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主文 原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人の附帯控訴による請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。事実 控訴(附帯被控訴)代理人は、控訴につき「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を、附帯控訴につき附帯控訴による請求を棄却する旨の判決を、それぞれ求め、被控訴(附帯控訴)代理人は控訴につき控訴棄却の判決を、附帯控訴として「(一)附帯被控訴人は附帯控訴人に対し金五八九万二九八一円およびこれに対する昭和四四年一一月一四日以降完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。(二)附帯被控訴人は附帯控訴人に対し昭和四四年一一月以降毎月二五日限り金七万二一八〇円宛の金員の支払をせよ。(三)附帯控訴費用は附帯被控訴人の負担とする。」との判決および右(一)項につき仮執行の宣言を、それぞれ求めた。当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用および書証の認否は、次に附加するほか原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。一、被控訴(附帯控訴)代理人の陳述(一) 被控訴人(附帯控訴人。以下単に被控訴人と称する)は控訴人(附帯被控訴人。以下単に控訴人と称する)から昭和三九年二月五日現在において月額金四万二七五〇円の賃金を受けており、賃金は毎月二五日に支払を受ける約定であつたにもかかわらず、控訴人は被控訴人に対し同年三月一日から昭和四四年一〇月三一日までの賃金ならびに夏季および冬期の一時金の支払いをしない。右の期間中被控訴人の受けるべき賃金はベース・アツプ、定期昇給および賃金体系の改訂等により別紙第一表記載のとおりであり、また夏季および冬期の一時金として毎月六月末日および一二月末日に支給を受けるべき金額は 中被控訴人の受けるべき賃金はベース・アツプ、定期昇給および賃金体系の改訂等により別紙第一表記載のとおりであり、また夏季および冬期の一時金として毎月六月末日および一二月末日に支給を受けるべき金額は別紙第二表記載のとおりであり、更に右各賃金および一時金に対する各支給日の翌日から昭和四四年一一月一三日までの民法所定の年五分の割合による遅延損害金は右各表の最下欄記載のとおりである。 支給を受けるべき金額は 中被控訴人の受けるべき賃金はベース・アツプ、定期昇給および賃金体系の改訂等により別紙第一表記載のとおりであり、また夏季および冬期の一時金として毎月六月末日および一二月末日に支給を受けるべき金額は別紙第二表記載のとおりであり、更に右各賃金および一時金に対する各支給日の翌日から昭和四四年一一月一三日までの民法所定の年五分の割合による遅延損害金は右各表の最下欄記載のとおりである。よつて控訴人に対し右合計金五八九万二九八一円およびこれに対する昭和四四年一一月一四日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、同年同月一日以降毎月二五日限り金七万二一八〇円宛の賃金を支払うべきことを求める。(二) 別紙第二表記載の一時金の算定基礎のうち「プラス・アルフア」とあるのは控訴人の裁量により加算される金額であるが、控訴人がその算出方式を明らかにしないため、被控訴人において算定できないものである。しかし被控訴人はその部分の債権を放棄したものではない。(三) 別紙第一表記載の賃金額が控訴人主張の金額と相違する根本原因は、定期昇給およびベース・アツプに際し控訴人が被控訴人に対する人事考課の査定を最低または劣悪と評価したことにある。人事考課規程によれば、人事考課の査定は「従業員の勤務の実際を具体的に要素別に評価し企業目的への客観的な貢献度の測定によつて公平な人事管理を行なうことを目的とする」ものであるが、その運用は全く控訴人の一方的恣意によつて行なわれ、時には報復手段として運用されることもあるところ、被控訴人に対しても敵対的に最低の評価である「劣悪」(旧体系)ないし「D」(新体系)の査定をなしたことが明白である。被控訴人は本件解雇前は「優」(新体系では「A」)の査定を受けていたが、別紙第一表の賃金額の計算は、すべて控え目に標準 である「劣悪」(旧体系)ないし「D」(新体系)の査定をなしたことが明白である。