- 1 -主文 本件各控訴をいずれも棄却する。 一審原告の控訴費用は一審原告の負担とし,一審被告らの控訴費用は一審被告らの負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 一審原告(控訴の趣旨)原判決中一審原告敗訴部分を取り消す。 一審被告らは,一審原告に対し,連帯して473万円及びこれに対する平成26年9月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は第1,2審とも一審被告らの負担とする。 (一審被告らの控訴の趣旨に対する答弁)一審被告らの控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は一審被告らの負担とする。 一審被告ら(控訴の趣旨)原判決中一審被告ら敗訴部分を取り消す。 上記部分につき,一審原告の請求をいずれも棄却する。 一審原告は,一審被告在特会に対し,550万円及びこれに対する平成27年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 一審原告は,一審被告Aに対し,550万円及びこれに対する平成27年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は第1,2審とも一審原告の負担とする。 仮執行宣言(一審原告の控訴の趣旨に対する答弁)- 2 -一審原告の控訴を棄却する。 控訴費用は一審原告の負担とする。 第2事案の概要 本件のうち,本訴は,在日朝鮮人のフリーライターである一審原告が,一審被告A及び同人が代表者であった権利能力なき社団である一審被告在特会に対し,一審被告Aがインターネット上の生中継動画配信サービス,街頭宣伝及びツイッターにおいて一審原告の名誉を毀損し若しくは侮辱し又は脅迫及び業務妨害に当たる発言又は投稿を行ったと主張し,一審被告Aに対しては不法行為(民法709条)に基づく損害賠償として,また,一審被告在特会に対しては不法行為(民法709条)又は一般社団 し又は脅迫及び業務妨害に当たる発言又は投稿を行ったと主張し,一審被告Aに対しては不法行為(民法709条)に基づく損害賠償として,また,一審被告在特会に対しては不法行為(民法709条)又は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団法人法」という。)78条の類推適用に基づく損害賠償として,550万円(慰謝料500万円と弁護士費用50万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日であり訴状送達の日の翌日である平成26年9月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 反訴は,一審被告らが,一審原告に対し,一審原告がツイッターにおいて一審被告らの名誉を毀損し又は侮辱する投稿を行ったと主張し,不法行為に基づく損害賠償として,それぞれ550万円(慰謝料500万円と弁護士費用50万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日であり反訴状送達の日の翌日である平成27年6月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,本訴については,一審原告の請求は,一審被告Aに対しては不法行為に基づく損害賠償として,また,一審被告在特会に対しては一般社団法人法78条類推適用に基づく損害賠償として,77万円(慰謝料70万円と弁護士費用7万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日であり訴状送達の日の翌日である平成26年9月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ- 3 -る遅延損害金の連帯支払を命ずる限度で理由があるとしてこれを認容し,その余の請求を棄却した。また,反訴については,一審被告らの請求は,いずれも理由がないとして,これを棄却した。そこで,これを不服とする一審原告及び一審被告らがそれぞれ控訴した。 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠 また,反訴については,一審被告らの請求は,いずれも理由がないとして,これを棄却した。そこで,これを不服とする一審原告及び一審被告らがそれぞれ控訴した。 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),争点,争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。 5頁18行目末尾の次に「最高裁昭和38年4月16日第三小法廷判決・民集17巻3号476頁は,『自己の正当な利益を擁護するためやむをえず他人の名誉,信用を毀損するがごとき言動をなすも,かかる行為はその他人が行った言動に対比して,その方法,内容において適当と認められる限度をこえないかぎり違法性を欠くとすべきものである』としている。」を加える。 6頁12,13行目の「ものであること」の次に「や,一審被告在特会のメンバーが女子中学生の韓流スターのキーホルダーを壊したという根拠の薄弱な記事を流してその名誉を毀損していた一審原告が,予告されていたa駅付近における一審被告在特会の街宣活動を目指してやってきたという経緯」を加える。 