- 1 - 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。ただし、令和4年7月10日に行われた参議院議員選挙における青森県選挙区、岩手県選挙区、宮城県選挙区、福島県選挙区、山形県選挙区における選挙は違法である。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨(原告らの求める判決)令和4年7月10日に行われた参議院議員選挙の青森県選挙区、岩手県選挙区、宮城県選挙区、福島県選挙区及び山形県選挙区における選挙を無効とする。 第2 請求の原因(原告らの主張)前記参議院議員(選挙区選出)選挙につき、各選挙区の選挙人である原告らは、公職選挙法14条、別表第3の選挙区及び議員定数の定めが、人口比例に基づいて定数配分をしておらず、憲法56条2項、1条、前文第1文に基づく人口比例選挙の要求に違反し、憲法98条1項により無効であると主張し、公職選挙法204条に基づき、各選挙区における選挙を無効とする裁判を求めた。 原告らが別紙2請求の原因において主張するとおり、総務省選挙関係資料「令和3年9月登録日現在議員1人当たり都道府県別有権者数」(別紙2の別表)により選挙区の議員1人当たりの有権者数をみると、最少の福井県選挙区と最多の神奈川県選挙区との較差(最大)は、1対3.019であり、福井県選挙区との人口較差は、宮城県選挙区3.017、福島県選挙区2.467、青森県選挙区1.691、岩手県選挙区1.629、山形県選挙区1.420となっている。 第3 参議院議員選挙の選挙区と議員1人当たりの人口、有権者数令和4年7月の参議院議員通常選挙は、平成30年法律第75号による改正後の公職選挙法に基づき施行された。 参議院議員の定数は248人、そのうち100人を比例代 と議員1人当たりの人口、有権者数令和4年7月の参議院議員通常選挙は、平成30年法律第75号による改正後の公職選挙法に基づき施行された。 参議院議員の定数は248人、そのうち100人を比例代表選出議員、148人を選挙区選出議員とし(公職選挙法4条2項)、半数の比例代表選出議員50人、 - 2 -選挙区選出議員74人を選挙したものである。 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、地方選出議員については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして、各選挙区の議員定数は、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、昭和21年当時の人口に基づき、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の議員定数を配分した。 参議院創設当時は、選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.62、昭和22年4月の選挙当日の有権者数の最大較差1対2.51であったが、別紙3「参議院議員通常選挙における最大較差の推移」のとおり、次第に拡大した。 最高裁大法廷平成8年9月11日判決は、平成4年7月の参議院議員通常選挙における選挙区間の投票価値の較差が最大1対6.59に拡大するに及んで、結論において選挙当時における上記議員定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示した。 平成6年改正における7選挙区の定数の8増8減の措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく最大較差は4.81倍に縮小し、平成12年改正における3選挙区の定数の6減及び平成18年改正における4選挙区の定 選挙区の定数の8増8減の措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく最大較差は4.81倍に縮小し、平成12年改正における3選挙区の定数の6減及び平成18年改正における4選挙区の定数の4増4減の措置の前後を通じて、平成13年から平成19年までに施行された各通常選挙当時の最大較差は5倍前後で推移した。 最高裁大法廷平成24年10月17日判決は、選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された平成22年7月の参議院議員通常選挙につき、結論において選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の - 3 -選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 参議院の制度創設以来、選挙区選出議員(制度創設時は地方選出議員)の選挙は、都道府県を単位とする選挙区により行われたが、平成27年改正により、鳥取県と島根県、徳島県と高知県が合区されて定数2人の選挙区となった。 平成30年改正では、平成27年改正による4県2合区の選挙区を維持したまま、埼玉県選挙区の定数を2人増員した。この改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった。 令和2年11月18日の最高裁大法廷判決は、平成30年改正法に基づいて行われた令和元年7月の参議院議員選挙(本件選挙の直前の通常選挙)について、平成27年国勢調査による日本国民人口に基づく選挙 令和2年11月18日の最高裁大法廷判決は、平成30年改正法に基づいて行われた令和元年7月の参議院議員選挙(本件選挙の直前の通常選挙)について、平成27年国勢調査による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差が2.99となり、選挙当時の選挙区間の最大較差が3.00倍であった選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえず、定数配分規定が憲法に違反する状態に至っていたということはできないと判断した。 