平成25(行ウ)93 処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年10月2日 名古屋地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文16,772 文字)

-1-平成26年10月2日判決言渡平成25年(行ウ)第93号処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求春日井市長が平成25年6月1日付けで原告に対してした平成25年度下水道事業受益者負担金賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,別紙1物件目録記載の各土地(以下,併せて「本件土地」という。)を所有する原告が,春日井市長から,平成25年6月1日付けで平成25年度下水道事業受益者負担金賦課決定処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,その取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め(1) 関係法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」に記載したとおりである。 (2) 受益者負担金について都市計画法75条1項は,市町村等は,都市計画事業によって著しく利益を受ける者があるときは,その利益を受ける限度において,当該事業に要する費用の一部を当該利益を受ける者に負担させることができるものとし,同条2項は,同条1項の場合において,その負担金(以下「受益者負担金」という。)の徴収を受ける者の範囲及び徴収方法については,市町村が負担させるものにあっては当該市町村の条例で定めるものとしている。 (3) 下水道事業の受益者負担金に関する被告の条例の定めについてア被告が都市計画法75条2項に基づいて定めた「尾張都市計画下水道事業受益者負担に関する条例」(昭和46年春日井市条例第30号。以下「本件条例」と-2-いう。)は,2条1項本文において,本件条例において「受益者」とは,事業により築造される公共下水道の排水区域内に存する土地の所有者をいうものとし,同項ただし書において,地 下「本件条例」と-2-いう。)は,2条1項本文において,本件条例において「受益者」とは,事業により築造される公共下水道の排水区域内に存する土地の所有者をいうものとし,同項ただし書において,地上権,質権又は使用貸借若しくは賃貸借による権利(一時使用のために設定された地上権又は使用貸借若しくは賃貸借による権利を除く。)の目的となっている土地については,それぞれ地上権者,質権者,使用借主又は賃借人をいうものとしている。 イ本件条例は,3条ないし9条において,受益者負担金等の額の算定方法や受益者負担金の賦課・徴収等に関する手続を定めている。 ウ本件条例は,10条において,市長は,①「受益者が当該負担金を納付することが困難であり,かつ,その現に所有し,または地上権等を有する土地等の状況により,徴収を猶予することが徴収上有利であると認められるとき」(1号)又は②「受益者について災害,盗難その他の事故が生じたことにより,受益者が,当該負担金を納付することが困難であるため,徴収を猶予することがやむを得ないと認められるとき」(2号)のいずれかに該当する場合においては,受益者負担金の徴収を猶予することができるものとしているが,これ以外の場合に,受益者負担金の徴収を猶予することができる旨の定めは置いていない。 (4) 生産緑地について生産緑地法は,生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより,農林漁業との調整を図りつつ,良好な都市環境の形成に資することを目的とする法律である(1条)。同法によると,市街化区域内にある農地等で,「公害又は災害の防止,農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり,かつ,公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること」等の一定の条件に該当する一団 「公害又は災害の防止,農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり,かつ,公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること」等の一定の条件に該当する一団のものの区域については,都市計画に「生産緑地地区」を定めることができ(3条1項),そのような定め(生産緑地の指定)がされると,生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は,当該生産緑地を農地等として管理しなければならず(7条1項),生産緑地地区内においては,-3-「建築物その他の工作物の新築,改築又は増築」等の行為は,市町村長の許可を受けなければ,してはならないこととなる(8条1項)。 