- 1 -令和5年12月14日判決言渡令和5年(行ケ)第10072号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和5年10月31日判決 原告ディー4ディーテクノロジーズ、エルエルシー 同訴訟代理人弁理士丸山敏之 久德高寛長塚俊也宮野孝雄 被告特許庁長官 同指定代理人小林裕和前畑さおり渡邉久美清川恵子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のために、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判 - 2 -特許庁が不服2022-18555号事件について令和5年3月1日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は、意願2020-502459(以下「本願」という。)に係る拒絶査定不服審判請求を不適法であるとして意匠法52条において準用する特許法135条の 規定により却下した審決の取消訴訟である。争点は、意匠法46条2項の「その責めに帰することができない理由」の有無である。 1 特許庁における手続の経緯(引用書証中枝番号のあるものについて枝番号を付記していないときは、すべての枝番号を含む趣旨である。以下同じ。)原告は、米 に帰することができない理由」の有無である。 1 特許庁における手続の経緯(引用書証中枝番号のあるものについて枝番号を付記していないときは、すべての枝番号を含む趣旨である。以下同じ。)原告は、米国テキサス州に住所がある米国法人であり、意匠法68条2項におい て準用する特許法8条1項に規定する「在外者」である。日本と米国は、ともに「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」(平成27年条約第2号。 以下「ジュネーブ改正協定」という。)の締約国である。原告は、意匠の名称を「Handheldintraoralscanner」とする意匠について、日本国を指定締約国(ジュネーブ改正協定1 条(xix)に規定する指定締約国をいう。 以下同じ。)とし、同条(vii)に規定する国際出願を行った(甲6、7)。同国際出願については、令和元年(2019年)9月9日に国際意匠登録第DM/212170号として同条(vi)に規定する国際登録(以下「本件国際登録」という。)がされた。本件国際登録は、ジュネーブ改正協定10条(3)(a)の規定に基づき令和3年(2021年)1月22日に国際公表された(乙3)。原告は、本件国際登録の名義 人(ジュネーブ改正協定1条(xi)に規定する名義人をいう。以下同じ。)である(甲8)。 日本国特許庁(以下「特許庁」という。)は、令和4年(2022年)4月8日、本件国際登録が公表され意匠登録出願とみなされた本願(意匠法60条の6第1項)について拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)をし、その謄本を原告の米国内 の肩書住所地宛に発送した(甲10、乙6、7)。本件拒絶査定の謄本が現実に原告 - 3 -に到達したのは同年9月26日であった(甲1)。原告は、同年11月18日、本件拒絶査定が不服で の肩書住所地宛に発送した(甲10、乙6、7)。本件拒絶査定の謄本が現実に原告 - 3 -に到達したのは同年9月26日であった(甲1)。原告は、同年11月18日、本件拒絶査定が不服であるとして、意匠法46条2項に基づき拒絶査定不服審判請求(以下「本件審判請求」という。)を行った(甲3)。 特許庁は本件審判請求を不服2022-18555号事件として審理をした上、令和5年3月1日、「本件審判の請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」と いう。)をし(出訴期間として在外者に対し90日を附加)、その謄本は同月14日、原告に送達された。 原告は、同年7月7日、本訴を提起した。 2 本件審決の理由の概要(1) 本件審判請求は、本件拒絶査定に対する意匠法46条1項に規定する審判請 求期間(拒絶査定の謄本の送達があった日から3月以内。以下「本件審判請求期間」という。)の経過後にされている。 (2) 原告が令和4年9月26日まで日本において発行された本願に係る拒絶の通報(以下「本件拒絶の通報」という。)及び本件拒絶査定のことを知らなかったのは、原告の当初の米国内代理人であるA氏が、原告に対し、出願の状況を定期的にチェ ックする必要があるとは知らせず、また、A氏が後任の米国内代理人であるScheef&Stone,LLP(以下「Scheef」という。)に令和3年10月頃に提供した管理情報には、数年先の更新期限まで更なるアクションは必要ないことが示されていた結果であると認められる。 そうすると、本件審判請求を適法に行うことができなかった主たる原因は、A氏 が通常期待される注意を尽くしていなかった事実によるものである。 仮に原告は出願の維持管理を自ら直接行う者でなかったとしても、自らが委任した者の監督に注意を尽く きなかった主たる原因は、A氏 が通常期待される注意を尽くしていなかった事実によるものである。 仮に原告は出願の維持管理を自ら直接行う者でなかったとしても、自らが委任した者の監督に注意を尽くしたともいえず、また、A氏の過失と評価できる事情があるとしても、それは委託契約を結んだ原告とA氏の間の事情にすぎない。したがって、原告において意匠法46条2項に規定する「その責めに帰することができない 理由」があるとはいい難い。 - 4 -(3) 本件においては、令和4年11月に至るまで意匠管理人(意匠法68条2項において準用する特許法8条1項に規定する特許管理人をいう。以下同じ。)が選任されていなかった。拒絶査定時において仮に意匠管理人が選任されていた場合は、意匠法68条5項において準用する特許法192条1項の規定により、拒絶査定はその意匠管理人に送達されていたことを踏まえると、本件のような拒絶査定に対す る応答の機会の喪失は、意匠管理人を選任しなかったことによって生じた不利益であるとも考えられる。 特許庁がジュネーブ改正協定1条(xxviii)に規定する国際事務局(世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局。以下単に「国際事務局」という。)に対して、令和3年10月22日に発送したジュネーブ改正協定12条(2)に規定する「拒絶の 通報」(以下「本件拒絶の通報」という。)の写しは、同条(3)(a)の規定により国際事務局から名義人(原告)に遅滞なく送付されるものであるから、原告は本件拒絶の通報を知る立場にある(仮にA氏又はScheefの過失等により原告がそれを知らなかったとすれば、それは原告が十分な注意を尽くしていなかったことによるものである。)。原告は、本件拒絶の通報を受け取った時点で、特許庁に対する今後 の手 eefの過失等により原告がそれを知らなかったとすれば、それは原告が十分な注意を尽くしていなかったことによるものである。)。原告は、本件拒絶の通報を受け取った時点で、特許庁に対する今後 の手続のために意匠管理人を選任すべきであったにもかかわらず、それを怠ったのであるから、日本国を指定締約国とする国際意匠登録出願人として通常期待されるべき注意義務を果たしていなかったというべきである。 第3 原告の主張する取消事由 1 本願について、令和3年10月22日付けで本件拒絶の通報(甲9)がなさ れたが、原告は、本件拒絶の通報に対して、応答することができなかった。その理由は、原告の本件国際登録の当初の米国内代理人であるA氏の原告に対する対応が不十分なものであったためである(甲1)。 2 原告が、本件審判請求期間内に本件審判請求をすることができなかった理由は、書留郵便で発送された本件拒絶査定の謄本が、本件審判請求期間の満了日の令 和4年7月8日までに原告に届いていなかったことにあるが(甲5)、その原因は、 - 5 -「国際交換局に到着」してから「保管」状態に至るまでに生じた配送遅延であるから、「その責めに帰することができない理由」があることは明らかである。 そして、原告は、本件審判請求期間の満了日である令和4年7月8日から6か月を経過する前であり、かつ、意匠法46条2項の「その理由がなくなった日」(本件拒絶査定の謄本が原告に配達された令和4年9月22日)から2か月が経過する前 である同年11月18日に、本件審判請求をしており、同項に規定する時期的要件を満たしている。 