平成15(ワ)1068 地位確認等(通称 プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク配転)

裁判年月日・裁判所
平成16年8月31日 神戸地方裁判所
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判決文本文48,755 文字)

主文 1 原告と被告プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク(以下「被告会社」という。)との間において,被告会社が平成14年1月17日付けでなした配置転換命令に,原告が従う義務がないことを確認する。 2 被告会社は,原告に対し,平成14年2月から平成15年4月までの各月につき,別紙1未払賃金一覧表・未払賃金額欄記載の各金員並びに同各金員のうち同年1月分の金員を除く各金員に対する同一覧表・支給日欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金63万9246円に対する同年1月26日から同年9月24日まで年5分の割合による金員及び内金36万9246円に対する同月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 3(1) 被告会社は,原告に対し,本判決確定の日まで,平成15年5月から毎月25日限り金63万9246円,同年以降,毎年6月の第1金曜日限り金171万円,毎年12月の第1金曜日限り金176万7000円(但し,同年12月5日は金159万9800円)を支払え。 (2) 原告の被告会社に対する本判決確定の日の翌日以降に期限が到来する賃金(給与及び賞与)の請求にかかる訴えを却下する。 4(1) 被告らは,原告に対し,連帯して,金150万円及びこれに対する被告会社は平成15年5月24日から,被告P1は同年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 原告の被告らに対するその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,これを7分し,その1を原告の,その余を被告らの負担とする。 6 この判決は,主文第2項,第3項(1),第4項(1)に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 主文第1,2項同旨。 2 被告会社は,原告に対し,平成15年5月から毎月25日限り63万9246円, ),第4項(1)に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 主文第1,2項同旨。 2 被告会社は,原告に対し,平成15年5月から毎月25日限り63万9246円,同年以降,毎年6月の第1金曜日限り171万円,毎年12月の第1金曜日限り金176万7000円(但し,同年12月5日は159万9800円)を支払え。 3 被告らは,原告に対し,連帯して,500万円及びこれに対する被告会社は同年5月24日から,被告P1は同年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,被告会社のマーケット・ディベロップメント・オーガニゼーション部門(以下「MDO」という。)においてコンシューマー・マーケティング・ナリッジと呼ばれる市場調査(以下「CMK」という。)を担当していたところ,被告会社から退職を勧奨され,これを拒否すると,自主的に退職するよう追い込む目的で,仕事を与えずに降格することなどを内容とするスペシャル・アサインメント(特別任務。以下「本件スペシャル・アサインメント」という。 )を通告されるなどの嫌がらせを受け,さらにその後,単純な事務作業を担当する部署へ異動させ,降格することなどを内容とする配転命令(以下「本件配転命令」という。)を受け,これに従うことを拒否すると賃金の支払を停止されたが,本件スペシャル・アサインメント及び本件配転命令は,いずれも違法,無効であると主張して,原告が,本件配転命令に従う義務がないことの確認と,被告会社に対して賃金(給与及び賞与)の支払を求めるとともに,被告会社並びに本件スペシャル・アサインメント及び本件配転命令を含む被告会社による一連の行為を主導した被告P1に対し,労働契約上の配慮義務違反(被告会社)ないし不法行為責任(被告ら)に基づく損害賠償請求をなして びに本件スペシャル・アサインメント及び本件配転命令を含む被告会社による一連の行為を主導した被告P1に対し,労働契約上の配慮義務違反(被告会社)ないし不法行為責任(被告ら)に基づく損害賠償請求をなしている。 1 争いのない事実等(1) 被告会社の沿革及び原告との労働契約の成立ア被告会社は,昭和58年7月に資本金3億2900万ドルで設立された洗濯洗浄関連製品,紙製品,医薬部外品,化粧品,食品などの研究開発,販売,輸出入等を事業目的とする外国法人である。 イ原告(昭和○年○月○日生まれの男性)は,昭和52年1月1日に日本ヴィックス株式会社(以下日本ヴィックス」という。)に入社したが,その後,被告会社の親会社であるプロクター・アンド・ギャンブル・カンパニーが日本ヴィックスの親会社であるリチャードソン・ヴィックス・インクを買収したことに伴い,日本ヴイックスの他の従業員とともに,昭和62年7月1日に被告会社に移籍した。(弁論の全趣旨)(2) 被告会社の部門構成被告会社は,大別して,次の4部門から構成されている。(乙1,2)アグローバル・ビジネス・ユニット(以下「GBU」という。)ベビー・ケア,フェミニン・ケア,ファブリック&ホーム・ケア,ビューティー・ケア等の製品群別に分かれ,各製品群別に営業戦略を立て,収益を得るための業務を担当している部門である。 イ MDO市場戦略の開発,顧客との優れた関係の構築・採用,GBU部門と協力してブランドプランを立案する等の業務を担当している部門である。 ウグローバル・ビジネス・サービス(以下「GBS」という。)経理,福利厚生,給与,情報技術サービスのようなビジネスサービスの提供を担当している部門である。 エコーポレイト・ファンクション(以下「CF」という。)財務リポートや株主とのコミュニケーションなど 経理,福利厚生,給与,情報技術サービスのようなビジネスサービスの提供を担当している部門である。 エコーポレイト・ファンクション(以下「CF」という。)財務リポートや株主とのコミュニケーションなど会社全体にかかわるサービスを提供している部門である。 (3) 従業員の担当職務被告会社における従業員の担当職務には,マーケティング,市場調査(CMK),ファイナンス等があり,上記(2)の各部門に,それぞれ必要に応じて,これらの各職務を担当する従業員が配置されている。 (4) 原告の従前の担当職務(MDO-CMK)ア原告は,平成13年4月当時,MDOに所属してCMKを担当し,その職務として,「スキャン・ジャパン」というプロジェクト(日本の消費者の消費動向・嗜好データを集約して分析する業務。以下「スキャン・ジャパン」という。)及びその他の業務を担当していた。 また,原告は,被告会社における下記イのグローバル・ジョブ・バンド制度(以下「バンド制度」という。)におけるバンド3に位置付けられていた。 イ被告会社においては,従業員の職務(権限及び職責)に応じて,1から5までのバンドに位置付けられており,それぞれのバンドに対応する給与のレンジ(上限及び下限)が示されているところ,バンド1とバンド3の給与のレンジは重ならない。また,CMKにおいて,バンド1はアソシエート・マネジャー,バンド2はマネジャー,バンド3はシニア・マネジャーとされている。バンド3の従業員は,被告会社からストック・オプションを受ける資格を有しているが,バンド1,2の従業員はその資格を有しない。(甲84,116,117の①,②)(5) 被告P1の職務等ア被告P1は,平成13年4月1日に,原告が所属するMDO-CMKにアソシエイト・ディレクター(MDOの市場調査部長)として着任し,その下に 84,116,117の①,②)(5) 被告P1の職務等ア被告P1は,平成13年4月1日に,原告が所属するMDO-CMKにアソシエイト・ディレクター(MDOの市場調査部長)として着任し,その下に,P2,原告及びP3の3人のシニア・マネジャーが配置されていた。 但し,P2は,同年8月末日に被告会社を退職した。 イ被告P1は,平成15年3月31日に被告会社を退職した。(被告P1)ページ(1)(6) 原告に対する退職勧奨と原告の対応ア被告P1は,平成13年4月12日に原告と面談し,組織再編等によって原告がMDO-CMKにおいて担当していた業務がなくなる旨告げた上,これを機に退職するのであれば,特別優遇措置を用意するとして,原告に対して退職を勧奨した。 イ原告は,同月26日,被告P1に対し,退職する意思はない旨を電子メール(以下「メール」という。)により通知した。 (7) 本件スペシャル・アサインメントと原告の対応ア被告P1は,平成13年5月24日,P4人事本部長,P5法務本部長,P6営業統括本部長及び人事部のP7とともに,原告と面談し,原告に対し,原告がMDO-CMKでの職務の70%を占めていた業務であるスキャン・ジャパンが廃止になり,その他の業務はGBSに移管されると説明した上,下記のような内容の本件スペシャル・アサインメントを内示した。(甲16の①,②,乙6)記(ア) 原告は,引き続き,被告P1の部下となる。 (イ) 新しい任務では,特に職責はないが,毎日会社に出て来ることが期待されている。 (ウ) 新しい職務は,バンド1に位置付けられる。 (エ) 給与は,減額されないが,ストック・オプションの権利を失い,また,今後の昇給は期待できない。 (オ) 原告に命ずる特定の仕事はないし,当面有意義な仕事を命ずる予定もない。但し,社 置付けられる。 (エ) 給与は,減額されないが,ストック・オプションの権利を失い,また,今後の昇給は期待できない。 (オ) 原告に命ずる特定の仕事はないし,当面有意義な仕事を命ずる予定もない。但し,社内公募制度を利用して社内で他の職務を探すことはできる。 (カ) 社内の業務プロセスを妨げたり,社内の他の同僚,特にCMKとCBD(営業統括)の両部署の同僚の業務を妨げてはならない。 (キ) 原告の職場を移動する。 イ同年6月6日,被告P1は原告に対し,本件スペシャル・アサインメントに基づき,直ちに被告会社建物の26階にある新しい職場に移動するよう命じた。(甲20の①ないし③)ウ同月13日,被告会社は,イントラネット(社内ネットワーク)において,本件スペシャル・アサインメントが同月6日に発効したことを公表したが,原告の新しい職位を,従前と同じシニア・マネジャー(バンド3)としていた。 (甲21の①,②,22の①ないし③)エしかし,原告は,従前どおり20階の職場にとどまり,同月15日,被告会社に対して,本件スペシャル・アサインメントに同意しない旨の書面を送付した。(甲23の①,②)オ同年7月16日,被告会社は原告に対し,次の内容の同月13日付け文書を交付した。(甲28の①,②)(ア) 原告の職位が,同月1日付けでCMKのアソシエイト・マネジャー(バンド1)に変更された。 (イ) 直ちに26階の新しい職場に移動するよう命ずる。 (ウ) 今後3か月間の原告の仕事は,社内公募制度を利用して社内で職務を探すことであり,同年9月28日までに,この仕事によって原告の成績を評価する。 カこれに対し,原告は,同年7月18日,被告会社に対し,同年6月6日付けの本件スペシャル・アサインメント発令の時点でバンド3(シニア・マネジャー)として正式発表していながら,唐突にバン を評価する。 カこれに対し,原告は,同年7月18日,被告会社に対し,同年6月6日付けの本件スペシャル・アサインメント発令の時点でバンド3(シニア・マネジャー)として正式発表していながら,唐突にバンド1に降格することは不当である,MDO-CMKにおいて,現在も将来も多くの仕事があるので,社内公募制度に応募するつもりはない旨の内容証明郵便を送付した。(甲29の①,②)キ同年8月21日,被告P1は原告に対し,メールにより,席替えを再度促し,同年9月1日,被告会社においてフロアの移動があったことに伴い,原告は,26階の新しい職場に移動した。 (8) 原告の労働組合加入と団体交渉ア原告は,労働組合である管理職ユニオン・関西(以下「組合」という。)に加入し,同年6月16日に,被告会社にその旨通知した。(甲24の①,②)イ組合と被告会社は,同年9月19日に第1回の団体交渉を,同年12月10日に第2回の団体交渉を,本件配転命令がなされた後の平成14年2月6日に第3回の団体交渉を持った。 (9) 本件配転命令と原告の対応ア被告会社は,原告に対し,平成14年1月17日付け書面により,同月22日をもって原告をGBSのマーケット・メジャメント(以下「MM」という。)に異動し,特別アナリストに配属し,バンド2に位置付ける,同日までに28階の新しい職場に移動するようにとの本件配転命令をなし,同書面は,同月19日に原告に到達した。同書面には,新しい職務に関して記述した書面(以下「本件職務記述書」という。別紙2は,本件職務記述書の原告提出の訳文であり,別紙3は本件職務記述書の被告ら提出の訳文である。)が添付されていた。(甲48の①,②,乙11)イ原告が,同年2月21日に,本件配転命令には従わないこと,従前どおりの職位,職場での仕事であれば就労する意思があることを 書の被告ら提出の訳文である。)が添付されていた。(甲48の①,②,乙11)イ原告が,同年2月21日に,本件配転命令には従わないこと,従前どおりの職位,職場での仕事であれば就労する意思があることを書面で通知したところ(甲59の①,②),被告会社は,原告が本件配転命令に従わないことを理由に,同日から原告に対する賃金の支払を停止する旨を通知した上(甲60),それ以降の賃金の支払を停止した。 ウその後,被告会社は原告に対し,別紙1の未払賃金一覧表・既払賃金額欄記載のとおり給与及び賞与の一部を支払い,また平成15年12月5日に賞与の一部として16万7200円を支払った。