1 主 文1 被告らは、別紙2-1請求目録「通し番号」1~15の「請求者」欄記載の者に対し、連帯して、同「認容額」・「総額」欄記載の金員及びこれに対する同「始期」欄記載の日から支払済みまで同「利率(年)」欄記載の金員を支払え。 52 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、別紙2-2訴訟費用一覧表のとおりの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求(以下、別紙で定義した略称等は、特に断らず本文でも用いる。)10被告らは、別紙2-1請求目録「通し番号」1~15の「請求者」欄記載の者に対し、連帯して、同「請求額」・「総額」欄記載の金員及びこれに対する同「始期」欄記載の日から支払済みまで同「利率(年)」欄記載の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要151 事案の要旨原告らは、被告会社からその主催に係るアースハートセミナーの受講等を勧誘され、被告会社との間で受講契約(以下「本件契約」という。)を締結して受講料等を支払った。 本件は、原告らが、被告会社による上記勧誘行為等の活動は、有機的に関連20した一連のシステムの下に本件契約という不当に高額の金員を取得することに向けられた社会的相当性を逸脱する違法なものであり、被告会社の代表取締役であった被告P は、これに主導的立場で関与したなどと主張して、被告らに対し、不法行為等(〔被告らにつき〕民法709条・719条、〔被告P につき〕会社法429条)に基づき、損害賠償金の連帯支払を求める事案である。 252 前提事実 2 当事者間に争いのない事実、掲記の証拠によって容易に認定することができる事実及び顕著な事実 429条)に基づき、損害賠償金の連帯支払を求める事案である。 252 前提事実 2 当事者間に争いのない事実、掲記の証拠によって容易に認定することができる事実及び顕著な事実(以下、「前提事実」といい、項番号等により「前提事実⑴」等と略称する。以下同じ。)は、次のとおりである。 ⑴ 当事者等ア 原告らは、いずれも被告会社が主催するアースハートセミナーを受講し5た者である。 イ 被告会社は、整体及び外気功に関するセミナー・講演会・研究会の開催、気功療法の研究、指導、セミナー・講演会・研究会の開催等を目的とする株式会社である。 ウ 被告P は、平成21年9月1日から被告会社の取締役、平成25年4月1023日から平成26年7月24日まで代表取締役であった者である。 エ 特定非営利法人つくしの会又は任意団体つくしの会(以下、両者を区別する必要がない場合には、単に「つくしの会」という。)は、いずれもアースハートの関連団体である。被告P は、任意団体つくしの会の会長を務めている。 15オ Q は、被告会社が設立された平成12年3月24日から平成24年10月31日まで、被告会社の代表取締役であった者である。 ⑵ 被告会社の会員の被告会社、Q 及び被告P に対する訴訟(以下「前件訴訟」という。)被告会社の会員の一部は、被告会社、Q 及び被告P に対し、同人らの組織20的な詐欺行為により、受講料等の金員を支払い、損害を被ったとして、その損害の賠償等を求める前件訴訟を提起した。福岡地方裁判所は、平成26年3月28日、被告会社の会員の請求を一部認容する旨の判決(以下「前件1審判決」という。)を言い渡した。 被告会社の会員並びに被告会社、Q 及び被告P は、これを不服として控訴25 は、平成26年3月28日、被告会社の会員の請求を一部認容する旨の判決(以下「前件1審判決」という。)を言い渡した。 被告会社の会員並びに被告会社、Q 及び被告P は、これを不服として控訴25したところ、福岡高等裁判所は、平成26年12月25日、被告会社、Q 及 3 び被告P の損害額に関する主張を一部認めて、上記判決を一部変更する旨の判決(以下「前件確定判決」という。)を言い渡した。 被告会社、Q 及び被告P は、これを不服として上告及び上告受理申立てをしたところ、最高裁判所は、平成27年11月13日、上告棄却及び上告不受理決定をした(甲1~3)。 