- 1 -主文 被告は,原告に対し,123万5360円及びこれに対する平成18年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,4989万6877円及びこれに対する本訴状送達の日(平成18年1月16日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告に勤めていた原告が,在勤中に職能資格等級につき女性であることを理由とする差別的な取扱を受けたと主張し,被告による原告に対する不法行為を理由とした損害賠償として,差別がなければ格付けされ支給を受けることのできた賃金等と既払い賃金等との差額分の支払い及び慰謝料を請求した事案である。 これに対して,被告は,原告に対する差別的取扱を否認し,予備的には原告が被告に請求する本件不法行為債権には消滅時効が成立しているとして請求を争っている。 前提事実(末尾に証拠等を掲記したところ以外は当事者間に争いがない。)(1)被告は,旅行代理店業を営む株式会社である。 原告は,昭和42年9月1日に被告に採用されて,国内旅行部に配属され,以降,配属各部署における業務に従事し,平成13年12月28日に早期退職優遇制度の適用を受けて退職した。 - 2 -被告における月例賃金は,毎月月末締め当月25日払いである。(弁論の全趣旨)(2)原告に支給された基本給及び調整給(平成9年の制度においては第一基本給及び第二基本給)は,別紙賃金債権目録1(月例賃金)中の原告に支給された賃金額欄記載のとおりである。(弁論の全趣旨)原告に対して支給された一 れた基本給及び調整給(平成9年の制度においては第一基本給及び第二基本給)は,別紙賃金債権目録1(月例賃金)中の原告に支給された賃金額欄記載のとおりである。(弁論の全趣旨)原告に対して支給された一時金の金額は,別紙賃金債権目録2(一時金)中の原告に支給された一時金欄記載のとおりである。(弁論の全趣旨)(3)被告における処遇・賃金制度(甲1,2の1,乙1の1~13)ア原告が被告に入社した当時の賃金体系のうち,管理職級,専門職級にあるものの賃金は別に定めるほかは,基準賃金は基本給と家族手当が占め,基本給は,基礎給と職能給に分かれ,そのうち基礎給は新中卒,新高卒,短大卒,大学二部卒(男子)及び大学卒ごとに初任給(基礎金額)を定めるほか,年令分金額及び勤続分金額に分かれ,年令分金額は満5才を超える1才につき250円を満30才まで加算し,勤続分金額は勤続1年につき240円とし,満10年まで加算することとされており,職能給は職級を1職級(1格,2格,3格),2職級(1格,2格)3職級,4職級,5職級とし各人職級に応じ最低額を定めていた。 職能給の昇級は,各人の職級別に執務業績並びに勤怠に基づき下記により行うものとしていた。 大区分ABC失格者人員比15%70%15%小区分abcde人員比<7.5%>7.5%70%≦10%≧5%査定内容執務業績が秀れて執務業績執務業績が普通よりいるが普通やや劣る- 3 -社員の職級別並びに採用時職級格別基準としては,職級を職務の困難度,責任度及びその職務遂行に要求される能力の程度による職務の段階区分と定義した上で,上記のように1職級から5職級までをそれぞれ1から8までとし,その上に,9として専門職級,10として管理職級を設けていた。 そして,新中卒は1職級1格, 能力の程度による職務の段階区分と定義した上で,上記のように1職級から5職級までをそれぞれ1から8までとし,その上に,9として専門職級,10として管理職級を設けていた。 そして,新中卒は1職級1格,新高卒及び短大卒は1職級2格,大学二部卒(男子)は1職級3格,大学卒は2職級1格に採用時に格付けしていた。 被告における上記当時の登用取扱基準によれば,職級,格の昇格登用は毎年4月1日付をもって実施することとされ,登用の決定について職級別査定要素は下記のとおりとしていた。 2職級1格まで人事考課職務能力評定(勤怠)属人要素2職級2格イ〃〃(〃)〃ロ〃〃(〃) 職級イ〃〃(〃)属人要素ロ〃〃(〃) 職級〃〃(〃)評定期間は毎年3月11日より翌年3月10日までの1年間とする。 登用有資格者としては下記基準に達した者を有資格者としていた。 1職級2格1職級3格2職級1格2職級2格3職級在格年数在格年数在格年数在格年数在格年数新中卒3年2年2年2年2年注新中卒については,1職級2格への登用の場合,入社時の年令が15才を超える1年につき1年を短縮する,但し短縮年数は3年を限度とする新高卒2年2年2年2年- 4 -短大卒2年2年2年2年大学二部卒(男子)2年2年2年大学卒2年2年4,5職級への登用は,現職級に登用後経験した年数3年以上の者を有資格者とする。但し5職級への登用は任用による。 管理職級,専門職級への登用は任用による。 当時の被告においては,その他,人事考課,職務能力評定等についての評定区分や評定要素を詳細に規定し,登用評点を合算し高点者より順次決定していた。 そして,登用人員としては,下記の基準により定めるとして 時の被告においては,その他,人事考課,職務能力評定等についての評定区分や評定要素を詳細に規定し,登用評点を合算し高点者より順次決定していた。 そして,登用人員としては,下記の基準により定めるとしていた。 1職級1格→1職級2格登用有資格者の40%を基準として定める1職級2格→1職級3格〃30%1職級3格→2職級1格〃30%2職級1格イ〃30%→2職級2格ロその都度定める2職級2格イ登用有資格者の20%を基→3職級準として定めるロその都度定める3職級登用有資格者の15%を基→4職級準とし,その都度定めるさらに,被告は,当時,自動昇格制を規定し,次の基準に達したものは自動的に上位職級に昇級するとしていた。 