令和3年9月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第28088号共通義務確認請求事件口頭弁論終結日令和3年6月3日判決 主文 1 被告が,別紙対象消費者目録記載1から4までの対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の請求に係る金銭の支払義務を負うことを確認する。 ⑴ 入学検定料,送金手数料及び郵送料並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての不法行為に基づく損害 賠償の請求⑵ 前記⑴の請求に係る金員に対する別紙対象消費者目録記載1及び2の対象消費者については平成30年1月11日から,同目録記載3及び4の対象消費者については平成29年1月12日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求 2 原告のその余の請求(受験に要した旅費宿泊費に相当する額の請求に係る金銭の支払義務を負うべきことの確認を求める請求)に係る訴えを却下する。 3 訴訟費用は,これを4分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 請求の趣旨⑴ 主位的請求被告が,別紙対象消費者目録記載1から4までの対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の 請求に係る金銭の支払義務を負うことを確認する。 ア入学検定料,送金手数料,郵送料及び受験に要した旅費宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての不法行為に基づく損害賠償の請求イ前記アの請求に係る金員に対する別紙対象消費者目録記載1及び2の対象 泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての不法行為に基づく損害賠償の請求イ前記アの請求に係る金員に対する別紙対象消費者目録記載1及び2の対象消費者については平成30年1月11日から,同目録記載3及び4の対 象消費者については平成29年1月12日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求⑵ 予備的請求1被告が,別紙対象消費者目録記載5から8までの対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の 請求に係る金銭の支払義務を負うことを確認する。 ア入学検定料,送金手数料,郵送料及び受験に要した旅費宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての不法行為に基づく損害賠償の請求イ前記アの請求に係る金員に対する別紙対象消費者目録記載5の対象消費 者については平成30年2月3日から,同目録記載6の対象消費者については同月16日から,同目録記載7の対象消費者については平成29年2月4日から,同目録記載8の対象消費者については同月16日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求⑶ 予備的請求2 被告が,別紙対象消費者目録記載5から8までの対象消費者に対し,個々の消費者の事情によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,次の請求に係る金銭の支払義務を負うことを確認する。 ア入学検定料,送金手数料,郵送料及び受験に要した旅費宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額に ついての債務不履行による損害賠償の請求 イ前記アの請求に係る金員に対する令和元年11月5日又 泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額に ついての債務不履行による損害賠償の請求 イ前記アの請求に係る金員に対する令和元年11月5日又は別紙対象消費者目録記載5から8までの対象消費者が各別に被告に催告をした日のいずれか早い日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求 2 請求の趣旨に対する答弁 ⑴ 本案前の答弁本件訴えを却下する。 ⑵ 本案の答弁原告の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 本件は,消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(以下「特例法」という。)65条の定めるところにより内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体である原告が,順天堂大学(以下「本件大学」という。)を運営する学校法人である被告に対し,被告が平成29年度及び平成30年度の本件大学の医学部の一般入学試験A方式(以下「一般A方 式」という。),一般入学試験B方式(以下「一般B方式」という。),大学入試センター試験・一般独自併用方式(以下「センター独自併用」という。)又は大学入試センター試験利用入学試験(以下「センター利用」といい,これらの試験を「本件試験」と総称する。)において,受験者(出願者)に事前に明らかにすることなく,受験者(出願者)の属性(女性及び浪人生)を不利益に取り扱 う判定基準(以下「本件判定基準」という。)を用いたことについて,これが不法行為又は債務不履行に該当すると主張して,上記属性を有する受験者(出願者)のうち,受験年の4月30日までに合格の判定を受けなかった者(以下「本件対象消費者」という。)を対象消費者として,次のとおり,特例法3条1項3号又は すると主張して,上記属性を有する受験者(出願者)のうち,受験年の4月30日までに合格の判定を受けなかった者(以下「本件対象消費者」という。)を対象消費者として,次のとおり,特例法3条1項3号又は4号の規定に基づく共通義務確認の訴え(特例法2条4号)を提起した 事案である。 ⑴ 主位的請求本件対象消費者全員(別紙対象消費者目録記載1から4までの対象消費者)につき,被告が本件判定基準を用いることを学生募集要項等において事前に明らかにすべき義務に違反したことが違法であるとして,入学検定料,送金手数料及び郵送料(以下,これら3つの損害を「本件受験費用」という。), 受験に要した旅費宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての不法行為に基づく損害賠償の請求に係る金銭の支払義務並びに同請求に係る金員に対する本件試験の各出願期間の最終日(平成29年度の本件試験の受験につき平成29年1月12日,平成30年度の本件試験の受験につき平成30年1月11日)から各支払済み まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うべきことの確認を求める請求⑵ 予備的請求1 本件対象消費者のうち,本件試験の一般A方式の一次試験を受験した女性及び浪人生で,平成29年度については同年4月末日までに,平成30年度 については同年4月末日までに,二次試験で合格の判定を受けなかった者(別紙対象消費者目録記載5及び7の対象消費者)並びに本件試験の一般B方式,センター独自併用又はセンター利用の二次試験を受験した女性で,平成29年度については同年4月末日までに,平成30年度については同年4月末日までに二次試験で合格の判定を受けなかった者(別紙対象消費者目録記載6 独自併用又はセンター利用の二次試験を受験した女性で,平成29年度については同年4月末日までに,平成30年度については同年4月末日までに二次試験で合格の判定を受けなかった者(別紙対象消費者目録記載6 及び8の対象消費者)につき,被告が本件試験において本件判定基準を用いたことが入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務に反し違法であるとして,本件受験費用,受験に要した旅費宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての不法行為に基づく損害賠償の請求に係る金銭の支払義務並びに同請求に係る金員に対す る本件試験の二次試験の合格発表の日(平成29年度の一般A方式につき平 成29年2月4日,同年度の一般B方式,センター独自併用及びセンター利用につき同月16日,平成30年度の一般A方式につき平成30年2月3日,同年度の一般B方式,センター独自併用及びセンター利用につき同月16日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うべきことの確認を求める請求 ⑶ 予備的請求2本件対象消費者のうち前記⑵と同様の者(別紙対象消費者目録記載5から8までの対象消費者)につき,被告が本件試験において本件判定基準を用いたことが,上記対象消費者と被告との間の入学試験受験契約に基づく入学試験を公正かつ妥当な方法で実施する義務に反するとして,本件受験費用,受 験に要した旅費宿泊費並びに対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額についての上記契約の債務不履行による損害賠償の請求に係る金銭の支払義務並びに同請求に係る金員に対する訴状送達の日である令和元年11月5日又は上記の対象消費者が各別に被告に催告をした日のいずれか早い日の翌日から支 約の債務不履行による損害賠償の請求に係る金銭の支払義務並びに同請求に係る金員に対する訴状送達の日である令和元年11月5日又は上記の対象消費者が各別に被告に催告をした日のいずれか早い日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による 遅延損害金の支払義務を負うべきことの確認を求める請求 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実)⑴ 当事者ア原告は,特例法65条に定めるところにより内閣総理大臣の認定を受け, 令和元年8月20日にその有効期間の更新を受けた特定適格消費者団体である(甲1)。 イ被告は,本件大学を運営する学校法人である(甲2)。 ⑵ 平成29年度の入学試験ア募集人数は,一般A方式が67名,一般B方式が10名,センター独自 併用が28名程度,センター利用が15名程度である(なお,それ以外の 方式として,地域枠選抜入学試験,国際臨床医・研究医枠入学試験があるが,以下においては,これらの方式については対象としない。)。それぞれの方式において,一次試験(ただし,センター利用は,大学入試センター試験のみが一次試験の内容となる。以下同じ)及び二次試験によって合格者を決定するものとされており,入学検定料は,一般A方式,一般B方式 及びセンター独自併用が6万円であり,その余の方式が4万円である。(甲5の1,弁論の全趣旨)イ出願期間は,平成29年1月12日までとされ,センター利用を除く一次試験は同月19日,二次試験は同月28日から同年2月10日までの間に実施された(甲4の1,6の1,乙5の2の5頁)。 ウ一次試験の合否判定(争いのない事実) 一般A方式一次試験は,マークシート式及び記述式の学力試験の試験結 での間に実施された(甲4の1,6の1,乙5の2の5頁)。 ウ一次試験の合否判定(争いのない事実) 一般A方式一次試験は,マークシート式及び記述式の学力試験の試験結果の順位ごとに,一定順位以下(101位以下)の受験者については浪人年数,性別及び調査書記載の評価(Ⓐ及びAからEまでの6段階の評価。以下, それぞれの評価を「評価Ⓐ」,「評価A」などという。)を基準として,合格者が決定される。具体的には次のとおりである。 1位から100位まで特別な理由がない限り合格とする。 101位から200位まで四浪以上の受験者は不合格201位から300位まで三浪で評価C以下の男性受験者及び二浪 で評価C以下の女性受験者は不合格301位から400位まで二浪で評価C以下の男性受験者及び一浪で評価C以下の女性受験者は不合格401位から500位まで二浪で評価B以下の男性受験者及び一浪で評価B以下の女性受験者は不合格 501位から600位まで一浪で評価C以下の男性受験者及び一浪 で評価A以下の女性受験者は不合格601位以下調査書の評価がⒶ又はAなどの受験者から合格者を検討するなお,浪人年数は,受験者が高等学校を卒業した後の経過年数とするが,他大学に通学した経歴を有する受験者については,当該通学年数が浪人 年数から差し引かれる(以下同じ)。 一般B方式一次試験は,マークシート式及び記述式の学力試験の試験結果に,英語資格・検定試験(TOEFL,IELTS,英検等)の成績を加味して審査の上,合格者が決定される(乙5の2)。 センター独自併用一次試験は,大学入試センター試 英語資格・検定試験(TOEFL,IELTS,英検等)の成績を加味して審査の上,合格者が決定される(乙5の2)。 センター独自併用一次試験は,大学入試センター試験並びにマークシート式及び記述式の学力試験の試験結果によって判定され,合格者が決定される。 センター利用一次試験は,大学入試センター試験の試験結果によって判定され,合 格者が決定される。 エ二次試験は,一次試験合格者に対し,一次試験の試験結果の順位ごとに,一般A方式については小論文及び面接の各試験結果の平均値の合計値(合計点),一般B方式,センター独自併用及びセンター利用については,小論文,英作文及び面接の各試験結果の平均値の合計値(合計点)を基準とし てそれぞれ合格者が決定される。具体的には次のとおりである。(争いのない事実) 一般A方式二次試験合格者数は,定員の2倍である134名程度とされ,小論文及び面接の各試験結果の平均値の合計値(合計点)が2.5点以上の者 について,合格者及び補欠合格者が検討された。なお,補欠合格者につ いての検討の基準は,次のとおりである。 a 補欠1A二次試験合格者数(134名程度)を超えて,次の基準を満たす者は補欠1Aとされた。 