(甲65の①ないし⑤,160の⑧ないし⑪,弁論の全趣旨)(10) 仮処分原告は,平成14年8月27日に神戸地方裁判所に賃金仮払等を求める仮処分命令の申立てをなし(当庁同年(ヨ)第9009号),同裁判所は,平成15年3月12日,本件スペシャル・アサインメント及び本件配転命令を無効と判断し,被告会社に対し,月額50万円の賃金の仮払を命ずる仮処分決定をなした。(甲132)(11) 原告のMDO-CMKとして就労時の賃金ア原告は,被告会社から,毎月末日締め同月25日払で給与の支払を受けていたものであり,基本給57万円,住宅手当3万7000円の月額合計60万7000円で,半年に1回通勤手当として16万3480円(月額2万7246円)の支給を受けていた。 イ被告会社の給与規程(乙13,14)では,賞与につき,会社実績に応じてこれを支給するとし,支給期は6月ないし7月と12月の年2回とすると定められている。 (12) なお,たとえ本件配転命令が無効であっても,本件スペシャル・アサインメントが現時点で効力を有しないことは,当事者間に争いがない。 2 争点(1) 本件スペシャル・アサインメントは ている。 (12) なお,たとえ本件配転命令が無効であっても,本件スペシャル・アサインメントが現時点で効力を有しないことは,当事者間に争いがない。 2 争点(1) 本件スペシャル・アサインメントは違法,無効であったか(本件配転命令の時点での原告の地位)ア原告の主張(ア) 本件スペシャル・アサインメントは,配転命令であるところ,配転命令は,労働の種類,場所等の労働条件の変更を伴うものであるから,これが許容されるためには,就業規則上ないし労働契約上の根拠が必要である。 しかるに,被告会社の就業規則上ないし原告との労働契約上,配転命令の根拠規定が見当たらない。 よって,本件スペシャル・アサインメントは違法,無効である。 (イ) 仮に,使用者が,業務上の必要に応じ,その裁量により労働者の職務内容,勤務場所等を決定することができページ(2)るとしても,使用者の配転命令権も無制約に行使できるものではなく,その行使が人事権の濫用に当たる場合には,当該配転命令は無効となると解される。 そして,上記の人事権の濫用の有無の判断は,事業の合理的運営という見地からの業務上の必要性と,当該従業員が受ける不利益との比較衡量によるべきである。そして,業務上の必要性の判断に当たっては,当該人員配置の変更を行う必要性とその変更に当該従業員を充てることの合理性を考慮すべきであり,業務上の必要性が存しない場合,又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき,もしくは従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなどには,当該配転命令は人事権の濫用に当たると解するのが相当である。 また,上記の従業員が被る不利益としては,物理的,経済的な不利益のみならず,能力の発揮や開発の機会を奪われたり, ものであるときなどには,当該配転命令は人事権の濫用に当たると解するのが相当である。 また,上記の従業員が被る不利益としては,物理的,経済的な不利益のみならず,能力の発揮や開発の機会を奪われたり,名誉や社会的評価を低下させられることも含まれるものと解すべきである。 (ウ) 人事権の濫用a 本件スペシャル・アサインメントに業務上の必要性が存しないこと本件スペシャル・アサインメントにより提示された新職務の内容は,「何もすることはないが,毎日会社に出て来なければならない。」というものであるが,企業において「何もしない。」ということはありえないから,この配転命令が業務上の必要性に基づかないことは明らかである。 また,被告会社は,原告がMDO-CMKにおいて担当していた職務のうち70%を占めていたスキャン・ジャパンを廃止したというが,原告が関与していた仕事の予算の70%がスキャン・ジャパンに配分されていたものの,原告の仕事としては,スキャン・ジャパンは20%程度にすぎず,他の業務が80%程度を占めていたのである。被告会社は,原告のスキャン・ジャパン以外の業務は,GBSに移管される結果,原告のMDO-CMKにおける仕事はなくなると主張するが,原告の業務のうちには,CBD(営業統括)のための業務やCMD(消費者市場開発)のための業務等が存し,被告会社は,前者をP3へ,後者をP2へ引き継がせようとしていたのであるから,MDO-CMKにおける原告の仕事がなくなることはなかったし,また,MDO-CMKに残った原告の仕事は,量的にも質的にもP3が引き継げるものではなかった。 よって,原告には,MDO-CMKにおいてなすべき職務があったのであり,「何もしない。」という本件スペシャル・アサインメントは合理性がなく,業務上の必要性に基づくものではない。 b 不当な動機 た。 よって,原告には,MDO-CMKにおいてなすべき職務があったのであり,「何もしない。」という本件スペシャル・アサインメントは合理性がなく,業務上の必要性に基づくものではない。 b 不当な動機・目的があること本件スペシャル・アサインメントは,業務上の必要性が全くないのになされていること,被告P1の赴任以来,激しく繰り返された退職勧奨に引き続いて行われていること,バンド3からバンド1への降格を伴っていること,今後の昇給があり得ないとされていること,他の従業員との接触を禁じ,現に,原告が他の従業員と接触したことに対し,懲戒処分を課するなどの脅迫が行われていること,周囲から隔離された閉鎖空間への村八分的な席替えが指示されていること,本件スペシャル・アサインメントの後,本来任意に応ずべき社内公募制度へ応募するよう繰り返し強要がなされていること(社内公募制度は,従業員が現に担当している職務よりも,より才能と意欲に合った新しい職務を見つけようとするために設けられた制度であり,このような制度に,意に反して応募を強要することは制度の目的外利用である。 )などからすると,原告から従前の仕事を奪って同僚から隔離して孤立させ,被告会社の業務から排斥するという嫌がらせを繰り返すことで,原告を退職に追い込もうという不当な動機・目的によることが明らかである。 c 原告が著しい不利益を被ること本件スペシャル・アサインメントは,バンド3からバンド1への降格を伴うものであるが,被告会社においては,バンドという地位に権限と給与レンジが直結しているため,かかる地位の降格は,原告に対して,その権限上も経済上も著しい不利益を与えるものである。 すなわち,原告は,MDO-CMKのシニア・マネジャー(バンド3)という高い地位にあって,専門性が高く裁量の範囲が広い職務に従事していたが て,その権限上も経済上も著しい不利益を与えるものである。 すなわち,原告は,MDO-CMKのシニア・マネジャー(バンド3)という高い地位にあって,専門性が高く裁量の範囲が広い職務に従事していたが,バンド1という地位に降格された上で,同僚から完全に隔離された環境の中で「何もしない」という職務に従事させられることは,原告の経歴,能力,従前の地位等に照らすと,その権限の著しい縮小であり,これまで市場調査の専門職として培ってきた能力を発揮する機会を奪われ,将来にわたり正当な能力評価は期待できない。また,バンド3とバンド1とは給与レンジが全く重ならないから,原告は将来にわたって昇給の可能性を一切奪われるのみならず,平成13年10月の給与規程の改定により,給与の減額も可能となっており,得べかりし退職金の金額等を考慮すると,経済的に不利益を受けることは明らかである。 被告会社は,原告に対して,かかる不利益を与える配転命令をなすにつき,査定を含むW&DP(ワーク・アンド・ディベロップメントプラン=業績評価及び次期目標設定)を実施しておらず,恣意的な処分である。 (エ) 以上より,本件スペシャル・アサインメントは,違法,無効である。 イ被告会社の主張(ア) 原告の主張(ア),(イ)又は争う。 a 長期間の雇用継続が予定されている労働契約関係においては,使用者に人事権の一内容として労働者の職務内容や勤務地を決定する権限が帰属することが予定されている。そして,被告会社の就業規則(甲2)は,勤務場所の変更を伴わない職務変更権が被告会社にあることを当然の前提として,特に,被告会社が従業員を転勤させる権限があることを定めている。 また,原告は,被告会社に入社した際,被告会社が異動を命じた場合,正当な事由がない限りこれを拒んではならないとの労働条件に同意している(乙27 会社が従業員を転勤させる権限があることを定めている。 また,原告は,被告会社に入社した際,被告会社が異動を命じた場合,正当な事由がない限りこれを拒んではならないとの労働条件に同意している(乙27)。 b 本件スペシャル・アサインメントは,形式的には,配転命令と解する余地もあるが,原告の上司は従前どおり被告P1であり,スペシャル・アサインメントといっても,特定の職責があるわけではなく,その内容は上司から命ぜられる職務に従事するというものであるから,その実質は待機命令というべきものである。 したがって,かかる職務命令に合理性,相当性があるかという観点から判断すべきであって,一般の配転命令と全く同じ判断基準でその有効性を判断すべきではない。 (イ) 本件スペシャル・アサインメントの合理性,相当性平成13年4月当時,被告会社は,経営効率を改善させるため,経費削減,組織のスリム化等の施策を進めており,その一環として,MDO-CMKにおいても,組織内のすべての業務内容や職務分担を見直し,業務遂行に要する経費の削減,組織効率化のための手段を模索していた。その結果,MDO-CMKにおいては,年度末(同年6月末)までに,スキャン・ジャパンを廃止し,MM業務をGBSに移管するなどの施策を実施することとなった。 上記施策により,原告の主要な職務(予算レベルで70%)であったスキャン・ジャパンが廃止されることが決定し,残りのMM業務(予算レベルで30%)がGBSに移管されることになったため,原告がMDO-CMKで担当する職務がなくなることとなった。 そこで,原告の上司の被告P1は,同月12日に原告と面談し,上記の事情を説明して退職の意思を確認したところ,同月26日,原告は,退職の意向がない旨メールで連絡してきた。 そのため,被告会社としては,原告を実質的に待機と 被告P1は,同月12日に原告と面談し,上記の事情を説明して退職の意思を確認したところ,同月26日,原告は,退職の意向がない旨メールで連絡してきた。 そのため,被告会社としては,原告を実質的に待機とした上で,社内公募制度を活用し,原告自身でも積極的に社内で新たな職を探すよう指示したのであり,当時の状況において合理的な措置であったといえる。 また,本件スペシャル・アサインメントにより原告はバンド1と位置付けられたが,それは本件スペシャル・アサインメントによる原告の任務に対応したものであり,それにより給与額が減額された事実もなく,バンドの変更故に相当ページ(3)性を欠くとはいえない。 (ウ) 人事権の濫用がないことa 本件スペシャル・アサインメントの業務上の必要性仮に,本件スペシャル・アサインメントにつき,一般の配転命令の判断基準に照らして判断したとしても,上記(イ)で述べた事情からして,業務上の必要性があったものである。 b 不当な動機・目的によるものではないこと被告会社は,上記(イ)で述べた事情により,やむを得ず本件スペシャル・アサインメントをなしたのであり,不当な動機・目的はなく,この点に関する原告の主張は,以下のとおり事実に反する。 (a) 被告会社は,原告が平成13年4月26日に退職の意思がないことを明確に表示してからは,退職に関する話は一切しておらず,激しく退職勧奨をなした事実はない。 (b) バンド1という位置付けになったが,スペシャル・アサインメントが特定の職責を負うものでなく,バンド制度上そのような職務に対応するのがバンド1であるためというだけであり,何ら不当な動機・目的に結びつくものではない。 (c) 被告会社が,原告に対し,他の従業員の業務を妨げないよう指示したり,懲戒処分があり得ることを警告したことはあるが,これは,原告 というだけであり,何ら不当な動機・目的に結びつくものではない。 (c) 被告会社が,原告に対し,他の従業員の業務を妨げないよう指示したり,懲戒処分があり得ることを警告したことはあるが,これは,原告が,自分にはやるべき仕事があるなどとして,被告会社の指示を無視し,他の従業員の業務を妨げていたためである。 (d) 原告に移動するよう指示した新しい席が,通常の従業員と異なった特殊な閉鎖空間であるとの事実はない。 (e) 被告会社は,当時,原告に担当させるべき新たな職務を直ちに見出せなかったことから,原告自身も積極的に社内公募制度を活用して新たな職務を探すよう指示したものであり,この点からも,被告会社に原告を退職に追い込もうとする動機・目的がなかったことは明らかである。 c 本件スペシャル・アサインメントには通常甘受すべき程度を超える不利益がないこと本件スペシャル・アサインメントは,原告の賃金を減額するものではなく,勤務場所は同じ建物内であるから,原告に通常甘受すべき程度を超える不利益を与えるものではない。 なお,バンドの給与レンジは,当該職務に対する一般的な給与範囲の目安にすぎず,給与額の上限下限を厳格に画するものではない。 また,被告会社においては,いわゆる定期昇給はなく,一定時期に一定額の昇給が得られるという合理的期待はない。 さらに,本件スペシャル・アサインメントはあくまで当面の措置であり,原告の職務を将来にわたってバンド1に位置付けられる職務に固定するものではない。 なお,原告主張のW&DPは,個人の業績評価,次期目標設定,社内キャリアについての個人的興味,各個人の育成経過などを上司と部下とが話し合う機会のことであり,査定とは全く異なる。 (2) 本件配転命令の効力ア原告の主張(ア) 本件配転命令は,被告会社の就業規則上及び原告との労 個人的興味,各個人の育成経過などを上司と部下とが話し合う機会のことであり,査定とは全く異なる。 (2) 本件配転命令の効力ア原告の主張(ア) 本件配転命令は,被告会社の就業規則上及び原告との労働契約上の根拠規定が存しないから無効である。 (イ) 職種限定の合意違反原告は,昭和62年に日本ヴィックスから被告会社に雇用されるに至った当初から,現在の被告会社の総合職に相当する職種に従事するに至った。