令和4年7月の参議院議員通常選挙における令和2年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区ごとの日本国民の人口、議員定数、議員1人当たり人口、較差は、総務省が令和3年11月30日に発表した「令和2年国勢調査人口(確定値)に基づく計算結果の概要」(別紙4)17、18頁の表のとおりであり、最少の福井県選挙区を1.000とした議員1人当たり人口の較差は、最大較差が宮城県選挙区3.031となり、東京都選挙区3.002、神奈川県選挙区3.002となっている。 議員1人当たり人口の較差が3倍を超える宮城県、東京都、神奈川県の3選挙区の令和2年日本国民の人口は、宮城県228万2543人、東京都1356万4222人、神奈川県904万1802人、3選挙区合計2488万8567人となり、令和2年日本国民の人口合計1億2374万3639人の20.1%に上り、人口全体の2割を超える日本国民が、議員1人当たり人口の較差が3倍以上の選挙区内 - 4 -に住んでいる。 有権者数では、令和3年9月1日現在の議員1人当たりの選挙区別の有権者数は、別紙2請求の原因の別表のとおりであり、議員1人当たり有権者数が最少の福井県との較差は、神奈川県3.019(最大)、宮城県3.017、東京都3.007となり の議員1人当たりの選挙区別の有権者数は、別紙2請求の原因の別表のとおりであり、議員1人当たり有権者数が最少の福井県との較差は、神奈川県3.019(最大)、宮城県3.017、東京都3.007となり、3選挙区が較差3倍を超えた。原告らの選挙区では、福島県2.467、青森県1.691、岩手県1.629、山形県1.420であった。 令和4年7月10日の参議院議員通常選挙の当日の選挙区別の有権者数、定数、議員1人当たり人口、較差は、別紙5の表のとおりであり、議員1人当たり有権者数が最少の福井県との較差は、神奈川県3.030(最大)、宮城県3.025、東京都3.006となり、3選挙区が較差3倍を超えた。福島県2.464、青森県1.690、岩手県1.628、山形県1.417であった。 第4 被告選挙管理委員会の主張の要旨(詳細は別紙6答弁書のとおり)令和4年7月の参議院議員通常選挙の時において、公職選挙法14条1項、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえず、また、万一、そのような違憲状態に至っていたと判断されたとしても、選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるともいえない。 定数配分規定が憲法に違反する無効なものとはいえず、本件選挙は有効である。 平成27年改正は、参議院創設以来、初めて都道府県を選挙区の単位とする仕組みを改め、4県2合区とした上で、定数4の3選挙区(宮城県、新潟県、長野県)の定数を2人ずつ減員し、5選挙区(東京都、北海道、愛知県、兵庫県、福岡県)の定数を2人ずつ増員した。この定数配分規定の下で施行された平成28年選挙における最大較差は、1対3.08であった。 平成30年改正は、選 員し、5選挙区(東京都、北海道、愛知県、兵庫県、福岡県)の定数を2人ずつ増員した。この定数配分規定の下で施行された平成28年選挙における最大較差は、1対3.08であった。 平成30年改正は、選挙区選出議員の定数を2人増加して、その2人を埼玉県選挙区に配分して定数を8人とし、この改正により、平成27年国勢調査の結果の人口に基づく最大較差は、1対2.99まで縮小された。 - 5 -令和4年7月施行の本件選挙においては、令和2年国勢調査結果に基づく選挙区間の最大較差(人口)は、福井県と宮城県の間の1対3.03であり、較差が3倍を超えた選挙区は3つであった。選挙当日における最大較差は、福井県と神奈川県の間の1対3.03であり、較差が3倍を超えた選挙区は3つであった。 令和元年選挙に係る令和2年最高裁大法廷判決は、平成30年改正につき、「参議院議員の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの容易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、合区を維持して僅かではあるが較差を是正しており、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を前記の程度まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものである」と判示し、令和元年選挙当時、平成30年改正後の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえず、定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないと判断している。 憲法は、投票価値の平等を要求しているが、他方で、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるための選挙制度の仕組みの決定を国会の広範な裁量に委ねている。投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮するこ 害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるための選挙制度の仕組みの決定を国会の広範な裁量に委ねている。投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 憲法が二院制を採用した趣旨は、立法を始めとする多くの事項について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性及び継続性を確保しようとするものと解される。 