令和3(行ケ)1 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年2月16日 福岡高等裁判所 宮崎支部 棄却
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判決文本文22,925 文字)

- 1 -主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求令和3年10月31日施行の衆議院(小選挙区選出)議員選挙の宮崎県第1区ないし第3区及び鹿児島県第1区ないし第4区における各選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、宮崎県第1区ないし第3区及び鹿児島県第1区ないし第4区の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定(同法13条1項、別表第1の定める選挙区割り)は、憲法に違反して無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して、公職選挙法204条に基づいて提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告ら本件選挙における小選挙区選挙の選挙区のうち、原告Aは宮崎県第1区の、原告Bは同第2区の、原告Cは同第3区の、原告Dは鹿児島県第1区の、原告Eは同第2区の、原告Fは同第3区の、原告Gは同第4区の各選挙人である。 (2) 本件選挙ア令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日に本件選挙が施行された。本件選挙当時の衆議院議員の選挙制度では、議員定数は465 - 2 -人で、そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員であり(公職選挙法4条1項)、小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、 議員、176人が比例代表選出議員であり(公職選挙法4条1項)、小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、同法の改正前後を問わずこれらの規定を併せて「区割規定」と、本件選挙当時の区割規定を「本件区割規定」と、本件区割規定に基づく選挙区割りを「本件選挙区割り」とそれぞれいう。)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされており(同法13条2項、別表第2)、総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い、投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条、36条。)。 イ本件選挙当日における選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の較差は、最小の鳥取県第1区(23万0959人)を1とすると、東京都第13区(48万0247人)が最大の2.079(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、宮崎県第1区(35万4691人)は1.536、同第2区(27万3071人)は1.182、同第3区(27万4053人)は1.187、鹿児島県第1区(35万8070人)は1.550、同第2区(33万7186人)は1.460、同第3区(31万8530人)は1.379、同第4区(32万5670人)は1.410であった。選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった(乙1の2)。 (3) 衆議院議員の選挙制度の変遷等ア昭和25年に制定された公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、中選挙区単記投票制を採用していたが、平成6年に公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号。そ の選挙制度の変遷等ア昭和25年に制定された公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、中選挙区単記投票制を採用していたが、平成6年に公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号。その後、平成6年第10号、第104号により一部改正。)により、従来の中選挙区単記投票制に代わって小選 - 3 -挙区比例代表並立制が採用された。 平成6年の公職選挙法の一部を改正する法律と同時に、衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号。以下、後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」という。)が制定され、同法1条により設置される衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている(同法2条)。 平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下、これを「旧区画審設置法」という。)3条は、1項において、上記の改定案を作成するにあたっては、各選挙区の人口(国勢調査の総人口から外国人人口を除いた人口。以下、単に「人口」という。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定めるとともに、2項において、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下、この選挙 、このことを「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下、この選挙区の区割基準(以下「区割基準」という。)を「旧区割基準」といい、この規定を「旧区割基準規定」という。)。 イ平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)の小選挙区選挙は、平成14年に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成14年法律第95号)により改定された選挙区割り(以下「旧選挙区割り」という。)