令和5(ウ)1 島根原発2号機運転差止仮処分申立事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月15日 広島高等裁判所 松江支部 却下
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判決文本文101,715 文字)

- 1 - 令和5年(ウ)第1号島根原発2号機運転差止仮処分申立事件(本案・広島高等裁判所松江支部平成22年(ネ)第79号)決定当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり(省略)主文 1 本件各申立てをいずれも却下する。 2 申立費用は債権者らの負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨債務者は、松江市鹿島町片句654番地1において、島根原子力発電所2号機を 仮に運転してはならない。 第2 事案の概要債権者らは、債務者が松江市鹿島町片句654番地1に設置した島根原子力発電所(以下「本件発電所」という。)2号機(以下「本件原子炉」という。)の安全に欠けるところがあり、本件原子炉の運転により債権者らの生命・身体に対する侵 害が生じる具体的危険があるなどとして、人格権に基づく妨害予防請求として、債務者に対して本件原子炉の運転の差止めを求める本案訴訟を松江地方裁判所に提起し、同裁判所において請求棄却の判決がされた後、当裁判所に控訴しているものであるが、本件は、上記本案訴訟における差止請求権を被保全権利として債権者らに生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるために仮の差止めを命ずる仮処分を求め た事案である。 第3 前提事実(かっこ内の疎明資料及び審尋の全趣旨により容易に認められる事実) 1 当事者⑴ 債権者らは、本件発電所から約40kmの範囲内にある別紙1当事者目録記 載の住所地(島根県又は鳥取県)に居住する者らである。 - 2 - ⑵ 債務者は、広島、岡山、山口、鳥取、島根の中国5県及び隣接県の一部への電力供給を行う一般電気事業者であるとともに、本件発電所において、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)2条5項所定の 根の中国5県及び隣接県の一部への電力供給を行う一般電気事業者であるとともに、本件発電所において、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)2条5項所定の発電用原子炉である本件原子炉を設置・所有している発電用原子炉設置者(同法43条の3の8第1項)である。 2 本件発電所の概要(乙19)⑴ 本件発電所は、日本海に面した島根半島の一画、大山・隠岐国立公園に隣接する区域に立地している。南には宍道湖・中海があり、東には大山、西には三瓶山がある。 ⑵ 本件原子炉は、債務者が本件発電所に設置している定格電気出力82万kW (キロワット)の沸騰水型原子炉(BWR)である。 債務者は、昭和44年11月13日、本件発電所1号機の原子炉設置許可を受け、昭和49年3月29日に営業運転を開始していた。債務者は、昭和58年9月22日、本件原子炉に係る原子炉設置変更許可を受け、平成元年2月10日に本件原子炉の営業運転を開始した。 債務者は、平成24年1月27日に当時の電気事業法に基づく定期検査を行うため本件原子炉の運転を停止し、現在も運転停止中である。平成23年3月に東北地方太平洋沖地震が発生し、これに伴う津波により福島第一原子力発電所で事故(以下「福島第一原発事故」という。)が発生したことを契機として、原子炉等規制法が改正されたほか、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則、実用発電用原 子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(以下「設置許可基準規則」という。)や関連する原子力規制委員会の内規が改正・制定され、平成25年7月に施行された。債務者は、上記改正等による新たな規制基準に適合させるため、同年12月25日、原子力規制委員会に対し、本件原子炉に係る原子炉設置 原子力規制委員会の内規が改正・制定され、平成25年7月に施行された。債務者は、上記改正等による新たな規制基準に適合させるため、同年12月25日、原子力規制委員会に対し、本件原子炉に係る原子炉設置変更許可、工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請をし、令和3年9月15 日、原子炉設置変更許可(以下「本件設置変更許可」という。)がされた。上記の - 3 - とおり、本件原子炉は現在運転停止中であるが、所要の審査等を経て再稼働を予定している。 なお、本件発電所1号機は、平成27年4月30日に営業運転を終了して廃止措置を実施中である。また、本件発電所では、3号機を建設中である。 3 本件原子炉の仕組み等(乙1、19) 物質を構成する原子は、すべて原子核(陽子や中性子の集まったもの)及び電子からできている。1個の原子核が複数の原子核に分裂する現象を核分裂反応という。 本件原子炉は、基本的な燃料として低濃縮ウランを使用し、ウランが核分裂反応を起こす際に発生する熱エネルギーを利用して、原子炉内で直接蒸気を発生させる沸騰水型の軽水型原子炉(BWR)である。原子力発電の仕組みは、原理的には、 火力発電(汽力発電)におけるボイラーを原子炉に置き換えたものであり、蒸気の力によってタービンを回転させて電気を発生させる点では火力発電(汽力発電)と同じである。 原子炉は、核分裂反応を起こして熱を発生する燃料、核分裂によって新たに発生する高速の中性子を次の核分裂を起こしやすい状態にまで減速させる減速材、燃料 から発生した熱を取り出すための冷却材、燃料の核分裂反応を制御する制御材等から構成される。 燃料は、ウラン235を1~5%程度含む二酸化ウランを円柱状に堅く焼き固めたもの(燃料ペレット)を用い、両端を密封した金属(ジルコニウ の冷却材、燃料の核分裂反応を制御する制御材等から構成される。 燃料は、ウラン235を1~5%程度含む二酸化ウランを円柱状に堅く焼き固めたもの(燃料ペレット)を用い、両端を密封した金属(ジルコニウム合金)製の燃料被覆管の中に燃料ペレットを縦に積み重ねて燃料棒を構成し、さらに9行9列状 にまとめて一つの燃料集合体としている。本件原子炉は最大挿入量560体の燃料集合体を使用する。なお、平成20年10月にMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)を使用するための設置変更許可がされており、同燃料の最大挿入量は上記560体のうちの228体とされる。 制御材は、その内部に中性子吸収材(ほう素(ボロン・カーバイド粉末)又はハ フニウム)を収めた十字形の制御棒を用いており、この制御棒を炉心に出し入れす - 4 - ることによって、炉心内の中性子の数を調整し、核分裂反応を制御する。 これらの燃料集合体及び制御棒は、高温、高圧に耐え得る鋼鉄製の圧力容器の中に収められている。 圧力容器の中には、冷却材と減速材とを兼ねる軽水が入っており、これが、核分裂反応で生じた熱によって高温(摂氏約290度)の蒸気となる。この高温の蒸気 は、主蒸気管を通ってタービンに送られ、タービンにおいてその熱エネルギーを機械的回転エネルギーに変換し、タービンに結合した発電機を回して発電をする。タービンを回転させ終えた蒸気は、復水器において海水により冷却され再び水となり、給水管を通って圧力容器に戻される。 圧力容器内の炉心内を循環する冷却材の一部は、原子炉再循環系の原子炉再循環 ポンプにより、炉心内を強制的に再循環させられ、炉心の除熱を行う。平素行われる原子炉の出力の微調整の際には、再循環させる減速材の役割をもつ冷却材の流量(再循環流量)を調整す 系の原子炉再循環 ポンプにより、炉心内を強制的に再循環させられ、炉心の除熱を行う。平素行われる原子炉の出力の微調整の際には、再循環させる減速材の役割をもつ冷却材の流量(再循環流量)を調整することにより、核分裂連鎖反応を制御する。 圧力容器、主蒸気管及び原子炉再循環ポンプといった主要な原子炉機器は、格納容器の中に収められている。格納容器は、鋼鉄製の容器であり、その外側を厚いコ ンクリートで覆われている。 発電用原子炉は、核分裂反応による高密度かつ膨大なエネルギーを制御しながら発電していることから、その運転を停止させて核分裂反応を「止める」ことができたとしても、その後も原子炉内の核燃料は、熱エネルギー(崩壊熱)を出し続けるという性質を有する。そのため、万一事故が発生した場合に被害を最小限に抑え、 事故の進展を食い止められるよう、「原子炉を止める」に加え、「炉心を冷やす」こと及び「放射性物質を閉じ込める」ことが安全対策の基本とされている。 4 福島第一原発事故の発生(乙22)2011(平成23)年3月11日、観測史上最大のマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。当時運転中であった福島第一原子力発電所1~3 号機は、原子炉が正常に自動停止したが、その後発生した津波により、建屋の浸水 - 5 - とほとんど同時に電気設備の多くが水没又は被水して機能を喪失し、全交流動力電源喪失となった。その後、1~3号機においては、冷却機能を失った原子炉の水位が低下し、炉心の露出から最終的には炉心溶融に至った。その過程で、1、3、4号機の原子炉建屋において水素爆発が発生し、また、水素爆発に至らなかった2号機においても放射性物質が放出され、周辺の汚染を引き起こした。 福島第一原発事故は、国際原子力機関(IA 、1、3、4号機の原子炉建屋において水素爆発が発生し、また、水素爆発に至らなかった2号機においても放射性物質が放出され、周辺の汚染を引き起こした。 福島第一原発事故は、国際原子力機関(IAEA)が定めた事象評価尺度(INES)で最も深刻なレベル7という極めて深刻な事故(過酷事故・重大事故)であり、環境中に放射性物質を大量に放出して広範な地域に放射能汚染をもたらし、多くの住民が避難生活を余儀なくされた。 5 原子力規制委員会の設置及び新規制基準の策定等(甲3、4、乙22) ⑴ 福島第一原発事故の原因については、様々な機関により調査、検討がされ、平成24年3月、当時の原子力安全・保安院において福島第一原発事故の技術的知見について検討結果がとりまとめられるなどしたほか、同年7月、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)及び東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)による各報告書がとりまとめられるなどし た。 ⑵ 政府事故調の報告書において、「原子力安全規制機関は、原子力安全関連の意思決定を実効的に独立して行うことができ、意思決定に不当な影響を及ぼす可能性のある組織から機能面で分離されていなければならない。これは、IAEAの基本安全原則も強調するところである。新たな規制機関は、このような独立性と透明 性を確保することが必要である。」旨の提言がされたことを受け、政府部内や国会において原子力規制機関の在り方について検討がされた。そして、平成24年6月、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」という。)が制定され、同法の施行に伴い、同年9月18日に従前の原子力安全・保安院及び原子力安全委員会が廃止され、同月19日に原子力規制委員会が設置された。 同委員会は、国家行政組織法3条 という。)が制定され、同法の施行に伴い、同年9月18日に従前の原子力安全・保安院及び原子力安全委員会が廃止され、同月19日に原子力規制委員会が設置された。 同委員会は、国家行政組織法3条2項に基づくいわゆる3条委員会として(設置 - 6 - 法2条)、高度の独立性が保障され、その委員長及び委員は、人格が高潔で原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命し(同法7条1項)、原子力に関する事業を行う者やその役員ないし従業員などは任命の欠格事由とされる(同法7条7項3号、4号)など、高度の専門的知見に基づいて中立公正な立場から独 立して職権を行使する体制(同法1条、5条)が整えられている。そして、同委員会は、その設置された目的を達成するため、いわゆる3条委員会としての地位に基づき、専門技術的事項について独立かつ中立の立場から原子力規制に必要な規則を制定することができるよう、規則制定権を付与されている(国家行政組織法13条、設置法26条)。 ⑶ 設置法附則15条から18条までに基づき、原子炉等規制法も改正された。 改正後の原子炉等規制法においては、発電用原子炉施設の設計から運転までの各過程を段階的に区分し、各段階に対応した許認可等の規制を行うという従前の段階的安全規制の枠組みは維持しつつ、重大事故の発生も考慮した安全規制への転換が図られ、最新の技術的知見に基づく規制を行うため、既に許認可を得た発電用原子炉 施設についても、原子力規制委員会が新基準への適合を義務付けることができるいわゆるバックフィット制度が導入されるなどした。 ⑷ 原子力規制委員会は、原子炉等規制法の改正の趣旨に則り、規制基準の見直しを行うため、「発電用軽水型 員会が新基準への適合を義務付けることができるいわゆるバックフィット制度が導入されるなどした。 ⑷ 原子力規制委員会は、原子炉等規制法の改正の趣旨に則り、規制基準の見直しを行うため、「発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム」及び「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム」を構成 し、各チームにおいて、原子力規制委員会の職員のほか、関係分野の学識経験者らも交えて検討を行った。そして、原子力規制委員会は、各チームの検討結果を踏まえて新たな規制基準の骨子案及び基準案を作成し、意見公募手続を経た上で、平成25年6月、設置許可基準規則、同規則の解釈を示す「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(以下「設置許可基準 規則解釈」という。また、新たに定められた原子力規制委員会の規則、告示及びそ - 7 - の解釈に関する内規を総称して「新規制基準」という。)及び発電用原子炉の設置許可に係る基準適合性審査で用いる各種審査ガイドをそれぞれ策定した。 6 実用発電用原子炉の安全規制の概要(甲43、乙24、26、63)⑴ 発電用原子炉を設置しようとする者は、原子力規制委員会の原子炉設置許可を受けなければならず(原子炉等規制法43条の3の5、43条の3の6)、発電 用原子炉施設の設置の工事に着手するためには、その設計及び工事の方法その他の工事の計画について同委員会の認可を受けなければならない(同法43条の3の9)。そして、発電用原子炉施設の使用を開始するためには、発電用原子炉設置者は、検査(使用前事業者検査)を行い、原子力規制検査により同委員会の確認を受けなければならない(同法43条の3の11)。また、発電用原子炉設置者は、原 子力発電所の保安のために 用原子炉設置者は、検査(使用前事業者検査)を行い、原子力規制検査により同委員会の確認を受けなければならない(同法43条の3の11)。また、発電用原子炉設置者は、原 子力発電所の保安のために必要な基本的な事項を記載した保安規定(使用前事業者検査等についての規定を含む。)を定め、発電用原子炉施設の設置の工事に着手する前に同委員会の認可を受けなければならない(同法43条の3の24)。 発電用原子炉設置者が、発電用原子炉施設の「位置、構造及び設備」その他、同法43条の3の5第2項2号から5号まで又は8号から11号までに掲げる事項を 変更しようとするときは、原子炉設置変更許可を受けなければならず(同法43条の3の8第1項本文)、変更する事項との関係において必要な範囲で設計及び工事計画の変更及び保安規定の変更をし、それぞれの認可を受けなければならない(同法43条の3の9第1項本文、43条の3の24第1項後段)。また、原子炉施設について検査(使用前事業者検査)を行い、原子力規制検査による確認を受けた後 でなければ変更した原子炉施設を使用してはならない(同法43条の3の11第1項、3項)。 設置許可等の処分後において、新知見が得られ、発電用原子炉施設が許可基準に適合しなくなった場合などに、原子力規制委員会は、発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造等その他保安のために必要な措置を命ず ることができる(同法43条の3の23第1項。いわゆる適合命令(バックフィッ - 8 - ト命令))。 ⑵ 原子炉設置許可又は原子炉設置変更許可について、同法43条の3の6第1項柱書は、同項各号のいずれにも適合していると認めるときでなければしてはならない旨を、同項4号は「発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃 許可又は原子炉設置変更許可について、同法43条の3の6第1項柱書は、同項各号のいずれにも適合していると認めるときでなければしてはならない旨を、同項4号は「発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障が ないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」を定めている。原子力規制委員会は、同号の委任に基づき、設置許可基準規則を制定した上、その解釈を設置許可基準規則解釈により示している。 ⑶ 上記⑵のほか、原子力規制委員会の内規として、基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(以下「地震ガイド」という。)及び原子力発電所の火山影響 評価ガイド(以下「火山ガイド」という。)等の審査ガイドが定められている。原子力規制委員会は、これら審査ガイドの位置付けについて、許認可の審査において、審査官が参照するために策定する文書であり、審査官が新規制基準への適合性を確認する方法の例を示した手引であること、規則や規則の解釈のように規制要求を示すものではないことや、ガイドを用いる際、そこに示す手法によらない手法で あっても、技術的根拠があれば基準適合性を確認することができることに留意すべきことなどを整理している。 第4 主要な争点 1 発電用原子炉運転差止請求の判断枠組み 2 地震に対する安全性 ⑴ 地震動評価の合理性⑵ 震源極近傍の問題 3 火山事象に対する安全性 4 立地審査指針違反の有無 5 原子力災害対策指針の合理性及び避難計画の実効性 第5 当事者の主張の要旨 - 9 - 債権者らの主張は「島根原発2号機運転差止仮処分申立書」及び準備書面⑴~(29)のとおりであり、これに対する債務者の主張は「 難計画の実効性 第5 当事者の主張の要旨 - 9 - 債権者らの主張は「島根原発2号機運転差止仮処分申立書」及び準備書面⑴~(29)のとおりであり、これに対する債務者の主張は「答弁書」及び主張書面1~7のとおりであるからこれらを引用するが、その要旨は以下のとおりである。 1 争点1(発電用原子炉運転差止請求の判断枠組み)について⑴ 債権者らの主張の要旨 本件原子炉が原子炉等規制法の要求する安全の水準に達しているといえるためには、原子力規制委員会の判断が依拠した具体的審査基準が不合理でないこと及び同審査基準に適合するとした判断の過程に看過し難い過誤・欠落がないことが必要であるところ、証拠の偏在があることや、重大なリスク源を地域社会にもたらしているのが債務者自身であることなどからすれば、事業者たる債務者は、本件原子炉が 原子炉等規制法の要求する安全の水準に達していることについて、相当な根拠・資料を用いて主張疎明する訴訟上の義務があり、①原子力規制委員会による具体的審査基準策定又は基準適合判断において判断の基礎とされた事実に誤認があることや事実に対する評価が合理性を欠くこと、又は、考慮不尽又は他事考慮があることを債権者らが主張した場合には、②債務者においてそれが本件原子炉ないし本件発電 所の安全に影響を及ぼさないことが科学的に確実であることを相当な根拠資料を用いて主張疎明しなければならず、債務者が上記②に失敗した場合には、債務者の訴訟上の義務違反の効果として、原子力規制委員会の判断に看過し難い過誤・欠落があること、ひいては「人格権侵害の具体的危険」があることが事実上推定される。 ⑵ 債務者の主張の要旨 人格権に基づく妨害予防請求としての差止請求が認められるためには、生命、身体のような重大な ること、ひいては「人格権侵害の具体的危険」があることが事実上推定される。 ⑵ 債務者の主張の要旨 人格権に基づく妨害予防請求としての差止請求が認められるためには、生命、身体のような重大な保護法益が侵害され被害の発生する危険性が切迫していることが必要であり、その危険性は抽象的、潜在的なレベルでは足りず、具体的危険性が存在しなければならない。主張疎明責任は民事裁判における一般の原則に従い債権者が負うべきである。したがって、債権者らは、①地震、火山事象等の具体的な起因 事象の内容並びに起因事象が発生することの切迫性及び蓋然性、②その起因事象に - 10 - より本件原子炉の重要な機能が喪失することとなる具体的な機序及び蓋然性、③その機能喪失に対して講じている各種安全対策が奏功しないこととなる具体的な機序及び蓋然性、④これによって本件原子炉から放射性物質が環境へ大量に放出されることとなる具体的な機序及び蓋然性について主張疎明しなければならない。 そして、本件は満足的仮処分であるから、本案訴訟における証明に比肩する高度 な疎明を要する。 2 争点2(地震に対する安全性)について⑴ 争点2⑴(地震動評価の合理性)についてア債権者らの主張の要旨(ア) 平成7年の兵庫県南部地震を契機として地震観測網が整備された結果、こ の20年間余に、我が国には1000ガルを超える地震動が数多く起き、2000ガルを超える地震動もあり、最高4022ガルの地震動さえ記録されたことが判明した。地震ガイドⅠ5.2⑷は「基準地震動は、最新の知見や震源近傍等で得られた観測記録によってその妥当性が確認されていることを確認する」旨規定しているが(以下「本件最新知見等規定」という。)、本件原子炉については、本件最新知 見等規定を適用 知見や震源近傍等で得られた観測記録によってその妥当性が確認されていることを確認する」旨規定しているが(以下「本件最新知見等規定」という。)、本件原子炉については、本件最新知 見等規定を適用して上記最新の知見が考慮されることがされなかったため、以下のとおり、策定された基準地震動は不合理で低水準なものとなっている。 a 平成12年以降の高い最大加速度が記録された地震(別紙2、別紙3)と比較して、本件原子炉の基準地震動(820ガル。宍道断層及びF‐Ⅲ断層+F‐Ⅳ断層+F‐Ⅴ断層による地震の応答スペクトルを踏まえて策定。各断層のおおよそ の位置については別紙4を参照。)や、これを策定するに当たり考慮された伯耆沖断層帯(164ガル)の想定地震動は極めて低水準である。 b 建築基準法及び建築基準法施行令は、一般建築物の構造耐力について、大規模の地震動(震度6強~震度7(概略で最大加速度は「1500ガル程度~」)で倒壊・崩壊しないことを求めており、820ガルを基準地震動とする本件原子炉の 耐震性は一般の木造住宅の耐震性よりも劣る疑いが濃い。 - 11 - ハウスメーカーにおいては、多数回の加振実験により3406ガル(住友林業)や5115ガル(三井ホーム)まで耐えることが確認されている。本件原子炉の基準地震動は、ハウスメーカーの住宅の耐震ガル数に遙かに及ばない。 c 一般的には硬い岩盤の揺れは軟らかい地盤の揺れよりも小さいとされているが、基準地震動を上回る地震動が原子力発電所の解放基盤表面において認められた 5つの事例(別紙5。以下「本件5事例」という。)では、解放基盤表面の数値(当該原子炉の基準地震動又は剥ぎ取り解析による数値)が周辺の観測地点の地表面での観測数値を大きく下回ったことは一度もなく、実際の事例から、解 5。以下「本件5事例」という。)では、解放基盤表面の数値(当該原子炉の基準地震動又は剥ぎ取り解析による数値)が周辺の観測地点の地表面での観測数値を大きく下回ったことは一度もなく、実際の事例から、解放基盤表面の揺れが地表面の揺れよりも小さくなるという法則性はないといえる。 d 基準地震動の合理性について疎明責任を負う債務者は、本件原子炉の位置す る地域、地盤と820ガルや490ガル、164ガルを超える地震が発生した極めて多くの地域、地盤との間にそのような地震動の差を生じさせるような要因があるならそれはどのような要因か、その要因がどのように地震動に影響を与えるのかを明らかにしなければならない。債務者による基準地震動の策定及び原子力規制委員会の審査において本件最新知見等規定の適用を怠ったという過誤によって基準地震 動が設定され、審査がなされた合理的な疑いがあり、その過誤は看過することができない重大なものであるから、本件原子炉はその耐震性に係る安全性に欠けるところがあり、債権者らの人格権侵害の具体的な危険の存在があると事実上推定される。 (イ) 現在の規制基準は、強震動予測を基礎にして保守的な計算をすれば当該原 発を将来襲うであろう最強の地震動が予知予測できるという枠組みに立っているが、本件5事例の原子力発電所に係る電力会社の設定してきた基準地震動の設定に全く信頼性がないことなどからすれば、上記の規制基準の枠組み自体が不合理であるとの大きな疑問がある。 また、原子力発電所の設計に当たって安全率は設けられていないこと、本件原子 炉の基準地震動は建設当時の398ガルから現在の820ガルまで引き上げられて - 12 - おり、当初の余裕は食い潰されていると考えられること、原子力発電所の動的機能に係る配管に一部でも 炉の基準地震動は建設当時の398ガルから現在の820ガルまで引き上げられて - 12 - おり、当初の余裕は食い潰されていると考えられること、原子力発電所の動的機能に係る配管に一部でも脆弱な部分があれば他の堅固な部分によって補うことはできず、最も脆弱な部分の耐震性が問われることからすれば、債務者が主張するように余裕を持った耐震設計がなされているとは考えられない。 (ウ) 従前の地震ガイド(甲10)は、Ⅰ3.2.3⑵において、「震源モデルの 長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。」旨を定めていた(以下「本件ばらつき条項」という。)ところ、債務者は、本件原子炉の基準地震 動を策定する上で、経験式である松田式(松田時彦(1975年)「活断層から発生する地震の規模と周期について」(甲40)に示される、地震のマグニチュードMと活断層長さL(km)との関係を表す経験式。以下同じ。)及び入倉・三宅式(入倉孝次郎・三宅弘恵(2001)「シナリオ地震の強震動予測」(甲41。以下「入倉・三宅(2001)」という。)に示される、震源断層面積S(km2) と地震モーメントM0との関係を表す経験式。以下同じ。)を用いているが、いずれも本件ばらつき条項による修正は加えておらず、原子力規制委員会も、実際に発生する地震規模が松田式及び入倉・三宅式から求められる平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮していないから、審査においても過誤、欠落がある。 (エ) なお、原子力規制委員会は、本件ばらつき条項に する地震規模が松田式及び入倉・三宅式から求められる平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮していないから、審査においても過誤、欠落がある。 (エ) なお、原子力規制委員会は、本件ばらつき条項に適合する審査がなされて いないとして大飯原子力発電所3号機、4号機の設置変更許可を取り消した大阪地裁令和2年12月4日判決の後、本件ばらつき条項第2文を削除した。合理的な本件ばらつき条項が削除された地震ガイドは、地震規模の過小評価に起因する地震動の過小算定によって人格権侵害の危険を招くものとなり、規制基準としての合理性を失った。 イ債務者の主張の要旨 - 13 - (ア) 地震動が構造物に与える影響を検討する際には、地震動の最大加速度だけでなく、経時特性や周期特性といったその他の特性に加え、当該構造物の固有周期も考慮することが重要であり、単に最大加速度のみを取り上げた比較をし、債務者の地震動評価について論ずる債権者らの主張は不合理である。 また、ある地点における地震動は、震源断層面におけるずれの過程の特性である 「震源特性」及び地震波が地中を伝播する際の特性である「地下構造による地震波の伝播特性(伝播経路特性、地盤増幅特性)」の影響を受け、これらの特性は、地震ごと又は地震動が生じる地点ごとにそれぞれ異なる。 (イ) 各地震ないし地震動の観測記録も、当該地震が発生した地域の震源特性、震源から当該観測地点までの伝播経路特性及び当該観測地点の地盤増幅特性が現れ ているものであるから、本件発電所の敷地(以下「本件発電所敷地」という。)とは伝播経路特性も地盤増幅特性も異なる地点の地震観測記録と、硬質地盤である解放基盤表面で設定される本件原子炉の基準地震動Ssや地震動評価結果とを単純に比較しようとすることは、上記の 地」という。)とは伝播経路特性も地盤増幅特性も異なる地点の地震観測記録と、硬質地盤である解放基盤表面で設定される本件原子炉の基準地震動Ssや地震動評価結果とを単純に比較しようとすることは、上記の地域性を無視するものであって不合理である。 (ウ) 原子力発電所とその他の一般建築物とでは、耐震設計を含めた設計の条件 や考え方が根本的に異なり、それらの耐震性を比較して優劣を論ずること自体が不合理である。なお、本件原子炉は、建築基準法上の建築物として同法の規定を満足することはもとより、原子力発電所について独自に定められた新規制基準の規定も満足するように設計されている。債権者らは、建造物としての耐震性ではなく、動的機能に関する耐震性を問題としているとも主張するが、新規制基準は、合理的に 予測される規模の地震動による地震力に対してその安全機能が確保できることが要求されているのであって、構造部分であるか機器・配管系であるかによって異なるものではない。 (エ) 新規制基準に基づく地震動評価は、平成18年改訂後の耐震指針(乙131)と比較して、活断層等の解釈を明確化したり、地下構造による地震波の増幅の 考慮に関する記載が充実し、適用面ではより詳細な調査・検討が求められるなど高 - 14 - 度化したものとなっており、新規制基準が制定される前に基準地震動を上回る地震動が発生した事例が存在することをもって、新規制基準に基づいて電力会社が策定する基準地震動Ssが合理的ではないとはいえない。また、本件5事例は、当該地点に固有の地域性による影響が大きい事例であったり、そもそも基準地震動Ssを超過した事例ではなかったりと、当該地点以外の原子力発電所における基準地震動 Ssとは異なる要素が多々存在しており、これらの事例が存在することを 響が大きい事例であったり、そもそも基準地震動Ssを超過した事例ではなかったりと、当該地点以外の原子力発電所における基準地震動 Ssとは異なる要素が多々存在しており、これらの事例が存在することをもって、本件原子炉の基準地震動Ssの合理性が失われるわけではない。 基準地震動は、原子力発電所の耐震安全性を確保するために、どのように耐震設計を行うか、その基準となる地震動として策定するものであり、将来発生する地震動を正確に予測したものでなくとも、自然科学の不確実性を踏まえた上でその点を 保守的に考慮し、余裕のある地震動として設定することで、将来発生する地震動に耐えられるよう原子力発電所を設計することが可能となる。自然科学に不確実性があることをもって、強震動予測ないし本件原子炉の基準地震動Ssが合理的でないとはいえない。 (オ) 債務者は、経験式を用いた地震動評価を行うに当たり、経験式は過去に発 生した地震ないし地震動のデータセットを基に求められた標準的な式であり、その適用範囲は当該経験式の基となったデータセットの範囲に限られることを踏まえ、各経験式の適用範囲を検討した上でその適用を行うとともに、本件発電所敷地及びその周辺で詳細な調査・検討を行い、震源特性に関し「標準的・平均的な姿」よりも大きくなるような特性は認められず、むしろ、中国地方の横ずれ断層については 「標準的・平均的な姿」よりも短周期レベルが小さくなるような地域性が認められるなど、地震及び地震動に係るいずれかの特性が、多数の地震ないし地震動の「標準的・平均的な姿」を明らかにする経験式によって導かれたものよりも大きくなる又は特異なものとなるような地域性が認められないことを確認した上で、基本震源モデルについて、詳細な調査や検討の結果を踏まえ、経験式に当てはめるパラメ かにする経験式によって導かれたものよりも大きくなる又は特異なものとなるような地域性が認められないことを確認した上で、基本震源モデルについて、詳細な調査や検討の結果を踏まえ、経験式に当てはめるパラメー タを保守的に設定し、地震動評価に与える影響が大きいと考えられるものについ - 15 - て、不確かさを考慮したケースとして認識論的不確かさと偶然的不確かさとを重畳させるなど保守性を重ねて地震動評価を行い、本件原子炉の基準地震動Ssを策定した。 基準地震動の策定の実務においては、「経験式が有するばらつき」と「不確かさ」とを全く別の概念と捉えるのではなく、「経験式が有するばらつき」は「不確かさ」 を考慮することによって解決するという関係にあるものと理解されており、保守的な地震動評価を行うに当たって、「経験式が有するばらつき」を支配的なパラメータの「不確かさ」で考慮するという考え方は、現在の地震学、地震工学等においては広く是認されている。 (カ) 本件ばらつき条項の削除に係る地震ガイドの改正は、基準地震動の策定に おいて経験式を用いる場合「経験式が有するばらつき」の考慮として殊更に一定の値を上乗せすることが必要とされているわけではないことや、地震動評価に大きな影響を与えると考えられる不確かさを適切に考慮して策定されているかどうかを総合的な観点から判断すべきことを明確化したものであり、不合理ではない。 ⑵ 争点2⑵(震源極近傍の問題)について ア債権者らの主張の要旨設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号⑥には「内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係並びに 陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討 するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、上記⑤(注:同号⑤)の各種の不確かさ(基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ)が地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること。」が、地震ガイドⅠ3.3.2⑸には「震源が敷地に極め て近い場合の地震動評価においては、地表に変位を伴う断層全体(地表地震断層か - 16 - ら震源断層までの断層全体)を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていること」を確認する旨などが規定されている。(以下、併せて「本件特別考慮規定」という。)「震源が敷地に極めて近い場合」について前記審査基準にあるような特別な検討 を行っていない場合、そのような判断過程には、過誤・欠落が存在し、この過誤・欠落が本件原子炉の安全に影響を与えないことが科学的に確実であることを債務者の側が主張疎明できない限りは、看過し難い過誤・欠落があると事実上推認できる。 本件発電所の施設の位置は公開されていないため明らかではないが、宍道断層か ら本件発電所敷地境界までの最短距離は僅か1.3km程しかないところ、本件設置変更許可申請書に添付された「重大事故等対処設備配置及び保管場所図(その1)」によれば、基準地震動に対 宍道断層か ら本件発電所敷地境界までの最短距離は僅か1.3km程しかないところ、本件設置変更許可申請書に添付された「重大事故等対処設備配置及び保管場所図(その1)」によれば、基準地震動に対して耐震安全性を確保すべき設備は敷地のほぼ全体に配置されているから「震源が敷地に極めて近い場合」に該当する。仮に敷地境界を基準にしないとしても、設置許可基準規則によって基準地震動による地震力に 対する評価が要求されている地盤、施設等のうち、震源(断層)から最も近いものとの距離を基準として2km以内であれば該当するというべきである。また、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、港湾空港技術研究所、地震防災研究領域領域長であるA作成の意見書(甲127。以下「本件A意見書」という。)によれば、宍道断層の浅部断層は本件発電所敷地に極めて近いから、浅部断層で生成さ れる短周期の地震波が原子力発電所に大きな影響を及ぼす恐れがあり、「震源が敷地に極めて近い場合」に該当する。 債務者は、基準地震動策定において、アスペリティを含む2km以深の深部断層から短周期の地震波が生じることを想定しているが、アスペリティ上端深さは少なくとも1km程度まで浅くなる可能性があり、保守的に0.5km程度まで浅くな る可能性があると考えて敷地での地震動の短周期レベルの2kmの場合に対する比 - 17 - を計算すると、短周期レベルは、アスペリティ上端深さが1kmの場合は2kmの場合の1.3倍程度、アスペリティ上端深さが0.5kmの場合は2kmの場合の1.6倍程度となる。 また、債務者は、深部断層(深さ2km以上)に係る短周期側の地震動評価において遠地項のみを考慮しているところ、中間項および近地項の影響を考慮したとし ても短周期側の地震動評価が過 程度となる。 また、債務者は、深部断層(深さ2km以上)に係る短周期側の地震動評価において遠地項のみを考慮しているところ、中間項および近地項の影響を考慮したとし ても短周期側の地震動評価が過小評価となっていないことを確認したとしているが、これはあくまでも深部断層(深さ2km以上)の影響について考慮したものであり、浅部断層の影響について検討していないのであるから、これをもって震源が敷地に極めて近い場合の影響の検討ができているとはいえない。 原子力規制委員会の審査についても、一度は島根原発における宍道断層は「震源 が敷地に極めて近い場合」に該当するものとして一応正当な評価をしながら、その後の審査会合ではこの重要論点に関する審査は一切行われることなく、宍道断層について「震源が敷地に極めて近い場合」に該当しないという前提で本件設置変更許可に至っており、本件適合性審査には明らかに過誤、欠落がある。 イ債務者の主張の要旨 設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号⑥も地震ガイドも、「震源が敷地に極めて近い場合」に該当する場合の具体的な距離やその距離の計測方法に係る定めを何らしていないところ、一般に、断層から2km程度以上離れると、浅部の震源域による影響は無視できる程度に下がるとされていることや、本件特別考慮規定は、敦賀発電所において原子炉から約250m という至近距離に活断層である浦底 断層が存在したことから、同断層による地震動評価の検討を念頭に、断層が至近距離にある場合の地震動評価に係る規制として導入されたものであること、宍道断層は本件原子炉の炉心から水平距離で約2km離れており、浅部の破壊による影響は無視できる程度に小さいと考えられたことから、債務者は「震源が敷地に極めて近い場合」には該当しないと判断した。 断層は本件原子炉の炉心から水平距離で約2km離れており、浅部の破壊による影響は無視できる程度に小さいと考えられたことから、債務者は「震源が敷地に極めて近い場合」には該当しないと判断した。 もっとも、債務者は、宍道断層について、同断層が本件発電所敷地の近傍に位置 - 18 - していることを踏まえて、基本震源モデルについて経験式に当てはめるパラメータを保守的に設定した上、不確かさを組み合わせて重畳させることなどによる保守性を重ねた地震動評価を実施した。また、念のため、同断層による地震について、浅部の破壊による影響がないことを確認するとともに、更に参考として、深部断層に係る統計的グリーン関数法を用いた短周期側の地震動評価について検討し、これが 過小評価になっていないことを確認した。よって、本件原子炉の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」による基準地震動Ssの策定に当たり考慮した地震動の評価結果は過小とはなっておらず、原子力規制委員会も、債務者の上記検討を確認している。 3 争点3(火山事象に対する安全性)について ⑴ 債権者らの主張の要旨ア本件発電所敷地の南西約55kmに位置する三瓶山においては、約11万年前に三瓶木次テフラ(SK)を生じさせた噴火(噴出量約20km3)が発生し、本件発電所敷地付近で100cmの降灰が確認されており、同規模の噴火が発生すれば本件原子炉敷地に100cmを超える降灰が到達する可能性が高いが、債務者 は、SK噴火の発生可能性を否定し、それよりも小さい約1万5000年前の三瓶浮布テフラ(SUk)を最大の噴火規模と想定して、本件発電所敷地について想定すべき最大層厚を56cmと評価した。 イ火山ガイドは、降下火砕物に関して、「原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求 浮布テフラ(SUk)を最大の噴火規模と想定して、本件発電所敷地について想定すべき最大層厚を56cmと評価した。 イ火山ガイドは、降下火砕物に関して、「原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積当たりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。」 とする一方で、「降下火砕物の噴出源である火山事象が同定でき、これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分に小さい場合には、考慮対象から除外する。」ことを認めているが(以下「本件除外要件」という。)、以下のとおり、本件除外要件は不合理であり、本来考慮対象から除外してはならないような火山現象を安易に除外することを許容する基準となっている。その結果、 降灰の想定が過少になり、安全施設が降下火砕物による荷重に耐えられなくなる危 - 19 - 険が生じるほか、外部電源がショートし、非常用ディーゼル発電機が目詰まりを起こすなどして機能喪失する危険がある。電源が失われれば、原発の安全機能のうち冷却機能を喪失し、炉心溶融や炉心貫通を引き起こして放射性物質が外部に大量に放出される事態となり、債権者らを含む周辺住民の生命や身体、生活環境に回復し難い甚大な被害を及ぼす危険がある。 (ア) 令和元年12月18日改正前の火山ガイド(以下「旧火山ガイド」という。)では、「噴出源」が将来噴火する可能性が否定できる場合のみ考慮対象から除外することができたが、上記改正後の火山ガイドでは、「噴出源である火山事象」と同様の火山事象が原発の運用期間中に発生する可能性を問題とされるようになったため、噴火規模を値切ることで火山の影響を小さく評価できるようになって しまった。現在の火山学の水準では、将来の活動可能性評価は不確実性が大きく、とりわけ、噴火規模を予測する れるようになったため、噴火規模を値切ることで火山の影響を小さく評価できるようになって しまった。現在の火山学の水準では、将来の活動可能性評価は不確実性が大きく、とりわけ、噴火規模を予測することは困難とされている。火山ガイドは、旧火山ガイドの求めていた安全の水準を合理的な理由なく後退させ、噴火規模を予測することができることを前提としている点で不合理である。 (イ) 旧火山ガイドは、活動可能性評価には大きな不確実性が存在することか ら、過去に火砕物密度流などの設計対応不可能な火山事象が到達したことがある原子力発電所については当該火山のモニタリングを実施し、運転の停止、核燃料の搬出を行うことによって安全を確保するという建付けになっていたが、その後、モニタリングによって噴火の兆候を把握することは困難であることが発覚し、原子力発電所の差止訴訟等においても旧火山ガイドが不合理であるという判断が相次ぐなど した結果、「現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価」すればよいとし、モニタリングについても個別評価の外側にあるなどとする不合理な改正がされてしまった。 (ウ) これらは、基準策定に係る原子力規制委員会の判断の不合理性を基礎づけるものであり、火山ガイドは不合理であるから、本件原子炉は原子炉等規制法が要 求する安全の水準に達しているとはいえず、人格権侵害の具体的危険が存在する。 - 20 - ⑵ 債務者の主張の要旨ア債権者らが引用する文献によっても、本件発電所敷地は三瓶木次テフラの5cmの等層厚線と100cmの等層厚線との間に位置しており、同テフラの降灰層厚が100cm程度であったと読み取ることはできない。また、債務者が実施した本件発電所敷地を中心とする半径約30kmの範囲における地質調査結果によ cmの等層厚線との間に位置しており、同テフラの降灰層厚が100cm程度であったと読み取ることはできない。また、債務者が実施した本件発電所敷地を中心とする半径約30kmの範囲における地質調査結果による と、本件発電所敷地は同テフラの等層厚線10cm程度の範囲に位置しており、債務者が実施した本件発電所敷地内のボーリング調査等では同テフラは確認されていない。したがって、本件発電所敷地及びその付近に100cm程度の降灰層厚を想定しなければならないとはいえない。 イまた、債務者は、文献によると、三瓶山火山は、約7万年前に火砕流が主体 である噴火により三瓶大田火砕流を噴出し、約1.5万年前に三瓶浮布テフラを噴出した後は活動が溶岩ドームを形成するものへと変化し、爆発性が低下しているとされていること、階段ダイヤグラムによる検討の結果、同火山の火山活動が始まった約110万年前の森田山の噴火から同噴火以降最も規模の大きな噴火である三瓶木次テフラの噴出までの期間(約100万年)は、三瓶木次テフラの噴出から現在 までの経過時間(約11万年)に比べ十分に長いこと、珪長質マグマの浮力中立点(深度7km以浅)より浅部にマグマ溜まりの存在を示す兆候はないこと、気象庁及び火山噴火予知連絡会の資料によると三瓶山に噴火の兆候は認められないなどとされていることを総合的に考慮して、三瓶山が本件原子炉の運用期間中に上記規模の噴火を起こす可能性は十分小さいと評価しており、債権者らの生命、身体に被害 が及ぶ具体的危険性はない。 ウ債権者らは、噴火予測ができることを前提としている火山ガイドが不合理であることや、三瓶山火山が本件原子炉の運用期間中に三瓶木次テフラのような広域にテフラを降下させる規模の噴火を起こす可能性は十分小さいと評価できないことを主張する を前提としている火山ガイドが不合理であることや、三瓶山火山が本件原子炉の運用期間中に三瓶木次テフラのような広域にテフラを降下させる規模の噴火を起こす可能性は十分小さいと評価できないことを主張するが、債務者は、どのような規模の噴火がいつ発生するのか的確に予測・ 予知するといった意味での噴火予測、いわゆる噴火予知ができることを前提として - 21 - いるわけではなく、現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価することにより、一定の火山影響評価は行うことができるものと考えている。 エ債権者らは、火山活動のモニタリングに実効性がないことも主張するが、火山活動のモニタリングの対象は、第四紀において「設計対応不可能な火山事象」が原子力発電所に到達した可能性が否定できない火山であり、三瓶山の噴火による降 下火砕物を含む「設計対応可能な火山事象」とは直接関係がない。 4 争点4(立地審査指針違反の有無)について⑴ 債権者らの主張の要旨昭和39年5月27日に原子力委員会が決定した「原子炉立地審査指針およびその適用に関する判断のめやす」(立地審査指針)は、「万一の事故に備えて、公衆 の安全を確保するためには、原則的に次のような立地条件が必要である。」として、原発が人口密集地帯から離れていること(離隔要件)等を規定しているところ、福島第一原発事故が起きたことを受けて新規制基準が策定され、従来の規制基準のうち多数のものが改廃されたが、立地審査指針は現在まで廃止されていない。 立地審査指針は災害の防止上支障がないか否かを審査するための重要な基準の一つ であり、福島第一原発事故以前と同様に各原発の設置許可あるいは設置変更許可の審査に適用されなければならない。 本件原子炉が福島第一原発事故と同じような事故を起こした場 ための重要な基準の一つ であり、福島第一原発事故以前と同様に各原発の設置許可あるいは設置変更許可の審査に適用されなければならない。 本件原子炉が福島第一原発事故と同じような事故を起こした場合、高濃度の放射性物質が80km圏内に降下し、沈着することが予想される。そのような事態になった場合、本件原子炉のPAZ(原子力施設から概ね半径5kmの範囲。以下同 じ。)及びUPZ(PAZの外側の概ね半径30kmの範囲。以下同じ。)は避難が必要であるが、PAZの人口は9308人、UPZの人口は44万5383人にも上り、30km圏の人口(PAZとUPZの人口)は、全国16地域の原発で3番目の多さである。また、避難の司令塔になるべき松江市役所及び島根県庁は、島根原発から10km圏内に位置するため、事故時に大量の放射性物質が降り注ぐ中 に留まり、避難指示を発し、避難誘導し、避難者を保護する役目を果たすことは不 - 22 - 可能である。これらの事情に照らすと、島根原発は立地審査指針の離隔要件を満たしておらず、立地不適である。 しかるに、本件発電所の設置変更許可審査においては、立地審査指針が適用されなかったために立地不適とされていない。このような原子力規制委員会の判断は、その判断過程において立地審査指針を考慮しなかったという意味において看過し難 い過誤・欠落があるといえるし、立地審査指針が具体的審査基準とされていないのであれば、立地評価を考慮しなかったという意味においてやはり不合理である。 ⑵ 債務者の主張の要旨立地審査指針は、改正前原子炉等規制法24条1項4号(改正後原子炉等規制法43条の3の6第1項4号に相当)における「災害防止上支障がないものであるこ と」の規定を踏まえて策定された指針の一つであって、公衆に対す 正前原子炉等規制法24条1項4号(改正後原子炉等規制法43条の3の6第1項4号に相当)における「災害防止上支障がないものであるこ と」の規定を踏まえて策定された指針の一つであって、公衆に対する放射線リスクの抑制を目的とするものであったが、新規制基準においては、地震や津波、火山などといった外部事象との関係で立地の評価をしており、これにより、より適切に「災害の防止上支障がないこと」(原子炉等規制法43条の3の6第1項4号)について評価することが可能である。そして、新規制基準の下では、設置許可基準規 則が重大事故等対策を講ずることをも要求し、重大事故に至るおそれのある事故が生じた場合であっても、敷地外の公衆に影響を及ぼし得る程度の放射性物質の放出がないことを規制要求としていることからすれば、公衆に影響を及ぼす程度に放射性物質が放出されることを前提に、発電用原子炉施設の敷地境界とは別途、公衆との離隔に関する立地評価をする必要性は認められず、また、同規則において原子力 防災対策の観点からの立地評価を行うことは、現在においてはその意義を失っている。そのため、設置許可基準規則は立地審査指針を採用しておらず、同指針は新規制基準の下では用いられていない。 5 争点5(原子力災害対策指針の合理性及び避難計画の実効性)について⑴ 債権者らの主張の要旨 原子力災害対策に係る深層防護(安全に対する脅威から人を守ることを目的とし - 23 - て、ある目的を持った幾つかの障壁(防護レベル)を用意して、各々の障壁が独立して有効に機能することを求めるもの。原子力発電所では従来から深層防護の考え方を適用することが有用と考えられており、IAEAにおいても採用されてきた。)の第5の防護レベル(重大事故に起因して発生しうる放射性物質の放 ることを求めるもの。原子力発電所では従来から深層防護の考え方を適用することが有用と考えられており、IAEAにおいても採用されてきた。)の第5の防護レベル(重大事故に起因して発生しうる放射性物質の放出による影響を緩和することを目的として、十分な装備を備えた緊急時対応施設の整備 と、所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備を要求するもの。)は、我が国の法制上、災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法に基づいて措置されている。島根県及び鳥取県は災害対策基本法や原子力規制委員会の定める原子力災害対策指針等に基づき、それぞれ地域防災計画及び広域避難計画を作成し、県下の市町村も地域防災計画や広域避難計画等を作成しているが、以下 のとおり、原子力災害対策指針は不合理であり、また、県や市町の定める避難計画は実行性がないから、深層防護の第5の防護レベルが欠落し又は不十分であり、債権者らの人格権侵害の具体的危険が存在する。 ア原子力災害対策指針は、全面緊急事態の段階ではPAZの住民を避難させ、UPZの住民は屋内退避(自宅待機)をし、緊急時モニタリング(現地実測値)の 結果が毎時500μSv超過の区域の住民は速やかに避難等を行い、毎時20μSv超過した時から概ね1日が経過した時の空間放射線量率が毎時20μSv超過している区域の住民は、1週間程度内に一時移転を行う段階的避難を定めているが、現実に原発事故が起きた場合にUPZの住民が段階的避難を実行することはおよそ考え難い。また、段階的避難は、平常時の公衆被曝限度を優に上回る被曝を強いる ものである。 イ地震による道路損壊・寸断や津波による浸水など、複合災害を想定した避難時間推計はなされておらず、避難退域時検査や除染、安定ヨウ素剤の配布・服用に要する時間も考 曝を強いる ものである。 イ地震による道路損壊・寸断や津波による浸水など、複合災害を想定した避難時間推計はなされておらず、避難退域時検査や除染、安定ヨウ素剤の配布・服用に要する時間も考慮されていないため、地震や津波等による原発事故が発生した場合に、何時間で避難できるのか確認されていない。令和6年能登半島地震による多数 の道路の損壊・寸断も、避難経路の通行が不可能となることを改めて明らかにする - 24 - ものである。 ウ上述のとおり、UPZの住民らはまずは自宅で屋内退避をすることとされているが、巨大地震時には倒壊や余震の危険・恐怖から屋内に退避することは不可能であり、このことは、令和6年能登半島地震による被害に照らしても明らかである。また、屋内退避をしても放射線から身体を守る効果はごくわずか(木造家屋の 場合10%低減)しかない。 エ放射性ヨウ素(ヨウ素131)による内部被曝の影響を低減するため、放射性ヨウ素が吸入摂取または体内摂取される前の24時間以内又は直後に、安定ヨウ素剤を服用しなければならないが、原子力災害対策指針では緊急時モニタリングとして現地実測値を基に防護措置の判断材料とすると定められ、予測値を用いないた め、時間的余裕を持った時期に安定ヨウ素剤の服用指示を出すことができない。現状の避難計画では、適切な時期に国や県からの服用指示は見込めず、本件原子炉から30km圏内の自治体で安定ヨウ素剤の事前配布を受けている住民も1%に満たない。 オ島根県内では避難経路に該当する複数箇所が地すべりや急傾斜地による土砂 災害警戒区域に指定され、代替の避難経路も十分に定められていない。 ⑵ 債務者の主張の要旨ア深層防護の第5の防護レベルに位置付けられる原子力災害に対する緊急時の対応 急傾斜地による土砂 災害警戒区域に指定され、代替の避難経路も十分に定められていない。 ⑵ 債務者の主張の要旨ア深層防護の第5の防護レベルに位置付けられる原子力災害に対する緊急時の対応は、その欠落ないし不十分自体が原子力発電所から環境へ放射性物質を大量に放出させるものではないから、本件原子炉の運転に伴って放射性物質が大量に放出 される重大な事故が発生する具体的危険性を主張疎明しないで島根地域の緊急時の対応の欠落ないし不十分を主張疎明したのみでは放射性物質により債権者らの生命、身体に被害が生ずる具体的危険があるとの事実が疎明されることはない。そして、本件原子炉の運転に伴って放射性物質が環境へ大量に放出される重大な事故が発生する具体的危険性は認められないから、深層防護の第5の防護レベルに位置付 けられる島根地域の原子力災害に対する緊急時の対応に関し現状の避難計画に不備 - 25 - があるとする債権者らの主張は、被保全権利とする本件原子炉の運転の差止請求権を根拠付けるものではない。 イまた、債権者らの上記主張は、いずれも、島根地域の現状の避難計画に不備があるとするものであって、災害対策基本法等の定める基本理念としての減災の考え方の下で、多くの関係機関がそれぞれの責務に従い原子力災害を含む災害に備え るための措置について不断に改善を図っていくという原子力災害対策の意義並びに島根地域の緊急時対応に係る計画の状況及びその内容を正しく理解したものではない。 ウ債権者らは、島根地域の現状の避難計画における不備を指摘するが、本件原子炉に起因する原子力災害の発生等に対する避難計画を含む緊急時対応が存在しな いのと同視し得るものではない。 第6 当裁判所の判断 1 争点1(発電用原子炉運転差止請求の判断枠 るが、本件原子炉に起因する原子力災害の発生等に対する避難計画を含む緊急時対応が存在しな いのと同視し得るものではない。 第6 当裁判所の判断 1 争点1(発電用原子炉運転差止請求の判断枠組み)について⑴ 本件の被保全権利は、人格権に基づく本件原子炉の運転差止請求権である。 個人の生命及び身体という重大な保護法益が現に侵害され又は侵害される具体的危 険がある場合には、当該個人は、人格権に基づく妨害予防請求権として、侵害行為の予防を請求することができると解されるところ、債権者らは、本件原子炉が安全性を欠くことから、その運転により債権者らの生命、身体が侵害される具体的危険があるとして、運転の差止めを請求する権利があると主張している。 ⑵ 原子力発電所は、核燃料を使用し、その運転により人体に有害な多量の放射 性物質を原子炉内に発生させる施設であり、異常な水準で放射性物質が発電所のある事業所外に放出されるような重大な事故が発生すると、周辺地域の住民の生命及び身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を長期間、広範囲にわたって汚染するおそれがある。そこで、このような深刻な被害の発生を防止するためには、そのような重大な事故が万がーにも発生しないよう、原子力発電所の安全性を確保する必要 がある。原子力発電所がそのような安全性を欠くときは、その運転によって周辺住 - 26 - 民等の生命及び身体を侵害する具体的危険がある。 ⑶ 前記前提事実のとおり、福島第一原発事故の反省と教訓を踏まえて、原子力安全規制を担う新たな行政機関として原子力規制委員会が設置され、改正された原子炉等規制法は、発電用原子炉の設置及び変更について、原子力規制委員会の許可を受けなければならないとし(同法43条の3の5第1項、同条の3の8第1 項)、 子力規制委員会が設置され、改正された原子炉等規制法は、発電用原子炉の設置及び変更について、原子力規制委員会の許可を受けなければならないとし(同法43条の3の5第1項、同条の3の8第1 項)、これらの許可の要件のーつとして、「発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。」(同法43条の3の6第1項4号、同条の3の8第2項)と定め、発電用原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び安全性の審査の権限を原子 力規制委員会に付与し、原子力規制委員会は、この権限に基づき、設置許可基準規則を制定している。 ⑷ 原子力発電所に求められる安全性の具体的基準を策定するに当たっては、地震、火山事象等の自然災害や人為的要因などの事故発生の原因となり得る様々な事象を想定し、それらの事象によって原子力発電所施設を構成する設備、機器等が機 能を損なうことのないよう備えるべき強度を定め、あるいは、異常事態の発生を想定した上で、その拡大を防止するために必要な設備、機器等の設置を求めるなど、多角的、総合的見地から多重的に安全性を確保するための基準を検討する必要がある。