主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役三年六月に処する。 原審における未決勾留日数中五〇日を右刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人赤松幸夫、同田中俊夫及び同霜鳥敦が連名で提出した控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官宇野博提出の答弁書に、それぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。 第一事実誤認の主張について所論は、要するに、被告人は、本件の共犯者とされているAが株式会社B銀行C支店長作成名義の質権設定承諾書を偽造、行使することを認識していなかったから、原判示第二の有印私文書偽造、同行使については無罪であり、同第一の詐欺については、右の認識がなかったことにより被告人の理解していた欺罔行為とAが実行した実際のそれとか食い違い事実の錯誤があるので、訴因変更のない限り無罪であるから、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。 一そこで検討すると、関係証拠によれば、本件の経過としておおむね原判示のとおりの事実が認められ、その概要は以下のとおりである。 1 被告人は、昭和六三年四月一一日株式会社B銀行C支店に勤務して得意先を担当していたAからの依頼で、被告人が代表取締役をしていたD株式会社においてノンバンクの株式会社Eから一〇億円の融資を受け、これを同支店に預金(いわゆる協力預金)した。この融資については、担保として右預金にEのために質権を設定することになっていたが、Aは、質権設定手続きをせずにC支店長作成名義の質権設定承諾書を偽造し、Eにこれを交付した(以下、このようにノンバンクから協力預金の資金名目で融資を受けるに際し、右預金にノンバンクのために質権を設定するとしながら、これを行わずに質権設定承諾書を偽造、行使する を偽造し、Eにこれを交付した(以下、このようにノンバンクから協力預金の資金名目で融資を受けるに際し、右預金にノンバンクのために質権を設定するとしながら、これを行わずに質権設定承諾書を偽造、行使する方法を「不正融資」という。不正融資金は一応は協力預金に当てられるものの、その後間もなくノンバンクに内密で解約され、他の用途に費消されるのが常態であった。)。ただ、被告人は、その段階ではAから融資金を一定期間銀行に預金した後はノンバンクヘの返済期限まで被告人が運用することができると聞かされていただけであり、融資の実際の手続きは主としてAが行っていたことなどもあって、右預金かEに対する担保に提供されるものであり、かつこれに関し質権設定承諾書の偽造、行使が行われたことまでは知らなかった。この融資が被告人の関与した最初の不正融資であり、被告人は、同月一八日この融資による資金をAから紹介された株の仕手筋の関係者であるというFことFに貸し付けた。 2 被告人は、その後、Dのほか、自らが代表取締役となっていたコンピューターソフトの情報処理等を営業目的とする株式会社G及び金融を営業目的とするH株式会社等の名義でノンバンク数社から、Aに手続きを任せて繰り返し不正融資を受け、本来はその担保となっているはずの協力預金を解約し、株式投資の資金としたりHの貸付資金として運用した。 3 ところが、平成二年一一月ころHが不動産仲介業者のIに貸し付けていた六〇億円と、前記FことFに貸し付けていた三〇億円がいずれも焦げ付き、この貸付金の資金源であるEからの不正融資の返済期限が迫っていたところ、Eでは右合計九〇億円の返済期限の延期等には応じない意向であったため、被告人及びAは、その返済のための資金繰りに窮することとなった。そして被告人は、Aから、Eへの返済のためにJ株式会社 いたところ、Eでは右合計九〇億円の返済期限の延期等には応じない意向であったため、被告人及びAは、その返済のための資金繰りに窮することとなった。そして被告人は、Aから、Eへの返済のためにJ株式会社から九〇億円の融資を受けるにあたり、仲介者に二億円の現金を支払うほかHの経営権譲渡に関する書類等を渡すことを求められたことから、その理由を問い質したところ、これまでのノンバンクからの融資がその担保とされる協力預金についてC支店長名義の質権設定承諾書を偽造してノンバンクに交付するという不正な方法によるものであって、Eへ九〇億円を返済しないとこのような不正が発覚し、被告人も懲役七年になる旨を告げられた。