1職級1格在格7年- 5 -1職級2格〃10年1職級3格〃10年2職級1格〃12年但し休職期間は年単位で差引く(以上につき乙1の1)イその後,被告の上記賃金体系のうち,昭和53年には,自動昇格制が年限昇格制と呼称変更され,在格年限が変更となり,昭和55年には,当該年限昇格制が「特に支障のない場合」に制限されるという改正がなされている。(乙1の4,5)ウ被告は,平成2年,賃金体系のうち職能給制度を改定し,職能資格を上記のような従来のものから,一般職と監督職に分け,一般職については4級から1級まで,その上を監督職3級から1級までとし,昇給区分を次のとおりとした。 職能資格大区分ABC失格者監督職1級人員比20%60%20%監督職2級小区分abcde監督職3級人員比≦10%≧10%60%≧10%≦10%一般職1級人員比15%70%15%一般職2級一般職3級人員比10%80%10%一般職4級査定内容執務業績が秀れて 督職3級人員比≦10%≧10%60%≧10%≦10%一般職1級人員比15%70%15%一般職2級一般職3級人員比10%80%10%一般職4級査定内容執務業績が秀れて執務業績執務業績が普通よりいるが普通やや劣るそして,登用体系において登用有資格者を次のとおりとした。 監督職2級在級3年- 6 -監督職3級在級3年一般職1級在級2年一般職2級在級2年一般職3級在級2年一般職4級在級2年登用人員は次のとおりとした。 監督職2級→監督職1級登用有資格者の20%を基準として定める監督職3級→監督職2級〃25%一般職1級→監督職3級〃35%年限昇格制は次のとおりとした。 すなわち,次の基準に達したものは原則として上位資格等級に昇格する。 但し,評価Dを1項目でも受けた者及び勤怠不良の者については年限昇格制を適用しない。 一般職1級在級10年一般職2級在級2年一般職3級在級2年一般職4級在級2年尚,休職期間は年単位で差引く従来の職能資格の新職能資格への移行後の格付は下記の基準で行うとされている。 一般職現行職級新職能資格5職級係長監督職1級- 7 -4職級監督職2級3職級監督職3級2職級2格一般職1級2職級1格一般職2級1職級3格一般職3級1職級2格一般職4級(以上につき乙1の10の1,2,乙1の11)エ被告は,平成9年,職能資格の呼称を改め,別表のとおりとした。従来の職能資格との関係は,Jクラスが従来の一般職で,Sクラスが従来の監督職であり,Tクラスが専門職,Mクラスは管理職を指している。(乙1の12)オ被告は,平成11年,被告の職員を組織する組合である阪急交通社労働組合と協定を締結し,職能資格・役 Sクラスが従来の監督職であり、Tクラスが専門職、Mクラスは管理職を指している。(乙1の12)被告は、平成11年、被告の職員を組織する組合である阪急交通社労働組合と協定を締結し、職能資格・役職規程、S・Jクラス賃金規程、S・Jクラス人事考課規程について別紙のとおり合意した。(乙1の13) 【事実】 被告における原告の経歴(甲4,乙2の1)年月日辞令の内容 試しの雇用、旅行部有楽町営業所勤務、5級職社員に採用 基本給昇給 1職級2格(基本給昇給) 基本給昇給 旅行部東京営業所勤務 1職級3格(基本給昇給) 基本給昇給 旅行部大井町営業所勤務 基本給昇給 東京旅行営業部海外旅行課勤務 基本給昇給 東部旅客営業部新橋営業所勤務 2職級1格(基本給昇給) 東部旅客営業部業務課勤務 基本給昇給 旅客営業本部東部旅客営業部海外旅行販売開発課勤務 基本給昇給 同上 2職級2格(基本給昇給) 基本給昇給 同上 東部旅客営業部本部営業所海外旅行販売開発課勤務 基本給昇給 同上 東部旅客営業部本部営業所業務課勤務 基本給昇給 4.1~63.4.1いずれも4.1付で基本給昇給 東日本旅客営業部業務課勤務 東日本旅客営業部有楽町営業所勤務 基本給昇給 東日本旅客営業部有楽町営業所旅行セ .1いずれも4.1付で基本給昇給63. 7. 東日本旅客営業部業務課勤務9. 東日本旅客営業部有楽町営業所勤務平元. 4. 基本給昇給9. 東日本旅客営業部有楽町営業所旅行センター勤務2. 2. 東日本旅客営業部神田営業所(ホテルオークラ)4. 基本給昇給7. 2職級2格から新職能資格一般職1級へ3. 4. 国内旅行企画部東日本あらうんどツアーセンター勤務- 9 -~5.4.1いずれも4.1付で基本給昇給6. 2. 国内旅行部東日本あらうんどツアーセンター勤務4. ~8.4.1いずれも4.1付で基本給昇給 争点及びこれに対する当事者の主張(1)被告による原告に対する処遇上の差別の有無(不法行為の有無)【原告の主張】ア不法行為被告における昇格の取り扱いは,年功的に決定されており,平成2年当時においては,年限昇格制をとることが明示されていた。これによると,在級年数によって原則として上位資格等級に昇格することが定められ,一般職4級に2年,同3級に2年,同2級に2年,同1級に10年在級することによって次の上位の資格等級に昇格することとなっており,例外としては,評価Dを一項目でも受けたもの及び勤怠不良のものとされていた。 そして,平成9年においてそれまでの取り扱いを基礎に,昇格資格が定められた。これによると,年限昇格として,J4からJ3へは2年,J3からJ2へは2年,J2からJ1へは2年,J1からS3へは10年で昇格するものとされたほかに,昇格有資格者として最小滞留年数が定められ,J1への昇格までは年限昇格制と同様であるが,S3以上の昇格についてはJ1からS3へは2年,S3からS2へは3年,S2からS1へは3年と定められていた。 原告は,その経験年数ならびに担当する職務及びその への昇格までは年限昇格制と同様であるが,S3以上の昇格についてはJ1からS3へは2年,S3からS2へは3年,S2からS1へは3年と定められていた。 原告は,その経験年数ならびに担当する職務及びその職務遂行能力からすると,平成2年には監督職1級,平成9年にはS1の等級に昇格していてしかるべきであった。 