令和4(行コ)161 裁決取消等差押処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年5月11日 大阪高等裁判所
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判決文本文5,752 文字)

令和5年5月11日判決言渡令和4年(行コ)第161号裁決取消等差押処分取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和4年(行ウ)第18号、第76号) 主文 1 原判決主文第2項中、A市長が令和3年5月19日付けでした差押処分(ただし、差し押さえられた預金債権38万6800円のうち17万9700円の部分)の取消請求を棄却した部分及びA市長が令和4年1月28日に控訴人に対してした裁決の取消請求を棄却した部分を取り消し、同請求に係る訴えをいずれも却下する。 2 上記取消部分を除き、本件控訴を棄却する。 3 訴訟費用は第1、2審とも控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 A市長が令和3年5月19日付けで控訴人の預金債権に対してした差押処分(管理番号第50300440号)を取り消す。 3 A市長が令和4年1月28日に控訴人に対してした裁決(○第○号)を取り消す。 4 被控訴人は、控訴人に対し、17万9699円及びこれに対する令和3年5月19日から支払済みまで年5分(年365日の日割計算)の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は、控訴人が、大阪府(住所省略)の土地及び建物(以下「本件土地等」という。)の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)に つき、A市長から、令和3年5月19日付けで控訴人の預金債権に対する差押処分(以下「本件差押処分」という。)を受け、これを不服として審査請求をしたが、既に取立て済みであるなどとしてこれを却下する旨の裁決(以下「本件却下裁決」という。)を受けたため、平成23年度分から平成27年度分までの本件土地等に係る固定資産税等 を不服として審査請求をしたが、既に取立て済みであるなどとしてこれを却下する旨の裁決(以下「本件却下裁決」という。)を受けたため、平成23年度分から平成27年度分までの本件土地等に係る固定資産税等(合計17万9700円。以下「本件固定資産税等」という。)は5年の時効により消滅しており、本件差押処分及び本件却下裁決は違法であるなどと主張して、被控訴人を相手に、①本件差押処分の取消し及び②本件却下裁決の取消しを求めるとともに、被控訴人に対し、③国家賠償法1条1項に基づき、本件固定資産税等のうち17万9699円及びこれに対する令和3年5月19日(本件差押処分時)から支払済みまで年5分(年365日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、①控訴人の預金債権38万6800円を差し押さえた本件差押処分のうち、被控訴人が取り立てた部分(17万9700円)を超える部分の取消しを求める訴えについては、訴えの利益を欠くとして却下し、上記取立部分の取消しを求める訴えについては、訴えの利益があるとした上で、請求を棄却し、上記②及び③については、いずれも請求を棄却したので、これを不服とする控訴人が控訴した。 2 関係法令等の定め、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次の3のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の第2の1ないし4記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決を次のとおり補正する。 ⑴ 原判決4頁16行目の「3」を「4」と改める。 ⑵ 原判決7頁4行目及び5行目の「本件裁決」をいずれも「本件却下裁決」と改める。 3 当審における当事者の補充主張(控訴人の主張) ⑴ 控訴人は、本件差押処分により、信用調査機関のブラックリストに載り、 「本件裁決」をいずれも「本件却下裁決」と改める。 3 当審における当事者の補充主張(控訴人の主張) ⑴ 控訴人は、本件差押処分により、信用調査機関のブラックリストに載り、カードが停止になったもので、本件には、信用を回復するという利益がある。 ⑵ 控訴人は、被控訴人の担当者から、平成28年1月28日付けの本件納税通知書の発送をしたこと、同年4月25日に本件督促状の発送をしたことにより時効の中断が発生し、令和3年4月19日に本件差押予告書を送付したことにより6か月以内に手続をすれば時効が延長されることの説明を受けたが、賦課決定の説明はなく、賦課決定通知書なる表題の郵便も受け取っていない。 ⑶ 賦課権の行使により賦課権の除斥期間が発生する。平成28年1月28日付の本件納税通知書(納期期限同年3月31日)が賦課決定の通知であるならば、令和3年3月31日で賦課決定の除斥期間(5年)は終了するから、同年5月19日にされた本件差押処分は違法である。また、平成28年4月25日にされた本件督促状を賦課決定の通知であるとしても、令和3年5月19日にされた本件差押処分は違法である。 (被控訴人の主張)⑴ 原判決は、本件差押処分のうち本件取立部分の取消しを求める訴えの利益があると判示しているが、誤りであり、本件差押処分の取消請求は、訴えの利益を欠く。 ⑵ 控訴人が被控訴人担当者から説明を受けたと主張する内容は、控訴理由となるものではない。 ⑶ 控訴人の主張は、賦課権の除斥期間と徴収権の消滅時効を混同しているものと思われ、控訴人の主張には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実原判決「事実及び理由」欄の第3の1に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決を次のとおり補正する。なお、補正して引用 人の主張には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実原判決「事実及び理由」欄の第3の1に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決を次のとおり補正する。なお、補正して引用した原判決の認定事実を「補正後認定事実」という。 ⑴ 原判決7頁22行目の「前記前提となる事実」を「前記前提事実」と改める。 ⑵ 原判決8頁14行目の「本件納税通知書を送付した。」を「本件納税通知書(書面には、「賦課決定をしましたので通知します。」と記載され、課税明細等が記載されるとともに、納付を求める内容となっている。)を送付し、控訴人はこれを受領した。」と、17行目の「発した。」を「発し、控訴人はこれを受領した。」といずれも改める。 2 争点1(本件差押処分の取消しを求める訴えの利益の有無)について⑴ 行政事件訴訟法9条1項は、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる旨規定する。本件では、補正後認定事実⑻のとおり、A市長が、本件差押処分後の令和3年11月15日、本件預金債権のうち17万9700円を取り立て、その余の20万7100円について本件差押処分を解除したことが認められることから、本件差押処分の取消しを求める訴えの利益の有無が問題となる。 ⑵ この点、地方税法373条7項は、固定資産税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例によることとされ(都市計画税については、地方税法702条の8第1項により、固定資産税の規定が準用されている。 固定資産税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法に規定する滞納処分の例によることとされ(都市計画税については、地方税法702条の8第1項により、固定資産税の規定が準用されている。)、具体的には、債権の差押えは、第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行われ、その送達時に差押えの効力(弁済禁止効・処分禁止効)が生じ、徴収職員は、差し押さえた債権の取立てをすることができ、金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押えに係る固定資産税等を徴収したものとみなすこととされている(国税徴収法62条1項ないし3項、67条1項、3項)。これらの規定に鑑みれば、債権差押処分は、差し押さえた債権の取立てを行うことにより、その目的を達し、その法的効果 が消滅するものと解される。そして、その後、債権差押処分が取り消されたとしても、差し押さえられた債権が復活すると解すべき規定や根拠はなく、債権差押処分がされたことを理由として滞納者に不利益を課す法律上の規定も存在しない(なお、債権差押処分の効果は、上記のとおりであって、これを超えて、課税主体に対し、滞納者との関係において、取立てにより税を徴収したものとみなされた金員を保持する権限を与えるものではないと解されるから、債権差押処分が違法であると主張する者は、債権差押処分の取消しを要することなく、直接に不当利得返還請求又は国家賠償請求を行うことができると解される。)。 そうすると、取立てにより債権差押処分の効果がなくなった後においては、債権差押処分の取消しによって回復すべき法律上の利益は存在しないものというべきである。 