平成17年(行ケ)第10308号審決取消請求事件平成17年7月14日判決言渡,平成17年6月16日口頭弁論終結判決原告株式会社放電精密加工研究所訴訟代理人弁理士 森田寛,渡部章彦被告特許庁長官小川洋指定代理人神崎孝之,西川惠雄,井出英一郎,岡田孝博 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判「特許庁が不服2003-4412号事件について平成16年4月26日にした審決を取り消す。」との判決。 第2 事案の概要本判決においては,書証等を引用する場合を含め,公用文の用字用語例に従って表記を変えた部分がある。 本件は,原告が,本願発明の特許出願をしたところ,拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたが,審判請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 本願発明出願人:株式会社放電精密加工研究所(原告)発明の名称:「プレス装置」出願番号:特願2000-339304号出願日:平成12年11月7日手続補正日:平成14年8月5日(甲3)手続補正日:平成14年12月11日(甲4)(2) 本件手続拒絶査定日:平成15年2月10日審判請求日:平成15年3月18日(甲5。不服2003-4412号)手続補正日:平成15年3月18日(甲6。以下「本件補正」という。)審決日:平成16年4月26日審決の結論:「本件 10日審判請求日:平成15年3月18日(甲5。不服2003-4412号)手続補正日:平成15年3月18日(甲6。以下「本件補正」という。)審決日:平成16年4月26日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成16年5月19日(原告に対し) 2 本願発明の要旨(以下,本件出願時の明細書(甲2)に平成14年8月5日付け補正(甲3),同年12月11日付け補正(甲4),本件補正(甲6)がされたものを「本願明細書」という。)(1) 本件補正前の特許請求の範囲【請求項1】平板状に形成された基板と,この基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と,このガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板と,この支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と,前記ねじ軸と螺合するナット部材と,可動体とによって構成すると共に,前記可動体をその移動方向と交差する面で分割され,かつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し,前記第1の可動体と第2の可動体とを,長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体及び第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し,かつ,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し,前記差動部材の移動により前記第1の可動体及び第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成したことを特徴とするプレス装置。 【請求項2】第1の可動体と第2の可動体との両側面に1対のガイドプレートを前記第1の可動体又は第2の可動体と摺動係合可能に設け,前記第1の可動体及び第2の可動体の相対移動方向と直交する方向の移動を拘束するように形成したことを特徴とする請求項1記載 1対のガイドプレートを前記第1の可動体又は第2の可動体と摺動係合可能に設け,前記第1の可動体及び第2の可動体の相対移動方向と直交する方向の移動を拘束するように形成したことを特徴とする請求項1記載のプレス装置。 【請求項3】基板と支持板とを水平面と平行に,ガイド体の軸線を垂直方向にそれぞれ配設したことを特徴とする請求項1又は2記載のプレス装置。 【請求項4】ねじ軸とナット部材とをボールねじ係合としたことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のプレス装置。 【請求項5】ねじ軸及び/又は差動部材をパルスモータによって駆動するように構成したことを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のプレス装置。 【請求項6】差動部材の移動による可動体の変位をねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺し,可動体の非作動時における基板と可動体との間隔を一定に保持するように構成したことを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載のプレス装置。 (2) 本件補正後の特許請求の範囲(下線部が補正された部分。なお,本件補正では,旧請求項4~6は削除されている。)【請求項1】平板状に形成された基板と,当該基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と,当該ガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板と,当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と,当該ねじ軸と螺合するナット部材と,可動体と,前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移動と一緒に前記ガイド体と平行な方向に移動するスライドプレートと,当該スライドプレートに取付けられる押圧子と,被加工物が載置されるテーブルと,前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータとを備えると レートと,当該スライドプレートに取付けられる押圧子と,被加工物が載置されるテーブルと,前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータとを備えると共に前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し,前記可動体を,その移動方向と交差する面で分割され,かつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し,前記第1の可動体と第2の可動体とを,長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体及び第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し,前記差動部材の移動により前記第1の可動体及び第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し,かつ,前記第1の可動体が前記ナット部材に固定され前記第2の可動体が前記スライドプレートに固定され,前記差動部材が駆動源によって,前記第1の可動体及び前記第2の可動体に対して摺動係合可能に駆動されてなることを特徴とするプレス装置。 【請求項2】平板状に形成された基板と,当該基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と,当該ガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板と,当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と,当該ねじ軸と螺合するナット部材と,可動体と,前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移動と一緒に前記ガイド体と平行な方向に移動するスライドプレートと,当該スライドプレートに取付けられる押圧子と,被加工物が載置されるテーブルと,前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモ 向に移動するスライドプレートと,当該スライドプレートに取付けられる押圧子と,被加工物が載置されるテーブルと,前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータとを備えると共に前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し,前記可動体を,その移動方向と交差する面で分割され,かつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し,前記第1の可動体と第2の可動体とを,長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体及び第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し,前記差動部材の移動により前記第1の可動体及び第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し,前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され,前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成したことを特徴とするプレス装置。 