の下で施行されたものであり、選挙当 - 4 -日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった(以下「平成21年選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定めた平成24年改正法による改正前の公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「旧区割規定」という。)(乙2の1)。 平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、選挙区の改定案の作成に当たり、選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとする旧区画審設置法3条1項の定めは、投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものということができるが、他方、平成21年選挙時には、1人別枠方式の下でされた各都道府県への定数配分の段階で、既に各都道府県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差を生ずるなど、各都道府県にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式が平成21年選挙における選挙区間の投票価値の較 の定数配分の段階で、既に各都道府県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差を生ずるなど、各都道府県にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式が平成21年選挙における選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたことが明らかであり、かつ、1人別枠方式は、新しい選挙制度導入に当たり、直ちに人口比例のみに基づいて各都道府県への定数の配分を行った場合には人口の少ない県における定数が急激かつ大幅に削減されることになるため、国政における安定性、連続性の確保を図る必要があると考えられ、この点の配慮なくしては選挙制度の改革の実現自体が困難であったと認められる状況の下で採られた方策であり、平成21年選挙時には本件選挙制度が定着し、安定した運用がされるようになったと評価することができることからすれば、もはや立法時の合理性は失われたものというほかないから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び旧区割基準に従って改定された旧区割規定の定める旧選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。そして、同判決は、 - 5 -これらの状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 ウ平成23年大法廷判決を受けて、各政党間による検討及び協議が行われ、平成24年11月16日、いわゆる0増5減(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人 講ずる必要があると判示した。 ウ平成23年大法廷判決を受けて、各政党間による検討及び協議が行われ、平成24年11月16日、いわゆる0増5減(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の各選挙区数をそれぞれ1減ずることをいう。以下同じ。)及び旧区画審設置法の1人別枠方式に係る部分(同法3条2項)を削除することを内容とする公職選挙法及び区画審設置法の一部を改正する法律案が平成24年改正法として成立した。 この改正により、旧区画審設置法3条1項が同改正後の区画審設置法3条となり、同条の内容である各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないことのみが区割基準となった。 なお、平成24年改正法は、附則において、旧区画審設置法3条2項を削除する改正規定は公布日(平成24年1月26日)から施行するものとする(同法附則1条)一方で、各都道府県の選挙区の0増5減を内容とする改正後の公職選挙法の規定は次回の総選挙(別に法律で定める日)から施行するものとし(同法附則2条)、0増5減を前提に、区画審が選挙区間の人口較差が2倍未満となるように選挙区割りを定める改正案の勧告を公布日から6月以内に行い(同法附則3条3項)、政府がその勧告に基づいて速やかに法制上の措置を講ずべき旨を定めた(同法附則4条)(乙3の - 6 -1、4)。 平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され、平成24年12月16日に施行された衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)までに新たな選挙区割りを定めることは時間的に不可能であったため、同選挙は平成21年 立と同日に衆議院が解散され、平成24年12月16日に施行された衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)までに新たな選挙区割りを定めることは時間的に不可能であったため、同選挙は平成21年選挙と同様に旧選挙区割りの下で施行された。平成24年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.425であり、較差が2倍以上となっている選挙区は72選挙区であった(乙2の2)。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙時において旧区割規定の定める旧選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが、国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、投票価値の平等は憲法上の要請であり、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県については、旧区割基準に基づいて配分された定数がそのまま維持されており、平成22年国勢調査の結果を基に1人別枠方式の廃止後の区割基準に基づく定数の再配分が行われているわけではなく、全体として区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が十分に実現されているとはいえず、そのため、今後の人口変動により再び較差が2倍以上の選挙区が出現し増加する蓋然性が高いと想定されるなど、1人別枠方式の構造的な問題は最終的に解決されているとはいえないのであり、国会においては、今後も平成24年改正 人口変動により再び較差が2倍以上の選挙区が出現し増加する蓋然性が高いと想定されるなど、1人別枠方式の構造的な問題は最終的に解決されているとはいえないのであり、国会においては、今後も平成24年改正法による改正後の - 7 -区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 エ平成24年改正法の成立後、同法の附則の規定に基づく区画審の審議、勧告を経て、平成25年6月24日、各都道府県の選挙区数の0増5減を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改めることを内容とする平成24年改正法の一部を改正する法律案が、平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)として成立した。 