【DRY-RUN】主 文 一 原判決中控訴人(附帯被控訴人)敗訴の部分を取り消す。 被控訴人(附帯控訴人)らの請求をいずれも棄却する。 二 被控訴人(附帯控訴人)らの附帯控訴をいずれも棄却する。 三 訴訟費用は、
主文 一原判決中控訴人(附帯被控訴人)敗訴の部分を取り消す。 被控訴人(附帯控訴人)らの請求をいずれも棄却する。 二被控訴人(附帯控訴人)らの附帯控訴をいずれも棄却する。 三訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人(附帯控訴人)らの負担とする。 事実 第一当事者の求めた判決(以下においては控訴人(附帯被控訴人)を「控訴人」と、被控訴人(附帯控訴人)らを「被控訴人ら」と表示する。)一控訴人 1 控訴につき主文第一、第三項同旨 2 附帯控訴につき第一次的に附帯控訴却下、第二次的に主文第二、第三項同旨二被控訴人ら 1 控訴につき控訴棄却 2 附帯控訴につき(一) 原判決を次のとおり変更する。 被控訴人らが控訴人の村山工場を就労場所とする機械工の地位にあることを確認する。 控訴人は、被控訴人らに対し、各金三六〇万円及びこれに対する昭和六〇年八月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。 (二) 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。 (三) 仮執行の宣言第二当事者の主張次に付加するほか、原判決の事実摘示と同一である(但し、原判決一五枚目裏一〇行目の「例え」を「たとえ」に改める。)から、これを引用する。 一控訴人の主張 1 本件訴は不適法である。 村山工場には被控訴人らが就労することのできる機械工の仕事がないことは原審で主張したとおりであるが、原判決のように被控訴人らが配転先で就労しなくてもよいとすると、被控訴人らには就労すべき職場がないことになる。また、被控訴人らは、現実には本件配転命令に服し配転先で就労しているのであるから、控訴人との間には、救済を必要とする程度の権利利益の侵害をめぐる実質的な紛争が存在しない。したがつて、本件訴は不適法というべきである。 2 控訴人と被控訴人らとの雇用契 先で就労しているのであるから、控訴人との間には、救済を必要とする程度の権利利益の侵害をめぐる実質的な紛争が存在しない。したがつて、本件訴は不適法というべきである。 2 控訴人と被控訴人らとの雇用契約はいわゆる職種特定契約ではない。 職種特定契約とは、使用者が労働者を特定の職種以外の仕事には絶対に就労させないことを約する契約であり、もし使用者の業務上の都合により労働者を就労させるべき当該特定職種の仕事がなくなれば雇用関係を終了させる意思をもつて締結したものでなければならない。被控訴人らのように、単に当該職種の募集に応じて採用され、長期間その職種で就労してきたというだけで右の職種特定契約が成立するものではない。しかも、控訴人の就業規則四八条には、「業務上必要があるときは、従業員に対し、職種変更又は勤務地変更を命ずることができる。従業員は、正当な理由がなければ前項の命令を拒むことができない。」との規定があり、これが被控訴人らにも適用される以上、右のような職種特定契約が成立する余地はない。 3 本件配転命令は権利の濫用には当たらない。 村山工場で被控訴人らと同時期に職種変更の対象とされた機械工は、被控訴人らを含め合計二二四名に達した。他方、右職種変更に伴い、その後に村山工場及び周辺の荻窪、三鷹の各工場に在籍することになる機械工の数は三〇五名になると推定されたが、職種変更対象機械工二二四名の中から被控訴人らについてのみ他の機械工職場への配置を検討するなどということはもとよりできないことであつたし、また、右二二四名全員について在籍機械工三〇五名と経験、経歴、技能を比較して入替えを行うことも実際上不可能であつた。すなわち、機械工は大体経験年数五、六年で一人前と評価できるものであるところ、職種変更対象機械工二二四名中一人前と評価できる者は約八〇パーセ 、技能を比較して入替えを行うことも実際上不可能であつた。すなわち、機械工は大体経験年数五、六年で一人前と評価できるものであるところ、職種変更対象機械工二二四名中一人前と評価できる者は約八〇パーセントの一九〇名(被控訴人らを含む。)