- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告は,Aに対し3億2226万8895円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。 被告は,Bに対し,3億3865万6709円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。 第2事案の概要 本件は,大阪市の住民等である原告らが,大阪市長の職にあったA及びBが,10年以上勤続して退職した職員について一律に退職時に特別昇給を行ったことが職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号。平成17年大阪市条例第20号による改正前のもの。以下「給与条例」という。)に違反し違法であり,同市はAらの違法行為によって当該特別昇給に基づいて支出された退職手当(増加分)相当額の損害を被ったなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,大阪市長である被告に対し,上記損害のうち平成15年3月24日以後に退職時特別昇給に基づく退職手当の支給を受けたものに係る損害及び平成15年度に退職時特別昇給に基づく退職手当の支給を受けたものに係る損害中住民監査請求に基づく監査委員の勧告を受けて第三者弁済により補填された部分を除いた部分について,Aに対し同人の決定した特別昇給に係る分の損害賠償として3億2226万8895円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を,Bに対し同人の決定した特別昇給に係る分の損害賠償として3億3865万6709円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払をそれぞれ求めた事案である。 法令の定め- 2 - 昇給に係る分の損害賠償として3億3865万6709円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払をそれぞれ求めた事案である。 法令の定め- 2 -(1)職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号。平成17年大阪市条例第20号による改正前のもの。給与条例)は,地方公務員法24条6項の規定に基づき職員の給与に関する事項を定めることを目的として制定された条例である(1条)ところ,給与条例5条(初任給及び昇給等の基準)5項は,「職員が現に受けている号給を受けるに至ったときから,12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは,1号給上位の号給に昇給させることができる。ただし,第2項又は第3項の規定により号給が決定された場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,市規則の定めるところにより,12月の期間を短縮することができる。」旨規定し,同条6項は,「職員の勤務成績が特に優秀である場合その他市長が特に必要と認めた場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,又はその現に受けている号給より上位の号給に昇給させることができる。」旨規定している。 (2)国家公務員法2条に規定する一般職に属する職員の給与に関する事項を定めた一般職の職員の給与に関する法律(平成17年法律第113号による改正前のもの。以下同じ。以下「給与法」ということがある。)8条6項は,「職員(指定職俸給表の適用を受ける職員を除く。)が現に受けている号俸を受けるに至った時から,12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは,1号俸上位の号俸に昇給させることができる。ただし,第3項又は第4項の規定により号俸が決定された場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,人事院規則の定めるとこ 好な成績で勤務したときは,1号俸上位の号俸に昇給させることができる。ただし,第3項又は第4項の規定により号俸が決定された場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,人事院規則の定めるところにより,当該期間を短縮することができる。」旨規定し,同条7項は,「職員の勤務成績が特に良好である場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,若しくはその現に受ける号俸より2号俸以上上位の号俸まで昇給させ,又はそのいずれをもあわせ行うことができる。」旨規定している。 (3)人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準。平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号は,勤務成績の特に良好な職員が「20年以上勤続して退職する場合」には,「給与法第8条第6項若しくは第9項- 3 -本文又は第35条の規定にかかわらず,上位の号俸(第3号又は第4号の規定により昇給させる場合にあっては,直近の上位の号俸)に昇給させることができる。」旨規定している。 前提事実(1)原告Cは大阪市の住民であり,原告D株式会社は大阪市に本店が所在する株式会社である。 (2)Aは,Bが大阪市長に就任するまで大阪市長の職にあった者であり,Bは,平成15年12月19日から大阪市長の職にある者である。なお,Bは大阪市長に就任する前は大阪市の助役の職にあった。 (3)大阪市においては,昭和37年から,給与条例5条6項所定の「市長が特に必要と認めた場合」の基準として,定年又は定年に準じる事由で退職する職員に係る特別昇給についての基準をその都度決裁により定めてきた。当該基準の内容は,具体的には,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で10年以上勤続したもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日を超えて退職する場 により定めてきた。当該基準の内容は,具体的には,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で10年以上勤続したもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日を超えて退職する場合で10年以上勤続したもの,である(以下,この基準を「本件昇給基準」という。)。そして,大阪市においては,教育委員会所管の学校に勤務する教員等を除く職員の定年退職及び定年に準ずる事由による退職(早期退職及び希望退職等)について,給与条例5条6項所定の「市長が特に必要と認めた場合」の適用として,10年以上勤続した者に対して特別昇給を実施する旨の市長決裁がされ,教育委員会所管の学校に勤務する教員等については,同項の適用として,20年以上勤続して定年退職する者に対して特別昇給を実施する旨の教育長決裁がされていた(甲2。なお,この教員等についての扱いは,府費負担教員等との均衡を考慮したものである。以下,大阪市におけるこれらの退職時特別昇給の取扱いを「本件退職時特別昇給」という。)。 (4)平成14年度に大阪市を退職した職員は1597人であって,そのうち本件退職時特別昇給に基づく退職手当の支給を受けたものは1172人であり,また,- 4 -当該1172人のうち平成15年3月24日以後に当該退職手当の支給を受けたものは1121人であった。 上記1121人の職員についての本件昇給基準はAが市長として定めたものであり,本件退職時特別昇給に基づく退職手当の支給を行ったことによる退職手当支給額の増加額は3億1429万6040円である(乙3)。 なお,上記1121人の内訳は,定年退職が867人,早期退職が202人,希望退職等が52人であり,この中に勤続年数10年以上20年未満の退職者が3人,勤続期間中に懲戒処分を受けた者が10人含まれていた。 (5)平成15年度 は,定年退職が867人,早期退職が202人,希望退職等が52人であり,この中に勤続年数10年以上20年未満の退職者が3人,勤続期間中に懲戒処分を受けた者が10人含まれていた。 (5)平成15年度に大阪市を退職した職員は1813人であって,そのうち本件退職時特別昇給に基づく退職手当の支給を受けたものは1292人であった。 上記1292人の職員のうち51人の職員についての本件昇給基準はAが市長として定めたものであり,1241人の職員についての本件昇給基準はBが市長として定めたものである。 本件退職時特別昇給に基づく退職手当の支給を行ったことによる退職手当支給額の増加額は,上記51人の職員に関する部分が1271万2093円,上記1241人の職員に関する部分が3億4102万6692円である(乙3)。 なお,上記1292人の内訳は,定年退職が975人,早期退職が202人,希望退職等が115人であり,この中に勤続年数10年以上20年未満の退職者が4人,勤続期間中に懲戒処分を受けた者が7人,勤怠不良により退職手当の減額措置を受けた者が3人含まれていた。 (6)原告らは,平成16年3月24日,本件退職時特別昇給は勤務成績が特に優秀であることを認定するための検討や作業もなくほぼ全員一律に実施されてきたが,市長にとっては職員管理上有効であるとか,職員にとっては長年の勤労への当然の報償であるといった考え方は地方公務員法及び給与条例が本来予定している特別昇給の理由とはならず,本件退職時特別昇給は違法,不当な決定で,これに基づく退職金の支給も違法,不当であり,これによって大阪市は平成13年度は3億3- 5 -632万9355円,平成14年度は2億9832万0387円の損害を被っているなどとして,Aら職員に上記損害の賠償,填補を勧告するとともに大阪市長(B)に て大阪市は平成13年度は3億3- 5 -632万9355円,平成14年度は2億9832万0387円の損害を被っているなどとして,Aら職員に上記損害の賠償,填補を勧告するとともに大阪市長(B)に対し平成15年度末の退職者について本件退職時特別昇給に基づく退職手当の支給(3億4458万1302円の支出)の差止めを勧告することを求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした(甲1)。 (7)大阪市監査委員は,本件監査請求に対し,監査の対象を支出日から1年を経過していない平成14年度及び平成15年度の定年退職時等における特別昇給(本件退職時特別昇給)及びそれに係る支出とした上,本件退職時特別昇給の適用基準については,給与条例5条6項に基づくものとして,10年以上勤続して定年退職等した者と設定しているが,国が定める20年以上勤続の要件に該当しない者に対する適用については合理性を欠くものであり,また,勤続期間中に懲戒処分を受けた者及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者に対する適用について,その事実を考慮することなく,「勤務成績が特に優秀である場合」と同等の評価を得るものと設定していた取扱いは,不適正なものであり,これらについては大阪市の損害と認められるなどとして,本件退職時特別昇給が適用されて支出された退職手当のうち20年以上勤続に満たない者7名に対する本件退職時特別昇給に基づく支出105万6246円については当該昇給の決定権者から損害の補填がされるよう措置を講じること並びに本件退職時特別昇給に基づいて支出された退職手当のうち勤続期間中に懲戒処分を受けた者17名及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者3名に対する本件退職時特別昇給に基づく支出605万2975円については当該昇給の決定権者から損害の補填がされるよう措置を講じるこ に懲戒処分を受けた者17名及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者3名に対する本件退職時特別昇給に基づく支出605万2975円については当該昇給の決定権者から損害の補填がされるよう措置を講じることを勧告し,平成16年5月21日付けでその旨原告らに通知した。 (8)人事院規則9-8は平成16年4月12日人事院規則9-8-52により改正され,改正前の同規則39条3号の規定による昇給制度(退職時特別昇給制度)は同年5月1日以降廃止された。上記人事院規則の改正を受けて,総務省自治行政局公務員部長同年4月13日付け総行給第88号「研修,表彰等による特別昇- 6 -給のうち20年以上勤続して退職した場合にかかる特別昇給制度の廃止について」により,大阪市長等に対し,速やかに国に準じた措置を講ずるよう要請する通知がされた。