- 1 -令和5年(わ)第1936号各詐欺被告事件令和6年10月17日千葉地方裁判所刑事第3部判決 主文 被告人Aを懲役2年に、被告人Bを懲役2年に処する。 未決勾留日数中、被告人Aに対しては140日を、被告人Bに対しては160日を、それぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人両名は、高齢者から健康食品購入代金の名目で現金をだまし取ろうと考え、氏名不詳者と共謀の上、令和3年9月14日頃から同月15日までの間に、場所不詳において、埼玉県所沢市ab番地所在の被害者C方に電話をかけ、同人(当時83歳)に対し、真実は、同人が健康食品を注文した事実はないのに、これがあるように装い、同人が注文済みの健康食品を2万9800円の代金引換ゆうパックで送付する旨うそを言い、同人に、同人が健康食品を注文済みであり、送付を受けた健康食品についてはその購入代金を支払う義務があると誤信させ、よって、同日午後2時59分頃、同人方において、同人から、情を知らない郵便局員が健康食品と引換えに健康食品購入代金の名目で現金2万9800円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は、被告人両名が、氏名不詳者と共謀の上、高齢者に、注文していない健康食品を送り付けて、市場価格より高額な代金を支払わせ、同人から購入代金名目で現金をだまし取ったいわゆる送り付け詐欺の事案である。 2 本件犯行について本件犯行は、高齢者に電話をかけるための名簿、拠点及び携帯電話機のほか、- 2 -詐取金が入金される口座、送り付けるための健康食品をそれぞれ入手する者、高齢者に電話をかけるかけ子、だまされた高齢者に健康食品を発送する者、入金された詐取金を管理して経費や報 機のほか、- 2 -詐取金が入金される口座、送り付けるための健康食品をそれぞれ入手する者、高齢者に電話をかけるかけ子、だまされた高齢者に健康食品を発送する者、入金された詐取金を管理して経費や報酬の支払をする者が役割を分担して関与した計画的、職業的かつ組織的な犯行である。 本件犯行は、高齢者である被害者に対し、同人が健康食品を注文済みであるかのようにうそを言い、2000円程度で仕入れた健康食品を送り付けて、仕入れた金額よりも高額である2万9800円を支払わせて現金を詐取するというものであって、その犯行態様は巧妙で卑劣である。 被告人両名は、令和3年3月頃から令和5年3月頃までの間、同種行為を繰り返していたというのであり、本件は常習的な犯行の一環であるといえる。 被害額は2万9800円であり少額とはいえず、結果を軽視することはできない。 3 被告人Aの役割及び故意等について⑴ 被告人Aは、公判廷において、高齢者に電話をかけるための拠点及び携帯電話機を提供して賃料等及び使用料を負担していたこと、送り付けるための健康食品の仕入れ費用を立て替えたこともあったこと、かけ子らから高齢者への健康食品の送り付けの成功件数等の報告を受けていたことなどを述べており、被告人Aがこれらの役割を担っていたことに争いはなく、関係証拠からも認められる。 ⑵ 本件においては、被告人A及び被告人Bとともに、従前、かけ子として活動していた証人Dが、被告人Aの役割等について、証人として公判廷で供述している。証人Dは、被告人両名と活動後、被告人両名からは独立しており、独立後に単独で本件と同様の送り付け詐欺を敢行した詐欺の事案で起訴されている。証人Dは、自身の公判において、自身に関する公訴事実を認め、次回期日において弁護人立証が行われて結審することが予定されてい 立後に単独で本件と同様の送り付け詐欺を敢行した詐欺の事案で起訴されている。証人Dは、自身の公判において、自身に関する公訴事実を認め、次回期日において弁護人立証が行われて結審することが予定されていた状況において証言していたものであって、被告人Aの役割等について虚偽の供述をすることで- 3 -自身の刑事責任が軽減されるなどの関係にはなく、そのほかに、証人Dが被告人Aに不利な供述をする理由は特段見当たらない。 証人Dの供述内容は、被告人Aや被告人B、証人Dらかけ子との間での携帯電話のメッセージのやりとり等の客観的な証拠や、口座やメッセージ等の証拠を精査して証拠間の整合性等について供述した警察官である証人Eの供述内容(証人Eの供述については、他の証拠との整合性や、供述内容の具体性、合理性等から信用できるものといえる。)