- 1 - 令和3年6月30日 東京地方裁判所刑事第13部宣告 令和2年特 3100号 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反 被告事件 主 文 被告人株式会社丙を罰金2億5000万円に処する。 被告人Eを懲役2年に,被告人F及び被告人Gをそれぞれ懲役1年 6月に処する。 被告人E,被告人F及び被告人Gに対し,この裁判が確定した日か ら3年間それぞれその刑の執行を猶予する。 理 由 (罪となるべき事実) 被告人株式会社丙(以下「被告会社」という。)は医薬品の卸売業等を営む事業 者であり,被告人Eは被告会社執行役員営業本部病院統轄部長ないし常務執行役員 営業本部病院統轄部長,被告人Fは同部副部長,被告人Gは同部広域病院課統轄課 長の職にあり,被告会社の従業者として独立行政法人が実施する医薬品購入契約に 係る入札及び価格交渉等に関する業務に従事していたものであるが 第1 被告人E及び被告人Gは,前記同様の事業を営む事業者である乙株式会社, 甲株式会社他1社(以下,被告会社を合わせて「被告会社等4社」という。) にそれぞれ所属して被告人Eらと同様の業務に従事していた者らと共に,それ ぞれその所属する被告会社等4社の他の従業者らと共謀の上,それぞれその所 属する被告会社等4社の業務に関し,平成28年6月上旬頃,東京都千代田区 (住所省略)所在の貸会議室等において,面談等の方法により,同年5月27 日に独立行政法人が製薬会社及び用法から区分した医薬品群ごとに一般競争入 札を実施してそれぞれ受注事業者を決定する旨公告した独立行政法人が運営す る57病院における医薬品購入契約について,被告会社等4社それぞれの受注 予定比率を設定し,同比率に合うよう前記医薬品群ごとに受注予定事業者を決 - 2 - 定するとともに当該受注予定事業者 営す る57病院における医薬品購入契約について,被告会社等4社それぞれの受注 予定比率を設定し,同比率に合うよう前記医薬品群ごとに受注予定事業者を決 - 2 - 定するとともに当該受注予定事業者が受注できるような価格で入札を行うこと などを合意した上,同合意に従って,前記契約について前記医薬品群ごとにそ れぞれ受注予定事業者を決定するなどし 第2 被告人E,被告人F及び被告人Gは,被告会社等4社にそれぞれ所属して被 告人Eらと同様の業務に従事していた者らと共に,それぞれその所属する被告 会社等4社の他の従業者らと共謀の上,それぞれその所属する被告会社等4社 の業務に関し,平成30年6月上旬頃,前記貸会議室等において,面談等の方 法により,同年5月25日に独立行政法人が製薬会社から区分した医薬品群ご とに一般競争入札を実施してそれぞれ受注事業者を決定する旨公告した独立行 政法人が運営する57病院における医薬品購入契約について,前記同様の合意 をした上,同合意に従って,前記契約について前記医薬品群ごとにそれぞれ受 注予定事業者を決定するなどし もってそれぞれ被告会社等4社が共同して,前記各契約の受注に関し,相互にその 事業活動を拘束し,遂行することにより,公共の利益に反して,前記各契約の受注 に係る取引分野における競争を実質的に制限した。 (量刑の理由) 1 本件は,医薬品卸売業大手である被告会社等4社の営業担当幹部職員らが,2 回にわたって,独立行政法人が入札を実施して受注事業者を決定する旨公告した 傘下病院の医薬品購入契約について,上記各社の受注予定比率を設定するなどし て受注調整を行い,不当な取引制限をしたという事案である。 2 本件各医薬品購入契約は,全国各地に所在する57病院が使用する2年分の 医薬品購入にかかるものであるところ,入札単位となる医薬品 などし て受注調整を行い,不当な取引制限をしたという事案である。 2 本件各医薬品購入契約は,全国各地に所在する57病院が使用する2年分の 医薬品購入にかかるものであるところ,入札単位となる医薬品群は合計で35 0余りと多数に上り,落札価格の合計も1400億円を超える大規模なもので あった。