平成23(受)268 配当異議事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月23日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所 平成22(ネ)3303
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判決文本文3,929 文字)

- 1 - 主文 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人安保智勇,同金澤浩志の上告受理申立て理由について 1 本件は,上告人が,上告人及び被上告人を債権者,Aを債務者,国を第三債務者とする東京地方裁判所平成20年(リ)第4492号配当等手続事件につき平成21年1月15日に作成された配当表(以下「本件配当表」という。)の変更を求める配当異議事件である。被上告人は,本件配当表に記載された上告人の債権に基づく上告人のAに対する請求を棄却する判決が確定しており,上告人は配当を受け得る立場にないから,本件訴えは訴えの利益を欠くと主張している。 2 原審が確定した事実関係等及び記録上明らかな本件の事実関係の概要は,次のとおりである。 (1) 上告人の申立てに基づき,平成19年1月19日,AがBに対して有する明渡料支払請求権の内金2000万円につき,請求債権を下記のとおりとする債権仮差押命令(以下「本件仮差押命令」という。)が発令され,その頃,同命令がBに対して送達された。 記A及びCが,同月10日頃,極度額1億5000万円の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)が設定された建物を取り壊すことにより,上告人の本件根抵当権を侵害したことに起因して,上告人がAに対して有する,共同不法行為に基づく損害賠償請求債権4000万円の内金2000万円(以下「本件損害賠償債権」と- 2 -いう。)(2) Aが本件仮差押命令において定められた仮差押解放金額2000万円の供託をしたため,平成19年1月26日,本件仮差押命令の執行を取り消す旨の決定がされた。こ 債権」と- 2 -いう。)(2) Aが本件仮差押命令において定められた仮差押解放金額2000万円の供託をしたため,平成19年1月26日,本件仮差押命令の執行を取り消す旨の決定がされた。これにより,本件仮差押命令の執行の効力は,Aの国に対する上記供託に係る供託金の取戻請求権(以下「本件供託金取戻請求権」という。)の上に移行した。 (3) 上告人は,平成19年2月14日,Aほか3名を被告とする訴訟(以下「本件本案訴訟」という。)を提起し,Aに対しては,① 主位的請求として,上告人は,平成18年8月31日,Aほか2名を連帯債務者として4000万円の貸付けをし(以下,この貸付けに係る上告人のAに対する貸金債権を「本件貸金債権」という。),A所有の建物及びC所有の建物に本件根抵当権の設定を受けていたところ,Aが相被告らと共謀して上告人に無断で上記各建物を取り壊して上告人の本件根抵当権を侵害したため,上告人において本件貸金債権を回収することが困難になったと主張して,不法行為に基づき本件貸金債権相当額を含む4500万円の損害の賠償及び遅延損害金の支払を求め,② 予備的請求として,本件貸金債権に基づき4000万円及び遅延損害金の支払を求めた。 (4) 被上告人の申立てに基づき,平成20年11月20日,本件供託金取戻請求権につき,請求債権を執行力ある公正証書正本に記載された複数の金銭消費貸借契約に基づく貸付金元金4000万円及び遅延損害金4269万9016円とする債権差押命令が発令され,その頃,同命令が国に対して送達された。 (5) 本件供託金取戻請求権について,上告人による仮差押えと被上告人による差押えが競合した旨の事情届の提出を受けて,東京地方裁判所は,配当期日を平成- 3 -21年1月15日と定めた。上記配当期日において,上告 金取戻請求権について,上告人による仮差押えと被上告人による差押えが競合した旨の事情届の提出を受けて,東京地方裁判所は,配当期日を平成- 3 -21年1月15日と定めた。上記配当期日において,上告人の配当額(手続費用を除く。以下同じ。)を389万6374円,被上告人の配当額を1611万1316円とする本件配当表が作成された。 (6) 上告人は,被上告人による差押えが上告人のAに対する強制執行を妨害する目的でされたものであり,本件配当表に記載された被上告人の債権は架空のものであって存在しないと主張して,上記配当期日において,本件配当表に記載された被上告人の配当額全額につき異議の申出をした上,平成21年1月16日,本件配当表のうち,上告人の配当額を2000万円に,被上告人の配当額を7690円に,それぞれ変更することを求めて,本件訴えを提起した。 (7) 本件本案訴訟において,Aに対する主位的請求を棄却し,予備的請求を認容する控訴審判決が,平成22年3月26日に確定した。 