3 本件審決には、次のとおり、二つの取消事由がある。 (1) 意匠法46条2項に規定する救済要件を無視した瑕疵(取消事由1)同項には、「拒絶査定不服審 項に規定する時期的要件を満たしている。 3 本件審決には、次のとおり、二つの取消事由がある。 (1) 意匠法46条2項に規定する救済要件を無視した瑕疵(取消事由1)同項には、「拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない 理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないとき」と規定されており、その文言から、「前項に規定する期間内にその請求をする」機会が「拒絶査定不服審判を請求する者」に与えられるに至った経緯が救済要件として問われていないことは明らかである。 ところが、本件審決が同項の適用を否定した理由(①原告は、本件国際登録の当 初の米国内代理人であるA氏を適切に管理・監督しておらず、通常期待されるべき注意義務を果たしていなかった。②本件拒絶査定時において、意匠管理人が選任されていなかった。)は、同条1項(及び同法68条5項において準用する特許法192条3項)に基づいて本件審判請求期間内に拒絶査定不服審判を請求する機会が原告に適法に与えられるに至った経緯を構成するにすぎず、拒絶査定不服審判を請求 する機会が適法に与えられた後において本件審判請求期間内に原告が本件審判請求をすることができなかったことが原告の責めに帰するか否かという点には全く関係していない。 このように、本件審決は、意匠法46条2項の規定に反してなされたものである。 (2) 法的根拠の欠如(取消事由2) 本件審決は、本件のような拒絶査定に対する応答の機会の喪失は、意匠管理人を - 6 -選任しなかったことによって生じた不利益であるなどと述べるが、これは、意匠法68条5項において準用する特許法192条2項の規定に基づいて拒絶査定が書留郵便等により在外者に発送された場合には意匠法46条2項の適用は認められない 生じた不利益であるなどと述べるが、これは、意匠法68条5項において準用する特許法192条2項の規定に基づいて拒絶査定が書留郵便等により在外者に発送された場合には意匠法46条2項の適用は認められないと述べているのに等しい。 しかし、意匠法には、同法68条5項において準用する特許法192条2項が適 用された場合、意匠法46条2項に基づく救済を除外するとの規定はないから、本件審決は法的根拠を欠いている。 第4 被告の反論 1 取消事由1(意匠法46条2項に規定の救済要件を無視した瑕疵)について(1) 日本を指定締約国とする国際出願を選択した在外者である出願人は、意匠権 を取得する意思を有するのである限り、特許庁による拒絶の通報の事実や、拒絶査定の謄本が発送された事実等、特許庁が行う各審査手続を確認し、自己に拒絶の通報や、それに応答しなかったときに拒絶査定等の不利益な判断がなされる可能性があるかどうかを、照会等により確認する等の注意を払うべきであり、これを怠ったときは、その帰結につき責めに任ずべきである。 (2) 原告主張のごとく、意匠法46条2項の適用に当たって専ら審判請求をする機会が与えられて以降の事情を考慮するものとした場合、在外者に対する拒絶査定の延着に起因する審判請求期間の徒過に際しては、意匠管理人が置かれていないために送達が航空郵便に付する方法により行われたこと自体が一般的に意匠法46条2項の「責めに帰することができない理由」の一端をなすというに等しくなり、送 達受領時を基準とした判断が広く行われることとなって、同法68条5項において準用する特許法192条、ことに同条3項の趣旨は没却され、権利関係が不安定となりかねない。 したがって、意匠法46条2項の適用に当たり、専ら審判請求をする機会が与えら って、同法68条5項において準用する特許法192条、ことに同条3項の趣旨は没却され、権利関係が不安定となりかねない。 したがって、意匠法46条2項の適用に当たり、専ら審判請求をする機会が与えられて以降の事情を考慮するものと解するのは不当である。 (3) 原告は、令和3年10月22日以降に、国際事務局から遅滞なく本件拒絶の - 7 -通報を受領していると考えられ、また、同年11月5日以降、WIPOのウェブサイト上でも本件拒絶の通報を確認することができた。