上記の各都道府県の選挙区数の0増5減及び選挙区割りの改定の結果、平成22年10月1日を調査時とする大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は2.524倍から1.998倍となるものとされていたが、同26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)当日においては、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙2の3)。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、上記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設 象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されているということにあり、このような投票価値の較差が生じたことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成 - 8 -24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、同判決は、同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われ、衆議院に設置された検討機関において検討が続けられていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、同判決及び平成25年大法廷判決の趣旨に沿った方向で進められていたものということができ、これらの判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改正された区割規定の定める選挙区割りは、憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治 による改正後の平成24年改正法により改正された区割規定の定める選挙区割りは、憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等に照らせば、より適切な民意の反映が可能となるよう、国会においては、今後も、衆議院に設置された検討機関において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約が早急に進められ、平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があるというべきであると判示した。 オ平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、「衆議院選挙制度等に関する与野党実務者協議」等により選挙制度の改革について各党間の協議が続けられていたが、各党の意見は一致しなかった。そこで、平成26年6月19日の衆議院議院運営委員会の議決により、衆議院選挙 - 9 -制度に関する調査、検討等を行うため、衆議院に有識者により構成される議長の諮問機関として「衆議院選挙制度に関する調査会」(以下「選挙制度調査会」という。)が設置された。選挙制度調査会に対する諮問事項は、現行制度を含めた選挙制度の評価、衆議院議員定数削減の処理及び1票の較差を是正する方途等であり、各会派は、選挙制度調査会の答申を尊重するものとされていた。選挙制度調査会は、平成26年9月以降、定期的な会合を開催し、上記諮問事項について、各政党からの意見聴取を含めた調査、検討を行い、同28年1月14日、衆議院議長に対し、衆議院選挙制度に関する調査会答申を提出した(乙3の2、4、8の1ないし17、10、11の1)。 上記答申は、衆議院議員の選 見聴取を含めた調査、検討を行い、同28年1月14日、衆議院議長に対し、衆議院選挙制度に関する調査会答申を提出した(乙3の2、4、8の1ないし17、10、11の1)。 上記答申は、衆議院議員の選挙制度の在り方については、現行の小選挙区比例代表並立制を維持し、議員定数の削減については、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数を4削減して176人)とする案が考えられるとした。また、一票の較差是正については、選挙区間の一票の較差を2倍未満とすること、小選挙区選挙の定数を各都道府県の人口に比例して配分すること、各都道府県への議席配分方式について満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて各都道府県に配分すること、選挙区間の一票の較差を小さくするために各都道府県間の一票の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県に配分される議席数の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを確認し、諸外国において採用されている配分方式を含めて検討された結果として、各都道府県への議席配分は、各都道府県の人口を一定の数値(小選挙区基準除数)で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式(いわゆるアダムズ方式)により行うものとした。そして、各都道府県への議席配 - 10 -分の見直しは、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果、較差2倍以上の選挙区が生じたときは、区画審は、各選挙区間の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとし、この見直しについては、本来 調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果、較差2倍以上の選挙区が生じたときは、区画審は、各選挙区間の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとし、この見直しについては、本来の選挙区の見直しが10年ごとに行われることを踏まえて、必要最小限のものとし、都道府県への議席配分の変更は行わないものとした(乙8の5、10)。 