5⑶ 原告らによる訴訟提起ア 原告A、原告B、原告C、原告D、原告E、原告F、原告G、原告H、原告I、原告J、原告K、原告L、原告M 及び原告N は、令和3年9月22日、本件訴訟を提起した。 イ 原告O は、令和4年2月22日、本件訴訟を提起した。 10⑷ 被告らによる消滅時効の援用被告らは、令和6年3月11日の弁論準備手続期日において陳述された第1準備書面(令和4年1月6日付け)及び答弁書(同年4月20日付け)において、原告らの被告らに対する損害賠償請求権の消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 153 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、①被告らの責任原因の有無、②損害の有無及び額、③消滅時効の成否である。争点①・②の事実に関する当事者の主張は、別紙4及び別紙5のとおりであり、争点③に関する当事者の主張は、別紙3「争点に関する当事者の主張」のとおりである。 20第3 当裁判所の判断1 認定事実前提事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実(以下「認定事実」といい、項番号等により「認定事 に関する当事者の主張」のとおりである。 20第3 当裁判所の判断1 認定事実前提事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実(以下「認定事実」といい、項番号等により「認定事実⑴」等と略称する。以下同じ。)が認められる。 25⑴ ハンドパワー 4 被告会社の活動の前提となっているハンドパワーは、客観的な科学的・医学的裏付けを欠くものである(このことは、前件確定判決から明らかである。)。 ⑵ 被告会社の活動内容等ア アースハートセミナー被告会社は、ハンドパワーを習得するためのアースハートセミナー(35か月間、全12回)を有料で開講していた。アースハートセミナーを受講するためには、つくしの会の会員となる必要があった。 アースハートセミナーでは、初回に、アースハートセレモニーが行われており、Q や被告P によるパワー入れと称する催し等が行われていた。その後のアースハートセミナーは、専ら会員がハンドパワーを実践すること10を中心に行われていた。 イ 会報誌等による広報活動被告会社は、会員向けに発行している「EarthHeart」という名称の会報誌、アースハートセミナーの教本、ホームページ、Q が行う講演会等において、ハンドパワーがどんな病気でも治せる力であると宣伝し15たり、医師の意見を通じて、ハンドパワーが科学的根拠を有するものであると宣伝したりしていた。また、被告会社は、ハンドパワーについて、宗教的なものであるかのような宣伝をする一方で、宗教とは一切関係がないと説明することもあった。 ウ その他の活動20被告会社は、会員が第三者を勧誘し、新たに本件契約を締結させる行為を覚醒と称し、7~10名以上の者を覚醒させたアースハー がないと説明することもあった。 ウ その他の活動20被告会社は、会員が第三者を勧誘し、新たに本件契約を締結させる行為を覚醒と称し、7~10名以上の者を覚醒させたアースハート会員を対象にワンネスクラブと称する会合を開催していた。 被告会社は、アースハート会員のうち特に優れた者をクレソンと称し、各地にクレソンがハンドパワーを用いて治療を行う施設として、施療所25(治療所)を設置し、運営していた。 5 被告会社は、各地で、ハンドパワーに関する講演会を有料で開催していた(チケット1枚3000円)。Q は、講演者として、講演会に参加していた。 被告会社は、会員を対象に、Q や外部講師による講演、Q による飲料の味変えの実演、会員による体験の報告等を行う「無限塾」(後に有志会に改5名)を月1回程度開催していた。 エ パワー入り商品等の販売被告会社は、パワー入り商品として、CD(1枚2000円)、カレンダー(1冊1000円)、書籍(1冊1800円)等を販売していた。 ⑶ 被告会社の勧誘方法等10被告会社は、会員に対し、病気を改善させるためには覚醒する必要があるなどと説明して、より多くの人を勧誘して、覚醒することを推奨していた(甲A1、甲G1、甲I1、甲O1)。 