令和6(わ)831 道路運送車両法違反、過失運転致傷事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月24日 札幌地方裁判所
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判決文本文4,790 文字)

令和7年4月24日宣告令和6年(わ)第831号判決被告人Aに対する道路運送車両法違反、過失運転致傷、被告人Bに対する道路運送車両法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官園麻美、被告人Aの私選弁護人中村浩士(主任)、同瀧澤諒、被告人Bの私選弁護人上村真太朗(主任)及び同中村純弥各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人Aを懲役3年に、被告人Bを罰金20万円に処する。 被告人Aに対し、この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 被告人Bにおいて、その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人両名は、共謀の上、令和5年10月28日、札幌市a区bc番地d所在の被告人B管理の敷地内において、有効な自動車検査証の交付を受けている被告人B所有の軽自動車(車台番号××○○×-○○○○○○)について、かねて車軸にワイドトレッドスペーサーを装着していた同車にホイール付きマッドタイヤを装着するなどの方法により、左前輪タイヤを約2.2センチメートル、右前輪タイヤを約3.5センチメートル、左右後輪タイヤを約2.5センチメートルそれぞれ突出させて装着し、タイヤ回転部分が突出する改造をし、もって当該自動車が保安基準に適合しないこととなるものを行った。 第2 被告人Aは、同年11月14日午後1時10分頃、同区ef丁目g番先の被告人B方敷地内において、かねて前記第1記載の軽自動車(普通乗用自動車)を運転中にその前輪の足回りに異常を感じていた同人から、その異常を伝えられるとともに、同車の点検を依頼された。このとき、同車は左前車軸に装着されたワ イドトレッドスペーサーの (普通乗用自動車)を運転中にその前輪の足回りに異常を感じていた同人から、その異常を伝えられるとともに、同車の点検を依頼された。このとき、同車は左前車軸に装着されたワ イドトレッドスペーサーのハブボルトと左前輪タイヤの締結に用いるホイールナットが適切に締められていない状態であったところ、被告人Aは、前記第1記載のとおりタイヤ回転部分が突出する改造が施された同車につき被告人Bから前記異常を伝えられたのであるから、同車の運転を差し控えるべきはもとより、同車を運転するのであれば、走行中にタイヤを脱落させることがないよう、各タイヤのホイールナットに緩み等がないか、目視及び点検ハンマなどを使用して点検した上で運転をすべき自動車運転上の注意義務があった。しかし、被告人Aは、これを怠り、その頃から同日午後1時33分頃までの間、同所から前記第1記載の前記被告人B管理の敷地内、同敷地周辺の土地内及び前記被告人B管理の敷地内を順次経由し、同区hi丁目j番先路上に至るまでの間において、前記点検をすることなく、前記左前輪タイヤに係るホイールナットの緩みに気付かないまま、漫然と同車の運転を繰り返し、かかる過失により、その頃、同路上をk方面からl方面に向かい時速約54ないし68キロメートルで進行中、同タイヤを脱落させて同所左側歩道に同タイヤを逸走させ、折から同区mn丁目о番先歩道上をl方面からk方面に向かい歩行していたC(当時4歳)に同タイヤを衝突させて同歩道上に転倒させ、よって、同人に回復見込みのない呼吸筋を含む四肢体幹の完全麻痺を伴う頚髄損傷等の傷害を負わせた。 (量刑の理由) 1 まず被告人両名に共通する判示第1についてみると、タイヤの突出は、タイヤが車体等と干渉したり、タイヤで歩行者を巻き込むおそれが高くなったりするなど、不正改造の中でも事故の危 (量刑の理由) 1 まず被告人両名に共通する判示第1についてみると、タイヤの突出は、タイヤが車体等と干渉したり、タイヤで歩行者を巻き込むおそれが高くなったりするなど、不正改造の中でも事故の危険性を高める部類の改造である上、被告人両名は、タイヤを4本とも明らかに違法と分かる状態にまで突出させており、相応に悪質である。 これを踏まえて被告人Bの刑を量定すると、同被告人は、本件車両の使用者かつ所有者であり、自らの趣味嗜好のため本件改造を企て、部品等を購入するとともに、自己が営む事業の従業員である被告人Aに協力を求めて改造を主導したものであり、タイヤの実際の取付け役を特定しないとの検察官の主張を踏まえても、負うべき責 任は大きい。しかし、前科はなく、規範意識の甘さを悔いて反省の弁を述べていることを考慮し、主文の罰金刑に処することとする。 2 検討を要するのは、被告人Aの量刑である。 ⑴ 判示第1において、被告人Aは、車の整備の豊富な知識・経験を見込まれて被告人Bから改造の依頼を受けたものではあるが、同犯行の際に被告人Aがした作業として認定できるのはタイヤをホイールに装着して被告人Bに渡したことまでであって、タイヤ突出の中核を担ったとはいい難い。 ⑵ 次に、判示第2についてみると、被告人Aは、判示のとおり被告人Bから本件車両の足回りに異常があると聞かされていただけでなく、一般にワイドトレッドスペーサーを装着した車両は部品の影響でホイールナットが緩みやすいとの認識も有していたのであり、かつ、本件車両のワイドトレッドスペーサーは自らが装着したのであるから、本件事故当日、ホイールナットに不具合がある可能性に思い至り、運転を控えた上で、その点検義務を果たすことは容易であったはずである。