平成30(行ク)84 執行停止の申立て事件

裁判年月日・裁判所
平成30年6月19日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文10,053 文字)

平成30年(行ク)第84号執行停止の申立て事件(本案・平成30年(行ウ)第86号医業停止処分取消請求事件)主文 1 厚生労働大臣が申立人に対し平成30年6月6日付けでした,同月20日から同年7月19日までの期間,医業の停止を命ずる旨の処分の効力は,本案事 件の第1審判決言渡しの後60日を経過するまでの間(ただし,当該経過の前に本案事件が完結した場合には,当該完結時までの間に限る。),これを停止する。 2 申立人のその余の申立てを却下する。 3 申立費用は相手方の負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨厚生労働大臣が申立人に対し平成30年6月6日付けでした,同月20日から同年7月19日までの期間,医業の停止を命ずる旨の処分の効力は,本案事件の第1審判決言渡しの後60日を経過するまでの間,これを停止する。 第2 事案の概要本件は,精神科医師である申立人が,厚生労働大臣から,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)18条1項所定の精神保健指定医(以下「指定医」という。)の指定を取り消す旨の処分(以下「本件指定取消処分」という。)を受け,さらに,医師法4条4号に規定す る医事に関し不正の行為があったとして,同法7条2項2号に基づき,1箇月間医業の停止を命ずる旨の処分(以下「本件医業停止処分」という。)を受けたため,本件医業停止処分の取消しの訴え(本案事件)を提起した上,本案事件の第1審判決言渡しの後60日を経過するまでの間,本件医業停止処分の効力を停止することを求める事案である。 1 法の定め等 (1) 医師法ア医師法1条は,医師は,医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を 求める事案である。 1 法の定め等 (1) 医師法ア医師法1条は,医師は,医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保する任務を有する旨規定する。 イ医師法4条は,その柱書きにおいて,同条各号のいずれかに該当する者 には,医師の免許を与えないことがある旨規定し,その4号において,「医事に関し(中略)不正の行為のあった者」を掲げている。 ウ医師法7条2項は,その柱書きにおいて,医師が同法4条各号のいずれかに該当し,又は医師としての品位を損するような行為のあったときは,厚生労働大臣は,同項各号に掲げる処分をすることができる旨規定し,そ の2号において,3年以内の医業の停止を掲げている。 (2) 精神保健福祉法ア精神保健福祉法18条1項は,その柱書きにおいて,厚生労働大臣は,その申請に基づき,同項各号に該当する医師のうち同法19条の4に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を,指定 医に指定する旨規定し,その3号において,厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有することを掲げている。 イ精神保健福祉法19条の2第2項は,指定医が同法若しくは同法に基づく命令に違反したとき又はその職務に関し著しく不当な行為を行ったとき その他指定医として著しく不適当と認められるときは,厚生労働大臣は,その指定を取り消し,又は期間を定めてその職務の停止を命ずることができる旨規定する。 ウ精神保健福祉法19条の4第1項は,①任意入院(精神障害者が自ら行う入院をいう。)又は措置入院(精神障害者に自傷他害のおそれがあると きに都道府県知事により行われる当該精神障害者 する。 ウ精神保健福祉法19条の4第1項は,①任意入院(精神障害者が自ら行う入院をいう。)又は措置入院(精神障害者に自傷他害のおそれがあると きに都道府県知事により行われる当該精神障害者の入院をいう。)を継続 する必要があるかどうかの判定,②医療保護入院(精神障害者の家族等の同意があるときに精神科病院の管理者により行われる当該精神障害者の入院をいう。)又は応急入院(医療又は保護の依頼があった精神障害者について,その家族等の同意を得ることができない場合において,精神科病院の管理者により行われる当該精神障害者の入院をいう。)を必要とするか どうか及び任意入院が行われる状態にないかどうかの判定,③入院中の者につき患者の隔離その他の行動の制限を必要とするかどうかの判定,④報告事項に係る措置入院者又は医療保護入院者の診察,⑤措置入院者を一時退院させて経過を見ることが適当かどうかの判定が指定医の職務である旨規定する。 