また、被告会社は、アクション研修と称する研修において、会員に対し、Q の講演会のチケットを販売すれば人間性が高まるなどと告げて、チケット15の販売数を競わせ、より多くの者にQ の講演を聞かせて、新規会員を増やそうとしていた。 そのため、被告会社の会員は、親類、知人その他の第三者に対し、体に不調がないかなどと声をかけて、ハンドパワーを習得すれば病気等が治せるなどと説明して、本件契約 、新規会員を増やそうとしていた。 そのため、被告会社の会員は、親類、知人その他の第三者に対し、体に不調がないかなどと声をかけて、ハンドパワーを習得すれば病気等が治せるなどと説明して、本件契約を締結させていた(甲1、2)。 ⑷ 被告P の被告会社の活動における役割被告P は、ハンドパワーについて、医学的・科学的な裏付けがあるような資料を作成したり、Q の講演会のチケットの販売や覚醒を積極的に推奨したりした。 ⑸ 原告らと被告会社との本件契約の締結等 ア原告ら(ただし、原告L に係る本件契約の締結等に関しては、R である。 以下同じ。)は、被告会社の会員から、別紙4「裁判所の認定」欄記載のとおりの勧誘を受けて、被告会社との間で、本件契約を締結するとともに、つくしの会に入会した(甲A1、甲G1、甲I1、甲M1、甲N1、甲O1、乙イ2、4)。 イ原告らは、別紙5「裁判所の認定」・「支払日」欄記載の日までに、別紙 5「裁判所の認定」欄記載のとおり、①アースハートセミナー受講料並びにつくしの会会費及び入会費を支払い、②施療所・本部で施療を受けて、施療費を支払い、交通費を負担し、③CD等を購入してその代金を支払った(甲A1、甲G1、甲I1、甲M1、甲N1、甲O1、乙イ2、乙イ4)。 ⑹ 原告らのつくしの会の退会 原告らは、別紙4「裁判所の認定」欄記載のとおり、平成22年8月2日から平成29年7月1日までの間に、つくしの会を中途解約するなどして退会した(乙イ2、4)。 ⑺ 被告らに関する報道等ア被告会社の会員の一部は、平成23年頃、被告会社、Q 及び被告P に対 する前件訴訟を提起した。 平成24年4月以後、①前件訴訟が提起され ⑺ 被告らに関する報道等ア 被告会社の会員の一部は、平成23年頃、被告会社、Q 及び被告P に対15する前件訴訟を提起した。 平成24年4月以後、①前件訴訟が提起され、その後、他の会員らも被告会社らに対する訴訟を提起した事実、②静岡地裁浜松支部等でも被告会社らを被告とする訴訟が提起された事実、③弁護団が存在する事実は、朝日新聞や西日本新聞で報道された(前提事実⑵、乙イ5)。 20イ Q は、平成25年2月20日、被告会社の所得を隠し、約5億円の法人税を脱税した(法人税法違反)として、逮捕された。Q が法人税法違反で逮捕された事実は、インターネット上のニュースサイトや毎日新聞、西日本新聞で報道された。当該報道では、被告会社の会員の一部が前件訴訟を提起しており、係争中であることも記載されていた(乙イ1)。 25ウ 福岡地裁は、平成26年3月28日、被告会社の会員の請求を一部認容 7 する旨の前件1審判決を言い渡した。前件1審判決は、被告会社の活動につき、要旨次のように認定した(甲1~3)。 ① 被告会社は、ハンドパワーが科学的・医学的裏付けを欠くものであるにもかかわらず、教本や会報誌等において、病気が治せるなどと虚偽の内容を含んだ宣伝していた。 5② 被告会社は、病気を治したいという会員の切実な思いに付け込み、講演会のチケット販売数を競わせるなどして、会員数を拡大した。 ③ ハンドパワーの存在を前提とする上記各活動は、真摯な治療等の目的で行っていたものとはいえない。 ④ 本件契約は、その内容、被告会社側の経済的負担に照らし、受講者に10高額の受講料を支払わせる点で著しく均衡を欠くものであった。 ⑤ 以上のこと等からすると、被告会 えない。 ④ 本件契約は、その内容、被告会社側の経済的負担に照らし、受講者に10高額の受講料を支払わせる点で著しく均衡を欠くものであった。 ⑤ 以上のこと等からすると、被告会社の各活動は、有機的に関連した一連のシステムのもとに本件契約という不当に高額の金員を取得することに向けられたものであって、社会的相当性を逸脱するものである。 エ 前件1審判決の内容(被告会社の会員の請求が一部認容されたこと、ハ15ンドパワーについて、科学的・医学的裏付けがないこと等)は、同月29日、朝日新聞や西日本新聞で報道された(前提事実⑵、乙イ5)。 ⑻ 原告らが訴訟提起をするに至る経緯原告らは、令和3年4月以後、原告ら訴訟代理人に相談をし、本件訴訟を提起した(甲A1、甲E1、甲G1、甲M1)。 20⑼ Q による支払Q は、令和5年9月6日の弁論準備手続期日において、原告らとの間で、和解を成立させ、同月15日、原告らに対し、別紙5「裁判所の認定」・「和解金」欄記載の金額を支払った。 2 争点①(被告らの責任原因の有無)及び争点②(損害の有無及び額)につ25いて 8 ⑴ 被告会社の活動の違法性について前提事実及び認定事実によれば、次のとおり指摘することができる。 ア 被告会社は、その会員において勧誘した第三者と本件契約を締結し、ハンドパワーを習得するためのアースハートセミナーを開講し、施療所における治療等を行う一方で、会員誌を発行したり講演会を行ったりしてその5活動内容を宣伝するなどの活動を行っていた(認定事実⑵)。 イ 被告会社の前記活動の前提となっているハンドパワーは、客観的な科学的・医学的裏付けを欠くものである(認定事実⑴)。それにもかかわらず、被告会社は するなどの活動を行っていた(認定事実⑵)。 イ 被告会社の前記活動の前提となっているハンドパワーは、客観的な科学的・医学的裏付けを欠くものである(認定事実⑴)。それにもかかわらず、被告会社は、会報誌、アースハートセミナーの教本、ホームページ、Q が行う講演会等において、ハンドパワーがどんな病気でも治せる力であると10宣伝したり、医師の意見を通じて、ハンドパワーが科学的根拠を有するものであると宣伝したりしていた(認定事実⑵イ)。 以上のような被告会社による宣伝は、虚偽の内容を含む詐欺的なものといわざるを得ない。 ウ 被告会社は、第三者を勧誘し、新たに本件契約を締結させる行為を覚醒15と称し、病気を改善させるためには覚醒する必要があるなどと説明して、覚醒を推奨しており(認定事実⑶)、病気を改善したいという第三者の切実な思いに付け込んで、新規会員を獲得していた。また、被告会社は、アクション研修において、会員に対し、Q の講演会のチケットを販売すれば人間性が高まるなどと告げて、チケットの販売数を競わせて、より多くの第20三者にQ の講演を聞かせて、新規会員を増やそうとしていた(認定事実⑶)。 これにより、被告会社の会員は、第三者に対し、自身や家族の病気や体の不調等を尋ねて、マインドパワーを習得すれば、病気等が治せるなどと説明して、被告会社の活動に参加するよう勧誘することを繰り返していた25ものであり(認定事実⑶)、現に、自身や家族の病気等に悩みを抱えていた 9 原告らは、これを改善させたいという思いから、被告会社に入会したものである(認定事実⑸ア)。 以上のように、被告会社は、自身や家族の病気等を改善させたいという第三者の切実な思いに付け込んで、新規会員を獲得し、その活動を拡大させてい いから、被告会社に入会したものである(認定事実⑸ア)。 以上のように、被告会社は、自身や家族の病気等を改善させたいという第三者の切実な思いに付け込んで、新規会員を獲得し、その活動を拡大させていたものであり、このような活動の拡大方法は、会員に対し、強い心 理的圧迫を加えた上でされる不当なものである。 エ被告会社は、ハンドパワーについて、宗教的なものであるかのような宣伝をする一方で、宗教とは一切関係がないと説明することもあった(認定事実⑵イ)。また、被告会社は、ハンドパワーについて、科学的根拠を有するものであると宣伝することもあった(認定事実⑵イ)。 このように、被告会社は、ハンドパワーについて、場当たり的に使い分けて説明しており、ハンドパワーを前提とする活動を真摯な治療等の目的で行っていたということはできない。 オ全12回で開講されるアースハートセミナーは、初回に、Q らによるパワー入れと称する催し等を行うアースハートセレモニーが行われた後は、 専ら会員がハンドパワーを実践することを中心に行われるにとどまる(認定事実⑵ア)。被告会社において人件費や会場費以外に、特段の出捐を要しないものであった。 したがって、アースハートセミナー受講料(70万円(別紙5参照))は、セミナーの内容、被告会社の経済的負担に照らして、受講者に高額の金員 を支払わせる点において、著しく均衡を欠くものであるといわざるを得ない。 