被告は,男性社員については,年功的に昇格させ,原告と同期入社の男性は,平成2年の段階では監督職1級に格付けられていた。にもかかわらず,被告が原告の格付けを低い等級にした理由は同人が女性であることを- 10 -理由とするものである以外にない。原告には,年限昇格制の適用除外と規定されるD評価ないし勤怠不良と評価される事情はなく,また,年功的格付け制度の運用から除外されるべき事情は何ら存在しない。 平成17年に入って,原告が東京都労働相談情報センターを介して過去の格付けの根拠を問い質したところ,昭和55年以降の評価が普通か少し低い程度であるとのことであった。そして,有給休暇の申請が当日であることがほとんどであったとか,遅刻が多かった,仕事が遅れることがあった,昭和57年,58年の社内研修に欠席したなどの事象がその根拠であると説明されたが,特段,昇格から排除されるような理由とはいえず,またこれらの指摘はまったく事実に反する。 原告と同年代に入社した女性社員の昇格格付けはS2が最上位であり(原告と同時期に入社したものではないが,たった1名のみM2まで昇格したケースがあって,これが最上位の格付けである),これからみても被告において原告と同年代の女性社員の格付けにおいて,女性であることを理由とする差別が存在したことは明らかである。 イ損害原告に対して支給された基本給等は,別紙賃金債権目録1(月例賃金)記載のとおりであり(平成11年以降は移行調整金 付けにおいて,女性であることを理由とする差別が存在したことは明らかである。 イ損害原告に対して支給された基本給等は,別紙賃金債権目録1(月例賃金)記載のとおりであり(平成11年以降は移行調整金を含む),原告が前記のとおり差別がなければ監督職1級ないしS1に格付けられていれば支給されていたはずの基本給等・資格手当は原告に支給されるべき賃金額欄記載のとおりである。したがって,原告はその差額分の賃金の支給を受ける権利を侵害された。また,原告が監督職1級ないしS1の資格にあったとすれば支給を受けられた一時金額は別紙賃金債権目録2(一時金)記載のとおりである。さらに,原告が差別されたことによって失った退職金は,S1であれば支給された金額から実際に支給された金額を差し引いた1144万5156円となる。 - 11 -被告の労基法4条違反の行為は不法行為に該当するもので,原告は上記差額金合計4014万6659円の損害を蒙ったのみならず,差別といじめによる精神的苦痛を余儀なくされ,これを慰謝するに足りる慰謝料は600万円を下らない。また,原告は本件訴訟遂行に際して代理人との間で,上記合計金額の10%に相当する弁護士費用の支払いを約した。 【被告の主張】被告の基本給の加算昇給制度は,第1次的には「人事考課による査定内容」,第2次的には人件費など予算内での「全社的人員比」を考慮して,毎年4月1日(平成11年以降は翌年4月1日),会社の経営判断により決定するものであって,原告主張の如く,年功的に昇給が自動的に決定されるものではない。 登用有資格者は,真に上位職能資格者にふさわしいか否か,登用に関する職務能力査定(人事考課査定)を受け,登用に不適格の要素のある区分Dの者を除く者のみが対象者となり,そのうち一定の者のみが登用される。 登用(原告の言う昇格 職能資格者にふさわしいか否か,登用に関する職務能力査定(人事考課査定)を受け,登用に不適格の要素のある区分Dの者を除く者のみが対象者となり,そのうち一定の者のみが登用される。 登用(原告の言う昇格)は,毎年1月1日(平成11年以降は翌年4月1日),会社の経営判断により決定される。 一般職は,監督職と違って,下級者の指導監督を行うこともなく,上級者の指示の下に,定型的日常業務を行うことを職務内容とする者であるので,よほどの不適格(評価D),勤務懈怠のない限り,一般職の範囲に限って年限による職能資格の昇格を認めたものである。 監督職以上については,当然ながら一般職におけるような年限昇格制の規定はない。監督職以上における上位職能資格者への登用は,正に各人の職務能力の優劣,これに対する査定と,全社的従業員構成とに基づき,会社経営者が決定すべき事柄である。 被告においては,平成9年4月の職能資格制度,平成11年4月の人事考課制度,賃金制度を改定したが,職能資格と職務内容との対応,登用体系の- 12 -うち登用資格者,登用人員,一般職の年限昇格制については内容に変更はない。 (2)原告の損害【原告の主張】ア月例賃金原告が被告から差別を受けることなく職能等級の格付けを得ていれば支払われるはずの賃金は,別紙賃金債権目録記載1(月例賃金)のとおりであり,差額分合計2434万4760円の賃金を受ける権利を侵害されたものである。 イ一時金原告が監督職1級ないしS-1の資格にあったとすれば支給を受けられた一時金額は別紙賃金債権目録2(一時金)記載のとおりであり,差額金総額は合計440万6419円となる。 ウ退職金早期退職優遇制度の適用による退職金は,基礎額に定年まで勤務したとする勤続年数に対応した係数を乗じた通常の退職金額に早期退職特別加算 であり,差額金総額は合計440万6419円となる。 ウ退職金早期退職優遇制度の適用による退職金は,基礎額に定年まで勤務したとする勤続年数に対応した係数を乗じた通常の退職金額に早期退職特別加算金である700万円(これは年齢で定まるもので,最終基本給・資格等にかかわらない)と期間限定特別加算金の合計額である。 ⅰ原告に支給されるべきであった通常の退職金原告が,昭和63年以降,S-1相当の5職級=監督職1級に格付けられていたとすれば,通常の早期退職優遇制度に基づく退職金は,第一退職金算定基礎額の23万3430円(S-1に13年以上在職であるから上限の金額である。)と第二退職金算定基礎額の4万9600円(これはS・Jクラス共通,23号である。)