また、本件では、拒絶の理由が発見されれば、本件国際登録の公表から12月以内に特許庁から国際事務局を経由して拒絶の通報があり、そうでなければ特許庁が原告に対し、登録査定及び登録証を発送することになるが、本件国際登録の公表から本件審判請求期間経過後まで、 登録査定及び登録証の発送がなかったのであるから、原告は、日本において登録査定がされておらず、不利益な判断がされる又はされた可能性があると認識することができた。それにもかかわらず、原告が、国際事務局又は特許庁に対し、国際出願の日本における経緯について照会をするなどの行為をしたことはうかがわれず、また、本件拒絶の通報に対する意見書も提出していない。 そうすると、原告は、日本を指定締約国として国際出願を行う者として、出願人が意匠権を取得する意思を有するのである限り通常求められる注意を尽くしていなかったというべきである。 (4) 原告は、自ら意匠管理人を選任しないという選択をしたのであるから、意匠法68条5項において準用する特許法192条2項及び3項が適用されることによ る不利益を想定しておくべきであった。また、原告は、代理人を選任・監督した結果について自らその責めに任ずべきであるから、代理人の過失により原告が拒 許法192条2項及び3項が適用されることによ る不利益を想定しておくべきであった。また、原告は、代理人を選任・監督した結果について自らその責めに任ずべきであるから、代理人の過失により原告が拒絶査定の送達に備える機会を逸したという事情があったとしても、これを意匠法46条2項の「責めに帰することができない」事由として考慮することはできない。 2 取消事由2(法的根拠の欠如)について 本件審決の判断は、在外者が意匠管理人を置かなかったこと以外の事由による意匠法46条2項適用の余地を何ら排除するものではない。したがって、拒絶査定が航空郵便に付して在外者に送達された場合に一律に同項の適用が認められないとするものではないことは明らかである。 第5 当裁判所の判断 1 本件審判請求について - 8 -(1) 前記第2の1の事実によれば、本願は、日本国を指定締約国とする国際出願であって、令和3年1月22日、本件国際登録について、ジュネーブ改正協定10条(3)(a)の規定による公表がされた(乙3の1・2)ことにより、意匠法60条の6第1項の規定により、本件国際登録の日である令和元年9月9日にされた意匠登録出願とみなされる(なお、原告は在外者であるから、意匠法68条2項において 準用する特許法8条1項の規定により、出願に係る補正書や意見書の提出その他の手続を行う場合には、意匠管理人を選任して行う必要があったことになる。)。 (2) ジュネーブ改正協定12条(1)本文によれば、指定締約国の官庁は、国際登録の対象である意匠の一部又は全部が当該指定締約国の法令に基づく保護の付与のための条件を満たしていない場合には、当該指定締約国の領域における国際登録の一 部又は全部の効果を拒絶することができる。国際登録の効果を拒絶す 又は全部が当該指定締約国の法令に基づく保護の付与のための条件を満たしていない場合には、当該指定締約国の領域における国際登録の一 部又は全部の効果を拒絶することができる。国際登録の効果を拒絶する場合、指定締約国の官庁は、所定の期間内に国際事務局に対しその拒絶を通報し、国際事務局は、名義人に拒絶の通報の写しを遅滞なく送付する(12条(1)、(2)(a)、(3)(a))。 同条(2)の「拒絶」は、拒絶の最終決定を意味するものではないと解されており、指定締約国の官庁に要求されているのは、保護拒絶の原因となり得る理由を表示する ことだけである(乙5)。そして、拒絶の通報の対象となった名義人は、拒絶を通報した官庁に適用される法令に基づいて保護の付与のための出願をしたならば与えられたであろう救済手段を与えられ、救済手段は、少なくとも拒絶の再審査若しくは見直し又は拒絶に対する不服の申立ての可能性から成るものとされている(12条(3)(b))。指定締約国を日本とした場合、拒絶の通報は、国際登録の公表日から12 か月以内にされることになる(乙4、5)。 