主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。 (2)(主位的申立)被控訴人らの控訴人らに対する本件訴えをいずれも却下する。 (3)(予備的申立)主文第2項と同旨(4) 主文第3項と同旨 2 被控訴人ら(1) 本件控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事実関係 1 本件は,資本金が300万円であった控訴人株式会社知多環境センター(以下「控訴人会社」という。)が,平成2年改正商法の最低資本金制度の導入により,増資により資本金を1000万円としなければ組織変更をせざるを得ず,これを放置するとみなし解散とならざるを得ない状況下で,新株発行を行ったとし,その旨の登記がなされているところ,同社の株主である被控訴人らが,その新株発行手続に重大な瑕疵があり,法的評価においては新株発行が不存在であるとして,控訴人会社に対し,新株発行不存在の確認を求めるとともに,新株を引き受けたとする控訴人Aに対し,株主権不存在の確認を求めた事案の控訴審である。 2 争いのない事実(1) 控訴人会社は,昭和53年3月2日に設立された株式会社であり,設立当時の商号は「株式会社林建設」で,主要な営業内容は土木工事業であったが,昭和59年以降,一般廃棄物及び産業廃棄物の処理業に業種転換し,平成3年3月25日,現在の商号に変更し,同年4月1日その旨登記した。 (2) 被控訴人らは,控訴人会社の設立時からの株主であり,被控訴人Bの妻が被控訴人Cであり,Dは被控訴人Bの実母である。 (3) 控訴人会社は,資本金300万円で設立されたが, 1日その旨登記した。 (2) 被控訴人らは,控訴人会社の設立時からの株主であり,被控訴人Bの妻が被控訴人Cであり,Dは被控訴人Bの実母である。 (3) 控訴人会社は,資本金300万円で設立されたが,平成7年10月27日新株を発行したとし,設立時の発行済株式の総数6000株,資本の額300万円を,発行済株式総数2万株,資本の額1000万円に変更され,同年11月8日その旨の登記を了した。 (4) 控訴人らは,上記新株発行による新株式1万4000株(以下「本件新株発行」という。)につき,控訴人Aが株主権を有する旨主張する。 3 争点(1) 本件新株発行不存在確認の訴え及び本件株主権不存在確認の訴えの適否ア控訴人らの主張(ア) 新株発行不存在確認の訴えについても,新株発行無効の訴えにおける出訴期間制限の定めである商法280条の15第1項の類推適用があるから,本件新株発行不存在確認の訴えは,本件新株発行の登記の日(平成7年11月8日)から6か月を経過した後に提起されたものであり,不適法である。 (イ) 被控訴人らの当事者適格の欠如a 新株発行不存在確認の訴えが新株発行無効の訴えに準じて認められる特別の訴えであり,会社を被告としてのみ提起することが許されるとともに,原告適格についても,同様に商法280条の15第2項の規定が類推適用される。 b 控訴人会社においては,設立後,法規に従った株主総会や取締役会は開かれたことはなく,設立者である亡Eやその長男であるFの意向にそって,単に登記などの届出のために必要な限度で株主総会や取締役会の議事録が作成されていた。控訴人会社は,亡Eが死亡した平成2年2月3日以降は,Fの意向にそって控訴人会社が運営され,本件訴訟提起前までは,F以外の甲一族の株主が会社の運営に関心を持っていなかった。Fは,亡Eの跡継ぎ いた。控訴人会社は,亡Eが死亡した平成2年2月3日以降は,Fの意向にそって控訴人会社が運営され,本件訴訟提起前までは,F以外の甲一族の株主が会社の運営に関心を持っていなかった。Fは,亡Eの跡継ぎとして控訴人会社の経営を取り仕切り,Fら以外の被控訴人らを含めた一族の者は,実質的には会社の意思決定に全く関与することはなかった。控訴人会社は,亡E死亡のころ前までは,実質的にFがその株式全てを保有する一人会社と化していた蓋然性が高く,遅くとも,亡E死亡のころ以降は,被控訴人らは,株主としてではなく,ただ単に登記簿上の名目的な取締役,監査役として行動していたにすぎない。 