カ選挙制度調査会の前記答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。))が成立した。 平成28年改正法は、平成23年から平成27年までの累次の大法廷判決及び上記答申を踏まえ、その本則において、衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口の較差について、各都道府県の区域内の選挙区の数を平成32年以降10年毎に行われる大規模国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により配分した上で、各選挙区間の人口の最大較差が2倍以上にならないようにすること(平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「「新区画審設置法」という。)3条1項、2項、4条1項)、平成37年以降の簡易国勢調査の結果に基づく各選挙区間の最大較差が2倍以上になったときは、選挙区の安定性を図るとともに較差2倍未満を達成するため、各都道府県の選挙区数を変更することなく、区画審が較差是正のために選挙区割りの改正案の作成及び勧告を行うものとすること(同法3条3項、4条2項)、区画審の勧告の期限について、選挙区の改定に関する勧告は、統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとし(新区画審設置法4条1項)、さらに、区画審は、統計法5条2項ただし書の規定により上記 文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとし(新区画審設置法4条1項)、さらに、区画審は、統計法5条2項ただし書の規定により上記の国勢調査が行われた日から5年目に当たる年 - 11 -に行われる国勢調査の結果による各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、上記の勧告を行うものとすること(同法4条2項)、衆議院議員の定数を475人から10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とすること(平成28年改正法による改正後の公職選挙法4条1項)を定めるとともに、28年改正法の附則において、平成32年の大規模国勢調査までの措置として、平成27年の簡易国勢調査の結果に基づき、各選挙区の人口に関し、平成32年見込人口(平成27年の簡易国勢調査による人口に平成22年の大規模国勢調査から平成27年の簡易国勢調査までの人口の増減率を乗じて得た人口)を踏まえ、平成32年までの5年間を通じて較差2倍未満となるよう区割りを行うなどの措置を行うこと(平成28年改正法附則2条1項)、小選挙区選挙の定数6減の対象県について、平成27年の簡易国勢調査に基づき、アダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち、議員1人当たりの人口の最も少ない都道府県から順に6県とすること(同附則2条2項1号)、平成28年改正法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については民意の集約と反映を基本としてその間の適正なバランスに配慮しつつ、公正かつ効 項1号)、平成28年改正法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については民意の集約と反映を基本としてその間の適正なバランスに配慮しつつ、公正かつ効果的な代表という目的が実現されるよう、不断の見直しが行われるものとすること(同附則5条)を定めている。 平成28年改正法の成立後、区画審による審議が行われ、平成29年4月19日、区画審は、同法附則の規定に基づき、内閣総理大臣に対し、上記のとおり各都道府県の選挙区数の0増6減の措置を採ることを前提に、平成27年の簡易国勢調査に基づく選挙区間の人口の最大較差を2倍未満 - 12 -(1.956倍)とするのみならず、平成32年見込人口に基づく選挙区間の人口の最大較差も2倍未満(1.999倍)となるように19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする選挙区割りの改定案の勧告を行った(乙14の1・2、16)。これを受けて内閣は、同年5月16日、平成28年改正法に基づき、同法のうち0増6減を内容とする公職選挙法の改正規定の施行期日を定めるとともに、上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項を定める法制上の措置として、平成28年改正法の一部を改正する法律案を国会に提出し、平成29年6月9日、この改正法案が平成29年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)として成立した。上記0増6減及びこれを踏まえた選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正規定は平成29年7月16日から施行された。 キ上記改定の結果、平成27年10月1日を調査時とする簡易国勢調査に基づく人口における各都道府県間の議員1 人当たり人口の最大較差は、1. 844倍となり、また、選挙区間の人口の最大較差は1対1.956となり、 結果、平成27年10月1日を調査時とする簡易国勢調査に基づく人口における各都道府県間の議員1 人当たり人口の最大較差は、1. 844倍となり、また、選挙区間の人口の最大較差は1対1.956となり、平成32年見込人口に基づく選挙区間の人口の最大較差は1対1.999となるものとされた。平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)当日においては、選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数が最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった(乙2の4、14の1、18の1)。 