ジュネーブ改正協定上、このような「拒絶の通報」をすること及びこれに対する指定締約国の国内法令に基づく救済手段を与えるべきことを超えて、指定締約国における最終的な拒絶査定の告知方法や不服申立ての手続等(これらの事項は、ジュネーブ改正協定12条(1)ただし書の「国際出願の形式若しくは記載事項に関する 要件」には該当しないと解される。)について定めた規定は見当たらない。したがっ - 9 -て、これらの点については、ジュネーブ改正協定上、指定締約国の国内法に委ねられていることになる。前記のとおり、日本の意匠法によれば、本願は、日本の意匠法に基づく意匠登録出願とみなされるのであるから、こ 、これらの点については、ジュネーブ改正協定上、指定締約国の国内法に委ねられていることになる。前記のとおり、日本の意匠法によれば、本願は、日本の意匠法に基づく意匠登録出願とみなされるのであるから、これに対する最終的な拒絶査定の通知方法や不服申立て手続等も意匠法によるべきものと解される。 (3) しかるところ、本件において、特許庁は、本願について、令和3年10月2 2日に国際事務局に対し、「Ⅲ 拒絶の理由」の標題を付して具体的な拒絶の理由を明らかにした本件拒絶の通報を発送しており(甲9)、国際事務局は、同年11月5日、WIPOのウェブサイトにおいて、本件拒絶の通報を掲載した(乙3)。本件拒絶の通報には、「国際登録の名義人は、この通報を発送した日から3か月以内に、「Ⅲ拒絶の理由」について、意見書を提出することができます。審査官は意見書の内容 を考慮し、保護を付与するかどうかについて決定いたします。なお、日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない者は、日本国内に住所又は居所を有する代理人によらなければ、日本国特許庁に対して手続をすることはできません。」旨の英文の記載があり、本件拒絶の通報に付された注意書(Appendix)にもこれと同旨の記載のほか、関連する意匠法の条文の英訳も記載されていた(甲9)。 (4) しかし、原告は、本件拒絶の通報後に意見書を提出せず、特許庁は、令和4年4月5日付けで本件拒絶査定をした(甲10)。原告は、在外者であり、意匠管理人を選任していなかったことから、特許庁は、意匠法68条5項において準用する特許法192条2項の規定により、本件拒絶査定の謄本を、令和4年4月8日、航空扱いとした書留郵便により発送した(甲10、乙6、7)。この結果、同条3項の 規定により、当該謄本は、発 て準用する特許法192条2項の規定により、本件拒絶査定の謄本を、令和4年4月8日、航空扱いとした書留郵便により発送した(甲10、乙6、7)。この結果、同条3項の 規定により、当該謄本は、発送の時に送達があったものとみなされた。当該書留郵便は、同月10日には米国の国際交換局に到着していたが、同年9月21日までの間、同局に保管され、原告に配達されたのは同月26日であった(甲1、2)。 (5) 意匠法上、拒絶査定に対する不服審判請求は、その査定の謄本の送達があった日から3月以内にしなければならない(意匠法46条1項)。本件拒絶査定の謄本 は、令和4年4月8日に原告に送達されたものとみなされたから、原告は、その日 - 10 -から3か月以内に不服審判請求をすべきであったところ、本件審判請求期間が経過した後である同年11月18日に本件審判請求をしたものである。 2 以下、本件審判請求期間内に原告が本件審判請求をすることができなかったことについて、意匠法46条2項の「その責めに帰することができない理由」があったかどうかについて検討する。 (1) 原告は、本件拒絶査定の謄本を原告が現実に受領した令和4年9月26日に本件拒絶査定がされているのを知ったのであり、本件審判請求期間の経過後に本件審判請求をすることになった原因は郵便の配送遅延にあるから、原告の責めに帰することができない理由があると主張する。 しかし、そもそも意匠法68条5項において準用する特許法192条3項の規定 によれば、法律上、原告は現実に受領していなくても本件拒絶査定の謄本の発送の時である令和4年4月8日に当該謄本の送達を受けたものとみなされるのであるから、意匠法46条2項の原告の責めに帰することができない理由の有無は、原告が同日に当該謄本の送達を受け 絶査定の謄本の発送の時である令和4年4月8日に当該謄本の送達を受けたものとみなされるのであるから、意匠法46条2項の原告の責めに帰することができない理由の有無は、原告が同日に当該謄本の送達を受けたことを前提にした上で検討されるべき問題である。 