被控訴人は本件解雇前は「優」(新体系では「A」)の査定を受けていたが、別紙第一表の賃金額の計算は、すべて控え目に標準の金額で計算した。控訴人が被控訴人に対し学歴、職種、年令、勤続年数、本給等の近似する他の従業員と比較して最低の査定をなし、格外とも言うべき昇給額を定めたことは差別的不利益扱いである。二、控訴代理人の陳述(一) 被控訴人は昭和三七・三八両年度において意識的に所得税の源泉徴収を免れ、かつ扶養家族手当の支給を受けていたものであり、しかも昭和三九年度においてもかかる不法行為を継続する意図を有した。 目に標準の金額で計算した。控訴人が被控訴人に対し学歴、職種、年令、勤続年数、本給等の近似する他の従業員と比較して最低の査定をなし、格外とも言うべき昇給額を定めたことは差別的不利益扱いである。二、控訴代理人の陳述(一) 被控訴人は昭和三七・三八両年度において意識的に所得税の源泉徴収を免れ、かつ扶養家族手当の支給を受けていたものであり、しかも昭和三九年度においてもかかる不法行為を継続する意図を有した。すなわち、被控訴人の妻aは昭和三七年一月一日から柴山木工所の従業員として給与を受けていたのであり、原審における被控訴人本人尋問の結果をそのまま措信するとしても、被控訴人は同年五、六月頃には妻aが給料伝票の入つた給料袋を貰うことを知つていたのであるから、少なくとも昭和三八年度分の申告中にaを被扶養者の中に加えたことは従前どおり惰性として無意識的に行なつたものとは言いえない。加うるに被控訴人は昭和三九年度分についても既に同様の申告をしているのである。控訴人が柴山木工所に照会したところaの昭和三八年度の給与所得が金一九万一七八五円である旨の回答を受けたことは既に主張したが、控訴人においてその後調査した結果、柴山木工所が所轄税務署に申告した同女の同年度の給与所得は金三〇万七四四〇円に及ぶことが判明した。このことは、被控訴人が柴山木工所に対し控訴人の照会に対する回答を過少にするよう依頼したと疑わせる。しかも被控訴人は控訴銀行係員に対し、本件不正行為を上司に内密にしてほしい旨依頼したほどで、扶養手当の不正受給額を直ちに返還することを申し出たこともなく、反省の色は にするよう依頼したと疑わせる。しかも被控訴人は控訴銀行係員に対し、本件不正行為を上司に内密にしてほしい旨依頼したほどで、扶養手当の不正受給額を直ちに返還することを申し出たこともなく、反省の色は全くなかつた。(二) 控訴銀行においては従業員の金銭に関する不正に対しては従来極めて厳格な態度を持しており、金額の多少、事情の如何を問わず、懲戒解雇または依頼退職(退職届の受理)の処置をとつて来た。このことは役職者はもちろん、一般従業員間にも徹底しており、労働組合もまた金銭上の不正をした者は控訴銀行を辞すべきことを承認して来た。このことは銀行の性格上当然のことである。被控訴人の所得税源泉徴収の一部不正免脱および扶養家族手当の不正受給の所為は集金横領と同等あるいはそれ以上に悪質な金銭上の不正で、詐欺犯に該当するものであり、銀行の役席者として十分責められるべきものである。 理)の処置をとつて来た。このことは役職者はもちろん、一般従業員間にも徹底しており、労働組合もまた金銭上の不正をした者は控訴銀行を辞すべきことを承認して来た。このことは銀行の性格上当然のことである。被控訴人の所得税源泉徴収の一部不正免脱および扶養家族手当の不正受給の所為は集金横領と同等あるいはそれ以上に悪質な金銭上の不正で、詐欺犯に該当するものであり、銀行の役席者として十分責められるべきものである。(三) 控訴銀行と従業員組合との間に締結された労働協約第六九条は「人事委員会の議案は委員会開催三日前までに相手方に文書をもつて通知する。ただし緊急を要する場合はこの限りでない。」と規定している。しかし人事の異動および従業員の懲戒が人事委員会の決定前に洩れることは好ましくないので、控訴銀行においては、これらの事項を附議する人事委員会の開催を秘密裡に行なう慣行が生まれ、人事委員会の開催に当つてはその三日位前に控訴銀行の人事部長または人事課長から組合の執行委員長または書記長に対し電話または口頭で人事委員会開催の日時のみを通知し、議案はこれを通知しない慣行が確立している。昭和三九年二月四日開催の人事委員会も右の慣行に従い組合側に通知されたのであつて、開催手続上何ら違法のかどはない。(四) 被控訴人が当審において追加した請求原因事実のうち、控訴人が被控訴人に対し昭和三九年三月一日から の人事委員会も右の慣行に従い組合側に通知されたのであつて、開催手続上何ら違法のかどはない。