これを受けて,大阪市においても,本件退職時特別昇給は平成16年5月1日以降廃止された(甲2)。 (9)原告らは,平成16年6月14日,本件訴えを提起した。 (10)被告は,本件監査請求に対する監査委員の前記(7)の勧告を受けて,20年以上勤続に満たない者7名に対する当該昇給適用に伴って支出された105万6246円並びに勤続期間中に地方公務員法29条1項所定の懲戒処分を受けた者17名及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者3名に対する当該昇給適用に伴って支出された605万2975円の合計710万9221円について大阪市の損害と認め,平成16年6月23日付けで,当該損害金のうちAが決定した本件昇給基準に基づく退職手当の支給に係る損害金473万9238円の補填をAに請求するとともに,大阪市長職務代理者大阪市助役により当該損害金のうちBが決定した本件昇給基準に基づく退職手当の支給に係る損害金236万9983円の補填をBに請求したと 73万9238円の補填をAに請求するとともに,大阪市長職務代理者大阪市助役により当該損害金のうちBが決定した本件昇給基準に基づく退職手当の支給に係る損害金236万9983円の補填をBに請求したところ,その全額について,同年7月16日,大阪市職員ら(大阪市Eの会)による第三者弁済がされた(乙5ないし11)。 争点及び争点に関する当事者の主張(1)本件退職時特別昇給の適法性(原告らの主張)ア給与条例5条6項の規定は,その文言からして,特別の条件を満たす者を市長がその裁量により昇給させることができることを定めたものであって,職員をほぼ一律に昇給させることを前提に定められたものではない。同規定により職員を退職時に昇給(特別昇給)させることができるためには,①勤務成績が良好であること(一般的に良好であるのではなく全体の職員と比べてより良好であると査定されること),②①に相当する事情に匹敵し市長が特に必要と認められる場合であること,③市民の一般の退職金の水準からみて公正公平でかつ比例原則に合致す- 7 -るものであること,が必要である。 しかるに,A及びBは,退職する職員について,勤務成績が特に優秀であるか否か,昇給させる特別の必要性があるか否か等について各職員ごとに個別に検討することなく,20年勤続とすらいえない者,懲戒処分を受けたり勤怠不良で給与を減額されたりした者をも含めて,退職する職員のほぼ全員を勤続10年で一律に昇給させていたのみならず,財政難の下において,市民の一般の給与水準より高い水準で退職金を受領することができているところに更に加算支給をしてきた。このような取扱いは,地方公務員法40条の定める成績主義を無視するものであって,給与条例5条6項の趣旨に違反し,市長の裁量権を逸脱している。 イ大阪市における退職時特別 ろに更に加算支給をしてきた。このような取扱いは,地方公務員法40条の定める成績主義を無視するものであって,給与条例5条6項の趣旨に違反し,市長の裁量権を逸脱している。 イ大阪市における退職時特別昇給の運用が国における一般職の職員の退職時特別昇給の運用にならったものであるとしても,そもそも,国における上記運用自体が国家公務員法72条の定める公務員の成績主義に照らしてその適法性に疑問がある上,大阪市の職員については,共済制度の下で退職年金や退職一時金が整備されているにとどまらず,大阪府市町村職員互助会の退職給付金制度の下で500万円以上の水準でヤミ退職金ともいわれる退職給付金が支給されるなど,国の一般職の職員と比べて厚遇されているのであるから,大阪市における退職時特別昇給の運用を地方公務員法24条3項の均衡の原則により正当化することはできない。 ウ被告は,給与条例5条6項の規定について,「勤務成績が特に優秀な場合」と「その他市長が特に必要と認めた場合」とを別個の要件としてとらえ,「勤務成績が特に優秀な場合」の要件に該当しなくても「市長が特に認めた場合」の要件に該当すれば特別昇給をすることができるとの解釈をとるようであるが,それでは市長の完全な自由裁量を認めるに等しく,同条5項,6項,7項及び9項との整合性まで損なうこととなる。したがって,「市長が特に認めた場合」の要件については,少なくとも,「勤務成績が特に優秀な場合」以上の水準であると大阪市民が理解できる場合でなければならないと解すべきであり,10年間の勤続が直ちに当該要件に該当するものでないことは明らかである。 - 8 -(被告の主張)ア給与条例5条6項は,「職員の勤務成績が特に優秀である場合その他市長が特に必要と認めた場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間 ことは明らかである。 - 8 -(被告の主張)ア給与条例5条6項は,「職員の勤務成績が特に優秀である場合その他市長が特に必要と認めた場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,又はその現に受けている号給より上位の号給に昇給させることができる。」旨規定している(なお,給与条例は,昭和31年9月30日に制定されたものであって,制定当時の5条5項において,「職員のうち,功績が極めて顕著である者,勤務成績が抜群である者その他市長が特に必要と認めた者については,前2項に規定する期間を短縮し,又はその現に受ける号俸より上位の号俸に特に昇給させることができる。」と規定していたが,昭和32年12月18日に制定された職員の給与に関する条例の一部を改正する条例(昭和32年大阪市条例第40号)により現行条例5条6項のとおり改められた。)。この規定は,特別昇給を行う必要が生じる場合としては様々なものがあり得ることを前提として,条例においてそのすべての場合をあらかじめ網羅的に規定することは技術的に困難であり,また,特別昇給を行う必要に応じて条例を即時に改正することも実務上困難であることから,「職員の勤務成績が特に優秀である場合」と「市長が特に必要と認めた場合」とを完全に並列関係にある要件として規定することにより,「職員の勤務成績が特に優秀である場合」に該当しなくても,それ以外に「市長が特に必要と認めた場合」には特別昇給を行うことができることとし,特別昇給を行うことができる場合に当たるか否かの判断を国及び他の地方公共団体における特別昇給の取扱いとの権衡(地方公務員法24条3項)を踏まえた上での市長の合理的な裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。そして,大阪市長は,「市長が特に必要と認めた場合」の内容として,国や他の地方公共団 いとの権衡(地方公務員法24条3項)を踏まえた上での市長の合理的な裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。そして,大阪市長は,「市長が特に必要と認めた場合」の内容として,国や他の地方公共団体における退職時特別昇給の取扱いの状況,大阪市におけるそれまでの退職手当の支給実績等の事情を考慮して,定年又は定年に準じる事由で退職する職員に係る特別昇給についての基準をその都度決裁により定めてきたものであり,具体的には,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で10年以上勤続したもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属す- 9 -る年度の末日を超えて退職する場合で10年以上勤続したもの,をその基準(本件昇給基準)として定めてきた。平成14年度及び平成15年度に大阪市を退職した職員についても,本件昇給基準に従って,当該基準を満たした者全員について「市長が特に必要と認めた場合」の要件に該当するものとして特別昇給を行った上,これに基づく退職手当を支給した。 もっとも,前提事実のとおり,本件監査請求に対する監査委員の勧告を受けて,被告は,20年以上勤続に満たない者7名に対する当該昇給適用に伴って支出された105万6246円並びに勤続期間中に懲戒処分を受けた者17名及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者3名に対する当該昇給適用に伴って支出された605万2975円の合計710万9221円について大阪市の損害と認め,当該勧告に係る損害金のうちAが決定した本件昇給基準に基づく退職手当の支給に係る損害金473万9238円の補填をAに請求し,当該損害金のうちBが決定した本件昇給基準に基づく退職手当の支給に係る損害金236万9983円の補填をBに請求したところ,第三者弁済により当該各損害はすべて補填された。その結果,本訴における審理の対象であ 金のうちBが決定した本件昇給基準に基づく退職手当の支給に係る損害金236万9983円の補填をBに請求したところ,第三者弁済により当該各損害はすべて補填された。その結果,本訴における審理の対象である本件退職時特別昇給は,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で20年以上勤続したものであって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良で退職手当の減額措置を受けたことのないもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日を超えて退職する場合で20年以上勤続したものであって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良で退職手当の減額措置を受けたことのないもの,を基準として行われたことになる。このような取扱いは,以下に述べるとおり,国における退職時特別昇給の取扱いとほぼ同様の内容であって,均衡の原則(地方公務員法24条3項)に照らし,給与条例5条6項の規定を受けた裁量判断として十分な合理性を有する。 イ国における退職時特別昇給の実施経過は,次のとおりである。 (ア)一般職の職員の給与に関する法律の制定昭和25年4月3日,一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95- 10 -号。昭和25年法律第299号による改正前のもの)が公布,施行され,同月1日から適用されたが,同法8条は,昇給の基準は,これに関する人事院規則が制定施行される日までは政令で定めるものとしていたところ,当該人事院規則は制定されず,それまでの初任給,昇給,昇格等の基準に関する政令(昭和23年政令第401号)の定めるところにより昇給が行われていたが,当該政令においては,定期昇給を原則とし,特別昇給制度は警察職員又は刑務職員に限り認められており,一般の国家公務員については認められていなかった。 (イ)一般職の職員の給与に関する法律の一部改正昭和25年12 ては,定期昇給を原則とし,特別昇給制度は警察職員又は刑務職員に限り認められており,一般の国家公務員については認められていなかった。 (イ)一般職の職員の給与に関する法律の一部改正昭和25年12月27日,一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(昭和25年法律第299号)が公布され,昭和26年1月1日から施行された。 この法律により改正された一般職の職員の給与に関する法律8条5項は,「職員の勤務成績が特に良好である場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,若しくはその現に受ける号俸より2号俸以上上位の号俸まで昇給させ,又はそのいずれをもあわせ行うことができる。」と規定し,一般職の国家公務員における特別昇給の制度を初めて導入した。 (ウ)人事院規則9-8の制定一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(昭和25年法律第299号)の施行を受けて,昭和26年1月6日,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準)が公布され,同年1月1日から適用された。昭和44年全部改正前の人事院規則9-8の13条は,特別昇給について,「給与法第8条第5項の規定により同条第4項の期間を短縮し若しくは2号俸以上昇給させ又はその両者を合わせ行うときには,細則に定める場合を除きあらかじめ人事院の承認を得なければならない。」と規定し,特別昇給の一般的な基準を人事院細則で定めることとするとともに,それ以外の場合は個別に人事院と協議してその承認を得なければならないものとしていた。しかし,昭和26年には同条の規定を受けた人事院細則は定められなかったため,当初,国における一般職の職員の特別昇給はすべて人事院の個別- 11 -の承認により行われ,その適用の範囲は限られていた。 (エ)人事院細則9-8-3の制定昭和27年1月30 られなかったため,当初,国における一般職の職員の特別昇給はすべて人事院の個別- 11 -の承認により行われ,その適用の範囲は限られていた。 (エ)人事院細則9-8-3の制定昭和27年1月30日,人事院細則9-8-3(特別昇給に関する細則)が制定され,これにより,昭和25年法律第299号による改正後の一般職の職員の給与に関する法律8条5項及び人事院規則9-8(昭和44年全部改正前のもの)13条の規定を受けた特別昇給の一般的基準が初めて定められた。同細則は,特別昇給を行うことができる場合を1条の1号から3号までの各号において規定していたが,そのうち3号は,「20年以上勤続して退職する場合」と規定していた。同細則3条はこれを昭和26年10月5日から適用するものとした。 (オ)人事院規則9-8の全部改正昭和44年5月1日,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準)が全部改正され,同日施行された。この改正により,特別昇給は人事院細則及び人事院の承認によるのではなく規則において定められることとなったが,退職時特別昇給については,同全部改正後の人事院規則9-8の39条3号において「20年以上勤続して退職する場合」と規定され,従前と同様の内容が定められた。 ウ以上の経過により,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準。平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)は,37条及び37条の2において特別昇給定数の範囲内での特別昇給について定め,39条において特別昇給定数の範囲外での特別昇給について定めている。このうち退職時特別昇給について定める39条3号は,勤務成績の特に良好な職員が20年以上勤続して退職する場合には特別昇給を行うことができる旨定めている。この規定の文言からすれば,同規則39条は,一般職の職員の給与に関する法律8条7 める39条3号は,勤務成績の特に良好な職員が20年以上勤続して退職する場合には特別昇給を行うことができる旨定めている。この規定の文言からすれば,同規則39条は,一般職の職員の給与に関する法律8条7項が勤務成績が特に良好な職員についての特別昇給の決定を任命権者の裁量権にゆだねているのを受けて,勤務成績の特に良好な職員について特別昇給を行うことができる場合を定め,もって任命権者の裁量の基準を定めたものであるということになる。 ところで,前記イのとおり,人事院細則9-8-3において初めて人事院規則9- 12 --8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号に相当する特別昇給が定められたが,同細則制定の趣旨について,当時の人事院月報(第23号。乙15)は,「その「勤務成績が特に良好」なることの具体的な認定が困難であるため一度これが運用を誤れば,給与行政上好ましからざる混乱を来す恐れがある。今回の細則においてその第1条に規定している四つの場合は,客観的にもその把握の容易なものばかりで,この程度のものであれば,その運用も濫に流れることはないであろう。」とし,また,「特別昇給について」(人事行政3巻3号。 乙17)は,「特別昇給の制度が給与法に規定されるに至った趣旨は,「勤務成績が特に良好」な職員を抜擢優遇して,その職員の労に報いることによって,公務員の勤務に励みをつけようとする点に主目的があるわけであるが,この「勤務成績が特に良好」ということは,普通の昇給の要件である「良好な成績で勤務」する場合に比べて一段上の段階にあるということは,観念的には理解出来るのであるが,さてそれでは具体的にどれ程「特に良好」であるかを客観的に把握するということになると仲々,困難な問題である。」,「特別昇給の場合においては,昇給期間については何等の 観念的には理解出来るのであるが,さてそれでは具体的にどれ程「特に良好」であるかを客観的に把握するということになると仲々,困難な問題である。」,「特別昇給の場合においては,昇給期間については何等の制限はなく,一度恣意に流れるときは多くの弊害を生ずるおそれがあるので,その認定の客観的基準を定めるについては慎重を期して来たわけである。 今回の細則において特別昇給が出来る場合として第一條に掲げた四つの場合は,いずれも一応客観的に把握出来ると思われる場合で,これが実施を各省庁に委せるとしてもそのため給与行政に混乱を生ずるとは先ず考えられないが,このような客観的に把握出来る場合に限ったため,一般の勤務の場合において,特に良好な成績で勤務する者に対する特別昇給については,遂に規定されない結果となったわけである。」としている。 これらからすれば,人事院細則は,一般職の職員の給与に関する法律8条7項の「勤務成績が特に良好」の具体的認定が困難であることから,恣意的な運用を避けるために,客観的に把握することが容易な場合に限って特別昇給を行うことができることとしたものであり,同細則1条各号に該当する場合(具体的には,職員研修- 13 -において成績が特に良好な場合,職務上の功績のため表彰を受けた場合,20年間勤続して退職した場合及び行政整理により退職する場合)には「勤務成績が特に良好」であるとみなして差し支えないとの判断であったと解される。すなわち,人事院細則の制定に当たり,実際の運用においては厳格な勤務評定の実現が困難である状況を踏まえて,人事院の「技術的解釈」(一般職の職員の給与に関する法律2条1号)として,実態に即した現実的な法解釈がされたものであり,そのような解釈は,歴史的経過その他様々な要因が複雑に絡まって形成されている公務員の給与制度について現 一般職の職員の給与に関する法律2条1号)として,実態に即した現実的な法解釈がされたものであり,そのような解釈は,歴史的経過その他様々な要因が複雑に絡まって形成されている公務員の給与制度について現実に即応した運用が求められる同法の趣旨,性格に照らして許容されるべきものと考えられる。 その後,人事院細則1条は,ほぼそのまま人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)に引き継がれ,人事院細則制定当時の1条についての上記解釈もほぼそのまま引き継がれて,一般職の職員の給与に関する法律8条7項の「勤務成績が特に良好である」旨の要件については,退職時特別昇給に限らず,定数内特別昇給を含めた特別昇給制度全般について,他の職員との相対比較に基づいて「勤務成績が特に良好であるか」を評価せずに,通常の勤務がされていれば当該要件に該当するとの前提で特別昇給制度の運用がされてきたということができる(のみならず,普通昇給を含めた昇給制度全般について,勤務成績が十分反映されずに実施されてきたということができる。)。しかしながら,同法8条7項及び人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)の解釈運用は,特別昇給制度の導入に係る一般職の職員の給与に関する法律の改正とこれに基づく人事院細則9-8-3の制定といった制度の沿革や,実際の勤務評定,成績評価制度の実施状況,公務員制度の運用の実態等を踏まえた現実的な解釈がされるべきであり,厳密な意味での勤務評定がされていない現実の下においては,上記人事院細則制定の趣旨は現在においても当てはまるものというべきである。 エ以上のとおり,国の各省庁における退職時特別昇給の運用においては,昭和- 14 -26年10月5日から前提事実(8)のとおり平成16年5月1日に人事院規則が改 てはまるものというべきである。 エ以上のとおり,国の各省庁における退職時特別昇給の運用においては,昭和- 14 -26年10月5日から前提事実(8)のとおり平成16年5月1日に人事院規則が改正されるまでの52年間の長期間にわたって,長期勤続に対する功労報償的な意味合いもあり,20年以上勤務して退職する職員について,一般職の職員の給与に関する法律8条7項の「勤務成績が特に良好」の要件を厳格に運用せず,そのほぼ全員に一律に退職時特別昇給が適用されてきた。 オ地方公共団体における職員の給与については,地方公務員法24条3項において,「職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」と規定し,給与決定におけるいわゆる均衡の原則が定められている。この均衡の原則は,実際の運用としては,国家公務員の給与に準ずることによって実現されるものと解されている。すなわち,国家公務員の給与は人事院勧告によって決定されているが,人事院勧告では生計費及び民間事業の賃金が考慮済みであるため,地方公共団体がその給与を国家公務員の給与に準ずることとすれば,国及び他の地方公共団体とも均衡がとれるなど,均衡の原則における諸要素を満足させることができると解される。 退職時特別昇給についても,各地方公共団体は,均衡の原則により,国家公務員の取扱いに準じて実施してきたところである。ところで,上記のとおり,国においては,実際には20年以上勤務して退職する職員のほぼ全員について退職時特別昇給が実施されており,その際に勤務成績が特に良好であるか否かについての厳密な評価は行われない運用がされ,職員の勤務成績の評価についての統一的な明確な方法,基準は定められておらず,国から地方公共団体に対しても,職員の り,その際に勤務成績が特に良好であるか否かについての厳密な評価は行われない運用がされ,職員の勤務成績の評価についての統一的な明確な方法,基準は定められておらず,国から地方公共団体に対しても,職員の勤務成績の評価についての明確な方法,基準は何等示されていない。このことから,各地方公共団体は,国の運用に準じ,ほぼすべての職員について退職時特別昇給を適用してきた。 仮に国における退職時特別昇給の運用が一般職の職員の給与に関する法律の趣旨にそぐわないという問題があったとしても,国と地方公共団体との間に公務員の勤務成績の評価制度について大差がない以上,地方公務員法24条3項の規定する給与決定に係る均衡の原則の実質的な意義に照らすと,国における給与決定の実際の- 15 -運用の在り方を踏まえてそれとの均衡をとった運用をすることも許容されるというべきである。すなわち,仮に国における退職時特別昇給の運用が一般職の職員の給与に関する法律8条7項及び人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)の39条に反するものであったとしても,そのような国の運用の実態と同様の退職時特別昇給を行うことは,均衡の原則に何ら反するものではないというべきである。 カ前記のとおり,大阪市においても,昭和37年から,給与条例5条6項の規定を受けて,国等における退職時特別昇給の実施状況を考慮し,定年又はこれに準じる事由で退職する職員で勤続期間10年以上のものが退職までの長期間にわたり公務を無事勤め上げ,大阪市の業務運営に寄与してきたこと等に対し,職員の勤務成績について厳密な評価を行うことなく,同項にいう「市長が特に必要と認めた場合」に該当するものとして,本件退職時特別昇給の取扱いを行ってきたところであり,少なくとも,前提事実(10)のとおり第三者弁済によ ついて厳密な評価を行うことなく,同項にいう「市長が特に必要と認めた場合」に該当するものとして,本件退職時特別昇給の取扱いを行ってきたところであり,少なくとも,前提事実(10)のとおり第三者弁済によりその損害が補填された部分を除いた本訴における審理の対象である本件退職時特別昇給に係る取扱いは,地方公務員法24条3項の均衡の原則に照らし,給与条例5条6項の規定を受けた市長の裁量判断として,十分な合理性を有するというべきである。 (2)過失の有無(原告らの主張)大阪市における退職時特別昇給の取扱いは,給与条例の厳正な解釈によらずに,およそ当該職員の勤務成績が特に優秀であるか否かを全く考慮せず,地方公務員法29条1項所定の懲戒処分を受けた者に対しても一律に適用してきたものであるから,当時の市長に過失はもちろんのこと故意又は重過失が存したというべきである。 (被告の主張)ア前記のとおり,国においては,昭和26年10月5日から平成16年5月1日までの52年以上の長期間にわたって,20年以上勤務して退職する職員について退職時特別昇給を行うことを人事院が定めてきており,人事院の判断に基づく各- 16 -省庁における運用にあっては,20年以上勤務して退職する職員のほぼ全員に退職時特別昇給が適用されるのが実態となっていた。そして,このような退職時特別昇給の国に準じた取扱いは,いわゆる均衡の原則に基づき他の地方公共団体においても同様に行われてきたところである。 イ大阪市においても,昭和37年から,10年以上勤続して退職する職員について退職時特別昇給を行ってきたところであり,A及びBが本件退職時特別昇給に係る決定を行った平成14年度及び平成15年度においては,既に約40年間にわたり同様の取扱いが継続して行われてきていたのである。 このような退職時特別 きたところであり,A及びBが本件退職時特別昇給に係る決定を行った平成14年度及び平成15年度においては,既に約40年間にわたり同様の取扱いが継続して行われてきていたのである。 