エ精神保健福祉法19条の4第2項は,指定医が,上記ウのほか,①措置入院又は緊急措置入院(措置入院の要件に該当する精神障害者等について,急速を要し,措置入院の所定の手続を採ることができない場合において,都道府県知事により行われる措置入院をいう。)を必要とするかどうかの判定,②移送の際の行動の制限を必要とするかどうかの判定,③措置入院 を継続する必要があるかどうかの判定,④医療保護入院等のための移送を必要とするかどうかの判定,⑤精神医療審査会が必要と認めた入院中の者の診察,⑥精神科病院に対する立入検査,質問及び診察,⑦退院命令に際しての入院を継続する必要があるかどうかに関する診察,⑧精神障害者保健福祉手帳の返還を命ずる際の診察の職務を行う旨規定する。 オ精神保健福祉法19条 査,質問及び診察,⑦退院命令に際しての入院を継続する必要があるかどうかに関する診察,⑧精神障害者保健福祉手帳の返還を命ずる際の診察の職務を行う旨規定する。 オ精神保健福祉法19条の5は,措置入院,緊急措置入院,医療保護入院又は応急入院を行っている精神科病院の管理者は,常勤の指定医を置かなければならない旨規定する。 (3) 昭和63年4月8日厚生省告示第124号「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第18条第1項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が定める精 神障害及び程度」(疎乙2。平成22年8月31日厚生労働省告示第334号 により改正。以下,当該改正前後のものを併せて「本件告示」という。)本件告示は,精神保健福祉法18条1項3号の定めを受けて,厚生労働大臣が定める精神障害として,統合失調症圏等の6つを定め,それぞれにつき,診断又は治療に従事した経験を有すべき件数を規定する。 (4) ①昭和63年5月13日健医精発第16号「精神衛生法等の一部を改正す る法律による改正後の精神保健法の運用上の留意事項について」(疎乙3)及び②平成22年2月8日障精発0208第2号「精神保健指定医の新規申請等に係る事務取扱要領」(②は①を改正したもの。以下,①②を併せて「本件事務取扱要領」という。)本件事務取扱要領は,精神保健福祉法18条1項3号及び本件告示に規定 する「診断又は治療に従事した経験」について,指定医の指定申請時に提出するケースレポートにより確認するものとし,指定医の指定申請に当たっては,指定医の指定申請書にはケースレポートを添付するものとする旨(2⑴),ケースレポートにおいては,本件告示の定める症例について記載するものとし,また,当該記載をする症例は,精神病床を有する医療機関において常 の指定申請書にはケースレポートを添付するものとする旨(2⑴),ケースレポートにおいては,本件告示の定める症例について記載するものとし,また,当該記載をする症例は,精神病床を有する医療機関において常時 勤務する指定医(以下「指導医」という。)の指導の下に自ら担当として診断又は治療等に十分な関わりを持ち,少なくとも1週間に4日以上,当該患者について診療に従事し,また,原則として,当該患者の入院から退院までの期間,継続して診療に従事したものとする旨(2⑵ア,イ),指導医は,ケースレポートに係る症例の診断又は治療について申請者を指導するとともに, ケースレポートの作成に当たり,申請者への適切な指導及びケースレポートの内容の確認を行い,指導の証明を行うものとする旨(3⑴)等を規定する。 2 前提事実一件記録によれば,以下の事実を一応認めることができる。 (1) 申立人 申立人は,昭和62年5月22日に医師免許を取得し,平成4年10月2 6日付けで指定医の指定を受けた医師であり,現在,Aに雇用され,Aが開設するB病院及びB第二病院において,精神科医師として,入院診療及び外来診療を行っている。(疎甲3,4)(2) ケースレポートの指導証明及び内容確認申立人は,Cが平成21年12月22日付けで行った指定医の指定の申請 に際して提出したケースレポートの対象症例2例につき,各「指導医署名」欄に署名し,もって,当該各ケースレポートに係る症例の診断又は治療について指導を行ったこと及び当該各ケースレポートの内容を確認したことにつき,証明を行った。(疎甲13,14)(3) 本件指定取消処分 ア厚生労働大臣は,平成28年10月26日付けで,申立人に対し,「あなたが指導医として署名し,Cが申請者として たことにつき,証明を行った。(疎甲13,14)(3) 本件指定取消処分 ア厚生労働大臣は,平成28年10月26日付けで,申立人に対し,「あなたが指導医として署名し,Cが申請者として精神保健指定医の指定申請時に提出した『ケースレポート(第3症例)』,『ケースレポート(第7症例)』は,ケースレポートの対象となった症例に係る診療録,その他病院からの提出書類の内容を勘案した結果,申請者自身が担当として診断又は治療に 十分に関わりを持った症例とは認められなかった。