よって,被控訴人らは,実質的に株主たる地位を有せず,本件新株発行不存在確認の訴えについて,当事者適格を有しない。 (ウ) 被控訴人らの株主権不存在確認請求についての訴の利益の欠如被控訴人らは,上記のとおり,実質的に控訴人会社の株主ではないというべきであるから,控訴人Aに対する株主権不存在確認請求について,確認の利益は存在しないというべきである。 (エ) 訴権の濫用a 控訴人会社においては,株主総会,取締役会の開催等の会社の意思決定につき,総株主及び取締役会間において,商法上の厳格な規定のとおり行うのではなく,これを簡略化し,甲家の跡取りで亡Eの長男であるFに一任する旨の合意がなされていた。 b 被控訴人らは,控訴人会社の取締役ないし監査役でありながら,実質的には,登記簿上だけの形式的な存在であり,その任務を果たしていなかった。 cFは,昭和62年8月31日から昭和63年10月20日までの間,控訴人会社の廃棄物処分場の事故が原因で,刑事責任を追及され服役した。その少し前ころに,控訴人Aの父親である訴外GはFや被控訴人Bから依頼を受けてFを援助するようになり,同人が出所後 0日までの間,控訴人会社の廃棄物処分場の事故が原因で,刑事責任を追及され服役した。その少し前ころに,控訴人Aの父親である訴外GはFや被控訴人Bから依頼を受けてFを援助するようになり,同人が出所後も,訴外Gが継続的に援助をした。 平成2年終わりころ,訴外Gが控訴人会社の取締役に就任し,平成3年3月に控訴人会社の商号を変更して,訴外Gが代表取締役に就任した。その後,控訴人Aが代表取締役に就任して,Fを介して被控訴人らを含む甲一族の了承を得ながら,控訴人会社の意思決定を行ってきた。 d ところが,平成10年3月ころ,税務調査が入り,控訴人会社の経理処理を独立に行うよう指導があり,それまで,Fが収受し,個人の借金の返済に充てていた訴外株式会社コーエイディスポウズ(以下「訴外コーエイ」という。)の処分料について,Fの借金返済がいつまでも終了しないことに疑問を抱いた訴外Gや控訴人Aから,訴外コーエイの処分料を控訴人会社に支払うよう要請したところ,被控訴人らは本件訴えを提起してきた。 e 訴外Gや控訴人Aは,F及び被控訴人らを含めた甲一族との間で協力関係を形成し,同人らの利益のため協力していたにもかかわらず,被控訴人らは,自ら関与し,少なくとも事情を十分知り,長年容認しておきながら意思決定手続の瑕疵を根拠にそれまで認めていた本件新株発行の存在を争うに至ったものである。 被控訴人らによる本件訴えの主たる目的は,本件新株発行を不存在とすれば,控訴人A及び訴外Gの控訴人会社に対する影響力を排除することができ,従前の訴外コーエイの処分料をFに環流させる処理を維持継続できると考えたもので,専ら,会計処理上正当でない処理を維持,継続することにある。 よって,被控訴人らの控訴人Aに対する本件訴えは,信義誠実の原則ないし禁反言に反するもので,却下される 理を維持継続できると考えたもので,専ら,会計処理上正当でない処理を維持,継続することにある。 よって,被控訴人らの控訴人Aに対する本件訴えは,信義誠実の原則ないし禁反言に反するもので,却下されるべきである。 f また,控訴人会社に対する本件新株発行不存在確認の訴えは,その請求認容判決が第三者である訴外G及び控訴人Aに対してもその効力を有することから,同人らに対する信義則違反,禁反言の原則に違反するものになることは同様であり,これも訴権の濫用となる。 イ被控訴人らの主張(ア) 新株発行不存在確認の訴えという訴訟類型が認められるのは,出訴期間という時間的経過によっても新株発行の手続,内容が治癒されない場合があり,そのような新株の効力否定宣言を可能にしようとするところにあるから,この訴えを出訴期間の制限に服させるのは,背理とさえいえる。 (イ) 訴権の濫用について本件においては,被控訴人らには,控訴人Aらに対する関係で,本件新株発行不存在確認の訴えを提起すること自体を信義則違反とする禁反言的な行為が提訴前にはなく,訴権の濫用に当たらない。 また,本件訴えは,被控訴人らの父が作った甲家の会社が,G側に事実上飲み込まれたことを知り,甲家に会社を取り戻すべく提起したものであり,本件新株発行が不存在となれば会社の解散に結びつき,控訴人会社の継続も当然不可能となることは認識している。 (2) 本件新株発行が不存在か,控訴人Aは株主権を有するか否か。 ア被控訴人らの主張(ア) 新株発行は,その決定から始まって変更登記や新株の株券発行を最終的な手続とする一連の行為の集積であり,その行為の欠落が実体不存在なのか,実体はあるが,瑕疵があるとの評価を受けるのかは截然と区別することは困難であり,実体があると言えるかは,あると認定した要素の意味,重要 する一連の行為の集積であり,その行為の欠落が実体不存在なのか,実体はあるが,瑕疵があるとの評価を受けるのかは截然と区別することは困難であり,実体があると言えるかは,あると認定した要素の意味,重要性などに対する規範的評価を離れてはありえない。 そこで,新株発行不存在事由としては,①物理的,外形的に新株発行に該当する事実が全く存在しない場合と,②新株発行自体は物理的,外形的には存在するが,その手続的瑕疵が著しいため不存在と法的に評価される場合があり,具体的事案において,出訴期間という時間の経過によっても治癒を認め難い程の重大な瑕疵か否かの観点から検討するのが有益かつ適切である。本件においては,以下の事由により,その発行手続の瑕疵が著しく,本件新株発行は不存在と評価すべきである。 a 有効な選任を受けていない代表取締役による発行本件新株発行当時の控訴人会社の代表取締役は,登記簿上は,平成7年5月8日に控訴人Aが控訴人会社の取締役及び代表取締役に重任された旨の記載があるが,控訴人Aを取締役に選任する株主総会も控訴人Aを代表取締役に選任する取締役会も開催されておらず,選任決議も存在しない。 b 新株発行に関する取締役会決議の不存在法務局に変更登記手続に際して添付書類として提出された取締役会議事録には,平成7年10月7日控訴人会社本店会議室において取締役会が開催されて,本件新株発行が決議された旨記載されているが,そのような取締役会は開催されておらず,本件新株発行の決議も存在しない。 c 株主の新株引受権の侵害(商法280条の5の2違反)控訴人会社においては,その株式を譲渡するためには取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあるので,被控訴人ら株主は新株引受権を有しており,発行する新株の額面無額面の別,種類及び数については,株主総会 訴人会社においては,その株式を譲渡するためには取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあるので,被控訴人ら株主は新株引受権を有しており,発行する新株の額面無額面の別,種類及び数については,株主総会の特別決議で決定しなければならないのに,本件新株発行については,株主総会の招集,開催すらなく,新株発行の上記事項を決定した株主総会は存在しない。 d 公示義務違反(商法280条の3の2違反)新株発行については,違法な新株発行に対し株主が差止請求権を行使する機会を保障するために,払込期日の2週間前に,新株発行事項を公示しまたは株主に通知することが義務づけられているにもかかわらず,本件新株発行に関する新株発行事項は,公示されていないし,被控訴人らをはじめとする株主に対して,通知もされていない。 (イ) 以上によれば,本件新株発行は,その瑕疵が著しく,不存在と評価すべきであり,本件新株発行による新株式(1万4000株)を引き受けたとする控訴人Aは,控訴人会社の株式を有しない。 イ控訴人らの主張(ア) 新株発行無効の訴えについては,株主総会決議のように手続的瑕疵,内容的瑕疵の区別なく,すべてが新株発行無効の訴えの対象とされており,いずれも発行の日から6か月の出訴期間制限が課され,しかも,無効事由は一般的に限定的に理解され,重大な瑕疵のみが無効事由とされている。 