また,国民皆保険制度の下,医療機関が診療報酬の支払を受けるに当 たり,医薬品の薬剤料については厚生労働大臣が定める価格である薬価に基づ いて算出されるところ,本件各受注調整行為は,医療機関に対する販売価格 - 3 - (納入価)を高止まりさせるものであり,2年ごとに市場実勢価格等を踏まえ てなされる薬価の改定にも影響を及ぼし得るものであった。 以上からすると,医薬品卸売業におけるもともとの利益率が低く,本件各医 薬品購入契約における被告会社らの利益率との差がせいぜい数パーセントであ ることを踏まえても,本件各受注調整行為は,国民生活に広範な影響を及ぼす 悪質かつ重大なものであるといえる。 被告会社等4社の担当者は,入札に際し,複数回にわたり会合を開いて協議 を重ね,各社の受注予定比率等について合意した上,入札価格等の情報を交換 し合うなどして,各受注予定事業者が確実に受注できるように調整していた。 実際に,事前に合意された各受注予定事業者がほぼそのとおり落札するに至っ ていることからしても,本件各受注調整行為は事業活動の相互拘束性が強く, 公正かつ自由な競争を大きく阻害するものであったといえる。 加えて,被告会社等4社においては,平成15年に被告会社を含む医薬品 卸売業者9社が,受注調整行為について課徴金納付命令を受けているにもかか わらず,それ以降も受注調整行為が繰り返し行われていたことにかんがみれば, 本件各受注調整行為はいずれも被告会社等4社の根深い談合体質に基 9社が,受注調整行為について課徴金納付命令を受けているにもかか わらず,それ以降も受注調整行為が繰り返し行われていたことにかんがみれば, 本件各受注調整行為はいずれも被告会社等4社の根深い談合体質に基づいてな されたといえる。 3 被告人ら3名の個別の事情についてみると,被告人Eは本件各入札の業務を統 括する最終責任者として,それぞれ方針を決定し,担当者に指示をするなど,本 件各受注調整行為を主導する立場にあった。また,被告人Fは,平成30年の入 札において,被告人Eを補佐するとともに,被告人Gらを指揮し,自身も他社の 担当者らと協議を行うなど,重要な役割を果たしている。被告人Gも,被告人E, Fの指示を受けながら,本件各入札において,他社の担当者らと協議を行うなど, 本件各受注調整行為に深く関与していた。他方で,被告人3名は,いずれも,従 前から会社内において受注調整行為が繰り返されていた中で,自ら本件各受注調 整行為をしないと決断するのは容易ではなかったことも窺われる。 - 4 - 4 以上に加えて,被告会社は,本件発覚後,会社として,その原因を分析し,具 体的な再発防止策を策定・実施するとともに,公判廷に代表取締役が出廷し,二 度と本件のような行為が繰り返されることがないように対応すると誓っている。 また,被告人3名は,いずれも,今まで企業人として真面目に働いてきており, 本件で個人的な利得を得たわけではなく,本件が発覚した後は,公正取引委員会 や検察庁による捜査等に協力し,捜査・公判を通じて終始反省の態度を示してい る。 5 そこで,被告会社に対しては主文の罰金刑に処し,被告人ら3名に対しては, それぞれ主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予することが相当と判断した。 (求刑-被告会社について罰金3億円,被告人Eについて懲役2年,被告人F及び 被告 文の罰金刑に処し,被告人ら3名に対しては, それぞれ主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予することが相当と判断した。 (求刑-被告会社について罰金3億円,被告人Eについて懲役2年,被告人F及び 被告人Gについていずれも懲役1年6月) 令和3年7月5日 東京地方裁判所刑事第13部 裁判長裁判官 平 出 喜 一 裁判官 須 田 雄 一 裁判官 赤 瀬 柚 紀
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