3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件訴えは不適法であるとして,これを却下すべきものとした。 (1) 上告人の本件配当表上の地位は,本件仮差押命令の執行に基づくものであるところ,本件本案訴訟において本件仮差押命令の被保全債権である本件損害賠償債権の存在を否定する判決が確定しているから,上告人に対する配当を基礎付ける債権が存在しなかったことになり,仮に本件配当表に記載された被上告人の債権の存在が否定されたとしても,上告人の配当額を増加させることはできず,上告人には訴えの利益がない。 (2) 本件本案訴訟では,予備的請求である本件貸金債権に基づく請求が認容されているが,本件仮差押命令の被保全債権として上告人が選択した本件損害賠償債権 はできず,上告人には訴えの利益がない。 (2) 本件本案訴訟では,予備的請求である本件貸金債権に基づく請求が認容されているが,本件仮差押命令の被保全債権として上告人が選択した本件損害賠償債権と訴訟物を異にする本件貸金債権が認められたとしても,そのことによって本件- 4 -仮差押命令の効力が維持されることにはならない。 (3) 仮に,本件仮差押命令の被保全債権と本件本案訴訟における予備的請求である本件貸金債権が同一の客観的事実に基づくものであるときは,本件仮差押命令の効力が維持されると解する余地があるとしても,上記各債権の発生の日時,場所,行為内容等からみれば,これらが同一の客観的事実に基づくものと解することもできない。 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 保全命令は,一定の権利関係を保全するため,緊急かつ必要の限度において発令されるものであって,これによって保全される一定の権利関係を疎明する資料についても制約があることなどを考慮すると,仮差押命令は,当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても,これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば,その実現を保全する効力を有するものと解するのが相当である(最高裁昭和25年(オ)第63号同26年10月18日第一小法廷判決・民集5巻11号600頁参照)。そうすると,債務者に対する債務名義を取得した仮差押債権者は,債務名義に表示された金銭債権が仮差押命令の被保全債権と異なる場合であっても,上記の金銭債権が上記の被保全債権と請求の基礎を同一にするものであるときは,仮差押命令の目的財産につき他の債権者が申し立てた強制執行手続において,仮差押債権者として配当を受領し得る地位を有しているということができる。 前記 権と請求の基礎を同一にするものであるときは,仮差押命令の目的財産につき他の債権者が申し立てた強制執行手続において,仮差押債権者として配当を受領し得る地位を有しているということができる。 前記事実関係等によれば,本件仮差押命令の被保全債権である本件損害賠償債権は,債務者であるAが債権者である上告人に無断で担保物件を取り壊したことによ- 5 -り,本件貸金債権の回収が困難になり,本件貸金債権相当額を含む損害を被ったことを理由とするものであるから,本件貸金債権の発生原因事実は,本件損害賠償債権の発生原因事実に包含されていることが明らかである。そうすると,本件貸金債権に基づく請求は,本件損害賠償債権に基づく請求と,請求の基礎を同一にするものというべきである。 以上によれば,本件仮差押命令の被保全債権である本件損害賠償債権に基づく上告人のAに対する請求を棄却する判決が確定しているとしても,上告人は,本件貸金債権に基づくAに対する請求を認容する確定判決を取得しているのであるから,本件供託金取戻請求権につき被上告人が申し立てた強制執行手続において,本件仮差押命令の債権者としての地位に基づき配当を受領し得る地位を有しているというべきである。よって,上告人は,本件配当表における他の差押債権者である被上告人の配当額を否定することにより自己の配当額を増加させ得る立場にあり,本件訴えにつき訴えの利益がある。 これと異なる見解の下に,本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,第1審判決を取り消し,本案について審理させるため,本件を第1審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 として理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,第1審判決を取り消し,本案について審理させるため,本件を第1審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官櫻井龍子裁判官宮川光治裁判官金築誠志裁判官横田尤孝裁判官白木勇)

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