したがって,このような商法の規制方法の下で新株発行の不存在事由を広げることはできず,不存在事由は株主総会決議の不存在よりもさらに限定されているというべきである。すなわち,新株発行の不存在は,新株発行の事実が物理的,外形的に全く存在しないにもかかわらず,新株が発行されたような外観(登記,偽造株券の発行,新株発行について虚偽の記載をした計算書類の備置等)がある場合(実体不存在の場合)に 新株発行の事実が物理的,外形的に全く存在しないにもかかわらず,新株が発行されたような外観(登記,偽造株券の発行,新株発行について虚偽の記載をした計算書類の備置等)がある場合(実体不存在の場合)に限定されるべきである。 (イ) 本件においては,Fを介して連絡したうえで被控訴人らを含めた甲一族株主と会合をもち,そのような形で,これまで控訴人会社の取締役会,株主総会等の開催を行い,甲一族の了解のもとで議事録等を作成し,手続をしていた。 商法上の厳格な手続を必ずしも履践していなかったからといって,直ちに手続的瑕疵の存在を超えて,新株発行の実体不存在までも意味するものではない。 本件では,法規に従った株主総会,取締役会の不開催と両立し,かつ,新株発行の存否の判断に影響する次の事由がある。 a 控訴人会社においては,跡取りであるF以外の甲一族の株主らは,いずれも名目的な取締役,監査役,株主にすぎず,取締役会決議を要する事項,株主総会決議を要する事項についても,ほぼ,Fが単独で決めていた。 したがって,控訴人会社のような同族会社においては,現実に経営の実権を掌握する者の判断を実質取締役会や株主総会の決議に変わるものと位置づけても,あながち不当とはいえない。 b 本件の新株発行においては,少なくとも,総株主,役員の同意,了承があったことが推認される。すなわち,被控訴人らは,訴外G及び控訴人Aが代表取締役であることをその就任当初から認識し,控訴人会社と取引を行い,本件訴訟の直前に至るまで全く異議を述べていない。また,訴外G及び控訴人Aが就任する以前の代表取締役であったFも,株主総会や取締役会の決議を経ることなく,被控訴人らを含めた総株主,役員の同意のもとで代表取締役に就任し,業務を行ってきた。 仮に選任決議に瑕疵があったとしても,すでに出訴期 取締役であったFも,株主総会や取締役会の決議を経ることなく,被控訴人らを含めた総株主,役員の同意のもとで代表取締役に就任し,業務を行ってきた。 仮に選任決議に瑕疵があったとしても,すでに出訴期間の経過により治癒されており,少なくとも,本件新株発行の不存在を導くほどの瑕疵はない。 また,控訴人会社の設立当初の代表取締役はFであり,法規に従った株主総会,取締役会が恒常的に不開催であり,その後に取締役に就任した者は一切取締役でなかったとすると,本件新株発行当時においても,控訴人会社の代表取締役は,設立当初の代表取締役であったFであり,本件新株発行については,Fが了承し,同人自ら本件新株発行の登記手続を行い,その後何らの異議の申入れもしていないから,全く実体の存在しないものということはできない。 c 本件新株発行に伴う出資金700万円は,控訴人Aが出捐し,控訴人会社は,入金された700万円を控訴人会社の運用資金として利用したものであって,資本充実の実体を有しており,新株発行は不存在とはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 まず,控訴人らの本案前の主張である争点(1)について検討する。 (1) 出訴期間の制限について商法は,商法上の特別の訴えとして新株発行無効の訴えを定め,出訴期間,原告適格を制限するとともに新株発行を無効とする判決には対世効を与えているが(同法280条の15ないし18),その趣旨は,新株発行に無効原因がある場合であっても,その新株発行を前提として形成される法律関係をいつまでも覆しうるとするのは相当ではなく,これを早期かつ画一的に確定する必要があることによるものと解される。