この事実から,あなたは,申請者がケースレポートを作成する際の指導・確認という指導医の責務を怠り,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律…第18条第1項の要件を満たさない申請について要件を満たすものと誤認させ,不適切な精神保健指定医の指定を招いたと認められる。これは,精神保健福祉法第1 9条の2第2項に規定する『指定医として著しく不適当と認められるとき』に該当する」との理由により,同年11月9日をもって指定医の指定を取り消す旨の処分(本件指定取消処分)をした。(疎甲9)イ申立人は,本件指定取消処分に対する取消訴訟を提起し,これを本案として,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)25条2項に基づき,本 件指定取消処分の執行停止を申し立てた。 大阪地方裁判所は,平成29年1月18日,本件指定取消処分の効力を,本案事件の第1審判決の言渡し後60日が経過するまで停止する旨の決定をし,同決定は確定した。(当裁判所に顕著な事実)(4) 本件医業停止処分に至る経緯等厚生労働大臣は,平成30年6月6日付けで,申立人に対し,処分理由を 「精神保健指定医の指定申請にあたり,申請者がケースレポートを作成する際の指導・確認という指導医の責務を 処分に至る経緯等厚生労働大臣は,平成30年6月6日付けで,申立人に対し,処分理由を 「精神保健指定医の指定申請にあたり,申請者がケースレポートを作成する際の指導・確認という指導医の責務を怠り,Cの第3症例及び第7症例のケースレポートに署名をしたこと(医師法第4条第4号に規定する医事に関する不正の行為)」として,同月20日から同年7月19日までの期間,医業の停止を命ずる旨の処分をした(本件医業停止処分)。(疎甲1,6) (5) 本案事件の係属等申立人は,平成29年2月6日,医業停止処分等の差止めの訴えを提起していたところ,本件医業停止処分がされたことを受けて,平成30年6月8日,本件医業停止処分の取消しの訴えをこれに併合して提起する一方,前記差止めの訴えを取り下げるとともに,本件申立てをした。 3 当事者の主張申立人の主張は,別紙1記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙2記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たるか否かについて (1) 判断枠組みについて行訴法25条1項から3項までの文言,趣旨等に鑑みると,同条2項本文にいう「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」といえるか否かについては,処分の効力,処分の執行又は手続の続行(以下「処分の執行等」という。)により維持される行政目的の達成の必要性を踏まえた処分の内容及び性 質と,これによって申立人が被ることとなる損害の性質及び程度とを,損害 の回復の困難の程度を考慮した上で比較衡量し,処分の執行等による行政目的の達成を一時的に犠牲にしてもなおこれを停止して申立人を救済しなければならない緊急の必要性があるか否かの観点から判断すべきものと解される。 の程度を考慮した上で比較衡量し,処分の執行等による行政目的の達成を一時的に犠牲にしてもなおこれを停止して申立人を救済しなければならない緊急の必要性があるか否かの観点から判断すべきものと解される。 (2) 認定事実前記前提事実及び疎明資料によれば,以下の事実が一応認められる。 ア Aは,総合病院であるB病院と,療養病床の一般科及び精神科の病棟で構成されるB第二病院の2つの病院を運営しており,両病院の病床数は合計317床(うち精神科173床)である。(疎甲3)イ申立人は,B第二病院の院長及びB病院の認知症疾患医療センター長を務めるとともに,両病院で入院診療及び外来診療を行っている。(疎甲3) ウ申立人は,現在,①入院主治医として,B病院において,12人,B第二病院において,34人の各患者を担当し,B病院の身体科(内科,外科等)に入院中の患者の精神科担当医として,7人の患者を担当しているほか,②精神科外来担当医として,平成30年1月から3月までの3箇月間で,B病院において,274人の患者の診療(延べ診療回数555回)を 行い,B第二病院において,28人の外来患者の診療(延べ診療回数379回)を行った。(疎甲3)(3) 検討ア申立人が被る損害の性質及び程度前記認定事実イ及びウによれば,申立人は,B病院及びB第二病院にお いて,入院主治医等として,合計53名の入院患者の診察治療等を担当しているほか,比較的多数の外来患者の診察治療等を担当していることが一応認められるところ,平成30年6月20日から同年7月19日までの1箇月間の医業の停止を命ずる本件医業停止処分により,申立人は,当該期間,前記患者に係る診察治療等の医業を行うことができないことになる。 