このような退職時特別昇給制度の運用は,国,他の地方公共団体及び大阪市において長年行われてきた確立した制度であり,一定期間勤務して退職するほとんどの公務員に適用されていたといっても過言ではない。また,本件退職時特別昇給は,長期間,公然と行われていたにもかかわらず,ごく最近までの間,国会,大阪市議会,他の地方公共団体の議会,マスコミ等において退職時特別昇給が問題視されたこともなかった。 以上の事実を前提にすれば,仮に本件退職時特別昇給について違法と解する余地があるとしても,A及びBが本件退職時特別昇給の決定を行う際,当該取扱いが均衡の原則に沿った適法なものであると判断したことについて,何ら過失(注意義務違反)が存するとはいえず,A及びBは,大阪市に対し,損害賠償責任を負わないものというべきである。 第3争点に対する判断 特別昇給に関する関係法令の定め等(1)特別昇給に関する地方公務員法及び給与条例の定め地方公務員法は,職員(一般職に属するすべての地方公務員をいう。4条1項)の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定める旨規定し(24条6項),給与に関する条例には,給料表,昇給の基準に関する事項,時間外勤務,夜間勤務及び休日勤務に対する給与に関する事項,特別地域勤務,危険作業その他特殊な勤務- 17 -に対する手当及び扶養親族を有する職員に対する手当を支給する場合においては,これらに関する事項,非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職があるときは,これらについて行う給与の調整に関する事項,職階制を採用する地 おいては,これらに関する事項,非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職があるときは,これらについて行う給与の調整に関する事項,職階制を採用する地方公共団体においては,その職に職階制が始めて適用される場合の給与に関する事項並びにこれらの事項を除くほか給与の支給方法及び支給条件に関する事項を規定するものとし(25条3項),職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならないとし(24条3項),職員の給与は,同条6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,また,これに基づかずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない旨規定している(25条1項)。また,地方自治法204条の2は,普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,これを同法203条1項の職員及び同法204条1項の職員に支給することができない旨規定している。 大阪市においては,地方公務員法24条6項の規定に基づき,職員の給与に関する事項を定めることを目的として,職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号。平成17年大阪市条例第20号による改正前のもの。給与条例)が定められている。 給与条例は,4条において給料表及び職務の級を定めるとともに,5条において,初任給及び昇給等の基準として,次のとおり定めている。 「職員の職務の級は,前条第4項の規定に基づく分類の基準に適合するように決定する。」(5条1項)。 「新たに給料表の適用を受ける職員となった者の号給は,市規則で定める初任給の基準に従い決定する。」(同条2項)。 「職員が1の職務の級から他の職務の級に移った場合又は1の職から同じ職 」(5条1項)。 「新たに給料表の適用を受ける職員となった者の号給は,市規則で定める初任給の基準に従い決定する。」(同条2項)。 「職員が1の職務の級から他の職務の級に移った場合又は1の職から同じ職務の級の初任給の基準を異にする他の職に移った場合における号給は,市規則の定める- 18 -ところにより決定する。」(同条3項)。 「前2項の規定により号給を決定する場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,市規則の定めるところにより,その者の属する職務の級における最高の号給を超えて給料月額を決定することができる。」(同条4項)。 「職員が現に受けている号給を受けるに至ったときから,12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは,1号給上位の号給に昇給させることができる。ただし,第2項又は第3項の規定により号給が決定された場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,市規則の定めるところにより,12月の期間を短縮することができる。」(同条5項)「職員の勤務成績が特に優秀である場合その他市長が特に必要と認めた場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,又はその現に受けている号給より上位の号給に昇給させることができる。」(同条6項)「職員の給料月額がその属する職務の級における給料の幅の最高額である場合又は最高額を超えている場合においては,その職員が次の各号のいずれかに該当するときに限り,その属する職務の級における給料の幅の最高額を超えて,市規則の定めるところにより,昇給させることができる。(1)現に受けている給料月額を受けるに至ったときから24月(その給料月額が職務の級における給料の幅の最高額である場合にあっては,18月)を下らない期間を良好な成績で勤務したとき(2)勤務成績が特に優秀であるとき(3 月額を受けるに至ったときから24月(その給料月額が職務の級における給料の幅の最高額である場合にあっては,18月)を下らない期間を良好な成績で勤務したとき(2)勤務成績が特に優秀であるとき(3)その他市長が特に必要と認めたとき」(同条7項)「行政職給料表の10級,教育職給料表(1)の4級,研究職給料表の5級及び医療職給料表(1)の4級の職を占める職員並びに行政職給料表(特)の適用を受ける職員の給料月額は,第2項から前項までの規定にかかわらず,市長が定める。この場合において,特に必要と認めるときは,その最高の号給を超える給料月額を定めることができる。」(同条8項)「市規則で定める年齢を超える職員は,第5項から前項までの規定にかかわらず,- 19 -昇給しない。ただし,当該職員で勤務成績が特に優秀であるものについては,市長の定めるところにより,昇給させることができる。」(同条9項)「法第28条の4第1項又は第28条の5第1項の規定により採用された職員(以下「再任用職員」という。)の給料月額は,その者に適用される給料表に掲げる再任用職員の給料月額のうち,その者の属する職務の級に応じた額とする。」(同条10項)「法第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(以下「再任用短時間勤務職員」という。)の給料月額は,前項の規定にかかわらず,同項の規定による給料月額に,その者の1週間当たりの勤務時間を市規則で定める常勤の職員の1週間当たりの勤務時間で除して得た数を乗じて得た額とする。」(同条11項)。 (2)特別昇給に関する一般職の職員の給与に関する法律及び人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)の定め国家公務員法2条に規定する一般職に属する職員の給与に関する事項を定めることを目的として,一般職 員の給与に関する法律及び人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)の定め国家公務員法2条に規定する一般職に属する職員の給与に関する事項を定めることを目的として,一般職の職員の給与に関する法律が制定されている。同法8条は,俸給について,次のとおり定めている。 「新たに俸給表(指定職俸給表を除く。)の適用を受ける職員となった者の号俸は,人事院規則で定める初任給の基準に従い決定する。」(3項)「職員が一の職務の級から他の職務の級に移った場合(指定職俸給表の適用を受ける職員が他の俸給表の適用を受けることとなった場合を含む。)又は一の官職から同じ職務の級の初任給の基準を異にする他の官職に移った場合における号俸は,人事院規則の定めるところにより決定する。」(4項)「前2項の規定により号俸を決定する場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,人事院規則の定めるところにより,その者の属する職務の級における最高の号俸を超えて俸給月額を決定することができる。」(5項)「職員(指定職俸給表の適用を受ける職員を除く。)が現に受けている号俸を受- 20 -けるに至った時から,12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは,1号俸上位の号俸に昇給させることができる。ただし,第3項又は第4項の規定により号俸が決定された場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,人事院規則の定めるところにより,当該期間を短縮することができる。」(同条6項)「職員の勤務成績が特に良好である場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,若しくはその現に受ける号俸より2号俸以上上位の号俸まで昇給させ,又はそのいずれをもあわせ行うことができる。」(同条7項)「職員の俸給月額がその属する職務の級における俸給の幅の最高額で 期間を短縮し,若しくはその現に受ける号俸より2号俸以上上位の号俸まで昇給させ,又はそのいずれをもあわせ行うことができる。」(同条7項)「職員の俸給月額がその属する職務の級における俸給の幅の最高額である場合又は最高額を超えている場合には,その者が同一の職務の級にある間は,昇給しない。 ただし,それらの俸給月額を受けている職員で,その俸給月額を受けるに至った時から24月(その俸給月額が職務の級における俸給の幅の最高額である場合にあっては,18月)を下らない期間を良好な成績で勤務したもの,勤務成績が特に良好であるもの等については,その職員の属する勤務の級における俸給の幅の最高額を超えて,人事院規則の定めるところにより,昇給させることができる。」(同条8項)「55歳(人事院規則で定める職員にあっては,56歳以上の年齢で人事院規則で定めるもの)を超える職員は,第6項,第7項及び前項ただし書の規定にかかわらず,昇給しない。ただし,当該職員で勤務成績が特に良好であるものについては,人事院規則の定めるところにより,昇給させることができる。」(同条9項)「第6項から前項までに規定する昇給は,予算の範囲内で行わなければならない。」(同条10項)また,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)は,37条及び37条の2において特別昇給定数内の特別昇給について,38条において特別昇給の適用除外について,39条において研修,表彰等による特別昇給について,それぞれ定めている。このうち,特別昇給定数内の特別昇給については,職員が,「勤務評定記録書に記録されている職員の勤務実績に係る評語が勤- 21 -務成績の評定の手続及び記録に関する内閣府令(昭和41年総理府令第4号。次号において「内閣府令」という。)第6条第2項本文の規定により上位 書に記録されている職員の勤務実績に係る評語が勤- 21 -務成績の評定の手続及び記録に関する内閣府令(昭和41年総理府令第4号。次号において「内閣府令」という。)第6条第2項本文の規定により上位の段階に決定され,かつ,執務に関連して見られた職員の性格,能力及び適性が優秀である場合」(同規則37条1項1号),若しくは「勤務評定を実施しないこととされている職員及び勤務実績に係る評語の決定が内閣府令第6条第2項ただし書の規定によることとされている職員(これらの職員でなくなった後において同項本文の規定による評語を決定されたことのない職員を含む。)の勤務成績がこれを判定するに足ると認められる事実に基づいて前号の場合に相当する勤務成績であると証明された場合」(同項2号),のいずれかに該当する場合,又は「前条第1項第1号に該当する職員若しくはこれに準ずる職員又は同項第2号に該当する職員が相当の期間にわたり特に繁忙な業務に精励した場合,極めて特殊の知識,経験等に基づきこれらを直接必要とする困難な業務に精励した場合その他人事院の定める事由に該当した場合において,当該職員の公務に対する貢献が顕著であると認められるとき」(同規則37条の2第1項)に,それぞれ特別昇給定数の範囲内で行うことができるものと規定されている。