一方,商法は,新株発行不存在確認の訴えについては何ら規定するところがないが,新株発行の実体が全く存在しないというべき場合には,新株発行の登記がされて に確定する必要があることによるものと解される。一方,商法は,新株発行不存在確認の訴えについては何ら規定するところがないが,新株発行の実体が全く存在しないというべき場合には,新株発行の登記がされているなど何らかの外観があるために,新株発行の不存在を主張する者が訴訟によってその旨の確認を得る必要のある事態が生じ得ることは否定できず,新株発行の不存在についても,新株発行に無効原因がある場合と同様に,対世効のある判決をもってこれを確定する必要があるので,新株発行無効の訴えに準じて新株発行不存在確認の訴えを肯定すべきである(最判平成9年1月28日民集51巻1号40頁参照)。 そして,この新株発行不存在確認の訴えについては,登記等の外観が存するのみで実体的に新株発行に該当する事実が全く存在しない場合等,時の経過によって新株発行が適法とされることが相当でなく,法律関係の早期安定の要請や,株式取引の安全の要請も全く働かないような場合には,出訴期間を制限することできず,新株発行無効の訴えに関する出訴期間の制限規定の類推適用を認めるべきではない。 一方,新株発行の手続に瑕疵があり,その効力が認められないときは,新株発行無効の訴えによるべきであって,商法280条の15第1項の出訴期間の制限に服するものである。その際,上記のとおり,新株発行無効の訴えが新株発行の効力をめぐる法律関係を早期かつ画一的に確定しようとするものであるから,瑕疵の程度が著しい場合であっても,新株発行の実体が存在する以上,新株発行無効の訴えによることなく新株発行不存在確認の訴えによって出訴期間の制限を免れることはできないというべきである。 そして,新株発行の実体が存在しない場合とは,新株発行の手続が全く行われず,新株の引受け,払込が何らなされていないとき,及び新株発行が代表権 訴期間の制限を免れることはできないというべきである。 そして,新株発行の実体が存在しない場合とは,新株発行の手続が全く行われず,新株の引受け,払込が何らなされていないとき,及び新株発行が代表権限のない者によって行われ,会社の行為とは認められない場合等をいうものであって,これらの事実はあるが,新株発行の手続のため必要な株主総会,取締役会の決議を欠くとか,通知,公告を欠く等の手続の瑕疵があるという場合は,新株発行の実体がないとはいえないものである。 以上の見地に基づき,新株発行不存在確認の訴えについては,新株発行の実体がないとの主張について判断するものであり,そうである以上,出訴期間制限の類推適用の問題は生じないというべきであって,控訴人らの争点(1)ア(ア)の主張は失当である。 (2) 被控訴人らの当事者適格について控訴人らは,被控訴人らが実質的に株主たる地位を有しないとして,本件新株発行不存在確認の訴えの当事者適格を有しない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲1,5ないし7,証人F,同G)によれば,被控訴人らは,別紙のとおり設立時に払込金額欄記載の金員を払込み,控訴人会社設立により株主となったこと,控訴人会社の代表取締役であったF,訴外G及び控訴人Aらは被控訴人らを株主として処遇していたことが認められるので,被控訴人らが実質的に株主ではないとはいえず,他にこれを認めるに足る証拠はない。そして,被控訴人らが控訴人会社の経営をFに事実上一任していたことがあったとしても,被控訴人らが控訴人会社の株主でないとはいえないので,控訴人らの上記主張は採用できない。 (3) 被控訴人らの訴の利益について控訴人らは,被控訴人らが実質的に控訴人会社の株主ではないとして,控訴人Aに対する株主権不存在確認請求との関係では,訴えの利益がない旨主張 張は採用できない。 (3) 被控訴人らの訴の利益について控訴人らは,被控訴人らが実質的に控訴人会社の株主ではないとして,控訴人Aに対する株主権不存在確認請求との関係では,訴えの利益がない旨主張するが,上記(2)のとおり,被控訴人らは控訴人会社の株主であると認められるから,控訴人らの主張は採用できない。 (4) 訴権の濫用についてア控訴人らは,控訴人Aが被控訴人らの利益のため控訴人会社を経営し協力してきたこと,被控訴人らが控訴人会社の意思決定手続の瑕疵を長年容認してきたのに本件新株発行の存在を争うに至ったこと,本件訴えの目的が会計処理上正当でない処理の維持継続にあることを理由に,被控訴人らの控訴人Aに対する本件訴えは,信義誠実の原則ないし禁反言に反する旨主張する。 証拠(甲6,7,証人F,被控訴人B)によれば,控訴人Aが,被控訴人らの利益のために控訴人会社を維持経営してきたこと,被控訴人ら甲家一族の株主らは,控訴人会社の株主総会や取締役会に関心をもたず,Fに控訴人会社の経営を委ね,さらにFが訴外Gや控訴人Aにその経営を委ねていたこと,平成7年10月にFが控訴人Aに依頼されて本件新株発行の登記申請を行い,その後,本件訴訟の直前に至るまで,被控訴人らはFから本件新株発行の事実を聞いていなかったこと,控訴人Aと被控訴人らとの間には,控訴人会社の経営者と株主という関係以上のものはないこと,被控訴人らが本件訴訟を提起した目的は,Fから本件新株発行の事実を聞き及び,その是正を図るためであったこと,平成3年2月25日,被控訴人Bは,訴外コーエイを設立し,同社が控訴人会社の処分場に廃棄物を持ち込むとその処分料は控訴人会社にではなく,F個人に払っており,訴外Gもこれを了解していたが,平成9年暮れころに訴外Gが訴外コーエイに対し,控訴人会社に処 立し,同社が控訴人会社の処分場に廃棄物を持ち込むとその処分料は控訴人会社にではなく,F個人に払っており,訴外Gもこれを了解していたが,平成9年暮れころに訴外Gが訴外コーエイに対し,控訴人会社に処分料を支払うよう要請したため,訴外コーエイが数回これを支払ったものの本件訴えが提起されたころには,支払がなされなくなったことがそれぞれ認められる。しかしながら,これらの事実から直ちに被控訴人らが控訴人Aに対する本件訴えが訴権の濫用にあたるといえるものではなく,他に控訴人ら主張の信義則違反ないし禁反言にあたる行為を認めるに足りる証拠はない。 したがって,控訴人らの主張は採用できない。 イ控訴人らは,控訴人会社に対する本件新株発行不存在確認の訴えの判決が対世効をもち,控訴人Aらに対しても効力を及ぼすことから,控訴人Aに対する本件訴えと同様に,被控訴人らの控訴人会社に対する上記本件訴えも信義則に違反し,禁反言にあたるから,訴権の濫用にあたる旨主張する。 しかしながら,上記説示のとおり,被控訴人らの控訴人Aに対する本件訴えが信義則違反ないし禁反言にあたると認めることができないから,控訴人会社に対する本件訴えも訴権の濫用にあたるとの上記主張は,前提事実が認められないのであり,他に同訴えが訴権の濫用にあたるとの事実は認められないので,控訴人らの主張は採用できない。 (5) 以上のとおりであるから,控訴人らの本案前の主張はいずれも失当である。 2 そこで,本件の本案主張である争点(2)について判断する。 (1) 本件新株発行の存否についてア前記争いのない事実及び証拠(甲1ないし3,4の1ないし5,5ないし7,乙1,2の1ないし4,4,証人F,同訴外G,同H,被控訴人B)によれば,次の事実が認められる。 被控訴人ら及びFの父である亡Eは,昭和34,5 及び証拠(甲1ないし3,4の1ないし5,5ないし7,乙1,2の1ないし4,4,証人F,同訴外G,同H,被控訴人B)によれば,次の事実が認められる。 被控訴人ら及びFの父である亡Eは,昭和34,5年ころ,甲組の屋号で土木建設業を興し,昭和53年3月2日,控訴人会社を設立した。その出資者は,別紙のとおりであり,大半は甲家の一族で,その他の出資者は知人や当時の従業員であった。