3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。)(1) 本件土地ア本件土地は,市街化区域内にある,愛知県春日井市α所在の農地であり,被告により生産緑地として指定されている。(弁論の全趣旨)イ原告は,本件土地を所有し,農地として利用している。(甲8,25,弁論の全趣旨)(2) 本件処分に至る経緯ア春日井市長は,都市計画事業として,高蔵寺浄化センター(処理場)並びに高蔵寺汚水幹線(20号ないし23号),管渠及びマンホールポンプを築造・敷設する下水道事業(以下「本件下水道事業」という。)を施行することとし,これについて,平成24年3月23日,本件条例3条1項に基づき,αを含む96万㎡の区域を「高蔵寺処理区第5負担区」(以下「本件負担区」という。)と定め,これを公告した(平成24年春日井市告示第29号)。これとともに,春日井市長は,本件条例4条ないし7条に基づき,本件負担区の事業費を26億0172万2452円,単位負担金額の予定額 いう。)と定め,これを公告した(平成24年春日井市告示第29号)。これとともに,春日井市長は,本件条例4条ないし7条に基づき,本件負担区の事業費を26億0172万2452円,単位負担金額の予定額を1㎡当たり677円(26億0172万2452円÷4÷96万㎡)と定め,同日,これを公告した(同告示第30号)。(甲2,3,乙2,6,弁論の全趣旨)イ春日井市長は,平成25年4月1日,本件条例8条1項に基づき,αの全部を含む本件負担区第2賦課地域を,本件負担区の中で平成25年度に受益者負担金を賦課する区域(賦課対象区域)と定め,これを公告した(平成25年春日井市告示第32号)。(乙3)ウ本件土地は,本件下水道事業により築造される公共下水道の排水区域内にある。本件下水道事業が施行されると,別紙3「位置図」及び別紙4「詳細図面」の-4-とおり,本件土地を取り囲むように汚水管(管渠)が設置され,これが本件土地の南側に付設される高蔵寺汚水20号幹線に接続されて高蔵寺浄化センターまでつながり,同センターにおいて,汚水の浄化処理が行われることになる。(乙6,9,10)エ春日井市長は,平成25年4月1日付けで,本件土地の所有者である原告に対し,「下水道事業受益者申告書の提出について(依頼)」と題する書面を送付し,同封された平成25年度下水道事業受益者申告書に記入・押印のうえ同月30日までに返送するよう求めたが,原告は,同日までに同申告書を返送しなかった。(甲6,7,弁論の全趣旨)オ春日井市長は,原告に対し,平成25年6月1日付けで,本件土地に係る平成25年度下水道事業受益者負担金として,前記アの単位負担金額(1㎡当たり677円)に本件土地の面積(合計3936㎡)を乗じて得た金額である266万4670円を賦課する旨決定する本 本件土地に係る平成25年度下水道事業受益者負担金として,前記アの単位負担金額(1㎡当たり677円)に本件土地の面積(合計3936㎡)を乗じて得た金額である266万4670円を賦課する旨決定する本件処分をし,これを原告に通知した。(甲1)(3) 本件訴訟に至る経緯等ア原告は,本件処分を不服として,平成25年7月12日付けで,春日井市長に対して異議申立てをしたが,同市長は,同年9月6日付けで,同異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲14,15)イ原告は,平成25年10月18日,当庁に本件訴訟を提起した。(顕著な事実) 4 争点本件の争点は,本件処分の適法性であり,具体的には,①原告が本件下水道事業によって「著しく利益を受ける者」(都市計画法75条1項)に該当するかどうか,②本件条例が農地ないし生産緑地につき受益者負担金の徴収を猶予する旨を定めていないのは都市計画法75条1項の趣旨に反するものであり,そのために本件条例に基づいてされた本件処分も違法となるかどうかである。 5 当事者の主張-5-【原告の主張】(1) 「著しく利益を受ける者」該当性(争点①)について次のアないしエのとおり,本件土地は,生産緑地として指定されている農地であるから,原告は,本件下水道事業によって「著しく利益を受ける者」には該当しない。したがって,本件処分は都市計画法75条1項に違反する。 ア原告は,本件土地を農地として利用しており,本件土地には排水溝も整備されているため,下水道を利用する必要は全くない。しかも,本件土地は,生産緑地に指定されている農地であるから,農地等として管理する以外の利用方法は考えられない。したがって,本件下水道事業の施行によって,本件土地に下水道が設置されたとしても,原告がこれを利用する は,生産緑地に指定されている農地であるから,農地等として管理する以外の利用方法は考えられない。したがって,本件下水道事業の施行によって,本件土地に下水道が設置されたとしても,原告がこれを利用することはないから,原告は,本件下水道事業によって「著しく利益を受ける者」には該当しない。 イ本件土地を含むβ地区においては,昭和55年から平成11年にかけて行われた春日井市β中部特定土地区画整理事業により既に雨水管が完備されているため,本件下水道事業では,雨水管の設置は予定されていない。