【請求項3】第1の可動体と第2の可動体との両側面に1対のガイドプレートを前記第1の可動体又は第2の可動体と摺動係合可能に設け,前記第1の可動体及び第2の可動体の相対移動方向と直交する方向の移動を拘束するように形成したことを特徴とする請求項2記載のプレス装置。 【請求項4】基板と支持板とを水平面と平行に,ガイド体の軸線を垂直方向にそれ 及び第2の可動体の相対移動方向と直交する方向の移動を拘束するように形成したことを特徴とする請求項2記載のプレス装置。 【請求項4】基板と支持板とを水平面と平行に,ガイド体の軸線を垂直方向にそれぞれ配設したことを特徴とする請求項2又は3 記載のプレス装置。」 3 審決の要点(1) 本件補正について審決は,まず本件補正が独立特許要件としての進歩性を有するかどうかについて,以下のとおり判断した。 ア本件補正の内容「上記補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項4~6を削除し,請求項2~3を請求項3~4に繰り下げ,請求項1において,「スライドプレート」,「押圧子」,「テーブル」,「モータ」及び「ボールねじ係合」の構成を付加し,さらに,「前記第1の可動体が前記ナット部材に固定され,前記第2の可動体が前記スライドプレートに固定され,前記差動部材が駆動源によって,前記第1の可動体及び前記第2の可動体に対して摺動係合可能に駆動され」る点を限定したものを請求項1とし,「前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され,前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成した」点を限定したものを請求項2とし,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下検討する。」 するものである。 そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下検討する。」イ引用刊行物との対比・判断(ア) 引用刊行物に記載された発明(a) 特開2000-218395号公報(以下「刊行物1」という。)に記載された発明「平板状に形成された基板1と,当該基板1に一方の端部が直交するように設けられたガイドバー2と,当該ガイドバー2の他方の端部にガイドバー2と直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板3と,当該支持板3に前記ガイドバー2と平行に支持されたねじ軸5と,当該ねじ軸5と螺合するナット部材8と,前記ガイドバー2と平行な方向に移動する可動体7と,前記可動体7に取り付けられる押圧子24と,被加工物Wが載置されるテーブルと,前記押圧子24を前記ガイドバー2と平行な方向に移動させて前記被加工物Wを押圧するパルスモータ22とを備えると共に,前記ねじ5軸と前記ナット部材8とをボールねじ係合し,可動体7と分割され,かつ対向配置された円筒部11を形成し,円筒部11と可動体7とを,差動用めねじ15を有するように形成すると共に前記円筒部11及び可動体7に対して摺動係合可能に形成した差動部材14を介して連結し,前記差動部材14を前記可動体7に対して回転する方向に移動可能に形成し,前記差動部材14の移動により前記円筒部11に対して前記可動体7を前記可動体7の移動方向に沿って相対移動可能に構成し,前記押圧子24にて前記被加工物Wを押圧する押圧動作の予め定められた回数ごとに,前記差動部材14を前記可動体7に対して回転する方向に移動して,前記円筒部11と前記可動体7とを前記相対移動し,かつ前記差動部材14の移動による 工物Wを押圧する押圧動作の予め定められた回数ごとに,前記差動部材14を前記可動体7に対して回転する方向に移動して,前記円筒部11と前記可動体7とを前記相対移動し,かつ前記差動部材14の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸5とナット部材8との相対回動によって相殺され,前記可動体7の非作動時における前記押圧子24と前記基板1との間隔が一定に保持されるよう構成したプレス装置。」(以下「刊行物1記載の発明」という。)(b) 実願昭60-26274号(実開昭61-143799号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)に記載された技術事項「スライド1の先端を,その移動方向と交差する面で分割され,かつ対向配置されたスライド1とダイセット取付プレート5とによって形成し,スライド1とダイセット取付プレート5とを,長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共にホルダ2を有するスライド1及び下側ウェッジ4を有するダイセット取付プレート5に対して摺動係合可能に形成した上側ウェッジ3を介して連結し,前記上側ウェッジ3をスライド1の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し,前記上側ウェッジ3の移動によりスライド1及びダイセット取付プレート5を前記スライド1の移動方向に沿って相対移動可能に構成した点。」(以下「刊行物2記載の事項」という。)(イ) 補正発明と刊行物1記載の発明の対比<一致点>「平板状に形成された基板と,当該基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と,当該ガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板と,当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と,当該ねじ軸と螺合するナット部材と,可動体と,前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移 と直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板と,当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と,当該ねじ軸と螺合するナット部材と,可動体と,前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移動と一緒に前記ガイド体と平行な方向に移動するスライドプレートと,当該スライドプレートに取り付けられる押圧子と,被加工物が載置されるテーブルと,前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータとを備えると共に,前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し,前記可動体を,分割され,かつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し,前記第1の可動体と第2の可動体とを,前記第1の可動体及び第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し,前記差動部材を移動可能に形成し,前記差動部材の移動により前記第1の可動体及び第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し,前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の予め定められた回数ごとに,前記差動部材を移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され,前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成したプレス装置。」<相違点>「前者(判決注:補正発明)では,第1の可動体と第2の可動体とを,「その移動方向と交差する面」で分割されたものとし,「長手方向に沿う斜面部を有」し,「可動体の移動方向と直交する方向に移動」する差動部材を介して連結するのに対し,後者(判決注:刊行物1記載の発明)では,第1の可動体と第2の可動体とが,「その移動方向と交差する面」で 面部を有」し,「可動体の移動方向と直交する方向に移動」する差動部材を介して連結するのに対し,後者(判決注:刊行物1記載の発明)では,第1の可動体と第2の可動体とが,「その移動方向と交差する面」で分割されたものでなく,差動用めねじを有し,可動体に対して回転する方向に移動する差動部材を介して連結する点。」