1位から100位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以 上の女性受験者101位から200位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者201位から350位まで 3.5点以上の男性受験者及び4点以上の女性受験者 351位から600位まで 4点以上の男性受験者及び4.5点以上の女性受験者b 補欠1 201位から350位まで 3.5点以上の男性受験者及び4点以上の女性受験者 351位から600位まで 4点以上の男性受験者及び4.5点以上の女性受験者b 補欠1B次の判定基準に従い,補欠1Bが検討された。 1位から100位まで 2.5点以上の女性受験者 101位から200位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者201位から350位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者351位から600位まで 3.5点以上の男性受験者及び4 点以上の女性受験者c 補欠2次の判定基準に従い,補欠2が検討された。 101位から200位まで 2.5点以上の女性受験者201位から350位まで 2.5点以上の男性受験者及び3 点以上の女性受験者 351位から600位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者一般A方式の出願者数は2145名(うち女性は880名),二次試験の合格発表の日は平成29年2月4日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は361名であった。 一般B方式二次試験合格者数は,定員と同数の10名程度とされ,小論文,英作文及び面接の各試験結果の合計点が2.5点以上の者について,合格者及び補欠合格者が検討された。なお,補欠合格者についての検討の基準は,次のとおりである。 a 補欠1A二次試験合格者数(10名程度)を超えて,次の基準を満たす者は補欠1Aとされた。 1位から10位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者 a 補欠1A二次試験合格者数(10名程度)を超えて,次の基準を満たす者は補欠1Aとされた。 1位から10位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者 11位から20位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者21位から40位まで 3.5点以上の男性受験者及び4点以上の女性受験者b 補欠1B 次の判定基準に従い,補欠1Bが検討された。 1位から10位まで 2.5点以上の女性受験者11位から20位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者21位から40位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以 上の女性受験者 c 補欠2次の判定基準に従い,補欠2が検討された。 11位から20位まで 2.5点以上の女性受験者21位から40位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者 一般B方式の出願者数は251名(うち女性は151名),二次試験の合格発表の日は平成29年2月16日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は25名であった。 センター独自併用二次試験合格者数は,定員の2倍である56名程度とされ,小論文, 英作文及び面接の各試験結果の合計点が2.5点以上の者について,合格者及び補欠合格者が検討された。なお,補欠合格者についての検討の基準は,次のとおりである。 a 補欠1A二次試験合格者数(56名程度)を超えて,次の基準を満たす者 は補欠1Aとされた。 1位から25位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者 補欠1A二次試験合格者数(56名程度)を超えて,次の基準を満たす者 は補欠1Aとされた。 1位から25位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者26位から75位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者 76位から125位まで 3.5点以上の男性受験者及び4点以上の女性受験者126位から175位まで 4点以上の男性受験者及び4.5点以上の女性受験者b 補欠1B 次の判定基準に従い,補欠1Bが検討された。 1位から25位まで 2.5点以上の女性受験者26位から75位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者76位から125位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者 126位から175位まで 3.5点以上の男性受験者及び4点以上の女性受験者c 補欠2次の判定基準に従い,補欠2が検討された。 26位から75位まで 2.5点以上の女性受験者 76位から125位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者126位から175位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者センター独自併用の出願者数は916名(うち女性は445名),二次 試験の合格発表の日は平成29年2月16日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は122名であった。 センター利用二次試験合格者数は,定員の2倍である30名程度とされ,小論文,英作文及び面接の各試験結果の合計点が2.5点以上の者について,合 格者 欠合格者の合計は122名であった。 センター利用二次試験合格者数は,定員の2倍である30名程度とされ,小論文,英作文及び面接の各試験結果の合計点が2.5点以上の者について,合 格者及び補欠合格者が検討された。なお,補欠合格者についての検討の基準は,次のとおりである。 a 補欠1A二次試験合格者数(30名程度)を超えて,以下の基準を満たす者は補欠1Aとされた。 1位から20位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上 の女性受験者21位から60位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者61位から80位まで 3.5点以上の男性受験者及び4点以上の女性受験者 b 補欠1B次の判定基準に従い,補欠1Bが検討された。 1位から20位まで 2.5点以上の女性受験者21位から60位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者 61位から80位まで 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験者c 補欠2次の判定基準に従い,補欠2が検討された。 21位から60位まで 2.5点以上の女性受験者 61位から80位まで 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者センター利用の出願者数は821名(うち女性は368名),二次試験の合格発表の日は平成29年2月16日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は60名であった。 ⑶ 平成30年度の入学試験ア募集人数は,一般A方式が60名,一般B方式が10名,センター独自併用が24名,センター利用が12名である。それぞれの方式において 合計は60名であった。 ⑶ 平成30年度の入学試験ア募集人数は,一般A方式が60名,一般B方式が10名,センター独自併用が24名,センター利用が12名である。それぞれの方式において,一次試験及び二次試験によって合格者を決定するものとされており,入学検定料は,一般A方式,一般B方式及びセンター独自併用が6万円であり, その余の方式が4万円である。(甲5の2,弁論の全趣旨) イ出願期間は,平成30年1月11日までとされ,センター利用を除く一次試験は同月18日,二次試験は同月27日から同年2月9日までの間に実施された(甲4の2,6の2,乙5の1の4頁)。 ウ一次試験の合否判定(争いのない事実) 一般A方式 一次試験の合否判定基準は,基本的に平成29年度と同様であるが(前記⑵ウ,乙5の1),学力試験の試験結果の順位が201位以下の受験者については浪人年数,性別及び調査書記載の評価を基準として,合格者が決定される。具体的には次のとおりである。 1位から200位まで特別な理由がない限り合格とする。 201位から300位まで三浪で評価C以下の男性受験者及び二浪で評価C以下の女性受験者は不合格301位から400位まで二浪で評価C以下の男性受験者及び一浪で評価C以下の女性受験者は不合格401位から500位まで二浪で評価B以下の男性受験者及び一浪 で評価B以下の女性受験者は不合格501位から600位まで一浪で評価C以下の男性受験者及び一浪で評価A以下の女性受験者は不合格601位以下調査書の評価がⒶ又はAなどの受験者から合格者を検討する 一般B方式一次試験の合否判定基準は,基本的 男性受験者及び一浪で評価A以下の女性受験者は不合格601位以下調査書の評価がⒶ又はAなどの受験者から合格者を検討する 一般B方式一次試験の合否判定基準は,基本的に平成29年度と同様であるが(前記⑵ウ,乙5の1),成績の順位が1位から75位までの受験者のうち,英語の偏差値が50以上の者が合格者とされた。 センター独自併用及びセンター利用 一次試験の合否判定基準は,平成29年度と同様である(前記⑵ウ, )。 エ一次試験合格者に対して実施される二次試験の内容は,いずれの方式についても平成29年度と同様であり(前記⑵エ),一次試験の試験結果の順位ごとに,一般A方式については小論文及び面接の各試験結果の平均値の合計値(合計点),一般B方式,センター独自併用及びセンター利用につい ては,小論文,英作文及び面接の各試験結果の平均値の合計値(合計点)を基準としてそれぞれ合格者が決定される。具体的には次のとおりである。 一般A方式合格者及び補欠合格者の判定基準は平成29年度と同様であるが(前記⑵エ),二次試験合格者数を定員の2倍である120名程度として, 合格者及び補欠合格者が検討された。 一般A方式の出願者数は2119名(うち女性は829名),二次試験の合格発表の日は平成30年2月3日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は376名であった。 一般B方式 二次試験合格者数を定員と同数の10名程度とし,小論文,英作文及び面接の各試験結果の合計点が2.5点以上の者について,次のとおり,合格者が検討された。 1~10位 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者11位~20位 3点以上の男性受験者及び3.5点以上 試験結果の合計点が2.5点以上の者について,次のとおり,合格者が検討された。 1~10位 2.5点以上の男性受験者及び3点以上の女性受験者11位~20位 3点以上の男性受験者及び3.5点以上の女性受験 者一般B方式の出願者数は306名(うち女性は174名),二次試験の合格発表の日は平成30年2月16日であり,正規合格者は10名であった。 センター独自併用 合格者及び補欠合格者の判定基準は平成29年度と同様であるが(前 記⑵エ),二次試験合格者数を定員の2倍である48名程度として,合格者及び補欠合格者が検討された。 センター独自併用の出願者数は847名(うち女性は394名),二次試験の合格発表の日は平成30年2月16日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は118名であった。 センター利用合格者及び補欠合格者の判定基準は平成29年度と同様であるが(前記⑵エ),二次試験合格者数を定員の2倍である24名程度として,合格者及び補欠合格者が検討された。 センター利用の出願者数は771名(うち女性は321名),二次試験 の合格発表の日は平成30年2月16日であり,正規合格者及び補欠合格者の合計は56名であった。 ⑷ 本件判定基準の概要(争いのない事実)ア平成29年度の本件試験について一般A方式の一次試験において,101位以下の受験者に関し,男性受 験者と女性受験者との間で,また,浪人年数に応じて,異なる合格判定基準が用いられ,本件試験の二次試験において,女性受験者の合格点が男性受験者のそれよりも0.5点高い合格判定基準が用いられた。 イ平成30年度の本件試験について一般A方式の一次試験において,201位以下の受験者に関し,男性受 験 性受験者の合格点が男性受験者のそれよりも0.5点高い合格判定基準が用いられた。 イ平成30年度の本件試験について一般A方式の一次試験において,201位以下の受験者に関し,男性受 験者と女性受験者との間で,また,浪人年数に応じて,異なる合格判定基準が用いられ,本件試験の二次試験において,女性受験者の合格点が男性受験者のそれよりも0.5点高い合格判定基準が用いられた。 ウ前記ア及びイの合格判定基準(本件判定基準)は,事前に受験者(出願者)に公表はされていなかった。 3 争点 ⑴ 本案前の争点1(主位的請求並びに予備的請求1及び2に共通)本件請求に係る被告の金銭の支払義務が本件対象消費者に共通する事実上及び法律上の原因に基づくものといえるか(特例法2条4号。いわゆる共通性の要件)⑵ 本案前の争点2(主位的請求並びに予備的請求1及び2に共通) 特例法2条7号の簡易確定手続において本件請求に係る被告に対する金銭の支払請求権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認められるか(特例法3条4項。