主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人宇佐美明夫、同宇佐美貴史、同森戸一男の上告理由について一原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 被上告人は、昭和六〇年二月一五日、大阪府公文書公開等条例(昭和五九年大阪府条例第二号。以下「本件条例」という。)七条一項に基づき、本件条例の実施機関である上告人に対し、昭和五九年一二月に支出した大阪府水道部の会議接待費及び懇談会費についての公文書の公開(閲覧及び写しの交付)を請求した。 ところで、本件条例八条には、同条各号所定の情報が記録されている公文書は公開しないことができる旨が規定され、右情報として、法人等に関する情報や事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(一号)、府の機関等が行う企画、調整等に関する情報であって、公にすることにより、当該又は同種の事務を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれのあるもの(四号)、府の機関等が行う交渉、渉外、争訟等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの(五号)が、それぞれ規定されている。 そして、上告人は、昭和六〇年三月一日、右請求に対応する公文書としては、支出伝票及びこれに添付された債権者請求書と経費支出伺(以下これらを「本件文書」という。)がこれに当たるとした上、そこに記録されている情報が右八条一号、四号及び五号に該当するとして、これを公開しない旨の決定(以下「本件処分」と- 1 -いう。)をした 下これらを「本件文書」という。)がこれに当たるとした上、そこに記録されている情報が右八条一号、四号及び五号に該当するとして、これを公開しない旨の決定(以下「本件処分」と- 1 -いう。)をした。 2 本件文書は、昭和五九年一二月中に府水道部が事務ないし事業の遂行のため外部の飲食店を利用して行った会議、懇談会(以下「懇談会等」という。)についての債権者請求書と経費支出伺とが添付された支出伝票であるが、これらから知ることのできる懇談会等の内容としては、開催日、会合の概括的な開催目的、その出席者数及び府側と相手方との人数内訳、懇談会等が行われた飲食店の名称等、飲食費用の金額及びその明細並びに右費用の請求及び支払の年月日であり、ときには右開催目的の欄に出席者の氏名が記録される場合があるものの、一般的には、懇談会等の出席者の住所、氏名は記録されず、また、懇談会等における具体的な会談の内容等は本件文書に記録されていない。 二そこで、まず、本件文書に記録されている情報が本件条例八条一号に該当するか否かを検討すると、原審は、前記の事実関係の下において、本件文書には飲食店を経営する業者の営業上の秘密、ノウハウなど同業者との対抗関係上特に秘匿を要する情報が記録されているわけではなく、また、府水道部による利用の事実が公開されたとしても、特に右業者の社会的評価が低下するなどの不利益を被るとは認め難いので、本件文書の公開により当該業者の競争上の地位その他正当な利益を害するとは認められないとしてこれを否定しており、この原審の判断は、正当として是認することができる。 三次に、本件文書に記録されている情報が本件条例八条四号、五号に該当するか否かを検討する。 1 同条四号の趣旨は、府作成の「大阪府公文書公開等条例の解釈運用基準」等によれば、府の機関が意思 。 三次に、本件文書に記録されている情報が本件条例八条四号、五号に該当するか否かを検討する。 1 同条四号の趣旨は、府作成の「大阪府公文書公開等条例の解釈運用基準」等によれば、府の機関が意思形成過程において行う企画、調整等の事務(以下「企画調整等事務」という。)に関する情報には、内部で十分な検討、協議がされていないものや、精度の点検がされていないものが含まれている場合があり、これが公開- 2 -されることにより、府民に誤解や混乱を与えたり、行政機関内部の自由率直な意見交換が妨げられたりするおそれがあるので、公開することにより当該又は同種の事務を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれのあるものは公開しないことができるとしたものと解される。 同条五号の趣旨は、右解釈運用基準等によれば、府の機関が関係者との間で行う交渉、渉外、争訟等の事務(以下「交渉等事務」という。)に関する情報には、合意の成立や紛争の解決に向けて事前折衝等をする過程で出された提案や、行政機関内部で対応策を検討する過程で出された種々の意見等が含まれている場合があり、これが公開されることにより、今後、自由な発言、意見交換等が妨げられ、ひいては最終的な合意の成立あるいは紛争の解決が困難になるおそれがあるので、公開することにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものは公開しないことができるとしたものと解される。 