また、策定した基準に基づいて個々の原子力発電所の安全性を審査するに当たっては、当該原子力発電所の立地の地形、地質等の自然条件を前提として、影響を 及ぼし得る地震、火山事象等の規模を具体的に想定し、設備、機器等が想定した地震、火山事象等によってその機能を損なうことがないかを確認することなどが求められる。 これらの安全性の基準の策定及び基準への適合性の審査においては、対象となる事項が多岐にわたり、将来の予測に係る事項も含まれることから、原 の機能を損なうことがないかを確認することなどが求められる。 これらの安全性の基準の策定及び基準への適合性の審査においては、対象となる事項が多岐にわたり、将来の予測に係る事項も含まれることから、原子力工学をは じめ多方面にわたる極めて高度な最新の科学的・技術的知見に基づく総合的判断が - 27 - 必要とされる。 ⑸ 原子力発電所の安全性の確保について、前記⑶の制度がとられたのは、このような安全性の審査の特質を考慮し、安全性の具体的基準の策定及び個々の原子力発電所の安全性の審査を、各専門分野の学識経験者等によって構成され、専門性・独立性が確保された原子力規制委員会の科学的・技術的知見に基づく合理的判断に 委ねる趣旨であると解される。そうすると、原子力規制委員会が付与された権限に基づいて策定した安全性の基準は、その策定過程及び内容に不合理な点が認められない限りは、原子力発電所に求められる安全性の基準を具体化したものと考えられる。また、原子力規制委員会が自ら策定した基準に適合するものとして安全性を認めた原子力発電所は、審査及び判断の過程に不合理な点が認められない限り、原子 力発電所に求められる安全性を具備するものと考えられる。 ⑹ 原子力発電所の安全性及びその審査に関する制度は、前記のとおり原子炉設置変更許可、設計及び工事計画認可、使用前事業者検査、保安規定の認可と段階的になされており、各段階での安全審査の過誤が直ちに周辺住民の生命及び身体の被害のおそれにつながるかどうかは、それぞれの具体的な安全審査の内容と影響力の 程度によると思われる。しかし、債権者らが主張する基準地震動の策定など原子炉設置変更許可の基本的な事項に関する安全審査に過誤、欠落がある場合には、例えば、巨大地震時において耐震性を保つべき重要施 程度によると思われる。しかし、債権者らが主張する基準地震動の策定など原子炉設置変更許可の基本的な事項に関する安全審査に過誤、欠落がある場合には、例えば、巨大地震時において耐震性を保つべき重要施設の機能が害されるおそれがあり、これにより周辺住民等の生命及び身体を侵害する具体的危険につながる可能性が高いというべきである。そして、人格権に基づく差止請求権の主張立証責任に鑑 みれば、本件原子炉に関する安全審査に過誤、欠落があり、これによって異常な水準で放射性物質が発電所のある事業所外に放出されるような重大な事故が発生するおそれがあることは、運転差止めを求める債権者らに主張疎明責任があると解される。もっとも、債務者は、本件原子炉の設置者として、原子炉運転に関する各種の許認可を取得しているのであり、本件原子炉を含む本件発電所の施設、設備、機器 等に関する資料や原子力規制委員会の安全性の審査に関する資料を全て保有してい - 28 - ると認められる。そして、安全審査の際に事業者が提出した資料については、基本的に情報公開の対象になっているが、その相当性を検討するためには高度の専門性のある科学的・技術的知見を要し、そのような知見を有するのは事業者の側であること、事業者が保有する資料は必ずしも安全審査の際に提出したものに限られないと考えられることなどに照らすと、債権者らがその過誤、欠落によって周辺住民へ の危険性があると主張する事項に関する安全審査の内容について、その内容を具体的に明らかにし、安全審査の合理性を裏付ける相当の資料を提出するとともに、その審査が適正にされたことについて説明する信義則上の義務が債務者にあると考えられる。債務者がこの義務を十分に尽くさない場合、自由心証の問題となるが、債権者側の特段の疎明を要することな るとともに、その審査が適正にされたことについて説明する信義則上の義務が債務者にあると考えられる。債務者がこの義務を十分に尽くさない場合、自由心証の問題となるが、債権者側の特段の疎明を要することなく、安全審査に過誤、欠落があることが事実上 推認されることがある。一方、債務者において本件原子炉が安全性の基準に適合することの説明義務を尽くしたと認められるときは、債権者らにおいて、原子力規制委員会の策定した安全性の基準自体が現在の科学的・技術的知見に照らして合理性を欠き、又は、本件原子炉が安全性の基準に適合するとした原子力規制委員会の審査及び判断が合理性を欠くことにより、本件原子炉が安全性を欠くことを主張疎明 する必要があるというべきである。 ⑺ なお、債権者らは、安全性の基準自体の合理性について債務者に疎明責任がある旨主張するが、安全性の基準自体は債務者が策定したものではなく、高度の独立性、専門性のある原子力規制委員会が、地震や火山等の関係分野の学識経験者らの検討を踏まえて作成したものであるから、債権者らが安全性の基準自体に合理性 がないというのであれば、その根拠について主張疎明する必要があると考える。そこで、以上の判断枠組みに基づき、以下、債権者らの主張に即して検討をすすめる。 2 争点2(地震に対する安全性)について⑴ 認定事実 前記前提事実に加え、かっこ内の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実 - 29 - が一応認められる。 ア地震に関する基本的な知見(乙22、27~29)(ア) 地震とは、プレート運動等によって地下の岩盤に蓄積されたひずみが蓄積される限界を超え、プレート境界部やプレート内部である面(震源断層面)を境として岩盤がずれる(すべる)ことによってエネルギーが解放される現 は、プレート運動等によって地下の岩盤に蓄積されたひずみが蓄積される限界を超え、プレート境界部やプレート内部である面(震源断層面)を境として岩盤がずれる(すべる)ことによってエネルギーが解放される現象をいい、既 存の断層を動かしたり、新たに断層を作ったりする動きを断層運動と呼ぶ。 地震は、その発生する場所や発生メカニズムに応じて、陸のプレートの上部地殻地震発生層に生ずる地震(海岸のやや沖合で起こるものを含む。)である「内陸地殻内地震」、陸のプレートと海のプレートとの境界で発生する地震である「プレート間地震」、海のプレート内部で発生する地震である「海洋プレート内地震」に大 別され(地震発生様式)、地震発生様式によって、地震の規模や発生頻度が異なり、例えば、一般に、プレート間地震は、陸のプレートとその下へ沈み込む海のプレートとの境界の広い範囲で圧縮の力がかかり、大きくずれるため、規模の大きな地震が発生し、またプレート運動によるひずみが直接的に蓄積されるためその発生間隔が短いとされる。これに対し、内陸地殻内地震は、プレート間地震と比較し て、ずれ動く範囲が小さいため規模が比較的小さく、陸のプレートが沈み込む海のプレートに押されることにより間接的にひずみが蓄積されるため、ひずみの蓄積するスピードが遅く、その発生頻度も低いとされる。 断層運動は、地下の岩盤に働く力の向きの違いにより、断層面を挟んだ両側の岩盤に異なる動きを生じさせる。その結果、断層のずれの方向が異なることとなる。 このようなずれの方向による違いから、大きく逆断層、正断層及び横ずれ断層に分類される。中部地方から西日本にかけては横ずれ断層型が多く、東北地方などの北日本では逆断層型が多いといわれている。 地震が生ずることによって、震源断層面から地震波が放出される。 層及び横ずれ断層に分類される。中部地方から西日本にかけては横ずれ断層型が多く、東北地方などの北日本では逆断層型が多いといわれている。 地震が生ずることによって、震源断層面から地震波が放出される。放出された地震波は、地中を伝播していき、最終的には地表付近に到達し、その結果、その地点 の地盤に揺れが生ずる。このような特定の地点に生じた揺れが地震動である。震源 - 30 - 断層のずれ破壊の現象である「地震」の規模を表す指標はマグニチュードであるのに対し、「地震動」(特定の地点の揺れ)の程度を表す指標は震度であり、また、「地震動」を加速度で表す場合の単位は通常ガルが用いられる。 (イ) 地震の起こり方(地震の規模、地震発生様式等)は日本全国一様ではなく、地域ごとの特性(地域性)を有している。地震の際に震源から放射される地震 波は、震源断層面におけるずれの過程の特性(震源特性)の影響を受けた特徴を有している。地盤は、一般に、深い地点ほど硬く(地震波の伝播速度が速い)、浅い地点ほど軟らかい(地震波の伝播速度が遅い)。地震波は、地表のある地点に到達するまでにエネルギーが拡散され、深く硬い地盤内を震源から遠ざかるにつれてその振幅を減衰させながら伝播する(伝播経路特性)。そして、より浅く軟らかい地 盤へ入射する際に屈折を繰り返しつつ、同地点近傍の地盤構造の影響を受けてその振幅を増大させ又は減衰させながら地表に到達する(地盤増幅特性)。 このようにして到達した地震波により、ある地点の地盤に揺れが生ずる。したがって、ある地点における地震動は、震源断層面におけるずれの過程の特性である「震源特性」及び地震波が地中を伝播する際の特性である「地下構造による地震波 の伝播特性(伝播経路特性、地盤増幅特性)」の影響を受ける。そして、こ 動は、震源断層面におけるずれの過程の特性である「震源特性」及び地震波が地中を伝播する際の特性である「地下構造による地震波 の伝播特性(伝播経路特性、地盤増幅特性)」の影響を受ける。そして、これらの特性は、地震ごと又は地震動が生ずる地点ごとにそれぞれ異なる。具体的には、「震源特性」は、地震発生層の深さ(上限深さ及び下限深さ)、岩盤の硬さ等の性質、震源断層面の大きさや震源断層面の破壊の仕方等によって異なる。「伝播経路特性」及び「地盤増幅特性」は、地震波の伝播経路や地盤の速度構造等の影響によ って異なる。 イ耐震指針の改訂等(乙22、46、131)平成7年に発生した兵庫県南部地震において、我が国で初めて震源近傍で強震動が観測された。同地震による甚大な被害経験を活かすため、総理府(当時)に地震調査研究推進本部が設置され、全国の強震動観測網の構築と併せて、活断層調査、 地下構造調査が行われた。この強震動観測網の充実により、精度の良い地震動が観 - 31 - 測されるようになり、その観測記録に基づく断層モデルを用いた解析により、震源特性に係るデータが数多く蓄積された。 上記の震源特性に係るデータを踏まえ、震源特性に係る過去の地震の平均像を捉えた震源のスケーリング則(断層面積と地震モーメントとの関係、地震モーメントと短周期レベルとの関係等)が提案されるようになり、地震調査研究推進本部が中 心となって、強震動を高精度に予測するための「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」が整備され、その後も強震動評価における検討を踏まえて必要に応じて改訂されている(乙46は令和2年3月改訂後のもの。以下、発行年にかかわらず「レシピ」と総称する。)。 また、耐震設計方針の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目 る検討を踏まえて必要に応じて改訂されている(乙46は令和2年3月改訂後のもの。以下、発行年にかかわらず「レシピ」と総称する。)。 また、耐震設計方針の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的とし て、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和56年7月策定、平成13年3月一部改訂。以下「旧耐震指針」という。)が定められていたところ、原子力安全委員会は、昭和56年以降の地震学及び地震工学に関する新たな知見の蓄積並びに発電用軽水型原子炉施設の耐震設計技術の著しい改良及び進歩、殊に兵庫県南部地震の検証を通じて、断層の活動様式、地震動特性、構造物の耐震性等に係 る知見が得られたことを踏まえ、原子力施設の耐震安全性に対する信頼性を一層向上させるため、旧耐震指針を全面的に見直し、平成18年9月にこれを改訂した(以下「新耐震指針」という。)。旧耐震指針においては、基準地震動に関して、地震動S1及び地震動S2の2種類を策定することとしていたが、上記改訂においては双方の策定方針を統合し、基準地震動Ssを定めるものとされ、詳細な調査を 適切に実施することを前提とした「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」を策定することを規定した上で、敷地近傍の地震に対する備えに万全を期すとの観点から、「震源を特定せず策定する地震動」を別途策定することを規定したことに伴い、「直下地震M6.5」という地震規模による設定を廃止するなど、検討用地震の選定、地震動評価等について高度化が図られた。 福島第一原発事故を契機に策定された新規制基準においても、基準地震動の策定 - 32 - の基本的な枠組みは引き継がれ、基準地震動Ssの策定に当たっては、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」のそれ いても、基準地震動の策定 - 32 - の基本的な枠組みは引き継がれ、基準地震動Ssの策定に当たっては、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」のそれぞれによる基準地震動について、解放基盤表面(基準地震動を策定するために、基盤面上の表層及び構造物がないものとして仮想的に設定する自由表面であって、著しい高低差がなく、ほぼ水平で相当な拡がりを持って想定される基盤の表面をい い、基盤とは、おおむねせん断波速度がVS=700m/S以上の硬質地盤であって、著しい風化を受けていないものをいう。以下同じ。)における水平方向及び鉛直方向の地震動として策定することとされた。 ウ基準地震動の策定‐新規制基準の定め(乙26、63)新規制基準は、原子力発電所の地震に対する安全性について、基準地震動に対す る耐震安全性を確保するという仕組みを採用している。すなわち、耐震重要施設は、その供用中に基準地震動による地震力に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならず(設置許可基準規則4条3項)、同項に規定する基準地震動は、最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から想定することが 適切なものとし、次の方針により策定するものとされている(設置許可基準規則解釈(令和4年2月24日改正前のもの。以下同じ。)別記2第4条5項柱書)。本件設置変更許可がされた令和3年9月15日の時点における具体的な規制の概要は以下のとおりである。 (ア) 基準地震動について 基準地震動は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動 る。 (ア) 基準地震動について 基準地震動は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定する(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項1号)。 (イ) 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」a 設置許可基準規則解釈別記2の定め 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間 - 33 - 地震及び海洋プレート内地震について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を、解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定する。 具体的には、次に示す方針により策定する。(設置許可基準規則解釈別記2第4条 5項2号)(a) 内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、活断層の性質や地震発生状況を精査し、中・小・微小地震の分布、応力場及び地震発生様式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総合的に検討し、検討用地震を複数選定すること(同号①)。 (b) 内陸地殻内地震に関しては、次に示す事項を考慮すること(同号②)。 ⅰ 震源として考慮する活断層の評価に当たっては、調査地域の地形及び地質条件に応じ、既存文献の調査、変動地形学的調査、地質調査、地球物理学的調査等の特性を活かし、これらを適切に組み合わせた調査を実施した上で、その結果を総合的に評価し活断層の位置、形状、活動性等を明らかにすること(同号②ⅰ)。 ⅱ 震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価 かし、これらを適切に組み合わせた調査を実施した上で、その結果を総合的に評価し活断層の位置、形状、活動性等を明らかにすること(同号②ⅰ)。 ⅱ 震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価に当たっては、孤立した短い活断層の扱いに留意するとともに、複数の活断層の連動を考慮すること(同号②ⅱ)。 (c) 検討用地震ごとに、下記ⅰの応答スペクトルに基づく地震動評価及びⅱの断層モデルを用いた手法による地震動評価を実施して策定すること。なお、地震動 評価に当たっては、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)を十分に考慮すること(同号④)。 ⅰ 応答スペクトルに基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて応答スペクトルを評価のうえ、それらを基に設計用応答スペクトルを設定し、 これに対して、地震の規模及び震源距離等に基づき地震動の継続時間及び振幅包絡 - 34 - 線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行うこと(同号④ⅰ)。 ⅱ 断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価は、検討用地震ごとに、適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定し、地震動評価を行うこと(同号④ⅱ)。 (d) 前記(c)の基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ、 地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティ(注:通常は強く固着していて、ある時に急激にずれて(すべって)地震波を出す領域のうち、周囲に比べて特にすべり量が大きい領域。以下同じ。)の位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支 きい領域。以下同じ。)の位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配 的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること(同号⑤)。 (e) 内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係並びに震源特性パラメータ の設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、前記(d)の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること(同号⑥。本件特別考慮規定)。 (f) 検討用地震の選定や基準地震動の策定に当たって行う調査や評価は、最新の科学的・技術的知見を踏まえること。また、既往の資料等について、それらの充足度及び精度に対する十分な考慮を行い、参照すること。なお、既往の資料と異なる見解を採用した場合及び既往の評価と異なる結果を得た場合には、その根拠を明示すること(同号⑦)。 b 地震ガイドの定め - 35 - 前記aを受けて、地震ガイド(令和4年2月24日改正前のもの。乙26)は、「Ⅰ.基準地震動」として、以下のとおり定めている。 (a) 2.(基本方針)⑵「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、敷地に大きな影響を与えると予想さ 以下のとおり定めている。 (a) 2.(基本方針)⑵「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、敷地に大きな影響を与えると予想される地 震(検討用地震)を複数選定し、選定した検討用地震ごとに不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価により、それぞれ解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定されていること。不確かさの考慮については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさ を組み合わせるなどの適切な手法を用いて評価すること。 (b) 3.2.3(検討用地震の選定‐震源特性パラメータの設定)⑵震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際、経験式は平均値としての地震規模を与える ものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。(本件ばらつき条項)(c) 3.3.1⑴①(応答スペクトルに基づく地震動評価‐経験式(距離減衰式)の選定)応答スペクトルに基づく地震動評価において、用いられている地震記録の地震規 模、震源距離等から、適用条件、適用範囲について検討した上で、経験式(距離減衰式)が適切に選定されていることを確認する。 参照する距離減衰式に応じて適切なパラメータを設定する必要があり、併せて震源断層の拡がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズムの影響が適切に考慮されていることを確認する。 (d) 3.3.1⑴②(応答スペクトルに基づく地震動評価 設定する必要があり、併せて震源断層の拡がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズムの影響が適切に考慮されていることを確認する。 (d) 3.3.1⑴②(応答スペクトルに基づく地震動評価‐地震波伝播特性 - 36 - (サイト特性)の評価)水平及び鉛直地震動の応答スペクトルは、参照する距離減衰式の特徴を踏まえ、敷地周辺の地下構造に基づく地震波の伝播特性(サイト特性)の影響を考慮して適切に評価されていることを確認する。 (e) 3.3.2⑷①(断層モデルを用いた手法による地震動評価‐震源モデル の設定)震源断層のパラメータは、活断層調査結果等に基づき、地震調査研究推進本部による「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」等の最新の研究成果を考慮し設定されていることを確認する。 アスペリティの位置が活断層調査等によって設定できる場合は、その根拠が示さ れていることを確認する。根拠がない場合は、敷地への影響を考慮して安全側に設定されている必要がある。なお、アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については、新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていることを確認する。 (f) 3.3.2⑷③(断層モデルを用いた手法による地震動評価‐統計的グリーン関数法及びハイブリッド法による地震動評価) 統計的グリーン関数法やハイブリッド法による地震動評価においては、震源から評価地点までの地震波の伝播特性、地震基盤からの増幅特性が地盤調査結果等に基づき評価されていることを確認する。 ハイブリッド法を用いる場合の長周期側と短周期側の接続周期は、それぞれの手法の精度や用いた地下構造モデルを考慮して適切に設定されていることを確認す る。また、地下構造モデルは地震観測記録等によってその妥当性が検討されていることを確認す 側の接続周期は、それぞれの手法の精度や用いた地下構造モデルを考慮して適切に設定されていることを確認す る。また、地下構造モデルは地震観測記録等によってその妥当性が検討されていることを確認する。 (g) 3.3.2⑷④(断層モデルを用いた手法による地震動評価‐震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価)(本件特別考慮規定)震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、地表に変位を伴う断層全 体(地表地震断層から震源断層までの断層全体)を考慮した上で、震源モデルの形 - 37 - 状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていることを確認する。 これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して地震動が 評価されていることを確認する。特に、評価地点近傍に存在する強震動生成領域(アスペリティ)での応力降下量などの強震動の生成強度に関するパラメータ、強震動生成領域同士の破壊開始時間のずれや破壊進行パターンの設定において、不確かさを考慮し、破壊シナリオが適切に考慮されていることを確認する。 なお、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を取り込 んだ手法により、地表に変位を伴う国内外被害地震の震源極近傍の地震動記録に対して適切な再現解析を行い、震源モデルに基づく短周期地震動、長周期地震動及び永久変位を十分に説明できていることを確認する。この場合、特に永久変位・変形についても実現象を適切に再現できていることを確認する。さらに、浅部における断層のずれの進展の不 期地震動、長周期地震動及び永久変位を十分に説明できていることを確認する。この場合、特に永久変位・変形についても実現象を適切に再現できていることを確認する。さらに、浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとともに、浅部 における断層のずれの不確かさが十分に評価されていることを確認する。 震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、破壊伝播効果が地震動へ与える影響について、十分に精査されていることを確認する。また、水平動成分に加えて上下動成分の評価が適切に行われていることを確認する。 (h) 3.3.3⑴(地震動評価‐不確かさの考慮⑴) 応答スペクトルに基づく地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。地震動評価においては、用いる距離減衰式の特徴や適用性、地盤特性が考慮されている必要がある。 (i) 3.3.3⑵(地震動評価‐不確かさの考慮⑵)断層モデルを用いた手法による地震動の評価過程に伴う不確かさについて、適切 な手法を用いて考慮されていることを確認する。併せて、震源特性パラメータの不 - 38 - 確かさについて、その設定の考え方が明確にされていることを確認する。 ⅰ 支配的な震源特性パラメータ等の分析震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方、解釈の違いによる不確かさ)を考慮する場合には、敷 地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析し、その結果を地震動評価に反映させることが必要である。特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重 地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析し、その結果を地震動評価に反映させることが必要である。特に、アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり、震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ⅱ 必要に応じた不確かさの組合せによる適切な考慮 地震動の評価過程に伴う不確かさについては、必要に応じて不確かさを組み合せるなど適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。 地震動評価においては、震源特性(震源モデル)、伝播特性(地殻・上部マントル構造)、サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれるため、これらの不確実さ要因を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して、分 析が適切になされていることを確認する。 c 地震ガイドの改正地震ガイドは、令和4年6月8日に改正され、本件ばらつき条項の第2文に相当する部分が削除され、「「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定において経験式が用いられている場合には、経験式の適用条件、適用範囲について確認し た上で、当該経験式が適切に選定されていることを確認する。」との記載となった(Ⅰ3.1⑵)。また、〔解説〕として次の記載がされた(乙25)。 (a) 地震動評価において、経験式として距離減衰式を参照する場合には、震源断層の拡がりや不均質性、断層破壊の伝播や震源メカニズム等の影響が考慮された上で、当該距離減衰式に応じた適切なパラメータが設定されていることに留意する 必要がある。 - 39 - (b) 複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものである。したがって、評価時 - 39 - (b) 複雑な自然現象の観測データにばらつきが存在するのは当然であり、経験式とは、観測データに基づいて複数の物理量等の相関を式として表現するものである。したがって、評価時点で適用実績が十分でなく、かつ、広く一般に使われているものではない経験式が選定されている場合には、その適用条件、適用範囲のほか、当該経験式の元となった観測データの特性、考え方等に留意する必要がある。 (ウ) 「震源を特定せず策定する地震動」a 設置許可基準規則解釈別記2の定め「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し、これらを基に、各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを 設定して策定すること。なお、震源を特定せず策定する地震動については、次に示す方針により策定すること(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項3号)。 (a) 「震源を特定せず策定する地震動」の策定に当たっては、「全国共通に考慮すべき地震動」及び「地域性を考慮する地震動」の2種類を検討対象とすること(同号①)。 (b) 「全国共通に考慮すべき地震動」の策定に当たっては、震源近傍における観測記録を基に得られた次の知見をすべて用いること。(同号②)・2004年北海道留萌支庁南部の地震において、防災科学技術研究所が運用する全国強震観測網の港町観測点における観測記録から推定した基盤地震動・震源近傍の多数の地震動記録に基づいて策定した地震基盤相当面(地震基盤か らの地盤増幅率が小さく地震動としては地震基盤面と同等とみなすことができる地盤の解放面で、せん断波速度VS=2200m/S以上の地層をいう。)における標準的な応答スペクトル(以 (地震基盤か らの地盤増幅率が小さく地震動としては地震基盤面と同等とみなすことができる地盤の解放面で、せん断波速度VS=2200m/S以上の地層をいう。)における標準的な応答スペクトル(以下「標準応答スペクトル」という。)(c) 「地域性を考慮する地震動」の検討の結果、この地震動を策定する場合にあっては、事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表 付近に一部の痕跡が確認された地震について、震源近傍における観測記録を用いる - 40 - こと(同号③)。 (d) 解放基盤表面までの地震波の伝播特性を必要に応じて応答スペクトルの設定に反映するとともに、設定された応答スペクトルに対して、地震動の継続時間及び経時的変化等の特性を適切に考慮すること(同号④)。 (e) 上記の「震源を特定せず策定する地震動」について策定された基準地震動の 妥当性については、最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認すること(同号⑤)。 b 地震ガイドの定め(a) 4.2.1(地震動評価‐検討対象地震の選定と震源近傍の観測記録の収集)⑴ 震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震を検討対象地震として適切に選定し、それらの地震時に得られた震源近傍における観測記録を適切かつ十分に収集していることを確認する。 (b) 4.2.1(地震動評価‐検討対象地震の選定と震源近傍の観測記録の収集)⑵ 「全国共通に考盧すべき地震動」の検討対象地震の選定においては、地震規模のスケーリング(スケーリング則が不連続となる地震規模)の観点から、「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」を適切に選定していることを確認する。 (c) 4.2.1(地震動評価‐検討対象地震の選定と震源近傍の観測記録の収 グ則が不連続となる地震規模)の観点から、「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」を適切に選定していることを確認する。 (c) 4.2.1(地震動評価‐検討対象地震の選定と震源近傍の観測記録の収集)⑶ 「地域性を考盧する地震動」の検討対象地震の選定においては、「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表付近に-部の痕跡が確認された地震」についても検討を加え、必要に応じて選定していることを確認する。 (d) 4.2.1〔解説〕ⅰ 「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」は、断層破壊領域が地震発 生層の内部にとどまり、国内においてどこでも発生すると考えられる地震で、震源 - 41 - の位置及び規模が推定できない地震として地震学的検討から全国共通に考盧すべき地震(Mw6.5程度未満)であり、震源近傍において地震動が観測された地震を対象とする。 ⅱ 「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表付近に一部の痕跡が確認された地震」は、震源断層がほぼ地震発生層の厚さ全体に広 がっているものの、地表地震断層としてその全容を表すまでには至っておらず、震源の規模が推定できない地震(Mw6.5程度以上)である。なお、活断層や地表地震断層の出現要因の可能性として、地域によって活断層の成熟度が異なること、上部に軟岩や火山岩、堆積層が厚く分布する場合や地質体の違い等の地域性があることが考えられる。このことを踏まえ、観測記録収集対象の地震としては、以下の 地震のうち震源近傍において地震動が観測されたものを個別に検討する必要がある。 活断層の密度が少なく活動度が低いと考えられる地域で発生した地震(例:2000年鳥取県西部地震)上部に軟岩や火山岩、堆積層が厚く分布する地域で 震動が観測されたものを個別に検討する必要がある。 活断層の密度が少なく活動度が低いと考えられる地域で発生した地震(例:2000年鳥取県西部地震)上部に軟岩や火山岩、堆積層が厚く分布する地域で発生した地震(例:2008 年岩手宮城内陸地震)(e) 4.2.2(応答スペクトル(地震動レベル)の設定と妥当性確認)⑴震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトル(地震動レベル)は、解放基盤表面までの地震波の伝播特性が反映され、敷地の地盤物性が加味されるとともに、個々の観測記録の特徴(周期特性)を踏まえるなど、適切に設定されていることを確 認する。 c 設置許可基準規則解釈及び地震ガイドの改正令和3年4月21日改正前の設置許可基準規則解釈(甲25)には標準応答スペクトルに関する定めはなく、他方、地震ガイド(甲10)では、Ⅰ4.2.1〔地震動評価‐検討対象地震の選定と震源近傍の観測記録の収集〕の解説⑶に、震源を 特定せず策定する地震動の評価において収集対象となる16個の内陸地殻内地震が - 42 - 表形式で例示されていたが、Mw6.5未満の14地震の多くは地盤調査等による詳細な地盤物性値の取得ができておらず、精度の高い解放基盤表面における地震動の推定が困難であったため、国内における89地震の観測記録を収集・分析して策定された標準応答スペクトルを考慮した地震動評価を求める上記改正がされ、上記の表は削除された。 (エ) 基準地震動の策定に当たっての調査‐設置許可基準規則解釈別記2の定め基準地震動の策定に当たっての調査については、目的に応じた調査手法を選定するとともに、調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって、調査結果の信頼性と精度を確保すること。また、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震 ての調査については、目的に応じた調査手法を選定するとともに、調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって、調査結果の信頼性と精度を確保すること。また、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の地震動評価においては、適用する評 価手法に必要となる特性データに留意の上、地震波の伝播特性に係る次に示す事項を考慮すること。(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項4号)a 敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため、敷地及び敷地周辺における地層の傾斜、断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震基盤の位置及び形状、岩相・岩質の不 均一性並びに地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰特性を評価すること。なお、評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討すること(同号①)。 b 上記aの評価の実施に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査については、地域特性及び既往文献の調査、既存データの収集・分析、地震観測記録の分析、地 質調査、ボーリング調査並びに二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施すること(同号②)。 エ基準地震動の策定‐債務者の対応債務者による本件原子炉の基準地震動Ss策定の概要は以下のとおりである。 (ア) 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動(乙1・6- 5-1~6-5-17頁、6-5-20~6-5-21頁) - 43 - a 検討用地震の選定(a) 地震発生状況の調査各種文献等を基に調査したところ、本件発電所敷地からの震央距離が200km以内の内陸地殻内地震及び海洋プレート内地震で本件発電所敷地に震度5弱( a 検討用地震の選定(a) 地震発生状況の調査各種文献等を基に調査したところ、本件発電所敷地からの震央距離が200km以内の内陸地殻内地震及び海洋プレート内地震で本件発電所敷地に震度5弱(震度Ⅴ)程度以上の影響を及ぼしたと推定される地震として内陸地殻内地震の880年 出雲の地震及び2000年鳥取県西部地震があり、海洋プレート内地震及びプレート間地震で震度5弱程度以上の影響を及ぼすと考えられるものはなかった。(乙1・6-5-2~6-5-4頁、6-5-6~6-5-9頁)(b) 活断層についての調査及び評価文献調査、変動地形学的調査、地表地質踏査、海上音波探査、採泥調査、反射法 地震探査等、ボーリング調査、トレンチ調査やピット調査等を実施するなどして、別紙4の「宍道断層」を震源として考慮する活断層として評価した。宍道断層の西端を女島、東端を美保関町東方沖合であると評価し、同断層の長さを約39kmとした。 各種調査の結果、別紙4のF-Ⅲ断層、F-Ⅳ断層及びF-Ⅴ断層について、後 期更新世以降の活動を考慮することとした。さらに、これらの断層の離隔が短く、地質構造が類似することから、連動するものとし、震源として考慮する活断層として「F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層」と評価することとし、その長さを約48kmと評価した。(乙1・6-3-1~6-3-96頁)(c) 本件発電所敷地及びその周辺における地震発生層の設定 各種文献調査のほか、本件発電所敷地及びその周辺の地盤についてS波速度が3.5km/S程度(P波速度が6.0km/S程度)である層が分布する地表からの深さを把握するため実施した微動アレイ探査の結果を踏まえて、地震発生層の上限深さを2km、下限深さを20kmに設定した。(乙1・6-5-6~6-5-8 .0km/S程度)である層が分布する地表からの深さを把握するため実施した微動アレイ探査の結果を踏まえて、地震発生層の上限深さを2km、下限深さを20kmに設定した。(乙1・6-5-6~6-5-8頁) (d) 検討用地震の選定 - 44 - マグニチュードと震央距離から推定される震度の関係図を用いて本件発電所敷地における震度を推定することにより、本件発電所敷地に及ぼす影響を検討し、本件発電所敷地近傍に位置する宍道断層による地震が本件発電所敷地に大きな影響を及ぼすと考えられたことから、同地震を検討用地震として選定した。 また、内陸地殻内地震のうち880年出雲の地震及び2000年鳥取県西部地震 と、宍道断層以外の敷地周辺の震源として考慮する活断層による敷地に震度5弱以上の影響を及ぼす地震とについて、地震観測記録に基づき策定された距離減衰式による経験的な方法(以下「耐専スペクトルの方法」という。)に基づき応答スペクトルを比較することにより、本件発電所敷地に及ぼす影響を検討したところ、F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震の応答スペクトルがその他の地震のそ れを上回ったことから、F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震を検討用地震として選定した。(乙1・6-5-14~6-5-15頁)b 地下構造モデル及び解放基盤表面の設定本件発電所敷地の地下構造についての調査や地震観測記録に基づく検討等を行い、地震動評価に用いる地下構造モデルを設定し、標高-10m の位置に解放基盤 表面を設定した。(乙1・6-5-10~6-5-13頁)c 検討用地震の地震動評価上記a(d)で選定した検討用地震について、断層モデルを用いた手法による地震動評価及び応答スペクトルに基づく地震動評価を実施した。 (a) 断層 0~6-5-13頁)c 検討用地震の地震動評価上記a(d)で選定した検討用地震について、断層モデルを用いた手法による地震動評価及び応答スペクトルに基づく地震動評価を実施した。 (a) 断層モデルを用いた手法による地震動評価 「断層モデルを用いた手法による地震動評価」とは、震源断層をモデル化し(震源特性の考慮)、震源からの地震波の伝播の過程(伝播経路特性、地盤増幅特性)を考慮して行う地震動評価である。債務者は、検討用地震として選定した宍道断層による地震及びF-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震について、レシピ等の知見に基づき、地震動評価を行った。(乙1・6-5-15~6-5-16 頁) - 45 - ⅰ 宍道断層による地震(ⅰ)基本震源モデルの設定(乙1・6-5-15頁)α 巨視的断層パラメータ(α)震源断層の長さ上記a(b)のとおり、宍道断層の長さを約39kmと評価し、この長さを震源断 層の長さとして設定した。 (β)震源断層の幅上記a(c)の地震発生層の深さ(上限深さ2km及び下限深さ20km)と、震源断層が鉛直(下記(γ))であることから、18kmに設定した。 (γ)震源断層の断層傾斜角 地質調査の結果によると、宍道断層の断層傾斜角は南傾斜ないしほぼ鉛直であることから、断層傾斜角は90度に設定した。 (Δ)震源断層の面積上記(α)の震源断層の長さに上記(β)の幅を乗じて算出した。 (ε)地震モーメント 上記(Δ)の震源断層の面積から入倉・三宅式により地震モーメントを求めた。 β 微視的断層パラメータ(α)アスペリティ入倉・三宅(2001)において、断層長さが20kmより短い場合には1個であり、それより長くなると個数が増加する旨が示されていると メントを求めた。 β 微視的断層パラメータ(α)アスペリティ入倉・三宅(2001)において、断層長さが20kmより短い場合には1個であり、それより長くなると個数が増加する旨が示されているところ(甲41・86 2~863頁)、震源断層長さが39kmであるから、2個(震源断層の上端の西側(第一アスペリティ)及び東側(第二アスペリティ)とした。)設定した。 (β)短周期レベルレシピに基づき、壇一男・渡辺基史・佐藤俊明・石井透(2001)「断層の非一様すべり破壊モデルから算定される短周期レベルと半経験的波形合成法による強 震動予測のための震源断層のモデル化」(以下「壇ほか(2001)」という。乙4 - 46 - 7)に示される地震モーメントと短周期レベルとの関係式(乙47・53頁、乙46・9頁)を用いて設定した。 (γ)すべり角宍道断層は、右横ずれの断層であることから、すべり角に係るレシピの知見に基づき180度に設定した。 γ その他のパラメータ(α)破壊伝播速度レシピに示された知見に基づき、地震発生層のS波速度に0.72を乗じて破壊伝播速度を設定した。 (β)破壊開始点 宍道断層については、横ずれ断層であることから、レシピの知見に基づき、西側に設定した第一アスペリティ下端の西端及び東側に設定した第二アスペリティ下端の東端の2点に破壊開始点を設定した。 (ⅱ)不確かさの考慮上記(ⅰ)の基本震源モデルに加え、不確かさを考慮したケースとして、①破壊 開始点の不確かさを考慮したケース、②断層傾斜角の不確かさを考慮したケース、③破壊伝播速度の不確かさを考慮したケース、④すべり角の不確かさを考慮したケース、⑤アスペリティの不確かさを考慮したケース、⑥短周期の地震動レベルの不確かさ( 断層傾斜角の不確かさを考慮したケース、③破壊伝播速度の不確かさを考慮したケース、④すべり角の不確かさを考慮したケース、⑤アスペリティの不確かさを考慮したケース、⑥短周期の地震動レベルの不確かさ(1.5倍)を考慮したケース、⑦不確かさの組合せケースについて、それぞれ地震動評価を行った。その際、②ないし⑦のケースについては、認識論的不確 かさ(事前の詳細な調査や検討の結果及び各種の知見によって地震発生前におおよそ設定することができるような不確かさ)である断層傾斜角、破壊伝播速度、すべり角、アスペリティ、短周期レベルだけではなく、偶然的な不確かさ(地震発生時の環境に左右される不確かさ)である破壊開始点の不確かさも考慮した。(乙1・6-5-15~6-5-16頁、6-5-44頁) ⅱ F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震 - 47 - (ⅰ)基本震源モデルの設定(乙1・6-5-15頁、6-5-43頁)α 巨視的断層パラメータ(α)震源断層の長さ上記a(b)のとおり、48kmに設定し、これをF-Ⅲ断層及びF-Ⅳ断層のセグメント(以下、「東側セグメント」ともいう。)とF-Ⅴ断層のセグメント(以下、 「西側セグメント」ともいう。)との二つに区分して、それらの長さはそれぞれ30km、18kmに設定した。 (β)震源断層の幅上記a(c)の地震発生層の深さ(上限深さ2km及び下限深さ20km)と、下記(γ)の傾斜角を考慮して約19kmに設定した。 (γ)震源断層の傾斜角F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層が現在の東西圧縮応力場で活動する場合、主に横ずれの断層活動を示すと考えられるところ、周辺で発生した1943年鳥取地震(マグニチュード7.2)及び2000年鳥取県西部地震(マグニチュード7. 3)の が現在の東西圧縮応力場で活動する場合、主に横ずれの断層活動を示すと考えられるところ、周辺で発生した1943年鳥取地震(マグニチュード7.2)及び2000年鳥取県西部地震(マグニチュード7. 3)の震源断層はいずれも断層傾斜角が90度の横ずれ断層であるとされているこ と、F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層の周辺の横ずれ断層による中小地震のうち断層傾斜角が特定されているものの断層傾斜角は、平均すると80度程度であり、最も傾斜しているもので71度であることを踏まえ、断層傾斜角を70度に設定し、傾斜方向は本件発電所敷地に近づく方向である南傾斜に設定した。 (Δ)震源断層の面積 上記ⅰで述べた震源断層の長さに上記ⅱで述べた幅を乗じて算出した。 (ε)地震モーメント上記ⅳで述べた震源断層の面積から入倉・三宅式により地震モーメントを求めた。 β 微視的断層パラメータ(α)アスペリティ 入倉・三宅(2001)及びレシピの知見から、長さが30kmである東側セグ - 48 - メントに2個(そのうち西側を第一アスペリティ、東側を第二アスペリティとした。)、長さが18kmである西側セグメントに1個を各断層のそれぞれの区間の中で、最も本件発電所敷地に近い位置の上端に設定した。 (β)短周期レベルレシピに基づき、壇ほか(2001)に示される地震モーメントと短周期レベル との関係式(乙47・53頁、乙46・9頁)を用いて設定した。 (γ)すべり角F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層は右横ずれの断層であると推定されることから、レシピの知見に基づき180度に設定した。 γ その他の断層パラメータ (α)破壊伝播速度レシピの知見に基づき、地震発生層のS波速度に0.72を乗じて破壊伝播速度を設定した。 (β 、レシピの知見に基づき180度に設定した。 γ その他の断層パラメータ (α)破壊伝播速度レシピの知見に基づき、地震発生層のS波速度に0.72を乗じて破壊伝播速度を設定した。 (β)破壊開始点F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層は横ずれ断層であることから、レシピの知 見に基づき、東側セグメントについて、第一アスペリティ下端の西端及び第二アスペリティ下端の東端の2点に設定した。 (ⅱ)不確かさの考慮上記(ⅰ)の基本震源モデルに加えて、不確かさを考慮したケースとして、①破壊開始点の不確かさを考慮したケース、②断層傾斜角の不確かさを考慮したケース、 ③破壊伝播速度の不確かさを考慮したケース、④すべり角の不確かさを考慮したケース、⑤アスペリティの不確かさを考慮したケース、⑥短周期の地震動レベルの不確かさ(1.5倍)を考慮したケース、⑦断層位置の不確かさを考慮したケースについて、それぞれ地震動評価を行った。その際、②~⑦のケースについては、認識論的不確かさ(断層傾斜角、破壊伝播速度、すべり角、アスペリティ、短周期レベ ル、断層位置)だけではなく、偶然的な不確かさである破壊開始点の不確かさも考 - 49 - 慮した。(以上、乙1・6-5-15~6-5-16頁、6-5-45頁)(b) 応答スペクトルに基づく地震動評価「応答スペクトルに基づく地震動評価」とは、実際は拡がりをもった震源断層面から放出される地震波をある一つの震源から放出されるものと仮想して(点震源)、過去の多くの地震データを基にした地震の規模と震源から評価地点までの距 離との関係式(距離減衰式)を用いて評価地点における地震動の応答スペクトルを求める手法である。 応答スペクトルを求める方法のうち、耐専スペクトルの方法は、等価震源距離が 源から評価地点までの距 離との関係式(距離減衰式)を用いて評価地点における地震動の応答スペクトルを求める手法である。 応答スペクトルを求める方法のうち、耐専スペクトルの方法は、等価震源距離が「極近距離」(マグニチュード8の場合ならば25km、マグニチュード7の場合ならば12km等)よりも著しく短いケースに関しては信頼性が高くないため、債 務者は、検討用地震ごとの地震の諸元(マグニチュード及び等価震源距離)と耐専スペクトルの方法が示す「極近距離」の場合の諸元(マグニチュード及び等価震源距離)とを比較し、両者の乖離が大きい場合には、耐専スペクトルの方法は適用範囲外とした。 ⅰ 宍道断層による地震 マグニチュードについて松田式だけでなく、武村式(武村雅之(1990)「日本列島およびその周辺地域に起こる浅発地震のマグニチュードと地震モーメントの関係」(乙58)に示される地震モーメントとマグニチュードとの関係式。以下同じ。乙58・260頁)も用いて地震の諸元を比較したところ、「極近距離」の場合の等価震源距離の値より検討用地震(基本震源モデルに加え、断層傾斜角及びア スペリティの不確かさを考慮したケース)の諸元の等価震源距離の値が小さく、また、「極近距離」の場合の等価震源距離の値との乖離が大きいことから、耐専スペクトルの方法の適用範囲外であると判断し、他の複数の距離減衰式を選定し、それらの距離減衰式による地震動評価に用いられる地震の諸元(マグニチュード及び断層最短距離)が異なるすべてのケース(基本震源モデル及び断層傾斜角の不確かさ を考慮したケース)について所要のパラメータを設定した。(乙1・6-5-16 - 50 - ~6-5-17頁)ⅱ F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震マグニチュー かさ を考慮したケース)について所要のパラメータを設定した。(乙1・6-5-16 - 50 - ~6-5-17頁)ⅱ F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震マグニチュードについて松田式だけでなく、武村式も用いて地震の諸元を比較検討し、基本震源モデル及び断層傾斜角の不確かさを考慮したケースについては耐専スペクトルの方法を用いた。耐専スペクトルの方法は、主にプレート間地震の観測 記録を基に作成され、内陸地殻内地震では評価が過大となるため内陸補正係数(例えば、周期0.6秒以下については0.6を乗ずる。)が用意されているが、債務者は、安全側の評価として同補正係数を乗じていない。(以上、乙1・6-5-16~6-5-17頁)d 敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動 宍道断層による地震の応答スペクトルに基づく地震動評価結果及びF-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震のそれに安全余裕を考慮し、両者をすべて包絡させ、応答スペクトルに基づく基準地震動Ss-D(水平方向につき最大加速度820ガル、鉛直方向につき最大加速度547ガル)を策定した。 基準地震動Ss-Dは、全周期帯にわたって断層モデルを用いた手法による地震 動評価結果を上回っているが、宍道断層は本件発電所敷地の近傍に位置することに加えて、施設に与える影響の観点から地震動の諸特性(周波数特性、継続時間、位相特性)を考慮し、念のため、応答スペクトルのピークが基準地震動Ss-Dに近接し、かつ、地震動レベルが大きい、短周期の地震動レベルの不確かさを考慮したケースのうち破壊開始点を断層下端の本件発電所敷地直近に設定した地震動評価結 果及び上記ケースのうち破壊開始点を断層下端の東端に設定した地震動評価結果を選定し、前者を断層モデル かさを考慮したケースのうち破壊開始点を断層下端の本件発電所敷地直近に設定した地震動評価結 果及び上記ケースのうち破壊開始点を断層下端の東端に設定した地震動評価結果を選定し、前者を断層モデルを用いた手法による基準地震動Ss-F1(水平方向(南北成分)につき最大加速度549ガル、水平方向(東西成分)につき最大加速度560ガル、鉛直方向につき最大加速度337ガル)、後者を断層モデルを用いた手法による基準地震動Ss-F2(水平方向(南北成分)につき最大加速度52 2ガル、水平方向(東西成分)につき最大加速度777ガル、鉛直方向につき最大 - 51 - 加速度426ガル)として策定した。(以上、乙1・6-5-14~6-5-17頁、6-5-20~6-5-22頁)e 日本海南西部の長期評価に係る検討(乙45、60、61)債務者は、原子力規制委員会による本件原子炉の原子炉設置変更許可(令和3年9月15日)の後である令和4年3月25日に日本海南西部の海域活断層の長期評 価(乙45。以下、単に「長期評価」という。))が公表されたことを踏まえ、これが本件原子炉の基準地震動Ssの策定結果に影響を与えるものであるか否かを検討した。 債務者は、長期評価において活断層として示されている断層を抽出し、対応する位置において債務者が評価した震源として考慮する活断層とそれぞれ比較して活断 層の評価長さを見直す必要があるかどうかを検討した。債務者においてより精度や信頼性の高い評価ができているもの及び債務者による評価長さの方が保守的な評価となっているものを除いた上、従来敷地に与える影響が小さい断層と評価していた根滝グリ北方断層帯について長期評価を踏まえて長さ約57kmとして評価を見直した。次に、これが本件原子炉の基準地震動Ssの策定結果に いるものを除いた上、従来敷地に与える影響が小さい断層と評価していた根滝グリ北方断層帯について長期評価を踏まえて長さ約57kmとして評価を見直した。次に、これが本件原子炉の基準地震動Ssの策定結果に影響を与えるかどう かを検討したところ、根滝グリ北方断層帯による地震の応答スペクトルは、F-Ⅲ断層+F-Ⅳ断層+F-Ⅴ断層による地震によるそれを上回らないことから、上記断層帯は、本件原子炉の基準地震動Ssの策定結果に影響を与えるものではないと評価した。 (イ) 震源を特定せず策定する地震動による基準地震動(乙1・6-5-17~ 6-5-20頁)a 震源を特定せず策定する地震動について観測記録の収集対象となる内陸地殻内地震の例として地震ガイド(令和3年4月21日改正前のもの。甲10)に例示されていた16地震のうち、事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し、地表付近に一部の痕跡が確認さ れた地震(Mw6.5以上の地震)及び地表地震断層が出現しない可能性がある地 - 52 - 震(Mw6.5未満の地震)について、震源近傍の観測記録を収集し、「震源を特定せず策定する地震動」として反映すべきものであるかどうか検討した。 bMw6.5以上の2地震の検討2000年鳥取県西部地震の賀祥ダム(監査廊)の観測記録を考慮した。(乙1・6-5-18~6-5-19頁) cMw6.5未満の14地震の検討2004年北海道留萌支庁南部地震による港町観測点(HKD020)の観測記録を考慮した。