したがって,原告と被告会社間には,原告の職種を総合職に限定する旨の黙示の合意が成立しているものと解される。 しかるに,本件配転命令は,原告の職種を総合職から一般職へ変更する内容を含むものであり,上記合意に違反し無効である。 (ウ) 人事権の濫用仮に,使用者が,業務上の必要に応じ,その裁量により労働者の職務内容や勤務場所を決定することができるとしても,使用者の配転命令権の行使が人事権の濫用に当たる場合には,当該配転命令は無効となると解され,人事権の濫用の判断基準は,上記(1)ア(イ)のとおりであるところ,本件配転命令は,以下のとおり,その判断基準に照らして違法,無効である。 a 業務上の必要性がないこと(a) 本件配転命令により原告に提示された新職務は,GBS-MMの特別アナリストであるが,被告会社が作成した別紙2の本件職務記述書を見ると,市場データの購入や配達にまつわる事務的業務であって,まさに原告が自ら過去に誰でもできるような仕組みを開発し,一般事務職員に渡した仕事である。このようないわば狭義のMM業務は,平成12年10月までに既にGBSに移管されていた。 なお,別紙2の本件職務記述書にクライアントサービスとして記載されている業務は,「Ⅱ データの配達」以下に記載された一連の事務に付随する比較的単純な質問に対する回答等を行うことであり,これは いた。 なお,別紙2の本件職務記述書にクライアントサービスとして記載されている業務は,「Ⅱ データの配達」以下に記載された一連の事務に付随する比較的単純な質問に対する回答等を行うことであり,これは,一般事務職員が,予め用意された想定問答集・マニュアルに基づき,依頼者に対する応接を行うものである。 このような単純な事務的業務に,シニア・マネジャーという専門性が高く裁量の範囲の広い業務に従事していた原告を充てる必要性は全く存しない。 (b) 他方,上記(1)ア(ウ)aの原告の主張のとおり,原告がMDO-CMKにおいて担当していた業務のうち,スキャン・ジャパンは,予算的には70%であっても,原告の仕事に占める割合は20%程度であったのであり,したがって,スキャン・ジャパンが廃止されても,MDO-CMKにおいて原告がなすべき多くの仕事が残っていた。 (c) この点につき,被告会社は,そのような業務を含め,原告がMDO-CMKにおいてスキャン・ジャパン以外に担当していた業務のすべてをGBSに移管したと主張しているが,GBSに移管されたのは,上記のとおり単純な事務的業務であるMM業務(いわば狭義のMM業務)であり,原告が従来MDO-CMKにおいて担当していた業務はこれと異なる。仮に,その業務がMM業務に当たるとしても,いわば広義のMM業務であり,このような業務を,単純な事務的業務を集約した部門であるGBSに移管する必要はない。 仮に,被告会社が主張するように,本件配転命令による原告の新職務が,従前の原告の業務と連続性を有する高度の専門性を発揮できる業務であり,狭義のMM業務とは質的に全く異なるのであれば,原告を事務サービス部門であるGBSに異動させて新職務を行わせる必要がなく,従前どおりMDO-CMKで職務を行わせ,またバンド3に位置付ければよいはずである のMM業務とは質的に全く異なるのであれば,原告を事務サービス部門であるGBSに異動させて新職務を行わせる必要がなく,従前どおりMDO-CMKで職務を行わせ,またバンド3に位置付ければよいはずである。 しかし,被告会社は,MDO-CMKのシニア・マネジャーのうち原告のみをGBSに異動させ,バンド2に降格しているし,本件配転命令の補足説明書(乙12。以下「本件補足説明書」という。)において,新職務を,原告の従前のMDO-CMKの仕事と比較すると,非常に狭い範囲でかつ浅い責任の仕事であると説明している。 (d) なお,被告会社は,GBSの業務をアウトソーシング(外部委託)しており,既に人員を大幅に削減しており,GBSの業務を拡大する戦略があるというのは不自然である。また,被告会社は,繰り返し,原告の所属をGBS部門を統括する会社である「P&G・アジア・ピー・ティー・イー・リミテッド」と記載した給料明細書や源泉徴収書を送り付けてきており,本件配転命令は実質的には出向命令である可能性がある。 (e) 以上のとおり,本件配転命令について,原告をGBS-MMに異動させ,上記のような単純な事務的業務を担当させる業務上の必要性がない。 ページ(4)b 不当な動機・目的があること(a) 本件配転命令は,上記のとおり単純な事務的業務を,そのMM業務の生みの親である原告に一般の事務職員と肩を並べてやるようにという命令であり,原告の自尊心を傷つける恣意的人事であること,バンド2への降格を伴っていること,原告を退職に追い込むための嫌がらせ目的でなされた本件スペシャル・アサインメントを経てなされたことなどの一連の経過を見ると,本件配転命令も,嫌がらせによって原告を退職に追い込むという不当な動機・目的によるものであることが明らかである。 (b) このことは,原告が本件配転命令 トを経てなされたことなどの一連の経過を見ると,本件配転命令も,嫌がらせによって原告を退職に追い込むという不当な動機・目的によるものであることが明らかである。 (b) このことは,原告が本件配転命令の前後に適法に取得した有給休暇について,被告会社が「私用による欠勤として処理し,場合によっては懲戒処分をする。」と脅迫していることや,組合との第3回団体交渉において,P5法務本部長が,本件配転命令が,「仕事をしてはならない」という本件スペシャル・アサインメントの延長線上のものであることを自認していることからも裏付けられる。 また,被告会社が,本件配転命令に当たって,原告に対し査定(W&DP)を行っていないことからも,恣意的な処分であることが明らかである。 c 原告が著しい不利益を被ること(a) 本件配転命令は,MDO-CMKのシニア・マネジャーという,マーケットリサーチの専門知識や企画・立案の技能と熟練が必要な職務に従事していた原告を,従前の職務とは全く領域の異なる単純な事務的業務に従事させようとするものである。その上,バンド3という高い地位にあった原告を,バンド2に降格した上で,バンド3の上司の指揮監督下に置こうとするものであり,原告の経歴,能力,従前の地位等に照らすと,その権限の著しい縮小であり,原告は,これまで培ってきた能力を発揮する機会を奪われ,将来にわたり正当な能力評価は期待できない不利益を受ける。 (b) しかも,原告は,本件配転命令によって,バンド3の従業員に認められたストック・オプションを受ける地位を剥奪されるだけでなく,今後の昇給が全くないか,少なくともバンド3にとどまった場合に比較して極めて小さい昇給幅にとどまることは明らかであり,著しい経済的不利益を被る。 (c) 被告会社は,原告が,バンド2に降格しても再度バンド3に昇格する可能 か,少なくともバンド3にとどまった場合に比較して極めて小さい昇給幅にとどまることは明らかであり,著しい経済的不利益を被る。 (c) 被告会社は,原告が,バンド2に降格しても再度バンド3に昇格する可能性や,バンド2のままで昇給する可能性を主張しているが,原告が能力を発揮する機会を奪われたことや,原告の給与額が既にバンド2の給与レンジにおいて高給であることからすると,昇給,昇格の可能性は事実上ないことが明らかである。 イ被告会社の主張(ア) 原告の主張(ア)は争う。 詳細は,上記(1)イ(ア)aの被告会社の主張のとおりである。 (イ) 同(イ)は争う。 本件配転命令による原告の新職務は,バンド2に位置付けられる総合職の職務であって,総合職から一般職への配転ではない。 また,原告主張のような職種限定の合意がなされた事実もない。 (ウ)同(ウ)は争う。 a 業務上の必要性(a) 被告会社は,上記(1)イ(イ)の被告会社主張の経緯で本件スペシャル・アサインメントをなした後,原告が加入した組合と団体交渉を行い,そこでの組合や原告の要望を容れ,原告と直接面談するなどして改めて検討した結果,平成13年7月にCBDがカスタマー(得意先)を主体とする組織に変更されて以降,CBDが戦略的活動に入っていくためのMM業務の必要性が高まっていること,この必要性に応えるためにCBDのために市場調査・分析を行って助言を行う職務を新たに設ける必要があることが判明した。 そこで,被告会社は,この新職務を設け,これをマーケット・メジャメント・サポート等の経験を有する原告に担当させることとしたのである。 したがって,本件配転命令による新職務は,原告主張のような単純な事務的業務ではない。 なお,原告は,MDO-CMKからGBSに移管されたMM業務は,データ購入等の単純な事務的業務 ととしたのである。 したがって,本件配転命令による新職務は,原告主張のような単純な事務的業務ではない。 なお,原告は,MDO-CMKからGBSに移管されたMM業務は,データ購入等の単純な事務的業務であり,原告が従来MDO-CMKにおいて担当していた業務はこれと異なると主張するが,原告がMDO-CMKにおいて担当していた業務は,それがMM業務の定義に当てはまるか否かはさておき,すべてGBSに移管されたのである。 (b) 原告は,被告会社が各部門の機能や位置付けを見直し,組織を再構築していることを無視し,それ以前の組織構造や各部門・部署の役割を独自に定義し,これを前提にGBSの役割を過小評価して自らに都合のよい主張をしているにすぎない。たとえ,従前,MDO-CMKがCBDのデータ分析能力の構築と活用のために専門的支援を行い,GBS-MMがデータ購入などを主たる役割としていたとしても,それは過去の話である。 そもそも,MM業務をMDO-CMKからGBSに移管するという戦略は,これによりGBSが,CBDと密接に協働してビジネス伸長に有益となる市場データをより鮮明に設定しながら,データの購入から加工までを一括して担当することを可能にし,その日本市場で得られたノウハウを,他国をも支援するよう構成された組織であるGBSに蓄積することを可能にするもので,極めて合理的な戦略である。 (c) 原告は,GBSの業務の外部委託について主張しているところ,平成14年6月にGBSのアウトソーシング計画が発表された事実はあるが,この計画はその後撤回され,同年11月7日にその旨発表されている。その後,平成15年4月以降,GBSの一部の業務について外部委託が実施もしくは発表されたが,その余の業務につき外部委託を行うか否かは未定であるし,GBS-MMについては外部委託に関する具体的 ている。その後,平成15年4月以降,GBSの一部の業務について外部委託が実施もしくは発表されたが,その余の業務につき外部委託を行うか否かは未定であるし,GBS-MMについては外部委託に関する具体的な話は一切出ていない。また,本件配転命令は,アウトソーシング計画が発表される約5か月前になされており,アウトソーシング計画を前提に本件配転命令をなしたものではない。この点の原告の主張は,偶々アウトソーシング計画が発表されたことを奇貨とする後付けの主張である。 また,原告は,本件配転命令を出向命令であるとも主張するが,原告に送付した源泉徴収票の給与支払者欄の「P&G・アジア・ピー・ティー・イー・リミテッド」との記載は事務処理上のミスにすぎない。なお,GBSの業務のうち,日本国を含むアジアを担当する部署が同社に属しており,日本国内のみに関する業務に従事する部署は被告会社に属しているのであり,原告の配転先も日本国内のみに関する業務に従事する部署である。 b 不当な動機・目的がないこと被告会社は,上記のとおり,原告に対して業務上の必要性に基づいて本件配転命令をなしたのであり,不当な動機・目的など全くない。 なお,本件配転命令がGBSのアウトソーシング計画と無関係であること及び本件配転命令が出向命令であるとの原告の主張が失当であることは上記のとおりであり,本件配転命令が原告を放逐する意図でなされたものではない。 c 通常甘受すべき程度を著しく超える不利益がないこと(a) 本件配転命令は,原告の給与を減額するものではなく,また新たな就労場所は同じ建物内であるから,原告に生活上の不利益もない。 (b) また,原告の新職務は単純な事務的業務ではなく,原告の知識・経験を生かせる職務であり,職務上も不利益はないし,バンドは権限に対応するものではないから,権限上の不利益 に生活上の不利益もない。 (b) また,原告の新職務は単純な事務的業務ではなく,原告の知識・経験を生かせる職務であり,職務上も不利益はないし,バンドは権限に対応するものではないから,権限上の不利益もない。 (c) さらに,本件配転命令によって,原告が将来ともバンド2に固定されるわけではなく,今後バンド3に位置付けられる可能性もあるし,今後の昇給の可能性が奪われるものでもない。 ページ(5)(d) なお,原告はストック・オプションについて主張しているが,ストック・オプションは付与される株数も一定でなく,権利行使期限の株価も予想不可能であるから,これを経済的不利益と捉えること自体失当である。 (3) 原告の賞与ア原告の主張(ア) 被告会社における賞与は,過去の賞与支給実績からすると,業績に応じて変動する恩恵的なものではなく,冬季(12月)が基本給の3.1か月分,夏季(6月)が基本給の3か月分という確定賞与である。 よって,原告は,被告会社から,賞与として毎年12月に基本給57万円の3.1か月分である176万7000円を,毎年6月に同じく3か月分である171万円を受給しうる。 (イ) 被告会社において,賞与は,実際上,毎年6月と12月のそれぞれ第1金曜日に支給される慣行である。 イ被告会社の主張原告の主張は争う。 (4) 被告らの損害賠償責任の成否ア原告の主張(ア) 被告会社の労働契約上の配慮義務違反による債務不履行責任ないし不法行為責任a 被告会社は原告に対し,その定める「理念」及び就業規則に基づき,原告を就労させる義務があり,就労させるに当たって,その処遇に関し,原告の専門的能力に敬意を払い,最大限原告の能力が発揮されるようにし,原告の人格を無視し傷つけることがないように配慮すべき義務を負っている。 b しかるに,原告の上司である被告P って,その処遇に関し,原告の専門的能力に敬意を払い,最大限原告の能力が発揮されるようにし,原告の人格を無視し傷つけることがないように配慮すべき義務を負っている。 