いわゆる支配性の要件)⑶ 争点3(主位的請求関係)被告に本件判定基準を事前に明らかにすべき義務があるか ⑷ 争点4(主位的請求関係)本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反により生じた損害の有無⑸ 争点5(予備的請求関係)被告に入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務があるか⑹ 争点6(予備的請求関係) 入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務の違反により生じた損害の有無 4 争点についての当事者の主張⑴ 本案前の争点1(共通性の要件)(原告の主張) ) 入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務の違反により生じた損害の有無 4 争点についての当事者の主張⑴ 本案前の争点1(共通性の要件)(原告の主張) ア特例法2条4号に定める共通性の要件については,個々の消費者の事業者に対する請求を基礎付ける事実関係がその主要な部分において共通であり,かつその基本的な法的根拠が共通であれば,これを満たすといえる。 本件の主位的請求については,本件試験において,受験者の性別や浪人年数によって不利益に扱う本件判定基準が用いられたこと及び出願者た る本件対象消費者に対して本件判定基準を事前に明らかにすべき義務に 違反したことという,本件対象消費者に対する不法行為を構成する行為が共通していること,予備的請求については,入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務に違反したという,本件対象消費者に対する不法行為や債務不履行を構成する行為が共通していることをそれぞれ満たせば,共通性の要件を充足する。 イ被告は,予備的請求について,本件判定基準が設けられていなかったとしても不合格になる者に対しては,本件試験が不公正な方法による選抜方法に該当しないことから,共通性の要件を充足しないと主張する。しかし,前記アのとおり,予備的請求の共通性の要件は,入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務に違反したという不法行為や債務不履行を構成す る行為が共通してされていれば足りるのであるから,本件判定基準の有無にかかわらず不合格となっていた受験者がいるとしても,被告が入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務に違反したことに変わりはない。 予備的請求では,このような試験を受験した人のみを対象消費者(別紙対象消費者目録記載5から8までの 者がいるとしても,被告が入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務に違反したことに変わりはない。 予備的請求では,このような試験を受験した人のみを対象消費者(別紙対象消費者目録記載5から8までの対象消費者)にしているのであるから, 共通性の要件に欠けるところはない。 (被告の主張)ア争う。主位的請求について,女性受験者や浪人年数の多い受験者でも本件試験に合格する可能性は十分にあるのであり,仮に本件判定基準が事前に明らかにされていたとしても,本件大学の医師国家試験合格率の高さや 教育環境,学費その他の事情を考慮して,本件試験を受験する者は相当程度存在すると考えられる。そうすると,仮に本件判定基準を事前に明らかにすべき義務が被告にあるとしても,被告が不法行為に基づく損害賠償義務を負うか否かについては当該受験者が受験するに至った理由(本件試験の合格可能性のみか,その他の事情も考慮したのか)を個別に判断する必 要があり,共通性の要件を充足するとはいえない。 イまた,予備的請求について,別紙対象消費者目録5から8までの対象消費者の中には,本件判定基準がなくても一般A方式の一次試験及び本件試験の二次試験に不合格となる者が含まれる。このような者との関係では,本件試験が不公正な方法による選抜に当たるとはいえず,不法行為や債務不履行には当たらないため,仮に,被告が入学試験を公正かつ妥当な方法 で実施すべき義務に違反したと認められるとしても,原告が予備的請求において主張する事実関係や法律関係は,対象消費者に共通のものであるとはいえない。 ⑵ 本案前の争点2(支配性の要件)(原告の主張) ア本件対象消費者の属性は明確であり,被告において把握しているものであるから,対象消費者の該 のものであるとはいえない。 ⑵ 本案前の争点2(支配性の要件)(原告の主張) ア本件対象消費者の属性は明確であり,被告において把握しているものであるから,対象消費者の該当性の判断が,簡易確定手続における書面審理で迅速にできないという事態は想定し難い。 イ損害についても,入学検定料や郵送料は一律に決まっているものであるし,送金手数料や受験に要した旅費宿泊費,対象消費者が特定適格消費者 団体に支払うべき報酬及び費用は,アンケートや陳述書等を含む書面による審理で容易に認定し得るものである。 対象消費者が個別に訴訟を提起するよりも共通義務確認の訴えや簡易確定手続等による方が簡易迅速に請求できる場合には支配性の要件(特例法3条4項)を欠くと解すべきではないところ,宿泊費については,宿泊先 への照会等により資料を入手できるし,旅費については,インターネット等で検索すれば,自宅から受験会場までの合理的な経路の旅費を容易に明らかにすることができる。本件試験のために宿泊した受験者について,少なくとも1泊分の宿泊費は被告による不法行為や債務不履行と相当因果関係があるといえるし,対象消費者のうち複数の大学を受験した者の旅費宿 泊費も,受験した大学の数に応じて按分して計算することもできるのであ るから,複数の大学の受験をもって支配性の要件を欠くとはいえない。 ウ被告は,本件判定基準が事前に明らかにされていたとしても,本件大学の医学部を受験する者が相当程度存在すると主張するが,受験校を選択するに当たり,当該大学の合格可能性が最大の考慮要素とされるのは公知の事実である。したがって,被告が女性受験者や浪人生に不利益な合否判定 基準を設けていたことを明らかにしていれば,対象消費者は受験しなかっ ,当該大学の合格可能性が最大の考慮要素とされるのは公知の事実である。したがって,被告が女性受験者や浪人生に不利益な合否判定 基準を設けていたことを明らかにしていれば,対象消費者は受験しなかったと考えられるから,対象消費者が,そのような合否判定基準がないものと誤認して出願したことにより,入学検定料等の損害を被っている以上,支配性の要件に欠けるところはない。 (被告の主張) ア争う。仮に,被告が本件判定基準を事前に明らかにすべき義務を負うとしても,対象消費者に損害が生じているか否かは,当該対象消費者が受験するに至った理由を個別に判断する必要があるため,少なくとも主位的請求との関係では支配性の要件を満たしているとはいえない。 イ受験に要した旅費宿泊費は,個々の消費者の個別の事情に相当程度踏み 込んで審理せざるを得ないため,支配性の要件を欠く。原告が被告の不法行為や債務不履行と相当因果関係の認められる損害であると主張する入学検定料等も,本件判定基準が事前に開示されていたとしても,本件大学の高い国家試験合格率や安い学費等を考慮して,本件試験を受験する者は相当程度存在すると想定され,個々の対象消費者の個別事情の審理が必要で あるから,支配性の要件を欠く。 ⑶ 争点3(本件判定基準の事前開示義務の有無)(原告の主張)ア本件判定基準は,後記⑸(原告の主張)アのとおり,憲法に違反し,公平かつ妥当な方法による選抜ではないから,不法行為又は債務不履行に当 たるものであるが,被告は,本件判定基準につき学生募集要項等で事前に 明らかにしていない。 イ被告は,入学試験の合否判定に際して,憲法上の平等原則(14条)を尊重するとともに,大学設置基準や大学入学者選抜実施要項(以下 つき学生募集要項等で事前に 明らかにしていない。 イ被告は,入学試験の合否判定に際して,憲法上の平等原則(14条)を尊重するとともに,大学設置基準や大学入学者選抜実施要項(以下「本件実施要項」という。)に基づき,公正かつ妥当な方法により,多様な背景を持った学生の受入れに配慮する義務を負う。そして,被告は,学校教育法 施行規則165条の2第1項3号の規定に基づき,アドミッション・ポリシーを作成し公表する義務を負うところ,中央教育審議会大学分科会大学教育部会作成の「ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーの作成及び運用に関するガイドライン」(以下「本件ガイドライン」という。)において,大学が公表するアドミッション・ポリ シーによって,受験者が受験校選択に活用することが示唆されている。本件判定基準のように,女性受験者や浪人生に不利益な取扱いをする合否判定基準は,遅くとも平成25年度から行われていたと考えられるから,被告において,本件判定基準を事前に公表することも可能であった。 以上によれば,被告は,アドミッション・ポリシーを公表し,受験者に 対して入学試験における評価方法を具体的に明らかにする義務を負うといえるため,本件判定基準を設けていることを明らかにせずに入学試験を実施することは,社会的相当性を逸脱する違法な行為であるといえる。 ウ被告は,私立大学における医学部の入学試験が,当該私立大学医学部を起点とする大学院や附属病院における研究及び医療の担い手を選抜する という特性を有する旨主張する。しかし,被告の附属病院での採用活動が,性差別的な基準を基にされているのであれば,それ自体が,男女雇用機会均等法5条に反し違法であるから,このような違法な行為を理由に差別 いう特性を有する旨主張する。しかし,被告の附属病院での採用活動が,性差別的な基準を基にされているのであれば,それ自体が,男女雇用機会均等法5条に反し違法であるから,このような違法な行為を理由に差別的な取扱いを正当化することはできない。また,現在では医師臨床研修マッチングの制度により研修医の採用が行われているから,学生は,必ずしも 進学した大学の附属病院で研修・勤務するわけではない。したがって,本 件大学の附属病院での採用活動を前提として,性別や年齢による差別を正当化する被告の主張は,議論の前提を欠く。 その他,被告は,本件判定基準を設けることに合理的な理由があると主張するが,次のとおり,本件判定基準を用いることに合理的な理由は認められない。 性別を理由とする点について被告は,本件判定基準における性別による差異について,現状の女子寮の収容能力を前提として設けられたものであり,合理的な理由がある旨主張するが,女子寮について,平成29年度以降の入学試験は,女子寮開設後に実施されたものであるから,本件判定基準を設ける理由には ならない。また,寮の収容能力に限界があるのは男子学生も変わらないから,殊更に女子受験者にのみ異なる合否判定基準を設ける理由にはならないし,寮の収容能力は事前に公表することが可能な事情である。学校法人順天堂第三者委員会が作成した緊急第一次報告書(以下「本件報告書」という。)によれば,女子寮の収容能力と医学部女子合格者数の関 連性は認められていない。 被告は,精神的な成熟速度に性差がある傾向を踏まえて,面接試験の結果を補正する趣旨で性別を理由とする判定基準を選択したものであり,このような理由に合理性がある旨主張するが,精神的な成熟速度の性差につい は,精神的な成熟速度に性差がある傾向を踏まえて,面接試験の結果を補正する趣旨で性別を理由とする判定基準を選択したものであり,このような理由に合理性がある旨主張するが,精神的な成熟速度の性差について,一般A方式の一次試験では,男性受験者よりも女性受験者の 方が高得点でなければ合格しないものとなっているため,面接試験の成績分布の補正とは関係がないと思われるし,本件試験の二次試験では,面接試験のみならず,小論文や英作文の点数も含む合計点において性別により異なる合格点が設けられており,このような本件判定基準は面接試験の成績分布の補正を意図したものとは思われない。また,面接にお いては,志望動機や特徴的活動について質問するのが中心になると考え られ,訓練された面接官が公正中立に判定すれば,精神的な成熟度やコミュニケーション能力の高さにより得点が左右されるようなものとは考え難い。さらに,本件報告書では,面接試験において,女性受験者の平均点が男性受験者の平均点に比して0.2点高く評価される傾向にあったとされているが,平均点で0.2点の差異があるに止まるのに対し, 本件判定基準で,性別によって0.5点ずつ差をつける合理的な理由はない。仮に,面接試験における成績分布に差異があるとしても,面接では性差よりも受験者個人の資質や特性に伴う差異こそが重視されるべきである。 浪人年数を理由とする点について 浪人生について,一浪から四浪までの受験者であれば,数年程度しか違わず,医師として活躍できる期間に変わりはないし,被告の浪人年数の判定は,他大学に通学していた期間を控除するというものであるという点で,本件判定基準が合理的であるという被告の主張と矛盾する。また,本件判定基準は,浪人年数が多いほど調査票における成 告の浪人年数の判定は,他大学に通学していた期間を控除するというものであるという点で,本件判定基準が合理的であるという被告の主張と矛盾する。また,本件判定基準は,浪人年数が多いほど調査票における成績の高さを 必要とし,浪人生については早期に一定の学力を身に着けることができたものを優遇するということになっておらず,被告の主張する方針と合否判定基準が合致していない。 被告は,現役生及び一浪と,二浪以上の者との間に医師国家試験の合格率に差異があり,浪人年数の多寡と医師国家試験の合格率の高さとの 間に相関関係が認められると主張するが,これを根拠とするのであれば一浪の受験者を不利益に扱う理由はないところ,本件判定基準は一浪の受験者も不利益に取り扱うものであるから,上記分析と合否判定基準とが整合していない。医師国家試験の合格率の差異は,大学によって入学試験の難易度が異なることや大学入学後の教育内容等,他の要因によっ ても生じ得るから,現役比率の高さと合格率の高さとの間に因果関係は ない。また,上記分析は,①変数が少なすぎる(現役入学生と浪人入学生の一年次の成績等,大学内の個票も別途検討すべきである)こと,②「現役+一浪」を比率の分子にする合理性はないこと,③入学偏差値の異なる24もの大学のサンプルを2群に分けること自体に妥当性がないこと,④6年間の成績,個人の得意不得意分野,他の発達に関する指標 等を用いて多変量解析モデルで分析されていないこと等の点で問題がある。 