(乙1・6-5-18~6-5-20頁)d 震源を特定せず策定する地震動による基準地震動債務者は、上記b及びcの各応答スペクトルを、敷地ごとに震源を特定して策定 する地震動による基準地震動の応答スペクトルとそれ -5-20頁)d 震源を特定せず策定する地震動による基準地震動債務者は、上記b及びcの各応答スペクトルを、敷地ごとに震源を特定して策定 する地震動による基準地震動の応答スペクトルとそれぞれ比較し、検討した結果、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動による基準地震動の応答スペクトルを一部の周期で上回った。これを踏まえ、債務者は、2004年北海道留萌支庁南部地震による基盤地震動を、震源を特定せず策定する地震動による基準地震動Ss-N1(水平方向につき最大加速度620ガル、鉛直方向につき最大加速度320ガ ル)として、2000年鳥取県西部地震の賀祥ダム(監査廊)の観測記録を、震源を特定せず策定する地震動による基準地震動Ss-N2(水平方向(南北成分)につき最大加速度528ガル、水平方向(東西成分)につき最大加速度531ガル、鉛直方向485ガル)として策定した。(乙1・6-5-21~6-5-22頁)e 標準応答スペクトルの策定に伴う基準地震動への影響(乙66、67) 前記ウ(ウ)cのとおり、令和3年4月21日に設置許可基準規則解釈及び地震ガイドの改正により、震源を特定せず策定する地震動の評価において収集対象となる16個の内陸地殻内地震を例示する表は削除され、標準応答スペクトルが導入されたため、債務者は、基準地震動への影響の有無を検討した。 (a) 本件原子炉の地震基盤相当面(地震基盤からの地盤増幅率が小さく、地震 動としては地震基盤面と同等とみなすことができる地盤の解放面で、せん断波速度 - 53 - が2200m/s以上の地層。以下、本件原子炉の地震基盤相当面を「本件地震基盤相当面」という。)を、本件発電所の地震動評価に用いる地下構造モデルにおいて当該層以深の層のせん断波速度が2200m/S以上とな 00m/s以上の地層。以下、本件原子炉の地震基盤相当面を「本件地震基盤相当面」という。)を、本件発電所の地震動評価に用いる地下構造モデルにおいて当該層以深の層のせん断波速度が2200m/S以上となる第7層(同速度は2730m/S)の上面、すなわち標高-955mに設定した上で、本件地震基盤相当面から本件原子炉の基準地震動Ssに係る解放基盤表面(せん断波速度は152 0m/S)までの地盤増幅特性を考慮し、基準地震動Ss-Dの応答スペクトルと本件地震基盤相当面での基準地震動Ss-Dの引戻し波の応答スペクトルとの比を標準応答スペクトルに乗じて本件地盤増幅特性を考慮した標準応答スペクトルを算出したところ、水平方向、鉛直方向ともに全周期帯で基準地震動Ss-Dの応答スペクトルに包絡されることが確認された。 (b) 債務者は、基準地震動Ss-D以外の本件原子炉の基準地震動(Ss-F1、Ss-F2、Ss-N1及びSs-N2)や島根原子力発電所の大深度ボーリング孔における大深度地震観測装置により得られた地震(2016年鳥取県中部の地震(本震)及び2018年島根県西部の地震(本震))の観測記録を用いた場合の応答スペクトル比を算出し、これらが基準地震動Ss-Dに係る応答スペクトル 比と同程度となることを確認するとともに、これらを用いて算出した本件地盤増幅特性を考慮した標準応答スペクトルは、水平方向、鉛直方向ともに全周期帯で基準地震動Ss-Dに包絡されることを確認した。 (c) 以上のとおり、標準応答スペクトルに基づく地震動評価を考慮しても本件原子炉の基準地震動Ssに影響はなく、その変更は不要であると判断した。 オ本件原子炉の耐震安全性の確認及び確保(ア) 耐震設計方針新規制基準は、地震の発生により発生するおそれのある施設の 炉の基準地震動Ssに影響はなく、その変更は不要であると判断した。 オ本件原子炉の耐震安全性の確認及び確保(ア) 耐震設計方針新規制基準は、地震の発生により発生するおそれのある施設の安全機能の喪失及びそれに続く放射線による公衆への影響を防止する観点から、耐震設計上の重要度分類に応じた耐震性を求めている(設置許可基準規則4条及び設置許可基準規則解 釈別記2第4条2ないし4項)。施設は、重要度に応じたS、B及びCクラス別 - 54 - に、耐震設計に関する基本的な方針を満足していなければならないとされている。 例えば、Sクラスの各施設は、基準地震動Ssによる地震力に対してその安全機能が保持できること、弾性設計用地震動による地震力(基準地震動Ssとの応答スペクトルの比率の値が目安として0.5を下回らない値で工学的判断に基づいて設定するもの)又は静的地震力(建物・建築物については、水平地震力は地震層せん断 力係数Ci(標準せん断力係数C0を0.2以上とし、建物・構造物の振動特性および地盤の種類等を考慮して求められる値とすることとされている。また、必要保有水平耐力の算定においては1.0以上とするものとされている。)に、施設の耐震重要度分類に応じた係数(Sクラスは3.0、Bクラスは1.5、Cクラスは1.0とし、必要保有水平耐力の算定においては耐震重要度分類の各クラスのいず れにおいても1.0とするものとされている。)を乗じ、さらに当該層以上の重量を乗じて算定することとされ、機器・配管系については、上記数値をそれぞれ20%増しとした震度から求めることとされているもの。)のいずれか大きい方の地震力に対して概ね弾性範囲で耐えられることとされている。また、重要度に応じて分類された各施設相互の間では、下位の分類に属する施 %増しとした震度から求めることとされているもの。)のいずれか大きい方の地震力に対して概ね弾性範囲で耐えられることとされている。また、重要度に応じて分類された各施設相互の間では、下位の分類に属する施設の破損によって上位の分 類に属する施設に波及的影響を及ぼさないこととされている。(乙1・5~13頁、63)(イ) Sクラスの施設の基準地震動Ssに対する耐震安全性債務者は、Sクラスの施設については、基準地震動Ss-D、Ss-F1、Ss-F2、Ss-N1及びSs-N2に対する地震応答解析を行い、その結果得られ た地震力による応力発生値等と評価基準値(許容値)とを比較するなどして評価を行い、各施設が基準地震動Ssによる地震力に対し安全機能を保持できることを確認し、必要に応じ耐震補強工事を行った。(乙1・8-1-208~8-1-247頁、乙19・12頁)(ウ) Sクラス以外の施設の基準地震動Ssに対する耐震安全性 債務者は、重大事故等対処施設及び波及的影響を考慮すべき下位クラス施設につ - 55 - いても、基準地震動Ss-D、Ss-F1、Ss-F2、Ss-N1及びSs-N2に対する耐震安全性を確認し、必要に応じ耐震補強工事を行った。(乙1・8-1-228~8-1-230頁、8-1-245~8-1-246頁、乙19・12頁)カ別紙2記載の各地震について 別紙2記載の各地震について、地震規模及び観測された最大加速度は同別紙のとおりである。また、別紙3記載の各地震につき、マグニチュード、最上位の最大加速度及び同観測地点のガル数、最上位の地震動観測点から震央までの距離は同別紙のとおりである。 キ本件5事例について 別紙5記載の各地震(本件5事例)について、事例①及び②の各原子力発電所の各地 同観測地点のガル数、最上位の地震動観測点から震央までの距離は同別紙のとおりである。 キ本件5事例について 別紙5記載の各地震(本件5事例)について、事例①及び②の各原子力発電所の各地震当時の基準地震動及び事例③~⑤までの各地震に係る地震動のはぎとり波(地表若しくは地中で得られた地震観測記録から、表層の軟らかい地盤の影響を取り除き、硬い地盤の表面における地震動を推定するはぎとり解析により推定された地震動。以下同じ。)は「解放基盤表面の地震動欄記載」のとおりであり、周辺の 観測地点での地震動は同欄記載のとおりである(甲4、27~35)。本件5事例について、各地震の概要及び各電力会社の調査の結果は次のとおりである。 (ア) 事例①の宮城県沖地震(乙132~134)平成17年8月16日に発生した宮城県沖地震は、宮城県沖のプレート境界を震源とするM7.2のプレート間地震であり、震源深さは約42kmであった。ま た、女川原子力発電所までの震央距離は約73km、震源距離は約84kmであった。 東北電力株式会社は、女川原子力発電所1~3号機について、地震後の点検の結果、安全上重要な設備の耐震安全性が維持されていることを確認した旨を公表した。東北電力株式会社は、この地震によるはぎとり波の応答スペクトルが、一部の 周期(周期0.05秒付近)において女川原子力発電所の基準地震動S2(最大加 - 56 - 速度375ガル)の設計用応答スペクトルを超えていることを確認し、その要因について、「今回の地震では、短周期成分の卓越が顕著である傾向が認められ、これは宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域的な特性によるものと考えられる」と分析・評価した。原子力安全・保安院(当時)は、このような分析・評価を妥当なものと判断 著である傾向が認められ、これは宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域的な特性によるものと考えられる」と分析・評価した。原子力安全・保安院(当時)は、このような分析・評価を妥当なものと判断した。 (イ) 事例②の能登半島地震(乙137)平成19年3月25日に発生した能登半島地震は、M6.9の内陸地殻内地震であり、震源深さは約11kmであった。また、志賀原子力発電所までの震央距離は約18km、震源距離は約21kmであった。 志賀原子力発電所1、2号機について、地震後の施設の巡視・点検の結果、安全 上問題となる被害は確認されなかった。 北陸電力株式会社は、この地震によるはぎとり波の応答スペクトルが基準地震動S2(最大加速度490ガル)の設計用応答スペクトルを長周期側の一部の周期(周期0.6秒付近)において超えている部分があったが、安全上重要な施設のほとんどは剛構造としているため、これらの固有周期は短周期側に集中しており、上 記はぎとり波の応答スペクトルが基準地震動S2の設計用応答スペクトルを超過した周期には、安全上重要な施設の固有周期がないことを確認した旨を公表した。 (ウ) 事例③の新潟県中越沖地震(乙120、138、139)平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震は、M6.8の内陸地殻内地震であり、震源深さは約17kmであった。また、柏崎刈羽原子力発電所までの震 央距離は約16km、震源距離は約23kmであった。 原子力安全委員会は、耐震安全性評価の結果の要約について、柏崎刈羽原子力発電所の新潟県中越沖地震の応答スペクトルは、号機にもよるが工事計画認可時の基準地震動S2のそれを大幅に上回り、荷重効果においても2倍以上であるものが認められた、しかし、耐震設計上重要な施設は、柏崎刈羽原子力発電 中越沖地震の応答スペクトルは、号機にもよるが工事計画認可時の基準地震動S2のそれを大幅に上回り、荷重効果においても2倍以上であるものが認められた、しかし、耐震設計上重要な施設は、柏崎刈羽原子力発電所7号機に関す る限り、原子炉建屋から配管に至るまで、ほぼ無損傷であり、記録された地震動を - 57 - 用いた解析により、施設は弾性範囲内にあることが示されていた旨を公表した。 同地震については、IAEA調査団による調査が行われ、「安全に関連する構造、システム及び機器は大地震であったにも関わらず、予想より非常に良い状態であり、目に見える損害はなかった。この理由として、設計プロセスの様々な段階で設計余裕が加えられていることに起因していると考えられる。」と報告された。 東京電力株式会社は、新潟県中越沖地震で敷地において地震動が大きくなった要因について分析し、同じ地震規模の地震と比べ大きめの地震動を与える地震であったこと、周辺地盤深部の堆積層の厚さと傾きの影響で地震動が増幅したこと、発電所敷地下にある古い褶曲構造のために地震動が増幅したこととまとめて公表した。 (エ) 事例④及び⑤の東北地方太平洋沖地震(乙121~127、140、141) a 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、北米プレートとその下に沈み込む太平洋プレートとの境界(日本海溝付近)で発生したMw(モーメントマグニチュード)9.0のプレート間地震であり、震源深さは約24kmであった。福島第一原子力発電所までの震央距離は約178km、震源距離は約180km、女川原子力発電所までの震央距離は約123km、震源距離は約125k mであった。この地震は、宮城県沖の震源位置でプレート境界の破壊が始まり、北側は岩手県沖まで、南側は茨城県沖まで、 0km、女川原子力発電所までの震央距離は約123km、震源距離は約125k mであった。この地震は、宮城県沖の震源位置でプレート境界の破壊が始まり、北側は岩手県沖まで、南側は茨城県沖まで、南北約400km、東西約200kmにわたり、地震調査研究推進本部が震源として想定していた複数の領域について、極めて短時間のうちにそれらが連動した破壊が起こった連動型地震であったと推定されている。 b 福島第一原子力発電所においては、原子炉建屋基礎版上の観測記録のうち、2、3、5号機において、基準地震動Ssに対する最大応答加速度値(2号機:438ガル、3号機:441ガル、5号機:452ガル)を上回り、それぞれ、2号機が550ガル、3号機が507ガル、5号機が548ガルであったとされている。 また、東京電力株式会社のはぎとり解析の結果、解放基盤表面における地震動 (はぎとり波)は、福島第一南地点EW方向で最大加速度は675ガルと推定され、 - 58 - 基準地震動Ssによる最大加速度である600ガルを上回ること及びはぎとり波による応答スペクトルは一部の周期帯で基準地震動Ssを上回っていることが確認された。 東京電力株式会社は、東北地方太平洋沖地震の観測記録を用いた地震応答解析を行い、原子炉建屋及び耐震安全上重要な機器・配管系の解析を実施した結果、「止 める」、「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」にかかわる安全上重要な機能を有する主要な設備の耐震性評価について、計算される応力等が評価基準値以下であることを確認し、安全上重要な機能を有する主要な設備は、地震時及び地震直後において安全機能を保持できる状態にあったと推定されると報告した。 c 女川原子力発電所について、東北電力株式会社は、解放基盤表面の相当位置 につい 能を有する主要な設備は、地震時及び地震直後において安全機能を保持できる状態にあったと推定されると報告した。 c 女川原子力発電所について、東北電力株式会社は、解放基盤表面の相当位置 についてはぎとり解析を実施した。はぎとり解析実施前の地震観測記録の応答スペクトルでも基準地震動Ssを一部の周期帯で上回っていることを確認していたが、上記はぎとり解析による応答スペクトルは、短周期帯で揺れが大きくなり、全体としては概ね同等のレベルであったことを確認した、東北電力株式会社は、これまでの点検において、原子炉を「止める」「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」機 能を有する耐震安全上重要な施設に被害がないこと、地震観測記録に基づく地震応答解析の結果、耐震安全上重要な主要施設は、機能維持の評価基準値を満足していることを確認していると報告した。 東北電力株式会社は、東北地方太平洋沖地震及び平成23年4月7日の宮城県沖の地震の岩盤上部の観測記録が、一部の周期帯で基準地震動Ssを上回った要因に ついて分析し、引き続き詳細に検討することなどを報告した。 ⑵ 争点2⑴(地震動評価の合理性)についてア債務者は、前記⑴エのとおり基準地震動Ssを策定したところ、その策定経過をみると、検討用地震の選定に特に不合理な点はなく、応答スペクトルに基づく地震動評価、断層モデルを用いた手法による地震動評価についても、敷地における 調査結果や地震観測記録等から各種パラメータを十分な余裕をみて設定しており、 - 59 - その評価過程に不合理な点はなく、原子力規制委員会の安全審査を経て本件設置変更許可を受けているものであって、上記⑴ウにおいて認定した新規制基準を踏まえた合理的なものであると認められる。そうすると、地震に対する安全性について、債務 原子力規制委員会の安全審査を経て本件設置変更許可を受けているものであって、上記⑴ウにおいて認定した新規制基準を踏まえた合理的なものであると認められる。そうすると、地震に対する安全性について、債務者において、本件原子炉が安全性の基準に適合することの説明義務を尽くしたということができる。そこで、以下においては、債権者らの主張に即して、原子力 規制委員会の策定した安全性の基準自体が現在の科学的・技術的知見に照らして合理性を欠き、又は、本件原子炉が安全性の基準に適合するとした原子力規制委員会の審査及び判断が合理性を欠くことにより、本件原子炉が安全性を欠くといえるか否かを検討する。 イ債権者らは、平成12年以降の高い最大加速度が記録された地震(別紙2、 別紙3)と比較して、本件原子炉の基準地震動や、これを策定するに当たり考慮された伯耆沖断層帯の想定地震動は極めて低水準である、強震動観測網の整備によって得られた最新の知見を考慮しない本件原子炉の基準地震動は不合理で低水準なものとなっているなどと主張する。 しかし、新規制基準は、原子力発電所の地震に対する安全性について、基準地震 動に対する耐震安全性を確保するという仕組みを採用し、基準地震動は、最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から想定することが適切なものとされている。基準地震動の策定方針については、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動及び震源を特定せず策定する地震動について、解放基盤表面における水平方向及 び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定するものとされ、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動は、検討用地震を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、応答スペクトルに基づく地震動評価及び 方向及 び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定するものとされ、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動は、検討用地震を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を、解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定するものとされている。このように、新規制基準は、地震に対する安全性を確保するための基礎となる基準地震 動を定めるに当たり、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造、地震波の伝 - 60 - 播特性などを考慮することを当然の前提としている。このような新規制基準は、学識経験者も含めた検討チームにおける議論により骨子案及び基準案を策定し、パブリックコメントも経た上で策定されたものであり、合理性を有するものといえる。 全国各地の観測記録を踏まえると本件原子炉の基準地震動Ss等は低水準であるとする債権者らの主張は、結局のところ、本件原子炉の基準地震動と各観測地点で 得られた最大加速度を単純に数値のみをもって比較考慮するというものであると解されるが、前記⑴アにおいて述べた地震ないし地震動の性質や、基準地震動の策定方法に照らすと、本件原子炉の基準地震動と各観測地点で得られた最大加速度の大小を比較考慮する前提として、本件発電所敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造、地震波の伝播特性等のみならず、各観測地点のそれをも考慮する必要があ るというべきであり、これらを考慮しないまま、単純に最大加速度の数値の大小のみを比較することは合理的とはいえない。 なお、債権者らは、本件5事例の周辺の観測記録から、解放基盤表面の揺れが地表面に置かれた地震計測器に係る地震観測記録の揺れよりも小さくなるという法則性はないといえるとも主張するが、本件5事例の周辺の観測 、債権者らは、本件5事例の周辺の観測記録から、解放基盤表面の揺れが地表面に置かれた地震計測器に係る地震観測記録の揺れよりも小さくなるという法則性はないといえるとも主張するが、本件5事例の周辺の観測地点の地質・地質構 造、地盤構造、地震波の伝播特性等が明らかではないのはもとより、本件記録においては、各原子力発電所におけるそれらも明らかとなっていないのであるから、このような比較も合理的なものとはいえない。 債権者らは、基準地震動の合理性について疎明責任を負う債務者は、本件原子炉の位置する地域、地盤と本件原子炉の基準地震動等を超える地震が発生した極めて 多くの地域、地盤との間に地震動の差を生じさせるような要因があるならそれはどのような要因か、その要因がどのように地震動に影響を与えるのかを明らかにしなければならない旨も主張するが、前記アにおいて述べたとおり、債務者において本件原子炉が安全性の基準に適合することの説明義務を尽くしたと認められるから、債権者らの主張する理由によって本件原子炉が安全性の基準に適合するとした原子 力規制委員会の審査及び判断が合理性を欠くことを主張疎明するに当たっては、債 - 61 - 権者らによって上記諸点が明らかにされる必要があるというべきである。 よって、この点に関する債権者らの主張は採用できない。 ウ債権者らは、建築基準法及び建築基準法施行令は、一般建築物の構造耐力について、大規模の地震動(震度6強~震度7(概略で最大加速度は「1500ガル程度~」)で倒壊・崩壊しないことを求めており、820ガルを基準地震動とする 本件原子炉の耐震性は一般の木造住宅の耐震性よりも劣る疑いが濃い旨主張する。 しかし、例えば、建築基準法施行令88条は、建物の地上部分の地震力を算定する際用いる地震せん断 ルを基準地震動とする 本件原子炉の耐震性は一般の木造住宅の耐震性よりも劣る疑いが濃い旨主張する。 しかし、例えば、建築基準法施行令88条は、建物の地上部分の地震力を算定する際用いる地震せん断力係数について、Ci=ZRtAiCo(Ciは建築物の地上部分の一定の高さにおける地震層せん断力係数、Zはその地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震活動の状況その他地震の性状に応じて1.0 から0.7までの範囲内において国土交通大臣が定める数値、Rtは建築物の振動特性を表すものとして、建築物の弾性域における固有周期及び地盤の種類に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値、Aiは建築物の振動特性に応じて地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表すものとして国土交通大臣が定める方法により算出した数値、Coは標準せん断力係数)の式によって求める旨 (同条1項)、標準せん断力係数は、0.2以上としなければならない旨(同条2項)及び必要保有水平耐力を計算する場合においては、標準せん断力係数は、1. 0以上としなければならない旨(同条3項)を定めているところ、前記⑴オ(ア)のとおり、設置許可基準規則解釈は、静的地震力の算定において、地震せん断力係数Ciに施設の耐震重要度分類に応じた係数(Sクラスは3.0、Bクラスは1. 5、Cクラスは1.0とし、必要保有水平耐力の算定においては耐震重要度分類の各クラスのいずれにおいても1.0。)を乗じることを求めるなどしている。このように、新規制基準は、建築基準法及び建築基準法施行令による規制の存在を当然の前提としつつ、これと同程度以上の耐震性を備えるべきことを原子力発電所に求めていると解されるから、本件原子炉の耐震性は一般の木造住宅の耐震性よりも劣 る疑いが濃いということ 規制の存在を当然の前提としつつ、これと同程度以上の耐震性を備えるべきことを原子力発電所に求めていると解されるから、本件原子炉の耐震性は一般の木造住宅の耐震性よりも劣 る疑いが濃いということはできない。 - 62 - また、債権者らは、ハウスメーカーにおいては多数回の加振実験により3406ガルや5115ガルまで耐えることが確認されており、本件原子炉の基準地震動は、ハウスメーカーの住宅の耐震ガル数に遙かに及ばないなどと主張する。 しかし、原子力発電所の建物は、その保有すべき出力等から定まる規模の機器等や、安全上重要な施設を支持することができるように、また、地震以外の自然力に よる荷重にも耐えるようにするほか、それ自体が放射性物質及び放射線を閉じ込める機能を備えるようにするなどの様々な要求を満たすよう設計される。また、原子炉は詳細な調査を尽くした上で堅硬な岩盤に建設しているのに対し、一般住宅は、住みやすい平野部において、軟らかい沖積層の上に建設されることも多く、必ずしも地盤の条件が良いとはいえない上、通常、岩盤を露出させるまで掘削するなど大 規模な基礎地盤の改良工事は行われないなど、それぞれの建築の前提となる条件が異なる。 このように、原子力発電所とその他の一般建築物とでは、設計の考え方や条件が大きく異なるのであって、単純に標榜する最大加速度の数値のみを比較して優劣を決するのが合理的とはいえない。 エ債権者らは、本件5事例の原子力発電所に係る電力会社の設定してきた基準地震動の設定に全く信頼性がないことなどからすれば、上記の規制基準の枠組み自体が不合理であるとの大きな疑問がある旨主張する。 しかし、前記⑴キにおいて認定したところによれば、本件5事例のうち、事例①~③の基準地震動は旧耐震指針に基づいて設 すれば、上記の規制基準の枠組み自体が不合理であるとの大きな疑問がある旨主張する。 しかし、前記⑴キにおいて認定したところによれば、本件5事例のうち、事例①~③の基準地震動は旧耐震指針に基づいて設定されたS2である。前記⑴イのとお り、新耐震指針は、昭和56年7月に策定され、平成13年3月に一部改訂された旧耐震指針について、昭和56年以降の地震学及び地震工学に関する新たな知見の蓄積並びに発電用軽水型原子炉施設の耐震設計技術の著しい改良及び進歩、殊に兵庫県南部地震の検証を通じて、断層の活動様式、地震動特性、構造物の耐震性等に係る知見が得られたことを踏まえ、原子力施設の耐震安全性に対する信頼性を一層 向上させるため、全面的に見直しがされて平成18年9月に改訂されたものであ - 63 - り、基準地震動Ssを定めるに当たり、詳細な調査を適切に実施することを前提とした「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」を策定することを規定した上で、敷地近傍の地震に対する備えに万全を期すとの観点から、「震源を特定せず策定する地震動」を別途策定することを規定したことに伴い、「直下地震M6.5」という地震規模による設定を廃止するなど、検討用地震の選定、地震動評価等につ いて高度化が図られている。このように、旧耐震指針による基準地震動S2と新耐震指針による基準地震動Ssとでは、基準地震動の策定方法が大きく異なっているのであって、旧耐震指針における基準地震動S2を超過する事例の存在から、直ちに新耐震指針ないし規制基準の枠組み自体が不合理であるということはできない。 また、前記⑴キ(ア)及び(ウ)のとおり、事例①については「今回の地震では、短 周期成分の卓越が顕著である傾向が認められ、これは宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地 ことはできない。 また、前記⑴キ(ア)及び(ウ)のとおり、事例①については「今回の地震では、短 周期成分の卓越が顕著である傾向が認められ、これは宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域的な特性によるものと考えられる」ことが、事例③については周辺地盤深部の堆積層の厚さと傾きの影響で地震動が増幅したことや発電所敷地下にある古い褶曲構造のために地震動が増幅したことが、それぞれ基準地震動を超えた要因と分析されており、いずれも各地震の地域性を反映した部分があると考え られるところ、本件発電所敷地又はその周辺について地震動を増幅させる未考慮の地域性があることについて、後記3の点を除き、債権者らから具体的な指摘はない。 事例④、⑤については、新耐震指針における基準地震動Ssを超過した事例であるが、本件全資料によっても、実際の地震の最大加速度が基準地震動を超過することとなった原因は明らかではない。すなわち、前記⑴ウのとおり、新規制基準は、 プレート間地震について、検討用地震を複数選定し、選定した検討用地震ごとに不確かさを考慮して、応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価により、それぞれ解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定されていること及び不確かさの考慮については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、 必要に応じて不確かさを組み合わせるなどの適切な手法を用いて評価することを定 - 64 - めているが、福島第一原発及び女川原発において基準地震動Ssを定めるに当たり、どのような調査を行い、検討用地震をどのように設定したのか、検討用地震の地震動や地震波の伝播特性等をどのように検討・評価したのか、実際の地震との間の食 女川原発において基準地震動Ssを定めるに当たり、どのような調査を行い、検討用地震をどのように設定したのか、検討用地震の地震動や地震波の伝播特性等をどのように検討・評価したのか、実際の地震との間の食い違いの有無及び程度といった事情が明らかとは言えず、新規制基準の判断枠組そのものが不合理であると断定することは困難である。この点に関する債権者らの主 張は、基準自体の不合理性に係るものであるから、発電用原子炉運転差止請求の判断枠組みについて前記1において述べたところによれば、上記各事情は本件原子炉の差し止めを求める債権者らによって明らかにされるべきものであるが、本件全資料によっても、新規制基準の枠組み自体が不合理であることの疎明があったということはできない。 