また,特別昇給の適用除外としては,「懲戒処分を受け,当該処分の日から1年を経過しない職員」(同規則38条1項5号),「第40条に定める昇給の時期以前1年間において,勤務しなかった期間(勤務時間法第6条第1項に規定する週休日,給与法第15条に規定する祝日法による休日等及び年末年始の休日等並びに勤務時間法第16条に規定する年次休暇その他人事院の定める事由によって勤務しなかった期間を除く。)が30日を超える職員」(同規則38条1項6号)等について 日法による休日等及び年末年始の休日等並びに勤務時間法第16条に規定する年次休暇その他人事院の定める事由によって勤務しなかった期間を除く。)が30日を超える職員」(同規則38条1項6号)等については,同規則37条1項の規定による特別昇給又は同規則37条の2第1項の規定による特別昇給を行うことができないものと規定されている(同規則38条1項,2項)。そして,同規則39条は,研修,表彰等による特別昇給について,次のとおり定めている。 「勤務成績の特に良好な職員が次の各号のいずれかに該当する場合には,給与法第8条第6項若しくは第9項本文又は第35条の規定にかかわらず,上位の号俸- 22 -(第3号又は第4号の規定により昇給させる場合にあっては,直近の上位の号俸)に昇給させることができる。この場合において,第1号又は第2号の規定による昇給は,人事院の定めるところにより行うものとする。 研修に参加し,その成績が特に良好な場合 業務成績の向上,能率増進,発明考案等により職務上特に功績があったことにより,又は辺地若しくは特殊の施設において極めて困難な勤務条件の下で職務に献身精励し,公務のため顕著な功労があったことにより表彰又は顕彰を受けた場合 20年以上勤続して退職する場合 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じたことにより退職する場合」(3)特別昇給に関する一般職の職員の給与に関する法律及び人事院規則の定めの制定経過等ア一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)の制定前一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)の制定前においては,国家公務員である職員の特別昇給については,初任給,昇給,昇格等の基準に関する政令(昭和23年政令第401号)11条において,「警察職員又は刑務職員が功 昭和25年法律第95号)の制定前においては,国家公務員である職員の特別昇給については,初任給,昇給,昇格等の基準に関する政令(昭和23年政令第401号)11条において,「警察職員又は刑務職員が功労記章又は功績章を付與されたときは,第7條及び第8條の規定にかかわらず,新給與実施本部長の定める基準に従って,特に昇給させることができる。」とのみ規定されており,警察職員又は刑務職員以外の職員については特別昇給は認められていなかった。 イ昭和25年4月3日,一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)が公布,施行され,同月1日から適用された。同法8条は,「新たに職員となった場合及び職員が一の職務の級から他の職務の級に移った場合の俸給並びに同一級内における昇給の基準は,これに関する人事院規則が制定施行される日までは政令で定める。」旨規定していた。しかし,当該人事院規則は制定されず,前記アの政令(昭和23年政令第401号)の定めるところにより昇給が行われていた。 - 23 -ウ一般職の職員の給与に関する法律の一部改正昭和25年12月27日,一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(昭和25年法律第299号)が公布され,昭和26年1月1日から施行された。 この法律により改正された一般職の職員の給与に関する法律8条5項は,「職員の勤務成績が特に良好である場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,若しくはその現に受ける号俸より2号俸以上上位の号俸まで昇給させ,又はそのいずれをもあわせ行うことができる。」と規定し,これによって,従前警察職員又は刑務職員につきその一部が認められていた特別昇給が一般職の職員に一般化された。その趣旨については,勤務成績が特に良好な職員を抜擢優遇し,信賞を明らかにし,公務員の勤務 これによって,従前警察職員又は刑務職員につきその一部が認められていた特別昇給が一般職の職員に一般化された。その趣旨については,勤務成績が特に良好な職員を抜擢優遇し,信賞を明らかにし,公務員の勤務に励みをつけようとすることにあると解される(乙15)。 エ人事院規則9-8(昭和44年全部改正前のもの)の制定一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律(昭和25年法律第299号)の施行を受けて,昭和26年1月6日,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準)が公布され,同年1月1日から適用された。昭和44年全部改正前の人事院規則9-8の13条は,特別昇給について,「給與法第8條第5項の規定により同條第4項の期間を短縮し若しくは2号俸以上昇給させ又はその両者を合わせ行うときには,細則に定める場合を除きあらかじめ人事院の承認を得なければならない。」と規定していた。その趣旨については,勤務成績に関する明確な判定基準ないし判定方法を見いだすことができない状況の下において,特別昇給の基準のうち一般的に共通なもの又は特殊な場合で範囲が限定されているものについては人事院細則において定めた上その運用を各省庁の長にゆだねるものとし,基準の設定が困難なもの,事例が複雑なものその他個々の制定にゆだねることが不適当なものについては,個別に人事院の承認を要することとして,濫に流れないよう厳正に運用することとしたものであると解される。また,細則の制定に当たっては,前記アの政令(昭和23年政令第401号)11条が規定するもののほか,国家社会に著- 24 -しい功績のあったもの及び学術研究等に顕著な貢献があったもの等について考慮するものとされていた。しかし,昭和27年1月30日まで同条の規定を受けた人事院細則は定められず,一般職の職員の特別昇給はすべて人事院 のあったもの及び学術研究等に顕著な貢献があったもの等について考慮するものとされていた。しかし,昭和27年1月30日まで同条の規定を受けた人事院細則は定められず,一般職の職員の特別昇給はすべて人事院の個別の承認の形で運用されたが,その適用の範囲は狭く,実際には,上記政令11条に規定されていた警察職員又は刑務職員が功労記章又は功績章を付与されたとき等に限定されていた(乙15)。 オ人事院細則9-8-3の制定人事院規則9-8(昭和44年全部改正前のもの)13条所定の細則として,昭和27年1月30日,人事院細則9-8-3(特別昇給に関する細則)が制定された。同細則1条は,「あらかじめ規則9-8第13条の承認を得た昇給を行う場合の外,勤務成績の特に良好な職員が次の各号の一に掲げる場合に該当するときは,給与法第8条第4項に規定する期間を短縮して,その際,その職員を直近上位の号俸に昇給させることができる。一あらかじめ事務総長と協議の上その指定を受けた職員研修計画に参加し,成績が特に良好なものとして認定された場合二業務成績の向上,能率増進,発明考案等により職務上特に功績があり事務総長の指定する表彰を受けた場合三20年以上勤続して退職する場合四官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた結果退職する場合」と規定し,同規則3条は,同細則1条3号及び4号に掲げる場合に該当する昇給に関する規定は昭和26年10月5日から適用する旨規定した。 特別昇給の運用についての通牒(昭和27年2月12日付け人事院通牒給実甲第47号「人事院細則9-8-3及び昭和27年1月28日人事院会議議決による昇給の運用について」)は,人事院細則9-8-3の規定に基づく特別昇給について,第1条本文関係として,「勤務成績が特に良好な職員の認定については,規 8-3及び昭和27年1月28日人事院会議議決による昇給の運用について」)は,人事院細則9-8-3の規定に基づく特別昇給について,第1条本文関係として,「勤務成績が特に良好な職員の認定については,規則10-2(勤務評定制度)による勤務評定の結果を考慮して行うものとする。但し,同規則第4条第2項の規定によって勤務評定を実施していない職員については,その他の客観的事実に基づいて認定しなければならない。」とし,第1条第3号関係と- 25 -して,「勤続年数の計算は,国家公務員として勤務した年数(月計算)によるものとする。但し地方公務員,公社その他これに準ずる機関において勤務した期間は,異動の事情に応じてこれを通算してさしつかえない。」としていた。 人事院細則9-8-3の1条の規定の趣旨については,勤務成績が特に良好であることの具体的な認定が困難であるため,その運用を誤ると,給与行政上好ましくない混乱を来すおそれがあるところから,客観的にもその把握が容易で,その運用も濫に流れることがないものとして,同条1号ないし4号の4つの場合を規定したものであり,同条3号及び4号の規定は,退職する職員を特に優遇する趣旨も含まれているとされる。そして,通常の勤務において特に勤務成績が良好なものについての特別昇給は,その認定の一般的基準についていまだ十分な結論に達していないため,個別に人事院の承認によって運用されるものとされた(乙15)。 カ人事院規則9-8の全部改正昭和44年5月1日,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準)が全部改正され,同日施行された。この改正により,特別昇給について,特別昇給定数内の特別昇給に関する規定(37条),特別昇給の適用除外に関する規定(38条)及び研修,表彰等による特別昇給に関する規定(39条)等が設けられたが,39条 改正により,特別昇給について,特別昇給定数内の特別昇給に関する規定(37条),特別昇給の適用除外に関する規定(38条)及び研修,表彰等による特別昇給に関する規定(39条)等が設けられたが,39条においては,人事院細則9-8-3の1条(1号ないし4号)の規定がほぼそのまま踏襲され,勤務成績の特に良好な職員が次の各号の一,すなわち,「一研修に参加し,その成績が特に良好な場合二業務成績の向上,能率増進,発明考案等により職務上特に功績があったことにより,又は辺地若しくは特殊の施設においてきわめて困難な勤務条件の下で職務に献身精励し,公務のため顕著な功労があったことにより表彰又は顕彰を受けた場合三20年以上勤続して退職する場合四官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じたことにより退職する場合」の一に該当する場合に特別昇給を行うことができるものと規定された。また,同規則37条においては,特別昇給定数内の特別昇給を行うことができるための基準として,「一勤務成績が特に優秀であることにより表彰を受けた- 26 -場合(第39条第2号に該当し,同条後段の規定により人事院の承認を得た場合を除く。)二勤務評定記録書に記録されている職員の勤務実績に係る評語が勤務成績の評定の手続及び記録に関する総理府令(昭和41年総理府令第4号。以下次号において「総理府令」という。)第6条第2項本文の規定により上位の段階に決定され,かつ,執務に関連して見られた職員の性格,能力及び適性が優秀である場合三勤務評定を実施しないこととされている職員及び勤務実績に係る評語の決定が総理府令第6条第2項ただし書の規定によることとされている職員(これらの職員でなくなった後において同項本文の規定による評語を決定されたことのない職員を含む。)の勤務成績 び勤務実績に係る評語の決定が総理府令第6条第2項ただし書の規定によることとされている職員(これらの職員でなくなった後において同項本文の規定による評語を決定されたことのない職員を含む。)の勤務成績がこれを判定するに足ると認められる事実に基づいて前号の場合に相当する勤務成績であると証明された場合四第2号に該当する職員若しくはこれに準ずる職員又は前号に該当する職員が昇格した場合」と規定された。 さらに,同規則38条においては,同規則37条1項の規定による特別昇給定数内の特別昇給について,「懲戒処分を受け,当該処分の日から1年を経過しない職員」(同規則38条3号),「第40条に定める昇給の時期以前1年間において,勤務しなかった日(勤務を要しない日及び休日並びに規則15-6(休暇)による年次休暇その他人事院の定める事由によって勤務しなかった日を除く。)が30日をこえる職員」(同規則38条4号)等が適用除外とされた。 本件退職時特別昇給の適法性(争点(1))について(1)前記のとおり,給与条例5条6項は,特別昇給について,「職員の勤務成績が特に優秀である場合その他市長が特に必要と認めた場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,又はその現に受けている号給より上位の号給に昇給させることができる。」