(四) 被控訴人が当審において追加した請求原因事実のうち、控訴人が被控訴人に対し昭和三九年三月一日から昭和四四年一〇月三一日までの賃金ならびに夏季および冬季の一時金を支払わないことは認めるが、その余の事実は争う。被控訴人が退職しなかつたならば支給を受けるべき給与および一時金の金額ならびにこれに対する遅延損害金の金額は別紙第三、四表のとおりである。右の金額が被控訴人主張の金額と相違する主要な原因は、第一に定時昇給の昇給額につき被控訴人は控訴銀行の定めた昇給表に存在しない高額を主張するのに対し、控訴人は右昇給表所定の最下位の昇給額を認定した点であり、第二に年度により増給に伴う差額の支給時期(控訴人の履行期)を被控訴人が独自の見解により遡及させている点である。三、証拠(省略) 理由 控訴人が相互銀行法に基づき銀行業務を行なう会社であること、および控訴人が昭和二七年七月二六日被控訴人を従業員として雇傭したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第五号証および当審証人bの証言によれば、被控訴人は控訴人に対し昭和三九年二月五日同日付退職届を提出し(この事実は当事者間に争いがない)て右雇傭契約の解約を申し入れ、控訴人は即日これを承諾して、ここに右雇傭契約は合意の上解約されたことを認めることができ、右の認定を左右するに足る証拠はない。 、および控訴人が昭和二七年七月二六日被控訴人を従業員として雇傭したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第五号証および当審証人bの証言によれば、被控訴人は控訴人に対し昭和三九年二月五日同日付退職届を提出し(この事実は当事者間に争いがない)て右雇傭契約の解約を申し入れ、控訴人は即日これを承諾して、ここに右雇傭契約は合意の上解約されたことを認めることができ、右の認定を左右するに足る証拠はない。被控訴人は、先ず、右退職届の提出は控訴人の強迫に因るものであるから、これを取り消したと主張するので、被控訴人主張の強迫の成否につき判断する。控訴人が所得税法上その従業員の給与所得につき源泉徴収義務を負うものであり、源泉徴収にあたり、従業員に所定の扶養家族があるときは当該従業員から扶養控除申告 被控訴人主張の強迫の成否につき判断する。控訴人が所得税法上その従業員の給与所得につき源泉徴収義務を負うものであり、源泉徴収にあたり、従業員に所定の扶養家族があるときは当該従業員から扶養控除申告書を徴して所轄税務署長にこれを提出するとともに、その申告書に基づいて法定の扶養控除をなした上、課税所得額を定めて法定の所得税額を徴収・納付していること、被控訴人は控訴人に対し昭和三七、三八両年度の所得につき妻a、長男cおよび長女dの三名を扶養家族として扶養控除申告書を提出したので、控訴人は右各申告に基づき法定の扶養控除をした上算出された所得税額を被控訴人から源泉徴収して、これを所轄の岐阜北税務署長に納付したこと、控訴人の定めた給与規程細則第一条第二号ホによれば、控訴人は従業員に対し扶養家族申告書に基づき扶養家族五人を限度として毎月第一被扶養者につき金二五〇〇円、第二被扶養者につき金一〇〇〇円、第三被扶養者以下につき金四〇〇円の家族手当を支給するが、配偶者であつても定職を持ち、または定収入があつて納税資格を有する場合は扶養家族とみなさないものとされていること、被控訴人は昭和三七、三八両年度の各一月一日付をもつて控訴人に対し第一扶養家族妻a、第二扶養家族長男c、第三扶養家族長女dと記載した家族手当受給承認申告書を提出したので、控訴人は右各申告に基づき被控訴人に対し右規定による家族手当を支給したこと、右aが昭和三七、八年当時名古屋市<以下略>の柴山木材工業所ことe方に勤務して給与を受けていたこと、控訴人が従業員の服務、賞罰等につき定めた就業規程の第五六条の四が「職員が次の各号の一に該当する行為があつたときは懲戒解雇とする。 扶養家族妻a、第二扶養家族長男c、第三扶養家族長女dと記載した家族手当受給承認申告書を提出したので、控訴人は右各申告に基づき被控訴人に対し右規定による家族手当を支給したこと、右aが昭和三七、八年当時名古屋市<以下略>の柴山木材工業所ことe方に勤務して給与を受けていたこと、控訴人が従業員の服務、賞罰等につき定めた就業規程の第五六条の四が「職員が次の各号の一に該当する行為があつたときは懲戒解雇とする。ただし情状により減給、出勤停止または降職にとどめることができる。」と定め、その第二号に「窃盗、横領、暴行等の刑法犯に該当する行為 が「職員が次の各号の一に該当する行為があつたときは懲戒解雇とする。ただし情状により減給、出勤停止または降職にとどめることができる。」