人らはこれに同調する態度を取っていた。 エE1に対する営業妨害行為(汚物撒き)その後,被告人は,A1又はA9から,報酬の支払を条件に前記汚物撒きに関する依頼を受け,A2にE1に対する営業妨害行為(汚物撒き)をさせることにし,平成11年12月20日ころ,A9 行為(汚物撒き)その後,被告人は,A1又はA9から,報酬の支払を条件に前記汚物撒きに関する依頼を受け,A2にE1に対する営業妨害行為(汚物撒き)をさせることにし,平成11年12月20日ころ,A9の案内で,A2の関係者にF1店とF6店を下見させた上,平成12年1月ころ,A1又はA9から,前記汚物撒きの報酬の前金を受け取った。また,その間,被告人は,A2から,E1の店舗の位置関係を示す地図を求められ,A9にその旨伝え,A9からその地図作成の依頼を聞いた(その趣旨が汚物撒きのためか被告人のテレホンクラブ経営のためかについたは争いがある)A1。 が,A13に依頼して,神戸からHにかけてのE1を含むテレホンクラブの位置が分かる地図を作成した上,被告人にファックス送信し,被告人がそれをA2に送った。そして,被告人は,E1に対する営業妨害として汚物をまくというA1又はA9からの依頼につき,A2に対し実行を依頼した(なお,A1又はA9のいずれが被告人に営業妨害を依頼したのかは争いがあるので,後述する。 。)2月10日未明,A2の関係者により,F1店及びF6店に対して,ペンキに汚物を混ぜたものが撒かれるなどされたが,両店とも,それによって営業を休むことはなかった。被告人は,A2から,実行した旨連絡を受けてA9に伝えて報酬残金の請求をしたが,A9は,営業妨害の効果が上がらなかったとしてその支払を拒否し,前金の返還の話まで出された上,再度営業妨害をするよう求められた。 オ被告人とA14のE1の下見状況このような状況の中,被告人は,2月25日,A9及びA14と共に,F1店とF2店の状況を確認しに行った。被告人は,A14に対し,営業- 7 -妨害の下見のために,F2店を見てくるよう指示したところ,A14は同店内に入り,店内の様子を探って電子手帳に 4と共に,F1店とF2店の状況を確認しに行った。被告人は,A14に対し,営業- 7 -妨害の下見のために,F2店を見てくるよう指示したところ,A14は同店内に入り,店内の様子を探って電子手帳に書き留めるなどし,その結果を被告人に報告した。 カE4F8店での会合2月26日午後1時ころ,A1,A9,A14及び被告人は,E4F8店に集まった。被告人は,国税対策についての打ち合わせを行うため,いったんA14を離席させ,A1及びA9の3人で話をしたが,その後A14を呼び戻し,前日の下見の状況をA1らに対し説明させ,営業妨害の方法についてA1に意見を求めた。 (その後,本件犯行に関する謀議が被告人とA1との間でなされたかについては争いがあるので,後に説示する)。 (3)本件犯行状況等被告人は,その後,A2に連絡を取り,再度E1の店舗に対する営業妨害を実行し,休店させるよう指示した。また,被告人の依頼によるものかどうかは争いがあるが,A3もその営業妨害を担当することになった。 ア本件犯行に至るまでの実行犯の状況2月29日,A3は,A4に対し「2,3日営業をできないようにし,たい店があるから「ガソリンを抜いて,火炎びんを作るんや」など。」,。 と言って,本件犯行への加担を依頼したところ,A4はこれを承諾した。 もっとも,A3及びA4は火炎びんを作ったことはなく,うまくできるかどうか試すために,3月1日午前零時ころ,京都市内の空き地で火炎びんの投てき実験を行った。実験の結果,A4が作った大きなびんの方が割れやすかったので,一升びんで火炎びんを作ることにした。 この実験の後,A3は,京都から神戸に向かう走行中の車内で何度も携帯電話で電話していたが,そのうちに,A4に対し「もう一人来る予定,やったけど来れへんようになった。今日できたらし 作ることにした。 この実験の後,A3は,京都から神戸に向かう走行中の車内で何度も携帯電話で電話していたが,そのうちに,A4に対し「もう一人来る予定,やったけど来れへんようになった。今日できたらしよか」と提案してき。 - 8 -たので,A4はこれを承諾した。A3及びA4は,3月1日午前1時30分から同日午前2時ころの間,神戸市p区内の駐車場でナンバープレート,,を盗んで付け替えた上同日午前3時から同日午前4時過ぎころまでの間F1店,F6店,F2店を車で何度も見て回って偵察し,また,A4がF2店に入って店内を見て,店内の様子をA3に報告した。その後,A3らは,火炎びんを作り,変装の準備をするなどして,F1店から順に火炎びんを投げ付けに行こうとしたが,同店周辺でバットを持って外に出て警戒していた同店従業員がいたことなどから実行に移すことができず,その日の実行を断念し,同日午前5時ころ,用意していた火炎びんを海中に投棄した。A4は,の駐車場でA3と別れる際,A3から明日もう1回行くI旨告げられた。 なお,A3は,被告人の使用する携帯電話()に対し,3月1日の午g(),()前1時59分通話時間59秒午前2時29分通話時間8分37秒及び午前5時17分(通話時間11分18秒)に架電している。 イ犯行状況等3月2日午前零時ころ,A3及びA4は,再度神戸に向かい,A2と合流した後,一升びんで火炎びんを6本作った上で,F1店,F6店,F2店の襲撃担当者や具体的な手順について話し合った。その結果,F1店の襲撃については,A4一人でF1店に火炎びんを投げることとなった。 ,,,(ア)F1店はJ線高架下2階建建物の1階部分にあり店舗出入口は店舗南西付近に1か所のみであり,これ以外に外部に通じる非常口はない。店内は,出入口 1店に火炎びんを投げることとなった。 ,,,(ア)F1店はJ線高架下2階建建物の1階部分にあり店舗出入口は店舗南西付近に1か所のみであり,これ以外に外部に通じる非常口はない。店内は,出入口付近にあるカウンターから見て「E字型」に幅63センチメートルないし幅83センチメートルの通路があり,合計25の客室があった。同店舗には2か所に2枚引きガラス窓が設置されていたが,いずれの窓にも店外に格子状のアルミ枠が縦に19本設けられていた。 - 9 -本件当時,店内には,入り口付近の受付カウンターに店員B3及び同B4が,客室内に客7名の合計9人がいた。同店を夜間簡易宿泊施設として利用する客もおり,当時仮眠中の客もいた。 A4は,一升びんでできた火炎びんを1本持ち出して火を付け,F1店の入口から入り,その火炎びんを放り込んだところ,カウンター付近で火炎びんが破裂,炎上し,店内には黒煙が充満した。カウンター内に,,いた店員B3及び同B4は一旦は火の中を走って店外へと脱出したがB3は,店内にいる客を救出するため再び店内へと入り,客らを誘導するなどして救出するとともに,バケツに洗面所で水を汲み撒くなどして消火活動を行ったことから,F1店では死者は出なかったものの,B4が脱出する際,加療約9日間を要する顔面・右手熱傷の傷害を負った。 続いて,A3ら3名は,F6店に向かったが,F6店の前に人が乗っている車が止まっていたため,襲撃を断念し,F2店に向かった。 (イ)F2店は,鉄骨造陸屋根地下1階付3階建建物の2階及び3階部分にあり,店舗出入口のある2階へは,ビル西側に設けられた階段(1段目から北向きに上がり,途中の6段目と7段目で右(東方)に90度曲がり,8段目から東向きに上がると最上段の15段目が2階店舗へ至るドア前のフロアになる)を上る必要が ,ビル西側に設けられた階段(1段目から北向きに上がり,途中の6段目と7段目で右(東方)に90度曲がり,8段目から東向きに上がると最上段の15段目が2階店舗へ至るドア前のフロアになる)を上る必要がある。階段の幅は80センチメ。 ートルであった。2階店内は,北端で幅95センチメートル,南端で幅53センチメートルの南北通路があり,合計9の客室があり,通路及び客室等の床面はPタイル張り,側面はクロス張りの構造であった。2階建物には窓の設備は全くなく,トイレ内にも窓はなく,出入口ドアが唯一の外部への出入口であった。2階から3階への階段は折り返し状になっており,5段目と6段目が折り返し部分の中間踊り場になる。階段の幅は80センチメートルであった。3階店内は,北側で幅58センチメートル,南側で幅54センチメートルの南北通路と幅56センチメート- 10 -ルの東西通路がT字型に交差しており,合計10の客室があった。3階店内には,シャワールームの西側面に窓が1つあった。なお,店内2階入り口付近に本来設置されていた消火器は,E1に対する汚物散布による襲撃事件の際に消火器が使われたことから,再度の襲撃に利用されることを恐れ北側の隅の方に移動されていた。 本件当時,店内には,2階の出入口受付カウンターに店長B6及び店員B7の2名が,3階客室にはB12,B10,B9,B11,B8の客5名がいた。F1店と同様,F2店を夜間簡易宿泊施設として利用する客もおり,当時仮眠中の客もいた。 F2店に向かう途中の車内で,A3は,A4に対し,自分も火炎びんの投てきを手伝うと述べ,F2店前に到着後,まずA4が,F2店の階段を駆け上がって店の入口まで行き,F1店と同様の方法で,火を付けた火炎びんを店内に投げ込んだが,火炎びんは割れず,店内に火の付いた火炎びんが転がった。こ ,F2店前に到着後,まずA4が,F2店の階段を駆け上がって店の入口まで行き,F1店と同様の方法で,火を付けた火炎びんを店内に投げ込んだが,火炎びんは割れず,店内に火の付いた火炎びんが転がった。これを見た店員B7がとっさに火炎びんを右手でつかんで,階段の踊り場まで行ったところ,階段の下の方でA3が用いたもう1本の火炎びんが爆発し,炎と黒煙が上がってきた。そこで,同店員は,このままでは自分が持っている火炎びんが炎上してしまうと思い,持っていた火炎びんを階下に向けて落としたところ,その火炎び,,。 ,んも破裂炎上し店内には黒煙が充満した店員B7及び店長B6は客を避難させるため3階へと向かったが,熱を帯びた煙の充満が早く,息をすることさえ困難な状況になったため,宿泊に利用していた客のB12の手を取るなどして誘導して共に,3階シャワー室にある唯一の窓から脱出したが,残された客4名は逃げ遅れ一酸化炭素中毒により死亡した。また,生還した3名も,それぞれ加療約3日ないし40日間を要する熱傷の傷害を負った。 ウ燃焼実験の結果- 11 -ガソリン1800ミリリットル入り一升びん1本に着火して,オイルパンの中央付近に寝かせ,ブロック片を落としたところ,一升びんが割れガソリンが飛散し,飛散したガソリンに口火が引火し瞬時に燃え上がり,着火後約6秒には約2.5メートルを越える炎が上がり,大量の黒煙を発生した。この後,徐々に炎高が低くなり,着火後約3分30秒には小さな炎が残るのみとなった。また,ガソリン245ミリリットル入り清涼飲料水用びん1本で同様の方法により実験したところ,びんが割れガソリンが飛散し,飛散したガソリンに口火が引火し瞬時に燃え上がり,着火後約9秒には約1.5メートルの炎が上がり,大量の黒煙を発生した。この後,徐々に炎高が低 の方法により実験したところ,びんが割れガソリンが飛散し,飛散したガソリンに口火が引火し瞬時に燃え上がり,着火後約9秒には約1.5メートルの炎が上がり,大量の黒煙を発生した。この後,徐々に炎高が低くなり,着火後約2分43秒には小さな炎が残るのみとなった。 ( )犯行後の状況 アA3の入院等A3は,F2店襲撃の際,足に大やけどを負ったため,その治療のために被告人に連絡を取り,病院の紹介を頼んだところ,被告人は,A3に対し,広島県のK駅まで来るように指示した。これを受けて,A3及びA4は神戸から広島に向かい,被告人らとK駅で合流した後,A3を医療法人L病院に案内し,A3は「A15」という偽名を使って同病院で治療を,受けた。 イ被告人らの金銭授受状況被告人は,3月2日の午後,M駅で,A9から営業妨害の報酬の残金として現金600万円を受け取った。 また,同月5日から6日にかけて,被告人は,A1及びA9を誘い,Nホテルで会った。その際,被告人は,A1に対し,A3の面倒をみる必要があり,税金も責任持ってやるという話をして,1億5000万円の支払を求めたところ,A1は当初は渋ったものの,同月6日,J駅付近で,A- 12 -9を介して7000万円を支払った(この金銭の授受の趣旨については争いがあるので,後述する。 。) 共謀の有無について( )まず,前提となる事実によれば,本件各犯行は,E1に対する営業妨害 の一環として,A3及びA4によりその各店舗に対して火炎びん投てき行為,,がなされたことが認められるところこの火炎びんを使用することに関してA1と被告人が通謀した上で,被告人からA3らに対するその旨の指示によって実行されたかが本件の争点となるものである。 その前提として,そもそもA1が被告人にE1の営業妨害行為を依頼し することに関してA1と被告人が通謀した上で,被告人からA3らに対するその旨の指示によって実行されたかが本件の争点となるものである。 その前提として,そもそもA1が被告人にE1の営業妨害行為を依頼していたかについて,被告人が争いA1がこれを否認しているので,先にこの点について判断する。前提となる事実によれば,E1との関係で利害関係を有,,し営業妨害を依頼する動機を有しているのはA9ではなくA1であること報酬の支払能力を有しているのはA9ではなくA1であること,被告人は,A1に対し,E4F8店において,A14にF2店の説明をさせ,自己も営業妨害の方法について相談するなど,A1が依頼者であることを前提とするような行動を取っており,他方,A1は,これら営業妨害の話が出たことについて,その場で何のことかとA9に問い質したりした形跡はなく,営業妨害の件について了承していたと思われることが認められるが,これらはA1が営業妨害の依頼主であることを推認させるものである。