被告人は、これを聞いて衝撃を受けたが、結局、Jから同様の方法で融資を受けることとし、同年一一月二二日JからH名義で九〇億円の不正融資を受けた。 4 Aは、右Jからの不正融資の返済のために、原判示第一記載のとおり、平成三年三月E担当者を欺罔してGに対する不正融資の方法で約五〇億円を騙取し、かつ同第二記載のとおり、G名義の五〇億円の通知預金に関しC支店長名義の質権設定承諾書を偽造、行使する行為を実行したが、これは前記認定の経過から不正融資の実体を知った被告人の了解の下に行われたものである。 以上認定の事実によれば、被告人が原判示第二の質権設定承諾書の偽造、行使を認識し、Aと共謀のうえ、これを実行したことは明らかであり、かつ同第一の詐欺についても欺罔行為についての事実の錯誤はなかったものというべきである。 二所論は、被告人が平成二年一一月にAから聞いたことにより認識した不正融資の方法等は、融資時には融資金を預金してこれをノンバンクの担保とするが、その後何らかの方法で右預金をノンバンクの承諾を得ることなく解約等して払戻を受けるというものであって、担保と り認識した不正融資の方法等は、融資時には融資金を預金してこれをノンバンクの担保とするが、その後何らかの方法で右預金をノンバンクの承諾を得ることなく解約等して払戻を受けるというものであって、担保とされた預金に関しC支店長作成名義の質権設定承諾書を偽造しこれをノンバンクに行使することまでは認識しておらず、その認識があったとする被告人の平成四年二月一〇日付検察官調書中の供述は信用できず、被告人の原審供述をこそ信用すべきである、と主張する。 しかし、以下に述べる諸点からすると、所論は採用することができず、所論に符合する被告人の公判供述(当審供述を含む。)も、信用することはできない。 1 被告人の原審供述によっても、平成二年一一月にAから不正融資に関する説明があったとき、預金に担保権が設定されるとの話も含まれていたのであり、そうだとすると、被告人は担保として拘束されているはずの預金が何故ノンバンクに無断で解約できるのかを知ろうとするのが当然と思われ、このような事態に立ちいたった後もその間のからくりを知ろうとせず、具体的処理をAに一任したまま、さらに不正融資を重ねて本件にいたるということは不自然である。しかも、「1」被告人は、Gの代表取締役としてコンピューターソフトの情報処理会社を経営する傍ら、Hの代表取締役となって金融会社を経営するようになってからは、資金調達、融資等の会社運営の実務はA及び同社営業部長のKに委ねていたとはいえ、Hで執務して経営管理をしていたこと、「2」被告人の原審供述中にも、不正融資を受ける過程で(前記検察官調書によれば平成二年三月二三日の不正融資の少し前ころ。 原審供述では時期不明)、Aから質権設定承諾書について説明を受けたことがあるとする部分があること、「3」被告人は、Kから提出を受けて閲覧していた週間業務報告のうち平成 二三日の不正融資の少し前ころ。 原審供述では時期不明)、Aから質権設定承諾書について説明を受けたことがあるとする部分があること、「3」被告人は、Kから提出を受けて閲覧していた週間業務報告のうち平成二年七月一六日から同月二〇日の間のもの及び同月二三日から同月二七日の間のものにIに対する融資案件に関連して「預担、六〇オク、購入資金六〇オク、打合せ」と記載された部分に下線を引き、「預担」と記載された部分から矢印を引いて「出来れば方法考えてやろう。」などとコメントを加えていたことなどからすると、被告人は、平成二年一一月以前から不正融資については協力預金に質権が設定されていることを窺知していた疑いも強く、そうだとすると、前記の不自然性は一層強まるものである。 2 平成二年一一月Jから九〇億円の不正融資を受ける際の被告人の挙動は、その手続きをAに一任していたとはいえず、むしろ被告人が不正融資の方法を知っていたことを窺わせるものである。 