と定め、その第二号に「窃盗、横領、暴行等の刑法犯に該当する行為のあつた場合」、第一〇号に「その他各号に準ずる不都合な行為のあつた場合」と各規定されていること、控訴人がその従業員をもつて組織されている岐阜相互銀行従業員組合(以下単に組合と称する)との間に締結した労働協約には原判決添付別紙(二)記載の各条文が存すること、および被控訴人が昭和三九年二月四日当時右組合の組合員であつたこと、ならびに同日控訴人の申し入れにより人事委員会が開かれ、被控訴人の解雇が議題とされたことは、いずれも当事者間に争いがない。被控訴人は、右同日およびその翌日開催された人事委員会において控訴人側人事委員らが組合側人事委員らに対し、被控訴人に懲戒事由が存しないにもかかわらず虚構の事実をかまえて被控訴人を懲戒解雇に処すべしと主張した上、懲戒解雇か任意退職かのいずれかを選択させよと威嚇し、組合側委員らをして被控訴人にその旨を伝達せしめて被控訴人を強迫した旨主張するのであるが、成立に争いのない甲第一〇号証ならびに原審証人f、同gの各証言、原審および当審における被控訴人本人尋問の結果中右の主張に添う部分は、いずれも成立に争いのない甲第五号証および当審証人b、同hの各証言に比して措信し難く、かえつて成立に争いのない乙第三、四号証の各一、二、当審証人bの証言により成立を認め得る乙第一四、第一五号証に原審証人i、当審証人b、同hの各証言を総合すると、次の諸事実を認めることができる。(一) 控訴人は相互銀行たる性格上従来職員の金銭上の犯罪行為に対しては厳格な態度を堅持し、昭和三七年四月には金四万三〇〇〇円余を横領した職員を懲戒解雇に処すべく人事 当審証人b、同hの各証言に比して措信し難く、かえつて成立に争いのない乙第三、四号証の各一、二、当審証人bの証言により成立を認め得る乙第一四、第一五号証に原審証人i、当審証人b、同hの各証言を総合すると、次の諸事実を認めることができる。(一) 控訴人は相互銀行たる性格上従来職員の金銭上の犯罪行為に対しては厳格な態度を堅持し、昭和三七年四月には金四万三〇〇〇円余を横領した職員を懲戒解雇に処すべく人事 諸事実を認めることができる。(一) 控訴人は相互銀行たる性格上従来職員の金銭上の犯罪行為に対しては厳格な態度を堅持し、昭和三七年四月には金四万三〇〇〇円余を横領した職員を懲戒解雇に処すべく人事委員会に附議したが結局依願退職としたこともあつた。(二) 控訴人は名古屋西税務署長から昭和三八年一二月一〇日付書面をもつて被控訴人の昭和三七年分源泉所得税の徴収につき妻aが扶養家族であることを否認する旨の通知を受け、その頃他の二名の職員についても所轄税務署長から同様の通知を受けたので、各所轄税務署に係員を派遣して調査させたところ、被控訴人の妻aは前記柴山木材工業所から昭和三七年中に金一四万六七三一円、昭和三八年には金三〇万円余の各給与の支給を受け、両年とも所得税の源泉徴収を受けて、その旨同工業所から所轄税務署長に報告されている旨の調査報告を受けた(もつとも、控訴人がその後柴山木材工業所に依頼して送付を受けた昭和三八年分給与所得の源泉徴収票の写には、aの同年分給与所得は金一九万一七八五円と記載されている)ので、直ちに右aを右両年度の扶養控除対象者から除いて再調整した不足額合計金一万八九〇〇円を被控訴人から徴収して所轄税務署に納付した(被控訴人が右不足金一万八九〇〇円を控訴人に支払つたことは当事者間に争いがない)。(三) 扶養控除を否認された前記三名の内一名は控訴銀行の支店長であつたところ、否認の対象とされた年度が昭和三七年度のみであつたこと、同人は否認の通知を受けると早速上司に口頭で恐縮の意を表し、進退伺いを申し出たこと、および支店長の後任人事を慎重に決する必要があること等を考慮した控訴人の役員会は、右支店長の処分についてはしばらく留保することとして(同人は結局昭和三九年三月下旬頃依願退職した)、被控訴人を含むその余の二名の職員の処分につき検討 決する必要があること等を考慮した控訴人の役員会は、右支店長の処分についてはしばらく留保することとして(同人は結局昭和三九年三月下旬頃依願退職した)、被控訴人を含むその余の二名の職員の処分につき検討した。 決する必要があること等を考慮した控訴人の役員会は、右支店長の処分についてはしばらく留保することとして(同人は結局昭和三九年三月下旬頃依願退職した)、被控訴人を含むその余の二名の職員の処分につき検討 決する必要があること等を考慮した控訴人の役員会は、右支店長の処分についてはしばらく留保することとして(同人は結局昭和三九年三月下旬頃依願退職した)、被控訴人を含むその余の二名の職員の処分につき検討した。