平成22(ワ)44040 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年7月19日 東京地方裁判所
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判決文本文362,497 文字)

令和4年7月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年第44040号、平成23年第910号、同第17717号各損害賠償請求事件平成24年第5680号薬害C型肝炎被害者救済請求事件口頭弁論終結日令和4年2月15日 判決主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は、別紙2請求金額目録「原告番号」欄記載の各原告に対し、同目録「請求金額」欄記載の各金員をそれぞれ支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 ⑴ 本件は、原告ら本人又はその被相続人が、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(以下「特措法」という。以下、本文中の略称は別紙でも使用する。)2条1項所定の特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、同法6条各号が規定する感染区 分に該当する(各原告が該当する号数は別紙2請求金額目録「感染区分」欄記載のとおり)と主張して、原告らが、同法4条による確定判決等において訴え等の相手方となるべき被告に対し、同法3条1項又は2項に基づく給付金請求権として、原告ら又は被相続人の病態に応じて同法6条1号から3号による同請求金額目録「請求金額」欄記載の各金額の給付金の支払を求める 事案である。 補助参加人は、特定フィブリノゲン製剤を製造及び販売した株式会社ミドリ十字(以下「ミドリ十字」という。)の債務を合併及び会社分割等により承継した。 ⑵ 個別の原告に関する事案の概要は、別紙個1ないし50の「第1 ィブリノゲン製剤を製造及び販売した株式会社ミドリ十字(以下「ミドリ十字」という。)の債務を合併及び会社分割等により承継した。 ⑵ 個別の原告に関する事案の概要は、別紙個1ないし50の「第1事案の概要等」のうちの「1事案の概要」に各記載のとおりである。 2 前提事実(争いのない事実、当事者が争うことを明らかにしない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)⑴ C型肝炎についてア C型肝炎ウイルスの概要と感染経過C型肝炎ウイルス(HCV)は、直径約55~57㎚の二重構造を持つ 単鎖RNA型ウイルスである。1970年代初頭(昭和45年以降)に、輸血後肝炎のなかにA型でもB型でもない肝炎(非A非B型肝炎)が存在することが明らかになり、1988年(昭和63年)、米国において血液伝播性非A非B型肝炎ウイルス遺伝子の一部が分離・同定され、C型肝炎ウイルスと名付けられた。 通常、C型肝炎ウイルスに感染すると、1週間ないし3週間後に血清中にHCV-RNAが出現し、15日から150日間の潜伏期間を経て肝細胞障害(急性肝炎)を発症する。急性肝炎の症状(全身倦怠感、食欲不振、悪心、黄疸など)や臨床検査値は比較的軽度なものが多いものの、急性肝炎の症例は、高率(約70%)に慢性化する。一旦慢性化すると、ウイル スが自然消失することはきわめて稀(年率0.2%)であり、肝炎の持続により肝の線維化が緩徐に進行し、一般的に20年から30年の経過で慢性肝炎から肝硬変に、さらに10年の経過により肝細胞癌へと進展するとされている。 (乙統3(125頁)、5(942、960頁)、6(20頁)、8(3 9頁)、223(37、40頁)、弁論の全趣旨) イ検査方法ウイルス肝炎の とされている。 (乙統3(125頁)、5(942、960頁)、6(20頁)、8(3 9頁)、223(37、40頁)、弁論の全趣旨) イ検査方法ウイルス肝炎の病態に必要な検査方法のうち、代表的なものは、次のとおりである。 C型肝炎ウイルスマーカー①現在の感染のみならず、過去の感染においても低抗体価で陽性を示 すHCV抗体検査、②検査時点でのウイルス量を反映するHCV-RNA検査、③HCVコア抗原検査、④ウイルス型検査等が存在する。 血液生化学検査血清トランスアミナーゼ(AST(GOT)、ALT(GPT))等病理学的検査(肝生検) 画像検査(超音波、CT)(乙統3(25ないし27、60、66頁)、221(45、54頁)、弁論の全趣旨)ウ治療方法C型肝炎の治療方法は、肝炎の活動度(肝細胞破壊の速度)、病期の進 展度(肝線維化の程度)、末梢血中のHCV量及び型(セロタイプ又はジェノタイプ)、年齢、全身状態などを基に、総合的に判断して決定される。 一般的には、抗ウイルス療法(インターフェロン治療、インターフェロンとリバビリンの併用による治療)により、HCVを駆除し、完全治癒を図ることが第1の選択肢となる。総合的に判断して、抗ウイルス療法の適 応がないと考えられる場合や、抗ウイルス療法を行っても効果がなかった場合には、抗炎症療法(強力ネオミノファーゲンCの静注やウルソデオキシコール酸の内服など)選択する。 上記選択肢の対象とはならず、肝発がんのリスクが高い状態にまで進展している場合には、肝庇護療法によるとともに、画像診断、腫瘍マーカー を用いた定期的な検査による肝がんの早期発見、早期治療を行う。 (乙統2(27頁 のリスクが高い状態にまで進展している場合には、肝庇護療法によるとともに、画像診断、腫瘍マーカー を用いた定期的な検査による肝がんの早期発見、早期治療を行う。 (乙統2(27頁)、弁論の全趣旨)エ C型肝炎ウイルス持続感染者の具体的な病態は、主として次のとおりである。 無症候性キャリア無症候性キャリアとは、肝炎ウイルスが持続感染しているが、肝機能 検査、特に血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)が持続的に正常である者をいう。血清トランスアミナーゼの基準値は、多くの検査施設において、30から40IU/ℓと設定されている。一般に、C型肝炎ウイルス血症を有し(血清HCV-RNAが陽性)、かつ、1年間以上持続的に血清トランスアミナーゼが正常値(基準値)を維持する者が無 症候性キャリアに当たるとされる。無症候性キャリアの多くは一定の肝障害を有しているが、その炎症や線維化の程度はごく軽度である。(乙統8(78、80、81頁)) 慢性C型肝炎慢性C型肝炎は、C型肝炎ウイルスの持続感染により惹起される、持 続する肝臓の炎症である。平成8年に日本肝臓学会の犬山シンポジウムで発表された「新犬山分類」によれば、慢性肝炎は、臨床的には、6か月以上の肝機能検査値(AST(GOT)、ALT(GPT))の異常とウイルス感染が持続している病態をいい、組織学的には、門脈域にリンパ球を主体とした細胞浸潤と線維化を認め、肝実質内には種々の程度 の肝細胞の変性・壊死所見を認めるものと定義される。 新犬山分類では、組織所見において、線維化と壊死・炎症所見を反映させ、線維化と活動性の各段階に応じた分類を行っており、線維化の程度については、門脈域より線維化が進展し小葉が改築され肝硬変へ進 る。 新犬山分類では、組織所見において、線維化と壊死・炎症所見を反映させ、線維化と活動性の各段階に応じた分類を行っており、線維化の程度については、門脈域より線維化が進展し小葉が改築され肝硬変へ進展する過程で、線維化なし(F0)、門脈域の線維性拡大(F1)、線維 性架橋形成(F2)、小葉のひずみを伴う線維性架橋形成(F3)まで の4段階に区分する。さらに、結節形成傾向が全体に認められる場合には、肝硬変(F4)と分類する。 (乙統5(960頁)、255(15、16頁))肝硬変肝硬変は、肝臓全体に線維化と結節形成が認められる病態であり、臨 床的には、非代償性(肝障害が進行し、肝性脳症や黄疸、腹水、低アルブミン、出血傾向などの臨床所見及び症状が出現した病態)と代償性肝硬変(上記臨床所見及び症状が出現しておらず、肝予備能が比較的保たれている病態)とに分けられる。肝不全徴候を認める非代償性肝硬変は特徴ある身体所見と検査成績によって診断が比較的容易であるが、自覚 症状が少なく、特異的な診断マーカーもない代償性肝硬変では、慢性肝炎との鑑別が困難な場合があり、病歴、検査成績、画像検査所見などを総合的に評価して診断する。 肝硬変の成因には、ウイルス性肝炎のほか、アルコール性、自己免疫性、胆汁うっ滞型、代謝性、うっ血性、薬物性、特殊な感染症、非アル コール性脂肪肝炎が指摘されているほか、原因不明の症例もあるが、成因によらず、慢性肝障害の終末像として同様の病態を示す。平成11年から同20年までの肝硬変の成因別頻度は、全体の60.2%がC型肝炎である。 (乙統5(967ないし969頁)、261(40、41、43頁)) 肝がん(肝細胞癌)肝が の肝硬変の成因別頻度は、全体の60.2%がC型肝炎である。 (乙統5(967ないし969頁)、261(40、41、43頁)) 肝がん(肝細胞癌)肝がんは、肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍である。日本の肝細胞癌の約70%をC型慢性肝炎患者が占める。HCV感染による発がんは線維化のステージと相関しており、最も軽微なF0及びF1では年率0ないし0.5%、F2で1ないし2%、F3で4ないし5%、F4(肝硬変) では約6~7%で発がんすると報告されている。 病初期の肝細胞癌は全くの無症状であるが、随伴する肝硬変の症状としてくも状血管腫、手掌紅斑、黄疸、腹水、肝性脳症などが認められることがある。肝細胞癌により死亡する場合の死因は、癌が肝の大部分を占拠することによる肝不全、癌破裂に伴う大量出血、門脈内腫瘍塞栓による静脈瘤破裂、肺転移による呼吸不全などである。 肝細胞癌の診断は、各種画像検査(腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影検査など)を中心に行われ、腫瘍マーカーが補助的に使用される。 (乙統5(990ないし992頁)、9(10頁))オ感染経路 C型肝炎ウイルス(HCV)は、主としてHCVに感染しているヒトの血液が、何らかの経路で被感染者の血液中に入ることより感染が生じる。 具体的な感染経路としては、主要な感染経路である輸血のほか、血液製剤、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故、観血的民間医療、歯科治療時の感染事故、家族内感染など様々な可能性が指摘され ており、感染原因が特定されない症例も相当数あると報告されている(乙統2(1、15頁)、218(722頁)、221(89頁))。 カ輸血による感染日本では、平成元年 な可能性が指摘され ており、感染原因が特定されない症例も相当数あると報告されている(乙統2(1、15頁)、218(722頁)、221(89頁))。 カ輸血による感染日本では、平成元年11月頃から輸血用血液のスクリーニングにC型肝炎ウイルスの検査が取り入れられ、その後平成4年2月には検査法の改良 も行われた。日本での輸血後肝炎の発症率は、昭和30年代後半までの売血時代には約50.9%であったが、献血推進が閣議決定された昭和39年以降減少し、昭和42年には約31.1%、献血に一本化された昭和47年までには約16.2%まで減少したと報告されている。 また、輸血後C型肝炎(ただし、昭和63年以前は非A非B型肝炎)発 症率については、昭和55年から昭和60年にかけては約16.1%、昭 和62年から平成元年にかけては約7.7%、平成2年には約2.1パーセント、平成6年には約0.3%であったと報告されている。 (乙統2(17頁)、218(723頁)、230(165、166頁)、弁論の全趣旨)⑵ 特定フィブリノゲン製剤について アフィブリノゲン製剤の概要フィブリノゲン製剤は、血液の血漿成分から血液凝固第Ⅰ因子であるフィブリノゲンを分画精製した血液凝固因子製剤であり、昭和39年6月9日に製造承認され、昭和40年11月1日に人血漿フィブリノーゲン(乾燥)として薬価収載されたものである。 血液製剤とは、輸血療法(血液成分の欠乏又は機能低下により臨床上問題となる病態に対して、人体由来の当該成分を治療用血液として補充してその改善を図る補充療法)に用いられる医薬品である。血液の成分は、血漿(液体成分)と血球(有形成分)で構成されており、血球成分は、赤血球、白血球及び血小板から成る。血液製剤は、血液 液として補充してその改善を図る補充療法)に用いられる医薬品である。血液の成分は、血漿(液体成分)と血球(有形成分)で構成されており、血球成分は、赤血球、白血球及び血小板から成る。血液製剤は、血液中のすべての成分を含 む全血製剤(保存血液、新鮮血液)、血液中の特定の成分ごとに分離した血液成分製剤(赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤)、血漿中の各種たんぱく質を変質させることなく物理的、化学的に分画精製した血漿分画製剤に大別されるところ、血漿分画製剤のうち、血液凝固因子を種類ごとに血漿から分画精製したものが血液凝固因子製剤である。 (乙統12(21、25ないし34頁)、13(120頁)、16、236、弁論の全趣旨)イ人体の止血機構とフィブリノゲン止血は血管損傷に際して血液が血管外へ失われるのを防ぐ重要な生体防衛反応であり、人体の止血機序は次のとおりである(乙統76(702な いし706頁))。 血管が損傷し出血すると、まず、局所の血管収縮が生じ、流血中の血小板が血管壁に露出した内皮下組織に速やかに粘着、凝集して血小板血栓(一次止血栓)を形成する(一次止血)。 次いで、血液が組織液と混ざり合うことにより、血中に含まれる凝固因子が活性化される。一つの因子が活性化されるとその因子が酵素とな って次の因子を基質として活性化させる反応が連鎖的に進むことにより、トロンビンが大量に生成されると、トロンビンが血小板をさらに強力に凝集させると同時に、血液凝固因子の一つであるフィブリノゲンをフィブリンに転換させる(血液凝固反応)。フィブリン同士が結合してフィブリン網を形成すると、フィブリン網が一次止血栓を取り巻いて補強、 維持し(二次止血栓の形成)、止血を完了する(二次止血)。 最後に 転換させる(血液凝固反応)。フィブリン同士が結合してフィブリン網を形成すると、フィブリン網が一次止血栓を取り巻いて補強、 維持し(二次止血栓の形成)、止血を完了する(二次止血)。 最後に、形成された止血栓は、血管損傷の修復とともに数日後には線維素溶解現象により融解、吸収される。 ウ低フィブリノゲン血症フィブリノゲンは主に肝臓で生成され、健康人の血漿成分の1㎗中に、 通常、200ないし400㎎含まれているところ、このフィブリノゲンの濃度が低下する病態を低フィブリノゲン血症といい、概ね血液中の血漿成分の1㎗当たり100㎎以下になると、重篤な出血傾向を来たし得る。 先天性の欠乏症として、無フィブリノゲン血症、狭義の低フィブリノゲン血症、異常フィブリノゲン血症などがあり、後天性の欠乏症としては、 DIC(播種性血管内凝固症候群)、産後の大出血や重傷外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合などがある。 産科臨床上、低フィブリノゲン血症が出現する主な疾患は、常位胎盤早期剥離、子宮内死亡胎児の長期残留、羊水塞栓、子宮破裂、流産時の子宮内容除去術、子宮外妊娠中絶、帝王切開術、胎盤用手剥離術、異型血輸血 時、前置胎盤などであり、最も多いものは常位胎盤早期剥離、子宮内死亡 胎児の長期残留、羊水塞栓である。 (乙統29(7頁)、30(754、897ないし899頁)、93(292頁))エ DIC(播種性血管内凝固症候群) DICは、基礎疾患の存在を背景に、何らかの誘因により血管内でト ロンビン生成が起こり、血液凝固系の亢進により細小血管内で微小血栓が形成され、それに伴い、二次的に線溶系の活性化が出現する病態を指す。これらの過程で全身の、主に細小血管内に血栓が多発し 内でト ロンビン生成が起こり、血液凝固系の亢進により細小血管内で微小血栓が形成され、それに伴い、二次的に線溶系の活性化が出現する病態を指す。これらの過程で全身の、主に細小血管内に血栓が多発し、凝固・線溶因子、血小板が消費され、消耗性凝固障害に基づく特徴的な出血傾向を呈する。 DICは、上記のとおり、必ず基礎疾患が存在し、その上に進展する病態であり、特発性のDICと称するものは存在しない。 (乙統100(245頁)、104(1頁)、149(231頁)) DICの基礎疾患は、感染症、ショック、悪性腫瘍、産科的疾患、血管内溶血、組織損傷(大手術後、広範囲の外傷、広範囲の熱傷)、血管 病変などに大別されるが、DICを発症する疾患は様々であり、内科・外科・小児科・産婦人科のいずれの領域にも症例は存在する。 このうち、産科領域に関しては、平成15年5月刊行の「産科疾患とDIC(綜合臨牀第52巻第5号)」において、寺尾俊彦教授が、DICの基礎疾患として、①常位胎盤早期剥離、②羊水塞栓症、③DIC型 後産期出血、④HELLP症候群、⑤妊娠性急性脂肪肝、⑥重症妊娠中毒症・子癇、⑦死児稽留症候群、⑧敗血症性流産、⑨産褥性敗血症、⑩不適合輸血、⑪重症ショック、⑫悪性腫瘍末期を挙げている。 また、昭和55年9月刊行の「産科学入門(第5版)のDICの項では、DICの誘因となる重要な産科疾患として、常位胎盤早期剥離、子 宮内死亡胎児の長期残留、羊水塞栓、子宮破裂、流産時の子宮内容除去 術、子宮外妊娠中絶、帝王切開術、胎盤用手剥離術、異型血輸血、前置胎盤、手術侵襲、敗血症などが挙げられており、そのうち最も多いものは胎盤早期剥離であるとされている。 (乙統97(255頁)、100 妊娠中絶、帝王切開術、胎盤用手剥離術、異型血輸血、前置胎盤、手術侵襲、敗血症などが挙げられており、そのうち最も多いものは胎盤早期剥離であるとされている。 (乙統97(255頁)、100(246頁)、155(1743頁)、弁論の全趣旨) DICの診断について、症状や検査所見は基礎疾患や病態により異なることもあることから、DICの診断においても、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的になされるべきものであり、決して画一的に考えるべきものではないとされている。 昭和55年、旧厚生省の血液凝固異常症調査研究班は、基礎疾患、臨 床症状(出血症状、臓器症状)、検査成績(血清FDP、血小板数、血漿フィブリノゲン、プロトロンビン時間)の各項目について重要度に応じた点数を割り振り、合計点数によりDICの可能性を診断する基準(以下「厚生省DICスコア」という。)を作成し、昭和63年に診断のための補助的検査成績を加えた改訂版を作成した。 また、寺尾俊彦教授及び真木正博教授は、昭和61年、産科DICの多くが急性であることや、産科DICでは血小板数が大きく低下しない場合も少なくないことなどにかんがみ、旧厚生省の上記基準について、臨床的事項を重視する一方で検査成績を過大視しないよう項目、点数を調整した診断基準(以下「産科DICスコア」といい、厚生省DICス コアと併せて「DICスコア」という。)を提唱した。 厚生省DICスコア及び産科DICスコアについては、別紙4のとおりである。 (乙統105(221ないし224頁)、155(1746頁)、199(247頁)、200、弁論の全趣旨) オ特定フィブリノゲン製剤の概要 特措法2条1 ある。 (乙統105(221ないし224頁)、155(1746頁)、199(247頁)、200、弁論の全趣旨) オ特定フィブリノゲン製剤の概要 特措法2条1項1号に規定する特定フィブリノゲン製剤は、①フィブリノーゲン-BBank(昭和39年6月9日製造承認)、②フィブリノーゲン-ミドリ(昭和39年10月24日製造承認)、③フィブリノゲン-ミドリ(昭和51年4月30日製造承認)及び④フィブリノゲンHT-ミドリ(昭和62年4月30日製造承認。ただし、特措法2条1項1号に該 当するのは、ウイルスを不活化するために乾燥加熱処理のみを行ったものに限る。)である(乙統16ないし23、236、特措法2条1項。以下、①ないし③を併せて「非加熱製剤」といい、④を「加熱製剤」ということがある。)。 カ特定フィブリノゲン製剤の製造方法 フィブリノゲン製剤は、凍結された多数の供血者の血漿(500ℓから2000ℓ)を低温融解してプールした後、エタノール分画を行い、得られた画分Ⅰを1ロット(中間ロット)として、一旦凍結保存する。 その後、複数のロットを再度融解し、エタノールによる洗浄を2回行い精製したものに、ウイルス不活化処理を行い、最終バルクからバイアル へ分注し、これを凍結乾燥する方法により、製造されていた。 フィブリノゲン製剤に用いられた血漿は、平成5年9月30日製造以降のロットで国内献血に切り替えられるまでは、海外企業から輸入した売血由来の原料血漿が用いられていた。 (乙統16ないし23、188(資料2-⑷-2ないし18)、196 (249頁)、弁論の全趣旨)ウイルス不活化処理の方法の変遷は、次のとおりである。 a 昭和39年(製造承認時)から昭和40年10月頃まで 、188(資料2-⑷-2ないし18)、196 (249頁)、弁論の全趣旨)ウイルス不活化処理の方法の変遷は、次のとおりである。 a 昭和39年(製造承認時)から昭和40年10月頃まで紫外線照射処理のみb 昭和40年11月頃から昭和60年8月7日製造分まで 紫外線照射及びβプロピオラクトン処理 c 昭和60年8月21日製造分から昭和62年2月20日製造分まで紫外線照射及び抗HBsグロブリン添加処理d 昭和62年3月31日製造分から平成6年6月16日製造分まで60℃96時間の乾燥加熱処理なお、ミドリ十字は、平成6年12月、原料血漿を国内献血由来と し、ウイルス不活化処理として乾燥加熱処理に加え、SD処理(有機溶媒と界面活性剤によりウイルスの表面の脂質を溶解し不活化する処理)を行った新しい「フィブリノゲン-HTミドリ」を発売したが、当該製剤は特措法2条1項1号が定める特定フィブリノゲン製剤に当たらない。 (乙統16ないし23、196(252頁)、弁論の全趣旨)キ特定フィブリノゲン製剤の用法、用量及び使用期間等特定フィブリノゲン製剤は、いずれも効能及び効果を低フィブリノゲン血症の治療として製造承認されていた(乙統16ないし23)。 添付文書の記載 昭和60年8月改訂前の添付文書では、特定フィブリノゲン製剤の臨床応用として「フィブリノゲン(又はフィブリノーゲン)欠乏症による胎盤早期剥離」や「広範囲の外科的処置」、「先天性又は後天性慢性低フィブリノゲン血症」が挙げられている。昭和60年8月全面改訂以降の添付文書においては、「広範囲の外科的侵襲時や常位胎盤早期剥離、 羊水塞栓などに起因する大出血、さらにDICなどで観察される低フィブリノゲン血症の是正に れている。昭和60年8月全面改訂以降の添付文書においては、「広範囲の外科的侵襲時や常位胎盤早期剥離、 羊水塞栓などに起因する大出血、さらにDICなどで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用される」とあり、昭和62年5月作成の添付文書からは、「先天性低フィブリノゲン血症(機能異常症を含む)等、フィブリノゲン値が著しく低下している患者の是正に使用される」と記載されていた。 特定フィブリノゲン製剤の用法及び用量としては、添付文書上、同製 剤を注射用蒸留水に溶解し、瓶に輸血セットの瓶針を差し込み、適当な高さに吊り下げて患者の静脈に刺入して使用する方法(以下「静注」という。)により投与し、通常1回3ないし8ℊ(1バイアルに含まれるフィブリノゲンは1ℊである。)を用いるが、症状により患者の血漿フィブリノゲン値が正常となるまで反復するものとされていた。 特定フィブリノゲン製剤は、いずれも10℃以下の温度で保存しなければならず、有効期間は倉出しの日(昭和46年11月発行以降の添付文書上は検定合格の日から)3年間であった。 (乙統31ないし57、弁論の全趣旨)クフィブリン糊としての使用 フィブリン糊は、フィブリノゲン製剤にトロンビンなどの複数の薬剤を配合して糊状にし、その組織接着作用を利用して、出血創傷面の閉鎖、骨折片の固定、末梢神経又は微小血管の吻合、腱接着又は腱縫合の補強、実質臓器の創傷部の接着などに臨床使用するものである。 具体的な調製方法としては、フィブリノゲン製剤の注射用蒸留水で溶 解した溶液(A液)と、トロンビン製剤に注射用蒸留水、アプロニチン及び塩化カルシウムを混合した溶解トロンビン液(B液)を準備する。 そして、使用方法としては、接着面にA液を最初に塗布しておいて、その 解した溶液(A液)と、トロンビン製剤に注射用蒸留水、アプロニチン及び塩化カルシウムを混合した溶解トロンビン液(B液)を準備する。 そして、使用方法としては、接着面にA液を最初に塗布しておいて、その上からB液を塗布する方法(重層法)と、接着面にA液とB液を予め容器の中で混ぜておき、これを直ちに組織に塗布する方法(混合法)が ある。なお、上記キのとおり、薬事法上承認を受けたフィブリノゲン製剤の効能及び効果は低フィブリノゲン血症の治療であり、かつ、承認を受けた用法は注射用蒸留水に溶解し静脈内に注入するもの(静注)であるから、フィブリン糊としての使用は適応外使用に該当する。 (乙統177、196、弁論の全趣旨) フィブリン糊は、昭和55年には、当時の西ドイツにおいて、キット 製剤が市販されており、広く臨床の場でその有用性、安全性が認められつつあった。このような情報を把握した当時のミドリ十字は、キット製剤の開発を進めるべく直ちに基礎的研究を開始し、昭和56年6月12日、その成果を「手術用接着剤としてのヒト・フィブリン糊の研究」として日本輸血学会で報告した。また、ミドリ十字は、臨床医師を集めて フィブリン糊研究会を組織し、同年11月1日には、第1回フィブリン糊研究会を開催するなどした。フィブリン糊研究会は、昭和57年10月30日には第2回研究会が開催されたものの、その後、ミドリ十字において、特定フィブリノゲン製剤によるC型肝炎発症防止のための加熱処理製剤開発の大幅な遅れや、各製剤を組み合わせたキットによる製造 承認取得が困難視されていることなどを理由にキットの開発中断が決定されると、フィブリン糊研究会の開催も中止された。 (乙統174(683、684頁))ヘキスト社及び日本臓器社は、昭和63年4 承認取得が困難視されていることなどを理由にキットの開発中断が決定されると、フィブリン糊研究会の開催も中止された。 (乙統174(683、684頁))ヘキスト社及び日本臓器社は、昭和63年4月、フィブリン糊キット製剤(ベリプラストP、ティシール)を発売した。上記キット製剤は、 組織の接着・閉鎖を効能効果とし、同製剤のフィブリン糊としての使用は、保険適応となる適応使用であった。 ミドリ十字は、上記2社のフィブリン糊キット製品が市場に潤沢に出回ったと判断した同年7月、過去のフィブリン糊研究会参加者に対し、フィブリノゲンHT-ミドリは、安全性に大きな問題があることが判明 したことなどを受け、他に代替品のないごく限られた症例分以外には供給を中止することを説明の上、同製剤によるウイルス対策が早期確立されるまでの間、同製剤の代替品として、上記2社のフィブリン糊キット製剤を利用するよう依頼する内容の挨拶状を配布した。 (乙統174(685、792頁)、175、176) ⑶ 特定フィブリノゲン製剤の使用実態等 ア特定フィブリノゲン製剤の製造本数薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班が平成21年3月27日に作成した「薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究中間報告書」(以下「中間報告書」という。)によれば、特定フィブリノゲン製剤の製造本数は、概数、次のとおりである。 昭和39年 539本昭和40年 13135本昭和41年 12387本昭和42年 23692本昭和43年 23603本昭和44年 22410本昭和45年 33115本昭和46年 35581本昭和47年 47384本昭和48年 49742本 昭和49年 56323本昭和50年 603本昭和44年 22410本昭和45年 33115本昭和46年 35581本昭和47年 47384本昭和48年 49742本 昭和49年 56323本昭和50年 63046本昭和51年 57619本昭和52年 88980本昭和53年 48491本昭和54年 47302本昭和55年 63811本昭和56年 65290本昭和57年 57271本昭和58年 79118本 昭和59年 90299本昭和60年 63166本昭和61年 84464本昭和62年 80975本昭和63年 13627本平成元年 4554本(乙統196(69ないし72頁))イ使用実態に関するアンケート フィブリノゲン製剤の納入及び使用が確認された医療機関につき、どのような診療科においてどのような症状に用いられていたかなどに関するウェルファイド社(ミドリ十字の債務を承継した会社)による医療機関にするアンケート調査によると、フィブリノゲン製剤を静注で使用した診療科としては、産婦人科領域(産婦人科、産科、婦人科)が最も多かった。産 婦人科における静注での使用対象疾患としては、アンケート回収枚数60 8枚のうち、胎盤早期剥離・膣壁裂傷などの産中・産後の出血が499件、DICが70件、低フィブリノゲン血症が28件、卵巣がん・子宮がん等の手術時が12件、先天性フィブリノゲン血症6件であった。(乙統197)ウ学会への照会(甲A7、乙統196(441、442頁)) 厚生労働省医薬局は、平成14年5月23日、各診療科領域におけるフィブリノゲン製剤の使用実態について、各学会に照会を行った。 社団法人日本産科婦人科学会は、上記に対し、「分 42頁)) 厚生労働省医薬局は、平成14年5月23日、各診療科領域におけるフィブリノゲン製剤の使用実態について、各学会に照会を行った。 社団法人日本産科婦人科学会は、上記に対し、「分娩周辺期には時に大量の出血が発生することがあり、適切な治療が施されない場合には、DICに進展する可能性が高く、その結果母体死亡に至ることが稀では ありませんでした。その場合の治療としては、出血の原因を取り除くことと、出血に伴って失われたものを補充する治療があり、出血により起こった低フィブリノーゲン血症に対する補充療法としてフィブリノーゲン製剤の投与が当時行われておりました。」、「フィブリノーゲンの単独投与はむしろ少ないと考えられますが、常備不能である新鮮血や新鮮 凍結血漿、クリオプレシピテートを低フィブリノーゲン血症に当初から使用するには、当時の供給体制では困難であった施設、地域があったことも事実であり、常備可能なフィブリノーゲン製剤を緊急時救命の目的にて使用していたと考えております。しかしながら、その使用量に関するデータはありません。」、「また、使用方法に関するガイドラインと いうものは無く、旧ミドリ十字からの添付文書に従うことを原則としておりました。」、「昭和62年当時の医療の水準では、DICの治療においては補充療法としてフィブリノーゲン製剤が有効であるとの考え方が一般的でした。」などと回答した。 社団法人日本産婦人科医会は、上記の照会に対し、「昭和52年頃 までは、産科ではDICの補充療法としてフィブリノゲン輸注の必要性 が強調されていました。その理由は、現在DICとして取り扱われている症候群が、かっては産科的低線維素原血症と呼ばれ、フィブリノゲンの低下のみが注目されていたからです。その後 の必要性 が強調されていました。その理由は、現在DICとして取り扱われている症候群が、かっては産科的低線維素原血症と呼ばれ、フィブリノゲンの低下のみが注目されていたからです。その後、DICが起こるとフィブリノゲンのみならず血小板や他の凝固因子も低下することが多いということが明らかにされ、補充療法としては単にフィブリノゲンのみの補 充よりも新鮮血や新鮮凍結血漿(FFP)を輸注した方が良いとされるようになりました。ただし、フィブリノゲンが著明に低下していて、かつそれを輸血だけで補充すると大量の輸血によって赤血球過剰状態となりDICを悪化させることが懸念される場合や緊急手術を要する場合には、フィブリノゲン製剤を用います。」などと回答した。 エ医学文献の記載産科領域における低フィブリノゲン血症の診断要素に関し、当時の一般的な治療指針を示す医学文献には、次の記載が見られる。 「血液の凝固性が欠如した頑固な出血があれば無フィブリノーゲン血症を考慮して、直ちに血液凝固時間の測定を行なう。もし凝血が37℃、 5~6分で起り、そのまま37℃15分間おいて凝血が固形をとどめるならば、重篤な線維素溶解現象は除外できる。さらに、Fibrinogentitertest を行なえば、病像の程度を判定するのに便利である。」(昭和43年刊行「最新産科学異常篇改訂第14版」64頁。甲A6の1) 「他に原因なく水のように出血する時は低線維素原血症とみてフィブリノゲンを開封溶解して静注する。採血して試験管内に放置してみれば診断容易。」(昭和49年版「今日の治療指針」471頁。乙統111)低フィブリノゲン血症が続発しうると考えられる子宮胎盤溢血や稽留流産の場合には、「一定時間の間隔をおいて血液凝 に放置してみれば診断容易。」(昭和49年版「今日の治療指針」471頁。乙統111)低フィブリノゲン血症が続発しうると考えられる子宮胎盤溢血や稽留流産の場合には、「一定時間の間隔をおいて血液凝固時間を測り、これ の延長を認めたならばフィブリノーゲンを補給し新鮮血液を大量に輸血 する」(昭和51年刊行「最新産科学異常編改訂第17版」249頁。 甲A6の4)「出血傾向がみられ、赤沈値5-15㎜/時間以下、出血時間5-10分以上となれば、血小板数10-15万/㎣以下、血中フィブリノゲン100-150㎎/㎗以下、FDP40-80㎍/㎖以上を確かめD ICを診断して、新鮮血輸血、フィブリノゲン製剤4-8ℊ、トラジロール30万単位/6-8時間などを投与する。」(昭和57年版「今日の治療指針」633頁。乙統122)⑷ 特定フィブリノゲン製剤の使用による肝炎リスクの周知ア添付文書の記載 特定フィブリノゲン製剤の添付文書上、同製剤の使用に伴う肝炎の発症リスクに関する注意書きは次のとおり変遷している。 昭和38年2月発行「フィブリノーゲンBBankは紫外線照射を施してあるが、この方法による滅菌は必ずしも全ヴイールス一万一原血漿中に同種血清肝炎ヴ イールスの接触汚染があつたとしたらそのヴイールスをも含む一の完全不活性化を信頼することが出来ない。」との記載がある(乙統31(4頁))。 昭和40年11月発行(同41年12月発行、同43年6月発行)昭和40年11月発行の添付文書には、「フィブリノーゲン注射によ る血清肝炎」として「血清肝炎という世界的に未解決な大問題に対し、ミドリ十字は研究、努力を傾注し、フィブリノーゲンミドリにもβプロピオ・ラクトンの処理並びに には、「フィブリノーゲン注射によ る血清肝炎」として「血清肝炎という世界的に未解決な大問題に対し、ミドリ十字は研究、努力を傾注し、フィブリノーゲンミドリにもβプロピオ・ラクトンの処理並びに紫外線照射により殺ウイルス処置を加えて、血清肝炎予防に最善を尽しているが、現段階ではウイルスの完全不活性化を保証することはできない。」と記載されていた。 その後、昭和41年12月発行の添付文書では、上記記載の直後に 「しかし、AndersonによればCohnの低温エタノール分画法によつて製造し、紫外線照射を施したものは肝炎発症率は極めて小さく、また、罹患してもその症状は重篤でないことが報告されている。」と加筆され、昭和43年6月の添付文書では、さらに「フィブリノーゲンミドリでは1966年(昭和41年)1月から、各包装ごとにアンケート 回答ハガキを同封し、使用医師の調査協力を求め、1967年(昭和42年)10月終まで22カ月間に30、330瓶を供給したところ、僅かに2例の黄疸(肝炎)発生の告知を受けただけであった。フィブリノーゲンミドリを使用された多くの医師において、本品の使用による肝炎発生は経験されていない。」と付け加えられている。 (乙統33(5頁)、34(5頁)、35(5頁)) 昭和49年5月発行一般的注意として「本剤の使用により、まれに血清肝炎に罹患することがある。」と記載されている(乙統39(2頁))。 昭和52年9月発行(昭和60年8月改訂) 昭和52年9月発行の添付文書では、一般的注意として「血清肝炎等の肝障害があらわれることがあるので観察を十分に行うこと。アメリカにおいては本剤の使用により、15~20%の急性肝炎の発症があるとの報告があり 年9月発行の添付文書では、一般的注意として「血清肝炎等の肝障害があらわれることがあるので観察を十分に行うこと。アメリカにおいては本剤の使用により、15~20%の急性肝炎の発症があるとの報告があり、使用の決定に際しては患者のリスク負担と投与によって受ける治療上の利益とを秤量すべきであるとされている。」と記載され ていたが、昭和60年8月改訂では、上記「アメリカにおいては」の記載が削除されている(乙統42(2頁)、47(1頁))。 昭和62年5月発行一般的注意として「肝炎等の血液を介して伝播するウイルス疾患が知られているので、使用に際しては必要最小限の投与とし十分な観察を行 うこと。使用の決定に際しては、患者のリスク負担と投与によって受け る治療上の利益を考慮すること。」と記載されている(乙統49(1頁))。 昭和63年6月改訂文書冒頭に「非A非B型肝炎が報告されているので、本剤の使用に当たっては、適応を十分に考慮するとともに、投与は必要最小限とし、十 分な観察を行うこと。」と記載されている(乙統53(1頁))。 イ集団感染とミドリ十字の対応等昭和62年1月、青森県三沢市の産婦人科医院から旧厚生省薬務局安全課に対し、フィブリノゲン製剤を投与した8例中7例で、肝炎が発生した旨の電話連絡があり、その後、青森県の市立病院から3例の肝炎発 生が報告された。これを受け、旧厚生省は、ミドリ十字に対し、同年3月26日、青森県での肝炎集団発生に関連して全国調査の実施を指示した。旧厚生省は、同年4月9日にもミドリ十字に対し、早急に調査し報告するよう強く指導するとともに、加熱製剤への切替えを急ぐよう指示した。 ミドリ十字は、非加熱製剤の出荷を同年4月9日に停止した上、 生省は、同年4月9日にもミドリ十字に対し、早急に調査し報告するよう強く指導するとともに、加熱製剤への切替えを急ぐよう指示した。 ミドリ十字は、非加熱製剤の出荷を同年4月9日に停止した上、同月20日以降に非加熱製剤の納入先医療機関及び卸売業者を訪問し、非加熱製剤の販売を中止して未使用のものについては回収すること及び緊急時の出血に対応するために代替品として加熱製剤の治験品を提供することを記載した説明文書を配布し、可能な限り非加熱製剤の回収を行った。 上記集団感染の事実は、昭和62年4月以降、新聞各紙で報道された。 (乙統29(20ないし21頁)、180、181、196(2頁)、丙C16202ないし06)ミドリ十字は、昭和63年2月、納入先医療機関に対し、「謹告」と冠して「フィブリノゲンHT-ミドリ使用に際してのお願い」と題する 書面を配布した。同書面では、冒頭に「フィブリノゲンHT-ミドリに は肝炎発症の可能性があります。」と記載されており、同剤には非A非B型肝炎発症の可能性があるため、使用に当たってはその使用が治療上必要不可欠であることを患者の肝炎発症のリスクと同剤による治療上の必要性において十二分に考慮の上、使用の可否を決定するよう求めた。 (乙統185別添資料、弁論の全趣旨) 旧厚生省は、昭和63年6月2日、ミドリ十字に対し、フィブリノゲン製剤の添付文書の改訂および緊急安全性情報配布の指示を行い、これを受けたミドリ十字は、同月6日から乾燥加熱製剤の全納入医療機関に対する緊急安全性情報の配布を開始し、ミドリ十字の医薬情報担当者からフィブリノゲンHT-ミドリの口座を有する医療機関2428施設に 同月23日までに配布を完了した。 上記緊急安全性情報における周知内容は、フィブリ を開始し、ミドリ十字の医薬情報担当者からフィブリノゲンHT-ミドリの口座を有する医療機関2428施設に 同月23日までに配布を完了した。 上記緊急安全性情報における周知内容は、フィブリノゲンHT-ミドリの投与によると疑われる非A非B型肝炎の発症例が確認されたこと、先天性低フィブリノゲン血症等のフィブリノゲンが著しく低下している場合に限って同製剤を使用すべきであること、同製剤の使用決定に際し ては添付文書の記載に留意の上、患者治療上有益か否かを十分考慮の上、やむを得ない場合にのみ必要最小限量を使用してほしいことなどである。 同時に、ミドリ十字は、緊急最小必要数を除く不要不急の製品在庫について返品依頼を実施し、当時の納入先医療機関全1381機関のうちの671機関からの返品を完了させた。これにより全在庫数6199バ イアルのうちの2557バイアルの返品が完了したが、その余の710機関の在庫3642バイアルは未返品であった。そのうちには、緊急時の必要性などの理由で返品に応じない医療機関も存在した。 (乙統171、172、187、弁論の全趣旨)⑸ 個別の原告に関する判断の前提事実は、別紙個1ないし50の「第1事案 の概要等」のうちの「2前提事実」に各記載のとおりである。 3 特措法の定め別紙3記載のとおり。特措法上、給付金の支給を受けるためには、その者が①特定C型肝炎ウイルス感染者(特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の体内又は産道においてC型肝炎ウ イルスに感染した者。2条3項)であって、②6条1号、2号又は3号に該当することが確定判決等で確定される必 たことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の体内又は産道においてC型肝炎ウ イルスに感染した者。2条3項)であって、②6条1号、2号又は3号に該当することが確定判決等で確定される必要がある(4条)。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 フィブリノゲン製剤の投与及び同投与と感染との因果関係に関する証明の対象及びその程度(争点1) (原告らの主張)⑴ ㋐特措法制定前の国家賠償請求訴訟において、製剤投与における国の規制権限不行使という不作為の違法性が争点となっていたこと、㋑同争点に関し、国や製薬会社が責任を負うべき期間について下級審の判断が分かれている中で、一律救済の理念の下、特措法が制定されたこと、㋒制定された特措法に おいては、国家賠償法上求められる厳格な要件が排されている上に、実際には特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が投与されれば必ずC型肝炎ウイルスに感染するというものではないにもかかわらず、同製剤の投与が要件とされていることなどに照らすと、特措法2条3項所定の「特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与」の事実は、実 際には国賠法上の「フィブリノゲン製剤投与時における国の権限不行使」という不作為の存在にほかならないから、現実には「結果」時から遡って、フィブリノゲン製剤行使の蓋然性が十中八九認められる関係にあれば、「投与の事実」も「因果関係」も認められる関係に立つというべきである。 そうすると、本件における「投与の事実」及び「因果関係」の要件につい ては、①「他原因の不存在」、すなわち、フィブリノゲン製剤の投与を受け たと主張する個別の原告本人又はその被相続人(以下「当該患者」という。)にフィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎に ては、①「他原因の不存在」、すなわち、フィブリノゲン製剤の投与を受け たと主張する個別の原告本人又はその被相続人(以下「当該患者」という。)にフィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎に感染する原因が存在しないこと、②「フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在」、すなわち、個別の原告が主張する投与年月日において、フィブリノゲン製剤投与の対象となるような病態が存在したこと及び③「フィブリノゲン製剤の使用可能な状 態での存在」、すなわち、個別の原告が主張する投与年月日において、当該病院にフィブリノゲン製剤が使用可能な状態で存在したこと、以上の3点が立証されれば、特措法上は別個の要件として規定されている「投与の事実」及び「因果関係」が相関的に認定できることになる。 ⑵ 一方、「フィブリノゲン製剤投与時における国の権限不行使」という不作 為の要件の中から「投与の事実」という作為のみを取り出して、「高度の証明」を求めれば、カルテの保存期間が法律上5年で医療記録の多くは廃棄され、30ないし40年も昔の事実について医療関係者の多くが死亡しあるいは明確な記憶を喪失している中で、「救済拒否」に傾くのは必然であるが、これは特措法の「一律救済」の理念に反する。 したがって、証明の程度は、通常の民事訴訟の事実認定において要求されるほど厳格な立証を求めるべきではなく、投与されていると推認することができる程度の立証、具体的には「十中八九」の確実性の心証が得られれば、民事訴訟にいう「高度の蓋然性」に該当する立証は行われたと評価すべきである。 (被告の主張)⑴ 特措法の各規定によれば、特措法に基づく給付金の支給を受けるための要件は、①特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る る。 (被告の主張)⑴ 特措法の各規定によれば、特措法に基づく給付金の支給を受けるための要件は、①特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。)を受けたこと(投与事実)、②C型肝炎ウイルスに感染したこと(感染)、③投与によって感染したこと(因果関係)、 ④特定C型肝炎ウイルス感染者の症状(症状)である。このことは、特措法 の明文上明らかであり、国の規制権限不行使は要件とならない。 特措法4条は、給付金の支給に当たって必要な事実の認定作業については、裁判所の手続に委ねることとしている。そして、特措法は、事実認定について、民事訴訟法の特則を定めるものではないから、特措法所定の要件の事実認定については、原則どおり民事訴訟法が適用される。 そうすると、民事訴訟法の証明責任の原則に従い、特定フィブリノゲン製剤の投与事実等については、原告らが「高度の蓋然性」をもって、すなわち、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度に立証しなければならない責任を負うというべきである。 ⑵ 特措法に基づく給付金の支給を受ける要件のうちの投与事実は、給付金支 給の出発点ないしは前提というべき要件であり、当該患者に係るカルテ等、投与当時ないしはこれに近接した時期に医療機関関係者によって作成された医療記録中におけるフィブリノゲン製剤等投与の事実の記載によって立証されることが、証拠の客観性、確実性、信用性という観点から最も適切である。 もとより、投与事実に係る証拠は、医療記録に限られるものではなく、医師、 看護師、薬剤師等医療従事者の証言など、直接証拠あるいは間接事実による推認によって投与事実を立証することも可能である。 しかしなが 係る証拠は、医療記録に限られるものではなく、医師、 看護師、薬剤師等医療従事者の証言など、直接証拠あるいは間接事実による推認によって投与事実を立証することも可能である。 しかしながら、原告らの主張は、投与事実という「因果関係の起点となるべき事実」の立証方法について、「因果関係」そのものの認定が評価的・価値的判断であることを根拠として、投与事実を直接の立証命題とすることを 不要とする旨を論じるものであるが、このような立論は、因果関係の立証という別の議論を無理に投与事実の立証の議論に当てはめようとするものというべきで、誤りである。 また、当該患者がフィブリノゲン製剤等の使用が推奨される病態にあったことや、当該患者に大量出血があったことといった事実から直ちにフィブリ ノゲン製剤が投与されたと推認することはできないのであり、それに加えて、 C型肝炎ウイルスの感染原因は様々なものがあり、不明な場合も相当に多いのであるから、原告が主張する①他原因の不存在、②フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在、③フィブリノゲン製剤の使用可能な状態での存在の3点が証明されただけで投与事実が推認されるとはいえず、具体的にフィブリノゲン製剤等を投与した事実を推認させる事項について、慎重に検討 する必要がある。 (補助参加人の主張)⑴ 特措法は、国賠法上の請求を基礎づけるための前提事実である①フィブリノゲン製剤投与の事実、②C型肝炎ウイルスの感染、③①及び②の因果関係、④症状を給付金の支給要件としたものである。 特措法2条3項の「特定C型肝炎ウイルス感染者」が特定フィブリノゲン製剤を「受けたこと」を含む文言により定義されていることや給付金支給要件においてフィブリノゲン製剤投与の時期を のである。 特措法2条3項の「特定C型肝炎ウイルス感染者」が特定フィブリノゲン製剤を「受けたこと」を含む文言により定義されていることや給付金支給要件においてフィブリノゲン製剤投与の時期を問題としないという特措法の制定経緯に照らし、特措法2条3項が、フィブリノゲン製剤投与時における国の規制権限不行使という不作為を要件としていると解釈することはおよそ不 可能であり、これは原告ら独自の解釈にすぎない。 ⑵ 当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されるか否かは、担当医師の経験や投与方針、フィブリノゲン製剤の有効性や安全性に対する認識及び当該患者の病態など個別具体的な事情によって大きく異なる。 しかし、①他原因の不存在、②フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態 の存在、③フィブリノゲン製剤の使用可能な状態での存在の3点が立証されれば、フィブリノゲン製剤の投与及び因果関係が相関的に認められるという原告らの主張は、個別具体的な事情を一切捨象するものにほかならず、判断枠組みとしておよそ不合理であって、採用される余地はない。 ⑶ フィブリノゲン製剤投与の事実及び因果関係は、特措法が各要件について 証明の程度を軽減したものと解すべき条文その他の根拠がおよそ存在しない ことから、通常の民事訴訟と同様に、「高度の蓋然性」をもって証明されなければならない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、低フィブリノゲン血症又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる必要があるか(争点2) (原告らの主張)⑴ 本訴訟で証人尋問を行った産科医、助産師及び外科医の証言から、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準は、第1に出血量、第2に出血傾向、第3に あるか(争点2) (原告らの主張)⑴ 本訴訟で証人尋問を行った産科医、助産師及び外科医の証言から、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準は、第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状(さらさらであるか、動脈血かなど)であることがわかる。血液の凝固検査を行うと答えた医師についても、その証 言からは、結局のところ、上記3つの基準で判断していると考えられる。血液の凝固検査を挙げた医師も、耳たぶを針で突いて出血時間を図るという簡易な方法を採っていたと証言している。3名の外科医は、そもそも低フィブリノゲン血症やDICに至っていたかという問題意識を持っていたかどうかすら不明である。 また、DICスコアについては、産科DICスコアを使用ないしこれと同様の方法によりDICを診断していたことをうかがわせる証言はない。 さらに、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準に出血性ショックを挙げている医師もいるが、出血性ショックは、出血により体内に循環する血液が減少する結果として発生する全身の循環障害であり、血液内の凝 固因子の減少が顕著に進行した状態を指す低フィブリノゲン血症やDICとは明確に区別される病態である。 フィブリノゲン製剤の適応外投与の事実が極めて多く存在しており、医療現場では、産科大量出血に対する有効な止血措置の一環として同製剤が使用されていたとの実情に照らせば、産科DICスコアに基づき患者が低フィブ リノゲン血症ないしDICに陥っていた事実のみを同製剤投与の推認根拠と する被告の見解は不適切であって、大量出血の存在自体が、フィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であることが明らかといえる。 ⑵ 中間報告書(乙統196)の33頁の図表2-7「フ する被告の見解は不適切であって、大量出血の存在自体が、フィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であることが明らかといえる。 ⑵ 中間報告書(乙統196)の33頁の図表2-7「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」の産科疾患の欄には、急性胎盤早期剥離、羊水血栓症、羊水塞栓症、常位胎盤早期剥離その他の産科疾患が列挙されていると ころ、同図表は、フィブリノゲン製剤の使用例が後天性低フィブリノゲン血症が生じていることを前提とするかのような記載になっているが、図表の注釈には、「実際に低フィブリノゲン(100mg 未満)であることが確認されて投与されているかどうかについては定かではない。」との明確な記載が存在することに照らせば、図表2-7に列挙されている疾患それ自体が、フ ィブリノゲン製剤の使用疾患だったというほかない。 ⑶ 被告自らがフィブリノゲン製剤の投与を認めてきた事例が、DICスコアを満たすものばかりでないことは、顕著な事実であり、また、フィブリノゲン製剤の出荷本数は、その全てがDICないし低フィブリノゲン血症の確定診断がついた症例のみに使用されたとみるには、余りに大量である。 DICの危険が発生した場合にのみフィブリノゲン製剤の投与が行われていたと断定し、かつ、DICスコアを持ち出して、これを満たすだけの事実がなければ投与の事実が存在しないと強弁する被告の主張は、およそ事実に即しない詭弁であり、DICスコアへの当てはめを強調することで、結局のところ、現存する証拠からは立証不可能な事実に訴訟を収れんさせようとす るものであって、特措法の付帯決議の趣旨にも明白に反している。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ア低フィブリノゲン血症の病態は、後天性の場合としては、重症肝臓疾患での産生 んさせようとす るものであって、特措法の付帯決議の趣旨にも明白に反している。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ア低フィブリノゲン血症の病態は、後天性の場合としては、重症肝臓疾患での産生低下、DICにおける凝固因子の消費亢進等により招来される。 フィブリノゲン製剤は、DICのうち、産科分野のDICに併発して生じ ることのあるフィブリノゲン補充を要する病態に有効かつ有用であるとの 位置付けがされるようになり、DICの場合や、DICの基礎疾患となり得る産後の大出血や重症外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合など、極めて限定された症例に対してその投与が推奨されたものである。しかるに、産科DICには、急性のものが多く、検査成績の判明を待つ前にいろいろな処置を進めなければならないという例が少なくな いため、臨床的な事項を重要視するスコアリングが望ましいなどとして、基礎疾患、臓器障害や出血傾向の程度等の臨床症状、検査項目の3つを柱とする産科DICスコアが提唱され、同スコアに基づきDICか否かの判定が行われることがある。 イ特定フィブリノゲン製剤は、出血性疾患のうち、血液中のフィブリノゲ ン(血症凝固第Ⅰ因子)が減少ないし欠乏することに起因して、止血機構自体が正常に機能しなくなり、その結果、止血困難を来す「低フィブリノゲン血症」が発症した場合に、これに対して投与を推奨されてきた製剤であり、低フィブリノゲン血症以外の症例において、単に多量の出血があったとの事実をもって、直ちにフィブリノゲン製剤の投与事実を推認できる という関係は、論理則上も医学的な経験則上も認められない。 このことは、大量出血により出血性ショック症状が引き起こされた場合も同様であり、出血性ショックに対する治療と 事実を推認できる という関係は、論理則上も医学的な経験則上も認められない。 このことは、大量出血により出血性ショック症状が引き起こされた場合も同様であり、出血性ショックに対する治療として、循環血液量を増加させるために、輸血や輸液を行った場合、出血傾向が亢進することがあり得、その場合に特定フィブリノゲン製剤を投与することがあり得るものの、輸 血や輸液によって出血傾向が亢進する原因は様々であって、フィブリノゲンの減少ないし欠乏はそのうちの1つでしかないから、大量出血により出血性ショック症状を呈したとしても、当然に特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるわけではない。 ウ一方、フィブリノゲン製剤は、製剤承認当初から、添付文書上に肝炎の リスクが指摘されるなど一定の副作用リスクを有する医薬品であったから、 医師が、患者の治療にフィブリノゲン製剤を使用するかどうかを判断するに当たっては、当該患者の病態を踏まえ、フィブリノゲン製剤の効能、効果を考慮するのみならず、フィブリノゲン製剤使用による肝炎リスクも比較衡量して、最終的な使用の有無を決定していたと考えられ、このような観点から見ても、単に出血量が多いとか、出血性ショックがあるというだ けで、特定フィブリノゲン製剤の投与を推認することはできない。 エ以上、特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、まず第1に、患者について低フィブリノゲン血症に陥っていたこと、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったことが認められなければならない。 ⑵ これに対し、原告らは、本訴訟での医師らの証言を根拠として、大量出血の存在自体が、特定フィブリノゲン製剤の投与があったことを強く推認させると主張するが、同医師らは れなければならない。 ⑵ これに対し、原告らは、本訴訟での医師らの証言を根拠として、大量出血の存在自体が、特定フィブリノゲン製剤の投与があったことを強く推認させると主張するが、同医師らは、いずれも個別の事案について、特定フィブリノゲン製剤の投与方針や個別の患者に対する同製剤の投与の有無等を証言したものである。いかなる病態に対していかなる治療措置を選択して実施する かは医師の自由な裁量に委ねられており、その場その場における個々の医師の判断と言わざるを得ないところ、DICの判断(とりわけ、臨床的な事項を重視する産科領域におけるDICの判断)は医師によって異なり得るものといえ、また、特定フィブリノゲン製剤投与の判断も医師によって異なることはあり得る。 しかしながら、具体的な事案に関し、担当医師の投与方針が明らかでない場合において特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するためには、投与の判断が医師によって異なり得るというだけでは足りず、少なくとも特定フィブリノゲン製剤の投与に係る一般的な医学的適応が認められる場合であることが必要である。そうすると、上記⑴の医学的知見に照らし、大量出 血や出血性ショックが認められる場合には、特定フィブリノゲン製剤を投与 する方針であったとする医師が存在するからといって、ほかの医師もこれらの場合に特定フィブリノゲン製剤を投与したであろうと推認することはできない。 ⑶ 中間報告書の図表2-7は、ウェルファイド社が提出した資料に基づき、フィブリノゲン製剤が使用されたことのある疾患名を列挙したものにすぎず、 一定の症例に対して特定フィブリノゲン製剤が投与される一般的な可能性があることを示すにすぎない。同図表の記載に関し、「図表2-7においては「後天性低フィ とのある疾患名を列挙したものにすぎず、 一定の症例に対して特定フィブリノゲン製剤が投与される一般的な可能性があることを示すにすぎない。同図表の記載に関し、「図表2-7においては「後天性低フィブリノゲン血症」という疾患に対してフィブリノゲンが投与されたかのように記載されているが、実際に低フィブリノゲン(100mg未満)であることが確認されて投与されているかどうかについては定かでは ない。」とある趣旨は、同表作成の原資料に記載された情報だけからでは各症例について、低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があった場合なのかそうではない場合なのかは不明であったというにすぎず、実際に各症例について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があっ た場合である可能性を否定するものではなく、同表に列挙されている疾患が認められれば、特定フィブリノゲン製剤の投与が直ちに推認されるとはいえない。 3 個別の原告が、①特定C型肝炎ウイルス感染者(特措法2条3項)に該当するか、②特措法6条1号、2号又は3号に該当するかに関する当事者の主張は、 別紙個1ないし50の「第2 争点及び争点に関する当事者の主張」欄に各記載のとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 フィブリノゲン製剤の投与及び同投与と感染との因果関係に関する証明の対象及びその程度(争点1)について ⑴ 証明の対象について ア原告らは、本件における「投与の事実」及び「因果関係」の要件については、㋐「他原因の不存在」、すなわち、当該患者にフィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎に感染する原因が存在しないこと、㋑「フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在」、すなわ 関係」の要件については、㋐「他原因の不存在」、すなわち、当該患者にフィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎に感染する原因が存在しないこと、㋑「フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在」、すなわち、個別の原告が主張する投与年月日において、フィブリノゲン製剤投与の対象となるような病態 が存在したこと及び㋒「フィブリノゲン製剤の使用可能な状態での存在」、すなわち、個別の原告が主張する投与年月日において、当該病院にフィブリノゲン製剤が使用可能な状態で存在したこと、以上の3点が立証されれば、特措法上は別個の要件として規定されている「投与の事実」及び「因果関係」が相関的に認定できることになると主張する。 イしかしながら、特措法3条1項によれば、給付金の支給対象は「特定C型肝炎感染者」又はその相続人であると規定され、同法2条3項によれば、「特定C型肝炎感染者」は「特定フィブリノゲン製剤(中略)の投与(中略)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者」と規定されているから、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたこと、すなわち、「投 与の事実」が、特措法に基づく給付金の支給を受けるための前提となる要件に関する事実であることは明らかである。また、同法2条3項からは、①C型肝炎ウイルスに感染したこと(感染)、②投与によって感染したこと(因果関係)、同法6条各号からは、③特定C型肝炎ウイルス感染者の症状(症状)の要件がいずれも明らかである(以下、「投与の事実」と上 記①ないし③を併せて「特措法要件」という。)。 これに対し、原告らが主張する上記ア㋐ないし㋒の3要件は、いずれも特措法の各条項から読み取ることができない。 また、原告らは、上記アの主張に至る理由として、特措法上の「投与の事実」は実際には国賠法 これに対し、原告らが主張する上記ア㋐ないし㋒の3要件は、いずれも特措法の各条項から読み取ることができない。 また、原告らは、上記アの主張に至る理由として、特措法上の「投与の事実」は実際には国賠法上のフィブリノゲン製剤投与時における「国の規 制権限不行使」という不作為が問題とされているとした上で、このような 不作為型の不法行為の場合、「実行行為」と「因果関係」は相関的にならざるを得ないなどと主張するが、上記のとおり、特措法上、給付金の支給を受けるための要件は明確で、「国の規制権限不行使」ないし「実行行為」が要件となっていないこともまた明らかであるのに、これが要件であるという誤った前提に立って、独自の議論を展開するものというべきである。 ウ原告らが主張する上記ア㋐ないし㋒の個別の要件についてみても、C型肝炎ウイルスには様々な感染経路があることが指摘されており、その感染原因が不明である場合も相当数あることからすると(前提事実⑴オ)、感染に関し、フィブリノゲン製剤投与以外の原因が存在しないことを客観的に立証することはできないから、㋐「他の原因の不存在」 を要件とすることはできない。 エまた、DICの診断においては、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的にされるべきもので、決して画一的に考えるべきではないとされているとおり(前提事実⑵エ)、医師が低フィブリノゲン血症ないしDICの病態にあると診断する指標は画一 的なものではないことからして、一般的にはフィブリノゲン製剤の効能・効果があるとされたことや大量出血があったことをもって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできないものというべきである。 そうすると、個別の原告が主張する投与年月日において、フィ とされたことや大量出血があったことをもって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできないものというべきである。 そうすると、個別の原告が主張する投与年月日において、フィブリノゲ ン製剤投与の対象となるような病態が存在したことからといって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできないもので、㋑「フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在」を要件とすることは相当でない。 オさらに、個別の原告が主張する投与年月日において、当該病院にフィブ リノゲン製剤が使用可能な状態で存在したことは、それなしでは「投与の 事実」はあり得ないものの、上記エで説示したとおり、当該患者の個別の病態に関する検討を経ずに、㋒「フィブリノゲン製剤の使用可能な状態での存在」をもって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 カしたがって、㋐「他の感染原因の不存在」、㋑「フィブリノゲン製剤を 投与するような病態の存在」及び㋒「同製剤の使用可能な状態での存在」が立証されれば、投与事実及び因果関係が相関的に認定できるとする原告らの主張は、採用できない。 ⑵ 証明の程度についてア原告らは、「投与の事実」の証明の程度について、通常の民事訴訟の事 実認定において要求されるほど厳格な立証を求めるべきではなく、投与されていると推認することができる程度の立証、具体的には「十中八九」の確実性の心証が得られれば、民事訴訟にいう「高度の蓋然性」に該当する立証は行われたと評価すべきであると主張する。 イしかしながら、特措法は、4条において、給付金の支給の請求をするに 当たって、当該請求者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者 する立証は行われたと評価すべきであると主張する。 イしかしながら、特措法は、4条において、給付金の支給の請求をするに 当たって、当該請求者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が同法6条1号ないし3号に該当することを証する確定判決又は和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものの正本又は謄本を提出することを求める一方で、その確定判決等を得るための訴訟手続において請求者の立証責任を軽減する定めは置いていない。 ところで、訴訟上の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実の存在を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挾まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである(最高裁判所平成9年2月25日第三小法 廷判決・民集51巻2号502頁参照)。 したがって、特措法に基づく給付金の支給を受ける要件としての「投与の事実」については、その存在を是認し得る高度の蓋然性を証明することが必要となるもので、原告らが主張する「十中八九」の確実性の心証を得ることでは足りない。 この点、原告らは、感染被害者の一律救済の理念の下に特措法が制定さ れたことから証明の程度が軽減されるべきであるという点を強調するが、特措法前文の一律救済の理念からは「投与の事実」を証明するための証拠方法に制限を加えることは相当でないというべきであるものの、上記のとおり、特措法上、裁判所が民事訴訟上の証明の原則にしたがって「投与の事実」を認めることができない者を上記一律救済の対象に含めるという趣 旨を読み取ることはできないから、原告らの上記指摘は上記の判断を左右しな 裁判所が民事訴訟上の証明の原則にしたがって「投与の事実」を認めることができない者を上記一律救済の対象に含めるという趣 旨を読み取ることはできないから、原告らの上記指摘は上記の判断を左右しない。 ウよって、「投与の事実」の証明の程度を軽減すべきであるとする原告らの上記主張は採用できない。 ⑶ 以上、原告らは、特措法に基づく給付金の支給を受けるため、特措法要件 に係る事実のうち被告が否認する事実については、その存在を是認し得る高度の蓋然性を証明する必要があるもので、通常人が疑いを差し挾まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とするというべきである。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、低フィブリノゲン血症又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要 があったと認められる必要があるか(争点2)について⑴ 原告らは、本訴訟で証人尋問を行った産科医、助産師及び外科医の証言からすれば、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準は、第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状(さらさらか、動脈血かなど)であることがわかること、フィブリノゲン製剤の適応外投与の事例 が極めて多く存在しており、医療現場では、産科大量出血に対する有効な止 血措置の一環として同製剤が使用されていたとの実情があることに照らせば、産科DICスコアに基づき患者が低フィブリノゲン血症ないしDICに陥っていた事実のみを同製剤投与の推認根拠とする被告の見解は不適切であって、大量出血の存在自体が、フィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であることが明らかといえると主張する。 ⑵ フィブリノゲン製剤の医学的適応しかしながら、フィ 切であって、大量出血の存在自体が、フィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であることが明らかといえると主張する。 ⑵ フィブリノゲン製剤の医学的適応しかしながら、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症の治療を効能及び効用として、薬事法上の製造承認を受けており、添付文書上も、低フィブリノゲン血症等フィブリン値が著しく低下している患者の是正に使用される旨記載されていたこと(前提事実⑵キ)、後天性のフィブリノゲン欠乏 症の主要な原因として、DIC、産後の大出血や重症外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合などが挙げられ(前提事実⑵ウ)、産後の大出血や重症外傷はDICの基礎疾患に数えられていること(前提事実⑵エ)などからすれば、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療に必要であると認められる場合に医学的適応 があるものと認められる。 そして、社団法人日本産婦人科学会及び社団法人日本産婦人科医会から、フィブリノゲン製剤の使用実態に関し、産科領域一般においては、分娩周辺期の大量出血によるDIC、低フィブリノゲン血症に対する補充療法としてフィブリノゲン製剤が使用されており、その際には、添付文書に従った使用 方法が採用されていたと報告されていること(前提事実⑶ウ)、昭和40年代から50年代にかけて、低フィブリノゲン血症に対する治療方法としてフィブリノゲン製剤の投与を推奨する医学文献がみられること(前提事実⑶エ)などに照らし、殊に産科分野において、上記添付文書にある使用方法に従い、DIC、低フィブリノゲン血症に対する補充療法として、フィブリノゲン製 剤の投与が行われ、かつ、推奨されてきたことが認められる。 さらに 添付文書にある使用方法に従い、DIC、低フィブリノゲン血症に対する補充療法として、フィブリノゲン製 剤の投与が行われ、かつ、推奨されてきたことが認められる。 さらに、産科DICには急性のものが多く、検査成績の判明を待つ前にいろいろな処置を進めなければならないという例が少なくなく、MOF(多臓器不全)を合併すると著しく予後が不良になるので、早期診断、早期治療が大切であるとされている(乙統30(904頁)、105(222頁)、前提事実⑵エ)。 以上を総合すると、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる場合に、医学的適応があるものとして広く普及していたと認められる。 ⑶ 低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる場合 ア患者の病態が、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる場合といえるかについては、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に判断されるべきものである(前提事実⑵エ)。 ところで、産科DICスコアは、総合的に認定・判断されるべきDIC の惹起について、過去の産科領域におけるDIC症例を検討した上で、その判断の具体的要素を拾い上げて、基礎疾患スコア、臨床症状スコア及び検査所見スコアに分類し、各要素の重要性を踏まえて配点し、一定以上の点数に達したものはDICとしての治療を開始すべき時期にあると認めるものである。そして、産科DICには急性のものが多く、検査成績の判明 を待つ前にいろいろな処置を進めていかなければならないという例が少なくないことから、厚生省DICス すべき時期にあると認めるものである。そして、産科DICには急性のものが多く、検査成績の判明 を待つ前にいろいろな処置を進めていかなければならないという例が少なくないことから、厚生省DICスコアに比べ、臨床的な事項が重要視されているという違いがある。それにもかかわらず、臨床的にDICである、あるいはDICの疑いがあると判断した時点での産科的DICスコアと厚生省DICスコアとを比較してみると、両者間には驚くほどの密接な相関 がみられたと報告されている。なお、厚生省DICスコア及び産科DIC スコアは、いずれも過去の症例をもとに診断方法を客観化し、特に産科DICスコアは早期治療につなげる目安を示したものであるが、いずれも新たな診断基準を提唱するものではない。(乙統105、200)そうすると、主として治療開始のタイミングを重視したスコアである産科DICスコアから、ある病態についてスコアリングを行い、DICの治 療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかを検討することは、それ自体合理的というべきである。 イしかしながら、本訴訟における当該患者の病態の認定は、DICスコアの在り方を検討する際の症例研究とは全く異なり、臨床症状、全身状態等の臨床データ、薬剤の投与や検査結果を含む当該診療行為の内容を記載し た診療録すらない場合に、残存する医療記録(手術記録、各種台帳、診断書、入院診療録要約、母子健康手帳等を広く含める。)、問題となった診療行為に近接した時期に患者本人ないし近親者が書き留めた記録(日記やメモ等を含める。)、医療関係者(担当医師その他当該治療に関わり、あるいは、これを知る者を広く含める。)の証明書、陳述書その他の供述証 拠、患者本人や近親者等の供述証拠、医学文献(特 (日記やメモ等を含める。)、医療関係者(担当医師その他当該治療に関わり、あるいは、これを知る者を広く含める。)の証明書、陳述書その他の供述証 拠、患者本人や近親者等の供述証拠、医学文献(特に当該診療行為の時点における医学的知見を明らかにするものは重要である。)その他の証拠方法といった全証拠を経験則に照らして総合的に検討し、当該患者について、当該診療行為の時点において、DICの治療若しくは予防の必要があったと認めることができるかどうかを認定・判断するというものである。 そのような事実認定を行うに当たり、産科DICスコアをいわば反対解釈して、臨床症状スコアの項目に当たる客観的な臨床データや検査所見スコアの項目に当たる検査所見が存在しないことから、一定の点数に達する可能性がないとして、直ちにDICとしての治療を開始すべき時期になかったと認めるとすれば、それ自体重大な事実の誤認を生じるおそれがある もので、許されないというべきである。 ウそうすると、産科DICスコアは、DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかという本来医師が患者の病態を総合的に検討して初めて認定可能な事実に関し、考慮すべき要素を列挙した上で、各種要素に重みづけを与える試みであるが(上記ア)、いずれの時期においてもフィブリノゲン製剤の使用に関するガイドラインとして扱われていたも のではなかったこと(前提事実⑶ウ)から、裁判所は、当該患者の診療録すらない状況にあって、診療録以外の全証拠を総合的に検討する際、DICに関する医学的知見や産科DICスコアの内容を参考にして、基礎疾患が存在することを前提に、臨床症状や検査所見については、点数の積上げによらず、例えば、出血量、出血状況や患者が自覚したバイタルサインな する医学的知見や産科DICスコアの内容を参考にして、基礎疾患が存在することを前提に、臨床症状や検査所見については、点数の積上げによらず、例えば、出血量、出血状況や患者が自覚したバイタルサインな どからショック症状があることを推認するなどの方法が可能であればこれを用いるなどした上で考慮すれば足りるものというべきである。 ⑷ 原告らの主張についてア原告らが主張する投与認定の基準以上検討したとおり、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又 はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認定できる場合に、医学的適応があるものとして広く普及していたと認められるところ、上記認定に当たり、出血量、出血傾向や目視による血液の性状といった事情が重要であるという指摘は正当であるが、これらの事実だけから上記認定を行うことができないこともまた明らかである。 したがって、フィブリノゲン製剤を投与するかの基準が第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状であるとして判断すべきであるとする原告らの主張は理由がない。 イ適応外投与の存在原告らは、フィブリノゲン製剤の適応外投与の事実が極めて多く存在し ており、医療現場では、産科大量出血に対する有効な止血措置の一環とし て同製剤が使われていたから、大量出血の存在自体がフィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であると主張する。 しかしながら、本件各証拠に照らし、フィブリノゲン製剤が、止血剤として一般的に使用されていたことを裏付ける医学的知見は見当たらない。 これまで説示したとおり、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血 症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認定できる場合に、医学的適 を裏付ける医学的知見は見当たらない。 これまで説示したとおり、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血 症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認定できる場合に、医学的適応があるものとして広く普及していた薬剤であると認められる。そして、DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかは、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に判断されるべきものである。 そうすると、担当医師あるいは当該診療行為が行われた病院において、医学的適応と一致しない態様で投与する方針が行われていたと認められない限り、当該患者に対し、適応外投与が行われたという事実を推認することはできないものというべきである。 したがって、一般に、大量出血の存在自体がフィブリノゲン製剤投与を 強く推認させる間接事実であるとする原告らの主張は、採用できない。 ウ中間報告書図表2-7の注釈の記載原告らは、中間報告書33頁図表2-7「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」にある注釈の記載からは、同図表に列挙されている疾患それ自体がフィブリノゲン製剤の使用疾患だったというほかないと主張 する。しかし、「図表2-7においては「後天性低フィブリノゲン血症」という疾患に対してフィブリノゲンが投与されたかのように記載されているが、実際に低フィブリノゲン(100mg 未満)であることが確認されて投与されているかどうかについては定かではない。」とある注釈は、同表作成の原資料に記載された情報だけからでは、各症例についてフィブリ ノゲン値100mg 未満の低フィブリノゲン血症であることが確認されて 投与されているかどうか明らかでないと注記する趣旨にとどまる。すなわち、先天性低フィブリノゲン てフィブリ ノゲン値100mg 未満の低フィブリノゲン血症であることが確認されて 投与されているかどうか明らかでないと注記する趣旨にとどまる。すなわち、先天性低フィブリノゲン血症及び第ⅩⅢ因子欠乏症以外の疾患名は、分類上「後天性低フィブリノゲン血症」とされるべきものであるが、原資料には具体的な記載例にある疾患名の記載にとどまるものが含まれているというにすぎないもので、具体的な記載例にある疾患を発症しているが、 後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと記載したものではないことが明らかである。 したがって、原告らの上記主張のような解釈は、採用できない。 3 投与の事実に関する判断枠組み⑴ これまでの検討を踏まえ、当裁判所は、産科領域における診療行為に際し、 特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張する当該患者に関し、投与の事実が認められるかどうかについて、以下の判断枠組みに沿って検討する。 アまず、当該患者に関する全ての証拠のうちに、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を裏付ける客観的な直接証拠があるかどうか検討する。 ただし、ここにいう客観的な直接証拠とは、フィブリノゲン製剤を投与 した旨の記載がある診療録、投薬指示書、看護記録、同製剤に関するレセプト等を指すから、本訴訟における当該患者については現存していない。 イ客観的な直接証拠がない場合、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の当該患者に関する全ての証拠から認定できる当該患者の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、当該患者に対し、特定 フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 当該患者の傷病の状態についてア特定フィブリノゲン製剤の投与がされ の間接事実から、当該患者に対し、特定 フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 当該患者の傷病の状態についてア特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかの検討に当たっては、まず、当該患者の傷病の状態(病態)から、当該診療行為の当時、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しく は予防の必要があったと認められるかどうかを検討する。 イ当該患者の病態を認定するに当たっては、産科DICの基礎疾患の内容、程度(ただし、DICの誘因となる重要な産科疾患がある場合には、これも考慮する。乙統97(255頁)参照)、当該診療行為当時の当該患者の臨床症状、全身状態を可能な限り拾い挙げるなどして認められる当該患者の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若 しくは予防の必要があったと推認できるかどうか検討する。 ウ上記検討の結果、当該患者の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと推認できる場合には、特段の事情がない限り、当該患者に対しフィブリノゲン製剤が投与された事実を合理的に推認できる。 そして、上記特段の事情としては、当該病院にフィブリノゲン製剤の納入事実がないこと、当該診療行為時点に在庫がないこと、担当医師が病態にかかわらず投与しない方針を採用していたことなどが考えられる。 エ前説示(上記2⑶イ)のとおり、証拠方法の性質による制限は行わない。 診療行為時ないしこれと近接した時期に作成された資料は、医師、看護 師や医療機関が作成したものにとどまらず、その他の者(患者本人を含む。)が作成したものであっても、その余の証拠、資料か い。 診療行為時ないしこれと近接した時期に作成された資料は、医師、看護 師や医療機関が作成したものにとどまらず、その他の者(患者本人を含む。)が作成したものであっても、その余の証拠、資料から信用性が認められれば、客観資料に近いものとして、これを前提とする。 一方、当該診療行為の状況等を明らかにするために本訴訟の提訴準備段階以降に作成された資料については、作成者の属性(医療関係者であるか など)や文書の性質(見出しが「証明書」であるなど)にかかわらず、その作成経過等を検討した上で、慎重に信用性を検討することになる。 ⑶ 担当医師あるいは当該病院における投与方針についてア DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかについて、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に判断 し、医学的適応にあると認められない場合には、当該患者の病態からは、 フィブリノゲン製剤が投与されたことが推認されないこととなる。 