また,A1は,本件犯行から4日後の3月6日,被告人に対し,国税対策の前払いという名目で7000万円を支払っているところ,これまでも前払いを拒んでおり,被告人からの当該7000万円の支払要求についても当初は拒んでいたA1が,いまだ国税対策の結果が確定していない段階で,このような大金を急きょ支払うに至った理由としては,A1が営業妨害の依頼主であることについての口止めの意図があったと考えるのが自然である。以上によれば,被告人に対し営業妨害を依頼したのはA1であり,被告人も,依頼主がA1である- 13 -ことを認識していたことは明らかである。 ( )そこで,A1と被告人との間の火炎びんの使用についての通謀の有無及 び被告人からA3らへ指示があったかについて検討するに,これらを肯定す 13 -ことを認識していたことは明らかである。 ( )そこで,A1と被告人との間の火炎びんの使用についての通謀の有無及 び被告人からA3らへ指示があったかについて検討するに,これらを肯定するA9の証言等があるのに対し,被告人,A1及びA3がこれらを否認する供述をしているので,先にそれら各供述の要旨を掲げることにする。 アA9証言の要旨(ア)E4F8店での謀議について平成12年2月26日昼過ぎころ,A9,A1,A14及び被告人がE4F8店に集まった。A1がやってくると,A14は違う席に移り,被告人とA1,A9の3人だけで,5分くらい国税の話をしていた。その後,被告人が,昨日見てこさしたということでA14をテーブルに呼んで,A14に前日のF2店の下見の様子を説明させた。A14は,電子手帳を見せて,個室はこうなって区切られてとか,フロントはここにあってとか,階段の上側ぐらいに何か,電線の束みたいなものがある,機械はちょっと,よう見付けられんかったけど,それが機械の束ちゃうかななどというようなことを言っていた。機械という言葉を被告人が言ったのかA14が言ったのか覚えていない。A14は説明を終えるとすぐにどこかよそへ行った。被告人は,A14の配線の話については,まさか切られんやろうと言い,A1に対し「ええ方法ありますか?」と,聞くと,A1はA9に振ってきたので,A9は「機械(電話交換機),を壊すしかないんちゃうんですか」などと言った。これに対しては,。 被告人からもA1からも反応はなかった。最終的に,被告人が,手りゅう弾を使う方法,ダンプカーで突っ込む方法,ピストルで看板を撃つ方法,火炎びんを使うという4つの方法を提案した。A1は,手りゅう弾の方法は人が死んでしまうからと難色を示し,被告人は,ダンプカーの方法は,下手したら ダンプカーで突っ込む方法,ピストルで看板を撃つ方法,火炎びんを使うという4つの方法を提案した。A1は,手りゅう弾の方法は人が死んでしまうからと難色を示し,被告人は,ダンプカーの方法は,下手したら1軒だけで終わってしまうと説明したので立ち消え- 14 -になり,ピストルで撃つ方法は,ピストルで撃たれるぐらいの店だから客が来なくなるなどと説明したが,A1は,それくらいで客きいへんなるかな,流れ弾で人が死んでしまうのであかんと難色を示した。火炎びんの方法は,被告人から「もし機械があるんやったら,フロントあた,りにあるやろうから,フロントあたりに落としたらいいんちゃうか,」「火炎びんの専門家,プロがいる」という話が出た。被告人は,手り。 ゅう弾以外の各方法について,何度も説明し「看板撃つんやったら,,これが楽やから,さしてくれたら」などとA1の了承を求めたが,A。 1はなかなか答えなかった。被告人はA1に対し,各方法について何度も説明した上「これ以外に何かええ方法ありますか?」と聞くも,A,1は「ええ方法や言うても何もない」などと答えるので,被告人は,,。 「ほんならまあ,残ったこれで行きますよ」などと言うと,A1は,。 「あんたに任しとんやから,あんたが決めてくれたらええ」と答え,。 火炎びんの方法に決定した。 (イ)A1が被告人に対し電話交換機に関して話したことについてふん尿撒きがなされた2月10日から,2月26日にE4F8店での会合がなされる前日の2月25日までの間に,A9は,神戸に訪れた被告人をA1のいるG4に連れて行ったところ,そこで,A1は,そこにあったビデオデッキのような機械を積み重ねた電話交換機の設備を示しながら,これをつぶしたら,最低1か月はあかんようになると被告人に話した。 (ウ)犯行後の7000万円 ころ,そこで,A1は,そこにあったビデオデッキのような機械を積み重ねた電話交換機の設備を示しながら,これをつぶしたら,最低1か月はあかんようになると被告人に話した。 (ウ)犯行後の7000万円の授受について3月5日,被告人からの呼出しでNホテルで会った際,被告人は,A1及びA9に対し,A3の怪我の状況や入院費用等について話した。被告人は,A3のことについて,前に,どこかの社長の家に火炎びん投げ込んだことがあるので,今回もさしたなどと言っていた。また,被告人- 15 -は,A1に対し,A3の面倒を見ないといけないので,取りあえず3億くれないか,あとの税金のことは全部責任持ってするからなどと要求したが,A1はそんな金はないと難色を示した。翌日,A1は被告人に対し,お金がないから勘弁してくれと頭を下げたが,被告人は,それやったら半分だけでもくれへんかと要求したところ,A1は,急にはできないが,半分の7000万円くらいだったらできると回答したので,被告人も納得した。その後,神戸に戻ったA1とA9は,OのA9のマンションに行き,そこに隠していたA1の現金7000万を袋に詰め,A9が,J駅付近でこれを被告人に渡した。 イA3証言の要旨A2とは平成11年ころに輸入雑貨の仕事の関係で知り合った。E1の営業妨害の話は,A2から持ちかけられた。A3は当時指名手配されている身であったが,A2が切羽詰まっている状況にあり助けて欲しいというので,200万円の報酬で協力することを決めた。A2とA3の間で営業妨害の方法についてのやりとりがあり,どちらから出たかは覚えていないが,店を水浸しにしたり,電気の配線や電話線を切るという方法が挙がった。火炎びんの方法はA2から出たものであり,火炎びんを店に投げ込めば相手が驚いて店の営業を自粛するであろうというも は覚えていないが,店を水浸しにしたり,電気の配線や電話線を切るという方法が挙がった。火炎びんの方法はA2から出たものであり,火炎びんを店に投げ込めば相手が驚いて店の営業を自粛するであろうというものであった。A3自身,火炎びんの方法については疑問を持っていたが,そのことをA2には確認していない。火炎びんの作り方については,A2から教えてもらい,A2が火炎びんを作るためのびんや内容物を用意すること,実行犯はA2が用意すること,A3はA2をバックアップすること,実行は3月1日とすることが決まった。そのような具体的方法が決まった直後に,A3はA4に連絡した。火炎びんの実験をした後,京都から神戸に向かう途中,A2から急きょ行けなくなったとの連絡があり,できたら今日やって欲しいと要請されたので,A2抜きで実行することに決めた。 - 16 -ウ被告人供述の要旨,,,,(ア)被告人は2月26日E4F8店でA14の説明を止めさせてA1に対し,配線を切ったら店が閉まるかどうか聞いたが,A1はむっとして,うちにそんなん聞かれてもわからへんなどと答えて,帰ってしまった。A1が帰った後,被告人は,A9に対し,A1が怒っている理由を聞くと,A9は,被告人がぐずぐずしているから,ふん尿をまかないから怒っている旨答えた。A9は,被告人に対し「もう1回,なん,で行かんのや。あんなんやったらまいてもろうても意味ない。初めは,バキュームカーみたいなんを突っ込ますんかと思うとった「A16。」,さん,これ,行かなしょうがないで。このままやったら済めへんで。も。」。 ,う1週間でも閉めてくれたら金払うからなどと言ってきたこの日E4で,火炎びんの話や,ダンプカーを突っ込ませる話,けん銃を撃ち,。 ,込んだり手りゅう弾を投げるという話はな 。も。」。 ,う1週間でも閉めてくれたら金払うからなどと言ってきたこの日E4で,火炎びんの話や,ダンプカーを突っ込ませる話,けん銃を撃ち,。 ,込んだり手りゅう弾を投げるという話はなかったダンプカーの話は事件後に,被告人とA9との間の話として,大きな結果になってしまったことから,業務妨害の方法として人が怪我しないような方法を選べば良かったという文脈で出たことはある。 (イ)被告人は,E4での話し合いの後,A2に対し「配線を見つけた,んだけど,これを切ったらええんやないか,もう一遍ちょっと言うてみてくれんか,頼んでみてくれんか」などと頼んだところ,A2は,金。 も払ってないし,多分行かないとの返事であったが,被告人は,再度頼んでほしいと念を押した。また,A14とも,どうやって線切ったらいいかなという話はした。広島に戻って再度A2に連絡したが,やはり断られた。しかし,被告人はしつこく,二,三日でも閉めてくれたら金は払うなどと言って依頼した。後刻,A2から,A3に頼んだら引き受け。 。 てくれたとの連絡があった被告人からA3に直接頼んだわけではないその後A3から直接電話がかかってきて「なんで,そんな困っとるん,- 17 -やったら,わしに言わへんかったんや。要は,二,三日閉めたら,それでええんやろ」などと言って,電話を切った。被告人は,A3に頼ん。 だことはない。A2に頼んだことなのに,A2を飛び越えてA3に頼むのはルール違反だからである。2月29日の夜ころ,A2から,今日は行けなくなったとの連絡があった。A3からは,E1への業務妨害の進捗状況について連絡はなく,今E1の前にいるんだけど,人が多くていけないというような報告が入ったことはない。A2から,火炎びんを使うという話は一切聞いていない。 (ウ)A2には,A の業務妨害の進捗状況について連絡はなく,今E1の前にいるんだけど,人が多くていけないというような報告が入ったことはない。A2から,火炎びんを使うという話は一切聞いていない。 (ウ)A2には,A3を入院させた後に会った。その際,被告人は,A2との間で,どういう火炎びんを投げたのかとか,誰が用意したとか,何本投げたとか,そのような具体的な内容についての話は一切聞いておらず,どちらかがどちらかを責めるということもなかった。どうして火炎びんを使ったのかということは,電話か何かでA3に聞いたときに,驚かすつもりでやったが,結局,自分がやけどしたんだというようなことを聞いただけである。被告人は,A3に対し,そこまでのこと(火炎び)。 んを投げることを頼んでないだろうというようなことは言っていないA3の入院も全部済んで一段落して,夕方くらいになってから,A9に電話を入れ,状況を話し,A9から「もう金払うから,もう全然こっ,ちは関係ないようにしてくれ」と言われたので,M駅で落ち合い,報。 酬残金として600万円を受け取った。 被告人は,この件で国税対策にも影響が出ると思ったので,翌3日A11の所へ行くと,国税対策で2000万以上の金がかかっており,逮捕される前に,依頼主に先にお金をもらいに行くことはできないかと言われたので,A9にA1と会う段取りを付けてもらい,3月5日にNホテルでA1とA9に会った。同ホテルで,A1と2人で国税の具体的な税額の話をし,E1の事件により遅かれ早かれ逮捕されるであろう現在- 18 -の状況も話し,国税対策の報酬として想定される1億5000万円の半分くらいでも前払いをと依頼したが,一度は断られた。しかし,結局A1は,しょうがないね,絶対安くしてよという形で納得してくれた。後,,日A9を介して7000万円を 想定される1億5000万円の半分くらいでも前払いをと依頼したが,一度は断られた。しかし,結局A1は,しょうがないね,絶対安くしてよという形で納得してくれた。後,,日A9を介して7000万円を受け取ったがこの7000万円の中にE1の事件に対する追加報酬の意味は入っていない。なぜなら,A1から頼まれた案件ではなく,かつ失敗に終わっているからである。 エA1証言の要旨A1は,被告人にE1に対する営業妨害を依頼したことはなく,本件各犯行を謀議したことはないと述べている。 ( )検討 アA9証言の信用性A9は,前提となる事実等にあるとおり,被告人は,A1からE1に対する営業妨害を依頼されてこれを承諾し,A2に依頼して汚物撒きでもっ,,てこれを実行させたがE1の営業は停止されることなく継続されたためその営業妨害行為は失敗に終わり,その後の処置について,A1からその実行に疑問を抱かれ,報酬残金を払ってもらえないばかりか,前金の返還,,,をも求められ再び営業妨害をするよう求められていた旨証言しさらにA1から被告人に対し営業停止のために電話交換機を壊すやり方の示唆があり,被告人が,A14を連れてF2店内に入り,そのような設備の有無,,,や状況を下見させた上でその翌日の2月26日にE4F8店においてA1に次の営業妨害の話を切り出し,A14に前日の下見の状況を説明させ,営業妨害の方法についての意見を求め,A9がその要旨のとおり詳述するような話の末,営業妨害行為をやり直すに際し,今度は火炎びんを投てきする方法を用いることで話がまとまったとその経緯を証言しており,その後は,前提となる事実のとおりの火炎びんによる営業妨害行為がなされている。A9の前記証言内容は前提となる事実の経過及び結果とはよく- 19 -整合しており,被告 ったとその経緯を証言しており,その後は,前提となる事実のとおりの火炎びんによる営業妨害行為がなされている。