原告が現実に当該謄本を受領した日が本件審判請求期間後であったことや、その理 由が郵便の配送遅延にあったこと(ただし、当該謄本に係る書留郵便が同年4月に米国交換局に到着した後、同年9月まで原告に配達されなかった理由は、証拠上明らかではない。)があったとしても、これらの事情が存在することをもって直ちに原告に「その責めに帰することができない理由」があると解することはできない。なぜなら、これらの事情は、みなし送達を定めた法の前記規定の想定範囲外の事態で あるとは考えられない上、仮に、在外者の場合にこれらの事情のみをもって「その責めに帰することができない理由」になると解したときは、拒絶査定の謄本が現実に審判請求期間内に配達されなかったときは、同項所定の期間内(当該理由がなくなった日から2か月以内で、同条1項の期間の経過後6か月以内)であれば、常に拒絶査定不服審判を請求することを認めるのと実質的に同じ結果になるからである。 このような解釈は、拒絶査定の謄本等の書類の発送の時に送達を受けたものとみな - 11 -し、法律関係の安定を図る法の趣旨に反するものであるから、採用することができない。同条2項の「その責めに帰することができない理由」とは、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により審判請求期間内に請求することができなかった場合をいうのであり、原告が令和4年4月8日に法律上、本件拒絶査定の謄本の送達を受けたことを 前提 してもなお避けることができないと認められる事由により審判請求期間内に請求することができなかった場合をいうのであり、原告が令和4年4月8日に法律上、本件拒絶査定の謄本の送達を受けたことを 前提としたとき、本件審査請求期間の末日である同年7月8日までに原告が通常期待される注意を尽くしてもなお本件審判請求をすることが困難であったことを示すような客観的な事情は見当たらない。したがって、原告の責めに帰することができない理由の存在を認めることはできない。 それのみならず本件においては、前記1のとおり、本件国際登録の公表から12 か月以内に拒絶の通報がされる可能性があることは、ジュネーブ改正協定により国際出願を行った以上、原告又はその代理人において当然知り得たはずである。また、少なくともWIPOのウェブサイトには本件拒絶の通報が掲載されていたから、原告は、同ウェブサイトを確認することにより、本件拒絶の通報がされていることを知り、日本国の意匠法に従って拒絶査定が行われるであろうことを容易に予測する ことができたはずである。それにもかかわらず、原告は、これらの点に注意を払うことなく、本件審判請求期間内に本件審判請求をしなかったのであるから、原告が、意匠登録出願人として、通常の注意力を有する当事者に通常期待される注意を尽くしていたと認めることはできない。 (2) 原告は、意匠法46条2項の文言から、法定の期間内(同条1項の期間内) に審判請求をする機会が与えられるに至った経緯については問われていないことが明らかであると主張する(取消事由1)。原告の主張する「法定の期間内に審判請求をする機会が与えられるに至った経緯」の意味は、必ずしも明らかではないが、同条1項によれば、原告は本件拒絶査定の謄本の送達を受けた日から3か月以内に不服審 )。原告の主張する「法定の期間内に審判請求をする機会が与えられるに至った経緯」の意味は、必ずしも明らかではないが、同条1項によれば、原告は本件拒絶査定の謄本の送達を受けた日から3か月以内に不服審判を請求することができ、同法68条5項において準用する特許法192条3 項の規定によれば、法律上、原告は本件拒絶査定の謄本の発送の時である令和4年 - 12 -4月8日に当該謄本の送達を受けたものとみなされる。したがって、本件における意匠法46条2項の「前項に規定する期間」は、その日から3か月以内の期間である。