本件下水道事業において設置されるのは汚水管のみであるところ,農地の所有者が農地として土地を利用している限り,汚水管を利用することは考えられない。 ウ仮に,被告の主張を前提にすると,下水道事業施設の設置の対象とされる土地の所有者は,いずれも例外なく「著しく利益を受ける者」に該当することになり,これでは,都市計画法75条1項が受益者負担金を負う者を「著しく利益を受ける者」に限定している趣旨が没却されかねない。 エなお,原告の収支状況等に照らすと,原告が,本件土地に係る平成25年度下水道事業受益者負担金を支払うことは,極めて困難である。このような事情も,原告が本件下水道事業によって「著しく利益を受ける者」に該当するかどうかを判断するに当たり,十分考慮されるべきである。 (2) 農地ないし生産緑地であることが徴収猶予事由とされていないことの違法性(争点②)について-6-仮に原告が「著しく利益を受ける者」に該当するとしても,次のアないしウのとおり,本件条例が農地ないし生産緑地につき受益者負担金の徴収を猶予する旨定めていないのは都市計画法75条1項の趣旨に反して違法であるから,本件条例に基づいてされた本件処分も違法というべきである。 ア愛知県 例が農地ないし生産緑地につき受益者負担金の徴収を猶予する旨定めていないのは都市計画法75条1項の趣旨に反して違法であるから,本件条例に基づいてされた本件処分も違法というべきである。 ア愛知県内における被告以外の多くの地方自治体においては,下水道事業受益者負担金に関する条例等の中で,生産緑地として指定された農地等を対象とする下水道事業受益者負担金について,生産緑地の指定が解除される日等までの間,徴収の猶予を認める旨の規定や,農地を対象とする下水道事業受益者負担金について,宅地に転用される日等までの間,徴収の猶予を認める旨の規定が置かれている。 このように多くの地方自治体の条例において上記のような徴収猶予規定が置かれているのは,前記(1)のとおり,生産緑地として指定された農地等の所有者が「著しく利益を受ける者」に該当しないことが明らかであるからである。 イまた,名古屋市,尾張旭市,弥富市及び日進市においては,下水道事業受益者負担金に関する条例自体が定められておらず,そもそも下水道事業の事業費を受益者負担金として土地の所有者に賦課することすら行われていない。このような運用は,都市計画法75条1項において「当該事業に要する費用の一部を当該利益を受ける者に負担させることができる。」と定められ,具体的事情に応じて,受益者負担金を必ずしも受益者に賦課させなくてもよいとされていることにも適うものである。 ウ以上のような他の地方自治体における条例等の定めや運用と比較すると,本件条例が農地ないし生産緑地につき受益者負担金の徴収を猶予する旨を定めていないのは,都市計画法75条1項の趣旨に反するものであり,違法である。 そして,本件処分は,本件条例が上記のような徴収猶予の定めを置いていないために行われたものであるから,都市計画法75条1項 いないのは,都市計画法75条1項の趣旨に反するものであり,違法である。 そして,本件処分は,本件条例が上記のような徴収猶予の定めを置いていないために行われたものであるから,都市計画法75条1項の趣旨に反するものであり,違法である。 【被告の主張】-7-(1) 「著しく利益を受ける者」該当性(争点①)について原告は,次のアないしウのとおり,本件下水道事業によって「著しく利益を受ける者」に該当するから,本件処分は適法である。 ア都市計画法75条1項の「著しく利益を受ける者」に該当するかどうかは,都市計画事業に係る事業施設により恩恵を被っている者とそうでない者との比較において社会通念により決せられるべきであって,当該土地の権利者の主観や当該事業施設敷設時点における土地の利用状況によって左右されるものではない。なぜなら,利益享受の有無を判断するに当たっては,宅地転用の可能性や将来の土地利用においての有用性を無視することはできないし,当該事業施設敷設時点における土地の利用状況のみによって利益の有無や程度を決することになれば,負担義務者間に不公平を生じる結果になるからである。そして,受益者負担制度の趣旨に照らすと,当該受益者に事業費を負担させなければ他の一般市民との比較において社会通念上公平の理念に反することになる程度の利益があれば,「著しく利益を受ける者」と評価するのが相当である。 イ一般に,公共下水道は,都市生活がもたらす汚水を迅速かつ衛生的に処理するものであるから,都市の美観を保つとともに,汚水に起因する種々の伝染病の発生を防止して,都市の環境衛生を増進させ,また,都市を雨水による浸水から守り,さらに,汚水及び雨水が公共下水道末端の終末処理場で浄化される関係上,河川その他の公共の水域又は海域が汚水等により汚濁 発生を防止して,都市の環境衛生を増進させ,また,都市を雨水による浸水から守り,さらに,汚水及び雨水が公共下水道末端の終末処理場で浄化される関係上,河川その他の公共の水域又は海域が汚水等により汚濁されることを防ぎ,もって水質公害の発生を未然に防止するなど良好な都市の生活環境作りや公衆衛生の向上に寄与し,併せて公共用水域の水質保全に資するものである。 