A9の前記証言内容は前提となる事実の経過及び結果とはよく- 19 -整合しており,被告人とA14の行動についても合理的な説明ができている。被告人が当時置かれていた状況をみても,汚物撒きの実行犯に対し早く報酬を支払わなければならないのに,営業妨害が失敗したと言われて残額の支払を拒絶されており,そこでもし話がこじれると,下手をすれば話が白紙に戻され,既払い分まで返金するという事態にも発展しかねないおそれがある一方で,国税対策の仕事の途中でもあり,A1との関係を絶つわけにもいかないところから,A1の望む営業停止の結果を出せるような営業妨害行為をやり直すしかない状況に追い込まれていたのであり,そして,汚物撒きについては内容の詳細を詰めていなかったことでA1の意に沿わない結果となったことから,再度営業妨害に出る際には,A1の意向を伺いつつ,そのやり方を相談した上,事前に了承を得るために会合の場を持つということは,ごく自然な話の展開であり,A9証言はこのような被告人の置かれていた状況に照らして自然なものである。その話し合いの内容においても,既に失敗に終わった汚物撒きのやり方では手緩かったことから,再度営業妨害を行うには,それ以上に実効性の高いやり方を提案しなければA1の納得が得られないことは見やすい道理であり,火炎びん投てきは,暴力団が思いつく営業妨害の手段としては比較的ポピュラーなものであり,被告人がそれと同様な発想から,そのような内容の提案をしたということも何ら不自然なことではない。そして,仮にその手段でも営業停止に失敗することがあったとしても,A1から了承を得た手段を実行したという結果を残して報酬の支払を確実にするためにも,事前 をしたということも何ら不自然なことではない。そして,仮にその手段でも営業停止に失敗することがあったとしても,A1から了承を得た手段を実行したという結果を残して報酬の支払を確実にするためにも,事前にその手段,方法についてより具体的な話をして,A1の言質を取っておく必要があったという状況からすると,被告人とA1との間の事前のより具体的な,,謀議があったことが強く推認されるところでありA9が証言するとおりその犯行日と近接した時期に,被告人からの具体的な提案によってA1が了承する形で事前謀議が遂げられたとする点は,このような状況と整合性- 20 -のある,臨場性も高い証言といえ,前記A9の証言内容の信用性は高いといえる。また,逆に言えば,このような状況の下では,被告人やA3が述べるような,被告人が,営業妨害の方法について実行犯に一任するというのは考え難く,実行犯に依頼する段階で既に営業妨害の方法,すなわち火炎びんの方法は決まっていたと考えるのが合理的である。加えて,本件犯行後にA1が被告人に対し営業妨害の報酬残金として600万円を支払った上,その数日後には7000万円を支払っており,これはA1が営業妨害を依頼したことに起因するのは前記認定のとおりであるところ,仮に実行犯が独断で火炎びんという方法を選択したものだとすると,A1は,本件が自らの与り知らない想定外のことであるとして被告人からの支払要求を拒絶することもできる立場にあったのに,そのようなやりとりもなく支払っていることからすると,A1も火炎びんの方法を了承していたとみるのが自然である。そして,A1と被告人が,火炎びんの方法について合意を形成する機会としては,証拠上,E4F8店での会合以外には考えられず,A9証言はこれに整合している。 A9証言については,弁護人の指摘するように 。そして,A1と被告人が,火炎びんの方法について合意を形成する機会としては,証拠上,E4F8店での会合以外には考えられず,A9証言はこれに整合している。 A9証言については,弁護人の指摘するように,あいまいな部分や供述の変遷もあり,本件に至る営業妨害や火炎びん使用に関する謀議への関与等について,自己の役割を矮小化しようとしている面も否定できず,A9証言どおりの事実を認定するには躊躇を覚える部分もある。特に,A9は火炎びんを含む4つの方法が話し合われたと証言するが,手りゅう弾の話はいかにも突飛で,現実的でない。また,火炎びんとけん銃以外の方法については捜査段階の当初から供述していたわけではなく,変遷もしている上,手りゅう弾や拳銃の方法は人が死ぬからという理由でA1が難色を示したため採用されなかった旨のA9証言は,これらの方法と同等の危険性を有すると思われる火炎びんの方法についてA1が特段異を唱えた様子がないという点で不釣り合いであり,A9が自己の責任を矮小化し,殺意- 21 -がなかったように装っている可能性もあるから,採用の限りでない。 しかしながら,その責任を免れようと考えるならば,他の関係者と同様共謀の事実自体を否認すれば足りるにもかかわらず,A9は,当初は認めていなかったものの,捜査や取調べの進展につれて,4名もの死者に加え4名の負傷者を出した重大事件について,自己の根本的な刑責に繋がる重大な事実である火炎びんの使用に関する謀議の場に加わっていたことを認め,それにまつわるA1の電話交換機破壊の話を被告人と共に聞いていたことも認めているのであって,A9が事実に反してこの点で虚偽を述べる理由は全くないのであるから,その話の一部に誇張や虚偽があったとしても,E4F8店において火炎びんの話が出たこと自体の信用性を左右するものではな るのであって,A9が事実に反してこの点で虚偽を述べる理由は全くないのであるから,その話の一部に誇張や虚偽があったとしても,E4F8店において火炎びんの話が出たこと自体の信用性を左右するものではない。 なお,弁護人は,土曜日の白昼に,ファミリーレストランであるE4F8店で火炎びん等の話し合いをするのは状況としてそぐわず荒唐無稽であり,A9証言は信用できない旨主張するが,被告人供述を前提としても,同店において,E1に対する営業妨害の話をしていたこと自体は争いがないのであるから,必ずしも同店で営業妨害の方法を話し合うこと自体が不自然とはいえないし,当時の店内の状況として,周囲の店員や客らが被告人らの話にどこまで注意を払っていたのかは明らかではなく,火炎びんの話が出来るような状況でなかったとは断定できない。また,弁護人は,A9が捜査官から追及されるまで火炎びんの話をしていなかった点も指摘す,,るがそもそもそれはA9の刑責に関わる重大かつ深刻な事項であるから当初供述をしなかったことも格別不自然とは言えない。その他弁護人が指摘する諸点を考慮しても,E4F8店において火炎びんの使用に関する謀議をなしたという限度でのA9証言の信用性に合理的な疑いを容れることはできない。 以上の検討によれば,A9証言のうち,少なくとも,2月26日,E- 22 -4F8店にA1,A9及び被告人が集まり,被告人が,E1に対する営業妨害の方法として火炎びんを投てきする方法を提案し,A1がこれに応じたという点については十分信用できる。 イA14証言の信用性A14は,当公判廷において,E4F8店での被告人らの話し合いを聞いており,大きな声で話していたので全部聞こえていたが,E1の営業妨害の方法として火炎びんの話が出てきたことは絶対無く,神戸からの帰り,,の新幹 廷において,E4F8店での被告人らの話し合いを聞いており,大きな声で話していたので全部聞こえていたが,E1の営業妨害の方法として火炎びんの話が出てきたことは絶対無く,神戸からの帰り,,の新幹線の中で被告人から営業妨害の方法について相談された旨証言し他方,捜査段階においては,店内で被告人らの話し声は聞こえず,何を話しているのか分からず,帰りの新幹線の中でも被告人から営業妨害について何も聞かれなかったので,E4で方法が決まったのだと思った旨供述しているところ,このように公判廷で捜査段階と全く異なる証言をした理由について何ら合理的な説明をしておらず,供述態度をみても,本件に関して自己が責任を問われかねない事項に尋問が及ぶと,回避的な態度に終始していることや,被告人とA14との従前の関係等の事情に照らせば,A14が,被告人の面前で,自己及び被告人に不利益な証言を避ける可能性が十分にあるから,前記A14証言を信用することはできない。他方,捜査段階の供述についても,当時本件について被疑者として取調べを受けていたA14が,その処遇に大きく影響を与えるE4での話の内容について回避的な供述をしていたのでないかと考えられ,信用できない。 ウA1証言の信用性A1は,当公判廷において,E1に対する営業妨害を被告人やA9に依頼したことはない,2月26日にE4F8店で被告人らと会って国税の話をした後,A14から電子手帳を示されてテレホンクラブの説明をされたが,何を説明しているのか分からなかった,A1は説明の意味が分からなかったので,被告人やA9に聞いたがただ笑っているだけで何も答えなか- 23 -った,その後すぐにA1はE4を出たのであり,E4の中で火炎びん等の話は一切無かったなどと証言している。 しかし,前述のとおり,E1に対する営業妨害を依頼した っているだけで何も答えなか- 23 -った,その後すぐにA1はE4を出たのであり,E4の中で火炎びん等の話は一切無かったなどと証言している。 しかし,前述のとおり,E1に対する営業妨害を依頼したのがA1であることは明らかであるところ,A1証言はかかる事実に反するものであるし,Nホテルで7000万円を渡すことを了承した点についても否定するなど,客観的事実にも反した証言内容である上,E4での謀議は,まさに被告人と同様本件の共犯者として起訴されたA1自身の刑責に直接影響する事項であり,A1が自己の刑責を免れるため虚偽の証言をする可能性が十分考えられる。したがって,前記A1証言は到底信用できない。 エA3証言の信用性A3証言は,A2との間で火炎びんの方法に決めたというその経緯についてあいまいな内容であるし,本件犯行をみても,A2との間でバックアップの具体的方法等を協議したり,A2が火炎びん投てきの実行犯を連れてきたり,火炎びんの準備をしてきたような形跡は全くなく,他方で,A3が,作り方を知らなかった火炎びんをわざわざ作って実験をしたり,A4と共に実行行為を行っていることは,むしろA3が当初から実行犯となることが決まっていたことをうかがわせるものであって,そうすると,A2から本件犯行を依頼され,実行犯はA2側で用意し,A3らの役割はバックアップであったとのA3証言は信用できない。前述のとおり,そもそも実行犯レベルで営業妨害の方法が決まったというのは,本件犯行に至る一連の経緯に照らして不合理であるし,A3は,捜査段階において,A2が実行犯の一員であることは供述している一方で,誰から事件を依頼されたかについては言いたくないと述べており,被告人との従前の関係や,事件後被告人に面倒を見てもらっていることなどもあって,被告人のことを庇っている可 あることは供述している一方で,誰から事件を依頼されたかについては言いたくないと述べており,被告人との従前の関係や,事件後被告人に面倒を見てもらっていることなどもあって,被告人のことを庇っている可能性もある。これらの事情を考慮すると,実行犯レベルで火炎びんの方法が決まったとのA3証言は信用できない。 - 24 -オ被告人供述の信用性被告人は,営業妨害の限度で本件への関与は認めており,そこに至る経緯についての供述は具体的であり,本件の経緯について整合する部分もある。 しかしながら,本件の核心部分であるE4F8店での謀議の有無については,汚物撒きではA1の意に沿った成果を出せず失敗したことから,営業妨害のやり直しを実行するにあたり,A1に配線を切る話を持ちかけたのに無視され,火炎びんの使用についての話は全くなかった,A2には,配線を切る方向で再度営業妨害を指示したと供述する点は,A9証言の項で検討したとおり,A1の納得が得られず,報酬残金の支払でもめていたにもかかわらず,A1の意向を十分に組み入れないうちに,勝手にそのようなやり方を自分で決めて実行犯に対し指示をしたということになるが,これでは前回の二の舞であり,極めて不自然な話であり,ましてや,実行犯に営業妨害の方法を一任するというのは更に不自然と言わざるを得ない。現に,被告人は,A14と共にF2店に行って下見をし,E4F8店でも,A14に下見の様子を説明させ,A1に対し営業妨害の方法について意見を求めるなどして,営業妨害の方法を確定しようと動いているのであって,このような客観的状況と,実行犯に営業妨害の方法を一任したとの被告人供述とは整合しない。 また,A3は,被告人の使用する携帯電話()に対し,A4と火炎びgんの投てき実験を行った3月1日の午前1時59分(通話時間59秒,) 行犯に営業妨害の方法を一任したとの被告人供述とは整合しない。 また,A3は,被告人の使用する携帯電話()に対し,A4と火炎びgんの投てき実験を行った3月1日の午前1時59分(通話時間59秒,)午前2時29分(通話時間8分37秒)及び同日実行することを断念した後の午前5時17分(通話時間11分18秒)に架電しており,これについてA3及び被告人は,営業妨害の話ではない旨供述するが,火炎びんの実験をし,これから実行しようという緊迫した状況下で,A3がそれとは無関係の輸入雑貨や金の貸し借りの話をするとは考えがたく,当時の状況- 25 -に照らせば,営業妨害に関する状況報告の電話であると考えるのが自然であり,これに反する被告人供述は信用できない。 さらに,火炎びん投てきが被告人にとって予想外のことであれば,A2やA3に対して火炎びん投てきの経緯について説明を求めるなどするのが自然であるのに,被告人は,A2らに対して何ら説明を求めておらず,この点も不自然といえる。 これらの事情に照らせば,E4F8店での火炎びんの謀議はなく,火炎びんの方法について実行犯に指示したこともない旨の被告人供述は信用できない。 ( )当裁判所の判断 前記のとおり,被告人は,A1からの依頼によりE1の店舗に対する営業妨害を引き受け,汚物撒きの方法を実行するも,営業停止の効果が得られなかったため,A1が納得せず報酬の支払を受けられなかったことから,更なる営業妨害の方法を模索し,これを実行犯に指示する中,その営業妨害の一環として本件犯行が行われているという経過からして,本件火炎びんを用いた犯行についても,被告人がA1との間で謀議を遂げ,実行犯に指示したと考えるのが自然な流れである。 ア共謀について(ア)前記情況及びこれに沿う限度で信用できるA9証言によれば,被 火炎びんを用いた犯行についても,被告人がA1との間で謀議を遂げ,実行犯に指示したと考えるのが自然な流れである。 ア共謀について(ア)前記情況及びこれに沿う限度で信用できるA9証言によれば,被告人は,2月26日に,E4F8店において,A1及びA9とともにE1に対する営業妨害の方法を検討し,被告人が火炎びんを投げる方法を提案したところ,A1がこれを了承したことが認められる。 (イ)被告人と実行犯らとの共謀そして,この火炎びんの謀議の内容と符合する実行行為が,謀議と近接した時期に現に行われていること,前記のとおり,被告人とA3は,A3らが火炎びん投てきの実験をし,実行も試みた3月1日の深夜から- 26 -未明にかけて電話連絡を取っており,火炎びんの実験をするなどしていた当時のA3ら実行犯の状況に照らせば,この電話連絡は火炎びんによる営業妨害に関するものであることが強く推認される上,A3が本件実行行為により負った火傷の治療に被告人が病院を紹介するなどして全面的に協力していることなども考慮すると,被告人と実行犯らとの間で,本件火炎びんを用いた犯行に関する指示や連絡が行われていたことは優に認められる。 (ウ)小結以上によれば,被告人は,A1及び実行犯らと,E1の各店舗に対する火炎びん投てきを順次共謀の上,本件犯行に及んだと認められる。 なお,本件公訴事実のうち,A9を共同正犯とする点については,証拠上認められる本件犯行におけるA9の動機,地位及び役割等に照らすと認定することはできず,幇助犯にとどまるものと判断した。 殺人の故意について前記認定事実によれば,被告人は,E1に対する営業妨害の方法として火炎びんを用い,その発火した火力を用いて電話交換機など内部施設まで損壊することを提案しているところ,少なくとも火炎びんがガソリン等の 前記認定事実によれば,被告人は,E1に対する営業妨害の方法として火炎びんを用い,その発火した火力を用いて電話交換機など内部施設まで損壊することを提案しているところ,少なくとも火炎びんがガソリン等の燃料を用いた爆発物であって,建物内やその入り口付近に対し投てきして使用した場合は相当程度の火力が生じて火災に至るなどすることによって,人の死傷結果を生じる危険が高いものであるという一般的認識や,営業妨害を成功させるため,数日間は店が閉まる程度の損壊を与える威力を有するものが作られるといった認識は有していたと認められる。また,被告人は,A14とともにF1店及びF2店を下見し,F1店はJRの高架下にあり,F2店は3階建ての二,三階部,,,分であっていずれも入口が狭く小さな店舗で狭い内部構造であろうことやF2店については内部に個室がある構造であることについてもA14から説明を受け,それぞれ認識しており,また両店舗がテレホンクラブであることから- 27 -夜間でも店員や客等の人がいることや,本件犯行の性質上,犯行が夜間に行われることも認識していたと認められ,より具体的にE1の営業妨害のために火炎びんを使用することがもたらす生命に対する危険性の高さについては認識していたものといえる。他方で,証拠上,被告人が閉店時等人が全くいない状態の時を狙うなど人の死傷結果発生の回避策を検討した事実は認められない。これらの事情に照らせば,被告人は,夜間,前記両店舗に火炎びんを投てきすれば,火炎びんが炎上して火災が発生し,狭い店舗内にいる店員や客等が逃げ遅れて炎に巻かれたり,有毒ガスを吸引するなどして死傷する可能性があることを認識していたというべきである。 したがって,被告人は,本件各店舗内の店員及び客等に対して,殺人の未必の故意があったものと認められる。 第 れたり,有毒ガスを吸引するなどして死傷する可能性があることを認識していたというべきである。 したがって,被告人は,本件各店舗内の店員及び客等に対して,殺人の未必の故意があったものと認められる。 第2判示第2の事実(コンビニ店舗に対する建造物損壊事件)について 弁護人及び被告人は,被告人は,本件犯行を実行犯に指示したA5とは共謀したことはない旨主張していることから,本件では,被告人がA5に本件犯行を指示したか否かが争点である。 前提となる事実関係証拠を総合すると,以下の事実が認められる。 (1)関係者等ア被告人は,当時,金融会社を経営する一方で,Pと呼ばれる組織の会長であった者である。 イA5,分離前の相被告人A6,同A7,A8,A17らは,本件当時,いずれもPの構成員であった。Pの構成員は,被告人のことをおやじ,会長,兄貴などと呼び,その8割ないし9割の者が,体に被告人の氏名である「A16」と入れ墨を入れており,A5らも例外ではなかった。Pの組織中,A18は被告人に次ぐ会長代行の地位にあり,その下に本部長としてA5,事務局長としてA19などの幹部構成員がいた。本部長であるA- 28 -5は,Pの中でもA18に次ぐ地位にあり,被告人との関係も長く,被告人から信頼されていた。A5の配下には,A6,A7,A8,A17らがおり,A17は被告人の運転手兼ボディーガードという役割でもあった。 被告人と被害コンビニ店舗の経営者の妻B14とのトラブル( )2被告人は,平成15年9月(以下,特に断らない限り,年号は平成15年。),,とするころから知人のA20が借りていた広島市区のG5号室にijr被告人の妻子を住まわせていた。B13は,同マンションのオーナーであると同時に,E2F3店(以下「本件店舗」という)のオー るころから知人のA20が借りていた広島市区のG5号室にijr被告人の妻子を住まわせていた。B13は,同マンションのオーナーであると同時に,E2F3店(以下「本件店舗」という)のオーナーでもあり,。 被告人は,本件当時そのことを知っていた。また,B14は,B13の妻であり,本件店舗を実質的に経営していた者である。なお,被告人は,前記G 号室のことをセカンドハウスの意味で「2」と呼ぶことがあった。 rB13らは,前記マンションから子供が犬を連れて散歩に出る姿を目撃したりするようになり,号室の居住者が誰であるかについて不信感を抱いてrいたところ,10月19日,B14が号室を訪ねると,外国人である被告r人の妻,被告人の3人の子供及びA21の妻らがいたために,B14は,被告人の妻に対し,パスポートや外国人登録証を見せるよう要求し,風呂上がりであった三男を含む子供たちを部屋から追い出したり,警察官を呼んだりした。三男は,外に出されたせいで風邪を引いてしまった。 ,,,被告人はこのことを知ってA17とともに前記G5号室に寄った後r最上階のB14方へ向かった。その際,被告人は,エレベーターの中を蹴ったりするなど,機嫌が悪かった。被告人は,B14に対し「なんで追い出,したんなら」などと大きな声で言ったところ,B14は,名義人が違う,。 外国人だなどと言った上「飼うちゃいけん犬まで飼うとるじゃないの」,。 と言い,これに対し被告人は「わしら,留守番頼まれたけぇ,単に留守番,しとったんじゃないか」などと言い返したが,B14は,被告人に対し,。 不動産屋さんに言って強制退去させるなどと言った。被告人はそれ以上言い- 29 -返さず,その場を去った。 被告人は,10月31日,A22弁護士に前記B14とのトラブルを説明 は,被告人に対し,。 不動産屋さんに言って強制退去させるなどと言った。被告人はそれ以上言い- 29 -返さず,その場を去った。 被告人は,10月31日,A22弁護士に前記B14とのトラブルを説明した上,B13夫妻に対する法的措置を検討した結果,A22弁護士は,B13に対し内容証明郵便を送ることを決め,11月4日午後6時ころ,被告人と会ってこのことを確認するなどした。 ( )本件犯行状況等 ,,,,A5は11月4日の夜A7とA6を自宅に呼び出した上両名に対し「またおやじの仕事が入ったけえのう」などと言った後,石を使って本件。 店舗のガラスを割るよう指示した。そこで,A7とA6は,翌5日未明,目だし帽等を装着し,石を用意した上,それぞれ本件店舗の出入口ドアに向けてこぶし大の石を投げ付けて命中させ,出入口ドア等のガラスを割った。その後,付近に駐車していたA6運転の自動車に乗り,A5方に行き,A6がA5に報告した。 (4)犯行後の状況11月5日,A7は,A5から「あれだけ割れとったらいいじゃろう,,3枚ぐらい割れとるけえ大丈夫じゃろう」と言われた。 。 A22弁護士は,B13夫妻に対し,11月5日付けで慰謝料30万円の支払を求める旨の通知書を送った。 A5・A17証言の信用性A5及びA17は,当公判廷において,本件犯行は被告人の指示によるものであった旨証言し,他方,被告人はこれを否定する旨の供述をしているので,各供述の信用性について検討する。 (1)A5証言の要旨ア本件のきっかけは,被告人と被告人が住んでいた家の大家とのトラブルである。大家から借主と住んでる人が違うと言われ,被告人の下の子供が風呂上りに大家に外に出されたと,D4で働いていた誰かから聞いた。E- 30 -2は大家が経営していると,おそらく被 とのトラブルである。大家から借主と住んでる人が違うと言われ,被告人の下の子供が風呂上りに大家に外に出されたと,D4で働いていた誰かから聞いた。E- 30 -2は大家が経営していると,おそらく被告人から聞いた。 イ被告人から「消防署の前の方のE2をぐちゃぐちゃにしてやれ」と,。 電話で指示があった。A5は「わかりました」と答えた。実行したのは。 A7とA6で,A5が「石かなんか投げてガラス割って来い「おっさ。」,んの仕事じゃけえ,頼むで」などと言って,被告人からの依頼であるこ。 とを明らかにして指示した。事件後,現場を確認しに行くと,ガラスが割れていた。 ウ次の日くらいに被告人に報告した。A5は,A17から,被告人が実際に現場を見に行き,結果について不満を持ってはいない様子であった旨聞いた。報酬は,被告人から直接10万円ないし20万円くらいもらったので,全額A7とA6に渡した。A7とA6には,被告人に直接礼を言いに行かせた。 ( )A17証言の要旨 11月4日,A17は,被告人を乗せて車を運転していたが,その際,被告人は何者かに電話をかけ,その相手に対し「E2を営業できんようにし,てやれ「営業できんように店をぐちゃぐちゃにしてやれ。ガラスをがち。」,ゃがちゃにしてやれ」と言っていた。 。 同月5日午前10時ころ,A17は,被告人とその妻を被告人の自宅まで迎えに行った。A17は,被告人から「2のE2に行け」と指示された,。 ので,本件店舗に向かった。本件店舗は,ガラスがガムテープや段ボールで補修されている状態だった。A17らが乗った車が本件店舗にさしかかった際,被告人は,妻に対し「ママ,見てみい」と言うと,妻は「わあ,す,。 ,ごい」と答えた。このときの被告人の機嫌は良かった。 。 数日後,A5から「やっちゃ 7らが乗った車が本件店舗にさしかかった際,被告人は,妻に対し「ママ,見てみい」と言うと,妻は「わあ,す,。 ,ごい」と答えた。このときの被告人の機嫌は良かった。 。 数日後,A5から「やっちゃった。石を投げてガラスを割った。A6と,A7にやらした。おやじから小遣いをもらった」などと言われた。 。 検討( )3- 31 -アA5証言についてA5は,本件犯行の具体的な内容について詳細に供述しているところ,他の関係証拠によって認められる客観的な事実と整合するものであり,加えて,被告人との共謀についても,被告人からの指示を受け,A6らに命じて本件を実行させたものであると,捜査,公判を通じて一貫して認めているのであり,この点は「おやじの仕事が入ったけえのう」とA5か,。 ら聞いたと述べるA7証言や後述するA17の証言とも符合するほか,前記認定に係る経緯に照らせば,被告人には腹いせとして大家に対し実力行使の報復を企むことには十分な動機や原因があり,A5が被告人の配下といえる関係に照らせば,被告人がA5に指示して本件犯行を実現しようとすることは十分にあり得る事態といえること,次項で検討するA17証言によれば,被告人は犯行から約7時間後の11月5日午前10時には本件犯行が実行されたことを知っていたことになるが,これを前提とすると,A5はこのときまでには,本件犯行を行ったことを被告人に報告していることが推察され,そうなると,実行後すぐに報告したということになり,被告人から指示があったことに沿う行動であること,また,A5が本件について殊更に被告人を陥れて,虚偽の証言をする理由に乏しいことを総合すると,A5証言の信用性は高い。 イA17証言についてA17は,当時被告人のそばにあって,その運転手役等を務めていた人物であるが,その証言の内 人を陥れて,虚偽の証言をする理由に乏しいことを総合すると,A5証言の信用性は高い。 イA17証言についてA17は,当時被告人のそばにあって,その運転手役等を務めていた人物であるが,その証言の内容は,その際に運転中に経験した事実を述べているもので,現実性や臨場感があるものといえ,しかも,本件犯行を電話にて配下の誰かに指示し,その後に犯行現場に出かけてその成果を確認するという,被告人が本件の首謀者であることを窺わせる行動をとっていたことを明確に証言しているところも,前記信用性の高いA5の証言ともよく符合していること,A17自身は本件犯行とは無関係であり,捜査機関- 32 -からの働きかけなどがあった形跡もなく,被告人を引き込んで自己の刑責を軽減し,又は有利な取り計らいを受けるために虚偽の証言をする動機に乏しいことからすると,A17証言の信用性も高い。 