そして,「医事に関し(中略)不正の行為の 19日までの1箇月間の医業の停止を命ずる本件医業停止処分により,申立人は,当該期間,前記患者に係る診察治療等の医業を行うことができないことになる。 そして,「医事に関し(中略)不正の行為のあった者」として本件医業停止 処分がされたことにより診察治療等を一定期間行うことができないこと自体が,その事柄の性質上,申立人の医師としての社会的信用を低下させることは明らかである。また,精神科の診察治療等においては,これを実効的なものとするためには,対象となる患者やその家族等の関係者との間の綿密なコミュニケーションやこれを基礎とした高度の信頼関係等が不可欠 であるところ,「医事に関し(中略)不正の行為のあった者」として本件医業停止処分がされたことにより申立人による診察治療等を受けられなくなった患者やその家族等の関係者は,他の精神科医師の診察治療等を受けるために当該医師との間で新たに信頼関係を構築していくことを強いられることも相まって,申立人に対して強い不信感を抱く可能性も高いのであっ て,申立人が当該患者等との間でそれまでに培ってきた信頼関係が毀損される事態も生じ得るものと考えられる。そして,このように一旦毀損された患者等との間の信頼関係は,本件医業停止処分に係る医業停止期間が経過することや本件医業停止処分の取消しの訴え(本案事件)において勝訴判決を得ることによって,容易に回復することができるものとは考え難い。 そうすると,本件医業停止処分の期間は1箇月間にとどまるものの,本件医業停止処分により診察治療等の医業を行うことができなくなることによって申立人に生ずる社会的信用の低下及び患者等との間の信頼関係の毀損といった損害は,その性質・程度に照らすと,本案で勝訴することや事後の金銭賠償を受けることによって完全に ことができなくなることによって申立人に生ずる社会的信用の低下及び患者等との間の信頼関係の毀損といった損害は,その性質・程度に照らすと,本案で勝訴することや事後の金銭賠償を受けることによって完全に回復することが困難なものとい うべきである。 イ本件医業停止処分の内容及び性質他方で,医師としての品位を損するような行為のあったことを理由として医業の停止を命じる処分の行政目的の実質は,医師としての品位を損ない,又は職業倫理に違背した者に対して,一定期間医業の停止を命じて反 省を促し,これによって医療等の業務が適正に行われることを期するもの であると解され,この行政目的は,他の医師による医師として品位を損なうような行為の発生を防止するという一般予防的な側面も有する重要なものであることは否定できない。 しかしながら,本件医業停止処分の理由は,申立人は,指導医としてCが指定医の指定の申請に際して提出したケースレポートの2つの症例につ き署名するに当たり,Cがケースレポートを作成する際の指導・確認という指導医の責務を怠り,行政庁を誤認させ,不適切な指定医の指定を招いたというものであって,このような理由からすると,本件医業停止処分の取消訴訟において請求棄却の判決がされることによって,前記行政目的は相当程度達成され得るものといえる。そして,本件医業停止処分の理由に 係る指定医の指定の申請が,本件医業停止処分から8年以上前に行われたものであることに加え,申立人は,精神科医師として25年以上の経験を有し,その必要な専門知識や技術自体に問題があるともうかがわれないことを考慮すると,申立人について,直ちに医業を停止させなければ国民の生命・身体に対する危険が生ずるおそれがあるような事情があるというこ とはできず 識や技術自体に問題があるともうかがわれないことを考慮すると,申立人について,直ちに医業を停止させなければ国民の生命・身体に対する危険が生ずるおそれがあるような事情があるというこ とはできず,また,前記行政目的を達成するために,申立人について直ちに医業を停止させる必要性が大きいということもできない。 ウ以上検討したところによれば,本件医業停止処分により生ずる申立人の損害は,回復が困難であり,その程度も大きく,本件医業停止処分による前記行政目的の達成を一時的に犠牲にしてもなおその執行を停止して申立 人を救済しなければならない緊急の必要性があるものと認められる。 エ(ア) これに対し,相手方は,本件医業停止処分は,その期間を1箇月間という短期間に限定したものであるので,医業を停止したからといって直ちに患者等との間の信頼を失わせるものではない旨主張する。 しかしながら,申立人は,入院主治医等として,合計53名の入院患 者の診察治療等を担当しているところ,当該入院患者については,日常 的に診察治療等を行っているものと考えられるし,また,多数の通院患者のうち,B第二病院において診察治療等を担当している外来患者28名についても,平均しておおむね1週間に1回程度(90 日÷(延べ診療回数379 回÷28 人)≒6.6 日)の頻度で診察治療等を行っているものと考えられるのであって,これらの患者及びその家族等の関係者は,申立人と の間で相当高度の信頼関係を構築していること,そして,本件医業停止処分に係る医業停止がなければこれらの患者が申立人による診察治療等を受けられる回数は,相当程度に及ぶことが推認される。