そして,公共下水道の設置は,上記のような公益的機能を有する反面,排水区域内の土地上における生活汚水,し尿,雨水等を完全,迅速,衛生的に排除処理することに伴い,当該土地の利用内容(効能)を質的に著しく高め,その資産的価値の増加をもたらすなど,当該土地の所有者又は使用者に対し,特別の私的な利益を与えるものである。 -8-公共下水道が設置された土地とそれが設置されていない土地とを比べた場合,前者の所有者・使用者が享受する上記特別の排他的利益は,後者の所有者・使用者が享受するものと比べ,一層顕著であり,しかも,公共下水道事業は,その排水区域が明確に定められていて,その区域内だけの下水の排除を目的としているため,特別の受益の事実及び受益者の範囲が当該土地の所有者・使用者に限定されるという特徴がある。 ウ前記イのとおり,下水道施設は,施設を敷設された区域だけが日常排出する汚水,し尿,雨水等を完全,迅速,衛生的に排除し得るものであって,下水道施設敷設によりこれを利用し得る利益は,まさしくその施設敷設区域内の土地の所有者及び使用者に限られるのであり,反面,施設敷設区域外の市民は,何ら利益を受けないから,本件下水道事業に係る施設敷設区域内の土地の所有者兼使用者である原告は,都市計画法75条1項の「著しく利益を受ける者」に該当するというべきである。 (2) 農地ないし生産緑地であることが徴 から,本件下水道事業に係る施設敷設区域内の土地の所有者兼使用者である原告は,都市計画法75条1項の「著しく利益を受ける者」に該当するというべきである。 (2) 農地ないし生産緑地であることが徴収猶予事由とされていないことの違法性(争点②)について都市計画法75条1項には,受益者負担金の徴収猶予に関して何ら具体的な規定はないから,本件条例において農地に係る徴収猶予規定が置かれていないからといって,本件条例が同項の趣旨に反するということはできない。 また,被告以外の地方自治体で,条例中に農地に係る徴収猶予規定を置くものがあるとしても,当該地方自治体が被告と全く同じ条件で下水道整備事業を行っているとは限らないのであって,他の地方自治体と比較検討し得ない部分もある。したがって,他の地方自治体に関する上記事実をもって直ちに本件条例が都市計画法75条1項の趣旨に反すると断じることはできない。 したがって,本件条例が農地ないし生産緑地につき受益者負担金の徴収を猶予する旨を定めていないからといって,都市計画法75条1項の趣旨に反するものということはできないし,本件条例に基づいてされた本件処分が違法であるということ-9-もできない。 第3 当裁判所の判断 1 「著しく利益を受ける者」該当性(争点①)について(1) 都市計画法75条1項は,「国,都道府県又は市町村は,都市計画事業によって著しく利益を受ける者があるときは,その利益を受ける限度において,当該事業に要する費用の一部を当該利益を受ける者に負担させることができる。」旨規定している。同項の文言や,受益の程度に応じて受益者に負担を求める受益者負担制度の趣旨,目的等に照らすと,ここでいう「利益」の種類や内容には特に限定はなく,都市計画事業によって土地の利用価値(効用)や資産価 る。同項の文言や,受益の程度に応じて受益者に負担を求める受益者負担制度の趣旨,目的等に照らすと,ここでいう「利益」の種類や内容には特に限定はなく,都市計画事業によって土地の利用価値(効用)や資産価値の増加がもたらされることも,これに当たることは明らかであり,「著しく利益を受ける」かどうかの判断は,都市計画事業によってそうした利益を享受する者とそうではない一般市民との比較において社会通念により決せられるべきものというべきである。 (2) そこで,これを本件についてみるに,前記前提事実によると,本件土地は,本件下水道事業により築造される公共下水道の排水区域内にあり,本件下水道事業が施行されると,本件土地を取り囲むように汚水管(管渠)が設置され,これが本件土地の南側に付設される高蔵寺汚水20号幹線に接続されて高蔵寺浄化センターまでつながり,同センターにおいて,汚水の浄化処理が行われることになるというのである。そうすると,本件土地は,本件下水道事業によって少なくとも将来宅地に転用された場合の利用価値(効用)が高まり,これに応じて宅地転用前の資産価値も増加することになるのであるから,本件土地の所有者である原告が本件下水道事業によって利益を受けることは明らかである。 また,前記前提事実並びに証拠(甲1ないし3,9,乙2,3,6)及び弁論の全趣旨によると,本件土地は,市街化区域内にあり,本件土地の周辺には,小学校,保育園,住宅その他の建物も点在していることが認められるところ,本件下水道事業により汚水管等が敷設されれば,これら周辺建物等からの生活排水等の汚水が汚水管等を通じて下水道に排出される結果,側溝や水路に汚水の停留がなくなり,悪-10-臭,蚊,ハエ等の発生を防止することができるなどの環境衛生の増進が図られるとみられるから,このような地 汚水が汚水管等を通じて下水道に排出される結果,側溝や水路に汚水の停留がなくなり,悪-10-臭,蚊,ハエ等の発生を防止することができるなどの環境衛生の増進が図られるとみられるから,このような地域的な公衆衛生の向上といった観点からも,本件下水道事業は,本件土地の価値を高め,その所有者である原告に利益をもたらすものというべきである。 