8頁7行目末尾の次に,次のとおり加える。 「また,本邦においては『本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律』が平成28年5月24日に成立して,同年6月3日に公布・施行され(甲36ないし40),同年1月18日は『大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例』(甲33)が成立し,同年7月1日施行されているし,さらにはヘイトスピーチ根絶に向けた条例案として,自治労自治研中央推進委員会が『人種等を理由とする差別の撤廃のための施- 4 -策の推進に関する条例』要綱試案(甲34)や,京都府・京都市に有効 し,さらにはヘイトスピーチ根絶に向けた条例案として,自治労自治研中央推進委員会が『人種等を理由とする差別の撤廃のための施- 4 -策の推進に関する条例』要綱試案(甲34)や,京都府・京都市に有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める会が『京都府(市)の人種差別撤廃に関する条例(案)』(甲35)などを発表し,同様の動きは川崎市等でも出てきており,ヘイトスピーチの規制は既に立法段階になっているのであるから,司法判断においてもこれらの状況は考慮されるべきである。」8頁13行目末尾の次に,次のとおり加える。 「一旦インターネット上に上げられた情報には永続性があり,検索機能を使用することによりいつでもどこでも情報にアクセスすることができ,さらに,取得した情報はこれを拡散しようと思えば手元の操作で容易にできる。 これらは紙媒体ではなかった特徴であり,それ故にインターネット上の名誉毀損や侮辱の被害は,新聞紙・雑誌や書籍などによる名誉毀損や侮辱の被害の程度と比較して著しく大きいものとなり得る。とりわけツイッターでは,一審被告Aが投稿をしたときにその内容がそのままフォロワーのタイムラインに反映されることとなるから何人フォロワーがいるかが問題となるが,一審被告Aのフォロワーの数は平成26年8月13日の時点において2万0740人であったから,2万人以上の者が一審被告Aのツイート(発言)を閲覧し又は閲覧できる状態に置かれていたことになる。その上,一審被告Aのツイート(発言)がさらにリツイートされればさらに拡散の範囲が広がることになるし,望む者は『b』や『B』とツイッター上にある検索欄に入力すれば,一審被告Aの一審原告に対するツイート(発言)を本件で不法行為として主張しているものも含めて検索結果として表出することが容易にできる。」9頁1行目末尾の次に,次のと ー上にある検索欄に入力すれば,一審被告Aの一審原告に対するツイート(発言)を本件で不法行為として主張しているものも含めて検索結果として表出することが容易にできる。」9頁1行目末尾の次に,次のとおり加える。 「容姿に対する悪口や『ドブエ』と言ってからかうことは,侮辱的ではあるが児戯の範疇であり,一般的な身体や容姿の形容に係る侮辱的表現は口喧嘩の悪口に多用されるもので,原則として不法行為が成立するとはいえない。 - 5 -また,近年の裁判例によれば,インターネット上での侮辱や名誉毀損の慰謝料の金額については,新聞や雑誌といった紙媒体のものに比べ,約10分の1以下の金額に抑えられており,インターネットが不特定多数に開かれた公然性と見たいものしか見ないで済む私的性質を併せ持っていることや,新聞や雑誌といった受け手の立場が固定的な媒体とは違い,侮辱や名誉毀損を受けた側も反論によって社会的評価や名誉感情を回復することが可能であるという事情から,深刻な名誉毀損でも30万円以上の慰謝料が認められるケースは稀である。」9頁16行目末尾の次に,次のとおり加える。 「一審被告Aが在日朝鮮人に対する差別意識を世間に植え付けるための街宣活動を行っているというのは,真実ではないし,真実相当性もない。一審被告在特会の活動が在日朝鮮人に対する差別意識を広げることにあるというのは一審原告やマスコミなどの意見論評であって,一審被告らがこれを肯定したことはないし,一審被告らが発したいかなる情報や綱領等の文書にもない。」9頁22行目の「京都朝鮮学校襲撃事件」の次に「に関する民事訴訟」を同頁25行目の「同事件」の次に「に関する刑事訴訟」を各加える。 10頁19行目末尾の次に,次のとおり加える。 「一審被告在特会の代表者であった一審被告Aは,一審原告の言論に典型的に見られ 事訴訟」を同頁25行目の「同事件」の次に「に関する刑事訴訟」を各加える。 10頁19行目末尾の次に,次のとおり加える。 「一審被告在特会の代表者であった一審被告Aは,一審原告の言論に典型的に見られる在日朝鮮人の日本人に対する差別意識を世間に植え付けることで,嫌韓感情を広めることを活動の一つの目標にしていることを公言しているが,それは在日朝鮮人に対する差別意識を広めることとは全く別物である。」