債権者らは、原子力発電所の設計に当たって安全率は設けられていないこと、本件原子炉の基準地震動は建設当時の398ガルから現在の820ガルまで引き上げられており、当初の余裕は食い潰されていると考えられること、原子力発電所の動的機能に係る配管に一部でも脆弱な部分があれば他の堅固な部分によって補うことはできず、最も脆弱な部分の耐震性が問われることからすれば、債務者が主張する ように余裕を持った耐震設計がなされているとは考えられない旨も主張するが、抽象的な危険性を指摘するものにとどまり、人格権侵害の具体的な危険性を推認させるものとはいえない。 オ債権者らは、債務者は本件原子炉の基準地震動を策定する上で経験式を用いるに当たり、本件ばらつき条項による修正を加えておらず、原子力規制委員会も、 実際に発生する地震規模が経験式から求められる平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮していないから、審査においても過誤、欠落がある旨主張する(なお、債権者らは、松田式について、数理 、 実際に発生する地震規模が経験式から求められる平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮していないから、審査においても過誤、欠落がある旨主張する(なお、債権者らは、松田式について、数理的根拠を欠き、信頼性がないなどとも主張するが、松田式は、レシピにおいても地震の規模を求めるための関係式として引用されるなど広く実用に供され、地震モーメントを用いた地殻内地震のスケーリング 則との整合性や気象庁がマグニチュードを再評価したデータとの整合性も確認され - 65 - ているものであって、合理性を有するものであると認められる。)。 しかし、債務者は、経験式を用いた地震動評価を行うに当たり、各経験式の適用範囲を検討した上でその適用を行うとともに、本件発電所敷地及び本件発電所敷地周辺について、経験式によって導かれた地震動よりも大きくなる又は特異なものとなるような地域性が認められないことを確認し、各種パラメータを保守的に設定し た上で、認識論的不確かさと偶然的不確かさとを重畳させるなど保守性を重ねて地震動評価を行い、本件原子炉の基準地震動Ssを策定した旨説明しているところ、このような説明は、前記⑴エにおいて認定した債務者による基準地震動Ssの策定経過や債務者の提出する審査資料の内容に整合し、原子力規制委員会による確認も経ているものである。 このように、債務者は、経験式が有するばらつきについて、不確かさを考慮することによって解決するという手法を採っているところ、債権者らは、不確かさの問題とばらつきの問題とは明らかに異なるものであり、不確かさの考慮をした後に、更に、ばらつきの問題をも考慮して基準地震動を定めることにこそ合理性や科学性が認められる、新規制基準は、過去の地震データの平均式である経験式を原発の基 準地 であり、不確かさの考慮をした後に、更に、ばらつきの問題をも考慮して基準地震動を定めることにこそ合理性や科学性が認められる、新規制基準は、過去の地震データの平均式である経験式を原発の基 準地震動の策定に用いることの危険を良く理解していたからこそ本件ばらつき条項を定めていた旨主張する。 しかし、B京都大学特任教授、C京都大学名誉教授、D京都大学特任教授は、別件訴訟に提出された意見書(乙143~145)や、原子力規制庁請負調査の報告書(乙150)において、本来、不確かさとばらつきは意味が異なるが、基準地震 動の策定の実務が寄って立つ決定論的評価手法においてもすべての真値を観測又は予測できるわけではなく、真値との偏差はこれを観測値としてみればばらつきであり、評価に組み込むべきものと考えれば不確かさとなること、地震・津波関連指針等検討小委員会においても、両者を区別して議論されていないこと、例えば、地震モーメントM0と断層面積Sとの関係について、同じ断層面積Sが与えられた場合 に、①地震モーメントM0の予測平均値に一定の上乗せをする方法は、断層面積S - 66 - の評価に誤差が少なく、信頼性が高い場合には合理的な考慮方法であるといえるものの、実際には断層面積Sの評価にも相当のばらつきがあるので、②ばらつきを考慮するに際してあらかじめ断層面積Sを大きめにとった場合を含めるという考え方もあり得、この2つは等価であり、②の方法で経験式から算出された値にさらに上乗せする必要はないと考えられること、双方を考慮することは過剰で不必要な考慮 になることなどを述べているところ、これらの意見ないし報告内容に特に不合理な点は見当たらない。他方、債権者らは、上記のように主張するものの、これを裏付ける技術的な根拠は示されていない。債権者 になることなどを述べているところ、これらの意見ないし報告内容に特に不合理な点は見当たらない。他方、債権者らは、上記のように主張するものの、これを裏付ける技術的な根拠は示されていない。債権者らは、地震ガイドに本件ばらつき条項が定められていたこと自体をもその主張の根拠の一つとしているが、上記意見書等による限り、新規制基準の原案を策定した地震・津波関連指針等検討小委員会にお いても、ばらつきと不確かさの考慮を区別した議論はされていなかったことがうかがわれるところである。これらの事情に加え、前記前提事実6⑶のとおり、地震ガイドを含む審査ガイドは、審査官が参照するために策定する文書であり、規則や規則の解釈のように規制要求を示すものではなく、そこに示す手法によらない手法であっても、技術的根拠があれば基準適合性を確認することができるとされているこ となども考慮すると、債務者が本件原子炉の基準地震動を策定する上で経験式を用いるに当たり、本件ばらつき条項による特別な修正を加えていないからといって、これが直ちに不合理であるとはいえないし、原子力規制委員会が実際に発生する地震規模が経験式から求められる平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮していないとも、審査において過誤、欠落があるともいえない。 なお、債権者らは、本件ばらつき条項を削除した地震ガイドは規制基準としての合理性を失った旨も主張するが、本件設置変更許可は令和3年9月15日にされており、その後の本件ばらつき条項の削除によって本件設置変更許可における地震動評価の合理性の判断が左右されるものでもない。 ⑶ 争点2⑵(震源極近傍の問題)について ア本件特別考慮規定について - 67 - 前記⑴ウ(イ)a(e)のとおり、設置許可基準規則解釈4条5項2 が左右されるものでもない。 ⑶ 争点2⑵(震源極近傍の問題)について ア本件特別考慮規定について - 67 - 前記⑴ウ(イ)a(e)のとおり、設置許可基準規則解釈4条5項2号⑥は「内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性 に留意の上、上記⑤(注:同号⑤)の各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること。」と定め、前記⑴ウ(イ)b(g)のとおり、地震ガイドⅠ3.3.2⑷④は、「震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、地表に変位を伴う断層全体(地表地震断 層から震源断層までの断層全体)を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていることを確認する。」「これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的 知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して地震動が評価されていることを確認する。特に、評価地点近傍に存在する強震動生成領域(アスペリティ)での応力降下量などの強震動の生成強度に関するパラメータ、強震動生成領域同士の破壊開始時間のずれや破壊進行パターンの設定において、不確かさを考 に、評価地点近傍に存在する強震動生成領域(アスペリティ)での応力降下量などの強震動の生成強度に関するパラメータ、強震動生成領域同士の破壊開始時間のずれや破壊進行パターンの設定において、不確かさを考慮し、破壊シナリオが適切に考慮されていることを確認する。」「なお、震源の極近傍での地震動の 特徴に係る最新の科学的・技術的知見を取り込んだ手法により、地表に変位を伴う国内外被害地震の震源極近傍の地震動記録に対して適切な再現解析を行い、震源モデルに基づく短周期地震動、長周期地震動及び永久変位を十分に説明できていることを確認する。この場合、特に永久変位・変形についても実現象を適切に再現できていることを確認する。さらに、浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震 動評価へ及ぼす影響を検討するとともに、浅部における断層のずれの不確かさが十 - 68 - 分に評価されていることを確認する。」「震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては、破壊伝播効果が地震動へ与える影響について、十分に精査されていることを確認する。また、水平動成分に加えて上下動成分の評価が適切に行われていることを確認する。」と定めている。(本件特別考慮規定)このように、内陸地殻内地震について、震源が敷地に極めて近い場合に詳細な検 討を行った上で基準地震動を策定することが求められているのは、地下構造の不均質性が地震波の伝播特性に対し、より大きな影響を与える可能性があり、かつ、内陸地殻内地震は再来期間が長く震源極近傍の観測記録が十分に得られていないことなどから、評価手法に不確定性が伴うからであると解される(乙22・264頁参照)。 イ債務者の検討内容本争点に関する債務者の検討及び本件原子炉の安全審査の内容について、前記前提事実、前記⑴において 手法に不確定性が伴うからであると解される(乙22・264頁参照)。 イ債務者の検討内容本争点に関する債務者の検討及び本件原子炉の安全審査の内容について、前記前提事実、前記⑴において認定した事実に加え、かっこ内の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が一応認められる。 (ア) 審査会合でのやりとり(乙103) 平成28年11月11日開催の本件原子炉に係る第414回審査会合において、原子力規制庁(原子力規制委員会の事務を処理させるため同委員会に置かれた事務局。設置法27条参照)の担当者から、債務者に対し、宍道断層は地震ガイドにおける震源が極めて近い場合に当たり、断層幅やそれ以外の各種パラメータ、評価ケースの組合せについて十分検討する必要があることや、地震ガイドによれば、断層 全体を考慮、すなわち、地震発生層より浅部の破壊シナリオも考慮して評価するとされていること、基本的な考え方として、断層直交成分に関しては浅部の影響はほぼないが、平行成分については、距離にして2kmより近い場合影響が出ると検討していること、本件原子炉については、断層最短距離が2km弱であり、どのような影響を及ぼすか定かではないことなどを指摘した上で、債務者の考え方について 質問があった。 - 69 - これに対し、債務者の担当者は、地震発生層より浅い部分をすべらせて長周期側について検討したところ、平行成分についてもあまり影響がないことを確認したこと、短周期側について、統計的グリーン関数は鉛直で計算しているが、近地項や中間項の影響があるとする文献があることも考慮して、この点についてのチェックもしたこと、基本モデルの考え方などについて余裕をみていきたいと考えていること などを説明した。 上記説明を受けて、原子力規制庁の があるとする文献があることも考慮して、この点についてのチェックもしたこと、基本モデルの考え方などについて余裕をみていきたいと考えていること などを説明した。 上記説明を受けて、原子力規制庁の担当者は、上記説明内容の資料化を指示するとともに、不確かさの一環や断層幅の観点での考慮も考えられることなどを述べた。 (イ) 債務者がした検討の内容等(乙101) 債務者は、「平成26年度事後評価調査票(D05)福島第一事故を踏まえた震源極近傍の地震動評価の高度化」(以下「原子力規制委員会(2015)」という。乙98)等によれば、断層から2km程度以上離れると、浅部の震源域による影響は無視できる程度に下がるとされているところ、本件原子炉については、宍道断層から炉心まで水平距離で約2km離れていることなどから、浅部の破壊による 影響は無視できる程度に小さく、本件原子炉は震源が極めて近い場合に当たらないと考えていたものの、念のため、浅部の破壊による影響の有無について、以下のとおり検討した。 a 債務者は、宍道断層について、基本震源モデル及び破壊開始点の不確かさを考慮したケースの各モデル(以下「深部モデル」という。)について、それぞれ浅 部のモデル(以下「浅部モデル」という。)を追加したモデル(以下「浅部モデル+深部モデル」という。)を作成した。これらのモデル作成に当たっては、「深部モデル」にアスペリティを配置することで震源断層面の不均質性を考慮し、また、「浅部モデル」に大すべり域を配置することで浅部におけるずれの進展の不均質性を考慮した。 その上で、債務者は、短周期側につき統計的グリーン関数法を、長周期側につき - 70 - 理論的手法を用いたハイブリッド合成法により、「浅部モデル+深部モデル」の応答スペ 慮した。 その上で、債務者は、短周期側につき統計的グリーン関数法を、長周期側につき - 70 - 理論的手法を用いたハイブリッド合成法により、「浅部モデル+深部モデル」の応答スペクトル及び「深部モデル」の応答スペクトルを作成し、両者を比較した。 その結果、両者の応答スペクトルは同程度のレベルであり、浅部の破壊による影響はほぼなく、基準地震動Ss-Dに包絡されていることを確認した。 b 債務者は、深部断層(深部モデル)に係る地震動評価を実施するに当たり、 短周期側について、遠地項のみを考慮する統計的グリーン関数法を用いているところ、断層が敷地に近い場合、近地項・中間項による影響があり得るとの知見を踏まえ、上記と異なる観点から、参考として、深部断層(深部モデル)に係る統計的グリーン関数法を用いた短周期側の地震動評価が過小評価となっていないかを検討した。 具体的には、まず、野津厚(2006)「統計的グリーン関数に近地項と中間項を導入するための簡便な方法」(以下「野津(2006)」という。乙102)に基づき、代表的な周期において、遠地項のみを考慮した場合と近地項・中間項・遠地項のすべてを考慮した場合の震源スペクトル比を算定したところ、そのスペクトル比は、震源距離の10km程度以上で1に漸近し、震源距離が近づくにつれて一 旦1以下になるが、震源距離が約1km未満の極近傍になると1以上となった。そのため、本件敷地から水平距離で約2km離れている宍道断層による地震については、近地項・中間項の影響は無視できる程度に小さいと考えられた。 債務者は、参考として、宍道断層による地震の基本震源モデル(破壊開始点1)について、短周期側に統計的グリーン関数法、長周期側に理論的手法を用いたハイ ブリッド合成法による地震動 考えられた。 債務者は、参考として、宍道断層による地震の基本震源モデル(破壊開始点1)について、短周期側に統計的グリーン関数法、長周期側に理論的手法を用いたハイ ブリッド合成法による地震動評価を行うに当たり、統計的グリーン関数法について、①深部断層(深部モデル)の評価で用いている、遠地項のみを考慮するものによる応答スペクトルとは別に、②近地項・中間項・遠地項のすべてを考慮するもの(野津(2006))による応答スペクトルを作成し、両者の応答スペクトルを比較することにより、近地項・中間項の影響の有無を確認した。 その結果、両者の応答スペクトルは、同程度のレベルとなったことから、宍道断 - 71 - 層による地震の地震動評価においては、近地項・中間項による影響はないこと、深部断層(深部モデル)に係る統計的グリーン関数法を用いた短周期側の地震動評価が過小評価となっていないことを確認した。 (ウ) 原子力規制委員会への資料提出債務者は、上記(イ)の検討内容をまとめた資料を作成し、平成29年12月13 日、原子力規制委員会に提出した。 ウ検討原子力規制委員会は、上記イの債務者の検討結果も踏まえて本件設置変更許可をしたところ、債務者による検討の経過及び結果に特に問題となるべき点は見当たらず、これに対する安全審査も含めて合理的なものであったと認められる。そこで、 以下、債権者らの主張を踏まえてさらに検討する。 (ア) 債権者らは、宍道断層から本件発電所敷地境界までの最短距離は僅か1. 3km程しかないところ、本件設置変更許可申請書に添付された「重大事故等対処設備配置及び保管場所図(その1)」によれば、基準地震動に対して耐震安全性を確保すべき設備は敷地のほぼ全体に配置されているから、「震源が敷地に極めて近 変更許可申請書に添付された「重大事故等対処設備配置及び保管場所図(その1)」によれば、基準地震動に対して耐震安全性を確保すべき設備は敷地のほぼ全体に配置されているから、「震源が敷地に極めて近 い場合」に該当し、仮に敷地境界を基準にしないとしても、設置許可基準規則によって基準地震動による地震力に対する評価が要求されている地盤、施設等のうち、震源(断層)からもっとも近いものとの距離を基準に2km以内であれば該当するというべきである、「震源が敷地に極めて近い場合」に該当するか否かについてほとんど検討しなかった本件適合性審査には、明らかに過誤、欠落があるなどと主張 する。 しかし、断層から発電所敷地境界まで1.3kmの場合あるいは基準地震動による地震力に対する評価が要求されている地盤、施設等のうち、震源(断層)から最も近いものとの距離を基準に2km以内である場合当然に「震源が敷地に極めて近い場合」に該当するとする確たる根拠はない。 債権者らの上記主張は、平成24年12月7日に開催された原子力規制委員会の - 72 - 発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム第3回会合において、外部有識者である独立行政法人防災科学区技術研究所附属流域災害研究センター教授のE氏が「距離的に近いサイトですね、例えば数km以内、例えば1kmか2km以内のサイトについては、物理モデルとして波動論的な計算手法が破綻する領域になっている」などと発言したこと(甲8・49頁)を主要な根拠 の一つとするものであると解されるが、疎明資料(乙205~207)によれば、上記検討チームにおいては、その後、「起震断層となり得る活断層からは(仮に)1kmの離隔距離をとること。」などといった具体的な基準を設ける提案がされたことも 、疎明資料(乙205~207)によれば、上記検討チームにおいては、その後、「起震断層となり得る活断層からは(仮に)1kmの離隔距離をとること。」などといった具体的な基準を設ける提案がされたこともあったものの、明確な根拠がないことや、断層の形状など個別のケースによって異なり得るものでもあることなどから、離隔距離を定量的に限界付けるのは困 難であるため、その該当性の判断は適合性審査で行うという方針が採用された結果、明確な距離の記載のない本件特別考慮規定が策定されたことが一応認められる。本件の審査の経過においては、本件原子炉と宍道断層の距離に着目して原子力規制委員会の安全審査で問題点が指摘され、震源モデルの設定におけるパラメータの設定を保守的に行うことや念のための検討を資料化することなどの指示がされ、 これらを資料化した内容等に対する審査の結果等も踏まえて、本件設置変更許可がされていると解されるところであって、このような本件特別考慮規定の策定経緯等も考慮すると、債務者の検討内容の合理性が一概に否定されるものとはいえない。 (イ) 債権者らは、債務者がしたとする保守性を重ねた地震動評価について、認識論的不確かさと偶然的不確かさとの重畳は、敷地と断層との距離にかかわらず、 基準地震動の策定において一般的に行われていることであり、震源が敷地に極めて近いことを踏まえて保守性が考慮されているわけではない、また、宍道断層における認識論的不確かさの組み合わせについては、なぜか短周期レベルが1.5倍から1.25倍に切り下げられているなどと主張する。 しかし、この点に関する債務者の説明は、要するに、震源断層をモデル化するに 当たり、本件原子炉と宍道断層との距離が近いことをも考慮して、より保守的に各 - 73 - 種パラメータ 。 しかし、この点に関する債務者の説明は、要するに、震源断層をモデル化するに 当たり、本件原子炉と宍道断層との距離が近いことをも考慮して、より保守的に各 - 73 - 種パラメータの設定や不確かさの考慮を行ったという趣旨と解される。このような債務者の対応が不合理であるとはいえないし、原子力規制委員会も、これを踏まえて安全審査を行い、本件設置変更許可をしているところである。 次に、短周期レベルの点について、債務者は、一般的な横ずれ断層の地震は新潟県中越沖地震を引き起こした逆断層の地震と比べて短周期レベルが小さく、更に横 ずれ断層の地震の中でも中国地方の地震はその他の地域の地震よりも短周期レベルが小さい傾向にあることを踏まえて、不確かさの組合せにおいて考慮する短周期の地震動レベルの不確かさとしては、1.5倍ではなく、横ずれ断層の短周期レベルの不確かさとして考えられる1.25倍を考慮することとした旨の説明をしているところ、このような扱いが特段不合理であるとはいえない。 (ウ) 債権者らは、債務者が念のための検討に当たって参照した原子力規制委員会(2015)等は、断層から2km程度以上離れると浅部の震源域による影響は無視できる程度に下がるというモデルなのであるから、断層が敷地から2km離れているという前提で計算をしたところで、浅部の破壊による影響がないという結論になるのはほぼ必然であり、債務者の検討は結論ありきの恣意的なものである旨主 張する。 しかし、そもそも、債務者のした検討は念のためのものであるところ、上記(ア)において述べたとおり、宍道断層から炉心までの距離が2km程度であり、本件発電所敷地境界までの距離が1.3km程度であることなどに照らすと、債務者の設定した前提条件が不合理であるとまではいえない )において述べたとおり、宍道断層から炉心までの距離が2km程度であり、本件発電所敷地境界までの距離が1.3km程度であることなどに照らすと、債務者の設定した前提条件が不合理であるとまではいえない。 (エ) 債権者らは、債務者が念のための検討において使った「浅部モデル」は、「アスペリティ」(大すべり域)もそれ以外の部分も応力降下量はゼロという設定になっているのであるから、長周期側でやや差異は見られるが、ほぼ同様の結果であるという結果になったのは必然であり、この点からしても結論ありきの設定といえる、一般に、浅部断層からの短周期地震動の生成の程度については不確定とされ ており、本件特別考慮規定は、その点の不確かさを踏まえ、浅部断層からも短周期 - 74 - 地震動が生成される可能性を考慮して十分な余裕を考慮すべきことを定めているものと解されるから、浅部断層は応力降下量がゼロで短周期地震動は生成しないというモデルのみに依拠して影響がないと結論付けるのは誤りであるなどと主張する。 しかし、一般に、地震は、地下深部の岩盤に蓄積されたひずみが蓄積される限界を超え、震源断層面を境として岩盤が破壊することによってエネルギーが解放され る現象であり、断層面に働くせん断応力がある臨界値(断層の強度)を超えたときに断層面がすべり出すことにより発生するものであって、地下の岩盤が蓄積できるせん断応力は、断層の浅部よりも深い岩盤の方が大きく、浅部が蓄積できるせん断応力は、深部断層と比べて相当に小さいと考えられているところ、債務者は、浅部の破壊は、深部断層が断層破壊により大きくすべる際、その断層運動に引きずられ ることにより受動的に生ずるものであり、浅部の破壊による応力降下はほとんど生じず、かつ、浅部のすべりはゆっくりとしたもので、 、深部断層が断層破壊により大きくすべる際、その断層運動に引きずられ ることにより受動的に生ずるものであり、浅部の破壊による応力降下はほとんど生じず、かつ、浅部のすべりはゆっくりとしたもので、長周期地震動の生成や断層変位の表出には寄与する一方、大きな短周期地震動の生成には寄与しないという考え方を前提にしていると理解される疎明資料や、平成28年に発生した熊本地震において震源近傍での浅部の破壊の影響が認識されたことから、多くの研究者によって 同地震の観測記録を対象としたフリングステップや長周期パルスの再現解析が行われているところ、これらの再現解析は、浅部において、すべり量は大きいものの大きな短周期側の強震動は発生しない大すべり域(LMGAや長周期地震動生成域ともいう。)を配置し、理論計算を行うことによって、フリングステップや長周期パルスを再現していることを示す疎明資料を複数提出している(乙96、196~1 99)。また、これまで検討してきたところに照らすと、原子力規制委員会は、この点に関する知見の不確実性も視野に入れた上で、断層モデルのパラメータを保守的に設定することなども含め、多角的な観点から本件原子炉の安全性について審査を行ったものと解される。他方、債権者らから、浅部の破壊により本件原子炉の安全性に具体的な影響を及ぼすほどの短周期地震動が発生する蓋然性を示す具体的な 知見は示されていないし、考慮すべきとする十分な余裕の具体的な内容も示されて - 75 - いない。これらの最新の知見も踏まえると、債務者のした念のための検討において、浅部モデルの大すべり域について応力降下量をゼロとしたことなどが不合理であるとはいえない。 (オ) 債権者らは、本件A意見書(甲127)を根拠として、宍道断層の浅部断層は原発の敷 の検討において、浅部モデルの大すべり域について応力降下量をゼロとしたことなどが不合理であるとはいえない。 (オ) 債権者らは、本件A意見書(甲127)を根拠として、宍道断層の浅部断層は原発の敷地に極めて近い、アスペリティ上端深さは少なくとも1km程度まで 浅くなる可能性があり、保守的に0.5km程度まで浅くなる可能性があると考えて敷地での地震動の短周期レベルの2kmの場合に対する比を計算すると、短周期レベルは、アスペリティ上端深さが1kmの場合は2kmの場合の1.3倍程度、アスペリティ上端深さが0.5kmの場合は2kmの場合の1.6倍程度となるなどと主張する。 しかし、本件A意見書は、「震源が敷地に極めて近い場合」とは「浅部断層の影響が無視できない場合」であるとした上で(甲127・2頁)、「浅部断層は図(本件発電所と宍道断層とのおよその位置関係を示した図(同3頁・図2))からわかりますように原子力発電所に極めて近いのですから…原子力発電所に大きな影響を及ぼす恐れがあり…島根原子力発電所は宍道断層に対して「浅部断層の影響が 無視できない場合」すなわち「震源が敷地に極めて近い場合」に該当する。」と述べるのみであって、浅部断層の影響が無視できない場合、ひいては震源が敷地に極めて近い場合に該当するとした具体的な根拠が明示されていない。 次に、債務者は、前記⑴エ(ア)a(c)のとおり、本件発電所敷地及びその周辺の地盤について微動アレイ探査を実施し、S波速度が3.5km/S程度の層は地表 から約2kmの深さに分布することを確認したほか、疎明資料(乙204)によれば、債務者が本件敷地において実施した大深度ボーリング調査において、標高-1191.5m(深度1.2km)のS波速度が2.73km/Sであったことが一応認められ したほか、疎明資料(乙204)によれば、債務者が本件敷地において実施した大深度ボーリング調査において、標高-1191.5m(深度1.2km)のS波速度が2.73km/Sであったことが一応認められる。 他方、本件A意見書がアスペリティ上端について少なくとも1km程度まで浅く なる可能性があるなどと判断した根拠は、全国1次地下構造モデル(暫定版)に基 - 76 - づき、宍道断層に沿い、S波速度350m/S、2000m/S、2400m/S、3200m/S、3400m/Sの各地層の上端震度をプロットした図に基づくものとされており、あくまで一般的な知見を前提としたものであって、債務者が実施したほどの本件発電所敷地及びその周辺に即した調査・検討に基づくものではない。 以上によれば、本件A意見書を根拠として、宍道断層の浅部断層は原発の敷地に極めて近いあるいはアスペリティ上端深さは少なくとも1km程度まで浅くなる可能性があるとはいえない。 (カ) 債権者らは、野津(2006)は、震源距離が2km程度離れていれば、近地項・中間項の影響は無視できる程度に小さいという研究であるのであれば、こ れを用いて近地項と中間項の有無による応答スペクトルを比較したとしても、やはり結論ありきの恣意的な検討であるとの批判は免れない、例えば、佐藤智美(2009)「近地項と中間項を考慮した三成分統計的グリーン関数生成手法の高度化」(甲123)で提案されている手法を用いれば、近地項と中間項の有無によって結論に影響が生じる可能性は十分にあったといえるなどと主張するが、債務者のした 検討の不合理性を具体的に指摘するものとはいえず、採用の限りではない。 3 争点3(火山事象に対する安全性)について⑴ 認定事実前記前提事実に加え、かっこ内の 主張するが、債務者のした 検討の不合理性を具体的に指摘するものとはいえず、採用の限りではない。 3 争点3(火山事象に対する安全性)について⑴ 認定事実前記前提事実に加え、かっこ内の疎明資料及び審尋の全趣旨によれば、次の事実が一応認められる。 ア火山に関する一般的な知見火山とは、地表に噴出したマグマが造る特徴的な地形をいい、一般には火山噴出物が堆積することによってできた地形的な高まりを指すことが多い。また、地形の高所だけではなく、陥没等によって生じた凹地形も火山に含まれる。例えば、一度に大量のマグマが噴出することによって地面が大きく凹んだカルデラも、火山活動 による代表的な地形の一つであり、火山である。 - 77 - 火山を構成する火山岩は、マグマが地表あるいは地下浅所で急冷され固結することにより生成される。火山岩は、その化学組成、組織、色等に基づいて様々に分類されている。例えば、岩石の主要成分である二酸化ケイ素(SiO2。シリカ、単にケイ酸ともいう。)の含有量に基づく火山岩の分類方法では、二酸化ケイ素の含有量の多い順に、流紋岩、デイサイト、安山岩、玄武岩に分類される。そして、マ グマは、それが固結した際に生成される火山岩によって、玄武岩質マグマ、流紋岩質マグマ等に分類される。 