仮に,浪人年数と医師国家試験の合格率との間に相関関係があるとしても,元々医師国家試験の合格率が非常に高く,その中で,合格率をわずかに向上させることが大学の存続のために必要であるとはいい難く, しかも,学生募集要項の中 の合格率との間に相関関係があるとしても,元々医師国家試験の合格率が非常に高く,その中で,合格率をわずかに向上させることが大学の存続のために必要であるとはいい難く, しかも,学生募集要項の中で,一定の学力に早く到達したかどうかを考慮することは示されていないのであるから,これを本件大学の入学試験の合否判定で考慮要素とするのは不適切であるし,上記分析を前提としても,現役生と浪人生との間の比率の差異による医師国家試験合格率の変動幅は誤差の範囲に止まる。 (被告の主張)ア争う。大学の入学試験における合否判定基準を事前に学生募集要項等で開示することを義務付ける法令や通達等は存在しないし,被告における合否判定基準は,入学試験の実施後,当該年度の試験結果を踏まえて合格者選考会議の場で決定されるものであるから,これを事前に明らかにするこ とはできない。また,私立大学は,国立大学とは異なり,私人の寄附財産等によって設立・運営されることを原則とし,自主的に運営基盤の強化を図ることが責務とされ(私立学校法24条),必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びにその設置する私立学校の経営に必要な財産を自ら有しなければならず(同法25条),その経営に充てるために収益を目的とす る事業を行うことができるとされるなど(同法26条),結社の自由(憲法 21条)に基づき,その建学の精神や独自の校風による自主性が重んじられ,所轄庁による規制ができるだけ制限されるべき民間団体であって(私立学校法1条参照),その内部自治は,私的自治の原則の下において,より尊重されるべきとされている。そして,私立大学における医学部の入学試験は,当該私立大学医学部を起点とする大学院や附属病院における研究及 び医療の担い手となることが期待される者 の下において,より尊重されるべきとされている。そして,私立大学における医学部の入学試験は,当該私立大学医学部を起点とする大学院や附属病院における研究及 び医療の担い手となることが期待される者を選抜するという特性を有する。 以上の点からすれば,被告が本件判定基準を事前に明らかにすべき義務を負うとはいえない。 イ本件判定基準における取扱いには,次のとおり合理的な理由があるといえる。 性別を理由とする点について各大学は,定員管理や経営資源配分に係る判断について,広範な裁量を有するところ,私立大学における定員管理は,各年度の受験者の成績分布や傾向,入学試験の結果,辞退率等,大学側でコントロールできない不確定要素に左右される予測に基づく判断が必要となる中で,各大学 が,それぞれの教育方針や実情等を踏まえ,諸般の要素を総合考慮した上で判断されるべきものである。特に,本件大学においては,1年次を全寮制とする教育方針が設けられていたため,実際の入学者数につき,男子学生数が男子寮の室数内,女子学生数が女子寮の室数内に収まるように合格者数を調整する必要性があった。したがって,性別を理由とす る入学試験における取扱いの差異は,実際の女子入学者数の予測が困難な状況において,現状の女子寮の収容能力を前提として設けられたものであり,合理的なものであった。 また,被告においては,経験則として,入学試験時点では女性の方が男性よりも精神的な成熟が早く,相対的にコミュニケーション能力が高 い傾向があるが,大学入学後,時間の経過によって男性の精神的な成熟 が進み,コミュニケーション能力の性差が縮小又は解消される傾向があると考えていたところ,受験という一時点だけではなく,医師養成という将来的・長期的視点を考慮した判断も 男性の精神的な成熟 が進み,コミュニケーション能力の性差が縮小又は解消される傾向があると考えていたところ,受験という一時点だけではなく,医師養成という将来的・長期的視点を考慮した判断も必要であるとの考えから,精神的な成熟速度の性差に関する傾向を踏まえて,性別を理由とする判定基準を選択したものであり,かかる理由には合理性がある。 浪人年数を理由とする点について医師として活躍するには,医師国家試験の合格後も10年以上にわたる研鑽や経験を重ねることが必要であり,これを全うするための知力,体力,気力の有無を,本件大学医学部の入学試験の合否判定に当たり考慮する必要性がある。本件大学として,医師としての素養の有無の判断 要素の1つとして,医師国家試験に合格し得る能力を有するかという点を考慮する必要性があり,また,現役生又は浪人年数の少ない受験者の医師国家試験の合格率が,浪人年数の多い受験者に比して,高い傾向があると認められるところ,入学試験の成績,高校の調査票,受験者自身の情報という本件試験時に入手できる限られた資料を前提にすると,入 学試験において同一の成績を修めたとしても,より早く一定の学力水準に到達した者の方が,入学後に能力を伸ばし,将来医師国家試験に合格し得る能力を有すると判断するのも合理的な判断である。また,私立大学医学部の入学試験に合格し,入学した者は,当該私立大学医学部の構成員として,将来,その多くが当該医学部を起点とする研究及び医療の 担い手となることが期待される以上,将来医師として長く働ける可能性を考慮する必要性があった。 以上の点や,本件判定基準が浪人生を一律に排除するわけではなく,浪人年数と成績が組み合わされることで,浪人生にも合格の可能性が十分にあることからすると,本件判定基 能性を考慮する必要性があった。 以上の点や,本件判定基準が浪人生を一律に排除するわけではなく,浪人年数と成績が組み合わされることで,浪人生にも合格の可能性が十分にあることからすると,本件判定基準において,浪人年数に応じて差 異を設けた点は合理的なものであったといえる。 ⑷ 争点4(本件判定基準の事前開示義務違反により生じた損害の有無)(原告の主張)本件判定基準は本件試験の合否に大きな影響を及ぼすものであり,かつ受験者は,限られた時間的・経済的制約の中で受験校を選択するのであり,入学試験の合格可能性を最大の考慮要素とすると考えられるから,本件対象消 費者は,特別な事情のない限り,本件判定基準が存在することを知っていれば,本件大学を受験しないと考えるのが通常であるといえる。 したがって,以下の損害は,本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反と相当因果関係のある損害である。 ア入学検定料 センター利用を受験した場合は4万円,その余の方式(一般A方式,一般B方式及びセンター独自併用)を受験した場合は6万円である。 イ送金手数料所定の振込票により電信扱いで送金する必要があり,窓口送金を要するところ,その費用は450円又は864円である。 ウ出願書類郵送料願書を書留・速達便で送付するのが一般的であるから,基本料金120円,速達料金280円及び書留料金430円の合計830円である(なお,実額が判明する場合はそれによる。)。 エ受験に要した旅費宿泊費 オ特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用特例法においては,制度上,対象消費者が特例法に基づく手続により被害の回復をする場合には特 エ受験に要した旅費宿泊費 オ特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用特例法においては,制度上,対象消費者が特例法に基づく手続により被害の回復をする場合には特定適格消費者団体の報酬及び費用を支払うべきものとされているから(特例法76条,65条4項6号),本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反と相当因果関係のある損害である。 (被告の主張) アいずれも争う。 イ前記⑴(被告の主張)アのとおり,大学の医学部の入学試験における受験校の選択においては,様々な要素が考慮されると考えられるところ,特に,本件大学において,非常に高い医師国家試験の合格率という実績がある一方で,学費が他の私立大学と比して安く設定されている点は,受験者 が本件大学を選択する重要な考慮要素となっている。また,女性受験者や浪人生であったとしても,本件試験に合格する可能性は十分にあるのであって,仮に,本件判定基準が事前に明らかにされていたとしても,本件大学を受験する者は相当程度存在すると思われる。したがって,本件判定基準が事前に明らかにされていれば,本件大学を受験しないといった一般的 な因果関係は存在しない。 したがって,本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反と原告の主張する損害との間に相当因果関係があるとはいえない。 ⑸ 争点5(入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務の有無)(原告の主張) ア被告は,どのような学生を入学させるかについて広範な裁量を有しているが,その裁量には限界がある。そして,本件大学のような私立大学も公の性質を有するため,被告も,入学試験を実施するに当たり,憲法26条や14条の規定の趣旨を尊重する義務を負うところ,学校教育法の規定 るが,その裁量には限界がある。そして,本件大学のような私立大学も公の性質を有するため,被告も,入学試験を実施するに当たり,憲法26条や14条の規定の趣旨を尊重する義務を負うところ,学校教育法の規定に基づいて定められた大学設置基準2条の2や本件実施要項につき,上記の 憲法の規定に適合するように解釈すると,被告は,入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務を負っていたといえる。 しかし,本件判定基準は,合理的な理由なく,女性受験者や浪人生(高年齢者)を不利益に扱うものであるから,公正かつ妥当な入学試験の方法とはいえず,被告に与えられた裁量を逸脱する行為である。 したがって,本件判定基準を用いて入学試験を実施することは,被告の 裁量を逸脱する違法なものであるから,不法行為に該当する。また,大学設置基準が大学の提供するサービスの当然の前提となる以上,同基準を満たしていることが,本件試験の入学試験受験契約の内容になっているというべきであるから,本件判定基準を用いて入学試験を実施することは,入学試験受験契約の内容に違反するものとして,債務不履行にも該当する。 イ被告は,本件実施要項上,「公正かつ妥当な方法」の具体的内容が明らかではないから,被告が入学試験を「公正かつ妥当な方法」で実施すべき義務を負っていない旨主張するが,前記アのとおり,「公正かつ妥当な方法」の具体的内容は,本件試験以前から明らかであったというべきであるから,被告の当該主張は不合理である。 (被告の主張)争う。本件実施要項には,「各大学は,入学者の選抜を行うに当たり,公正かつ妥当な方法によって,入学志願者の能力・意欲・適正等を多面的・総合的に判定する。」との記載はあるものの,ここでいう「公正かつ妥当な 。本件実施要項には,「各大学は,入学者の選抜を行うに当たり,公正かつ妥当な方法によって,入学志願者の能力・意欲・適正等を多面的・総合的に判定する。」との記載はあるものの,ここでいう「公正かつ妥当な方法」の具体的な内容は明らかではない。また,憲法14条及び26条の規定は, 私人である被告における入学試験の実施の関係で直接適用されるものではない。 したがって,被告が受験者に対して負う法的義務や契約上の債務として入学試験を「公平かつ妥当な方法で実施すべき義務」を負っていると解することはできないし,対象消費者が,具体的権利・利益として,原告が指摘する 法令等に基づき,「公平かつ妥当な方法」で実施される入学試験を受ける権利を有すると解することもできない。 ⑹ 争点6(入学試験を公正かつ妥当な方法で実施すべき義務の違反により生じた損害の有無)(原告の主張) 前記⑷(原告の主張)と同様である。 (被告の主張)いずれも争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認 められる。 ⑴ 法令等の定めア教育基本法6条1項法律に定める学校は,公の性質を有するものであって,国,地方公共団体及び法律に定める法人のみが,これを設置することができる。 イ学校教育法1条この法律で,学校とは,幼稚園,小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校とする。 2条 1項学校は,国(国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。以下同じ。),地方公共団体(地方独立 2条 1項学校は,国(国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。以下同じ。),地方公共団体(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第68条第1項に規定する公立大学法人(以下「公立大学法人」という。)を含む。次項及び第127条にお いて同じ。)及び私立学校法(昭和24年法律第270号)第3条に規定する学校法人(以下「学校法人」という。)のみが,これを設置することができる。 2項この法律で,国立学校とは,国の設置する学校を,公立学校とは,地方公共団体の設置する学校を,私立学校とは,学校法人の設置す る学校をいう。 3条学校を設置しようとする者は,学校の種類に応じ,文部科学大臣の定める設備,編制その他に関する設置基準に従い,これを設置しなければならない。 ウ学校教育法施行規則165条の2第1項 大学は,当該大学,学部又は学科若しくは課程(大学院にあっては,当該大学院,研究科又は専攻)ごとに,その教育上の目的を踏まえて,次に掲げる方針を定めるものとする。 一卒業又は修了の認定に関する方針二教育課程の編成及び実施に関する方針 三入学者の受入れに関する方針エ大学設置基準2条の2入学者の選抜は,公正かつ妥当な方法により,適切な体制を整えて行うものとする。 オ中央教育審議会は,平成26年12月22日,「新しい時代にふさわしい 高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について~すべての若者が夢や目標を芽吹かせ,未来に花開かせるために~(答申)」と題する書面により,文部科学大臣に対して答 高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学者選抜の一体的改革について~すべての若者が夢や目標を芽吹かせ,未来に花開かせるために~(答申)」と題する書面により,文部科学大臣に対して答申した(甲10の2)。