の合計額である28万3030円に定年まで勤務したものとした勤続年数に対応する係数である74.42(これは実際の原告の支給率と同じ)を乗じた2106万3- 13 -092円となる。 ⅱ原告に支給されるべきであった期間限定特別加算金期間限定特別加算金は,退職時の第一基本給と第二基本給と資格手当の合計に20ヶ月を乗じた金額であり,原告が差別されることなく昇格していた場合の退職時の第一基本給の23万6000円と第二基本給の13万5700円と資格手当の9万5200円の合計額46万6900円に20を乗じた933万8000円となる。 ⅲ原告に支給されるべきであった退職金合計額したがって,原告に支給されるべきであった退職金は,①通常の退職金2106万3092円,②期間限定特別加算金は,933万8000円,③早期退職特別加算金700万円の総合計3740万1092円であった。 ⅳ退職金差額原告が差別されたことによって失った退職金は,S-1であれば支給されたはずの3740万1092円から実際に支給された金 退職特別加算金700万円の総合計3740万1092円であった。 ⅳ退職金差額原告が差別されたことによって失った退職金は,S-1であれば支給されたはずの3740万1092円から実際に支給された金額である2679万5394円を差し引いた1060万5698円となる。 エ慰謝料原告は,被告の不法行為によって,差別といじめによる精神的苦痛を余儀なくされた。 被告の差別は,原告の33年の長きにわたる実績と努力について入社16年以下の評価を与え,刻印し続けるという過酷なものであった。さらに被告は,この差別を維持すべく原告から仕事をとりあげるなどのいじめを行い,徹底的にこの差別があたかも原告の能力欠如によるものであるかのごとく取り扱った。このことにより原告は心身ともに打撃を受け,ついに早期退職を余儀なくされたものであり,この精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料は,少なく見積もっても600万円を下らない。 - 14 -オ弁護士費用原告は,本件訴訟遂行に際して代理人との間で,上記合計金額4535万6877円の10パーセントに相当する454万円の弁護士費用の支払いを約した。 以上による損害を合計すると4989万6877円となる。 【被告の主張】原告の損害についてはいずれも争う。 (3)消滅時効の成否【被告の主張】原告の被告に対する不法行為を理由とする損害賠償債権は,本訴提起に先立つ調停申立前3年以上前に発生したものである。 被告は時効を援用する。 原告は訴状の請求原因で「格付け実施の都度,原告が昇格しない根拠を明らかにするよう求めて苦情を申し立ててきた・・」こと,準備書面(1)で「違法な格付けと差別的低賃金を余儀なくされてきたとの認識はあった・・」ことを認めている。 消滅時効の進行には「損害の程度,数額を具体的に知ることを要しない」とするのが ・・」こと,準備書面(1)で「違法な格付けと差別的低賃金を余儀なくされてきたとの認識はあった・・」ことを認めている。 消滅時効の進行には「損害の程度,数額を具体的に知ることを要しない」とするのが大判大正9年3月10日判決以来の判例である。 よって,上位職能資格者への登用が実施される1月1日以降,原告は既に民法724条所定の要件である「損害及び加害者を知りたるとき」の要件に欠けることなく,月払い,一時金等その弁済期より消滅時効は進行し,いずれも3年の経過をもって時効消滅している。 【原告の主張】本件は,民法709条に基づく損害賠償請求権を主張するものであるところ,損害賠償請求権の消滅時効起算点は,民法724条に定めるところの,「損害および加害者を知りたるとき」であり,これは,損害賠償請求権の要- 15 -件事実のすべてを知ることを意味する。 原告は,違法な格付けと差別的低賃金を余儀なくされてきたとの認識はあったが,損害を知ることはできなかった。すなわち,原告は,提訴直前に至るまで比較対照者に支給されている差別のない賃金を提訴可能なほどに知ることができなかったのであるから,消滅時効は進行しない。 原告は,内容証明郵便(平成16年12月16日)をもって,損害及び違法性にかかる特定性を欠いた損害賠償請求にかかる通知を行っており,これは消滅時効の中断に当たる。原告は,この催告の意思表示が被告宛に到達した日から6ヶ月以内である平成17年6月15日付をもって調停の申立をなした。 第3当裁判所の判断 証拠等によって認定できる事実前提事実に証拠(甲17,18,23,乙5並びに証人P1,同P2,同P3及び原告本人の尋問結果(詳細は末尾に掲記した。)のほかには各文の末尾に掲記したもの。)及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実を認定することができる ,18,23,乙5並びに証人P1,同P2,同P3及び原告本人の尋問結果(詳細は末尾に掲記した。)のほかには各文の末尾に掲記したもの。)及び弁論の全趣旨を総合すると以下の事実を認定することができる。 (1)原告と同年度入社の者との比較原告は,昭和42年9月1日採用の中途入社であるものの,平成4年に昭和42年入社の被告の従業員として他の者らとともに25年永年勤続者表彰を受けている。(甲12)旅客関係部署の同時期表彰者は原告を含めて12人いるところ,原告以外の11名はいずれも男性であり,同人らは退職者を除いていずれも職能資格等級が管理職のMか監督職のSになっており,一般職に留まっているのは原告のみである。(甲12,原告本人【41,42頁】)(2)被告の社内的な状況被告の全社的な対外統計資料及びそれを分析した原告代理人の資料による- 16 -と,賃金面で女子のそれが比較的低額に抑制されている実態にあることが認められる。