平成29年選挙につき、最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、区割規定に係る改正を含む平成28年改正法及び平成29年改正法による改正は、平成32年に行われる国勢調査の結果に - 13 -基づく選挙区割りの改定に当たり、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として、各都道府県の選挙区数の0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の人口等の最大較差を縮小させたものであって、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした上で、平成24年改正法及び平成28年改正法により選挙区数が減少した県以外の都道府県について、1 請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした上で、平成24年改正法及び平成28年改正法により選挙区数が減少した県以外の都道府県について、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更はなく、その中には、アダムズ方式による定数配分が行われた場合と異なる定数が配分されることとなる都道府県が含まれているが、平成24年改正法から平成29年改正法までの立法措置によって、旧区画審設置法3条2項が削除されたほか、1人別枠方式の下において配分された定数のうち議員1人当たりの人口の少ない合計11県の定数をそれぞれ1減ずる内容の定数配分の見直しや、選挙区間の投票価値の較差を縮小するための選挙区割りの改定が順次行われたことにより、平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差が上記のとおり縮小したことに加えて、平成29年選挙が施行された時点において、平成32年以降の10年ごとの国勢調査の結果に基づく各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うことによって1人別枠方式の下における定数配分の影響を完全に解消させる立法措置が講じられていたものであり、このような立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を考慮すると、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数とアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって、本件選挙区割りが憲法の投 - 14 -票価値の平等の要求に反するものとなるということはできないとし、これらの事情を総合的に考慮すれば、本件区割規定は、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めた平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものであり、投票 これらの事情を総合的に考慮すれば、本件区割規定は、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めた平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものであり、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつ、新たな定数配分の方式をどの時点から議員定数の配分に反映させるかという点も含めて、国会において考慮することができる諸要素を踏まえた上で定められたものということができ、平成29年選挙当時においては、新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができ、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価でき、平成29年選挙当時において、区割規定の定める選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、同区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないと判示した。 ク令和3年11月30日に公表された平成32年(令和2年)の大規模国勢調査(調査時点:令和2年10月1日)の結果(確定値)によれば、平成22年から平成27年までの間の人口の増減と、同年から令和2年までの間の人口の増減との関係につき、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、福岡県で増加幅が拡大し、その余の33道府県で減少幅が拡大する結果となっており、また、選挙区間の人口の最大格差は2.096倍となっている(乙1の1・2、23の1・2)。 ケ新区画審設置法4条1項によれば、令和2年実施の大規模国勢調査の結果(速報 る結果となっており、また、選挙区間の人口の最大格差は2.096倍となっている(乙1の1・2、23の1・2)。 ケ新区画審設置法4条1項によれば、令和2年実施の大規模国勢調査の結果(速報値)が官報で公示された令和3年6月25日から1年以内(令和 - 15 -4年6月25日まで)に区画審による選挙区割りの改定案が勧告される見込みであり、実際に、上記官報の公示を受けて改正案の作成に向けて、令和3年7月22日以降、数回にわたり区画審において審議が行われている。 令和2年大規模国勢調査の結果に基づいて、新区画審設置法3条2項に基づく改正後の都道府県別定数を計算すると、定数が増加する選挙区は10選挙区、定数が減少する選挙区は10選挙区であり、都道府県間の最大較差(人口)は、改定前が1.976倍のところ、改定後は1.697倍となる見込みである(乙1の1の1・2、23の1・2、29)。 3 原告らの主張(1) 憲法56条2項には「両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し」との定めがあり、憲法1条には「主権の存する日本国民」、憲法前文第1文前段には「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」、同第1文後段には「ここに主権が国民に存することを宣言し」との定めがそれぞれあるところ、これらの規定からすると、両議院の議事を決する過半数の出席議員を選出した主権者の数が、全国民の50%未満の者である場合には、主権を有する国民が主権を行使しているとはいえず、憲法が定める統治が実現されていないこととなる。国民主権を実現するための選挙制度は、人口比例選挙以外になく、実務を考慮した上での技術的観点からみて、合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙は、憲法上の要請であって、本件小 されていないこととなる。