火山は、地球上のどこにでもできるわけではなく、特定の場所に分布している。 具体的には、火山は、①プレートが新たに生成される海嶺(例えば大西洋中央海嶺)、②マントルが局所的に上昇しているホットスポット(例えばハワイ、イエロ ーストーン)及び③海洋プレートが隣接する大陸プレートの下に沈み込んでいる沈み込み帯(例えば日本列島、北米大陸西海岸、南米大陸西海岸)に分布している。 上記①~③の場所に分布する火山には、それ ーストーン)及び③海洋プレートが隣接する大陸プレートの下に沈み込んでいる沈み込み帯(例えば日本列島、北米大陸西海岸、南米大陸西海岸)に分布している。 上記①~③の場所に分布する火山には、それぞれの分布する場所により特徴があり、火山の活動期間や活動間隔、規模、噴火形態等にその特徴が現れる。例えば、上記③の日本列島のような沈み込み帯に発達する島弧の火山は、数十万年程度がそ の平均的な活動期間と考えられている。日本列島における火山活動は、主に海洋プレートの沈み込みとテクトニクス場に関連すると考えられている。一般に、海洋プレートが隣接する大陸プレートの下に沈み込む際、海洋プレート上部の海洋地殻には多くの水が含水鉱物等として含まれており、そうした含水鉱物等が脱水する温度・圧力条件まで海洋プレートが沈み込むと水を放出する。放出された水は、同地 殻の上にあるマントル内を上昇し、マントルの融点(融解開始温度)を降下させる。これにより、マントルが部分融解し、マグマが生成されると考えられている。 そして、マントルの最上部(深度数十km)で生成された融解状態にあるマグマは、周囲の固体物質(岩石)よりも密度が小さいため、浮力によって徐々に上昇し、周囲の固体物質の密度と釣り合うところ(浮力中立点)ないしそれより深い位 置においてマグマ溜まりを形成する。このようにして、プレート境界に沿って火山 - 78 - 弧が形成されると考えられている。 日本列島の火山弧の活動は、大陸から分離する以前に遡ってみれば、1億年以上継続していると考えられているが、現在のテクトニクス場が成立した時期は、おおむね鮮新世ないし更新世の間であると考えられ、地殻変動の傾向や火山活動の場は、数十万年ないし数百万年にわたって変化がないと考えられている。火山の噴火 が、現在のテクトニクス場が成立した時期は、おおむね鮮新世ないし更新世の間であると考えられ、地殻変動の傾向や火山活動の場は、数十万年ないし数百万年にわたって変化がないと考えられている。火山の噴火 は、地表付近のマグマの影響により生ずるものであるが、その態様によって、マグマ噴火、水蒸気噴火及びマグマ水蒸気噴火の3種類に大別され、マグマ噴火は、一般的に水蒸気噴火及びマグマ水蒸気噴火と比べると噴火規模が大きい。 マグマ噴火とは、マグマが地表に直接噴出する噴火をいう。上記のように地下で生成されたマグマは、すべて噴出するというわけではなく、地下で固まり深成岩と なることも多い。マグマが地表に到達して噴出することには浅部地殻の構造とテクトニクス場が影響すると考えられ、地殻浅所のマグマ溜まりへの継続的なマグマの供給により圧力が増加し、圧力が地殻を破壊するほどまで増加すると、マグマはマグマ溜まりから火道を地表に向けて再び上昇する。マグマが地下浅部に上昇すると、地殻から受ける圧力が低下するため、マグマ中の揮発性成分(水、炭酸ガス) が溶け込んでいられなくなって発泡する。気泡を含んだマグマは、密度が低下し、膨張を加速しながら地表から勢いよく噴出し、マグマ噴火を起こす。また、深部にある親マグマ溜まりから浅部(地下5000~1万m程度のこともある)にある子マグマ溜まりへ高温の玄武岩質マグマが注入されるというメカニズムも考えられている。 上記のことから、マグマ中に揮発性成分が多い方が爆発的な噴火になりやすい。 また、一般的に、マグマ内の二酸化ケイ素の量が多いほど、マグマの粘性は高くなるところ、粘性が高いマグマほど、発泡した揮発性成分はマグマから抜け出しにくく、マグマの圧力が高まりやすい。したがって、元々含まれる揮発性成分が多い傾向にあり 素の量が多いほど、マグマの粘性は高くなるところ、粘性が高いマグマほど、発泡した揮発性成分はマグマから抜け出しにくく、マグマの圧力が高まりやすい。したがって、元々含まれる揮発性成分が多い傾向にあり、また、粘性の高いマグマ、すなわち二酸化ケイ素の含有量の多いマグマ ほど爆発的な噴火を起こしやすい。 - 79 - 上記のとおり、マグマは、二酸化ケイ素の含有量の多い順に、流紋岩質、デイサイト質、安山岩質及び玄武岩質に分類され(特にデイサイト質以上の二酸化ケイ素含有量をもつマグマは珪長質マグマ、反対に二酸化ケイ素含有量の少ないマグマは苦鉄質マグマともいう。)、揮発性成分の含有量は、一般的には、デイサイト質マグマの方が玄武岩質マグマに比較して多い。したがって、一般的に、珪長質マグマ の方が苦鉄質マグマよりも激しい噴火を起こし、我が国の過去の広域テフラの記録に基づけば、大規模な噴火は、珪長質マグマによる噴火が卓越しているが、デイサイト~安山岩質のマグマでも大規模噴火を起こすことは有り得る。 噴火が起こる前には、マグマがあらかじめマグマ溜まりに蓄積されていることが必要であるとされている。そして、マグマ溜まりは、マグマの密度と周囲の固体物 質の密度とが釣り合うことでマグマを地殻内に安定的に維持できる浮力中立点ないしそれより深い位置に定置するところ、二酸化ケイ素の含有量が多いほどマグマの密度は小さく、また、地殻の密度は基本的に地表からの深さに応じて浅いほど小さくなるので、一般に、密度の小さいマグマほど、そのマグマ溜まりは浅い位置に定置していると考えられている。下鶴大輔・荒牧重雄・井田喜明・中田節也編(20 11)「火山の事典〔第2版〕」(乙71・14頁)に示されるマグマの種類ごとのSiO2(二酸化ケイ素)の含有量及び密度 していると考えられている。下鶴大輔・荒牧重雄・井田喜明・中田節也編(20 11)「火山の事典〔第2版〕」(乙71・14頁)に示されるマグマの種類ごとのSiO2(二酸化ケイ素)の含有量及び密度を基に、東宮昭彦(1997)「実験岩石学的手法で求めるマグマ溜まりの深さ」(以下「東宮(1997)」という。乙72・722~723頁)に示されるマグマ溜まりの深さとマグマの組成との関係及びマグマの密度が地殻の密度と釣り合う深さとマグマの組成との関係を確 認した結果、爆発的噴火を引き起こす珪長質マグマの浮力中立点は、深さ約7km以浅となる(なお、東宮(1997)によれば、玄武岩質マグマが浮力中立となる深さは、10~12kmとされている。)。 火山事象とは、噴火のほか、火山に関連したあらゆる事象又は一連の現象を広くいい、火山性地震、火砕物密度流や降下火砕物等様々なものがある。火山の噴火 は、ある体積をもった高温のマグマが地表に近づいて引き起こされる現象であるた - 80 - め、地上では様々な変化となってその前兆現象が認められることがある。特に、大規模な噴火を起こさせるマグマ溜まりは、噴火に伴って形成される大規模な陥没に見合う空間的広がりを持ち、マグマ噴火が発生する際には、マグマ溜まりの圧力の増加に伴って周囲の地殻が圧迫されるため、一般的に、噴火の前兆として地殻変動による山体の膨張が観測されることがある。また、地殻中のマグマの移動に伴って しばしば火山性地震が発生する。これらの地殻変動や火山性地震も、火山事象の一つである。 イ設置許可基準規則及び設置許可基準規則解釈の定め(乙63)安全施設は、想定される自然現象が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない(設置許可基準規則6条1項)、同項に規定す 設置許可基準規則及び設置許可基準規則解釈の定め(乙63)安全施設は、想定される自然現象が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない(設置許可基準規則6条1項)、同項に規定する「想定 される自然現象」とは、敷地の自然環境を基に、洪水、風(台風)、竜巻、凍結、降水、積雪、落雷、地滑り、火山の影響、生物学的事象又は森林火災等から適用されるものをいう(解釈6条2項)。 ウ火山ガイドによる火山影響評価の概要(甲43)規制委員会が上記イを受けて作成した火山ガイドによる火山影響評価の概要は次 のとおりである。 (ア) 概要及び火山影響評価の流れa 概要火山影響評価は、立地評価と影響評価の2段階で行う。 b 立地評価 まず原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出を行う。すなわち、原子力発電所の地理的領域(原子力発電所から半径160kmの範囲の領域)において第四紀(約258万年前から現在までの期間)に活動した火山(以下「第四紀火山」という。)を抽出し、その中から、完新世(約1万1700年前から現在までの期間)に活動があった火山及び完新世に活動を行っていないものの将来の活動可能性が否 定できない火山は、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山として個別評価対象とす - 81 - る。 原子力発電所に影響を及ぼし得る火山として抽出した火山について原子力発電所の運用期間(原子力発電所に核燃料物質が存在する期間)における火山活動に関する個別評価を行う。すなわち、運用期間中の火山の活動可能性が十分小さいとは評価できず、かつ、設計対応不可能な火山事象が運用期間中に原子力発電所に到達す る可能性が十分小さいとも評価できない場合は、原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象が原子 とは評価できず、かつ、設計対応不可能な火山事象が運用期間中に原子力発電所に到達す る可能性が十分小さいとも評価できない場合は、原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいとはいえず、原子力発電所の立地は不適となる。 c 影響評価個別評価において立地が不適とならない場合は、原子力発電所の安全性に影響を 与える可能性のある火山事象を抽出し、各火山事象に対する設計対応及び運転対応の妥当性について評価を行う。 ただし、火山事象のうち降下火砕物に関しては、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積当たりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物の噴出源である火山事象が同 定でき、これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分に小さい場合は考慮対象から除外する。 d 火山活動モニタリングの流れ個別評価により原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価した火山であっても、こ の評価とは別に、第四紀に設計対応が不可能な火山事象が原子力発電所の敷地に到達した可能性が否定できない火山に対しては、評価時からの状態の変化の検知により評価の根拠が維持されていることを確認することを目的として、運用期間中のモニタリングの実施方針及びモニタリングにより観測データの有意な変化を把握した場合の対処方針を策定することとする。 (イ) 原子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出 - 82 - a 各種調査原子力発電所の地理的領域に対して、文献調査等で第四紀火山を抽出する。第四紀火山について、文献調査、地形・地質調査及び 子力発電所に影響を及ぼし得る火山の抽出 - 82 - a 各種調査原子力発電所の地理的領域に対して、文献調査等で第四紀火山を抽出する。第四紀火山について、文献調査、地形・地質調査及び火山学的調査を行い、火山の活動履歴、噴火規模及びその影響範囲等を把握する。 文献調査では、地理的領域内の火山とその火山活動、火山噴出物に関する既存の 文献を集約し、あるいはデータベースを活用し、地理的領域内の第四紀火山についての概略(火山噴出物、火山噴出中心の位置、噴出物種類、活動時期、噴出物分布等)を把握し、最新の知見も参照の上、地理的領域における火山の存在と分布を決定する。 地形調査では、既存の地形図、航空写真等を用いた判読及び海底地形データ等に 基づき、火山地形の把握を行う。また、必要に応じて航空測量による最新データの取得を行うことも有効である。 地質調査では、文献調査及び地形調査によって、活動位置・規模・様式や噴出時期等の活動履歴の評価に十分な情報が得られなかった場合、当該調査等を行い、原子力発電所周辺の地理的領域の火山噴出物の噴出中心位置、噴出物種類、活動時 期、噴出物(堆積物)分布等の評価に必要な情報を収集する。 調査においては、露頭又はボーリング若しくはピット掘削等により火山噴出物の試料採取・分析・年代測定等を行い、詳細な情報の収集・評価を実施する。 地質調査において、火山灰、火砕流、溶岩流等の火山噴出物(堆積物)が認められた場合、火山学的な調査を行う。 b 将来の火山活動可能性地理的領域にある第四紀火山から、次の2段階の評価を行い、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山を抽出する。 (a) 完新世に活動を行った火山完新世における活動の有無を確認する。完新世に活動を行った火山は、将来の活 山から、次の2段階の評価を行い、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山を抽出する。 (a) 完新世に活動を行った火山完新世における活動の有無を確認する。完新世に活動を行った火山は、将来の活 動可能性があることを示すものとして広く受け入れられていることから、これを原 - 83 - 子力発電所に影響を及ぼし得る火山とする。 (b) 完新世に活動を行っていない火山地理的領域にある第四紀火山のうち、完新世に活動を行っていない火山については、当該火山の第四紀の噴火時期、噴火規模、活動の休止期間を示す階段ダイヤグラムを作成し、より古い時期の活動を評価する。 作成した階段ダイヤグラムにおいて、火山活動が終息する傾向が顕著であって、最後の活動終了からの期間が、過去の最大休止期間より長い等、将来の活動可能性が十分に小さいと判断できる場合は、火山活動に関する個別評価の対象としない。 それ以外の火山は、原子力発電所に影響を及ぼし得る火山として、個別評価対象の火山とする。 (ウ) 原子力発電所の運用期間における火山活動に関する個別評価抽出された原子力発電所に影響を及ぼし得る火山(以下「検討対象火山」という。)について、設計対応が不可能な火山事象が運用期間中に原子力発電所に影響を及ぼす可能性の評価を行う。 a 設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価 (a) 設計対応不可能な火山事象設計対応不可能な火山事象は、原子力発電所に影響を与える可能性のある火山事象のうち、火砕物密度流、溶岩流、岩屑なだれ、地滑り及び斜面崩壊、新しい火口の開口及び地殻変動の5事象とする。設計対応不可能な火山事象については、検討対象火山と原子力発電所間の距離が表1(略)に示す原子力発電所との位置関係に 記載の距離より大きい場合、その しい火口の開口及び地殻変動の5事象とする。設計対応不可能な火山事象については、検討対象火山と原子力発電所間の距離が表1(略)に示す原子力発電所との位置関係に 記載の距離より大きい場合、その火山事象を評価の対象外とすることができる。 (b) 火山活動の可能性評価原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性を総合的に評価する。検討対象火山の活動の可能性が十分小さいと判断できない場合は、「火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価」を実施する。 (c) 火山活動の規模と設計対応不可能な火山事象の評価 - 84 - 検討対象火山の調査結果から噴火規模を推定し、設定した噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する。設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合は、原子力発電所の立地は不適となる。 b 地球物理学的及び地球化学的調査 地球物理学的調査では、地震波速度構造(地震探査の解析により求める地震波速度の空間分布)、重力構造(重力探査(精密な重力測定)により求める密度の空間分布)、比抵抗構造(電磁気探査により求める比抵抗の空間分布)、地震活動(火山周辺における地震発生現象)及び地殻変動(GNSS(GlobalNavigationSatelliteSystem:全地球測位衛星システム)測量 等により求める火山活動に伴う地殻の変形現象)に関する検討を実施し、マグマ溜まりの規模や位置、マグマの供給系に関係する地下構造等について調査する。地球化学的調査では、火山ガス(噴気)の化学組成分析、温度などの情報から、地理的領域に存在する火山の火山活動を調査する。 (エ) 個別評価の結果を受けた原 系に関係する地下構造等について調査する。地球化学的調査では、火山ガス(噴気)の化学組成分析、温度などの情報から、地理的領域に存在する火山の火山活動を調査する。 (エ) 個別評価の結果を受けた原子力発電所への火山事象の影響評価 原子力発電所の運用期間中に設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された火山について、それが噴火した場合に原子力発電所の安全性に影響を与える可能性のある火山事象を抽出し、各火山事象に対する設計対応及び運転対応の妥当性について評価を行う。 ただし、降下火砕物に関しては、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求め られる単位面積当たりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物の噴出源である火山事象が同定でき、これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分に小さい場合は考慮対象から除外する。(本件除外要件)また、降下火砕物は浸食等で厚さが小さく見積もられるケースがあるので、文献 等も参考にして、第四紀火山の噴火による降下火砕物の堆積量を評価すること。 - 85 - 抽出された火山事象に対して、個別評価を踏まえて、原子力発電所への影響評価を行うための、各事象の特性と規模を設定する。 (オ) 降下火砕物a 降下火砕物の影響(a) 直接的影響 降下火砕物は、最も広範囲に及ぶ火山事象で、ごくわずかな火山灰の堆積でも、原子力発電所の通常運転を妨げる可能性がある。降下火砕物により、原子力発電所の構造物への静的負荷、粒子の衝突、水循環系の閉塞及びその内部における磨耗、換気系、電気系及び計装制御系に対する機械的及び化学的影響、並びに原子力発電所周辺の大気汚染等の影響が挙げられ 原子力発電所の構造物への静的負荷、粒子の衝突、水循環系の閉塞及びその内部における磨耗、換気系、電気系及び計装制御系に対する機械的及び化学的影響、並びに原子力発電所周辺の大気汚染等の影響が挙げられる。 降雨・降雪などの自然現象は、火山灰等の堆積物の静的負荷を著しく増大させる可能性がある。火山灰粒子には、化学的腐食や給水の汚染を引き起こす成分(塩素イオン、フッ素イオン、硫化物イオン等)が含まれている。 (b) 間接的影響降下火砕物は広範囲に及ぶことから、原子力発電所周辺の社会インフラに影響を 及ぼす。この中には、広範囲な送電網の損傷による長期の外部電源喪失や原子力発電所へのアクセス制限事象が発生しうることも考慮する必要がある。 b 降下火砕物による原子力発電所への影響評価降下火砕物の影響評価では、降下火砕物の降灰量、堆積速度、堆積期間及び火山灰等の特性などの設定、並びに降雨等の同時期に想定される気象条件が火山灰等特 性に及ぼす影響を考慮し、それらの発電用原子炉施設への影響を評価し、必要な場合には対策がとられ、求められている安全機能が担保されることを評価する。 (a) 直接的影響の確認事項① 降下火砕物堆積荷重に対して、安全機能を有する構築物、系統及び機器の健全性が維持されること。 ② 降下火砕物により、取水設備、原子炉補機冷却海水系統、格納容器ベント設 - 86 - 備等の安全上重要な設備が閉塞等によりその機能を喪失しないこと。 ③ 外気取入口からの火山灰の侵入により、換気空調系統のフィルタの目詰まり、非常用ディーゼル発電機の損傷等による系統・機器の機能喪失がなく、加えて中央制御室における居住環境を維持すること。 ④ 必要に応じて、原子力発電所内の構築物、系統及び機器における降下火砕物 り、非常用ディーゼル発電機の損傷等による系統・機器の機能喪失がなく、加えて中央制御室における居住環境を維持すること。 ④ 必要に応じて、原子力発電所内の構築物、系統及び機器における降下火砕物 の除去等の対応が取れること。 (b) 間接的影響の確認事項原子力発電所外での影響(長期間の外部電源の喪失及び交通の途絶)を考慮し、燃料油等の備蓄又は外部からの支援等により、原子炉及び使用済燃料プールの安全性を損なわないように対応が取れること。 (カ) 火山影響評価の根拠が維持されていることの確認を目的とした火山活動のモニタリング個別評価により原子力発電所の運用期間中において設計対応が不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価した火山であっても、この評価とは別に、監視対象火山に対して、評価時から状態の変化の検知により評価 の根拠が維持されていることを確認することを目的として、運用期間中のモニタリングを行うこととする。モニタリングにより観測データの有意な変化を把握した場合には、状況に応じた判断・対応を行うこととする。 監視対象火山は、第四紀に設計対応不可能な火山事象が原子力発電所の敷地に到達した可能性が否定できない火山を監視対象火山とする。 エ火山ガイドの改正(甲44)火山ガイドは、平成25年6月19日に定められた後、平成29年11月29日及び令和元年12月18日に改正された。 本件除外要件に相当する部分は、旧火山ガイド(令和元年12月18日改正前の火山ガイド)では、「ただし、降下火砕物に関しては、火山抽出の結果にかかわら ず、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積あたりの質量と - 87 - 同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺 関しては、火山抽出の結果にかかわら ず、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積あたりの質量と - 87 - 同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物で、噴出源が同定でき、その噴出源が将来噴火する可能性が否定できる場合は考慮対象から除外する。」とされていたが、令和元年の改正により、旧火山ガイドの「火山抽出の結果にかかわらず、」が削除され、考慮対象から除外できる場合について、旧火山ガイドでは「降下火砕物で、噴出源が同定でき、その噴出源が将来 噴火する可能性が否定できる場合」であったのが「降下火砕物の噴出源である火山事象が同定でき、これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分に小さい場合」とされるなどした。 また、上記ウ (カ)の火山活動のモニタリングについて、旧火山ガイドでは「火山活動のモニタリング」「個別評価により運用期間中の火山活動の可能性が十分小 さいと評価した火山であっても、設計対応不可能な火山事象が発電所に到達したと考えられる火山に対しては、噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として運用期間中のモニタリングを行う。噴火可能性につながるモニタリング結果が観測された場合には、必要な判断・対応をとる必要がある。」とされていたところ、上記改正により、「個別評価により原子力発電所の運用期間中において 設計対応が不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価した火山であっても、この評価とは別に、監視対象となる火山に対して、評価時からの状態の変化の検知により評価の根拠が維持されていることを確認することを目的として、運用期間中のモニタリングを行うこととする。モニタリングにより観測データの有意な変 象となる火山に対して、評価時からの状態の変化の検知により評価の根拠が維持されていることを確認することを目的として、運用期間中のモニタリングを行うこととする。モニタリングにより観測データの有意な変化を把握した場合には、状況に応じた判断・対応を行うこと とする。」というように、モニタリングの目的が変更されるなどした。 オ債務者による検討火山事象に対し、債務者がした検討の経過及び結果は以下のとおりである。 (ア) 検討対象火山の抽出本件発電所敷地を中心とする半径160km以内(地理的領域)の第四紀火山を 抽出の対象として文献調査、地形調査、地質調査(地表地質踏査、ボーリング調査 - 88 - 等)及び地球物理学的調査を実施し、将来の活動可能性が十分小さいといえない火山として完新世以降に活動があった三瓶山火山及び完新世より古い時期に活動した火山であっても将来の活動可能性が十分に小さいと評価できない大山火山等の17火山を検討対象火山とした。(乙1・6-7-1~6-7-2頁、6-7-22~6-7-23頁) (イ) 設計対応不可能な火山事象の本件発電所敷地への到達可能性評価設計対応不可能な火山事象のうち、火砕物密度流、溶岩流、岩屑なだれ、地滑り及び斜面崩壊については、地質調査の結果、本件発電所敷地には検討対象火山を起源とするそれらは確認されておらず、また、それらの最大到達距離は、いずれも検討対象火山と本件発電所敷地との距離より十分に小さいことから、本件発電所敷地 に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価した。新しい火口の開口については、本件発電所敷地は活火山である三瓶山火山とは約55kmと十分な離隔距離があることなどから本件発電所敷地に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価した。また、本件発電所敷地近傍での 火口の開口については、本件発電所敷地は活火山である三瓶山火山とは約55kmと十分な離隔距離があることなどから本件発電所敷地に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価した。また、本件発電所敷地近傍での新しい火口の開口に伴い引き起こされると考えられる地殻変動が本件発電所敷地に影響を及ぼす可能性も十分小さいと評価した。(乙1・6 -7-2~6-7-4頁)(ウ) 設計対応可能な火山事象の本件原子炉への影響の評価a 降下火砕物本件敷地内における地質調査では降下火砕物は確認されていないが、文献によると、本件敷地に到達した可能性のある第四紀火山を給源とする主要な降下火砕物と して、地理的領域内の火山については、三瓶木次テフラ((SK)及び大山松江テフラ(DMP)が、地理的領域外の火山については、鬼界アカホヤテフラ、姶良Tnテフラ、阿蘇4テフラ、鬼界葛原テフラ、阿多テフラ、阿蘇3テフラ及び大韓民国の鬱陵隠岐テフラがそれぞれ示されているため、降下火砕物については地理的領域外の火山を給源とするものも含めて検討対象とした。(乙75・54、58~8 3、85~87頁、119~123頁) - 89 - (a) 降下火砕物の層厚ⅰ 地理的領域内の検討対象火山を給源とする降下火砕物物理的領域内の検討対象火山として抽出した18火山のうち三瓶山火山及び大山火山を除く16火山は、小規模な溶岩流等が主体であり、広範囲に降下したテフラも確認されていないことから、本件発電所敷地への影響はないものと判断した(乙 75・119~123頁)。 ⅱ 三瓶山火山(ⅰ)噴火規模の想定文献では三瓶浮布テフラ(SUk)、三瓶池田テフラ(SI)、三瓶大田火砕流(SOd)及び三瓶太平山テフラを噴出させた噴火の時の噴出物は、本件発電所敷 ⅱ 三瓶山火山(ⅰ)噴火規模の想定文献では三瓶浮布テフラ(SUk)、三瓶池田テフラ(SI)、三瓶大田火砕流(SOd)及び三瓶太平山テフラを噴出させた噴火の時の噴出物は、本件発電所敷 地まで到達していないとされ、三瓶大田火砕流噴出時の降下火山灰層の分布面積及び層厚は著しく小さいとされている。本件発電所敷地を中心とする半径約30kmの範囲における地質調査結果によると、本件発電所敷地は三瓶木次テフラについて等層厚線(アイソパック)10cm程度の範囲に位置しており、本件発電所敷地内のボーリング調査等では同テフラは確認されていない。 α 噴火履歴に係る検討文献によると、三瓶山火山は、約7万年前に火砕流が主体である噴火により三瓶大田火砕流を噴出し、約1.5万年前に三瓶浮布テフラを噴出した後は活動が溶岩ドームを形成するものへと変化し、爆発性が低下しているとされている。また、三瓶山火山の火山活動が始まった約110万年前の森田山の噴火以降最も規模の大き な噴火は約11万年前の三瓶木次テフラの噴出であるところ、階段ダイヤグラムによる検討の結果、約110万年前から三瓶木次テフラの噴出までの期間(約100万年)は、三瓶木次テフラの噴出から現在までの経過時間(約11万年)に比べ十分に長い。 β 地球物理学的調査 文献によると、三瓶山火山の北東-南東側の地下深部に広がる低速度層及び低周 - 90 - 波微小地震の存在から、同地下深部にマグマ溜まりの存在する可能性が示唆されているが、仮にマグマ溜まりであるとしても、玄武岩質マグマの浮力中立点よりも深い深さ20km以深に位置しており、爆発的噴火を引き起こす珪長質マグマの浮力中立点(深さ7km以浅)よりも深い地点にあると推察される。また、同位置の深度より浅部にマグマ溜ま グマの浮力中立点よりも深い深さ20km以深に位置しており、爆発的噴火を引き起こす珪長質マグマの浮力中立点(深さ7km以浅)よりも深い地点にあると推察される。また、同位置の深度より浅部にマグマ溜まりの存在を示す兆候はない。 