同書面には,以下のような記載がある。 高大接続改革の実現に向けて現在直面する最大の課題は,高等学校教 育と大学教育とを接続する重要な役割を果たすべき大学入学者選抜の在り方であり,高等学校教育改革,大学教育改革の実効性を高めるためにも,大学入学者選抜の改革に社会全体で取り組む必要がある。このような観点から,各大学が個別に行う入学者選抜については,学力の三要素(①知識・技能,②思考力・判断力・表現力及び③主体性を持って多様 な人々と協働して学ぶ態度)を踏まえた多面的な選抜方法をとるものと し,特定分野において卓越した能力を有する者の選抜や,年齢,性別,国籍,文化,障害の有無,地域の違い,家庭環境等にかかわらず多様な背景を持った学生の受入れが促進されるよう,具体的な選抜方法等に関する事項を,各大学がその特色等に応じたアドミッション・ポリシーにおいて明確化する。このために,アドミッション・ポリシー等の策定を 法令上位置付けるとともに,大学入学者選抜実施要項を見直す。 (10頁,11頁) 大学入学者選抜を含むあらゆる評価において,画一的な一斉試験で正答に関する知識の再生を問い,その結果の点数だけを評価対象とすることが公平であると捉える,既存の「公平性」についての社会的意識を変 革し,それぞれの学びを支援する観点から,多様な背景を持つ一人ひとりが積み上げてきた多様な力を,多様な方法で「公正」に評価するという理念に基づく新たな評価を確立していくことが不可欠である。 (11頁 革し,それぞれの学びを支援する観点から,多様な背景を持つ一人ひとりが積み上げてきた多様な力を,多様な方法で「公正」に評価するという理念に基づく新たな評価を確立していくことが不可欠である。 (11頁)各大学は,求める学生像のみならず,各大学の入学者選抜の設計図として必要な事項をアドミッション・ポリシーにおいて明確化することが 必要であり,高等学校及び大学において育成すべき「生きる力」「確かな学力」の本質を踏まえつつ,入学者に求める能力は何か,また,それをどのような基準・方法によって評価するのかを,アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められる。アドミッション・ポリシーの策定に当たっては,各大学の強み,特色や社会的役割を踏まえつつ, 大学教育を通じてどのような力を発展・向上させるのかを明らかにした上で,個別選抜において,様々な能力や得意分野,異なる背景を持った多様な生徒が,高等学校までに培ってきたどのような力を,どのように評価するのかを明示する必要がある。また,「確かな学力」として求められる三要素を総合的に評価する視点を担保するため,どのような評価方 法を活用するのか,学力の三要素全てを評価の対象としつつ,特にどう いった要素に比重を置くのかを,大学入学希望者に対して明確に示していくことが求められる。(11頁,12頁)国は,各大学が取り組むことが求められる事項(アドミッション・ポリシーの明確化,個別選抜の改革(学力の三要素を踏まえた学力評価の実施,多元的な評価の推進等),入学者の追跡調査等による,選抜方法の 妥当性・信頼性の検証)について,どのような手段(法令改正,大学入学者選抜実施要項の見直し,評価,支援策)によってこれらの取組を促進するかを明らかにした上で,具体的な取組を推進す ,選抜方法の 妥当性・信頼性の検証)について,どのような手段(法令改正,大学入学者選抜実施要項の見直し,評価,支援策)によってこれらの取組を促進するかを明らかにした上で,具体的な取組を推進することが必要である。(23頁)カ中央教育審議会大学分科会大学教育部会は,平成28年3月31日,「「卒 業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」(本件ガイドライン)を公表した(甲12)。本件ガイドラインには,以下のような記載がある。 大学教育の質的転換に向け,各大学には,それぞれの教育理念を踏まえて3つのポリシー(ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー及びアドミッション・ポリシーを指す。以下同じ。)を策定し,それらに基づき,「自らの教育理念の実現に向け,どのような学生を受け入れ,求める能力をどのようなプログラムを通じて育成するか」という観点から, 大学教育の「入口」(入学者選抜)から「出口」(卒業認定・単位授与)までの教育の諸活動を一貫したものとして再構築し,その効果的な実施に努めることにより,学生に対する教育をより密度の濃い,充実したものにすることが期待される。(3頁) 3つのポリシーを一体的に策定し,公表することは,大学自身はもと より,入学希望者,学生,保護者,高等学校関係者,さらには社会にと っても大きな意義があると考えられる。 大学への入学希望者や学生,保護者,高等学校関係者等にとって,3つのポリシーは相互のコミュニケーションを改善し,接続を円滑化する上での大学からの重要なメッセージとな あると考えられる。 大学への入学希望者や学生,保護者,高等学校関係者等にとって,3つのポリシーは相互のコミュニケーションを改善し,接続を円滑化する上での大学からの重要なメッセージとなる。具体的には,例えば,入学希望者にとっては,当該大学でどのような教育研究が行われているのか をあらかじめ認識し,入学後の学修方法・学修過程や卒業までに求められる学修成果についてあらかじめ見通しを持ち,学びたい内容に照らして大学を選ぶことが可能となるとともに,大学が初等中等教育段階におけるどのような学習成果を求めているのか,入学までに何を身に付けなければならないのかが明確になる。(3頁,4頁) アドミッション・ポリシーの策定に当たっては,「学力の3要素」を念頭に置き,入学前にどのような多様な能力をどのようにして身に付けてきた学生を求めているか,入学後にどのような能力をどのようにして身に付けられる学生を求めているかなど,多様な学生を評価できるような入学者選抜の在り方について,できる限り具体的に示すこと,入学者選 抜において,アドミッション・ポリシーを具現化するためにどのような評価方法を多角的に活用するのか,それぞれの評価方法をどの程度の比重で扱うのか等を具体的に示すことに留意することが重要と考えられる。 (5頁から7頁まで)キ文部科学省高等教育局長は,平成30年度の本件実施要項(甲8)を定 め,平成29年6月1日,各国公私立大学長等宛てに通知を発出した。平成30年度の本件実施要項には,以下のような記載がある。 各大学は,入学者の選抜を行うに当たり,公正かつ妥当な方法によって,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する。その際,各大学は,年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を 各大学は,入学者の選抜を行うに当たり,公正かつ妥当な方法によって,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する。その際,各大学は,年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を 持った学生の受入れに配慮する。(1頁) 各大学は,入学受入れの方針(アドミッション・ポリシー),募集人員,出願要件,出願手続,試験期日,試験方法,試験場,入学検定料その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限など入学志願者が出願等に必要な事項を決定し,それらを明記した募集要項を平成29年12月15日までに発表する。(6頁) 各大学は,入学志願者に対し,募集要項のほか,大学案内,大学説明会等により,入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー),学部等の組織,教育研究の内容及び特色,学生生活の概要及び諸経費,過去の年度の入学志願者及び合格者の数,卒業後の進路状況など大学・学部等の選択の参考となる情報の提供に努める。(6頁) 各大学は,受験者本人への成績開示や,入試方法の区分に応じた受験者数,合格者数,入学者等の入試情報の積極的開示に努める。また,試験の評価・判定方法については,可能な限り情報開示に努める。(7頁)入学者選抜は,中立・公正に実施することを旨とし,入試問題の漏洩など入学者選抜の信頼性を損なう事態が生ずることのないよう,学長を 中心とした責任体制の明確化,入試担当教職員の選任における適格性の確保,研修の実施など実施体制の充実を図る。(8頁)⑵ 平成29年度の本件試験の学生募集要項(乙5の2)及び平成30年度の本件試験の学生募集要項(乙5の1)には,要旨,以下の記載がある。 ア本件大学の医学教育の基礎を十分なものとするため,本件大学の医学部 及びスポーツ健康科 要項(乙5の2)及び平成30年度の本件試験の学生募集要項(乙5の1)には,要旨,以下の記載がある。 ア本件大学の医学教育の基礎を十分なものとするため,本件大学の医学部 及びスポーツ健康科学部の1年生全員を学寮に入寮させる。 (乙5の1の3頁,50頁,乙5の2の3頁,39頁)イ入学検定料は,クレジットカード又はコンビニエンスストア等を利用して支払うことができるが,支払の際には,入学検定料のほかに支払手数料を負担する必要がある。(乙5の1の51頁,52頁,乙5の2の26頁, 30頁) ウ出願書類は,簡易書留速達郵便で送付する必要がある。(乙5の1の54頁,乙5の2の28頁)⑶ 本件大学は,平成30年10月18日,本件大学医学部の入学試験における事実関係や不正の存否等の調査を主たる目的として,学校法人順天堂大学第三者委員会(以下「本件第三者委員会」という。)を設置した(甲3)。 ア本件第三者委員会は,平成30年12月3日,平成29年度及び平成30年度の入学試験についての調査結果をまとめた緊急第一次報告書(本件報告書。甲3)を本件大学に提出した。 イ本件報告書には,前記前提事実⑵から⑷までの事実の他に,以下の事実が記載されている。 本件第三者委員会は,本件判定基準につき,要旨,以下のとおり意見した。 a 性別を理由とする合否判定について,本件第三者委員会としても,寮生活を前提とする医学部における教育活動が有意義なものであろうことは理解できるものの,本件第三者委員会において,過去30年間 における寮の収容人数の変遷及び医学部1年生の女子学生の入寮人数の変遷を検証したところ,スポーツ健康科学部の女子学生の入寮開始や定員増に伴う女子学生の人数の増加に伴い,女子 て,過去30年間 における寮の収容人数の変遷及び医学部1年生の女子学生の入寮人数の変遷を検証したところ,スポーツ健康科学部の女子学生の入寮開始や定員増に伴う女子学生の人数の増加に伴い,女子寮の収容人数が大きく増加した時期が複数回確認される一方で,女子寮の収容人数に連動したと理解し得る医学部女子学生の合格者数の増員は確認できなか った。また,本件試験の合格者選考会議又は教授会において,女子寮の収容人数が具体的な考慮要素として説明され,格別に審議された様子も認められないし,学生募集要項の記載等により医学部女子学生の定員が女子寮の収容人数と関連して変動し得る旨を判別し得る状況にもない。以上からすれば,女子寮の収容人数の制限が医学部女子学生 に対する不利益な取扱いの理由である旨の説明によって本件判定基準 に基づく女性への不利益な取扱いの合理的理由があるものとは解し得ない。 また,一般A方式の二次試験として実施された面接試験における女性受験者の平均点と男性受験者の平均点は0.11点から0.27点(6年間の平均で0.2点)程度の差であると解されるし,仮に面接 試験における男性受験者と女性受験者の成績分布差が存在したものと仮定しても,面接試験においてはその性質上,受験者個人の資質や特性に伴う差異こそが性差よりも重視されるべきと解されるのであって,このことからも本件判定基準に基づく性別を理由とした合格基準の相違の合理性が理由付けられるものと解することはできず,男女の合格 基準に0.5点の区別をつける理由として合理性があるものとは解し得ない。(48頁から50頁まで)b 浪人年数を理由とする合否判定について,医学部生の留年率の低さ及び医師国家試験合格率の高さは本件第三者委員会においても認めるとこ て合理性があるものとは解し得ない。(48頁から50頁まで)b 浪人年数を理由とする合否判定について,医学部生の留年率の低さ及び医師国家試験合格率の高さは本件第三者委員会においても認めるところであるものの,本件大学が,浪人年数が多い学生の留年状況, 成績状況等について,本件大学内外における特段の追跡調査や検証等を行っていたものとは解されず,また,受験者が当該浪人年数に至った事由や大学入学後の伸びしろを含めた能力には個人差が存在するものと想定されるが,これらについての個別審査の機会を与えずに,浪人年数に基づく一定の基準のもとに不利益な取扱いがされることにつ いて,本件第三者委員会において適切な根拠を認めることはできない。 平成30年度及び平成29年度における一般A方式の二次試験の合格者数は,合格者が130名前後であり,補欠合格者は220名以上であったと認められ,学力試験の順位が200位以下の受験者のうちにも複数の合格者及び補欠合格者が存在している状況も確認されるとこ ろ,本件大学のアドミッション・ポリシーにおいて,受験者の浪人年 数を合否判定の考慮要素とする旨の記載は一切確認されず,一般A方式のみを選択した受験者が他の入試方式によって救済される途もない。 これらの状況からすれば,受験者に,一部の入試方式において浪人年数が合否判定要素とされることについての認識可能性はなく,極端な例では合格が事実上著しく困難な浪人年数となった後もその旨の認識 を得ることなく本件大学医学部入試の一般A方式を受験し続ける事態が生じることも想定され得る。 いかに限定的な範囲を対象とするものとはいえ,浪人年数が長い受験者について面接試験等の個別審査の機会を与えることなく,現役生に比べて厳しい合否基準を適用することは,本 ることも想定され得る。 