第3当裁判所の判断 当裁判所も,原判決と同様に,本訴については,一審原告の請求は,一審被告Aに対しては不法行為に基づく損害賠償として,また,一審被告在特会に対- 6 -しては一般社団法人法78条類推適用に基づく損害賠償として,77万円(慰謝料70万円と弁護士費用7万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日であり訴状送達の日の翌日である平成26年9月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を命ずる限度で理由があり,その余の請求は理由がなく,反訴については,一審被告らの請求は,いずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第3争点に対する判断」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 15頁12行目の「別紙3発言1」を「別紙3番号1」と改める。 16頁1行目末尾の次に「一審被告らが引用する最高裁判決は,本件とは事案を異にするものであるから,上記認定判断を左右しない。」を,同頁12行目の「ないよ』」の次に「(同番号4)」を各加える。 17頁4行目の「照らし,」の次に「一審原告が自ら一審被告在特会が街宣活動を行っていたa駅付近に赴いたことなど(甲20〔3頁〕)を考慮しても,」を加える。 18頁13行目の「別紙3番号1,8ないし16及び18」を「別紙3番 の次に「一審原告が自ら一審被告在特会が街宣活動を行っていたa駅付近に赴いたことなど(甲20〔3頁〕)を考慮しても,」を加える。 18頁13行目の「別紙3番号1,8ないし16及び18」を「別紙3番号8ないし16及び18」と改める。 19頁19行目の「被告A本人」の次に「〔原審〕7,8頁」を加える。 20頁4行目末尾の次に「一審被告らは一審被告在特会の活動が在日朝鮮人に対する差別意識を広げることにあるというのは一審原告やマスコミなどの意見論評であって,一審被告らがこれを肯定したことはないなどと主張するが,一審被告在特会の代表であった一審被告A自身,真実を広げると称して嫌韓を広めることが一審被告在特会の目標の一つであることを認めているのであり(一審被告A〔原審〕7,8頁),上記認定を左右するに足りる証拠はない。」を,同頁5行目の「その他」の次に「上記不法行為(名誉毀損及び侮辱)が一審原告に対して一審原告が女性であることに着目し,その容- 7 -姿等に関して貶める表現を用いて行われており,女性差別との複合差別に当たることなど」を各加える。 20頁19行目の「本件原告発言中には」から同頁21行目末尾までを「本件一審原告発言1中には,『弱い者いじめが好きなだけのおっさんやわ。あいつらがやってんのは,ただの嫌がらせ。』(原判決別紙4番号1),『A会長があれだけ人の悪意を利用できるのはすごい才能と思う。』,『飼い慣らせないことがモンスターっぽい。』(同番号12)などと一審被告Aを評し,その活動を揶揄する発言があることが認められる。」と改める。 20頁22行目の「低下すること」を「低下し,又は名誉感情を害すること」と改める。 21頁19行目の「本件原告発言2のうち」から同頁22行目末尾までを「本件一審原告発言2中には,『『在特会やヘイトが生まれた』の 目の「低下すること」を「低下し,又は名誉感情を害すること」と改める。 21頁19行目の「本件原告発言2のうち」から同頁22行目末尾までを「本件一審原告発言2中には,『『在特会やヘイトが生まれた』のは,根底にある日本社会の差別意識が表面に出ただけ。』(原判決別紙5番号3),『在特会のやっていることがヘイトで』(同番号19)『在特会の主張のどこが悪いのかと聞く時点で,そんなことも分かんないのかと驚愕。差別を扇動しデマをまき散らすこと,社会的弱者を市民運動の名のもとに虐げられること。それが正しい事だと思っているなんて馬鹿だろ。』(同番号22)などと一審被告在特会を評し,その活動を揶揄する発言があることが認められる。」と改める。 21頁23行目の「低下すること」を「低下し,又は名誉感情を害すること」と改める。 22頁11行目末尾の次に,行を改め,次のとおり加える。 「3原審及び当審における一審原告及び一審被告らの主張を踏まえて証拠を検討しても,上記認定・判断を左右しない。」 以上によれば,本訴については,一審原告の請求は,一審被告Aに対しては- 8 -不法行為に基づく損害賠償として,また,一審被告在特会に対しては一般社団法人法78条類推適用に基づく損害賠償として,77万円(慰謝料70万円と弁護士費用7万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日であり訴状送達の日の翌日である平成26年9月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を命ずる限度で理由があるから,これを認容し,その余の請求は理由がないから,これを棄却し,反訴については,一審被告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却するのが相当である。 よって,上記と同旨の原判決は相当であり,一審原告及び一審被告らの控訴はいずれも理由がないから,これを棄却するこ については,一審被告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却するのが相当である。 よって,上記と同旨の原判決は相当であり,一審原告及び一審被告らの控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第7民事部裁判長裁判官池田光宏裁判官榊原信次裁判官寺西和史
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