b しかるに,原告の上司である被告P1は,平成13年4月に赴任早々,原告が担っていた職務につき十分な調査をなさず,スキャン・ジャパンが廃止されれば原告の職務の大半がなくなるものと誤解し,原告に退職を勧奨し,原告がそれを拒否すると,原告と関係するすべての従業員に対し,原告に仕事をさせるな,話をするなと厳命した上,同年5月24日に,何もしないことを職務とし,バンド1に降格する本件スペシャル・アサインメントを通告した。 その際,被告P1は,人事異動において当然なすべき査定をせず,それに必要なW&DPすら行わず,原告に退職を勧奨し,さらに実質的に解雇通告である本件スペシャル・アサインメントを通告したのである。 また,本件スペシャル・アサインメントの通告に際し立ち会っていたP4人事本部長は,原告に対し,「会社は君に対し,社内で他の人々にコンタクトしたり,仕事を論じたりするなと命令しているからね。」「もし,あなたが人々に話しかける意図が,この期に及んで,あなたがいかに価値ある存在かということを証明しようということにあるなら,それは会社の時間も,あなたの時間も浪費するだけだ。」という,原告の人格自体を無視した人間性のない暴言を吐いた。 c さらに,同年6月に入ると,被告P1は,原告に対し席替えを命じて原告を孤立させ,これに対し原告が労働組合である組合に加入し,団体交渉を申し入れると,被告会社はその開催を引き延ばす一方,「仕事はするな。メールも話も禁止する。」と命じ,違反すれば懲戒処分であると脅迫したり,席の移動を改めて命じ,「職を探してCMKから出て行け。」と社内公募制度の利用を強要した。 d そして ばす一方,「仕事はするな。メールも話も禁止する。」と命じ,違反すれば懲戒処分であると脅迫したり,席の移動を改めて命じ,「職を探してCMKから出て行け。」と社内公募制度の利用を強要した。 d そして,被告会社は,労働組合との団体交渉に行き詰まると,新職務と称して総合職の者が携わることのない職務への配置転換を命じた。 原告が,本件配転命令を拒否すると,被告会社は,原告に対する賃金の支払を停止した上,原告のパソコンと電話を切断し,社内のネットワークから排斥し,人事や広報等一切の社内情報を遮断して原告を孤立させた。 平成14年2月6日の団体交渉では,P5法務本部長は,原告が訴訟を提起しても,裁判官は,被告会社に対して原告をバンド3の地位にして給与を支払うよう命ずることはあっても,仕事を与えるよう命ずることはないとの,原告の能力発揮への配慮の一片もない発言をした。 e 以上のような被告会社の一連の行為は,原告の能力に配慮することはおろか,その人格すら無視し侵害して原告を蔑み屈辱感を与え,結局は原告を自主退職に追い込もうと画策・強要したものであって,原告との労働契約上の配慮義務に違反し,債務不履行責任ないし不法行為責任を負う。 (イ) 被告P1の不法行為責任被告P1は,被告会社による上記の一連の行為を主導して行った者であるから,原告に対し不法行為責任を負う。 イ被告らの主張原告の主張はいずれも争う。 (ア) 被告会社が原告に対し,退職を勧奨した後,本件スペシャル・アサインメント及び本件配転命令を通告したのは,上記の被告会社主張の事情によるものであり,これらの職務命令は合理的かつ相当であった。 被告会社は,原告が退職勧奨に応じないことを表明した後は,原告に退職を打診したことは一切なく,原告を退職に追い込もうとしたことはない。 (イ) 仮に,退職勧奨や本 職務命令は合理的かつ相当であった。 被告会社は,原告が退職勧奨に応じないことを表明した後は,原告に退職を打診したことは一切なく,原告を退職に追い込もうとしたことはない。 (イ) 仮に,退職勧奨や本件スペシャル・アサインメントの時点での被告会社の関係者の言動に誤解を招くものがあったとしても(被告会社は多国籍企業であるため,外国人の在職が多く,その考え方,習慣,言語,法制度等の違いなどから言動に誤解が生じやすい面があることは否定できない。),本件配転命令は,時間的に見ても,経過に即しても,退職勧奨や本件スペシャル・アサインメントとは異なる行為であるから,これをも「一連の行為」と捉えることは誤りである。 (5) 損害額ア原告の主張(ア) 原告は,本件スペシャル・アサインメント及び本件配転命令により,正当な地位で就労できず,昇給の機会を奪われたものであり,それによる損害は200万円を下らない。 (イ) 原告は,被告らの一連の行為により人格を深く傷つけられ,耐え難い屈辱感を味わわされたばかりか,心身ともに疲労困憊の状態に追い込まれたから,その精神的苦痛に対する慰謝料として300万円を下らない。 イ被告らの主張原告の主張は争う。 第3 争点に対する判断 1 事実関係上記争いのない事実等及び証拠(甲1,2,3の①ないし③,4ないし12の各①,②,13,14及び15の各①,②,16の①ないし③,17,18及び19の①,②,20の①ないし③,21の①,②,22の①ないし③,23ないし30の各①,②,31,32の①,②,33の①ないし⑦,34の①ないし⑨,35ないし37,38の①ないし④,39ないし42の各①,②,44,45の①,②,46,47ないし49の各①,②,50ないし51,52の①ないし③,53の①,②,54ないし58,59の①,②,60,66, いし37,38の①ないし④,39ないし42の各①,②,44,45の①,②,46,47ないし49の各①,②,50ないし51,52の①ないし③,53の①,②,54ないし58,59の①,②,60,66,67,68及び69の各①,②,70の①ないし⑥,71の①,②,72の①ないし④,73の①,②,74ないし76,81,82,83の①ないし③,84,85の①,②,86,87,88の①,②,89,90,92の①,②,93ないし101,105,116,117,119の①ないし④,122,124の①,②,125,126,130,132,147ないし150,153ないし155,157ないし159,167,169,170の①,②,171,173の①,②,乙1ないし12,15ないし29,31ないし38,42ないし45,52,証人P8,原告本人,被告P1本人)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ページ(6)(1) 平成13年4月当時,被告会社は,経営効率を改善させるため,経費削減,組織のスリム化等の施策を進めており,その一環として,MDO-CMKにおいても,業務内容や職務分担を見直し,業務遂行に要する経費の削減,組織効率化のための手段を検討し,その結果,予算規模の大きいスキャン・ジャパンを年度末(同年6月末)までに廃止することを決定した。スキャン・ジャパンは,インテージ社という外部の業者との共同作業により,システムを通じて日本の消費者の消費動向・嗜好データを集約して分析する業務であり,原告は,平成10年ころから,このプロジェクトを担当しており,予算的には,スキャン・ジャパンが原告が関与する業務の70%を占める大型プロジェクトであり,仕事量としても,一時は80%以上を占めていたが,既に開発と試運転を終了する段階に至っており,それに応じて原告の仕事量に スキャン・ジャパンが原告が関与する業務の70%を占める大型プロジェクトであり,仕事量としても,一時は80%以上を占めていたが,既に開発と試運転を終了する段階に至っており,それに応じて原告の仕事量に占める比重も低下しつつあった。 原告は,スキャン・ジャパン以外に,スキャン・プロというプロジェクト関係の業務とECR/カテゴリー・マネージメント・データ等の業務を行っており,さらに,廃止となるスキャン・ジャパンに代わる新たなプロジェクトを探求しようと考えていた。 (2) 被告P1は,平成13年4月1日にMDO-CMKのアシスタント・ディレクター(MDOの市場調査部長)として着任したが,MDO-CMKについて,業務内容等を見直した結果,原告について,その業務の70%がスキャン・ジャパンであり,残り30%はMM業務などであり,これをGBSに移管すると,MDO-CMKにおける原告の業務はなくなると判断した。そこで,被告P1は,同月12日,原告と面談し,上記事情を説明して原告の職務はスキャン・ジャパンの廃止と組織再編によりなくなると述べた上,この機会に退職するのであれば特別優遇措置を用意するとして,退職を勧奨した。これに対し,原告は,退職の意思がない旨を回答し,W&DP(業績評価及び次期目標設定)を行うよう申し入れた。しかし,被告P1は,なおも自主退職を検討するよう求めたので,原告は,1週間後に返答することを了解した。 同月18日,被告P1は,原告に対し,メール(甲170の①,②)により,当日面談を予定していたとして,それに出席するよう求めるとともに,W&DPは,今後被告会社のビジネスにより貢献できる力を測るために現在の成績を査定するものであり,原告は,MDO-CMKのリストラと原告の職務の廃止によって,近い将来(同年7月1日に)被告会社にいないのであるから 後被告会社のビジネスにより貢献できる力を測るために現在の成績を査定するものであり,原告は,MDO-CMKのリストラと原告の職務の廃止によって,近い将来(同年7月1日に)被告会社にいないのであるから,W&DPを実施する必要がない旨告知した。 これに対し,原告は,上記面談には出席せず,同月19日,被告P1に対し,メール(甲155の①,②)により,MDOのMM業務は既にGBSに移管済みでなくなっており,原告はMM業務とは異なる仕事をしていること,したがって,MDOのMM業務を廃止しても原告の職務はなくならないこと,原告の業務が存在するかどうかは,ビジネスへの貢献と成績に基づいて判断すべきであることを述べた上,これが現時点の気持ちであり,それを,同月12日の面談時の約束に基づき伝えるものであると述べた。 なお,同年3月2日のCMKのマネジャー会議(甲70の①,②)において,同年度はW&DPを実施しないが,例えば,①昇進が近い人,②(辞めさせるかどうかの)境界線上の成績の人,③昨年の新入社員,④担当業務の異動をしている人など必要がある場合について行う,W&DPを実施しないので,公式の評価調整をせず,昨年度の評点と同じにする,との合意がなされた。査定は,W&DPの実施の過程で行われるものであり,W&DPの一部となっている。 そして,被告P1は,同年4月17日,バンド2以下の従業員に対して退職勧奨をなすにつき,その対象者を選定するためにW&DPの結果の提出を求めている。 (3) しかし,被告P1は,MDO-CMKにおける原告の業務につき,それ以上調査しようとせず,また原告に対しW&DPを実施することもなく,同月23日には,原告に対し,メール(甲5の①,②)により,早く引き継ぎすべきことを要求した。 また,被告P1は,同日,P6営業本部長らに対し,「P9さん た原告に対しW&DPを実施することもなく,同月23日には,原告に対し,メール(甲5の①,②)により,早く引き継ぎすべきことを要求した。 また,被告P1は,同日,P6営業本部長らに対し,「P9さんのメッセージは無視して下さい。P3さんがCBDのためのあらゆるCMK業務の窓口です。」などとメール(甲6の①,②)により連絡するとともに,MDOのシニア・マネジャーであるP3に対し,「P9さんはCBDの仕事はすべて止めます。」「P9さんの地位は6月30日に廃止になって,CBD,CMK関連の仕事はどれももうP9さんの手にはなくなるということを,P6とP10も知っています。今後,今回のような仕事はすべてあなた経由で進められることになります。」「つまり,あなたがCBDに対するCMKの責任を代表するということ。」とメール(甲7の①,②)により連絡した。 さらに,被告P1は,同月24日,P3に原告と話をしないように指示したが,同人から,原告からいろいろと教えてもらわないと引き継ぎができないとの申入れを受けるや,P3に対し,メール(甲8の①,②)により,引き継ぎのために原告と作業をしてよいが,それが,原告が今の地位に長く残れることを意味しないことを,原告との仕事上の関係において明確にすべきであると申し渡した。 同月26日,原告は,被告P1に対し,メール(甲10の①,②)により,被告会社を退職する意思がないことを明確に伝えた。 これに対し,被告P1は,同月27日,P3に対し,メール(甲10の①,②)により,「彼(原告)のコメントに返答することを避けて下さい。あなたが,彼をリストラするという会社の決定を支持して,役目を果たしてくれると信じています。」と伝え,また,P3,P2らCMKのシニア・マネジャーに対し,メール(甲11の①,②)により,最上級の機密扱いを要する をリストラするという会社の決定を支持して,役目を果たしてくれると信じています。」と伝え,また,P3,P2らCMKのシニア・マネジャーに対し,メール(甲11の①,②)により,最上級の機密扱いを要する知らせであると前置きした上,「会社のリストラ・プログラムの一環として,MDO-MMのマネジャーとしてのP9さんの地位を6月末日をもって廃止します。」「P11さんとサプライヤーの仕事(スキャンプロ,インテージの補充レポート)は,GBS-MMに7月1日付けで移ります。これらのデータのビジネス・パートナーの分析サポートは,CBD-CMKのP3さんと,CMD-CMKのP2さんに移ります。」「P9さんはここには長くいないという会社の決定がなされたので,P9さんとはもう新しいプロジェクトを立ち上げたりしないよう皆さんの協力をお願いします。そういう新規プロジェクトは,ビジネスに必要な継続性がないからです。皆さんに知って欲しいことは,今まで,これが難しいリストラプロセスであったこと,P9さんが今のところ会社の提案を受け容れていないことです。新しいプロジェクトを立ち上げないことでこの状況に協力して欲しい。」と伝えた。 これに対し,原告は,被告P1に対し,同被告が,原告が被告会社に貢献しようとするのを妨害しようとしているように見えるとして,抗議のメール(甲12の①,②)を送付した。 (4) 原告は,同年5月1日,被告会社人事部のP7に対し,メール(甲13)により,被告会社から同年4月27日に送付された書面は,退職勧奨と思われるが,そのとおりであるか,そうであれば,原告はこれに応じないこと,被告P1は,会社の決定によって原告の地位を廃止した(「YourPosition」をEliminateした)と言っているが,「会社の決定」及び「YourPosition」とは何であるかを いこと,被告P1は,会社の決定によって原告の地位を廃止した(「YourPosition」をEliminateした)と言っているが,「会社の決定」及び「YourPosition」とは何であるかを書面で正確に回答して欲しい旨申し入れた。 しかし,P7はこれに回答せず,同月14日,原告に対し,メール(甲14の①,②)により,退職提案に興味がないということなので,翌日のミーティングで,原告の次の配属先について話し合うことにすると連絡してきたが,原告は,業務上の必要性や人的資源についての十分な議論もないまま,一方的に原告に「次の配属先」を申し渡そうとするのは奇妙であるなどと回答した。そして,原告は,この面談が,退職強要の目的によると判断し,出席しなかった。 原告は,同月21日,被告会社に対し書面(甲15の①)を送付し,被告P1が原告の同僚らに対し,原告が同年6月末で退職することが決定済みであるように繰り返し伝え,原告の業務に重大な支障をもたらしているとし,そのことにつき,是正措置をとるよう求めた。 (5) 原告は,同年5月24日,被告P1,P4人事本部長,P5法務本部長,P6営業統括本部長及び人事部のP7と面談し,被告P1から,本件スペシャル・アサインメントの内示を受けた。 ページ(7)これに対し,原告は,被告P1らの言うことは分かったが,原告としてはこれに従うことはできない,従わなくてよいと解釈していること,CMKの同僚や付き合いのあるパートナー部門の人達と話し合って解決したいと考えており,必要に応じ社外の人の支援を得ることなどを述べた。しかし,P4人事本部長は,「だが,もう一度,分かってもらいたいことは,会社は君に対して,社内で他の人々にコンタクトしたり,仕事を論じたりするなと命令しているからね。 」「会社は,もう既に手に入る最良の情報に基づい 事本部長は,「だが,もう一度,分かってもらいたいことは,会社は君に対して,社内で他の人々にコンタクトしたり,仕事を論じたりするなと命令しているからね。 」「会社は,もう既に手に入る最良の情報に基づいて組織のあり方について決定を下している。あなたの弁護士のような社外の助けを求めるのは勝手で,好きに議論をしたらよいけれど,あなたの組織内の人々とは話さないように。」「もしあなたが人々に話しかける意図が,この期に及んで,あなたがいかに価値ある存在かということを証明しようということにあるなら,それは会社の時間も,あなたの時間も浪費するだけだ。」と発言した。 (6) 被告P1は,同年6月6日,原告に対し,本件スペシャル・アサインメントに基づき,直ちに26階の新しい席に移動するよう,社内便(甲20の①ないし③)で命じたが,それに添付された図面で指示された新しい席は,ビデオ編集室等の隣に位置し,他の従業員から離れた場所であった。 同月13日,被告会社は,イントラネット(甲21の①,②,22の①ないし③)において,本件スペシャル・アサインメントが同月6日に発効したことを公表したが,原告の新しい職位は,従前と同じシニア・マネジャー(バンド3)とされていた。 原告は,その後も,従前どおり20階の職場にとどまり,同月15日,被告会社に対して,本件スペシャル・アサインメントに同意しない旨の書面(甲23の①,②)を送付した。 (7) 原告は,組合に加入し,同月16日にその旨を被告会社に通知した。 原告は,2週間の休暇を取った後,同月22日に,CMKの他のシニア・マネジャーらに対して,業務に関する休暇中の研究成果について情報提供するメール(甲25の①,②)を送ったところ,被告P1は,メール(同)により,原告に対し,CBDやCMKの仕事にかかわらないようにとの指示に反したとし, ,業務に関する休暇中の研究成果について情報提供するメール(甲25の①,②)を送ったところ,被告P1は,メール(同)により,原告に対し,CBDやCMKの仕事にかかわらないようにとの指示に反したとし,「2度とこのようなことをしないよう命ずる。」「この前の指示を繰り返すと,あなたはCBDやCMKの仕事にかかわらないように命じられており,それは,メールや口頭で彼らと話すことも含んでいる。」「あなたは今のところ,特別の仕事はないので,毎日会社に出勤すればよい。」「これ以上指示に背いたら,懲戒処分を受けることになる。」と伝えた。 その後も,原告は,従前の仕事を継続していたが,被告P1は,同年7月25日,原告に対し,メール(甲26の①,②)により,指示を忠実に守って仕事をしないように警告し,同年8月31日にも,同様のメール(甲27の①,②)を送付した。 (8) 同年7月16日,被告会社は原告に対し,次の内容の同月13日付け文書(甲28の①,②)を交付した。 ア原告の「スペシャル・アサインメント」という任務の職位が,同月1日付けでCMKのアソシエイト・マネジャー(バンド1)に変更された。給与は減額されないが,今後の昇給はバンド1の給与曲線に沿って進める。 イ直ちに26階の新しい職場に移動するよう命ずる。この移動は,原告が,もはやCMKやCBDとともに働くことを求められていないことや,CBDが20階に位置していることに対応したものである。 ウ今後3か月間の原告の仕事は,社内公募制度を利用して社内で職務を見付けることであり,同年9月28日までに,この仕事によって原告の成績を評価する。 これに対し,原告は,同年7月18日,被告会社に対し,同年6月6日付けの本件スペシャル・アサインメント発令の時点でバンド3(シニア・マネジャー)として正式発表していながら,唐突にバン 績を評価する。 これに対し,原告は,同年7月18日,被告会社に対し,同年6月6日付けの本件スペシャル・アサインメント発令の時点でバンド3(シニア・マネジャー)として正式発表していながら,唐突にバンド1に降格することは不当である,MDO-CMKにおいて,現在も将来も多くの仕事があるので,社内公募制度に応募するつもりはない旨の内容証明郵便(甲29の①,②)を送付した。 しかし,被告会社のP7は,同日,原告に対してメール(甲30の①,②)により,原告には,スペシャル・アサインメントとして仕事を探すこと以外に特に職責はないこと,会社は原告にMDO-CMKの職責は一切割り当てないことを理解すべきであると伝えた。 その後も,被告P1は,原告に対し,同年8月3日,同月20日,同年9月3日,同月9日と多数回にわたり,メール(甲30の①,②)により,社内公募制度に応募するよう指示した。 これに対し,原告は,同月6日,被告P1に対し,メール(甲31)により,原告にはMDO-CMKで仕事があり,MDO-CMKを去る理由がないこと,したがって,被告P1が強制しても,原告は社内公募制度に応募するつもりはない旨回答した。 (9) 同年8月21日,被告P1は,原告に対し,メール(甲32の①,②)により,26階への移動を命ずるとし,従前の席の所持品を持ち出さないと紛失してしまうかも知れないと伝えた。 同年9月1日,被告会社においてフロアの移動があったことに伴い,原告は,26階の新しい席に移動した。その席は,被告会社が同年6月6日に指示した席とは異なっており,6人分の席があるブースに1人だけで座るというものであり,そのブースの一方の隣は製造技術サービス部,他方の隣は,空きブースをはさんで広報部門で,いずれも原告の従前の業務と関連のない部門であり,背後は空きスペースであった。 に1人だけで座るというものであり,そのブースの一方の隣は製造技術サービス部,他方の隣は,空きブースをはさんで広報部門で,いずれも原告の従前の業務と関連のない部門であり,背後は空きスペースであった。 (10) 原告が加入した組合は,同年8月2日から同年9月5日にかけて合計4回にわたり,被告会社に対し団体交渉を申し入れ,議題をめぐるやりとり等を経て,同月19日に第1回団体交渉(甲35)が持たれた。この団体交渉には,被告会社から人事部のP8が出席しており,原告の業務について見直しをすることと,話し合いを継続することを了解した。 しかし,原告は,上記団体交渉において,①原告の仕事の実態や今後の方向について,被告会社の決定を一時棚上げして,人事と原告が主体となって調査検討を進め,②その作業の結果が出るまで,被告会社は原告に対する嫌がらせや業務の妨害をしたり,社内公募制度の利用による職探しなどの強要をしないことが合意されたと考え,組合が作成した同月26日付けの覚書(甲36)を,同月27日にP8に手渡した。 (11) 同年10月14日,原告は,CMKの同僚らに対し,業務上の事項につき意見を述べるメール(甲38の①,②)を送付したところ,P4人事本部長から,同月22日,CMKの同僚らと意思疎通しないようにという被告会社の指示に違反しているとのメール(甲38の③,④)の送付を受けた。 同年11月9日,被告P1の秘書であるP12が原告に対し,CMK会議の日程(同月16日)を連絡するメール(甲39の①,②)を送付したので,原告が,被告P1に対し,同会議に出席する意向を示すとともに,CMK全体への情報伝達から原告を排除しないよう申し入れたところ(甲40の①,②),被告P1は,同月12日,原告に対し,メール(甲41の①,②)により,第1回団体交渉の合意事項は,被告会社側 ともに,CMK全体への情報伝達から原告を排除しないよう申し入れたところ(甲40の①,②),被告P1は,同月12日,原告に対し,メール(甲41の①,②)により,第1回団体交渉の合意事項は,被告会社側の出席者に確認したところ,①原告の地位を廃止したことは本当に正しい決定であったかどうか見直すこと,②社内公募制度で職を探せという命令を保留すること,③被告P1は,原告のマネジャーとして,原告のメッセージを他のCMKの人々に伝達するかどうか決める権利があることであり,なお,原告を上記会議には呼ばないことを決定したと伝えた。 (12) 同年12月10日,組合と被告会社との間で第2回団体交渉が持たれたところ,出席した被告会社のP8は,原告の仕事は存在しないとし,「仕事はしなくてよい。」などと述べた。 (13) 平成14年1月11日,原告は,被告会社のCBD人事担当者のP13及び人事部のP8から呼ばれ,被告会社近くのレストランで面談したところ,P13は,原告に対し,CBDから取材した結果,原告にやってもらいたい仕事として,①CBDのためにマーケット・メジャメント・データ分析を行って助言する仕事,②カスタマー・プロポーザルの仕事,③カテゴリー・マネジメントの人達との仕事,④その他,特定のカスタマーや社内ニーズに対応した仕事があるとし,MDO-CMKには原告の人件費予算がもうないので,上記の仕事をGBS-MMに異動して行い,バページ(8)ンド2に位置付けることでどうかと打診した。 ところで,被告会社は,平成13年7月にCBD(営業統括)をカスタマー(得意先)を主体とする組織に変更して以降,CBDの活動のためのマーケット・メジャメント・データ分析の必要性が高まったことから,上記①を中心として行う職務を新たに設け,これに必要な経験等を有する原告にその職務を担当させよう 織に変更して以降,CBDの活動のためのマーケット・メジャメント・データ分析の必要性が高まったことから,上記①を中心として行う職務を新たに設け,これに必要な経験等を有する原告にその職務を担当させようとしたものであり,P13の上記提案はその趣旨に沿ってなされたものである。 これに対し,原告は,P13の提案を拒否した上,同月18日,P13の提案した仕事は,内容的にも顧客の関係も,現在原告が行っている仕事と同じであって,現在の地位のまま継続することができるから,降格を伴う異動には応じられない旨,書面(甲47の①)により通知した。 しかし,被告会社は,原告に対し,同月17日付け書面により,同月22日をもって原告をGBS-MMに異動し,バンド2に位置付ける,同日までに28階の新しい職場に移動するようにとの本件配転命令をなし,同書面は,同月19日に原告に到達した。 本件配転命令には,本件職務記述書と本件補足説明書が添付されており,本件補足説明書には,原告の新職務の職位をバンド2に位置付ける理由として,一国だけを担当することを挙げ,バンド3に位置付けるためには数か国を担当しなければならないとし,またアジアではGBS-MMのバンド3のポジションは1つしかないとし,さらに,原告のMDO-CMKでの職務との相違点として,①前職でのスキャン・ジャパンの仕事程の仕事の深さと幅がなく,職域は平成14年6月30日までのユーザーサポートのみであること,②ビジネス・パートナー・サポートについては,以前はCMD及びある程度のGBUの各担当者に対するコンサルティングであったが,新職務ではCBDだけに限られること,③データ分析・報告,データ購入及び業者の管理業務は今後常時の仕事ではなくなること,④以前は一般事務職の部下がいたが,今回は人材育成の任務はなく,アシスタントを必要としな はCBDだけに限られること,③データ分析・報告,データ購入及び業者の管理業務は今後常時の仕事ではなくなること,④以前は一般事務職の部下がいたが,今回は人材育成の任務はなく,アシスタントを必要としない単独で行う分析の仕事であることを挙げ,原告の従前のMDO-CMKでの職務と比較すると,非常に狭い範囲でかつ責任の浅い仕事であるとの説明がなされている。 (14) 原告は,同月15日,被告P1に対し,同月16日から同月21日までの有給休暇を申請したが,同被告は,同月16日に被告会社からの職務の提案について協議するために面談が予定されているとして,申請を承認しなかった。また,原告は,同月20日,被告P1に対し,同月22日から同月23日までの有給休暇を申請したが,同被告は,原告が同月22日にGBS-MMグループにおける新しい任務のために上司のP14に報告に行くよう命令されているとして,同申請も承認しなかった。 これに対し,原告は,被告会社に対し,同月22日付け書面(甲52の①)により,団体交渉での結論が出るまで,現在の地位と勤務場所による勤務を続けること,この件についての確認を受け取るまで,同月24日以降団体交渉終了まで自宅待機することも考慮していることを伝えた。 