すなわち、それまで不正融資の手続きをAに任せていた被告人は、平成二年一一月一九日Jの融資担当者であるLからその面前で九〇億円の融資のために預金担保差入証やC支店に対する質権設定承諾依頼書等も含まれている各書類の趣旨や意味内容の説明を受け、Lが持参した書類の内容を一枚一枚確かめながら、自分自身でHの社判と代表印を必要箇所に押印し、手形貸付基本約定書の連帯保証人欄に自ら署名押印しており(甲三五及び前記被告人の検察官調書)、被告人のこのような挙動は、被告人が不正融資の方法についてAに一任することなく強い関心を寄せていたことを示しており、不正融資の方法を知っていたことを推認させるものというべきである。 3 Aは、被告人に不正融資の方法を説明したと供述しており、右供述自体は信用するに足るものである。 ちなみに、Aは、I しており、不正融資の方法を知っていたことを推認させるものというべきである。 3 Aは、被告人に不正融資の方法を説明したと供述しており、右供述自体は信用するに足るものである。 ちなみに、Aは、Iに対する六〇億円の融資から一〇億円を被告人に内緒で流用したり、不正融資による資金を被告人の知らないうちに別の用途に使用したり、平成三年六月の五〇億円と五〇億円の合計一〇〇億円の協力預金を被告人に無断で解約して使用したりしていることが認められ、共犯者が自己の責任を軽減しようとして他の共犯者に責任を転嫁する供述をすることもままあることをも考慮すると、Aの供述の信用性については慎重な検討が必要であると思われる。しかし、質権設定承諾書にC支店長の決済を受けずに自分が支店長印を押すと被告人に説明した旨のAの原審供述は、原判示のように、不正融資金の返済に困却していた平成二年一一月の段階のものとしてみる限り、Aが質権設定承諾書の偽造、行使という不正融資の方法を被告人に対して秘匿しておく理由はなく、むしろ被告人を自己の意思に従わせるにはこれを告げることが有効であったと思われることなどから信用できるというべきである。 以上の諸点に加えて、通知預金について質権が設定されることを認識した時点に関する被告人の原審及び当審における供述があいまいで必ずしも一貫していないことをも考慮すると、原判示のように、被告人は平成二年一一月にJから九〇億円の融資を受けるに当たり不正融資の仕組みを認識していたと認めるのが相当であり、所論は採用することはできない。なお、その他の所論を検討してみても、右原判決の事実認定に誤りがあるとは認められず、論旨は理由がない。 第二法令適用の誤りの主張について所論は、要するに、原判決は、原判示第一の詐欺と同第二の有印私文書偽造、同行使を併合罪と も、右原判決の事実認定に誤りがあるとは認められず、論旨は理由がない。 第二法令適用の誤りの主張について所論は、要するに、原判決は、原判示第一の詐欺と同第二の有印私文書偽造、同行使を併合罪として処理しているが、実質的にみるならば、右有印私文書偽造、同行使、詐欺は密接不可分で順次手段結果の関係にあるからそれらは牽連犯として処断されるべきであり、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある、というのである。 そこで検討すると、一般的には有印私文書偽造、同行使、詐欺との間には順次手段結果の牽連関係があると認められるが、本件の事実関係においては、欺罔されたEの担当者からC支店のG名義の普通預金口座に約五〇億円が振込送金され、Aが同普通預金口座から五〇億円を同社名義の通知預金に振り替えた後に同人においてC支店長名義の質権設定承諾書を偽造してこれをEの担当者であるMに交付して行使しており、詐欺が既遂に達してから偽造質権設定承諾書を行使していることが認められるから、偽造有印私文書行使が詐欺の手段となっているとはいい難く、両者を牽連犯とするのは相当でない。 <要旨>ところで、一般に銀行預金を担保として第三者から融資を受ける場合には、当該第三者に質権設定承諾書を</要旨>交付し、その後融資金の交付を受けるのが通常予想される形態と考えられる。ところが、本件においては、融資金が銀行預金の原資となっている関係で、まず融資金が入金されて預金に当てられてこれに関する質権設定承諾書が作成され、それが融資先に交付されているのである。しかし、元々(偽造)質権設定承諾書の交付は、融資金の入金(騙取)につき必要不可欠なものとして、これと同時的、一体的に行われることが予想されているのであって、両者の先後関係は必ずしも重要とは思われないところである。 造)質権設定承諾書の交付は、融資金の入金(騙取)につき必要不可欠なものとして、これと同時的、一体的に行われることが予想されているのであって、両者の先後関係は必ずしも重要とは思われないところである。