イしかしながら、DICスコアはフィブリノゲン製剤の使用に関するガイドラインとして扱われていたものはなかったこと(前提事実⑶ウ)、産科DICは急性のものが多く、検査成績の判明を待つ前に処置を進めなければならない例が少なくないこと(乙統200(119頁))、担当医師の 個別の判断により、DICの基礎疾患と認められる出血量に達していなくとも投与適応とする方針を有する場合もあること(甲A24(原告番号25番に関する・・・・医師の証人調書)、原告番号194番に関する・・・・医師の証言など)などからすると、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったかどうかの判断につ いては、個別の医師の方針や判断が重要であったと認められるから、 師の証言など)などからすると、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったかどうかの判断につ いては、個別の医師の方針や判断が重要であったと認められるから、医局の方針や当該医師の臨床経験、時代背景などの影響を受け、一様ではなかったことを考慮する必要がある。 ウそうすると、当該患者の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとまでは認めるこ とができない場合であっても、当該診療行為を担当した医師の診療当時における個別の投与方針又は当該病院の投与方針に照らし、投与適応と認められる場合には、当該患者に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実が合理的に推認できるというべきである。 ⑷ 産科領域以外における診療行為についても、特定フィブリノゲン製剤投与 の事実を裏付ける客観的な直接証拠があるかどうかを検討し、これがないときは、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の当該患者に関する全ての証拠から認定できる当該患者の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、当該患者に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する点は同様に当てはまる(上記⑴)。 ただし、当該患者の傷病の状態について、産科DICの考え方が当てはま るわけではないから、当該病態等に応じて検討する必要がある。 4 判断枠組みの当てはめ当裁判所が、上記3の「投与事実に関する判断枠組み」に基づき、原告ら又はその被相続人(当該患者)に対する特定フィブリノゲン製剤の投与(使用)の有無について検討した結果は、別紙個1ないし50の「第3 当裁判所の判 断」に記載したとおりであり、全ての当該患者について、特定フィ 続人(当該患者)に対する特定フィブリノゲン製剤の投与(使用)の有無について検討した結果は、別紙個1ないし50の「第3 当裁判所の判断」に記載したとおりであり、全ての当該患者について、特定フィブリノゲン製剤が投与(使用)された事実を認めることができない。よって、その余の特措法要件について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がない。 第5 結論 以上によれば、原告らの請求は、別紙個1ないし50の「第4 結論」に記載したとおり、いずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第44部 裁判長裁判官藤澤裕介 裁判官川畑百代 裁判官多田尚史は、差支えのため、署名押印できない。 裁判長裁判官藤澤裕介 別紙1当事者目録は記載省略 請求金額目録(別紙2)原告番号請求金額感染区分3-23-34-14-2 4000万円 8-18-2 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 4000万円 4000万円 2000万円 4000万円 4000万円 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 4000万円 96-196-296-396-499-199-299-3 4000万円4000万円4000万円4000万円4000万円 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(特措法) 前文 フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに、今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被 が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに、今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。 もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においては、そのような企業の責任が問われるものである。 C型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々からフィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造等を行った企業及び国に対し、損害賠償を求める訴訟が提 起されたが、これまでの五つの地方裁判所の判決においては、企業及び国が責任を負うべき期間等について判断が分かれ、現行法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば、さらに長期間を要することが見込まれている。 一般に、血液製剤は適切に使用されれば人命を救うために不可欠の製剤であるが、フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤によってC型肝炎ウイルスに 感染した方々が、日々、症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいるという困難な状況に思いをいたすと、我らは、人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならないと考える。しかしながら、現行法制の下でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請にこたえるには、司法上も行政上も限界があることから、立法による解決を図 ることとし、この法律を制定する。 第1条(趣旨)この法律は、特定C型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対する給付金の支給に関し必要な事項を定めるものとする。 第2条(定義) 1 この法律において「特定フィブリノゲン製剤」とは、乾 旨)この法律は、特定C型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対する給付金の支給に関し必要な事項を定めるものとする。 第2条(定義) 1 この法律において「特定フィブリノゲン製剤」とは、乾燥人フィブリノゲン のみを有効成分とする製剤であって、次に掲げるものをいう。 一昭和三十九年六月九日、同年十月二十四日又は昭和五十一年四月三十日に薬事法の一部を改正する法律(昭和五十四年法律第五十六号)による改正前の薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「昭和五十四年改正前の薬事法」という。)第十四条第一項の規定による承認を受けた製剤 二昭和六十二年四月三十日に薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律(平成五年法律第二十七号)第一条の規定による改正前の薬事法(以下「平成五年改正前の薬事法」という。)第十四条第一項の規定による承認を受けた製剤(ウイルスを不活化するために加熱処理のみを行ったものに限る。) 2(省略) 3 この法律において「特定C型肝炎ウイルス感染者」とは、特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。 第五条第二号において同じ。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者をい う。 第3条(給付金の支給) 1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)は、特定C型肝炎ウイルス感染者(特定C型肝炎ウイルス感染者がこの法律の施行前に死亡している場合にあっては、その相続人)に対し、その者の請求に基づき、医 療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとし て給付金を支給する。 2 給付金の支給を 場合にあっては、その相続人)に対し、その者の請求に基づき、医 療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとし て給付金を支給する。 2 給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合においてその者がその死亡前に給付金の支給の請求をしていなかったとき(特定C型肝炎ウイルス感染者が慢性C型肝炎の進行により死亡した場合を含む。)は、その者の相続人は、自己の名で、その者の給付金の支給を請求することができる。 3(省略)第4条(給付金の支給手続)給付金の支給の請求をするには、当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が第六条第一号、第二号又は第三号に該当する者であることを証する確定判決又は和解、調停その他確定判決と同一 の効力を有するもの(当該訴え等の相手方に国が含まれているものに限る。)の正本又は謄本を提出しなければならない。 第6条(給付金の額)給付金の額は、次の各号に掲げる特定C型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。 一慢性C型肝炎が進行して、肝硬変若しくは肝がんに罹り患し、又は死亡した者四千万円二慢性C型肝炎に罹患した者二千万円三前二号に掲げる者以外の者千二百万円 (別紙 4) 第1 厚生省DICスコアⅠ 基礎疾患・あり 1・なし 0Ⅱ 臨床症状 1 出血症状・あり 1・なし 0 2 臓器症状・あり 1 ・なし 0Ⅲ 検査成績 1 血清FDP値(㎍ 臓器症状・あり 1 検査成績 血清FDP値(㎍/㎖)40≦ 320≦、<40 210≦、<20 110> 0 血小板数(×10²/㎕)50≧ 380≧、>50 220≧、>80 1120> 0 血漿フィブリノゲン濃度(㎎/㎗)100≧ 2150≧、>100 150< 0 プロトロンビン時間時間比(正常対照値で割った値)1.67≦ 21.25≦、<1.67 11.25> 0 判定 7点以上 DIC6点 DICの疑い5点以下 DICの可能性少ない 白血病その他注1に該当する疾患(略) 診断のための補助的検査成績、所見(略) 注(略) 除外規定(略) 産科DICスコア 基礎疾患 常位胎盤早期剥離・子宮硬直、児死亡 5・子宮硬直、児生存 4・超音波断層所見及びCTG所見による早剥の診断 4 羊水塞栓症・急性肺性心 4・人工換気 3・補助呼吸 2・酸素放流のみ による早剥の診断 4 b 羊水塞栓症・急性肺性心 4・人工換気 3・補助呼吸 2・酸素放流のみ 1 cDIC型後産期出血 ・子宮から出血した血液または採血血液が低凝固性の場合 4・2000㎖以上の出血(出血開始から24時間以内) 3・1000㎖以上2000㎖未満の出血(出血開始から24時間以内) 1d 子癇・子癇発作 4 e その他の基礎疾患 1Ⅱ 臨床症状a 急性腎不全・無尿(≦5㎖/hr) 4・乏尿(5<、≦20㎖/hr) 3 b 急性呼吸不全(羊水塞栓症を除く)・人工換気または時々の補助呼吸 4・酸素放流のみ 1c 心、肝、脳、消化管などに重篤な障害がある時はそれぞれ4点を加える・心(ラ音または泡沫性の喀痰など)4 ・肝(可視黄疸など) 4・脳(意識障害および痙攣など) 4・消化管(壊死性腸炎など) 4d 出血傾向・肉眼的血尿およびメレナ、紫斑、皮膚粘膜、歯肉、注射部位などからの出 血 4e ショック症状・脈拍 ≧100/分 1・血圧 ≦90㎜Hg(収縮期)または40%以上の低下 1・冷汗 1 ・蒼白 1 Ⅲ 検査項目・血清FDP ≧10㎍/㎖ 1・血小板数 ≦10×104/㎣ 1・フィブリノゲ ・蒼白 1 Ⅲ 検査項目・血清FDP ≧10㎍/㎖ 1・血小板数 ≦10×104/㎣ 1・フィブリノゲン ≦150㎎/㎗ 1・プロトロンビン時間(PT) ≧15秒(≦50%)またはヘパプラスチン テスト≦50% 1・赤沈 ≦4㎜/15min または≦15㎜/hr 1・出血時間 ≧5分 1・その他の凝固・線溶・キニン系因子(例、AT-Ⅲ≦18㎎/㎗または≦60%、プレカリクレイン、α2-PI、プラスミノゲン、その他の凝固因子≦ 50%) 1以上をもとに、7点以下は「その時点ではDICとはいえない」、8~12点は「DICに進展する可能性が高い」、13点以上は「DICとしてよい」(ただし、DICと確診するためには、13点中2点、又はそれ以上の検査成績スコアが含まれる必要がある。)と判断する。 別紙個1(原告番号3番) 以下、本別紙中では、原告番号3-2番及び3-3番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号3-2番を「原告3-2」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・(・・・・・・・・・・・生、平成22年2月7日死亡。 以下「・・」という。)が、昭和41年3月19日、医療法人・・・・・・・・・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において経膣分娩により第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進 行して、死亡したと主張して、・・の相続人であり、原告番号3-1番 下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進 行して、死亡したと主張して、・・の相続人であり、原告番号3-1番(以下「当初原告3-1」という。)の訴訟承継人でもある原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者 ア当初原告3-1は・・の夫であり、原告3-2、原告3-3はそれぞれ・・の長女、長男である(争いがない)。 イ・・は、平成22年2月7日に死亡した。死亡届の「死亡の原因」欄の「直接死因」には「肝細胞癌」、「 の原因」には「C型肝硬変」とそれぞれ記載がある(甲C00301)。 ウ当初原告3-1は、平成26年12月4日、死亡し、原告らが訴訟上の地位を承継した(弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件出産(甲C00302、03、05、06の1ないし5)ア・・は、昭和41年3月19日午後0時37分、本件病院において、第1子(原告3-2)を出産した(本件出産)。 イ本件出産は、・・・医師(以下「・・医師」という。)が担当した。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C00302。以下「本件母子手帳」という。)8頁「お産の記事」には、「生死産の別」欄は「生産」に〇印が付けられており、「分べん」欄は「異常」に〇印が付けられ、その横の「種類原因」欄には「早期破水」、「軟産道硬靭」と記載されている。 「出血」欄は「少量・中等量・多量」のうち「少量」に〇印が付けられて いるが、「( )瓦」は空欄である。「産科手術」欄は「有」に〇印が付けられた上で、その横の「種類」欄に「帝切」と記載がある。 は「少量・中等量・多量」のうち「少量」に〇印が付けられて いるが、「( )瓦」は空欄である。「産科手術」欄は「有」に〇印が付けられた上で、その横の「種類」欄に「帝切」と記載がある。 エ本件出産前後の時期に作成された本件病院から・・宛の入院診療費請求書には、①昭和41年4月22日から同年5月10日までの期間、②同月11日から同月20日までの期間、③同月21日から同月31日までの期 間、④同年6月1日から同月10日までの期間、⑤同月11日から同月17日までの期間をそれぞれ請求期間とするものがある(甲00306の1ないし5。以下、①ないし⑤の請求書をまとめて「本件請求書」という。)。各請求書の「薬治料」欄には、それぞれ「高価薬」との記載(ただし、③については「高価薬混合」との記載)がある。 オ本件病院において、本件出産当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳及び本件請求書のみ現存するが、いずれも特定フィブリノゲン製剤投与の記載はない。また、本件出産に関する診療録は現存しない。 ⑶ ・・・・・・・病院の・・・・医師(以下「・・医師」という。)が平成20年2月7日付けで作成した「診断書・証明書」には、「病名」欄に「C 型肝硬変、肝細胞癌(原因 C型肝炎ウイルス)」とあり、直下に「上記にて2001年9月20日より当科受診。現在治療中です。」とある(甲C00307の2)。 ⑷ ・・医師の陳述書(甲C00308の1、2)ア・・医師は、平成20年6月25日付けで陳述書(甲C00308の1。 以下「本件陳述書」という。)を作成した。本件陳述書には、・・に関し、 ①出産後血清肝炎を発症しているので出産時に輸血又は血液製剤を投与されていることは間違いないこと、②本件請求書に記載さ 「本件陳述書」という。)を作成した。本件陳述書には、・・に関し、 ①出産後血清肝炎を発症しているので出産時に輸血又は血液製剤を投与されていることは間違いないこと、②本件請求書に記載されている「高価薬」については、当時の状況を考えると、出産に際し使用する薬剤としてはフィブリノゲン製剤か輸血が考えられるところ、「血液」と書いていないことからすると、フィブリノゲン製剤の可能性が高いこと、③フィブリノゲ ン製剤は高価な薬であることが記載されている。 イ・・医師は、平成21年3月13日付けで「今回の請求書に関しての・・の見解」と題する文書(甲C00308の2。以下「本件意見書」という。)を作成した。本件意見書には、当時の肝炎の治療は安静と食事がとれない場合の点滴が基本であって、肝炎に対する高価な薬はないから、本 件請求書の「高価薬」の記載については、産婦人科入院中の薬剤の請求がレセプト期限の関係で翌月になったと考えられることが記載されている。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張) ⑴ ・・は、出産予定日より約10日早い昭和41年3月18日、階段の2、3段目から落ちてしまい破水した。・・が本件病院を受診したところ、医師から「お腹の子どもが死んでいるので、このままでは母体も危ないため、緊急手術します。」と説明を受け、帝王切開手術を受けた。 本件出産後、・・医師から・・の母及び弟に対し、「早期破水によりお腹 の赤ちゃんが死んでいるので緊急手術をしました。その際、土曜日で緊急であったので輸血が間に合わなかったため、それに代わるものを使用しました。」と説明があった。・・の弟が、自分は同じ血液型だから輸血でき 赤ちゃんが死んでいるので緊急手術をしました。その際、土曜日で緊急であったので輸血が間に合わなかったため、それに代わるものを使用しました。」と説明があった。・・の弟が、自分は同じ血液型だから輸血できたはずだと詰め寄ると、医師は「それでは間に合わなかった」と述べた。 ⑵ ・・は、退院した翌日、主治医から血清肝炎だと告げられ、本件病院の内 科病棟に再び入院した。その日の夕方内科医が病室を訪れて、カルテを見な がら看護師に対して「血清肝炎になっているんだから婦人科の方で輸血か何かしない限り血清肝炎になるわけないだろう。」と怒鳴っているのが聞こえた。その翌日、産婦人科の婦長が病室に来て、・・に対して「・・さんなら止血剤を使いましたよ。」と述べた。 ⑶ ・・は平成10年5月25日に食道静脈瘤破裂で救急搬送された際、C型 肝炎に感染していることが判明したところ、平成10年以前には本件出産以外に多量の出血を伴うような手術や事故の経験はなく、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外にC型肝炎の感染原因がない。 ⑷ したがって、本件出産の際、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性が高い。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性が認められる必要があるところ、本件各証拠をみても、・・が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は存在しない。・・の出血量は 少量であり、DICの原因となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害やショック症状等の臨床症状は認められない。したがって、・・について、低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリ の出血量は 少量であり、DICの原因となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害やショック症状等の臨床症状は認められない。したがって、・・について、低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 原告3-2及び・・医師の供述によっても、本件出産時における担当医師 の投与方針を明らかにする証拠はないから、かかる観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑶ 原告3-2は、・・から、①・・医師が・・の母に対し、「それ(輸血)に代わるもの」を使ったと伝えたこと、②本件出産後の再入院中、産婦人科の婦長が病室に来て、・・に対し、「・・さんなら止血剤を使いましたよ。」 と述べたことなどを聞いたと供述するが、伝聞供述又は再伝聞であり、供述 過程の正確性を確認することができないから、・・医師及び婦長において、そのような発言をしたのか否か及び発言内容の正確性が明らかでなく、供述証拠としての信用性が低い。 その上、仮にその内容を前提としても、いずれも内容自体が曖昧であって、本件出産時において・・が受けた処置の具体的内容を明らかにできるもので はなく、まして、・・に特定フィブリノゲン製剤が使用されたか否かについては、全く明らかになるものではない。むしろ、・・については、低フィブリノゲン血症又はDICにあったことが認められない以上、一般的な止血剤が処方されていた可能性が高い。 ⑷ 本件請求書における「高価薬」が特定フィブリノゲン製剤のことを意味す るという・・医師の意見は、・・医師が本件出産の担当医ではないばかりか本件病院に勤務していたわけでもないことからすると、単なる推測にすぎず、合理的な根拠に 定フィブリノゲン製剤のことを意味す るという・・医師の意見は、・・医師が本件出産の担当医ではないばかりか本件病院に勤務していたわけでもないことからすると、単なる推測にすぎず、合理的な根拠に基づくともいえない。本件請求書の「高価薬」は、内科の診療に関するものであり、かつ、本件手術時に関係なく、請求期間を昭和41年4月22日から同年6月17日までとして5回にわたって代金を請求され ているから、本件出産時に産科で使用された特定フィブリノゲン製剤であることに整合する要素はない。 ⑸ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無 (原告らの主張)・・は、平成10年頃、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)原告らからは、①HCV-RNA(+)検査の結果、②過去に非A非B型肝炎又は血清肝炎の診断を受けた事実及びHCV抗体検査(+)の結果、③投与 当時急性肝炎となった事実及びHCV抗体検査(+)の結果のいずれも提出さ れていないため、感染については認められない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外に・・がC型 肝炎ウイルスに感染する原因はないから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間の因果関係の存在は明らかである。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患し、死亡した事実の有無 ある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患し、死亡した事実の有無 (原告らの主張)・・は、平成22年2月7日、C型肝硬変を原因とする肝細胞癌により死亡した。その証拠が、診断書(甲C00301)である。 (被告及び補助参加人の主張)上記診断書における診断の根拠となる各種検査結果等の証拠が提出されてお らず、肝硬変が慢性C型肝炎の進行によるものであることが認められない。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤使用の有無⑴ 原告らは、本件出産の際に、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件出産の際、・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたこ とを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑴オ)。 そこで、残存する医療関係記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態 ア本件出産の際の・・の病態に関し、本件母子手帳の記載(前提事実⑵ウ)によれば、・・が軟産道硬靭(強靭)により早期破水したことから、・・に対し、帝王切開手術が実施されたものと認められる。 もっとも、・・の出血量については、本件母子手帳の記載からは少量の出血があったと認められるにとどまる。・・が医師から「お腹の子どもが 死んでいるので、このままでは母体も危ない」と説明を受けたという原告3-2の供述(原告3-2本人 件母子手帳の記載からは少量の出血があったと認められるにとどまる。・・が医師から「お腹の子どもが 死んでいるので、このままでは母体も危ない」と説明を受けたという原告3-2の供述(原告3-2本人3頁)は、本件出産が「生産」であることからそれ自体明らかな誤りで、上記説明は信用性に欠けるが、この点をおき、原告3-2が、平成22年時点で・・から聴取した内容をまとめたメモ(甲C00310。以下「本件メモ」という。)においても、前日転倒 して破水したという出来事が述べられたにとどまり、出血等に関するエピソードは見当たらない。その他本件出産前後を通じ、・・にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったとはうかがわれない。 イ原告3-2は、本件出産後、・・医師が・・の母及び弟に対し、「土曜日で緊急であったので輸血が間に合わなかったため、血を止める薬を使用しました。」と説明したと述べる(原告3-2本人5頁)。 しかし、本件メモでは、・・医師が「輸血に代わるものを使った」と説明したと記載し、さらに、尋問では「輸血が間に合わなかったから、それ に合ったものを使った」と聞いたとも述べていること(原告3-2本人12頁)からすると、医師が実際に説明した内容はむしろ「輸血の代用」という趣旨にとどまるもので、これが・・から医師が「血を止める薬を使った」と説明したことを聞いているという上記供述内容に合理的な理由なく変遷したものと認められるから、原告3-2の上記供述は信用できない。 そして、「輸血に代わるもの」や「輸血に合ったもの」という医師の説 明が指す内容は原告3-2の供述・陳述からも明らかでなく、上記アのとおり・ 3-2の上記供述は信用できない。 そして、「輸血に代わるもの」や「輸血に合ったもの」という医師の説 明が指す内容は原告3-2の供述・陳述からも明らかでなく、上記アのとおり・・の出血量が少量にとどまることからすると、輸液、補液又は血漿代用剤の可能性も十分に考えられる(500g以上1000g以下の出血量に対しては、輸血ではなく代用血漿の使用を推奨する文献も存在する。 乙統136(364頁))から、これが特定フィブリノゲン製剤のことを 指すと認めることはできない。 なお、「輸血に代わるもの」や「輸血に合ったもの」が仮に止血剤を指しているとしても、産科出血に対する薬物療法としては、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等も存在していたこと(乙統83(394頁)、94 (277頁以下)、98(28頁))からして、原告3-2の上記供述・陳述は、・・医師が、本件出産後に、・・の母及び弟に対して・・に特定フィブリノゲン製剤を投与したという説明をした事実を推認させる供述には当たらない。 ウ原告3-2は、・・が、本件病院に再入院したその日、内科医が、カル テを見ながら看護師に対して「血清肝炎になっているんだから婦人科の方で輸血か何かしない限り血清肝炎になるわけないだろう。」と怒鳴っているのを聞いたこと、その翌日には、産婦人科の婦長が病室に来て、・・に対して「・・さんなら止血剤を使いましたよ。」と告げたことなども述べる(原告3-2本人6頁)。 しかし、昭和41年当時、特定フィブリノゲン製剤による肝炎発症のリスクは周知されておらず、添付書類上もウイルスの不活性化が完全には保証できないと記載されていたにとどまる(乙統33(5頁)) しかし、昭和41年当時、特定フィブリノゲン製剤による肝炎発症のリスクは周知されておらず、添付書類上もウイルスの不活性化が完全には保証できないと記載されていたにとどまる(乙統33(5頁))にもかかわらず、産婦人科の婦長が病室に来ていきなり止血剤使用の事実を指摘するという供述内容は、それ自体不自然である。加えて、本件メモには、婦長 が「・・さんなら、しましたよ。」と述べたと記載されるにとどまり、止 血剤という文言は存在しない。そうすると、・・から「止血剤を使ったと聞いた」旨聞いているという原告3-2の供述は直ちに信用できない。 仮に、婦長が「止血剤」という文言を用いたとしても、「止血剤」の意味する内容がフィブリノゲン製剤以外にも考えられることは上記イで説示したとおりであって、原告3-2の上記供述をもって、婦長が、・・に対 し、特定フィブリノゲン製剤を投与したという説明をしたことを推認させる供述であるということはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 よって、本件病院又は担当医の投与方針に照らして特定フィブリノゲン製剤投与の事実を合理的に推認することはできない。 ⑷ 本件請求書の記載本件請求書の「高価薬」の記載について(前提事実⑵エ)、・・医師は、本件陳述書において、フィブリノゲン製剤を指す可能性が高いと述べ、その 理由として、①出産後血清肝炎を発症していること及び当時の状況から考えると、出産に際し使用した薬剤としてはフィブリノゲン製剤か輸血のいずれかと考えられるところ、本件請求書に「血液」とは記載がないこと、②当時、肝炎に対する 肝炎を発症していること及び当時の状況から考えると、出産に際し使用した薬剤としてはフィブリノゲン製剤か輸血のいずれかと考えられるところ、本件請求書に「血液」とは記載がないこと、②当時、肝炎に対する高価な薬はなかったこと、③産婦人科入院中の薬剤の請求がレセプト期限の関係で翌月になったと考えられることなどを挙げる。 しかし、高価薬の記載について、内科からの入院診療費請求書に記載があること、本件出産の翌月である4月分に限らず、4月から6月までの期間を請求期間とする計5通の請求書のいずれにも記載があることからすると、上記「高価薬」の記載が3月に産婦人科の治療で使用された薬剤を意味すると解することは困難であり、その記載どおり、4月から6月までの内科治療に 関する費目の記載を指すものと解すべきである。一方、・・医師からは、 「高価薬」の記載が4月から6月までの計5通に渉っている理由について、合理的な説明がない。 また、・・医師は、原告の血清肝炎発症の事実をもって、その原因がフィブリノゲン製剤か輸血であると特定している。しかし、C型肝炎ウイルスの感染経路は、輸血や血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々な ものがあり、原因が特定できない場合も相当数あること(乙統2(15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)などからして、・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたものと推認することはできない。 したがって、・・医師の上記推論は採用できず、本件請求書に「高価薬」 の記載があることをもって、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑸ したがって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療関係 できず、本件請求書に「高価薬」 の記載があることをもって、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑸ したがって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療関係記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を合理的に推認されるということはで きない。 2 以上によれば、本件出産の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由が ないからこれを棄却することとする。 別紙個2(原告番号4番) 以下、本別紙中では、原告番号4-1番及び4-2番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号4-1番を「原告4-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・(・・・・・・・・・生、平成20年7月16日死亡。 以下「・・」という。)が、昭和40年6月、・・・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において、卵巣嚢腫の治療としての卵巣摘出手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行し て、死亡したと主張して、・・の相続人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告番号4-1は、・・の夫であり、原告番号4-2は、原告4-1 と・・の養子である(争いがない)。 イ・・は、平成20年7月16日、死亡した(甲C00401)。 ⑵ 本件手術の状況等ア・・は、昭和40年6月頃、本件病院において、卵 4-1 と・・の養子である(争いがない)。 イ・・は、平成20年7月16日、死亡した(甲C00401)。 ⑵ 本件手術の状況等ア・・は、昭和40年6月頃、本件病院において、卵巣嚢腫を原因とする卵巣摘出手術(本件手術)を受けた(甲C00406)。 イ・・が平成6年1月20日から同年3月18日まで本件病院に肝炎治療のため入院した際の入院診療録の「入院総括」の「経過概要」欄には、「既往歴」として「25才ころ当院婦人科にて内性器摘出術(卵管妊娠?) BTF夫、父より」との記載がある(甲C00404(4頁))。 ⑶ ・・は、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に 罹患し、死亡した(争いがない)。 ⑷ 本件手術に関し、本件手術当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しておらず、担当医師その他の医療関係者からは、本件手術に関する陳述は得られていない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告らの主張)⑴ 原告4-1は、本件手術の途中で、緊迫した様子の手術スタッフから、・・の出血がひどく1500㎖程度の輸血が必要であると言われ、・・の実父と共に300㎖ずつ採血され、・・に輸血された。本件手術の時間は4時間にも及んだ。 ⑵ 本件病院には、平成2年から平成7年までの間に1年間で60以上、平成3年度には250近い特定フィブリノゲン製剤が納入されていたことからすれば、本件手術が行われた昭和40年6月当時は特定フィブリノゲン製剤が認可されて間もない時期であるが、その当時から特定フィブリノゲン製剤が納入され、使用されていた蓋然性が高い。 とからすれば、本件手術が行われた昭和40年6月当時は特定フィブリノゲン製剤が認可されて間もない時期であるが、その当時から特定フィブリノゲン製剤が納入され、使用されていた蓋然性が高い。 ⑶ ・・は、本件手術時以外に大量出血をしたことがなく、C型肝炎ウイルスに感染する原因がない。 ⑷ 以上によれば、・・が、本件手術の際に、止血剤として特定フィブリノゲン製剤が投与された蓋然性は高い。 (被告の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、・・の本件手術について、具体的な出血量はもとより、本件手術時の状況に関する客観的な証拠は存在しない。原告4-1の陳述を前提 としても、本件手術の際に、待機していた親族2名からの採血を輸血した 程度であれば、・・に切迫した状況が生じていたことはうかがわれず、少なくとも、・・の本件手術中の出血が低フィブリノゲン血症又はその要因であるDICの原因となるほどの大量出血であったと認めることは困難である。そのほかに、・・について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったこと をうかがわせる事情は認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件手術時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はない。 ⑶ ・・が本件手術を受けたのは昭和40年6月頃とされるところ、特定フ ィブリノゲン製剤が薬価収載されたのは昭和40年11月1日であり(乙統236)、それまでは保険適用外であったから、本 。 ⑶ ・・が本件手術を受けたのは昭和40年6月頃とされるところ、特定フ ィブリノゲン製剤が薬価収載されたのは昭和40年11月1日であり(乙統236)、それまでは保険適用外であったから、本件病院において、本件手術当時、保険適用前の製剤をあえて使用したと推認することは困難である。 ⑷ ・・は、担当医師から、止血剤の投与の有無や本件手術時の出血や止血 に関する説明を受けた形跡がなく、止血剤の投与があったとは認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 病態に関する原告4-1の陳述を裏付ける客観的証拠はなく、信用できないから、本件手術に1500㏄の輸血が施行されたかも明らかでない。 仮に施行されたとしても、担当医の投与方針が不明である以上、輸血の事実をもって、・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑵ 本件手術当時、フィブリノゲン製剤を保険診療において用いることはできないことからすれば、当時、本件病院において、フィブリノゲン製剤は 診療に使用されていなかったと考えるべきである。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張)本件手術の際、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係があ る。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告らは、本件手術の際に大量出血に対する止血のために、・・が輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたと主張するが、本件手術 際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告らは、本件手術の際に大量出血に対する止血のために、・・が輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたと主張するが、本件手術の際、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・ の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア原告らは、本件手術の際、腹部を大きく切開してから卵巣を摘出する 手術方法により卵巣が摘出されたため、・・が大量の出血をし、原告4-1が、手術スタッフから、出血がひどいので1500㏄程度の輸血が必要であり、病院にある血液では足りないため1人当たり300㏄程度血液を提供してほしいと言われて輸血したと主張し、原告4-1の陳述はこれに沿う(甲C00406(3、4頁))。 イしかしながら、本件各証拠によっても、本件手術前後の具体的な手術 経過は不明であり、上記輸血量から相応の出血をした事実は認められるものの、・・の具体的な出血量や出血状況は明らかでない。また、本件手術前後に、・・に重篤な障害、ショック症状等の臨床症状や身体症状があったことをうかがわせる事情はないこと、卵巣摘出手術は、厚生省DIC診断基準のうちの基礎疾患である「組織損傷」「大手術後」には 当たらないこと(乙統200(121、122頁)、106(371頁))などからして、・・にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として多量の出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪 いこと(乙統200(121、122頁)、106(371頁))などからして、・・にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として多量の出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針 ア本件各証拠によっても、本件手術当時の本件病院ないし本件手術の担当医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 イそもそも、本件手術当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたか否かも明らかでない上に、本件手術のあった昭和40年6月は、同年11月1日の特定フィブリノゲン製剤の薬価収載より前であ り(乙統16、236)、特定フィブリノゲン製剤の使用が保険の適用外であったことからすると、本件手術当時、本件病院において、フィブリノゲン製剤の適応である低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの診断を待たず、フィブリノゲン製剤を止血剤として適応外使用する治療方針が定着していた可能性を認めることはできない。 そうすると、・・が多量の出血をしていたとしても、その事実をもって、・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑷ 他原因の存否原告らは、本件手術後の大量出血以外には事故や手術で大量出血したこと はなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告4-1は、・・に 血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告4-1は、・・に対しては、本件手術の際、原告4-1と・・の実父からの供血輸血の量 を大きく上回る輸血がされたと述べているところ(甲C00406)、昭和40年頃は、輸血後肝炎発症率は31.1%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個3(原告番号7番) 以下、本別紙中では、原告番号7番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、承継前原告の・・・・・(・・・・・・・・・・・生、平成28年 10月4日死亡。以下「・・・」という。)が、昭和44年10月、・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において開腹手術による胎盤掻爬(以下「本件手術」という。)を受けた際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患したと主張して、・・・の相続人であり、訴訟承継人で 「本件手術」という。)を受けた際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患したと主張して、・・・の相続人であり、訴訟承継人で ある原告が、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・・の長女である(争いがない)。 イ・・・は、平成28年10月4日、肝硬変を原因とする肝細胞癌を直接の死因として死亡し、原告が訴訟上の地位を承継した(甲C00736、弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件手術の状況等ア・・・が昭和62年9月2日から同年12月2日までの間、・・・・ 病院に入院した際の診療録には、既往歴として「29才卵巣ゆ着ope(・・HP)」とある(甲C00716)。 イ本件手術に関し、本件手術当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存していない。また、本件手術を担当した医師その他の医療関係者から、本件手術を担当した際の記憶に基づく陳述は得 られていない。(甲C00702(4頁)、弁論の全趣旨) ⑶ ・・・のC型肝炎ウイルスへの感染等・・・は、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患した(争いがない。甲C00701、16ないし25)。 ⑷ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病 院リスト上、納入実績が確認されている(甲C00711)。 ⑸ その他の手術ア・・・は、昭和39年9月頃、・・・・・・病院において、卵巣嚢腫核出術・虫垂切除術を受けた。・・・は同手術後、手術の執刀医から、癒着によりひどい出血 る(甲C00711)。 ⑸ その他の手術ア・・・は、昭和39年9月頃、・・・・・・病院において、卵巣嚢腫核出術・虫垂切除術を受けた。・・・は同手術後、手術の執刀医から、癒着によりひどい出血であったと聞いた。(甲C00702(3頁)) イ・・・は、昭和54年5月15日、子宮筋腫・右卵巣嚢腫に対する手術として、腹式子宮全摘術・右付属器摘出術を受けた。術中の出血量は、108mlであり、輸血はされていない。(甲C00703、04、14、15、弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ ・・・は、昭和44年に第3子を妊娠したが、妊娠3か月になった同年10月、数日間出血と腹痛が続いていたことから本件病院を受診したところ、主治医の・・・・・医師(以下「・・医師」という。)から掻爬による中絶 手術をするほかないと告げられ、掻爬手術を受けることにした。手術の担当医師は・・医師であった。手術前には、経膣で行う通常の掻爬手術が予定されていたが、手術開始後、実際に掻爬をしてみると、胞状奇胎であることが判明するとともに、・・・は、大量出血及びそれに起因するショックを生じ、意識を喪失した。そこで、緊急開腹手術により奇胎を包含する胎盤の掻爬と 止血処置が行われた。・・・は、本件手術翌日の昼頃まで意識を失ったまま であった上、上記大量出血による重篤症状が回復せず、10日間の入院を余儀なくされた。 ・・・の上記病態に加え、胞状奇胎の掻爬手術自体が大量出血による生命の危険を生じやすいこと、・・・が癒着体質であることからすると、本件手術の際の出血量は2000㏄を超える重篤なものであったと考えられるから、 態に加え、胞状奇胎の掻爬手術自体が大量出血による生命の危険を生じやすいこと、・・・が癒着体質であることからすると、本件手術の際の出血量は2000㏄を超える重篤なものであったと考えられるから、 本件手術の際に・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたことは明らかである。 ⑵ ・・医師は、平成19年、・・・から本件手術の状況について聞き、「その頃うちの病院ではフィブリノーゲンを3本とって使ったことがある。あなたの話からするとそれは多分あなたの手術に使ったのだと思う。」と述べた (以下「本件発言」という。)。 ⑶ 本件手術の際、・・・に対して輸血は実施されていない。このことは、平成14年に本件病院に勤務していた看護師が、平成14年当時、緊急輸血に備えて輸血用血液を常備するようなことはしていなかったと述べており、令和3年5月に本件病院の院長であった・・・医師も、緊急時には赤十字血液 センターから取り寄せることができたから輸血用血液を常備することはしておらず、昭和44年当時も常備はしていなかったと考えられる旨回答していること、・・・が当初日帰り手術の予定であったこと、・・・もその親族も本件手術の際輸血を受けた記憶がなく、・・・の当時の夫である・・・・(以下「・・」という。)が・・医師から止血剤で止めたと説明を受ける一 方で、輸血については聞いていないことなどから裏付けられる。 本件手術当時の切迫した危機的症状にありながら、輸血しなかったことからすると、・・医師が・・・に対しフィブリノゲン製剤を投与したことが優に推認できる。 ⑷ 昭和44年当時、中絶掻爬手術をする前に胞状奇胎を発見することは困難 であり、掻爬手術により危機的な産科出血が生じることは必至であった。し たがっ が優に推認できる。 ⑷ 昭和44年当時、中絶掻爬手術をする前に胞状奇胎を発見することは困難 であり、掻爬手術により危機的な産科出血が生じることは必至であった。し たがって、当時の医療水準では、胞状奇胎の症例では、大量の新鮮血の輸血とフィブリノゲン製剤の投与による止血又はそのいずれかの処置をすることが不可欠であったと認められる。 ⑸ ・・・には、本件手術のほか、昭和39年の手術及び同54年の手術以外に輸血や止血剤を必要とするような大量出血や手術を伴う病気やけがをした 経験はなく、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたこと以外にはC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられない。 ⑹ したがって、本件手術の際、・・・に対し、止血処置として、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が優に認められる。 (被告の主張) ⑴ 昭和44年当時、胞状奇胎の患者につき必ず大量出血を生じさせていたという医学的知見は存在しない。これをおいても、特定フィブリノゲン製剤の投与は、医師の総合判断の下にあるDICの診断に依拠し、かつ、複数の治療法の選択肢のうちの一つとして、医師の裁量判断の下にあるものであって、大量出血が認められれば必ず投与されていたものではない。 したがって、胞状奇胎の存在によって直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるという論理則や経験則は認められない上、・・医師において、そのような投与方針を有していた事実を認めることもできない。 ⑵ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要 性が認められる必要があるところ、本件の各証拠をみても、・・・が低フィブリノゲン血症と診 されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要 性が認められる必要があるところ、本件の各証拠をみても、・・・が低フィブリノゲン血症と診断されたことを示す事情や、DICスコアを算定すべき事情は認められない。 原告は、・・・がショック状態にあったとして、本件手術時の出血量が2000㏄以上、血圧は60以下であったなどと推測する一方、輸血はされて いないと主張するが、2000㏄以上の出血をしていながら輸血していない という立論自体が医学的に不合理であって、通常想定し難い。加えて、・・・に厳密な全身管理が行われた事実や、高次医療施設に転院した経過もうかがわれないことからすると、・・・にショックが生じていたとも考えにくい。 そうすると、・・・が特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とするような病態であったと認めるに足りる証拠はない。 ⑶ ・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、・・・や原告の供述によってもその投与方針は不明である。 ・・医師から止血剤を投与すると説明を受けたという・・の供述は、「止血剤」には、一般的な止血剤も含まれることなどからすると、特定フィブリノゲン製剤の投与を意味するものとは認められない。また、・・医師が平成 19年に・・・に対して本件発言をしたという・・・の陳述内容は、客観的な裏付けを欠く上、・・医師の反対尋問による正確性の担保があるわけでもないから、信用できない。 ⑷ したがって、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 (補助参加人の主張)⑴ フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症に対して投与することが推奨されてきた製 ・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 (補助参加人の主張)⑴ フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症に対して投与することが推奨されてきた製剤であって、そもそも出血性疾患に対して一般的に投与されるものではない。そして、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤の投与事実の有無を判断するには、少なくとも・・医師の当時の投与方針及び・・・ の当時の病態を踏まえた個別具体的な検討が必要不可欠であるところ、・・医師の当時の投与方針を明らかにする客観的な証拠はない。また、当時、・・・に低フィブリノゲン血症を来すような大量出血があったことをうかがわせる事情はなく、ある程度の出血をし、出血が止まらない状況があったことまではうかがえても、具体的な出血量や、それにより生じた症状の詳細は不 明である。 ⑵ C型肝炎ウイルスの感染源は血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故、観血的民間治療、歯科治療時の感染事故、母子間感染、性交感染、かみそり、歯ブラシの共用、覚せい剤の静注注射、麻薬の鼻孔吸引、入れ墨、保因者による咬傷など様々な感染経路が指摘されており、感染源が不明な場合も相当多い から、・・・がC型肝炎に感染している事実は、特定フィブリノゲン製剤の投与を何ら根拠づけるものではない。なお、本件病院に輸血が常備されていないのは、速やかに取り寄せることが可能であるからであって、常備されていないからといって、輸血がされていないことにはならない。 ⑶ したがって、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投 与された事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス いことにはならない。 ⑶ したがって、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投 与された事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際に・・・に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実の有無 ⑴ 原告は、本件手術の際の止血処置として、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が優に認められると主張するが、本件手術の際、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠は見当たらない(前提事実⑵イ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の 間接事実から、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認できるかどうかを検討する。 なお、原告に対しては、平成24年4月17日及び同年6月19日に当時は証人として尋問が行われ、令和3年9月27日に原告本人として尋問が行われた。以下、令和3年の尋問結果について「原告本人〇頁」と表記する。 ⑵ ・・・の病態ア証拠(甲C00702(4頁)、07、12(8、9頁)、31、32(2頁)、34、原告本人(7、12頁))及び弁論の全趣旨によれば、本件手術時の・・・の病態に関し、妊娠3か月に当 病態ア証拠(甲C00702(4頁)、07、12(8、9頁)、31、32(2頁)、34、原告本人(7、12頁))及び弁論の全趣旨によれば、本件手術時の・・・の病態に関し、妊娠3か月に当たる昭和44年10月頃、・・・が本件病院で子宮内掻爬手術を受けた際、手術中に胞 状奇胎であることが判明し、開腹手術による胎盤掻爬手術(本件手術)に切り替えられたこと、その際、・・・が出血したこと、・・・に全身麻酔が施されたこと、・・・の意識が本件手術直後には戻らなかったこと、・・・に輸血は実施されていないこと、本件手術翌日も・・・が蒼白い顔をしていたことなどが認められる。 上記の認定に関し、原告は、・・・が本件手術の翌日までショックにより意識を失っていたと主張し、原告の供述(原告本人4、12、13頁)はこれに沿う。 しかしながら、本件手術後に意識喪失の状態にあったことを裏付ける客観的資料は存在しないこと(弁論の全趣旨)、原告の上記供述は親族 からの伝聞内容を述べるものであるところ(同12頁)、・・・は、「術後、1~2日意識を失っていたようで」あったと述べていること(甲C00702)、・・・の元夫・・は、本件手術当日夜に出先から本件病院に駆け付けたが、「多量出血のため意識喪失してしまっていて、」再び仕事に戻り、翌日夕方に・・・を見舞ったところようやく意 識が戻ったようだったと述べていること(甲C00732)、・・・の 姪の・・・・は、本件手術当日に原告を連れて本件病院に赴いたが、「意識不明のままでした」、その後も数日間は意識が朦朧としていたと述べていること(甲C00731)、本件手術が全身麻酔を伴う開腹手術であったこと、・・・の陳述、原告の供述などからも、本件手術前に・・・が意識を喪失したこと 、その後も数日間は意識が朦朧としていたと述べていること(甲C00731)、本件手術が全身麻酔を伴う開腹手術であったこと、・・・の陳述、原告の供述などからも、本件手術前に・・・が意識を喪失したことをうかがわせる事情は見当たらないこと、 本件病院の場合、全身管理を要する患者であれば、高次医療機関に即時転院されるはずであること(甲C00712参照)などからすれば、本人及び親族が「意識喪失」と述べている状態は、本件手術中の麻酔の影響により当日夜まで麻酔からの覚醒が十分でない状態を指すものと解するのが合理的であり、上記の各陳述、供述に沿って・・・が本件手術の 翌日までショックにより意識を失っていた状態が継続していたと認めることはできない。 したがって、原告の上記主張は、採用できない。 よって、本件手術後、1日間以上意識喪失があったことを前提として、重篤な出血性ショックが存在し、同ショックを引き起こすだけの出血量 があった、同ショックに相当するほど血圧が極度に低下していたなどとする原告の主張は、その前提を欠くものと言わなければならない。 このことは、原告の供述に基づき、体重50kg と仮定した・・・に2000㎖以上の出血があるとすると、循環血液量の30%以上が失われることになるから、生命の危険があるほどで、輸血が行われないとは 通常考え難いのに(乙統136(364頁)、乙A8)、本件手術の前後を通じ、輸血が行われなかったことからも裏付けられる。 イ医学的知見によれば、①胞状奇胎が絨毛性疾患の一つであり、数㎝の多数の奇胎嚢胞が発生して子宮に充満し、その隙間を母体の血液が循環する病態であること、②奇胎組織で増大した子宮に対する子宮内容除去 術では大量出血と子宮穿孔に十分な注意を必要とすること、具体 多数の奇胎嚢胞が発生して子宮に充満し、その隙間を母体の血液が循環する病態であること、②奇胎組織で増大した子宮に対する子宮内容除去 術では大量出血と子宮穿孔に十分な注意を必要とすること、具体的には、 ③胞状奇胎は、十分発育すると、正常妊娠20週の子宮の大きさまで育ってしまい、その場合胞状奇胎の容積約3000㎖のうち子宮内に滞っている子宮内循環血は約1000㎖であり、これに子宮動脈から流入する血液量等を含めると、胞状奇胎の除去により、1000㎖以上の出血が想定されること、したがって、④胞状奇胎が出血性ショックを伴う産 科疾患に数えられており、DICを呈する主な疾患としても挙げられていることなどが認められる(甲C00727、44(5、37頁)、45、乙統74(246頁))。 一方、医学的知見によれば、胞状奇胎は、①現在では妊娠初期に人工中絶の処置が施されるところ、昭和55年頃までは、一般に超音波検査 が用いられず、初期の発見が困難であったため、そのまま発育してしまうことがあったこと、②超音波診断によれば、妊娠10から12週には、奇胎嚢胞を認めて診断できることが認められる(甲C00743、45)。 本件についてこれをみると、・・・は、本件手術当時、妊娠3か月 (12週)であり、不正出血と痛みから人工妊娠中絶を行うこととなり、掻爬の処置を受けたところ、胞状奇胎の異常妊娠が判明したため、本件手術によりその除去が行われたというもので、超音波検査が用いられていない時代であったにもかかわらず、超音波検査を用いて奇胎嚢胞の診断が可能となる場合とほぼ同じ時期に胞状奇胎が判明したものである。 そうすると、本件手術当時の胞状奇胎の大きさは、上記のとおり、人工妊娠中絶が可能な程度のも 超音波検査を用いて奇胎嚢胞の診断が可能となる場合とほぼ同じ時期に胞状奇胎が判明したものである。 そうすると、本件手術当時の胞状奇胎の大きさは、上記のとおり、人工妊娠中絶が可能な程度のもので、具体的な出血量や出血状況は明らかでないものの、少なくとも、その後発育が進んでしまった場合の3000㎖の容積があることを前提にした出血量の算定は当てはまらないもので、出血性ショックを伴う産科疾患ないしDICを呈する主な疾患と しての胞状奇胎であるということはできない。 ウまた、・・は、令和3年4月21日付け陳述書において、本件手術直後、・・医師から止血剤で止めたと説明されたと述べる(甲C00732)。 しかしながら、同陳述よりも10年以上前の平成20年に・・が作成した陳述書(甲C00707)には、出血が止まらないために緊急で全身麻酔で開腹術を実施されたと記載されているにとどまり、上記のような説明 を受けたとすれば当然言及されるはずの止血剤の投与については記載がないにもかかわらず、その陳述内容の変遷について合理的な根拠が示されていないから、信用できない。 エしたがって、本件手術の際、・・・について、2000㎖以上の出血があったと認めることはできず、こうした・・・の病態を踏まえると、掻爬 の結果胞状奇胎が判明し、そのまま開腹手術に至ったという点を考慮しても、本件手術当時、・・・がDICに陥っていたとか、DICの治療が必要になるような緊急事態が発生していたことを認めることはできないから、直ちに本件手術の際における・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ ・・医師の発言について原告は、平成19年頃、・・医師が・・・に対し、「その頃うちの病 おける・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ ・・医師の発言について原告は、平成19年頃、・・医師が・・・に対し、「その頃うちの病院ではフィブリノーゲンを3本とって使ったことがある。あなたの話からするとそれは多分あなたの手術に使ったのだと思う。」と述べた(本件発言)と主張し、本件発言によれば、・・・に対する特定フィブリノゲン製剤の 投与が推認されると主張する。 しかしながら、原告の供述(原告本人19頁)によれば、本件発言に至る経緯について、・・・が・・医師に電話を掛け、①ブドウ子であったこと、②子宮内掻爬手術の途中で止血せず、開腹による掻爬に至ったこと、③術後数日間、意識がない状態で入院していたことなどを説明したところ、・ ・医師が本件発言のとおり述べたことが認められるところ、本件病院にお いて、昭和44年当時特定フィブリノゲン製剤を3本とって使った症例があるという事実に何ら裏付けがないことをおくとしても、・・医師は、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤を投与したことを記憶していたものではないこと、上記⑵のとおり、・・・について、術後数日間意識がない状態で入院していたという事実は認められないことからして、3本とって 使ったという上記の症例が本件手術の際の・・・に対するものであったという・・医師の推論を採用することはできない。 したがって、原告の上記主張は採用できず、・・医師の本件発言により、・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑷ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針ア本件手術当時における本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針を明ら 事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑷ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針ア本件手術当時における本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、供述証拠によっても・・医師の投与方針は不明と言わざるを得ない。 イ原告は、本件手術当時の医療では、中絶掻爬手術をする前に胞状奇胎 を発見することは困難であったから、胞状奇胎の症例では、掻爬により危機的な産科出血が生じるのが必至であり、大量の新鮮血の輸血とフィブリノゲン製剤の投与による止血又はそのいずれかの処置をすることが不可欠であったと主張し、胞状奇胎において特定フィブリノゲン製剤の投与を推奨する文献や医師の証言を援用する。 しかしながら、原告がその医学的知見を援用する・・・・医師も、破壊胞状奇胎に対する除去術の際に失われる血液量を補うため、輸血して循環血液量を増やすとともに、血液凝固を高めることを目的に特定フィブリノゲン製剤の投与が推奨されると述べているもので(甲C00745)、本件手術のように、輸血を要しないほどの出血にとどまる場合に上記製剤の 投与適応を認めたものではない。 したがって、原告が掲げる医学的知見を基に、本件手術当時の本件病院又は・・医師が、胞状奇胎について必ずフィブリノゲン製剤を投与する方針を有していたとは認定することはできない。 ⑸ 他原因の存否原告は、・・・には、本件手術のほか、昭和39年の手術及び同54年の 手術以外に輸血や止血剤を必要とするような大量出血や手術を伴う病気やけがをした経験はなく、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたこと以外にはC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。 しか を必要とするような大量出血や手術を伴う病気やけがをした経験はなく、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたこと以外にはC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、 血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがある(乙統2(15頁)、218(722頁)等)。しかも、・・・は、昭和39年の手術の際、癒着によりひどい出血をしたと担当医師から説明されており、この手術の際、輸血が行われた可能性も考えられるところ、昭和39年頃の輸血後肝炎発症率は約31.1%であったと報告されているこ と(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、・・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個4(原告番号8番) 以下、本別紙中では、原告番号8-1番及び8-2番を併せて「原告ら」といい、原告番号8-1番の原告を「原告8-1」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・・生、平成 及び8-2番を併せて「原告ら」といい、原告番号8-1番の原告を「原告8-1」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・・生、平成24年5月22日死亡。以下「・・」という。)が、昭和61年12月頃、・・・・・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において、交通事故に対する治療(以下「本件治療」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が 進行して、肝硬変に罹患したと主張して、・・の相続人であり、訴訟承継人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者 ア原告8-1は、・・の長男であり、原告番号8-2番は、・・の二男である(甲C00805)。 イ・・は、平成24年5月22日、死亡し、原告らが訴訟上の地位を承継した。・・の死因は、C型肝硬変による多発肝細胞癌を原因とする肝不全と診断されている。(甲C00804、弁論の全趣旨) ⑵ 本件治療の状況等ア・・は、昭和61年12月2日、自動車運転中に交通事故に逢い、右大腿骨骨折、両下肢火傷、右鎖骨骨折、左尺骨骨折、左血気胸、脳震盪、右中小指裂創の交通事故外傷を負い、本件病院に救急搬送された(以下「本件事故」という。甲C00802(本文、資料2、3))。 イ本件病院作成の昭和63年1月20日付け診断書(入院証明書。(以 下「本件診断書」という。))には、「初診時の所見及び経過」として、昭和61年12月2日に「入院手術(デブリードマン、縫合)」、同月12日に「手術(大腿骨接合、右下腿デブリードマン)」、同月24日に「手術(植皮 という。))には、「初診時の所見及び経過」として、昭和61年12月2日に「入院手術(デブリードマン、縫合)」、同月12日に「手術(大腿骨接合、右下腿デブリードマン)」、同月24日に「手術(植皮)」、昭和62年2月20日に「手術(植皮)」、同年4月24日に「退院」、同年11月4日「入院」、同月5日「手術 (抜釘)」、同月25日「退院」とある(甲C00802(資料2))。 ウ本件治療に関し、・・の主治医は、・・・・医師(整形外科医。以下「・・医師」という。)であった(甲C00802(資料2ないし4))。 ⑶ 原告は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 原告は、遅くとも平成18年3月1日には、C型肝硬変の診断を受けた(甲C00802(資料11))。 ⑷ 本件病院のフィブリノゲン製剤の納入実績記録として、平成4年以降の納入実績が確認された(弁論の全趣旨)。 ⑸ 本件治療に関し、その当時に作成された診療録、レセプトその他の医療 記録は現存していない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件治療の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張)⑴ ・・は、本件事故により本件病院に入院した際、特定フィブリノゲン製 剤を投与され、C型肝炎ウイルスに感染した。 ・・の上記入院中、・・に対し、ミドリ十字という文字がある瓶に入っていた止血剤の点滴がされたことがあり、・・の妻・・・・・(以下「・・・」という。)及び原告8-1がいずれもこれを見ていた。・・・は、止血剤を使用した理由について、看護師から、13日間輸血し、O型の血 液が病院でなくなったので、外国から取寄せ中の輸血用血液が届くまで止 血剤を使うと説明された。 原告8-1が、平 剤を使用した理由について、看護師から、13日間輸血し、O型の血 液が病院でなくなったので、外国から取寄せ中の輸血用血液が届くまで止 血剤を使うと説明された。 原告8-1が、平成30年8月頃、本件治療に関わった・・・・医師(以下「・・医師」という。)に面会し、止血剤のことを尋ねると、「フィブリノゲンを使ったことがある。当時止血剤は素手で処置することは術者である医者にも害がないか心配だったので手袋をはめて止血剤の処置をしたことも あった。・・という名前は珍しいので覚えている。だが、・・さんに止血剤を投与したかどうかまでは覚えていない。」ということであった。 これらの事情から、・・が、本件治療の際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことが認められる。 ⑵ 本件治療の際以外に、・・がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えら れない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件治療の当時、・・について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠に よっても、・・については、出血量すら不明であり、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 また、産科以外の領域では、昭和40年代以降、DICの治療におけるフィブリノゲン製剤負投与は消極的、限定的な評価がされており、昭和6 0年代においてはあくまで補充的な使用とされていたことから、一般的に特定フィブリノゲン製剤が使用されていたと認めることはできない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、同製剤に関する・・医師の投与方針は不明であり、同医 リノゲン製剤が使用されていたと認めることはできない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、同製剤に関する・・医師の投与方針は不明であり、同医師による本件治療において、特定フィブリノゲン製剤が投与されるべ き状況があったとは認められない。 ⑶ また、本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入実績は、昭和61年から3年を遡って確認されていないこと、当時ミドリ十字社は輸液の点滴等も多数販売していたこと、昭和61年12月当時、特定フィブリノゲン製剤としては広くHBIG製剤が使用されており、そのラベルは赤茶色であったことからすると、原告8-1が・・にされた点滴の瓶のラベル に青か緑のような色でラベルにミドリ十字の文字があったという供述を前提としても、特定フィブリノゲン製剤の投与事実は推認されない。 さらに、・・・が、ミドリ十字と記載された止血剤をみたという陳述も、上記のとおり、輸液と混同している可能性が十分考えられるなど、直ちに信用できず、同供述をもって、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投 与されたと推認することはできない。 (補助参加人の主張)以下の点を加えるほかは、被告の主張を援用する。 本件病院の本件治療前の3年間の特定フィブリノゲン製剤の納入実績を確認したところ、その納入はなかった。フィブリノゲン製剤の有効期限が検定 合格日から3年であることからすれば、本件治療がされた昭和61年12月の時点において、・・に対して投与可能なフィブリノゲン製剤は本件病院に存在しなかった。また、昭和61年12月当時のフィブリノゲン製剤は、いわゆるHBIG製剤であり、その瓶の緑の文字は茶色ないし赤に近い色で、「青か緑のような色」ではない。さらに、輸 ン製剤は本件病院に存在しなかった。また、昭和61年12月当時のフィブリノゲン製剤は、いわゆるHBIG製剤であり、その瓶の緑の文字は茶色ないし赤に近い色で、「青か緑のような色」ではない。さらに、輸血をわざわざ外国から取り寄せ ることはあり得ず、それを前提とした止血剤の投与もあり得ない。 したがって、原告8-1が止血剤に関してする供述及び・・・が止血剤に関してする陳述は、いずれも信用できない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告らの主張) 本件治療の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患した事実の有無 (原告らの主張)・・は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患し、これが進行して肝硬変を発症した。 (被告及び補助参加人の主張)新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等及び 肝硬変の診断根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件治療の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告らは、・・が、本件事故により本件病院に入院した際の本件治療において、特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件治療に当た り、・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本 治療に当た り、・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態本件診断書によれば、・・が本件事故により大腿骨骨折、両下肢火傷、右鎖骨骨折、左尺骨骨折、左血気胸、脳震盪、右中小指裂創の傷害を負った事実及び当該受傷の日に本件病院に入院し、同日、デブリードマン(感 染・壊死組織を除去し、創を浄化すること)、縫合の手術、10日後に大 腿骨接合、右下腿デブリードマンの手術、その12日後に植皮の手術をしたという事実は認められるが、本件各証拠によっても、出血量、バイタルサインその他・・の具体的な病態は全く不明である。 したがって、・・の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブ リノゲン製剤投与の事実があったと合理的に推認することはできない。 ⑶ 原告8-1の供述について原告らは、・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実があることの根拠として、本件病院に入院中、・・に止血剤が点滴されている様子を見たこと、その止血剤の瓶には青か緑のような色で、ミドリ十字の文字が書かれ ていたことをいう原告8-1の供述(原告本人3、4頁)を挙げる。 しかしながら、原告8-1は、上記供述に係る瓶の形状について、縦15㎝以上、横約10㎝の瓶であるとも供述するところ(同14、15頁)、これは当時のフィブリノゲン製剤であるHBIG製剤 )を挙げる。 しかしながら、原告8-1は、上記供述に係る瓶の形状について、縦15㎝以上、横約10㎝の瓶であるとも供述するところ(同14、15頁)、これは当時のフィブリノゲン製剤であるHBIG製剤に印刷されていたミドリ十字の十字のロゴマークの色、瓶の大きさなどと整合せず(乙統48、丙C 00802)、むしろ同社が当時販売していた輸液フィジオゾール製剤の瓶の形状とロゴマークの色と矛盾がない(丙C00801)。 また、上記の点滴が止血剤であるという供述は、・・・からの伝聞に基づくところ(原告本人13頁)、・・・が・・に対し止血剤が点滴されたと理解したきっかけは、看護師からの説明内容であったという。しかしながら、 その説明内容は、本件病院の輸血用血液がなくなったため、これを外国から取り寄せるまでに、代替として止血剤を投与するというもので、輸血用血液を外国から取り寄せるという事態が考えられないことからして、それ自体不合理な内容と言わざるを得ないから、・・・の上記陳述も、これに基づく原告8-1の上記供述も、信用できない。 したがって、・・に対しミドリ十字社製の止血剤が点滴投与されていた様 子を見たという原告8-1の上記供述は、採用できない。 ⑷ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、特定フィブリノゲン製剤に関する本件治療の主治医であった・・医師の投与方針は不明である。 これに対し、原告らは、本件治療の助手であった・・医師に面会した際、 「この大手術でしたから必ずフィブリノゲンは使用していると思う」と言われたという・・・の陳述(甲C00803)があることを強調するが、その文言からして、本件治療から相当年月が経過してからのやり取りとして陳述されているところ、原告が ノゲンは使用していると思う」と言われたという・・・の陳述(甲C00803)があることを強調するが、その文言からして、本件治療から相当年月が経過してからのやり取りとして陳述されているところ、原告が平成30年8月に・・医師に面会した際には本件治療において特定フィブリノゲン製剤を投入したかはわからないと述べてい たというのであるから(原告本人5、6頁)、何ら裏付けを伴わない・・・の上記陳述について、直ちに採用することはできない。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件治療以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染 しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(72 2頁)、221(89頁)等)、・・に対しては、本件治療の際に輸血が行われたこと(甲C00803)、昭和61、2年当時、輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率は約7.7%であったと報告されていること(乙統218(723頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件治療の際に特定フィブリノゲン 製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件治療の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件治療の際、・・に対し、特定フィブリノ 、医療文献その他の本件各証拠から、本件治療の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件治療の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個5(原告番号9番) 以下、本別紙中では、原告番号9番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、昭和45年9月14日、 ・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において、交通事故に起因する肝臓破裂症に対する手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、止血のため特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件手術についてア原告は、昭和45年9月13日午前8時頃、交通事故で受傷し、・・医院に運ばれて応急処置を受け、・・・・病院に転送された後、同月14日夕刻、本件病院に搬送された(甲C00902(2頁))。 イ原告は、同日、腹腔内出血のため、タンポナーデとドレナージの術式による本件手術を受け、肝臓破裂の診断を受けた。本件手術は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)が執刀医を、・・・医師(以下「・・医師」という。)及び・・某医師が助手を務めた。(同6頁)ウ本件手術に関し、当時作成された医療記録として、昭和45年9月14 日から昭和46年1月21日までの本件病院外科の外科入院 「・・医師」という。)及び・・某医師が助手を務めた。(同6頁)ウ本件手術に関し、当時作成された医療記録として、昭和45年9月14 日から昭和46年1月21日までの本件病院外科の外科入院病状日誌(以下「本件カルテ」という。)が現存する(甲C00902)。 エ本件カルテ中の本件手術に係る手術記録(甲C00902(6、7頁)。 以下「本件手術記録」という。)には、以下の記載がある。 ① 正腹部正中切開時の観察として、比較的新鮮血が噴出し、吸引すると 総量2500㎖であったこと、小腸、胃、脾臓は正常であるが、肝臓は 広く挫滅された裂創があること、出血が続いていること、後腹膜に血腫があり、出血しやすいこと、出血はそう強くないことなど。 ② 止血措置として、トロンビン末をつけたスポンゼルでタンポナーデし更にオキシセルガーゼでパックをしたこと、次いで、肝動脈を5分間遮断し、これにより出血を大体止血し得たこと。 ③ 術中に、指導医師から、部分切除は無理であるから、右開胸腹にて肝右葉切除すれば裂創部は切除できる、現在出血が止まる傾向にあるため、何とかこのまま止血に努め、ドレナージをするようにとの指示があったこと。 ④ 再度、トロンビン末、スポンゼル、オキシセルガーゼでパックをし、 止血をほぼなし得たこと。 ⑤ 肝臓の損傷部に8号シリコンチューブを挿入し、さらに、左右横隔膜下にペンローズドレーンを挿入し、ホスタサイクリン(抗生剤と思われる)250㎖、生食30㎖に溶き注入し、一期的に閉腹したこと。 ⑥ しかし、特定フィブリノゲン製剤に関する記載はない。 オ続いて、本件カルテには、同日午前2時15分に手術室から帰室した後のバイタルサインとして、血圧126/60、脈96(整、よく触れる)、意識まだ 定フィブリノゲン製剤に関する記載はない。 オ続いて、本件カルテには、同日午前2時15分に手術室から帰室した後のバイタルサインとして、血圧126/60、脈96(整、よく触れる)、意識まだはっきりしないなどの記載があるほか、術中に、出血量3500、回復室でドレーン100、尿340の合計-3960が失われたのに対し、輸液として、乳酸リンゲル液2500、5%ブドウ糖液500、生理食塩 水50の合計4650を補充したとの記載がある(同15頁)。 また、術後指示の内容として、①輸液として、乳酸リンゲル液500、5%ブドウ糖液500、生理食塩水500、②輸血800㎖、各種ビタミン剤、タチオン等の回復剤、③「止血剤」として、プレマリン1A、トランサミン1A、アドナ1A、K1 10 1Aを毎4時間、④ジギラノゲ ン1A、プルサンチン1Aを静注(午前2時30分に)、⑤化学療法とし て、各種抗生剤を、⑥カルチコール2A追加を指示したとの記載がある(同15、16頁)。 しかし、特定フィブリノゲン製剤に関する記載はない(同各頁)。 カ同月15日の本件カルテ中の出血や止血に関し、血圧130/80、脈90(整、よく触れる)、シリコンチューブよりかなり濃い血液流出さ ほど多くない、出血点は止血されているようだ、輸血200㎖などの記載があるが、特定フィブリノゲン製剤の記載はない(同17頁)。 また、同日午後8時の記載として、シリコンチューブよりほとんど出ない、出血は止まったようだとある(同18頁)。 ⑵ ・・医師の意見書 本件手術の執刀医である・・医師が署名押印した平成30年4月3日付け意見書(甲C00903。以下「・・医師意見書」という。)には、「入手した資料では、止血剤としてアドナ 師の意見書 本件手術の執刀医である・・医師が署名押印した平成30年4月3日付け意見書(甲C00903。以下「・・医師意見書」という。)には、「入手した資料では、止血剤としてアドナ・トランサミン・k1・プレマリンを使用しており、フィブリノーゲンを使用したという記載は見られないが、根治的手術が出来ず保存的手術で止血を期待した状況で、フィブリノーゲンは使 用しなかったという確証もない。」とある。 ⑶ ・・医師の意見書本件手術の助手である・・医師が署名押印した平成22年7月9日付け意見書(甲C00904。以下「・・医師意見書」という。)には、「・・・・に保管されていたカルテは病状・経過の概略は記述されているが、投与薬 剤等の種類・量の詳細が記録されている看護日誌および輸血部記録は保管されていないために詳細を確認することは不可能である。しかし、上記の状況下にあっては、初回手術(本件手術のこと)に際し下記の二項目は施行されたものと考えられる。〔1〕大量の輸血、〔2〕止血剤の使用。フィブリノーゲンの投与が行われた可能性は高い。」とある。 ⑷ 原告は、昭和45年10月15日、2回目の手術として、ドレナージと 右肋骨部分切除術を受け(執刀医・・医師)、同年12月1日、3回目の手術として、ドレナージと右9、10、11肋骨部分切除術を受けた(執刀医・・某医師。甲C00902(1、44、46、66頁))。 ⑸ 原告は、遅くとも平成22年10月19日までに、C型慢性肝炎、肝硬変の診断を受けた(甲C00901)。 ⑹ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(原告番号7番に関する甲C00711)。 第2 争点及び争点に関する当事 1)。 ⑹ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(原告番号7番に関する甲C00711)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 原告は、本件手術の術中ないし術後に急激かつ大量の出血を止血するために特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が極めて高い。 本件手術記録によれば、正腹部正中切開の延長により新鮮血が噴出し、吸引すると総量2500㎖あったというのであるが、これに対し、本件カ ルテ中の術後指示として記載された止血剤は、プレマリン1A、トランサミン1A、アドナ1A、K1を4時間ごとに投与にとどまり、いずれも、急激かつ大量の出血にはほとんど役に立たない。多くの医師がアドナ、トランサミンはあまり効かない、最後は血液凝固因子を直接に補給するフィブリノゲン製剤を使うと述べていることは周知の事実である。 一方、上記術後指示には、特定フィブリノゲン製剤は記載されていないが、・・医師が、「フィブリノーゲンを使用したという記載は見られないが、根治的手術が出来ず保存的手術で止血を期待した状況で、フィブリノーゲンは使用しなかったという確証もない。」と述べ、・・医師も、「上記の状況下にあっては、初回手術(本件手術のこと)に際し下記の二項目 は施行されたものと考えられる。〔1〕大量の輸血、〔2〕止血剤の使用。 フィブリノーゲンの投与が行われた可能性は高い。」と述べている。 また、原告は、本件手術後、医師から原告の両親に対し「危篤状態でとにかく血を止めなければということでフィブリノゲンを使い、輸血もした」などという説明があったと両親から聞 高い。」と述べている。 また、原告は、本件手術後、医師から原告の両親に対し「危篤状態でとにかく血を止めなければということでフィブリノゲンを使い、輸血もした」などという説明があったと両親から聞かされた。 これらの事実を総合的に考慮すると、原告に対して、本件手術の術中な いし術後に急激かつ大量(術中出血量3500㎖)の出血を止血するために特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性が極めて高い。 ⑵ 原告は、昭和38年3月に高校卒業後、同年4月から会社勤めを継続し、会社の定期健康診断では異常の指摘を受けたことはないし、本件手術以外に多量の出血を伴う手術や事故はなく、親族にC型肝炎罹患者がいないな ど、本件手術の際以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因がない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 本件カルテには、術後に投与された止血剤として、プレマリン、トランサミン、アドナ、K1といった具体的な薬剤名が記載されている一方、特定フィブリノゲン製剤を投与したことを示す記載はない。仮に本件手術に おいて特定フィブリノゲン製剤が投与されていたのであれば、本件カルテの当該部分にその旨の記載がされているはずであるところ、特定フィブリノゲン製剤の投与に関する記載がなく、むしろ異なる止血剤を投与した事実が記載されていることは、本件手術において、特定フィブリノゲン製剤が投与されなかったことを裏付ける。 他方、特定フィブリノゲン製剤が投与されたにもかかわらず、本件カルテへの記載が失念された可能性については、実際に投与された複数の止血剤については記載されている上、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことをうかがわせるほかの客観的証拠もなく、記載漏れと認めることは困難である。 また、血液凝固因子の補充に当たって 止血剤については記載されている上、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことをうかがわせるほかの客観的証拠もなく、記載漏れと認めることは困難である。 また、血液凝固因子の補充に当たっては、新鮮血の使用も考えられる上、 昭和45年当時の特定フィブリノゲン製剤の製造量は昭和50年代の半分以下であり、かつ、高価で入手困難な医薬品と位置付けられていたことからすると、本件手術に関し、当然に特定フィブリノゲン製剤が投与されたという原告の主張は理由がない。 ⑵ ・・医師意見書の記載は、「使用しなかったという確証」がないこと、 すなわち、投与していないとの確証まではない旨の消極的な認識を示すものにすぎない上、同医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針に関する証拠も見当たらないから、上記記載を基に投与事実を認めることはできない。 また、・・医師意見書には、フィブリノゲンの投与が行われた可能性が高いという記載があるが、そのように考える具体的な根拠は明らかでない 上、同医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針に関する証拠も見当たらないから、上記記載を基に投与事実を認めることはできない。 ⑶ さらに、原告が両親から、本件手術に関する医師の説明において、フィブリノゲンを使ったと聞かされたという点についても、・・医師自身が、・・医師意見書のとおり、特定フィブリノゲン製剤投与の具体的な認識を 有していない上、昭和45年当時、上記製剤の副作用は問題となっていなかったことから、上記製剤のみ具体的な薬剤名を出して医師が説明し、両親がこれを原告に伝えることは通常考え難く、採用できない。 ⑷ 一般に、特定フィブリノゲン製剤が投与される可能性がある例として、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し く を原告に伝えることは通常考え難く、採用できない。 ⑷ 一般に、特定フィブリノゲン製剤が投与される可能性がある例として、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し くは予防の必要性があった場合が想定されるところ、本件カルテを精査しても、本件手術に関し、原告が低フィブリノゲン血症やDICを発症していたことや発症の危険性が高い状態にあったことを示す記載はない。 ⑸ したがって、原告に対する投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無 (原告の主張) 原告は、平成17年に脳梗塞により・・・・病院に入院し、同入院中に判明した糖尿病の治療をしている中でC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否 認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるか ら、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患した事実の有無(原告の主張) 平成20年10月から・・・・病院で18か月にわたり合計72回のインターフェロン治療を行ったが、C型肝炎ウイルスは消失せず、その後、平成22年には肝硬変と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)肝硬変であるとの診断書における診断の根拠となった各種検査結果等の証 拠が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 22年には肝硬変と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)肝硬変であるとの診断書における診断の根拠となった各種検査結果等の証 拠が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際に原告に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実の有無⑴ 本件カルテの存在ア原告は、本件手術の術中ないし術後に急激かつ大量の出血があったから、 これを止血するために特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が極 めて高いと主張する。 しかしながら、本件病院における原告に対する診療行為については、事故の翌日である昭和45年9月14日に本件病院外科に緊急搬送されてから昭和46年1月21日に退院するまでの間の原告に対する診療行為の内容等が記載された本件カルテが現存し、その中には、本件手術記録や術後 指示も含まれている(前提事実⑴ウ)。 そして、本件カルテには、特定フィブリノゲン製剤について、医師の投薬指示やこれに基づく投薬の事実に関する記載がない(前提事実⑴エ⑥、オ、カ)。 イところで、診療録については、「医師は、診察をしたときは、遅滞なく 診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」(医師法24条1項)とされ、診療録に記載しなければならない事項には「治療方法(処方及び処置)」(同法施行規則23条3号)が規定されるなど、医師は、患者に対する薬剤の処方について、上記「診察に関する事項」及び「治療方法(処方及び処置)」に当たるものとして、これを診療録に記載すべき 義務を負うもので、ここからも明らかなとおり、診療録等は、薬剤の投与を含む診療経過を解明する上で極めて重要な証拠であるといえる。 したがって、診療録の記載内容は、その真実性が担保されているものというべきであり、 で、ここからも明らかなとおり、診療録等は、薬剤の投与を含む診療経過を解明する上で極めて重要な証拠であるといえる。 したがって、診療録の記載内容は、その真実性が担保されているものというべきであり、関係証拠と矛盾しない限り、原則としてその記載内容は事実に即した記載であると認められることになる。 一方、診療録に記載のない事項は、①症状等が発現せず、医師において認識し得ないために記載できない場合、②症状等が発現し、これを認識し得たが、記載しなかった場合が考えられるが、前説示の診療録の性質上、上記②については、当該不記載について、医学的知見に基づき一応の合理的な説明がされ、かつ、他の診療録等と矛盾しないといった事情がない限 り、診療録に記載のない症状等を認めることはできないものと解すべきで ある。 ウこれを本件についてみると、原告が主張する特定フィブリノゲン製剤の投与事実は、「診察に関する事項」(医師法24条1項)及び「治療方法(処方及び処置)」(同法施行規則23条3号)に当たるものとして、医師が診療録に記載すべき義務を負う事項である。 したがって、本件カルテに特定フィブリノゲン製剤の投与事実の記載がない以上、当該不記載について、①医学的知見に基づく一応の合理的な説明があり、②他の診療録等と矛盾しないといった事情が認められない限り、上記投与事実を認めることはできないものというべきである。 ⑵ 原告の病態 原告の病態について、本件手術記録及びその他の本件カルテからは、①本件手術中に出血量3500㎖の大量出血があったこと、手術開始当初、2500㎖の新鮮血が噴出するという場面があったことが認められたが(前提事実⑴エ①、オ)、②止血措置として、トロンビン末をつけたスポンゼルでタンポナーデし更に の大量出血があったこと、手術開始当初、2500㎖の新鮮血が噴出するという場面があったことが認められたが(前提事実⑴エ①、オ)、②止血措置として、トロンビン末をつけたスポンゼルでタンポナーデし更にオキシセルガーゼでパックをしたこと、次いで、肝動脈を 5分間遮断したこと、これにより出血を大体止血し得たこと、指導医師から止血に努めるよう術中に指示を受け、再度トロンビン末、スポンゼル、オキシセルガーゼでパックをし、ほぼ止血をなし得たこと(前提事実⑴エ②、④)、③術後指示の内容として、止血剤として、プレマリン1A、トランサミン1A、アドナ1A、K1(10)1Aを4時間ごとに投与するよう指示 があったこと(前提事実⑴オ)、④本件手術の翌日も、数次にわたり、出血が止まったという経過が記載され、新たに大きな出血が認められた経過はないこと(前提事実⑴カ)、⑤本件手術記録を含む本件カルテ中に、特定フィブリノゲン製剤の投与に関する記載がないこと(前提事実⑴エ⑤、オ、カ)、以上の事実が認められる。 そうすると、本件手術記録及びこれを含む本件カルテによれば、本件事故 による受傷の結果、肝臓破裂を生じ、大量出血を生じた原告について、本件手術を行い、術中及び術後の止血措置を施した結果、本件手術後にはほぼ止血をし得、本件手術の翌日には出血が止まったことが確認されたという経過が認められるもので、大量出血にもかかわらず的確に出血管理がされていた状況が見て取れ、かつ、術後には大きな出血が認められないから、これら一 連の過程において、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、止血のために特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を認めることはできない。 ⑶ これに対し、原告は、本件 ブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、止血のために特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を認めることはできない。 ⑶ これに対し、原告は、本件カルテや本件手術記録の記載にかかわらず、原告に対し、本件手術後に特定フィブリノゲン製剤が投与されたものと主張し、 ・・医師意見書、・・医師意見書及び原告の供述をその根拠とする。 しかしながら、・・医師意見書の内容は、「根治的手術が出来ず保存的手術で止血を期待した状況で、フィブリノーゲンを使用しなかったという確証もない」という表現にとどまるところ、それ自体、特定フィブリノゲン製剤を使用したことを合理的に推認させる内容であるとみることはできない。ま た、「根治的手術が出来ず保存的手術で止血を期待した状況」であることは、特定フィブリノゲン製剤の投与適応があると考えられる理由を述べるものにとどまり、診療録に記載がない診療行為の存在をうかがわせる事情には当たらないから、上記の内容は、この点からも採用できない。 次に、・・医師意見書は、本件カルテについて、病状・経過の概略を記載 したものにとどまるという趣旨の理解から、投与薬剤等の種類・量の詳細が記録されている看護日誌および輸血部記録に特定フィブリノゲン製剤投与の事実が記録されている可能性が高いという趣旨を述べるもので、本件カルテの記載漏れの可能性をいうものであるところ、上記⑵のとおり、原告の病態として、本件手術において、指導医師の指示もあって、2度にわたり、トロ ンビン末、スポンゼル、オキシセルガーゼでパックを行うという止血措置が 施され、ほぼ止血し得たという具体的な経過が認められた上で、術後指示として一般的な止血剤の投与指示がされていたというも 末、スポンゼル、オキシセルガーゼでパックを行うという止血措置が 施され、ほぼ止血し得たという具体的な経過が認められた上で、術後指示として一般的な止血剤の投与指示がされていたというもので、かつ、その後、新たに大きな出血が認められた経過がないことなどからすれば、上記⑵のとおり、本件カルテ記載の診療行為や投薬指示に基づく止血措置が奏功していることが十分見て取れるから、・・医師がカルテの記載漏れの可能性を指摘 する根拠は不明であるというほかない。 したがって、・・医師意見書の記載内容は、合理的な根拠を伴わないもので、採用できない。 さらに、原告は、本件手術後に意識を取り戻した際に原告の両親から聞かされた内容として、「危篤状態でとにかく血を止めなければということでフ ィブリノゲンを使い、輸血もした」と本件手術後に医師が原告の両親に対して説明したと供述するが(原告本人4、5、13頁)、本件手術記録によれば、2度にわたって実施したトロンビン末、スポンゼル、オキシセルガーゼでパックを行うという止血措置が奏功してほぼ止血できたという経過があるのに、・・医師がこの措置ではなく、本件カルテに記載がない薬剤の名前を 出して原告の両親に伝えて止血の経過を説明したというやり取り自体極めて不自然であり、信用性に乏しいもので、上記供述は、本件カルテや本件手術記録の記載に基づく上記認定を左右しない。 よって、原告の上記主張は、理由がない。 ⑷ 以上のとおり、本件カルテに記載がない特定フィブリノゲン製剤の投与事 実について、投与事実があったにもかかわらず本件カルテに記載されていないということにつき医学的知見に基づき一応合理的に説明されたとは認められないから、本件手術記録及びこれを含む本件カルテによれば、本件手術の 、投与事実があったにもかかわらず本件カルテに記載されていないということにつき医学的知見に基づき一応合理的に説明されたとは認められないから、本件手術記録及びこれを含む本件カルテによれば、本件手術の術中及び術後の止血措置として、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことはなかったものと認められる。そして、原告が指摘する各事情 は、同認定を左右するものではない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個6(原告番号23番) 以下、本別紙中では、原告番号23番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、①昭和44年2月7日、 ・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、第1子を出産(以下「本件出産1」という。)した際、②昭和46年8月24日、本件病院において、第2子を出産(以下「本件出産2」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給 付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産1及び本件出産2の状況等原告は、昭和44年2月7日、本件病院において、第1子を自然分娩により出産し(本件出産1)、昭和46年8月24日、本件病院において、第2 子を自然分娩により出産(本件出産2)した(以下、2回の出産を総称するときは「本件各出産」という。)。本件各出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。(甲C02303、04の2、09の2) 産(本件出産2)した(以下、2回の出産を総称するときは「本件各出産」という。)。本件各出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。(甲C02303、04の2、09の2)⑵ 原告は、遅くとも平成19年11月にC型肝炎ウイルス感染の診断を受 け、遅くとも平成22年10月18日にはC型慢性肝炎の診断を受けた(甲C02301)⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C02306)。 ⑷ 本件各出産に関し、同各当時に作成された医療関係記録は、診療録、レ セプトその他一切現存せず、母子健康手帳も、紛失のため現存していない。 また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件各出産に関する陳述は得られていない。(弁論の全趣旨)⑸ 原告に関する・・・・病院の外来診療録(以下「・・病院カルテ」という。)には、平成22年7月26日の欄に、既往症として、「血小板減少性紫斑病(ITP)」との記載が、現病歴欄には、「S62年1月末~5 月末までITPで入院加療この時血小板ゆ血した → その時肝炎になった」「2年前にC型肝炎(・・・・で)」「平成12年12月骨折(ゆ血なし)」との記載が、これに続き、現症欄には、「血小板ゆ血はした」「フィブリノーゲンは使っていない」「判読不能(Ödem。浮腫と思われる)(-)」との記載がある(甲C02310の1、2)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件各出産の際、多量の出血を止血するために特定フィブリノゲン製剤を投与された。 ・・病院カルテの記述には、ITPで 特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件各出産の際、多量の出血を止血するために特定フィブリノゲン製剤を投与された。 ・・病院カルテの記述には、ITPで入院加療をしたのが昭和62年1月末から5月末までで「その後肝炎になった」とあるが、肝炎の診断は平成19年11月であって、ITP治療の直後ではないから、正しくない。 C型肝炎ウイルス感染の原因は、血小板輸血によるものではない。 ⑵ 本件各出産の際以外には、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考 えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件各出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、原告は、 出血量及び輸血量が1000㏄以上であったと供述するが、これを裏付け る客観的資料はなく、同供述はにわかに信用し難い。 仮に原告の供述どおり出血量が1000㏄以上であったとしても、産科DICスコアが1点加算される可能性がある程度であり、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件各出産時の重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、身体症状等は不明であるなど、産科DICスコアを加 算すべき事情は認められない。 したがって、原告の供述を前提としても、本件各出産時、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の可能性があったとは認められない。 ⑵ 原告は、本件各出産時に点滴や輸血の処置を受け、・・医師から、その 都度止血及び輸血をした旨の説明を受けたと供述するが、原告に対して施された具体的な措置の内容は不明である。 ⑶ 担当医師 ⑵ 原告は、本件各出産時に点滴や輸血の処置を受け、・・医師から、その 都度止血及び輸血をした旨の説明を受けたと供述するが、原告に対して施された具体的な措置の内容は不明である。 ⑶ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件各出産時における・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与 方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成19年11月にC型肝炎であるとわかった。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張) 本件各出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張)診断書における診断の根拠となった各種検査結果等が提出されておらず、 否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件各出産時にそれぞれ多量の出血があり、これを止血するために特定フィブリノゲン製 る。 第3 当裁判所の判断 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件各出産時にそれぞれ多量の出血があり、これを止血するために特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件各出産に当たり、 原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告の病態について、原告は、本人尋問において、いずれも1000㏄以上の出血があったと供述し、紛失前の母子健康手帳にその旨記載があったと述べるが(原告本人3頁)、これを裏付ける資料が全くない。 そうすると、原告の病態について、出血量、出血状況とも不明であり、 原告の供述によれば、輸血と点滴が行われたということであるが、どのような処置が行われたかが明らかでないから、原告の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 イ一方、原告は、①本件出産1に関し、分娩後、児を見せてもらった頃から朦朧としてはっきり顔がわからず、医師や看護師が忙しく動き回っていて、出血がひどく、分娩室から安静室に移されたこと、・・医師から、輸血して、止血剤を使用したことを聞かされたが、止血剤の名前等はわからなかったこと、②本件出産2に関し、分娩後、しばらく隣の部屋で安静に していた 娩室から安静室に移されたこと、・・医師から、輸血して、止血剤を使用したことを聞かされたが、止血剤の名前等はわからなかったこと、②本件出産2に関し、分娩後、しばらく隣の部屋で安静に していたところ、・・医師から、出血が多かったので、輸血し、止血剤を使ったことを聞かされたこと、ほかに少しすそを切開したことと鉗子分娩の処置をしたことを聞かされたこと、③出血量、輸血量ともに1000㏄以上であったこと、以上のとおり陳述・供述する(甲C02303、原告本人9ないし15頁)。 しかしながら、原告の上記陳述、供述に裏付けがない点をおいても、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強するこ とによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))からして、・・医師がそれぞれ原告に説明したという止血剤がこれらの一般的な止血剤であることも十分考えられるから、仮に1000㏄を超える出血があっても、これをもって直ちに特定フィブリノゲ ン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑵ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件各出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑶ したがって、原告の供述と整合しない内容が原告からの説明として記載されている・・病院カルテの記載内容の信用性を検討するまでもなく、本 件各出産 ブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑶ したがって、原告の供述と整合しない内容が原告からの説明として記載されている・・病院カルテの記載内容の信用性を検討するまでもなく、本 件各出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件各出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感 染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(7 22頁)、221(89頁)等)、原告に対しては、本件各出産の際に輸血が行われたと原告が供述していること(原告本人4頁)、昭和44年ないし昭和46年当時、輸血後肝炎発症率は14.3%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件各出産の際に特定 フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件各出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤 が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理 れば、本件各出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤 が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個7(原告番号30番) 以下、本別紙中では、原告番号30番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和48年7月13日、・・ ・・・・・(以下「本件病院」という。)において、十二指腸穿孔に対する手術(以下「本件手術」という。)を受けた際に特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件手術原告は、昭和48年7月13日、本件病院において、十二指腸穿孔に対する手術(本件手術)を受けた(甲C03003)。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染 原告は、平成10年5月頃に、C型肝炎ウイルスに感染したとの診断を受け、その後、慢性C型肝炎の診断を受けた(甲C03001ないし03)。 ⑶ 本件手術に関し、本件手術当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しておらず、担当医師その他の医療関係者からは、 本件手術に関する陳述は得られていない(甲C03003、弁論の全趣旨)。 第2 争点及び当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告は、本件手術の日の朝、気を失いそうになったため、・・医院を受 争点及び当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告は、本件手術の日の朝、気を失いそうになったため、・・医院を受 診したところ、同院から本件病院に救急搬送され、本件手術を受けた。原告は、手術の際に患部を30針から40針ほど縫合されており、このような侵襲部位の大きさから、本件手術の際に大量出血があったことが明らかである。 ⑵ 原告は、本件手術後の病室において、「フィブリノゲン」との記載がある 瓶に入った薬剤を静注されたことを記憶している。 ⑶ 以上に加え、本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入先であったこと、本件手術当時、有効な止血剤として認知されていたフィブリノゲン製剤が広く使われていたこと、原告がC型肝炎に罹患した原因は本件手術以外に考えられないことなどからすれば、原告が本件手術の際に特定フィブリノゲン製 剤の投与を受け、これによりC型肝炎に罹患したものと認められる。 (被告の主張)⑴ア特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められることが必要である。しかし、 本件各証拠に照らしても、原告が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は認められない。また、DICのリスク因子や臨床症状等は不明であり、DICの治療又は予防の必要性があったとも認められない。 イ原告は、本件手術後の病室において、「フィブリノゲン」と書かれた瓶に入った液体を静注された旨述べるが、特定フィブリノゲン製剤によるC 型肝炎ウイルス感染の問題が明らかとなるより前の時期において、投与された点 後の病室において、「フィブリノゲン」と書かれた瓶に入った液体を静注された旨述べるが、特定フィブリノゲン製剤によるC 型肝炎ウイルス感染の問題が明らかとなるより前の時期において、投与された点滴薬の名称を記憶していること自体まれである上、それが約48年前のことであることからすれば、点滴の瓶に書かれた薬剤の名称を正確に記憶しているというのは現実的ではなく、C型肝炎ウイルス感染の問題が明らかになってから、記憶が変容した可能性も否定できない。 ⑵ 本件手術の担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投 与されたかどうかを検討しても、本件手術時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はない。 ⑶ 以上のとおり、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとの事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張) ⑴ 本件手術当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたとする客観的証拠は提出されていない。 ⑵ 原告は本件手術時に大量出血があった旨主張するが、上記主張を裏付ける客観的証拠はなく、本件手術の際の原告の病態は明らかでない。 ⑶ フィブリノゲン製剤は、単なる止血剤ではなく、低フィブリノゲン血症の 状態でないと使用しない薬剤である。原告は、本件手術後に病室で「フィブリノゲン」との記載のある瓶に入った薬剤を静注された記憶があるというが、医療関係者でもないのに、本件手術から約48年が経過した前記陳述書作成当時まで、本件手術後に投与された薬剤の名称を覚えていることは極めて不自然である。また、ベッドに横たわった状態で、逆さに吊り下げられたフィ ブリノゲン製剤の小瓶に記載された文字を読み取ったという陳述内容自体不可解である。 ⑷ 当時、ミドリ十 とは極めて不自然である。また、ベッドに横たわった状態で、逆さに吊り下げられたフィ ブリノゲン製剤の小瓶に記載された文字を読み取ったという陳述内容自体不可解である。 ⑷ 当時、ミドリ十字が販売していた薬剤はフィブリノゲン製剤に限られない。 ⑸ 本件手術を担当した医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針も全く明らかになっていない。 ⑹ したがって、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成10年5月頃に、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明 した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎罹患の有無(原告の主張)原告は、C型肝炎ウイルス感染による慢性C型肝炎に罹患しており、インターフェロン治療を受けている。その証拠が甲03001号証である。 (被告及び補助参加人の主張) 新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は 類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件手術の際に、大量出血に対する止血剤として、特定フィブリ ノゲン製剤の投与を受けたと主張するが、本件手術の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、 特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを合理的に推認できるかどうか を検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告は、本件手術の際の原告の病態に関し、本件手術を受けた際に大量出血したと主張するが、これを裏付ける資料が全くなく、原告の病態について、出血量、出血状況とも不明であり、どのような処置が行われたかも 明らかでないから、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 そもそも医学的知見によれば、局所的要因による出血については、局所的出血の原因は機械的なものであるから、大部分は物理的手段によって直 接止血することができるとされていて(外科的出血)、十二指腸穿孔に対する具体的な治療方法としても、全身状態の程度に応じて、根治手術と腹腔ドレナージ、又は穿孔部閉鎖と腹腔ドレナージを行うことがあるとされている(乙統85(107、487頁))。 したがって、本件手術の際に原告が大量出血していたとしても、その事 実をもって直ちに特定フ ージ、又は穿孔部閉鎖と腹腔ドレナージを行うことがあるとされている(乙統85(107、487頁))。 したがって、本件手術の際に原告が大量出血していたとしても、その事 実をもって直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されることはない。 イこれに対し、原告は、本件手術後の病室において、「フィブリノゲン」と書かれた瓶に入った液体を静注された旨陳述する(甲C03003(2、3頁))。しかし、原告の上記陳述は、上記アの原告の病態や医学的知見と整合しないものである上、本件手術当時は特定フィブリノゲン製剤によ るC型肝炎感染リスクが周知されていなかったにもかかわらず、点滴されていた薬剤の名称を記憶していた理由やこれを思い出した経緯等が明らかでなく、合理的な説明や客観的な裏付けもないから、採用できない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブ リノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否原告は、C型肝炎ウイルスに感染した原因は本件手術の際の投与以外に考えられない旨主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路とし て、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがある(乙統2、218等)から、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、供述証拠、医療文献 その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されると 認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、供述証拠、医療文献 その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。 第4 結論 以上、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個8(原告番号33番) 以下、本別紙中では、原告番号33番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、昭和43年2月27日、・・ ・・・・・・(以下「本件病院」という。)において第2子を自然分娩で出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、その止血処置として特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和43年2月27日、本件病院において、第2子を出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。(甲C03304) イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」には、「分娩経過」欄のうちの「特記事項」欄の「その他」の箇所に「分娩時頸管裂傷による大出血」との記載が、「出産時の産科手術及び処置」欄の「その他」の箇所に「子宮口縫合閉鎖」との記載が、「輸血・輸液」欄に「ソーアミン、輸血、其他」との記載 の「その他」の箇所に「分娩時頸管裂傷による大出血」との記載が、「出産時の産科手術及び処置」欄の「その他」の箇所に「子宮口縫合閉鎖」との記載が、「輸血・輸液」欄に「ソーアミン、輸血、其他」との記載があるが、数量 の記載はなく、「出血量」欄も空欄となっている(甲C03304)。 ウ第2子の出生時の体重は、3500gである(甲C03304)。 ⑵ 原告は、平成17年にはC型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受け、平成26年5月には、肝細胞癌及び肝硬変の診断を受けた(甲C03306、07)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入 病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C03310)。 ⑷ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳及び原告あての領収書が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C03305、07、弁論の全趣旨)。 また、・・医師その他の本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない(弁論の全趣旨)。 ⑸ 第1子の出産ア原告は、昭和40年9月10日、本件病院において、第1子を出産した(以下「第1子出産」という。)。第1子出産の担当医師は、・・医師で ある。(甲C03303)イ第1子出産に関する母子健康手帳(以下「第1子母子手帳」という。)8頁「お産の記事」には、「分べん」欄の「正常」に○印が付けられ、「種類原因」に「癒着胎盤」との記載が、「出血」欄には「多量」に○印が付けられ、数量の記載はなく、「産科手術」欄には「有」に○印が付け られ、「種類」として「胎盤用手剥離」との記載がある(甲C03303)。 ウ第1子の出生時の体重は、2.8 多量」に○印が付けられ、数量の記載はなく、「産科手術」欄には「有」に○印が付け られ、「種類」として「胎盤用手剥離」との記載がある(甲C03303)。 ウ第1子の出生時の体重は、2.8kgである(甲C03303)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 本件出産の際、頸管裂傷による大量出血があり、そのために子宮口縫合手術を行い、輸血・輸液とともに止血剤による処置が行われたもので、その止血剤が特定フィブリノゲン製剤であった蓋然性は高い。 このことは、①本件出産後、・・医師から原告に対し、「きちんと止血 剤で適切に処置をした」、「輸血もしたし、止血止めもしましたし、体力 的にすごい私が弱ってたので栄養剤的なものとか、とにかく全てを準備した全てをやった」という説明があったこと、②本件母子手帳の「輸血・輸液」欄に「ソーアミン、輸血」に加え、「其他」の記載があること、③・・医師は、原告に対し、第1子出産の際に出血が多かったから、本件出産の際には止血剤を使う準備をしていると説明していたこと、④「全てをや った」という説明からは、止血剤である特定フィブリノゲン製剤があれば、使用していたはずであること、④本件病院は特定フィブリノゲン製剤の納入医療機関であることなどから裏付けられる。 また、本件出産に関する手術入院費用は3万1620円であり、特定フィブリノゲン製剤が高価な薬剤であったことを矛盾しない。 ⑵ 原告は、本件出産までの間、大きな病気やけがをしたこともなく、昭和40年9月の第1子出産があるが、止血剤が投与されたかどうかは不明である。そうすると、本件出産以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染 ⑵ 原告は、本件出産までの間、大きな病気やけがをしたこともなく、昭和40年9月の第1子出産があるが、止血剤が投与されたかどうかは不明である。そうすると、本件出産以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産当時、原告について同製剤の適応症例である低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件母子手帳に「分娩時頸管裂傷による大出血」とあるから、原告が本件出産時に多量の出血をしたと認められるものの、具体的な出血 量は不明であり、分娩及び処置中も原告の意識が保たれていたことからすれば、原告にショック症状があったとも認め難い。そのほかにDICの原因となる身体症状等は不明であるなど、産科DICスコアの点数を加算すべき事情は認められない。 また、原告は、本件出産時、・・医師から止血剤を投与した旨説明を受け たと述べるものの、投与された薬剤名は不明とあるから、この供述から特定 フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。しかも、当時、アドナ、トランサミンといった薬剤が止血剤として一般的であったから、・・医師が説明した止血剤がこれらの薬剤であった可能性も十分考えられる。 さらに、昭和40年代前半は、特定フィブリノゲン製剤が一般的に入手困難な医療品であると位置づけられていたから、そのような中、本件出産の際、 原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与があったと評価できる特段の事情は認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、担当医師である・・医師の投与方針を明らかに ゲン製剤の投与があったと評価できる特段の事情は認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、担当医師である・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の陳述、供述によっても、・・医師の投 与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成17年にはC型肝炎ウイルス感染が判明した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。 提出された証拠からは、HCV-RNA検査(+)の結果及びHCV抗体検査(+)の結果を認めることはできない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張) 提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、頸管裂傷による大量出血があり、そのために子宮 口縫合手術を行い、輸血・輸液とともに止血剤による処置が行 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、頸管裂傷による大量出血があり、そのために子宮 口縫合手術を行い、輸血・輸液とともに止血剤による処置が行われたところ、その止血剤が特定フィブリノゲン製剤であった蓋然性は高いと主張するが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載及び原告の供述によれば、原告の病態について、自 然分娩の際に、子宮頸管裂傷が起き、その際多量の出血があった事実及びこれに対し子宮口縫合閉鎖、輸血、輸液その他の処置が行われた事実が認められる。 イしかしながら、具体的な出血量が不明である点はおいても、子宮頸管裂傷は、胎児が大きいことなどを原因として、胎児の娩出と同時に鮮紅 色の出血が持続して、裂傷が大きいときは通常出血量も著しく多いとさ れていること(乙統97(246頁))、大きな頸管裂傷又は出血量の多い頸管裂傷は縫合することとされ、縫合術には膣式と開腹式の2種があり、開腹式は裂傷部位が子宮体に達するか、子宮傍結合織に深く及んでいる場合に行われること(乙統96(342頁))、こうした医学的知見を踏まえると、本件出産の際は、子宮口縫合閉鎖が行われ(上記 ア)、膣式縫合術であったとうかがわれる。また、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、上記 医学的知見を踏まえると、本件出産の際は、子宮口縫合閉鎖が行われ(上記 ア)、膣式縫合術であったとうかがわれる。また、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、上記縫合術を含む手術療法以外に、薬物療法としても、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していた(乙統83(394頁以下)、98(28 頁))。さらに、原告は、本件出産後、意識を失ったことがないと述べており(原告本人15頁)、原告にショックその他の臨床症状がないことがうかがわれる。 これらの事実を総合すると、本件出産の際に多量の出血があったという事実を踏まえても、原告の病態から、直ちに低フィブリノゲン血症又はそ の要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ウこれに対し、原告は、本件出産後、・・医師が原告に対し、本件出産の際の処置として、「止血剤」、「止血止め」を使ったという説明をしたことから、この「止血剤」が特定フィブリノゲン製剤投与であると主張する が、上記イのとおり、原告に対して行われた手術療法が子宮口縫合閉鎖であって、開腹を要するような出血ではなかったことなどからすると、同医師から「止血剤」という説明があったことを前提としても、一般的な止血剤により止血する方法を意味することが十分考えられるもので、上記説明から、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことが合理的に推認されると いうことはできない。 また、本件病院の領収書(甲C03305)には、ただし書にある費目に個別の薬剤の記載はなく、金額の多寡から高価な薬剤が含まれていると認めるこ と いうことはできない。 また、本件病院の領収書(甲C03305)には、ただし書にある費目に個別の薬剤の記載はなく、金額の多寡から高価な薬剤が含まれていると認めることもできないから、上記領収書から特定フィブリノゲン製剤に係る費用が含まれているということはできない。 ⑵ 本件病院又は担当医の投与方針 本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑶ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染 しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(72 2頁)、221(89頁)等)、原告に対しては、本件出産の際に輸血が行われたこと(甲C03304)、原告は、第1子出産の際も輸血を受けたと供述していること(原告本人4頁)、輸血後肝炎発症率は、昭和40年頃(第1子出産当時)は31.1%に上り、昭和43年頃(本件出産当時)は16.2%であったと報告されていること(乙統230 (166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑷ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本 直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑷ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対す る特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということは できない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由 がないからこれを棄却することとする。 別紙個9(原告番号36番) 以下、本別紙中では、原告番号36番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和47年9月10日、・ ・・・(以下「本件病院」という。)において、第2子を自然分娩により出産(以下「本件出産」という。)した際、相当量の出血をし、その止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和47年9月10日、本件病院において、第2子を自然分娩により出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。(甲C03604) イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)14頁「出産の状態」には、「分娩経過」欄の「特記事項」、「出産時の産科手術及び処置」、「輸血・輸液」のいずれも記載がなく、「出血量」欄に「500 関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)14頁「出産の状態」には、「分娩経過」欄の「特記事項」、「出産時の産科手術及び処置」、「輸血・輸液」のいずれも記載がなく、「出血量」欄に「500㎖」との記載があり、その横の「少量」に〇印が付けられている(甲C03604)。 ⑵ 原告は、遅くとも平成10年6月にC型肝炎ウイルス感染の診断を受けるとともに、C型慢性肝炎の診断を受け、遅くとも平成22年10月19日にはC型肝硬変の診断を受けた(甲C03601、08)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C03607)。 ⑷ 本件出産に関し、当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳が存 在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない。(弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 原告は、本件出産の際、相当量の出血をし、これに伴って点滴により特定フィブリノゲン製剤が投与された。 このことは、①本件病院が、特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関であること、②本件母子手帳から、本件出産の際の原告の出血量が500 ㎖と認められること、③原告は、第1子の出産の場合と異なり、本件出産の際、目眩を感じ、意識が朦朧とした状態となったこと、④本件出産後、原告がすぐに病室に移されず、分娩室に残され、看護師に点滴を施されたことなどから裏付けられる。 ⑵ ①第1子の出産の際の出血量は200㎖にとどまり、終始意識清明であ ったこ 、④本件出産後、原告がすぐに病室に移されず、分娩室に残され、看護師に点滴を施されたことなどから裏付けられる。 ⑵ ①第1子の出産の際の出血量は200㎖にとどまり、終始意識清明であ ったこと、②原告は、昭和57年3月12日に急性虫垂炎のため手術を受けたが、その際の出血量は120㎖であり、診療録上、特定フィブリノゲン製剤の投与がされた記録がないことなどからすると、本件出産の際以外には、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件母子手帳によれば、本件出産時の出血量は500㎖と「少量」であったことが認められる上、「分娩経過」欄の輸血・輸液量を記載する箇所が空欄であるこ とからすると、むしろ輸血や輸液投与はなかったことが推認され、ほかに 本件出産時に大量出血があったことをうかがわせる客観的証拠はない。 また、原告の供述を前提としても、本件出産時の記憶は全体的に曖昧であり、輸血を受けた記憶はなく、点滴を受けたところも見ておらず、出産後に医師等から止血処置等の説明を受けたこともないというのであるから、本件出産時の出血が低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治 療若しくは予防の必要性を生じさせるほどの大量出血であったことが認められるものではない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件出産時における・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方 針は不 針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件出産時における・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方 針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成10年6月にC型肝炎ウイルス感染の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張)診断書の診断根拠となる各種検査結果等が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、相当量の出血をし、これに伴って点滴により特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客 観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療 製剤が投与されたと主張するが、本件出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客 観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態本件母子手帳の記載及び原告の供述(原告本人4ないし13頁)によれば、原告の病態について、自然分娩の後、出血があり、出血量が500㎖に及んだこと、原告が本件出産の前から目眩を感じ、腰に強い痛みを感じ、その痛みに気を取られていたこと、ただし、貧血の指摘を受けたことはなく、輸血 及び輸液の投与はされなかったことが認められる。 しかしながら、上記の原告の病態からは、本件出産前後を通じ、原告にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったことはうかがわれない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針 本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ したがって、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの はいえない。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事 故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からして、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与 されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個10(原告番号40番) 以下、本別紙中では、原告番号40番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和40年11月2日、・ ・・・(以下「本件病院」という。)において第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条 第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ア原告は、昭和40年11月2日午後4時30分頃、本件病院において、帝王切開術により、第1子を出産した(本件出産。甲C04006)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である(甲C04006)。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)8頁「お産の記事」には、「分べん日時」欄に「40年11月2日午後4時30分」の記載があり、「分べん」欄の「異常」に○印が付けられ、種類原因として「児頭骨盤不均衡」の記載があり、「出血」欄の「少量」に〇印が付けられ、「産科手術」欄の「有」に〇印が付けられ、種類として「帝 王切開術」の記載があり、「分べん介助者氏名」欄に・・医師の記名押印がある(甲C04006)。 エ・・医師は、平成20年1月28日、証明書(甲C04003の1。以下「本件証明書」という。)を作成し、原告について、「昭和40年11月2日(1965年)当院にて帝王切開分娩を致しました。当時は帝王切 開には全例に輸血とフィブリノーゲン製剤を使用しました。其後患者の経 過が悪かったので2~3週間後に・・病院に転院しました。」と証明する旨記載した(甲C04003の1、C04004)。 ⑵ 原告は、平成12年1月にはC型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受け、遅くとも平成22年10月19日にはC型慢性肝炎と診断された(甲C04001、04007の1、2)。 4004)。 ⑵ 原告は、平成12年1月にはC型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受け、遅くとも平成22年10月19日にはC型慢性肝炎と診断された(甲C04001、04007の1、2)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C04005、原告本人5頁)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 本件出産の際、原告は、輸血と点滴を受けた。看護師が床を洗浄する音が耳に残っており、血で床が真っ赤に染まっていたことを記憶しているから、本件母子手帳の記載と異なり、出血は少量ではなかった。 ⑵ 本件出産を担当した・・医師が、原告の話を聞いた上、原告に対し、当 時は帝王切開の際は出血が怖かったので全例に輸血とフィブリノゲン製剤を使っていたこと、経過が悪い患者は・・医師の先輩医師が勤務していた・・病院に送っていたことを説明した上、本件証明書を自ら作成した。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたものである。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 本件証明書の内容は、産科領域における一般的な止血方法を行うこととしていたのか否か、これを行うとして、特定フィブリノゲン製剤の投与よりも前に行うのか、後に行うのかといったことが何ら記載されていない。 したがって、有害な副作用のリスク可能性が存在する輸血とフィブリノゲ ン製剤を帝王切開の全例において投与したなどという・・医師の投与方針は、一般的な止血方法の存在に照らして不合理である。 また、特定フィブリノゲン製剤の薬価 とフィブリノゲ ン製剤を帝王切開の全例において投与したなどという・・医師の投与方針は、一般的な止血方法の存在に照らして不合理である。 また、特定フィブリノゲン製剤の薬価収載の時期や昭和40年当時の特定フィブリノゲン製剤の製造量に照らせば、昭和40年11月当時、本件病院で行われた帝王切開の全例で特定フィブリノゲン製剤が投与されていたとは 考え難い。 したがって、本件証明書の記載内容を信用することはできないから、これをもって原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認定することはできない。 ⑵ 本件母子手帳の記載及び原告の供述等を前提とすれば、原告は、分娩の 際に帝王切開の処理を受けていたところ、その際の出血量は少量であった。 また、原告について、低フィブリノゲン血症をうかがわせる事情は存在せず、本件母子手帳にもDICの発症をうかがわせる記載や、原告に対して輸血が実施されたことを示す記載が何ら存在しない。 そうすると、原告が、本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤の投与を必 要とする病態であったとは認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)HCV-RNAの検査結果は、平成12年1月25日に定性プラス、同年2月29日に定量417と記述されているとおりであり(甲C04007の 1、2)、C型肝炎ウイルス感染事実が認められる。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認めら る。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 肝硬変罹患の事実の有無(原告の主張)肝硬変であることについては、これを示す検査結果がある(甲C04008の1、2)。 (被告及び補助参加人の主張) 肝硬変であることを示す各種検査結果等が提出されておらず、肝硬変罹患の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際に輸血と点滴を受けたところ、帝王切開術を行う際 は全例において輸血と特定フィブリノゲン製剤を使うという・・医師の方針の下、上記点滴により投与された薬剤は特定フィブリノゲン製剤であったと主張し、・・医師作成の本件証明書にはこれに沿う記載がある。 ⑵ しかしながら、本訴訟において、本件出産当時ないしその前後に作成された本件病院のカルテ、手術記録その他の医療記録の提出はなく、また、本 件証明書も、本件出産から45年近く経った平成20年1月28日に、カルテや手術記録その他診療・治療行為の内容を記録した書類に基づかずに作成されたものである(原告本人5、6頁)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態等の事実から、本件証明書の記載 内容の信用性を検討した上で、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を合理的 録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態等の事実から、本件証明書の記載 内容の信用性を検討した上で、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を合理的 に推認できるかどうかを検討する。 ⑶ 本件証明書の記載内容の信用性まず、本件証明書には、本件出産が昭和40年11月2日に行われたものであるという記載の後に、「当時は帝王切開には全例に輸血とフィブリノーゲン製剤を使用しました。」との記載があるが、これは原告の病態がい かなるものであったかを前提としないで、当時から副作用のリスクが知られていた「輸血」を全例で行い、いかなる出血の程度や出血傾向があるかを前提としないで、血液凝固因子製剤である特定フィブリノゲン製剤を全例で投与したというのであるから、一般的な止血方法に関する知見との比較において必要性に疑問があるなど、医学的な根拠が示されないままで採 用できる内容ではなく、それ自体不合理なものと言わざるを得ない。 また、特定フィブリノゲン製剤が薬価収載され、もって保険適用されることとなったのは、本件出産の前日である昭和40年11月1日であること(乙統236)、当時それ自体高価かつ貴重な薬剤であったこと(乙統108、165)を踏まえれば、直前まで保険適用外で、当時入手困難であ った薬剤を、少なくとも昭和40年11月当時、個人病院で、かつ、具体的な必要性を考慮しないで帝王切開術の全例に用いるなど、全く考え難い。 よって、本件証明書の記載内容は信用できないもので、本件証明書から直ちに原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されることにはならない。 ⑷ 原告の病態本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告の供述(原告本人3頁)によれば、原 ちに原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されることにはならない。 ⑷ 原告の病態本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告の供述(原告本人3頁)によれば、原告の病態について、本件出産の際、児頭骨盤不均衡の異常が認められたため、帝王切開術となったことが認められる。 そして、原告は、本件出産時には輸血及び点滴を受け、麻酔から覚めた時 には、看護師が床を洗浄する音を聞き、柄の長いブラシで床を掃除しながら 出血量が多いという看護師同士の話し声がしたから、大量出血があったと供述する(甲C04005、原告本人4頁)。 しかし、本件母子手帳の「お産の記事」欄には、・・医師の記名押印とともに、「出血」欄の「少量」に〇印が付けられているところ(甲C04006)、同記載は、医師、分娩介助者により、分娩直後ないし少なくとも退院 までの時期に記載された客観資料であり、その他の手術内容や分娩異常の記載が正確であることなどからも信用性が高いものと言えるのに対し、原告の供述自体具体的な出血量を述べるものではないことなどに照らし、上記「少量」の記載が誤りであるということはできず、大量出血があったとする原告の供述は採用できない。 よって、原告の病態として、大量出血があったとは認められず、このような原告の病態からは、直ちに低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められないから、原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されることにはならない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個11(原告番号41番) 以下、本別紙中では、原告番号41番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和54年11月13日、 ・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において第2子を出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、その止血処置として特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和54年11月13日、本件病院において、第2子を出産した(本件出産。甲C04106)。 イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12 頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄に「頭位癒着胎盤、用手剥離」、「出血量」欄には「1145㎖」と記載され、その横の「少量・中量・多量」には印がなく、「分娩取扱者氏名」欄に「医師・・・・」(以下「・・医師」という。)、「助産婦・・・」の記名印がある(甲C04106)。 ウ本件出産に関する分娩台帳(以下「本件分娩台帳」という。)には、「異常」欄に「分娩出血」、「裂傷」欄に「ヘルフ1針」、「出血」欄に「1145」、「医師」欄に「・」(以下「・医師」という。)、「助産婦」欄に「・・」、「助・・」、「その他」欄に「児A 。)には、「異常」欄に「分娩出血」、「裂傷」欄に「ヘルフ1針」、「出血」欄に「1145」、「医師」欄に「・」(以下「・医師」という。)、「助産婦」欄に「・・」、「助・・」、「その他」欄に「児AS6点、5分後9点、胎盤第3期出血用手剥離(+)」の記載がある(甲C0410 8)。 ⑵ 原告は、平成14年3月には、C型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受け、遅くとも平成22年10月には、C型慢性肝炎との診断を受けた(甲C04101、03)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C04109)。 ⑷ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件分娩台帳及び本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C04106、08、弁論の全趣旨)。 また、・・医師、・医師その他の本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 本件出産後、癒着胎盤のために用手剥離をされ、分娩室にしばらく寝かされているうちに、原告には多量の出血があり、処置の際に点滴され、病 室に移った後もその点滴が継続して行われたもので、止血剤として特定フィブリノゲン製剤が点滴されたことが推認される。 大量出血であったことは、原告の夫が、本件出産後間もなく、担当の・医師から、「出血がひどかったけれども、とりあえず止血したので安心してください。」との説明を受けたことからも、裏付けられる。 ⑵ 原告の既往歴としては、昭和35年の盲腸 後間もなく、担当の・医師から、「出血がひどかったけれども、とりあえず止血したので安心してください。」との説明を受けたことからも、裏付けられる。 ⑵ 原告の既往歴としては、昭和35年の盲腸の手術、昭和52年の第1子の出産、昭和59年の人工妊娠中絶があるが、第1子の出産を除いて大量の出血はなく、第1子の出産の際も、1440㎖の多量の出血はあったが、止血剤が投与されたかどうかは不明である。そうすると、本件出産以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産当時、原告について同製剤の適応症例である低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、原告が、癒着胎盤のため用手剥離の処置を受け、その際の出血量が1145㎖であった事実は認められるものの、それ以外に特定フィブ リノゲン製剤投与の必要性を認める客観的な証拠は存在しない。 また、原告の陳述、供述を前提としても、原告は、本件出産時に点滴を受けたこと、本件出産後、夫が医師から止血した旨説明を受けた旨供述するにすぎず、本件出産時の具体的な経過は不明であって、本件出産時に、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療が必要になるような緊急状 態が発生したり、同症状の予防が必要な状況が発生したりしたという事実を認めることはできない。 かえって、原告及び原告の夫が、本件出産時には輸血が行われなかったと思う旨供述していることからすれば、出血に対しては、子宮一般的処置ないし圧迫法等で止血に至った可能性も相応に高いというべきである。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブ れなかったと思う旨供述していることからすれば、出血に対しては、子宮一般的処置ないし圧迫法等で止血に至った可能性も相応に高いというべきである。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、担当医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の陳述、供述によっても、担当医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成14年3月にC型肝炎ウイルス感染が判明した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。 HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の 事実が認められない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。 提出された診断書における診断の根拠となった各種検査結果等が提出され ておらず、慢性C型肝炎罹患の事実が認められない。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産後の出血に対する止血処置の一環として、原 ず、慢性C型肝炎罹患の事実が認められない。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産後の出血に対する止血処置の一環として、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたと主張するが、本件出産後、原告 に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載、本件分娩台帳の記載及び原告の供述によれば、原告の病態について、自然分娩の後、癒着胎盤のため用手剥離の処置を受け、その際の出血量が1145㎖であった事実が認められ、1000㎖を超える後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たり、胎盤用手剥離は、 DICの誘因となる産科疾患に当たる(乙統97(255頁)、200(120頁))。 イしかしながら、原告は、本件出産後も、意識を失ったことがないと述べていること(原告本人14、15頁)、原告の夫は、・医師から「出血がひどかったので、止血剤を使いました。」と聞かされたことや輸血 はされなかったことを陳述していること(甲C04104)などからして、本件出産前後を通じ、原告にショックその他の臨床症状がなかったことがうかがわれるから、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法 ことがうかがわれるから、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法 としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277 頁以下)、98(28頁))から、本件出産当時、原告に1145㎖の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 ウこの点、原告は、分娩室にいるときから点滴がされていたことを陳述し、本人尋問においては、それもよく覚えていないと供述するが(甲C041 03、原告本人15頁)、点滴が行われていたという陳述を前提としても、 点滴の内容は不明であり、原告に対し輸血がされていないとすれば、点滴で輸液が補充されることは十分考えられる。 また、原告の夫が・医師から上記イの説明を受けたという点について、本件出産後の処置に関し、一般的な止血方法やその一環としての止血剤が奏功しなかったことをうかがわせる事情が何ら存在しない以上、「止血剤」 という説明があったことを前提としても、上記説明から、特定フィブリノゲン製剤が投与されたものということはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師又は・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 。 ⑶ 本件病院又は担当医の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師又は・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針 事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からして、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと 推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個12(原告番号43番) 以下、本別紙中では、原告番号43番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、・・・・・(以下「・・・」という。・・・・・・・・・生、平 成17年 以下、本別紙中では、原告番号43番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、・・・・・(以下「・・・」という。・・・・・・・・・生、平 成17年6月15日死亡)が、昭和48年7月頃、・・・・・・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、子宮筋腫の摘出手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して、死亡したと主張して、・・・の相続人である原告が、被告に対し、特措法6条1 号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・・の二男である(争いがない)。 イ・・・は、C型肝炎ウイルスに感染して慢性C型肝炎に罹患し、これ が進行して肝硬変に罹患した。・・・は、肝硬変を直接の死因として、平成17年6月15日死亡した。(争いがない。甲C04301、07)⑵ 本件手術の状況等ア・・・が平成14年6月に・・・病院に入院した際の診療録(以下「14年・・・カルテ」という。)には、既往歴として「S48年(4 2才)子宮筋腫ope」「BTF(輸血)○+?」「止血剤」「55才血小板減少性紫斑病」の記載がある(甲C04304の2(3頁))。 イ本件病院には、本件手術に関する診療録、手術記録、レセプトその他の医療記録が現存していない(甲C04303の2、弁論の全趣旨)。 昭和48年当時本件病院に在籍し、手術を担当していた・・・・医師 (以下「・・医師」という。)は、平成10年に死亡し、その他の医療 関係者からも、本件手術に関する陳述は得られていない(甲C04303の2、弁論の全趣旨)。 ⑶ 本件 医師 (以下「・・医師」という。)は、平成10年に死亡し、その他の医療 関係者からも、本件手術に関する陳述は得られていない(甲C04303の2、弁論の全趣旨)。 ⑶ 本件病院・・・医師(以下「・・医師」という。)からのメール本件病院の院長である・・医師は、原告からの問合せに対し、平成20年1月27日に電子メール(以下「・・医師メール」という。)を返信し、 「当時は輸血をするような大出血の場合に「フィブリノゲン」を使ったと聞いております。」、「子宮筋腫の手術で輸血を必要とする程の大出血をすることは少ないと思いますが、血小板減少性紫斑病を合併されていたのならば出血が多くなった可能性はあります。しかしこれはあくまでも私の推測で、当時「フィブリノゲン」を使った事を証明する物は当院にありま せん。」などと記載した(甲C04303の2)。 ⑷ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ ・・・は、昭和48年7月、本件病院において、・・医師執刀の下、子宮筋腫の本件手術を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた。 そのことは、第1に、本件手術の際、輸血がされ、止血剤投与がされた事実が14年・・・カルテから明らかであること、第2に、・・・が、昭 和60年頃、骨髄検査等により血小板減少性紫斑病(以下「ITP」という。)の診断を受け、その治療のため通院していたところ、・・・が本件手術の前から血が止まりにくい症状があることを訴えていたから、本件手術に際し、・・医師との間で、その対策に留 病(以下「ITP」という。)の診断を受け、その治療のため通院していたところ、・・・が本件手術の前から血が止まりにくい症状があることを訴えていたから、本件手術に際し、・・医師との間で、その対策に留意していたことも当然であること、第3に、本件病院は、特定フィブリノゲン製剤を取り扱っていた病 院であり、昭和48年当時も納入されていたこと、以上の3点から明らか である。 ⑵ また、本件手術当時の本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針について、・・医師メールにおいて、輸血を必要とするような大出血の場合に「フィブリノゲン」を使ったと述べている。 出血が止まりにくい病気で、後にITPと診断された・・・について、 子宮筋腫の手術とそれに続く子宮摘出の手術を行うに当たって、・・医師から、輸血を行う予定であることを聞かされ、原告を含む親族約10名が本件手術当日に本件病院に集められ、緊急の輸血に備えたほどであったことからして、上記投与方針に照らし、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことが認められる。 ⑶ ・・・について、本件手術以外に、平成2年にC型慢性肝炎と診断される前まで、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要 性があったと認められる必要があるところ、一般にそのような病態の原因となり得る出血は大量出血に限られるところ、・・・に本件手術時そのような大量出血があったとは認められない。 すなわち、①・・医師メールにもあるとおり、一般に子宮筋腫の手術で大量出血が生じるのはまれであること、②14年・・・カルテにある「止 術時そのような大量出血があったとは認められない。 すなわち、①・・医師メールにもあるとおり、一般に子宮筋腫の手術で大量出血が生じるのはまれであること、②14年・・・カルテにある「止 血剤」の記載も・・・の申告に基づくものにすぎず、客観性のあるものとはいえないこと、③原告の供述を前提としても、本件手術の当日に献血のために集められた原告を含む親戚らは、実際に血液を提供することはなかったなどというのであるから、出血量等のコントロールが困難ではなかったと認められること、④・・・が昭和61年(55歳)のときにITP (血小板減少性紫斑病)の診断を受けたからといって、ITPの発病経過 に関する知見に照らすと、本件手術当時(昭和48年)既にこれを発症していたとは認められないこと、以上の諸事情からすれば、原告の主張を踏まえても、・・・の本件手術中の出血が低フィブリノゲン血症又はその要因であるDICの原因となるほどの大量出血であったとは認められない。 ⑵ また、本件手術を担当した・・医師の投与方針に関する証拠は、本件病 院の現在の院長である・・医師のメールのみであるところ、「当時は輸血をするような大出血の場合に「フィブリノゲン」を使ったと聞いております。」という内容は、本件手術当時看護学生であった職員から聞いたものであることがうかがわれ、・・医師の投与方針を確認したものでもなく、どの程度の大出血を前提とするのかも明らかでないから、これをもって・ ・医師の投与方針であると認めることはできない。 ⑶ したがって、本件手術時、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本 手術時、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件手術の際の出血に対する止血処置の一環として、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたと主張するが、本件手術の際、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療 記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑵イ)。 そこで、残存する医療記録(本件手術後のものを含む。)、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・・の病態について 本件手術に関する診療録、手術記録、レセプトその他の医療記録は現存せず、・・医師その他の医療関係者からも本件手術に関する陳述を得られていないものの、平成14年に・・・病院に入院した際に・・・が問診の際に申告したとおり、昭和48年、42歳のときに、子宮筋腫の手術を受けたこと及び55歳のときに、ITP(血小板減少性紫斑病)の診断を受け たことは認めることができる(甲C04304の2)。 しかしながら、①・・医師メールにあるとおり、子宮 腫の手術を受けたこと及び55歳のときに、ITP(血小板減少性紫斑病)の診断を受け たことは認めることができる(甲C04304の2)。 しかしながら、①・・医師メールにあるとおり、子宮筋腫切除手術にあっては、帝王切開と違って手術中の出血を少なくするためにまず子宮動脈を結紮して手術をするため、子宮筋腫の手術で輸血を必要とするほどの大出血をすることは少ないと思われること(甲C04303の2)、②医療文 献上(甲C04311)、子宮を温存し、筋腫だけを取る手術の場合には出血が多くなるとあるにとどまり、本件手術では子宮摘出術が行われたという原告の供述(原告本人16、17頁)を併せると、本件手術には当てはまらないこと、③ITPの発病経過について、医療文献上(甲C04310)、ITPには急性型と慢性型があり、成人に多く見られる慢性型は、 「血小板数が徐々に減少し、推定発病から年余にわたって慢性的に持続する場合は、発症時期が不明なことが多い」とあるところ、55歳でITPの診断を受ける13年前にITPを既に発症していたと認めることは困難であること、さらに、④14年・・・カルテの記載上、子宮筋腫の手術の記載に続いて「BTF(輸血)○+?」とあるとおり、輸血がされたという ・・・の申告はそれ自体曖昧なものであったと認められること(甲C04 304の2)、⑤「BTF○+?」の「BTF○+」の直下に「止血剤」とある文字と周囲の文字の筆跡の同一性が明らかでなく、14年・・・カルテの記載から直ちに・・・が止血剤の投与を受けたと申告したとは認められないこと、以上の諸事情を総合すると、子宮筋腫の切除術である本件手術の際、・・・がITPを発症していたことや本件手術の際に輸血がされた と認定することは困難であり を受けたと申告したとは認められないこと、以上の諸事情を総合すると、子宮筋腫の切除術である本件手術の際、・・・がITPを発症していたことや本件手術の際に輸血がされた と認定することは困難であり、本件手術の際に、・・・に大量出血があったと認めることはできない。 そうすると、・・・の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 ⑶ 原告の供述について原告は、本件手術の際にITPを発症していたことを基礎づける事情として、・・・が生理の際の出血量が多いと述べていたことを挙げるが、子宮筋腫の主な症状として、月経量が多くなることが挙げられていること(甲C04311)からして、これをITPの発症を基礎づける事実とみることはで きない。 また、原告は、本件手術当日、原告を含む約10名の親戚が、献血のために本件病院に集められたと供述するが(原告本人5頁)、同時に、病院関係者から昼食に行ってよいと言われたので、出かけて戻ると手術が終わっていて、親族の献血による輸血はしなかったとも供述しているもので(同 頁)、同供述によれば、輸血のために親族を集めながら、手術前に病院関係者の指示により病院を離れさせ、その間に手術が終わっているという内容で、それ自体かなり不自然な内容であり、記憶の混濁が疑われるから、本件手術の日に献血のために親族を集めたという経過説明は信用できない。 さらに、原告は、上記の経過説明と併せて、伯母が、原告ほかの献血によ る輸血が必要ないことと止血剤がいいものがあるので大丈夫だと言ったと も供述するが(原告本人16頁)、出血量が想定より少なかっ 記の経過説明と併せて、伯母が、原告ほかの献血によ る輸血が必要ないことと止血剤がいいものがあるので大丈夫だと言ったと も供述するが(原告本人16頁)、出血量が想定より少なかったため、輸血が必要なかったことと止血剤の存在との関連性は全く不明であり、やはり信用できない。 したがって、原告が指摘する各事情は、上記⑵の認定を左右しない。 ⑷ ・・医師メールと投与方針について ・・医師メールには、「当時は輸血をするような大出血の場合に「フィブリノゲン」を使ったと聞いております。」とあり、これは・・医師からの伝聞として記載されたものではなく、本件手術当時いた職員から聞いたとあるとおり、出血量の基準も不明で、それ自体曖昧な内容であると言わざるを得ないから、・・医師の投与方針であると認めることも困難であるが、この点 をおいても、上記⑵、⑶のとおり、少なくとも本件手術に際し、・・・に対し輸血がされたと認めることはできないから、・・医師メールにある内容を基にしても、・・・が本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたと推認することはできない。 ⑸ 他原因の存否 原告は、・・・について、本件手術以外に、平成2年にC型慢性肝炎と診断される前まで、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といっ た医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221 た医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からして、・・・がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認 することはできない。 ⑹ よって、原告が指摘する各事情を踏まえても、・・・の病態として、大量出血があったとは認められず、このような・・・の病態から直ちに・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されることにはならない。 2 以上によれば、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤 が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個13(原告番号53番) 以下、本別紙中では、原告番号53番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和59年11月21日、 ・・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において第3子を出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、その止血処置として特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和59年11月21日、本件病院において、第3子を出産した(本件出産。甲C05304)。 イ本件出産に関する母子健 案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和59年11月21日、本件病院において、第3子を出産した(本件出産。甲C05304)。 イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12 頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄に「全前置胎盤腹式帝王切開術 APS7点」との記載があり、「出血量」欄には「多量」に○印が付けられ、その横に「2000㎖↑」「輸血10単位」との記載があり、「分娩取扱者氏名」欄に「医師・・・・」(以下「・・医師」という。)の記名印が押され、「その他」欄に「医師」「・・」「・・」「・・」と いう記載がある(甲C05304)。 ⑵ 原告は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 原告は、遅くとも平成22年10月28日には、C型慢性肝炎との診断を受けた(甲C05301)。 ⑶ 本件病院には、本件出産当時、特定フィブリノゲン製剤が納入されてい た(甲C05309)。 ⑷ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C05302、07、原告本人24、25頁)。 また、・・医師その他の本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない(原告本人25頁、弁論の全趣旨)。 ⑸ 本件病院の回答書本件病院は、平成20年6月12日頃、原告あての回答書を作成した(以下「本件回答書」という。甲C05307)。 本件回答書には、原告の産婦人科通院年月日として、初診年月日が「昭和57年6月30日」、最終来院日が「昭和59年12月25日」、カルテの 有無「無し(廃棄)」、当時の産婦人科の治療方針についてどういった には、原告の産婦人科通院年月日として、初診年月日が「昭和57年6月30日」、最終来院日が「昭和59年12月25日」、カルテの 有無「無し(廃棄)」、当時の産婦人科の治療方針についてどういった場合にフィブリノゲン製剤を使用されたか回答していただきたいとの問いに対し、「手術、分娩等で出血多量あるいはDICに移行が疑われる症例に対して使用を考慮していたと思われます。」との記載があり、末尾に医師・・・・の署名押印がある。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 本件出産の際、原告には、全前置胎盤を基礎疾病とする大量出血があり、輸血と併用して特定フィブリノゲン製剤が投与されたことは確実である。 原告に全前置胎盤を基礎疾病とする2000㎖以上の大量出血があることは、本件母子手帳の記載から明らかである。原告は、就寝中に出血に気づいてナースコールして、手術室か分娩室に運ばれた際、ベッドが血の海というか、表面の一部がくぼんで、そこに血液が溜まっている状態になっていたから、計測不能の2000㎖を超える大量出血があった。 原告は、手術室か分娩室で、大量出血による血圧低下とショック状態の 中で意識を喪失し、意識回復後も顔に浮腫みがあるほどの状態であった。 こうした身体症状は、大量出血に対する大量の輸血や点滴等の医療措置の痕跡であり、本件出産(帝王切開術)後、原告の夫が、・・医師から、「出血量が2ℓ以上あり、ショックのため心肺停止となりました。人工呼吸と心臓マッサージを施しましたが、出血が多いので、普通の輸血では間に 合わないため、血液と同じ成分を入れました。食塩水のようなものですから問題ないですよ。」 のため心肺停止となりました。人工呼吸と心臓マッサージを施しましたが、出血が多いので、普通の輸血では間に 合わないため、血液と同じ成分を入れました。食塩水のようなものですから問題ないですよ。」と説明されたことと符合する。 したがって、原告が本件出産の際の大量出血により、DIC状態となっていたことは優に認められ、ここで用いられた「血液と同じ成分」とは、フィブリノゲンと考えるのが合理的である。 ⑵ また、本件病院は、本件回答書において、「手術、分娩等で出血多量あるいはDICに移行が疑われる症例に対して使用を考慮していたと思われます。」と回答しており、当時の本件病院における特定フィブリノゲン製剤投与方針からも、本件出産の際の大量出血によりDIC状態となっていた原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたといえる。 ⑶ 原告には、本件出産時の全前置胎盤を基礎疾病とする大量出血以外には、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらない。それどころか、本件出産の約2週間後に原告が非A非B型の急性肝炎を発症し、その後慢性C型肝炎に移行し、症状が継続したことからも、本件出産の際の医療措置に原因があることが明らかである。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産当時、原告について同製剤の適応症例である低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、全前置胎盤はDICの基礎疾患となり得るものである上、帝王 切開術もDICの要因となり得るから、原告について、本件出産当時、D ICを発症する抽象的な危険があったことは否定できない。また、原告は、本件出産時に約2000㎖の出血があったことがうか 術もDICの要因となり得るから、原告について、本件出産当時、D ICを発症する抽象的な危険があったことは否定できない。また、原告は、本件出産時に約2000㎖の出血があったことがうかがわれ、産科DICスコアが3点加算される可能性がある。 しかしながら、このほかにDICの診断基準に照らして、点数を算定すべき事情があることを裏付ける客観的な証拠はない。 ⑵ 原告の供述等を前提として、原告が本件出産時、DICの発症又はその危険が生じていたなど、特定フィブリノゲン製剤投与が考えられる病態であったと考えるにしても、特定フィブリノゲン製剤は、適応がある場合に必ず使用されていたなどという実態はなく、その投与は採られ得る処置の一つにとどまるもので、輸血を実施する方法なども存在するところ、これ らの治療法のうちどの方法を選択するのかは、担当医師が自らの知識及び経験を踏まえて判断するものである。 ⑶ 原告は、原告の陳述・供述に基づき、本件出産時に心肺停止状態であったと主張するも、これを裏付ける客観的証拠はない。 しかも、原告が供述する内容は、本件出産が全身麻酔下で行われ、人工呼 吸器による呼吸管理が行われたとしながら、心肺停止措置に対する処置として人工呼吸が行われたというもので、医学的知見に反し整合しないから、・・医師がそうした説明をしたことは考えられない。また、術後に目が覚めた時には既に抜管され、人工呼吸器による呼吸管理が行われていなかったという供述も、医学的知見に照らすと、本件出産時に心肺停止状態となったこと と整合しない。 ⑷ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件病院作成の本件回答書の記載から明らかなとおり、特定フィブリノゲン製剤の使用に係る一般論を 合しない。 ⑷ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件病院作成の本件回答書の記載から明らかなとおり、特定フィブリノゲン製剤の使用に係る一般論を述べるものに過ぎない。また、原告の供述等によっても、・・医師の投与方針は不明である。 ⑸ したがって、本件出産時、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与 されたとの事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患し、肝嚢胞、肝内石灰化が進んでおり、肝硬変一歩手前との診断を受けている。 (被告及び補助参加人の主張)肝硬変の根拠となる画像検査結果や随伴症状等のデータが確認できないた め、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際の全前置胎盤による大量出血に対する止血処置の一環として、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたと主張す るが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認 際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載及び原告の供述によれば、原告の病態について、全前置胎盤であり、腹式帝王切開術の処置が施され、その際の出血量が2000㎖を超える大量出血であった事実が認められ、2000㎖以上の出血はDICの原因となる基礎疾患に当たり、前置胎盤及び帝王切開術はDI Cの誘因となる産科疾患に当たる(乙統97(255頁)、200(120頁))。 イそして、原告は、自らの病態に関し、・・医師が本件出産(帝王切開術)後に原告の夫に対してした説明として「出血が2ℓ以上あり、ショックのため心肺停止となった。」と聞かされたと述べる(原告本人10頁)。 しかしながら、原告は、ショックにより意識を喪失した状況として、分娩室で、口と鼻が塞がれるマスクのようなものをあてがわれた後に意識がなくなったことを供述するものの(原告本人9頁)、その状況からして、全身麻酔が開始されたことを述べるにとどまるといえるから、ショック症状があったことの裏付けとはならない。 また、原告は、原告の夫が・・医師から受けた説明として「心臓マッサージとか人工呼吸とか輸血とか血液のような成分の薬とか」ありとあらゆる手を尽くしたと聞かされたとも述べる(原告本人10頁)が、上記のとおり、ショック症状があったという点に疑問がある上、「心肺停止」という重大なエピソ か輸血とか血液のような成分の薬とか」ありとあらゆる手を尽くしたと聞かされたとも述べる(原告本人10頁)が、上記のとおり、ショック症状があったという点に疑問がある上、「心肺停止」という重大なエピソードがありながら、本件母子手帳の「分娩の経過」欄に記 載されないことが、現に記載された内容の丁寧さと比較して不自然であること、全身麻酔の場合人工呼吸器により呼吸管理を行うため人工呼吸はできないこと、意識が戻った際に原告が既に抜管されていて、看護師と会話をしたという状況が、心肺停止後に自己心拍が再開した患者に対して行われる呼吸管理の方法と整合しないこと(乙C05302、原告本人9頁) などの合理的に説明し難い諸事情が認められる。 したがって、・・医師が本件出産(帝王切開術)後に原告の夫に対して、原告がショックのため心肺停止となったと説明したという原告の供述は信用できないもので、「心臓マッサージとか人工呼吸とか輸血とか血液のような成分の薬とか」という心肺停止への対応措置の説明を受けたという部分についても、本件母子手帳に記載がある「輸血」を除けば、同様に、信 用性が乏しいものである。 ウそうすると、原告の病態について、全前置胎盤であり、腹式帝王切開術の処置が施され、その際の出血量が2000㎖を超えた事実のほかは、輸血10単位が施されたこと、全身麻酔で人工呼吸器による呼吸管理が行われたことが認められるにとどまり、ショックのため心肺停止となったとい う危篤症状があったと認めることもできないから、本件出産を通じ、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとは認められない。 ⑶ 「血液のような成分の薬」について原告は、・・医師が、原告の夫に対し、本件出 、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとは認められない。 ⑶ 「血液のような成分の薬」について原告は、・・医師が、原告の夫に対し、本件出産(帝王切開術)後に、原 告に対して投与した「血液のような成分の薬」(原告本人10、15頁)又は「食塩水のようなもの」(甲C05303)と説明したものが特定フィブリノゲン製剤であると考えられると主張するが、上記⑵のとおり、・・医師の上記説明があったこと自体信用性が乏しい上、文言どおりの説明があったとしても、「血液のような成分の薬」が「食塩水のようなもの」であるとす れば、2000㎖を超える出血に対し、2000㎖の輸血をしたという場合に、さらに失われた水分等を補う目的で投与される輸液、補液がこれに当たると解するほかない。 したがって、原告の上記供述は、・・医師が、本件出産後に、原告に対して特定フィブリノゲン製剤を投与したという説明をしたことを推認させる供 述に当たらない。 ⑷ 本件回答書について本件病院作成の原告あての本件回答書には、「手術、分娩等で出血多量あるいはDICに移行が疑われる症例に対して使用を考慮していたと思われます。」とあり、その内容自体合理的な医学的知見であるということができるが、「使用を考慮」とあるにとどまるから、個別の症例に対するあてはめが 困難であり、これを本件出産時における本件病院の特定フィブリノゲン製剤投与方針とし、原告の病態に当てはめることはできない。 また、本件各証拠によっても、本件出産当時の・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑸ 他原因の存否 原告は、原告には、本件出産時の全前置胎盤を基礎疾病とする大量出血以外には、C ても、本件出産当時の・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑸ 他原因の存否 原告は、原告には、本件出産時の全前置胎盤を基礎疾病とする大量出血以外には、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるとされ ている(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)等)。このことに加え、原告に対しては、本件出産の際、輸血が行われていること、昭和59年頃は、輸血後肝炎発症率は14.3%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブ リノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個14(原告番号54番) 以下、本別紙中では、原告番号54番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和47年5月21日、・ ・・・・・(以下「本件病院」という。 中では、原告番号54番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和47年5月21日、・ ・・・・・(以下「本件病院」という。)において、第2子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ア原告は、昭和47年5月21日、本件病院において、第2子を自然分娩により出産した(本件出産)。本件出産の担当医師の氏名は明らかでない。(甲C05403、04)。 イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)1 0頁「出産の状態」には、「胎位」項目に「頭位」、「合併症」項目に「無」との記載があり、「分娩経過」欄の「特記事項」、「出産時の産科手術及び処置」の項目は空欄で、「輸血・輸液」の項目には「輸液」に○印が付けられ、「1000㎖」との記載があり、「出血量」欄には「多量」に○印があるが、数値の記載はない(甲C05403)。 ⑵ 原告は、遅くとも平成18年6月頃までにC型肝炎ウイルスに感染したとの診断を受け、遅くとも平成22年10月1日までにC型慢性肝炎に罹患したとの診断を受けた(甲C05401)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存 していない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ ①本件母子手帳に記載の いない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ ①本件母子手帳に記載のとおり、原告が、本件出産の際、出血量多量で、輸液1000㎖を投与されたこと、②分娩後に病室に戻ってからも、じわ じわと出血しており、看護師が脱脂綿を交換してくれたこと、③牛乳瓶より少し小さいくらいの瓶がぶら下がって点滴をしていたことといった事実を総合すれば、原告は、分娩後に弛緩性出血を来していた可能性が高く、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が高い。 ⑵ 原告は、昭和42年に妊娠3か月で流産し、産婦人科で処置を受けたが、 入院せず輸血をした記憶もないこと、昭和44年に第1子を出産し、その際は難産であったが、出血は300㎖(中等量)にとどまり、輸血をした記憶もないことからすると、本件出産の際以外に大量出血をした経験がなく、その他のC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、原告の供述を前提としても、そのような病態に陥る要因としては、本件出産時の出血しか考えられない。 しかしながら、一般に低フィブリノゲン血症やDICの要因となり得るのは大量出血に限られるところ、本件母子手帳には当時ある程度多量の出血があったことをうかがわせる記載はあるものの、具体的な出血量を示す数値等の記載はなく、輸液量から直ちに具体的な出血量は推認できないことからして、原告の供述によってもその点は明らかでない 度多量の出血があったことをうかがわせる記載はあるものの、具体的な出血量を示す数値等の記載はなく、輸液量から直ちに具体的な出血量は推認できないことからして、原告の供述によってもその点は明らかでない。 また、原告は、分娩時に特に異常な事態は発生しなかったこと、分娩後は じわじわ出血が続いたものの、医師等から出血量や出血原因、止血剤使用等に関する説明はなかったこと、その間輸血投与もなかったこと、退院まで原告の体調に特別の異変がなかったことなどの経過を考慮すれば、本件出産当時、原告の出血が低フィブリノゲン血症又はDICの要因となり得るほどの大量出血であったとは到底認められない。 ⑵ 本件出産時の担当医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によっても、担当医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、担当医師の投与方針に照らして特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無 (原告の主張)原告は、平成18年6月頃、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の 事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるか ら、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、遅くとも平成 係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、遅くとも平成22年10月1日までにC型慢性肝炎に罹患したと の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)診断書の診断根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際に原告に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実の有無⑴ 原告は、分娩後に弛緩性出血を来していた可能性が高く、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が高いと主張するが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴イ)及び原告の供述によれば、原告の病態について、自然分娩の後、病室に戻ってからもじわじわ出血がみられるなど多量の出血が認められ、輸液1000㎖が投与された事実が認められるが、本件母子手帳の「特記事項」には書込みがないから、これだけではDICの原因となる基礎疾患に当たるとまではいえない。た だし、「多量」が具体的にどの程度の出血量を指すかは明らかでないが、原告が主張するとおり、輸液量と同量の1000㎖の後産期出血があるとすれば、DICの原因となる基礎疾患に当たることになる。(乙統200(120頁))イし の出血量を指すかは明らかでないが、原告が主張するとおり、輸液量と同量の1000㎖の後産期出血があるとすれば、DICの原因となる基礎疾患に当たることになる。(乙統200(120頁))イしかしながら、仮に出血量が1000㎖に及ぶとしても、本件各証拠か ら、本件出産前後を通じ、原告の全身状態が著しく悪化していたとか、出 血傾向が出現していたなど、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、 子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))からして、大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されると まではいえない。 ウまた、原告は、病室に戻ってからしばらくして、牛乳瓶より少し小さな透明の瓶に入った薬剤の点滴を受けたと供述し(原告本人5頁)、これが特定フィブリノゲン製剤の投与事実を示すものと主張するが、上記の供述から投与された薬剤を特定することは困難であり、直ちに特定フ ィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィ ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産後の出血以外には事故や手術で大量出血したことはなく、昭和42年の流産や昭和44年の第1子出産の際も、輸血をした記憶がないから、本件出産の際以外にC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの 血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(8 9頁)等)などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合 理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個15(原告番号56番) 以下、本別紙中では、 4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個15(原告番号56番) 以下、本別紙中では、原告番号56番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・生、平成23年5月 21日死亡。以下「・・」という。)が、昭和42年1月20日、・・・・病院(以下「本件病院」という。)において、第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、慢性肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、・・の相続人であり、訴訟承継人である原告が、被告に対し、特措法 6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・の長女である(争いがない)。 イ・・は、平成23年5月21日、死亡し、原告が訴訟上の地位を承継 した(弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件出産(甲C05602、弁論の全趣旨)ア・・は、昭和42年1月20日、午前1時48分頃、経膣分娩により第1子である原告を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)で ある。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C05602。以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」には、「出産開始時の状況」欄に「第1胎向」、「在胎期間」欄に「妊娠第40週(第10月)」、「児の娩出日時」欄に「42年1月20日午前1時48分」、「陣痛発来の時期」欄に 「1月19日1945時頃」との記載があり、「自然」に〇印が付けられ、 「破水の時期」欄 )」、「児の娩出日時」欄に「42年1月20日午前1時48分」、「陣痛発来の時期」欄に 「1月19日1945時頃」との記載があり、「自然」に〇印が付けられ、 「破水の時期」欄に「1月20日145時頃」と記載があり、「人工」に〇印が付けられ、「分娩経過」欄の「特記事項」として「弛緩性出血」と記載があり、「輸液」に○印が付けられ、「5%TZ 1000㎖」、「分娩所要時間」欄に「約6時間」、「出血量」欄に「640㎖」との記載があり、「多量」に〇印が付けられ、「分娩介助者氏名」欄のうち医師 欄に「・・・・」、助産婦欄に「・・・・」の記名押印がある。 エ本件母子手帳4頁「妊婦の記事」の「いままでにかかった主な病気」「受けた手術」欄に「肺切除25才」との記載がある(甲C05602)。 オ本件出産に関し、本件出産当時作成された医療関係記録としては、本件母子手帳は現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存し ない。また、本件母子手帳に特定フィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。 ⑶ ・・・・・・・・において、・・に関し、病名を「肝腫瘍」とする平成20年8月26日付け入院診療計画書、病名を「肝細胞癌、C型肝硬変」とする平成22年4月21日付け入院診療計画書、病名を「肝癌、気管支拡張症」 とする同年8月27日付け入院診療計画書がそれぞれ作成されている(甲C05606の1ないし3)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ ・・は、昭和42年1月20日の本件出産の際の弛緩性出血のため、640㎖の大量出血をし、1000㎖の輸液を受けるとともに、特定フィブリノゲン製剤も投与された。 ⑵ ・・がC型肝炎に ⑴ ・・は、昭和42年1月20日の本件出産の際の弛緩性出血のため、640㎖の大量出血をし、1000㎖の輸液を受けるとともに、特定フィブリノゲン製剤も投与された。 ⑵ ・・がC型肝炎に罹患した原因は本件出産時に特定フィブリノゲン製剤を投与されたこと以外には考えられない。 (被告の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠を見ても、・・が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は認められない。・・については、出血量が約640㎖であったこと が認められるが、その際、5%ブドウ糖液を約1000㎖点滴注射されたこと以外は不明であり、治療及び投与した薬剤の内容は明らかでない。本件出産の際、・・が輸血を受けたことや止血が困難であったことをうかがわせる事情も認められない。 したがって、・・について、DICの原因となる基礎疾患や臨床症状等 は不明であり、DICの治療又は予防の必要性は認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件出産時における担当医師である・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はないから、この観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑶ 仮に、・・がC型肝炎ウイルスに感染したとの事実が認められたとしても、・・は、昭和39年に何らかの理由で輸血を受けたことがあるほか、昭和32年頃に肺切除の手術を受けているから、これらの際の処置等が原因でC型肝炎ウイルスに感染した可能性も否定できない。 (補助参加人の ・は、昭和39年に何らかの理由で輸血を受けたことがあるほか、昭和32年頃に肺切除の手術を受けているから、これらの際の処置等が原因でC型肝炎ウイルスに感染した可能性も否定できない。 (補助参加人の主張) ⑴ 本件各証拠によっても、本件出産時に弛緩性出血があり、640㎖の出血があったこと、輸液5%TZを1000㎖点滴されたこと以外の・・の状態が全く不明であり、特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとはいえない。その上、本件出産を担当した医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針も全く明らかになっていないことに鑑みれば、・・ に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとはいえない。 ⑵ そもそも、・・については、C型肝炎ウイルスの感染の事実が認められない。仮に感染していたとしても、・・は昭和39年に輸血を受けており、その際に感染した可能性がある。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) ・・は、平成22年4月21日に、C型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、肝がんに罹患した事実の有無(原告の主張)・・は、平成20年8月26日に肝腫瘍 加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、肝がんに罹患した事実の有無(原告の主張)・・は、平成20年8月26日に肝腫瘍、平成22年4月21日に肝細胞 がん、C型肝硬変、同年8月27日に肝がん、気管支拡張症の診断をそれぞれ受け、平成23年5月21日に死亡した。 (被告及び補助参加人の主張)診断書(甲C05601)における診断書の根拠となった各種検査結果等が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産後の弛緩性出血に対する止血処置として、・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされた旨主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑵オ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵ウ)によれば、・・の病態について、分娩後、弛緩性出血のため約640㎖の出血があり、5%ブドウ糖液を1000㎖点滴注射したことが認められる。 しかしながら、上記の原告の病態からは、本件出産前後を通じ、・・にDICを発症するおそれのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大 量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していたなどの事情があったことはうかがわれない。また、上記の輸液が施された ICを発症するおそれのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大 量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していたなどの事情があったことはうかがわれない。また、上記の輸液が施されたという以外、・・に対しどのような処置が行われたかを示す資料や供述証拠はない。 イこれに対し、・・は、本件病院に問い合わせた際に、本件母子手帳に出血多量の記載があることから、フィブリノゲン製剤を使った可能性が あると言われたと述べる(甲C05603(7頁))。 しかし、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善 ・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)によ り止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、弛緩性出血が生じた場合の対処法としても、止血のため子宮収縮促進法として、一般的な止血法及び子宮収縮剤の投与法のほか、いかなる止血法も無効な場合にはやむを得ず子宮摘出術を行うこととされていること(乙統97(252頁))、本件は子宮摘出 に至っていないことなどからして、弛緩性出血による多量の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 したがって、本件病院への問合せの際、・・の上記陳述どおりの発言があったとしても、多量出血という事実から特定フィブリノゲン製剤の投与 可能性であるというにすぎないから、上記説示のとおり理由がなく、上記発言から直ちに特定フィブリ ・・の上記陳述どおりの発言があったとしても、多量出血という事実から特定フィブリノゲン製剤の投与 可能性であるというにすぎないから、上記説示のとおり理由がなく、上記発言から直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件病院の医師その他医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られて おらず、本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産の際以外には・・がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかしながら。C型肝炎ウイルスの感染源は、同 ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、・・は昭和30年頃(25歳)あるいは昭和39年に 輸血を受けたことがあると述べているところ(甲C05608)、輸血 後肝炎発症率について、昭和30年当時は50.9%、昭和39年当時は31.1%との報告があること(乙統230(166頁))などからすれば、・・がC型肝炎ウイルスに罹患していた事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個16(原告番号60番) 以下、本別紙中では、原告番号60番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、昭和56年1月22日、 ・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、児頭骨盤不均衡(CPD)による帝王切開術(以下「本件出産」という。)の際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したとして、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和56年1月22日午後2時42分頃、本件病院において、第三子を出産した(本件出産)。本件出産は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)が担当した。(甲C06002) イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)15頁には、「出生の状態」として、「分娩の経過」欄には、「頭位」に〇印が付けられ、「特記事項」に「C.P.D.(児頭骨盤不均衡)にて帝王切開アプガー9点」と記載され、「出血量」欄には、「多量」に〇印が付けられ、その横に「1245㎖」と記載されている(甲C06002)。 けられ、「特記事項」に「C.P.D.(児頭骨盤不均衡)にて帝王切開アプガー9点」と記載され、「出血量」欄には、「多量」に〇印が付けられ、その横に「1245㎖」と記載されている(甲C06002)。 ウ本件出産に関する手術記事(以下「本件手術記事」という。)には、開始午後2時37分、終了3時42分、術者・・医師、助手・・・医師、CPD(児頭骨盤不均衡)、術式CaesareanSection(帝王切開)、TubalLigation(卵管結紮)、全身麻酔、2時42分、3980(ℊ)、女、アプガー9(点)、「出血量 1115㏄」、「吸引 800㏄」の記載ほ か、癒着部位や結紮部位を記したスケッチなどがある(甲C06003)。 エ本件出産に関し、当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳及び本件手術記事が現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。手術記事には、特定フィブリノゲン製剤の投与に関する記載、記述はない。(甲C06003、弁論の全趣旨)⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 原告は、C型肝炎ウイルスに感染し、その後慢性C型肝炎に罹患し、これが進行して肝硬変に罹患した(争いがない)。 ⑶ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入本件病院には、少なくとも昭和55年から昭和63年まで、特定フィブリノゲン製剤が納入されたことが確認されており、昭和55年から昭和56年 1月までの納入本数は56本であった(甲C06004)。 ⑷ ・・医師の意見書・・医師は、平成20年5月30日頃、原告あての意見書を作成した(以下「本件意見書」という。甲C06005)。 本件意見書には、「送られてきた手術記録を見る限り、Rh(-)でもあ り、出血多量である は、平成20年5月30日頃、原告あての意見書を作成した(以下「本件意見書」という。甲C06005)。 本件意見書には、「送られてきた手術記録を見る限り、Rh(-)でもあ り、出血多量である。当時は、フィブリノゲンを使った可能性がある。しかし、カルテがないので、使用したかを証明しようがない。」とある。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告は、本件出産(帝王切開術)の際、止血のために特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた。 このことは、原告が、①本件出産時に多量に出血し、収縮期血圧が70mmHg を切るほど低下していたこと、②・・医師が特定フィブリノゲン製剤使用の可能性について本件意見書を発行し、原告がRh(-)という希少な 血液型であるため、輸血用血液の準備が難しく、血圧が下がった場合には 輸血用血液を取り寄せるまでの間に投与された可能性が高いこと、③本件病院には、本件出産当時、特定フィブリノゲン製剤が納入されていたこと、④本件出産以外の出産の際は、出血量がそれほど多くなく、輸血も受けていないなど本件出産以外に、C型肝炎ウイルス感染の原因が存在しないことなどの事実から裏付けられる。 ⑵ 本件出産時に大量出血があったと認められること医学文献によれば、大量出血又は弛緩出血の基準として、500㎖を超える出血が挙げられ、原告番号25番に関する証人・・・・(産婦人科専門医。 以下「・・医師」という。)の証言によれば、フィブリノゲン製剤を使う基準となる出血量は600㏄ないし800㏄であり、それ以下の量であっても 状況によっては使用する可能性があったとされている。 こうした医学的知見によれば、原 れば、フィブリノゲン製剤を使う基準となる出血量は600㏄ないし800㏄であり、それ以下の量であっても 状況によっては使用する可能性があったとされている。 こうした医学的知見によれば、原告の本件出産時の出血量について、本件母子手帳に「多量(1245㎖)」、本件手術記事に「出血量1115㏄吸引800㏄」と記述されていることは、フィブリノゲン製剤投与若しくは輸血の適応に優に当てはまるものである。 ・・医師も、本件意見書において、「当時は、フィブリノゲンを使った可能性がある。」と明記しており、出血量が2000㏄でも輸血する例がほとんどないと述べたことを額面通りに受け入れることはできない。 本件手術記事の上記記載があれば、ガーゼ出血量1115㏄、吸引量800㏄と考えるのが医療関係者の常識的解釈であり、その合計から羊水分 として650㎖を除いた量が本件母子手帳の1245㎖の記載であるとすれば矛盾はない。同数値からさらに羊水分を差し引くことは誤りである。 ⑶ Hb値の推移や原告の血液型からは大量出血が否定されないこと本件出産後の原告のHb(ヘモグロビン)値は、4日後に0.98ℊ/㎗であり、6日後11.3ℊ/㎗であるとされている。・・医師は0.98が 9.8の誤りであると述べるが、推測に過ぎず、その根拠はないし、そもそ も本件母子手帳におけるHb値の記載が杜撰であることを示すものというべきであるから、これに依拠して原告の病態を立論することはできない。 仮に4日後に9.8ℊ/㎗であるとしても、出血量が500ℊを超えていることは明らかであるし、4日後から6日後にかけて1.5ℊ/㎗回復していることから2日後は9.8から1.5を減じた8.3ℊ/㎗であった可能 性も指摘できるのであって、 出血量が500ℊを超えていることは明らかであるし、4日後から6日後にかけて1.5ℊ/㎗回復していることから2日後は9.8から1.5を減じた8.3ℊ/㎗であった可能 性も指摘できるのであって、そうだとすれば出血量は1ℓを超える。 こうした出血量について、一般的な帝王切開による分娩の場合の出血量が約1ℓとされていることと比較して正常な範囲内とみることは、妊産婦の出産時の状況や個体差を全く無視した試算である。 また、本件においては、RH(-)の血液が輸血のために手配され、翌 朝に病院に届けられたという経過があり、大量出血が存在しなかったとすれば矛盾する行動であるといえる。 ⑷ 昭和59年10月の肝機能検査値について原告の昭和59年10月の肝機能値の上昇は、慢性肝炎の急性増悪の時に多く見られるものであり、同月に急性肝炎が新たに発症したものではない。 原告は、本件出産後、長女、二女出産時とは明らかに異なる倦怠感を感じ、近医で、アリナミン注射を3、4回受け、アリナミン剤を処方してもらったことがある。昭和59年10月には、母親の通院で訪れた・・病院において、医師から、顕著に黄疸が出ていて、放置していたら肝性昏睡になるなどと言われて、翌日入院になったものである。 (被告の主張)⑴ 本件出産時に大量出血があったとは認められないことア特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各 証拠を見ても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しな い。 イ本件手術記事、本件母子手帳及び・・医師の証言に照らすと、本件出産時の出血量は ところ、本件各 証拠を見ても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しな い。 イ本件手術記事、本件母子手帳及び・・医師の証言に照らすと、本件出産時の出血量は、1115㏄あるいは1245㎖から羊水の量(100ないし500㎖)を差し引いた程度の量であったと推認するのが合理的である。 すなわち、原告の本件出産時におけるHb値が11.9ℊ/㎗であり、本 件出産4日後のHb値が9.8ℊ/㎗(本件母子手帳の「0.98」の記載は明白な誤記である。)、本件出産6日後のHb値が11.3ℊ/㎗であることからすれば、原告の出血量はせいぜい500ℊ程度であったとみることもできる。 したがって、原告の出血量は、多く見積もっても、本件出産(帝王切開 術)の際の出血量が1115㎖であり、その後の出血を含めた一連の分娩経過における総出血量が1245㎖であったと認められる。 ウ帝王切開手術に1時間以上を要し、本件出産時に実施することが不可欠とはいえない卵管結紮術が行われたことからすれば、本件出産時、原告が大量出血を来すような重篤な状態に陥っていたとは認められない。 エ本件出産に際し、輸血用血液製剤が手配されていたことを裏付ける客観証拠はなく、これに沿う原告の供述は、その供述に至る経緯が不自然であるから、これをもとに上記手配事実を認定することはできない。 ⑵ 原告の供述を踏まえても大量出血の事実が認められないこと原告について、帝王切開手術後も子宮からの出血が止まらなかったことを うかがわせるエピソードがなく、原告が病室に移された後も命に関わると言われる程度の出血が継続していたと認めることはできない。 仮に、本件出産後、原告の収縮期血圧が70まで低下したとしても、帝王切開術終了後、血圧が落ち着 く、原告が病室に移された後も命に関わると言われる程度の出血が継続していたと認めることはできない。 仮に、本件出産後、原告の収縮期血圧が70まで低下したとしても、帝王切開術終了後、血圧が落ち着き、出血がないことを確認した後手術室から病室に移すという経過であるから、血圧低下が出血によるものであった とすると、帝王切開時における出血に加えて2500㎖を超える出血があ ったことになるが、本件出産前後のHb値の経過などからして、到底合理的とはいえない。かえって、原告は、本件出産後、出血のほか脱水による循環血液量の減少、麻酔薬効果の遷延や復温による末梢血管抵抗の減少、不整脈、低酸素血症、代謝性アシドーシス、電解質異常、全身麻酔後の脱水状態やケトアシドーシス等により、手術後の低血圧を生じやすい状況で あったところ、全身麻酔からの覚醒の際の自律神経のアンバランスによって迷走神経反射が起こり、低血圧になったものと考えるのが合理的である。 ⑶ ・・医師の投与方針からは原告に対する投与事実が認められないこと・・医師は、昭和56年当時のフィブリノゲン製剤の投与方針について、出血量が2000㎖以上のDICの場合に投与していたと証言しており、こ れが当時の本件病院における投与方針と同じであったとも証言する。 フィブリノゲン製剤の有効成分はフィブリノゲンであり、フィブリノゲン製剤が承認を受けた効能、効果は「低フィブリノゲン血症」の治療である。現に、特定フィブリノゲン製剤は、臨床における実践から、産科大量出血で、フィブリノゲン値がおおむね100㎎/㎗を下回る低フィブリノ ゲン血症に用いることが有効かつ有用であるとの評価がされ、かかる低フィブリノゲン血症を来す要因であるDICに対する治療として、長らくその使用が推 値がおおむね100㎎/㎗を下回る低フィブリノ ゲン血症に用いることが有効かつ有用であるとの評価がされ、かかる低フィブリノゲン血症を来す要因であるDICに対する治療として、長らくその使用が推奨されてきたのである。 こうした医学的知見に照らすと、・・医師の上記投与方針は、医学的に見て極めて合理的である。 しかるに、本件出産の際、原告に2000㎖を超える大量出血があったとは認められず、本件出産は正常の範囲内であったと認められるのであり、原告が本件出産時にDICに陥っていたことをうかがわせる証拠はない。 したがって、・・医師のフィブリノゲン製剤の投与方針に照らせば、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 ⑷ 原告の肝炎発症の経過から本件出産が感染原因とは認められないこと 原告は、昭和56年1月22日の本件出産の後、昭和59年10月頃、・・病院に緊急入院し、その際、肝機能検査値(GOT、GPT)が1200を超えていたというのであるから、非A非B肝炎の急性肝炎ないし劇症肝炎を発症していたことは明らかであり、その15ないし150日前に何らかの感染原因があったと考えるのが合理的である。 したがって、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が推認されるものではない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件出産の際のカルテ、投薬指示書といった、原告に対してフィブリノゲン製剤が投与されたことを証明する客観的な証拠はなく、本件で提出さ れた他の証拠、証人、原告本人の尋問結果を踏まえても、原告にフィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 ⑵ ・・医師は、本件出産のことも原告のことも一切記憶がなく、したがってフ さ れた他の証拠、証人、原告本人の尋問結果を踏まえても、原告にフィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 ⑵ ・・医師は、本件出産のことも原告のことも一切記憶がなく、したがってフィブリノゲン製剤を投与したか否かについての具体的な記憶もない。 ⑶ 現実の原告の出血量は、500ないし600㏄と考えられるが、少なく とも本件母子手帳に記載の1245㏄以上の出血があったとはいえず、・・医師の投与方針からは、フィブリノゲン製剤を投与すべき状況には全くなかったことになる。 また、原告の血圧が70に下がってショック状態であったと主張するが、確認可能な客観的証拠はなく、原告が看護師からそう聞いたというにとどま る上、ショック状態に陥っていれば、原告の意識もないはずで、原告の記憶を再現できる状況と整合しない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告は、本件出産の際の大量出血に対する止血のため、本件病院において、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたと主張するが、本件出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる原告の具体 ノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件手術記事、本件母子手帳及び・・医師の証言等によれば、原告の病 態について、帝王切開術の際の出血量が1115㏄であり、その後の出血を含めた一連の分娩経過における総出血量が1245㎖であったと認められる。 この点、・・・医師の意見書(乙A19)によれば、①本件出産4日後のHb値として、本件母子手帳に0.98ℊ/㎗と記載があるのは、9. 8ℊ/㎗の誤記であると認められること、②原告の本件出産時におけるHb値が11.9ℊ/㎗であり、6日後のHb値が11.3ℊ/㎗であるから、術後6日程度の短期間で術前レベルに戻っていると認められること、③出血量を2000㎖又は1000㎖と仮定した場合のHb値の推移・変化を試算すると、上記②の推移は1000㎖程度の出血量と仮定した場合に近 く、2000㎖程度の出血量と仮定した場合では説明し難いことなどの諸 事情が認められるほか、④特定フィブリノゲン製剤を投与しても貧血の改善やHb値の回復に影響を与えないこと(・・証人41頁)から、上記①ないし③のHb値の分析結果について、上記出血量の認定と整合性があるというべきである。 また、・・医師は、本件病院の・・医師が本件手術記事から「出血量は 1115㏄と吸引800㏄であった。」と記載したこと(甲C06021の2)について、その可能性があるとしつつ、羊水を考慮すべきこと た、・・医師は、本件病院の・・医師が本件手術記事から「出血量は 1115㏄と吸引800㏄であった。」と記載したこと(甲C06021の2)について、その可能性があるとしつつ、羊水を考慮すべきこと、本件母子手帳の出血量欄の記載が1245㎖とあること、その数値には正確性があること、Hb値からはせいぜい500ℊ単位の出血とみられることなどを証言し(・・証人11、12、14、34、35、41頁)、原告 に本件出産時約2000㏄の出血があったことを認めていないもので、やはり上記出血量の認定と符合する。 そうすると、本件手術記事にある「吸引 800㏄」の記載は、「吸引」が帝王切開の際に吸引器により腹腔内の血液を吸引することを意味することから(乙A20)、上記数量に羊水量が含まれていることも考えられる が、少なくとも、併記の「出血量 1115㏄」に含まれるものとみるべきであり、両者を合算して出血量を算定することは相当ではない。 イまた、原告の供述(原告本人14頁)によれば、本件出産に際し、原告に対する輸血は行われていない。 この点、・・医師は、帝王切開術時の輸血方針について、帝王切開術の 際に輸血することはほとんどない、1500から2000㏄までは許容範囲であって、前置胎盤のように出血例が多い事例であっても、同医師自身、ほとんど輸血することはなかったと述べた上、本件出産について、卵管結紮術が行われていることからごく普通の手術であると述べており(・・証人23、38頁)、本件出産時に輸血しなかった理由がそもそも輸血の必 要がないことにあったことがうかがわれる。 これに対し、原告は、輸血がされなかった理由として、血液型がRh(-)であるため、輸血が必要であったのに翌朝まで届かなかったとい 要がないことにあったことがうかがわれる。 これに対し、原告は、輸血がされなかった理由として、血液型がRh(-)であるため、輸血が必要であったのに翌朝まで届かなかったという経過があると供述するが(原告本人14頁)、この経過を裏付ける資料が存在しない点をおいても、・・医師の上記輸血方針に照らすと、同医師において、ごく普通の手術である本件出産の際、本件出産後、輸血を検討す るという経過自体が考えにくい。 ウそうすると、本件出産の際の原告の病態からは、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められないもので、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することができない。 ⑶ ・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針ア・・医師の証言によれば、・・医師は、昭和56年当時の特定フィブリノゲン製剤投与の方針に関連し、①基本的にはDICの場合に投与すること(・・証人18頁)、②出血量が1500㏄から2000㏄、2000㏄を超えると血液が止まりにくくなるから、そのような場合には絶対に使 用していたこと(同18頁)、③出血量は最低2000㏄以上、そうした場合血液がサラサラで止まらないから、DICと判断して投与していたこと(同18頁)、④血圧が下がって70を切っていれば、フィブリノゲン製剤を投与していた可能性があること(同4、20頁)、⑤脈も重要な要素であり、脈が120から140であれば、ショック状態であるから、使 用していた可能性があること(同21、22頁)、⑥本件病院の他の産婦人科医師も、同じ投与方針を有していたこと(同31頁)、⑦特定フィブリノゲン製剤はDICのときに使ったという覚えしかないこと(同32頁)などの事実を述べているところ 、22頁)、⑥本件病院の他の産婦人科医師も、同じ投与方針を有していたこと(同31頁)、⑦特定フィブリノゲン製剤はDICのときに使ったという覚えしかないこと(同32頁)などの事実を述べているところ、DICの場合に上記製剤を投与することは当時の医学的知見(乙統119(548頁)等)に照らしても十分合理 性があり、DICと判断する上での指標として、出血量、出血の状態や血 圧、脈拍等のバイタルサインを用い、ショック状態にあるかどうかを推定する手法も、医学的知見(乙統134(432、435頁)ほか)に照らし、合理性がある。 これらを総合すると、・・医師ないし本件病院においては、昭和56年当時、DIC認定ができる場合に特定フィブリノゲン製剤を投与するとの 基本方針を有し、DIC認定の具体的な投与基準として、出血量や出血状態を基準にすると、2000㏄を超え、サラサラした状態になった場合、バイタルサインを基準にすると、血圧が70を切っていた場合、脈拍が120以上の頻脈である場合などを当てはめるものと認められる。 イこれに対し、原告は、・・医師の証言に基づき、フィブリノゲン製剤を 使う基準となる出血量が600㏄ないし800㏄であり、それ以下の量であっても状況によっては使用する可能性があるとして、これが本件出産時における特定フィブリノゲン製剤使用の有無の認定の基準となると主張するが、特定フィブリノゲン製剤使用の有無の事実認定に当たり、担当医の証言や当該病院の説明などから、担当医ないし当該病院における投与方針 が明らかになる場合には当然これによるべきもので、他の医師が述べる投与方針を当てはめる余地はないものである。 したがって、原告の上記主張は理由がない。 ⑷ 出血量以外のバイタ が明らかになる場合には当然これによるべきもので、他の医師が述べる投与方針を当てはめる余地はないものである。 したがって、原告の上記主張は理由がない。 ⑷ 出血量以外のバイタルサインについてア原告は、本件出産後まもなく1本目の止血剤の点滴を受けるときに、血 圧が70を切ったと主張し、原告の供述にはこれに沿う部分がある(原告本人2、3頁)が、本件出産時の原告の出血量は1245㎖程度であり(上記⑵)、原告の供述(同22頁)によっても、本件出産(帝王切開手術)後に大量出血したという状況が認められないことからすると、出血を原因として、収縮期血圧が70を下回るまで低下していたと認めることは 困難であり、この点は、当の・・医師が、ふつうは最低1500、200 0の出血がないと血圧は下がらないので、本当に血圧低下があったか疑問がある、Hb値の推移からみて本件出産後の血圧低下が考えられないなどと繰り返し述べるとおりである(・・証人9、17頁)。 そうすると、原告が、看護師から、本件出産後に血圧70を切っていたと聞かされたという供述について、直ちに採用することはできず、同供述 に基づき原告が本件出産後収縮期血圧が70を下回る低血圧の状態にあったと認めることはできない。 イ本件出産後の原告の脈拍に関するデータは、現存していない。 ⑸ 本件意見書について・・医師の証言(・・証人1、3、4、16頁)によれば、本件意見書の 作成経過について、・・医師がこれを自ら作成したこと、・・医師は、原告及び本件出産に関する記憶を有しない状況において、原告及びその夫から、本件手術記事を提供されたほかは、原告がRh(-)であること、血圧が70を下回るほど低下したこと、夜に状態が悪くなったことな 原告及び本件出産に関する記憶を有しない状況において、原告及びその夫から、本件手術記事を提供されたほかは、原告がRh(-)であること、血圧が70を下回るほど低下したこと、夜に状態が悪くなったことなどの原告らの認識を聞かされた一方、本件母子手帳に記載のあるHb値の推移については知 らされないまま、本件出産時に特定フィブリノゲン製剤を投与した事実に関する意見を求められたことが認められる。 しかしながら、上記⑵ないし⑷のとおり、・・医師が、原告の出血量について、本件出産前後のHb値のデータと併せてみれば、出血多量であるとの認識に至らなかったことがうかがわれるほか、本件出産後の原告の収縮期血 圧が70を下回るほど低下したという事実など本件意見書作成の際に前提とした情報のうちに、正確性が担保されないものが含まれていること、そして、・・医師自身、血圧低下の事実を本件意見書作成の最大の理由と位置付けていること(・・証人4頁)などからすれば、本件意見書における・・医師の意見を直ちに採用することはできない。 この点、・・医師は、本件出産に関し、Rh(-)だから使った可能性が あるとも証言するが(・・証人20頁)、その際も、Rh(-)は輸血の取寄せに時間がかかるから、血圧低下の場面があれば、つなぎで使用することがあるとしているとおり(同20、28頁)、Rh(-)の情報と血圧低下という不正確な情報を結び付けていること、Rh式の血液不適合型妊娠であることは血液凝固因子と関係がないこと(同23頁)などが認められるもの で、Rh(-)という情報から直ちにフィブリノゲン製剤の投与を推認させることにはならない。 ⑹ 他原因の存否原告は、本件出産後の大量出血以外には事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイ h(-)という情報から直ちにフィブリノゲン製剤の投与を推認させることにはならない。 ⑹ 他原因の存否原告は、本件出産後の大量出血以外には事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるから(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン 製剤が投与されたと推認することはできない。 一方、被告は、昭和59年10月の肝機能値の上昇が、非A非B肝炎の急性肝炎ないし劇症肝炎を発症していたことによるものと主張するが、昭和56年1月の本件出産後、原告が肝炎を思わせる自覚症状がありながらも受診していなかったという経過(原告本人34、35頁)からし て、被告の上記主張は採用できない。 ⑺ よって、原告の具体的な傷病の状態及び・・医師ないし本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということは できない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個17(原告番号64番) 以下、本別紙中では、原告番号64番を「原告」 告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個17(原告番号64番) 以下、本別紙中では、原告番号64番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和57年4月2日、・・・ ・病院(現・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。以下「本件病院」という。)において第2子を自然分娩により出産(以下「本件出産」という。)した際、大量に出血し、止血処置の一環として特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000 万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産(甲C06402)ア原告は、昭和57年4月2日午前1時1分、本件病院において、第2子を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C06402。以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過(母児の状態)」欄の「頭位」に〇が付けられ、「特記事項」には「部分前置胎盤」「血小板 減少症(血小板2単位ユ血)」「弛緩出血」とあり、「出血量」欄の「多量」に〇印が付けられ、その横には「500㎖」と記載されている。 また、本件母子手帳6頁「妊婦の記録」の「いままでにかかったおもな病気と受けた手術」の欄には、「肺炎、盲腸、胃かいよう、右座骨骨折、たん石、血症板異常(ママ)、メニエル病」と記載がある。 ⑵ア原告は、本件出産から2週間後の昭和57年4月16日頃から尿が濃い た手術」の欄には、「肺炎、盲腸、胃かいよう、右座骨骨折、たん石、血症板異常(ママ)、メニエル病」と記載がある。 ⑵ア原告は、本件出産から2週間後の昭和57年4月16日頃から尿が濃い 黄色となり、その約1か月後の5月26日には、黄疸などの症状により、同年7月5日まで入院した(甲C06402、03(3頁))。 イ原告は、平成22年11月17日、同月10日の採血の結果を受けて、C型肝炎と診断された(甲C06401)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本 件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ ①我が国における昭和41年から同63年までの特定フィブリノゲン製剤の使用量が同期間における低フィブリノゲン血症の推定症例数を大きく上回ること、②当時の医学文献や臨床試験成績資料に、低フィブリノゲン血症の基準値を下回る患者に使用した症例や血中フィブリノゲン値を測定せずに投与された症例が紹介されていること、③実際に適応外使用をしていたとする 別件訴訟における医師らの証言があることなどからすれば、特定フィブリノゲン製剤投与事実の認定に当たっては、同製剤の本来の適応であるかではなく、投与が問題とされる症例において、止血処置として同製剤の投与が有用だと認められる客観的状況があるかが重視されなければならない。 そして、本件出産の際、原告に部分前置胎盤の基礎疾患が存在し、少なく とも500㎖に及ぶ大量出血があったこと、原告が血小板減少症の疾患を有し、血液の凝固機能に異常があった なければならない。 そして、本件出産の際、原告に部分前置胎盤の基礎疾患が存在し、少なく とも500㎖に及ぶ大量出血があったこと、原告が血小板減少症の疾患を有し、血液の凝固機能に異常があったことなどからすると、原告の病態に対し、止血処置として特定フィブリノゲン製剤の投与が有用であったと認められる。 したがって、本件出産の際、原告に対し、適応外投与として、特定フィブリノゲン製剤が投与された蓋然性が高い。 ⑵ 原告は、本件出産から約2週間後の昭和57年4月16日頃には不調を 訴え、肝炎を発症していたと認められるところ、本件出産時の特定フィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎ウイルスへの感染原因が考えられない。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対し、止血処置として、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認められる。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性が認められる必要がある。 本件出産当時、原告について500㎖を超える出血があったと認めるに足りる証拠はないこと、大量出血等により母体に現実に危険が生じるような状 況までは生じなかったと考えられること、血小板減少症の具体的な病態が不明であることなどからすると、原告が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったと認めることはできない。 ⑵ ・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によってもその投与方針は不明であるから、担当医師の投与方針に照らして、特定 フィブリノゲン製剤の投与を認めることもできない。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対し、 なく、原告の供述によってもその投与方針は不明であるから、担当医師の投与方針に照らして、特定 フィブリノゲン製剤の投与を認めることもできない。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) 原告は、昭和57年10月頃、非A非B肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、慢性C型肝炎に罹患している。 (被告及び補助参加人の主張) 6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できる検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際の止血処置として、原告に対し特定フィブリノゲン 製剤が投与された事実が認められると主張するが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 特定フィブリノゲン 製剤が投与された事実が認められると主張するが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実 から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告の供述(原告本人3ないし7頁)によれば、原告の病態について、①本件出産前に部分前置胎盤と 診断されていたこと、②出産前に・・医師から帝王切開による出産を勧め られていたものの、原告の希望により普通分娩の方法がとられたこと、③本件出産に係る妊娠前から原告に血小板異常の既往歴があったこと、④児娩出後に弛緩出血があったことなどが認められ、前置胎盤及び弛緩出血は、DICの誘因となる産科疾患に当たる(乙統97(255頁))。 しかしながら、本件出産時の出血量が約500㎖にとどまること、分娩 の前後を通じて原告には意識があったこと(原告本人14頁)、部分前置胎盤の異常があっても、経膣分娩を行い、帝王切開術を避けることができたこと、血小板異常に対しては、血小板輸血の処置が施されているものの、それ以外に輸血がされていないこと(同15頁)などからすると、本件出産当時、原告の病態が、低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは 予防の必要性がある状態であったと認めることはできない。 イこれに対し、原告は、特定フィブリノゲン製剤の投与は、低フィブリノゲン血症の治療に限ったものではなく、適応外投与であっても、止血処 予防の必要性がある状態であったと認めることはできない。 イこれに対し、原告は、特定フィブリノゲン製剤の投与は、低フィブリノゲン血症の治療に限ったものではなく、適応外投与であっても、止血処置として特定フィブリノゲン製剤の投与が有用だと認められる症例では投与されていたはずであると主張する。 しかしながら、原告が援用する薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(33頁))図表2-7の注釈は、「具体的な記載例」にある疾患を発症しているが、後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと明示したものではない(本判決本文第4の2⑷ウ)。また、仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低 フィブリノゲン血症の診断を待たずに投与された症例が少なくなかったとしても、そうした症例が存在するからと言って、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性がない症例について、担当医師が当該症例をどのように判断したか、あるいは、担当医師の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対象となるかといった要素の検討 なしに、適応外投与があった事実を推認できるという原告の上記主張は、 全く採用できない。 そもそも、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改 善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたのであるから(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、大量出血があった 善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたのであるから(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、大量出血があったという事実だけから、上記各方法と異なる止血方法が行われたことを推認させる根拠はない。 実際、原告は、部分前置胎盤による大量出血が懸念されるとして・・医師から帝王切開術を勧められたのに対し、普通分娩を希望すると、同医師から「コルク栓みたいに詰める方法」を提案され、本件出産の際にこれが実行されたと供述しており(原告本人12頁)、子宮強圧タンポン法(乙統94(278、279頁)によって止血されたことがうかがわれるもの で、これらの観点からも、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件病院の医師その他医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていないから、本件出産当時における本件病院又は・・医師の特定フィブリ ノゲン製剤の投与方針は明らかではなく、担当医の投与方針に照らして特定フィブリノゲン製剤投与の事実を合理的に推認することはできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産から約2週間後の昭和57年4月16日頃には肝炎を発症していたと認められるところ、本件出産時の特定フィブリノゲン製剤の投 与以外にC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるとされていること( イルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるとされていること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告に対しては、本件出産の際、血小板製剤の投与(血小板輸血)がされているこ となども考慮すると、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個18(原告番号65番) 以下、本別紙中では、原告番号65番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、昭和43年2月12日、 ・・・・病院(以下「本件病院」という。)において第2子を自然分娩で出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、その止血処置(以下「本件処置」という。)として特定フィブリノゲン製剤を投与され、そのためC型肝炎ウイルスに感染して慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案 である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和43年2月12日 慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案 である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和43年2月12日、本件病院において、第2子を出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・医師(以下「・・医師」とい う。)である。(甲C06503)イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」には、「分娩経過」欄のうちの「特記事項」として「会陰第1度裂傷」、「その他」の箇所に「晩期妊娠中毒症、羊水混濁、臍帯巻絡頚部1回、弛緩出血」との記載が、「出産時の産科手術及び処置」欄 には記載がなく、「輸血・輸液」欄に「AB型保存血600㎖」、「マクロデックスD500㎖」との記載が、「出血量」欄には「1850㎖」との記載があり、「多量」に〇印が付けられている(甲C06503)。 ⑵ 原告は、平成3年にはC型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受け、平成22年10月には、C型慢性肝炎の診断を受け、平成26年5月には、 肝細胞癌及び肝硬変の診断を受けた(甲C06501、05の2)。 ⑶ 本件出産、本件処置に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。(甲C06505の2、弁論の全趣旨)。 また、・・医師その他の本件病院の医療関係者から、本件出産や本件処置に関する陳述は得られていない(弁論の全趣旨)。 ⑷ 本件出産以外の出産ア原告は、昭和42年2月2日、・・・・・病院において、第1子を出産した(以下「第1子出産」という。甲C06502)。 第1子出産に関する母子健康手帳(以下「 ⑷ 本件出産以外の出産ア原告は、昭和42年2月2日、・・・・・病院において、第1子を出産した(以下「第1子出産」という。甲C06502)。 第1子出産に関する母子健康手帳(以下「第1子母子手帳」という。)10頁「出産の状態」中の「分娩経過」欄の「出産時の産科手術及び処置」 欄には「骨盤位牽出」に○印が付けられ、「輸血・輸液」欄に「パンアミンD2500cc」との記載が、「出血量」欄には「多量」に○印が付けられている(甲C06502)。 イ原告は、昭和45年8月14日、本件病院において、第3子を出産した(以下「第3子出産」という。)。第3子出産の担当医師は、・・医師で あった。(甲C06504)第3子出産に関する母子健康手帳10頁の「出産の状態」中の「分娩経過」欄の「特記事項」欄の「その他」の箇所に「会陰裂傷癒着胎盤」との記載が、「出産時の産科手術及び処置」欄には「用手剥離」に○印が付けられ、「その他」の箇所に「会陰縫合」との記載が、「輸血・輸液」欄 の輸液に○印が付けられ、「5%フルクトン500㎖」との記載が、「出血量」欄には「400㎖」との記載があり、「中等量」に○印が付けられている(甲C06504)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張) ⑴ 原告は、本件出産の後、弛緩出血を来し、1850㎖もの多量出血があったもので、その止血のために本件処置として、特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が極めて高い。 薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(33頁))において、「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」 という図表の「産科疾患 与された可能性が極めて高い。 薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(33頁))において、「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」 という図表の「産科疾患」欄に「弛緩性子宮出血」「分娩後弛緩出血」が挙げられているとおり、弛緩出血の症例において、止血のために特定フィブリノゲン製剤が静注された実例が実際にある。 これに、①本件出産の際、原告は、弛緩出血を来し、1850㎖もの多量出血があり、500㎖の輸血及び500㎖の輸液をしたものであること、② 原告は、児の娩出後も数時間分娩室ないし処置室に残され、帰室時に左手に点滴の針が刺さっていたことなどを総合考慮すると、原告について、本件処置の際、弛緩出血による多量の出血の止血のために特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性が極めて高い。 ⑵ 第1子出産は、第1子母子手帳に出血多量とあるが、出血量や出血原因 についての記載がなく、原告も原告の夫も、輸血をした記憶がないこと、第3子出産の際は、出血量が中等量(400㎖)であって、輸血をした記憶がないことなどから、いずれも特定フィブリノゲン製剤を使用するほどの出血があったとは考えられない。そうすると、本件出産以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件処置当時、原告について同製剤の適応症例である低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠をみても、原告が低フィブリノゲン血症と診断され た事情は存在しない。原告については、1850㎖の出血をした事実が認 められ、産科DICスコアが1点加算される ところ、本件各証拠をみても、原告が低フィブリノゲン血症と診断され た事情は存在しない。原告については、1850㎖の出血をした事実が認 められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件処置時の重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、身体症状等は不明であるなど、産科DICスコアの点数を加算すべき事情は認められない。 また、本件処置時、原告は輸血を受けたものの、原告の供述を前提とし ても、いかなる止血処置を執られたかの具体的内容は不明である。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件処置時における・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン 製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成3年にはC型肝炎ウイルス感染が判明した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 検査結果が提出されていない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張) 原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹 与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張) 原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。