平成18(ネ)756 配当異議の訴え控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月15日 福岡高等裁判所 棄却 福岡地方裁判所 平成17(ワ)2572
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判決文本文6,441 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴人(1)原判決を取り消す。 (2)福岡地方裁判所が同庁平成15年(ケ)第662号不動産競売事件につき作成した平成17年9月22日付け配当表のうち,被控訴人に対する配当実施額579万0170円を173万0310円に,控訴人に対する配当実施額0円を405万9860円にそれぞれ変更する。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 被控訴人主文同旨第2事案の概要等 事案の要旨,,本件は根抵当権に基づく不動産競売事件において作成された配当表に関し複数の被担保債権うちの1個についての連帯保証人であり,これを元本の確定後に代位弁済した控訴人が,同じく元本の確定後に根抵当権者(債権者)から他の被担保債権を譲り受けた被控訴人に対し,被担保債権の1個について全部弁済したことにより代位した者は,債権者との間で根抵当権を同順位で準共有するものと解すべきであると主張して,この場合に債権者が代位弁済者に優先して弁済を受けられることを前提に作成された配当表における被控訴人に対する配当実施額の変更を求めた事案である。 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(甲1ないし4,5の1及び 2,6の1及び2,17,20,乙1,2,5)及び弁論の全趣旨によって認めることができる。 ,,,( )は平成2年2月20日原判決別紙物件目録記載1の土地について A(「」。),株式会社福岡中央銀行以下福岡中央銀行というを根抵当権者とし債務者をとする極度額2400万円(債権の範囲は,銀行取引,手形債A権,小切手債権)とする根抵当権を設定し,その旨の登記手続(福岡法務局甘木支 銀行以下福岡中央銀行というを根抵当権者とし債務者をとする極度額2400万円(債権の範囲は,銀行取引,手形債A権,小切手債権)とする根抵当権を設定し,その旨の登記手続(福岡法務局甘木支局平成2年2月23日受付第2136号)がされた。 ,,,( )は平成4年4月14日原判決別紙物件目録記載2の土地について A福岡中央銀行を根抵当権者とし,債務者をとする極度額2400万円A(債権の範囲は,銀行取引,手形債権,小切手債権)とする根抵当権を設定し,その旨の登記手続(福岡法務局甘木支局平成4年4月14日受付第4886号)がされた(以下,上記2つの根抵当権を併せて「本件各根抵当権」という。 。),(,( )本件各根抵当権の債務者は平成6年12月27日に及びB社なお Aは,同社の代表取締役であった)に変更され,その旨の登記手続(福岡A。 法務局甘木支局平成6年12月28日受付第16522号)がされた。 ( )は,平成9年9月25日,福岡中央銀行との間で,本件各根抵当権の A極度額を4800万円に変更する旨合意し,その旨の登記手続(福岡法務局甘木支局平成9年9月26日受付第11094号)がされた。 ( )B社は,平成13年5月2日,福岡中央銀行から,4100万円を借り 入れ(以下「本件消費貸借」という,同日,及び控訴人がこれを連帯保。)A証した。 なお,本件消費貸借に係る金銭消費貸借契約証書(甲1)には,第4条④項に「保証人が保証債務を履行した場合,代位によって貴行から取得した権利は,債務者と貴行との取引継続中は貴行の同意がなければ,これを行使しません。もし貴行の請求があれば,その権利または順位を貴行に無償で譲渡 します」という約定(以下「本件約定」という)がある。 。 。 ( ) と貴行との取引継続中は貴行の同意がなければ,これを行使しません。もし貴行の請求があれば,その権利または順位を貴行に無償で譲渡 します」という約定(以下「本件約定」という)がある。 。 。 ( )B社は平成14年1月17日破産宣告福岡地方裁判所平成14年(フ) ,,(第1号)を受け,本件消費貸借について期限の利益を喪失するとともに,本件各根抵当権が担保すべき元本が確定した。 なお,確定した被担保債権には,控訴人が連帯保証した本件消費貸借の残金(2166万0942円。ただし,平成16年4月8日現在)のほか,2つの債権福岡県信用保証協会が連帯保証していた4224万0561円た((,)(,だし平成14年4月25日現在の債権及び833万3494円ただし平成16年12月29日現在)の債権)があった。 ( )福岡県信用保証協会は,平成14年4月25日,福岡中央銀行に対し, 4224万0561円を代位弁済し,本件各根抵当権の一部移転の付記登記を受けた。 ( )福岡中央銀行は,本件各根抵当権に基づいて福岡地方裁判所に不動産競 売を申し立て,平成15年6月30日,競売開始決定がされた(福岡地方裁判所平成15年(ケ)第662号。 )( )控訴人は,平成16年4月8日,福岡中央銀行に対し,保証債務の履行 として本件消費貸借の残債務全額である2166万0942円を代位弁済し,本件各根抵当権の一部移転の付記登記(福岡法務局甘木支局平成16年9月28日受付第6867号)を受けた。 ()被控訴人は,平成16年12月29日,福岡中央銀行から,同銀行がB 社に対して有する債権(上記( )記載の833万3494円の債権)の譲渡 を受けた。 ()福岡地方裁判所は,平成17年9月22日,本件各根抵当権に基づく上 記不動 行から,同銀行がB 社に対して有する債権(上記( )記載の833万3494円の債権)の譲渡 を受けた。 ()福岡地方裁判所は,平成17年9月22日,本件各根抵当権に基づく上 記不動産競売事件に関し,手続費用額59万9830円,被控訴人の被担保債権額1065万5816円(うち元本689万3544円,損害金376万2272円)であるところ,申立債権者である被控訴人に対して配当実。 施額639万円全額を配当し,控訴人を含むその余の債権者に対する配当額()(「」。)。 はないとする内容の配当表甲17を作成した以下本件配当という()控訴人は,同日の配当期日において,被控訴人に対する配当額(手続費 用を除く)を控訴人と被控訴人で各債権額に応じて案分して配当すべきで。 ある旨の異議を申し出た。 争点 本件の争点は,上記事実関係において,配当実施額全額を被控訴人に配当すべきものとした本件配当の当否であるが,これに関する当事者双方の主張は次のとおりである。 (控訴人の主張)( )本件は,1個の抵当権が複数の債権を担保し,このうち1個の債権のみ についての保証人が,その債権全額を弁済した場合と同列に論ずるべきであり,民法502条1項ではなく,同法501条1号により,抵当権を準共有する場合として処理されるべきである。この点について,最高裁平成17年1月27日第一小法廷判決(民集59巻1号200頁)は,不動産を目的とする1個の抵当権が数個の債権を担保し,そのうちの1個の債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額について代位弁済した場合に,抵当不動産の換価による売却代金が被担保債権の全てを消滅させるに足りない場合,債権者と保証人は,両者間に上記売却代金からの弁済の受領についての特段の合意がない限り,上記売 ついて代位弁済した場合に,抵当不動産の換価による売却代金が被担保債権の全てを消滅させるに足りない場合,債権者と保証人は,両者間に上記売却代金からの弁済の受領についての特段の合意がない限り,上記売却代金につき,債権者が有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて案分して弁済を受けるものと解すべきである旨判示している。本件は,根抵当権の事案であるが,元本確定後に代位弁済した保証人と債権者との関係は,普通の抵当権の場合と同様であり,代位した保証人の債権と債権者の残存債権とが極度額の価値枠で共に担保される関係にあるから,その間に優劣の問題は生じないと解される。したがって,上記判例は本件についても妥当するというべきである。 ( )被控訴人の本件約定に基づく主張は,以下の事情から,信義に反し失当 というべきである。 ア福岡中央銀行は,控訴人代理人(控訴人訴訟代理人と同じ)との間で。 4か月余りにもわたり交渉を行った末,同銀行の有する根抵当権の一部移転に応じ,控訴人の代位による権利行使を承認している。また,その交渉を通じて,同銀行は,本件約定について全く言及することはなかった。 イ福岡中央銀行は,本件約定に基づく権利・順位の無償譲渡の請求をしたことがない。 ウ福岡中央銀行は,連帯保証人である控訴人に対して,抵当不動産の処分ないし競売によって,不利益を受けることがない旨の説明を繰り返し行っている。 エ本件約定の意味内容は,一義的に明らかではなく,控訴人に対する内容説明を欠いているうえ,本来,本件約定が適用されるのは,保証債務の一部を履行した場合であると解すべきであるから,本件には適用がないというべきである。 (被控訴人の主張)( )本件は,1個の抵当権が1個の被担保債権を担保し,その債権を保証し ている保証人が債権 部を履行した場合であると解すべきであるから,本件には適用がないというべきである。 (被控訴人の主張)( )本件は,1個の抵当権が1個の被担保債権を担保し,その債権を保証し ている保証人が債権額の一部を代位弁済したときと同様に,民法502条1項により,債権者が保証人に優先して満足を受けられると解されるから(最高裁昭和60年5月23日第一小法廷判決・民集39巻4号940頁,同昭),和62年4月23日第一小法廷判決・金融法務事情1169号29頁参照本件では,被控訴人が控訴人に優先して満足を受け得るというべきである。 債権者は,根抵当権により複数の被担保債権につき担保を得た以上,根抵当権の効力として被担保債権は担保価値に満つるまで保全されている。被担保債権の一つについて根抵当権に重ねて保証を得た場合で,保証人から代位弁済を受けたことにより,保証されていない残債権について,担保価値を保証 人と債権者が案分しなければならないとしたら,保証を受けたことによる期待に全く反する。債権者としては,保証人の弁済によって未だ満足を得ていないのである。 (2)福岡中央銀行及びその地位を承継した被控訴人は,控訴人が代位弁済によって取得した権利の行使について同意していないから,本件約定により,被控訴人が控訴人に優先して満足を受けられるというべきである。 