(ウ) 相違点についての判断「上記刊行物2記載の事項に示すとおり,補正発明の「第1の可動体」に当たるスライド1と「第2の可動体」に当たるダイセット取付プレート5とを,その移動方向と交差する面で分割すること,そして補正発明の「差動部材」に当たる,長手方向に沿う斜面部を有し,可動体の移動方向と直交する方向に移動する上側ウェッジ3の移動により,第1の可動体及び第2の可動体を,その移動方向に沿って相対移動可能に構成することが,刊行物2に記載されている。 そして,刊行物1記載の発明と刊行物2記載のものとは,プレス装置(又は機械)という技術分野で共通しており,また,上記刊行物2記載の「差動部材」の構成を,刊行物1記載の発明における差動部材のように,第1の可動体と第2の可動体とを,ボールとボール溝との相対位置を変化させる程度の微小移動させるものに適用し得ないとする特段の事情も見出すことができない。 してみると,刊行物1記載の発明において,第1の可動体と第2の可動体とを,その移動方向と交差する面で分割するとともに,差動用めねじを有し,可動体に対して回転する方向に移動する差動部材にかえて,長手方向に沿う斜面部を有し,可動体の移動方向と直交する方向に移動する差動部材を用い,上記相違点に係る補正発明の構成とすることは,刊行物2記載の事項から,当業者が容易に想到することができたことである。 また,補正発明の効果は,上記刊行物1記載の発明及び刊 移動する差動部材を用い,上記相違点に係る補正発明の構成とすることは,刊行物2記載の事項から,当業者が容易に想到することができたことである。 また,補正発明の効果は,上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予測しうる程度のものであり,格別なものではない。」ウ本件補正についての結論「以上のとおりであるので,補正発明は,本件出願前に日本国内において頒布された上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項で準用する同法126条3項の規定に違反するものであるので,同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下する。」(2) 本願発明について続いて,審決は,本件補正前の請求項1記載の発明(以下「本願発明」という。)の進歩性について,以下のとおり判断した。 「本願発明は,…補正発明から,「スライドプレート」,「押圧子」,「テーブル」,「モータ」及び「ボールねじ係合」の構成,並びに,「前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され,前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成した」点を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成を全て含み,さらに他の 対回動によって相殺され,前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成した」点を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成を全て含み,さらに他の構成を付加したものに相当する補正発明が,…上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 以上のとおりであるので,本願発明は,上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本件出願の請求項2~6に係る発明について判断するまでもなく,本件出願は拒絶すべきである。」 第3 原告の主張の要点審決は,相違点の判断を誤った結果,補正発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるとして,誤って本件補正を却下したものであり,違法であるから取り消されるべきである。 1 取消事由(相違点の判断の誤り)(1) 審決は,補正発明の課題を誤認している。 補正発明の課題は,本願明細書にも記載されているように,「ボールとボール溝との相対位置を変化させることができ,定点加工を確保しつつ,ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止する」(段落【0022】)ことである。しかるに,審決は,補正発明の課題を押圧子24の初期高さH0を変化させることに置き換え,当該装置を刊行物1のプレス装置に用いたときに,ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止できるか否かについて考察していない。その結果,審決は,誤って,刊行物1の「ナット部10に固定されている差動用おねじ付き円筒部11と,差動用めね たときに,ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止できるか否かについて考察していない。その結果,審決は,誤って,刊行物1の「ナット部10に固定されている差動用おねじ付き円筒部11と,差動用めねじ付き差動部材14と,可動体7」からなる構成と,刊行物2の「ホルダ2と,上側ウェッジ3と,下側ウェッジ4」からなる構成とが,同等の作用効果を有し,適宜選択可能なものとみなしたものである。 (2) 審決は,刊行物2のダイハイト調整装置の機能を誤認している。 ア刊行物2のダイハイト調整装置は,クランク機構を用いたプレス装置においてダイハイト寸法を調整するためのものであり,補正発明のように,ボールとボール溝との相対位置関係を変化させるべく,差動部材27の挿入量と押圧子24の高さ方向の変位量とを関係づける手段として用いられるものではない。刊行物2の装置では,ダイハイト寸法を調整するためには,幾度も試行して調整を行うことが必要となる。 イ刊行物2のダイハイト調整装置のように,上側ウェッジ3が,ウェッジ収容部16と面接触状態で摺動し,かつ下側ウェッジ4と面接触状態で摺動する構造の場合には,接触面積が大きくて接触面の全体が正しく密着する程度の平面度を持つことが困難であり,接触面の表面粗さを十分に小さいものにすることが難しい。それゆえに,刊行物2のダイハイト調整装置を,上側ウェッジ3の挿入量(ウオーム13の回転量)とダイセット取付プレート5の高さ方向の変位量とを対応づけた上で,所望の精度を必要とする制御系の中に組み入れて用いることは,容易に考えられることではない。 ウ刊行物2のダイハイト調整装置に示されるようなウェッジ(クサビ体)を摺動移動する構造は,そもそも,ウェッジの挿入量とダイセット取付プレートの高さ方向の変位量との間に一意的な対応関係を与え い。 ウ刊行物2のダイハイト調整装置に示されるようなウェッジ(クサビ体)を摺動移動する構造は,そもそも,ウェッジの挿入量とダイセット取付プレートの高さ方向の変位量との間に一意的な対応関係を与え得るものではない。ウェッジを挿入移動する構造は,一般に,刊行物2のダイハイト調整装置のように,与えられた所定の間隔を埋めるために,何回かにわたり,繰り返しウェッジを挿入する場合等に用いられるものである。 エ刊行物2記載のダイハイト調整は,所望のダイハイト寸法との誤差をなくするために調整するもので,誤差がなくなれば調整が終了するものであり,ウェッジの挿入量とウェッジが挿入されて広がる間隔量(変位量)との間に対応関係が得られることを期待するものではないから,補正発明のように変位量を強制的に逐次与えていくものには用い得ない。 (3) 刊行物2のダイハイト調整装置を,刊行物1の「ナット部10に固定されている差動用おねじ付き円筒部11と,差動用めねじ付き差動部材14と,可動体7」からなる構成に置き換えることができるとした審決は誤りである。 刊行物2のダイハイト調整装置では,上側ウェッジ3の挿入量と,上側ウェッジ3が挿入されて広がるダイセット取付プレート5の変位量との間に所望の精度を持った対応関係は期待できない。これに対し,刊行物1記載の発明では,可動体7の変位量と,定点加工に必要な押圧子24の初期高さH0を保つ補正操作量との間に所定の対応関係を保持する必要がある。刊行物2のダイハイト調整装置を刊行物1のプレス装置に適用し,上側ウェッジ3の一寸刻みの挿入量に対応させて補正操作を行っても,刊行物1の押圧子24の初期高さH0を所定の数値に保つことは到底無理である。 (4) 刊行物2に開示される構成は,補正発明における差動部材27を用いる構成と同等の に対応させて補正操作を行っても,刊行物1の押圧子24の初期高さH0を所定の数値に保つことは到底無理である。 (4) 刊行物2に開示される構成は,補正発明における差動部材27を用いる構成と同等の作用効果を持つ適宜選択可能なものとはいえない。 ア刊行物2のダイハイト調整装置は,所望するダイハイト寸法との間に誤差が生じている場合に,当該誤差を解消するため,プレス加工に先立って当該ダイハイト調整装置を介在させ,プレス加工中に所望するダイハイト寸法を維持するようにしたものである。他方,補正発明は,プレス加工中に,差動部材27の挿入を一寸刻みに行ってゆき,押圧子24の初期高さH0を逐次変化させる機能を与えているものである。換言すれば,補正発明は,差動部材の一寸刻みの挿入量と初期高さH0の一寸刻みの変位量に1次関数の関係を与えて,当該1次関数の関係を制御系の中に組み入れて利用しているものである。したがって,両者はウェッジ(クサビ体)を挿入する点で対応するが,その機能は全く異なるものであり,ウェッジをプレス加工ごとに一寸刻みに移動させることを制御系に組み込むことは十分に意外性のある発明である。 イ補正発明の差動部材27における斜面部の勾配は1°程度であるのに対し,刊行物2のダイハイト調整装置のウェッジが有する勾配は一般に5°ないし7°である。刊行物2のダイハイト調整装置は,1回だけ調整するものであり,ダイハイト寸法は変化しないことが期待されていることから,プレス装置における下方向への押圧力によりウェッジが水平方向に非所望に移動しないように,ウェッジの傾斜面の面粗さを大きくしている。これに対して,補正発明に係るプレス装置は,差動部材27の挿入量をいわば一寸刻みにして押圧子24の高さ方向に所定の変位量を少しずつ強制的に与えていくものであるから, 傾斜面の面粗さを大きくしている。これに対して,補正発明に係るプレス装置は,差動部材27の挿入量をいわば一寸刻みにして押圧子24の高さ方向に所定の変位量を少しずつ強制的に与えていくものであるから,差動部材27の傾斜面は鏡面仕上げで平面度の高いものである。審決は,補正発明と刊行物2記載の機械の差動部材の斜面の構成の差異を十分に考慮していない。 (5) 補正発明は,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を単に組み合わせただけのものではない。 ア審決は,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を組み合わせる前提として,刊行物1記載の発明について,「円筒部11と可動体7とを,差動用めねじ15を有するように形成すると共に前記円筒部11及び可動体7に対して摺動係合可能に形成した差動部材14を介して連結し」と認定しているが,刊行物1記載の発明における差動部材14と円筒部11は螺合しているのであり,摺動係合しているのではない。また,審決は,刊行物1記載の発明の可動体は,補正発明の第2の可動体72とスライドプレート25に相当するというが,補正発明のように別体として構成されてはいない。さらに,刊行物1記載の発明の差動部材14は,補正発明のように第1の可動体及び第2の可動体とを連結しておらず,第1の可動体及び第2の可動体に対して摺動係合可能かつ移動可能に形成されているものでもない。したがって,審決は,前提となる刊行物1記載の発明の認定を誤っている。 イ審決は,「上記刊行物2記載の「差動部材」の構成を,刊行物1記載の発明における差動部材のように,第1の可動体と第2の可動体とを,ボールとボール溝との相対位置を変化させる程度の微小移動させるものに適用し得ないとする特段の事情も見出すことができない。」と結論づけている。 しかしながら,補正発明において「ボール 2の可動体とを,ボールとボール溝との相対位置を変化させる程度の微小移動させるものに適用し得ないとする特段の事情も見出すことができない。」と結論づけている。 しかしながら,補正発明において「ボールとボール溝との相対位置を変化させる」とは,定点加工の進行に対応し,微小範囲でわずかずつボールとボール溝との相対位置を変化させて,ボールとボール溝の局部的摩耗を防止することを意味する。これに対し,刊行物2のダイハイト調整装置は,ダイハイト寸法の誤差を埋めるためのものであって,補正発明のように定点加工の進行につれて押圧子の初期高さH0を強制的にわずかずつ変化させてゆくためのものではない。審決は,この点について,十分考慮していない。 ウ刊行物1では,ねじ軸5,ナット部10,円筒部11,差動部材14の全てについて回転移動系部材を用いている。これに対し,補正発明では,ねじ軸5とナット部材8からなる回転移動系部材と水平移動する可動体7とを組み合わせている。このような組合せを考慮することは全回転移動系部材を用いている刊行物1記載の発明からは容易に想到し得るものではない。 (6) 刊行物2のダイハイト調整装置は,補正発明の出願当時には全く使用されておらず,刊行物1記載の発明や補正発明のような「ナット部材と係合するボールねじを有するモータ駆動のプレス装置」が広く用いられている状況にあった。したがって,刊行物1に記載された発明に,刊行物2のダイハイト調整装置を組み合わせて使用しようとする発想自体が生じるはずがない。 2 結論以上のとおり,審決が,補正発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づき,当業者が容易に発明できたものであると判断し,本件補正を却下したのは誤りである。 第4 被告の主張の要点 1 取消事由(相違点の判断の誤り)に対して 物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づき,当業者が容易に発明できたものであると判断し,本件補正を却下したのは誤りである。 第4 被告の主張の要点 1 取消事由(相違点の判断の誤り)に対して(1) 原告は,審決が,補正発明の課題を誤認しており,その誤認に基づいて,刊行物1及び2記載のプレス装置が同等の作用効果を有し,適宜選択可能であると判断したものであると主張する。 しかしながら,補正発明が,ボールとボール溝との相対位置関係を変化させてボールとボール溝の局部的磨耗を防止するものであることは,本願明細書の段落【0039】の記載に照らし明らかである。 補正発明の進歩性に関し,審決は,まず,刊行物1の記載(段落【0026】~【0028】)に基づき,同刊行物に記載された発明を,ボールとボール溝との相対位置関係を変化させてボールとボール溝の局部的磨耗を防止するものであって,差動部材14を設けてナット部材8を形成する円筒部11と可動体7とを相対移動させ,その変位をねじ軸5とナット部材8との相対回動によって相殺した発明と認定した。 次に,審決は,補正発明と刊行物1記載の発明を対比し,両者が,差動部材により第1の可動体と第2の可動体とを相対移動し,その変位をねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺する点で共通し,第1の可動体と第2の可動体とを相対移動させる差動部材の構成において相違すると認めた。 その上で,審決は,補正発明と刊行物1記載の発明の上記相違点について,刊行物2のプレス機械がスライド1及びダイセット取付プレート5の相対移動を斜面部を有する上側ウェッジ3の移動により行う点に着目し,上側ウェッジ3がスライド1及びダイセット取付プレート5に対して差動部材といえることから,補正発明における差動部材の構成である「第1の可動体と第2の可 有する上側ウェッジ3の移動により行う点に着目し,上側ウェッジ3がスライド1及びダイセット取付プレート5に対して差動部材といえることから,補正発明における差動部材の構成である「第1の可動体と第2の可動体とを相対移動させる斜面部を有する差動部材」が刊行物2に記載されていると認めた。 刊行物1記載の発明の差動部材と刊行物2記載の差動部材とは,差動部材としての作用・機能,特に,刊行物1記載の「ねじ」と刊行物2記載の「ウェッジ」とが共に斜面部を利用して相対位置を移動させている点で共通し,刊行物1記載のプレス装置と刊行物2記載のプレス機械とは,プレス装置(機械)という技術分野においても共通している。また,刊行物1に「ねじ軸5を微小回動させ,前記の可動体7及び押圧子24の変位を相殺」(段落【0027】)すると記載されていることによれば,刊行物1記載の発明の差動部材の変位は微小であり,「ねじ」の斜面部の勾配及び面粗さは小さいと考えられるが,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用するに当たり,差動部材の斜面部の勾配を微小にし,面粗さも小さく構成することは,技術思想を具体化する際に当業者が通常行う創作能力の発揮といえるから,斜面部の具体的な構成においても,両者の間に実質的な相違があるものといえない。 刊行物1記載の発明において,上記構成の差動部材の斜面部が,押圧子の初期高さH0をわずかずつ変化させ,その変位をねじ軸5とナット部材8との相対回動によって相殺するとの構成とあいまって,「ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止する」との作用効果を奏することも,刊行物1及び2の記載から当業者であれば予測し得た範囲内のことであるといえる。 