かつ、被告人Aは、被告人Bと共に本件車両に種々改造を施し であるから、本件事故当日、ホイールナットに不具合がある可能性に思い至り、運転を控えた上で、その点検義務を果たすことは容易であったはずである。かつ、被告人Aは、被告人Bと共に本件車両に種々改造を施したことによって、異常に気付きづらい車両となっているとの認識も有していたのであるから、走行に当たって十分な安全性を担保すべく、上記点検をすべき高い注意義務を負っていたといえ、以上を怠り漫然と運転した過失は悪質である。 その結果、いまだ幼く未来ある被害者が受けた判示の傷害は非常に重大で、全く落ち度のない被害者が、意識が戻る見込みがないと診断され、意思疎通できないという理不尽な状況にあり、父親の意見陳述等で明らかなように、被害者家族が峻烈な処罰感情を有することも当然である。 もっとも、広く本件事故の原因をみると、そもそも被告人Aが判示第2の運転をする前に、本件車両左前輪タイヤのホイールナット(以下「本件ホイールナット」という。)の締付けが緩んでいたことに根本的な原因があった。そして、検察官も同タイヤを取り付けてホイールナットの締付けを行ったのが被告人Aであるとは主張しておらず、その立証に照らしてもそれが同被告人であったとは認定し難い。す なわち、本件事故直後に保全された本件車両を検証した結果等に照らすと、本件車両は後輪のホイールナットが過剰に締め付けられ、他方、前輪のそれは締め付けが甘かったものと認められるところ、被告人Aは、自分がホイールナットを締める場合、過去に自動車整備の仕事もしていた長年の経験から、まずナットとボルトに損傷がないか感覚で確認するとともにナットを締め過ぎて損傷しないよう、手でナットを回せるところまで回し、その後インパクトレンチを使って締め、更に規定トルク値まできちんと締まるようにトルクレンチを使って締めるように必ずしてお るとともにナットを締め過ぎて損傷しないよう、手でナットを回せるところまで回し、その後インパクトレンチを使って締め、更に規定トルク値まできちんと締まるようにトルクレンチを使って締めるように必ずしており、本件車両のホイールナットのような締め方になるはずがない旨、自己が本件ホイールナットの締付けを行っていないことにつき一定の具体的かつ合理的な根拠をもって述べている。これに対し、被告人Bは、本件不正改造時に自己が果たした役割について捜査段階から小出しに供述を変遷させていること等からすると、前輪の取付けはしていない旨の同被告人の供述はにわかに信用できず、被告人Bが本件ホイールナットを付けた可能性は排斥できない。さらに、判示第1から第2までの間、被告人Bが数回にわたり悪路を含む場所で本件車両を走行させたことも認められ、この運転が本件ホイールナットの緩みを助長した可能性も否定できない。そして、本件ホイールナットの緩みは、一次的には同車両の所有者である被告人Bの責任で点検すべきものであることからすれば、被告人Bが被告人Aに本件車両の点検を依頼したことを考慮しても、本件事故時における本件ホイールナットの緩みにつき、最後にこれを看過して運転した被告人Aばかりを大きく責めることは難しい(なお、各検証結果等によれば、本件事故時にタイヤが脱落したのは本件ホイールナットの緩みが原因であって、判示第1の改造やそれ以前に被告人Aが行ったワイドトレッドスペーサー等の取付け自体は直接的な原因ではない。)。 加えて、被告人Aは、被告人Bから前記異常を伝えられた後、直前に自己が改造を施したフロントロアアームやステアリングダンパー等の確認はしており、点検に対して無関心だったわけではない上、これまでに判示第1と同様の改造をした際にホイールナットが緩んだ経験がなかったこと等から を施したフロントロアアームやステアリングダンパー等の確認はしており、点検に対して無関心だったわけではない上、これまでに判示第1と同様の改造をした際にホイールナットが緩んだ経験がなかったこと等からすれば、自身がした上記改造に 異常の原因があるのではないかと思い込んで本件ホイールナットの点検をしなかったという懈怠が、厳しく非難されてしかるべきとまではいえない。 なお、検察官は、被告人Aが整備業経験者で知識を有することを指摘するが、被告人Aは本件車両の点検に業務として応じていたのではないから、本件において同被告人に特別に高度な注意義務があったというのは相当ではない。以上から、被告人Aの過失を重大とまで評価することにはいささか躊躇を覚える。 また、本件車両は任意保険がかけられていないため、十分な被害弁償は現時点では見込まれていないが、これも本来責められるべきは同車両の所有者たる被告人Bである上、被告人Aは入院費用等の実費のうち約200万円を支払っている。 ⑶ 以上からすると、同種事案の量刑傾向を踏まえても、被告人Aに係る犯情が実刑が避けられないようなものとまではいえない。 ⑷ さらに、被告人Aは交通事犯の前科4犯を有し、とりわけ本件の五、六年前に無免許運転等を繰り返した点は、自動車運転に対する規範を軽視する姿勢として無視できないが、その処罰は罰金刑にとどまっているし、本件につき自己の過ちを認め、今後自動車の運転をしないと誓うなど、自らの行動を反省する態度が認められる。 そうすると、被告人Aに対して実刑を科すほかないとまではいえないから、主文のとおりの刑を量定した上で、法が定める最長期間、その刑の執行を猶予することとする。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑被告人Aにつき懲役3年の実刑、被告人Bにつき罰金20万円)令和7年 主文 のとおりの刑を量定した上で、法が定める最長期間、その刑の執行を猶予することとする。よって、主文のとおり判決する。(求刑被告人Aにつき懲役3年の実刑、被告人Bにつき罰金20万円)令和7年4月24日札幌地方裁判所刑事第3部 理由 裁判長裁判官渡邉史朗 裁判官加島一十 裁判官畑中胡春

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