しかし,被告会社人事部のP8は,原告に対し,同月23日付け書面(甲53の①)により,原告が,被告会社が有給休暇の申請を不承認にしたにもかかわらず同月16日以降出勤しなかったことにつき,私用による欠勤として処理することを検討していること,今後も会社から許可されていない有給休暇の取得を名目に業務の遂行を意図的に拒否する場合は,懲戒処分をなす可能性もある旨伝えた。 (15) 組合と被告会社は,同年2月6日,第3回団体交渉を持ったところ,その席において,P5法務本部長は,原告が,本件職務記述書に記載さ 図的に拒否する場合は,懲戒処分をなす可能性もある旨伝えた。 (15) 組合と被告会社は,同年2月6日,第3回団体交渉を持ったところ,その席において,P5法務本部長は,原告が,本件職務記述書に記載された以外の仕事をするのは,業務命令に違反することになると説明した。また,P5法務本部長は,原告が訴訟を提起しても,裁判官は,被告会社に原告をバンド3の地位にして給与を支払うよう命ずることはあっても,仕事を与えるよう命ずることはないとの趣旨の発言をしたが,原告が,その発言は原告が訴訟を提起しないよう説得するようであると述べたのに対し,P5法務本部長は,そのような意図ではなく,誤解があれば謝る旨答えた。 組合は,被告会社に対し,同月19日付け回答書(甲56)により,原告に対する本件配転命令は受け容れ難い旨申し入れるとともに,団体交渉を求めたが,被告会社は,双方の主張は平行線となっており,これ以上団体交渉を重ねても意味がないとして団体交渉を拒否した。 原告が,同年2月21日に,本件配転命令には従わないこと,従前どおりの職位,職場での仕事であれば就労する意思があることを書面で通知したところ(甲59の①,②),被告会社は,原告が本件配転命令に従わないことを理由に,同日から原告に対する賃金の支払を停止する旨を通知した上(甲60),それ以降の賃金の支払を停止した。また,被告会社は,原告に対し,人事や広報等の社内情報のネットワークから排除した。 (16) 被告会社のGBSは,経理,福利厚生,給与,情報技術サービスなどの一般管理及び事務業務を担当する部門であり,従業員の給与計算や支払などの被告会社の業務遂行に当たって生ずる様々な事務サービスをとりまとめた部門であり,GBS-MMは,従来,定期的に,あるいは他の部署から依頼されて一般に販売されている市場データの購入・提供 算や支払などの被告会社の業務遂行に当たって生ずる様々な事務サービスをとりまとめた部門であり,GBS-MMは,従来,定期的に,あるいは他の部署から依頼されて一般に販売されている市場データの購入・提供を担当する部署であった。 被告会社は,平成14年6月に,GBSの業務のアウトソーシング計画を発表し,上記業務を外部委託するとの方針をとり,現在までに部分的に実施しつつある。 (17) 被告会社の就業規則(甲2)には,従業員に対して勤務地の変更を伴う転勤を命ずる場合の規定が設けられており,また,原告は,被告会社への入社に当たり,被告会社の運営上,出向・転勤・異動(勤務地変更・配置転換)を命ぜられた場合,正当な事由があるとき以外,出向・転勤・異動を拒んではならないとの約定を含む労働契約を締結している。 2 争点(1)について(1) 被告会社の配転命令権及び本件スペシャル・アサインメントの性質等についてア原告は,被告会社の配転命令権につき,就業規則上ないし労働契約上,根拠規定が見当たらないと主張するが,一般に労働契約は,労働者がその労働力の使用を使用者に包括的に委ねるというものであるから,使用者は,個々の労働契約において特に職種又は勤務場所を限定している例外的場合を除いて,上記の労働力に対する包括的な処分権に基づき,労働者に対し,その職種及び勤務場所を変更する配転命令権を有していると解されるところ,本件において上記の例外的事由は認められず,むしろ,上記1(17)で認定のとおり,被告会社の就業規則には,転勤,すなわち勤務地の変更を伴う異動に関する規定が設けられており,これは,被告会社に勤務地の変更を伴わない配転命令権があることを前提にしているものと見ることができるし,原告と被告会社間の労働契約上も,正当な事由がない限り,被告会社がその運営上命ずる異動(勤務 り,これは,被告会社に勤務地の変更を伴わない配転命令権があることを前提にしているものと見ることができるし,原告と被告会社間の労働契約上も,正当な事由がない限り,被告会社がその運営上命ずる異動(勤務地変更・配置転換)に従う旨の合意が存するから,被告会社は,原告に対する配転命令権を有するものと認められる。 イもっとも,被告会社が配転命令権を有するとしても,これを無制約に行使し得るものではなく,その行使が人事権の濫用に当たる場合には,当該配転命令は無効となると解される。そして,上記の人事権の濫用の有無の判断は,業務上の必要性と,従業員が受ける不利益との比較衡量によるべきであり,業務上の必要性が存しない場合,又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき,もしくは従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなどには,当該配転命令は人事権の濫用に当たると解するのが相当である。 ウこの点に関し,被告会社は,本件スペシャル・アサインメントは,原告の上司に変更はないし,特定の職責がなく,実質的には待機命令であるから,一般の配転命令と同じ判断基準でその有効性を判断すべきではないと主張しているが,上記争いのない事実等(7)及び上記1(5)ないし(8)の認定事実によれば,本件スペシャル・アサインメページ(9)ントは,原告に対し,従前の職務を変更して,被告会社に出勤した上で社内公募制度を利用して社内で他の職務を探すことを新たな職務とし,職場の移動も命じており,また,職位をバンド3からバンド1に変更していることからすると,新たな職務の特殊性を考慮しても,単なる待機命令であるとはいえず,原告の職種の変更をもたらすもので,配転命令に当たるというべきである。 そこで,以下に,本件ス バンド1に変更していることからすると,新たな職務の特殊性を考慮しても,単なる待機命令であるとはいえず,原告の職種の変更をもたらすもので,配転命令に当たるというべきである。 そこで,以下に,本件スペシャル・アサインメントにつき,人事権の濫用の有無を検討する。 (2) 人事権の濫用の有無ア業務上の必要性について(ア) 上記争いのない事実等(7)及び上記1(5)ないし(8)の認定事実によれば,被告会社は,原告のMDO-CMKにおける従前の職務が平成13年6月末(年度末)までになくなることを理由に,本件スペシャル・アサインメントにより,被告会社に出勤した上で社内公募制度を利用して社内で他の職務を探すことを新たな職務として命じているが,上記1の認定事実に照らすと,原告には,市場調査に関し,MDO-CMKにおいてスキャン・ジャパンと同時並行的に行っていた職務があり,それらのうちには,GBSに移管されず,CMKの他のシニア・マネジャーであるP3やP2に引き継がれる職務があったことが窺われ,したがって,スキャン・ジャパン以外の職務がすべてGBSに移管されるのではなかったし,少なくとも,廃止されたスキャン・ジャパンの事後処理や,P3やP2,あるいはGBSに年度末に引き継がれる業務をそれまでの間継続することや,引継事務を行うなどの仕事があったものと想定される。 (イ) そうだとすると,本件スペシャル・アサインメント発令の時点で,MDO-CMKにおいて,原告がなすべき職務がなかったとはいえず,それにもかかわらず,被告会社が,早々に原告に従前の仕事を止めさせ,もっぱら社内公募制度を利用して他の職務を探すことだけに従事させようとしたのは,実質的に仕事を取り上げるに等しく,いたずらに原告に不安感,屈辱感を与え,著しい精神的圧力をかけるものであって,恣意的で合理性に欠け 公募制度を利用して他の職務を探すことだけに従事させようとしたのは,実質的に仕事を取り上げるに等しく,いたずらに原告に不安感,屈辱感を与え,著しい精神的圧力をかけるものであって,恣意的で合理性に欠けるものというべきである。 被告会社は原告に対し,原告に社内公募制度を利用して新たな職務を見付けるよう指示しているが,社内公募制度の利用は,通常の職務を継続しながらでも可能であり,あえて,それに専念させる必要はなく,むしろ,それだけに専念すると,勤務時間の多くを無為に過ごさざるを得なくなり,それは,原告に強い疎外感や心理的圧迫感をもたらすであろうと思われる。被告会社としては,原告が退職勧奨に応ずることを拒否し,被告会社に残ることを明言している以上,自ら,原告の意見を聴取し(その方法として,W&DPがあり,上記1(2)のCMKのマネジャー会議の合意に照らせば,本件は当然W&DPの対象となる場合である。),社内の各部門,部署に当たるなどして業務上の必要性や適正な人材配置を検討し,原告のために新たな職務を確保すべきであったと考えられる。この点に関し,被告P1の供述中には,P6営業統括本部長に対して,CBDにおける原告の仕事の有無を確認したが,ないとの回答であったと述べる部分があるが,たとえこれが事実であっても,原告の職務を確保するためにどれだけ真摯に努力をしたかは疑問であるし,他にも,被告会社が,原告のために新たな職務を確保すべく,主体的に,かつ,真摯に努力したような形跡は本件証拠上窺われない。 (ウ) また,被告会社は,経費の削減,組織効率化の一環として,MDO-CMKにおいて,原告が担当していたスキャン・ジャパンを廃止し,MM業務をGBSに移管するなどの施策を実施する結果,MDO-CMKにおける原告の職務がなくなるため本件スペシャル・アサインメントをなし CMKにおいて,原告が担当していたスキャン・ジャパンを廃止し,MM業務をGBSに移管するなどの施策を実施する結果,MDO-CMKにおける原告の職務がなくなるため本件スペシャル・アサインメントをなしたもので,業務上の必要性があると主張するが,組織改革の必要性があったとしても,上記認定説示に照らし,本件スペシャル・アサインメントがなされた時点で,原告を通常の業務に一切就かせず,新たな職務を見付けるという職務だけに従事させる必要性があったとは認め難い。 (エ) 以上により,本件スペシャル・アサインメントは,業務上の必要性を欠いていたと認めるのが相当である。 イ不当な動機・目的について(ア) 上記アで認定説示のとおり,本件スペシャル・アサインメントは業務上の必要性がないのになされた不合理なものであり,原告に通常の業務をさせず,新たな職務を探すことに専念させることは,いたずらに原告の不安感を煽り,著しい精神的圧力をかけるものであること,被告会社には,原告のために自ら新たな職務を確保しようとする積極的かつ真摯な姿勢がみられないこと,被告会社は,原告に社内公募制度を利用して新たな職務を探すことを指示しているが,被告会社が退職勧奨の対象とした者に対し,新しい職務を見付けることに協力する部署があるかは疑問であること(その意味でも,被告会社が主体的に原告のために新たな職務を確保する努力をなすべきであった。),もし,原告が社内公募制度を利用しても所定の期間内(争いのない事実等(7)オによれば,被告会社は,平成13年9月28日までという期限を設定している。)に新たな職務を見付けることができなかったときは,いよいよ退職せざるを得ない立場に事実上追い込まれること,被告会社は,本件スペシャル・アサインメントにより,原告の職位をバンド3からバンド1へ低下させ,また他の職員から けることができなかったときは,いよいよ退職せざるを得ない立場に事実上追い込まれること,被告会社は,本件スペシャル・アサインメントにより,原告の職位をバンド3からバンド1へ低下させ,また他の職員から切り離された場所への席替えを指示していること,そして,被告会社のこのような処置が,被告P1による原告に対する退職勧奨に引き続いて行われているところ,原告が,退職勧奨に応じないことを明言したからといって,被告会社が原告を退職させる方針を直ちに放棄したとは想定し難いことなどを考慮すると,本件スペシャル・アサインメントは,原告に不安感,屈辱感を与え,精神的圧力をかけて任意退職に追い込もうとする動機・目的によるものと推認することができる。 (イ) 被告会社は,本件スペシャル・アサインメントが原告を退職に追い込もうとする動機・目的によるものではないとして縷々主張しているが,以下のとおり,いずれも理由がない。 a 被告会社は,平成13年4月26日に原告が退職の意思がないことを明言してからは退職勧奨をしていないと主張するが,上記1(2),(3)の認定事実によれば,被告P1は,同月27日,P3やP2らCMKのシニア・マネジャーに対し,メールにより,原告のMDO-CMKにおける地位がなくなることを前提に,原告が被告会社の提案を受け容れていない状況への協力を求めているが,新たな地位を用意せずに,現在の地位を失わせることだけに言及することは,原告の退職を予定しているものとみられるし,上記の「会社の提案」とは,当時においては退職勧奨にほかならないとみられるから,被告P1が,原告をして退職勧奨を受け容れさせる意思を依然として有しており,それにつきP3らに協力を求めたものと認めて差し支えない。 b 被告会社は,原告の職位をバンド3からバンド1に変更したのは,そのスペシャル・アサインメ 職勧奨を受け容れさせる意思を依然として有しており,それにつきP3らに協力を求めたものと認めて差し支えない。 b 被告会社は,原告の職位をバンド3からバンド1に変更したのは,そのスペシャル・アサインメントという職務に対応したものであると主張するが,そもそも,そのような職位の低下を伴う配転命令を,業務上の必要性もなく発令したことが問題である。 c 被告会社は,原告が,指示に反して他の従業員の業務を妨げる行為をなしたため,これをしないよう指示し,懲戒処分もあり得ることを警告したと主張するが,上記1(7)の認定事実によれば,被告P1は,原告が同僚らに対して業務に関する研究成果を伝えた行為を指示違反として捉え,懲戒処分もあり得ることを警告しているが,原告のこの行為が実質的に他の従業員の業務を妨害するものであったとは認められない。のみならず,被告P1のかかる言動は,同被告が原告と同僚らとの業務上の接触を断ち切ることのみに性急であった感を多分に抱かせるものである。 