事実、本件と同様の不正融資事件において、事務処理の都合等から融資金の入金前に預金通帳等を作成して質権設定承諾書を偽造し、これを交付するのと引き換えに不正融資金が振込入金された事例もあることは当裁判所に顕著な事実であり、かつその場合には、当然のことながら、有印私文書偽造、同行使、詐欺とは順次手段結果の関係にあり結局一罪であるとして処断されているのである。そして、右の場合と偶々その担当者の事務処理の都合等から偽造質権設定承諾書の交付と振込入金との時間的先後が逆になった本件のような場合とで罪数処理に関する取り扱いを異にすべき合理的な理由を見い出し難いことからすると、偽造有印私文書行使罪と詐欺罪との法益面での関連性が必ずしも強くないことを考慮に入れても、両者は包括一罪として処断するのが相当と解される。そうすると、原判決には、偽造有印私文書行使罪と詐欺罪を併合罪として処理したことについて法令適用の誤りがあり、右誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。したがって、控訴趣意中量刑不当の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。 第三破棄自判よって、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により、直ちに当裁判所において自判すべきものと認め、さらに次のとおり判決する。 原判決が認定した罪となるべき事実に、原判決と同一の罰条を適用し、原判示第一の詐欺と同第二の偽造有印私文書行使とは包括一罪の関係にあり、同第二の有印私文書偽造と同行使とは刑法五四条一項後段により一罪として処断すべき場合であるから、結局以上を一罪 の罰条を適用し、原判示第一の詐欺と同第二の偽造有印私文書行使とは包括一罪の関係にあり、同第二の有印私文書偽造と同行使とは刑法五四条一項後段により一罪として処断すべき場合であるから、結局以上を一罪として同法一〇条により最も重い詐欺罪の刑(但し、短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で処断することとし、その刑期の範囲内で被告人を懲役三年六月に処し、同法二一条を適用して、原審における未決勾留日数中五〇日を右刑に算入することとする。 第四量刑の理由本件は、被告人が、Aと共謀のうえ、Eから、預金担保による融資名下に金員を騙取しようと企て、G名義でEから借り受ける金員を、いったんはC支店にG名義で通知預金にするものの、これを解約して費消する意図であって、Eのために右預金に質権を設定する意思も、その質権設定についてC支店長の承諾手続きをとる意思もないのに、平成三年三月一八日ころ、Aにおいて、E本店融資第二部融資第四課のMに対し、「Gが五〇億円協力預金してくれることになった。C支店に通知預金して担保設定するので融資をお願いしたい。」旨嘘を言ってGに対する融資を申し込み、Mを介してE取締役本店長Nに、貸付金を資金としてGからC支店に預け入れられる五〇億円の通知預金にEのため質権の設定及びこれに対するC支店長の承諾がされ、貸付金の回収を確実にすることが出来るものと誤信させ、よって、同月二五日、Eの係員に、B銀行O支店のEの当座預金口座からC支店のGの普通預金口座に、五〇億円から利息及び振込手数料を差し引いた四九億五〇五八万一七八〇円を振込送金させてこれを騙取し(原判示第一の事実)、同日、C支店店舗内で、Aにおいて、行使の目的で、ほしいままに、質権の対象をC支店のG名義の金額五〇億円の通知預金とし、質権設定者を同社、質権者をEとする質権設定 てこれを騙取し(原判示第一の事実)、同日、C支店店舗内で、Aにおいて、行使の目的で、ほしいままに、質権の対象をC支店のG名義の金額五〇億円の通知預金とし、質権設定者を同社、質権者をEとする質権設定承諾書にC支店長の記名印等を冒捺し、もって、C支店長名義の質権設定承諾書一通を偽造し、同日、同所において、Mに対し、右偽造に係る質権設定承諾書一通を真正に成立したもののように装って交付し行使した(同第二の事実)、という事案である。 