また,被控訴人は,本件約定に基づき,控訴人に対し,控訴人が代位により取得した権利の無償譲渡を請求する。したがって,控訴人は,代位によって取得した権利を行使することができない。 第3当裁判所の判断 不動産を目的とする1個の根抵当権が,元本の確定後において数個の債権を担保しており,そのうちの1個の債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合,根抵当権の実行による売却代金の配当に とする1個の根抵当権が,元本の確定後において数個の債権を担保しており,そのうちの1個の債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合,根抵当権の実行による売却代金の配当について,債権者(根抵当権設定時の債権者から元本確定後に被担保債権を譲り受けてその地位を承継した者を含む)は代位弁済者に優先すると解するのが。 相当である。理由は以下のとおりである。すなわち,弁済による代位は代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するための制度であり,代位弁済者が債権者の有していた担保権を行使するに当たっては,それが当該担保権を取得した当初の債権者の意思に反する結果とならないことが要請されるというべきである。上記の場合は,1個の抵当権が数個の債権を担保しており,そのうちの1個の債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合(最高裁平成17年1月27日第一小法廷判決・民集59巻1号200頁参照)とは異なり,担保権の内容が一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保することを目的とした根抵当権であることから,その元本の確定後に極度額に満たないそのうちの1個の債権について弁済を受けたとしても,極度額の限度で優先弁済を受けるという根抵当権の目的は 達せられたとはいえず,債権者はいまだ完全な満足を得ていない状態にある。 また,1個の抵当権が数個の債権を担保する場合には,債権者は,抵当権設定契約時から当該抵当権が特定の数個の債権を担保する関係,すなわち実質的には各被担保債権はその割合に応じて担保不動産の価値を把握しているにとどまることを具体的に認識できるから,その上で他に保証契約等を締結する必要があるか,又は既に締結した保証契約等の存在を前提に抵当権設定の要否,内容等を検討することが可能であ の価値を把握しているにとどまることを具体的に認識できるから,その上で他に保証契約等を締結する必要があるか,又は既に締結した保証契約等の存在を前提に抵当権設定の要否,内容等を検討することが可能であるが,他方,根抵当権の場合には,設定契約時において被担保債権は特定されておらず,元本の確定時にいかなる被担保債権が特定されるかは偶然の事情に左右されるのであるから,たまたまそのうちの1個の債権のみについて保証人が存在しており,その者が当該債権の残債務全額につき代位弁済した場合に,保証人であった代位弁済者が債権者と同順位で案分弁済を受けるということは,債権者が根抵当権を設定した当時において必ずしも予定していた事態とはいい難い。したがって,この場合は代位弁済者よりも債権者を優先させることが要請されるというべきであり,抵当権の被担保債権の一部についての代位弁済者と債権者の優劣が問題とされた最高裁昭和60年5月23日第一小法廷判決(民集39巻4号940頁)の事案の場合と同様に,債権者が代位弁済者に優先すると解するのが相当である。 これを本件についてみると,控訴人は,本件各根抵当権の被担保債権の1個について連帯保証人となり,その元本の確定後に債権者であった福岡中央銀行に対して,残債務全額を代位弁済したものであり,他方,被控訴人は,本件各根抵当権の被担保債権のうち控訴人が連帯保証したものと異なる債権をその元本の確定後に譲り受けて債権者である福岡中央銀行の地位を承継した者であるから,本件各根抵当権の実行による売却代金の配当について,被控訴人は,控訴人に優先して配当を受けることができるというべきである。そうすると,本件配当が,これと同様の見解に立って,申立債権者である被控訴人に対して,手続費用59万9830円及び被控訴人の被担保債権額1065万5816円 配当を受けることができるというべきである。そうすると,本件配当が,これと同様の見解に立って,申立債権者である被控訴人に対して,手続費用59万9830円及び被控訴人の被担保債権額1065万5816円 の範囲で,これに満たない配当実施額639万円全額を配当することとし,被控訴人に劣後する控訴人には配当しないものとしたのは相当である。 以上のとおりであり,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求は理由がないから,これを棄却した原判決は相当である。よって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第5民事部裁判長裁判官寺尾洋裁判官前川高範裁判官伊丹恭

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