2 ところで、本件文書に記録されている情報は、府水道部の懇談会等に関するものであるが、このような懇談会等の形式による事務は、前記のとおり、単なる儀礼的なものではなく、すべて府水道部の事務ないし事業の遂行のためにされたものであって、その内容いかんにより、四号の企画調整等 ものであるが、このような懇談会等の形式による事務は、前記のとおり、単なる儀礼的なものではなく、すべて府水道部の事務ないし事業の遂行のためにされたものであって、その内容いかんにより、四号の企画調整等事務ないし五号の交渉等事務に該当する可能性があることは十分考えられる。しかし、右情報は、前記のとおり、懇談会等の開催場所、開催日、人数等のいわば外形的事実に関するものであり、しかも、そこには懇談の相手方の氏名は含まれていないのがほとんどである。このような会合の外形的事実に関する情報からは、通常、当該懇談会等の個別、具体的な開催目的や、そこで話し合われた事項等の内容が明らかになるものではなく、この情報が公開されることにより、直ちに、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれが- 3 -あるとは断じ難い。 3 もっとも、本件文書において、このように懇談会等に関する外形的事実しか記録されていなくても、一般人が通常入手し得る新聞等からの他の関連情報と照合することにより、懇談の相手方や懇談の具体的な目的、内容が分かる場合もあると考えられ、また、前記のとおり、本件文書の開催目的欄等に懇談会等の相手方が記録されているものも含まれている。そして、このような懇談会等の中には、(1)事業の施行のために必要な事項についての関係者との内密の協議を目的として行われたもの(例えば、水道事業のための買収予定地の個々の地権者等に対する事前の意向打診、個別折衝等を目的とする会合)と、(2)それ以外の事務を目的として行われたもの(例えば、府水道部内部や国等の関係行政庁との単純な事務打合せのための会合)とがあり得るであろう。 そのように分けて考えた場合、(1)の懇談会等に関する本件文書を公開し、その記録 て行われたもの(例えば、府水道部内部や国等の関係行政庁との単純な事務打合せのための会合)とがあり得るであろう。 そのように分けて考えた場合、(1)の懇談会等に関する本件文書を公開し、その記録内容等から懇談会等の相手方等が明らかになると、相手方において、不快、不信の念を抱き、また、会合の内容等につき様々な憶測等がされることを危惧することも考えられ、その結果、以後会合への参加を拒否したり、率直な意見表明を控えたりすることも予想される。そうであれば、このような文書を公開することにより当該又は同種の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあることは否定できないしかし、(2)の懇談会等に関する本件文書については、これを公開しても、右のような不都合な事態が生ずることは考え難い。したがって、このような文書を公開することにより当該又は同種の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるということはできない 4 そうすると、本件文書を公開することにより右のようなおそれがあるというためには、上告人の側で、当該懇談会等が企画調整等事務又は交渉等事務に当たり、- 4 -しかも、それが事業の施行のために必要な事項についての関係者との内密の協議を目的として行われたものであり、かつ、本件文書に記録された情報について、その記録内容自体から、あるいは他の関連情報と照合することにより、懇談会等の相手方等が了知される可能性があることを主張、立証する必要があるのであって、上告人において、右に示した各点についての判断を可館とする程度に具体的な事実を主張、立証しない限り、本件文書の公開による前記のようなおそれがあると断ずることはできない筋合いである。 ところが、本件において、上告人は、右の各点について具体的に主張するところがない。 張、立証しない限り、本件文書の公開による前記のようなおそれがあると断ずることはできない筋合いである。 ところが、本件において、上告人は、右の各点について具体的に主張するところがない。 5 そうであるとすれば、本件文章のすべてについて四号、五号該当性を否定した原審の認定判断は、結論において正当であるというべきである。 四以上によれば、本件処分を違法として取り消した原審の認定判断は、結局、結論において是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨はいずれも採用することができない。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官千種秀夫裁判官園部逸夫裁判官佐藤庄市郎裁判官可部恒雄裁判官大野正男- 5 -
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