(四) 被控訴人は昭和三七、八両年度において前記妻aのほか長男および長女を扶養し、右三名を扶養家族として申告した結果前記給与規程細則により昭和三七年中は毎月金二五〇〇円、昭和三八年中は毎月金三九〇〇円の家族手当の支給を受けたが、aは定職を持ち納税義務を負担していたから、同細則の規定により扶養家族とみなされず、長男および長女をそれぞれ第一、第二被扶養者として申告すべきであつたから、毎月金四〇〇円宛、合計金九二〇〇円(昭和三八年一一月分まで)の家族手当を不当に受給していたことになる。しかも被控訴人は同居の妻が定職を有し毎月給与の支給を受け年末に給与所得の源泉徴収票の交付を受けていたことを当然知つていたものと推定されるから、少なくとも昭和三七年末には同年度分の右家族手当の超過受給分を控訴人に返還すべきことを知つたにもかかわらず、これを返還しないのみか昭和三八年分扶養家族申告書にも妻aを第一被扶養者として申告したのであるから、少なくとも昭和三八年分の家族手当の超過受給分については詐欺罪が成立し、また昭和三九年分扶養家族申告書にも右同様の記載をして、これを控訴人に提出したが、前記のように事件が発覚したため控訴人の係員が同申告書中妻aに関する記載を抹消したため、同年一月分給与については詐欺未遂に終つたものである。したがつて右の行為は前記就業規程第五六条の四第二号に該当し、また前記所得税の扶養控除に関し妻aを扶養家族として申告し所得税の一部につき源泉徴収を免れた行為は、右同様少なくとも昭和三八年分につき当時施行の所得税法第六九条の二第一項第三八条 四第二号に該当し、また前記所得税の扶養控除に関し妻aを扶養家族として申告し所得税の一部につき源泉徴収を免れた行為は、右同様少なくとも昭和三八年分につき当時施行の所得税法第六九条の二第一項第三八条に該当するから、右行為は前記就業規程第五六条の四第一〇号に該当する。 家族として申告し所得税の一部につき源泉徴収を免れた行為は、右同様少なくとも昭和三八年分につき当時施行の所得税法第六九条の二第一項第三八条 四第二号に該当し、また前記所得税の扶養控除に関し妻aを扶養家族として申告し所得税の一部につき源泉徴収を免れた行為は、右同様少なくとも昭和三八年分につき当時施行の所得税法第六九条の二第一項第三八条に該当するから、右行為は前記就業規程第五六条の四第一〇号に該当する。(五) 被控訴人は控訴人本店の課長補佐として管理職の地位に在りながら、人事課担当係員から前記名古屋西税務署長から扶養家族否認の通知が来たことを告げられるや、同係員に対し「手当のことがあるから上司には内密にしておいてくれ」と依頼し、上司に対し謝罪の意を表したこともなく、所得税の調整額は昭和三九年一月一〇日頃、家族手当の不当受給分は同年二月五日頃、それぞれ控訴人側から請求を受けて始めて支払つたものであつて、その間全く反省の色を示したことはなかつた。(六) 控訴人の従業員の給与水準は岐阜県内の一般の給与水準はもとより、同県下の他の金融機関の給与水準に比しても高いことからも、また相互銀行法により大蔵省の監督を受ける金融機関としての立場からも、控訴人が所得税の源泉徴収および家族手当の支給のために従業員から徴する扶養家族の申告につき不正申告を黙認したことなどはなく、税務当局から従業員の源泉所得税につき扶養家族の否認を受けたこともかつてなかつた。(七) そこで控訴人の役員会は昭和三九年一月二五日頃被控訴人ほか一名を懲戒解雇すべきものと判断し、人事の定期異動と共に人事委員会に附議することとして、直ちに組合側の人事委員に対し人事委員会を同年二月上旬に開催する旨を予告した上、同年二月三日口頭をもつて翌四日午前一〇時人事委員会を開催する旨を通知した。(八) 右の通知方法は前記労働協約第六九条本文所定の通知方法に反するが、同協約上の人事委員会は組合員以外の従業員の人事についても協議する権限を有 翌四日午前一〇時人事委員会を開催する旨を通知した。(八) 右の通知方法は前記労働協約第六九条本文所定の通知方法に反するが、同協約上の人事委員会は組合員以外の従業員の人事についても協議する権限を有し、しかも人事に関する事項は発表まで秘密を厳守する必要があるところから、人事の定期異動についても数年前から右同条ただし書を適用し、議案は文書をもつてすると否とを問わず、これを通知しないことが慣行として確立していた。 前一〇時人事委員会を開催する旨を通知した。(八) 右の通知方法は前記労働協約第六九条本文所定の通知方法に反するが、同協約上の人事委員会は組合員以外の従業員の人事についても協議する権限を有し、しかも人事に関する事項は発表まで秘密を厳守する必要があるところから、人事の定期異動についても数年前から右同条ただし書を適用し、議案は文書をもつてすると否とを問わず、これを通知しないことが慣行として確立していた。