旨規定している。この規定の文言からすれば,同項は,同項所定の特別昇給を行うことができるための要件として,「職員の勤務成績が特に優秀である場合」と「市長が特に必要と認めた場合」の2つを規定し,そのいずれかに該当すれば同項所定の特別昇給を行うことができるとする趣旨のものであると解される。もっとも,同条5項は,いわゆる普通昇給について,- 27 -「職員が現に受けている号給を受けるに至ったときから,12月を下らない期間を良好な を行うことができるとする趣旨のものであると解される。もっとも,同条5項は,いわゆる普通昇給について,- 27 -「職員が現に受けている号給を受けるに至ったときから,12月を下らない期間を良好な成績で勤務したときは,1号給上位の号給に昇給させることができる。ただし,第2項又は第3項の規定により号給が決定された場合において,他の職員との権衡上必要と認めるときは,市規則の定めるところにより,12月の期間を短縮することができる。」と規定しており,特別昇給に関する給与条例の規定は,この普通昇給の規定を踏まえた上で,その例外として,普通昇給に係る期間を短縮し,又はその現に受けている号給より上位の号給に昇給させることができる場合を規定したものであるから,特別昇給の要件としての「市長が特に必要と認めた場合」の規定についても,その判断を広く市長の裁量にゆだねる趣旨のものではなく,普通昇給の要件として規定されている職員の勤務成績が良好であることを前提に,国及び他の地方公共団体の事情等をしんしゃくして,「職員の勤務成績が特に優秀である場合」に準じる事由をその裁量により認定して特別昇給を行うことができるものとする趣旨の規定であると解するのが相当であり,そのように解される限りにおいて,地方公務員法25条3項,1項,地方自治法204条の2に抵触しないものというべきである。 (2)ところで,前記のとおり,大阪市においては,平成16年5月1日に本件退職時特別昇給が廃止されるまで,給与条例5条6項が特別昇給の要件として規定する「市長が特に必要と認めた場合」の基準として,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で10年以上勤続したもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日を超えて退職する場合で10年以上勤続したもの,という基準(本件昇給基 定年退職,早期退職,希望退職をする者で10年以上勤続したもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日を超えて退職する場合で10年以上勤続したもの,という基準(本件昇給基準)をその都度決裁により定めてきた。そして,教育委員会所管の学校に勤務する教員等を除く職員の定年退職及び定年に準ずる事由による退職(早期退職及び希望退職等)について,上記「市長が特に必要と認めた場合」の適用として,10年以上勤続した者に対して特別昇給を実施する旨の市長決裁がされ,教育委員会所管の学校に勤務する教員等については,府費負担教員等との均衡を考慮して,20年以上勤続して定年退職する者に対して特別昇給を実施する旨- 28 -の教育長決裁がされていた(本件退職時特別昇給)。平成14年度及び平成15年度においても,当時市長の職にあったA又はBにより本件昇給基準が定められ,本件昇給基準に従った退職時特別昇給(本件退職時特別昇給)がされたが,本件昇給基準に適合する職員について一律に特別昇給を行ったことから,本件退職時特別昇給に基づいて退職手当の支給を受けた職員の中には勤続年数10年以上20年未満の退職者及び勤続期間中に懲戒処分を受けた者等が含まれていた。もっとも,本件監査請求に基づく監査においては,平成14年度における本件退職時特別昇給のうち平成15年3月24日以後のもの及び当該特別昇給に係る支出(該当者1121人)並びに平成15年度における本件退職時特別昇給及び当該特別昇給に係る支出(該当者1292人)が監査の対象とされた上,監査の結果,監査委員により,本件退職時特別昇給が適用されて支出された退職手当のうち20年以上勤続に満たない者7名に対する本件退職時特別昇給に基づく支出105万6246円並びに勤続期間中に懲戒処分を受けた者17名及び勤怠 り,本件退職時特別昇給が適用されて支出された退職手当のうち20年以上勤続に満たない者7名に対する本件退職時特別昇給に基づく支出105万6246円並びに勤続期間中に懲戒処分を受けた者17名及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者3名に対する本件退職時特別昇給に基づく支出605万2975円について,当該昇給の決定権者から損害の填補がされるよう措置を講じることが勧告され,当該勧告を受けて,その全額について大阪市に対する第三者弁済がされた。その結果,本訴においては,平成14年度における本件退職時特別昇給のうち平成15年3月24日以後のもの及び当該特別昇給に係る支出並びに平成15年度における本件退職時特別昇給及び当該特別昇給に係る支出のうち20年以上勤続に満たない者に対する本件退職時特別昇給及び当該特別昇給に係る支出並びに勤続期間中に懲戒処分を受けた者及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者に対する本件退職時特別昇給及び当該特別昇給に係る支出を除いたものが審理の対象とされている。すなわち,本訴において審理の対象とされている本件退職時特別昇給は,被告の主張するとおり,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職手当の減額措置を受けたことのないもの,②傷病・死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日- 29 -を超えて退職する場合で20年以上勤続したものであって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職手当の減額措置を受けたことのないもの,を基準として行われたことになる。本訴は,A又はBが大阪市長として行った本件退職時特別昇給が不法行為に該当するとして同人らにその損害賠償を請求することを被告に求めるものであると解されるから,本件退職時特別昇給の対 われたことになる。本訴は,A又はBが大阪市長として行った本件退職時特別昇給が不法行為に該当するとして同人らにその損害賠償を請求することを被告に求めるものであると解されるから,本件退職時特別昇給の対象とされた個々の職員について,当該特別昇給が給与条例5条6項に適合する適法なものであるか否かを検討すべきであるところ,以上説示したところからすれば,本訴においては,審理の対象とされている上記①及び②の基準に該当するものについて行われた特別昇給,すなわち,20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職手当の減額措置を受けたことのないものについて行われた退職時特別昇給が給与条例5条6項に適合する適法なものであるか否かを検討すれば足り,当該退職時特別昇給が給与条例5条6項に適合する適法なものである限り,A及びBは大阪市に対する不法行為に基づく損害賠償義務を負わないものというべきである。 (3)前記認定事実等に加えて乙4及び弁論の全趣旨によれば,国家公務員である一般職の職員については,昭和27年1月30日に人事院細則9-8-3(特別昇給に関する細則)が制定されその一部が昭和26年10月5日にさかのぼって適用されて以来,平成16年4月12日人事院規則9-8-52により人事院規則9-8が改正されて同年5月1日から施行されるまでの間,「勤務成績の特に良好な職員が20年以上勤続して退職する場合」が特別昇給の基準の一つとされ,実態として20年以上勤続して退職する場合に該当する職員のほぼ全員について一律に特別昇給させる退職時特別昇給の運用が行われてきた事実が認められる。そして,弁論の全趣旨によれば,大阪市においては,上記のような国における一般職の職員についての退職時特別昇給の運用等を踏まえて,給与条例5条6項が特別昇給の要件と 用が行われてきた事実が認められる。そして,弁論の全趣旨によれば,大阪市においては,上記のような国における一般職の職員についての退職時特別昇給の運用等を踏まえて,給与条例5条6項が特別昇給の要件として規定する「市長が特に必要と認めた場合」の基準として,前記のとおり,①定年退職,早期退職,希望退職をする者で10年以上勤続したもの,②傷病・- 30 -死亡退職をする者で55歳に達する日の属する年度の末日を超えて退職する場合で10年以上勤続したもの,という基準(本件昇給基準)をその都度決裁により定めてきたものと認められる。 前記のとおり,本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給は,20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職手当の減額措置を受けたことのないものについて行われたものである。そうすると,本訴において審理の対象とされている大阪市における退職時特別昇給は,結果的にみて,国における上記退職時特別昇給の運用に近いことになる。そこで,まず,国における上記退職時特別昇給の運用の適否について検討する。 (4)前記のとおり,一般職の職員の給与に関する法律8条7項は,国家公務員である一般職の職員の特別昇給について,「職員の勤務成績が特に良好である場合においては,前項の規定にかかわらず,同項に規定する期間を短縮し,若しくはその現に受ける号俸より2号俸以上上位の号俸まで昇給させ,又はそのいずれをもあわせ行うことができる。」旨規定しており,勤務成績が特に良好であることが特別昇給を行うための要件とされている。 ところで,国における一般職の職員の退職時特別昇給の運用は,平成16年人事院規則9-8-52による改正前の人事院規則9-8の39条3号の規定に基づいて行われていたところ,同号は,勤務成績の特に良好な職員が2 ,国における一般職の職員の退職時特別昇給の運用は,平成16年人事院規則9-8-52による改正前の人事院規則9-8の39条3号の規定に基づいて行われていたところ,同号は,勤務成績の特に良好な職員が20年以上勤続して退職する場合を同条所定の特別昇給(研修,表彰等による特別昇給)の基準として規定しており,少なくともその文言上は,「勤務成績の特に良好な職員」の基準に加えて「20年以上勤続して退職する場合」の基準をともに満たすことが必要であることを規定したものと解される。すなわち,同号の退職時特別昇給を含む同規則39条所定の特別昇給(研修,表彰等による特別昇給)を行うための基準について,同条は,少なくともその文言上は,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好であること」をそのまま基準として規定するとともに同条各号のいずれかに該当することを基準として規定している- 31 -と解される。これに対し,特別昇給定数内の特別昇給については,同規則37条1項,37条の2第1項において,「勤務評定記録書に記録されている職員の勤務実績に係る評語が勤務成績の評定の手続及び記録に関する内閣府令(昭和41年総理府令第4号。次号において「内閣府令」という。)第6条第2項本文の規定により上位の段階に決定され,かつ,執務に関連して見られた職員の性格,能力及び適性が優秀である場合」(同規則37条1項1号),「勤務評定を実施しないこととされている職員及び勤務実績に係る評語の決定が内閣府令第6条第2項ただし書の規定によることとされている職員(これらの職員でなくなった後において同項本文の規定による評語を決定されたことのない職員を含む。)の勤務成績がこれを判定するに足ると認められる事実に基づいて前号の場合に相当する勤務成績であると証明 員(これらの職員でなくなった後において同項本文の規定による評語を決定されたことのない職員を含む。)の勤務成績がこれを判定するに足ると認められる事実に基づいて前号の場合に相当する勤務成績であると証明された場合」(同規則37条1項2号),「前条第1項第1号に該当する職員若しくはこれに準ずる職員又は同項第2号に該当する職員」(同規則37条の2第1項)というように「職員の勤務成績が特に良好である場合」の要件についての具体的認定基準が定められている上,同規則38条1項,2項により,「懲戒処分を受け,当該処分の日から1年を経過しない職員」等が特別昇給の適用除外として規定されている。 