このような趣旨に基づいた役割を参議院が果たすために、構成員たる参議院議員の選挙制度において、人口比例の要請以外の考慮要素についても考慮することは、十分な合理性を有する。参議院議員の選挙制度における投票価値の平等は、議員定数の配分に当たり考慮を要する参議院固有の要素があることを踏まえつつ、政治的、 - 6 -社会的に一つのまとまりを有する行政単位である都道府県の意義や実体、過疎化による地方の疲弊に対する配慮等の国政遂行のための民意の的確な反映を実現するために必要な種々の要素といった人口比例以外の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 そして、いかなる具体的な選挙制度によって、前記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置づけ、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられている。 したがって、定数配分規定が違憲と評価されるのは、参議院の独自性のほか、国会が正当に考慮することができる他の政 挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられている。 したがって、定数配分規定が違憲と評価されるのは、参議院の独自性のほか、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由を考慮しても、投票価値の平等の見地から見て違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており、かつ、選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られる。 国政に関する選挙制度をみると、衆議院は、市区町村の単位を基本とする小選挙区選挙と全国を11のブロックに分けた比例代表選挙が採用されているのに対し、参議院は、全都道府県の区域を通じた比例代表選挙と都道府県単位を原則とする選挙区選挙が採用されている。このように参議院において都道府県単位を原則とする選挙制度が維持されていることによって、両議院の選挙制度全体として、我が国における地方公共団体の種類及び各地方公共団体の特色を踏まえて多角的な民意の反映が可能となっている。比例代表選挙においては投票価値の較差が存在しないため、有権者が多数存在する都市部の投票が選挙結果に大きな比重を占める。 そうすると、平成27年改正法に引き続いて平成30年改正法が、参議院の選挙区選出議員について、都道府県が行政単位として歴史的、政治的、経済的、社会的、文化的に重要な役割を担ってきたことなどに鑑み、住民の意思を集約的に反映させるという都道府県の意義ないし機能を原則として維持し、その代表の実質的内容ないし機能に衆議院と異なる独特の要素を持たせようとしたことは、参議院の選挙区 - 7 -選出議員の議員選出基盤について衆議院議員のそれとは異なる要素を付加し、多角的な民意の反映を可能とするものであるから、選挙制度の仕組みの決定として合理的であって、憲法が二院制を採 - 7 -選出議員の議員選出基盤について衆議院議員のそれとは異なる要素を付加し、多角的な民意の反映を可能とするものであるから、選挙制度の仕組みの決定として合理的であって、憲法が二院制を採用した趣旨に沿うものといえる。 参議院選挙には、衆議院と異なる憲法上の技術的制約等があることに加え、平成27年改正で導入された合区制度による種々の弊害が現実に生じるなどしており、選挙制度改革に向けた意見を集約し、成案を得ることは極めて困難な状況にある。 それにもかかわらず、国会は、平成27年改正以降も参議院選挙制度に関する議論を継続し、平成30年改正法を成立させ、投票価値の不均衡を是正した。更に、国会は、平成30年改正後も、参議院改革協議会を設けるなどして、選挙制度の更なる改革に向けた検討を継続的に行っている。 参議院議員の選挙区選挙において、都道府県を選挙区割りの基本単位としていることは、国会による裁量権の行使として合理性があり、平成27年改正により、平成26年大法廷判決が指摘した投票価値に関する違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は解消され、その後の平成30年改正により、投票価値の不均衡が更に是正され、本件選挙時においても最大較差は3.03にとどまっていたなどの事情を考慮すると、本件選挙当時、選挙区間における投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らして看過し得ない程度にまで達していないから、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえない。 万一、本件選挙当時、投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていると判断されることがあるとしても、国会において、本件選挙までの間に、そのことを認識し得たとはいえない。加えて、国会が是正のために採るべき立法措置の内容、そのために検討を要する い不平等状態に至っていると判断されることがあるとしても、国会において、本件選挙までの間に、そのことを認識し得たとはいえない。加えて、国会が是正のために採るべき立法措置の内容、そのために検討を要する事項及び実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を併せ考慮すれば、国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相当なものでなかったとはいえないから、本件選挙までの期間内に定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるとはいえない。 - 8 -第5 当裁判所の判断 1 要旨当裁判所は、令和2年10月の国勢調査による日本国民人口に基づく議員1人当たり人口の較差が、最少の福井県を1.000として、宮城県3.031(最大)、東京都3.002、神奈川県3.002となり、3倍を超える選挙区が3選挙区に上り、3倍を超える3選挙区の人口が日本国民の2割を超える状態となったことは、国会議員の選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量に委ねた憲法上の国会の裁量権の範囲を逸脱し、投票価値の平等という憲法の要求に反する著しい投票価値の不平等状態に至っていたものと判断する。 このような憲法の要求に反する投票価値の著しい不平等状態が国勢調査により令和3年11月に明らかになったのに、その不平等を全く是正することなく令和4年7月の選挙に至ったことは、憲法の要求する投票価値の平等という議会制民主主義の根幹をなす重要な要請について、国会が必要な考慮をしなかったものといわざるを得ず、国会が裁量権を逸脱して憲法上要求される合理的期間内に是正をしなかったものであって、本件選挙の時点における参議院選挙区選出議員選挙の選挙区と議員定数に関する公職選挙法の定めは、投票価値の平等という憲法の要求に 権を逸脱して憲法上要求される合理的期間内に是正をしなかったものであって、本件選挙の時点における参議院選挙区選出議員選挙の選挙区と議員定数に関する公職選挙法の定めは、投票価値の平等という憲法の要求に違反し、無効であったものと判断する。 令和4年7月の参議院議員通常選挙のうち選挙区選出議員選挙は、公職選挙法の定める選挙区と議員定数の定めが、憲法の要求する投票価値の平等に反するから、選挙区選出議員選挙が全体として、憲法に違反する無効な議員定数配分規定により行われた違法な選挙となる。 しかし、そのことを理由に選挙を無効とする判決をしても、これによって直ちに憲法に違反する状態が是正されるわけではなく、その是正は法律を改正しなければできないことを考慮し、原告らが選挙を無効とすることを求める青森県、岩手県、宮城県、福島県、山形県の各選挙区の選挙が違法であることを主文で宣言した上で、これらの選挙を無効とすることを求める原告らの請求は棄却することとする。 - 9 - 2 選挙権の平等と選挙制度わが憲法上、国政は、国民の厳粛な信託に基づき、国民の代表者が行うものであり(前文1項)、国権の最高機関である国会は、全国民を代表する選挙された議員で組織する衆議院及び参議院で構成するものとされ(41条、42条、43条1項)、国会の両議院の議員を選挙する権利は、国民固有の権利として成年である国民のすべてに保障され(15条1項、3項)、選挙人資格については、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならないとされている(44条ただし書)。 元来、選挙権は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹をなすものであり、現代民主国家においては、一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられる ただし書)。 元来、選挙権は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹をなすものであり、現代民主国家においては、一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられるべきものとされているのが一般であるが、このような選挙権の平等化が実現されたのは、必ずしも古いことではない。平等は、自由と並んで、近代国家における基本的かつ究極的な価値であり理念であって、特に政治の分野において強く追求されてきたのであるが、それにもかかわらず、当初においては、国民が政治的価値において平等とみられることがなく、基本的な政治的権利というべき選挙権についても、種々の制限や差別が存しており、それが多年にわたる民主政治の発展の過程において次第に撤廃され、今日における平等化の実現をみるに至ったのである。国民の選挙権に関するわが憲法の規定もまた、このような歴史的発展の成果のあらわれにほかならない。 ところで、この歴史的発展を通じて一貫して追求されてきたものは、このように、およそ選挙における投票という国民の国政参加の最も基本的な場面においては、国民は原則として完全に同等とみられるべく、各自の身体的、精神的又は社会的条件に基づく属性の相違はすべて捨象されるべきであるとする理念であるが、このような平等原理の徹底した適用としての選挙権の平等は、単に選挙人資格に対する制限の撤廃による選挙権の拡大を要求するにとどまらず、更に進んで、選挙権の内容の平等、言い換えれば、各選挙人の投票の価値、すなわち各投票が選挙の結果に及ぼ - 10 -す影響力においても平等であることを要求せざるを得ないものである。そして、このような選挙権の平等の性質からすれば、例えば、特定の範疇の選挙人に複数の投票権を与えたり、選挙人の間に納税額等による種別を設けその種別ごとに選挙 であることを要求せざるを得ないものである。そして、このような選挙権の平等の性質からすれば、例えば、特定の範疇の選挙人に複数の投票権を与えたり、選挙人の間に納税額等による種別を設けその種別ごとに選挙人数と不均衡な割合の数の議員を選出させたりするような、殊更に投票の実質的価値を不平等にする選挙制度がこれに違反することは明らかであるが、そのような顕著な場合ばかりでなく、具体的な選挙制度において各選挙人の投票価値に実質的な差異が生ずる場合には、常にこの選挙権の平等の原則との関係で問題が生ずるのである。 各選挙区における選挙人の数と選挙される議員の数との比率上、各選挙人が自己の選ぶ候補者に投じた1票がその者を議員として当選させるために寄与する効果に大小が生ずる場合もまた、その一場合にほかならない。 