(九) 昭和三九年二月四日開催された人事委員会には組合側人事委員のうち組合書記長が風邪のため欠席したので、開催に先立つて控訴人側人事委員から出席した組合側人事委員らに対し、一名欠席のまゝ開催することの可否をはかつたところ、差支えない旨の回答を得たので、一名欠席のまゝ開催されたのであるが、第一の議案として控訴人側委員から被控訴人ほか一名を懲戒解雇に処する件が上程され、経過および理由の説明が行なわれた。組合側委員らは、右の説明を聞き、かつ二、三の証拠書類を示された上で、ことが金銭上の不祥事であり、かつ控訴人が相互銀行であるだけに、事態は被控訴人ら二名にとつて極めて不利であるのみならず、被控訴人が当時組合の執行委員であつた(右事実は当事者間に争いがない)ことから、組合にとつても不利なことであると判断し、被控訴人らの不正行為に困惑しつゝも、解雇だけは免れさせたいとの気持から、解雇以外の懲戒方法で足りることを極力主張し、休憩時間に組合書記長と電話連絡をとりつゝ、控訴人側委員らに対し解雇が不当であることを繰返し主張し、協議は深更に及んだため、翌日続行されることとなつた。右の席上において控訴人側委員から組合側委員に対し、本人に相談したり、組合執行委員会を招集したり、組合の上部団体に相談したりすれば直ちに懲戒解雇を発令すると発言したことはな 行されることとなつた。右の席上において控訴人側委員から組合側委員に対し、本人に相談したり、組合執行委員会を招集したり、組合の上部団体に相談したりすれば直ちに懲戒解雇を発令すると発言したことはなく、また控訴人側委員らが組合側委員らの自由を束縛し休憩時間中尾行をつける等、威圧を示す態度をとつたこともなく、組合側委員らが被控訴人ほか一名と相談しなかつたのは協議の秘密を守るためであり、また執行委員会を招集しなかつたのは、あくまでも組合三役の責任において処理すべきであると判断したためであつた。 、組合執行委員会を招集したり、組合の上部団体に相談したりすれば直ちに懲戒解雇を発令すると発言したことはなく、また控訴人側委員らが組合側委員らの自由を束縛し休憩時間中尾行をつける等、威圧を示す態度をとつたこともなく、組合側委員らが被控訴人ほか一名と相談しなかつたのは協議の秘密を守るためであり、また執行委員会を招集しなかつたのは、あくまでも組合三役の責任において処理すべきであると判断したためであつた。(一〇) 翌二月五日続行された人事委員会には前日欠席した組合書記長も出席したが、組合側委員らは前日の討議に鑑みるときは被控訴人らを企業内に留めることは至難であると観念し、懲戒解雇案に対する対案として右両名を依願退職させることを提案するに至つたので、控訴人側委員らは休憩を求めて他の役員らと約一時間にわたり合議した結果、右両名が不当に受給した家族手当を控訴人に返戻すること、および同日の勤務時間中に退職願を提出することを条件として組合側委員の提案を受け入れることとし、協議を再開してその旨を返答したところ、組合側委員は右の二条件を受けいれたので、再び協議の結果被控訴人に対しては組合が、他の一名に対しては控訴人側が、それぞれ右人事委員会の結論を伝達することとして、同日午後一時頃前記議案に対する協議は終了した。同日の協議において、労働協約第四五条第二項の「銀行は従業員の採用、異動、昇給、解雇、休職、停年、賞罰等人事に関する基本事項については組合と協議して決定する。」との規定および同第四八条第一項の「銀行は組合役員の異動を行なう場合は予め組合の同意を得て行なう。」との規定の解釈につき、組合側委員らは組合役員の懲戒解雇についても組合の同意を要すると主張したのに対し の規定および同第四八条第一項の「銀行は組合役員の異動を行なう場合は予め組合の同意を得て行なう。」との規定の解釈につき、組合側委員らは組合役員の懲戒解雇についても組合の同意を要すると主張したのに対し、控訴人側委員らは組合役員を懲戒解雇に処するときは人事委員会に附議すれば足り、組合の同意を得なくても懲戒解雇の発令をなし得ると主張して論争をしたことはあつたが、被控訴人の主張するように控訴人側委員が組合側委員に対し「被控訴人が本日午後五時までに退職届を提出しなければ生涯どこへも就職ができないように烙印を押してやる。組合執行委員会にはかつたり上部団体その他の第三者に相談したりしても同様である。 に対し、控訴人側委員らは組合役員を懲戒解雇に処するときは人事委員会に附議すれば足り、組合の同意を得なくても懲戒解雇の発令をなし得ると主張して論争をしたことはあつたが、被控訴人の主張するように控訴人側委員が組合側委員に対し「被控訴人が本日午後五時までに退職届を提出しなければ生涯どこへも就職ができないように烙印を押してやる。