このことに加えて,前記アにおいて検討説示したところも併せ鑑みれば,本件医業停止処分に係る医業停止が直ちに ばこれらの患者が申立人による診察治療等を受けられる回数は,相当程度に及ぶことが推認される。このことに加えて,前記アにおいて検討説示したところも併せ鑑みれば,本件医業停止処分に係る医業停止が直ちに患者等との間の信頼を失わせるものでは ないということはできない。 したがって,相手方の前記主張は,採用することができない。 (イ) また,相手方は,医業停止処分をはじめとする医師に対する処分の効力が安易に停止されると,医師が違反行為を省みることなく医療等の業務を継続し,再び同種の犯罪又は不正等が行われるおそれも否定できず, 国民の安全な生活の維持及び確保,医師及び医療制度に対する国民の信頼の維持という医師免許制度の趣旨に反する状態を招くおそれもあるとして,本件においては処分の性質及び内容に鑑み「重大な損害」はない旨主張する。 しかしながら,前記イで説示したところに照らすと,相手方の前記主 張は,採用することができない。 オそうすると,本件については本件医業停止処分により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」というべきである。 2 「本案について理由がないとみえるとき」に当たるか否かについて一件記録によれば,本件医業停止処分が違法であるとの申立人の主張が,本 案事件の第1審の審理を経る余地がないほどに理由がないとは認め難い。 したがって,本件申立てが「本案について理由がないとみえるとき」(行訴法25条4項)に当たるということはできない。 3 「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」があるか否かについて相手方は,本件医業停止処分に対する執行停止が認められると,①医師が違反行為を省みることなく医療等の業務を継続し,再び同種の犯罪又は不正等が 行われるおそれも否定できず,国民の か否かについて相手方は,本件医業停止処分に対する執行停止が認められると,①医師が違反行為を省みることなく医療等の業務を継続し,再び同種の犯罪又は不正等が 行われるおそれも否定できず,国民の安全な生活の維持及び確保,医師及び医療制度に対する国民の信頼の維持という医師免許制度の趣旨に反する状態を招き,公共の利益を害する結果を生じさせるおそれがある,②医師法令に違反した医師が,適切な制裁を科されないまま,医業に携わることへの社会的悪影響のおそれもあるなどと主張する。 しかしながら,これらの主張は一般的,抽象的なものであり,一件記録を精査しても,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあることについての個別具体的な事情を認めるに足りる疎明はない。 したがって,本件医業停止処分の執行停止が「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」(行訴法25条4項)ということはできない。 4 執行停止の期間について申立人は,本件医業停止処分の効力につき,本案事件の第1審判決言渡しの後60日を経過するまでの間,これを停止することを求めているところ,本件申立ては,基本的には相当であるものの,当該経過の前に本案事件が完結した場合にまで本件処分の効力を停止する必要がないことは明らかであるから,そ の限度では不相当である。 したがって,本案事件の第1審判決の言渡しの後60日を経過するまでの間に限り(ただし,当該経過の前に本案事件が完結した場合には,当該完結時までの間に限る。),本件処分の効力を停止するものとする。 5 結論 よって,本件申立ては,本案事件の第1審判決の言渡しの後60日を経過す るまでの間(ただし,当該経過の前に本案事件が完結した場合には,当該完結時までの間に限る。),本件医業停止処分の効力を て,本件申立ては,本案事件の第1審判決の言渡しの後60日を経過す るまでの間(ただし,当該経過の前に本案事件が完結した場合には,当該完結時までの間に限る。),本件医業停止処分の効力を停止することを求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないからこれを却下することとして,主文のとおり決定する。 平成30年6月19日大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官齋藤毅 裁判官内藤陽子(別紙1省略)(別紙2省略)

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