憲法は、このような選挙権の平等の原則の歴史的発展の成果の反映であり、選挙権に関しては、国民はすべて政治的価値において平等であるべきであるとする徹底した平等化を志向するものであり、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである。 しかし、この投票価値の平等は、各投票が選挙の結果に及ぼす影響力が数字的に完全に同一であることまでも要求するものではない。代表民主制の下における選挙制度は、選挙された代表者を通じて、国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし、他方、政治における安定の要請をも考慮しながら、それぞれの国において、その国の事情に即して具体的に決定されるべきものであり、そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけのものではない。 わが憲法もまた、この理由から、国会両議院の議員の選挙については、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条 一定不変の形態が存在するわけのものではない。 わが憲法もまた、この理由から、国会両議院の議員の選挙については、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条2項、47条)、両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量に委ねているのである。それゆえ、憲法は、投票価値の平等についても、これをそれらの選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準としているわけではなく、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他に斟酌することの - 11 -できる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができるのであり、投票価値の平等は、先に例示した選挙制度のように明らかにこれに反するもの、その他憲法上正当な理由となりえないことが明らかな人種、信条、性別等による差別を除いては、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものと解される。 もっとも、このことは、平等選挙権の一要素としての投票価値の平等が、単に国会の裁量権の行使の際における考慮事項の一つであるにとどまり、憲法上の要求としての意義と価値を有しないことを意味するものではない。投票価値の平等は、常にその絶対的な形における実現を必要とするものではないけれども、国会がその裁量によって決定した具体的な選挙制度において現実に投票価値に不平等の結果が生じている場合には、それは、国会が正当に考慮することのできる重要な政策的目的ないしは理由に基づく結果として合理的に是認することができるものでなければならないと解されるのであり、その限りにおいて大きな意義と効果を有するのである。 この理は、昭和51年4月14日の最高裁大法 ないしは理由に基づく結果として合理的に是認することができるものでなければならないと解されるのであり、その限りにおいて大きな意義と効果を有するのである。 この理は、昭和51年4月14日の最高裁大法廷判決が判示している。 3 参議院議員選挙における投票価値の平等への憲法上の要請憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認め(59条ないし61条、67条、69条)、その反面、参議院議員の任期を6年の長期とし、解散(54条)もなく、選挙は3年ごとにその半数について行う(46条)ことを定めている。その趣旨は、議院内閣制の下で、限られた範囲について衆議院の優越を認め、機能的な国政の運営を図る一方、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与え、参議院議員の任期をより長期とすることによって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映し、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。いかなる具体的な選挙制度によって、上記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異 - 12 -同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられているところであるが、その合理性を検討するに当たっては、参議院議員の選挙制度が設けられてからの制度と社会の状況の変化を考慮することが必要である。 参議院議員の選挙制度を衆議院議員の選挙制度の変遷と対比してみると、両議院とも、選挙の単位の区域に広狭の差はあるものの、いずれも、都道府県又はそれを細分化した地域を選挙区とする選挙と、より広範な地域を選挙の単位とする比例代表選挙との組合せという類似した選出 ると、両議院とも、選挙の単位の区域に広狭の差はあるものの、いずれも、都道府県又はそれを細分化した地域を選挙区とする選挙と、より広範な地域を選挙の単位とする比例代表選挙との組合せという類似した選出方法が採られ、その結果として同質的な選挙制度となってきている。このような選挙制度の変遷とともに、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割はこれまでにも増して大きくなってきている。加えて、衆議院については、この間の改正を通じて、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の人口較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められている。