主文 本件各即時抗告をいずれも棄却する。 理由 本件各即時抗告の趣旨及び理由は,主任弁護人作成の各即時抗告申立書のとおりであるから,これらを引用する。 ①本件事故現場で発見された毛髪様の物についての鑑定過程で作成された書類の全部(第9号事件第2の2),及び②本件事故現場で発見された組織片様の物についての鑑定過程で作成された書類の全部(同事件第2の3)について論旨は,原決定は,弁護人が開示を求める①の書類が実況見分調書(甲2),捜査報告書(甲35)及び鑑定書(甲19)の証明力を,同じく②の書類が捜査報告書(甲28,35)の証明力をそれぞれ判断するために重要であるとは認められないとして請求を棄却したが,①,②の書類はそれぞれ上記証拠の証明力を判断するため極めて重要であることは明らかであり,また,検察官が開示した書類には,ページ数や鑑定嘱託書の号数からするとなお未開示のものがあることが強く推認されるのに,提示命令による慎重な検討をしないでなされており,原決定は不当である,というのである。 しかし,原審において,検察官は,①,②の書類について,既に開示済みの証拠以外には存在しないと回答しているところ,その回答は,それまで鑑定嘱託書や「鑑定書の送付について」と題する書面を任意に開示するなどしてきた検察官の対応状況に照らし,特段不自然,不合理なものとはいえないから,検察官が既に開示する旨の回答をしたもの以外には存在しないものと認められる。そして,このことは,検察官が開示した書類に未開示のページや鑑定嘱託書があるからといって,左右されるものではないし,存在しない証拠に対する提示命令というのも考えられない。 以上によれば,①,②の書類の開示請求を棄却した原決定の結論に誤りはなく,論旨は理由がない。 ③本件事故現場で採取された血液様の物に いし,存在しない証拠に対する提示命令というのも考えられない。 以上によれば,①,②の書類の開示請求を棄却した原決定の結論に誤りはなく,論旨は理由がない。 ③本件事故現場で採取された血液様の物についての鑑定過程で作成された書類の全部(第9号事件第2の4),及び④被告人車両から採取された組織片様の物についての鑑定過程で作成された書類の全部(同事件第2の5)について論旨は,原決定は,③,④の書類について,検察官が既に開示する旨の回答をしたもの以外には存在しないとして請求を棄却したが,検察官が開示した書類には,ページ数や鑑定嘱託書の号数からするとなお未開示のものがあることが強く推認されるのに,提示命令を行わずに検察官の説明のみをもって他に存在しないと認定した原決定は不当である,というのである。 しかし,③,④の書類について,既に開示済みの証拠以外には存在しないとの検察官の回答内容は,前記検察官の対応状況に照らし,格別不自然,不合理ではないとした原決定の認定,判断に誤りは認められないし,提示命令を行っていない点についても,存在しない証拠に対する提示命令が考えられないことからすると,審理不尽になるものではない。 論旨は理由がない。 ⑤被告人の取調べの際,ないし同人立会いの写真撮影,実況見分の際に検察官,警察官によって作成された備忘録類一切(フロッピーディスク,USBメモリーなどの電磁的記録媒体を含む。)(第9号事件第2の12)について論旨は,原決定は,⑤の備忘録類一切は存在しないものと認められるとして請求を棄却したが,被告人の取調べなど捜査過程で作成された備忘録類の開示については,本件が発生する前の平成18年までには既に争われていたから,平成19年6月の事件発生後,検察官や警察官が作成した備忘録類を順次廃棄していったというのは信じ難く,検 成された備忘録類の開示については,本件が発生する前の平成18年までには既に争われていたから,平成19年6月の事件発生後,検察官や警察官が作成した備忘録類を順次廃棄していったというのは信じ難く,検察官の説明に全幅の信頼を置いている原決定は不当である,というのである。 しかし,検察官は,⑤の備忘録類一切について,被告人の取調べや同人立会いの実況見分等の際に検察官や警察官がメモを作成した状況や,そのメモを廃棄した時期及び理由を相当具体的に明らかにして,備忘録類一切が存在しないと回答している。そして,刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含み,また,取調警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面は,当該事件の公判審理において,当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となり得るとの最高裁第三小法廷決定(刑集61巻9号895頁)が出されたのが平成19年12月25日であり,さらに,上記決定を前提とし,警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象となるものであるか否かの判断は,裁判所が行うべきものであるから,裁判所は,その判断をするために必要があると認めるときは,検察官に対し,同メモの提示を命じることができるというべきであるとの最高裁第三小法廷決定(刑集62巻6号1886頁)が出されたのは平成20年6月25日であることなどからすると,検察官の回答内容に格別不自然,不合理な点はないとした原決定 とができるというべきであるとの最高裁第三小法廷決定(刑集62巻6号1886頁)が出されたのは平成20年6月25日であることなどからすると,検察官の回答内容に格別不自然,不合理な点はないとした原決定の認定,判断に誤りは認められない。 論旨は理由がない。 ⑥現場鑑識実施報告書(35号事件)について論旨は,原決定は,⑥の現場鑑識実施報告書は存在しないと認定して請求を棄却したが,石川県警察では,現場鑑識運用要綱12条により,現場鑑識官には,軽微な事件を除き現場鑑識実施報告書による報告が義務づけられているのに,検察官の釈明を鵜呑みにして提示命令も行わないで,これが存在しないと認定した原決定は不当である,というのである。 しかし,⑥の現場鑑識実施報告書について,検察官は,その作成が省略された経緯,理由について具体的に説明した上で,現在は存在しないと回答しているのであり,検察官の前記の本件開示請求への対応状況に照らし,その説明内容が格別不自然,不合理ではないとした原決定の認定,判断に誤りは認められないし,提示命令を行っていない点についても,存在しない証拠に対する提示命令が考えられないことからすると,審理不尽になるものではない。 論旨は理由がない。 よって,本件各即時抗告は理由がないから,刑訴法426条1項後段によりこれをいずれも棄却することとして,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・伊藤新一郎,裁判官・後藤隆,裁判官・佐野信)
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