そして,本件下水道事業によってもたらされるこれらの利益は,本件下水道事業により築造される公共下水道の排水区域内の土地の所有者又は使用者に専ら帰属するものであって,上記排水区域内の土地を所有又は使用しない一般市民が享受することができない性質のものであり,社会通念に照らして当該利益を享受する者に対して本件下水道事業の費用を一部負担させることが合理的であると認められる程度に特別なものといわざるを得ない。 したがって,原告は,本件下水道事業によって「著しく利益を受ける者」に該当するというべきである。 (3) これに対し,原告は,①本件土地は,農地として利用されており,排水溝も整備されている上,生産緑地に指定されているため,下水道を利用する必要はなく,これを利用することは考えられない,②土地の資産価値の増加等を理由に「著しく利益を受ける者」への該当性を認めると,下水道事業施設の設置の対象とされる土地の所有者は,いずれも例外なく「著しく利益を受ける者」に該当することになり,都市計画法75条1項が受益者負担金を負う者を「著しく利益を受ける者」に限定している趣旨が没却されかねない,③原告の収支状況等に照らすと,本件土地に係る平成25年度下水道事業受益者負担金を支払うのは極めて困難であるなどとして,原告は「著しく利益を受ける者」には該当しない旨主張する。 しかしながら,上記①の点については,受益者負担金賦課決定 係る平成25年度下水道事業受益者負担金を支払うのは極めて困難であるなどとして,原告は「著しく利益を受ける者」には該当しない旨主張する。 しかしながら,上記①の点については,受益者負担金賦課決定の時点では,公共下水道の利用が見込まれないのは,農地や生産緑地に限られるわけではなく,空き地や駐車場,資材置場等として利用されている土地においても変わるところはない。 生産緑地に指定されている農地についても,将来生産緑地の指定が解除されるなどして宅地に転用される可能性があるところ,そのために資産価値の上昇を生じるこ-11-と自体は否定し難い上,仮に,受益者負担金賦課決定の時点において賦課対象区域内の土地の所有者であっても当該土地が生産緑地に指定されていることを理由に「著しく利益を受ける者」に該当しないとされるならば,当該土地が宅地に転用された場合には,受益者負担金を賦課・徴収された土地所有者との間に著しい不公平が生じることになりかねない。 上記②の点については,下水道事業により築造される公共下水道の排水区域内の土地の資産価値が増加すること等から,その所有者がおしなべて「著しく利益を受ける者」に該当する(本件条例2条1項本文参照)と考えたとしても,それは公共下水道の特性によるところが大きいところ,都市計画法75条1項は,その規定上,下水道事業以外の都市計画事業にも適用され得るものであるから,必ずしも同項が受益者負担金を負う者を「著しく利益を受ける者」に限定している趣旨が没却されることにはならない。 上記③の点については,都市計画法75条1項所定の「著しく利益を受ける者」に該当するかどうかの判断が,その者の支払能力によって左右されるものではないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 の「著しく利益を受ける者」に該当するかどうかの判断が,その者の支払能力によって左右されるものではないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 2 農地ないし生産緑地であることが徴収猶予事由とされていないことの違法性(争点②)について(1) 都市計画法は,75条2項において,同条1項に基づき負担させる受益者負担金の徴収を受ける者の範囲及び徴収方法については,市町村等の条例で定める旨規定する一方,農地ないし生産緑地であることを理由とする徴収猶予を認めるかどうかという点については,何ら定めを置いていない。そうすると,この点については,各市町村等の立法政策に委ねられているものというべきであって,被告以外の地方自治体が,その自治体の下水道整備に関する状況や実態等を前提に,農地ないし生産緑地であることを理由とする徴収猶予を認める旨の規定を設けていても,本件条例が違法であることの理由にはならないというべきである。 -12-したがって,原告の主張するような徴収猶予の定めが本件条例にないからといって,本件条例が都市計画法75条1項の趣旨に反して違法であるということはできないし,本件条例に基づいてされた本件処分が違法となるものでもない。 (2) なお,原告は,愛知県内における被告以外の多くの地方自治体が定めた条例において,生産緑地として指定された農地等について受益者負担金の徴収を猶予する旨の定めが置かれているのは,生産緑地として指定された農地等の所有者が「著しく利益を受ける者」に該当しないことが明らかであるためである旨主張するけれども,徴収猶予の制度は,徴収猶予の対象者たる土地の所有者等が「著しく利益を受ける者」に該当することを前提に,当該所有者等に受益者負担金を賦課した上で,その徴収を猶 かであるためである旨主張するけれども,徴収猶予の制度は,徴収猶予の対象者たる土地の所有者等が「著しく利益を受ける者」に該当することを前提に,当該所有者等に受益者負担金を賦課した上で,その徴収を猶予するものであるから,原告の上記主張は,その前提を欠くものというほかはない。 