これらの事情に照らすと、参議院についても、二院制に係る上記の憲法の趣旨との調和の下に、更に適切に民意が反映されるよう投票価値の平等の要請について十分に配慮することが求められるところである。 このような憲法の趣旨、参議院の役割等に照らすと、参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであり、参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。参議院議員の選挙制度において都道府県を選挙区の単位として各選挙区の定数を定める仕組みについては、都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し、政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ることに照らし、都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味しようとしたものと解することができる。都道府県が地方における一つのまとまりを有する行政等の単位であるという点は今日においても変わりはなく、その限度においては相応の合理性を有してい - 13 -たといい得 のと解することができる。都道府県が地方における一つのまとまりを有する行政等の単位であるという点は今日においても変わりはなく、その限度においては相応の合理性を有してい - 13 -たといい得るが、これを参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく、むしろ、都道府県を選挙区の単位として固定する結果、その間の人口較差に起因して投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続していると認められる状況の下では、上記の仕組み自体を見直すことが必要になるものといわなければならない。また、参議院についての憲法の定めからすれば、議員定数配分を衆議院より長期にわたって固定することも立法政策として許容されるとしても、ほぼ一貫して人口の都市部への集中が続いてきた状況の下で、数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっている。さらに、参議院議員の選挙制度の仕組みの下では選挙区間の較差の是正には一定の限度があることも、短期的な改善の努力の限界を説明する根拠としては成り立ち得るとしても、数十年間の長期にわたり大きな較差が継続することが許容される根拠になるとはいい難い。現行の選挙制度は、限られた総定数の枠内で、半数改選という憲法上の要請を踏まえた偶数配分を前提に、都道府県を単位として各選挙区の定数を定めるという仕組みを採っているが、人口の都市部への集中による都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、このような都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困難な状況に至っているものというべきである。 参議院議員の選挙制度については、限られた総定数の枠内で、半数改選という しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困難な状況に至っているものというべきである。 参議院議員の選挙制度については、限られた総定数の枠内で、半数改選という憲法上の要請を踏まえて各選挙区の定数が偶数で設定されるという制約の下で、長期にわたり投票価値の大きな較差が続いてきた。しかしながら、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であることや、さきに述べた国政の運営における参議院の役割に照らせば、より適切に民意が反映されるよう、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やか - 14 -に違憲の問題が生ずる不平等状態を解消する必要がある。 これは、平成24年10月17日の最高裁大法廷判決が、議員1人当たりの選挙人数の最大較差が1対5.00であった平成22年7月の参議院議員選挙について、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたと判断した際に判示している。判決は、4県2合区の改正前であるが、選挙区は、この判決以後も4県2合区の改正があったのみである。 令和2年11月18日の最高裁大法廷判決は、平成27年改正による4県2合区を維持した上で、1選挙区の議員定数を2人増員した平成30年改正法に基づいて行われた令和元年7月の参議院議員選挙(本件選挙の直前の通常選挙)について、平成27年国勢調査による日本国民人口に基づく最大較差が2.99となり、選挙当時の最大較差が3.00倍であった選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態 について、平成27年国勢調査による日本国民人口に基づく最大較差が2.99となり、選挙当時の最大較差が3.00倍であった選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえず、定数配分規定が憲法に違反する状態に至っていたということはできないと判断した。 しかし、この判決は、上記判断を示す前に、次の理由を示している。すなわち、平成30年改正法の内容は、結果として、選挙区選出議員に関しては1選挙区の定数を2人増員する措置をとるにとどまっている。他方、同法には、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を規定した平成27年改正法附則7条のような規定が設けられておらず、審議において参議院選挙制度改革について憲法の趣旨にのっとり引き続き検討する旨述べる附帯決議がされたが、その中では選挙区間における較差の是正等については明確に言及されていない。