新犬山分類を満たすことが確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の後、弛緩出血を来し、1850㎖もの多量出血があったもので、その止血のために本件処置として、特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が極めて高いと主張するが、本件処置に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の 客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴イ)及び原告の供述によれば、原告の病態について、自然分娩の際に会陰第1度裂傷し、娩出後には弛緩出血し、出血量が1850㎖に及んだという事実が認められ、1000㎖以上の出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる(乙統200(120頁))。 イしかしながら、本件各証拠によっても、本件出産前後を通じ、原告の全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとして、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法 として いたなどとして、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法 としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般 的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、弛緩性出血が生じた場合の対処法としても、 止血のため子宮収縮促進法として、一般的な止血法及び子宮収縮剤の投与法のほか、いかなる止血法も無効な場合にはやむを得ず子宮摘出術を行うこととされていること(乙統97(252頁))、本件は子宮摘出に至っていないことなどからして、弛緩性出血による大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認さ れるとまではいえない。 ウ原告は、厚生労働省による薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(33頁))図表2-7において、分娩後弛緩出血がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていることを強調するが、同図表の注釈が「具体的な記載例」にある疾患を発症しているが、 後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと明示したものではないから、原告らの上記主張は採用できない(本判決本文第4の2⑷ウ)。仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノゲン血症の診断を待たずに弛緩出血の患者に対して投与された症例があったとしても、そうした症例が存在するからと (本判決本文第4の2⑷ウ)。仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノゲン血症の診断を待たずに弛緩出血の患者に対して投与された症例があったとしても、そうした症例が存在するからと言って、低フィブリノゲン血 症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性がない症例について、担当医師が当該症例をどのように判断したか、あるいは、担当医師の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対象となるかといった要素の検討なしに、適応外投与があった事実を推認することはできない。 エまた、原告は、分娩室からの帰室時に左腕に点滴をされていたことを 記憶していると述べるが(原告本人3頁)、原告自身、それが輸血だっ たか薬剤だったかは思い出せないと述べ(同頁)、・・医師からも、輸血の説明があったにとどまると述べていることから(同4頁)、特定フィブリノゲン製剤の事実が推認できる事情とはいえない。 そうすると、原告の病態について、出血状況は不明であり、また、保存血輸血500㎖と輸液500㎖が施されたという以外、どのような処 置が行われたかが明らかでないことになる。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否 原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染な ヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染な ど様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告に対しては、本件出産の際に輸血が行われたこと(甲C06503)、昭和43年当時、輸血後肝炎発症率は16. 2%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを 総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の原告に対す る特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということは できない。 2 以上によれば、本件処置の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由 がないからこれを棄却することとする。 別紙個19(原告番号66番) 以下、本別紙中では、原告番号66番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、・・・・(・・・・・・・・・・生、平成22年7月29日死亡。 以下「・・」という。)が、昭和45年1月19日、・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、前置胎盤による出血に対する止血処置(以下「本件処置」という。)として特定フィブリノゲン製剤の 以下「・・」という。)が、昭和45年1月19日、・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、前置胎盤による出血に対する止血処置(以下「本件処置」という。)として特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、・・の相続人である原告が、被告に対し、特措法6 条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・の長女(第2子)である(争いがない)。 イ・・は、平成5年頃、C型肝炎との診断を受け、治療を継続していたも のの、状態が悪化し、平成22年7月29日、肝細胞癌により死亡した(甲C06609、10)。 ⑵ 第1子の出産の状況等ア・・は、第1子妊娠中の昭和45年1月19日、不正出血が認められたため本件病院を受診すると、前置胎盤との診断を受け、タクシーで本件病 院から・・・・・・・・・・・・病院(以下「・・・病院」という。)に移動した(甲C06606、弁論の全趣旨)。 イ・・は、同日、・・・病院において、帝王切開術により第1子を出産した(以下「本件出産」という。甲C06602、05、06、09)。 ウ・・・病院の入退院名簿には、・・が同日から同年2月3日まで入院 したとの記載がある(以下「本件入退院名簿」という。甲C0660 2)。 エ本件処置に関し、本件処置当時ないしその前後に作成された本件病院及び・・・病院の医療関係記録は、・・・病院の本件入退院名簿が現存するものの、そのほかにいずれの病院の診療録、レセプトその他の医療記録も現存しない。また、本件出産に関する母子健康手帳も現存しない。 (原告本人11、12頁、弁論 ・・病院の本件入退院名簿が現存するものの、そのほかにいずれの病院の診療録、レセプトその他の医療記録も現存しない。また、本件出産に関する母子健康手帳も現存しない。 (原告本人11、12頁、弁論の全趣旨)⑶ 認定書の作成(甲C06604)本件病院の・・・・医師(以下「・・医師」という。)は、平成20年2月1日付けで「認定書」と題する文書(以下「本件認定書」という。)を作成した。本件認定書には、手書きで「昭和45年1月19日・・・・ ・・にて・・・・様が出産時、前置胎盤につき止血剤としてフィブリノゲンを投与し、その後、・・・病院にて、手術・出産した事を証明します。」と記載され、住所、氏名及び作成日付が自署された上で押印がある。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ ・・は、第1子の出産予定日が近づいた昭和45年1月19日に出血が始まり、本件病院を受診したところ、前置胎盤という診断を受け、出血がひどいので止血剤として特定フィブリノゲン製剤を投与され、その後タクシーで・・・病院に移動した。・・・病院では、「命が危ない」と言われて緊急帝 王切開を受け、1000㏄の輸血が必要だと言われて輸血もした。 ⑵ 本件病院で・・を診療した・・医師は、本件認定書において、・・に対し、止血剤としてフィブリノゲン製剤を投与したことを明記しており、その信用性を疑うべき事情はない。 ⑶ ・・は、平成5年頃、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明したと ころ、・・には、本件出産以外に大量出血や手術をした経験がなく、本件処 置の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことの他にC型肝炎ウイルスの感染原因が ることが判明したと ころ、・・には、本件出産以外に大量出血や手術をした経験がなく、本件処 置の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことの他にC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられない。 ⑷ したがって、本件処置の際、・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認められる。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、・・については、輸血量(1000㎖)と同程度の出血があったと仮定しても、産科DICスコアが1点加算されるにとどまり、このほかにDICの原因と なる基礎疾患、本件処置時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状及び本件処置後の身体症状は不明であり、点数を算定すべき事情は認められない。加えて、DICの治療は集中管理を必要とするところ、特定フィブリノゲン製剤を投与した上でタクシーで患者を移動させることは考え難いから、当時の・・の病態はDICのような集中管理を要するものではなか ったと考えられる。 ⑵ 本件処置に係る診療録等は残されておらず、そのほかに・・医師において当時の記憶を喚起するに足りる資料等を参照した形跡もないことからすると、本件認定書を作成した平成20年2月1日時点で、・・医師が本件処置の具体的な内容を記憶していたとは考え難い。加えて、・・医師が当 初証明書の作成に消極的であったこと、その後何度も・・から依頼されて最終的に本件認定書を作成したことなどの作成経緯を踏まえると、本件認定書の記載は、・・医師が・・による繰り返しの訪問による依頼を断り切れず、そ 成に消極的であったこと、その後何度も・・から依頼されて最終的に本件認定書を作成したことなどの作成経緯を踏まえると、本件認定書の記載は、・・医師が・・による繰り返しの訪問による依頼を断り切れず、その申告のとおりに記載したものにすぎない可能性が高い。したがって、本件認定書の記載から・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の 事実を認定することはできない。 ⑶ 本件処置時における・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、本件認定書や原告の供述によっても、・・医師の投与方針は不明と言わざるを得ない。 ⑷ したがって、本件処置の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)・・は、平成5年頃、C型肝炎ウイルスに感染したことが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。提出された証拠からは、HCV-RNA陽性であることが確認で きない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外にC型肝炎ウ イルスに感染する原因はないから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間の因果関係の存在は明らかである。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患した事実の有無 (原告の主張)・・は、C型慢性肝炎から肝硬変さらに肝がんに進行し、平成22年7月29日に死亡した。その証拠として、診断書(甲C06610)がある。 (被告及び補助参加 (原告の主張)・・は、C型慢性肝炎から肝硬変さらに肝がんに進行し、平成22年7月29日に死亡した。その証拠として、診断書(甲C06610)がある。 (被告及び補助参加人の主張)上記診断書の診断根拠となる各種検査結果が提出されていないため、否認す る。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、・・が出血を理由に本件病院を受診したところ、前置胎盤という診断を受け、出血がひどいので止血剤として特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張し、平成20年に作成された本件認定書にはこれに沿う記 載があるが、本件処置に当たり、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑵エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の事実か ら、本件認定書の記載内容の信用性とともに、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア・・が作成した陳述メモ(甲C06606。以下「本件メモ」という。)によれば、本件処置当時の・・の病態に関し、①不正出血により本件病院 を受診したところ、前置胎盤と診断されたこと、②タクシーで本件病院から・・・病院に移動したこと、③・・・病院で帝王切開術を受けたこと、④約1000㏄の輸血が必要と説明されたことが認められる。 イしかし、本件メモを含む本件各証拠によっても、本件処置当時の具体的な出血量や出血状況は明らかでなく、上記アのうちの・・・病院で帝王切 開術を受けた事 と説明されたことが認められる。 イしかし、本件メモを含む本件各証拠によっても、本件処置当時の具体的な出血量や出血状況は明らかでなく、上記アのうちの・・・病院で帝王切 開術を受けた事実と約1000㏄の輸血が必要であると説明された事実については、帝王切開自体通常1ℓ程度出血するとされていること(乙A6)からすると、帝王切開により生じた出血に対する処置として輸血がされたという経過が第1に考えられる。 一方、不正出血から前置胎盤との診断を受けた事実については、具体的 な妊娠の経過や前置胎盤の程度を明らかにする客観資料はないものの、・ ・が止血処置を受けた後に自らタクシーで・・・病院まで移動している事実と併せ考えると、・・の全身状態が重篤なまでに悪化していたとは到底認められないし、本件処置の日である昭和45年1月19日は出産予定日が近づいていた時期で初めて出血したとされるところ(甲C06609)、医学的知見によれば、前置胎盤の中でも一部前置胎盤による妊娠時の出血 は、妊娠第9か月から10か月頃からのものが多く、その量も中等量であるとされていること(乙統97(235頁))に照らせば、前置胎盤による不正出血に対する本件処置として何らかの止血処置を受けていたとしても、大量出血していたことを前提とする処置であったとは考え難い。 そうすると、・・の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因 となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められない。 ウまた、・・は、本件メモに本件病院で止血剤を打たれたと記載しているが、産科領域における多量出血に対する一般的な止血方法のうちの薬物療法には、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在 記載しているが、産科領域における多量出血に対する一般的な止血方法のうちの薬物療法には、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙 統83(394頁)、98(28頁))からして、・・に対し止血剤が投与されたとしても、一般的な止血剤を意味することが十分に考えられる。 エしたがって、・・の病態からは、本件処置の内容として、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるということはできない。 ⑶ 本件認定書の記載内容の信用性 本件認定書には、「昭和45年1月19日・・・・・・にて・・・・様が出産時、前置胎盤につき止血剤としてフィブリノゲンを投与し、その後、・・・病院にて、手術・出産した事を証明します。」とある。 しかしながら、①本件認定書が、本件処置に関する本件病院における医療関係記録も、本件出産に関する・・・病院における医療関係記録も現存しな い状況で、医師が約40年前の治療内容を証明するという内容の文書である こと、②本件各証拠によっても、・・医師が本件認定書の根拠とした資料が見当たらないこと、③本件認定書の作成経緯として、・・が本件認定書を書いてもらう前に、「やっぱり認めたくないのか書いてもらえない」と述べていたこと(甲C06608)や・・の度重なる訪問の末に、・・医師が本件認定書を作成したこと(原告本人12、13頁)が認められることからする と、・・医師において、本件処置に関する自身の記憶を喚起し、その記憶にしたがって本件認定書を作成したものとは認められない。 したがって、本件認定書の記載内容は、その作成経緯からして、信用性を欠くもので、本件処置の際に・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投 の記憶にしたがって本件認定書を作成したものとは認められない。 したがって、本件認定書の記載内容は、その作成経緯からして、信用性を欠くもので、本件処置の際に・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を推認させるものとはいえない。 ⑷ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入医療機関であった事実すら明らかでないところ、少なくとも、本件処置当時における本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針を明らかにする客観的証拠はないから、担当医師の投与方針に照らし、本件処置時 の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することはできない。 ⑸ 他原因の存否原告は、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した平成5年頃以前に、・・には、本件出産以外に大量出血や手術をした経験がなく、本件処置 の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことの他にC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること (乙統2(15頁)、218(722頁)等)、・・に対しては、本件 出産の際、輸血が行われていること、昭和45年当時の輸血後肝炎発症率は約16.2%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 この点、原告は、・・に輸血 頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 この点、原告は、・・に輸血用血液を提供した者から、供血時の検査では何もなかったと聞いた旨供述するが(原告本人17頁)、C型肝炎ウイルスが同定された時期は昭和63年頃であるから当然であり(乙統5(942頁))、上記供述内容の関連性は認められない。 ⑹ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、 供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論 以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個20(原告番号69番) 以下、本別紙中では、原告番号69番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和61年4月26日、・ ・・・(以下「本件病院」という。)において、帝王切開術により第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和61年4月26日、本件病院において、第1子を帝王切開術により出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・医師(以 である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和61年4月26日、本件病院において、第1子を帝王切開術により出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)であった。(甲C06902) イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)15頁「出産の状態」には、「妊娠期間」欄に「妊娠満37週(第10か月)」との記載が、「分娩の経過」欄の「頭位」に○印が付けられ、「特記事項」に「帝王切開」との記載があり、「出血量」欄には「中量」に○印があるが、数値の記載はない(甲C06902)。 ウ本件母子手帳17頁「早期新生児期【生後1週間以内】の経過」には、・・・・・・・・・・・の印があり、「出生時の異常」欄に「胎盤早剥」との記載が、「その処置」として「帝王切開」の記載があるほか、メモ欄に「生後2日より下腿に浮腫を認めたため・・・・NICUへ転送。 軽度腎機能低下があり、出生時の仮死にもとづくものと考えられた。し かし、輸液管理にて間もなく軽快す。なお生後18日軽度心雑音認める。 (エコーでは正常)」との記載がある(甲C06902)。 エ本件母子手帳54頁の予備欄には、入院中の5月5日との日付とともに、原告の筆跡で、「分娩は思わぬ程異状で胎盤ハクリによる帝王切開でした。でも大きな声で彼は元気でいる事を私に教えてくれました。オギャーオギャー!!」などと記載されている(甲C06902)。 オ・・・・・・医師作成の昭和61年9月3日付け簡易保険入院証明書(診断書)(以下「本件診断書」という。)には、傷病名「急性肝炎」について、「発病から初診までの経過」欄に「昭和61年4月末胎ばんはく離にて輸血を受ける 5月中頃より黄疸 日付け簡易保険入院証明書(診断書)(以下「本件診断書」という。)には、傷病名「急性肝炎」について、「発病から初診までの経過」欄に「昭和61年4月末胎ばんはく離にて輸血を受ける 5月中頃より黄疸全身倦怠感出現 5月21日当科受診し入院となる」との記載がある(甲C06903)。 カ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の外来診療録には、初回問診の内容として、「S61年(1986)出産時に輸血を受け、その後輸血後肝炎を罹患 HCV(+)と判明した。」との記載がある(甲C06905(2枚目))。 ⑵ 原告は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 原告は、遅くとも平成28年1月20日までにC型慢性肝炎に罹患したとの診断を受けた(甲C06905)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(弁論の全趣旨)。 ⑷ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本 件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。本件出産に関し、・・医師その他本件病院の医療関係者からの陳述は得られていない。(原告本人19頁)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張) ⑴ 原告は、本件出産の際、本件病院において、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が極めて高い。 このことは、①出産予定日を20日後に控えた日に下腹部痛に見舞われて本件病院に赴き、早産を想定した処置が施され分娩室に入ると、・・医師が子宮口の開き具合を内診した瞬間に消火ホースの栓を開けたかのよう な出血があり、同医師の白衣 に控えた日に下腹部痛に見舞われて本件病院に赴き、早産を想定した処置が施され分娩室に入ると、・・医師が子宮口の開き具合を内診した瞬間に消火ホースの栓を開けたかのよう な出血があり、同医師の白衣や眼鏡、顔が血で真っ赤に染まったこと、②・・医師が「あかん。胎盤剥離か。手の空いてるもん全員呼べ。親も子も危ないぞ。」と言い、すぐに手術の準備が始まり、帝王切開によって児が仮死状態で産まれたこと、③本件母子手帳の「出血量」欄にある「中量」の記載は、分娩台の上でいきなり出血して・・医師の白衣や眼鏡を真っ赤 にしてしまった出血量が含まれておらず、実際は中量より多かったと思われること、③・・医師から、術後、「出血量の多い胎盤剥離の術後には、ショック症状を起こして稀に死に至ることもあるので注意が必要だ。輸血と点滴をしてそこを回避する。」と説明され、処置室で輸血と点滴を受けたこと、④1つはクリーム色の薬剤の入ったビニールのパック、もうひと つもビニールのパック、三つ目は透明な液体の入った握りこぶしくらいの大きさの瓶であったこと、⑤三つ目の瓶が、後にテレビの報道番組で見たフィブリノゲン-ミドリの瓶にそっくりであったこと、⑥本件出産の2日後に、膣内に詰めたガーゼが血液を吸って落ちた際、看護師から、「止血剤を使ったのでもう少し様子を見ましょう。」と言われたことといった事 実に加え、胎盤早期剥離が低フィブリノゲン血症ないしDICに至る基礎疾患であることからすれば、低フィブリノゲン血症ないしDICに至らなくとも原告のように予期せぬ突然の多量の出血があった場合には直ちに輸血とフィブリノゲン製剤を投与して止血に努めるのは当然であることから、裏付けられる。 ⑵ 原告は、本件出産時の帝王切開以外に多量の出血を伴うような手術を受 った場合には直ちに輸血とフィブリノゲン製剤を投与して止血に努めるのは当然であることから、裏付けられる。 ⑵ 原告は、本件出産時の帝王切開以外に多量の出血を伴うような手術を受 けたり事故にあって多量の出血をしたりしたことはないなど、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤を投与されたこと以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、 低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠を見ても、原告が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は存在しない。 まず、原告の出血量については、本件母子手帳の記載から「中量」であ ったことが明らかである。原告は、「消火ホースの栓を開けたかの様な出血」が本件母子手帳の記載に含まれないと主張するが、いずれも分娩時の出血であることが明らかで、・・医師が本件母子手帳の記載に含めない合理的な理由はない。次に、原告が、第2子の出産の際の出血に比べて本件出産の際の出血が多かったのに、同じ「中量」であるはずがないと述べる が、主観による推測の域を出ない。さらに、・・医師が出血量が多いと述べたとの点についても、仮にそうした発言があったとしても、上記の「中量」を意味することは明らかである。むしろ、原告は、「出血したときは、ひとしきり子宮の中にたまってる血液が出きったらいったん止まりました。」と供述しており、一過性の出血であって、帝王切開手術が始まるま で続いていたわけではないことを自認している。 また、原告について、DICの原因となる基礎疾患として、常位胎盤早期剥離 た。」と供述しており、一過性の出血であって、帝王切開手術が始まるま で続いていたわけではないことを自認している。 また、原告について、DICの原因となる基礎疾患として、常位胎盤早期剥離のうち、子宮硬直・児生存に該当する可能性はあるものの、本件出産時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状は認められないから、算定される点数は、高くとも4点にとどまるもので、DICとし ての治療を開始するに足りる点数には達していない。 したがって、原告について、低フィブリノゲン血症やその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 本件出産時の・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はない。 原告は、・・医師から「出血量の多い胎盤剥離の術後には、ショック症状を起こして稀に死に至ることもあるので注意が必要だ。輸血と点滴をしてそ こを回避する。」と説明され、輸血と点滴を受けたと述べるが、客観的な裏付けがない上、本件母子手帳の記載とも整合しないから、信用できない。仮に・・医師から上記説明があったとしても、その予防のために特定フィブリノゲン製剤が投与されることはないから、・・医師の説明から特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。本件出産の翌日に看護師 から「止血剤」を使ったと言われたと述べ、本件出産後の点滴のうちの一つがフィブリノゲン-ミドリの瓶に似ていると述べる点は、いずれも客観的な裏付けがない上、原告のDICの算定スコアが治療を開始するに足りる点数に達していなかったことからすると、看護師が言う止血剤は、一般的に使用されていたアドナやトランサミンだった可能性が高く、瓶の形状も原告が高 さなど正確なところはわからないと述べており、ミドリ十字の していなかったことからすると、看護師が言う止血剤は、一般的に使用されていたアドナやトランサミンだった可能性が高く、瓶の形状も原告が高 さなど正確なところはわからないと述べており、ミドリ十字の瓶状の薬剤としては輸液であるフィジオゾールなどが存在したことからすると、原告が指摘する点滴が特定フィブリノゲン製剤であると認めることはできない。 (補助参加人の主張)被告の主張を援用し、以下の点を追加する。 ⑴ 原告が特定フィブリノゲン製剤を要するような病態にあるとすれば、ショック状態若しくはそれに近い状態になっていても不思議ではないが、原告は、帝王切開時においても記憶がはっきりしており、ショック状態に陥ることはなく、むしろとても元気であったと供述しているほどで、これらは特定フィブリノゲン製剤を要する病態になかったことを裏付ける。 ⑵ 原告は、打たれた点滴のうちの1本がテレビの報道番組で見たフィブリ ノゲンという瓶に似ていたと供述するが、原告が特定フィブリノゲン製剤を要するような病態にないため、原告が記憶している点滴が特定フィブリノゲン製剤であるとは認められず、むしろ原告が記憶している点滴が特定フィブリノゲン製剤であると考える理由として形と大きさの2点が挙げられているものの、30年以上前の点滴の形や大きさを正確に覚えているこ と自体不自然であり、時間経過により記憶が変容した可能性が高い。それに、当時フィブリノゲン製剤と形や大きさが似ている瓶型の点滴があっても不思議ではない。 ⑶ 原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実は、様々な感染経路が指摘されていること、原告が輸血を受けていることなどからして、特定フィブ リノゲン製剤投与の事実を何ら裏付けるものではない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投 染している事実は、様々な感染経路が指摘されていること、原告が輸血を受けていることなどからして、特定フィブ リノゲン製剤投与の事実を何ら裏付けるものではない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるか ら、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、遅くとも平成28年1月20日までにC型慢性肝炎に罹患したとの診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)診療録には原告が慢性肝炎であるとの診断の根拠が示されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、本件病院において、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が極めて高いと主張するが、本件出産(帝王切開術)の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴イ、ウ)、本件診断書の記載(同⑴オ)及び原告の供述によれば、原告の病態について、妊娠満期(37週)であったが、当日下 を検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴イ、ウ)、本件診断書の記載(同⑴オ)及び原告の供述によれば、原告の病態について、妊娠満期(37週)であったが、当日下腹部痛を覚えて本件病院を受診すると、医師が子宮口を内診した際に1度出血があり、血が噴出したこと、常位胎盤早期剥離が認められたため、急遽帝王切開術が行われたこと、新生児仮死がみ られたが生産し、子宮は温存されたこと、中量の出血があり、輸血も施されたことが認められ、常位胎盤早期剥離はDICの基礎疾患に当たる(乙統97(239頁)、200(120頁))。 しかしながら、原告の供述(原告本人3、14、27、28頁)によれば、腰椎麻酔が投与されたものの、本件出産の前後を通じ、原告の意 識は清明であったとあるから、出血性ショックの症状を呈していなかったこと、原告が全身状態を自覚的に元気と認識するほどであったこと、子宮口を内診されたときの噴出するような出血は1回出切ったらその後は止まったことが認められる。 常位胎盤早期剥離は、常位、すなわち子宮体部の正常な位置に付着し ている胎盤が、胎児の娩出以前に部分的又は全面的に剥離した状態をい う。胎盤剥離面の大小により部分早期剥離と全早期剥離とに、あるいは、軽症(胎盤剥離面30%以下)、中等症(30~50%)、重症(50%以上)に分類する。児娩出前に胎盤が剥離して子宮壁と胎盤との間に形成される血腫(胎盤後血腫)が小さい場合、また剥離部位が下方にあり、血腫が非包埋開放型になっている場合はDICになり難い。DIC に進展するかどうかは、血腫が包埋型であるかどうかのほかに剥離面積の広さ、血腫の大きさ、血腫が形成されてからの時間などが関係するとされている。(乙統97( ている場合はDICになり難い。DIC に進展するかどうかは、血腫が包埋型であるかどうかのほかに剥離面積の広さ、血腫の大きさ、血腫が形成されてからの時間などが関係するとされている。(乙統97(237頁)、105(220頁)、109(235頁)、134(354頁))これらの事実及び医学的知見を総合すると、原告の病態としては、D ICに進展する恐れのある常位胎盤早期剥離を生じたものの、緊急帝王切開術により急速逐娩し、速やかに児娩出に至り生産であったこと、受診当初子宮口から噴出するような出血が1回見られたが、その後出血が止まらない状況はみられず、出血量が中量にとどまったこと、子宮の摘出には至らなかったこと、本件出産の前後を通じ、原告の全身状態が安 定し、ショック症状を呈する状況にもなかったことなどから、DICに進展しなかったものと推認される。 イこれに対し、原告は、本件母子手帳に記載のある「中量」が本件出産時の出血量の一部の記載にとどまる、すなわち、・・医師が最初に内診したときに同医師に向けて噴出するような出血があったのに、これが上 記「中量」に含まれていないという趣旨の主張をするが、同医師が現認した出血は、母子健康手帳の出血量欄に当然反映されるべきものであるから、原告の上記の推測は当たらない。 ウしたがって、本件各証拠から、本件出産前後を通じ、臨床症状として出血性のショック症状を呈していたとか、原告の全身状態が著しく悪化して いたとか、出血傾向が出現していたなど、原告の病態が低フィブリノゲン 血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針ア上記⑵で説示したとおり、原告の具体的な病態に照ら 血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針ア上記⑵で説示したとおり、原告の具体的な病態に照らすと、原告について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICを発症していたとは認められないが、常位胎盤早期剥離は高確率で母体にDICを引き起こす 恐れのある病態であるから、担当医師の投与方針によっては、急速逐娩の判断とともに、DICにより低フィブリノゲン血症を発症する恐れがあるとして、特定フィブリノゲン製剤を投与することが考えられなくはない。 しかしながら、本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観 点から、原告の病態に対し、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 イこの点、原告は、本件出産後に・・医師から、「出血量の多い胎盤剥離の場合は、今、お母さんが元気でも、この後ショック状態を起こしたりすることがよくあるので、点滴と輸血をしますね。」と説明されたと供述す るが(原告本人3頁)、同供述は、術後管理として、出血が止まっている状況で、ショック等を回避するために輸血と点滴を行うというものであると受け取れるところ、そのような説明があったとしても、出血が止まらない状況を想定していないことが明らかであり、直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与を示すものとは考え難い。むしろ、その内容に照らすと、産科 領域における大量出血時の薬物療法としての止血機構の機能を改善、増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法を示すものであったことが十分考えられる(乙統83(394頁)、98(28頁))。 したがっ の止血機構の機能を改善、増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法を示すものであったことが十分考えられる(乙統83(394頁)、98(28頁))。 したがって、原告の上記供述から、・・医師の特定フィブリノゲン製剤 投与方針を推認することはできない。 ウまた、原告は、本件出産の際、輸血と点滴を計3本投与され、そのうちの1本の点滴の瓶が、後のテレビの報道番組で紹介されたフィブリノゲンーミドリの瓶に似ていたと供述するが(原告本人6頁)、上記⑴で認定した原告の病態に照らすと、直ちに上記原告の供述を採用できない。 ⑷ 他原因の存否 原告は、本件出産時の出血以外には事故や手術で大量出血したことはないから、本件出産の際以外にC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故と いった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、本件出産時には、原告に対し、輸血が行われているところ、昭和61年当時の輸血後肝炎発症率は8.7%であるとの報告がされて いること(乙統230(166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対す ている事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合 理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個21(原告番号70番) 以下、本別紙中では、原告番号70番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和50年12月2日、・・ ・・・・・・・・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において経膣分娩による出産(以下「本件出産」という。)をした際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産(甲C07002ないし05、弁論の全趣旨)ア原告は、昭和50年12月2日午後3時13分、本件病院において、長男を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)で ある。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C07002、03。以下「本件母子手帳」という。)22頁「出産の状態」では、「出産開始時の状況」欄の「胎位」には「第2后頭位」、「合併症」には「(妊娠浮腫)」、「(妊娠中毒症)」、「 健康手帳(甲C07002、03。以下「本件母子手帳」という。)22頁「出産の状態」では、「出産開始時の状況」欄の「胎位」には「第2后頭位」、「合併症」には「(妊娠浮腫)」、「(妊娠中毒症)」、「(妊娠性貧血)」、「出血量」欄には「250㎖」 とそれぞれ記載があり、「少量・中等量・多量」の「中等量」に〇印が付けられている。また、「輸血・輸液( ㎖)」の欄を含む「分娩経過」欄は全て空欄である。 エ本件出産に関する分娩台帳(甲C07004。以下「本件分娩台帳」という。)には、「合併症」欄に「妊娠浮腫」、「妊娠中毒症」、「出血量」 欄に「250㏄」、「処置」欄に「エルメトリン(ママ)1A静注」、「右 側切開術」などとある。 オ本件出産に関し、当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳及び本件分娩台帳が現存するものの、診療録、レセプトその他一切現存していない。 ⑵ 平成20年1月22日に実施された原告の血液検査の結果は、HCV抗 体陽性であった(甲C07006)。 ⑶ 厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関のリストには、本件病院の記載があり、「製剤納入実績(平成6年以前)」欄の「納入時期」には、「昭和55年~62年」とある(甲C07007)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件出産の際、心不全を起こし産後の処理が遅れ、多量の出血のため貧血となり、・・医師のもとで輸血の処置を受けた。このことからすると、原告は本件出産当時、危険な状態であった。 ⑵ 本件病院は、フィブリノゲン製剤の納入医療機関であり、本件出産のあった昭和50年1 ・・医師のもとで輸血の処置を受けた。このことからすると、原告は本件出産当時、危険な状態であった。 ⑵ 本件病院は、フィブリノゲン製剤の納入医療機関であり、本件出産のあった昭和50年12月当時も、特定フィブリノゲン製剤が同病院に納入されていたものと考えられる。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと強く推測される。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性が認められる必要があるところ、本件母子手帳及び本件分娩台帳から、原告について、250㎖の出血をした事実が認められるものの、DICの原因 となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害やショック症状の有無等 の臨床症状、本件出産後の身体症状等は不明である。また、250㎖の出血は、通常、輸血を必要とするような出血量といえないことからすると、出血のため貧血になり、輸血を受けたという原告の陳述は、当時の客観的状況との整合性に欠ける。この点をおいて、原告の陳述によっても、本件出産時の原告の身体の状態、原告に行われた止血処置の具体的内容、特定フィブリノ ゲン製剤の使用の有無等は全く明らかとなっていない。 そうすると、原告について、低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 本件出産時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はない。そも そも、本件出産時に本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたかすら明らかでない。よって、担当医の投与方針という観点からみても、特定フィブリ 師の投与方針を明らかにする証拠はない。そも そも、本件出産時に本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたかすら明らかでない。よって、担当医の投与方針という観点からみても、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはやはりできない。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 昭和55年から同62年にかけて本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていたことから、本件出産時に本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたと推認することはできない。 ⑵ 本件出産時に心不全を起こし、産後の処理が遅れて多量の出血が生じて貧 血となり輸血を受けたなどという原告の陳述は、貧血の点を除いて、これを裏付ける客観的証拠はない。むしろ、本件母子手帳や本件分娩台帳の出血量の記載によれば、本件出産時の原告の病態が、輸血やフィブリノゲン製剤の投与を必要とするものであったとはいえない。 その上、本件出産を担当した医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針も 全く明らかでない。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実は認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成20年頃、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外 ず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外に原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因はないから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間の因果関係の存在は明らかである。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成22年8月、C型慢性肝炎と診断され、インターフェロン治療を受けた。その証拠が、甲C07001である。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。提出された証拠からは、各種検査結果により6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤使用の有無 ⑴ 原告は、本件出産の際に、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張す るが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑴オ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認で きるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告は、本件出産時の原告の病態に関し、心不全を起こし産後の処理が遅れ、多量の出血のため貧血となり、危険な状態となったため、・・医師のもとで輸血の処置を受けた 検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告は、本件出産時の原告の病態に関し、心不全を起こし産後の処理が遅れ、多量の出血のため貧血となり、危険な状態となったため、・・医師のもとで輸血の処置を受けたと主張し、これに沿う陳述をする(甲C07 008)。 しかし、本件母子手帳及び本件分娩台帳の記載から、本件出産時、原告が妊娠中毒症にかかっていたこと、妊娠性貧血及び妊娠浮腫の状態にあったこと、原告が約250㎖に及ぶ中等量の出血をしたことが認められるところ、後産期における生理的出血として250㎖は標準的な出血量であり (乙統81(241頁))、原告において、本件出産時に多量の出血をしたとは認められない。 また、分娩中に心不全を起こしたとすれば、重大なインシデントであるから、少なくとも本件分娩台帳に記載がないことは極めて不自然であり、にわかに信用し難い。また、心不全を起こしたために「産後の処理が遅 れ」、多量の出血があったというが、「産後の処理が遅れた」という意味が明らかでない上、上記のとおり多量の出血があったとは認められない。 さらに、原告に対し輸血が施行されたことを裏付ける客観的資料もない。 加えて、重症の妊娠中毒症は子癇などを引き起こし、産科DICの基礎疾患に当たるものの(乙統109(114、115頁)、114(4 頁))、原告の妊娠中毒症による症状は浮腫と貧血のほかは明らかにされ ておらず、重度の妊娠中毒症に見られるような脳症状・胃症状や子摘発作の前駆症状があったことを認めるに足りる証拠はないから、原告がDICの基礎疾患に当たる重度の妊娠中毒症であったとは認められない。 そうすると、本件出産当時の原告の病態に関する原告の上記陳述は裏付けを欠いており、採用できない。 イまた、 から、原告がDICの基礎疾患に当たる重度の妊娠中毒症であったとは認められない。 そうすると、本件出産当時の原告の病態に関する原告の上記陳述は裏付けを欠いており、採用できない。 イまた、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)によ り止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、本件分娩台帳に「エルメトリン」(子宮収縮剤エルゴメトリンと思われる。)の投与をうかがわせる記載があることなどに照らし、原告の上記陳述を前提としても、これをもって直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ したがって、原告の具体的な傷病の状態に照らし、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他本件各証拠から、本件出産の際に特定フィブリ ノゲン製剤が投与された事実を合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個22(原告番号85番) 以下、本別紙中では、原告番号 以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個22(原告番号85番) 以下、本別紙中では、原告番号85番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和59年9月30日、・ ・・・・病院(以下「本件病院」という。)において第3子を出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、その止血処置として特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和59年9月30日、本件病院において、第3子を出産した(本件出産。甲C08503、弁論の全趣旨)。 本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)であ る(甲C08504、08)。 イ本件出産に関する出産台帳(手術台帳。以下「本件出産台帳」という。)には、「時間」欄に「午前9時49分」、「手術」欄に「帝切」、「原因」欄に「前置胎盤」との記載がある(甲C08503)。 ウなお、原告は、本件出産前の妊娠中、医療機関(産婦人科)を受診して いない(原告本人12頁)。 ⑵ 原告は、平成3、4年頃にはC型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受け、平成9年3月には、慢性C型肝炎の診断を受けた(甲C08506、08、原告本人23頁)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本 件出産台帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録、そし て、 6、08、原告本人23頁)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本 件出産台帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録、そし て、母子手帳も現存していない(甲C08503、08、弁論の全趣旨)。 また、・・医師その他の本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない(弁論の全趣旨)。 ⑷ 本件病院には、本件出産当時、特定フィブリノゲン製剤が納入されていた(甲C08505、弁論の全趣旨)。 ⑸ 本件出産以外の出産原告は、昭和53年1月15日に第1子を、昭和54年8月30日に第2子を、昭和63年3月29日に第4子を出産した(甲C08502)。 各出産に関する医療記録は一切現存せず、母子手帳は一冊も現存していない(甲C08508、原告本人11頁)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件出産の際、大量出血があり、その止血のために特定フィブリノゲン製剤を使用された蓋然性が高い。 このことは、①原告が、本件出産当日の朝突然出血し、救急搬送中にほとんど意識がないくらいのひどい出血状態であったこと、②本件出産当日、・・医師が、原告の夫(当時)に対し、原告の出血がひどいので、母体を助けるために子供を諦めてくださいという話をしたこと、③本件出産は、前置胎盤のために帝王切開術をしたというもので、前置胎盤のために出血 多量となったことが十分推測できること、④・・医師が、本件出産の約2か月後、原告から黄疸の治療で入院したことを聞かされると、「輸血は日赤の保存血液だから大丈夫だ」「止血剤だな」と明言しており、同医師が止血剤として が十分推測できること、④・・医師が、本件出産の約2か月後、原告から黄疸の治療で入院したことを聞かされると、「輸血は日赤の保存血液だから大丈夫だ」「止血剤だな」と明言しており、同医師が止血剤として特定フィブリノゲン製剤を念頭に置いて回答していることは明らかであること、⑤本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入医療機関 であることから、裏付けられる。 ⑵ ・・医師の一般的な特定フィブリノゲン製剤投与方針は不明であるが、原告から非A非B肝炎の原因は何かという質問に対し、「止血剤だな」と回答したことからも、本件出産の際、同製剤を止血剤として投与した蓋然性は非常に高い。 ⑶ 原告は、第1子出産及び第2子出産の際、異常はなく、大量出血や輸血 がなかったこと、原告の既往歴にも、大きな出血や輸血を受けたことはないことなどからして、本件出産以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産当時、 原告について同製剤の適応症例である低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、前置胎盤はDICの基礎疾患となり得るものである上、帝王切開術もDICの要因となり得るから、原告について、本件出産当時、DICを発症する抽象的な危険があったことは否定できない。 しかしながら、本件出産台帳には、本件出産に関して、前置胎盤を原因とする帝王切開手術が行われた旨の記載はあるものの、出血量を示す数値等は記載されていない。 また、原告は、原告の供述等を根拠に、本件出産の際に多量出血があったと主張するが、これら供述は客観的な裏付けを欠く上、同供述を前提と はあるものの、出血量を示す数値等は記載されていない。 また、原告は、原告の供述等を根拠に、本件出産の際に多量出血があったと主張するが、これら供述は客観的な裏付けを欠く上、同供述を前提と しても具体的な出血量は明らかでない。 さらに、本件各証拠によっても、原告について、本件出産時、低フィブリノゲン血症を発症していたことや産科DICスコアの点数を算定すべき事情があったことは認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用された かどうかを検討しても、本件出産時における・・医師の投与方針を明らか にする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 原告は、・・医師が本件出産の約2か月後に非A非B肝炎の原因は何かと原告に聞かれた際、「輸血は日赤の保存血液だから大丈夫だ」「止血剤 だな」と回答したという原告の供述を根拠として主張するが、産科領域における止血方法としては、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミン、ビタミンKなど)により止血する方法等が存在していたところ、・・医師が発言したとする「止血剤」がいかなる止血剤を意味するのかすら不明であるから、上記発言から、原告に 対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成3、4年頃には、C型肝炎ウイルス感染が判明した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められない。 年頃には、C型肝炎ウイルス感染が判明した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張)診断書等における診断の根拠となった各種検査結果等が提出されておらず、 慢性C型肝炎に罹患した事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、大量出血があり、その止血のために特定フィブリノゲン製剤を使用された蓋然性が高いと主張するが、本件出産に当たり、 原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件出産台帳の記載(前提事実⑴イ)及び原告の供述によれば、原告の病態に 、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件出産台帳の記載(前提事実⑴イ)及び原告の供述によれば、原告の病態について、本件出産当日の早朝、原告は、突然多量に出血し、救急車で本件病院に搬送されたこと、本件病院では、前置胎盤を原因とする帝王 切開術が施され、児娩出に至ったこと、その後、輸血が施されたことが認められ、前置胎盤及び帝王切開術はDICの誘因となる産科疾患に当たる(乙統97(255頁))。 イしかしながら、本件出産(帝王切開術)時の具体的な出血量は不明である上、出血状況その他の状態も不明であり、帝王切開術時になお出血傾向 があったことを示す客観資料はない。 そうすると、本件出産前後を通じ、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとは認められない。 ウこれに対し、原告は、陳述書(甲C08508)において、①本件出産後の本件病院入院中、・・医師から、原告には大出血があったため、やむ をえず止血剤を使ったと深刻そうな表情でいわれた、②止血剤はフィブリノゲン製剤のことで、同医師は、ウイルス感染の危険があることを知りながら、それでも使わざるを得ないと判断したために、そのような表情になったと思うと陳述し、本人尋問において、③本件病院に着いた後のことは、・・医師に一言児が出そうと告げたこと以外、出産のことだけでなく、そ の後何日間も記憶がない(原告本人5頁)、④原告が・・医師から止血剤のことをいわれたのは退院後1か月以上経って、黄疸が出て治療を受けたことから、・・医師に電話でその旨報告して原因を尋ねると、同医師が「輸血は日赤の保存血液だから大丈夫だ」「止血剤 ・・医師から止血剤のことをいわれたのは退院後1か月以上経って、黄疸が出て治療を受けたことから、・・医師に電話でその旨報告して原因を尋ねると、同医師が「輸血は日赤の保存血液だから大丈夫だ」「止血剤だな」とはっきり述べたと供述している(原告本人7、8、16頁)。 しかしながら、上記の各陳述・供述は、いずれも信用できない。 そもそも陳述書にある①の状況と本人尋問で出た④の状況は、①、②では対面で・・医師の表情を読み取ったと述べているのに、④では原告が電話口の・・医師の発言を聞き取ったと述べるもので、勘違いや言い間違いでは説明し難い変遷があり、かつ、原告は③、④が正しいというのみで、 変遷させた合理的な理由も述べていない(原告本人15頁)。 また、④については、・・医師が「輸血は日赤の保存血液だから大丈夫だ」と述べたというものであるが、昭和59年当時、輸血後肝炎の発生率は14.3%という報告があり(乙統230(166頁))、なお肝炎の主要な感染経路は輸血であったから、日赤の輸血の安全性にはまだ課題が あったところ、当時臨床の現場にいた・・医師がこうした状況を知らずに 輸血は大丈夫という根拠のない発言をすることはそれ自体考え難い。 さらに、「止血剤だな」という文言が何を意味するかは、原告の供述によっても判然としない上、日赤血液の信頼性の話に信用性がないから、上記の発言があったと認めることはできない。それは、原告が、平成9年頃、・・医院に提出した問診表において、「いままでに大病をしたことがあり ますか。あれば記入してください。」という質問に対し、自ら「前置胎バンによる輸血からC型肝炎」と記載したことが(甲C08506(4枚目))、上記発言により、・・医師から、肝炎の原因が輸血で り ますか。あれば記入してください。」という質問に対し、自ら「前置胎バンによる輸血からC型肝炎」と記載したことが(甲C08506(4枚目))、上記発言により、・・医師から、肝炎の原因が輸血ではなく、止血剤であると聞かされていたというのであれば、整合しないことからも裏付けられる。加えて、昭和59年当時、我が国において特定フィブリノゲ ン製剤の一般的注意喚起が行われていたことを示す資料がなく、・・医師が特別な知見を有していたという客観資料がない以上、・・医師が上記発言をもって、原告に対し特定フィブリノゲン製剤に肝炎リスクがあることを指摘していたという原告の推測の根拠は見当たらない。 エまた、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法 としては、手術療法のほか、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたところ(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、上記アのとおり、前置胎盤を原因として帝王切開術が行われ、そ の際出血が見られたという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否 原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、 原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した 感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告に対しては、本件出産の際に輸血が行われたこと(原告本人16頁)、本件出産以外の出産の状況が明らかでないこと(前提事実⑸)、昭和59年当時、輸血後肝炎発症率は1 4.3%であったと報告されていること(上記⑵ウ。なお、輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率は約16.1%と報告されている。乙統218(723頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑷ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個23(原告番号95番) 以下、本別紙中では、原告番号95番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件 理由 がないからこれを棄却することとする。 別紙個23(原告番号95番) 以下、本別紙中では、原告番号95番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和45年10月24日、 ・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与され、そのためC型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等原告は、昭和45年10月24日、本件病院において、第1子を自然分娩により出産した(本件出産)が、児は娩出後、産声を上げたが、同日中に死亡した。本件出産の担当医師は、・・医師(以下「・医師」という。)であ る。(甲C09501、原告本人10頁)⑵ 原告は、平成7年4月頃、C型肝炎ウイルス感染の診断を受け、遅くとも平成16年12月にC型肝硬変の診断を受けた(甲C09501、03)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入 病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C09502)。 本件病院は、同リストの作成に当たり、「当院においての分娩時の投与に関しては、御氏名が判明すれば一番よい訳ですが不可であるため、その当時に分娩されて異常分娩で輸血された方を(輸血と併用している可能性が大きいので)、医院名を公表することによって洗い出すのが適当と考え ます。」とコメントした(以下「本件コメント」という。甲C0950 2)。 ⑷ 本件出産に関し、当時 能性が大きいので)、医院名を公表することによって洗い出すのが適当と考え ます。」とコメントした(以下「本件コメント」という。甲C0950 2)。 ⑷ 本件出産に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存せず、母子健康手帳も、紛失のため現存していない。また、・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない。(原告本人6、7頁、弁論の全趣旨) 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件出産の際の大量出血時に特定フィブリノゲン製剤を投与された。 このことは、①本件出産の際、洗面器にいっぱいくらいの大量出血が生じ、これに対して「血液3本」分の輸血を伴う処置が行われたこと、②昭和45年当時は、一般的にも、出産時の大量出血の際に特定フィブリノゲン製剤投与が行われていた時期であること、③本件病院は、厚生労働省が発表したフィブリノゲン納入病院であること、④本件病院は、本件コメン トにおいて、「その当時に分娩されて異常分娩で輸血された方を(輸血と併用している可能性が大きいので)、」とし、異常分娩で輸血を行った場合には輸血と併用してフィブリノゲン製剤が投与されている可能性が高いことを明らかにしたことから裏付けられる。 ⑵ 第2子の出産の際は大量出血等のできごとはなかったことなどからする と、本件出産の際以外には、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し く えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し くは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件において、 本件出産時の状況を明らかにし、上記必要性を認めるに足りる客観的な証拠は存在しない。 そして、原告の陳述、供述を前提としても、原告は、本件出産後に、残った胎盤を取り出すための処置を受けることになった等と供述するにすぎず、その具体的な手術経過や病態等は不明であり、本件出産時に、輸血では対応 できず、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療が必要となるような緊急事態が発生したり、同症状の予防が必要な状況が発生したりしたという事実を認めることはできない。 この点、原告は、・医師が日赤に電話で輸血用に「血液3本」を注文したことや看護師から「洗面器にいっぱいくらいの出血があった」と聞かされた ことから、大量出血の事実があると主張するが、仮に同出血の事実があったとしても、その具体的な量や出血態様は不明であり、直ちに低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療や予防のために特定フィブリノゲン製剤を投与する必要性があったとは認められない。 したがって、原告の陳述、供述によっても、特定フィブリノゲン製剤投 与の事実を認めることはできない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件出産時における・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製 剤の投与事実を認めることはでき 医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製 剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成7年4月頃、C型肝炎ウイルス感染の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の 事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、平成7年4月から断続的にC型肝炎ウイルス感染の治療を行っていたが、遅くとも平成23年2月15日にはC型肝硬変の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)診断書の診断根拠となる各種検査結果等が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際の大量出血時に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告 ブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア原告は、本件出産時の状況について、①昭和45年10月24日の午前 中に本件病院に入院し、夕方の4時頃には第1子(女児)が生まれたが、その後、児の周囲に看護師や医師が集まり、バタバタした様子があったこと、そうこうしている間に、・医師が、原告の会陰部の切れたところを縫合したこと、②病室に戻ったころに、パッドが濡れる感じとお腹が膨れる感じがして、出血が多く続いているのを感じて、再び分娩室に戻されたこ と、しばらくして・医師が来て、「胎盤を残してしまった」と言われ、残った胎盤を取り戻すための処置を受けることになったこと、③その処置の場で、・医師が「日赤に電話」と看護師に命じ、同医師が直接「血液3本」と注文する声を聞いたこと、その後、・医師が注文した輸血やその他の止血処理がされ、一命をとりとめたこと、④病室に戻ってから、看護師から 洗面器にいっぱいくらいの出血があったことを聞かされたことなどを陳述、供述(甲C09501、原告本人)し、上記陳述、供述から、原告が、本件出産後、分娩室で会陰縫合がされた後に病室に戻されると、出血が認められ、3本の輸血その他の止血処理が行われたこと、原告の子宮内に一部残った胎盤を器具で掻き出す処置が行われたことと再度の会陰縫合が行わ れたことが認められ、胎盤遺残は産科的DICを起こす基礎疾患に当たる(乙統114(4頁 理が行われたこと、原告の子宮内に一部残った胎盤を器具で掻き出す処置が行われたことと再度の会陰縫合が行わ れたことが認められ、胎盤遺残は産科的DICを起こす基礎疾患に当たる(乙統114(4頁))。 そして、上記陳述、供述のうち、洗面器にいっぱいくらいの出血がどの程度の量を表すか明らかでないものの、輸血量が1本200㎖の3本分600㎖であることからして、多量の出血であったことは認められる。 イしかしながら、本件各証拠によっても、本件出産前後を通じ、原告の全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとして、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方 法としては、縫合術を含む手術療法以外に、薬物療法としても、止血機構 の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、原告自身、意識ははっきりしていたが、止血処置の具体的な内容はわからなかった、処置後に・医師から特に説明はなかったと述べていること(原告本人14、15頁) などからして、多量の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ウこの点、原告は、厚生労働省からの調査の際に本件病院が出した本件コメントから、異常分娩で輸血を行った場合には輸血と併用してフィブリノゲン製剤が投与されている可能性が高く、輸血が行われた原告に対しては、 これと併用して特定フィブリノゲン製剤の投与がされたと主張する。 しかしなが 輸血を行った場合には輸血と併用してフィブリノゲン製剤が投与されている可能性が高く、輸血が行われた原告に対しては、 これと併用して特定フィブリノゲン製剤の投与がされたと主張する。 しかしながら、本件コメントは、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた患者の洗い出しに当たり、異常分娩で輸血を行った患者の中から探し出すことが相当であるという意見であり、輸血では対応できず、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療が必要となるような緊急事態 には特定フィブリノゲン製剤の投与適応となるとされていることからすると、上記意見は合理性があるといえるものの、本件コメントの存在から、本件病院において異常分娩で輸血を行った患者について、個々の病態を踏まえずに、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことが合理的に推認できることにはならない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ したがって、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与 された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事 故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も 他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事 故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告が本件出産の際に輸血を受けたと述べており、昭和45年当時、輸血後肝炎発症率は16.2%であった と報告されていること(乙230(166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合 理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由 がないからこれを棄却することとする。 別紙個24(原告番号96番) 以下、本別紙中では、原告番号96-1ないし4番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号96-1番を「原告96-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・(・・・・・・・・・・生、平成22年5月15日死亡。 以下「・・」という。)が、昭和46年12月9日、・・病院(以下「本件病院」という。)において、第3子を出産(以下「本件出産」という。)した際、多量の出血があり、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行し 院」という。)において、第3子を出産(以下「本件出産」という。)した際、多量の出血があり、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して死亡 したと主張して、・・の相続人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告96-1は、・・の夫であり、原告96-2ないし4は、いずれも ・・の子である(争いがない)。 イ・・は、・・は、平成22年5月15日、死亡した(甲C09601)。 ⑵ 本件出産(甲C09605)ア・・は、昭和46年12月9日、本件病院において、第3子を自然分娩により出産した。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」には、「分娩経過」欄のうちの「特記事項」欄には記載がなく、「出産時の産科手術及び処置」欄の「吸引分娩」に○印が付けら れ、「輸血・輸液」欄には記載がなく、「出血量」欄には「多量」に○印 が付けられ、数値の記載はない。 ⑶ ・・は、平成3年ころにはC型肝炎ウイルス感染の診断を受け、平成12年4月頃には肝硬変との診断を受けた(甲C09608)。 ⑷ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C09607)。 ⑸ 本件出産に関し、当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他一切現存しない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない。( に関し、当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他一切現存しない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない。(弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張)⑴ ・・は、本件出産の際、通常の分娩とは異なり、輸血が必要となるほどの多量の出血をし、それに対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与された。 このことは、①本件出産当日の夕方に、・・がぐったりしている様子で、点滴を2本投与されている状態であったこと、②その際、・・から、第1子、第2子の出産時とは異なる感じがしたことから、知人に頼み原告96-1に連絡をつけてもらおうとしたと聞かされたこと、③原告96-1が、当日、・・医師から、「出血が多くありましたが、輸血もして、いい薬を 使ったのでもう大丈夫です。」と言われたこと、④後日、・・が、・・医師から、「いい薬を注射したので安心してください。」と言われたこと、⑤・・が輸血は2本行ったと述べていたこと、⑥本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入医療機関であったことなどから裏付けられる。 ⑵ ・・は3度の出産を経験しているが、本件出産以外に多量に出血したこ とはないから、本件出産の際以外は、・・がC型肝炎ウイルスに感染する 原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産の当時、・・について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、本件母子手帳からは、本件出産の際あ れるためには、本件出産の当時、・・について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、本件母子手帳からは、本件出産の際ある程度多量の出血があったことはうかがわれるものの、具体的な出血量は明らかでない。また、原告96-1は、・・から多量の出血をしたと聞き、担当医師から多量の出血のため輸血をしたと聞いたと供述するが、これを前提としても、具体的な出血量等を基礎づけることはできない。さらに、原告96-1は、担当医師から、 「いい薬」を使ったと同原告が聞かされ、・・も「いい薬」を注射したと聞かされたと供述するが、「いい薬」の薬品名や効能等は明らかでなく、その薬が止血剤であるとは認められず、まして、その使用を根拠に本件出産時の大量出血を推認することもできない。 したがって、本件各証拠によっても、本件出産時の出血が、低フィブリノ ゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性を生じさせるほどの大量出血であったとは認められない。 そのほかにも、本件出産時、低フィブリノゲン血症を発症していたことや、産科DICスコアの点数を算定すべき事情等があったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件出産時における担当医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告96-1の供述などによっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無 (原告らの主張)・・は、平成3年ころにはC型肝炎ウイルス感染の診断を受け ブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無 (原告らの主張)・・は、平成3年ころにはC型肝炎ウイルス感染の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して死亡した事実の有無(原告らの主張)・・は、平成12年4月には肝硬変の診断を受け、平成22年5月15日、 C型肝炎由来の肝硬変、肝細胞癌により死亡した。 (被告及び補助参加人の主張)診断書の診断根拠となる各種検査結果等が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告らは、本件出産の際に多量の出血があり、止血のため特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件出産に当たり、・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事 実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認 証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事 実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア本件母子手帳及び原告96-1の供述等によれば、・・の病態について、自然分娩の際に吸引分娩が行われたこと、多量の出血があったこと、その ために輸血が行われるとともに、止血の処置が行われたこと、輸血量は2本(400㎖)であったことが認められる。 イしかしながら、具体的な出血量や出血状況、さらに出血の原因となる傷病名は明らかでなく、・・の病態について、DICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大量出血によりショック状態に陥 り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったとはうかがわれない。 また、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的措置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善 ・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))が認められる。 これらの事実を総合すると、本件出産の際に多量の出血があったという事実を踏まえても、・・の病態から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実 が合理的に推認されるとはいえない。 ウこの点、原告96-1は、いずれも・・医師から、本件出産の当日、「出血が多くありましたが、輸血もして、いい薬を使ったのでもう大丈夫です。」と言われた が合理的に推認されるとはいえない。 ウこの点、原告96-1は、いずれも・・医師から、本件出産の当日、「出血が多くありましたが、輸血もして、いい薬を使ったのでもう大丈夫です。」と言われたこと、後日、・・が「いい薬を注射したので安心してください。」と言われたことを陳述、供述するが(甲C09608(4 頁)、原告96-1本人7頁)、・・が点滴か注射かを区別しないで注射 と呼んでいたこと(原告96-1本人20頁)を前提としても、「いい薬」が指す薬品が何かは明らかでなく、また、これが仮に止血剤であるとしても、上記イの一般的な止血剤である可能性は十分考えられるから、上記各陳述、供述をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ したがって、本件出産の際、・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与 された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否原告らは、本件出産の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほ か、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、21 時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、・・が本件出産の際に輸血を受 けたと認められること(上記⑵ア)、昭和46年当時、輸血後肝炎発症率は16.2%であったと報告されていること(乙230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠か ら、本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論 以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個25(原告番号99番) 以下、本別紙中では、原告番号99-1ないし3番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号99-1番を「原告99-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・・(・・・・・・・・・・生、平成20年2月18日死亡。