国民主権を実現するための選挙制度は、人口比例選挙以外になく、実務を考慮した上での技術的観点からみて、合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙は、憲法上の要請であって、本件小選挙区選挙は、憲法56条2項、1条、前文第1段第1文前段、同第1文後段に違反する。 (2)本件選挙において、各都道府県に配分された議員定数は、平成29年選挙において各都道府県に配分された議員定数と全く同じであり、都道府県のうち11の都県は、1人別枠方式により分配された定数が維持されており、その結果、ある地域の選挙人の投票価値が他の地域の選挙人の0.48票分しかないのであるから、本件選挙区割りが憲法の要求する人口比例選挙に反す - 16 -る違憲状態にあることは明らかである。1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の新区画基準に基づく定数の再配分が行われていない場合に、当該選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態であることは、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷判決において明確に判示されているのであるから、1人別枠方式により配分される定数が維持されている都道府県が存在する本件選挙区割りの下で施行された本件選挙は、違憲状態であったのであり、平成30年大法廷判決は上記各判例を不当に変更するものである。 (3) 平成30年大法廷判決は、本件選挙より後の選挙の選挙区割りの投票較差是正のための立法措置(アダムズ方式採用の立法措置)を、本件選挙時点での選挙の選挙区割りが違憲状態か否かの判断にあたって考慮しているが、本件選挙の違法判断の基準時は処分時たる本件選挙の投票日であるから、選挙の違法性判断の基準時に関する最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁)を不当に変 って考慮しているが、本件選挙の違法判断の基準時は処分時たる本件選挙の投票日であるから、選挙の違法性判断の基準時に関する最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁)を不当に変更するものである。 4 被告らの主張(1) 本件選挙区割りは、平成30年大法廷判決によって違憲状態に至っていないと評価された平成29年選挙時の選挙区割りと同一のものであり、同判決によって、平成27年大法廷判決が判示した違憲状態が解消された旨明示的に判断されている以上、本件選挙区割りが違憲状態に至っているとはいえない。 確かに、本件選挙時には、選挙区間の最大較差が2倍を僅かに上回っており、較差が2倍以上の選挙区も複数存在した。しかし、区割規定やそれに基づく選挙区割りの憲法適合性を判断するに当たっては、最大較差の数値や較差が2倍以上となった選挙区の数という客観的かつ形式的な数値だけでなく、当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや、当該較差を生じさせる要因等も含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮する必要があるところ、 - 17 -①平成28年改正法は、平成22年の大規模国勢調査から平成27年の簡易国勢調査までの人口の増減率に基づき算出した平成32年見込人口を基準としても最大較差を2倍未満とすることを基本とすることとしたものであり、当該増減率と異なる人口移動があったことを要因として、結果的に2倍以上の較差が生じることも当然にあり得るものであり、平成23年から平成27年までの各大法廷判決が問題視してきた1人別枠方式のような選挙制度自体に起因する構造的な問題により2倍以上の較差が生じたものではないこと、②そもそも現行の選挙制度では、選挙制度の安定性の要請を勘案し、10年又は5年単位で選挙区割りの改定を行うこととされてお 制度自体に起因する構造的な問題により2倍以上の較差が生じたものではないこと、②そもそも現行の選挙制度では、選挙制度の安定性の要請を勘案し、10年又は5年単位で選挙区割りの改定を行うこととされており、また、アダムズ方式に基づく議席配分を最初に実施する時期自体も、諸般の事情を考慮した平成28年改正当時の国会の判断により、平成32年(令和2年)の大規模国勢調査以降とされたものであることからすると、平成29年改正以降アダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提とする最初の選挙区割りが決定されるまでの間を含め、将来の10年又は5年単位の選挙区割りの各改定の間に僅かな較差の変動があり得たとしても、10年又は5年単位で選挙区割りを行い、是正するという現行の選挙制度が整備されていること、③アダムズ方式に基づいて都道府県別に定数配分をすれば、都道府県間の最大較差は1. 697倍まで下がることが見込まれ、この都道府県別定数を前提に、国勢調査人口による選挙区間の最大較差が2以上とならないような選挙区割りの改定案の勧告が令和4年6月25日までに行われることが法律上予定されており、前記較差は、早晩、確実に解消される見込みであることなどの諸事情を総合考慮すれば、本件選挙区割りが違憲状態に至っているということはできない。 (2) 仮に、本件選挙区割りが違憲状態にあったと評価されるとしても、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない。 すなわち、平成30年大法廷判決は、平成27年大法廷判決が平成26年 - 18 -選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとした上で、本件区割規定の定める本件選挙区割 りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとした上で、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないと判示しているところ、本件選挙は、平成30年大法廷判決後に初めて行われた総選挙であるから、仮に何らかの事情により同判決における本件選挙区割りに関する評価が覆り、違憲状態に至っているとされるとしても、国会において、そのことを認識すべき契機は一切存在せず、その状態を認識し得ない状況であったことは明らかである。国会は、令和2年の大規模国勢調査の結果による人口(速報値)が最初に官報に公示された以後、区画審における改正案の勧告を待って、同勧告を踏まえた立法措置を講じることを予定しており、それとは異なるタイミングで選挙制度の改定を行うことは、平成28年改正や平成29年改正によって設けられた選挙制度が予定するところと整合しないばかりか、選挙制度の安定性を考慮して令和2年の大規模国勢調査以降にアダムズ方式により議席配分を導入することとした判断に正面から相反するものというべきである。 