いかに限定的な範囲を対象とするものとはいえ,浪人年数が長い受験者について面接試験等の個別審査の機会を与えることなく,現役生に比べて厳しい合否基準を適用することは,本件実施要項における「各 大学は,入学者の選抜を行うに当たり,公正かつ妥当な方法によって,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する。その際,各大学は,年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する。」との記載に相反するものと解される。 (51頁から53頁まで) c 平成30年度及び平成29年度の本件大学医学部入試における,一部の入試種別における性別及び浪人年数を基準とした不利益な取扱いを内容とする本件判定基準については,本件第三者委員会の調査において合理的理由があるものと認めることができず,本件大学の裁量の範囲を逸脱した不利益な取扱いに当たると判断する。(53頁) 本件第三者委員会は,本件大学に対し,以下のとおり提言した(55頁)。 a 本件大学において,直ちに本件判定基準の該当部分(一般A方式,一般B方式,センター独自併用及びセンター利用の二次試験並びに一般A方式の一次試験についての各合否判定基準)の運用を廃止し,来 たる平成31年度入試において「公正かつ妥当な方法」による入試を 確実に実施・遂行すべきこと。 b 本件大学において,本件報告書の内容を吟味検証の上,平成31年度入試における本件大学の対応方針を可及的速やかに公表し,同年度入試の受験者に不安や支障が生じないよう能う限りの方策を講じるべきこと。 ⑷ 文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室は,大学の医学部医学科の入学者の選抜において不適切な取扱いがされていたことが判明し 不安や支障が生じないよう能う限りの方策を講じるべきこと。 ⑷ 文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室は,大学の医学部医学科の入学者の選抜において不適切な取扱いがされていたことが判明したことを受け,医学部医学科を置く全ての大学を対象として緊急調査を実施し,平成30年12月14日,医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査結果に関する最終まとめを作成した(甲11の1)。この最終まとめには, 以下のような記載がある。 ア大学入学者選抜実施要項においては,各大学が,入学者の選抜を行うに当たり,公正かつ妥当な方法によって,入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定するものとされており,個別具体的な入学者選抜の方法については,この原則に反しない範囲で,各大学のアドミッション・ ポリシーに基づく各大学の判断に委ねられる。また,大学入学者選抜実施要項においては,各大学は,アドミッション・ポリシー,募集人員,出願要件,出願手続,試験期日,試験方法など入学志願者が出願等に必要な事項を決定し,それらを明記した募集要項を一定の時期までに公表するものとされており,募集要項は,入学志願者にとって出願に影響を及ぼす重要 な判断材料としての役割を持っている。このような考え方を踏まえつつ,これまでの調査の中で把握した事案について検討した結果,文部科学省としては,少なくとも,募集要項等であらかじめ説明していた試験方法や合否判定基準に反して又はあらかじめ説明していないにもかかわらず,合理的な理由なく性別,年齢,現役・浪人の別等の属性に応じた一律の得点調 整や取扱いの差異の設定などを行うことについては,不適切と判断すべき であると考えている。(5頁)イ前記アは,募集要項であらかじ 役・浪人の別等の属性に応じた一律の得点調 整や取扱いの差異の設定などを行うことについては,不適切と判断すべき であると考えている。(5頁)イ前記アは,募集要項であらかじめ説明すれば,差別的な取扱いも許容されるという趣旨のものではなく,性別,年齢等の属性による取扱いの差異を設けるならば,募集要項等であらかじめ説明するだけではなく,大学がその合理的な理由を説明できることが必要であるという趣旨である。性別, 年齢等の属性により一律に差異を設けるような取扱いは,社会通念上,認められるものではないと認識している。(5頁,6頁) 2 本案前の争点1(共通性の要件)について⑴ 特例法における共通義務確認の訴えは「消費者に共通する事実上及び法律上の原因」に基づくものである必要があるところ(特例法2条4号),これは, 個々の消費者の事業者に対する請求を基礎付ける事実関係がその主要部分において共通であり,かつ,その基本的な法的根拠が共通であることをいうものと解することが相当である。 これを本件訴えについてみると,主位的請求及び予備的請求を基礎付ける事実関係は,いずれにおいても,本件試験において本件判定基準が用いられ る一方で,これが事前に明らかにされていなかったことのほか,本件対象消費者において本件試験に出願したこと(主位的請求)又は本件試験のうち一般A方式の一次試験を受験したこと若しくは一般B方式,センター独自併用若しくはセンター利用の一次試験に合格し,二次試験を受験したこと(予備的請求)であり,請求を基礎付ける事実関係が主要部分において本件対象消 費者全員に共通である。また,法的根拠も本件判定基準を事前に明らかにすべき義務に違反したことを理由とした不法行為(主位的請求)又は入学試験を公 基礎付ける事実関係が主要部分において本件対象消 費者全員に共通である。また,法的根拠も本件判定基準を事前に明らかにすべき義務に違反したことを理由とした不法行為(主位的請求)又は入学試験を公正かつ妥当な方法で実施する義務に違反したことを理由とする不法行為若しくは債務不履行(予備的請求)であるから,基本的な法的根拠が本件対象消費者全員に共通であるといえる。 以上によれば,本件訴えは,いずれも共通性の要件を満たすものと認めら れる。 ⑵ これに対し,被告は,本件試験の出願の動機は様々で個々の消費者により異なるとして,本件訴えが共通性の要件を欠くと主張する。 しかし,共通義務確認の訴えは,①消費者に共通する事実上及び法律上の原因が存在する(共通性の要件)ことを前提として,②個々の消費者の事情 によりその金銭の支払請求に理由がない場合を除いて,事業者が,金銭を支払う義務を負うべきことの確認を求める訴え(特例法2条4号)であり,②の個々の消費者の事情については,簡易確定手続(特例法2条7号)及び異議後の訴訟(特例法2条8号)の手続において審理することが予定されているものである。この点で,被告の上記指摘は,②の個々の消費者の事情とし て,その主観的な認識等を問題とするものにとどまり,①の共通性の要件に関する判断を左右するものとはいえない。 ⑶ また,被告は,予備的請求について,本件対象消費者のうち,本件判定基準が用いられなかったとしても本件試験に不合格となる者との関係では,本件試験が不公正な方法による選抜に当たるとはいえないとして,共通性の要 件を欠くと主張するが,これも,前記⑵②の個々の消費者の事情を問題とするものにとどまり,前記⑵①の共通性の要件に関する判断を左右するものとはい よる選抜に当たるとはいえないとして,共通性の要 件を欠くと主張するが,これも,前記⑵②の個々の消費者の事情を問題とするものにとどまり,前記⑵①の共通性の要件に関する判断を左右するものとはいえない。 3 本案前の争点2(支配性の要件)について⑴ 支配性の要件について 特例法3条4項は,「裁判所は,共通義務確認の訴えに係る請求を認容する判決をしたとしても,事案の性質,当該判決を前提とする簡易確定手続において予想される主張及び立証の内容その他の事情を考慮して,当該簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときは,共通義務確認の訴えの全部又は一部を却下すること ができる。」と規定している。これは,簡易確定手続において個々の消費者の 損害や損失,因果関係の有無等を判断するのに個々の消費者ごとに相当程度の審理を要する場合には,二段階の訴訟手続を設けて簡易迅速に個々の消費者の請求権の実効性を確保しようとする法の趣旨に沿うものではないから,いわゆる支配性の要件(個別の争点に対して共通争点が支配的であること)を欠くとして共通義務確認の訴えの全部又は一部を却下することとしたもの と解される。 なお,簡易確定手続においては,相手方が届出債権につき認否をし(特例法42条1項),債権届出団体が同認否を争う旨の申出をする場合には(特例法43条1項),裁判所は簡易確定決定をしなければならない(特例法44条1項)。この審理においては,裁判所は当事者双方を審尋するが(特例法44 条2項),証拠調べは書証に限りすることができる(特例法45条1項)とされている。簡易確定決定に対して当事者及び届出消費者は異議の申立てをすることができ(特例法46条1項,2項 (特例法44 条2項),証拠調べは書証に限りすることができる(特例法45条1項)とされている。簡易確定決定に対して当事者及び届出消費者は異議の申立てをすることができ(特例法46条1項,2項),その場合には債権届出団体を原告として,簡易確定決定をした地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされる(特例法52条1項)ことになる。 ⑵ 本件受験費用等について原告が主張する各損害項目のうち,本件受験費用(入学検定料,送金手数料及び郵送料)と対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用については,その費用が定型的であり,書証による審理が容易であると認められる。また,後記5のとおり,原告の主張する不法行為又は債務不履行 と上記各損害項目との間の相当因果関係の有無についても,簡易確定手続において適切かつ迅速に判断することが困難であるとは認められないから,支配性の要件に欠けるところはない。 ⑶ 受験に要した旅費宿泊費についてア原告は,受験に要した旅費宿泊費についても支配性の要件を満たすと主 張する。 特例法3条2項は,拡大損害,逸失利益,人身損害,慰謝料等について,共通義務確認の訴えを提起することができないと定めているが,その趣旨は,①共通義務確認訴訟の段階で,事業者がおおよその損害額を把握することが困難であること,②因果関係や損害の認定に関する個別性が高く,類型的に支配性の要件に欠けることの2点にあると解される。 本件で問題となる受験に要した旅費宿泊費は,特例法3条2項で規定されている類型には該当しないものの,そのおおよその額を被告が把握することに困難な面があることは否定できないし,因果関係や損害の認定においても個々の消費者の事情により異 泊費は,特例法3条2項で規定されている類型には該当しないものの,そのおおよその額を被告が把握することに困難な面があることは否定できないし,因果関係や損害の認定においても個々の消費者の事情により異なる部分が相当程度あるものであるから,その支配性の要件の有無については慎重に検討する必要がある。 イ受験に要した旅費宿泊費につき,「簡易確定手続において予想される主張及び立証の内容その他の事情」(特例法3条4項)を検討するに,①本件対象消費者が支出した旅費及び宿泊費の額が幾らであるか,②本件対象消費者による①の支出のうち,原告の主張する不法行為又は債務不履行と相当因果関係のある損害がどの範囲で認められるかの2点が主要 な争点となることが予想される。 前記①については,本件対象消費者が領収書等を保管している場合には,その金額を確定することは容易であると認められるものの,その支出の性質上,本件対象消費者のうち,全ての旅費及び宿泊費の領収書等を保管していない者が相当数に上るものと推測されるところである。 そうすると,これらの対象消費者については,簡易確定手続においては,陳述書のほか,交通機関の運賃やホテルの宿泊料に係る一般的資料を中心とした立証とならざるを得ない場合が少なくないと思われるが,上記運賃及び宿泊料の設定には個別性の高いもの(航空機の運賃や事前予約に係る宿泊料等)が含まれ,一般的な資料による立証にも限界があると 考えられる。 前記②についても,本件対象消費者の住居地や交通事情により,旅費及び宿泊費の支出につき相当因果関係があるか否かが左右され得る。 また,その消費者の主張する旅費及び宿泊費について,相当因果関係の有無や範囲に係る判断の前提として,個別に,費用の 交通事情により,旅費及び宿泊費の支出につき相当因果関係があるか否かが左右され得る。 また,その消費者の主張する旅費及び宿泊費について,相当因果関係の有無や範囲に係る判断の前提として,個別に,費用の具体的内容(交通機関の座席や部屋の種別,付添者等の同宿の有無,朝食や夕食代金を含 むか否か)や,その支出を必要とした事情を確認する必要が生じる場合も想定されるところであり,個々の消費者の個別の事情を相当程度検討する必要が生じ得るものと考えられる。 さらに,本件対象消費者の中には,いわゆる受験シーズンに上京して一定期間ホテル等に連泊し,その期間に本件大学を含む複数の大学を受 験した者も相当数存在するものと推測されるところ,そのような場合には,上京に係る旅費については,相当因果関係の存在自体が疑問であるし,宿泊費については,滞在中の日程に応じて様々な類型が考えられる。 そして,この場合には,相当因果関係の有無に係る判断の前提として,そもそも,その消費者の当時の滞在日程等の再現につき,一定程度の審 理を要するものと思われる。 以上からすると,受験に要した旅費宿泊費については,個々の消費者の個別の事情に相当程度立ち入って審理せざるを得ない面があり,書証の取調べ以外の立証方法が予定されていない簡易確定手続において,内容を適切かつ迅速に判断することは困難であるといわざるを得ない。 ウ原告は,個々の消費者が個別に訴訟を提起するよりも共通義務確認の訴えや簡易確定手続等による方が簡易迅速に請求できる場合には支配性の要件を欠くと解すべきではないと主張する。 しかし,原告の主張する解釈は特例法3条4項の文言から直ちに導かれるものではないし,原告の主張する解釈を採用すると,少なくとも,損害 性の要件を欠くと解すべきではないと主張する。 しかし,原告の主張する解釈は特例法3条4項の文言から直ちに導かれるものではないし,原告の主張する解釈を採用すると,少なくとも,損害 との関係で支配性の要件を欠く場合はおよそ想定されないことになりか ねない。