国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、参議院議員選挙については直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいという理由は見いだし難く、憲法の趣旨等との調和の下に投票価値の平等が実現されるべきことは平成29年大法廷判決等でも指摘されているのであるから、立法府においても、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに維持していくために必要となる方策等につい - 15 -て議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえない。 しかしながら、平成30年改正の経緯及び内容等を踏まえると、同改正は、参議院議員の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの容易に成案を得ることができず が大きな進展を見せているとはいえない。 しかしながら、平成30年改正の経緯及び内容等を踏まえると、同改正は、参議院議員の選挙制度について様々な議論、検討を経たものの容易に成案を得ることができず、合区の解消を強く望む意見も存在する中で、合区を維持して僅かではあるが較差を是正しており、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を2. 97倍(平成28年選挙当時3.08倍)まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するように配慮したものであるということができる。また、参議院選挙制度の改革に際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面がある。そうすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできない。 この大法廷判決の理由は、二院制における参議院の役割も考慮して具体的な選挙制度の仕組みを定めるにあたっての国会の裁量権を考慮しても、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、参議院議員選挙については直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいという理由はなく、憲法の趣旨等との調和の下に投票価値の平等が実現されるべきことから、平成30年改正法による改正の前後を通じて、投票価値の不均衡について、立法府において、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに維持していくために必要な方策等について議論し、取組を進めることを求めているのである。 4 令和4年7月の参議院議員選挙が憲法に違反する理由昭和22年の参議院創設当時の地方選出議員の各選挙区の議員定数については、都道府県を選挙区として、各選挙区を通じて半数が改選されるよ る。 4 令和4年7月の参議院議員選挙が憲法に違反する理由昭和22年の参議院創設当時の地方選出議員の各選挙区の議員定数については、都道府県を選挙区として、各選挙区を通じて半数が改選されるよう定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、昭和21年当時の総人口を定数150で割った値で各選挙区の人口を除し、その数値に比例する形で2人ないし8人の偶数の議員 - 16 -定数を配分したものである。その時点での選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は、2.62倍にすぎなかった。ところがその後の人口の変動により最大較差が6.59倍にまでなり、平成8年大法廷判決により憲法違反の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったと判断されたが、その後も最大較差が5倍前後で推移し、平成22年と平成25年の通常選挙は、いずれも最高裁大法廷判決により憲法違反の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったと判断された。 その後、平成27年改正による4県2合区、10増10減の措置により最大較差が3倍程度にまでに縮小し、平成30年改正により1選挙区の定数を2人増員し、その結果、最大較差は僅かながら更に縮小した。 しかし、最大較差が5倍前後から3倍程度に縮小したといっても、そのことによって、このような投票価値の不均衡が当然に正当化されるものではない。 憲法の要求する選挙権の平等の原則は、歴史的発展の成果の反映であり、国民はすべて政治的価値において平等であるべきであるとする徹底した平等化を志向するもので、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである。1人1票という選挙の基本原則からみても、投票価値の平等は、国民主権の下で国会が国権の最高機関としての正統性を有するための基礎であり、議会制民主政治の根幹である。具体的な 法の要求するところである。1人1票という選挙の基本原則からみても、投票価値の平等は、国民主権の下で国会が国権の最高機関としての正統性を有するための基礎であり、議会制民主政治の根幹である。具体的な選挙制度の決定について公正かつ効果的な代表という目標を実現する観点から国会の裁量権が認められるとしても、国会がその裁量によって決定した具体的な選挙制度において現実に投票価値に不平等の結果が生じている場合、それは国会が正当に考慮することのできる重要な政策的目的ないしは理由に基づく結果として、合理的に是認できるものでなければならない。 