3 本件処分の適法性前記前提事実によると,本件処分に当たっては,本件条例所定の手続がとられており,本件全証拠を精査してみても,本件処分の内容及び手続について,違法と目すべき点は見当たらない。 したがって,本件処分は適法というべきである。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官福井章代 -13-裁判官笹本哲朗 裁判官西脇真由子-14-(別紙1)物件目録 1 所在春日井市α地番 ×番1地目田地積 2769㎡ 2 所在春日井市α地番 ×番8地目田地積 1167㎡-15-(別紙2)関係法令の定め 1 都市計画法(昭和43年法律第100号)4条15項この法律において「都市計画事業」とは,この法律で定めるところにより第59条の規定による認可又は承認を受けて行われる都市計画施設の整備に関する事業及び市街地開発事業をいう。 75条1項国,都道府県又は市町村は,都市計画事業によって著しく利益を受ける者があるときは,その利益を受ける限度において,当該事業に要する費 施設の整備に関する事業及び市街地開発事業をいう。 75条1項国,都道府県又は市町村は,都市計画事業によって著しく利益を受ける者があるときは,その利益を受ける限度において,当該事業に要する費用の一部を当該利益を受ける者に負担させることができる。 75条2項前項の場合において,その負担金の徴収を受ける者の範囲及び徴収方法については,国が負担させるものにあっては政令で,都道府県又は市町村が負担させるものにあっては当該都道府県又は市町村の条例で定める。 75条3項前2項の規定による受益者負担金(以下この条において「負担金」という。)を納付しない者があるときは,国,都道府県又は市町村(以下この条において「国等」という。)は,督促状によって納付すべき期限を指定して督促しなければならない。 2 生産緑地法(昭和49年法律第68号)1条この法律は,生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより,農林漁業との調整を図りつつ,良好な都市環境の形成に資することを目的とする。 -16-2条この法律において次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号農地等現に農業の用に供されている農地若しくは採草放牧地,現に林業の用に供されている森林又は現に漁業の用に供されている池沼(これらに隣接し,かつ,これらと一体となって農林漁業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む。)をいう。 2号公共施設等公園,緑地その他の政令で定める公共の用に供する施設及び学校,病院その他の公益性が高いと認められる施設で政令で定めるものをいう。 3号生産緑地第3条第1項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の土地又は森林をいう。 4号 《省略》3条1項市街化区 公益性が高いと認められる施設で政令で定めるものをいう。 3号生産緑地第3条第1項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の土地又は森林をいう。 4号 《省略》3条1項市街化区域(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条第1項の規定による市街化区域をいう。)内にある農地等で,次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については,都市計画に生産緑地地区を定めることができる。 1号公害又は災害の防止,農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり,かつ,公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。 2号 500平方メートル以上の規模の区域であること。 3号用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。 3条3項生産緑地地区に関する都市計画を定めるに当たっては,当該生産緑地地区に係る農地等及びその周辺の地域における幹線街路,下水道等の主要な都市施設の整備に支障を及ぼさないようにし,かつ,当該都市計画区域内における土地利用の動向,-17-人口及び産業の将来の見通し等を勘案して,合理的な土地利用に支障を及ぼさないようにしなければならない。 7条1項生産緑地について使用又は収益をする権利を有する者は,当該生産緑地を農地等として管理しなければならない。 8条1項生産緑地地区内においては,次に掲げる行為は,市町村長の許可を受けなければ,してはならない。