また、差押処分の解除(国税徴収法79条)は、差押処分による効果を将来に向かって失わせるものであるから、同様に、差押処分の効果が消滅した後において 法律上の利益は存在しないものというべきである。 また、差押処分の解除(国税徴収法79条)は、差押処分による効果を将来に向かって失わせるものであるから、同様に、差押処分の効果が消滅した後においてもその取消しによって回復すべき法律上の利益は存在しないものといえる。 ⑶ これに対し、控訴人は、本件差押処分により、信用調査機関のブラックリストに載り、カードが停止になったもので、本件には、信用を回復するという利益があると主張する。 しかしながら、控訴人が主張する利益は、処分の法的効果によるものとみることは困難であり、事実上の効果にすぎないものであるから、採用できない。 ⑷ したがって、控訴人が取消しを求める本件差押処分は、その後の取立て及び解除により、取消しを求める訴えの利益が失われたもので、本件訴えのうち、本件差押処分の取消しを求める部分は、訴えの利益を欠き、不適法である。 3 争点2(本件却下裁決の取消しを求める訴えの利益の有無)について審査請求は、原処分が違法又は不当であるとしてその取消しを求めるもので あるから、裁決の取消しを求める訴えの目的も、究極的には原処分の取消しを求めることにあると解される。 そうすると、原処分を取り消すことについての訴えの利益が失われた場合には、裁決の取消しを求める訴えの利益も失われたものと解され、本件の場合においては、控訴人が取消しを求める本件差押処分は、その後の取立て及び解除により、取消しを求める訴えの利益が失われたことは前記のとおりであるから、これにより、本件却下裁決の取消しを求める訴えの利益も失われたものと解される。 したがって、本件訴えのうち、本件却下裁決の取消しを求める部分は、訴えの利益を欠き、不適法である(以上の次第で、争点4の判断の要をみない。)。 4 争点 求める訴えの利益も失われたものと解される。 したがって、本件訴えのうち、本件却下裁決の取消しを求める部分は、訴えの利益を欠き、不適法である(以上の次第で、争点4の判断の要をみない。)。 4 争点3(本件差押処分の適法性・本件固定資産税等の消滅時効等の成否)について⑴ 原判決「事実及び理由」欄の第3の4記載のとおりであるから、これを引用する。なお、本件固定資産税等については、当初、亡Bに宛てて納税通知書が送付されているが、これは控訴人を納税義務者とするものではないから(補正後認定事実⑴)、これをもって、控訴人を納税義務者とする本件納税通知書が「最初に行われた納付又は納入の告知」にあたるとの判断が左右されることはない。 ⑵ 控訴人の補充主張についてア控訴人は、被控訴人の担当者から、賦課決定をしたとの説明がなかったことや賦課決定通知書を受け取っていないことなどを主張する。 しかしながら、前記⑴において引用した法令の適用関係は、事後に被控訴人担当者が控訴人にいかなる説明をしたかによって左右されるものではない。また、本件納税通知書には本件賦課決定がされたことが記載されており、これを控訴人は受領しているのであるから(補正後認定事実⑵)、賦課決定の通知書が納税者に到達したものと認めることができる。 イまた、控訴人は、賦課決定ないしその通知から5年の除斥期間内に差押処 分がされなければならない旨の主張をするが、地方税法が定めているのは、法定納期限の翌日から起算して5年を経過する日までに賦課決定をすることであって(17条の5第5項)、賦課決定ないしその通知から5年間の除斥期間を定めた規定は存在しない。 ウそうすると、控訴人の主張はいずれも採用できない。 5 争点5(国家賠償法上の違法性等)について原判決「事実 第5項)、賦課決定ないしその通知から5年間の除斥期間を定めた規定は存在しない。 ウそうすると、控訴人の主張はいずれも採用できない。 5 争点5(国家賠償法上の違法性等)について原判決「事実及び理由」欄の第3の6記載のとおりであるから、これを引用する。 6 結語以上の次第で、本件訴えのうち、本件差押処分及び本件却下裁決の各取消しを求める訴えはいずれも不適法であるからこれを却下し、国家賠償請求は理由がないからこれを棄却すべきである。以上と異なる原判決は一部失当である。 よって、原判決中、本件差押処分の本件取立部分につき取消請求を棄却した部分及び本件却下裁決の取消請求を棄却した部分を取り消し、同請求に係る訴えを却下し、その取消部分を除き、控訴人の控訴は理由がないからこれを棄却することとして、民事訴訟法67条2項及び64条を適用して、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官水野有子 裁判官遠藤俊郎 裁判官大野祐輔

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