(甲16の1ないし8,甲22)被告の東部旅客営業部業務課業務係「年度別・営業所別名簿」と題する書面によっても,昭和61年1月1日当時の状況においては,男性社員は年功的に職能等級が上昇しているのに対して,女性社員は3職級にある一部の者を除いてほぼ例外なく一般職である2職級に留まっている。(甲21)(3)原告についての査定前提事実によれば,原告は昭和50年4月1日に2職級1格,昭和54年4月1日に2職級2格に職能等級が昇格しており,被告における平成2年の賃金制度及び登用体系の改定により原告は従来の2職級2格に相当する一般職1級に格付けされていたところ,前提事実にある被告の登用体系の年限昇格制によれば,原告は平成2年当時一般職1級に既に10年以上在級していた。 平成11年当時,原告は一般職1級の在級年数が20年以上に 1級に格付けされていたところ,前提事実にある被告の登用体系の年限昇格制によれば,原告は平成2年当時一般職1級に既に10年以上在級していた。 平成11年当時,原告は一般職1級の在級年数が20年以上に達していたところ,被告の原告に対する平成11年12月末のJクラス人事考課表(賞与・昇給用)では,昇格評定についてBの「できれば,昇格させたい」とし,翌年である平成12年11月末のJクラス人事考課表(賞与・昇給)では,昇格評定についてCの「今回,昇格の必要なし」とし,平成13年11月末のJクラス人事考課表(賞与・昇給)では,昇格評定について同様にCとしている。ちなみに,当時の原告に対する1次考課者は平成11年,12年がP3,平成13年がP4,2次考課者は平成11年がP2,平成12年,13年がP5であった。(乙3の1ないし3)(4)原告の被告への申し入れなり質問等原告は,昭和61年1月1日当時の「年度別・営業所別名簿」を見て,自分と大体同じころに入社した男性社員が自分より2ランクは上位に昇格していることが分かった。(甲21,甲23【2頁】)- 17 -平成2年に被告で年限昇格制が明文化されたとき,原告は昭和54年に2職級2格になった後に一切昇格していないことを認識しており,そのことが精神的な負担になっていた。(甲23【6頁】)被告では平成10年に組合との間で登用に関する苦情処理の仕組みができた。それまでに原告は上司からのいじめや昇格しないことについて納得がいかなかったことから,非登用者に対するクレーム処理会議を被告が組合本部と同年4月6日,7日に行うとの組合からの問いかけに対して東京本部に異議の申し立てをした。同年6月22日の会議に,原告は組合を通じて文書を提出し,会議にも出席して意見を述べた。 原告は,平成9年5月,東日本メディア部門 に行うとの組合からの問いかけに対して東京本部に異議の申し立てをした。同年6月22日の会議に,原告は組合を通じて文書を提出し,会議にも出席して意見を述べた。 原告は,平成9年5月,東日本メディア部門のカウンターを担当するようになり,当時の上司はP6部長であり,同年10月にはP7部長に交代し,平成11年4月からはP8部長,6月にはP9課長,P2部長となり原告は自分の処遇について相談した。同年10月1日からは原告はグリーニングツアーへ移動となり,P2部長のもとP3が上司となった。 被告では平成11年の査定分から人事考課に対するフィードバックが行われるようになり,原告は昇格評価にBが付いていることを知り,平成12年4月の昇格を期待したが,実現はしなかった。そのため,同年4月に原告は組合を通じて異議の申し立てをし,同年5月末に被告からこれに対する応答があったものの原告は納得ができなかった。 以上のとおりの事実を認定することができ,これに反する各証人及び原告の供述部分は採用できない。 争点(1)(不法行為)について前提事実(3)によれば,被告の登用制度として,職務等級について年限昇格制が採用されており,平成2年の改定時においては,一般職1級(J-1)から監督職(S-3)への昇格には在級10年とあることが認められる。また,前提事実(4)及び前記認定事実(3)によれば,原告は昭和54年4月1日- 18 -に2職級2格に昇給し,平成2年の改定時には2職級2格の在級年数が11年に,平成11年の改定時には一般職1級の在級年数が2職級2格の時期も含めて20年に達している(証人P2(第1回)【13,14頁】は,それ以前に同様の制度がないことを理由に平成2年の改定時が10年の在級年数の起算点であると証言するが,経過規定も設けずにいきなりそのような運用をする 達している(証人P2(第1回)【13,14頁】は,それ以前に同様の制度がないことを理由に平成2年の改定時が10年の在級年数の起算点であると証言するが,経過規定も設けずにいきなりそのような運用をすることがそもそも不自然であるし,原告が主張するように必ずしも平成2年以前から全く同じ取扱いがなされていたかどうかは定かでないものの,このような年限昇格制が2職級2格以外の下位等級については以前から存在していたことと併せ考えると平成2年以前から勤務している者についても当然適用されるものと考えるのが合理的かつ合目的であるはずである。それゆえ,同人の上記供述部分は信用できない。)。 しかるに,原告はこの間前提事実(4)のように昇給はしているものの,昇格を受けることなく推移している。また,この当時,原告には上位等級へ昇格しない例外事由たる評価Dを1項目でも受けたとか(あるいは評価項目で1項目でも評点1がある場合とか),勤怠不良といった事情が証拠上見当たらない。 この点,被告は,乙第3号証の1による原告についての平成11年のJクラス人事考課表に評点1があることを例外事由とする趣旨のようである。