- 1 -平成27年9月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(行コ)第187号加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第113号) 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 (前注)略称は,原判決の例による。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が平成25年6月21日付けで控訴人に対してした加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,光学機械器具及びレンズの製造を主たる業とする事業所等を設立事業所(厚生年金基金が設立された適用事業所をいう。以下同じ。)とする厚生年金基金(基金)である被控訴人の設立事業所の事業主である控訴人が,事業の一部を設立事業所以外の会社に譲渡したところ,被控訴人から,上記の事業譲渡により被控訴人の加入員が減少したことを理由として,規約に基づき,加入員減少に係る一括徴収金の納入告知処分(本件納入告知処分)を受けたことから,上記規約の条項及びその根拠となる法令が憲法22条1項に違反して無効であること,上記の加入員減少が上記規約の条項の適用要件を充足しないこと,本件納入告知処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があることなどを主張して,本件納入告知処分の取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却した。これに対し,控訴人が控訴した。 - 2 - 2 関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正し,当審で付加された主張を加えるほかは原判決の事実及び理由の第2の1ないし3に記載のと - 2 - 2 関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正し,当審で付加された主張を加えるほかは原判決の事実及び理由の第2の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決の補正原判決35頁2行目の「135条5項」を「138条5項」に改める。 (2) 当審における当事者の主張ア本件納入告知処分の違憲性の有無(控訴人)本件納入告知処分がされる段階で,被控訴人は,既に代議員会で解散方針を決議し,解散に向けて現実的に準備を進めていた。そうすると,本件納入告知処分は,一括徴収関係条項を形式的に適用することにより,「継続基準方式」によって一括徴収の金額を計算して,控訴人に対し,現実には被控訴人が支給しない将来の加算部分に対応する特別掛金まで徴収して負担させる反面,被控訴人の解散時又は清算時における他の事業所の負担が控訴人の上記負担の分軽減するものである。このような結果は,控訴人と他の設立事業所間の公平を著しく害し,極めて不平等なものであって,本件納入告知処分は,憲法14条1項に違反する違憲的な法令等の適用に該当するものであるから,直ちに取り消されるべきである。 (被控訴人)被控訴人において,何らの法律上・規約上の根拠もないのに,いまだ法的に確定していない「加算部分の支給停止」の効果を織り込んだ納入告知処分を行うことなどは到底できない。控訴人の主張は,実行行為時点の法令・規約を厳格に適用して画一的になされるべき行政処分の本質と全く相容れないものであり,採用の余地はない。 また,本件加入員減少により他の設立事業所の負担が増加することは厳然たる事実であるから,本件納入告知処分は,控訴人と他の設立事業所間の公平を害し,不平等なものではない。 - 3 はない。 また,本件加入員減少により他の設立事業所の負担が増加することは厳然たる事実であるから,本件納入告知処分は,控訴人と他の設立事業所間の公平を害し,不平等なものではない。 - 3 -イ本件規約99条の3ないしその適用の違法性の有無(控訴人)旧厚年法138条5項は,ある設立事務所の減少に伴い他の設立事務所に係る掛金が増加することになるときは,当該増加する額に相当する額として厚生労働省令(旧基金規則32の3の3)で定める計算方法のうち規約で定めるものにより算定した額を,当該減少に係る設立事務所の事業主から掛金として一括徴収する旨規定している。そこで定められる計算方法は,あくまでも上記「増加する額に相当する額」として合理的なものでなければならないことは当然であるところ,被控訴人は,本件規約99条の3において,旧基金規則32条の3の3が定める計算方法のうち,いわゆる「継続基準方式」による計算方法を選択している。しかし,解散方針決定後の被控訴人において,「継続基準方式」を定めた本件規約99条の3が,上記合理性を失っていることは明らかであるから,本件納入告知処分をした当時,本件規約99条の3は,当該規約の条項自体,又は少なくとも同条項を本件納入告知処分に適用する限りで,法の趣旨に反するものであって違法,無効である。 (被控訴人)本件加入員減少が発生した時点において本件規約99条の3が有効に存在していた以上,被控訴人が同条を適用して控訴人から徴収すべき特別掛金を計算すべき状況にあったことは明らかである。 