前記1(3)の特別昇給に関する一般職の職員の給与に関する法律及び人事院規則の定めの制定経過等によれば,退職時特別昇給を含む人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条所定の特別昇給(研修,表彰等による特別昇給)に係る基準は,人事院細則9-8-3に由来するものであるところ,ア一般職の職員の給与に関する法律の制定前においては,国家公務員である職員の特別昇給については,初任給,昇給,昇格等の基準に関する政令(昭和23年政令第401号)により,警察職員又は刑務職員が功労記章又は功績章を付与されたときに限り特別昇給を行うことができるものとされ,それ以外の職員については特別昇給は認められていなかった,イ昭和25年4月3日,一般職の職員の給与に関する法律が公布,施行されて同月1日から適用されたが,同法8条は,- 32 -昇給の基準はこれに関する人事院規則が制定施行される日までは政令で定める旨規定していたところ,当該人事院規則は制定されず,上記政令の定めるところにより昇給が行われていた,ウ昭和25年12月27日,昭和25年法律第299号により 則が制定施行される日までは政令で定める旨規定していたところ,当該人事院規則は制定されず,上記政令の定めるところにより昇給が行われていた,ウ昭和25年12月27日,昭和25年法律第299号により一般職の職員の給与に関する法律が改正されて特別昇給に関し現行法(ただし,平成17年法律第113号による改正前のもの。以下同じ。)8条7項に相当する規定が設けられ,同改正法は昭和26年1月1日から施行され,これを受けて,昭和26年1月6日,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準。昭和44年全部改正前のもの)が公布され,同年1月1日から適用された,エ人事院規則9-8(昭和44年全部改正前のもの)13条は,同条所定の特別昇給を行うときには,細則に定める場合を除きあらかじめ人事院の承認を得なければならないと規定していたところ,その趣旨については,勤務成績に関する明確な判定基準ないし判定方法を見いだすことができない状況の下において,特別昇給の基準のうち一般的に共通なもの又は特殊な場合で範囲が限定されているものについては人事院細則において定めた上その運用を各省庁の長にゆだねるものとし,基準の設定が困難なもの,事例が複雑なものその他個々の制定にゆだねることが不適なものについては,個別に人事院の承認を要することとして,濫に流れないよう厳正に運用することとしたものであり,また,細則の制定に当たっては,上記政令(昭和23年政令第401号)11条が規定するもののほか,国家社会に著しい功績のあったもの及び学術研究等に顕著な貢献があったもの等について考慮するものとされていた,オ昭和27年1月30日,人事院規則9-8(昭和44年全部改正前のもの)13条所定の細則として,人事院細則9-8-3(特別昇給に関する細則)が制定され,同細則1条において,あらかじめ同規則 いた,オ昭和27年1月30日,人事院規則9-8(昭和44年全部改正前のもの)13条所定の細則として,人事院細則9-8-3(特別昇給に関する細則)が制定され,同細則1条において,あらかじめ同規則13条所定の人事院の承認を得た昇給を行う場合のほか,同条所定の特別昇給を行うことができるための基準として,「勤務成績の特に良好な職員」であることとともに,当該職員が同細則1条各号の一に掲げる場合,すなわち,「一あらかじめ事務総長と協議の上その指定を受けた職員研修計画に参加し,成績が特に良好なものとして認定された場合二業務成績の向- 33 -上,能率増進,発明考案等により職務上特に功績があり事務総長の指定する表彰を受けた場合三20年以上勤続して退職する場合四官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた結果退職する場合」のいずれかに該当することが規定された,カ人事院細則1条の規定の趣旨については,勤務成績が特に良好であることの具体的な認定が困難であるため,その運用を誤ると,給与行政上好ましくない混乱を来すおそれがあるところから,客観的にもその把握が容易で,その運用も濫に流れることがないものとして,同条1号ないし4号の4つの場合を規定したものであり,通常の勤務において特に勤務成績が良好なものについての特別昇給は,その認定の一般的基準についていまだ十分な結論に達していないため,個別に人事院の承認によって運用されるものとされた,キ昭和44年5月1日,人事院規則9-8(初任給,昇格,昇給等の基準)が全部改正されて同日施行されたが,この改正により,特別昇給について,特別昇給定数内の特別昇給に関する規定(37条),特別昇給の適用除外に関する規定(38条)及び研修,表彰等による特別昇給に関する規定(39条)等が設けられ,研 たが,この改正により,特別昇給について,特別昇給定数内の特別昇給に関する規定(37条),特別昇給の適用除外に関する規定(38条)及び研修,表彰等による特別昇給に関する規定(39条)等が設けられ,研修,表彰等による特別昇給については,39条において人事院細則9-8-3の1条(1号ないし4号)の規定がほぼそのまま踏襲され,他方,特別昇給定数内の特別昇給については,37条において新たにその基準が規定され,それがその後の改正を経て現行人事院規則9-8の37条及び37条の2の規定に整理されたというのである。 これによれば,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条所定の特別昇給(研修,表彰等による特別昇給)は,前記のとおり,昭和44年全部改正前の人事院規則13条に基づく人事院細則1条の規定に由来するものであって,「職員の勤務成績が特に良好である場合」の具体的な認定において,その把握が客観的に容易であって,その運用が濫に流れるおそれがないものとして,4つの場合を規定したものであり,これらの基準は,初任給,昇給,昇格等の基準に関する政令(昭和23年政令第401号)11条の規定のほか,国家社会に著しい功績のあったもの及び学術研究等に顕著な貢献があったもの等が念- 34 -頭に置かれ,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号及び4号(人事院細則3-9-3の1条3号及び4号)の基準については,退職する職員を特に優遇する趣旨も含まれていたということができる。 他方,人事院規則9-8の定める特別昇給定数内の特別昇給は,人事院細則の制定時においては,通常の勤務において特に勤務成績が良好なものについての特別昇給は,その認定の一般的基準についていまだ十分な結論に達していないため,個別に人事院 昇給定数内の特別昇給は,人事院細則の制定時においては,通常の勤務において特に勤務成績が良好なものについての特別昇給は,その認定の一般的基準についていまだ十分な結論に達していないため,個別に人事院の承認によって運用されるものとして,基準の定立が見送られたものが,昭和44年の人事院規則9-8の全部改正時において,同規則37条として整理され,同条においては,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」の具体的認定基準が同条1項各号において定められた上,同規則38条において,「懲戒処分を受け,当該処分の日から1年を経過しない職員」等が適用除外と規定され,その後の改正を経て,現行人事院規則9-8の37条ないし38条のとおりの規定となったものということができる。 以上によれば,人事院細則9-8-3の第1条各号の基準は,その沿革及び趣旨からして,退職時特別昇給に関する基準(同条3号)も含めて,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」の具体的な認定基準として規定されたものであり,退職時特別昇給に関する同条3号の基準は,永年勤続により国家社会に貢献した功績をもって職員の勤務成績が特に良好であることの徴表としたものと解される(なお,同条4号の基準は,行政整理という国家の政策に貢献する功績をもって職員の勤務成績が特に良好であることの徴表としたものと解される。乙17)。そうであるとすれば,人事院細則9-8-3の1条は,同条各号の定める基準に該当する限り,同条にいう「勤務成績の特に良好な職員」であると推定され,したがって,一般職の職員の給与に関する法律にいう「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとする趣旨のものであったと解される。もっ 条にいう「勤務成績の特に良好な職員」であると推定され,したがって,一般職の職員の給与に関する法律にいう「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとする趣旨のものであったと解される。もっとも,前記のとおり,特別昇給の運用についての- 35 -通牒は,同細則の第1条本文関係として,「勤務成績が特に良好な職員の認定については,規則10-2(勤務評定制度)による勤務評定の結果を考慮して行うものとする。但し,同規則第4条第2項の規定によって勤務評定を実施していない職員については,その他の客観的事実に基づいて認定しなければならない。」と規定していたが,乙17によれば,その趣旨については,規則10-2(勤務評定制度)において,「勤務成績を考慮する場合には,この規則に定める勤務評定を用いるものとする。」旨規定して,勤務成績の判定は勤務評定制度によることになっているので,そのことを注意的に確認したものであって,単に「勤務評定の結果を考慮して」とのみ規定し,具体的な基準を規定しなかったのは,勤務評定の結果を具体的にどのように考慮するかは各省庁に任せることにしたものであると認められるのであって,これからすれば,上記通牒の定めは,人事院細則1条についての上記解釈の妨げとなるものではないというべきである。 そして,前記のとおり,人事院細則9-8-3の1条の規定は,昭和44年の人事院規則9-8の全部改正により,ほぼそのままの形で同規則に39条として規定され,退職時特別昇給に関する基準を定めた同条1項3号の規定は平成16年人事院規則9-8-52による改正まで存続したのであり,その経緯に照らしても,昭和44年全部改正後の人事院規則9-8の39条の規定は,人事院細則9-8-3の1条と同様に,人事院規則9-8の39条各号の定める基準に該当する限り,同条にい 続したのであり,その経緯に照らしても,昭和44年全部改正後の人事院規則9-8の39条の規定は,人事院細則9-8-3の1条と同様に,人事院規則9-8の39条各号の定める基準に該当する限り,同条にいう「勤務成績の特に良好な職員」であると推定され,したがって,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとする趣旨のもの解される。このことは,前記のとおり,昭和44年の人事院規則9-8の全部改正において,通常の勤務において特に勤務成績が良好なものについての特別昇給の制度が特別昇給定数内の特別昇給として整理され,同規則37条において,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」の具体的認定基準が同規則37条1項各号において定められた上,同規則38条において,「懲- 36 -戒処分を受け,当該処分の日から1年を経過しない職員」等が適用除外と規定されたことと対比しても明らかであり,とりわけ,同規則37条1項1号において,「勤務成績が特に優秀であることにより表彰を受けた場合(第39条第2号に該当し,同条後段の規定により人事院の承認を得た場合を除く。)」として,同規則39条2号の基準を「職員の勤務成績が特に良好である場合」の具体的認定基準の趣旨で規定している文理からも裏付けられるところである。 以上のとおり,国家公務員である一般職の職員についての退職時特別昇給を定めた人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号の規定は,その沿革及び趣旨に照らし,同号(20年以上勤続して退職する場合)に該当する限り,勤務成績の特に良好な職員と推定され,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職 条3号の規定は,その沿革及び趣旨に照らし,同号(20年以上勤続して退職する場合)に該当する限り,勤務成績の特に良好な職員と推定され,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとする趣旨のもの解される。しかるところ,退職時特別昇給の制度は,昭和26年10月5日から適用された人事院細則9-8-3の規定(1条3号)に由来するものであり,平成16年人事院規則9-8-52により人事院規則9-8の39条3号が削除されて同制度が同年5月1日をもって廃止されるまでの50年余の間,同号に基づく特別昇給が行われてきたものであり,前記のとおり実態として20年以上勤続して退職する場合に該当する職員のほぼ全員について一律に特別昇給させる退職時特別昇給の運用がされていたものである。20年以上という長期間勤続したことをもって,公務の運営に多大の貢献をしたものと評価し,その功績をもって職員の勤務成績が特に良好であることの徴表とすること自体は,何ら不合理であるということはできない。