以下「・・・」という。)が、①昭和39年9月30日に、・・・・・(現・・・・・・・・・・。以下「本件病院1」という。)において肺切除術(左上葉)(以下「本件手術1」という。)を受けた際、②昭和45年1月16日に、・・・・・・・・・・・・・・・病院(現・・・・・・・・・ ・・・・・ 下「本件病院1」という。)において肺切除術(左上葉)(以下「本件手術1」という。)を受けた際、②昭和45年1月16日に、・・・・・・・・・・・・・・・病院(現・・・・・・・・・ ・・・・・・・病院。以下「本件病院2」という。)において、帝王切開術により第1子を出産(以下「本件手術2」という。)をした際、③昭和47年12月28日に、本件病院2において、卵巣嚢腫の切除手術(以下「本件手術3」といい、3回の手術を総称するときは「本件各手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウ イルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して死亡したと主張して、・・・の相続人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者 ア原告99-1は・・・の夫であり、原告99-2、99-3はそれぞれ・・・の長女、二女である(争いがない)。 イ・・・は、平成20年2月18日に死亡した。死因はC型肝炎によるC型肝硬変と診断されている。(甲09921、弁論の全趣旨)⑵ 本件手術1 ア・・・は、昭和39年9月30日、本件病院1において、肺結核のため、 左肺上葉摘出手術である本件手術1を受けた(甲C09907、15)。 イ・・・が平成7年12月26日から平成8年2月26日までの期間、本件病院2に入院していた際の退院看護サマリー(以下「本件退院看護要約」という。)の「既往歴」欄には「S39年肺結核にて左肺上葉摘出(・・病院)」とある(甲C09915)。 ウ・・・がつけていた成人手帳の予定部分の昭和39年9月30日の欄には「・・・肺切手術日」とあり、日記部分の同日欄には、「・・先生が差し 上葉摘出(・・病院)」とある(甲C09915)。 ウ・・・がつけていた成人手帳の予定部分の昭和39年9月30日の欄には「・・・肺切手術日」とあり、日記部分の同日欄には、「・・先生が差し出す黒い麻酔マスクみたいなものが口の上に来ると十数えたごろ意識がなくなった。ふと気ずくと(ママ)、・・主任看護師さんが私のサプライ用ゆかたをきせ終ったところらしかった」、「主任さんが『ここはどこかわ かる』というので『手術室でしょ。・・主任さんですね。』というと『ずいぶん気丈な人だねえ』とびっくりしていた」などの記載がある(甲C09907)。 エ本件手術1に関し、本件手術1当時に作成された医療関係記録は、診療録、手術記録、レセプトその他一切現存しない(甲C09905)。 ⑶ 本件手術2(甲C09902)ア・・・は、昭和45年1月16日午後2時09分、本件病院2において、帝王切開術(本件手術2)により第1子を出産した。 イ本件手術2の担当医師は、・・・医師である。 ウ本件手術2に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。) 10頁「出産の状態」では、「分娩の経過」欄の「特記事項」の「骨盤位」に、「出産時の産科手術及び処置」の「帝王切開」にそれぞれ〇印が付けられており、「輸血・輸液( ㎖)」の項では「輸液」に〇印が付けられた上で空欄に「1500㎖」と記入されている。 エ本件手術1、第1子の出産に関し、本件手術1前後に作成された医療 関係記録は、本件母子手帳が現存するものの、診療録、手術記録、レセ プトその他の医療記録は現存しない(甲C09902、06)。 ⑷ 本件手術3ア・・・は、昭和47年12月28日、本件病院2において、左卵巣嚢腫の切除手術である本件手術3を受 プトその他の医療記録は現存しない(甲C09902、06)。 ⑷ 本件手術3ア・・・は、昭和47年12月28日、本件病院2において、左卵巣嚢腫の切除手術である本件手術3を受けた(甲C09912、15)。 イ・・・がつけていた手帳には、昭和47年12月25日の欄に「・・ ・・・・・・へ入院。3階336号室」、同月28日の欄に「手術2時~3時半、のう腫3K、左をとる。てんてき2回」、同月29日の欄に「てんてき1回」、昭和48年1月8日の欄に「2度目の手術(2㎝位きって縫い直し)する」、同月12日の欄に「傷口からうっ血が出てふとんまでよごしているのでびっくりした。400㏄位出たらしいとのこ と。」、同月13日の欄に「明け方しみでているのでとりかえる。洗濯をする。1時間後(6時半頃)又とりかえてもらう。幾度もとりかえないとよごすのでそのたびにしてもらう。」などの記載がある(甲C09912)。 ウ本件退院看護要約の「既往歴」欄には「S47年左卵巣膿腫摘出」 とある(甲C09915)。 エ本件手術3に関し、本件手術3当時に作成された医療関係記録は、診療録、手術記録、レセプトその他一切現存しない(甲C09906)。 ⑸ ・・・のC型肝炎ウイルスへの感染等・・・は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 ・・・が、C型慢性肝炎を原因とする肝硬変の治療のため、平成19年12月10日から平成20年2月18日までの期間、本件病院2に入院したことを証明する「入院・手術等診断書(証明書)」が作成されている(甲C09901)。 ⑹ 本件各病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入 厚生労働省が公表している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト (以下「本件リスト」と ている(甲C09901)。 ⑹ 本件各病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入 厚生労働省が公表している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト (以下「本件リスト」という。)上、本件病院1には、昭和55年以降、本件病院2には、昭和55年から同62年まで、特定フィブリノゲン製剤の納入実績があると記載されている(甲09904)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告らの主張)⑴ 本件手術1の際、①本件リストの記載から昭和39年当時も本件病院1に特定フィブリノゲン製剤が納入されていた事実が推認できること、②・・・が多量の出血をし、輸血もしており、当時の状況が危険な状態であったとうかがわれ、・・・自身後の日記で本件手術1がC型肝炎罹患の原因 ではないかと認識していたことなどからすると、止血剤として特定フィブリノゲン製剤を投与した蓋然性が高い。 ⑵ 本件手術2の際、①本件リストの記載から昭和45年当時も本件病院2に特定フィブリノゲン製剤が納入されていた事実が推認できること、②帝王切開を行う際にはしばしば多量の出血を伴うもので、本件では1500 ㎖の輸液をしていることから、それと同等量かそれ以上の出血があったと推認されること、③帝王切開で予防的に特定フィブリノゲン製剤が投与された症例が何件も報告されていることから、出血多量となり、あるいは予防的に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことが強く推測される。 ⑶ 本件手術3の際、①本件リストの記載から本件病院2に特定フィブリノ ゲン製剤が納入されていた事実が推認できること、②手術で切除された腫瘍がソフトボール大であり、切除手術も大掛かりなものであったと想定されるこ ①本件リストの記載から本件病院2に特定フィブリノ ゲン製剤が納入されていた事実が推認できること、②手術で切除された腫瘍がソフトボール大であり、切除手術も大掛かりなものであったと想定されること、③入院中に少なくとも2回大出血が起き、1回目は患部のそばを2cm ほど切って縫い直す処置が必要となり、2回目は布団やシーツを出血した血で汚してしまったほどであったことから、手術当時の・・・は非 常に危険な状態になっていたことがうかがわれ、止血剤として特定フィブ リノゲン製剤が投与されたことが強く推測される。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、・・・について、低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、下 記アないしウのとおり、・・・につき低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ア本件手術1については、・・・の具体的な病態等に関する証拠も見当たらず、・・・が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 イ本件手術2については、・・・が1500㎖の輸液を受けたことが認められるが、本件母子手帳には出血量を示す数値及び出血の多寡が記載されておらず、その他の証拠に照らしても、具体的な出血量、・・・に対する輸血の有無、輸血量及び投与した薬剤はいずれも明らかでなく、低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情及びDICスコ アを算定する具体的事情は見当たらない。 ウ本件手術3については、手術経過等に関する客観的な証拠はない上、・・・の手帳の記載によっても約1時間半で終了したとのことであり、 及びDICスコ アを算定する具体的事情は見当たらない。 ウ本件手術3については、手術経過等に関する客観的な証拠はない上、・・・の手帳の記載によっても約1時間半で終了したとのことであり、その他の証拠に照らしても、特に出血が多量であったことや止血が困難であったことをうかがわせるような事情は認められない。その後の再手 術も、手術部位に対する処置により止血を試みたものと考えられるのであって、・・・が述べる経過及び出血量を踏まえても、同人が低フィブリノゲン血症やDICであったことを裏付ける事情は認められない。 ⑵ 本件各手術の担当医の方針に照らして、・・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討するとしても、当時の担当医らの投与方針 を明らかにする証拠はないから、この観点からも特定フィブリノゲン製剤 の投与事実を認めることができない。 また、本件手術1に関しては、特定フィブリノゲン製剤が薬価収載されたのが昭和40年11月1日であることからすると、昭和39年9月の本件手術1の時点で、あえて保険適用前の製剤を使用したと推認することは困難である。 (補助参加人の主張)⑴ 本件リストの記載からは、本件手術1の際、本件病院1に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたとは推認できない。そもそも、当時フィブリノゲン製剤は薬価収載前であり、医療機関において一般的に用いられるものではなかった。また、・・・の具体的な病態に関する証拠は提出されて いないのであり、・・・の病態がフィブリノゲン製剤の投与を必要とするものであったとはいえない。その上、担当医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針が明らかになっていないことに鑑みれば、・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとはいえないというべき 必要とするものであったとはいえない。その上、担当医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針が明らかになっていないことに鑑みれば、・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとはいえないというべきである。 ⑵ 本件リストの記載からは、本件手術2の際、本件病院2に特定フィブリ ノゲン製剤が納入されていたとは推認できない。また、・・・の具体的な出血量は全くもって不明であり・・・の病態がフィブリノゲン製剤の投与を必要とするものであったとはいえない。その上、担当医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針が明らかになっていないことに鑑みれば、・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとはいえない。 ⑶ 本件リストの記載からは、本件手術3の際、本件病院2に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたとは推認できない。また、本件手術3で切除された腫瘍の状況や手術後の入院中の出血の状況等に関する原告らや・・・の陳述は、これを裏付ける客観的証拠は提出されていない上に、同人の陳述によっても、止血が困難であったという事情は見受けられないから、 ・・・の病態がフィブリノゲン製剤の投与を必要とするものであったとは いえない。その上、担当医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針が明らかになっていないことに鑑みれば、・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとはいえない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告らの主張)本件各手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 事実が認められるから、上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎が進行して、死亡した事実の有無(原告らの主張)・・・は、C型慢性肝炎を原因とする肝硬変に罹患し、死亡した。 (被告及び補助参加人の主張) 新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件各手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告らは、本件各手術の際の出血に対する止血処置の一環として、・・・ に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされた蓋然性が高いと主張するが、本件各手術の際、・・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の 間接事実から、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたこ とを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 本件手術1についてア・・・の病態原告らは、・・・の病態に関し、・・・が多量の出血をし、輸血もしており、当時の状況が危険な状態であったと主張するが、これを裏付ける資 料が全くない。 そうすると、・・・の病態について、出血量、出血状況とも不明であり、どのような処置が行われたかも明らかでないから、・・・の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投 不明であり、どのような処置が行われたかも明らかでないから、・・・の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に 推認することはできない。 イ本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 加えて、本件手術が行われた昭和39年9月は、特定フィブリノゲン製 剤が同年6月に製造承認された直後の時期であり、医療機関で容易に入手できるほど流通していたとは考え難い上、薬価収載された昭和40年11月より前の時期で、いまだ保険診療において用いることができなかったことからすれば、仮に・・・の病態に関し、多量の出血があり、輸血が行われたことを前提としても、本件病院1において、多量の出血があった症例 一般に特定フィブリノゲン製剤を投与する方針が採用されていたと認めることはできない(乙統16、236)。 ⑶ 本件手術2についてア・・・の病態本件母子手帳の記載(前提事実⑶ウ)からは、本件手術が帝王切開であ り、その際に・・・が1500㎖の輸液を受けた事実が認められるところ、 原告らは、帝王切開を行う際にはしばしば多量の出血を伴うこと、本件では1500㎖の輸液をしていることなどから、それと同等量かそれ以上の出血があったと推認されると主張する。 この点、帝王切開術による出産は、しばしば多量の出血を伴うものではあるが、そのことにより直ちに・・・が本件手術2の際に大量出血をした とは認められない。また、輸液についても、種類により使用方法等は異なるところ、例えば、細胞 、しばしば多量の出血を伴うものではあるが、そのことにより直ちに・・・が本件手術2の際に大量出血をした とは認められない。また、輸液についても、種類により使用方法等は異なるところ、例えば、細胞外液は、循環血液量の維持とともに、血管外に漏出した非機能的外液の補充に用いられる目的で、出血量の3倍程度実施されることなどに照らし(乙統136(363頁))、輸液量と出血量が同等量であるとか出血量の方が多いとは必ずしもいえない。 そうすると、・・・の病態については、結局出血量と出血状況のいずれも不明であるというほかなく、輸液の他にどのような処置が行われたかも明らかでないから、・・・の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできないという べきである。 イ本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 原告らは、帝王切開で予防的にフィブリノゲン製剤が投与された症例が 何件も報告されていることを強調するが、臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノゲン血症の診断を待たずに予防的に投与された症例が少なくなかったとしても、そうした症例が存在するからと言って、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性がない症例について、担当医師が当該症例をどのように判断した か、あるいは、担当医師の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対 象となるかといった要素の検討なしに、適応外投与があった事実を推認できるとはいえない。 ⑷ 判断した か、あるいは、担当医師の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対 象となるかといった要素の検討なしに、適応外投与があった事実を推認できるとはいえない。 ⑷ 本件手術3についてア・・・の病態原告99-1の陳述によれば、本件手術に関し、切除した腫瘍がソフト ボール大であったと認められる(甲C09922(1頁))。 しかし、・・・の病態について、出血量、出血状況とも不明であり、本件手術前後にわたり、腫瘍の切除のほかにどのような処置が行われたかも明らかでないから、・・・の病態を基に、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特 定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 また、・・・の日記の記載(甲C09912)及び原告99-1の陳述(甲C09922(1頁))から、・・・が本件手術3から2週間以内に、出血のため2度目の手術をしたことが認められるが、そのときの手術内容については・・・の日記に「縫い直し」とあり、その後の出血についても 「傷口からうっ血」が生じたと記載されていることからすると、縫合不全に対し、再縫合があった事実はうかがわれるものの、これにより、本件手術3当時の・・・について、DICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったとは認められない。 イ本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑸ 他原因の存否原告らは、本件各手術以外に、 定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑸ 他原因の存否原告らは、本件各手術以外に、・・・にC型肝炎ウイルスに感染する原因 が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウ イルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、2 18(722頁)、221(89頁)等)、・・・は本件手術1の際輸血を受けたと日記に記録しているところ(甲C09925)、昭和39年当時の輸血後肝炎発症率は31.1%であると報告されていること(乙統230(166頁))などからすれば、・・・がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件各手術の際に特定フィブリノゲン製 剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件各手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製 剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個26(原告番号101番) 以下、本別紙中では、原告番号101番を「原告」という。 第1 余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個26(原告番号101番) 以下、本別紙中では、原告番号101番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、・・・・(・・・・・・・・・生、平成15年9月9日死亡。以 下「・・」という。)が、昭和51年12月24日、・・・・・・・・で経膣分娩による出産をした後、搬送された・・・・・・病院(現・・・・・・・・・・・・病院。以下「本件病院」という。)において、止血処置(以下「本件処置」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して死亡し たとして、・・の相続人である原告が、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実当事者ア原告は、・・の夫である(争いがない)。 イ・・は、平成15年9月9日、肝細胞癌破裂を原因とする出血性ショックを直接の死因として死亡した(甲C10104)。 ⑵ 第2子の出産についてア・・は、昭和51年12月24日午後4時15分頃、第2子を出産した(以下「本件出産」という。甲C10108)。 イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)には、「出産の状態」として、「在胎期間」欄に「妊娠37週」、「出血量」欄に「多量(2050㎖)」、「出産の場所」欄に「・・・・・・・・・・・」、「分娩取扱者医師」欄に「・・・某(名前部分は判読困難)」(以下「・・医師」という。)との記載がある。「分娩の経過」 欄には、「頭位」に〇印が付けられているにとどまり、「特記事項」の 記載はない。(甲C10 (名前部分は判読困難)」(以下「・・医師」という。)との記載がある。「分娩の経過」 欄には、「頭位」に〇印が付けられているにとどまり、「特記事項」の 記載はない。(甲C10108)⑶ 本件病院への特定フィブリノゲン製剤の納入実績本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C10107)。 ⑷ 本件出産、本件処置に関し、当時に作成された医療関係記録としては、 本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。(甲C10106、弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ ・・は、昭和51年12月24日の本件出産の際に2050㎖の大量出血をし、本件病院に救急搬送されて、輸血やフィブリノゲン製剤投与等の本件処置が行われた。 このことは、①原告が、同日午後2時頃、・・医師から電話を受け、「赤ちゃんは大丈夫なんだけど、奥さんが出血が止まらない。危ない、すぐ来て くれ。」と言われたこと、②原告が同医院に駆け付けると、・・は完全に気を失った状態で分娩台に乗っており、・・医師が、・・の子宮に右手を突っ込み、手がしびれて力が出ないなどと言いながら、身体を斜めにして懸命にすごい力を入れて子宮を握っていたこと、③その後間もなく・・が本件病院に救急搬送され、原告は終日面会できなかったことなどの経過があったこと、 ④翌25日、原告が・・と面会した際、・・から、「看護師から「出血止めの薬を使ったよ」と言われた。」と聞かされたこと、以上の各事実から裏付けられる。 ⑵ また、本件出産時の出血量2050㎖は、「 翌25日、原告が・・と面会した際、・・から、「看護師から「出血止めの薬を使ったよ」と言われた。」と聞かされたこと、以上の各事実から裏付けられる。 ⑵ また、本件出産時の出血量2050㎖は、「多量」であり、その場合、輸血とともに止血剤が当然使用されるはずであるから、出血止めの薬を使った という看護師の発言は、止血剤としての効果が高いフィブリノゲン製剤が使 用されたことを意味するものである。 ⑶ 本件病院はフィブリノゲン製剤の納入病院であり、昭和51年ころはフィブリノゲン製剤投与のピーク時とされていること、・・には、本件出産以外の2回の出産では、大量出血等肝炎に罹患する原因となる出来事がなく、その他原因がないことなどからして、本件処置以外にはC型肝炎罹患の原因が 存在しない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各 証拠を見ても、・・が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。・・については、2050㎖の出血をした事実が認められ、産科DICスコアが3点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件処置時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、本件処置後における・・の身体症状等は不明であり、点数 を算定すべき事情は認められない。 したがって、・・について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ また、本件処置時、・・は輸血をされたこと、本件処置後、・・が看護 低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ また、本件処置時、・・は輸血をされたこと、本件処置後、・・が看護 師から止血の薬を使ったと言われた旨原告に話したことがうかがわれるものの、原告の供述によっても、本件処置時、・・にされた止血措置の具体的内容は不明である上、仮に・・に止血剤が使用されたとしても、それが特定フィブリノゲン製剤であったのかについては全く明らかではない。そうすると、仮に原告の供述内容を前提としても、本件処置時に特定フィブ リノゲン製剤の投与があったと認めることはできない。 ⑶ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件処置時における担当医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はない。また、原告の供述によっても、担当医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)・・は、・・・・・・病院において、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、死亡した事実の有無(原告の主張)・・は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患し、これが進行して肝がんにより死亡した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 提出された証拠からは、各種検査結果により6か月以上の肝機能検査の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できないから、慢性C型肝炎罹患の事実が確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告は、本件出産後、・・医院から搬送された本件病院において、大量出血に対する止血のための本件処置の一環として、・・が輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたと主張するが、本件処置の際、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを認めるに足りる医療記録その他の直接的な証拠はない。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵)及び原告の供述によれば、・・の病態について、分娩後、大量出血があり、出血量が2050㎖に及んだこと、・・医院の分娩台において意識を失うショック症状を呈していたことが認められるほか、C型肝炎ウイルス感染の診断をした・・・・・・病院の について、分娩後、大量出血があり、出血量が2050㎖に及んだこと、・・医院の分娩台において意識を失うショック症状を呈していたことが認められるほか、C型肝炎ウイルス感染の診断をした・・・・・・病院の診療録に「昭和51年12月の出産時に輸血を2000㏄施行していた。」 とあるとおり、本件出産ないし本件処置の際に、2000㎖輸血が行われたことが認められる。 また、原告の供述(原告本人3頁)には、原告が・・医院に駆け付けると、・・医師が、・・の子宮に右手を突っ込み、手がしびれて力が出ないなどと言いながら、身体を斜めにして懸命にすごい力を入れて子宮を握 っていたとあることから、・・に対し、ツワイフェル双手圧迫法(一手を 膣内に挿入し子宮頸を握り、同時に他手で子宮底を圧する手法。両手で子宮を数分から数十分間圧迫する。乙統94(279頁)、134(432頁))が施術されたことが認められる。 イ上記アのとおり、本件出産後、・・医院において、大量出血が生じ、ショック症状を呈していた・・に対し、・・医師から、双手圧迫法による止 血処置が施されたことは認められるから、DICの原因となる基礎疾患があると認めることはできるものの、搬送後の出血状況が全く不明であり、本件病院においては、2000㎖の輸血が施されたという以外、どのような処置が行われたかを示す資料や供述はないから、本件出産の前後を通じ、・・の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態で あったと認めることはできない。 また、大量輸血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的措置や、上記の双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法とし 、大量輸血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的措置や、上記の双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を 改善・補強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたことが認められる(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))。 そうすると、・・に大量出血があったという事実から、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまでは言えない。 ウこの点、原告は、本件処置の後、・・が本件病院の看護師から「出血止めの薬を使ったよ。」と聞かされた旨原告に話したことを強調するが(原告本人7頁)、前後のやり取りが不明であり、かつ、・・の本件病院における出血状況も不明であるから、上記イの一般的な止血剤である可能性も十分考えられるもので、このやり取りから、特定フィブリノゲン製剤投与 の事実が合理的に推認されるということは困難である。 ⑶ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針本件病院は、特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関ではあるが、本件病院の医師その他医療関係者から、本件処置に関する陳述は得られておらず、また、上記⑵ウのとおり、翌日の看護師の・・に向けた発言も特定フィブリノゲン製剤に関するものと認めるには足りないから、本件処置当時の本件病 院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針を推認させる証拠はない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産後の大量出血以外には・・が事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えら フィブリノゲン製剤の投与方針を推認させる証拠はない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産後の大量出血以外には・・が事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒト の血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるところ(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、・・に対しては、本件処置の際、輸血が行われていること、昭和51年頃は、輸血後肝炎発症率は14.3%であったと報告されていること(乙統230(16 6頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個27(原告番号106番) 以下、本別紙中では、原告番号106-1番及び106-2番を併せて「原告ら」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・・生、令和元年6月18日死亡。以下「・・」という。)が、昭和42年11月2日頃、・・・・・・・・(以下「本件病院 概要等 1 事案の概要 本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・・生、令和元年6月18日死亡。以下「・・」という。)が、昭和42年11月2日頃、・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、出産後の大量出血があり、止血のための処置(以下「本件処置」という。)に際し、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C 型肝炎に罹患したと主張して、・・の相続人であり、訴訟承継人である原告らが、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ア原告らは、いずれも・・の子である(争いがない)。 イ・・は、令和元年6月18日、サルコーマ(骨や筋肉などの結合組織にできる悪性腫瘍)で死亡し、原告らが訴訟上の地位を承継した(甲C10603、弁論の全趣旨)。 ⑵ 第1子の出産等の状況ア・・は、昭和42年10月20日、本件病院において、第1子を自然分 娩により出産した(以下「本件出産」という。甲C10602、03)。 イ本件出産の担当医師は、・・・医師(以下「・・医師」という。)であった(甲C10602、03)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(弁論の全趣旨)。 ⑷ ・・は、平成2年4月頃にC型肝炎ウイルス感染の診断を受け、遅くと も平成23年4月6日にC型慢性肝炎との診断を受けた(甲C10601、02)。 ⑸ 本件出産、本件処置に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しておらず、母子健康手帳も、紛失のため現存していない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産、 件出産、本件処置に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しておらず、母子健康手帳も、紛失のため現存していない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産、 本件処置に関する陳述は得られていない。(甲C10602、03、弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張) ⑴ ・・は、本件出産から約13日後の深夜に始まった大出血を止血するための処置として、特定フィブリノゲン製剤を投与された。 このことは、①深夜に突然大出血が始まり、救急車で本件病院に運ばれたこと、②当初宿直の医師が診察したが、出血が止まらず、・・医師が千葉の自宅から駆けつけてきたこと、③・・医師は、子宮を縛るという手術 を実施したが、当初は同医師から子宮摘出の提案がされていたこと、④・・の元夫・・・・・(以下「・・・」という。)が、本件処置後に・・医師から、「とにかく出血が多い」「止めるための処置はしたけど輸血もしたり点滴をしたりしなきゃならない」と言われたこと、⑤胎盤ポリープという診断を受けたこと、⑥本件処置の翌日から輸血と点滴が1週間続き、 ・・医師から、「血を止めるために点滴をする。」「肝炎になるかもしれないけど、しょうがないですよ。」と説明されたこと、以上の各事実から裏付けられる。 ⑵ ・・は、2度の流産と2度の出産を経験しているが、本件処置の際以外に多量に出血したことはないし、そのほかけがをして手術を受けたり輸血 を受けたりしたことはないから、本件処置の際以外は、・・がC型肝炎ウ イルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン けたり輸血 を受けたりしたことはないから、本件処置の際以外は、・・がC型肝炎ウ イルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件処置の当時、・・について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、本件各証拠をみても、・・が低フィブリノゲン血症と診断された事情はない上、・・が胎盤ポリープにより出血して本件処置を受けた事実を認めることはできても、その具体的な出血量は不明である。そのほかDICの原因となる基礎疾患や、本件処置時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、・・の身体症状等は不明であり、・・に関し、産科DI Cスコアに照らして点数を加算すべき事情はない。 ⑵ ・・の陳述及び・・・の証言を前提としても、本件処置の具体的な内容及び・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針は不明である。 仮に、・・の陳述及び・・・の証言どおり、・・に対し、止血のための点滴が実施されていたとしても、点滴投与された薬剤名や特徴は不明である上、 止血のために点滴投与される薬剤は特定フィブリノゲン製剤に限られるものではなく、アドナやトランサミンなど複数存在し、かつ、低フィブリノゲン血症に対する投与が推奨されている特定フィブリノゲン製剤に比して、上記一般的な止血剤は用途が広範であることからすれば、・・に点滴投与された薬剤は、特定フィブリノゲン製剤以外の止血剤であった可能性が高いという べきである。 ・・医師が肝炎になるかもしれないと説明したという・・の陳述は、・・・が聞いていないと証言することから信用性に疑問が残るが、仮にそうした説明があったとすれば、輸血 高いという べきである。 ・・医師が肝炎になるかもしれないと説明したという・・の陳述は、・・・が聞いていないと証言することから信用性に疑問が残るが、仮にそうした説明があったとすれば、輸血後肝炎の説明と考えるのが自然である。 したがって、・・の陳述及び・・・の証言を踏まえても、・・に特定フィ ブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告らの主張)・・は、平成2年4月頃、C型肝炎ウイルス感染の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の 事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張)本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告らの主張) ・・は、平成2年4月から断続的にC型肝炎ウイルス感染の治療を行っていたが、遅くとも平成23年4月6日にはC型慢性肝炎の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告らは、本件処置の際に大出血があり、止血のため特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件処置 当裁判所の判断 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告らは、本件処置の際に大出血があり、止血のため特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件処置に当たり、・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠 はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態 ア・・は、本件処置時の状況について、①本件出産の10日後に本件病院を退院し、その3日後の深夜に突然大出血が始まり、救急車で本件病院に搬送されたこと、②本件病院では、当初宿直の医師の診察を受けたが、出血が止まらず、・・医師が千葉の自宅から駆けつけてきたこと、③・・医師は、血を止めるために子宮を縛るという手術を実施したこと、④当初は 同医師から子宮摘出の提案がされたこと、④血を止めるためにずっと点滴をされ、本件処置の翌日から輸血と点滴が1週間続いたこと、⑤病名は胎盤ポリープであったこと、⑥・・医師から、「血を止めるために点滴をする。」「肝炎になるかもしれないけど、しょうがないですよ。」と説明されたことを陳述(甲C10602)し、上記陳述から、・・が、本件出産 の約13日後、胎盤ポリープのため、具体的な出血量は明らかでないものの、多量の出血があり、救急搬送後、子宮を縛る手術がされ、翌日からは輸血と点滴が1週間続いたことが認められ、胎盤ポリープは産褥期に産科出血を引き起こす原疾患とされている(乙統136(356頁))。 イ 出血があり、救急搬送後、子宮を縛る手術がされ、翌日からは輸血と点滴が1週間続いたことが認められ、胎盤ポリープは産褥期に産科出血を引き起こす原疾患とされている(乙統136(356頁))。 イしかしながら、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的 な止血方法としては、手術療法のほか、薬物療法としても、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、98(28頁))、・・は、手術療法として、・・医師から、血を止めるために子宮を縛る手術を施されたと述べていること(甲C10602)、 点滴による止血については、・・も・・・も、具体的な内容を聞かされて いないため(甲C10602、・・・証人15頁)、・・医師が説明した止血剤が上記一般的な止血剤であった可能性も十分考えられる。 これらの事情を総合すると、本件処置時に多量の出血があったという事実を踏まえても、・・の病態から、直ちに低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特 定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件処置時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ したがって、本件処置の際、・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否原告らは、本件処置の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主 際、・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否原告らは、本件処置の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルス に感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218 (722頁)、221(89頁)等)、・・が本件処置の際に輸血を受けたこと(上記⑵ア)、昭和42年当時、輸血後肝炎発症率は31.1%と高率であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することは できない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個28(原告番号108番) 以下、本別紙中では、原告番号108番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、①昭和4 個28(原告番号108番) 以下、本別紙中では、原告番号108番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、①昭和40年3月初め、・ ・・・病院(以下「本件病院」という。)において、尿管切除術(以下「本件手術1」という。)した際、②昭和40年3月半ば、本件病院において、左腎臓摘出術(以下「本件手術2」といい、2回の手術を総称するときは「本件各手術」という。)した際、それぞれ特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患した と主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件各手術の状況等ア原告は、高等学校第3学年在学中の昭和40年2月終わり頃、本件病院 泌尿器科を受診し、即時入院となり、同年4月半ば頃まで入院した。 本件病院における担当医師は、・・・医師である。(甲C10804、弁論の全趣旨)イ原告は、本件病院入院中の昭和40年3月初め頃、左尿管切除術(本件手術1)を受け、同年3月半ば頃、左腎臓摘出術(本件手術2)を受けた (甲C10804)。 ⑵ 原告は、平成15年頃、C型肝炎ウイルス感染との診断を受け、遅くとも平成18年12月13日にはC型慢性肝炎の診断を受けた(甲C10802、04)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入 病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C10804)。 ⑷ 本件各手術に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各 804)。 ⑷ 本件各手術に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告がC型肝炎ウイルスに感染したのは、出血量の多さから考えて昭和40年3月初めに行われた本件手術1の際に、止血のために特定フィブリノゲン製剤が静注により投与されたこと以外に考えられない。 このことは、①本件手術1は、開腹手術を行い、どちらの尿管が詰まっているのかを調べ、左の尿管がほとんど壊死していることがわかってこれ を切除したというもので、8時間以上かかる長い手術であったこと、②同手術後に麻酔が覚めてからドレーンが血液で赤くなっており、出血がひどかったこと、③病室に戻ってから1日1本(200㏄)の輸血を5日くらい行ったこと、④ほかにも、薬剤の名前は憶えていないが、種々の点滴をしたこと、⑤上記ドレーンが、太さ2ないし4mm くらいで、臍の下から4 0cm ほどパックでつながっていたことなどから裏付けられる。 ⑵ 本件手術2では、左の腎臓を摘出し、手術には4時間ほど要し、その際出血があり、200㏄ほど輸血をし、輸血以外の点滴も受けたが、薬剤の名前は覚えていない。 ⑶ 原告は、本件各手術の際以外には、多量の出血を伴うような手術を受け たことはなく、平成17年頃に鼠径ヘルニアの手術を受けたが、ほとんど出血がなかったことから、本件各手術の際以外、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件各手術の当 時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となる 型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件各手術の当 時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療 若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるが、本件において、本件各手術の状況を明らかにし、上記必要性を認めるに足りる客観的な証拠は存在しない。 原告の陳述、供述を前提としても、本件手術1の際、全身麻酔によって手術の状況が全く分からず、術後の状況も、5日間合計で1000㎖程度 の輸血をする必要があり、また、輸血以外の点滴を打っていた旨供述するにすぎず、具体的な手術経過は不明で、術後の状況を踏まえても、本件手術1の際、輸血では対応できず、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療が必要になるような緊急事態が発生したり、同症状の予防が必要な状況が発生したりしたという事実を認めることはできない。 また、原告は、本件手術2の状況も、出血はさほどひどくはなかったと述べるのみで、それ以上の詳細な状況は認められない上、手術の状況についても、手術の途中に異常な経過があったとは聞いていないと述べているから、本件手術2の際も、原告に低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療が必要になるような緊急事態が発生したり、同症状の予防 が必要な状況が発生したりしたという事実を認めることはできない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件各手術時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、原告の供述によっても、上記投与方針はいずれも不明と言わざるを得ないことから、上記観点からも、本件各手術の際に、特 定フィブリノゲン製剤の における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、原告の供述によっても、上記投与方針はいずれも不明と言わざるを得ないことから、上記観点からも、本件各手術の際に、特 定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)被告の主張を援用し、以下の主張を追加する。 フィブリノゲン製剤は、昭和39年6月に製造承認がされたものの薬価基準に収載されたのは昭和40年11月であり、同年3月当時において、フィブ リノゲン製剤は医療機関において一般的に用いられるものではなく、この点 からしてもフィブリノゲン製剤が投与されたとは考えにくい。 したがって、本件においては、昭和40年11月に薬価基準に収載されたフィブリノゲン製剤を同月3月時点で保険診療において用いることはできないことからすれば、当時、本件病院においてフィブリノゲン製剤は診療に使用されていなかったと考えるべきである。この点からも、原告に対してフィブ リノゲン製剤が投与されたとは考えにくい。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成15年にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件各手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝 められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、遅くとも平成18年12月にはC型慢性肝炎の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)入院証明書(診断書)における診断の根拠となった各種検査結果等が提出されておらず、慢性C型肝炎に罹患した事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件各手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件各手術の際、それぞれ特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件各手術に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件手術1について原告の陳述、供述によれば、本件手術1の際の原告の病態について、開腹手術を行い、出血を伴ったこと、術後に1日1本(200㏄)の輸血を5日間くらい行ったこと、輸血以外の点滴が行われたこと、臍の下からドレーンが付けられ、血液で赤くなっていたことが認められる。 これに対し、原告は、①本件手術1の際、出血がひどかったこと(原告本人4頁)、②本件手術1の後、輸血とは別に点滴を受けていたこと(同5頁)を供述し、輸血がされている事実からは相 れる。 これに対し、原告は、①本件手術1の際、出血がひどかったこと(原告本人4頁)、②本件手術1の後、輸血とは別に点滴を受けていたこと(同5頁)を供述し、輸血がされている事実からは相当量の出血があったことがうかがわれるものの、大量出血があったと認定するには足りない。また、原告自身、薬自体はわからない、点滴の容器その他の記憶も残っていない と供述するとおり(同5、14頁)、同点滴で投与された薬剤を特定するに足りる事情は見当たらず、失われた水分を補う輸液、補液の点滴投与がされた可能性も十分考えられるし、止血剤であったとしても、一般的な止血剤(アドナ、トランサミン等)が投与された可能性もある。 そうすると、原告の病態からは、本件手術1の際、原告にDICを発症 する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショッ ク状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったことはうかがわれず、原告の病態から、本件手術1の際に特定フィブリノゲン製剤投与が推認されるということはできない。 イ本件手術2について原告の陳述、供述によれば、本件手術2の際の原告の病態について、手 術に出血を伴ったこと、術後に200㏄の輸血を受けたこと、輸血以外の点滴が行われたことが認められる。 しかしながら、上記アにおいて説示したところと同様に、本件手術2の際にも、大量出血があったと認めるに足りないし、どのような薬剤を点滴投与されたか特定することはできないから、原告の病態から、本件手術2 の際、原告にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったと認めることはできない。 したがって、原告の病態から、本件手術 ICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったと認めることはできない。 したがって、原告の病態から、本件手術2の際に特定フィブリノゲン製剤投与が推認されることはない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件各手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ 本件各手術が薬価収載前にされたこと 証拠(乙統16、丙B1)によれば、フィブリノゲン製剤は昭和39年6月に製造承認がされたものの、薬価収載されたのは昭和40年11月であり、本件各手術が行われた昭和40年3月頃は、製造承認直後頃で、フィブリノゲン製剤は医療機関で容易に入手できるほど流通していたとは考え難く、同時点で原告に同製剤が投与されたとは考えにくい。 ⑸ 他原因の存否 原告は、本件各手術の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介 した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、本件各手術の際には原告に対する輸血が行われたと認められること、昭和40年当時、輸血後肝炎発症率は31.1%であったと いること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、本件各手術の際には原告に対する輸血が行われたと認められること、昭和40年当時、輸血後肝炎発症率は31.1%であったと報告されていること(乙統230(166 頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件各手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が 合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件各手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由 がないからこれを棄却することとする。 別紙個29(原告番号109番) 以下、本別紙中では、原告番号109番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、昭和63年10月30日、 ・・・・・・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において第1子を自然分娩で出産(以下「本件出産」という。)した際、大量出血があり、その止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和63年10月30日、本件病院において、第1子を出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・・医師(以下「・・・医 である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和63年10月30日、本件病院において、第1子を出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・・医師(以下「・・・医師」という。)である。(甲C10902の2) イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄の「頭位」に〇印が付けられ、「特記事項」欄に「高年初産」「分娩第2期遷延」「会陰切開縫合」「鉗子術」「胎児仮死」「臍帯頸部巻絡1回」との記載が、「出血量」欄には「多量」に〇印が付けられ、横に「1405㎖」との記載がある(甲C1 0902の2)。 本件母子手帳7頁「妊婦の職業と環境」の「妊娠してからの状況」欄に原告の筆跡で「前置胎盤で休職」とある(甲C10902の2)。 本件母子手帳22頁「保護者の記録【3~4か月頃】」には、原告の筆跡で、「平成1年2月9日記録」の自由記載欄に「出産時に出血多量だっ たため、輸血をしましたが、その後、非A非B型肝炎になっていることが わかりました。」との記載がある(甲C10902の2)。 ウ本件病院の昭和63年の分娩原簿のうちの本件出産に関する部分(以下「本件分娩原簿」という。)の「診断」欄には、「高年初産、会陰進展不良、出口部狭窄、第Ⅱ期遷延、胎児仮死、臍帯頸部巻絡1回、頸管裂傷」、「処置」欄には、「会陰切開、裂傷縫合、鉗子術、硬膜外麻酔」との記載 が、「出血量」欄には、「1405」、「住所」欄には「(輸血后肝炎)」との記載がある(甲C10904)。 エ原告は、本件出産後に本件病院とは別の病院で非A非B型肝炎との診断を受けたために、平成元年2月10日頃、本件病院医師との間で話合いを持ち 「(輸血后肝炎)」との記載がある(甲C10904)。 エ原告は、本件出産後に本件病院とは別の病院で非A非B型肝炎との診断を受けたために、平成元年2月10日頃、本件病院医師との間で話合いを持ち、その際の医師の説明として、ノート(以下「本件ノート」という。) に「産科では良いと思う方法」「出血多量輸血肝炎」「輸血しなければ命が危い」「5~10%は輸血後肝炎」「700㏄出血で輸血の準備」「1000㏄で輸血」などと記録した(甲C10902、05(2枚目)、原告本人7頁)。 ⑵ 原告は、平成11年にC型慢性肝炎の診断を受けた(甲C10901)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳、本件分娩原簿が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C10908、弁論の全趣旨)。 ⑷ 本件病院には、本件出産当時、特定フィブリノゲン製剤が納入されていた(甲C10906)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(31、33頁))において、「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患 ・用途」として、「腟壁裂傷等の産中・産後の出血(499件)」の記載 があり、図表の「産科疾患」欄に「子宮頸管裂傷、腟壁裂傷、前置胎盤」が挙げられているとおり、弛緩出血の症例において、止血のために特定フィブリノゲン製剤が静注された実例が実際にある。 そうすると、原告は、妊娠中に前置胎盤を指摘されていて、分娩の際は会陰進展不良、出口部狭窄、頸管裂傷という病態で、出血量が1400㎖に達 していることから、中 剤が静注された実例が実際にある。 そうすると、原告は、妊娠中に前置胎盤を指摘されていて、分娩の際は会陰進展不良、出口部狭窄、頸管裂傷という病態で、出血量が1400㎖に達 していることから、中間報告書に照らしてフィブリノゲン製剤を投与された蓋然性は極めて高い。 原告が、本件出産の約3か月後に非A非B型肝炎と診断され、その原因について、本件病院医師と話し合った際、当時医師らには、特定フィブリノゲン製剤が肝炎の原因となるという認識がまだ広まっていなかったことから、 もっぱら輸血後肝炎であると説明されていたものである。 したがって、原告は、本件出産の際、前置胎盤、膣壁裂傷ないし頸管裂傷により1400㎖以上の出血があり、輸血と特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた蓋然性が極めて高い。 ⑵ 第2子の出産は、帝王切開術であったが、出血も中量で特に異常はなか った。そうすると、本件出産以外に、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し くは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、原告については、1405㎖の出血をした事実が認められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件出産時の重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、身体症状等は不明であるなど、産科DICスコアの点数を加算すべき事情は認められ ない。したがって、原告について、本件出産時、低フィブリノゲン血症又 はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 一方、原告は、本 られ ない。したがって、原告について、本件出産時、低フィブリノゲン血症又 はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 一方、原告は、本件出産時、陣痛促進剤を点滴投与された旨、出血に対する処置として輸血をされた旨述べるものの、医師等から止血措置に関する説明等は受けておらず、特定フィブリノゲン製剤を含む止血剤使用の有 無等はわからないと述べている。また、原告がC型肝炎に感染していると判明した後の本件病院医師らとの話合いにおいても、同医師らはC型肝炎感染原因として出産時の輸血を示唆するにとどまり、特定フィブリノゲン製剤を含む止血剤の使用の有無については一切明らかになっていない。 しかも、本件出産より前の昭和63年6月2日頃には、特定フィブリノ ゲン製剤について、ミドリ十字から納入先医療機関に対し肝炎の緊急安全性情報が配布されていたから、仮に本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤の投与があれば、同医師らからその旨の説明があるはずである。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件出産時における本件病院ないし・・・師の投 与方針を明らかにする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) 原告は、平成元年2月にはC型肝炎ウイルス感染が判明した。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、HCV-RNA検査(+)の結果及びHCV抗体検査(+)の結果を認めることはできないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の 明した。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、HCV-RNA検査(+)の結果及びHCV抗体検査(+)の結果を認めることはできないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張) 提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、前置胎盤、膣壁裂傷ないし頸管裂傷により140 0㎖以上の出血があり、輸血と特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた蓋然性が極めて高いと主張するが、本件出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳、本件分娩原簿の記載及び原告の供述によれば、原 方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳、本件分娩原簿の記載及び原告の供述によれば、原告の病 態について、自然分娩の際に会陰進展不良、出口部狭窄、第Ⅱ期遷延が生 じ、会陰切開及び鉗子術を行って分娩に至り、その過程で頸管裂傷又は膣壁裂傷を生じ、出血量が1405㎖に及んだという事実が認められ、1000㎖以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる(乙統200(120頁))。 イしかしながら、本件各証拠によっても、本件出産前後を通じ、原告の全 身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとして、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、妊娠中に前置胎盤と診断されていたが、本件出産の当日に辺縁前置胎盤であるから自然分娩ができるといわれた経過があり、本件母子手帳 や本件分娩原簿には胎盤異常の記載がないこと(甲C10902の2、04、原告本人2頁)、本件出産後、会陰切開縫合による止血処置が行われていること(甲C10902の2、04)、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、上記縫合術を含む手術療法以外に、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法 や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、原告自身、本件出産後の入院中も、特定フィブリノゲン製剤を含む止血剤の使用の説明を受けたことがなく、使用された認識はなかったと述べていること (394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、原告自身、本件出産後の入院中も、特定フィブリノゲン製剤を含む止血剤の使用の説明を受けたことがなく、使用された認識はなかったと述べていること(原告 本人25頁)などからして、1000㎖以上の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 ウそして、原告は、本件出産から約3か月後の平成元年2月頃、本件病院とは別の病院で非A非B型肝炎との診断を受け、その原因について原 告と本件病院医師らとの間で話合いを持ったところ、その際、同医師ら からは、もっぱら輸血後肝炎であるという示唆、説明があり、特定フィブリノゲン製剤を含む止血剤の使用に関する話題が全くなかったものである(原告本人9頁)。しかし、昭和62年に青森県三沢市の産婦人科でフィブリノゲン製剤の副作用で妊婦が肝炎に連続感染したという報告がされ、昭和63年6月にはミドリ十字からフィブリノゲン製剤の納入 先医療機関に対し緊急安全性情報が配布されたこと(甲C10906、乙統180、187)に照らせば、同製剤を使用していた場合に、肝炎の原因に関する上記の話合いの話題に上らないことは考え難い。 ⑶ 本件病院又は担当医の投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師その他の 本件病院の医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 この点、本件ノートの記載内容及び原告の供述によれば、平成元年2月10日頃の話合いの際、原告は、本件病院の医師らから、本件病院における輸血実施方針について、①700㏄出血で輸血の準備を行い、1000㏄以上の出血で輸血を行うこと、②1000㏄以上の出血でも、ヘスパンダーとい 合いの際、原告は、本件病院の医師らから、本件病院における輸血実施方針について、①700㏄出血で輸血の準備を行い、1000㏄以上の出血で輸血を行うこと、②1000㏄以上の出血でも、ヘスパンダーとい う留まりのよい輸液を倍量入れて、血圧が落ち着けば輸血しないことの説明とともに、本件出産の場合は、1400㏄の出血で、血圧が80まで下がったので輸血したことなどの説明があったとうかがわれるものの(甲C10905(4枚目))、特定フィブリノゲン製剤投与の要否については言及がなかったもので、むしろこの説明内容からは、本件出産の際の出血量が認めら れる場合の担当医師の対応方針の選択肢に特定フィブリノゲン製剤投与が含まれていなかったことがうかがわれる。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染 しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、そ の他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告に対しては、本件出産の際に輸血 が行われたこと(原告本人5、6頁)、輸血後C型肝炎発症率は、平成元年11月にHCV抗体検査が導入されるまでは7.7%であったという報告があり、同じく輸血後肝炎発症率は8.7%であったと報告されていること(乙統2(17頁)、218(723頁)、230(165、166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した いう報告があり、同じく輸血後肝炎発症率は8.7%であったと報告されていること(乙統2(17頁)、218(723頁)、230(165、166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事 実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということは できない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由 がないからこれを棄却することとする。 別紙個30(原告番号110番) 以下、本別紙中では、原告番号110番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、・・・・・(・・・・・・・・・・生、平成16年3月27日死亡。 以下「・・・」という。)が、昭和41年11月15日、・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において自然分娩により第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して、死亡したと主張して、・・・の相続人である原告が被告に対し、特措法6条1号に よる給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・・の長女である(争いがない)。 イ・・・は、平成16年3月27日、死亡した。死因は、慢性C型肝炎及 び肝硬変 める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・・の長女である(争いがない)。 イ・・・は、平成16年3月27日、死亡した。死因は、慢性C型肝炎及 び肝硬変を原因とする肝細胞癌と診断されている(甲C11001、03)。 ⑵ 本件出産(甲C11004、弁論の全趣旨)ア・・・は、昭和41年11月15日午前10時29分頃、本件病院において、第1子である原告を出産した(本件出産)。 イ本件出産は、自然分娩による出産であり、本件病院の・・・・・医師(以下「・・・医師」という。)が担当医である。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)7頁「お産の記事」には、以下の記載がある。 「分べん」欄 「正常・異常」の「正常」に付けられた〇印が二重線で消され、その 上から「・・・」の訂正印が押されており、「異常」に〇印が付けられている。「種類原因」の不動文字の横には「弛緩性出血」と記載されている。 「出血」欄「少量・中等量・多量」の「少量」に付けられた〇印が二重線で消さ れ、その上から「・・・」の訂正印が押されており、「多量」に〇印が付けられている。その横には「約1500瓦」と記載されている。 「産科手術」欄の「無・有」では、「無」に〇が付けられている。 ⑶ ・・・は、平成2年頃、慢性C型肝炎と診断され、平成12年7月7日までにC型肝硬変、肝細胞癌の診断を受けた(甲C11011)。 ⑷ 回答書の作成(甲C11006、弁論の全趣旨)・・・医師は、平成23年4月頃、「患者名・・・・・殿に関する回答」(甲C11006添付。以下「本件回答書」という。)を作成した。 本件回答書においては、「血液製 C11006、弁論の全趣旨)・・・医師は、平成23年4月頃、「患者名・・・・・殿に関する回答」(甲C11006添付。以下「本件回答書」という。)を作成した。 本件回答書においては、「血液製剤の使用について」の下の「1 有」、「2 無」、「3 不明」のうち、「3 不明」に〇印が付けられており、 その横に手書きで「輸血と止血剤を使用したと思いますが薬剤名は覚えておりません。当時、私は勤務医として・・・・病院に勤務しておりましたが、手元に記録はございません。」とある。その下の「貴院名」欄には「・・・・・・・・・」、「ご担当者」欄には「・・・・・」と自署されている。 ⑸ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が現存するものの、診療録、レセプトその他一切現存していない(甲C11006、弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張) ⑴ ・・・は、分娩後、弛緩性出血により約1500ℊもの大出血を起こし、止血もされなかったことから、本件病院は大騒ぎになり、午後の外来が中止になるほどであった。この出血態様からすると、・・・が低フィブリノゲン血症又はDICに至っていた可能性も十分に考えられる。 ⑵ 仮に・・・が低フィブリノゲン血症又はDICに至っていなかったとして も、・・・に対し、弛緩性出血に対する止血処置としてフィブリノゲン製剤が投与された可能性は極めて高い。 このことは、①薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書において、フィブリノゲン製剤が使用されていた疾患として弛緩性出血が報告されていること、②本件出産に近接した時期の医学文献 い。 このことは、①薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書において、フィブリノゲン製剤が使用されていた疾患として弛緩性出血が報告されていること、②本件出産に近接した時期の医学文献において、弛緩 性出血によって大量出血に起因する出血性ショック又は低フィブリノゲン血症が生ずる危険性が指摘されており、その対策又は治療としてフィブリノゲン製剤の投与が紹介されていることなどからすれば、当時の医学的知見として、㋐弛緩性出血は低フィブリノゲン血症又はDICの原因となり得るもので、それ自体がフィブリノゲン製剤投与の対象疾患であること、かつ、㋑弛 緩性出血を含む産科大量出血に対するフィブリノゲン製剤が有効であることが知られていたと認められること、以上の各事実から裏付けられる。 ⑶ ・・・医師は、本件回答書において、本件出産の際、・・・に対して輸血と止血剤を使用した旨述べた。さらに、・・・医師は、平成29年頃、原告に対し、電話口で「昭和41年に弛緩出血で1500㏄ならフィブリノゲン 使ったと思う」と自ら述べている(以下「本件発言」という。)。 ⑷ 本件病院が最新の医療設備を備えた総合病院であったことからすると、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたことは明らかである。 ⑸ ・・・には、本件出産の際以外に大量出血をした経験がなく、その他のC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられない。 ⑹ したがって、本件出産の際、・・・に対し、止血処置として、特定フィ ブリノゲン製剤が投与された可能性が極めて高い。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要 が極めて高い。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性が認められる必要があるところ、本件の各証拠をみても、・・・が低フィ ブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。・・・については、本件出産後弛緩出血した事実(出血量約1500ℊ)が認められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、本件出産時における・・・の身体症状等は不明であり、点数を算定すべ き事情は認められない。 また、弛緩出血の治療としては、子宮収縮剤の使用といった薬物療法のほか、双手圧迫法、全身管理など様々なものが考えられるから、・・・に1500ℊの弛緩出血があったからといって、直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるものではない。 さらに、原告の供述によっても、弛緩出血に対する処置の内容は、「血が出ないように、手で押さえてくれてた」、「輸血はした」、「止血のお薬と輸血の準備があって助かった」という程度で、止血剤にはアドナやトランサミンなど特定フィブリノゲン製剤以外にも複数存在することからすれば、・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 ⑵ 本件回答書は、・・・医師の証人尋問を経ておらず、そもそも・・・医師が作成したかすら不明である。この点をおいても、本件回答書の記載内容からは、・・・に止血剤が使用されたと認めることはできず、仮に、止血剤の使用が一定程度推認されるとしても、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。 、本件回答書の記載内容からは、・・・に止血剤が使用されたと認めることはできず、仮に、止血剤の使用が一定程度推認されるとしても、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。 ⑶ 本件発言は、原告の伝聞供述にすぎないから、そもそも・・・医師が本 件発言をしたかも不明である。この点をおいても、本件発言の内容は、・・・に特定フィブリノゲン製剤を投与したことを認めるものではなく、同人にフィブリノゲン製剤が投与された可能性を一般論として述べたにとどまり、・・・医師の投与方針を明らかにするものでもない。しかも、本件回答書の内容から変遷しており、かつ、その合理的理由の説明もないから、 本件発言は、信用できない。 ⑷ したがって、本件出産の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 ・・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) ・・・は、昭和52年頃、健康診断を受けた際、非A非B型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、死亡した事実の有無(原告の主張)・・・は、証拠(甲C11001、03 の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、死亡した事実の有無(原告の主張)・・・は、証拠(甲C11001、03、11ないし16)が示すとおり、 慢性C型肝炎が進行し、肝硬変を経て肝細胞癌を発症し、死亡した。 (被告及び補助参加人の主張)直接の死因となった肝細胞癌について、診断の根拠となる各種検査結果は提出されておらず、事実関係を確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告は、本件出産の際の弛緩出血に対する止血処置として、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性が極めて高いと主張するが、本件出産の際、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・・の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵ウ)及び原告の供述(原告本人14頁) によれば、・・・の病態について、自然分娩の後、弛緩性出血があり、出血量が約1500ℊに及んだこと、上記出血に対する処置として、輸血を受けたことが認められ、1000㎖以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる(乙統200(120頁))。 イしかしながら、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な 止血方法としては、手術療法 0㎖以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる(乙統200(120頁))。 イしかしながら、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な 止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94 (277頁以下)、98(28頁))からして、大量出血があったという 事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 この点、原告は、・・・が生前、当時の病態について、・・・の出血が止まらず、本件出産時に本件病院の産婦人科に勤務していた医師や看護師が総出で治療に当たったため、午後の外来診療が中止になるほどであった と述べていたことを強調し、・・・が低フィブリノゲン血症又はDICに至っていた可能性も十分にあると主張するが、そもそも本件出産当時の本件病院の診療体制も不明である上に、・・・の全身状態や処置の状況などの出血量以外の病態に関する情報が何ら明らかでないから、・・・の上記供述から、1500ℊを超える出血があったとか、・・・に出血傾向が出 現したなどとして、低フィブリノゲン血症又はDICに至っていた可能性を肯定することはできない。 また、原告は、・・・が生前、「止血の薬と輸血のおかげで助かった」と述べていたと供述する(原告本人14頁)が、上記のとおり、一般的な止血方法のうちにも薬物療法があることからすると、「止血剤」が一般的 な止血剤や子宮収縮剤を意味する 輸血のおかげで助かった」と述べていたと供述する(原告本人14頁)が、上記のとおり、一般的な止血方法のうちにも薬物療法があることからすると、「止血剤」が一般的 な止血剤や子宮収縮剤を意味することも十分に考えられるから、これが特定フィブリノゲン製剤を意味し、同発言から同製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件回答書について・・・医師は、本件回答書において「輸血と止血剤を使用したと思います が薬剤名は覚えておりません。当時、私は勤務医として・・・・病院に勤務しておりましたが、手元に記録はございません。」と述べている。 本件回答書の作成経緯については、原告が、平成23年3月27日付けで、・・・医師に対し、・・・が本件出産後、大量出血を起こし、病院が外来診療中止になるほどの騒動になったこと、・・・がその際に止血処置と輸血を 受けたこと、本件母子手帳に「弛緩性出血」「多量」「約1500㏄」と記 入されていること、・・・が慢性C型肝炎に罹患し、肝硬変・肝細胞癌に病状が進行して亡くなったことなどを説明した上で、本件出産当時、止血にフィブリノゲン製剤を使用していた、又は、止血剤を使用していたという医師の記憶が訴訟で有利な証拠になるので、立証に協力してほしいと記載した手紙を送付したところ、同年4月14日に・・・医師から本件回答書が返送さ れてきたものと認められる(原告本人(4、17頁)、甲C11008)。 上記作成経緯を踏まえると、本件回答書は、・・・医師が、本件出産の際に実際に行った処置に関する記憶か、あるいは当時の自身の治療方針に関する記憶を基に、本件出産の際に・・・に対し輸血及び止血剤を使用した可能性を述べたものと認められる。 ただし、上記⑵ に実際に行った処置に関する記憶か、あるいは当時の自身の治療方針に関する記憶を基に、本件出産の際に・・・に対し輸血及び止血剤を使用した可能性を述べたものと認められる。 ただし、上記⑵のとおり、「止血剤」には一般的な止血剤や子宮収縮剤も含まれるところ、・・・医師自ら「薬剤名は覚えておりません」とし、「血液製剤の使用について」という問いに対しても「不明」と回答していることからすると、「止血剤を使用した」という本件回答書の記載から、・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認される とはいえない。 ⑷ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針ア本件発言について原告は、平成29年頃、・・・医師が「昭和41年の弛緩出血1500だったら、フィブリノゲンは使ったと思うよ。でも記録とかないから ね。」と述べたと供述し(原告本人19頁)、上記投与方針に照らし、・・・に対する特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されると主張する。 しかしながら、原告が、・・・医師あての平成29年9月1日付け手紙(甲C11009)において、本件母子手帳に弛緩性出血により1500㏄の出血量に及んだ旨の記載があると改めて説明し、その後、電話 口で、原告が昭和41年の出血で弛緩出血、多量出血の時に・・・医師 がフィブリノゲン製剤を投与していたかと尋ねたのに対し、・・・医師が「ああ、お母さんの場合ね、使ったと思うけど」と述べたという経過があったとしても、続いて、「記録がないから。こういう申請。役所仕事は証明書がないと難しいと思うよ。」と述べたとあるから(甲C11010)、本件発言の部分のみをとらえて、・・・医師が本件出産の際 の特定フィブリノゲン製剤投与の可能性を肯定したとみる 。役所仕事は証明書がないと難しいと思うよ。」と述べたとあるから(甲C11010)、本件発言の部分のみをとらえて、・・・医師が本件出産の際 の特定フィブリノゲン製剤投与の可能性を肯定したとみることは困難である。仮に本件発言により上記の可能性を肯定したものとした場合、平成23年4月に作成した本件回答書の内容と本件発言の内容が異なることになるが、・・・医師から変遷の理由について特段合理的な説明はなく(原告本人27頁)、本件発言の根拠は明らかでないから、本件発言 の存在が・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与を合理的に推認させるものということはできない。 イその他、本件出産当時における本件病院又は・・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針を明らかにする客観的証拠はない。 原告は、本件出産前後に発表された医学文献の記載に照らし、本件出 産当時の医学的知見として、弛緩性出血自体がフィブリノゲン製剤の投与の対象疾患として考えられており、フィブリノゲン製剤が弛緩出血を含む産科大量出血に対して有効な治療法であると確認されていたと主張するが、産科大量出血に対する止血処置は上記⑵イのとおり様々であり、フィブリノゲン製剤の投与方針も医師によって一義的ではないから、上 記の医学的知見を基に、本件出産当時の本件病院又は・・・医師のフィブリノゲン製剤の投与方針を認定することはできない。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件出産時を除いては、・・・が大量出血をしたり、手術を受けたりしたことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない と主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染して いるヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、 る原因が考えられない と主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染して いるヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるところ(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、・・・に対しては、本件出産の際、輸血が行われていること、昭和41年当時の輸血後肝炎発症率は約31.1%であったと報告されていること(乙統23 0(166頁))などを総合すれば、・・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、・・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実を合理的に推認することはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個31(原告番号112番) 以下、本別紙中では、原告番号112番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和43年秋頃、・・・・ 病院(以下「本件病院」という。)において、不正出血に対する治療(以下「本件治療」という。)を受けた際、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求め を受けた際、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ア原告は、昭和43年の高等学校第3学年在学中、若年性出血で入院加療のために長期欠席した(甲C11203)。 イ原告は、上記アの欠席期間中、本件病院に入院した(甲C11215)。 ⑵ア原告は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 イ原告は、遅くとも平成12年にはC型慢性肝炎との診断を受けた(甲C11201)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C11204)。 ⑷ 本件治療に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプト その他一切現存しない。また、本件治療の担当医師その他本件病院の医療関係者から、本件治療に関する陳述は得られていない。(弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件治療の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告は、昭和43年秋に本件病院において若年性出血による多量の出血 を止めるために特定フィブリノゲン製剤を投与された。 このことは、①原告が若年性出血により65日間高等学校を欠席したこと、②生理が終わって1週間ほどして不正出血が始まり、日を追って出血量が増え、出血が止まらなかったため、近医に入院して輸血処置を受けたが、出血が止まらずに本件病院に転院となったこと、③本件病院の担当医 師であった・・・・医師(以下「・・医師」という。)から、出血原因が不明であるといわれたが、「 近医に入院して輸血処置を受けたが、出血が止まらずに本件病院に転院となったこと、③本件病院の担当医 師であった・・・・医師(以下「・・医師」という。)から、出血原因が不明であるといわれたが、「輸血しながら止血剤を使って水道の蛇口を閉めるようにすこーしずつ血を止める治療をします」と言われたこと、④その後、点滴と輸血を繰り返し、出血量が減ってきて、完全に血が止まるまでに1か月以上かかったこと、⑤輸血を1日に1本と止血剤と輸液の点滴 を数本やっていたこと、⑥針が太くて両腕の注射痕がケロイド状になって現在も残っていること、⑦・・医師を含むチームから、病名が医学書になく、「若年性出血」という病名に決めたと聞かされたこと、⑧後のテレビで見たミドリ十字のフィブリノゲンの瓶と同じ瓶が点滴でぶら下がっていたのを原告がはっきり覚えていること、⑨本件病院が特定フィブリノゲン 製剤の納入医療機関であったことなどから裏付けられる。 ⑵ 原告は2度の出産を経験しているが、本件治療の際以外に多量に出血したことはないから、本件治療の際以外は、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件治療の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、本件各証拠に照らしても、原告が本件病院入院中に低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情はない。また、DICとなるには 基礎疾患の存在が必要であるところ、これを認めることができないから、D ICの治療若しくは予防の必要があったと認められない。 ⑵ 原告は、若年性出血の止血のために止血剤が使用された 基礎疾患の存在が必要であるところ、これを認めることができないから、D ICの治療若しくは予防の必要があったと認められない。 ⑵ 原告は、若年性出血の止血のために止血剤が使用されたと主張して、3本の医学論文を提出するが、これらの論文を見ても、若年性出血における一時的な止血方法がホルモン剤の投与であることは明らかである。また、その他の止血方法として止血剤について言及するものについても、トラン サミン、アドナといった一般的な止血剤のみならず、低フィブリノゲン血症に対する治療のために用いられていた特定フィブリノゲン製剤の投与を想定していると解することは困難である。 したがって、上記医学論文の記載によっても、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを合理的に推認することはできない。 ⑶ また、原告は、本件病院入院中に受けた点滴が特定フィブリノゲン製剤であったと供述するが、原告は、・・医師から原告のホルモンバランスが崩れていることを疑っていると聞かされていたこと、若年性出血の1次的な止血方法はホルモン剤の投与であること、・・医師が言う止血剤もホルモン剤である可能性が高い。これは、原告が入院当時頭痛や吐き気を訴え ていたこととも整合する。 さらに、原告が点滴された薬品が特定フィブリノゲン製剤であったと述べる理由も感覚的なものにとどまり、既にC型肝炎ウイルスに感染していたことが要因となって、平成23年のテレビ番組報道から、無意識のうちに同一性に関する記憶違いが生じた可能性も相当程度疑われる。 ⑷ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件治療時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を 医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件治療時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無 (原告の主張)本件治療の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 C型慢性肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成6年秋頃、C型肝炎ウイルス感染がわかり、その後、継続的に治療を受け、遅くとも平成12年にはC型慢性肝炎の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 提出された証拠からは、各種検査結果により6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件治療の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告は、本件治療の際、若年性出血による多量の出血を止めるために特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件治療に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告 の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア て認定できる原告 の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告は、本件治療時の状況について、①生理が終わって1週間ほどして 不正出血が始まり、日を追って出血量が増え、出血が止まらなかったため、 近医に入院して輸血を受けたが、出血が止まらずに本件病院に転院となったこと、②本件病院の・・医師から、「輸血しながら止血剤を使って水道の蛇口を閉めるようにすこーしずつ血を止める治療をします」と言われ、その後、点滴と輸血を繰り返し、出血量が減ってきて、完全に血が止まるまでに1か月以上かかったこと、③輸血を1日に1本と止血剤と輸液の点 滴を数本やっていたこと、④・・医師を含むチームから、病名が医学書になく、「若年性出血」という病名に決めたと聞かされたことなどを陳述、供述し、上記陳述、供述から、原告が高校3年生在学当時、若年性出血のため、不正出血が続き、本件病院に入院し、点滴と輸血を繰り返す治療を受け、出血量が減ったことが認められる。 イ昭和35年ないし昭和45年頃の医学論文によれば、若年性出血は、機能性子宮出血の一種で、思春期に初経があった後、なおしばらくの期間卵巣機能がいまだ十分に整わない時期において長期間の出血を見るものというとされている。その療法としては、昭和40年代には、内分泌系の失調が主である以上、ホルモン療法がその主体をなすのは当然と考えられてお り、エストロゲンなどのホルモン剤の投与又は各種の混合ホルモンが用いられ、10日間連続投与などが紹介されている。そして、ホルモン療法に全身療法として貧血が強いと輸血を併用するのが望ましいとされ、輸血による補血作 ンなどのホルモン剤の投与又は各種の混合ホルモンが用いられ、10日間連続投与などが紹介されている。そして、ホルモン療法に全身療法として貧血が強いと輸血を併用するのが望ましいとされ、輸血による補血作用と血中のホルモン作用もある程度期待して投与することが紹介されている。 また、出血が長期にわたり、かつ激しい場合には、イプシロン―アミノカプロン酸剤やトランサミンの併用が望ましく、一方感染の頻度も高くなるから、抗生物質の併用も推奨され、さらに貧血に対して輸血等が必要の場合もあるとされている。 (以上、甲C11205、06、07) したがって、本件治療の当時、若年性出血に対する治療としては、第1 にホルモン療法が主体となり、各種のホルモン剤が連日投与されたほか、全身状態に貧血がみられれば、輸血が併用されていたこと、出血が長期かつ激しい場合には止血剤の使用も考えられたが、トランサミンなどの一般的な止血剤が推奨されていたもので、本件証拠上、特定フィブリノゲン製剤の使用に言及する文献はない。 よって、若年性出血に関する医学的知見に照らすと、原告に多量の不正出血があったとしても、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、むしろ、これに対してはホルモン療法を中心とした治療が行われたものとうかがわれ、輸血や止血剤の併用も考えられたものの、トランサミンなどの一般的な止血剤で あった可能性が十分考えられるもので、特定フィブリノゲン製剤の投与が合理的に推認されるということはない。 ウこの点、原告は、出血が急激かつ大量であったため、ホルモン治療では到底間に合わなかったものと思われ、かつ、担当医師が、止血剤としてトランサミンやアドナで 合理的に推認されるということはない。 ウこの点、原告は、出血が急激かつ大量であったため、ホルモン治療では到底間に合わなかったものと思われ、かつ、担当医師が、止血剤としてトランサミンやアドナで足りると考えたとは到底思われないと主張するが、 上記イのとおり、若年性出血の原因については、内分泌系の失調すなわちホルモン異常であると考えられているから、その原因となるホルモン療法の中で各種の療法が試みられることを第1選択とみることが相当であり、止血剤の選択としては、具体的な出血状況が明らかでない点をおくとしても、一般的な止血機構の改善・増強を図る目的の止血剤(アドナ、トラン サミン、イプシロン―アミノカプロン酸(抗プラスミン剤)など)により止血を期待することには十分合理性があるというべきである(乙統82)。 また、原告は、・・医師からは当初原告の母に対し子宮摘出が提案されたほどであったと主張し、原告の供述もこれに沿うが(原告本人3頁)、本件証拠上、若年性出血について、出血の程度が激しいからと言って子宮 摘出の選択を挙げる医学文献はなく、上記の提案がされたという原告母か ら原告に対する説明については、直ちに採用し難い。 さらに、原告は、本件病院入院中、毎日点滴されていた薬剤が特定フィブリノゲン製剤であると主張し、平成23年当時、薬害C型肝炎に関するテレビ報道に接し、ミドリ十字のフィブリノゲンの瓶と同じ瓶が点滴でぶら下がっていた様子を覚えているとの原告の供述(原告本人5、14、1 5頁)があるが、上記⑴で認定した原告の病態に照らすと、直ちに原告の上記供述を採用できない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件治療時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲ 原告の病態に照らすと、直ちに原告の上記供述を採用できない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件治療時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブ リノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件治療の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、 その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告が本件治療による入院期間中毎 日のように輸血を受けていたこと、昭和43年当時、輸血後肝炎発症率は16.2%であったと報告されていること(乙230(166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件治療の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件治療の際の 原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件治療の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論 以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとす の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論 以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個32(原告番号119番) 以下、本別紙中では、原告番号119番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・・生、平成26年1 0月13日死亡。以下「・・」という。)が、①昭和52年5月3日に、・・・・・・病院(以下「本件病院1」という。)において、②昭和54年2月17日に、・・・・病院(現・・・・・・・・・・・・・・。以下「本件病院2」という。)において、③昭和56年7月18日に、本件病院2において、それぞれ自然分娩による出産(以下、個別の出産を表すときは「本件 出産1」などといい、3回の出産を総称するときは「本件各出産」という。)をした際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、・・の相続人であり、訴訟承継人である原告が、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告は、・・の夫である(争いがない)。 イ・・は、平成26年10月13日に死亡し、原告が訴訟上の地位を承継した。・・の死因は、肝細胞癌を原因とする肝硬変と診断されている。 (甲C11912、弁論の全趣旨)⑵ 本件出産1ア・・は、昭和52年5月3日午前8時45分、本件病院1において、第1子を出産した(本件出産1)。 イ本件出産1に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳1」とい 旨)⑵ 本件出産1ア・・は、昭和52年5月3日午前8時45分、本件病院1において、第1子を出産した(本件出産1)。 イ本件出産1に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳1」という。) 12頁には、「出産の状態」として、「出血量」欄に「多量(1700 ㎖)」、「出産時の児の状態」の「特別な所見処置」欄に「仮死Ⅰ度」の記載が、「分娩取扱者氏名」の「医師」欄に「・・・・」(以下「・・医師」という。)の記名押印があるが、「分娩の経過」欄には「頭位」とあるのみで、特記事項の記載はない。また、本件母子手帳13頁には、「産後の母体の経過」として、「母親自身の記録」欄には、・・の筆跡 で、「5/3ゆ輸血1000cc」と記載されている。(甲C11913、弁論の全趣旨)⑶ 本件出産2ア・・は、昭和54年2月17日午前11時37分、本件病院2において、第2子を出産した(本件出産2)。 イ本件出産2に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳2」という。)12頁には、「出産の状態」として、「分娩の経過」欄に「頭位」、「特記事項」欄に「atonish(ママ) bleeding(弛緩性出血)」、「出血量」欄に「多量(700㎖)」、「分娩取扱者氏名」の「医師」欄に「・・」(以下「・・医師」という。)、「助産婦」欄に「・・」の記 載がある。また、「出産の状態」の右上欄外に、・・の筆跡で、縦に「2」「〇」の記載がある。(甲C11914、原告本人6頁)⑷ 本件出産3ア・・は、昭和56年7月18日午前11時37分、本件病院3において、第3子を出産した(本件出産3)。 イ本件出産3に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳3」という。)12頁には、「出産の状態」として、「出血量」 日午前11時37分、本件病院3において、第3子を出産した(本件出産3)。 イ本件出産3に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳3」という。)12頁には、「出産の状態」として、「出血量」欄に「1120㎖」、「分娩取扱者氏名」の「医師」欄に「・・・・」(以下「・・・医師」という。)、「助産婦」欄に「・・・・・」の記載があるが、「分娩の経過」欄には「頭位」とあるのみで、特記事項の記載はない。また、上 記「分娩の経過」欄には、・・の筆跡で、「輸血3本のうしゅく1本」 との記載が、本件母子手帳13頁には、「産後の母体の経過」として、「母親自身の記録」欄に、・・の筆跡で、「1w後発熱40℃入院5日間貧血内服 4w」との記載がある。(甲C11915、原告本人7頁)⑸ 第4子の出産 ア・・は、平成3年2月22日に第4子を自然分娩により出産した。・・には、同出産の際、弛緩性出血により、1690㎖の出血があった。 同出産は、・・・医師が担当した。(甲C11906、11916)イ第4子の出産についての診療録からは、・・の弛緩出血に対し、・・・医師が、PGF2α(子宮収縮剤)注入やマッサージなどをし、その 後も出血が認められたため、ヘスパンダーという輸液製剤を使用し、マッサージを中止してアイスノンを使用したことが認められるが、特定フィブリノゲン製剤投与の記載はない(甲C11906)。 ウ第4子は、C型肝炎ウイルスに感染しているとの診断を受けている(甲C11907、原告本人1頁)。 ⑹ ・・のC型肝炎ウイルスへの感染等・・は、遅くとも平成23年5月24日までにC型肝炎ウイルス感染による非代償性肝硬変の診断を受けた(甲C11901)。 ⑺ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤 ・のC型肝炎ウイルスへの感染等・・は、遅くとも平成23年5月24日までにC型肝炎ウイルス感染による非代償性肝硬変の診断を受けた(甲C11901)。 ⑺ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、 本件病院1には、昭和56年から同63年まで、本件病院2には、昭和55年から同62年まで、各納入実績がある(甲11910、11)。 ⑻ 本件病院1には、本件出産1に関する診療録その他の医療記録が現存しておらず、本件病院2には、本件出産2、3に関する診療録その他の医療記録が現存していない(弁論の全趣旨)。 本件出産3及び第4子の出産を担当した・・・医師は、令和3年4月2 4日頃に作成した意見書において、本件出産3に関し、「カルテや分娩記録、助産録は破棄され確認できませんが、弛緩出血に対して子宮収縮を促進するため子宮双手圧迫と子宮底マッサージを長時間行った記憶があります。ご家族のお話ではこのまま止血しなければ子宮摘出術になると伝えたようです。出血量が1000㎖を超え輸血も行い、長時間の子宮底マッサ ージでも止血しない状況では、窮余の一策でフィブリノゲンを投与した可能性がないとはいえません。ただし、明確な投与の記憶はありません。」と述べた(以下「本件意見書」という。甲C11908)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 本件出産1の際、・・は、1700㎖の出血があり、1000㎖の輸血を受けた。医師や看護師から、後日「母子ともに半々だった」と言われたほどの状況で、当時、出血が止まらない際は子宮を取らなければならなくなるかもしれないと聞 、1700㎖の出血があり、1000㎖の輸血を受けた。医師や看護師から、後日「母子ともに半々だった」と言われたほどの状況で、当時、出血が止まらない際は子宮を取らなければならなくなるかもしれないと聞かされていたのであるから、かかる状況下で特定フ ィブリノゲン製剤の投与がされないということはあり得ない。 ⑵ ①本件出産2の際、・・は、700㎖の多量出血があり、その出血が弛緩出血と評価されていること、②本件出産2の後、・・医師から、「止血剤を帝王切開の人の2倍使った」、「女は強いよなあ。男はあれだけ出血したら死んでいる。」と言われ、看護師から、「あなたは歩いてはいけな い人」と言われるほどの状態であったこと、③本件出産2の後、・・は体調を崩し、親族の助けを求めるほどの状況になり、黄疸症と診断されたことからすれば、その直前である本件出産時に・・に対して使用された止血剤が特定フィブリノゲン製剤であったことは明らかである。 ⑶ ①本件出産3の際、1120㎖の出血があり、輸血3本のほか、大量出 血に対応するための何らかの製剤である「のうしゅく1本」を受けたこと、 ②本件出産3の際、・・・医師から子宮摘出の可能性があると言われていたことからして、子宮摘出を免れて止血することができたのは特定フィブリノゲン製剤の投与を含む救命措置が施されたためであることが明らかである。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 本件の各証拠をみても、本件各出産の当時、・・が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。 また、本件各出産当時、・・には、約700㎖ないし1700㎖の出血があったことは認められるものの、いずれも産科DICスコアが1点加算される程度の出血量にとどまるものであって、このほかにDICの原因となる基 当時、・・には、約700㎖ないし1700㎖の出血があったことは認められるものの、いずれも産科DICスコアが1点加算される程度の出血量にとどまるものであって、このほかにDICの原因となる基 礎疾患、本件各出産時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、本件処置時における・・の身体症状等は不明であり、点数を算定すべき事情は認められない。 この点、原告は、・・について、本件各出産時の相当量の出血を示唆する医師等の発言があったことを・・から聞いたことや、本件出産2及び3の差 異は、出産後まで出血が続き、体調不良となることがあったこと、本件出産2の後に黄疸症と診断されたことを述べるが、本件各出産において、・・に生じた症状等について、これらの供述を裏付ける客観的な証拠はない上、仮にこれらの供述の内容を前提としても、直ちに・・について、本件各出産時に母子手帳の記載を超える大量の出血があったことや、そのほかDICの原 因となる基礎疾患、本件各出産時における重篤な障害やショック症状があったことなどが認められるものではない。 したがって、・・について、低フィブリノゲン血症、又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたか どうかを検討しても、本件出産1及び2の担当医師らの投与方針を明らかに する客観的な証拠はなく、本件意見書や原告の供述によっても、同担当医師らの投与方針は不明と言わざるを得ない。 また、本件出産3の担当医師である・・・医師の投与方針については、本件意見書においても、1000㎖の出血量を超え輸血を行い、長時間の子宮底マッサージでも止血しない状況であっても、なお特定フィブリノゲ また、本件出産3の担当医師である・・・医師の投与方針については、本件意見書においても、1000㎖の出血量を超え輸血を行い、長時間の子宮底マッサージでも止血しない状況であっても、なお特定フィブリノゲン製剤 を投与した可能性がないとはいえないと述べるにとどまり、・・について、子宮双手圧迫と子宮底マッサージにより止血しなかったとは述べておらず、特定フィブリノゲン製剤の投与を認めていない。 したがって、本件各出産時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)・・は、昭和60年ころの職場の健康診断で、非A非B型の肝炎であることが分かり、その後、これがC型肝炎であることが発覚した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 提出された証拠からは、HCV-RNA陽性の結果が確認できない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件各出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患した事実の有無 (原告の主張) ・・は、C型肝炎の治療として、平成16年から平成19年6月まで内服治療を、同年8月から平成20年7月までインターフェロン治療を受けたが、治療効果が現れず、その後、C型肝炎に罹患したことが原因で、肝硬変の症状が進んだ。 (被告及び補助参加人の主張) 原告が提出する診断書の診断根拠となる各種検査結果 フェロン治療を受けたが、治療効果が現れず、その後、C型肝炎に罹患したことが原因で、肝硬変の症状が進んだ。 (被告及び補助参加人の主張) 原告が提出する診断書の診断根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件各出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告は、本件各出産の際の出血に対する止血処置の一環として、・・に対 し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことは明らかであると主張するが、本件各出産の際、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑻)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間 接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 本件出産1についてア・・の病態本件母子手帳1の記載(前提事実⑵イ)及び原告の供述(原告本人4頁) によれば、・・の病態について、自然分娩の後、多量出血があり、出血量が1700㎖に及んだこと、そのため1000㎖の輸血が施されたことが認められ、分娩後24時間以内の1000㎖以上の後産期出血は、DICの原因となる基礎疾患に当たる。 しかしながら、本件各証拠によっても、本件出産1の前後を通じ、・・ の全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとし て、・・の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法と て、・・の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、 子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))からして、大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されると まではいえない。 この点、原告は、・・が、医師や看護師から、後日「母子ともに半々だった」と言われたことや、本件出産1の当時、出血が止まらない際は子宮を取らなければならなくなるかもしれないと言われていたことを強調するが、いずれも大量出血が認められる場合の一般的な説明にとどま るもので、上記の医師等の発言から特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 イ本件病院1における特定フィブリノゲン製剤の投与方針本件病院1は、特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関ではあるが、本件出産1当時における・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を 明らかにする証拠はなく、同医師その他医療関係者から、本件出産1に関する陳述も得られていないから、上記投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤投与が合理的に推認されることもない。 なお、・・・医師は、本件意見書において、出血量と輸血量をもとに、「当時は使用を推奨されていたフィブリノゲンを投与した可能 らして、特定フィブリノゲン製剤投与が合理的に推認されることもない。 なお、・・・医師は、本件意見書において、出血量と輸血量をもとに、「当時は使用を推奨されていたフィブリノゲンを投与した可能性はある と考えます。」と述べているが、本件出産3の際には、一般的な止血方 法を実施していたことを踏まえ、それでも止血しない状況に窮余の一策として投与可能性がないとは言えないと述べているのに(本件意見書1頁)、本件出産1では、一般的な止血方法の実施状況を踏まえずに可能性を肯定する根拠が不明であり、説得力に乏しく、信用できない。 ⑶ 本件出産2について ア・・の病態本件母子手帳2の記載(前提事実⑶イ)及び原告の供述(原告本人6頁)によれば、・・の病態について、自然分娩の後、弛緩出血し、出血量が700㎖に及んだことが認められる。 しかしながら、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的 な止血方法が存在していたことは、上記⑵アのとおりであり、弛緩性出血が生じた場合の対処法としても、止血のため子宮収縮促進法として、一般的な止血法及び子宮収縮剤の投与法のほか、いかなる止血法も無効な場合にはやむを得ず子宮摘出術を行うこととされていること(乙統97(252頁))、・・の場合子宮摘出に至っていないことなどからし て、弛緩性出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 この点、原告は、本件出産2の後、・・医師から、「止血剤を帝王切開の人の2倍使った」と言われたことを強調するが、上記のとおり、一般的な止血方法のうちにも薬物療法があることからすると、「止血剤」 が一般的な止血剤や子宮収縮剤を意味することも十分に考えられるか の人の2倍使った」と言われたことを強調するが、上記のとおり、一般的な止血方法のうちにも薬物療法があることからすると、「止血剤」 が一般的な止血剤や子宮収縮剤を意味することも十分に考えられるから、これが特定フィブリノゲン製剤を意味し、同発言から同製剤投与の事実が合理的に推認されることもない。 イ本件病院2における特定フィブリノゲン製剤の投与方針本件病院2は、特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関ではあるが、 本件出産2当時における本件病院2ないし・・医師の特定フィブリノゲ ン製剤投与方針を明らかにする証拠はない。また、・・医師その他当時の医療関係者から、本件出産2に関する陳述は得られていない。 かえって、本件病院2において、本件出産2の約2年後に本件出産3を担当した・・・医師は、本件意見書において、出血量が1000㎖を超えた弛緩出血の事案でも、輸血を行い、長時間の子宮底マッサージで も止血しない状況において、窮余の一策として特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性がないとはいえないと述べるにとどまるもので、ここからは出血量700㎖の弛緩出血である本件出産2の際の投与可能性を否定しているものとみる余地がある。 したがって、本件出産2の当時の本件病院ないし・・医師の投与方針 から特定フィブリノゲン製剤投与が合理的に推認されるともいえない。 ⑷ 本件出産3についてア・・の病態本件母子手帳3の記載(前提事実⑷イ)及び原告の供述(原告本人7頁)によれば、・・の病態について、自然分娩の後、多量出血があり、出血量 が1120㎖に及んだこと、そのため輸血3本(600㎖)が施されたことが認められる。 しかしながら、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な 娩の後、多量出血があり、出血量 が1120㎖に及んだこと、そのため輸血3本(600㎖)が施されたことが認められる。 しかしながら、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法が存在していたことは、上記⑵アのとおりであり、大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事 実が合理的に推認されるとまではいえない。 この点、原告は、①輸血3本のほか大量出血に対応するための何らかの製剤である「のうしゅく1本」を受けたこと、②本件出産3の際、・・・医師から子宮摘出の可能性があると言われていたことを強調するが、①について、・・が本件母子手帳3に記載した「のうしゅく1本」の意 味は明らかでなく、担当医師である・・・医師も本件意見書で言及して いないから、少なくとも特定フィブリノゲン製剤投与を推認させる事情には当たらない。また、②について、上記⑵アで説示したと同様、説明内容自体は大量出血が認められる場合の一般的な説明にとどまるもので、これから直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 イ本件意見書について・・・医師は、本件意見書において、「カルテや分娩記録、助産録は破棄され確認できませんが、弛緩出血に対して子宮収縮を促進するため子宮双手圧迫と子宮底マッサージを長時間行った記憶があります。」として、本件出産3とその後の処置の様子を記憶していると述べている。 本件意見書の作成経緯について、・・の生前、・・と原告の2人で・・・医師の診療所を訪れて面談した際、同医師が本件出産3の記憶があると話してくれたこと、最近、原告から連絡を取って同医師に意見書を書いてもらったことからすれば(原告本人9、29頁)、上 告の2人で・・・医師の診療所を訪れて面談した際、同医師が本件出産3の記憶があると話してくれたこと、最近、原告から連絡を取って同医師に意見書を書いてもらったことからすれば(原告本人9、29頁)、上記の限りでは信用できるというべきである。 ただし、本件意見書において、・・・医師は、・・に対し、子宮双手圧迫と子宮底マッサージといった一般的な止血方法が行われたという事実を述べるにとどまり、その後の事実経過を記憶していないにもかかわらず、上記止血方法が奏功せず、止血困難となったと仮定して、その場合に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性がないとはいえないという意見を述 べているにすぎず、上記事実の陳述以降の推論は裏付けとなる事実を伴わないものである。 したがって、本件意見書の内容から、本件出産3の際に上記製剤の投与が合理的に推認されるということはできない。 ウ本件病院2における特定フィブリノゲン製剤の投与方針 本件意見書の内容は、担当医である・・・医師が、本件出産3について 述べたものであるから、「弛緩出血による出血量が1000㎖を超え、輸血も行い、長時間子宮底マッサージでも止血しない状況」では、特定フィブリノゲン製剤を投与する方針を述べたものと理解できる。 しかし、上記イで述べたとおり、本件出産3に上記投与方針を当てはめたとしても、その状況にあったと認めるに足りる証拠がないから、上記製 剤の投与があったことが合理的に推認されるとは言い難い。 ⑸ 他原因の存否原告は、・・について、本件各出産後の大量出血以外には事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染し ているヒトの血 産後の大量出血以外には事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染し ているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、・・に対しては、本件出産1及び本件出産3の際、輸血が行われていること、昭和52年頃及び昭和56年頃の輸血後肝炎発症率は14.3%であったと 報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件各出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各出産の際の特定フィ ブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件各出産の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個33(原告番号120番) 以下、本別紙中では、原告番号120番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和52年7月12日、・・ ・・・・病院(以下「本件病院」という。)において子宮筋腫に対する治療として子宮全摘手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型 日、・・ ・・・・病院(以下「本件病院」という。)において子宮筋腫に対する治療として子宮全摘手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件手術の状況等ア原告は、昭和52年7月11日から同月31日まで子宮筋腫に対する治療で入院した(甲C12006)。 イ・・・・・・・・・・・の平成23年4月9日付け診断書には、原告 が上記アの入院の際、子宮筋腫の手術を受け、輸血を受けた旨申告していることを示す記載がある(甲C12001)。 ⑵ 原告は、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患した(争いがない。甲C12001、02、19、21)。 ⑶ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C12008)。 ⑷ 証明書の作成等ア・・・医師(以下「・・医師」という。)は、平成23年8月26日付けで証明書(以下「本件証明書」という。)を作成した。本件証明書に は、「昭和52年7月に・・・・・・病院に於いて・・・医師執刀の下 に単純子宮全摘出除術(・・術式)を行った。麻酔は前投薬(・・術式)下に腰椎麻酔(高比重ペルカミンS使用)を行った。術中、血管損傷による出血(600㏄c)の為、血液銀行製の血液(病院保管在庫)を輸血した。血液製剤フィブリノゲンについては使用した可能性がある。右記の通り・・・・に対し治療した事を証明する。」とあり、作成日付、 ・・ (600㏄c)の為、血液銀行製の血液(病院保管在庫)を輸血した。血液製剤フィブリノゲンについては使用した可能性がある。右記の通り・・・・に対し治療した事を証明する。」とあり、作成日付、 ・・医師の住所、氏名が自署された上で押印がある。(甲C12007)イ・・医師は、平成26年8月12日に死亡した(甲C12018)。 ⑸ 本件手術に関し、当時に作成された医療関係記録としては、年金事務所における高額療養費の保険給付記録は現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない(甲C12006)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、子宮筋腫の診断を受けて、昭和52年7月12日、本件病院において、本件病院の産婦人科部長であった・・医師の執刀による子宮全摘手術 (本件手術)を受けた。 ⑵ 本件証明書には、腰椎麻酔(高比重ペルカミンS)を行い、術中、血管損傷による出血(600㏄)のため輸血をし、併せてフィブリノゲン製剤を使用した可能性があると記載されている。また、昭和53年3月以降本件病院の産婦人科に在籍していた・・・准看護師は、本件病院の産婦人科において、 フィブリノゲン製剤を使用していたと述べている。 以上の本件病院の医療関係者の陳述を前提とすれば、本件手術の際、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性が認められる。 ⑶ 原告には、本件手術時の特定フィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎ウイルスの感染原因がない。 ⑷ したがって、本件手術の際、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与 されたと認められる。 (被告の主張)⑴ 外にC型肝炎ウイルスの感染原因がない。 ⑷ したがって、本件手術の際、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与 されたと認められる。 (被告の主張)⑴ 本件証明書は、・・医師が原告の話を聞き、原告の話を前提とした上で、一般的に本件手術当時に実施した可能性のある処置を記載したものにすぎないから、本件証明書によって原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事 実が認められるものではない。 ⑵ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、まず、患者について低フィブリノゲン血症に陥っていたこと、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性があったことが認められなければならない。加えて、仮に原告が特定フィブリノゲン製剤の適応とな り得る病態にあったとしても、そのことから直ちに特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を認めることはできず、治療に当たった医師の投与方針等に照らして、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認される必要がある。 そうしたところ、本件手術を担当した・・医師の投与方針を明らかにする 証拠はない。また、本件手術当時の原告の病態を認める客観的証拠は一切存在しない上、原告の供述によっても、本件手術当時に原告低フィブリノゲン血症あるいはDICに陥るほどの大量出血があったとは認められず、本件手術当時、原告が特定フィブリノゲン製剤投与に適する病態にあったと認めることはできない。 ⑶ C型肝炎ウイルスの感染源は、主にC型肝炎ウイルスに感染しているヒトの血液であり、具体的な感染経路としては、血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血(なお、本件手術が行われた昭和50年代の輸血後肝炎発生率は14.3%である。)のほか 炎ウイルスに感染しているヒトの血液であり、具体的な感染経路としては、血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血(なお、本件手術が行われた昭和50年代の輸血後肝炎発生率は14.3%である。)のほか、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故等様々なものが指摘されているのであって、感染原因 が不明なものも相当多い。加えて、原告の感染時期も特定されていないこと からすると、原告がC型肝炎ウイルスに感染していることから直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が推認されるものではない。 ⑷ したがって、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 (補助参加人の主張) ⑴ 本件証明書の記載は、・・医師が原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与を認めたものではなく、あくまで特定フィブリノゲン製剤が投与された一般的・抽象的な可能性が存在することを述べたにとどまる。 ⑵ フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症に対して投与することが推奨されてきた製剤であって、そもそも出血性疾患に対して一般的に投与され るものではない。そして、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤の投与事実の有無を判断するには、少なくとも・・医師の当時の投与方針及び原告の当時の病態を踏まえた個別具体的な検討が必要不可欠であるところ、・・医師の当時の投与方針を明らかにする客観的な証拠はない。また、原告の供述及び本件証明書の記載を前提としても、当時の原告の病態が特定フィブリノ ゲン製剤の投与を必要とするような深刻な病態であることはうかがわれない。 ⑶ C型肝炎ウイルスの感染源は血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故 投与を必要とするような深刻な病態であることはうかがわれない。 ⑶ C型肝炎ウイルスの感染源は血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故、観血的民間治療、歯科治療時の感染事故、母子間感染、性交感染、かみそり、歯ブラシの共用、覚せい剤の静注注射、麻薬の鼻孔吸引、入れ墨、保因者による 咬傷など様々な感染経路が指摘されており、感染源が不明な場合も相当多いから、原告がC型肝炎に感染している事実は、特定フィブリノゲン製剤の投与を何ら根拠づけるものではない。 ⑷ したがって、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因 果関係の有無(原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外にC型肝炎ウイルスに感染する原因はないから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間の因果関係の存在は明らかである。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件手術の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された 事実が認められると主張するが、本件手術の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠は見当たらない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間 接事実から、 見当たらない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間 接事実から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告は、本件手術の際の原告の病態について、①昭和52年7月11日に子宮筋腫の手術のために本件病院に入院し、翌12日に子宮摘出手術 (本件手術)を受けたこと(原告本人3、5頁)、②手術室に入室し、全身麻酔をされると5つ数えたところで意識を失い、次に目覚めたのは翌13日の朝であったこと(同6、23頁)、③翌日に原告が目を覚ますと、右手には輸血、左手には点滴がそれぞれされていたこと(同6頁)、④原告の夫・・・・(以下「・・」という。)が、手術中、手術室から出てき た看護師から、子宮を摘出する際に、血管を傷つけて出血が止まらないか ら、病院にある保存血を輸血すると説明されたこと(同7頁)、⑤本件手術後、退院する際に、会計の窓口で、病院に保存している血液を600㏄使ったから、献血で返してもらいたいと言われたこと(同24、25、35頁)などを供述し、上記供述から、原告が、本件手術の際、血管を損傷したことにより相応の出血をし、保存血600㏄の輸血を受けたと認めら れる。 イしかし、原告の上記供述内容に照らしても、血管の損傷状況について詳細は明らかでなく、原告の具体的な出血量や出血状況は不明であり、本件手術当時、原告の病態が、低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとして、特定フィブリノゲン製剤の適 応にあったと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は・・医師の特定フ の病態が、低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとして、特定フィブリノゲン製剤の適 応にあったと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針ア本件手術当時、本件病院の外科に在籍し、本件手術直後の翌年の4月頃に産婦人科に異動した・・・・・・准看護師(以下「・・・准看護師」という。)の証言によれば、本件手術に近接した時期の本件病院産婦人科又 は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針について、㋐大量出血の場合、まず輸血をし、それで止まらない場合にフィブリノゲン製剤を投与していたこと(・・・証人5、24頁)、㋑具体的な出血量に応じたフィブリノゲン製剤の投与基準については、担当医の判断によるため、看護師らには不明であったこと(同9、24頁)、㋒輸血の 開始についても、医師の判断で行い、出血量に応じた基準は共有されていなかったこと(同18頁)、㋓急激な出血があるときには輸血とフィブリノゲンを併用し、じわじわ出血する場合には一般的な止血剤(アドナ、トランサミン)で対処していたこと(同27頁)、㋔・・医師と一緒に本件病院に勤務していた8年間のうち、・・・准看護師自らフィ ブリノゲン製剤を調製したのは約3回ほどであり、大量に出血して、輸血 まではしたものの、フィブリノゲン製剤を使用しなかった症例も多数経験したこと(同21、31、32、35頁)などが認められる。 イ大量出血に対する本件病院の処置方針としては輸血が先行し、フィブリノゲン製剤の投与に至らずに終わる症例も多数存在したという・・・準看護師の証言内容(上記ア)からすると、原告に輸血がされた事実から直ち にフィブリノゲン製剤の投与を推認する関係にあるとは認 ブリノゲン製剤の投与に至らずに終わる症例も多数存在したという・・・準看護師の証言内容(上記ア)からすると、原告に輸血がされた事実から直ち にフィブリノゲン製剤の投与を推認する関係にあるとは認められない。また原告の出血状況が不明であることからすると、止血剤の使い分け(上記ア㋓)の観点からフィブリノゲン製剤の投与を推認することも困難である。 そして、具体的な出血量に応じた投与基準は・・・準看護師の証言によっても明らかでないから、600㏄の輸血に相応する出血があったことを前 提としても、本件病院産婦人科又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針に照らして特定フィブリノゲン製剤の投与を合理的に推認することはできない。 ⑷ 本件証明書等ア・・医師は、本件証明書において、原告に特定フィブリノゲン製剤を投 与した可能性があると述べるところ、本件証明書の作成経緯については、原告及び・・・・の供述から、下記の事実が認められる。 平成23年4月に原告と・・ではじめて・・医師を訪問した際、原告らは医師に母子手帳を見せて、600㏄の輸血を受けたことなどを話したが、・・医師は原告のことや本件手術のことを覚えて いなかった(原告本人12頁、証人・・2頁)。 平成23年7月に再び原告と・・が訪問した際、原告から医師に対し、術中に出血し、医師から緊急に輸血の必要があることを聞き、600㏄の輸血をしたことを説明した上で、その場合に・・医師であればどのような処置をとったと考えられるか尋ねたところ、そこ まで出血したのであれば、使った可能性があるという回答を得た (証人・・16、17頁)。 平成23年7月の訪問後、医師が体調を崩したため、・・が電話で連絡をとり、原告に対する手術の場合であれば、 あれば、使った可能性があるという回答を得た (証人・・16、17頁)。 平成23年7月の訪問後、医師が体調を崩したため、・・が電話で連絡をとり、原告に対する手術の場合であれば、どのような処置をすると考えられるか文章化してほしい旨願い出たところ、本件証明書の内容を文章で口授された。口授された内容をそのとおり打ち 出した用紙を・・医師に郵便で送付したところ、・・医師が署名押印して・・に返送した(原告本人15頁、証人・・5ないし7頁)。 イ上記経緯に加え、本訴訟において、本件手術に関する本件診療録が現存していないことからすると、本件証明書は、・・医師が自らの記憶を再現させて記載したものとは言い難く、原告の病態に関する原告らの断片的な 説明を基に、・・医師が自らの医学的知見と推測を交えて当時行った処置を構成し直した内容を記載したものと認められる。 すなわち、上記⑵アのとおり、本件手術の際、原告は全身麻酔を施されて意識を失っていたと認められるにもかかわらず、本件証明書には本件手術で腰椎麻酔を行った旨断定的に記載されており、原告から説明を受けて いなかった麻酔の方式に関し、麻酔を専門とする・・医師が自らの経験と推測で補って記載したことが認められる。そして、帝王切開時の脊髄麻酔を推奨する内容の昭和30年代刊行の自身の医学論文(甲C12009ないし13)を原告に参考資料として後日送付していたことからも(原告本人14頁)、原告の病態を踏まえていたかどうか明らかでない。 また、原告が600㏄の輸血を受けたと説明したにもかかわらず、・・医師が600㏄の出血を前提としていることも、その理由は明らかでないが、その点をおいても、当時本件病院に在籍していた・・・看護師が、自らの在籍中の体験として、 を受けたと説明したにもかかわらず、・・医師が600㏄の出血を前提としていることも、その理由は明らかでないが、その点をおいても、当時本件病院に在籍していた・・・看護師が、自らの在籍中の体験として、本件病院における輸血症例が数えきれないほどであるのに対し、特定フィブリノゲン製剤の投与症例が3例にとどまると 証言していること(・・・証人21、34、35頁)などに照らし、上記 出血量ないし輸血量の数値に印象的な特徴を見出すことはできないにもかかわらず、・・医師が、原告の病態のどのような特徴を捉えて、特定フィブリノゲン製剤使用の可能性があると述べたのか、全く不明である。 さらに、・・医師が平成23年7月に「そこまで出血したのであれば、投与の可能性がある」と述べたこと(上記ア)を前提としても、「そこ まで出血した」の具体的な意味内容が不明であるから、本件証明書の信用性を基礎づける発言とはいえない。 ウしたがって、本件証明書の記載等を基に原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を合理的に推認することはできない。 ⑸ 他原因の存否 原告は、本件手術時の特定フィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるところ(乙統2(15頁)、218 (722頁)等)、原告に対しては、本件手術時に輸血がされていること、昭和57年頃の輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率が約16. 1%と報告されていること(同218(723頁))なども総合すると、原告がC型肝炎ウイルス 対しては、本件手術時に輸血がされていること、昭和57年頃の輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率が約16. 1%と報告されていること(同218(723頁))なども総合すると、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論 以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個34(原告番号135番) 以下、本別紙中では、原告番号135番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和61年11月7日、・ ・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、自然分娩により第1子を出産(以下「本件出産」という。)をした際、止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和61年11月7日、本件病院において、第1子を自然分娩により出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)であった。(甲C13509) イ本件出産に 年11月7日、本件病院において、第1子を自然分娩により出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)であった。(甲C13509) イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄には「頭位」に○印が付けられ、「特記事項」として「吸引分娩」の記載があり、「出血量」欄には「少量」に○印が付けられているが、数値の記載はない。(甲C13509)ウ本件母子手帳10、11頁「妊娠中の経過⑵」には、9月4日の欄に 「その他とくに行った検査」として、血液中のヘモグロビン量が「9.4g/㎗」、「医師の特記指示事項」として「(貧血)安静」と記載があり、「質問したいことのおぼえ書」欄には原告の筆跡で「貧血治療の薬をもらう」などとの記載がある(甲C13509)。 ⑵ 原告は、平成15年6月にC型肝炎ウイルス感染の診断を受け、遅くと も平成17年6月頃にはC型慢性肝炎との診断を受けた(甲C13504、 07、16、18)。 ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C13508)。 ⑷ 本件出産に関し、当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳は現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。 また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、本件出産に関する陳述は得られていない。(弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告は、本件出産後の頸管裂傷による多量出血の止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与され 主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張) ⑴ 原告は、本件出産後の頸管裂傷による多量出血の止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与された。 このことは、①本件出産後、・・医師が原告の母に「子宮が完全に開かれない状態で子供が産道に下りてきたため産道を切開し吸引した。その際に周囲の血管が裂けてしまったために出血が多い。これから輸血をし、止 血の治療をする。」と説明したことから、原告が頸管裂傷を来していることは明白であり、それに伴う多量の出血があったことも強く推認されること、②原告は、異常な妊娠及び分娩により本件出産前後に23日間入院したこと、③原告に対しては輸血が行われたため、本件母子手帳の出血量「少量」の記載は児娩出後の出血は含まれていないと思われること、④い ずれも平成15年当時に作成された・・・・・医師(以下「・・医師」という。)の診療情報提供書、・・・・病院のカルテには、出産時に輸血がされたとの記載があること、⑤本件出産に近い時期に本件病院で治療や出産してC型肝炎に罹患した患者が複数いること、⑥本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入医療機関であったことなどから裏付けられる。 ⑵ 原告は、昭和60年の流産、昭和63年の第2子出産を経験しているが、 本件出産の際以外に多量に出血したことはないから、本件出産の際以外は、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し くは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、原告は、輸血量が2パックであった旨述べ、出血量に 本件出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し くは予防の必要性があったと認められる必要がある。 しかし、原告は、輸血量が2パックであった旨述べ、出血量について多量であったと供述するものの、その供述によっても本件出産に係る具体的な出血量は不明である上、本件母子手帳には、出血量が少量である旨記載されていることや産後に出血中も意識が保たれていることからすれば、そもそも止 血剤の投与を必要とする出血があったとは認め難い。 仮に原告の出血量が多量であることを前提にしても、産科DICスコアで1ないし3点が加算される程度である上、原告自身ショック状態にあったことを否定しており、そのほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害や身体症状等は不明であり、点数を加算すべき事情は認 められない。 ⑵ また、原告は、本件出産時に点滴や輸血の処置を受け、看護師からは点滴が止血剤であると説明され、本件出産後には、・・医師から止血及び輸血した旨原告の母、義母に説明があったと述べるが、その具体的な処置の内容は不明であり、仮に止血剤の使用が事実であったとしても、止血剤に はアドナやトランサミン等の複数の種類があるのであって、特定フィブリノゲン製剤の投与を推認させるものではない。 さらに、本件病院で出産、治療を受けた患者の中にC型肝炎ウイルスに感染した者が複数いるという指摘についても、特定フィブリノゲン製剤の投与は個別の事案ごとに判断すべきものであるから、仮にそうした事情が あっても、本件出産時における原告に対する同製剤の投与を推認させるも のではない。 ⑶ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件出産時に も、本件出産時における原告に対する同製剤の投与を推認させるも のではない。 ⑶ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件出産時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)以下の点を除き、被告の主張を援用する。 原告が共済金の支払を受けたことに関して、「異常な妊娠および分娩」と記載されていることは、あくまで共済金支払理由の分類を示すものに過ぎず、同記載から原告の当時の病態は一切不明である。 原告は、本件出産時に両腕に輸血と薬剤の入った点滴をされた、薬剤の点滴は牛乳瓶よりやや小さめの透明の瓶に入った透明な液体で、看護師から止血剤との説明を受けたなどと供述するが、いずれも30年以上前の出来事を供述したもので、本件母子手帳には「吸引分娩」、出血量「少量」との記載が認められるにとどまることから、時間の経過による記憶の変容の可能性が 高く、信用できない。 また、原告は、診療報酬明細書を書く仕事に携わっていたものの、止血剤としてどのような薬剤があるかも覚えていないことから、アドナ・トランサミンといった止血剤名も知らないと考えられ、当該点滴がこれら一般的な止血剤であったことと原告の供述は何ら矛盾がない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成15年6月頃、C型肝炎ウイルス感染の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果(原本)等が提出されてお らず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関 張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果(原本)等が提出されてお らず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 C型慢性肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成15年6月にC型肝炎ウイルス感染がわかり、その後、継続 的に治療を受け、遅くとも平成17年6月にはC型慢性肝炎の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)診断書における診断の根拠となった各種検査結果等が提出されておらず、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、頸管裂傷による多量の出血を止めるために特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観 的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳及び原告の供述その他本件各証拠によれば、原 から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳及び原告の供述その他本件各証拠によれば、原告の病態について、本件出産の際、吸引分娩の方法により児娩出に至ったが、出血は「少量」であったと認められる。 イこれに対し、原告は、①本件母子手帳の出血量「少量」の記載は児娩出後の出血は含まれていないと思われること、②・・医師から原告母に対し、 「子宮が完全に開かれない状態で子供が産道に下りてきたため産道を切開し吸引した。その際に周囲の血管が裂けてしまったために出血が多い。」と説明されたから、原告が頸管裂傷を来していることは明白であり、多量の出血があったことが強く推認されると主張し、原告は上記②に沿う供述をするが(原告本人3、4頁)、同主張が客観的な裏付けを欠く点をおい ても、頸管裂傷は児娩出と同時に鮮紅色の出血が持続するという症状を伴うものであるから(乙統97(246頁))、頸管裂傷に伴う出血が本件母子手帳に記載されるべき出血量の算定上除外されることは考え難く、上記②の供述は、本件母子手帳の記載と明らかに整合しないから採用できない。上記①及び②の主張は理由がない。 ウまた、原告は、本件出産時、輸血がされたから、多量の出血があったことが推認されると主張し、平成15年作成の・・医師の診療情報提供書、・・・・病院カルテにはこれに沿う記載があるが(甲C13502、05)、いずれも原告の申告を記載したもので、客観的な裏付けを欠く点をおいても、原告の出産前ヘモグロビン値が9.4ℊ/㎗であって、医師か ら(貧血)の指摘と安静の指示があり、原告が貧血治療として薬を処方されていた旨当時記録していたことからして、本件出産時の出血 おいても、原告の出産前ヘモグロビン値が9.4ℊ/㎗であって、医師か ら(貧血)の指摘と安静の指示があり、原告が貧血治療として薬を処方されていた旨当時記録していたことからして、本件出産時の出血量が少量であっても、貧血の程度によっては輸血が行われたことは十分考えられる。 したがって、本件出産時に輸血がされたという事実を前提としても、直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるということはない。 エ以上の検討を踏まえれば、原告の病態からは、本件出産の際、原告にD ICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったことはうかがわれない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産時の本件病院又は・・医師の特定フィブ リノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ したがって、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否 原告は、本件出産の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介し た感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告が 染者からの血液を介し た感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告が本件出産の際に輸血を受けたと述べていること、昭和61年当時、輸血後肝炎発症率は約8.7%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合す れば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個35(原告番号143番) 以下、本別紙中では、原告番号143-1ないし3番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号143-1番を「原告143-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・(・・・・・・・・・・生、平成18年11月16日死亡。以下「・・」という。)が、昭和50年3月14日、・・・・・・病院(現・・・・・・・・・・・・・・。以下「本件病院」という。)において、第2子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が 進行して死亡したと主張して、・・の相続人である原告らが、被告に対し 以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が 進行して死亡したと主張して、・・の相続人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告143-1は、・・の夫であり、原告143-2及び原告143 -3は、それぞれ・・の長女、二女である(争いがない)。 イ・・は、平成18年11月16日、死亡した。・・の死亡届の「死亡の原因」欄には、「直接死因」に「肝癌」、「 の原因」に「肝硬変」、「 の原因」に慢性C型肝炎」とそれぞれ記載されている。(甲C14301) ⑵ 本件出産(甲C14305、06、弁論の全趣旨)ア・・は、昭和50年3月14日午前11時57分頃、経膣分娩により第2子を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C14305。以下「本件母子手帳」 という。)14頁「出産の状態」では、「出血量」の「 ㎖(少量・中等量・多量)」の欄は、「多量」に◯印が付けられており、数値は記入されていない。また、「分娩の経過」欄も空欄である。 エ本件出産に係る分娩記録(甲C14306。以下「本件分娩記録」という。)には、「分娩異常」欄の「無」に◯印が付けられ、「後出血」欄で は、「少量」、「中等量」、「多量」のいずれにも◯印が付けられているが、「少量」、「中等量」は◯印の上から斜線で消されている。また、「羊水混濁」欄には「-」に〇印が、「胎盤異常」欄には「無」に〇印が付けられ、「手術」欄では、「側切開術」と「分娩時止血処置」 ているが、「少量」、「中等量」は◯印の上から斜線で消されている。また、「羊水混濁」欄には「-」に〇印が、「胎盤異常」欄には「無」に〇印が付けられ、「手術」欄では、「側切開術」と「分娩時止血処置」に◯印が付けられている。その上部に「注射」欄があり、各種薬剤名の記載がある 中、「5%G500+アトニン5単位滴点」、「エルゴン1cc」、「パルタム1cc」といった陣痛誘発剤、子宮収縮剤などと思われる薬剤名に〇印が付けられているが、特定フィブリノゲン製剤の記載はなく、「その他」にも印がない。 オ本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本 件分娩記録及び本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C14305、06、08)。 ⑶ ・・のC型肝炎ウイルスへの感染等・・に関する平成18年4月24日付け診療情報提供書には、「傷病名」として「肝細胞腫瘍(S8)」、「腹水」、「肝硬変症」、「慢性C型肝炎」 とある(甲C14303)。 ⑷ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲14310)。 ⑸ 陳述書の作成(甲C14307) ・・医師は、平成23年4月22日、本件出産時における特定フィブリノ ゲン製剤の投与に関し、陳述書(甲14307。以下「本件陳述書」という。)を作成した。本件陳述書には、「年代的に確実ではありませんが昭和50年代に・・病院(医療法人)として、フィブリノーゲンを購入し、臨床的に使用した記憶があります。特定した患者様の名前などの記録、記憶は全くありません。現在・・病院は廃院し、産科は閉鎖しています。止血 0年代に・・病院(医療法人)として、フィブリノーゲンを購入し、臨床的に使用した記憶があります。特定した患者様の名前などの記録、記憶は全くありません。現在・・病院は廃院し、産科は閉鎖しています。止血剤とし ては、アドナ、トランサミン、子宮収縮剤等も使用されており、いづれの止血剤を使用したかも不明です。」とあり、末尾に・・医師の署名押印がある。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張) ⑴ 本件出産の際、・・は、分娩後、看護師長が・・のお腹を押した途端、1000㏄の大出血を起こし、2200㏄の輸血を受けた。看護師長が・・のお腹を押したのは、子宮収縮を促すためのマッサージであったと考えられ、・・の大量出血は、弛緩出血が原因であったと考えられる。そして、輸血を受けた事実からは、子宮収縮剤では止血できなかったことと推測で きる。 ⑵ 本件出産時、本件病院にはフィブリノゲン製剤の在庫があり、使用できる状態であったこと、厚生労働省による薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書において、分娩後弛緩出血がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていること、昭和44年の医学文献「今日の 治療指針」の弛緩出血の治療に関する項で、弛緩出血とされている症例には低フィブリノゲン血症が相当数含まれており、同症にはフィブリノゲン製剤投与が効果的であると紹介されていること、弛緩性出血がDICの基礎疾患に当たることなどからすると、本件病院において、弛緩出血の症例には、フィブリノゲン製剤が投与されていた可能性が非常に高い。 ⑶ ・・には、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以 外に、C型肝炎ウイルスに感染す 血の症例には、フィブリノゲン製剤が投与されていた可能性が非常に高い。 ⑶ ・・には、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以 外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、・・は、本件出産時に約 1000㏄の出血があったことがうかがわれ、産科DICスコアが1点加算される可能性はあるものの、この他に、DICの診断基準に照らして、点数を算定すべき事情があることを裏付ける客観的な証拠は存在しない。 本件各証拠を踏まえても、・・の大量出血の原因を弛緩出血と断定できるものではない。 また、産科領域における一般的な止血方法はほかにも存在し、このうちどの方法を選択するかは担当医師が自らの知識及び経験を踏まえて判断するものであるところ、・・に対して行われた止血処置の内容も明らかでない。 ⑵ ・・医師が本件陳述書を作成した平成23年当時、・・医師が本件出産当時の投与方針についてどこまで正確に記憶していたかは疑わしく、反対尋問 による確認もできていない。 この点をおいても、本件陳述書は、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性を一般論として述べたものにすぎない上、本件出産当時における特定フィブリノゲン製剤の投与方針等も明らかでない。 ⑶ したがって、本件出産時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認 めることはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告らの主張)・・は、昭和51年頃、慢性C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人 ブリノゲン製剤の投与事実を認 めることはできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告らの主張)・・は、昭和51年頃、慢性C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、死亡した事実の有無(原告らの主張)・・は、慢性C型肝炎が進行して、肝硬変、肝臓癌になり、平成18年1 1月16日に死亡した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無 ⑴ 原告らは、本件出産の際の分娩後止血処置として、・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされた可能性が非常に高いと主張するが、本件出産の際、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑵オ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵ウ)、本件分娩記録の記載(前提事実 ⑵エ)、原告143-1の供述(原告143-1本人 れたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵ウ)、本件分娩記録の記載(前提事実 ⑵エ)、原告143-1の供述(原告143-1本人3、4頁)及び医学 文献(乙統97(251頁))によれば、・・の病態に関し、分娩後、・・が弛緩出血により約1000㏄の出血をしたことが認められ、1000㏄以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる。 この点、原告143-1は、・・に対し、2200㏄の輸血がされたと供述する(原告143-1本人4頁)が、客観的な裏付けを欠いている上 に、2200㏄の輸血量は、本件出産時の・・の出血量約1000㏄をはるかに上回っており、輸血が大量出血時に体内の循環血液量を維持する目的で行われることに照らしても、信用できない。また、原告らは、輸血の事実から、子宮収縮剤では弛緩出血が止血できなかったことが推測できると主張するが、その医学的根拠も明らかでない。 イまた、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法以外にも、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)に より止血する方法等が存在しており(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、・・医師自身も本件陳述書において子宮収縮剤や一般的な止血剤の使用を示唆しているから(甲C14307)、大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 そして、 縮剤や一般的な止血剤の使用を示唆しているから(甲C14307)、大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 そして、本件各証拠に照らしても、本件出産前後を通じ、・・の全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとして、・・の病態が、低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 ウ原告らは、厚生労働省による薬害肝炎の検証および再発防止に関する研 究班の中間報告書(乙統196(33頁))図表2-7において、分娩後 弛緩出血がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていることを援用し、弛緩出血自体がフィブリノゲン製剤の使用対象疾患であったと主張するが、同図表の注釈が「具体的な記載例」にある疾患を発症しているが、後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと明示したものではないから、原告らの上記主張は採用できない(本判決本文第4の2⑷ ウ)。仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノゲン血症の診断を待たずに弛緩出血の患者に対して投与された症例があったとしても、そうした症例が存在するからと言って、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性がない症例について、担当医師が当該症例をどのように判断したか、あるいは、担当医師 の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対象となるかといった要素の検討なしに、適応外投与があった事実を推認することはできない。 同様に、原告らは、昭和44年の医学文献(乙統162(503頁))において、弛緩出血の項目にフィブリノゲン製剤投与を推奨する記載があることも強調するが、同文献はあくまで弛緩出血と ことはできない。 同様に、原告らは、昭和44年の医学文献(乙統162(503頁))において、弛緩出血の項目にフィブリノゲン製剤投与を推奨する記載があることも強調するが、同文献はあくまで弛緩出血と診断される症例には低 フィブリノゲン血症の症例が含まれていることを指摘し、低フィブリノゲン血症の症例にフィブリノーゲンの適応があると述べるにとどまるから、弛緩出血の症例全般に対しフィブリノゲン製剤の投与を推奨するものではないことは、その記載からも明らかである。 ⑶ 本件病院又は・・医師の投与方針 ア本件陳述書の記載内容(前提事実⑸)によれば、年代的に確実ではないとしながらも、昭和50年にはフィブリノーゲンを臨床的に使用した記憶があるとされているから、本件出産当時、本件病院において、フィブリノゲン製剤が使用されていた可能性は認められる。