そして,特例法3条2項において,拡大損害,逸失利益,人身損害,慰謝料等については,類型的に支配性の要件を欠くため,共通義務確認の訴えを提起することができないとされていること(前記ア)を考慮すると,特例法は通常訴訟と比較すれば訴訟経済に資する場合であっても,簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断す ることが困難な場合には支配性の要件を欠く場合があることを前提としているものと見ざるを得ないのであって原告の上記主張は採用できない。 ⑷ 以上によれば,本件訴えのうち受験に要した旅費宿泊費の請求に係る金銭の支払義務を負うべきことの確認を求める部分については,支配性の要件を欠くと認められるから,特例法3条4項の規定に基づき却下することとする。 4 争点3(本件判定基準の事前開示義務の有無)について⑴ 私立大学の入学試験の合否判定の手法,基準等については,その性質上,試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであるから,採点基準の妥当性や合格・不合格の判定の当否について,当該私立大学に広範な裁量が認められているものと解される。また,本件実施要項においても,入学試験の評 価・判定方法については,可能な限り情報開示に努めるものとされており(認定事実⑴キ),大学が入学試験の評価・判定方法等の全てを事前に開示する義務を負っているわけではなく,その評価・判定方法等につきどのような情報を事前に開示するかも当該私立大学に一定の裁量が おり(認定事実⑴キ),大学が入学試験の評価・判定方法等の全てを事前に開示する義務を負っているわけではなく,その評価・判定方法等につきどのような情報を事前に開示するかも当該私立大学に一定の裁量が与えられているというべきである。 ⑵ しかし,前記前提事実のとおり,本件判定基準は性別又は浪人年数に応じて異なる合格判定基準を用いるものであるが,その内容は,女性や浪人年数の多い受験者の合格可能性を,男性や浪人年数の少ない受験者のそれと比べて制限する効果を有するものであり,女性及び浪人年数の多い受験者に対する不利益な取扱いをするものである。 そこで,前記⑴の被告に与えられた裁量を考慮してもなお,上記のような 受験者の性別及び浪人年数という属性を基準として不利益な取扱いをする本件判定基準を用いることを事前に本件対象消費者に対して明らかにする義務が被告に認められるか否かについて検討する。 ⑶ア学校教育法1条及び2条2項の規定によれば,私立大学も法律に定める学校であり,教育基本法6条1項が「法律に定める学校は,公の性質を持 つもの」と定めていることに照らせば,私立学校も高度に公の性質を有するものと考えられる。そうすると,私立大学であっても,いかなる者を入学させ,また入学させないか,すなわち入学試験の実施を含めその教育事務の遂行に当たっては,憲法に定められた諸規定の趣旨を尊重する義務を負うというべきである。 イそして,憲法14条1項は,性別,社会的身分により差別することを禁じている。また,学校教育法の規定に基づいて定められた大学設置基準2条の2は,公正かつ妥当な方法により入学者を選抜する旨を定めるところ,本件実施要項においては,公正かつ妥当な方法による入学者の選抜を行うに当たり,年齢,性 法の規定に基づいて定められた大学設置基準2条の2は,公正かつ妥当な方法により入学者を選抜する旨を定めるところ,本件実施要項においては,公正かつ妥当な方法による入学者の選抜を行うに当たり,年齢,性別,国籍,家庭環境等に関して多様な背景を持った学 生の受入れに配慮することが求められるとともに,入学者選抜は,中立・公正に実施することを旨とし,入学者選抜の信頼性を損なう事態が生ずることのないよう実施体制の充実を図ることも求められている(認定事実⑴エ,キ,)。 ウさらに,学校教育法施行規則165条の2第1項3号の規定により公表 することが求められているアドミッション・ポリシーについては,平成26年12月22日の中央教育審議会の答申及び平成28年3月31日に中央教育審議会大学分科会大学教育部会が公表した本件ガイドラインにおいて,次のような指摘がされている(認定事実⑴オ及びカ)。 すなわち,前者の答申においては,①各大学が個別に行う入学者選抜に ついては,学力の三要素(①知識・技能,②思考力・判断力・表現力及び ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を踏まえた多面的な選抜方法をとるとともに,年齢,性別,国籍,文化,障害の有無,地域の違い,家庭環境等にかかわらず多様な背景を持った学生の受入れが促進されるよう,具体的な選抜方法等に関する事項を,各大学がその特色等に応じたアドミッション・ポリシーにおいて明確化すること(認定事実⑴オ), ②入学者に求める能力は何か,また,それをどのような基準・方法によって評価するのかを,アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められており(認定事実⑴オ),後者の本件ガイドラインにおいては,③アドミッション・ポリシーの策定に当たっては,「学力の によって評価するのかを,アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められており(認定事実⑴オ),後者の本件ガイドラインにおいては,③アドミッション・ポリシーの策定に当たっては,「学力の3要素」を念頭に置きながら,多様な学生を評価できるような入学者選抜の在り方につい て,できる限り具体的に示すこと,④入学者選抜において,アドミッション・ポリシーを具現化するためにどのような評価方法を多角的に活用するのか,それぞれの評価方法をどの程度の比重で扱うのか等を具体的に示すことに留意することが重要とされている(認定事実⑴カ)。 エ前記ア及びイの事情を踏まえると,本件実施要項が求める「公正かつ妥 当な方法による入学者の選抜」においては,入学試験の実施に当たって受験者の年齢,性別,国籍,家庭環境等の属性を基準として不利益な取扱いをすることは想定されていなかったというべきであり,これに,前記ウの中央教育審議会の答申及び本件ガイドラインの指摘事項を併せ考慮すれば,本件実施要項が想定していないような評価・判定方法等を用いる場合 には,そのことについてアドミッション・ポリシー等において具体的に示すことが求められていたと解することが相当である(なお,被告が,本件対象消費者に対し,本件判定基準を事前に明らかにする義務まで負っていたと認められるか否かについては,後記⑹において検討する。)。 ⑷ア次に,被告と本件対象消費者との間の法律関係について検討するに,本 件試験については,被告が学生募集要項を定めて出願者を募集し,出願者 が出願書類を提出するとともに入学検定料等を納付し,被告が受験資格の有無等を審査の上受験票を送付することによって,出願者において本件試験を受験し,被告においてその結果を審査・採点の上合 が出願書類を提出するとともに入学検定料等を納付し,被告が受験資格の有無等を審査の上受験票を送付することによって,出願者において本件試験を受験し,被告においてその結果を審査・採点の上合否判定を行うことを内容とする契約が成立するものと解される。 イ前記アの契約に係る法律関係は,大学側(被告)による募集と,出願者 による出願により形成されるものであるところ,被告は,前記⑶のとおり,合否判定に際して,憲法上の平等原則を尊重するとともに,公正かつ妥当な方法により入学者の選抜を行い,学生の受入れに際して多様性に配慮すべき責務を負っている。 そして,本件実施要項においては,多様性に係る属性として,年齢,性 別,国籍,家庭環境が具体的に挙示されているところ,これらの属性は社会の構成要素としてごく一般的な分類である上,前記⑶において判示したとおり,これらの属性を基準として不利益な取扱いをすることは,「公正かつ妥当な方法による入学者の選抜」として想定されていなかったことからすると,前記⑴で述べた入学試験の評価・判定方法等に関する被告の裁量 を考慮しても,大学側(被告)による募集に際して,上記の各属性を評価・判定において考慮する旨が明示されていない場合には,当該募集は,出願者との関係では,基本的に,上記の属性を考慮しないことが内容となっているものと解するのが相当である。 ウ一方で,出願者にとって,大学の入学試験における合否判定が,その後 の人生の岐路となり得る重大な事項であることはいうまでもなく,出願者は,被告が前記イのとおり,平等原則を尊重し,多様性に配慮した上で公正かつ妥当な方法による入学者の選抜が行われることを前提として,選抜に要する大学側の費用等(入学検定料)を負担した上で,個別の大学への出願を行う イのとおり,平等原則を尊重し,多様性に配慮した上で公正かつ妥当な方法による入学者の選抜が行われることを前提として,選抜に要する大学側の費用等(入学検定料)を負担した上で,個別の大学への出願を行うものと解される。 エ以上に加え,前記⑶ウのとおり,本件試験の実施より前の時点で,アド ミッション・ポリシーの策定及び公表が入学希望者等にとっても重要なものであり,入学者の選抜においてアドミッション・ポリシーを具現化するための評価方法の内容等を具体的に示すことの重要性が指摘・周知されていたこと等を併せ考慮すると,出願者は,「公正かつ妥当な方法による入学者の選抜」の内容として,事前に学生募集要項やアドミッション・ポリシ ー等で明示されていない以上は,性別,年齢,国籍,家庭環境等の属性を基準として一律に不利益な取扱いをされることはないとの期待を有しており,同期待は単なる事実上の期待にとどまらず,前記アで述べた出願者と大学との間の法律関係の前提となり,法的保護に値するものと認められる。 ⑸ さらに,実際に本件判定基準を用いて実施された平成29年度及び平成3 0年度の本件試験について見るに,前記認定事実⑶イによれば,本件大学が設置した本件第三者委員会は,本件試験についての調査結果をまとめた本件報告書において,①性別及び浪人年数を基準とした不利益な取扱いを内容とする本件判定基準については,合理的な理由があるものと認めることができず,本件大学の裁量の範囲を逸脱した不利益な取扱いに当たると判断すると ともに,②本件大学に対し,直ちに本件判定基準を用いた運用を廃止し,平成31年度入学試験において「公正かつ妥当な方法」による入学試験を確実に実施,遂行すること等を提言していることが認められる。また,前記認定事実⑷によれば ,直ちに本件判定基準を用いた運用を廃止し,平成31年度入学試験において「公正かつ妥当な方法」による入学試験を確実に実施,遂行すること等を提言していることが認められる。また,前記認定事実⑷によれば,文部科学省が医学部医学科を置く全ての大学を対象として実施した緊急調査に関する最終まとめ(甲11の1)において,文部科学省 としては,③少なくとも,募集要項等であらかじめ説明していないにもかかわらず,合理的な理由なく性別,年齢,現役・浪人の別等の属性に応じた一律の得点調整や取扱いの差異の設定などを行うことについては,不適切と判断すべきであると考えており,また,④性別,年齢等の属性による取扱いの差異を設けることついては,募集要項であらかじめ説明すれば足りるもので はなく,大学がその合理的な理由を説明できることが必要である上,性別, 年齢等の属性により一律に差異を設けるような取扱いは,社会通念上,認められるものではないと認識しているとされていることが認められる。 ⑹ 以上を踏まえて,被告において,本件対象消費者に対し,本件判定基準を事前に明らかにすべき義務を負っていたか否かについて検討するに,前記⑶から⑸までによれば,①本件実施要項が求める「公正かつ妥当な方法による 入学者の選抜」においては,受験者の性別及び浪人年数を基準として不利益な取扱いをすることは想定されていないこと,②被告と本件対象消費者との関係においては,大学側(被告)による募集に際し,性別及び浪人年数を評価・判定において考慮することは明示されていないことから(前提事実⑷ウ),本件対象消費者は,性別及び浪人年数を基準として一律に不利益な取扱いを されることはないとの期待を有しており,かかる期待は法的保護に値すると認められること,③本件第三者委員会は 提事実⑷ウ),本件対象消費者は,性別及び浪人年数を基準として一律に不利益な取扱いを されることはないとの期待を有しており,かかる期待は法的保護に値すると認められること,③本件第三者委員会は,性別及び浪人年数を基準とした不利益な取扱いを内容とする本件判定基準については,合理的な理由があるものとは認められず,本件大学の裁量の範囲を逸脱するものであると判断していること,④文部科学省としても,募集要項等であらかじめ説明をせずに, 合理的な理由なく性別,年齢,現役・浪人の別等の属性を基準として取扱いの差異を設けることは不適切であり,また,そのような取扱いをすることについては,あらかじめ説明をすれば足りるというものではなく,大学においてそれについて合理的な理由を説明できることが必要であるが,基本的には,そのような取扱いは社会通念上認められないとの認識を有している旨が明ら かにされていることが認められる。 これらの事情を総合考慮すれば,本件試験において本件判定基準を用いたことは,社会通念上相当とは認められない差別的な取扱いであり,「公正かつ妥当な方法による入学者の選抜」とは認められないと評価すべきであるから,前記⑴の被告に与えられた裁量を考慮したとしても,被告は,平成29年度 及び平成30年度の本件試験の募集に際し,本件対象消費者に対し,学生募 集要項やアドミッション・ポリシー等により,性別及び浪人年数を基準とした不利益な取扱いを内容とする本件判定基準を用いることを事前に明らかにすべき信義則上の義務を負っていたものというべきであり,被告が,かかる義務に違反して,事前に明らかにすることなく,本件判定基準を用いて平成29年度及び平成30年度の本件試験を実施したことは,本件対象消費者の 法律上保護される ものというべきであり,被告が,かかる義務に違反して,事前に明らかにすることなく,本件判定基準を用いて平成29年度及び平成30年度の本件試験を実施したことは,本件対象消費者の 法律上保護される利益を侵害するものとして,本件対象消費者に対する関係で不法行為を構成するものと認められる。 ⑺アこれに対し,被告は,本件試験において本件判定基準を用いたことが合理的な理由に基づく取扱いであり,違法なものではない旨主張する。 前記⑹において判示したとおり,本件試験において本件判定基準を用い ることについては,被告において事前に明らかにすべき義務があるというべきであり,被告にかかる義務の違反があることに変わりはないが,仮に,本件判定基準を用いたことについて合理的な理由があるとすれば,そのような取扱いが違法とはいえず,上記義務の違反について不法行為が成立しないと解する余地もあるため,この点について検討する。 イ性別を理由とする点について 被告は,本件判定基準のうち,性別を理由とする判定基準は,実際の女子入学者数の予測が困難な状況において,現状の女子寮の収容人数に限界があることを前提として設けられたものであるため,合理的な理由がある旨主張する。 しかし,そもそも,本件大学医学部の女子学生の人数増加等と女子寮の収容人数が連動したことを認めるに足りる証拠はない。また,被告は,女子寮の収容人数を当然に認識し得る立場にある以上,それに応じた具体的な定員を定め,学生募集要項等で明らかにすることができたといえるが,平成29年度及び平成30年度の学生募集要項(乙5の1及び2) には,女子寮の収容人数やこれを踏まえた具体的な定員をうかがわせる 記載はない。なお,本件報告書(甲3)においても,過 ,平成29年度及び平成30年度の学生募集要項(乙5の1及び2) には,女子寮の収容人数やこれを踏まえた具体的な定員をうかがわせる 記載はない。なお,本件報告書(甲3)においても,過去30年間のうちには,本件大学スポーツ健康科学部の女子学生の人数増加等に伴い,女子寮の収容人数が大きく増加した時期が複数回確認される一方で,女子寮の収容人数と連動したと理解し得る本件大学医学部の女性受験者の合格者数の増員は確認できなかったこと,入学試験種別の合格者選考会 議又は教授会において,女子寮の収容人数が具体的な考慮要素として説明され,格別に審議された様子も認められないこと等が指摘されている(認定事実⑶イa)。 そうすると,被告において女子寮の収容人数に限界があることが本件判定基準における性別を理由とする不利益な取扱いの理由であると認識 していたとの事実を認めることはできないし,女子寮の収容人数に限界があることに対する対応策として,合否の判定において性別を理由とする不利益な取扱いをすることが社会通念上相当な手段であったともいえないから,女子寮の収容人数に限界があることを前提として本件判定基準に合理的な理由があったとする被告の上記主張を採用することはでき ない。 また,被告は,精神的な成熟速度やコミュニケーション能力に性差がある一般的傾向を踏まえ,性別を理由とする判定基準を設けたと主張し,当該性差の存在を裏付けるものとして,「人間形成過程における性差:メタ分析」と題する論文(乙9,12)を提出する。 しかし,この論文は,思春期及び成人期の人格形成における性差の規模及び安定性についての研究結果をまとめたものであるところ,被告の指摘するような,思春期及び成人期における精神的な成熟速度やコミュニケーシ し,この論文は,思春期及び成人期の人格形成における性差の規模及び安定性についての研究結果をまとめたものであるところ,被告の指摘するような,思春期及び成人期における精神的な成熟速度やコミュニケーション能力に関する性差を直接的に取り上げて考察するものとは認められず,これによって,直ちに思春期及び成人期における精神的な 成熟速度やコミュニケーション能力に性差が存在すると認めることは困 難である。 また,仮に,コミュニケーション能力等の性差により,面接試験における女性受験者と男性受験者の成績分布に差異が生じるとしても,面接試験においては,その性質上,受験者個人の資質や特性に伴う差異こそが重視されるべきであり,男女の性差が重視されるべきものとは解され ないこと,本件報告書において,面接試験における女性受験者の平均点と男性受験者の平均点の差異はせいぜい0.2点程度である旨の指摘があることからすれば(認定事実⑶イa),本件判定基準のように,二次試験において,性別をもって一律に男女の合格基準に0.5点もの区別を設けることについては,合理的な理由があると認めることはできない。 ウ浪人年数を理由とする点について 被告は,医師国家試験に合格し得る能力の有無を考慮する必要性や,将来医師として長く働ける可能性を考慮する必要性があることから,本件判定基準のうち,浪人年数を理由とする不利益な取扱いに合理的な理由があると主張する。 しかし,受験者が当該浪人年数に至った経緯や大学入学後の伸びしろを含めた能力には個人差が存在すると考えられるところ,これらについて受験者ごとの個別審査を経ることなく浪人年数の多寡をもって,一律に現役生に比べて厳しい合否判定基準を用いることについて合理的な理由があるとは 力には個人差が存在すると考えられるところ,これらについて受験者ごとの個別審査を経ることなく浪人年数の多寡をもって,一律に現役生に比べて厳しい合否判定基準を用いることについて合理的な理由があるとは直ちには認められず,このことは本件報告書でも指摘され ている(認定事実1⑶イb)。 また,本件全証拠によっても,本件大学において,浪人年数が多い入学者の入学後の成績や留年状況,医師国家試験の合格率及びこれらについての現役生やより浪人年数が少ない入学者との差異について,特段追跡調査や検証等を実施していたとは認められない。このような検証等を 経て明らかにされる客観的事実を踏まえることなく現役生と浪人生との 間で,一律に浪人年数を基準とした差異を設ける本件判定基準に合理的な理由があると認めることはできない。 これに対し,被告は,浪人年数の多寡と医師国家試験合格率との間に相関関係があると主張し,その根拠として,「医師国家試験合格率と入学区分(現役+1浪/2浪+3浪人以上)との関係に関する分析報告」と 題する報告書(乙10の2)を提出する。 しかし,大学によって入学試験の難易度が異なることに照らすと,大学ごとに平均的な学生の能力は異なると考えられる上,一般的に,教育内容も大学ごとに異なっていると解されることからすると,このような入学者における現役比率以外の要因が影響した結果,各大学の医師国家 試験の合格率に差異が生じた可能性も容易に想定し得るところである。 そうすると,上記報告書の分析の結果を踏まえて検討しても,本件判定基準のうち浪人年数を理由とする点に合理的な理由があるとは認められない。 エ以上によれば,性別及び浪人年数を基準として不利益な取扱いをするこ とについて合理的な理由 て検討しても,本件判定基準のうち浪人年数を理由とする点に合理的な理由があるとは認められない。 エ以上によれば,性別及び浪人年数を基準として不利益な取扱いをするこ とについて合理的な理由があるとは認められず,被告の前記アの主張を採用することはできない。 ⑻ なお,被告の主張中,被告における合否判定基準は入学試験の実施後に決定されるものであるから,これを事前に明らかにすることはできない旨をいう部分があるが,前記⑹において判示する信義則上の義務の内容として被告 が明らかにすべき義務を負う範囲は,最終合格者を決定する上で毎年変動し得る詳細な点数調整等の基準ではなく,飽くまで,受験者の性別及び浪人年数という属性を入学試験の評価・判定方法等において考慮する(不利益に取り扱う)という限度に止まるものであり,この限度であれば,入学試験の実施前に被告において明らかにできない合理的な理由はないといえるから,被 告の上記主張は,前記⑹の認定判断を左右するものとはいえない。 5 争点4(本件判定基準の事前開示義務違反により生じた損害の有無)について⑴ 本件受験費用についてア原告が主張する各損害項目のうち,本件受験費用(入学検定料,送金手数料及び郵送料)については,いずれも本件試験に出願するために必要な費用と認められるところ,これらの費用相当額が,本件判定基準を事前に 明らかにすべき義務の違反により生じた損害といえるためには,本来,個々の消費者につき,個別に本件判定基準が事前に明らかにされていれば本件試験に出願しなかったといえる関係があると認められることが必要である。 しかし,共通義務確認の訴えにおいて,個々の消費者に固有の問題を審 理することは予定されておらず,「個々の消費者の事情」(特例 出願しなかったといえる関係があると認められることが必要である。 しかし,共通義務確認の訴えにおいて,個々の消費者に固有の問題を審 理することは予定されておらず,「個々の消費者の事情」(特例法2条4号)についてはその後の簡易確定手続等で審理すべきものであることは,前記3⑴において判示したとおりである。 そうすると,本件の共通義務確認の訴えにおいて,本件受験費用相当額が損害として認められるためには,個々の消費者についての個別の事情を 捨象し,本件判定基準が事前に明らかにされていれば,一般的に,本件対象消費者は本件試験に出願しなかったという関係が認められれば足りるものというべきである。 イ大学受験において,受験の機会は年度ごとに限定され,当該年度における合否は,出願者にとって,大学への進学時期にとどまらず,大学卒業後 の将来設計全般に影響を及ぼす事項である。さらに,証拠(甲9の1から3まで)によれば,大学の医学部の入学試験については,競争が激化する状況が継続しているものと認められることからすれば,一般的に,当該大学の医学部における合格の可能性は,出願者において最も重視すべき事項となるものと考えられる。これに加え,本件大学の受験日程は,平成29 年度及び平成30年度のいずれにおいても,他の私立大学数校との間で重 複しており,本件大学の受験を選択した場合には,後者の少なくとも一部の受験が不可能となると認められること(甲6の1及び2)を併せ考慮すれば,本件判定基準が事前に明らかにされていれば,一般的に,本件対象消費者は本件試験に出願しなかったといえる関係があるものと認めることが相当である。 ウこれに対し,被告は,大学の医学部の入学試験における受験校の選択では様々な要素が考慮される上 対象消費者は本件試験に出願しなかったといえる関係があるものと認めることが相当である。 ウこれに対し,被告は,大学の医学部の入学試験における受験校の選択では様々な要素が考慮される上に,本件判定基準を用いたとしても女性受験者や浪人生でも本件試験に合格する可能性が十分にあることからすれば,本件判定基準が事前に明らかにされていれば,一般的に,本件対象消費者は本件試験に出願しなかったといえる関係があるとは認められない旨主 張する。 しかし,本件大学の魅力(医師国家試験の合格率や学費)等が,出願者の志望動機となり得ることは被告主張のとおりであるとしても,前記イで判示するところに照らせば,当該動機が唯一の志望動機となるとは直ちには考え難い上,本件判定基準の存在は,これにより不利益を受ける本件対 象消費者にとっては,一般的に,志望動機自体を失わせる事情となり得るものといわざるを得ない。 よって,被告の上記主張を採用することはできない。 エなお,被告は,個々の消費者について本件受験費用相当額が損害と認められるためには,その消費者ごとに出願の理由といった主観について審理 する必要があり,簡易確定手続においてその点を適切かつ迅速に判断することは困難であることから,支配性の要件を欠くとも主張する。 しかし,本件判定基準が事前に明らかにされていれば,一般的に,本件対象消費者は本件試験に出願しなかったといえる関係があるものと認められることは,前記イにおいて判示したとおりであり,簡易確定手続にお いては,「個々の消費者の事情」として,本件判定基準が事前に明らかにさ れていたとしてもなお,本件試験に出願したと認められるような特別の事情があるか否かについて,対象消費者の陳述 いては,「個々の消費者の事情」として,本件判定基準が事前に明らかにさ れていたとしてもなお,本件試験に出願したと認められるような特別の事情があるか否かについて,対象消費者の陳述書等を基に判断すれば足りるものというべきある。 したがって,簡易確定手続において,個々の消費者について本件受験費用相当額が損害と認められるか否かを適切かつ迅速に判断することが困 難であるとは認められず,支配性の要件を欠くとの被告の上記主張を採用することはできない。 オ以上によれば,本件受験費用相当額については,個々の消費者の事情によりその支払請求に理由がない場合を除いて,本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反により生じた損害であると認められる。 ⑵ 特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用について特例法76条は,特定適格消費者団体が授権者から報酬を受けることができることを定め,特例法65条4項6号は,特定適格消費者団体が,消費者の利益の擁護の見地から不当なものでない報酬又は費用の算定方法等を定めることを特定認定の要件としていることからすると,対象消費者は特定適格 消費者団体に報酬及び費用を支払うことが予定されているといえる。 そして,不法行為訴訟においては,弁護士費用(報酬)につき,不法行為と相当因果関係のある範囲で損害として認められているところ,特定適格消費者団体は,簡易確定手続を含め,その手続を弁護士に追行させる義務を負っていること(特例法77条)に照らせば,特定適格消費者団体に支払うべ き報酬及び費用についても,弁護士費用と同様に,個々の消費者の事情によりその支払請求に理由がない場合を除いて,本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反と相当因果関係のある範囲でその費用相当 き報酬及び費用についても,弁護士費用と同様に,個々の消費者の事情によりその支払請求に理由がない場合を除いて,本件判定基準を事前に明らかにすべき義務の違反と相当因果関係のある範囲でその費用相当額が損害と認められるというべきである。 第4 結論 以上によれば,本件訴えのうち受験に要した旅費宿泊費相当額の請求に係る 金銭の支払義務を被告が負うべきことの確認を求める部分は,支配性の要件を欠くことから特例法3条4項の規定に基づきこれを却下し,原告のその余の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官和波宏典 裁判官梶浦義嗣 裁判官浅井彩香
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