ウ本件条項1号の適用要件充足の有無(控訴人)本件条項1号等は従業員が「通常の退職」をした場合には一括徴収の対象としていないから,本件条項1号を適用するには,事業譲渡と並列して記載されている「他の設立事業所以外 要件充足の有無(控訴人)本件条項1号等は従業員が「通常の退職」をした場合には一括徴収の対象としていないから,本件条項1号を適用するには,事業譲渡と並列して記載されている「他の設立事業所以外の事業所に転籍させる」場合と同視される程度の因果関係が要求されていると解釈されるべきである。しかし,本件退職者らは自由意思でA社に再就職したにすぎず,控訴人が移籍・転籍させたのと同視できるような因果関係は存在しない。そうすると,本件加入員減少は,本件条項1号の適用要件を充足しない。 - 4 -(被控訴人)控訴人の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,当審で付加された主張について判断するほかは,原判決の事実及び理由の第3の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決の補正ア原判決13頁13行目及び20頁24行目の各「135条5項」をいずれも「138条5項」に改める。 イ原判決15頁25行目の「(1)カ」を「(2)キ」に改める。 ウ原判決16頁8行目の「甲2」の次に「,甲3の2」を加える。 エ原判決25頁18行目の「そもそも」から26頁2行目末尾までを削除する。 オ原判決27頁5行目の「憲法」の次に「22条1項」を加える。 カ原判決29頁18行目の「原告」を「被控訴人」に改める。 キ原判決31頁2行目の「(2)カ」を「(2)キ」に改める。 (2) 当審における当事者の主張に対する判断ア本件納入告知処分の違憲性の有無控訴人は,本件納入告知処分について,その結果が控訴人と他の設立事業所間の公平を著しく害し,極めて不平等なものであるから,憲法14条1項に違反する違憲的な法令等の適用に該当する旨主 の違憲性の有無控訴人は,本件納入告知処分について,その結果が控訴人と他の設立事業所間の公平を著しく害し,極めて不平等なものであるから,憲法14条1項に違反する違憲的な法令等の適用に該当する旨主張する。 しかし,原判決の事実及び理由の第3の4(1)イ及びウで判示されているように,旧厚年法138条5項及び旧基金規則32条の3の3並びにこれらに基づく本件規約99条の3が有効に存在していた以上,本件規約に拘束される被控訴人が,本件納入告知処分をするに際し,本件規約99条の3の規定する「継続基準方式」によって特別掛金を計算したことが不合理であったと認めることはできないし,事情変更を理由に本件加入員減少に伴う特別掛金の計算方法を変更して納入告知処分を行 - 5 -うということは,有効であった本件規約の効力を後の事情によって遡及的に否定することにほかならず,むしろ本件規約の適用に関する法的安定性や設立事業所間の公平性を害するものというべきである。そうすると,被控訴人が「継続基準方式」によって特別掛金を計算して本件納入告知処分を行ったことが,控訴人と他の設立事務所間の負担の公平を著しく害するものとまでは認められず,本件納入告知処分が,憲法14条1項に違反する違憲的な法令等の適用に該当する旨の控訴人の主張は採用することができない。 イ本件規約99条の3ないしその適用の違法性の有無控訴人は,解散方針決定後の被控訴人において,「継続基準方式」を定めた本件規約99条の3が合理性を失っていることは明らかであるから,本件納入告知処分をした当時,本件規約99条の3は,当該規約の条項自体,又は少なくとも同条項を本件納入告知処分に適用する限りで,法の趣旨に反するものであって違法,無効である旨主張する。 しかし,平成25年2月14日の代議員会で被控訴 99条の3は,当該規約の条項自体,又は少なくとも同条項を本件納入告知処分に適用する限りで,法の趣旨に反するものであって違法,無効である旨主張する。 しかし,平成25年2月14日の代議員会で被控訴人の解散の方針が議決された(認定事実(3)ウ)からといって,規約の変更手続を経ることなく,当然に本件規約99条の3がその効力を失うと解することはできないし,同規約が有効である以上,これに拘束される被控訴人が,同規約の規定する「継続基準方式」によって特別掛金を計算したことが不合理であると認めることもできないから,控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ本件条項1号の適用要件充足の有無控訴人は,本件条項1号を適用するには,事業譲渡と並列して記載されている「他の設立事業所以外の事業所に転籍させる」場合と同視される程度の因果関係が要求されていると解釈されるべきであるが,本件退職者らは自由意思でA社に再就職したにすぎず,控訴人が移籍・転籍させたのと同視できるような因果関係は存在しないと主張する。 しかし,本件条項1号の文理によれば,その適用要件を充足するためには,事業 - 6 -譲渡によって加入員減少という事実が発生すれば足りると解されるところ,本件加入員減少は,本件退職者らが本件事業譲渡に伴ってA社に移籍することにより発生したものであることは,原判決の事実及び理由の第3の3(1)ウで判示されているとおりであるから,本件加入員減少が本件条項1号の適用要件を充足することは明らかというべきであって,これに反する控訴人の上記主張は採用することができない。 2 以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部 主文 以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第20民事部 裁判長裁判官山田俊雄 裁判官納谷肇 裁判官内田博久
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