令和6年9月10日東京地方裁判所刑事第10部宣告令和6年特第78号政治資金規正法違反被告事件 主文 被告人を禁錮2年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、政治団体であるA会の代表者兼会計責任者であった者である。A会においては、政治資金を集めるために年に一度開催していた政治資金パーティーにつき、パーティー券販売促進のため、A会会員である各国会議員に対し、それぞれの 会員ごとに、各会員の当選回数等に応じてパーティー券の販売目標額が定められていたほか、各会員がその目標額を上回る販売をした場合には、目標額を超過したパーティー券売上金をその会員の関係政治団体等への寄附金として還付する扱いをしていた。 さらに、A会会員である国会議員の中には、販売目標額を超えてパーティー券を 販売したのに、その超過分についてA会に納付しない者も複数おり、被告人もそのことを認識していたが、販売目標額を超える売上金相当分を、各会員の関係政治団体等への寄附金として還付する扱いをしていたこと等を理由に、これを容認していた。そのため、被告人は、国会議員であるA会会員が販売したパーティー券の正確な売上総額(政治資金パーティーの会費収入額)及びA会が各会員の関係政治団体 等に寄附した正確な寄附総額を、いずれも把握していなかったし、把握しようともしなかった。 そのような中、被告人は、政治資金規正法に基づく収支報告書を作成するに当たり、政治資金パーティーの会費収入額について、全会員のパーティー券販売目標額の合計金額を目安にした適当な記載金額を決め、過少な虚偽の金額を記入し、また、 支出金額についても、翌年への繰越額の見栄えの良さ等から ティーの会費収入額について、全会員のパーティー券販売目標額の合計金額を目安にした適当な記載金額を決め、過少な虚偽の金額を記入し、また、 支出金額についても、翌年への繰越額の見栄えの良さ等から逆算するなどして適当 な記載金額を決め、過少な虚偽の金額を記入するようになった。 (罪となるべき事実)被告人は、政治団体であるA会の代表者兼会計責任者として、政治資金規正法12条1項により東京都選挙管理委員会を経て総務大臣に提出すべきA会の収支報告書につき 第1 遅くとも平成31年2月8日までに、東京都千代田区a 町b 丁目c 番d 号e3階のA会事務所において、A会の平成30年の収入及び支出に関し、真実は、同年4月23日に開催した政治資金パーティーである「強くしなやかに共に生きる」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表1(別表省略)の「実際額」のとおりであったにもかか わらず、A会の平成30年分の収支報告書の「強くしなやかに共に生きる」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額を記載すべき欄に、それぞれ別表1の「記載額」のとおりの虚偽の記入をし、平成31年2月8日、これを東京都新宿区西新宿2丁目8番1号所在の前記選挙管理委員会を経て総務大臣に提出した。 第2 遅くとも令和2年2月4日までに、前記A会事務所において、A会の令和元年の収入及び支出に関し、真実は、同年5月9日に開催した政治資金パーティーである「新しい時代に進める『強靭な国づくり』」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表2(別表省略)の「実際額」のと た政治資金パーティーである「新しい時代に進める『強靭な国づくり』」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表2(別表省略)の「実際額」のとおりであったにもかかわらず、A会の令和元年分の収支 報告書の「新しい時代に進める『強靭な国づくり』」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額を記載すべき欄に、それぞれ別表2の「記載額」のとおりの虚偽の記入をし、令和2年2月4日、これを前記選挙管理委員会を経て総務大臣に提出した。 第3 遅くとも令和3年2月2日までに、前記A会事務所において、A会の令和 2年の収入及び支出に関し、真実は、同年10月7日に開催した政治資金パーティ ーである「ワンチームで時代を前へ輝け日本!」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表3(別表省略)の「実際額」のとおりであったにもかかわらず、A会の令和2年分の収支報告書の「ワンチームで時代を前へ輝け日本!」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額を記載すべき欄に、それぞれ別 表3の「記載額」のとおりの虚偽の記入をし、令和3年2月2日、これを前記選挙管理委員会を経て総務大臣に提出した。 第4 遅くとも令和4年2月7日までに、前記A会事務所において、A会の令和3年の収入及び支出に関し、真実は、同年9月24日に開催した政治資金パーティーである「新たな時代の国家戦略」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄 附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表4(別表省略)の「実際額」のとおりであったにもかかわらず、 ーである「新たな時代の国家戦略」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄 附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表4(別表省略)の「実際額」のとおりであったにもかかわらず、A会の令和3年分の収支報告書の「新たな時代の国家戦略」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額を記載すべき欄に、それぞれ別表4の「記載額」のとおりの虚偽の記入をし、令和4年2月7日、これを前記選挙管理委員会を経て総務大臣に提 出した。 第5 遅くとも令和5年2月6日までに、前記A会事務所において、A会の令和4年の収入及び支出に関し、真実は、同年5月16日に開催した政治資金パーティーである「A会と同志の集い」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額がそれぞれ少なくとも別表5(別表省略)の「実際額」 のとおりであったにもかかわらず、A会の令和4年分の収支報告書の「A会と同志の集い」の会費収入額を含む同年の収入額及び同年の寄附金・交付金額を含む同年の支出額を記載すべき欄に、それぞれ別表5の「記載額」のとおりの虚偽の記入をし、令和5年2月6日、これを前記選挙管理委員会を経て総務大臣に提出した。 (量刑の理由) 被告人は、自由民主党の主要政治団体に雇用され、その会計責任者という重責を 負う立場に就いたにもかかわらず、その就任当初から、収支の実態とはかけ離れた虚偽の会計処理を長年継続的に行ってきたもので、本件各犯行は職業的常習的犯行の一環であった。本件各犯行により過少に偽られた5年度分の金額の程度をみても、各年度の収入額につき合計2億6459万円余り、各年度の支出額につき合計1億1622万円という非常に大規模なも 常習的犯行の一環であった。本件各犯行により過少に偽られた5年度分の金額の程度をみても、各年度の収入額につき合計2億6459万円余り、各年度の支出額につき合計1億1622万円という非常に大規模なものであり、犯行態様は全体として非常に悪質 といえる。 一連の犯行によって、約40名もの現職国会議員等を擁する政治団体の収支の実態が収支報告書上に表れないままとなり、政治資金パーティーの会費収入額や、その使途といった重要な金銭の流れは、国民の目が届かないものとなってしまった。 民主政治の健全な発達に向け、政治団体の政治活動が国民の不断の監視と批判の下 に行われるようにするため、政治資金の収支を国民の前に公開し、その是非の判断を国民にゆだねるという政治資金規正法の目的を害した程度は著しく大きく、国民の政治不信につながる社会的悪影響も多大で、その結果は大変に重い。 被告人には、政治団体の会計責任者としての重責を法に基づいて適正に全うしようとした形跡が全くない。政党政治における政治団体の意義や民主政治を担う一般 国民を顧みることなく、自らを雇用していた政治団体の都合やその利害のみを考えて本件各犯行を繰り返していたものであり、雇われの身としてできることに限界があったとはいえ、動機に酌量の余地はない。 そこで、反省していること、前科がないこと等を被告人のために酌むべき事情として考慮し、主文の量刑とした。 (求刑禁錮2年)令和6年9月13日東京地方裁判所刑事第10部 裁判長裁判官向井香津子 裁判官長尾洋子 裁判官友近仁洸 裁判官 長尾洋子 裁判官 友近仁洸
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