以上のとおり,審決は,補正発明の課題を置き換えておらず,刊行物2の差動部材は,補正発明の差動部材の構成と同等の作用 ,刊行物1及び2の記載から当業者であれば予測し得た範囲内のことであるといえる。 以上のとおり,審決は,補正発明の課題を置き換えておらず,刊行物2の差動部材は,補正発明の差動部材の構成と同等の作用効果を持つ適宜選択可能とした審決の判断には誤りはないというべきである。 (2) 原告は,刊行物2のダイハイト調整装置の機能を誤認していると主張する。 しかしながら,審決は,刊行物2には,第1の可動体と第2の可動体とを相対移動させる斜面部を有する差動部材が記載されているとしたものであり,ダイハイト調整装置の具体的な構成や,一般的なクサビ体の摺動移動する構造について認定したものではない。また,刊行物2の差動部材は,差動部材の挿入量と押圧子の高さ方向の変位量とを関係づける手段として用いることができるものである。したがって,審決がダイハイト調整装置の機能を誤認したという原告の主張は失当である。 (3) 原告は,刊行物2のダイハイト調整装置を,刊行物1の「ナット部10に固定されている差動用おねじ付き円筒部11と,差動用めねじ付き差動部材14と,可動体7」からなる構成に置き換えることを考慮した審決は誤りであり,刊行物2の上側ウェッジ3の一寸刻みの挿入量に対応させて補正操作を行っても,押圧子24の初期高さH0を所定に保たせることは到底無理であると主張している。 しかしながら,審決は,刊行物2には,第1の可動体と第2の可動体とを相対移動させる斜面部を有する差動部材が記載されているとしたものであって,ダイハイト調整装置の具体的な構成を認定したものではなく,また,刊行物2の差動部材は,押圧子の初期高さを所定に保たせることができるものである。したがって,原告の主張は失当である。 (4) 原告は,刊行物2の構成が補正発明の差動部材27を用いる構成と同等の作用効果 2の差動部材は,押圧子の初期高さを所定に保たせることができるものである。したがって,原告の主張は失当である。 (4) 原告は,刊行物2の構成が補正発明の差動部材27を用いる構成と同等の作用効果を持つ適宜選択可能なものとした審決は誤りであるとし,両者は,斜面部の勾配及び傾斜面の面粗さの点で,構成上及び/又は機能上の差異を有する旨主張している。 しかしながら,補正発明は,斜面部の勾配や傾斜面の面粗さについて特定したものではないから,原告の上記主張は,補正発明の特許請求の範囲の記載に基づくものでない。そして,刊行物2の差動部材と補正発明の差動部材は,第1の可動体と第2の可動体とを相対移動させる斜面部を有する差動部材として,両者の間に構成上の相違はなく,また,その斜面部の具体的な構成まで考慮したとしても,両者の間に実質的な相違があるとはいえず,構成上及び/又は機能上の差異を有するものとすることができない。したがって,原告の主張は失当である。 (5) 原告は,審決は刊行物1記載の発明についての認定を誤っており,また,補正発明は,刊行物1記載の発明に刊行物2のダイハイト調整装置を単に組み合わせたという概念を超えているなどと主張する。 しかしながら,刊行物1記載の発明における,第1可動体と第2可動体の「螺合」による移動も,第1可動体と第2可動体にとっては擦り合って移動する「摺動」といえること,補正発明の記載が,「スライドプレート」と「第2可動体」とを別体としなければならないとする記載ではないこと,及び,補正発明における差動部材と刊行物1記載の発明における差動部材との構成上の相違は刊行物2の差動部材を適用することにより容易になし得たとすることができることに照らすと,刊行物1記載の発明についての審決の認定に誤りはない。 2 結論以上のとおり ける差動部材との構成上の相違は刊行物2の差動部材を適用することにより容易になし得たとすることができることに照らすと,刊行物1記載の発明についての審決の認定に誤りはない。 2 結論以上のとおり,審決が,補正発明は,刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たと判断したことに誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 本件補正について(1) まず,補正発明の課題や構成等について検討する。 ア本願明細書には,以下の記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,例えば板金加工等に使用されるプレス装置に関するものであり,特に構造が簡単であり正確な位置制御を要する定点加工が可能であるプレス装置に関するものである。 【0012】・・・従来のものにおいては下記のような問題点がある。すなわち,図7における押圧体50の下端面のテーブル42からの高さ寸法hは,定点加工であるため常時一定になるように制御されており,この位置において押圧体50を介して被加工物Wに所定の押圧力を印加するのである。換言すれば,ねじ軸47とナット体49とには常に同一の相対位置において,上記押圧力に相当する反力が作用するのである。 【0013】一方,上記ねじ軸47とナット体49とは,ラム軸48及び押圧体50の位置制御を正確かつ高精度に行なうために,ボールねじ係合としてあり,ボールねじを構成するボールとボール溝とは線接触又は点接触で係合している。このため,ボールとボール溝とに同一相対位置において多数回にわたって上記反力が作用すると,ボール及び/又はボール溝が局部的に摩耗することとなり,加工精度が低下すると共に寿命が短いという問題点がある。なお上記ねじ軸47とナット体49とが通常のねじ係合である場合においても,上記の問題点が存在するのである はボール溝が局部的に摩耗することとなり,加工精度が低下すると共に寿命が短いという問題点がある。なお上記ねじ軸47とナット体49とが通常のねじ係合である場合においても,上記の問題点が存在するのである。 【0014】上記の問題点を解決するために,本出願人はすでに,平板状に形成された基板と,この基板に一方の端部が直交するように設けられたガイドバーと,このガイドバーの他方の端部にガイドバーと直交するように設けられ,かつ平板状に形成された支持板と,この支持板に前記ガイドバーと平行にかつ正逆回転可能に支持されたねじ軸と,前記ガイドバーとその軸線方向に移動可能に係合された可動体と,中空円筒状に形成され,かつ外周面に差動用おねじを有すると共に前記ねじ軸と螺合するように形成されたナット部材と,中空筒状に形成され,かつ内周面に前記差動用おねじと螺合する差動用めねじを有すると共に前記可動体内において回動可能に形成された差動部材と,前記差動部材に固着され,かつウオームと係合するウオームホイールとによって構成する,という内容の発明について出願している(特願平11-23483号,判決注:刊行物1)。 【0019】上記の構成により,パルスモータ22に所定のパルス数を印加して作動させると,ねじ軸5が回転し,ナット部材8を備えた可動体7が下降し,押圧子24は初期高さH0 から定点加工高さHまで下降し,被加工物Wに当接する。これにより押圧子24を介して予め設定された押圧力で被加工物Wに対する定点加工が行なわれる。加工終了後,パルスモータ22の逆作動により可動体7が上昇し,押圧子24は初期高さH0 の位置に復帰する。なお上記H0 ,Hの値は,図示省略した計測手段により計測され,かつパルスモータ22との関係においても制御可能に構成する。 【0020】上記の定点加工が予め設定さ 4は初期高さH0 の位置に復帰する。なお上記H0 ,Hの値は,図示省略した計測手段により計測され,かつパルスモータ22との関係においても制御可能に構成する。 【0020】上記の定点加工が予め設定された回数に到達すると,図4に示す位置,すなわち押圧子24の初期高さH0 の位置においてパルスモータ22の作動を停止させ,パルスモータ23に予め設定されたパルス数を印加する。これによりパルスモータ23が所定数だけ回転し,ウオーム軸20,ウオーム17及びウオームホイール16を介して差動部材14が所定中心角度だけ回動する。この差動部材14の回動により,ナット部材8が停止しかつロックされた状態,すなわち停止した差動用おねじ13に対して差動用めねじ15が回動するから,可動体7が変位する。 【0021】可動体7の変位により,押圧子24の初期高さH0 も当然に変化するから,このままねじ軸5を回転させると,所定の定点加工が実行できない。このため,次にパルスモータ22に制御された若干のパルス数を印加してねじ軸5を微小回動させ,前記の可動体7及び押圧子24の変位を相殺し,押圧子24の初期高さH0 を一定に保持する操作を行なう。 【0022】上記のねじ軸5の回動により,ねじ軸5とナット部10との相対位置が変化する。