であり、他方、在籍機械工三〇五名中一人前と評価できない者は約二〇パーセントの六〇名であつて、もし入替えの公平を期するとすれば、右一九〇名の中から六〇名を選ばなければならないが、それには相当の手数がかかるうえ、選にもれた一三〇名には不満を残すことになり、業務運営上好ましくない結果となるので、このような入替えを実行することはできなかつた。このようなわけで、被控訴人らの経験、経歴、技能を十分生かせる新職場は現実には存在しなかつたのである。 また、配転先への適応性という点についても、被控訴人らが新たに配転されたプレス加工やコンベアーライン作業は特別な適応性を必要とする職場ではなく、被控訴人らに適応しない事情は何もなかつた。従前の機械工職場と配転先職場とを比較しても、過去の経験、経歴、技能を満足のいくように生かせない点はともかく、その他の労働条件に関しては特に後者のほうが劣悪ということはない。 本件配転命令は、業務上の必要に基づいて行われたものであり、不当労働行為その他の不当な動機又は目的をもつたものではなく、被控訴人らに対して通常受忍すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものではないから、これを配転命令権の濫用とするのは誤りである。 二被控訴人らの認否及び主張 1 控訴人の右主張はすべて争う。 2 雇用契約によつて労働者の職種が特定されている場合に、無効な配転命令を争う訴訟形式として、配転前の旧職場において就労すべき地位にあることの確認を請求するか、又は配転後の新職場において就労すべき地位にないことの確認を請求す の職種が特定されている場合に、無効な配転命令を争う訴訟形式として、配転前の旧職場において就労すべき地位にあることの確認を請求するか、又は配転後の新職場において就労すべき地位にないことの確認を請求するかは、いずれでも差し支えなく許されるべきものである。村山工場には機械工の職場が現存し、多数の機械工が就労しているのであるから、被控訴人らが復帰すべき機械工の仕事がないということはできない。また、旧職場において就労すべき地位にあることの確認請求の許否と就労請求権の有無とは無関係な問題であり、本件配転が無効である以上は、従前と同じく村山工場において機械工として就労すべき地位にあることの確認を求める本件請求は当然認容されるべきものである。 3 被控訴人らがプリンス自工に勤務していた当時の就業規則には職種変更に関する規定はなく、プリンス自工と控訴人との合併時及びその後の数次の控訴人の就業規則の改定に際しても、被控訴人らは意見の聴取すら受けていないのであるから、控訴人の就業規則に前記のような職種変更に関する規定があるからといつて、それが無条件に被控訴人らにも適用があるとすることはできない。本件配転に当たり、控訴人は、十分な説明をすることなく一方的に通告をし、他の機械工職場への配転可能性等について協議、検討を行おうとしなかつたばかりか、各人の個別的事情についても一切考慮せず、それぞれの経験、経歴、技能を生かすような配慮なども全くしないで、機械工としての経験、経歴、技能とは無関係な重筋労働その他の著しい不利益をもたらす職場にアトランダムに被控訴人らを配転したものであり、このような控訴人の措置が労使関係における信義則に反し、権利の濫用と判断されることは当然である。 4 控訴人は、無効な配転命令に基づき、被控訴人らの従前の機械工職を奪つたものである。したがつ あり、このような控訴人の措置が労使関係における信義則に反し、権利の濫用と判断されることは当然である。 4 控訴人は、無効な配転命令に基づき、被控訴人らの従前の機械工職を奪つたものである。したがつて、仮に控訴人が被控訴人らに苦痛を与える目的までを有していないとしても、故意又は過失によつて被控訴人らの権利利益を侵害したことになり、被控訴人らに対する不法行為が成立する。 第三証拠関係(省略) 理由 一控訴人の本案前の抗弁について 1 控訴人は、村山工場には被控訴人らが就労することのできる機械工の仕事が存在せず、また、被控訴人らは本件配転先の職場で就労しているから、村山工場における機械工としての地位の確認を求める本件訴は不適法である旨主張する。 