ただし,公共施設等の設置若しくは管理に係る行為,当該生産緑地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については,この限りでない。 1号建築物その他の工作物の新築,改築又は増築2号宅地 地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については,この限りでない。 1号建築物その他の工作物の新築,改築又は増築2号宅地の造成,土石の採取その他の土地の形質の変更3号水面の埋立て又は干拓8条2項市町村長は,前項各号に掲げる行為のうち,次に掲げる施設で当該生産緑地において農林漁業を営むために必要となるものの設置又は管理に係る行為で生活環境の悪化をもたらすおそれがないと認めるものに限り,同項の許可をすることができる。 1号農産物,林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する施設2号農林漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設3号農産物,林産物又は水産物の処理又は貯蔵に必要な共同利用施設4号農林漁業に従事する者の休憩施設5号前各号に掲げるもののほか,政令で定める施設9条1項市町村長は,前条第1項の規定に違反した者又は同条第3項の規定により許可に付けられた条件に違反した者がある場合においては,これらの者又はこれらの者から当該土地若しくは建築物その他の工作物についての権利を承継した者に対して,-18-相当の期限を定めて,当該生産緑地の保全に対する障害を排除するため必要な限度において,その原状回復を命じ,又は原状回復が著しく困難である場合に,これに代わるべき必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。 18条第9条第1項の規定による命令に違反した者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 19条次の各号の一に該当する者は,6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。 1号第8条第1項の規定に違反した者2号 《省略》 3 下水道法(昭和33年法律第79号)1条この法 各号の一に該当する者は,6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。 1号第8条第1項の規定に違反した者2号 《省略》 3 下水道法(昭和33年法律第79号)1条この法律は,流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項並びに公共下水道,流域下水道及び都市下水路の設置その他の管理の基準等を定めて,下水道の整備を図り,もって都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し,あわせて公共用水域の水質の保全に資することを目的とする。 2条この法律において次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号下水生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し,若しくは付随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水をいう。 2号下水道下水を排除するために設けられる排水管,排水渠その他の排水施設(かんがい排水施設を除く。),これに接続して下水を処理するために設けられる処理施設(屎尿浄化槽を除く。)又はこれらの施設を補完するために設けられるポンプ施設その他の施設の総体をいう。 -19-3号公共下水道主として市街地における下水を排除し,又は処理するために地方公共団体が管理する下水道で,終末処理場を有するもの又は流域下水道に接続するものであり,かつ,汚水を排除すべき排水施設の相当部分が暗渠である構造のものをいう。 4~6号 《省略》7号排水区域公共下水道により下水を排除することができる地域で,第9条第1項の規定により公示された区域をいう。 8号 《省略》9条1項公共下水道管理者は,公共下水道の供用を開始しようとするときは,あらかじめ,供用を開始すべき年月日,下水を排除すべき区域その他国土交通省令で定める事項を公示し,かつ,これを表示した図面を当該公共下水道管理者 道管理者は,公共下水道の供用を開始しようとするときは,あらかじめ,供用を開始すべき年月日,下水を排除すべき区域その他国土交通省令で定める事項を公示し,かつ,これを表示した図面を当該公共下水道管理者である地方公共団体の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。公示した事項を変更しようとするときも,同様とする。 4 尾張都市計画下水道事業受益者負担に関する条例(昭和46年春日井市条例第30号)1条市長は,この条例の定めるところにより,都市計画事業として施行する下水道事業のうち公共下水道にかかる事業(以下「事業」という。)