二院制の下における参議院の性格や機能を選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられているが、参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っている。参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいという理由はない。都道府県を選挙区の単位とする選挙制度は、都道府県が地方における一 - 17 -つのまとまりを有する行政等の単位であるという限度においては相当の合理性を有するが、そのような憲法上の要請はなく、むしろ都道府県を選挙区の単位として固定する結果、この間の人口の変動により投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続している状況の下では、その仕組み自体を見直すことが必要である。このことは平成24年大法廷判決から指摘されているところである。 令和2年大法廷判決も、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、参議院議員選挙については直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいという理由はなく、憲法の趣旨等との調和の下に投票価値の平等が実現されるべきものであるという平成24年大法廷判決以来の判示を踏まえ、立法府 議員選挙については直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいという理由はなく、憲法の趣旨等との調和の下に投票価値の平等が実現されるべきものであるという平成24年大法廷判決以来の判示を踏まえ、立法府においても、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに維持していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることを求め、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとも指摘したのである。 それにもかかわらず、令和4年7月の参議院議員選挙は、令和2年10月の国勢調査結果による日本国民人口に基づく議員1人当たり人口の較差が最大の宮城県選挙区で3.031倍となり、令和元年7月の選挙当時は3.00倍であった較差が更に拡大し、東京都と神奈川県を含む較差3倍を超える3選挙区の日本国民が全国民の2割を超える状態となったことが、令和3年11月30日に判明したのに、平成30年改正による選挙区と議員定数を何ら是正することなく行われた。 本件選挙当日の議員1人当たり有権者数の較差も、神奈川県3.030倍(最大)となり、宮城県、東京都を含む3選挙区が3倍を超えていた。 都道府県を選挙区の単位とする選挙制度が参議院創設以来行われたことには、都道府県の意義に照らし相当の合理性があり、平成27年改正で合区が行われた後、合区の解消を強く望む意見もあり、合区があった県において無効票が増える状況が生じたとしても、そのような事情は、1票の投票価値が低い状況が長年にわたって続いていることが都市部における投票行動にどのように影響してきたかという事情 - 18 -もあわせて公平に検討しなければ、1人1票という選挙の基本原則から大きく逸脱している議員1人当たり人口の較差が3倍を とが都市部における投票行動にどのように影響してきたかという事情 - 18 -もあわせて公平に検討しなければ、1人1票という選挙の基本原則から大きく逸脱している議員1人当たり人口の較差が3倍を超えるという著しい投票価値の不平等について、それがやむを得ないといえる事情にはならない。 具体的な選挙制度の決定について公正かつ効果的な代表という目標を実現する観点から国会の裁量権が認められるとしても、このような著しい投票価値の不平等は、国会が正当に考慮することのできる重要な政策的目的ないしは理由に基づく結果として、合理的に是認できるものではない。国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、参議院議員選挙については投票価値の平等の要請が後退してもよいという理由はなく、憲法の趣旨等との調和の下に投票価値の平等が実現されるべきものであるという令和2年大法廷判決の指摘を含む過去の最高裁大法廷判決に示された参議院議員選挙における投票価値の平等への憲法上の要請からみて、憲法の要求に反する著しい投票価値の不平等状態に至っていたというべきである。 そして、平成30年改正後における議員1人当たりの人口の較差が3倍にもなる投票価値の不均衡について、令和2年大法廷判決の指摘もあったのに更なる是正を図ることなく、選挙前に国勢調査の結果により較差が3倍を超えて拡大したことも明らかになったのに何ら是正をすることもなく、令和4年7月の本件選挙の実施まで3倍を超える較差を放置したことは、選挙権の平等の原則の歴史的発展の成果の反映として議会制民主主義の根幹をなす憲法の要求する投票価値の平等という重要な要請について、国会が必要な考慮をしなかったためにその裁量権を逸脱し、憲法上要求される合理的な期間内に是正をしなかったものと評価せざるを得ない。 仙 法の要求する投票価値の平等という重要な要請について、国会が必要な考慮をしなかったためにその裁量権を逸脱し、憲法上要求される合理的な期間内に是正をしなかったものと評価せざるを得ない。 仙台高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官小林久起 裁判官鈴木桂子 裁判官山崎克人 別紙1「当事者目録」は掲載省略別紙6「答弁書」は掲載省略
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