2 成立に争いのない乙第一三号証及び原審における証人aの証言によると、自動車の製造工程には、プレス加工、車体組立、塗装及び艤装の四工程があるが、村山工場においては、これらの工程のほか、自動車に取り付ける車軸を製造する機械加工、熔接、熱処理及び機械組立をも行つており、この車軸の機械加工部門に就労する従業員の職種を通常「機械工」と呼称していることが認められる。しかるところ、村山工場においては、後記の生産体制の変更により、被控訴人らがそれまで機械工として就労していた車軸製造部門が大幅に他工場に移転され、従前と同じ仕事はなくなつたが、右生産体制の変更後にもなお機械加工の職場が一部残存し、同職場で就労している機械工が少なからずいることは後記認定のとおりであつて、もし本件配転が無効であるとされた場合に、被控訴人らが復帰すべき村山工場における機械工の地位そのものが存在しなくなつたわけではない。したがつて、被控訴人らが、本件配転の無効を前提として、村山工場を就労場所とする機械工の地位にあることの 、被控訴人らが復帰すべき村山工場における機械工の地位そのものが存在しなくなつたわけではない。したがつて、被控訴人らが、本件配転の無効を前提として、村山工場を就労場所とする機械工の地位にあることの確認を請求することが無意味なものであるということはできない。また、被控訴人らは現在本件配転先の新職場において就労しているが、原審における被控訴人ら各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨に徴すれば、被控訴人らは、右就労によつて本件配転を争わないこととしたものではなく、本件配転に異議を留め、機械工職場に復帰することを求める意思を放棄することなく新職場で就労しているものであることが認められるから、右就労の事実によつて控訴人と被控訴人らとの間に救済を必要とする実質的紛争がなくなつたとか、被控訴人らにおいて本件配転の効力を争う利益が失われたということはできない。 控訴人の本案前の抗弁は採用することができない。 二地位確認請求について 1 控訴人及び被控訴人らの地位(被控訴人らが機械工として採用されたものであるとの点を除く請求原因1の事実)並びに被控訴人らに対して本件配転が行われた事実(請求原因2の事実)については、いずれも当事者間に争いがない。 2 雇用契約違反の主張について(一) 被控訴人らの採用から本件配転に至るまでの間の経歴についての当裁判所の認定は、原判決三五枚目裏六行目から同四七枚目表末行までの説示と同一である(但し、原判決三八枚目表二行目の「所属し、」の次に「その後村山工場第三製造部第二車軸課に配属され、」を加える。)から、これを引用する。 (二) 右引用に係る認定事実によると、被控訴人らは、富士精密又はプリンス自工に機械工として採用され、控訴人による合併の前後を通じ十数年間から二十数年間ほぼ継続して機械工として就労してきたものであることは明らかで に係る認定事実によると、被控訴人らは、富士精密又はプリンス自工に機械工として採用され、控訴人による合併の前後を通じ十数年間から二十数年間ほぼ継続して機械工として就労してきたものであることは明らかであるが、右事実のみから直ちに、被控訴人らと富士精密若しくはプリンス自工又は控訴人との間において、被控訴人らを機械工以外の職種には一切就かせないという趣旨の職種限定の合意が明示又は黙示に成立したものとまでは認めることができない。 かえつて、成立に争いがない甲第八六号証、乙第一号証、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第八五号証、原審における証人bの証言により成立が認められる乙第三号証の一、二及び同証言によると、富士精密の就業規則(昭和三三年当時のもの)四二条には、「業務上必要あるときは従業員に対し転任又は職場の変更を命ずることがある。」との規定があり、控訴人の就業規則にも、昭和四六年当時の五三条には「業務の都合により、従業員に対し、転勤、転属もしくは駐在又は出向を命ずることがある。従業員は、正当の事由がなければ、前項の命令を拒むことができない。」との規定が、昭和五六年当時の四八条には「業務上必要があるときは、従業員に対し、転勤、転属、出向、駐在、又は応援を命じることができる。