d 被告会社は,原告に移動するよう指示した新しい席が特殊な閉鎖空間であったことはないと主張するが,新しい席が他の従業員から離れた場所であったことは上記1(6)のとおりであり,これが孤立感を感じさせる場所であることは否定できない。 e 被告会社は,原告に社内公募制度を利用して新たな職務を探すよう指示していることから,原告を退職に追い込もうとする動機・目的はなかったことが明らかであると主張するが,被告会社のこのような指示が,真摯に原告のために新たな職務を確保しようとしたものとは認め難いことは上記のとおりであり,被告会社に上記の動機・目的がなかったページ(10)ことを裏付けるものとは認め難い。 (ウ) 以上により,本件スペシャル・アサインメントは,原告を退職に追い込もうとする動機・目的によるものと推認する 告会社に上記の動機・目的がなかったページ(10)ことを裏付けるものとは認め難い。 (ウ) 以上により,本件スペシャル・アサインメントは,原告を退職に追い込もうとする動機・目的によるものと推認することができる。 ウ原告の受ける不利益について(ア) 原告は,本件スペシャル・アサインメントにより,職位をバンド3からバンド1に低下させられたところ,給与額の減額はないものの,バンド3とバンド1とは給与レンジが重ならないから,将来の昇給の可能性がないことになり,経済的に不利益がある。この点,被告会社は,バンドの給与レンジは,厳格に給与額の上限下限を画するものではないと主張するが,上記1(8)で認定のとおり,被告会社は原告に対し,バンド1への職位の変更につき,給与は減額されないが,今後の昇給はバンド1の給与曲線に沿って進めると通告しており,バンド1の職位にいる限り将来の昇給の可能性がないことは明らかである。なお,バンドの給与レンジが給与額の上限下限を厳格に画するものでないとの点は,証人P8の証言によっても,通常,給与はバンドの給与レンジの範囲内にあり,そうでないのは極めて特殊な場合に限られることが認められるから,基本的に上限下限を画する機能を有するものと認められる。 また,被告会社は,いわゆる定期昇給がないことから,給与レンジの変更と昇給の可能性とは直結しないかのように主張するが,一定の成績を上げればそれに応じた一定の昇給を得られるという機会は,従業員として等しく保障されているものと考えられるから,給与レンジによって昇給の可能性が制約され,その機会さえ保障されないことは不利益といわざるを得ない。 (イ) さらに,原告は,本件スペシャル・アサインメントにより,MDO-CMKのシニア・マネジャーとして専門性の高い職務に従事していたのに,そのような従前の職務の いことは不利益といわざるを得ない。 (イ) さらに,原告は,本件スペシャル・アサインメントにより,MDO-CMKのシニア・マネジャーとして専門性の高い職務に従事していたのに,そのような従前の職務のみならず,他の通常の職務も与えられず,新たな職務を探すことだけに従事させられたものであり,自己の能力を発揮する機会を与えられず,正当な評価を受ける機会が保障されないという職業生活上の不利益を受けたものということができる。 (ウ) 被告会社は,本件スペシャル・アサインメントが当面の措置にすぎないと主張するが,その存続期間は明示されていない。この点,争いのない事実等(7)オによれば,被告会社は,平成13年9月28日までという期限を設定しているが,これは,原告が社内公募制度を利用して新たな職務を探す努力をし,それにつき評価を受ける期限であって,その結果いかんにかかわらず本件スペシャル・アサインメントに基づく措置が終了するという期限であるとは認められない。そうすると,原告は,新たな職務を見付けるまで無期限に上記のような地位に置かれることになる。 (エ) 以上によれば,原告は,本件スペシャル・アサインメントにより,通常甘受すべき程度を超える不利益を受けるものと認められる。 エ以上の次第で,本件スペシャル・アサインメントは,業務上の必要性を欠いているし,原告を退職に追い込もうとする動機・目的をもってなされたものであり,さらには原告に対し,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるから,人事権の濫用に当たり,無効であると認められる。 3 争点(2)について(1) 被告会社の配転命令権について原告は,本件配転命令につき,被告会社の就業規則上及び原告との労働契約上の根拠規定が存しないから無効であると主張するが,被告会社が原告に対して配転命令権を有するこ 1) 被告会社の配転命令権について原告は,本件配転命令につき,被告会社の就業規則上及び原告との労働契約上の根拠規定が存しないから無効であると主張するが,被告会社が原告に対して配転命令権を有することは,上記2(1)アで判示のとおりである。 (2) 職種限定の合意違反についてア原告は,本件配転命令が,原告の職種を総合職から一般職に変更するものであることを前提に,職種限定の合意に反すると主張するが,上記争いのない事実等(4)及び証拠(甲84,116,117の①,②,乙26,29,証人P8)並びに弁論の全趣旨によれば,本件配転命令に基づく原告の新職務であるGBS-MMのマネジャー(バンド2)という職務は,総合職であることが認められ,また,本件職務記述書に示された職務の内容に照らしても,後記のとおり,一定の専門的,裁量的判断を要するものであり,単純な事務作業であるとは認められない。 イよって,本件配転命令が原告の職種を総合職から一般職へ変更するとの原告の主張は肯認できず,職種限定の合意違反の主張は,その前提において理由がなく,採用できない。 (3) 人事権の濫用について使用者の配転命令権の行使が人事権の濫用に当たる場合には,当該配転命令が無効となること及び人事権の濫用の判断基準については,上記2(1)(イ)のとおりであるので,本件配転命令が人事権の濫用に当たるか否かを,以下検討する。 ア業務上の必要性について(ア) 原告は,本件配転命令による新職務が,市場データの購入や配達にまつわる事務的業務であり,シニア・マネジャーという専門性が高く裁量の範囲の広い業務に従事していた原告を充てる必要性はないと主張しているが,上記1(13)の認定事実及び証拠(甲48の①,②,90,乙11,26,49,証人P8,原告本人,被告P1本人)並びに弁論の全趣旨によれば 業務に従事していた原告を充てる必要性はないと主張しているが,上記1(13)の認定事実及び証拠(甲48の①,②,90,乙11,26,49,証人P8,原告本人,被告P1本人)並びに弁論の全趣旨によれば,被告会社は,本件配転命令による原告の新職務として,平成13年7月にCBD(営業統括)をカスタマー(得意先)を主体とする組織に変更して以降,CBDの活動のためのマーケット・メジャメント・データ分析及び助言の必要性が高まったことから,これを中心として行う職務を新たに設けたものであり,本件職務記述書に「I クライアントサービス」として記載されている職務内容はこれに該当するものであること,そして,この職務は,原告がMDO-CMKにおいて従来から行っていたものと同一であり,原告も,平成14年1月11日にP13から新職務として提案された際にそのような認識を抱いたことが認められる。 (イ) 原告は,別紙2の本件職務記述書に「I クライアントサービス」として記載された職務は,「Ⅱ データの配達」以下の一連の事務に付随する比較的単純な質問に対する回答等を行うことであると主張しているが,それは,従来のGBS-MMの職務が市場データの購入等の事務的業務であったことを前提とした解釈であり,被告会社が新たな職務を設け,GBS-MMの職務を拡大したことを無視するもので採用できない。この点に関し,原告本人は,本件配転命令がなされた当初は,新職務が単純な事務的業務であるとの異議を述べなかったことにつき,団体交渉における戦術であるなどと供述しているが,いささか不自然であって信用し難い。 なお,原告は,新職務がMM業務であるとしても,それは広義のMM業務であり,従来GBSが担当していた狭義のMM業務と異なるのであれば,事務サービス部門であるGBSではなく,従前どおりMDO-CMKで行わせ ,原告は,新職務がMM業務であるとしても,それは広義のMM業務であり,従来GBSが担当していた狭義のMM業務と異なるのであれば,事務サービス部門であるGBSではなく,従前どおりMDO-CMKで行わせればよいと主張するが,ある業務をいかなる部門の所管とするかは,被告会社の裁量に委ねられることであり,上記のような新職務をGBSにおいて行わせることが特に不合理とはいえない。 さらに,原告は,被告会社がGBSの業務のアウトソーシング(外部委託)を進めており,GBSの業務を拡大する戦略があるというのは不自然であると主張するが,GBSの業務のアウトソーシングが進められていることは上記1(16)のとおりであるが,GBSの業務のすべてがアウトソーシングされる予定であるとまでは認められず,このことは,被告会社が本件配転命令により,原告をGBS-MMに異動させ,上記の新職務を行わせようとしたことを否定する事情とは見られない。 さらに,原告は,本件配転命令が実質的に出向命令である可能性があると主張しているが,証拠(乙28,29,40の①,②,41,46,証人P8)によれば,被告会社が原告に送付した給料明細書等に「P&G・アジア・ピー・ティー・イー・リミテッド」という別会社名を記載したのは事務手続の誤りであり,本件配転命令は被告会社のGBS部門への異動を命ずるものであり,なお,上記会社に属していた従業員は平成16年5月1日に被告会社に転籍したことが認められる。 ページ(11)以上により,本件配転命令により原告をGBS-MMに異動させることが業務上の必要性を欠くとはいえない。 (ウ) しかしながら,本件配転命令は,原告の職位をバンド3からバンド2に低下させるものであるところ,上記1(13)の認定事実によれば,被告会社は,本件補足説明書において,原告の新職務が一国だけを 。 (ウ) しかしながら,本件配転命令は,原告の職位をバンド3からバンド2に低下させるものであるところ,上記1(13)の認定事実によれば,被告会社は,本件補足説明書において,原告の新職務が一国だけを担当すること,アジアではGBS-MMのバンド3のポジションは1つしかないことのほか,原告のMDO-CMKでのスキャン・ジャパンの仕事程の仕事の深さと幅がないことなどを指摘しているが,上記のとおり,新職務の中心であるCBDのためのマーケット・メジャメント・データ分析及び助言という職務が原告のMDO-CMKにおける職務と同一であり,これが単純な事務的業務でなく原告の知識・経験を生かせる業務であり,このことを被告会社も自認していることからすると,職務の専門性等において差異がないと思われる。また,アジアではGBS-MMのバンド3のポジションが1つであるとの点も,従来のGBS-MMの業務を前提とするとそうであったとしても,その業務を拡大して新職務を設けたのであるから,バンド3のポジションを増やすことも支障がないはずである。さらに,新職務と従前のMDO-CMKでの職務との相違点についても,上記のとおり大型プロジェクトであったスキャン・ジャパンの仕事はバンド3の職務として一般化できないものと思われるし,その他の点も,原告の職位をあえてバンド2に低下させる理由として薄弱である。なお,本件補足説明書において,原告の新職務が,従前のMDO-CMKでの職務と比較すると,非常に狭い範囲でかつ責任の浅い仕事であるとも説明されているが,この点は,原告の職位をあえてバンド2に位置付ける理由を強調するための記述であると思われ,実態に即したものとは認め難い。 のみならず,原告において,勤務成績不良等の職位を低下させられてもやむを得ない事由があったことは,本件証拠上認められないし,原告 を強調するための記述であると思われ,実態に即したものとは認め難い。 のみならず,原告において,勤務成績不良等の職位を低下させられてもやむを得ない事由があったことは,本件証拠上認められないし,原告と被告会社との本件紛争の発端となった退職勧奨も,経費削減等の目的による被告会社の組織改革に起因しており,原告に何らかの責任があったものではない。 そして,本件配転命令が,後記のとおり原告に不利益を与えるものであることを考慮すると,その業務上の必要性については厳格に考えるべきである。 (エ) 以上によれば,本件配転命令は,原告をGBS-MMに異動させ,上記のような新職務を担当させるとの限りでは,業務上の必要性を欠くとはいえないが,原告の職位をバンド3からバンド2に低下させた点は,業務上の必要性が乏しいというべきである。 イ不当な動機・目的について(ア) 原告は,本件配転命令が,原告に単純な事務的業務を担当させるなどの嫌がらせによって原告を退職に追い込もうとする動機・目的によるものであると主張するが,上記判示のとおり,本件配転命令による原告の新職務が単純な事務的業務であるとはいえず,この点で原告の主張は前提を欠いている。また,上記1で認定の本件紛争の経過に照らすと,むしろ,被告会社は,もはや原告が自主的に退職することは考えられなくなった状況で,真に原告に就労の機会を設けたものと見ることができる。 (イ) もっとも,被告会社が,本件配転命令により原告の職位をバンド3からバンド2に低下させたことは,上記のとおり,業務上の必要性が乏しいことや,上記1で認定の本件紛争の経過に照らすと,原告が退職勧奨の拒否を初めとして被告会社との抗争を続けてきた一連の行動を嫌悪してなしたものである蓋然性がある。 ウ原告の受ける不利益について(ア) 原告は,本件配転命令が,原告に 経過に照らすと,原告が退職勧奨の拒否を初めとして被告会社との抗争を続けてきた一連の行動を嫌悪してなしたものである蓋然性がある。 ウ原告の受ける不利益について(ア) 原告は,本件配転命令が,原告に従前の職務とは異なる単純な事務的業務に従事させるものであることを前提に,その能力を発揮する機会を奪われるなどと主張しているが,その前提を肯認できないことは上記のとおりである。 (イ) しかしながら,原告が,本件配転命令により,その職位をバンド3からバンド2に低下させられることは,当面給与の減額がないとしても,給与レンジの相違から,将来の昇給の可能性を制約される点で不利益を受けることは明らかである。