Fは,長男であり,20歳ころから亡Eの土木建設業を手伝い,法人化後,暫くしてから,控訴人会社の代表取締役として亡E(平成2年2月3日死亡)とともに経営にあたるようになった。 F以外の被控訴人Bら甲家の株主らは,控訴人会社の日常業務に全く関与しておらず,株主総会や取締役会が開かれたことはなく,取締役等の役員選任の登記等に関する必要書類については,亡E及び代表取締役であったFの指示に基づき,司法書士が株主総会議事録を形式的に作成していた。控訴人会社は,昭和56年に経営が著しく悪化し,建設業を維持するのが困難となった。そこで,Fは,昭和59年ころから廃棄物処理業に業種転換を図った。昭和60年8月9日,控訴人会社の作業現場で子供の死亡事故が発生し,Fが刑事責任を問われ,昭和62年8月31日から昭和63年10月20日の間,服役した。Fは服役直前に訴外Gに対し,知多市内の廃棄物の廃棄場所を提供したことから面識ができ,出所後の昭和63年11月2日ころから,控訴人会社の経営について訴外Gと協力関係に入ることとなった。訴外Gは,登記簿上,平成2年12月,控訴人会社の取締役に就任し,平成3年3月,控訴人会社の商号を「株式会社知多環境センター」に変更するとともに,代表取締役に就任したことになっているが,取締役選任のための株主総会や,代表取締役選任のための取締役会は開催されたことはなく, 月,控訴人会社の商号を「株式会社知多環境センター」に変更するとともに,代表取締役に就任したことになっているが,取締役選任のための株主総会や,代表取締役選任のための取締役会は開催されたことはなく,すべてFと訴外Gの2人の話合いだけに基づいて行われていた。その後,平成5年4月,訴外Gは,Fの同意のもとに,実子の控訴人Aを控訴人会社の代表取締役として登記したが,実際には,訴外Gが控訴人会社の経営を行っており,控訴人Aの取締役及び代表取締役の選任について,株主総会や取締役会が開催されたことはなかった。 また,株主である被控訴人ら甲家の一族は,控訴人会社の経営に関心はなく,FやG父子にその経営を委ねていた。 控訴人会社の資本金は300万円であったが,平成2年の商法改正により,増資して資本金を1000万円にしないと,株式会社以外の会社に変更するか,そうでないと解散するという状況にあったが,みなし解散の期限が迫ったため,控訴人Aは,平成7年10月26日,控訴人会社の新株発行により資本金を700万円増額することとして,自ら同額を払込取扱銀行である愛知銀行桑名支店に払込み,Fは控訴人Aに依頼され,同年11月8日,自ら法務局へ登記書類(甲4の1ないし5)を持参して,資本の額及び発行済株式の総数の変更登記申請をした。 イ甲4の2(臨時株主総会議事録)には,平成7年10月7日午前10時50分から,控訴人会社本店において臨時株主総会を開催し,本件新株発行を承認可決した旨の記載があり,甲4の3(取締役会議事録)には,同日午前10時から控訴人会社本店会議室において取締役会を開催し,本件新株発行に関する決議をした旨の記載がある。また,乙21(Gの陳述書)の記載及び証人Gの供述部分には,本件新株発行手続について,株主総会及び取締役会が平成7年10月7日午前に 取締役会を開催し,本件新株発行に関する決議をした旨の記載がある。また,乙21(Gの陳述書)の記載及び証人Gの供述部分には,本件新株発行手続について,株主総会及び取締役会が平成7年10月7日午前に,被控訴人Dの経営する焼肉店Iにおいて開催された旨の記載部分ないし供述部分がある。 しかしながら,甲11,12の1,2,証人F,同Hの証言によれば,平成7年10月7日午前には,名古屋市内の結婚式場において,Fの長女の結婚披露宴が行われ,商業登記簿上の取締役である被控訴人B及びJが出席していること,上記各議事録は,訴外Gの部下であるHが訴外Gの指示に従って作成したにすぎないことが認められる。したがって,上記各記載部分ないし供述部分は採用できない。 