前項に定める異動のほかに、業務上必要があるときは、従業員に対し、職種変更又は勤務地変更を命じることができる。従業員は、正当な事由がなければ第一項及び第二項の命令を拒むことができない。」との規定があり、本件配転前にも機械工を含めて職種間の異動が行われた例のあることが認められること、並びに我が国の経済の伸展及び産業構造の変化等に伴い、多くの分野で職種変更を含めた配転を必要とする機会が増加し、配転の対象及び範囲等も拡張するのが時代の一般的趨勢であることなどに鑑みると、被控訴人ら びに我が国の経済の伸展及び産業構造の変化等に伴い、多くの分野で職種変更を含めた配転を必要とする機会が増加し、配転の対象及び範囲等も拡張するのが時代の一般的趨勢であることなどに鑑みると、被控訴人らについても、業務運営上必要がある場合には、その必要に応じ、個別的同意なしに職種の変更等を命令する権限が控訴人に留保されていたとみるのが、雇用契約における当事者の合理的意思に沿うものというべきである。原審における証人c及び被控訴人ら本人の各供述中これに反する部分はたやすく採用できず、他に被控訴人らの職種変更につき当該本人の同意を得ることが雇用契約上の要件とされていたことを認めるに足りる証拠はない。 したがつて、本件配転が雇用契約に違反して無効であるとの被控訴人らの主張は採用することができない。 3 労働協約ないし労使慣行違反の主張及び不当労働行為の主張について当裁判所も、右各主張はいずれも採用することができないものであると判断する。その理由は、原判決五一枚目表二行目から同五三枚目裏六行目までの説示と同一である(但し、原判決五二枚目表九行目の「一九日」の次に「及び二〇日」を加え、同裏二行目の「一六日」を「二六日」に改める。)から、これを引用する。 4 配転命令権濫用の主張について(一) 前示のように、控訴人は、業務運営上必要がある場合には、その必要に応じ、被控訴人らに対してその個別的同意なしに職種の変更を命令する権限を有するものと認めるべきである。もとより、労働者にとつて、職種の如何は就労場所等とともに重要な労働条件をなすものであり、殊に本件のように長年従事してきた職種を変更するときは労働者の利益に重大な影響を与えることになるから、職種変更の命令権は安易に行使すべきものではなく、これを濫用することが許されないことはいうまでもないところであるが、 従事してきた職種を変更するときは労働者の利益に重大な影響を与えることになるから、職種変更の命令権は安易に行使すべきものではなく、これを濫用することが許されないことはいうまでもないところであるが、雇用契約において職種変更命令権が留保された趣旨に照らせば、職種変更を行うことが企業の合理的運営に寄与するなど当該職種変更命令を発するについて業務上の必要性が存在し、かつ、その命令が他の不当な動機、目的をもつてなされたとか、又は労働者に対して通常受忍すべき程度を著しく超える不利益を負わせることになるなどの特段の事情がない限りは、当該職種変更命令は権利の濫用になるものではないというべきである。そこで、右の見地から本件について検討する。 (二) 業務上の必要性の有無次の(1)の事実は当事者間に争いがなく、前掲乙第三号証の一、二、第一三号証、成立に争いがない乙第一五号証、第三六号証、前掲証人bの証言により成立が認められる乙第五、第六号証、前掲証人aの証言により成立が認められる乙第一五、第一六号証、原審における証人dの証言により成立が認められる乙第一九、第二〇号証の各一、二、第二一号証、当審における証人eの証言により成立が認められる乙第三一ないし第三五号証及び右各証言を総合すると、次の(2)ないし(7)の各事実を認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。 (1) 本件配転当時、村山工場には、総務部、工務部、検査部、第一ないし第三製造部があり、第一製造部は自動車の塗装及び艤装の工程を、第二製造部は自動車のプレス加工及び車体組立の工程を担当し、第三製造部は自動車に取り付ける車軸を製造する第一、第二車軸課、熱処理課及びフオークリフト課から構成されていた。その当時村山工場で生産されていた自動車の車種はローレル及びスカイラインであつたが、第三製造部の は自動車に取り付ける車軸を製造する第一、第二車軸課、熱処理課及びフオークリフト課から構成されていた。