なお,被告会社は,原告がバンド2になっても再度バンド3に昇格する可能性があることを主張するが,そのことが制度的に保障されているわけではなく,現時点でバンド3の地位を失うことが不利益でないとは到底いえない。 また,上記争いのない事実等(4)及び証拠(甲84,90,116,117の①,②,原告本人)並びに弁論の全趣旨によれば,バンドは,被告の従業員の昇進,昇格及び昇給の基準となるものであり,個々の従業員の業績や経験,能力,職責等に応じて職位(レベル)が上昇するものであること,原告も,長年の業績を評価されてバンド3に達したものであること,本件配転命令による原告の異動先であるGBS-MMにはバンド3に位置付けられたP14という従業員がおり,原告がバンド2の位置付けでGBS-MMに異動すると,P14が原告の上司となり,その指揮命令を受けることになり,従来より権限が縮小されること,なお,P14は,過去に原告の部下であった時期があることが認められる。 さらに,原告の職位がバンド3からバンド2に低下すると,ストック・オプションを受ける資格を失うことは,上記争いのない事実等( ,なお,P14は,過去に原告の部下であった時期があることが認められる。 さらに,原告の職位がバンド3からバンド2に低下すると,ストック・オプションを受ける資格を失うことは,上記争いのない事実等(4)イのとおりであるところ,それが具体的な経済的損失に直結するものではないものの,そのような資格を失うこと自体が不利益であると認めて差し支えない。 (ウ) そして,原告が本件配転命令により受ける上記の不利益は,通常甘受し難いものと認められる。 エ以上によれば,本件配転命令は,原告をGBS-MMに異動させ上記の新職務を担当させるとの点はともかく,原告の職位をバンド3からバンド2に低下させる点は,業務上の必要性が乏しく,不当な動機によるものであり,また,通常甘受し難い不利益を受けるものと認められるから,人事権の濫用と評価すべきである。そして,本件配転命令のうち,原告の職位をバンド3からバンド2に低下させる部分と,その余の部分(GBS-MMに異動させ,上記の新職務を担当させる部分)とは一体のものであり,これを切り離し,原告において前者の部分についてのみ従うことが可能であったとも認められないから(バンド3とバンド2とでは権限等が異なり,稼働内容が異なってくる。),結局,本件配転命令は全体として無効であると認めて差し支えない。 4 争点(3)について(1) 被告会社の原告に対する賞与について,証拠(甲63の③,160の①ないし⑪)及び弁論の全趣旨によれば,少なくとも,平成12年12月以降平成14年12月まで,冬季賞与が基本給57万円の3.1か月分の176万7000円,夏季賞与が同3か月分の171万円で同一金額であること,但し,平成14年の夏季賞与は,原告の出勤率を37.5%としてその出勤率の限度で支払われ,同年の冬季賞与は,原告の出勤率を12.6%としてその出勤率 季賞与が同3か月分の171万円で同一金額であること,但し,平成14年の夏季賞与は,原告の出勤率を37.5%としてその出勤率の限度で支払われ,同年の冬季賞与は,原告の出勤率を12.6%としてその出勤率の限度で支払われたこと,なお,夏季賞与は毎年6月の第1金曜日に,冬季賞与は毎年12月の第1金曜日に支払われる慣行であることが認められる。 (2) 以上により,他に特段の主張立証のない本件では,原告は,従前のMDO-CMKのシニア・マネジャー(バンド3)として,上記の金額の賞与の支払を受けることができると認められる。 5 争点(4)について(1) 被告会社の労働契約上の配慮義務違反による債務不履行責任ないし不法行為責任についてア被告会社は,原告に対し,労働契約上の付随義務として,原告を適切に就労させ,不当な処遇をしてその人格の尊厳を傷つけないよう配慮すべき義務を負っているものと解するのが相当である。 イしかしながら,上記1ないし3の認定説示に照らすと,被告会社は,原告に対し,違法,無効な本件スペシャル・アサインメントをなし,かつ,これに従うことを強要して原告を通常の業務に就かせず,被告P1らの言動も相まって,原告をして,その能力を発揮して正当な評価を受ける機会を与えないばかりか,退職に追い込むべく原告の不安を煽り,屈辱感を与え,精神的圧力をかけたものであるし,さらに,人事権を濫用して原告の職位をバンド3からバンド2に低下させる本件配転命令をなした上,原告がこれに従わないことを理由に原告に対する賃金の支払を停止し,仮処ページ(12)分手続をとることを余儀なくさせ,また社内のネットワークから排除するなどしたのであるから,上記配慮義務に違反したものとして,原告に対し,債務不履行による損害賠償責任を負うというべきである。 ウなお,原告は,本件配転命令後の第 させ,また社内のネットワークから排除するなどしたのであるから,上記配慮義務に違反したものとして,原告に対し,債務不履行による損害賠償責任を負うというべきである。 ウなお,原告は,本件配転命令後の第3回団体交渉におけるP5法務本部長の発言が原告に精神的損害を与えたことを主張しているが,同人の上記発言はその法的見解を述べたものであり,そのような発言として格別不当であるとはいえないから,被告会社が負う上記の配慮義務に違反し,あるいは不法行為を構成する行為であるとまでは認められない。 (2) 被告P1の不法行為責任について上記1ないし3の認定説示に照らすと,被告P1は,被告会社の原告に対する上記(1)イの違法行為を主導したものであるから,原告に対し,不法行為責任を負うと認められる。 6 争点(5)について叙上の認定説示に照らすと,原告が,被告らの上記配慮義務違反ないし不法行為により通常の職務に就くことができず,能力を発揮し,昇給の機会を得ることができなかった無形の損害を50万円とし,不安感や屈辱感,精神的圧力等を味わったことによる精神的苦痛に対する慰謝料を100万円とするのが相当であるので,損害額は合計150万円と認められる。 7 将来請求の可否について原告は,被告会社に対し,無期限に将来にわたる賃金を請求しているが,弁論の全趣旨に照らし,本件配転命令の効力や賞与についての原告の権利について判断した本判決が確定した場合には,被告会社は原告に対し,その後に期限が到来する賃金(給与及び賞与)を任意に支払うものと見込まれる。また,原告が本判決確定後,いつまでかかる賃金の支払を受ける地位を有するかも不確定であるから,将来請求の対象適格を欠く。 よって,本件において原告は,本判決確定後に期限が到来する賃金の支払を予め請求することは許されないものというべ かかる賃金の支払を受ける地位を有するかも不確定であるから,将来請求の対象適格を欠く。 よって,本件において原告は,本判決確定後に期限が到来する賃金の支払を予め請求することは許されないものというべきである。 8 以上によれば,原告の本訴請求は,主文第1項,第2項,第3項(1),第4項(1)の限度で理由があるのでこれを認容し,被告会社に対する本判決確定後に期限が到来する賃金(給与及び賞与)の請求にかかる訴えは不適法であるから却下し,被告らに対するその余の請求は失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を各適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部裁判官田中澄夫(別紙1)未払賃金一覧表┌──────┬─────┬─────┬─────┬─────┬─────┬│支給日 │ 基本給 │住宅手当 | 通勤費 │給料合計 │ 賞与 │├──┬─┬─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|H14|02|25| 178,530| │ │  178,530| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |03│25|  570,000│  37,000|  27,246│  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |04|25|  570,000│ 37,000│  27,246│  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |05|25|  570,000│  37,000│  27,246│  634,246 34,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |05|25|  570,000│  37,000│  27,246│  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |06|07| │ │ │ | 1,710,000|├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |06|25│ 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |07|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |08|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |09|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |10|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |11|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼| ──┼|  |11|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |12|06| │ | | | 1,767,000|├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |12|25| 570,000 │  37,000|  27,246|  634,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|H15|01|25| 570,000 │  42,000|  27,246|  639,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |02|25| 570,000 │  42,000|  27,246|  639,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |03|25| 570,000 │  42,000|  27,246|  639,246| |├──┼─┼─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  |04|25| 570,000 │  42,000|  27,246|  639,246| |├──┴─┴─┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼|  合計  | 8,158,530│ 538,000| 381,444| 9,077,974| 3,477,000|└──────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┬─────┬─────┐賃金合計 │既払賃金額│未払賃金額│───── 7,974| 3,477,000|└──────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┬─────┬─────┐賃金合計 │既払賃金額│未払賃金額│─────┼─────┼─────┤178,530| 0|  178,530│─────┼─────┼─────┤634,246|  178,530|  455,716|─────┼─────┼─────┤ページ(13)634,246|  89,265|  544,981|─────┼─────┼─────┤634,246|  59,510|  574,736|─────┼─────┼─────┤1,710,000|  642,000| 1,068,000|─────┼─────┼─────┤634,246|  14,878|  619,368|─────┼─────┼─────┤634,246|  29,754|  604,492|─────┼─────┼─────┤634,246|  163,679|  470,567|─────┼─────┼─────┤634,246|  44,660|  589,586|─────┼─────┼─────┤634,246|  14,875|  619,371|─────┼─────┼─────┤634,246|  223,117|  411,129|─────┼─────┼─────┤1,767,000|  222,700| 1,544,300|─────┼─────┼─────┤634,246|  44,624|  589,622|─────┼─────┼─────┤639,246|  270,000|  369,246|─── ───┼─────┼─────┤634,246|  44,624|  589,622|─────┼─────┼─────┤639,246|  270,000|  369,246|─────┼─────┼─────┤639,246| 0|  639,246|─────┼─────┼─────┤639,246| 0|  639,246|─────┼─────┼─────┤639,246| 0|  639,246|─────┼─────┼─────┤12,554,974| 1,997,592|10,557,382|─────┴─────┴─────┘ページ(14)

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