すなわちボールねじ係合に形成されたボールとボール溝との相対位置を変化させることができ,定点加工を確保しつつ,ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止することができるのである。上記のような補正操作を行なった後,再度前記の定点加工を続行するのである。 【0023】上記の改良発明によれば,定点加工を確保し,かつボールねじ係合を構成するボール及び/又はボール溝の非所望な局部的摩耗を防止することができるのであるが,若干の問題点があることが判明した。 【0024】す 記の改良発明によれば,定点加工を確保し,かつボールねじ係合を構成するボール及び/又はボール溝の非所望な局部的摩耗を防止することができるのであるが,若干の問題点があることが判明した。 【0024】すなわち,可動体7の変位を補正し,その非作動時における押圧子24の初期高さH0 を一定に保持するために,可動体7内に設けた差動部材14を微小回動させるのであるが,この差動部材14の回動手段であるウオーム17及びウオームホイール16を製作する必要があり,煩雑かつコスト高となる。また差動用おねじ13及び差動用めねじ15の製作もまた煩雑でありコスト高となり,装置全体の構造も複雑かつ大型化するという問題点がある。 【0025】本発明は,上記従来技術に存在する問題点を解決し,構造が簡単であり,製作が容易である定点加工用のプレス装置を提供することを課題とする。」イ上記記載によれば,①従前のプレス装置には,押圧体を介して被加工物に所定の押圧力を印加する際に,ねじ軸とナット体の係合部分を構成するボールとボール溝の同一相対位置において多数回にわたって反力が作用し,ボールとボール溝が局部的に摩耗するという問題点が存在し,②この問題点を解決するため,原告は,刊行物1記載のプレス装置を発明し,差動部材14を設けてナット部材8を形成する円筒部11と可動体7とを相対移動させ,ボールとボール溝との相対位置関係を変化させてボールとボール溝の局部的磨耗を防止するとともに,可動体7の変位をねじ軸5とナット部材8との相対回動によって相殺する構成を採用したが,③なお,装置全体の構造が複雑かつ大型化するなどの問題点があったため,刊行物1記載のプレス装置の差動部材及び可動体に改良を加えて補正発明としたものと認められる。 ウそこで,補正発明に係る請求項2の記載のうち,差動部材と可動体 つ大型化するなどの問題点があったため,刊行物1記載のプレス装置の差動部材及び可動体に改良を加えて補正発明としたものと認められる。 ウそこで,補正発明に係る請求項2の記載のうち,差動部材と可動体の構成に係る部分を改めて摘示すると,以下のとおりである。 「前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し,前記可動体を,その移動方向と交差する面で分割され,かつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し,前記第1の可動体と第2の可動体とを,長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体及び第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し,前記差動部材の移動により前記第1の可動体及び第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し,前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに,前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され,前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成したことを特徴とするプレス装置。 」エ以上の記載によれば,補正発明では,可動体を,その移動方向と交差する面で第1の可動体と第2の可動体に分割し,差動部材を,第1及び第2の可動体と摺動係合可能で,可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成した上で,押圧動作の1回ごとあるいはあらかじめ定められた回数ごとに差動部材を移動させることにより, 差動部材を,第1及び第2の可動体と摺動係合可能で,可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成した上で,押圧動作の1回ごとあるいはあらかじめ定められた回数ごとに差動部材を移動させることにより,第1の可動体と第2の可動体とを相対移動させ,それによりボールとボール溝との相対位置関係を変化させるとともに,可動体7の変位をねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺し,それにより押圧子の高さを一定に保持し得るようにしたものと認められる。 オこれに対し,原告は,補正発明について,プレス加工中に,差動部材27の挿入を一寸刻みに行ってゆくものであり,差動部材の一寸刻みの挿入量と初期高さH0の一寸刻みの変位量に1次関数の関係を与えて,当該1次関数の関係を制御系の中に組み入れて利用するものであり,「ウェッジをプレス加工ごとに一寸刻みに移動させることを制御系に組み込むことは,新しい用途の開発である」(原告準備書面(第3回)3頁)と主張する。 しかしながら,補正発明の請求項2には,差動部材を挿入する間隔について,「被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに,」と記載されているにすぎず,この記載によれば,差動部材の挿入の間隔は「予め定められた回数ごと」で足りるのであり,その定めについて請求項には特段の記載はないのであるから,原告が主張するように「一寸刻み」である必要はないというべきである。 また,原告は,補正発明のプレス装置は,差動部材の移動量と初期高さの変位量の対応関係を,その制御系に組み入れて利用するものであると主張するが,請求項2には「差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,」「かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合 2には「差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して,前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し,」「かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が,前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され,」と記載されているにすぎず,差動部材の挿入量とそれによって相対移動する可動体の変位量の関係(一次関数)についての記載は存在せず,まして,その対応関係に基づく制御系の構成などは記載されていない。 さらに,本願明細書にも,差動部材を挿入する間隔が一寸刻みである旨の記載や,差動部材の移動量と初期高さの変位量の対応関係,その制御系などについての記載は存在しない。 そうすると,補正発明の構成についての原告の主張は,特許請求の範囲及び本願明細書に基づかないものであり,失当というべきである。 (2) 次に,原告は,審決の行った刊行物1記載の発明の認定には誤りがあると主張するので,この点について,検討する。 ア原告は,刊行物1記載の発明の認定に関し,刊行物1記載の発明における差動部材14と円筒部11は螺合しているのであり,摺動係合しているのではないから,審決が,刊行物1記載の発明について,「円筒部11と可動体7とを,差動用めねじ15を有するように形成すると共に前記円筒部11及び可動体7に対して摺動係合可能に形成した差動部材14を介して連結し」と認定したのは,誤りであると主張する。 確かに,刊行物1には「円筒部11の外周面には差動用おねじ13を設ける。」(段落【0022】),「14は差動部材であり,・・・内周面に前記差動用おねじ13と螺合する差動用めねじ15を設ける。」(段落【0023】)との記載があり,これによれば,原告が主張するように, 。」(段落【0022】),「14は差動部材であり,・・・内周面に前記差動用おねじ13と螺合する差動用めねじ15を設ける。」(段落【0023】)との記載があり,これによれば,原告が主張するように,差動部材14と円筒部11は差動用おねじ13と差動用めねじ15を介して螺合しているということができる。被告は,刊行物1記載の発明の可動体7と円筒部11の螺合による移動も,第1可動体と第2可動体にとっては擦り合って移動する「摺動」といえると主張するが,刊行物1における可動体と差動部材は螺合するねじを介して係合していることに照らすと,「擦り合って移動する」といえるかには疑問があり,審決の上記認定部分は正確性を欠くといえなくもない(この点については,後記(3)の相違点に関する判断で,念のために相違点に含めて検討することとする。)