また,人事院細則9-8-3の制定や昭和44年の人事院規則9-8の全部改正の際,退職時特別昇給の制度について批判的意見が存した形跡はうかがわれず,平成16年人事院規則9-8-52により廃止されるまでの間,50年余の長期間にわたり上記のような退職時特別昇給の運用が行われてきたことに照らすと,少なくとも,人事院細則9-8-3の制定ないし昭和44年の人事院規則9-8の全部改正当時にあっては,20年以上勤続- 37 -したこと自体が一般的に勤務成績が特に良好であると評価するに足りる事由であるとの社会通念が存したものと推認される。さらに,20年以上勤続して退職する職員について,勤務成績の特に良好な職員と推定することにより,特別昇給を に勤務成績が特に良好であると評価するに足りる事由であるとの社会通念が存したものと推認される。さらに,20年以上勤続して退職する職員について,勤務成績の特に良好な職員と推定することにより,特別昇給を行うことができるものとすることは,勤務成績が特に良好な職員を抜擢優遇し,信賞を明らかにし,公務員の勤務に励みをつけようとする一般職の職員の給与に関する法律の特別昇給制度の趣旨にも合致するものということができる。そうであるとすれば,20年以上勤続して退職する場合に該当する限り,勤務成績の特に良好な職員と推定し,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとする人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号の規定は,一般職の職員の給与に関する法律の特別昇給に関する規定(現行法の8条7項)に反するものではないというべきである。また,20年以上勤続して退職する職員について,勤務成績の特に良好な職員と推定するにとどめ,勤続中の勤怠が不良であるなど20年以上勤続したにもかかわらず勤務成績が特に良好であると評価することを相当としない特段の事由が認められる職員については例外的に特別昇給を行わない余地を残す限りにおいて,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号の規定は,勤務成績の評定について定めた国家公務員法72条の規定の趣旨に反するものではないというべきである。 以上検討したところによれば,国において,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号の規定に基づき,20年以上勤続して退職する場合に該当する職員について勤務成績の特に良好な職員と推定し,特別昇給をさせる運用をしてきたことは, 年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号の規定に基づき,20年以上勤続して退職する場合に該当する職員について勤務成績の特に良好な職員と推定し,特別昇給をさせる運用をしてきたことは,一般職の職員の給与に関する法律の特別昇給に関する規定(現行法の8条7項)や国家公務員法72条の規定の趣旨に反するものではないというべきである(もっとも,20年以上勤続して退職する場合に該当する職員について,勤務成績の特に良好な職員とみなして,勤続中の勤怠が不良であるなど20年以上勤続したにもかかわらず勤務成績が特に良好であると評価- 38 -することを相当としない特段の事由が認められる職員についてまで一律に特別昇給させる運用が行われていたとすれば,当該職員に関する限り,当該特別昇給の運用は,一般職の職員の給与に関する法律及び国家公務員法の趣旨に照らして,問題があったというべきである。)。 (5)そこで,国家公務員である一般職の職員についての退職時特別昇給に関し以上検討したところに基づき,本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給の適否につき検討する。 前記のとおり,本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給は,結果的にみて,20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職手当の減額措置を受けたことのないものについて,給与条例5条6項が特別昇給の要件として規定する「市長が特に必要と認めた場合」に該当するものとして行われたものである。 前記のとおり,給与条例5条6項が特別昇給の要件として規定する「市長が特に必要と認めた場合」については,その判断を広く市長の裁量にゆだねる趣旨のものではなく,普通昇給の要件として規定されている職員の勤務成績が良好であることを前提に,国及び他の地方公共団体の事情等をしんしゃく と認めた場合」については,その判断を広く市長の裁量にゆだねる趣旨のものではなく,普通昇給の要件として規定されている職員の勤務成績が良好であることを前提に,国及び他の地方公共団体の事情等をしんしゃくして,「職員の勤務成績が特に優秀である場合」に準じる事由をその裁量により認定して特別昇給を行うことができるものとする趣旨の規定であると解される。 前記のとおり,国においては,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号ないしその前身である人事院細則9-8-3の1条3号の規定に基づき,20年以上勤続して退職する場合に該当する職員について,勤務成績の特に良好な職員と推定し,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとして,特別昇給させる運用が,同人事院細則が適用された昭和26年10月5日以来50年余の長期間にわたり行われてきたところ,20年以上という長期間勤続したことをもって,公務の運営に多大の貢献をしたものと評価し,その功績- 39 -をもって職員の勤務成績が特に良好であることの徴表とすること自体は,何ら不合理であるということはできず,上記のような退職時特別昇給の基準を定めた人事院細則9-8-3や昭和44年全部改正に係る人事院規則9-8の規定は,20年以上勤続したこと自体が一般的に勤務成績が特に良好であると評価するに足りる事由であるとの社会通念に立脚したものであったと推認され,かつ,20年以上勤続して退職する職員について,勤務成績の特に良好な職員と推定することにより,特別昇給を行うことができるものとすることは,勤務成績が特に良好な職員を抜擢優遇し,信賞を明らかにし,公務員の勤務に励みをつけようとする一般職の職員の給与に関する法律の特別昇給 推定することにより,特別昇給を行うことができるものとすることは,勤務成績が特に良好な職員を抜擢優遇し,信賞を明らかにし,公務員の勤務に励みをつけようとする一般職の職員の給与に関する法律の特別昇給制度の趣旨にも合致するものであったということができるのであって,20年以上勤続して退職する職員について,勤続中の勤怠が不良であるなど20年以上勤続したにもかかわらず勤務成績が特に良好であると評価することを相当としない特段の事由が認められない限り,一般職の職員の給与に関する法律が特別昇給の要件として規定する「職員の勤務成績が特に良好である場合」に該当するものとして特別昇給させることは,同法の当該規定(現行法の8条7項)や国家公務員法72条の規定の趣旨に反するものではないというべきである。そして,これらの事情は,すべて,地方公務員である一般職の職員についてもそのまま妥当するところであるから,上記のような国における一般職の職員についての退職時特別昇給の運用を踏まえて,20年以上勤続して退職する職員について,勤務成績が特に優秀であると推定し,勤続中の勤怠が不良であるなど20年以上勤続したにもかかわらず勤務成績が特に優秀であると評価することを相当としない特段の事由が認められない限り,給与条例5条6項が同項所定の特別昇給の要件として規定する「市長が特に必要と認めた場合」に該当するものとして,特別昇給させることは,勤務成績の評定について定めた地方公務員法40条の規定の趣旨に反するものではなく,給与条例5条6項の規定により市長に付与された裁量権の範囲を逸脱するものではないというべきである。 前記のとおり,本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給は,結果的- 40 -にみて,20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退 はないというべきである。 前記のとおり,本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給は,結果的- 40 -にみて,20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職手当の減額措置を受けたことのないものというのであり,これらの者について他に勤続中の勤怠が不良であるなど20年以上勤続したにもかかわらず勤務成績が特に優秀であると評価することを相当としない特段の事由を認めるに足りる証拠もないから,これらの者についてA又はBが市長として退職時特別昇給を行ったことは,地方公務員法40条の規定の趣旨に反するものではなく,給与条例5条6項の規定により市長に付与された裁量権の範囲を逸脱するものではないというべきである。 なお,原告らは,給与条例5条6項の規定に基づいて退職時特別昇給を行うためには,市民の一般の退職金の水準からみて公正公平でかつ比例原則に合致するものであることが必要であるところ,A及びBは,財政難の下において,市民の一般の給与水準より高い水準で退職金を受領することができているところに更に加算支給をしてきたのであるから,市長の裁量権を逸脱している,大阪市の職員については,共済制度の下で退職年金や退職一時金が整備されているにとどまらず,大阪府市町村職員互助会の退職給付金制度の下で500万円以上の水準でヤミ退職金ともいわれる退職給付金が支給されるなど,国の一般職の職員と比べて厚遇されているのであるから,大阪市における退職時特別昇給の運用を地方公務員法24条3項の均衡の原則により正当化することはできない,などと主張する。 しかしながら,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号に基づく国の一般職の職員についての退職時特別昇給の運用は,20年以上勤続して退職する職員について,勤続 しかしながら,人事院規則9-8(平成16年人事院規則9-8-52による改正前のもの)39条3号に基づく国の一般職の職員についての退職時特別昇給の運用は,20年以上勤続して退職する職員について,勤続中の勤怠が不良であるなど20年以上勤続したにもかかわらず勤務成績が特に良好であると評価することを相当としない特段の事由が認められない限り,特別昇給をさせる限度において,国家公務員法72条の規定の趣旨及び一般職の職員の給与に関する法律の特別昇給に関する規定に反するものではなく,少なくとも本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給に関する限り,地方公務員法40条の規定の趣旨に反するものでは- 41 -なく,給与条例5条6項の規定により市長に付与された裁量権の範囲を逸脱するものではないことは,以上説示したとおりであり,そうである以上,当該退職時特別昇給に基づいて退職金が支給されることになり,その結果,共済制度や厚生制度の存在ないし民間事業の従事者の退職金の実情に照らして原告らの主張するとおり大阪市の職員が退職に当たり厚遇される結果となったとしても,そのことのゆえに当該退職時特別昇給が給与条例5条6項の規定により市長に付与された裁量権の範囲を逸脱又は濫用したということはできず,当該退職時特別昇給が地方公務員法24条3項の均衡の原則に反することになるものでもない。 (6)以上検討したところによれば,本訴において審理の対象とされている退職時特別昇給については,地方公務員法40条の規定の趣旨に反するものではなく,給与条例5条6項の規定により市長に付与された裁量権の範囲を逸脱するものではないから,当該退職時特別昇給に係るA又はBの市長としての行為は,その余の点について判断するまでもなく,大阪市に対する不法行為を構成しないものというべきである。 裁量権の範囲を逸脱するものではないから,当該退職時特別昇給に係るA又はBの市長としての行為は,その余の点について判断するまでもなく,大阪市に対する不法行為を構成しないものというべきである。 結論 以上によれば,原告らの本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官西川知一郎- 42 -裁判官和久一彦裁判官田中健治は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官西川知一郎
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