とも整合しており、その供述は信用できるものであるといえる。 ⑶ 証人D及び証人Eの当公判廷における各供述、その他の関係各証拠によれば、被告人Aは、高齢者に電話をかけるための名簿、拠点及び携帯電話機のほか、詐取金が入金される口座を準備し、前記名簿の入手費用、前記拠点の賃料、前記携帯電話機の使用料、送り付けるための健康食品の仕入れ費用を負担するとともに、かけ子を勧誘し、かけ子らから送り付け詐欺の成功件数等の報告を受け、入金された詐取金を管理して報酬の分配をするなどしていたことが認められる。被告人Aの役割は、送り付け詐欺の全般に及ぶもので、本件において必要不可欠な主導的役割を担っていたものといえるのであり、その刑事責任は重い。 ⑷ 弁護人は、被告人Aは、被告人Bが先に行っていた健康食品の販売業務に加わるに際し、被告人Bが執行猶予中の身であったことから、まさか詐欺になるような営業行為はしていないだろうと考えていたが、 ⑷ 弁護人は、被告人Aは、被告人Bが先に行っていた健康食品の販売業務に加わるに際し、被告人Bが執行猶予中の身であったことから、まさか詐欺になるような営業行為はしていないだろうと考えていたが、もしかしたら詐欺的な方法なのかもしれないと疑った気持ちもあったため、未必的な故意はあったものの、確定的な故意まではなかった旨主張する。 しかし、証人Dは、被告人Aから勧誘された際、頼んでいない人に無理やり買わせるなどといった説明を受けた旨述べており、また、被告人Aが被告人Bやかけ子らから報告を受けるなどして、送り付け詐欺の全般に関わっていたことなども併せ考えると、被告人Aには本件についての確定的な故意があったも- 4 -のとみるのが相当である。 ⑸ また、被告人Aは、ほとんど利益は得ていなかった旨述べているが、証人Dらかけ子は相応の報酬を受け取っていたことが認められ、被告人らが2年もの間利益を得ることもなく本件同様の行為を続けるということは考え難いことから、被告人Aも相応の利益を得ていたものとみるのが相当である。 ⑹ 被告人Aは、平成30年に、被告人Bらと共謀して本件と同様の組織的に敢行した送り付け詐欺事案で、懲役2年6月の実刑判決を受けて服役し、令和3年2月24日に仮釈放されたが、その後すぐに本件と同種の行為を繰り返し、本件犯行に及んでおり、その意思決定に対しては厳しい非難が必要である。 4 被告人Bの役割等について⑴ 被告人Bは、高齢者に送り付けるための健康食品を仕入れ、被告人Aから紹介されたかけ子に対して電話のかけ方を教え、高齢者に健康食品を発送するなどの役割を担っており、本件犯行において重要かつ不可欠な役割を担っていたのであって、実際にかけ子らを主導する立場として犯行に及んだものといえるのであり、その刑事責任は重 高齢者に健康食品を発送するなどの役割を担っており、本件犯行において重要かつ不可欠な役割を担っていたのであって、実際にかけ子らを主導する立場として犯行に及んだものといえるのであり、その刑事責任は重い。 被告人Bは、ほとんど利益は得ていなかった旨述べているが、証人Dらかけ子は相応の報酬を受け取っていたことが認められ、被告人らが2年もの間利益を得ることもなく本件同様の行為を続けるということは考え難いことから、被告人Bも相応の利益を得ていたものとみるのが相当である。 ⑵ 被告人Bは、平成30年に、被告人Aらと共謀して本件と同様の組織的に敢行した送り付け詐欺事案で、懲役2年6月、執行猶予5年の判決を受けたが、その執行猶予期間中に、同判決確定後3年足らずで本件犯行に及んでいるのであって、その意思決定に対しては厳しい非難が必要である。 5 結論他方、被告人両名が、いずれも本件犯行を認めて、反省の態度を示していること、被告人両名が、被害者に対し、被害金額である2万9800円を支払い、示- 5 -談が成立しており、被害者は被告人両名に対する厳重処罰を求めていないこと、被告人Aの内妻が公判廷に出廷し、被告人Aの更生に協力する旨述べていること、被告人Bの母が、今後の被告人Bの指導監督を約束する書面を提出していることなど被告人両名のために酌むことができる事情も認められる。 そこで、以上の諸事情を総合考慮し、被告人両名に対する主文の各刑を定めた。 (求刑・被告人Aにつき懲役2年6月、被告人Bにつき懲役2年6月)(裁判官野々山優子)
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