しかるところ、同項の解釈上、当該期間中に原告が本件拒絶査定を受けたという事実を知らなかったというだけで同項の「その責めに帰することができない理由」に該当すると解することはできない一方、当該理由の存否の判断に当たり、原告が 本件拒絶査定のされたことを知ることができる事実的状況にあったことを考慮することは、何ら同項の文言及びその趣旨に反するものではない。そして、これらの点を考慮した上で本件審判請求期間を徒過したことにつき原告の責めに帰することができない理由の存在が認められないことは、前記(1)のとおりであるから、原告の主張は採用することができない。 なお、原告代表者の宣誓供述書(甲1)によると、原告は、令和3年10月頃に、知的財産ポートフォリオの管理を、A氏の法律事務所からScheefに移管したが、その際、A氏が、本願について、数年先の更新期限まで更なるアクションをする必要がない旨の引継ぎをしており、このことが、原告又はScheefをして、本件拒絶査定を受ける可能性があることを認識しなかった原因であることがうかが える。しかしながら、前記1のとおり、本願については、国際公表後に特許庁がその登録を拒絶する可能性が eefをして、本件拒絶査定を受ける可能性があることを認識しなかった原因であることがうかが える。しかしながら、前記1のとおり、本願については、国際公表後に特許庁がその登録を拒絶する可能性があり、このことはジュネーブ改正協定の規定上明らかであったのであるから、上記引継ぎ内容は誤りであったというべきである。A氏及びScheefには、知的財産の管理者として意匠の国際登録に係る手続に精通すべきところ、これを怠っていたために上記誤りに気が付かなかったという過失がある。 また、日本国内の手続において、在外者に意匠管理人がいない場合には、書留郵便等により拒絶査定の謄本が送達され、発送の時に送達があったものとみなされることは、意匠法の規定上明らかであるから(意匠法68条5項において準用する特許法192条2項、3項)、A氏及びScheefは、現実に本件拒絶査定の謄本を受領するよりも前に、送達の効力が生じることを認識し、それに備えるべきであった ところ、これを怠ったという過失もある。そして、原告は、自らの経営判断により、 - 13 -A氏及びScheefに対し、本願に係る管理を委任していたのであるから、A氏及びScheefの過失があったことは、本件において原告の責めに帰することができない理由の存在は認められない旨の前記判断を左右するに足りるものではない。 (3) 原告は、本件審決の判断について、意匠法68条5項において準用する特許法192条2項の規定に基づいて拒絶査定の謄本が書留郵便等により在外者に発送 された場合には意匠法46条2項の適用は認められないと述べているのに等しく、法的根拠を欠くとも主張する(取消事由2)。しかし、拒絶査定の謄本が書留郵便等により在外者に発送された場合には、みなし送達により原告が現実に謄本を受領し の適用は認められないと述べているのに等しく、法的根拠を欠くとも主張する(取消事由2)。しかし、拒絶査定の謄本が書留郵便等により在外者に発送された場合には、みなし送達により原告が現実に謄本を受領していなくても発送日から同条1項に定める法定の期間が開始することになるだけで、この場合に同条2項の適用が排除されるわけではない。当該法定の期間内に拒絶査 定不服審判請求をすることができないような客観的な事情があるときなど、なお期間の徒過につき審判請求人の責めに帰することができない理由が存在することはあり得る。すなわち、同法68条5項において準用する特許法192条2項の規定に基づく拒絶査定の謄本の発送がされた場合に、意匠法46条2項を適用して不変期間の例外が認められる余地がなくなるなどということはできない。したがって、原 告の主張は採用することができない。 (4) そうすると、原告が本件審判請求期間内に本件審判請求をしなかったことについて、「その責めに帰することができない理由」によるものと認めることはできない。原告の主張する取消事由はいずれも理由がない。 第6 結論 以上の次第で、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 - 14 - 裁判長裁判官清水響 裁判官浅井憲 裁判官 浅井憲 裁判官勝又来未子
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