に要する費用の一部に充てるため,都市計画法(昭和43年法律第100号)第75条第1項の規定に基づく受益者負担金(以下「負担金」という。)を徴収するものとする。 2条1項この条例において「受益者」とは,事業により築造される公共下水道の排水区域(以下「排水区域」という。)内に存する土地の所有者をいう。ただし,地上権,質権または使用貸借もしくは賃貸借による権利(一時使用のために設定された地上-20-権または使用貸借もしくは賃貸借による権利を除く。以下「地上権等」という。)の目的となっている土地については,それぞれ地上権者,質権者,使用借主または賃借人をいう。 3条1項市長は,排水区域を土地の状況に応じて2以上の負担区に区分するものとする。 4条負担区の事業費の額は,次の各号に掲げる費用の額の合計額とする。 (1) 当該負担区と他の負担区に共通する施設にかかる事業(以下「共通事業」という。)に要する費用の額に,当該負担区の地積の当該負担区と当該他の負担区の地積の合計に対する割合を乗じて得た額(2) 当該負担区における共通事業以外の事業に要する費用の額5条負担区の負担金の に要する費用の額に,当該負担区の地積の当該負担区と当該他の負担区の地積の合計に対する割合を乗じて得た額(2) 当該負担区における共通事業以外の事業に要する費用の額5条負担区の負担金の総額は,負担区の事業費の額に4分の1を乗じて得た額とする。 6条受益者が負担する負担金の額は,負担区の負担金の総額を当該負担区の地積で除して得た額(以下「単位負担金額」という。)に当該受益者が第8条の公告の日現在において所有し,または地上権等を有する土地で同条の規定により公告された区域内のものの面積を乗じて得た額とする。 7条市長は,負担区にかかる事業に着手する前に,当該負担区にかかる事業費および単位負担金額の予定額を定め,これらを公告しなければならない。 8条1項市長は,毎年度の当初に,負担金を賦課しようとする区域(以下「賦課対象区域」という。)を負担区ごとに定め,これを公告しなければならない。 9条1項市長は,前条第1項の公告の日現在における当該公告のあった賦課対象区域内の-21-土地にかかる受益者ごとに,第7条の規定により公告された単位負担金額の予定額を基礎として負担金の額を定め,これを賦課するものとする。 9条3項市長は,第1項の規定により負担金の額を定めたときは,遅滞なく,当該負担金の額およびその納付期日等を受益者に通知しなければならない。 9条4項負担金は,4年に分割して徴収するものとする。ただし,受益者が,一括納付の申出をしたときは,この限りではない。 10条市長は,次の各号の一に該当する場合においては,負担金の徴収を猶予することができる。 (1) 受益者が当該負担金を納付することが困難であり,かつ,その現に所有し,または地上権等を有する土地等の状況により,徴収を猶予することが徴 合においては,負担金の徴収を猶予することができる。 (1) 受益者が当該負担金を納付することが困難であり,かつ,その現に所有し,または地上権等を有する土地等の状況により,徴収を猶予することが徴収上有利であると認められるとき。 (2) 受益者について災害,盗難その他の事故が生じたことにより,受益者が,当該負担金を納付することが困難であるため,徴収を猶予することがやむを得ないと認められるとき。 16条この条例の施行について必要な事項は,市長が別に定める。 5 尾張都市計画下水道事業受益者負担に関する条例施行規則(昭和48年春日井市規則第2号)1条この規則は,尾張都市計画下水道事業受益者負担に関する条例(昭和46年春日井市条例第30号。以下「条例」という。)第16条の規定により条例の施行について必要な事項を定めるものとする。 -22-3条1項条例第8条の規定により公告された区域内の受益者は,公告のあった日から30日以内に下水道事業受益者申告書(第1号様式)を市長に提出しなければならない。 4条市長は,前条第1項に規定する申告もしくは条例第14条に規定する届け出のない場合,またはその内容が事実と異なると認めた場合は,申告または届け出によらないで認定することができる。 10条1項条例第10条の規定による負担金の徴収猶予を受けようとする者は,納付通知書を受けた日又は徴収猶予の理由が発生した日から14日以内に,下水道事業受益者負担金徴収猶予申請書(第5号様式)を市長に提出しなければならない。 10条2項市長は,前項の申請書の提出があったときは,その適否を審査決定し,下水道事業受益者負担金徴収猶予決定(却下)通知書(第6号様式)により申請者に通知するものとする。 10条3項負担金の徴 市長は,前項の申請書の提出があったときは,その適否を審査決定し,下水道事業受益者負担金徴収猶予決定(却下)通知書(第6号様式)により申請者に通知するものとする。 10条3項負担金の徴収猶予の基準は,別表第1に定めるところによる。 別表第1(第10条関係)受益者負担金徴収猶予基準表徴収猶予項目猶予期間猶予の額災害等により負担金を納付することが困難であると認められる受益者1年 全額 係争地の場合 受益者の決定(判決)の日まで全額

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