組合執行委員会にはかつたり上部団体その他の第三者に相談したりしても同様である。」と威嚇して終始強圧的な言辞を弄したことはなく、また四、五両日を通じて「j(被控訴人と共に協議の対象とされた職員の姓)はその名のとおり巻き添えだ。」と発言したりしたことはない。(一一) 組合側人事委員(組合三役)四名は直ちに被控訴人に面会して人事委員会における交渉の経過を説明したが、その際依願退職の途を択んだ方がよいとの意見を述べた委員もいた反面、かりに懲戒解雇が発令された場合に組合が反対闘争をするか否かは組合の大会が決することであるから、被控訴人が辞表を提出するか否かは被控訴人の自主的判断に委せるべきだとの意見を述べる委員もいて、結局被控訴人の自主的判断に委せることとし、被控訴人を残して委員全員は組合事務所に引揚げたところ、同日午後五時頃被控訴人から上司に対し退職届が提出された。以上認定の諸事実によれば、控訴人が被控訴人を懲戒解雇に処すべしとした判断は不当ということを得ず、また人事委員会において控訴人側人事委員らが組合側人事委員らに対し威嚇的または強圧的な言動をした事実も認められない(なお、前記労働協約第四八条第一項を成立に争いのない乙第一〇号証によ いうことを得ず、また人事委員会において控訴人側人事委員らが組合側人事委員らに対し威嚇的または強圧的な言動をした事実も認められない(なお、前記労働協約第四八条第一項を成立に争いのない乙第一〇号証により認め得る労働協約第四章のその他の各条文と対比するときは、右第四八条第一項は組合役員の職種変更、配置転換等の異動については予め組合の同意を得ることを定めたものであつて、組合役員の懲戒は同条項にいう異動には含まれないと解するのが相当である)が、控訴人側人事委員らが組合側人事委員らをして被控訴人に対し、短時間内に退職願を提出しないときは懲戒解雇を発令すると告げさせた結果、被控訴人に畏怖を生じさせたことは、これを認めることができる。しかし、強迫による意思表示が取り消し得べきものであるためには、強迫者において相手方に畏怖を生じさせる故意のほか、この畏怖によつて特定の意思表示をさせようとする故意を有することを必要とし、また強迫が違法であることを要するところ、控訴人側人事委員らないし控訴人は、すでに被控訴人を懲戒解雇に処することを決意していたが、組合側人事委員らの提案により、もし被控訴人が任意に退職願を提出するときは懲戒解雇を発令しないことを約したのであつて、しかも被控訴人を懲戒解雇に処することは不当でないのであるから、被控訴人の畏怖によつて退職願を提出させようとする故意を有せず、また被控訴人をして退職願を提出せしめることによつて不正の利を得ようとするものでもないから、控訴人側人事委員らが前記のように被控訴人に畏怖を生じさせた行為は強迫の故意を欠き、また違法性を帯びないものといわなければならない。 出するときは懲戒解雇を発令しないことを約したのであつて、しかも被控訴人を懲戒解雇に処することは不当でないのであるから、被控訴人の畏怖によつて退職願を提出させようとする故意を有せず、また被控訴人をして退職願を提出せしめることによつて不正の利を得ようとするものでもないから、控訴人側人事委員らが前記のように被控訴人に畏怖を生じさせた行為は強迫の故意を欠き、また違法性を帯びないものといわなければならない。したがつて、本件退職届の提出が強迫による旨の被控訴人の主張は理由がない。次に、本件退職は控訴人が依願退職という合意の形式を利用して不当労働行為意思を実現し 帯びないものといわなければならない。したがつて、本件退職届の提出が強迫による旨の被控訴人の主張は理由がない。次に、本件退職は控訴人が依願退職という合意の形式を利用して不当労働行為意思を実現した不当労働行為である旨の被控訴人の主張につき判断する。被控訴人が本件退職届提出当時組合の組合員であり、かつ執行委員であつたことは前記説示のとおりであり、原審における被控訴人本人尋問の結果によれば、被控訴人がその主張するとおりの組合およびその外部団体の役員歴を有することを認めることができ、また成立に争いのない甲第一、二号証、乙第一六号証の二および同第一七号証によれば、当時控訴人の代表取締役であつたkは、昭和三七年四月および昭和三八年四月の各春闘終了後それぞれ「職員各位」と題する社長名の告示を従業員に配布し、昭和三七年四月の告示においては従業員の争議権を認めつゝ「労使の対立は企業繁栄を阻害する要因となりかねない」として労使が協議すべきことを説き、昭和三八年四月の告示においても同様の趣旨を述べて「銀行からストという言葉を抹殺したい」「賃金