ウ被告人供述についてこれに対し,被告人は,本件犯行はA5らが被告人のために行ったものであることは事実であるが,被告人が本件を指示命令したことはない旨供述し,A5らの独断専行であったかのように弁解しているところ,本件の発端は,被告人とB14らのいわば私的なトラブルに過ぎず,A5が本件犯行に及ぶ動機に乏しいし,被告人が供述するように,被告人が,B14らに対し法的措置を検討していることをA5に伝えたというのであれば,なおさら配下のA5が独断で本件のような報復行動に出ることは考えにくいものであって,信用できるA5及びA17証言に見られる被告人の行動ともそぐわず,被告人の前記供述は到底信用できない。 なお,被告人は,B14との前記トラブルについて,A22弁護士を介して法的手段を検討しているが,被告人が,このような合法的な手段を採る一方で,本件犯行のような違法な手段を用いて,いわば両面からB1 なお,被告人は,B14との前記トラブルについて,A22弁護士を介して法的手段を検討しているが,被告人が,このような合法的な手段を採る一方で,本件犯行のような違法な手段を用いて,いわば両面からB14らに報復し,あるいは犯行による精神的損害を与えて交渉を有利に進めようとすることは必ずしも両立し得ないものではないから,A5,A17の各証言の信用性に影響を与えるものではない。 当裁判所の判断A5及びA17の各証言によれば,被告人は,B14との前記トラブルを発端として,同女の全く非を認めようとしない態度に怒りが収まらず,その報復として,A5に本件店舗のガラスを割って破壊するよう指示命令したことが認,。 められ被告人と実行犯に指示したA5との間で共謀したことは明らかである第3判示第3の事実(営利目的の覚せい剤の共同所持)について,,, 本件では弁護人及び被告人はA5が行っていた覚せい剤の密売について- 33 -被告人は,その資金を貸していたに過ぎず,さらに,本件犯行当時は,その資金を貸すことも止めていたと主張していることから,本件A5らが密売のため所持していた覚せい剤について,被告人とA5らとの共謀があったか否かが争点となる。 前提となる事実関係証拠を総合すると,以下の事実が認められる。 ( )関係者等 第2の1( )で述べたところと同様である。 A5らの覚せい剤の保管・密売状況等( )2アA5は,少なくとも平成15年ころには,A6やA8らに受渡場所や代金回収の要否などを指示して覚せい剤を密売させていた。A6らは,覚せい剤の売上金を受け取ると,その日のうちにA5に渡していた。A5は,覚せい剤の売上金を封筒に入れて管理していた。A5は,その売上金を,100グラム単位で被告人の住んでいる町のG6マンションやD せい剤の売上金を受け取ると,その日のうちにA5に渡していた。A5は,覚せい剤の売上金を封筒に入れて管理していた。A5は,その売上金を,100グラム単位で被告人の住んでいる町のG6マンションやD4の事s務所において,被告人に渡すことがあった。A6は,車でA5を送り,待機していたが,戻ってきたA5から「ものの配当じゃ」と言われて数,。 万円もらったことがあった。被告人は,A5に,覚せい剤購入資金を合計約1000万円以上拠出していた。また,A5は,被告人に対し,密売する覚せい剤の値段について相談すると,被告人がアドバイスをしたり,被告人に対し覚せい剤の残量を報告したりしていた。 イ覚せい剤は,フィリピンから段ボール箱で送られてきて,A5からA6やA7らに連絡があり,海外から荷物が届くので受け取ってくれなどと指示がある。それらの荷物は,A8,A7のアパートや,A5らがたまり場として使っていたのG7ビル内にあるE5(以下「E5]という,At。)17が経営していたE6などの店に送られてきた。段ボール箱の中には外国語の書かれた黄色いインスタント食品のカップ容器が80個から100- 34 -個近く入っており,カップ容器の中には,乾燥した米様のもの,黄色いプラスチックスプーン,銀色の袋と透明なビニール袋に入った調味料などが入っていた。その銀色の袋の中には,粉末に混じって透明なプラスチック袋に入った白色結晶の覚せい剤が入っているものもあった。A6,A8,A7は,A5の家やホテルQ,E5などで,それを開封して,その中の覚せい剤を10グラムずつくらいに分ける仕分け作業を行っていた。その仕分け作業の際,覚せい剤と銀色の袋の中身の粉末が混ざってしまうという。 ,,出来事があったA7はそのことをA5に報告するとA5は電話をかけその相手に くらいに分ける仕分け作業を行っていた。その仕分け作業の際,覚せい剤と銀色の袋の中身の粉末が混ざってしまうという。 ,,出来事があったA7はそのことをA5に報告するとA5は電話をかけその相手に対し「覚せい剤と粉末スープが混ざったんでどうすればよろ,しいでしょうか」と敬語口調で尋ねていたという出来事があった。 。 また,平成15年夏過ぎころ,A5とA7が,フィリピンから送られて,きた段ボール箱と仕分け道具を持って広島市区町の麻雀店に行くとmu被告人,甚平を着た男及び若い男がおり,被告人がA5に対し,インスタント食品のカップ容器に入った覚せい剤の仕分けを指示し,分けられた覚せい剤を受け取ると,甚平を着た男に見せ,若い男に試し打ちさせて,その覚せい剤の善し悪しを確認するという出来事があった。 密売客の中には「A23さん」と呼ばれる人間がいたが,平成15年,の夏ころと,同年末ころ,この「A23」がそれぞれ50グラム,100グラムの覚せい剤を注文してくることがあり,それに対してA5は「ち,ょっとおやじに電話して聞きます」などと言っていたことがあった。 。 ウ覚せい剤の保管は,平成15年夏ころから平成16年2月ころまではA5の指示でA6が行っており,A6が逮捕されたあとは,A5の指示でA8が行っていた。平成16年12月の初めころ,A8は,A5から「ガ,サが来るかもしれんけえ,セドリックに移せ」と言われたので,覚せい。 剤等をRの被告人所有の駐車場に停めてあるセドリックの車内に移動させた。 - 35 -なお,被告人は,平成14年から平成16年までの間,海外への渡航歴が何度もあるが,A5,A8及びA7は,平成14年から平成17年4月までの間,海外への渡航歴はない。 (3)A5の指詰め事件A5は,平成15年12月,被告人に対し 成16年までの間,海外への渡航歴が何度もあるが,A5,A8及びA7は,平成14年から平成17年4月までの間,海外への渡航歴はない。 (3)A5の指詰め事件A5は,平成15年12月,被告人に対し,約1300万円を納入することになっていたのに,バカラ賭博につぎ込んでしまったため,納入できなかった。そこで,A5は,そのことのけじめとして,自らの指を詰めた。被告人は,この一件でA5を遠ざけたりすることはなく,従前と同様に,A5から,覚せい剤の売上金の中から金を受け取っていた。 (4)本件覚せい剤の発見状況平成16年12月17日,広島市区町丁目番所在の被告人がmngog所有する駐車場に駐車中の黒色セドリックの車内から,封筒や手提げバッグ内に入れられた覚せい剤結晶粉末少なくとも約420.077グラムが押収された。 検討(1)A5が行っていた覚せい剤密売に対する被告人の関与についての評価ア以上認定した事実にみられるような,覚せい剤密売に対する被告人の密接な関与,すなわち,被告人がA5に覚せい剤購入のための資金を提供した上,A5に覚せい剤の仕入れ方法を教えたり,仕入れた覚せい剤の良し悪しを確認したり,覚せい剤の密売価格を決めたり,A5から覚せい剤残量の報告を受けたり,覚せい剤密売の売上金をA5から受け取っていること,密売客も,A5の背後に被告人がいることを前提とする言動をしていることを総合すると,被告人は,A5が公判で証言するように,A5の行う覚せい剤密売に主導的な立場で関与し,その収益を得ていたことからして,被告人自身がA5を通じて覚せい剤密売を営んできた,いわば自己の犯罪として行っていたものと評価できる。したがって,少なくとも平成1- 36 -5年12月ころまでに限っても,被告人は,自己の犯罪として覚せい剤 がA5を通じて覚せい剤密売を営んできた,いわば自己の犯罪として行っていたものと評価できる。したがって,少なくとも平成1- 36 -5年12月ころまでに限っても,被告人は,自己の犯罪として覚せい剤の密売に関与し,ひいてはその覚せい剤の所持に関与することによりA5らとその覚せい剤を共同所持していたことは明らかである。 これに対し被告人は,自己がA5に渡していた金が覚せい剤の購入資金に使われていることの認識はあったが,その金は単なる貸金であって,自己が覚せい剤の密売を行っていたわけではなく,覚せい剤に関する自己の関与についても,A5が損をして自己の貸金回収に支障を来さないために協力したに過ぎない旨弁解している。しかし,その額は既に約1300万円以上にも上っているのに,貸金額や返済額,利息や元金の計算などを記した帳簿等はなく,他にA5との金員のやりとりについて貸借としてこれを管理をしていたことを裏付けるものはないし,そもそも被告人の前記関与状況は単なる貸金回収のため,債権者として活動しているという程度を超えたものであるから,被告人のこのような弁解は到底採用できない。 イ平成16年以降の関与についてA5の下で覚せい剤の密売に関与していた証人A7は「平成16年夏,,,。 過ぎころA24という密売客に覚せい剤を渡したが金は払わなかったA24は「お金はA16と話をつけとるけぇ」と言っていた。平成16。 年夏過ぎころといえるのは,A8が平成16年5月くらいに逮捕されて,広島の方に帰ってきた以降のことだからである。自分が配達した客から被告人の名前が出たのはこの1回だけだったからよく覚えており,被告人のことをA16と呼んでいたので被告人と対等に話の出来る人じゃないかという印象を受けた」などと証言しているところ,かかるA7証言は具体。 的かつ明 たのはこの1回だけだったからよく覚えており,被告人のことをA16と呼んでいたので被告人と対等に話の出来る人じゃないかという印象を受けた」などと証言しているところ,かかるA7証言は具体。 的かつ明確で,自己の犯罪に関わる部分についても証言し,元P構成員であるにもかかわらず,被告人の面前で被告人に不利益な証言をしており,かと言って,殊更被告人に責任転嫁するような供述態度でもなく,十分信用できるものである。このA7証言からは,被告人が平成16年夏ころに- 37 -おいてもなお覚せい剤の密売に,実質的な売主として関与していたことを強く推認させる。 さらに,A7,A8,A6らを使って覚せい剤を密売していた証人A5も,被告人の指示の下に覚せい剤の密売をしており,本件覚せい剤も,その一環として所持していたものである旨証言しているところ,以上に述べたような被告人の覚せい剤密売への関与状況からみれば自然であって,信用できる。 ウ以上検討したところによると,被告人は,従前,A5に指示するなどして,自己の犯罪として,主導的に覚せい剤の密売及びその所持に関与することによりA5らとその覚せい剤を共同所持していたといえるから,本件覚せい剤についても,その所持量が約420グラムと大量であり,組織的な密売のための所持であることも考慮すると,被告人の指示の下での覚せい剤密売の一環として所持していたものであり,A5らとその覚せい剤を共同所持していたものであると認定するのが相当である。 ( )被告人の本件覚せい剤に関する弁解について ア被告人は,平成15年12月を境に覚せい剤購入資金等A5が行っていた覚せい剤密売への関与を止めた旨,以下のとおり供述している。すなわち,A5は,平成15年12月25日,被告人に対し,Pの構成員に対す,,る給料やボーナスとして 覚せい剤購入資金等A5が行っていた覚せい剤密売への関与を止めた旨,以下のとおり供述している。すなわち,A5は,平成15年12月25日,被告人に対し,Pの構成員に対す,,る給料やボーナスとして約1300万円を納入することになっていたがA5はこれを使い込んでしまい,納入できなかった。A5はこの一件で指を詰めた。それ以後,被告人はA5に対し覚せい剤の購入資金を貸すことを止め,覚せい剤の値段を決めることもしていない。A5から金を受け取ることはしていたが,これはA5に貸していた2000万円の金利と,使い込んだ金の返済分として受け取っていたものである。A5との関係は,借金の返済で事務所に顔を出したり,被告人と一緒に風呂に行ったりするなどしてその後も交流は続き,被告人自身も,以前と変わらない態度でA- 38 -5と接していた,というものである。 イそこで,この被告人供述の信用性について検討するに,覚せい剤の密売について,そもそもA5に対して金員を貸し付けていただけの関わりに過ぎなかったという信用し難い事実を前提として,A5の使い込みを機に貸金による資金提供を止めたということでもって,覚せい剤との関わりがなくなったと主張していること自体からしても,その弁解の信用性は全般に低いものといえる。