。 イ次に,原告は,審決は,刊行物1記載の発明の可動体7が,補正発明の第2の可動体72とスライドプレート25に相当すると認定したが,刊行物1記載の発明の可動体は,補正発明の可動体72とスライドプレート25のように別体として構成されてはいないのであるから,審決の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,刊行物1記載の発明の可動体7は,押圧子がその下面に設けられ,上下に変位するものであるところ(刊行物1の段落【0024】),補正発明のスライドプレート25は,可動体72と固着し,その下部に押圧子24が固着しているものであるから(本願明細書の段落【0032】,【0033】),刊行物1記載の発明の可動体7は,それ自体が別体から構成されているかどうかにかかわらず,補正発明の可動体72及びスライドプレート25に相当すると認められる。 したがって,審決の認定には誤りがないというべきである。 ウまた,原告は,刊行物1記載の発明の差動部材 かどうかにかかわらず,補正発明の可動体72及びスライドプレート25に相当すると認められる。 したがって,審決の認定には誤りがないというべきである。 ウまた,原告は,刊行物1記載の発明の差動部材14は,補正発明とは異なり,第1及び第2の可動体とを連結せず,また移動可能でもないと主張する。 しかしながら,刊行物1記載の発明の可動体7は円筒部11と一体に結合されているところ(段落【0022】),差動部材14が回動することにより可動体7が変位し(段落【0026】),それに伴って可動体7と一体となった円筒部11も一体的に変位するのであるから,刊行物1記載の発明の差動部材14は,補正発明の第1及び第2の可動体に相当する可動体7及び円筒部11を連結していると認めることができる。また,差動部材は「回動」するところ,これを「回転する方向に移動可能」(審決書6頁28行)と表現したとしても誤りとはいえない。 したがって,この点についても審決の認定には誤りがないというべきである。 (3) 続いて,審決の相違点に関する判断について,検討する。 ア審決は,前記のとおり相違点を認定したが,これを敷衍すると,補正発明と刊行物1記載の発明は,①第1及び第2の可動体の構成に関し,前者では,その移動方向と交差する面で分割されているのに対し,後者では,当該面で分割されたものではない点,②差動部材の構成に関し,前者では,長手方向に沿う斜面部を有し,可動体の移動方向と直交する方向に移動するものであるのに対し,後者では,差動用めねじを有し,可動体に対して回動するものである点,で相違するということができる。また,前記判示のとおり,補正発明と刊行物1記載の発明における差動部材と可動体の係合関係についての審決の認定は必ずしも正確とはいえないので,念のために,③補正発明では,可動 するということができる。また,前記判示のとおり,補正発明と刊行物1記載の発明における差動部材と可動体の係合関係についての審決の認定は必ずしも正確とはいえないので,念のために,③補正発明では,可動体と差動部材が摺動係合しているのに対し,刊行物1記載の発明では,可動体と差動部材が螺合していること,も相違点に含めて考慮することとする。 イ刊行物2に記載された事項に関する審決の認定については,当事者間に争いがない。本願明細書及び刊行物2によれば,刊行物2のスライド1,下側ウェッジを有するダイセット取付プレート5,上側ウェッジ3は,それぞれ補正発明の可動体71,可動体72,差動部材27に相当すると認められるところ,①刊行物2のスライド1及びダイセット取付プレートは「(スライド1)の移動方向と交差する面で分割され」(審決書7頁19行)たものであり,②上側ウェッジ3は,「長手方向に沿う斜面部を有」(同頁21行)するとともに「スライド1の移動方向と直交する方向に移動可能に形成」(同頁24~25行)されたものであり,③上側ウェッジ3は「スライド1及び下側ウェッジ4を有するダイセット取付プレート5に対して摺動係合可能に形成」(同頁22~23行)されたものであるから,刊行物2は上記相違点に係る①ないし③の構成を全て満たしていると認められる。 ウ審決は,刊行物1及び2に記載された発明の技術分野がいずれもプレス装置で共通していることや,刊行物2の差動部材を刊行物1記載の発明の差動部材に適用し得ないとする特段の事情も見出し得ないことなどとを理由として,刊行物2に記載された事項を刊行物1記載の発明に適用することについて阻害要因はないとしている。 刊行物1及び2に記載された発明の技術分野が共通していることは明らかであり,また,刊行物1及び2は,いずれも差動 記載された事項を刊行物1記載の発明に適用することについて阻害要因はないとしている。 刊行物1及び2に記載された発明の技術分野が共通していることは明らかであり,また,刊行物1及び2は,いずれも差動部材を動かすことにより可動体を変位させ,押圧子の高さを調整するものであるから,その作用・機能も共通すると認められる。したがって,上記相違点に係る構成について,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用することについて阻害要因はなく,当業者であれば,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用し,補正発明を容易に発明することができるというべきである。 エこれに対し,原告は,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用するについては阻害要因があり,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて補正発明を発明することは容易とはいえないと主張するので,以下,順次検討する。 (ア) 原告は,審決は,補正発明の課題を「押圧子24の初期高さH0を変化させること」に置き換えた上で,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用できると判断したものであると主張する。 しかしながら,審決書には,補正発明の課題が「押圧子の初期高さを変化させること」であるとの記載はなく,審決が,補正発明の課題を「ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止すること」から「押圧子の初期高さを変化させること」に置き換えたと認めることはできない。むしろ,審決は,本願明細書に記載されたとおり,補正発明の課題を「ボール及び/又はボール溝の局部的摩耗を防止すること」と理解した上で,その課題を解決する手段として,差動体により可動体を移動させて押圧子の高さを変化させるという刊行物2の構成に着目し,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用したにすぎないというべきであり,審決が補正発明の 決する手段として,差動体により可動体を移動させて押圧子の高さを変化させるという刊行物2の構成に着目し,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用したにすぎないというべきであり,審決が補正発明の課題を誤って置き換えたとの原告の主張は失当である。 (イ) 原告は,審決が,刊行物2のダイハイト調整装置の機能を誤認していると主張し,具体的には,①刊行物2のダイハイト調整装置は,幾度も試行しつつ,ダイハイト寸法を調整するためのものであり,補正発明のように,ボールとボール溝との相対位置関係を変化させるべく,差動部材27の挿入量と押圧子24の高さ方向の変位量とを関係づける手段として用いられるものではない,②刊行物2のダイハイト調整装置は,上側ウェッジ3とウェッジ収容部16及び下側ウェッジ4との接触面積が大きく接触面の全体が正しく密着する程度の平面度を持つことが困難であるから,差動部材の挿入量と可動体の変位量とを対応付けて所望の精度を必要とする制御系の中に組み入れて用いることは考えられない,③刊行物2のダイハイト調整装置の構造は,ウェッジの挿入量とダイセット取付プレートの高さ方向の変位量との間に対応関係を与え得るものではなく,何回も試行して与えられた所定の間隔を埋めるために用いられるにすぎない,④刊行物2のダイハイト調整装置は,所望のダイハイト寸法との誤差をなくするために調整するもので,誤差がなくなれば調整が終了するものであり,補正発明のように変位量を強制的に逐次与えてゆくものに用い得るものではない,と主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,補正発明が,ボールとボール溝との相対位置を変化させるべく,差動部材の挿入を一寸刻みで行い,差動部材の挿入量と初期高さH0の変位量を対応付けて制御系の中に組み入れるものであることを前提とし,そのような機能 が,ボールとボール溝との相対位置を変化させるべく,差動部材の挿入を一寸刻みで行い,差動部材の挿入量と初期高さH0の変位量を対応付けて制御系の中に組み入れるものであることを前提とし,そのような機能を刊行物2のプレス機械が有していないことを強調するものであるが,原告の主張する補正発明の上記構成・機能は,前記判示のとおり,特許請求の範囲及び本願明細書に基づかないものであり,原告の主張はその前提において失当である。 