以上によれば、国会が、本件区割規定の定める本件選挙区割りについて憲法上要求される合理的期間内にその是正をしなかったということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の 方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制 - 19 -度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。 したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最 ところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第176号同19 - 20 -年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決及び平成30年大法廷判決参照)。 2(1) 前記前提事実(2)によれば、本件選挙は、平成29年選挙と同じ区割規定による選挙区割りにより施行されたものであるところ、平成29年選挙の選挙当日における各選挙区における議員1人当たりの選挙人数の較差が最大で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかったのに対し、本件選挙当日における各選挙区における議員1人当たりの選挙人数の較差は、最大で1対2.079となっており、また、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区が29選挙区生じている。平成30年大法廷判決は、平成28年改正法及び平成29年改正法による改正により講じられた立法措置の内容とと 選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区が29選挙区生じている。平成30年大法廷判決は、平成28年改正法及び平成29年改正法による改正により講じられた立法措置の内容とともに、その結果縮小した較差の状況をも考慮した上で、平成29年選挙当時において、区割規定の定める選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判断していることからすれば、本件選挙当日において生じた選挙区間の較差の状況も考慮した上で、本件選挙当時において、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等が、国会の裁量権の行使として合理性を有するといえるかについて、上記1の最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁以降の累次の大法廷判決の趣旨を踏まえて、以下において検討する。 (2)前記前提事実(3)カのとおり、平成28年改正法は、累次の大法廷判決(平成23年から平成27年までの大法廷判決)及び選挙制度調査会の答申を踏まえ、本則において、衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口の較差について、各都道府県の区域内の選挙区の数を平成32年以降10年毎に行われる大規模国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により - 21 -配分した上で、各選挙区間の人口の最大較差が2倍以上にならないようにすること、平成37年以降の簡易国勢調査の結果に基づく各選挙区間の最大較差が2倍以上になったときは、選挙区の安定性を図るとともに較差2倍未満を達成するため、各都道府県の選挙区数を変更することなく、区画審が較差是正のために選挙区割りの改正案の作成及び勧告を行うものとすること、区画審の勧告の期限について、選挙区の改定に関する勧告は、10年ごと又は5年ごとに行われる国勢調査の結果 することなく、区画審が較差是正のために選挙区割りの改正案の作成及び勧告を行うものとすること、区画審の勧告の期限について、選挙区の改定に関する勧告は、10年ごと又は5年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとすること、衆議院議員の定数を10削減(小選挙区選出議員の定数につき6削減)することを定めるとともに、附則において、平成32年の大規模国勢調査までの措置として、平成27年の簡易国勢調査の結果に基づき、各選挙区の人口に関し、平成32年見込人口を踏まえ、平成32年までの5年間を通じて較差2倍未満となるよう区割りを行うなどの措置をとること、小選挙区選挙の定数6減の対象県について、平成27年の簡易国勢調査に基づき、アダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち、議員1人当たりの人口の最も少ない都道府県から順に6県とすること、平成28年改正法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については不断の見直しが行われるものとすることなどを定めている。そして、区画審は、平成28年改正法附則の規定に基づき、上記のとおり各都道府県の選挙区数の0増6減の措置を採ることを前提に、平成27年の簡易国勢調査に基づく選挙区間の人口の最大較差を2倍未満(1.956倍)とするのみならず、平成32年見込人口に基づく選挙区間の人口の最大較差も2倍未満(1.999倍)となるように19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする選挙区割りの改定案の勧告を行い、上記0増6減及びこれを踏まえた選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法を改正する平成29年改正法が成 - 22 -立している。 平成29年改正法による改正後の平成28年改正法に の勧告を行い、上記0増6減及びこれを踏まえた選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法を改正する平成29年改正法が成 - 22 -立している。 平成29年改正法による改正後の平成28年改正法により講じられたこれらの一連の措置は、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めた平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿うものであり、1人別枠方式の下における定数配分の影響を完全に解消し、将来にわたり機能する選挙区間の投票価値の較差の是正を図るための持続性を備えた安定的な仕組みを定めたものであるとともに、選挙制度の安定性を確保する観点から、新たな配分方式を議員定数の配分に反映する時期や配分の見直しの頻度(間隔)、方法等について漸進的な是正を図るものであると評価することができる。 