その点は措くとしても,A5の使い込みの件以後は,これまでの資金提供を差し控えることで覚せい剤の密売から手を引いた旨,,,の被告人の弁解については確かにA5の使い込みに対する制裁として資金提供を差し控えて,その間はA5に資金繰りや覚せい剤の密売に精を出させて,返済額を増やさせることで責任をとらせるというやり方も考えられないではなく,仮に資金提供を控える事実があったやも知れないが,,,,だからといって前記認定のとおり少なくとも平成15年12月まで ,返済額を増やさせることで責任をとらせるというやり方も考えられないではなく,仮に資金提供を控える事実があったやも知れないが,,,,だからといって前記認定のとおり少なくとも平成15年12月までは自らの犯行として覚せい剤密売に主導的な立場で関与し,その売上金をA5から受け取って自己又はPの収益としていた被告人が,自己に大きな利益を生んでいた,うまみのある覚せい剤密売への関与自体から根本的に手を引く必要はなく,かえってその経済観念や責任感に不安を残すA5自身に密売取引全体を全面的に任せること自体が危険であり,場合によっては覚せい剤密売が発覚してこれによって得られる利益を失う結果となるおそ,,れもあるから被告人がそのような行動に出ることは考え難いものであり被告人の弁解は,筋の通らない,極めて不合理なものであると言わざるを得ない。付言すると,A5は,使い込みの一件で指を詰めて相応の責任を取り,被告人も一応これに納得し,それ以後もA5との関係を対外的にも対内的にも継続しているのであるから,A5への制裁として,指詰めに加えて更に覚せい剤関与から手を引く理由はますます乏しい。そして,被告人は,平成16年以降も,覚せい剤密売の売上金をそれと認識した上でA- 39 -5から受け取っており,A5の密売状況も使い込みがあった前後で特段変化がみられないこと,平成16年以降の被告人の関与を推認させる前記A7証言と整合しないことも考慮すると,被告人の供述は信用できない。 なお,A6は,A5の使い込みが発覚して以降,被告人は覚せい剤密売から手を引き,A5のしのぎになった旨A5が言っており,平成15年12月ころまでは,覚せい剤を10グラム25万円くらいで売買していたのに,平成16年に入ってからは,10グラム10万円くらいに値下がりした,平成16年正月こ ぎになった旨A5が言っており,平成15年12月ころまでは,覚せい剤を10グラム25万円くらいで売買していたのに,平成16年に入ってからは,10グラム10万円くらいに値下がりした,平成16年正月ころ,A5からもらった覚せい剤の配当はいつもより,。 ,多かったなどと被告人の供述を裏付けるような証言をしているしかしこのA6証言を裏付けるに足りる証拠はなく,また,仮にA5が,被告人からの資金提供がなくなる一方で,被告人に対しては,前記使い込みの穴埋め等のために密売の売上金を持っていかなければならないという状況下,,に置かれていたのであれば利益を上げるため覚せい剤の値段を上げたり部下への配当を減額するというのが合理的であるのに,これに反して,従前の密売代金の半額以下で密売し,かつ部下への配当も高額にしたというのはいかにも不自然であることや,A6は,被告人の面前かつP構成員も傍聴に来ていた公判廷では,被告人の関与についてあいまいな供述をし,捜査段階の供述とも異なる証言をしている様子がみられることも考慮すると,A6が,被告人の弁解に沿うような証言をしている可能性が否定できないから,A6証言は信用できない。 (3) 結論 以上によれば,本件覚せい剤は,被告人やA5の指示の下で,その配下の者が,犯行当時も継続して行っていた覚せい剤の密売のために保管していたものであるから,被告人が,A5らと共謀の上,本件覚せい剤を所持していたとの事実が優に認められる。 (一部(S署銃撃事件)無罪の理由)- 40 -第1はじめに 本件公訴事実(訴因変更後のもの)の要旨は「被告人は,暴力団「P」の,会長であり,分離前の相被告人A8,同A6はいずれもその構成員であるところ,A8,A6,同暴力団の本部長であるA5及びその構成員であったA17と共謀の上,いず の要旨は「被告人は,暴力団「P」の,会長であり,分離前の相被告人A8,同A6はいずれもその構成員であるところ,A8,A6,同暴力団の本部長であるA5及びその構成員であったA17と共謀の上,いずれも法定の除外事由がないのに,第1平成16年2月9日午前零時6分ころ,広島市区町番号所在mvwxの広島県S警察署東側路上において,自動装てん式けん銃1丁を,これに適合する実包1発と共に携帯して所持し第2前記暴力団の威勢等を誇示すべく,前記S警察署庁舎を銃撃して損壊しようと企て,同日,同所において,被告人の指揮命令に基づき一体として行動する被告人ら5名の組織により,同庁舎正面玄関外側自動ドアガラスに向け前記けん銃で弾丸1発を発射し,広島県が所有し,同警察署長が管理する同ドアガラス1枚,同正面玄関内側自動ドアガラス1枚等に命中させてこれらを破損し(損害額合計10万6000円相当,もって,不特)定若しくは多数の者の用に供される場所においてけん銃を発射するとともに,団体の活動として,建造物損壊の罪に当たる行為を実行するための組織により,他人の建造物を損壊したものである」というのである。 。 弁護人は,A5の指揮の下,同人ら実行犯が本件犯行を行ったこと自体は争わないが,被告人がA5に当該犯行を指示するなどして共謀した事実はない旨主張し,被告人もこれと同旨の供述をするので,本件では,被告人とA5との共謀の有無が争点である。 本件において,被告人とA5との共謀を立証する証拠は,①本件犯行の前日である平成16年2月8日,Tのサウナ室内において,被告人が,A5やA17の面前で「S署に恥をかかせてやりたい。ああ,だれかS署の玄関に二,,三発かち込んでこんかのう」などと言った旨のA17証言及び②同趣旨の被。 告人の発言のほか,その おいて,被告人が,A5やA17の面前で「S署に恥をかかせてやりたい。ああ,だれかS署の玄関に二,,三発かち込んでこんかのう」などと言った旨のA17証言及び②同趣旨の被。 告人の発言のほか,その直後,Tにおいて,被告人から直接本件犯行の指示を- 41 -受けた旨のA5証言であるところ,検察官は,いずれの証言も信用でき,被告人の共謀が認められると主張する。 しかしながら,当裁判所は,いずれの証言についても,その信用性には疑問が残るところがあり,これを肯定することができず,全証拠によっても,被告人とA5との共謀を認めるには合理的な疑いが残るのであり,結局,犯罪の証明がなく,本件については被告人を無罪としたものである。 そこで,以下,その理由を説明する。 第2無罪とした理由 前提となる事実関係証拠を総合すると,以下の事実が認められる。 関係者等(1)ア被告人は,当時Pと呼ばれる組織の会長であった者である。Pは,その資金獲得の手段として,金融業(D4有限会社,以下「D4」という)。 などを営んでいた。A25及びA26は,D4の従業員であった。 イA5,A6,A7,A8,A17らは,本件当時,いずれもPの構成員であった。Pの構成員は,被告人のことをおやじ,会長などと呼び,その8割ないし9割の者が,体に被告人の氏名である「A16」と入れ墨を入れており,A5らも例外ではなかった。Pの組織中,A18は被告人に次ぐ会長代行の地位にあり,その下に本部長としてA5,事務局長としてA19などの幹部構成員がいた。本部長であるA5は,Pの中でもA18に次ぐ地位にあり,被告人との関係も長く,被告人から信頼されていた。A5の配下には,A6,A7,A8,A17らがおり,A17は被告人の運転手兼ボディーガードという役割も有していた。 被告人とS警察署とのト 地位にあり,被告人との関係も長く,被告人から信頼されていた。A5の配下には,A6,A7,A8,A17らがおり,A17は被告人の運転手兼ボディーガードという役割も有していた。 被告人とS警察署とのトラブル( )2平成16年(以下,特に断らない限り年号は平成16年とする,D4。)の貸金業の規制等に関する法律違反事件に関連して,その従業員であるA1- 42 - A25A26にも警察の捜査が及んだ2月5日S警察署以下S,,。 ,(「署」という)のC1警察官は,被告人に対し,A19ら3人の出頭を要請。 した。被告人は,C1に対し,A19は明日の午前9時に出頭させるが,仮出獄中のA25と女性であるA26は逮捕せずに任意で取り調べて欲しいと要請した。同月6日午前8時55分ころ,被告人は,A19を伴ってS署に赴き,A19を出頭させたが,その際,被告人は再度C1に対し,A25とA26については在宅で済ませて欲しい旨丁寧な口調で要請し,深く頭を下。 ,,,げたこれに対しC1は自分ではどうにもならないと答えたが被告人は上司に伝えて欲しいと頼むと,C1は了承し,結果は後ほど連絡する旨被告人に伝えた。C1はこの話を上司に伝えたが,この時点では既にA25及びA26に対する逮捕状が発付されており,逮捕の方針が覆ることはなかったため,C1は,同日午前11時ころ,被告人の携帯電話機に出たA17に,捜査本部の方針が,A25とA26が出頭しなければ指名手配するというものである旨伝え,電話を切った。被告人は,同日午後6時ころ,テレビのニュースでA19が逮捕されるシーン及びA26の部屋が映っているのを見て怒り,C1に電話をかけ「警察は義理も人情もないのか。A26の自宅に,勝手に入って,どういうことか。A19には女房も子供もいるのに ースでA19が逮捕されるシーン及びA26の部屋が映っているのを見て怒り,C1に電話をかけ「警察は義理も人情もないのか。A26の自宅に,勝手に入って,どういうことか。A19には女房も子供もいるのにテレビで映して,どういうつもりか。約束が違う」などと,C1が受け答え出来な。 いほど大きな声で怒鳴り,一方的に電話を切った。 T広島での状況(3)2月6日か8日の夕方ころ(いずれの日であるかについては争いがある,被告人,A5,A17らは,T広島A棟(以下「T」という)のサ。)。 ウナに行った。被告人は,そこでロッカーを蹴るなどして荒れており,サウナ内でもS署に対する怒りを表していた。 ( )犯行状況 2月8日午後11時前ころA6はA5から呼ばれてE7F9店以下E,(「- 43 -7」という)に行くと,A5から,サイレンサーの付くやつを持ってくる。 よう言われたので,サイレンサー付きのけん銃を取りに行った。途中,弾丸はいくついるかA5に聞いたところ,A5は2個でいいと答えたので,弾丸。 ,,,は2個持っていったA6は同日午後11時30分ころE7前に戻るとA5,A8及びA17がおり,合流した。A6が運転する自動車にA5(助手席の後部座席,A8(運転席の後部座席,A17(助手席)が乗って,))。 ,,「。 S署に向かったA5はA6らに対し今からS署にかち込みに行けえ,,。」。 最近うちの者が捕まっとるけえ行かないけんじゃろうなどと言った2月9日午前零時ころ,A5は,S署の正面玄関前の道路を徐行しながら通,,。 ,過する際サイレンサー付きのけん銃を使って本件犯行を行った発砲後A5らは逃走し,A5,A8,A17は,区Uの飲み屋街で降りた。そmの際,A5はA8,A17に対し,本件犯 通,,。 ,過する際サイレンサー付きのけん銃を使って本件犯行を行った発砲後A5らは逃走し,A5,A8,A17は,区Uの飲み屋街で降りた。そmの際,A5はA8,A17に対し,本件犯行のことは被告人には言わないよう口止めをした。 (5)犯行後の状況2月9日,A17は,被告人方マンションの方まで被告人を迎えに行った際,被告人に対し「おやじさん,本部長から口止めされておるんで,本部,長から聞くまでは知らん顔をしとって下さい。本部長,ゆうべ,S署にかち込んだんですよ」と報告した。すると,被告人は,自宅の部屋に戻り,テ。 レビを付けてS署のニュースが流れていないかを確認したが,テレビにも新聞にも報道されていなかった。被告人は,A17に対し「新聞でもフォー,カスでも言ってやれや」などと言った(この発言の趣旨については争いが。 ある。被告人は,その後,前日面談の約束を取り付けていた元警察官の。)C2某や現職のC3警察官と会い,更には県会議員らにも連絡を取るなどして,A26のことを善処してくれるよう要望した。 その間,A5からA17が預かる被告人の携帯電話機に電話がかかり,A17はそれを被告人に取り次いだが,A5は,発砲事件のことについては触- 44 -れずに電話を切った。その日の夜,被告人,A17,A5とPのメンバーらで,V温泉のサウナに行ったところ,サウナ内のテレビでS署発砲事件のニュースが流れたので,被告人は,穏やかな口調で,誰がやったのかと言ったが,A5は何も言わず,被告人もそれ以上言及しなかった。その後の深夜,,,食事をしてからフィリピンクラブに行ったところA5が被告人の横に来て初めて本件発砲事件のことを話した。 A17証言の信用性(1)A17は,被告人とS署の経緯について概ね前提となる事実と整合する 食事をしてからフィリピンクラブに行ったところA5が被告人の横に来て初めて本件発砲事件のことを話した。 A17証言の信用性(1)A17は,被告人とS署の経緯について概ね前提となる事実と整合する証言をした上,2月8日,Tのサウナ室内において,被告人が「ああ,だ,れかS署の玄関に二,三発かち込んでこんかのう」などと独り言のように。 (,「」言った旨証言している以下この被告人の発言を被告人のかち込み発言という。 。)(2)検討アA17は,捜査段階から被告人のかち込み発言があったことについては一貫して供述しているが,この被告人発言が初めて顕れたのは,A17の警察官に対する平成16年10月24日付供述調書【広島甲160(以】下「第一供述調書」という)であるところ,その供述内容をみると,A。 17は,本件犯行への自己の関与は供述せず,それどころか,実行犯として,本件と無関係のA7の名前を挙げ,同人を引き込む供述をしている。 