その当時村山工場で生産されていた自動車の車種はローレル及びスカイラインであつたが、第三製造部の第一、第二車軸課及び熱処理課では、ローレル及びスカイラインの車軸のほか、サニー、バイオレツト、オースター及び小型トラツクの車軸の製造を行つていた。 (2) 控訴人は、世界の自動車業界の趨勢が車両の小型化と駆動方式のFF化にあつたため、これに対応して自社で生産する自動車の多くをFF化する計画を立て、昭和五五年四月ころ、村山工場において車軸を製造していたサニー、バイオレツト及びオースターの三車種につき従来のFR車からFF車に切り替えることにした。そして、FF化の時期については、国内向けバイオレツト、オースターは昭和五六年五月、輸出向けバイオレツト、オースターは同年七月、国内向けサニーは同年一〇月、輸出向けサニーは同年一二月とした。 (3) 右三車種のFF化計画に伴う工場の整備等について検討したところ、村山工場の第一、第二製造部で担当していた塗装、艤装、プレス加工及び車体組立の各部門では、従来のFR車用の設備を若干改造すればFR車製造中止の翌日からすぐFF車の製造工程に使用することが可能であつたが、第三製造部で担当していた車軸製造部門においては、FF車用車軸の製造のためには大幅に設備を新しくしなければならないうえ、計画どおりにFR車の製造中止の翌日からFF車を製造するためには、切替日の前七か月間はFR車用の車軸とFF車用の車軸の双方を併行して製造しなければならず、それに伴う工場建家を確保する必要が生じ、村山工場のスペースでは不足することが判明した。 そこで、控訴人は、FF化しないローレル及びスカイラインの製造部門は引き続き村山工場に残すが、FF化す らず、それに伴う工場建家を確保する必要が生じ、村山工場のスペースでは不足することが判明した。 そこで、控訴人は、FF化しないローレル及びスカイラインの製造部門は引き続き村山工場に残すが、FF化するサニー、バイオレツト及びオースター並びに小型トラツクの車軸製造部門を、広いスペースがあり設備等も整つている栃木工場(一部は横浜工場)に移転することにするとともに、右移転後の村山工場において、ローレル、スカイラインとは車格が異なり輸出にも振り向けることのできる新型小型車マーチを製造することにし(但し、その車軸は他工場で製造されたものを使用する。)、これによつてローレル、スカイラインとマーチという車格及びモデルチエンジの時期が異なる車両の生産を組み合わせて、村山工場の生産体制の平均化を図ることにした。 (4) 右のように村山工場の車軸製造部門を大幅に他工場に移転するのに伴い、同工場の第三製造部で就労していた機械工ら約五〇〇名余りが仕事を失うことになつたが、他方、同工場で新たに生産を開始することになつたマーチのプレス加工、車体組立、塗装、艤装の各工程の要員として約八〇〇名の従業員が必要になつた。 そこで、控訴人は、第三製造部所属の右五〇〇名余りの機械工らのうち、高齢又は病弱のため他職場での仕事に不向きであると判断された九名を除いた残り四九五名(その内訳はサニー、バイオレツト、オースターの車軸製造部門からは機械工一四二名、熔接工一〇〇名、機械組立工一一三名、小型トラツクの車軸製造部門からは機械工八二名、機械組立工五八名)全員を第一、第二製造部に異動させ、マーチのプレス加工、車体組立、塗装、艤装の仕事に当たらせることにし、マーチ製造要員としてなお不足する約三〇〇名については、当時売行き不振のため仕事に余裕のあつたローレル及びスカイラインの製造部門の従業 のプレス加工、車体組立、塗装、艤装の仕事に当たらせることにし、マーチ製造要員としてなお不足する約三〇〇名については、当時売行き不振のため仕事に余裕のあつたローレル及びスカイラインの製造部門の従業員をもつて充当することにした。 (5) 以上の計画に基づき、控訴人は、昭和五六年から昭和五七年にかけてサニー、バイオレツト、オースター及び小型トラツクの車軸製造部門を村山工場から栃木工場等に移転し、村山工場におけるサニー等のFR車の車軸の製造を中止するとともに、村山工場でマーチの製造を開始したが、これと併行して、昭和五六年六月一日から昭和五七年三月一六日までの間に前記計画のとおりの従業員の異動を実施し(前記四九五名に対する異動発令の内訳は原判決添付の別表のとおりである。)