その動機は、前記のとおり、金融業を営むHの貸付金の資金源などとしてこれまでにもノンバンクから不正融資を繰り返し受けてきた被告人が、貸付金が焦げ付いたために融資金九〇億円の返済資金に窮し、Aからこれまでの融資が不正であることを明確に告げられた後にも、不正融資の返済のためにJから九〇億円のさらなる不正融資を受け、今度はその返済のために本件の約五〇億円の不正融資を企てたというのであって、元を質せば企業の経営者として杜撰な借入及び融資管理に端を発し、直接的には不正融資の隠蔽糊塗ということにあり、安易かつ自己中心的であって酌量すべき事情に乏しい。 犯行の態様は、大手都市銀行のB銀行C支店支店長代理のAとともに、銀行に寄せられる高い信頼を悪用し、約五〇億円を騙取し、それに伴いC支店長名義の質権設定承諾書を偽造、行使したもので、都市銀行に対する信頼を逆手にとった計画的で巧妙な犯行といわざるを得ない。EのMらが本件の偽造に係る質権設定承諾書のC支店長の記名印の後ろに押された押切印を見て、一時怪訝に思ったものの、Aの言辞に惑わされ、これを正規なものと取り扱った事実はあるものの、それまでの取引をも踏まえた都市銀行及び銀行員に対する信頼の大きさからいえば、これを敢えて取り上げるまでの被害者側の落ち度とするのは酷に過ぎるというべきであ を正規なものと取り扱った事実はあるものの、それまでの取引をも踏まえた都市銀行及び銀行員に対する信頼の大きさからいえば、これを敢えて取り上げるまでの被害者側の落ち度とするのは酷に過ぎるというべきである。その被害額も約五〇億円ともとより巨額であり、その騙取金は、Aの多数の不正融資の資金繰りに組み込まれて他に流出しているが、同時に他から約五〇億円流入することによりJからの融資金の返済に充てられていることからすると、実質は被告人の経営するHの利得するところといえる。この被害については、B銀行が従業員の不法行為であることなどを考慮してEに肩代わり弁済し、被告人がB銀行にHの貸付金債権、株式等を譲渡担保として差し入れるなどしているが、これら提供したものは焦げ付いている貸付金債権等であって、B銀行側では被害回復にはほど遠いとみている。 そして、本件は、他の一連の銀行員による不正融資事件と相まって都市銀行に対する社会一般の信用を失墜させ、その社会的影響も大きかったのであり、これらの事情によれば、被告人の罪責は重いものがあるといわざるを得ない。 他方、本件犯行にいたる経過には、銀行員であるAを信頼して不正融資と気付かないままノンバンクから不正融資を受けて運用を始めたところ、後に不正融資であってこれを返済しないと長期間服役することになるなどとAに告げられ、Aの提案するJからの九〇億円の不正融資を受けて本件にいたるなど、Aに振り回され巻き込まれた面もあること、その実行行為の主要部分は、Aがほとんどすべて行っており、銀行員であるAがいなければ実行不可能ともいいうるものであること、さらに本件はもともとAが企図し長期間多方面で行ってきた多数の不正融資の一環であることが窺われること、Aに長期間一連の不正融資を行うことを可能にしたC支店の業務監視体制に問題があり ものであること、さらに本件はもともとAが企図し長期間多方面で行ってきた多数の不正融資の一環であることが窺われること、Aに長期間一連の不正融資を行うことを可能にしたC支店の業務監視体制に問題があり、そのことが被害を肩代わりしたB銀行の被告人に対する民事上の求償額に影響を及ぼすであろうこと、当時B銀行等の都市銀行が業績拡大を重視する経営方針であったことが協力預金などを生み出し不正融資を行わせる遠因となったことは否めないこと、被告人は本件を反省し、原判決当時B銀行に対して前記譲渡担保を差し入れるなどして実質的な被害弁償を図ろうとしたうえ、原判決後にはHの貸付金債権の担保となっていた不動産を売却する努力を重ねた結果、国土利用計画法上の都知事の不勧告通知を受理後すみやかに五億三〇〇〇万円で売買し、その売買代金から特別土地保有税等の支払に充てた残金四億七〇〇〇万円の全額をB銀行に支払って現実に一部の被害弁償をしたこと、被告人には交通事故による罰金前科一犯以外に前科がなく、これまで真面目に社会生活を営んできたこと、未成年の子供二人を養育している家庭の事情などの被告人に有利な諸事情も認められる。 これらを十分考慮して主文のとおり量刑した次第である。 よって、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官小林充裁判官中野保昭裁判官小川正明)
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