γ 気象庁及び火山噴火予知連絡会による評価噴気及び地熱域の観測結果に基づく気象庁の評価から噴火の兆候は認められないとされ、火山噴火予知連絡会においても平成9年10月~令和元年11月における地震観測結果等から火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過しており、噴火の兆候は認められないとされ、平成27年12月~令和2年10月におけるGNSS (全球測位衛星システム)による連続観測結果には特段の変化は見られず、令和元年9月~令和2年9月におけるSAR干渉(人工衛星等に搭載された特殊なレーダーを用いて地表の変位を測定する技術をいう。)による解析結果では、ノイズレベルを超える変動は見られないとされている(乙78・1頁、79・86~87頁、80・48~49頁)。 Δ 想定する噴火規模以上の検討結果から三瓶山火山が本件原子炉の運用期間中に三瓶木次テフラのような広域テフラを降下させる規模の噴火を起こす可能性は十分小さいと評価し、三瓶山火山の本件原子炉の運用期間中の噴火規模として、三瓶木次テフラ噴出時以外の噴火の中で降下火砕物として噴火規模が最大である三瓶浮布テフラ噴出時の噴出 量を考慮し、噴出量を4.15km3と想定した。 (ⅱ)降下火砕物の層厚地質調査の結果、三瓶浮布テフラは本件敷地及び本件敷地近傍において確認されておらず、文献によっても同テフラは本件敷地に到達していないとされているが、保守的に噴出量を考慮し、影響の大きい風向きの不確かさを考慮するなどして行っ た火山灰シミュレーションを行 て確認されておらず、文献によっても同テフラは本件敷地に到達していないとされているが、保守的に噴出量を考慮し、影響の大きい風向きの不確かさを考慮するなどして行っ た火山灰シミュレーションを行ったところ、本件敷地における降灰層厚は、最大3 - 91 - 3.5cmとなった。 次に、本件発電所敷地は、三瓶山火山の風下側に位置し、風向によっては降灰が想定されること及び文献によると、三瓶浮布テフラの分布域は明確に2方向に区分され、その一方が中国地方の広範囲で分布していることから、更なる保守的な検討として、文献に示される同テフラの50cmの等層厚線(三瓶山火山からの最大距 離は約61km)について、主軸は三瓶山から本件発電所敷地の方向とは異なるが(乙75・122頁)、その主軸上の三瓶山から本件発電所敷地までの距離に相当する55km地点の降灰層厚を本件発電所敷地における降灰層厚として考慮した結果、本件発電所敷地における降灰層厚は、55.5cmとなった。 以上の検討の結果、三瓶山火山を給源とする降下火砕物について、本件発電所敷 地において想定される層厚を56cmと評価した。(乙1・6-7-5~6-7-10頁)ⅲ 大山火山噴火規模について、噴火履歴に係る検討、マグマ供給系に係る検討、地球物理学的調査の結果によると、大山火山が、本件原子炉の運用期間中に大山倉吉テフラの ような広域テフラを降下させる規模の噴火を起こす可能性は十分小さいと評価し、大山松江テフラ、大山生竹テフラ噴出時の噴出量を考慮し、噴出量11.0km3とした。 降下火砕物の層厚について、不確かさを考慮したシミュレーションを実施し、大山火山を給源とする降下火砕物について、本件発電所敷地において想定される層厚 を45cmと評価した。(乙1・6-7- 降下火砕物の層厚について、不確かさを考慮したシミュレーションを実施し、大山火山を給源とする降下火砕物について、本件発電所敷地において想定される層厚 を45cmと評価した。(乙1・6-7-10~6-7-13頁)ⅳ 地理的領域外の火山を給源とする降下火砕物鬱陵島火山は、完新世に鬱陵隠岐テフラを噴出した噴火を起こしていることなどから、本件原子炉の運用期間中に同噴出時と同程度の降下火砕物を噴出させるような噴火を起こす可能性が否定できないことから、地質調査、文献調査の結果を踏ま えて鬱陵隠岐テフラの噴出時と同程度の噴火規模を想定し、火山灰シミュレーショ - 92 - ンを実施したところ、現在の気象条件における本件発電所敷地での降灰層厚は0. 1cm以下であった。(乙1・6-7-14~6-7-16頁)ⅴ 降下火砕物の層厚上記検討を踏まえて、上記ⅱの想定される層厚である56cmを本件発電所敷地において考慮する降下火砕物の層厚と評価した。(乙1・6-7-16頁) (b) 降下火砕物の密度及び粒径文献調査結果を参照して、湿潤密度を1.5g/cm3、乾燥密度を0.7g/cm3とそれぞれ設定し、粒径については、本件発電所敷地からの三瓶山火山及び大山火山までの距離を踏まえ、粒径を4.0mm以下と設定した。(乙1・8-1-417頁) (c) 降下火砕物の影響評価の結果上記(a)及び(b)から、降下火砕物は、本件原子炉に影響を及ぼし得る火山事象であると評価した。 b 降下火砕物以外の設計対応可能な火山事象火山性土石流、火山泥流及び洪水、火山から発生する飛来物(噴石)、火山ガ ス、津波及び静振、大気現象(空振)、火山性地震とこれに関連する事象及び熱水系及び地下水の異常については、本件発電所敷地と検討対 石流、火山泥流及び洪水、火山から発生する飛来物(噴石)、火山ガ ス、津波及び静振、大気現象(空振)、火山性地震とこれに関連する事象及び熱水系及び地下水の異常については、本件発電所敷地と検討対象火山との間には火山事象に応じた十分な隔離があること、検討対象火山から本件発電所敷地の方向には、日本海並びに、標高100m以上のほぼ連続して東西に連なる稜線及び宍道湖・中海低地帯がそれぞれ位置していることから、いずれの火山事象も、本件原子炉に影 響を及ぼす可能性は十分小さいと評価した。(乙1・6-7-16~6-7-17頁)(エ) 本件原子炉の火山事象に対する安全性の確保a 直接的影響に対する対策降下火砕物の荷重による影響について、上記(ウ)a(a)ⅱ(ⅱ)の層厚(56c m)を前提に、降下火砕物の荷重により本件原子炉の安全機能が損なわれない設計 - 93 - とすることとした。また、上記層厚及び上記(ウ)a(b)の密度及び粒径等を用いて、降下火砕物による構造物への化学的影響(腐食)、水循環系の閉塞、内部における摩耗及び化学的影響(腐食)、換気系、電気系及び計装制御系に対する機械的影響(閉塞)及び化学的影響(腐食)等の影響によって安全機能が損なわれないように降下火砕物を含む空気の流路となる施設を抽出し、それらの施設について、開 口部を下向きに設置したり、空調換気設備及び非常用ディーゼル発電機に交換又は清掃が可能なフィルタを設置することとした。(乙1・8-1-420~8-1-431頁)b 間接的影響に対する対策降下火砕物による間接的影響として、長期間の外部電源喪失や交通の途絶を想定 し、非常用ディーゼル発電機及びこれを7日間連続で運転するために必要な燃料を貯蔵する施設を本件発電所敷地内に設けた。(乙1 火砕物による間接的影響として、長期間の外部電源喪失や交通の途絶を想定 し、非常用ディーゼル発電機及びこれを7日間連続で運転するために必要な燃料を貯蔵する施設を本件発電所敷地内に設けた。(乙1・8-1-431頁、8-10-1~8-10-15頁)⑵ 検討ア債務者は、前記⑴オのとおり、三瓶山火山について、地理的領域内にある第 四世紀火山のうち完新世以降に活動があったものとして検討対象火山とし、離隔距離などから設計対応不可能な火山事象が本件発電所敷地に影響を及ぼす可能性は十分小さいと評価し、設計対応可能な火山事象のうち降下火砕物について、火山履歴や地球物理学的調査、気象庁及び火山噴火予知連絡会による評価を踏まえて三瓶木次テフラのような広域テフラを降下させる規模の噴火を起こす可能性は十分小さい と評価し、三瓶浮布テフラ噴出時の噴出量を考慮して噴出量を想定した上、火山灰シミュレーションの結果は本件敷地における降灰層厚が最大33.5cmとなったが、文献調査の結果等を踏まえて三瓶山火山を給源とする降下火砕物について、本件発電所敷地において想定される層厚を56cmと評価したところ、これは、現行の火山ガイドの評価の枠組みに沿うものであり、格別不合理な点は見当たらず、合 理的なものと一応認められる。 - 94 - イ債権者らは、現在の火山学の水準では、将来の活動可能性評価は不確実性が大きく、とりわけ、噴火規模を予測することは困難とされていることなどを指摘して、噴火規模を値切ることで火山の影響を小さく評価できるようになってしまった令和元年12月の火山ガイドの改正後の本件除外要件は不合理である旨主張する。 しかし、本件除外要件の内容は、「降下火砕物の噴出源である火山事象が同定で き、これと同様の火山事象が原子力 しまった令和元年12月の火山ガイドの改正後の本件除外要件は不合理である旨主張する。 しかし、本件除外要件の内容は、「降下火砕物の噴出源である火山事象が同定で き、これと同様の火山事象が原子力発電所の運用期間中に発生する可能性が十分に小さい場合は考慮対象から除外する。」というものであり、その内容自体に特段不合理な点は認められず、当該火山事象の発生可能性が十分小さいかどうかという個々の除外要件の判断の当否の問題はあるとしても、旧火山ガイドとの比較において除外される場合が広がる可能性があるというだけで火山ガイドそのものが不合理 となるということはできない。 また、前記前提事実6⑶のとおり、火山ガイドは、審査官が参照するために策定する文書であり、規則や規則の解釈のように規制要求を示すものではないため、火山ガイドの規定に問題があるといって、それを参照してされた安全審査が直ちに不合理となるともいえない。これについては、前記1⑹において述べたところに準じ て、火山ガイドが現在の科学的・技術的知見に照らして合理性を欠き、その結果として火山ガイドを参照してされた安全審査が合理性を欠くことについては、原子炉の運転差止を求める債権者らが主張疎明すべきである。しかるに、本件全資料によっても、本件除外要件を定めたこと自体が不合理であることが債権者らによって疎明されたとはいえない。 債権者らは、債務者が火山ガイドに照らし、三瓶山火山が本件原子炉の運用期間中に三瓶木次テフラのような広域テフラを降下させる規模の噴火を起こす可能性は十分小さいとしたことについて、噴火履歴の検討は恣意的であり、気象庁の観測結果等は原子力発電所の安全評価に利用できない、地下のマグマ溜まりの状況は精度良く把握できないなど、個々の根拠が十分ではない旨主張する。しかし ことについて、噴火履歴の検討は恣意的であり、気象庁の観測結果等は原子力発電所の安全評価に利用できない、地下のマグマ溜まりの状況は精度良く把握できないなど、個々の根拠が十分ではない旨主張する。しかし、個々の根 拠自体に債権者らのいう問題点があるとしても、それらを総合しての判断であるこ - 95 - とに照らすと、全体として合理性のある判断である。たしかに現時点において火山学そのものが十分成熟しているともいえず、債権者らが地下のマグマ溜まりの存在や規模等についての情報の精度について疑問を呈することについては理解できる部分もある。しかし、今後新しい知見が取得され、それが集積されれば、その結果をバックフィット制度によって既存の原子力発電所に適用していくというのが原子炉 等規制法の建付けであり、債権者らの懸念に対する対応についてはそれで充分と思われ、そのような抽象的な懸念があるからといって債権者らの人格権侵害の具体的なおそれがあるとの疎明があるとはいえない。その他、債権者らが提出するその余の資料を精査しても、上記判断が不合理であることの疎明があるとまではいえない。 ウ次に、債権者らは、本件除外要件を適用せず、「原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積当たりの質量と同等の火砕物が降下する」ものとした場合、三瓶木次テフラを生じさせた噴火により本件発電所敷地付近で100cmの降灰が確認されており、同規模の噴火が発生すれば本件発電所敷地に100cmを超える降灰が到達する可能性が高い旨主張する。 しかし、債権者が上記主張の根拠とする甲42・51頁の等層厚線図及びその原原典である乙75(町田洋・新井房夫(2011)「新編火山灰アトラス―日本列島とその周辺」)・86頁の等層厚線図をみると、本件発電所敷地 者が上記主張の根拠とする甲42・51頁の等層厚線図及びその原原典である乙75(町田洋・新井房夫(2011)「新編火山灰アトラス―日本列島とその周辺」)・86頁の等層厚線図をみると、本件発電所敷地及びその周辺は5cmの等層厚線と100cmの等層厚線との間に位置しており、上記各証拠から直ちに三瓶木次テフラを生じさせた噴火と同規模の噴火が発生した際に本件発電 所敷地に100cmを超える降灰が到達するおそれがあると一応認めることはできない。また、前記⑴オ(ウ)a(a)ⅱ(ⅰ)のとおり、債務者が実施した本件発電所敷地を中心とする半径約30kmの範囲における地質調査結果によると、本件発電所敷地は、同テフラの等層厚線10cm程度の範囲に位置しており、債務者が実施した本件発電所敷地内のボーリング調査等では同テフラは確認されていない。これら の調査結果を踏まえると、債権者らが主張するように、本件発電所敷地付近に10 - 96 - 0cmを超える層厚の火砕物が降下するおそれがあると一応認めることはできない。そうすると、この点を理由として、人格権侵害の具体的なおそれを一応認めることもできない。 エ債権者らは、旧火山ガイドは、活動可能性評価には大きな不確実性が存在することから、過去に火砕物密度流などの設計対応不可能な火山事象が到達したこと がある原子力発電所については当該火山のモニタリングを実施し、運転の停止、核燃料の搬出を行うことによって安全を確保するという建付けになっていたが、その後、モニタリングによって噴火の兆候を把握することは困難であることが発覚し、原子力発電所の差止訴訟等においても旧火山ガイドが不合理であるという判断が相次ぐなどした結果、「現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価」す ればよいとし、モニ であることが発覚し、原子力発電所の差止訴訟等においても旧火山ガイドが不合理であるという判断が相次ぐなどした結果、「現在の火山学の知見に照らして現在の火山の状態を評価」す ればよいとし、モニタリングについても個別評価の外側にあるなどとする不合理な改正がされてしまったところ、これらは、基準策定に係る原子力規制委員会の判断の不合理性を基礎づけるものであり、火山ガイドは不合理であるから、本件原子炉は原子炉等規制法が要求する安全の水準に達しているとはいえず、人格権侵害の具体的危険が存在する旨主張する。 しかし、債権者らの指摘する火山ガイドの改正部分(モニタリングに関する部分)は、過去の最大規模の噴火により設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達したと考えられる火山に関するものであり(甲44・10頁)、三瓶山火山に適用されるものではないから、上記改正後の火山ガイド中、モニタリングの位置付けや実施方法等に関する部分に不合理な点があるとしても、本件における人格権侵 害の具体的危険性の有無・程度を左右するものとはいえない。 4 争点4(立地審査指針違反の有無)について⑴ 認定事実(甲67、乙22)ア立地審査指針について「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(立地審査 指針)は、原子力委員会が昭和39年に決定し、原子力安全委員会が平成元年に一 - 97 - 部改訂したものである。立地審査指針は、「基本的考え方」、「立地審査の指針」及び「適用範囲」を示す「原子炉立地審査指針」並びに「原子炉立地審査指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやす」で構成されており、その内容はおおむね次のとおりである。 (ア) 原子炉立地審査指針‐基本的考え方 a 原則的立地条件原子炉は、どこ 地審査指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやす」で構成されており、その内容はおおむね次のとおりである。 (ア) 原子炉立地審査指針‐基本的考え方 a 原則的立地条件原子炉は、どこに設置されるにしても、事故を起さないように設計、建設、運転及び保守を行わなければならないことは当然のことであるが、なお万一の事故に備え、公衆の安全を確保するためには、原則的に次のような立地条件が必要である。 ① 大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろん であるが、将来においても考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。 ② 原子炉は、その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること。 ③ 原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ公衆に対して適切な措置を講 じ得る環境にあること。 b 基本的目標万一の事故時にも、公衆の安全を確保し、かつ原子力開発の健全な発展をはかることを方針として、この指針によって達成しようとする基本的目標は次の3つである。 ① 敷地周辺の事象、原子炉の特性、安全防護施設等を考慮し、技術的見地からみて、最悪の場合には起るかもしれないと考えられる重大な事故(以下「重大事故」という。)の発生を仮定しても、周辺の公衆に放射線障害を与えないこと。 ② さらに、重大事故を超えるような技術的見地からは起るとは考えられない事故(以下「仮想事故」という。)(例えば、重大事故を想定する際には効果を期待し た安全防護施設のうちのいくつかが動作しないと仮想し、それに相当する放射性物 - 98 - 質の放散を仮想するもの)の発生を仮想しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと。 ③ なお、仮想事故の場合にも、集団線量に対する影響が十分に小 れに相当する放射性物 - 98 - 質の放散を仮想するもの)の発生を仮想しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと。 ③ なお、仮想事故の場合にも、集団線量に対する影響が十分に小さいこと。 (イ) 原子炉立地審査指針‐立地審査の指針立地条件の適否を判断する際には、上記の基本的目標を達成するため、少なくと も次の3条件が満されていることを確認しなければならない。 ① 原子炉の周囲は、原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること。ここにいう「ある距離の範囲」としては、重大事故の場合、もし、その距離だけ離れた地点に人がいつづけるならば、その人に放射線障害を与えるかもしれないと判断される距離までの範囲をとるものとし、「非居住区域」とは、公衆が原則として居 住しない区域をいうものとする。 ② 原子炉からある距離の範囲内であって、非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること。ここにいう「ある距離の範囲」としては、仮想事故の場合、何らの措置も講じなければ、その範囲内にいる公衆に著しい放射線災害を与えるかもしれないと判断される範囲をとるものとし、「低人口地帯」とは、著しい放射線災害 を与えないために、適切な措置を講じうる環境にある地帯(例えば、人口密度の低い地帯)をいうものとする。 ③ 原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離だけ離れていること。ここにいう「ある距離」としては、仮想事故の場合、全身被曝線量の積算値が、集団線量の見地から十分受け入れられる程度に小さい値になるような距離をとるものとすること などを定めている。 (ウ) 原子炉立地審査指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやすこの判断のめやすは、原子炉安全専門審査会が、陸上に定置する原子炉の安全審査を行うに当たり、上記指針を適用する際に 定めている。 (ウ) 原子炉立地審査指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやすこの判断のめやすは、原子炉安全専門審査会が、陸上に定置する原子炉の安全審査を行うに当たり、上記指針を適用する際に使用するためのものである。 ① 上記(イ)①にいう「ある距離の範囲」を判断するためのめやすとして、次の 線量を用いること。 - 99 - 甲状腺(小児)に対して1.5Sv、全身に対して0.25Sv② 上記(イ)②にいう「ある距離の範囲」を判断するためのめやすとして、次の線量を考えること。 全身に対して0.25Sv③ 上記(イ)③にいう「ある距離だけ離れていることを判断するためのめやすと して、外国の例(例えば2万人Sv)を用いることを定めている。 イ立地審査指針の位置付け立地審査指針は、平成24年に改正する前の原子炉等規制法24条1項4号(現43条の3の6第1項4号に相当)における「災害の防止上支障がないものであること」の基準を具体的に記載した指針の一つで、「陸上に定置する原子炉の設置に 先立って行う安全審査の際、万一の事故に関連して、その立地条件の適否を判断するためのもの」であり、債務者は、昭和44年11月に本件発電所の1号機の設置許可を受けた際や、昭和58年9月に本件原子炉を増設し、平成11年3月に9×9燃料を採用し、平成20年10月にMOX燃料を採用するに当たりそれぞれ原子炉設置変更許可を受けた際に立地審査指針への適合性について確認した。 ウ新規制基準策定を踏まえた立地審査指針の位置付け福島第一原発事故を契機として新規制基準が策定されるに当たり、立地審査指針については次の考慮・判断がされた。立地審査指針は、新規制基準下でも改廃されていないが、現行の原子炉等規制法43条の3の6第1項4号 一原発事故を契機として新規制基準が策定されるに当たり、立地審査指針については次の考慮・判断がされた。立地審査指針は、新規制基準下でも改廃されていないが、現行の原子炉等規制法43条の3の6第1項4号の委任を受けて原子力規制委員会が制定した設置許可基準規則の規定の内容とされておらず、設置許可 基準規則の解釈においても引用されていない。 (ア) 原則的立地条件①については、設置許可基準規則においては、地盤の安定性や地震等による損傷防止など、自然的条件ないし社会的条件に係る個別的な規定との関係で考慮された。 (イ) 新規制基準策定以前は、原子炉施設を構成する安全上重要な構築物・系 統・機器に係る安全設計審査指針及び原子炉施設全体としての安全設計に係る発電 - 100 - 用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針に加え、設計基準事故より厳しい解析条件を重大事故の想定において設定して立地評価を実施していたが、新規制基準においては、従前、自主的対策にとどまっていた原子炉施設の重大事故等対策が、新たに設置(変更)許可にかかる規制要求事項として追加され、設計基準事故を超える事象の想定をしていた内容が再検討された。原則的立地条件②について は、無条件に原子炉格納容器が健全であることを前提に評価しているとの批判もあったところ、炉心の著しい損傷や原子炉格納容器破損に至りかねない事象を具体的に想定した上で重大事故等対策自体の有効性を評価することがより適切に、「災害の防止上支障がないこと」について判断できると評価され、原則的立地条件②は基準として採用されなかった。 (ウ) 立地審査指針策定時には制定されていなかった原子力災害対策特別措置法等により原子力災害防止対策の強化がなされていること、放射線リスクの社会的影響として、立 として採用されなかった。 (ウ) 立地審査指針策定時には制定されていなかった原子力災害対策特別措置法等により原子力災害防止対策の強化がなされていること、放射線リスクの社会的影響として、立地審査指針における、大人口が極めて低線量の被ばくを受けることを含んだ集団線量の見地に基づいて評価するのは効果的でなく、他方で、長期間にわたって帰還できない地域を生じさせないことが重要であることから、設置許可基準 規則においては、半減期の長い放射性物質であるセシウム137の総放出量を規制することとし、より実効的な規制が行われることとなっており、原則的立地条件③は採用されなかった。 (エ) 上記のとおり、現行の原子炉等規制法の下では、立地審査指針は、同法43条の3の6第1項4号の委任を受けて原子力規制委員会が制定した設置許可基準 規則の規定の内容とされておらず、また、設置許可基準規則の解釈にも引用されていないことから、債務者は、本件設置変更許可申請に際し改めて同指針に基づく公衆との離隔を確認することはしていない。 ⑵ 検討債権者らは、本件原子炉は立地審査指針の離隔要件を満たしておらず、立地不適 であるものの、本件発電所の設置変更許可審査においては、立地審査指針が適用さ - 101 - れなかったために立地不適とされていないが、このような原子力規制委員会の判断は、その判断過程において立地審査指針ないし立地評価を考慮しなかったという意味において看過し難い過誤・欠落があるといえるし、立地審査指針が具体的審査基準としていないのであれば、その策定過程においてそれを考慮しなかったという意味においてやはり不合理である旨主張する。 しかし、もともと立地審査指針は、原子力発電所において重大事故が発生したことを想定した場合でも施 ば、その策定過程においてそれを考慮しなかったという意味においてやはり不合理である旨主張する。 しかし、もともと立地審査指針は、原子力発電所において重大事故が発生したことを想定した場合でも施設周辺の住民や社会環境への影響を最小限にとどめるため、その立地に関し公衆との離隔等に関する原則的立地条件を定め、行政処分である設置許可処分をする際に目安となる指針を定めたものであるのに対し、本件申立ては、債権者らが、個々の人格権に基づき、原子力発電所の重大事故によって自己 の生命、安全等の人格権が侵害されるおそれがあることを請求の根拠とするものであるから、立地審査指針の該当性の有無と債権者らの個別的な人格権侵害のおそれの有無とは直接の関係がなく、立地審査指針の趣旨からみて、これに該当しないからといって個々の債権者らの人格権侵害のおそれが推認される関係にもないものである。そうすると、立地審査指針を審査基準とすることの当否について検討するま でもなく、上記の債権者らの主張はそれ自体失当である。しかも、新規制基準の下では、立地審査指針は原子炉等規制法43条の3の6第1項4号に基づく審査基準とはされていないから、安全審査においてこの点を考慮しなかったことから、直ちにその判断過程に看過し難い過誤・欠落があるとはいえないし、立地審査指針が具体的審査基準とされなかった理由は上記のとおりであり、これについて特段不合理 な点はうかがわれず、また、債権者らによってその不合理性が主張疎明されたということもできない。 5 争点5(原子力災害対策指針の合理性及び避難計画の実効性)について⑴ 債権者らは、原子力災害対策指針は不合理であり、また、県や市町の定める避難計画は実行性がないから、深層防護の第5の防護レベルが欠落し又は不十分で あり、債 及び避難計画の実効性)について⑴ 債権者らは、原子力災害対策指針は不合理であり、また、県や市町の定める避難計画は実行性がないから、深層防護の第5の防護レベルが欠落し又は不十分で あり、債権者らの人格権侵害の具体的危険が存在する旨主張する。 - 102 - しかし、債権者らが主張する人格権侵害の危険は、本件原子炉において異常な水準で放射性物質が本件発電所敷地外に放出されるような重大な事故が発生した場合に、実効性を欠く避難計画の下に困難な避難を強いられることにより、上記事故により放出された放射性物質による放射線に被ばくする危険があるというものであるから、上記事故が発生する具体的危険性があることがその前提となっているという べきである。しかるに、これまで検討してきたところに照らすと、上記事故が発生する具体的危険性について疎明があったということはできない。そうすると、債権者らの上記主張は、上記の前提を欠くものといわざるを得ない。 ⑵ 債権者らは、平成24年改正後の原子力関連法令等の下では、深層防護の第1から第5の防護レベルがいずれも独立して有効に機能することが確保されている ことが要求されており、それがあって初めてその発電用原子炉施設は同法の要求する安全水準に達しているといえるから、深層防護の第5の防護レベルについて、災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法の要求する措置が講じられていないあるいは不十分である場合にも人格権侵害の具体的危険が存在する旨主張する。 しかし、深層防護の考え方において、各々の障壁が独立して有効に機能すること が求められるのは、あえて各々を独立した対策として捉え、各段階における対策がそれぞれ充実した十分な内容となることを意図したものであると解され、深層防護の第5の防護レベルに相当す 機能すること が求められるのは、あえて各々を独立した対策として捉え、各段階における対策がそれぞれ充実した十分な内容となることを意図したものであると解され、深層防護の第5の防護レベルに相当する措置が講じられていないあるいは不十分であるといった場合に、直ちに異常な水準で放射性物質が本件発電所敷地外に放出されるような重大な事故が発生する具体的な危険性があると扱うべきことまで要求するもので あるとは解されない。 よって、深層防護の第5の防護レベルについて、災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法の要求する措置が講じられていないあるいは不十分であることのみを根拠として人格権侵害の具体的危険が存在するとする債権者らの主張は採用できない。 第7 結論 - 103 - 以上によれば、本件原子炉において異常な水準で放射性物質が本件発電所敷地外に放出されるような重大な事故が発生する具体的な危険性があることの疎明があるとはいえず、被保全権利の疎明があるとはいえないから、保全の必要性について判断をするまでもなく、債権者らの本件仮処分命令申立ては理由がない。よって、本件申立てをいずれも却下することとし、主文のとおり決定する。 令和6年5月15日広島高等裁判所松江支部 裁判長裁判官松谷佳樹 裁判官徳井 真 裁判官森里紀之

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