また,控訴人らは,平成7年5月8日に開催された定時株主総会において,最低資本金を満たすため700万円分の新株発行を行うことを,甲家一族株主全員に知らされていた旨主張し,証人Gもその旨供述するが,甲9及び10,被控訴人B本人尋問の結果によれば,同日ころ,被控訴人Bは,オーストラリアに旅行中であったことが認められるので,証人Gの上記証言は採用できない。 ウ以上の事実によれば,本件新株発行手続は,適法な株主総会及び取締役会の議決を経たものではなく,また,新株発行事項の公示,通知がなされておらず,控訴人Aが控訴人会社の代表取締役として登記されているものの適法な選任手続を経ていない点において,手続上重大な瑕疵を有しているものではあるが,他方,控訴人会社は,甲家一族が大半の株式を所有し,その経営を甲家の跡継ぎである亡Eの長男Fが行うことを了解していたこと,その後,Fから訴外G,控訴人Aへと経営を委任し,Fは,控訴人Aらが登記簿上代表取締役となることを了解していたこと,控訴人Aらが適法な選任手続を経ないで代表 Eの長男Fが行うことを了解していたこと,その後,Fから訴外G,控訴人Aへと経営を委任し,Fは,控訴人Aらが登記簿上代表取締役となることを了解していたこと,控訴人Aらが適法な選任手続を経ないで代表取締役になっているため,法的にはFが控訴人会社の代表取締役であるというべきであるところ,Fは,本件新株発行に関してその内容を同意して株式数,資本の額の変更登記申請を自ら行って,登記簿上の代表取締役である控訴人Aの行為を追認し,その旨の登記をなしていること,新株の引受人である控訴人Aは,株式払込金700万円を実際に払込取扱銀行に払込み,控訴人会社の資本充実に欠けることはないことが認められるから,このような場合,本件新株発行は実体は存在していると評価することができる。 したがって,被控訴人らの本件新株発行不存在確認の請求は,理由がないので,これを棄却すべきである。 (2) 控訴人Aの株主権について上記(1)の認定,判断によれば,本件新株発行は存在し,控訴人Aが本件新株を引き受け,払込金全額を払込んでいることが認められるので,本件新株につき株主権を有することとなる。 なお,本件新株発行の手続には重大な瑕疵があることがうかがわれるが,本件新株発行についての新株発行無効の訴えは既に出訴期間が徒過していることが明らかであって,これを無効とする余地がないのであるから,控訴人Aの本件新株についての株主権は適法なものというべきである。 よって,被控訴人らの控訴人Aが本件新株の株主権を有しないことの確認を求める請求は理由がなく,これを棄却すべきである。 第4 結論以上のとおりであるから,被控訴人らの請求をいずれも認容した原判決は失当であるので,控訴人らの控訴に基づき,これを取り消して,被控訴人らの主位的本案前の申立は失当であるので,被控訴人らの請求に 論以上のとおりであるから,被控訴人らの請求をいずれも認容した原判決は失当であるので,控訴人らの控訴に基づき,これを取り消して,被控訴人らの主位的本案前の申立は失当であるので,被控訴人らの請求について判断し,被控訴人らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法67条,61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官大内捷司裁判官川添利賢裁判官玉越義雄(別紙)昭和53年控訴人会社設立時の出資者(株主)ア F 2000株払込金額100万円イ亡E 1000株 50万円(平成2年2月3日死亡)ウ B 600株 30万円エ J 400株 20万円オ K 200株 10万円(Fの妻)カ D 200株 10万円(Fの母)キ L 200株 10万円(Fの妹)ク C 200株 10万円(Bの妻)ケ M 200株 10万円コ N 200株 10万円サ O 200株 10万円シ P 200株 10万円ス Q 200株 10万円セ R 200株 10万円合計 6000株 300万円
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