また,同調書において,A17は,Tに行ったメンバーについて,自己のほか,被告人,A5,A6,A8,A7が行き,A27もいたかもしれないなどと供述しているが,検察官に対する平成17年2月14日付供述調書【広島甲166】においては,確実に覚えているのは被告人とA5で,おそらく一緒にいた記憶があるのはA6,A8,A27であり,A7が一緒にいたかどうかは自信がない旨供述し,その後の警察官に対する同月23日付供述調書【広島甲171】においては,A6は入浴や飲食の場には- 45 -いなかったと供述するに至っているところ,Tに同行した者についての供述は大きく変遷しており,第一供述調書においては,同行していないA6の名前も挙げていたのであって,第一供述調書は,特に理由もないのに,虚実入り交じった内容となって ところ,Tに同行した者についての供述は大きく変遷しており,第一供述調書においては,同行していないA6の名前も挙げていたのであって,第一供述調書は,特に理由もないのに,虚実入り交じった内容となっており,A17の不誠実な供述態度の点も含めて,その正確性には大いに疑問があると言わざるを得ない。そして,この第一供述調書が作成された前後の状況をみると,A17は,別件の傷害事件で逮捕,勾留されている平成16年9月から,本件の取調べを担当していたC4警察官に対し,精神病院に入院している父や,妻に対する心配を再三口にし,同年11月ころからは保釈を考えている旨発言し出し(結局同年12月に保釈されている,他方,捜査機関は,被告人を始めと。)するP構成員の本件への関与を疑っており,被告人らを検挙する捜査の端緒を得たい状況があったのであるが,このようなA17と捜査機関の利害状況や思惑からすると,A17が,自己の関与は否定しつつ,自己の身柄又は本件に関する処遇についての取扱いを有利に進めるため,被告人の関与の証拠を欲しがる捜査機関の意に添うよう,迎合的な供述をしていた可能性は否定できない。 イまた,A17は,第一供述調書において,犯行後,A5から「親父に,は絶対言うなよ」と言われた旨供述しており,その後の警察官に対する。 平成17年2月18日付供述調書【広島甲169】においても同旨の供述をしていて,被告人の指示を否定する方向の話ではあるが,このような表現でもって一貫して述べてきたはずなのにA17は当公判廷では親,,,「父にはわしから言うけえ,わしが言うまで親父には言うなよ」と,その。 意味合いを,被告人の関与を認める方向である検察官側の主張に沿うようにして,かつ,より具体的な発言として,これを聞いたかのごとく証言内容を変容させているの しが言うまで親父には言うなよ」と,その。 意味合いを,被告人の関与を認める方向である検察官側の主張に沿うようにして,かつ,より具体的な発言として,これを聞いたかのごとく証言内容を変容させているのであり,当公判廷においても,やはり捜査機関の意図に沿うように証言しているのではないかとの疑問なしとしない。 - 46 -(3)以上の事情に照らすと,本件は,警察署に対する発砲という重大事件でもあり,A17は,本件についての供述を開始した当初から,自己の刑責の軽減を図りたく,そのために他者を巻き込むことも辞さない態度が顕著であって,被告人を主犯格として捕らえたい捜査機関に迎合して,被告人が関与したことについては推測を交えて誇張して供述した疑いは否定できず,当該供述が関係証拠と整合するなどといった裏付けでもあれば格別,A17証言全体についてはさほど高い信用性を認めることはできない。 A5証言の信用性A5は,当公判廷において,Tのサウナ内で前記被告人のかち込み発言があった旨A17と同旨の証言をし,かつこの被告人のかち込み発言の後,被告人から本件犯行に関する直接の指示を受けた旨証言している。 (1)A5証言の要旨2月8日,A8とA17ら五,六人でTのサウナに行った。その日は会ったときから被告人は機嫌が悪く,S署の件で愚痴を言っていた。サウナでも被告人は,床を蹴ったりするなどして,S署の件で怒っていた。被告人は,サウナの中で,独り言のように「S署に二,三発かち込んでくるやつ誰か,おらんかのう」と言った。二,三発かち込むというのはけん銃を撃ち込む。 意味だと理解した。A5は,被告人のその言葉を,自分に対して,行けとい。 ,。 ,うことだと思ったそのときA17も聞こえる距離にいた風呂から出てロッカールームで,A17に「行けいうことかの 意味だと理解した。A5は,被告人のその言葉を,自分に対して,行けとい。 ,。 ,うことだと思ったそのときA17も聞こえる距離にいた風呂から出てロッカールームで,A17に「行けいうことかのう」と聞くと,A17,。 は「そうでしょう」と答えた。サウナの中ではないが,Tの中で,被告人。 から「一番ボロいけん銃を使え「車は盗難車使え」などと言われた。 ,。」,。 盗難車の指示はあったものの,盗難車の指示には何も返答せず,犯行に盗難車も使わず,どの車を使ったかも被告人には言っていない。このときは周りには誰もおらず,被告人とA5だけの会話であった。A5は「今晩行く」,。 旨被告人に伝えると,被告人はうなずいた。A8には,Tを出てから銃撃の- 47 -話をした。サウナに行った後,被告人らと食事に行き,そこで被告人と発砲のことについて話をした記憶はあるが,言いたくない。 けん銃は,A6に対し「サイレンサーが付く一番ボロいけん銃を持って,こい」と指示し,E7の前に持ってこさせた。サイレンサーの指示は自分。 が思いついたものである。E7前にはA8とA17もいた。A17は当初は行く予定ではなかったが,連れて行くよう請われ,風呂で相談していたこともあって,一緒に行くことになった。 その後,A6,A8,A17と共にA6の運転する車でS署に向かった。 S署に行くことについての説明はしていると思うが,何と言ったかは覚えておらず,被告人との関係のことで何か言ったかについても覚えていない。S署にはA5が1発発砲した。1発にとどめたのは,別にA5自身はS署に恨みはなかったし,人に当たるといけないと思ったからである。 撃った後,A17に対し,A5が自分で言うので,被告人には電話で報告しなくてもよい旨伝えた。電話すると携帯電話の発信履歴が残り,そこから足 みはなかったし,人に当たるといけないと思ったからである。 撃った後,A17に対し,A5が自分で言うので,被告人には電話で報告しなくてもよい旨伝えた。電話すると携帯電話の発信履歴が残り,そこから足がつくといけないので,そのように言った。発砲が被告人の指示だとわからないようにするためもあるし,自分で言うからという趣旨もある。被告人,。 ,に報告したら喜んでもらえるという認識はあった撃ったことについては翌日飲み屋かどこかで被告人に報告した。すぐに報告しなかった理由は,撃ち込まれたとなったら自分がやったと被告人が分かってくれると思ったし,ニュース速報でも出るかなと思っていたからである。人はたくさんいたが,。 ,。 被告人が隣にいるときにこっそり告げた被告人は知っている様子だった,。 そのときに被告人から何を言われたか褒められたかどうかは覚えていない報酬はあったかもしれないが,覚えていない。報酬を要求した記憶はない。 (2)検討先に認定した被告人とS署との一連の経緯に照らすと,被告人は,S署の警察官に対し,A19を出頭させる代わりに,A25とA26は在宅で処理- 48 -してほしいと申し入れ,自身はこの申入れのとおり,丁重かつ真摯に対応したにもかかわらず,意に反してA25らが逮捕され,その上,捜索の様子がテレビで放送されるなどしたため,S署に対して激怒したものであって,被告人にはS署に対する報復として配下のA5に本件犯行を指示する動機があること,Tのサウナでの被告人のかち込み発言は,A5証言とA17証言が一致して述べていることであり,前記経緯や犯行後の被告人の態度や行動と照らしても被告人の指示による犯行とみる余地がある。 しかしながら,被告人のかち込み発言があったとされる本件の前日,被告人は,元職を含む警察関係者らと会ってA26の 経緯や犯行後の被告人の態度や行動と照らしても被告人の指示による犯行とみる余地がある。 しかしながら,被告人のかち込み発言があったとされる本件の前日,被告人は,元職を含む警察関係者らと会ってA26の善処方を要望することを予定しており,同時期にこれと明らかに矛盾抵触するようなS署への発砲事件を被告人が企てていたとみることには疑問がある。そして,A5証言にある被告人との共謀の内容と犯行態様,犯行後のA5の行動等を子細に検討すると,以下のような疑問点がある。 アまず,被告人がそのかち込み発言の内容を本気に実行させようと思って,,いたならば警察署に対する発砲事件を起こすということ自体の重大性や差し当たっては部下の早期の身柄解放に向けての画策もあろうから,それに対する影響も考慮するなどより慎重に検討して,配下の者に対しては少なくともその時期や方法,実行者の選定などを具体的に指示して被告人の意向を伝えて共謀を遂げるものと考えられるところ,サウナ内で独り言のようにしてこれを発案そして指示したというものであり,その後のA5だけに対して明確に指示したとして,A5が述べるその内容をみても,A5は,被告人から「ぼろいけん銃を使え「盗難車を使え」と言われた,。」,。 旨証言し,かつ具体的な指示内容はこれに尽きるものであるところ,A6は,ぼろいけん銃の指示があったことについては捜査,公判を通じて一切,,述べておらずサイレンサーの付くけん銃を選んで持ってきたのみであり盗難車も犯行に使用されておらず,結局被告人の前記具体的指示は何ら実- 49 -現されていないのであり,前記A5に対する具体的な指示があったことを裏付けるに足りる証拠はない。そして,それ以外に被告人からA5に対して本件に関する命令等の話があったかについてはA5はこれを明らかにしよう いないのであり,前記A5に対する具体的な指示があったことを裏付けるに足りる証拠はない。そして,それ以外に被告人からA5に対して本件に関する命令等の話があったかについてはA5はこれを明らかにしようとはしていないことにも照らすと,被告人からA5に対する前記の明。 ,示的な指示によって本件犯行の共謀があったとするには疑問があるまた被告人のかち込み発言にある,二,三発を撃ち込めというのも本件犯行の指示内容(共謀の内容)であったとすると,A5は1発に止めており,これまた,被告人からの指示を無視したもので,指示内容(共謀の内容)と犯行態様が一致していない。そうなると,被告人のかち込み発言があったとしても,その発言場所や状況からは,それは一時の感情に任せた被告人の怒りの発言に止まるともいえることからすると,これらの事実でもって被告人からの指示,命令による共謀が成立したとまではいい難い。 イ次に,仮に被告人の指示があったのであれば,実行したことについて早急に被告人に報告するのが自然であり,現に,当裁判所が被告人の指示を認定した判示第2の犯行については,前記のとおり,被告人の指示を受け,,,たA5は犯行後すぐに被告人に報告した形跡があるが本件ではA5は被告人に発砲を実行したことを報告する機会が2月9日の昼過ぎに被告人と携帯電話で話した際と,同日の夕方に,被告人らとV温泉に行った際の少なくとも2度あり,しかもV温泉では,テレビでS署発砲のニュースが流れ,被告人が「おお,誰がやったんかな」などとA5に話を向けたに。 もかかわらず,これらの機会に報告せず,同日深夜から翌日にかけて,酒の入った席上で初めて報告しているところ,このような状況からは,A5は,被告人に発砲事件について報告することを逡巡していたのではないかとの疑いを抱かせる。そもそも,A ,同日深夜から翌日にかけて,酒の入った席上で初めて報告しているところ,このような状況からは,A5は,被告人に発砲事件について報告することを逡巡していたのではないかとの疑いを抱かせる。そもそも,A5の前で被告人が「おお,誰がやったんかな」と発言すること自体,被告人が指示したこととは整合しない。 。 加えて,A5は,犯行後,A6らに対し,本件について被告人に言わない- 50 -よう口止めをしているのであるが,第三者に対する口外を禁止するならばともかく,被告人にまで報告しないよう指示したことは極めて不自然な話であって,A5自身が,被告人に報告するタイミングを図っていたのではないかとの疑いを拭い去ることができない。この口止めの目的についてA5は,携帯電話の履歴が残ることを懸念したと言うが,そうだとしても,当時被告人の運転手(付き人)をしていたA17から直接被告人に報告させることは容易であり,そうすれば迅速に報告することにもなるのであるから,あえてA5自身が報告する必要があるとはいえず,あえて他者を通じた報告を禁じた理由は明らかでない。また,A5は「自分で言うけ,言わんでいい」などと言ったと証言し,その口止めの程度は必ずしも強く。 ないように思われるが,このA5の口止めについて,A17は捜査段階において,A5が「親父には絶対言うなよ」と言った供述し(A17は,。 当公判廷においてはA5の公判証言と同様の証言をしているが,前述のと,,,おりこのA17証言は捜査機関に迎合してなされている可能性がありこれをそのまま採用することはできないA8は当公判廷において親。),,「父に聞かれても絶対知らんと言えよ」と言われた旨証言しており,むし。 ろ口止めの程度は非常に強いものであったと考えられる。A5のこのような言動をみると,被告人の指示が 判廷において親。),,「父に聞かれても絶対知らんと言えよ」と言われた旨証言しており,むし。 ろ口止めの程度は非常に強いものであったと考えられる。A5のこのような言動をみると,被告人の指示があったこととは整合せず,むしろ,A5は,被告人の意向を忖度して本件犯行を独断で実行したものの,本件犯行の明確な指示を得たわけではないため,実行自体またはそのやり方等で,被告人の満足を得られない可能性を排斥できなかったが故に,被告人に対する報告のタイミングを自ら図っていたとの弁護人の主張に整合する。 