、被控訴人らに対する本件配転も右の一環として行われた。 (6) 控訴人は、右の異動を実施するに当たり、従来から従業員の転居を伴う転勤には組合の反対が強かつたことなどを考慮し、村山工場から車軸製造部門の移転先である栃木工場等への転勤は一切行わないことにした。また、右異動の実施後である昭和五七年四月現在の在籍機械工の配置状況をみると、村山工場においては、工務部工務課に一五名、工務部工具管理課に一三名、第三製造部機械課(第三製造部第一、第二車軸課及びフオークリフト課を統合したもの)に一〇四名が在籍し、そのほか、村山工場にある工機工場内第三工機部第五工機製作課に六八名、村山工場とほぼ同じ通勤圏内にある荻窪工場の総務部施設課に一一名、宇宙航空事業部製作課に七〇名、三鷹工場の繊維機械事業部製作課に二四名、以上合計三〇五名の機械工が在籍しており、本件配転当時においても配転後はこれとほぼ同様の配置状況になることが見込まれていたが、これらの職場からは機械工の増員配置を求める要請はなく、もし第三製 四名、以上合計三〇五名の機械工が在籍しており、本件配転当時においても配転後はこれとほぼ同様の配置状況になることが見込まれていたが、これらの職場からは機械工の増員配置を求める要請はなく、もし第三製造部の異動対象機械工をこれらの職場に配置するとすれば、その代わりに従来の在籍機械工を異動させることを検討しなければならない状況であつた。また、異動後に在籍することになると見込まれた機械工右三〇五名のうち、控訴人が一人前の機械工として取り扱つている経験五年以上の者は二四六名、経験五年未満の者は五九名であつたため、右経験不足者五九名を異動対象機械工のうちの経験五年以上の者一八四名と入れ替えるとしても、相当の手数がかかるうえ、人員比等からみて公平で不満を残さない人選を行うことは容易でないと考えられた。 このため、控訴人は、前記九名の高齢者及び病弱者を除き、他の異動対象者四九五名全員について、各人の経験、経歴、技能や個人的希望等を個別的に考慮することなく、いわば機械的にマーチ製造部門に異動させることにした。この結果、異動対象者全員について職種変更を生じ、うち機械工二二四名の中で被控訴人らと同様にコンベアーライン作業に配置された者は二〇九名である。 (7) 控訴人は、右一連の異動及びその前提となる前記生産体制の変更計画について、日産労組及び全金支部に対し事前に基本的内容を示し、何回かの説明や団体交渉を行つた。そして、日産労組はこれを了承し異動に応じたが、全金支部はこれを争うことになつた。 (三) 不当な動機又は目的の有無右(二)の認定事実によると、本件配転が全金支部の組織を弱体化させ、あるいは全金支部所属の組合員を日産労組所属の組合員と差別待遇する意思で行われたものであると認めることはできず、他に本件配転が何らかの不当な動機又は目的をもつて行われた 全金支部の組織を弱体化させ、あるいは全金支部所属の組合員を日産労組所属の組合員と差別待遇する意思で行われたものであると認めることはできず、他に本件配転が何らかの不当な動機又は目的をもつて行われたものであることを認めるに足りる証拠はない。 (四) 本件配転後の被控訴人らの就労状況右の点に関する当裁判所の認定は、原判決五七枚目表九行目から同六二枚目表一〇行目までの説示と同一である(但し、認定に供する証拠として、被控訴人ら全員に共通する部分及び被控訴人fに関する部分につき当審における同被控訴人本人尋問の結果を、被控訴人gに関する部分につき弁論の全趣旨により成立が認められる甲第九七号証を、被控訴人hに関する部分につき右同様成立が認められる甲第九二号証を、被控訴人iに関する部分につき右同様成立が認められる甲第九三号証を、被控訴人jに関する部分につき右同様成立が認められる甲第九四号証を、被控訴人kに関する部分につき右同様成立が認められる甲第九五号証を、被控訴人lに関する部分につき右同様成立が認められる甲第九六号証を加える。)から、これを引用する。 (五) 右(一)ないし(四)に判示したところに基づいて考えると、本件配転を含めて昭和五六年六月から昭和五七年三月までの間に行われた一連の異動は、従来村山工場で担当していた自動車の車軸製造部門を栃木工場等に移転し、新たに村山工場で新型車を製造することにした生産体制変更計画に基づく村山工場内の従業員の大幅な配置替えであるところ、控訴人がかかる生産体制の変更を計画したのは、世界の自動車業界における車両の小型化及び駆動装置のFF化に対応するためであり、国の内外において競争の激しい自動車業界にその地位を占める控訴人としては、経営上必要な措置であつたと認めることができる。したがつて、これに伴う従業員の右異動も企 動装置のFF化に対応するためであり、国の内外において競争の激しい自動車業界にその地位を占める控訴人としては、経営上必要な措置であつたと認めることができる。したがつて、これに伴う従業員の右異動も企業の合理的運営に寄与するものということができるが、既にみたように、村山工場の車軸製造部門の縮小による異動対象者が五〇〇名近くの多数にのぼり、通勤可能圏内の他の職場でこれを受け入れる余裕がなく、一部の者のみについて他の職場の従業員との入替えを行うことも、手数がかかるだけでなく公平確保上の理由から困難であるとされる一方で、村山工場における新型車の生産要員として異動対象人員を超える数の従業員を必要とすることになつたなどの諸事情を考慮すると、控訴人が右異動を行うに当たり、対象者全員についてそれぞれの経験、経歴、技能等を各別に斟酌することなく全員を一斉に村山工場の新型車生産部門へ配置替えすることとしたのは、企業経営上の判断としてあながち不合理なものとはいいがたく、その異動対象者中に被控訴人らのように長年他の職種に従事してきた者がいることを考慮してもなお、労働力配置の効率化及び企業運営の円滑化等の見地からやむを得ない措置として是認しうるものである。そして、異動対象者の中で被控訴人らについてのみ、その経験、経歴、技能が他と異なる特別のものであつたとか、あるいは特段の配慮を必要とする何らかの個人的事情があつたとかの事実を認めるべき証拠は全くないから、被控訴人らのみを他の機械工職場へ配置する等の特例措置をとることは、公平上もとより許されることではない。 また、前記(四)の引用に係る認定事実からみると、被控訴人らが右異動後に第一、第二製造部で担当している作業は、機械工としての経験、経歴、技能等を満足に生かせず、機械加工の仕事より身体的にも厳しいものがあることは否 )の引用に係る認定事実からみると、被控訴人らが右異動後に第一、第二製造部で担当している作業は、機械工としての経験、経歴、技能等を満足に生かせず、機械加工の仕事より身体的にも厳しいものがあることは否定できないが、前掲乙第二一号証及び弁論の全趣旨によれば、右作業は特別の適応性を必要とするほどのものではなく、被控訴人らと同じ職場で同種作業に従事している従業員は他にも相当数いることが明らかであつて、被控訴人らだけが特に苛酷な作業環境に置かれているものとは認められず、その他、右異動の結果被控訴人らにおいて控訴人の従業員として通常受忍すべき程度を著しく超える不利益を負わされていると認めるに足りる証拠はない。 以上の諸点から判断すると、本件配転命令が控訴人の配転命令権の濫用に当たるものであると認めることはできないというべきである。 三損害賠償請求について右損害賠償請求は、本件配転が無効であることを前提とするものであるところ、本件配転が無効と認められないことは前項で判示したとおりである。したがつて、右請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 四結論以上の次第で、被控訴人らの本訴請求はいずれも理由がなく、棄却を免れないものというべきであるから、これと結論を異にする原判決は不当であつて、控訴人の本件控訴は理由があるが、被控訴人らの附帯控訴は理由がない(なお、控訴人は、右附帯控訴の却下を求めるが、不適法な附帯控訴とは認められない。)。 よつて、原判決中控訴人敗訴の部分を取り消して被控訴人らの請求を棄却し、また、被控訴人らの附帯控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官村岡二郎佐藤繁鈴木敏之) ることとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官村岡二郎佐藤繁鈴木敏之)
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