他方、前記(1)のとおり、本件選挙当日における各選挙区における議員1人当たりの選挙人数の較差は、最大で1対2.079となっており、また、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区が29選挙区生じているが、平成30年大法廷判決により平成29年選挙当時において、憲法14条1項等に違反するものではないとされた区割規定による選挙区割りと同じ選挙区割りにより施行された本件選挙の選挙当日の選挙人数の較差が平成29年選挙時に比べて拡大したのは、平成32年の大規模国勢調査までの間の措置として、平成32年見込人口(平成27年の簡易国勢調査による人口に平成22年の大規模国勢調査から平成27年の簡易国勢調査までの人口の増減率を乗じて得た人口)を踏まえ、平成32年までの5年間を通じて較差が2倍未満となるように行った選挙区割りについて、前記増減率と異なる人口移動があったことにより生じたものである(前記前提事実(3)ク)。この点については、前記 え、平成32年までの5年間を通じて較差が2倍未満となるように行った選挙区割りについて、前記増減率と異なる人口移動があったことにより生じたものである(前記前提事実(3)ク)。この点については、前記のとおり、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法は、選挙制度の安定性を確保する観点から、10年又は5年単位で選挙区割りの改定を行うこととしているのであるから、アダムズ方式に基づく都道府県別の議員定数を前提 - 23 -とする最初の選挙区割りが決定されるまでの間を含め、10年ごと又は5年ごとの選挙区割りの改定の間に人口の移動に伴い較差の変動があり得ることを前提とした上でこれを是正する仕組みを設けているということができる。そして、本件選挙当日における各選挙区における議員1人当たりの選挙人数の較差は、最大で1対2.079であり、2倍を少し超えるにとどまっており、平成32年大規模国勢調査の結果に基づいて選挙区間の最大較差が2倍以上とならないような選挙区割りの改定案の勧告が令和4年6月25日までに行われることが法律上定められており、解消される見込みである。 以上の平成29年改正法による改正後の平成28年改正法により講じられた立法的措置の内容及びその評価、本件選挙当時の較差の状況(較差の程度及び較差が生じた要因)などの事情を総合考慮すると、本件選挙当時において、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するということができるから、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件選挙区割りが憲法に違反しているということはできない。 (3) 原告らは、本件選挙が憲法56条2項、1条、前文第1段第1文前段、同第1文後段により 要求に反する状態にあったということはできず、本件選挙区割りが憲法に違反しているということはできない。 (3) 原告らは、本件選挙が憲法56条2項、1条、前文第1段第1文前段、同第1文後段により要請される人口比例選挙に反する旨主張するが、前記で説示したところからすれば、理由がない。 また、原告らは、1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の新区画基準に基づく定数の再配分が行われていない場合に、当該選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態であることは、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷判決において明確に判示されているから、1人別枠方式により配分される定数が維持されている都道府県が存在する本件選挙区割りの下で施行された本 - 24 -件選挙は、違憲状態であったのであり、平成30年大法廷判決は上記各判例に反する旨主張する。しかし、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷判決が、投票価値の較差の程度及び較差が生じた要因を問わずに、直ちに、旧区画審設置法3条2項の1人別枠方式の定めや同条項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数の配分がされていることが違憲状態にある旨判示していると認めることはできないから、原告らの前記主張は理由がない。 また、原告らは、平成30年大法廷判決は、本件選挙より後の選挙の選挙区割りの投票較差是正のための立法措置(アダムズ方式採用の立法措置)を、本件選挙時点での選挙の選挙区割りが違憲状態か否かの判断にあたって考慮しているが、本件選挙の違法判断の基準時は処分時たる本件選挙の投票日であるから、選挙の違法性判断の基準時に関する最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁)を不当に変更 て考慮しているが、本件選挙の違法判断の基準時は処分時たる本件選挙の投票日であるから、選挙の違法性判断の基準時に関する最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁)を不当に変更するものである旨主張する。しかし、平成30年大法廷判決は、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの前提となる制度が漸進的なものであるとの評価を行う上で、平成32年以降10年毎に行われる国勢調査の結果に基づく各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うことによって1人別枠方式の下における定数配分の影響を完全に解消させる立法措置が平成29年選挙当時講じられているという事情を考慮しているのであるから、違憲判断の基準時の解釈に反するということはできない。 3 以上によれば、本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法に違反するものということはできない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 - 25 -福岡高等裁判所宮崎支部 裁判長裁判官高橋亮介 裁判官石山仁朗 裁判官新城博士(当事者の表示は省略) 士(当事者の表示は省略)

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