この疑問点について,A5は,当公判廷において,早く報告しようと思わなかったかという問いには「言いたくない」と返答し,明確に指示,。 かどうか確認しないまま実行したことで,報告することが不安だったのではないかとの問いに対しては,しばらく沈黙した後,これを否定したが,- 51 -何ら合理的な理由を述べておらず,釈然としない証言態度であって,前記疑問点は払拭されていない。 ウさらに,A5は,判示第2及び第3の犯行については,自己の公判においても当初から被告人の関与を認めていたが,本件についてのみ被告人の関与を否認し,自己の公判の被告人質問の段階になって初めて被告人の関与を認めているところ,このような供述変遷の理由について合理的な説明をせず,その供述変遷の時期や,本件が警察署への発砲という悪質重大事案であり,A5が実行犯の中で主導的な立場であることも考えると,被告人を首謀者として引き込んで,自己の刑責を軽減させようとする意図があったのではないか,それでなくても,要は,被告人を中心とする組織への警察からの挑戦とみて,A5らとしても,その組織の仕事として,被告人の意を酌んで行動していたつもりであろうから,明らかな共謀があったかはさておき,結局は被告人も も,要は,被告人を中心とする組織への警察からの挑戦とみて,A5らとしても,その組織の仕事として,被告人の意を酌んで行動していたつもりであろうから,明らかな共謀があったかはさておき,結局は被告人もこれについて責任を負うべきものとの考えからそのような供述をしているとの疑いを抱かざるを得ない。加えて,A5は,本件に関する尋問に対しては「言いたくない「覚えていない」,。」,。 などとする部分が多いが,その理由は明らかにせず,証言を拒絶する部分にも一貫性はなく,投げやりな証言態度と言わざるを得ず,この点においてもA5証言の信用性を肯定することはできない。 エこのように,A5証言にはいくつかの疑問点があり,全体としてあいまいで釈然としない供述態度であることからすると,A5証言を信用することはできない。 なお,A5が発砲という手段を選択した点については,被告人が,S署に恥をかかせたいとの意向を表明していたという限度では証拠上争いがないところ,その具体化として,治安維持の象徴である警察署にけん銃を撃ち込むというのは,恥をかかせるという意味では一般的かつ効果的な手段であり,かつA5はその手段を採り得るのであるから,A5が独断で発砲- 52 -の手段を選択する可能性は十分に考えられ,被告人の指示なくしては思いつかない手段であるとは言えず,この点をもってA5証言の信用性を肯定するには足りない。また,A5は,平成15年12月に,被告人に持参すべき約1300万円の金銭を,自己のバカラ賭博で使い込み,その責任を,,取って指を詰めているが被告人に対するこのような失態を挽回するため被告人の意を酌んで本件犯行を決意し,実行したという可能性も否定できないところであって,A5が被告人の指示なくして本件犯行を行う動機がないとは言えない。さらに,被告人が,本 ような失態を挽回するため被告人の意を酌んで本件犯行を決意し,実行したという可能性も否定できないところであって,A5が被告人の指示なくして本件犯行を行う動機がないとは言えない。さらに,被告人が,本件犯行後,A5らをとがめなかったことについては,被告人としては,任意捜査で済ますよう筋を通して頼んだはずなのに警察が自分の意向を無視し部下を逮捕したことでそのプライドが強く傷つけられ,少なからず警察に対する何らかの仕返しを望んでいたものであったところ,配下の者がその気持ちを察して警察の威信をなくすような大胆な行動に出たことを知って満足した気持ちの表れと見ることもできるのであり,事前の指示(共謀)までがなかったことと矛盾するとは言えない。 結論 以上検討したところによれば,A5証言には被告人の具体的な指示によって犯行に及んだとみるには了解し難いところが多々あり,その点の信用性に疑問があり,A5証言に符合するA17証言又は証拠上認められる間接事実を総合したとしても,被告人がA5に指示をして,実行犯らと順次共謀を遂げたとの事実までを認めるに足りず,被告人がA5との間で本件犯行を共謀したことについては合理的な疑いが残ると言うべきである。 よって,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをする。 (量刑の理由) 本件各事案の概要- 53 -本件は,被告人が,( )商売敵のテレホンクラブの営業妨害を企てた者の依頼 を引き受け,実行犯を指示するなどして共犯者らと共謀の上,未必の殺意をもって,営業中のテレホンクラブ2店舗にそれぞれ火炎びんを投げ込んで放火し,一方の店舗内にいた店員ら9名のうち店員1名に傷害を負わせ,他方の店舗内にいた店員ら7名のうち客4名を死亡させるとともに,店員2名 ,営業中のテレホンクラブ2店舗にそれぞれ火炎びんを投げ込んで放火し,一方の店舗内にいた店員ら9名のうち店員1名に傷害を負わせ,他方の店舗内にいた店員ら7名のうち客4名を死亡させるとともに,店員2名及び客1名に傷害を負わせたという殺人,殺人未遂,火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反,現住建造物等放火の事案(判示第1,( )配下の暴力団類似組織の構成員らと共) ,,,謀の上コンビニエンスストアに対して投石しそのドアガラス等を破損させて同店の業務を妨害した建造物損壊及び威力業務妨害の事案(判示第2,( )配) 下の暴力団類似組織の構成員らと共謀の上,営利の目的で,覚せい剤約420グラムを所持した覚せい剤取締法違反の事案(判示第3)である。 判示第1の各事実(テレホンクラブ店舗に対する放火殺人等事件)について本件各犯行は,被告人が共犯者であるA1から,商売敵となるE1の店舗に対する営業妨害を依頼され,配下の者に命じてその店舗に汚物をまかせたが,功を奏せず,A1から報酬の支払を拒まれ,再度の営業妨害を促されたため,確実に営業停止させて報酬を得るための営業妨害の方法として,火炎びんを店内に投げむという方法を提案してA1と共謀を遂げ,実行犯にその旨指示して実行させ㨯たというものであるが,犯罪の見返りに高額の報酬を得ようと考え,その目的を達成するためであれば他人の生命や身体,財産に対して危険性の高い手段を選ぶ,,ことも厭わない被告人の自己中心的で身勝手な態度は明らかでありかかる動機経緯に酌むべき点は皆無である。犯行態様をみるに,被告人は火炎びん投てきの方法を提案して実行犯らに指示し,実行犯らは火炎びんの実験や襲撃対象となる店舗を下見するなど入念に準備し,実行の機会を窺いながら,被告人に対し状況を報告し,未明に,営業中のテレホ は火炎びん投てきの方法を提案して実行犯らに指示し,実行犯らは火炎びんの実験や襲撃対象となる店舗を下見するなど入念に準備し,実行の機会を窺いながら,被告人に対し状況を報告し,未明に,営業中のテレホンクラブ2店舗に対し立て続けに,一升びんにガソリンを入れて作った火炎びんを投げ入れるという凶悪極まりないものである。本件犯行により2店舗を焼損させ,F2店において4名もの人命が失われ,- 54 -F1店も含めると4名の負傷者を出し,この負傷者らも,店員の必死の避難活動によって命からがら逃げ延びたにすぎず,生じた結果は深刻かつ重大である。被告人は,このような悲惨な結果を知りながらも,犯行後は,営業妨害の報酬残額を受け取ったばかりでなく,発覚を恐れるA1に対し,実行犯の負傷等の対処のための費用等ということで,国税対策の報酬名目に実質上高額な追加報酬をさらに請求するなど,犯行後の情状も悪い。死亡した被害者4名のうち2名は,狭い通路で折り重なるように倒れ,1名は通路で,1名は個室の中で,いずれも一酸化炭素中毒により死亡しているところ,家族のため夜遅くまで働き,ホテル代わりにテレホンクラブ店舗を利用するなどする中,突然の非常事態に遭遇し必死に,,逃げようとしたが狭い店内で黒煙に巻かれるなどして方向感覚を失って混乱し自己の置かれた状況を理解できないままその生命を奪われてしまったのであって,何の落ち度もない被害者らの感じたであろう恐怖感,絶望感,無力感は想像を絶するものがある。理不尽な行為により突然夫や息子,兄弟を失った遺族らの悲嘆や喪失感は誠に深く,本件犯行から8年以上経過した現在においても遺族らの処罰感情は峻烈である。 判示第2の事実(コンビニ店舗に対する建造物損壊事件)について本件犯行は,被告人が,自己の妻子が居住するマンションの大家である 行から8年以上経過した現在においても遺族らの処罰感情は峻烈である。 判示第2の事実(コンビニ店舗に対する建造物損壊事件)について本件犯行は,被告人が,自己の妻子が居住するマンションの大家である被害者の妻から謂われのない仕打ちを受けたと感じて激怒して行ったとはいえ,本来のマンションの賃借人から被害者に無断で転借していた自分の側の非を顧みることなく,暴力的な報復,嫌がらせをするなど許されるはずはないのであって,犯行動機に酌むべき点はなく,犯行態様も被害者の経営する店舗を狙って投石するという粗暴なもので,陰湿かつ卑劣であり,本件犯行により被害者が被った物的・営業的損害も大きく,被害者の処罰感情は強い。 判示第3の事実(営利目的の覚せい剤の共同所持)について本件犯行は,被告人が,配下の者らとともに密売目的で覚せい剤を所持したものであるところ,被告人ないし被告人を頂点とする暴力団類似の組織の収入源と- 55 -するものであって,その利欲的な動機に酌むべき点はない上,その所持量は約420グラムと大量で,組織的かつ大規模な密売目的の所持であることは明らかであって,継続的,常習的犯行の一つであり,覚せい剤の害悪が広く社会に拡散する蓋然性は相当高く,その犯情は悪質である。 死刑選択の適否これらの各情状事実,とりわけ,判示第1の各犯行が,営業妨害の報酬を得る目的で,人の現在する建物に対する,火炎びんという危険極まりない凶器を用いた放火行為により,2店舗を焼損させ,何の落ち度もない4名を殺害し,4名の負傷者を出すという悲惨な結果を生ぜしめた衝撃的な事件であること,被告人は犯行手段の発案者であり,共犯者で本件犯行の依頼人であるA1と同様,本件犯行の首謀者と評価できるし,何よりも,突然命を奪われた被害者らの無念さや,遺族の処罰感情の峻烈さに思い 件であること,被告人は犯行手段の発案者であり,共犯者で本件犯行の依頼人であるA1と同様,本件犯行の首謀者と評価できるし,何よりも,突然命を奪われた被害者らの無念さや,遺族の処罰感情の峻烈さに思いを致すと,被告人の罪責は誠に重大であること,暴力団類似の組織を結成し,判示第2,第3の犯行に見られるように,反社会的な行為に及んでいること,本件各犯行について共謀を否認して責任逃れの態度も見受けられることなどに照らすと,本件が,有期懲役刑をもって処断することが相当な事案であるとは到底言えず,過去の事例に照らしてみても,被告人に対し死刑を求刑する検察官の意見にも相当な理由があることは否定できない。 しかしながら,判示第1の各犯行は,もともとは営業妨害という目的を達成するために汚物撒きとして行われたものの,依頼者であるA1がその結果に納得しなかったためエスカレートしたものであり,被告人は,火炎びんを投てきすること自体は認識していたものの,いかなる火炎びんを用いるか,どれほどの威力を有するものかなどの具体的な犯行方法について計画し,実行犯に指示して通謀していたことまでは証拠上認めることはできず,特に,前記のとおり,殺人については,未必的な殺意にとどまるものであり,殺害を積極的に意欲することはもとよりなく,確定的に認識していたものでもないこと,死傷者が増大した原因としては,各被害店舗の防火構造上の問題に起因する面も否定できないこと,被告人- 56 -は,これらの犯行については否認しているものの,自身の関与により多数の死傷者を出してしまったことについては終始自己の道義的な責任を認めて反省し,被害者らに対し謝罪の意を表明しているほか,自宅を売却して1000万円を準備して,遺族に対し被害弁償の申し出をし,そのうち死者2名の遺族に対しそれぞれ500万円の被 己の道義的な責任を認めて反省し,被害者らに対し謝罪の意を表明しているほか,自宅を売却して1000万円を準備して,遺族に対し被害弁償の申し出をし,そのうち死者2名の遺族に対しそれぞれ500万円の被害弁償をしていること,判示第1の各犯行の実行犯らや,依頼人である共犯者A1はいずれも無期懲役刑に処せられており,これら共犯者に対する科刑との均衡,被告人のこれまでの前科の内容,被告人やその関係者の複数が,逮捕,起訴されたことで被告人という中心軸を失った前記犯罪的な組織集団が瓦解の状態になったこと等の事情が認められる。 以上の事情を考慮した上で,死刑が人命を永遠に奪い去る冷厳な極刑であり,真にやむを得ない場合にのみ適用すべき究極の刑罰であることにかんがみると,本件が被告人に検察官が求めるような死刑を科すべき事案であると評価することはできず,被告人に対しては,亡くなった被害者の冥福を祈らせつつその生涯をもって自己の罪を償わせることが相当であると判断して,被告人を無期懲役に処することとした。 (求刑死刑)(検察官藤井理,大極俊紀各出席)平成20年12月26日神戸地方裁判所第4刑事部岡田信裁判長裁判官- 57 -森岡孝介裁判官荒金慎哉裁判官

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