また,原告は,刊行物2のプレス機械について,ダイハイト寸法の誤差を調整するためには幾度も試行しなければならず,上側ウェッジ3とウェッジ収容部16及び下側ウェッジ4との接触面積が大きく接触面の全体が正しく密着する程度の平面度を持つことが困難であるなどと主張するが,これも刊行物2に記載のない事項を前提とするものであり,失当である。 前記のとおり,刊行物2記載の事項の認定については当事者間に争いがなく,刊行物2には補正発明と刊行物1の相違点に係る構成が記載されていることは,前記判示のとおりである。 したがって,審決が刊行物2のプレス機械の機能について誤認しているとの原告の主張は失当である。 (ウ) 原告は,刊行物1記載の発明では,可動体7の変位量と定点加工に必要な押圧子24の初期高さH0を保つ補正操作量との間に所定の対応関係を保持する必要があるが,刊行物2のダイハイト調整装置は,上側ウェッジの挿入量とダイセット取付プレートの変位量の間に所望の精度を持った対応関係を持つものではないから,仮に,刊行物2に記載された事項を刊行物1のプレス装置に適用しても,刊行物1の押圧子24の初期高さH0を所定の数値に保つことはできないと主張する。 しかしながら,前記のとおりの刊行物1及び2の技術分野の共通性,差動部材及び可動体の作用・機能面での共通 適用しても,刊行物1の押圧子24の初期高さH0を所定の数値に保つことはできないと主張する。 しかしながら,前記のとおりの刊行物1及び2の技術分野の共通性,差動部材及び可動体の作用・機能面での共通性に照らすと,刊行物1及び2が,可動体の変位量と押圧子の高さを保つ補正量の対応関係や差動部材の挿入量と可動体の変位量の対応関係の有無及びその精度などにおいて相違するとしても,当業者が通常対応し得る範囲内で工夫しつつ,刊行物1の発明に刊行物2記載の事項を適用することは容易であるというべきである。 また,原告は,刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用しても,押圧子の初期高さを所定の数値に保つことはできないと主張するが,刊行物1記載の差動体及び可動体に換えて,刊行物2の差動体及び可動体を適用し,差動部材の移動により可動体を上下移動させた後,可動体が変位した量について刊行物1のねじ軸を回動し,可動体の変位量を相殺すれば,押圧子の初期高さを所定の高さに保持することができるのであるから,原告の主張は理由がない。 (エ) 原告は,刊行物2の差動部材は,補正発明の差動部材と同等の作用効果を持つ適宜選択可能なものとはいえないと主張し,具体的には,①補正発明は,プレス加工中に,差動部材27の挿入を一寸刻みに行い,押圧子24の初期高さH0を逐次変化させる機能を有するのに対し,刊行物2の差動部材はそのような機能を有しない,②補正発明の差動部材27における斜面部の勾配は1°程度であり,可能な限り鏡面仕上げとして平面度をよくするものであるのに対し,刊行物2のダイハイト調整装置のウェッジが有する勾配は一般に5°ないし7°であり,プレス装置における下方向への押圧力によりウェッジが水平方向に非所望に異動しないように,ウェッジの傾斜面の面粗さを大きくしていると主張する。 整装置のウェッジが有する勾配は一般に5°ないし7°であり,プレス装置における下方向への押圧力によりウェッジが水平方向に非所望に異動しないように,ウェッジの傾斜面の面粗さを大きくしていると主張する。 しかしながら,繰り返し判示しているとおり,補正発明は,プレス加工中に,差動部材27の挿入を一寸刻みに行い,押圧子24の初期高さH0を逐次変化させる機能を有するとの原告の主張は,そもそも特許請求の範囲にも本願明細書にも記載のない事項であるから,その前提において失当である。 また,原告は,補正発明と刊行物2のプレス機械には,上記②記載のとおりの差異があるとも主張するが,これも補正発明の特許請求の範囲に記載された事項ではないから,補正発明と刊行物2のプレス機械で差動部材の斜面部の勾配及び傾斜の面粗さが異なっているとしても,補正発明の進歩性の判断に影響を与えないというべきである。 (オ) 原告は,補正発明は,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を単に組み合わせただけのものではないと主張し,①審決は,刊行物1記載の発明について正確に認定していない,②補正発明において「ボールとボール溝との相対位置を変化させる」とは,定点加工の進行に対応し,微小範囲でわずかずつボールとボール溝との相対位置を変化させて,ボールとボール溝の局部的摩耗を防止することを意味するのに対し,刊行物2のダイハイト調整装置は,ダイハイト寸法の誤差を埋めるためのものであって,補正発明のように定点加工の進行につれて押圧子の初期高さH0を強制的にわずかずつ変化させてゆくためのものではないが,審決はこの点を十分に考慮していない,③刊行物1では,ねじ軸,ナット部,円筒部,差動部材の全てについて回転移動系部材を用いているのに対し,補正発明では,回転移動系部材と水平移動する可動体とを組み合わせ はこの点を十分に考慮していない,③刊行物1では,ねじ軸,ナット部,円筒部,差動部材の全てについて回転移動系部材を用いているのに対し,補正発明では,回転移動系部材と水平移動する可動体とを組み合わせているが,このような組合せは刊行物1記載の発明からは容易に想到し得ないなどと主張する。 しかしながら,上記①の点については,前記判示のとおり,審決の刊行物1記載の発明の認定には不正確な点もあるが,原告が主張する点を相違点として考慮しても,同構成は刊行物2に記載されていると認められるのであるから,補正発明の進歩性に関する判断を左右するものではない。 また,②については,確かに,刊行物2のプレス機械はボールとボール溝の局部的摩耗を防止することを目的とするものではないが,ボールとボール溝との相対位置を変化させることは,刊行物1に記載されている事項であり(段落【0029】~【0031】),必ずしも刊行物2に記載されていることを要するものではない。刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用することができることは,前記判示のとおりである。 さらに,ねじ軸,ナット部,可動体及び差動部材の構成については,当業者であれば様々な構成を工夫し得ることは当然であり,補正発明のように可動体を水平移動する構成とし,回転移動系部材と組み合わせることは容易に想到し得るというべきである。 したがって,原告の主張は理由がない。 (カ) 原告は,刊行物2のダイハイト調整装置は,補正発明の出願当時には全く使用されていなかったのであるから,刊行物1に記載された発明に,刊行物2のダイハイト調整装置を組み合わせて使用しようとする発想自体が生じるはずがないと主張する。 しかしながら,刊行物2に記載された事項が,補正発明の出願当時に使用されていなかったとしても,当業者がその技術に基 イト調整装置を組み合わせて使用しようとする発想自体が生じるはずがないと主張する。 しかしながら,刊行物2に記載された事項が,補正発明の出願当時に使用されていなかったとしても,当業者がその技術に基づいて当該発明を容易に想到し得ると判断される場合には進歩性があるとはいえないのであって,実際の使用の有無を根拠に刊行物2の適用可能性を否定する原告の主張は失当である。本件において,補正発明が,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項に基づき容易に想到し得ることは既に判示のとおりである。 2 本願発明について原告は,本件補正前の請求項を前提とする本願発明についての審決の判断を争うが,具体的な取消事由の主張をしていない。なお,補正発明は,本願発明の構成を全て含み,さらに他の構成を付加することによって限定したものであるところ,前記判示のとおり,補正発明が刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと認められるのであるから,本願発明も,同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものであるということができる。 3 結論以上のとおり,原告の主張する審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官塚原朋一裁判官田中昌利裁判官佐藤達文
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