カ以上の各事実に照らせば、被告会社が行っている各活動(認定事実⑵)は、有機的に関連した一連のシステムのもとに、被告会社の会員からアースハート受講料等の不当に高額な金員を取得することに向けられたもので あって、社会的相当性を逸脱したものであるというべきである。 一連のシステムのもとに、被告会社の会員からアースハート受講料等の不当に高額な金員を取得することに向けられたもので25あって、社会的相当性を逸脱したものであるというべきである。 10 ⑵ 被告会社の不法行為責任について原告らは、別紙5「裁判所の認定」欄記載のとおり、自身や家族に病気等があるため悩みを抱えていたところ、被告会社の会員から、ハンドパワーによってその悩みを解消することができるなどと勧誘を受けて、アースハートセミナーを受講すれば、ハンドパワーが習得でき、上記悩み等が解消される5などと錯誤に陥り、被告会社に対し、アースハートセミナー受講料等を支払うに至った(認定事実⑸)。 そうすると、原告らは、被告会社による本件契約の締結に向けられた社会的相当性を逸脱したシステムの下に、上記支払をするに至ったと認められるから、被告会社の違法な活動によって損害を被ったものというべきである。 10したがって、被告会社は、原告らに対し、不法行為(民法709条)による損害賠償責任を負う。 ⑶ 被告P の不法行為責任について前提事実及び認定事実によれば、被告P は、被告会社の取締役及び代表取締役並びにつくしの会の会長を務め(前提事実⑴ウ、エ)、ハンドパワーにつ15いて、医学的・科学的な裏付けがあるような資料を作成したり、Q の講演会のチケットの販売や覚醒を積極的に推奨したりする(認定事実⑷)など、被告会社の活動の策定や運営に主導的立場として関与してきたと認められる。 したがって、被告P は、原告らに対し、本件契約の締結に向けられた社会的相当性を逸脱したシステムのもとに包括される被告会社の活動によって原20告らが受けた損害について、少なくとも不法行為(民法709条)による損害賠償責任を負う。 契約の締結に向けられた社会的相当性を逸脱したシステムのもとに包括される被告会社の活動によって原20告らが受けた損害について、少なくとも不法行為(民法709条)による損害賠償責任を負う。 ⑷ 原告らの損害の有無及び額についてア 別紙5「裁判所の認定」・「金額」欄のとおり、原告らが支払ったアースハートセミナー受講料及びつくしの会会費及び年会費並びにその他の費用25(交通費、施療日、物品購入費等)は、アースハートセミナー受講料等の 11 金員の取得に向けられた有機的に関連した社会的相当性を欠く被告会社の各活動に伴う負担であるから、被告らの不法行為と相当因果関係のある損害であると認められる。 イ 本件事案の内容、審理の経過、損害額その他本件においてみられる諸般の事情に鑑みると、被告らの不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は、5別紙5「裁判所の認定」・「弁護士費用」欄記載の金額を相当と認める。 ウ Q は、令和5年9月6日の弁論準備手続期日において、原告らとの間で、和解を成立させ、同月15日、原告らに対し、別紙5「裁判所の認定」・「和解金」欄記載の金額を支払った(認定事実⑼)。これを別紙5「裁判所の認定」・「支払日」欄記載の日から令和5年9月15日までの遅延損害金及び10損害に充当した結果、原告らの損害は、別紙5「裁判所の認定」・「損害金元本」欄記載の金額となる。 3 争点③(消滅時効の成否)について⑴ 判断枠組み平成29年法律第44号による改正前の民法724条(同改正後の民法71524条1号)にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し(最高裁昭和45年( 24条1号)にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味し(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実20に認識した時をいうと解するのが相当である(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。 ⑵ 当てはめこれを本件についてみると、前提事実及び認定事実によれば、次の点を指摘することができる。 25ア 原告らは、別紙4「裁判所の認定」欄記載のとおり、被告会社の会員か 12 ら、ハンドパワーによってその悩みを解消することができるなどと勧誘を受けて、アースハートセミナーを受講すれば、ハンドパワーが習得でき、自身の悩み等が解消されるなどと錯誤に陥り、本件契約を締結するとともに、つくしの会に入会し(認定事実⑸ア)、別紙5「裁判所の認定」欄記載のとおり、アースハートセミナー受講料等を支払うなどの支出をした(認5定事実⑸イ)が、その後、別紙4「裁判所の認定」欄記載のとおり、平成22年8月2日から平成29年7月1日までの間、つくしの会を中途解約するなどして退会したものである(認定事実⑹)。そして、被告会社の活動の前提となっているハンドパワーは、客観的な科学的・医学的裏付けを欠くものであり(認定事実⑴)、少なくとも原告らがつくしの会を退会した時10点において自己の悩みを解消していたことをうかがわせる事情は見当たらないことからすると、原告らは、つくしの会を退会した時点において、被告会社の会員の勧誘により上記のような錯誤 会を退会した時10点において自己の悩みを解消していたことをうかがわせる事情は見当たらないことからすると、原告らは、つくしの会を退会した時点において、被告会社の会員の勧誘により上記のような錯誤に陥って上記支出をしたことを認識したものと推認されるから、その頃、被告会社の活動によって損害を被ったという事実を認識したといえる。 15イ しかしながら、前記2⑴において説示したところによれば、①被告会社の活動は、虚偽の内容を含む詐欺的な宣伝を行い、会員に対し、強い心理的圧迫を加えて親類、知人その他の第三者に対する勧誘行為を推奨し、自身や家族の病気等を改善させたいという第三者の切実な思いに付け込んだ不当な勧誘を行わせて新規会員を獲得してきたものであり、その巧妙さ20等に照らすと、これらの活動が社会的相当性を逸脱したものであるか否かの判断は、親類、知人等である会員から勧誘を受けて新規会員となった第三者にとって困難なものであった。これに加え、②平成23年の前件訴訟の提訴後の新聞報道は、被告会社の会員の一部による提訴の事実等を報道するものにとどまっており(認定事実⑺ア・イ)、③平成26年3月28日25に言い渡された前件1審判決は、被告会社の各活動が社会的相当性を逸脱 13 した違法なものであることを認定したものであり、その内容が朝日新聞や西日本新聞で報道されたものの(認定事実⑺ウ・エ)、前件1審判決に対しては当事者双方が控訴するなどしていたのであり、④最終的に被告会社らの敗訴を内容とする前件確定判決は、平成27年11月13日、確定するに至った(前提事実⑵)が、このことが広く報道され、原告らがこれを認5識したと認めるに足りる的確な証拠はない。 以上の事実に照らすと、前記アのような被告会社の活動によって損害を 定するに至った(前提事実⑵)が、このことが広く報道され、原告らがこれを認5識したと認めるに足りる的確な証拠はない。 以上の事実に照らすと、前記アのような被告会社の活動によって損害を被ったという事実を認識していた原告らは、前件確定判決の確定後においても、被告会社が行っている各活動が、有機的に関連した一連のシステムのもとに、被告会社の会員からアースハート受講料等の不当に高額な金員10を取得することに向けられた社会的相当性を逸脱したものであると判断するに足りる事実を認識したとはいい難いというべきである。 ウ したがって、原告らは、令和3年4月以後、原告ら訴訟代理人に相談した時点(認定事実⑻)で、被告会社の各活動が、有機的に関連した一連のシステムのもとに、被告会社の会員からアースハート受講料等の不当に高15額な金員を取得することに向けられた社会的相当性を逸脱したものであると判断するに足りる事実について認識したものというべきである。 エ 以上によれば、原告らの被告らに対する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、早くとも令和3年4月頃から進行するというべきであり、本件訴訟の提起時(前提事実⑶)には、上記損害賠償請求権について3年20の消滅時効期間が経過していないというべきである。 ⑶ 被告らの主張についてこれに対し、被告らは、①前件確定判決が出された平成27年11月には、「損害及び加害者を知った」というべきである、②原告らは、被告らの活動が違法であるとの認識を有したため、つくしの会を退会しており、原告らが25つくしの会を退会した日には、「損害及び加害者を知った」というべきである 14 と主張する。 ア 被告らの主張①について被告らの主張①を採用すること り、原告らが つくしの会を退会した日には、「損害及び加害者を知った」というべきである と主張する。 ア被告らの主張①について被告らの主張①を採用することができないことは、前記⑵イ・ウにおいて説示したとおりである。 イ被告らの主張②について 原告らは、別紙4「裁判所の認定」欄記載のとおり、平成22年8月2日から平成29年7月1日までの間に、つくしの会を中途解約するなどして退会したところ(認定事実⑹)、証拠(甲A1)によれば、その一部の者は、被告会社の活動に疑問を抱いて、被告会社の活動を行わなくなり、その結果、つくしの会会費を支払わず、つくしの会を退会したことがうかが われる。 しかしながら、上記の者が被告会社の各活動に疑問を抱いたことのみをもって、被告会社のアースハートセミナー受講料等の金員の取得に向けられた有機的に関連した各活動が社会的相当性を欠き違法であると判断するに足りる事実についても認識していたとまではいえないことは、前記⑵ イで説示した事情に照らして明らかである。 そうすると、原告らがつくしの会会費を支払わずにつくしの会を退会するなどしたことのみをもって、原告らにおいて、退会日の一定期間前には、被告会社に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知ったものと推認することはできない。 ウしたがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。 4 小括上記2のとおり、被告らは、原告に対し、民法709条による責任を負うところ、被告らの行為は、客観的に関連して、違法に原告らに損害を加えたものであるから、被告らは、民法719条1項に基づき、原告に対し、連帯し とおり、被告らは、原告に対し、民法709条による責任を負うところ、被告らの行為は、客観的に関連して、違法に原告らに損害を加えたものであるから、被告らは、民法719条1項に基づき、原告に対し、連帯して、25別紙2-1請求目録「認容額」欄記載のとおりの損害金及び遅延損害金の支払 15 義務を負う。 第4 結語1 以上によれば、被告らは、別紙2-1請求目録「通し番号」1~15の「請求者」欄記載の者に対し、不法行為(民法709条、719条)に基づき、連帯して、別紙2-1請求目録「認容額」・「総額」欄記載の損害賠償金及びこれ5に対する被告Q による弁済後の日である令和5年9月16日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5%の割合の遅延損害金の支払義務を負う。 2 よって、原告らの請求は、いずれも上記1の限度で理由があるから一部認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し、訴訟費用の負担10につき民事訴訟法64条本文、61条を適用し(なお、原告I を除く原告らの請求の棄却部分は、僅少であるから、同請求に係る訴訟費用については、民事訴訟法64条ただし書により被告らの負担とする。)、仮執行宣言につき民事訴訟法259条1項を適用することとして、主文のとおり判決する。 15福岡地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官 林 史 高 20 裁判官 溝 渕 章 展 25裁判官 加 納 紅 実 16 (別紙2-1)請求目録通し番号総額始期利率(年)総額始期利率(年)1 原告A42万8882円R5.9.165%42万8882円R5.9.155%2 原告B (別紙2-1)請求目録通し番号総額始期利率(年)総額始期利率(年) 1 原告A42万8882円R5.9.165%42万8882円R5.9.155% 2 原告B39万3054円R5.9.165%39万3054円R5.9.155% 3 