しかし,証拠(証人P2(第1回)【15,19,20頁】,(第2回)【5,14頁】)によると,被告の当時の上層部にあったP10専務なりP11常務が原告について監督者としてふさわしくないという発言があったこと,そのため,まず結論ありきで全社査定会議で昇格が適当でないということから原告所属部の中の管理課において原告の査定表(乙3の1)の任意の項目の一部を評点1に書き換えたと供述しており,もしそのような事情で原告が昇格しないこととなったのであれば,そのような事情自体が被告における人事考課の査定基準及び手順に照らした合理性・客観性に欠けるものとして原告に対する違法・不当な取 ており,もしそのような事情で原告が昇格しないこととなったのであれば,そのような事情自体が被告における人事考課の査定基準及び手順に照らした合理性・客観性に欠けるものとして原告に対する違法・不当な取扱いになるものというべきである。また,証拠(証人P3【27,28- 19 -頁】)からすると,翌年である平成12年の原告の昇格に関する人事考課表(乙3の2)で上司のP3なりP5が協調性について評点1を付けているのも,原告に対して当時の被告の職制が既に不当な対応を平成11年4月以降とったことに起因して原告と職場の関係が良くなくなっている状況下で付けた評価であり,客観性に欠けるものというべきである。 上記のような原告に対する被告の処遇状況に,前記認定事実(1),(2)による原告のほぼ同時期入社の男性社員との職能等級の上昇状況の比較,さらには被告の社内全体あるいは原告の所属する職場の男性社員と女性社員との間の職能等級に関する昇格上の差異をも参照すると,被告は男性社員を女性社員に比較して優遇している状況が看取できる。 そして,前記認定事実(3)のように,平成11年の第1次及び第2次の人事考課者による原告に対する昇格評価がBであるにもかかわらず,翌12年4月に監督職であるS-3に昇格していない状況からすると,原告は,被告から女性であることを一因とした不当な差別を受けているものであることを有効に推認することができる。 これに対し,被告は,年限昇格制は一般職に限り適用されるもので,一般職から監督職への昇格には妥当しないものであると主張する。 確かに,前提事実(3),アのように被告は以前には自動昇格制を規定し,2職級1格までしか在格年数の記載がなかったことからすると,制度上は原告の入社当時は2職級2格から3職級への自動昇格といったものはなかったものといわざる アのように被告は以前には自動昇格制を規定し,2職級1格までしか在格年数の記載がなかったことからすると,制度上は原告の入社当時は2職級2格から3職級への自動昇格といったものはなかったものといわざるを得ない。 しかし,前提事実(3),イ,ウによれば,昭和53年に被告は賃金体系を改正し,それまでの自動昇格制を年限昇格制に呼称変更した上で,平成2年には従来の職能等級を一般職と監督職に分けて当該年限昇格制についても評価Dを受けた者や勤怠不良の者を除き一般職1級から上位等級への昇格の在級年数を10年として改定していることが認められる。前提事実(3),エ,オのよ- 20 -うに,その後も,被告は年限昇格については維持し,一般職1級に相当するJ-1については10年の在級年数で監督職に相当するS-3への昇格が規定されていることからすると,被告の前記主張は採用できない。 また,被告は,上記10年の在級年数の規定は監督職(S-3)への登用有資格を規定したにすぎないとも反論する。 しかし,前提事実(3),ウからも明らかなように,上位職級への登用有資格は別途規定されており,一般職1級(J-1)から監督職3級(S-3)への昇格のための有資格の在級年数は2年であること,実際に被告が主張するような10年の登用有資格とすると,反対解釈すれば男性従業員も含めて10年間も一般職から監督職への昇格ができないことになり不自然であることからすると,被告の上記説明には体系上・規定上の整合性がなく,実際の運用にも適合しないものとして採用できない。 そして,前記のように原告は昇格しない例外事由であるところの評価D(評点1)を1項目でも受けたとか,勤怠不良といった事情が平成2年時点で証拠上見当たらない。 してみると,原告が主張するように,平成2年には監督職3級に昇格していてしかるべき 由であるところの評価D(評点1)を1項目でも受けたとか,勤怠不良といった事情が平成2年時点で証拠上見当たらない。 してみると,原告が主張するように,平成2年には監督職3級に昇格していてしかるべきであったものというべきである。しかし,他方,原告が主張するにように,さらに平成9年にはS-1の等級に昇格していてしかるべきであったかどうかは,年限昇格制も一般職1級までしか規定されていないことからすると疑問といわざるを得ない。原告は,自らが係長やその後課長になっていった者のするような仕事をホテルオークラ,グリーニングツアーなどでしていたことなどを理由に自分があたかもそれら前後任者と同様の能力を有するがごとき主張をするが,被告においては職位(ポスト)と職能資格は必ずしもリンクしていないこと(証人P1【61頁】),原告自身が果たして上司からの信頼を得ることのできるような勤務態度,勤務実績であったかどうかは証拠(証人P1【33,34頁】,同P2(第1回)【12頁】,同P3【22,34~- 21 -36,38~40頁】)からすると疑問あるいは不明であることなどからすると,原告の職能等級の昇格につき証拠上認定可能なのは年限昇格制による保障の限度に留まるものといわざるを得ない。 以上によれば,被告は,従業員につき男性を優遇し,女性を上位の職能等級に登用しない傾向にあり,原告についてもそのような被告の処遇傾向が当てはまり,被告の原告に対する処遇は平成2年以降は妥当性を欠くものとして,あるいは少なくとも平成11年以降は上記のように不当な取扱いが推認されるものとして不法行為を構成するものといわざるを得ない。 それゆえ,原告は,平成2年4月1日以降,少なくとも監督職3級の職能等級による賃金を得ることができたのに,被告の原告に対する不当な差別待遇により一般職1級 不法行為を構成するものといわざるを得ない。 