を力で勝ちとろうとすることから起る労使激突、対立抗争の時代は既に過去の姿」であると説いたこと、ならびに折にふれて感想を書き綴り、これを従業員に配布した小冊子「銀杏」第二号(無日付であるが、昭和三七年中に発行されたと認められる)において「大衆の信頼を基礎として成り立つている銀行としては、取引先に不安を感じさせるような過激な行動は絶対に避けねばなりません」「私どもは、一部の人の強い自我的主張、独善的な排他的な狭量な個人主義思潮、自分の立場を守る為になされる過激な言動に引回わされて自分の立場を失うとしたら、こんな愚かな話はありません」と説き、また、その第九号(昭和三八年九月三〇日発行)において「世間には、会社に雇われな る)において「大衆の信頼を基礎として成り立つている銀行としては、取引先に不安を感じさせるような過激な行動は絶対に避けねばなりません」「私どもは、一部の人の強い自我的主張、独善的な排他的な狭量な個人主義思潮、自分の立場を守る為になされる過激な言動に引回わされて自分の立場を失うとしたら、こんな愚かな話はありません」と説き、また、その第九号(昭和三八年九月三〇日発行)において「世間には、会社に雇われな 潮、自分の立場を守る為になされる過激な言動に引回わされて自分の立場を失うとしたら、こんな愚かな話はありません」と説き、また、その第九号(昭和三八年九月三〇日発行)において「世間には、会社に雇われながら、その会社の不利益になることに骨を折る人がある。これは、チブス菌や赤痢菌の如くに、その身体から養分を受けながらその身体を倒さんとするに似る。まさに獅子身中の虫である。身体に腫物ができたら、早いうちにその根を断ち、身体の安全を計るのは当然の話である。会社でも好ましからぬことは小さいからと云つて放擲していては駄目である。全力をあげて治癒すべきである」と論じ、単なる労使協調にとどまらず、企業内部の過激派分子を積極的に排除しようとする姿勢を示すに至つたことを認めることができる。しかし同人はこれらの文書において組合の存在および従業員の争議権を明瞭に肯定しているのであつて、その他本件全証拠によつても、控訴人の取締役等が組合または組合運動に従事する者の存在そのものを否定し嫌悪するような言動を示したことを認めることはできず、かえつて原審証人gの証言によれば、控訴人は昭和三七年頃から組合に対する経費の援助をとりやめ、また非組合員たる職員が組合に毎月協力費を支払うことをとりやめるよう働きかけるなど、組合の資金面での健全化(ひも付資金の排除)をはかることに協力したにもかかわらず、組合の一部の者がこれらを控訴人の組合に対する攻撃であると解したことがあることを認めることができる。また、前記k代表取締役が「組合活動の過激な者は違反を探して首を切れ。」と放言した旨の被控訴人の主張事実については、本件全証拠によつても、これを認めることができず、更にまた、控訴人が組合活動家としての被控訴人を企業外に排除する目的で本件退職届を受理した旨の被控訴人の主張事実を認めるに足る 人の主張事実については、本件全証拠によつても、これを認めることができず、更にまた、控訴人が組合活動家としての被控訴人を企業外に排除する目的で本件退職届を受理した旨の被控訴人の主張事実を認めるに足る的確な証拠もなく、かえつて控訴人が人事委員会に被控訴人の懲戒解雇を附議したことが正当であり、また被控訴人の本件退職届の提出が控訴人の強迫によるものと称し得ないことは前記説示のとおりであるから、控訴人が本件退職届を受理したことは正当行為であつて、何ら不当労働行為を唯一の目的としたものということを得ない。 家としての被控訴人を企業外に排除する目的で本件退職届を受理した旨の被控訴人の主張事実を認めるに足る的確な証拠もなく、かえつて控訴人が人事委員会に被控訴人の懲戒解雇を附議したことが正当であり、また被控訴人の本件退職届の提出が控訴人の強迫によるものと称し得ないことは前記説示のとおりであるから、控訴人が本件退職届を受理したことは正当行為であつて、何ら不当労働行為を唯一の目的としたものということを得ない。してみると、その余の争点につき判断するまでもなく被控訴人の本訴請求は附帯控訴に伴う請求を含めてすべて理由がないから、これを棄却すべきであつて、本件控訴は理由があり、本件附帯控訴は理由がない。よつて原判決を取り消して被控訴人の従前の請求および本件附帯控訴に伴なう請求を共に棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。(裁判官福島逸雄広瀬友信大和勇美)
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