原告C44万7879円R5.9.165%44万7879円R5.9.155% 4 原告D43万5444円R5.9.165%43万5444円R5.9.155%原告E40万9193円R5.9.165%40万9193円R5.9.155% 6 原告F47万7682円R5.9.165%47万7682円R5.9.155% 7 原告G48万9528円R5.9.165%48万9528円R5.9.155% 8 原告H40万5912円R5.9.165%40万5912円R5.9.155% 9 原告I47万2515円R5.9.165%49万2123円R5.9.155%原告J43万6165円R5.9.165%43万6165円R5.9.155% 11 原告K43万5444円R5.9.165%43万5444円R5.9.155% 12 原告L50万6093円R5.9.165%50万6093円R5.9.155% 13 原告M45万8253円R5.9.165%45万8253円R5.9.155% 14 原告N25万1732円R5.9.165%25万1732円R5.9.155%原告O54万5946円R5.9.165%54万5946円R5.9.155%以下、年月日については、例えば、平成31年4月1日をH31.4.1、令和元年7月1日をR1.7.1と略称するこ 原告O54万5946円R5.9.165%54万5946円R5.9.155%以下、年月日については、例えば、平成31年4月1日をH31.4.1、令和元年7月1日をR1.7.1と略称することがある。 被告ら請求額請求者相手方認容額 5 17 (別紙2-2)訴訟費用一覧表 1 次のものを原告I の負担とする。 ⑴ 原告I に生じた訴訟費用の50分の15⑵ 被告らに生じた訴訟費用の1500分の42 次のものを被告らの負担とする。 ⑴ 原告A、原告B、原告C、原告D、原告E、原告F、原告G、原告H、原告J、原告K、原告L、原告M、原告N 及び原告O に生じた訴訟費用⑵ 原告I に生じたその余の訴訟費用(50分の49)10⑶ 被告らに生じたその余の訴訟費用(1500分の1496)以上 18 (別紙3)争点(消滅時効の成否)に関する当事者の主張 【被告らの主張】⑴ アースハート被害対策弁護団が結成されていること、被告会社による手か5ざしセミナーが社会問題になっていることは、平成25年2月頃には、新聞やネット等で報道されていた。また、アースハート被害対策弁護団は、福岡県及び愛知県で結成され、平成23年頃から、集団訴訟を提起したところ、平成27年11月13日には、上記集団訴訟に関する最高裁判決も出された。 以上の事情によれば、原告らは、最高裁判決が出された平成27年11月頃10には、「損害及び加害者を知った」というべきである。 ⑵ 原告らは、被告らの活動が違法であるとの認識を有したため、次年度のつくしの会会費を支払わず、つくしの会を退会した。そして、原告らは、平成22年8月2日から平成29年7月1日までの間 ある。 ⑵ 原告らは、被告らの活動が違法であるとの認識を有したため、次年度のつくしの会会費を支払わず、つくしの会を退会した。そして、原告らは、平成22年8月2日から平成29年7月1日までの間に、つくしの会を退会しており、遅くとも、同日時点で、「損害及び加害者を知った」というべきであ15る。 【原告らの主張】⑴ 原告らは、被告会社の会員により、ハンドパワーが実在すると誤信させられていたところ、令和3年4月以後、原告ら訴訟代理人に法律相談をしたことで、上記誤信を解消した。また、原告らが被告会社の会員から勧誘された20経緯は、個別に異なる。法的知識を有しない原告らが、各種報道を目にしたとしても、直ちに、自らが被告らに対し損害賠償請求権を有していることは認識できない。 ⑵ 被告とつくしの会は、別の団体であるため、被告会社の会員であることとつくしの会の会員であることは一致するものではない。また、原告らがつく25しの会会費を払わなくなった理由は、様々なものが考えられるのであって、 19 つくしの会会費を払わなくなったからといって、被告らの活動が違法であるという認識を有していたとは認められない。 以上別紙1「当事者目録」は掲載省略
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