それゆえ,原告は,平成2年4月1日以降,少なくとも監督職3級の職能等級による賃金を得ることができたのに,被告の原告に対する不当な差別待遇により一般職1級,その後はJ-1に据え置かれることにより,その後の現実に支給された賃金との差額相当分の損害を被ったものである。 争点(3)(消滅時効)について原告は本件損害賠償請求の原因事実として,被告が原告に対して女性であることを理由に不当に職能等級を昇格させなかった処遇が不法行為を構成すると主張するものである。 不法行為の消滅時効の起算点については,民法724条で,被害者が損害及び加害者を知った時から進行するとしている。 これを本件についてみるに,前記認定事実(4)及び原告本人【9,41,42頁】によれば,原告は以前から残業代の給与支給の実態について男性従業員と比べた女性従業員への被告による取り扱いに差異があることに不満を有しており,原告自身の職能等級についても昭和54年4月に2職級2格に昇格して以降3職級に昇格していなかったところ,昭和61年には「年度別・営業所別名簿」を見て同期入社の男性社員が自分より2ランクは上位に昇格していること,平成2年には年限昇格制が明文化されたが,自分が昭和54年以来職能等級が昇格していないことが精神的負担になっていたこと,平成10年には組- 22 -合を通じて自己の登用に関する苦情処理を被告に申し立てるなどしていること,平成11年の昇格査定について原告が平成12年4月に組合を通じて異議の申し立てを被告にしていることからすると,原告は既にこのころまでには被告が原告に対して女性であることを理由とした差別処遇に及んでいること(加害者及び加害行為の認識),遅くとも平成2年あるいは平成11年には監督職3級に昇格していてしかるべ 原告は既にこのころまでには被告が原告に対して女性であることを理由とした差別処遇に及んでいること(加害者及び加害行為の認識),遅くとも平成2年あるいは平成11年には監督職3級に昇格していてしかるべきであったにもかかわらず被告により不当にそれが実行されていないこと(不法行為の認識),そのため,同期入社の男性社員と比べて職能等級が低いため賃金が本来であれば昇格後の賃金を支給取得できるところが低いままであるため,その差額分につき損害が生じていることをいずれも認識していたものであることが認められる。 また,前提事実(1)によれば,原告は平成13年12月28日に早期退職優遇制度の適用を受けて退職しているところ,少なくとも原告が被告を退職して以降は,上記差額分の損害が生じていること(損害の認識)を認識しているものと考えることができる。そして,本件のように,被告による違法行為が継続して行われ,そのため,損害も継続して発生する場合,消滅時効は,各損害について別個に進行すると解される。 ところで,弁論の全趣旨によれば,原告は本訴の提起(平成17年12月27日)をするまでに,民事調停を平成17年6月15日に申し立て,同調停は同年12月21日に不成立となっており,民事調停法19条により上記調停申立時に訴の提起があったものと見なされる。そして,原告がこれに先立つ平成16年12月16日に催告をしているようであるから,同日から遡って3年以内に生じた不法行為債権については時効が完成していないものと考えることができる。 したがって,原告の被告に対する本件不法行為債権は,上記に認定判断して限度で消滅時効にかかっており,被告は本訴においてこれを援用していることは当裁判所に顕著であり,当該請求部分については消滅時効が完成しているも- 23 -のといわざるを得ない。 これ 認定判断して限度で消滅時効にかかっており,被告は本訴においてこれを援用していることは当裁判所に顕著であり,当該請求部分については消滅時効が完成しているも- 23 -のといわざるを得ない。 これに対し,原告は,本件提訴直前に至るまで比較対照者に支給されている差別のない賃金を提訴可能なほどに知ることができなかったと主張する。 しかし,損害を知るとは,その程度や数額を具体的に詳細に知ることまでを要するものとはいえないこと,原告は同年度入社の男性社員と比べて職能等級が低いことを在職当時から認識しており,職能等級の金額については被告の労働組合から発行されている組合員必携などによる賃金関係の資料を参照してある程度は特定可能であることからすると,原告が被告を退職した時点において,被告に対する賠償請求が事実上可能な程度には原告は自分の昇格差別による損害を知っていたものと考えられ,比較対照者に支給されている賃金の具体的な数額を単に確定し得ないからといって原告が本訴提起直前まで権利行使をし得なかったとはいえないものというべきである。 したがって,上記原告の主張は採用できない。 争点(2)(損害)について原告は,被告の原告に対する不当な男女差別による退職金及び一時金(賞与)を含む賃金の差額分を損害として賠償請求しているところ,月例賃金及び一時金(賞与)については,継続的・回帰的給付として,各支給日に相当する日に損害としての差額が発生していると考えることができ,上記のように平成16年12月16日から遡って平成13年11月25日支給分(11月分)までの賃金及び同年12月10日支給分の一時金(賞与)については既に3年以上経過しているから消滅時効が完成していることになり,同年12月分の既払い賃金とこの時点のS-3の月例賃金との差額分についてのみ時効が完成して 年12月10日支給分の一時金(賞与)については既に3年以上経過しているから消滅時効が完成していることになり,同年12月分の既払い賃金とこの時点のS-3の月例賃金との差額分についてのみ時効が完成していないものと考えられる。 その金額は,原告が退職時に既にJクラスの最上号の月額11万4000円(第1基本給)を受給していたようであることからすると,証拠(乙1の13)によれば,原告が平成2年4月1日にS-3へ昇格していて,その後平成- 24 -13年12月の退職時までの11年間同職級にあったとして,仮に原告の第1基本給がS-3の第1基本給の上限の月額14万8000円であったとして,第2基本給については,平成2年に原告が監督職(S-3)に昇格していたとすると,平成13年時には毎年1号昇号するとして平成2年4月1日にS-3になったとすると平成13年の退職時には12号の11万0400円になっていて,資格手当として6万9800円として(役付手当は前記のようにポスト(職位)と職能資格はリンクしていないことからすると,原告の請求には理由がないものというべきである。),別紙賃金債権目録1(月例賃金)の退職時の原告に支給された賃金額合計29万2840円との差額は3万5360円となる。それゆえ,原告は被告に対し,消滅時効の成立していない平成13年12月分の賃金分につき1月当たりの差額分である3万5360円を請求できることになる。 次に,退職金について見るに,原告が受け取ることができるのは,①基礎額に定年まで勤務したとする勤続年数に対応した係数を乗じた通常の退職金額,②早期退職特別加算金700万円(満54歳),③期間限定特別加算金の合計額である。 そして,弁論の全趣旨(原告最終準備書面添付資料13ないし15)によれば,原告に実際に支給された退職金は,上記①と ②早期退職特別加算金700万円(満54歳),③期間限定特別加算金の合計額である。 そして,弁論の全趣旨(原告最終準備書面添付資料13ないし15)によれば,原告に実際に支給された退職金は,上記①と②の合計が2180万1394円であるところ,上記①の通常の退職金については,退職金算定基礎額は,第一退職金基礎額が仮にS-3の上限として14万2830円,第二退職金基礎額が平成2年に監督職(S-3)に昇格したとして毎年1号ずつ昇号したとして12号の4万5700円,移行調整金として,第一退職金基礎額見合分がS-3の12号として5640円と第二退職金算定基礎額見合分600円の合計19万4770円×支給率74.42(定年まで勤務したとみなした場合の支給率)に②の700万円を合計しても上記既払い金額を下回るので差額は生じず,期間限定特別加算としても,既払金額が499万4000円のところ,- 25 -上記第一退職金基礎額14万2830円と第二退職金基礎額4万5700円に移行調整金が上記同様に既払金額で計上されている3万6520円を上回るものでない以上,その合計金額に20ヶ月を乗じたとしても原告が既払金額として受け取った499万4000円を上回ることはできない。 それゆえ,退職金については原告には差額は生じていないものといわなければならない。 さらに,慰謝料について見るに,前記の争点(1)において認定判断したように,原告は平成2年4月1日以降平成13年12月28日の退職日まで本来であれば監督職(S-3)に職能等級が昇格することができていたはずのところを被告の不当な査定により一般職(J-1)に据え置かれ,前記認定事実(4)によれば,その間,原告は上司なり被告に直接あるいは組合を通じてどうして自分が昇格しないのかを繰り返し問い続け,昇格しないことが原告にと 当な査定により一般職(J-1)に据え置かれ,前記認定事実(4)によれば,その間,原告は上司なり被告に直接あるいは組合を通じてどうして自分が昇格しないのかを繰り返し問い続け,昇格しないことが原告にとって相当程度のストレスなり精神的負担となっていたことが認められる。このような原告の精神的な負担なり重みについては,上記消滅時効との関係で年度毎に分断して金額を算定することは難しいほか,むしろ,平成2年以降で考えたとしても原告の上記のような行動態様にかんがみると年次を追うごとにその精神的な負担は増大するものと考えることができるから最後の年の平成13年12月16日以降の分として捉えることもまた難しいものといわなければならない。 上記のような事情に加えて,前記2,争点(1)で認定判断したように被告が原告以外にも女性を上位の職能等級に登用しない傾向を有し,会社の上層部を含む組織的な不当な対応をしていること,原告自身も昇格しないことへの苛立ちと苦痛から会社へ嫌気がさして早期退職を選択するに至っている面が見受けられることなど,結局のところ,本件記録に現れた一切の事情を斟酌したとして,積年の原告の精神的な苦痛を慰謝するためには100万円を慰謝料として定めるのが相当と考える。 - 26 -そして,本件事案の内容,困難度,審理の経過,認容額,その他一切の事情を総合して,相当因果関係のある弁護士費用として20万円を認めるのが相当である。 したがって,被告は上記に認定判断したところの合計額の債務を負っており,原告は不法行為による損害賠償として上記請求をしているところ,当該債務は期限の定めのない債務であり,催告を要することなく損害の発生と同時に遅滞に陥るものであると考えられることからすると,原告が請求している訴状送達日とされる時点では被告は上記債務について既に遅 該債務は期限の定めのない債務であり,催告を要することなく損害の発生と同時に遅滞に陥るものであると考えられることからすると,原告が請求している訴状送達日とされる時点では被告は上記債務について既に遅滞に陥っているものというべきである。 以上によれば,原告の被告に対する請求には,上記に認定判断したとおり合計金額123万5360円とその民事法定利率による遅延損害金の支払の限度で理由があるので認容し,その余については理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第36部裁判官福島政幸
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