しかしながら、本件陳述書においては、具体的な出血量や患者の全身状態などに応じた投与の基準 は全く明らかにされておらず、被投与患者の病態も不明であるから、本件 各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師その他の本件病院の医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 イ原告143-1は、・・医師が本件陳述書を作成した際に・・に対してフィブリノゲン製剤を使用した可能性があると述べた旨供述する(原告143-1本人9頁)が、・・医師との面会時、原告143-1は本 件母子手帳や本件分娩記録を・・医師に見せておらず(同頁)、・・医師が・・の病態を正確に把握した上で上記発言をしたものとは認められないこと、本件陳述書には、アドナ、トランサミン及び子宮収縮剤などの使用も示唆されていることからしても、・・医師が・・の病態を基に、自身の投与方針に照らし 把握した上で上記発言をしたものとは認められないこと、本件陳述書には、アドナ、トランサミン及び子宮収縮剤などの使用も示唆されていることからしても、・・医師が・・の病態を基に、自身の投与方針に照らして具体的な投与の可能性を分析した結果、・・ に対するフィブリノゲン製剤の投与の可能性を肯定した経過があったとはうかがわれない。 したがって、仮に・・医師による上記発言があったとしても、その発言から・・に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑷ 他原因の存否原告らは、・・について、本件出産時の他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事 故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、仮に・・に対し輸血が行われているとすれば、昭和50年頃の輸血後肝炎発症率は14.3%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与 されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由が 2 以上によれば、本件出産の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個36(原告番号144番) 以下、本別紙中では、原告番号144番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、昭和49年9月3日、・・・ ・病院(以下「本件病院」という。)において、経膣分娩により第3子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産(甲C14404、07、弁論の全趣旨)ア原告は、昭和49年9月3日午後6時00分頃、第3子を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・某医師(以下「・・医師」という。)であ る。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C14404。以下「本件母子手帳」という。)14頁「出産の状態」の「胎位」欄には「第Ⅱ頭位」との記載が、「出血量」欄には、「950㎖」との記載があるが、「少量・中等量・多量」のいずれにも〇印はない。「分娩経過」欄は空欄である。 また、当該頁の下部の欄外には、原告の筆跡により「当日、インターンの先生より(6時以降で担当医師が帰られたあと)出産直後止血剤投与したの言葉を伝えられる」、「平成14年4月22日記入」との記載がある。 さらに、本件母子手帳10頁「妊娠初期」の「妊婦自身の記録」欄にも、原告の筆跡により「4月4 帰られたあと)出産直後止血剤投与したの言葉を伝えられる」、「平成14年4月22日記入」との記載がある。 さらに、本件母子手帳10頁「妊娠初期」の「妊婦自身の記録」欄にも、原告の筆跡により「4月4日(略)貧血気味の為、増血剤を処方していた だく。」との記載がある。 エ本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。本件母子手帳にフィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等・・・・・・・・・・・病院の・・・・医師作成の平成23年11月15 日付け診断書(甲C14401)には、「病名」として「C型肝炎」とあり、その直下に「上記疾病にて平成6年9月14日より当科外来にて継続加療中である。」と記載されている。 ⑶ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病 院リスト上、納入実績が確認されている(弁論の全趣旨)。 ⑷ 他の出産等ア原告は、昭和43年10月8日、・・・・病院において第1子を出産した。上記出産に関する母子健康手帳(甲C14402)10頁「出産の状態」の「出血量」欄では、「少量」に◯印が付けられ、「100㎖」と記 載されている。 イ原告は、昭和46年8月4日、・・・・・において第2子を出産した。 上記出産に関する母子健康手帳(甲C14403)14頁「出産の状態」の「出血量」欄には、「多量」に◯印が付けられ、その直上に「や〃」と記入されている。 ウ原告は、昭和63年8月8日、・・・・・・・病院において、子宮筋腫の治療として腹式単純子宮全摘出術を受けた。上記 、「多量」に◯印が付けられ、その直上に「や〃」と記入されている。 ウ原告は、昭和63年8月8日、・・・・・・・病院において、子宮筋腫の治療として腹式単純子宮全摘出術を受けた。上記手術に関する手術室看護記録(甲C14405)には、「輸液」欄に「1300㎖」、「出血量」欄に「161ℊ」との記載があり、「輸血」欄に記載はない。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 原告は、本件出産(第3子)の際、950㎖もの出血をしたこと、第3子の妊娠中に貧血により医師から造血剤を処方されていたことからすると、本件出産の際、医師が貧血と多量の出血を考慮して速やかに止血するためにフィブリノゲン製剤を投与した可能性が高い。 ⑵ 原告は、児の娩出後、・・医師から「出血が多いので血を止める薬を使いますがいいですか」と尋ねられ、「お願いします」と答えた後に点滴を受けた。これは、フィブリノゲン製剤が当時高価な薬剤であったことから、・・医師が原告に尋ねたものと考えられる。 ⑶ 原告は、第1子、第2子の出産の際にはとくに異常はなく、手術で大量 出血したこともない。原告には、本件出産時の止血以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因はない。 ⑷ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 原告の950㎖の出血は、産科DICスコアを算定すべき事情ではなく、そのほかに点数を算定すべき事情も存在しない。かえって、・・医師は、本件出産当時、インターンの医師であり、本件出産の際に原告の主治医を呼んだり、電話で相談した経過も見られないことからすれ ではなく、そのほかに点数を算定すべき事情も存在しない。かえって、・・医師は、本件出産当時、インターンの医師であり、本件出産の際に原告の主治医を呼んだり、電話で相談した経過も見られないことからすれば、本件出産の際に大量出血等の緊急事態が生じたわけではなかったことがうかがわれる。 また、原告に対し・・医師が発言したという「止血剤に代わるもの」ないし「血を止める薬」がいかなる止血剤を意味するのかすら不明である以上、当該発言をもって、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を認めることはできない。 そもそも、原告につき、低フィブリノゲン血症と診断された事情が存在し ないこと、本件母子手帳にもDICの発症をうかがわせる記載が何ら存在し ないこと、原告に対して輸血が実施されたことを示す客観的な証拠も何ら存在しないことに鑑みると、原告については、むしろ、本件出産の際にDICの治療及び予防の必要がなかったものと推認される。 ⑵ そうすると、本件出産当時、原告が特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったと認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、昭和56年3月に非A非B型の肝炎だと言われ、その後、C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィ の主張) 本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、平成6年9月以降治療を受け、慢性C型肝炎と診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産の際、止血のためにフィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性があると主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告本人の供述(原告本人9頁)によれば、原告が、本件出産前の妊娠中に貧血傾向を有していたこと及び本件出産の際に約950㎖の出血をしたことが認められる。 イしかしながら、上記アの病態からは、DICの基礎疾患やその誘因となる産科疾患も認められないから、DICの要因となる事情は認められない。 また、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的 ら、上記アの病態からは、DICの基礎疾患やその誘因となる産科疾患も認められないから、DICの要因となる事情は認められない。 また、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)によ り止血する方法等が存在している(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))から、多量の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 ウ原告は、本件出産の際、・・医師から「止血剤に代わるもの」を使用し て良いか尋ねられた後に点滴を受けたと供述し(原告本人2頁)、原告の 陳述書では、「血を止める薬」を使用してよいか尋ねられたと陳述するもので(甲C14406)、その文言が曖昧であるから、発言の内容を理解しにくいものの、「止血剤に代わるもの」であるとすれば、上記イにある子宮収縮剤を指すことは考えられる。また、「血を止める薬」であるとすれば、本件出産時、950㎖の出血があるというほかは、臨床症状の有無、 全身状態の悪化の程度とも不明な原告の病態を前提とすると、産科出血に対する止血処置の一環として止血剤が投与されたとしても、上記イのとおり、一般的な止血剤が投与される可能性が十分考えられる。 したがって、・・医師の発言内容自体曖昧で、原告に止血剤又は止血剤に代わるものの使用について尋ねた意図は明らかでないが、少なくとも特 定の薬剤の投与を示す発言であるとは 性が十分考えられる。 したがって、・・医師の発言内容自体曖昧で、原告に止血剤又は止血剤に代わるものの使用について尋ねた意図は明らかでないが、少なくとも特 定の薬剤の投与を示す発言であるとは受け取れないもので、・・医師の上記発言から、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与を示唆する発言があったということはできない。 ⑶ 本件病院又は・・医師の投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フ ィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産時の他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感 染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)からすれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、 供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個37(原告番号145番) 以下、本別紙中では、原告番号145番を「原告」という。 第1 事案の概要 するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個37(原告番号145番) 以下、本別紙中では、原告番号145番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、承継前原告の・・・・・(・・・・・・・・・・生、令和2年6 月6日死亡。以下「・・・」という。)が、昭和55年12月26日、・・・・・・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において帝王切開術により第1子である原告を出産(以下「本件出産」という。)し、続いて子宮全摘手術を受けた際(以下、上記帝王切開手術と子宮全摘手術を併せて「本件手術」という。)、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによっ て、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、・・・の相続人であり、訴訟承継人である原告が、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者 ア原告は、・・・の長男である(争いがない)。 イ・・・は、令和2年6月6日、死亡し、原告が訴訟上の地位を承継した(弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件出産の状況等ア・・・は、昭和55年12月26日午後1時53分頃、帝王切開術によ り第1子である原告を出産した(本件出産)。同日、続いて、子宮筋腫のために膣上部切断術が行われ、・・・の子宮が摘出された。(甲C14501、07、08)イ本件手術の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である(甲C14501)。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12 頁「出産の状態」には、「在胎期間」欄に「37週」、「娩出日時」欄に「55年12月2 C14501)。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12 頁「出産の状態」には、「在胎期間」欄に「37週」、「娩出日時」欄に「55年12月26日午後1時53分」、「分娩の経過(母児の状態)」欄に特記事項として「帝切→膣上部切断術」との記載があり、「出血量」欄の「中量」に付けられた〇印が斜線で削除された上で「多量」に○印が付けられ、「分娩取扱者氏名」欄には「医師・・・・」、「助産婦・・・ ・・・・・・」との記載がある(甲C14501)。 エ本件母子手帳19頁「早期新生児期【生後1週間以内】の経過」には、「出生時の異常」欄の「なし」に〇印が付けられ、「その後の経過中の異常」欄の「なし」に〇印が付けられている(甲C14501)。 ⑶ ・・・・・・・・病院の・・・・医師(以下「・・医師」という。)作 成の平成20年2月12日付け診断書(甲C14503。以下「本件診断書」という。)には、・・・について、病名「C型慢性肝障害(慢性肝炎+肝硬変)」、「昭和55年12月26日の帝王切開時の大量出血に対して1800㎖の輸血を施行。その際、フィブリノゲン製剤の投与を行ったとしても矛盾ない状態と考えられる。翌56年2月急性肝炎発症し、慢性 肝障害の状態となった。平成2年頃C型肝炎ウイルスによる肝障害と診断。 原因としては帝王切開時の輸血(又は投与したとすればフィブリノゲン製剤)が疑われる。現在通院加療中である。」との記載がある(甲C14503)。 ⑷ 原告は、昭和58年10月21日に慢性肝炎との診断を受け、遅くとも 平成23年9月13日までに肝細胞がんに罹患したとの診断を受けた(甲C14502、05、06)。 ⑸ 本件手術に関し、本件手術当時に作成された医療関係記録として 肝炎との診断を受け、遅くとも 平成23年9月13日までに肝細胞がんに罹患したとの診断を受けた(甲C14502、05、06)。 ⑸ 本件手術に関し、本件手術当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳は現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者からの陳述は得 られていない。さらに、・・医師からは、本件診断書以外の陳述は得られ ていない。(甲C14501、08)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ア・・・は、帝王切開手術により第1子を出産すると同時に、子宮筋腫 に対する治療として子宮摘出手術を行った(本件手術)。・・・は、本件手術の際、多量の出血をした。 イ本件病院の産婦人科から・・・・・・・・病院の内科医に宛てた紹介状に「1800」という数字が記載されており、同病院の医師が作成した本件診断書に「1800㎖の輸血を施行」と記載されていることからすると、 本件手術の際、・・・に対し1800㎖もの輸血が行われたと推認できる。 ウ本件診断書には、本件手術時に特定フィブリノゲン製剤が投与されたとしても矛盾がない状態と考えられると記載されている。 エ以上の事実などを総合考慮すると、・・・に対し、上記輸血とともに、止血のためにフィブリノゲン製剤を投与した可能性は極めて高い。 ⑵ 本件手術時に1800㎖の輸血を必要とするほどの多量出血があり、止血のためにフィブリノゲン製剤を投与されたこと以外に、C型肝炎ウイルスに感染した原因は考えられない。 ⑶ したがって、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性が極め 止血のためにフィブリノゲン製剤を投与されたこと以外に、C型肝炎ウイルスに感染した原因は考えられない。 ⑶ したがって、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性が極めて高い。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件母子手帳から、・・・について、本件出産が帝王切開で行われたこと、本件 手術時の出血が多量であったことはうかがわれるものの、DICの原因と なる基礎疾患や本件手術時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、本件手術後の身体の状態等は不明である。 また、・・・の陳述を踏まえても、・・・の臨床症状、身体の状態、・・・に行われた止血措置の具体的内容、特定フィブリノゲン製剤使用の有無等については全く明らかではない。・・・に1800㎖の輸血がされた ことについては疑問がある上、仮に上記輸血の事実があったとしても、それだけでは特定フィブリノゲン製剤の投与があったとは認められない。 ⑵ 本件において、担当医師の投与方針を明らかにする証拠はない。よって、担当医師の投与方針という観点からみても、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)⑴ 具体的な出血量は明らかでなく、・・・の病態は一切不明であって、・・・に対してフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑵ ・・・の陳述を裏付ける客観的証拠は提出されておらず、・・・及び・・・の夫の陳述は信用できないから、本件手術に輸血が施行されたかすら 明らかでない。仮に輸血が施行され ることはできない。 ⑵ ・・・の陳述を裏付ける客観的証拠は提出されておらず、・・・及び・・・の夫の陳述は信用できないから、本件手術に輸血が施行されたかすら 明らかでない。仮に輸血が施行されたからといって、主治医のフィブリノゲン製剤の投与方針が不明である以上、・・・に対してフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑶ 本件診断書を作成した・・医師は本件手術の立会医師ではないこと、本件診断書の前提となった紹介状の作成経緯が不明であり、その記載内容は 信用性に欠けることからすれば、本件診断書をもって・・・に対してフィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 2 ・・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)・・・は、平成7年2月頃、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明 した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患した事実の有無(原告の主張)・・・は、昭和56年5月頃に慢性肝炎との診断を受け、平成20年2月中頃、肝細胞癌に罹患したことが判明し、平成23年9月13日、肝細胞癌に対する肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法を受けた。その後、平成24年3月1 2日付けで、C型肝炎、肝細胞がんと診断され、令和2年 中頃、肝細胞癌に罹患したことが判明し、平成23年9月13日、肝細胞癌に対する肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法を受けた。その後、平成24年3月1 2日付けで、C型肝炎、肝細胞がんと診断され、令和2年6月6日、肝細胞がんにより死亡した。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。提出された証拠からは、各種検査結果により6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の有無⑴ 原告は、・・・が本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が高いと主張するが、本件手術の際、・・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない (前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・・の病態等 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵ウ)及び・・・の陳述(甲C14507、08)によれば、本件手術の際に、・・・が多量の出血をし、1800㎖の輸血を受けたことが認められ、帝王切開術はDICの誘因となる重要な産科疾患の一つに挙げられている(乙統97(255頁))。 しかしながら、本件各証拠によっても、具体的な手術経過は不明である が、・・・に対し、帝王切開術による出産(生産)と子宮筋腫に対する治療としての子宮摘出術が一度に行われたところ、子宮摘出術は本件手術の前から予定されていたものであって、止血を目的とする処置ではないこと( ・・に対し、帝王切開術による出産(生産)と子宮筋腫に対する治療としての子宮摘出術が一度に行われたところ、子宮摘出術は本件手術の前から予定されていたものであって、止血を目的とする処置ではないこと(甲C14507)、児に出生時の異常は認められないこと(前提事実⑵エ)、・・・と・・・の夫が、・・医師から事前に本件手術の内容及び本 件手術の際の輸血の実施について説明を受けていたこと(甲C14508(1頁))などから、帝王切開術及びその後の子宮摘出術の経過において異常出血があったことを認めるに足りない。 そうすると、本件各証拠によっても、本件手術前後に、・・・に重篤な障害、ショック症状等の臨床症状や身体症状があったことはうかがわれな いから、・・・にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情は認められず、・・・の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 イ・・・は、・・・の夫が本件手術の直前に、担当の・・医師から「出血 が多いので輸血と薬で治療する」旨の説明を受けたと陳述する(甲C14 508(1頁))。 しかし、上記の説明内容自体、特定の薬剤を示したものではないところ、大量出血がある場合の産科領域における一般的な止血方法のうち、薬物療法としては、止血機構の機能を改善・補強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミン)を投与する方法が存在していたことが認められ るから((乙統83(394頁)、98(28頁))、・・医師の発言中の「薬」が直ちに特定フィブリノゲン製剤を指すとは認められない。 ⑶ 本件診断書について本件診断書には、本件出産(帝王切開術)の (乙統83(394頁)、98(28頁))、・・医師の発言中の「薬」が直ちに特定フィブリノゲン製剤を指すとは認められない。 ⑶ 本件診断書について本件診断書には、本件出産(帝王切開術)の際に輸血とともに特定フィブリノゲン製剤が投与されたとしても矛盾がない状態と考えられる旨の記載 や・・・がC型肝炎ウイルスに感染した原因として「帝王切開時の輸血(又は投与したとすればフィブリノゲン製剤)が疑われる」との記載があるが、同診断書を作成した・・医師は、本件出産や本件手術に全く関与していないこと、本件病院あるいは・・医師の投与方針を知るという事情も認められないこと、本件手術時の・・・の病態に関する・・医師の認識は、 ・・・の陳述に依拠していると認められることを考慮すれば、・・医師が本件手術に関して記載する意見に上記⑴、⑵で説示した以外の内容が含まれていたとしても、信用性に欠けるもので、本件診断書の上記意見は採用できない。 したがって、本件診断書の記載から、・・・に特定フィブリノゲン製剤が 投与された事実を推認することはできない。 ⑷ 他原因の存否・・・は、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外にC型肝炎ウイルスに感染する原因がないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主 要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、 医療行為時の感染事故など様々なものがあるところ(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、・・・に対しては、本件手術の際に輸血が行われていること、昭和55年頃は、輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率が約16.1%であったと報告されていること(乙統218(723頁)) 722頁)等)、・・・に対しては、本件手術の際に輸血が行われていること、昭和55年頃は、輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率が約16.1%であったと報告されていること(乙統218(723頁))などを総合すれば、・・・がC型肝炎ウイルスに罹患してい る事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個38(原告番号148番) 以下、本別紙中では、原告番号148-1ないし3番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号148-1番を「原告148-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・・(・・・・・・・・・生、平成25年1月6日死亡。 以下「・・・」という。)が、①昭和56年2月10日、②同月24日、③昭和58年10月4日、・・・・・・病院(以下「本件病院」という。)において、3回にわたり慢性副鼻腔炎と鼻中隔弯曲症に対する手術を受けた際(以下、上記①ないし③の日に行われた各手術を併せて「本件各手術」とい い、個別に①の日に行われた手術を「本件手術1」などという。)、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主 術」とい い、個別に①の日に行われた手術を「本件手術1」などという。)、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、・・・の相続人であり、訴訟承継人である原告らが、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告148-2、148-3はそれぞれ・・・の長女、二女であり、原告148-1は・・・の夫の子である(争いがない)。 イ・・・は、平成25年1月6日に死亡し、原告らが・・・の訴訟上の地 位を承継した(争いがない)。 ⑵ 本件各手術の状況等(甲C14802)ア本件病院の・・・・医師が平成20年1月21日付けで作成した診断書(甲C14802。以下「本件診断書」という。)には、「診断名」として「慢性副鼻腔炎」、「鼻中隔弯曲症」とあり、その下には「上記病名に て、S56.2/9~3/3及びS58.10/2~10/25 当科へ 入院し、手術加療施行した。現在、入院病歴は現存していない。当科外来へは、S55.12/11よりS58.11/30まで通院していた。経過良好にて、S58.11/30終診となっている。」と記載されている。 イ本件各手術に関し、本件各手術当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切の医療記録が現存していない(弁論の全趣旨)。 ⑶ ・・・のC型肝炎ウイルスへの感染等・・・は、平成8年頃にC型肝炎ウイルスに感染したとの診断を受け、・・・・・・・・・の・・・医師作成の平成24年3月8日付け診断書(甲C14803)には、「膵臓癌(転移性肝癌)」、「C型肝炎」との病名に続き、「上記にて通院加療中であ スに感染したとの診断を受け、・・・・・・・・・の・・・医師作成の平成24年3月8日付け診断書(甲C14803)には、「膵臓癌(転移性肝癌)」、「C型肝炎」との病名に続き、「上記にて通院加療中である。現在対症療法が主の治療であり、急変す る可能性は高い。」と記載がある。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張)⑴ ・・・は、昭和56年2月9日から同年3月3日まで本件病院に入院し、 入院中の同年2月10日と同月24日にそれぞれ耳鼻科の手術を受けた(本件手術1、本件手術2)。その後、昭和58年10月2日から同月25日まで再度入院し、入院中の同月4日にも手術を受けた(本件手術3)。 本件手術1ないし本件手術3は、いずれも・・・・医師(以下「・・医師」という。)が担当した。 ⑵ 本件手術1の後、・・・が病室に戻った後、鼻からの出血があまりに多く、横を向いて唾を出すと、血の色の唾が出た。このとき、・・医師と看護師が病室に来て、・・・に注射をすると、すぐに出血が止まった。このときに・・・に投与された止血剤が、フィブリノゲン製剤であると考えられる。 ⑶ 本件手術2、本件手術3の際には、本件手術1の際とは異なり、手術後 の出血は全くなかったため、本件手術2、本件手術3の際にも止血剤としてフィブリノゲン製剤が必ず打たれていると考えられる。 ⑷ 本件病院には、本件手術1ないし本件手術3の当時、フィブリノゲン製剤が納入されていた。 ⑸ ・・・には、本件手術1ないし本件手術3の際のフィブリノゲン製剤の 各投与のほかに、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 ⑹ 以上の事情を総合考慮するならば、本件各手術の際、・ ⑸ ・・・には、本件手術1ないし本件手術3の際のフィブリノゲン製剤の 各投与のほかに、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 ⑹ 以上の事情を総合考慮するならば、本件各手術の際、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が各投与された高度の蓋然性が認められる。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低 フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要がある。しかし、全証拠に照らしても、・・・が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は認められない。また、・・・について、DICの原因となる基礎疾患や臨床症状等は不明であり、DICの治療又は予防の必要性も認められない。 ⑵ ・・・らの供述する症状及び診療経過を裏付ける客観的な証拠はない上、これらに関する・・・らの供述内容を前提としても、本件手術1の術後における具体的な出血状況等は不明というほかなく、本件手術2及び本件手術3については、各手術の際における出血状況に加えて、出血の有無も明らかでなく、・・・らの供述内容によっても、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたこと及び投与が必要となる状態が生じていたことを認めることは不可能である。また、本件診断書にも、本件各手術に際して大量出血等の異常な経過が生じたことをうかがわせる記載はない。 ⑶ 本件各手術当時の・・医師の投与方針を明らかにする証拠はないから、担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤の投与を認める こともできない。 ⑷ 以上のとおり、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件手術1に関するカルテは存在せず、客 こともできない。 ⑷ 以上のとおり、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件手術1に関するカルテは存在せず、客観的証拠により当時の・・・の病態が一切明らかになっておらず、「止血剤」なるものが実際に・・・ に投与されたのか不明である以上、フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑵ 本件手術2及び本件手術3についても、・・・の病態が一切不明であることから、フィブリノゲン製剤が投与されるような状態にあったとは到底言えず、フィブリノゲン製剤が投与されたと考えられるという原告らの主 張は主張自体失当であるというほかない。 ⑶ 本件各手術当時、本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていたことがうかがわれる客観的証拠は存在しないから、本件各手術時に、本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていたと推認することはできない。 ⑷ 以上のとおり、・・・に対するフィブリノゲン製剤の投与事実は認めら れない。 2 ・・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告らの主張)・・・は、平成8年頃、慢性C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張) 本件各手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められる から、上記各投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 から、上記各投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告らの主張)・・・は、平成8年頃、慢性C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠及び肝硬変の診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件各手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告らは、本件各手術の際、フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性があると主張するが、本件各手術の際、・・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない。 そこで、本件診断書の記載、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 本件手術1 ア・・・の病態本件手術1当時の・・・の病態について、・・・は、病室に戻った後、鼻から多量の出血をしたところ、・・医師と看護師が来て、・・・に注射をすると、すぐに止血したと述べる(甲C14801(4頁))。 しかしながら、本件診断書の記載及び・・・の陳述内容によっても、具 体的な出血量、出血状況ともに不明であり、・・・の陳述によれば、注射 が行われたということであるが、どのような処置が行われたかが明らかでなく、上記注射が止血剤なのかすら不明であるから、本件手術1当時の・・ もに不明であり、・・・の陳述によれば、注射 が行われたということであるが、どのような処置が行われたかが明らかでなく、上記注射が止血剤なのかすら不明であるから、本件手術1当時の・・・の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 イ本件各証拠によっても、本件手術1当時の本件病院ないし・・医師のフィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 ウしたがって、本件手術1の際、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件手術2、本件手術3 ア・・・は、本件手術2及び本件手術3の際には、本件手術1のときと異なり、出血が全くなかったため、フィブリノゲン製剤が使用されたと思ったと述べる(甲C14801(4頁))。 しかし、本件各手術における手術内容及びその際に行われた処置は一切不明であり、本件手術1と本件手術2や本件手術3の内容が同一であった かすら明らかでない上、本件手術1の術後の経過と比較して、本件手術2及び本件手術3の際に出血が見られなかったことは、むしろ出血量の少なさを示すものとも十分考えられるもので、本件手術2や本件手術3当時の・・・の病態から、直ちに低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、フィブリノゲン製 剤が投与された事実を推認することはできない。 イ本件各証拠によっても、本件手術2及び本件手術3当時の本件病院ないし・・医師のフィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 ウしたがって、本件手術2及び本件手術3に際して、・・・に対し 本件各証拠によっても、本件手術2及び本件手術3当時の本件病院ないし・・医師のフィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 ウしたがって、本件手術2及び本件手術3に際して、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑷ 他原因の存否 原告らは、本件各手術以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介し た感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からすると、・・・がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件各手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、本件診断書の記載、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 2 以上によれば、本件各手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個39(原告番号150番) 以下、本別紙中では、原告番号150番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、 別紙個39(原告番号150番) 以下、本別紙中では、原告番号150番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和50年11月4日、・ ・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、帝王切開術により第2子及び第3子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産(甲C15002、03、弁論の全趣旨)ア原告は、多胎妊娠(双胎)をし、本件病院において、帝王切開術により、昭和50年11月4日午後2時27分頃に第2子の二女を、同日午後2時29分に第3子の長男をそれぞれ出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。 ウ第2子の出産に関する母子健康手帳(甲C15002。以下「本件母子手帳1」という。)10頁「出産の状態」の「分娩経過」欄には、「特記事項」として「骨盤位」に〇印が付けられ、「出産時の産科手術及び処置」 として「帝王切開」に〇印が付けられている。なお、「輸血・輸液」欄及び「出血量」欄は記載がない。 第3子の出産に関する母子健康手帳(甲C15003。以下「本件母子手帳2」という。)10頁「出産の状態」の「分娩経過」欄には、「出産時の産科手術及び処置」として「帝王切開」に〇印が付けられており、 「輸血・輸液」欄及び「出血量」欄は記載がない。 エ本件病院において、本件出産に関する診療録その他の医療記録は現存しない。また、本件 「帝王切開」に〇印が付けられており、 「輸血・輸液」欄及び「出血量」欄は記載がない。 エ本件病院において、本件出産に関する診療録その他の医療記録は現存しない。また、本件母子手帳1及び本件母子手帳2(以下、併せて「本件各母子手帳」ということがある。)にフィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 ・・・・・・・・病院の・・・・医師作成の平成23年6月13日付け診断書(甲C15001)には、「病名」として「C型慢性肝炎」とあり、「⑵ 検査結果」として「平成20年12月9日 HCVグループ1 HCVリアルタイム5.6 LogIU/mL(リアルタイムPCR) GOT 78 GPT103」と記載されている。 ⑶ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入厚生労働省が公表している特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関のリスト上、本件病院の記載がある。ただし、製剤納入期間については記載がない。(甲C15006)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 本件病院には、本件出産当時、フィブリノゲン製剤が納入されていたと考えられるところ、原告が双子を出産する際に自然分娩が危険で無理な状態になっていたため帝王切開手術を行ったこと、・・医師から母体が一番 危険な状態だと言われていたことからすると、本件出産においては大量出血が予想され、原告は非常に危険な状態であったと考えられる。 ⑵ 平成15年頃、原告が・・医師に当時のフィブリノゲン製剤の使用の有無について尋ねたところ、・・医師は、本件出産のことを覚えていると述べた上で、フィブリノゲン製剤を「使いましたよ」と明言している。 平成15年頃、原告が・・医師に当時のフィブリノゲン製剤の使用の有無について尋ねたところ、・・医師は、本件出産のことを覚えていると述べた上で、フィブリノゲン製剤を「使いましたよ」と明言している。 ⑶ したがって、本件出産の際、止血剤としてフィブリノゲン製剤が使用さ れた高度の蓋然性がある。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、帝王切開はDICのリス ク因子の一つとされているから、原告について、本件出産当時、DICを発症する抽象的な危険があったことは否定できない。 しかしながら、本件出産時の具体的な出血量は不明であり、その他、本件出産時に原告が低フィブリノゲン血症を発症していたことや、産科DICスコアの点数を算定すべき事情等があったことを示す証拠はない。 原告は、原告の母が・・医師から帝王切開手術では大量出血が予想され、親子三人の生命が危ないと言われた旨陳述するが、原告の母からの伝聞で、その内容の正確性を吟味できないため信用性に乏しいことはもとより、帝王切開術から直ちに生命に危険が及ぶほどの大量出血が予想されるという医学的根拠も不明であり、本件出産後に・・医師から出血量や使用薬剤の 説明がなかったことからすると、原告の上記陳述は採用できない。 したがって、本件出産時における原告の病態が特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とするものであったとは認められない。 ⑵ 本件出産当時の・・医師の投与方針を明らかにする証拠はないと言わざるを得ないから、担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製 剤の投与を認めることはでき あったとは認められない。 ⑵ 本件出産当時の・・医師の投与方針を明らかにする証拠はないと言わざるを得ないから、担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製 剤の投与を認めることはできない。 これに対し、原告は、・・医師からフィブリノゲン製剤を使用した旨の回答を受けたと陳述するが、本件出産当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたかは明らかでなく、・・医師がそのような回答をしたか否かも疑わしい。これをおいても、本件出産から30年経過した時 点での発言であること、・・医師が使用証明書の作成については断ってい ることからすると、・・医師がそのような発言をしていたとしても、原告に対して特定フィブリノゲン製剤を投与した具体的な記憶に基づく発言とは解されない。そして、・・医師の上記発言からも、フィブリノゲン製剤に関する投与方針は不明である。 ⑶ そうすると、本件出産時、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与 されたとは認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件出産当時、本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていたかは不明である。 ⑵ 原告の本件出産当時の病態は一切明らかにされておらず、原告がフィブ リノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとはいえない。 ⑶ ・・医師によるフィブリノゲン製剤使用に関する発言は、あくまでも一般論としての回答であり、その後、・・医師が証明書の作成を断ったことからして、・・医師の発言は曖昧かつ不明確な記憶によるものであり信用に値しない。さらに、担当医のフィブリノゲン製剤の投与方針も明らかで ない。 ⑷ 以上のとおり、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実は認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) フィブリノゲン製剤の投与方針も明らかで ない。 ⑷ 以上のとおり、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実は認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) 原告は、平成13年5月にC型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、慢性C型肝炎に罹患した。証拠として甲C15001号証がある。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分 類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告は、本件出産の際、止血のためにフィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性があると主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲ ン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投 )。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが 推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件各母子手帳の記載及び原告の陳述によれば、本件出産当時の原告の病態に関し、双胎であったこと、児の発育が進み、臍の緒が絡まっていたことから帝王切開術により出産したことが認められるところ、帝王切開は、 DICの誘因となる産科疾患に当たる。 イしかしながら、本件出産の際の原告の具体的な出血量及び出血状況は明らかでない。原告は、原告の母が、手術に際して、・・医師から、帝王切開手術では大量出血が予想され、親子三人の生命が危ないと言われた旨陳述するが、原告には双胎妊娠で合併しやすい異常と言われる妊娠中毒症、妊婦貧血、羊水過多症等の異常も見られないこと(甲C15002(6な いし9頁)、乙統109(171頁))、・・医師のその説明内容自体が抽象的なものであり、その際、原告に対して実施される可能性がある処置の内容や輸血の有無について説明がされた経過もうかがわれないことからして、・・医師の上記説明を基に、帝王切開手術中の原告の具体的な病態を推し量ることはできない。 そうすると、本件各証拠によっても、本件出産当時の原告の出血量、出血状況や全身状態等が不明であることからして、本件出産前後を通じ、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとは認められない。 ウまた、仮に原告の出血量が多量に及んだとしても、大量出血が認められ る場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、 予防の必要性がある状態であったとは認められない。 ウまた、仮に原告の出血量が多量に及んだとしても、大量出血が認められ る場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在してい る(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))から、多量の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 エ原告は、平成15年頃、・・医師が、①原告の出産を記憶していると述べたこと、②原告が、・・医師に「出産時に止血剤としてフィブリノ ゲン製剤を使ったでしょうか」と尋ねたところ、「この薬は国が承認し ていたので、使いましたよ。危険な状態のときに使います。帝王切開手術のときも使うことがあります。」と答えたと述べ(甲C15007(3頁))、・・医師の上記発言から、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与が推認できると主張する。 しかしながら、上記の陳述の信用性を補う供述証拠その他の証拠がな く、裏付けを欠くこと、原告の上記陳述内容を前提としても、・・医師が、本件出産の際に行った処置に関する具体的な記憶に基づき、原告に対して行った実際の処置の内容を回答したものではないから、同医師において、帝王切開による出産時にフィブリノゲン製剤を使用した経験があることを述べるにとどまること、上記アないしウのとおり、本件出産 前後を通じ、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はD 同医師において、帝王切開による出産時にフィブリノゲン製剤を使用した経験があることを述べるにとどまること、上記アないしウのとおり、本件出産 前後を通じ、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとは認められないことからして、原告の上記陳述にある・・医師の発言内容を前提としても、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は・・医師の投与方針 本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師が、具体的な出血量若しくは輸血量又は全身状態などに照らし、どのような場合に特定フィブリノゲン製剤を投与していたかを認めるに足りない。 原告は、・・医師が、「危険な状態のときに使います。帝王切開手術のときも使うことがあります。」と答えたと述べるものの、上記⑵エで説示した とおり、・・医師の上記発言は、帝王切開による出産時にフィブリノゲン製剤を使用した経験があることを述べるにとどまり、かつ、実際に投与していたという「危険な状態のとき」がどのような病態を指すかが一切不明であるから、これを基準や方針とみる余地はないもので、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑷ 他原因の存否 原告は、本件出産時の他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染な ど様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとさ て、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染な ど様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からすれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個40(原告番号151番) 以下、本別紙中では、原告番号151番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、①昭和59年6月15日、 ・・・・・・・・(以下「本件病院1」という。)において、帝王切開術により第1子を出産(以下「本件出産1」という。)した際、②昭和63年11月16日、・・医院(現・・・・・・・・・。以下「本件病院2」という。)において、帝王切開術により第2子を出産(以下「本件出産2」といい、2回の出産を総称するときは「本件各出産」という。)した際、それぞ れ特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対 い、2回の出産を総称するときは「本件各出産」という。)した際、それぞ れ特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産1 ア原告は、昭和59年6月15日、本件病院1において、帝王切開術により第1子を出産した(本件出産1)。本件出産1の担当医師は、・・・・医師である。(甲C15104)イ本件出産1に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳1」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄の「頭位」に○印が付けら れ、「特記事項」として「帝王切開術」、「児頭骨盤不適合」、「輸血400㏄」との記載があり、「出血量」欄には「少量・中量・多量(㎖)」のいずれも記載がない(甲C15104)。 ⑵ 本件出産2ア原告は、昭和63年11月16日、本件病院2において、帝王切開術に より第2子を出産した(本件出産2)。本件出産2の担当医師は、・・・ 医師である。(甲C15105)イ本件出産2に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳2」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄の「頭位」に〇印が付けられ、「特記事項」として「帝王切開」との記載があり、「出血量」欄には「中量」に〇印が付けられている(甲C15105)。 ⑶ 原告は、平成17年にC型肝炎ウイルス感染との診断を受け、遅くとも平成23年8月5日にはC型慢性肝炎の診断を受けた(甲C15103、07)。 ⑷ 本件病院2は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C15106)。 ⑸ 慢性肝炎の診断を受けた(甲C15103、07)。 ⑷ 本件病院2は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C15106)。 ⑸ 本件各出産に関し、当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳1及び本件母子手帳2は現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 原告が本件出産1又は本件出産2の際に相当量の出血をし、これに伴って止血のため点滴により特定フィブリノゲン製剤が投与された。 本件出産1については、本件母子手帳1に輸血400㏄がされた記載があることから相当量の出血があったことが推認されること、帝王切開術後 に点滴を受けたことなどから、点滴により特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性がある。 また、本件出産2については、本件母子手帳2に出血量「中量」の記載があることから相当量の出血があったことが推認されること、帝王切開術中から点滴を受けたこと、本件病院2が特定フィブリノゲン製剤の納入先 医療機関であったことなどから、点滴により特定フィブリノゲン製剤が投 与された可能性がある。 ⑵ 原告は、小学校1、2年時に頭蓋骨陥没骨折により手術したが、C型肝炎ウイルス感染発覚の45年前であり、感染原因とは考え難く、20歳頃に受けた盲腸摘出手術の際は、大量に出血するなどの問題が発生していないから、本件各出産の際以外、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えら れない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件各出 問題が発生していないから、本件各出産の際以外、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えら れない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件各出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるが、本件各証拠を みても、本件各出産について、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。原告については、本件出産2について、中量の出血があったと認められるものの、具体的な出血量は不明である。 このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件各出産時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、本件各出産後の身体症状等は不明 であり、本件各出産について、産科DICスコアの点数を算定すべき事情は認められない。 また、原告の供述を前提としても、具体的な出血量、止血剤使用の有無、使用した止血剤名、そのほか医師が執った処置の内容は不明であり、本件各出産の際に、特定フィブリノゲン製剤の投与があったとはいえない。 したがって、原告について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件各出産時における各担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、原告の供述によっても、上記各投与方針はいずれ も不明と言わざるを得ないこと、本件病院1には特定フィブリノゲン製剤 が納入されていたことを明らかにする証拠すら提出されていないことから、上記観点からも、本件各出産の際に、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告の 製剤 が納入されていたことを明らかにする証拠すら提出されていないことから、上記観点からも、本件各出産の際に、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) 原告は、平成17年にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認めれないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無(原告の主張)本件各出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 C型慢性肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成17年にC型肝炎ウイルス感染がわかり、遅くとも平成23年にはC型慢性肝炎の診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。 提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告は、本件各出産の際、それぞれ特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件各出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認 に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件出産1について 本件母子手帳1及び原告の供述その他本件各証拠によれば、原告の病態について、本件出産1の際、児頭骨盤不適合のため帝王切開術により児娩出に至ったこと、出血量は不明であるが、400㏄の輸血が行われたことが認められ、帝王切開術はDICの誘因となる産科疾患に当たるとされている(乙統97(255頁))。 しかしながら、上記の原告の病態からは、本件出産1の前後を通じ、原告に重篤な障害、ショック症状等の臨床症状や身体症状があったことはうかがわれないから、原告にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情は認められず、原告の病態が低フィブリノゲン血症又 はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 そうすると、原告の供述を前提としても、本件出産1の際に特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 イ本件出産2について本件出産2及び原告の供述その他本件各証拠によれば、原告の病態につ いて、本件出産2の際、帝王切開術により児娩出に至ったこと、出血量は 中量であったことが認められ、上記アのとおり、帝王切開術はDICの誘因となる産科疾患に当たるとされている。 この点、原告は、帝王切開術 切開術により児娩出に至ったこと、出血量は 中量であったことが認められ、上記アのとおり、帝王切開術はDICの誘因となる産科疾患に当たるとされている。 この点、原告は、帝王切開術の最中、看護師が原告の病態を指して、すごい下血ですねという会話をしていたと供述するが(原告本人19頁)、本件母子手帳2には帝王切開術中の出血が記載されることからして、原告 の供述を前提としても、本件出産2の際の出血量は中量にとどまるもので、上記認定を左右しないというべきである。 そうすると、上記の原告の病態からは、本件出産2前後を通じ、臨床症状として原告が出血によりショック症状に陥り全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとして、原告の病態が低フィブリ ノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったとはうかがわれないから、原告の供述を前提としても、本件出産2の際に特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院1、2又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件各出産時の本件病院1、2又は上記各担当医 師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ したがって、本件各出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否 原告は、本件各出産の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の らないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介 した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例 も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告は、小学校1、2年頃(昭和33、4年頃)に頭蓋骨陥没骨折のため手術を受けたが、その内容は不明であること、20歳頃(昭和47年頃)に虫垂炎のため盲腸切除手術を受けたことなどを供述していること(原告本人1、2頁)、本件出 産1の際には輸血が行われていること、昭和59年当時輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率は16.1%であったと報告されていること(乙統218(723頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件各出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件各出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個41(原告番号160番) 以下、本別紙中では、原告番号160番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原 らこれを棄却することとする。 別紙個41(原告番号160番) 以下、本別紙中では、原告番号160番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、平成5年1月19日、・・・ ・・・・・・・(現・・・・・・・・・・・・・・・・・。以下「本件病院」という。)において、胃癌治療としての胃亜全摘手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与(フィブリン糊としての使用)を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000 万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件手術(甲C16003、05、06、弁論の全趣旨)ア原告は、平成5年1月8日に本件病院に入院し(以下「本件入院」という。)、同月19日に本件手術を受け、同年3月5日に退院した。 イ本件手術の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である(甲C16002、原告本人9頁)。 ウ本件病院において、本件手術に関し、本件手術前後に作成された医療関係記録は、外来診療録に編綴されている入院診療録要約(以下「入院診療録要約」という。)及び退院後の平成5年3月19日に行われた外来診療 に関する外来診療録のみ現存するが、いずれも本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤を使用した旨の記載はない。 入院診療録、手術記録その他本件手術で行われた具体的な処置の内容について記載された医療関係記録は現存していない(原告本人6頁)。 ⑵ 意見書の作成(甲C16002) ・・医師は、平成23年2月7日付けで、「意見書」と題する文書(以 について記載された医療関係記録は現存していない(原告本人6頁)。 ⑵ 意見書の作成(甲C16002) ・・医師は、平成23年2月7日付けで、「意見書」と題する文書(以 下「本件意見書」という。)を作成した。本件意見書には、①原告から送付された本件病院の外来診療録の写しに記載された内容に基づいて記述すること、②入院診療録要約の記載からすると、原告は平成5年1月8日から同年3月5日までの間、本件病院に入院し、・・医師を含む手術チームによって同年1月19日に原告の胃癌に対する胃亜全摘術が施行されたこ と、入院中輸血が行われなかったことが認められること、③C型肝炎抗体検査及び人血由来局所止血剤使用の有無に関しては入院診療録要約に記載がないから不明であること、④外来診療録の記載から、本件入院中に、C型肝炎抗体検査が行われ、陰性であったと判断できるが、上記検査が本件手術の前であったか後であったかは明らかでないこと、⑤平成11年、原 告のC型肝炎抗体陽性が確認され、翌年1月の肝生検で、慢性活動性肝炎と診断されたことが記載されている。そして、本件意見書の末尾には、「以上の経過により、・・・氏の慢性C型肝炎発症原因として、胃ガン手術時における人血由来局所止血剤使用の可能性を否定しきれない。」とあり、・・医師の署名押印がある。 ⑶ア原告は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 イ原告の平成12年1月の入院時データベースには、「病名」欄に「C型慢性肝炎」と記載されている(甲C16003(11枚目))。 ⑷ 厚生労働省が発表したフィブリノゲン製剤の納入先医療機関のリストによると、本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていた期間は、昭和5 7年から同63年の間である(弁論の全趣旨)。 第 ⑷ 厚生労働省が発表したフィブリノゲン製剤の納入先医療機関のリストによると、本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていた期間は、昭和5 7年から同63年の間である(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤使用の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件手術前までは、会社において定期的に健康診断を受診してお り、C型肝炎ウイルスに感染したとの診断を受けたことはなく、本件病院の 外来診療録にも、本件手術前に原告がC型肝炎ウイルスに感染していた旨の記載はないから、本件手術前の段階では、C型肝炎ウイルスに感染していなかったと考えられる。 ⑵ 平成元年11月頃にC型肝炎ウイルスについて輸血用血液のスクリーニング検査が導入され、平成4年2月にはより精度の高い検査に切り替えられた 結果、輸血によるC型肝炎ウイルスへの感染がほとんど見られなくなったことからすると、本件手術の際に原告が輸血によりC型肝炎ウイルスに感染する可能性はない。 ⑶ 以上のとおり、原告は、本件手術の時点ではC型肝炎ウイルスに感染しておらず、平成11年11月にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し たところ、原告は、本件手術以外に大きな手術やけがをしたことはなく、輸血や止血剤の治療を受けたこともないから、本件手術の際にフィブリン糊を使用されたことにより感染した蓋然性が極めて高い。 ⑷ ・・医師は、本件意見書において、本件手術時にフィブリノゲン製剤が使用された可能性を否定しきれないと述べたものと解される。また、原告は、 ・・医師から、止血剤に糊を使っていたと聞いた。 ⑸ したがって、本件手術の際、原告に対してフィブリン糊が使用されたと 用された可能性を否定しきれないと述べたものと解される。また、原告は、 ・・医師から、止血剤に糊を使っていたと聞いた。 ⑸ したがって、本件手術の際、原告に対してフィブリン糊が使用されたと認められる。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤が低フィブリノゲン血症に対して効能効果を有す るものであり、局所を止血するものではないこと、フィブリン糊が組織の接着を目的として使用されるものであり、それ自体に止血効果があるものではないことなどからすると、本件意見書の「人血由来局所止血剤」については、特定フィブリノゲン製剤やフィブリン糊のいずれを指すものとも解されない。 ⑵ 本件意見書は、本件手術時の特定フィブリノゲン製剤の使用の可能性を否 定しきれないというにとどまる上、C型肝炎ウイルスの感染原因が輸血や血 液製剤の投与に限られるわけでも、医療行為に限定されるわけでもなく、そもそも特定不能な場合が相当多いことなども併せ考慮すると、本件意見書のとおり、C型肝炎抗体検査の診断結果の推移から、本件手術時に特定フィブリノゲン製剤が使用されたと認めることはできない。 ⑶ 昭和63年4月にフィブリン糊キット製剤(以下「キット製剤」という。) が発売され、キット製剤のフィブリン糊としての使用が医療保険制度における診療報酬の支払対象(保険適応)となる適応使用に該当する上、特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊の使用よりも調合が簡単であったこと、昭和62年、同63年には、特定フィブリノゲン製剤の安全性の問題が指摘されていたことから、昭和63年以降、特定フィブリノゲン製剤の調 製によるフィブリン糊の使用はなくなったものと考えられるのであり、平成5年1月19日に行われた本件手 ン製剤の安全性の問題が指摘されていたことから、昭和63年以降、特定フィブリノゲン製剤の調 製によるフィブリン糊の使用はなくなったものと考えられるのであり、平成5年1月19日に行われた本件手術において、特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊が使用された可能性も極めて低い。 ⑷ 特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊の使用が適応外使用であることからすると、その使用の有無は、個々の担当医師の使用方針による ところが大きいと解されるところ、本件手術時における担当医師の使用方針を明らかにする客観的証拠はない。 ⑸ したがって、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊が使用された事実は認められない。 2 特定フィブリノゲン製剤の使用と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無(原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が使用されたこと以外に原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因はないから、上記使用と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間の因果関係の存在は明らかである。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤使用の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、C型慢性肝炎に罹患した。 (被告及び補助参加人の主張) C型肝炎の診断書(甲C16001)の診断根拠となる各種検査結果が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤使用の有無⑴ 原告は、本件手術の際に、特定フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として 使用されたと主張するが、 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤使用の有無⑴ 原告は、本件手術の際に、特定フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として 使用されたと主張するが、本件手術の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として使用されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠は見当たらない(前提事実⑴ウ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態、本件手術の内容及び医師の当時 の使用方針等の間接事実から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として使用されたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊の使用の可能性ア特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊(以下、この調製方法により使用されるフィブリン糊を単に「フィブリン糊」ということがあ る。)は、フィブリノゲン製剤にトロンビンなどの複数の薬剤を配合して糊状にし、その組織接着作用を利用して、出血創傷面の閉鎖、骨折片の固定、末梢神経及び血管・微小血管の吻合、腱接着又は腱縫合の補強、実質臓器の創傷部の接着などに臨床使用するものである。 このような特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊の使用は、 特定フィブリノゲン製剤の適応外使用に該当するから、その使用の判断は、 専ら担当医の個別の処置方針によるものであり、しかも、その処置方針は当時の医療水準や当該病院における治療指針などの個別事情にも大きく影響されるものである。 したがって、フィブリン糊としての使用の有無を検討するに際しては、その前提として、特定フィブリノゲン製剤が本件病院に納入されていたと いうだけで どの個別事情にも大きく影響されるものである。 したがって、フィブリン糊としての使用の有無を検討するに際しては、その前提として、特定フィブリノゲン製剤が本件病院に納入されていたと いうだけでなく、担当医の当時の使用方針等に照らし、その当時、担当医師が特定フィブリノゲン製剤を調製し、フィブリン糊として使用する可能性があったか否かをまず検討する必要がある。 イ特定フィブリノゲン製剤及びフィブリン糊に関しては、①昭和56年6月12日に基礎的研究の結果が「手術用接着剤としてのヒト・フィブリン 糊の研究」として公表され、その後、ミドリ十字が組織したフィブリン糊研究会による研究が進められたこと、②昭和62年4月以降、フィブリノゲン製剤(非加熱製剤)による肝炎ウイルス感染リスクが周知され、ミドリ十字が回収を行ったこと、③昭和63年6月には、フィブリノゲンHT-ミドリ(加熱製剤)について緊急安全性情報が出されたこと、④昭和6 3年にヘキスト社及び日本臓器社からキット製剤(特定フィブリノゲン製剤非該当)が発売されたこと、⑤キット製剤は、組織の接着・閉鎖を効能効果とし、フィブリン糊としての使用は保険適応となる適応使用であったこと(乙統175(9頁)、176、弁論の全趣旨)などが認められる。 以上の事実を総合すると、本件手術の時点(平成5年)で、特定フィブ リノゲン製剤の調製によるフィブリン糊の使用とその効能効果を同じくし、かつ、費用面及び安全面のいずれにおいても優位であるキット製剤が既に販売されていたと認められるのであって、本件病院において、特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊をあえて使用する合理的理由は見当たらないというべきである。そして、上記事情にもかかわらず、本件病 院において、特定フィブリ 、本件病院において、特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊をあえて使用する合理的理由は見当たらないというべきである。そして、上記事情にもかかわらず、本件病 院において、特定フィブリノゲン製剤の調製によるフィブリン糊の使用が 行われていたという本件病院関係者の供述その他の証拠による個別の立証もない。 ウこの点、原告は、・・医師が止血剤に糊を使っていたと述べていたと供述するが(原告本人7頁)、上記アのとおり、フィブリン糊の効能及び効用は、組織の接着であり、止血ではないことからすると、原告 の上記供述はそもそも医学的見地からその合理性に疑問がある。 この点をおいても、上記イのとおり、本件手術時点では、キット製剤が既に発売されていたことからすると、・・医師がいう「糊」はキット製剤のフィブリン糊としての使用を指していると考えるべきもので、・・医師が上記発言をしていた事実を前提としても、自らのキッ ト製剤の使用開始時期を誤解して述べたものと解さざるを得ず、上記発言があるからといって、本件手術当時に本件病院において特定フィブリノゲン製剤から調製してフィブリン糊を使用していた事実を認めることはできない。 エしたがって、本件手術時点で、本件病院において特定フィブリノゲン製 剤の調製によるフィブリン糊が使用された可能性が考えられないから、・・医師の発言があっても、原告に対する特定フィブリノゲン製剤使用の事実を認めることはできない。 ⑶ 原告の病態その他の事情からも使用事実を推認できないことア入院診療録要約や外来診療録の記載によっても、本件手術における処置 の具体的な内容、原告の出血原因、出血状況は明らかでなく、1200㏄もの出血をしたと医師から説明を受けたと述べる原告の供 ア入院診療録要約や外来診療録の記載によっても、本件手術における処置 の具体的な内容、原告の出血原因、出血状況は明らかでなく、1200㏄もの出血をしたと医師から説明を受けたと述べる原告の供述についても裏付けを欠いているから、原告の病態や本件手術の内容から、フィブリン糊の通常の使用場面であったと認めることはできず、原告に対する特定フィブリノゲン製剤使用の事実を推認することはできない。 イ・・医師は、本件意見書において、・・・氏の慢性C型肝炎発症原因と して、胃ガン手術時における人血由来局所止血剤使用の可能性を否定しきれないと述べており、「人血由来局所止血剤」が特定フィブリノゲン製剤のことを指すと解する余地はある。 しかしながら、①本件意見書は、原告に対して行った手術の内容及び当時の原告の傷病の程度を認定し、これをもとに自身のフィブリノゲン製剤 の使用方針に照らして使用の具体的可能性を検証したものではなく、C型肝炎ウイルスへの感染事実から、感染に関する他原因の存否を基に仮定を重ね、特定フィブリノゲン製剤使用の可能性が抽象的には想定できる旨述べたにとどまること、②原告については、本件手術前に抗体検査が行われていたのかも不明であること、③C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウ イルスに感染しているヒトの血液であるところ、感染経路としては、輸血や血液製剤に限られず、医療行為時の感染事故など様々なものが指摘されており、その原因が不明である症例も相当数あること(乙統2(15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からすれば、本件意見書の記載は、憶測の域を出ないもので、これをもって原告に対 する特定フィブリノゲン製剤使用の事実を推認することはできない。 ウよって、原告の具体的な傷病の状態等に照 等)からすれば、本件意見書の記載は、憶測の域を出ないもので、これをもって原告に対 する特定フィブリノゲン製剤使用の事実を推認することはできない。 ウよって、原告の具体的な傷病の状態等に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤使用の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として使用されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個42(原告番号162番) 以下、本別紙中では、原告番号162番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、平成3年8月12日、・・・ ・(以下「本件病院」という。)において第2子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実 ⑴ 本件出産(甲C16204、弁論の全趣旨)ア原告は、平成3年8月12日午前10時51分、本件病院において、第2子を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)である。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C16204。以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過(母児の状態)」欄の「頭位」に〇が付けられ、「特記事項」には「 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C16204。以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過(母児の状態)」欄の「頭位」に〇が付けられ、「特記事項」には「アプガー係数:10」とあり、「出血量」欄では、「多量」に〇印が付けられ、「1500㎖」と記載されている。 エ本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。 また、本件母子手帳にフィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。 ⑵ 原告は、平成4年2月頃、C型慢性肝炎との診断を受けた(甲C16205)。 ⑶ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入状況に関し、ミドリ十字を合併により承継したウェルファイド株式会社が保有する納入実績データ(以下「本件納入データ」という。)上は、昭和55年2月に3本、同年5月に2本、同56年10月に4本、同57年1月に6本、同58年4月に5本、同年5月に3本、同59年4月に5本、同60年4月に2本、同 年9月に3本それぞれ納入したのを最後に、本件病院において特定フィブリノゲン製剤の納入はされておらず、昭和62年7月には3本返品されている。なお、同データ上、フィブリノゲンHT-ミドリ(加熱製剤)が本件病院に納入された記録はない。(丙C16201、弁論の全趣旨)⑷ア原告が昭和63年2月14日に第1子を出産した際の母子健康手帳9頁 の「妊娠中の経過⑴」の「血液型検査」の「ABO」欄には「A」と記載されている。また、本件母子手帳9頁の「妊娠中の経過⑴」の「血液型検査」の「ABO」欄には、「A」との記載の上から修正液が塗布された の「妊娠中の経過⑴」の「血液型検査」の「ABO」欄には「A」と記載されている。また、本件母子手帳9頁の「妊娠中の経過⑴」の「血液型検査」の「ABO」欄には、「A」との記載の上から修正液が塗布された痕跡がある。(甲C16203、04)イ原告の血液型は、O型である(甲C16208)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ ・・医師は、平成2年当時、本件病院の非常勤医であった・・・・医師(以下「・・医師」という。)に対し、「婦人科にとっては、フィブリノゲ ン製剤は、かなりの止血効果がある。C型肝炎の危険があるので、極力使わないし、まず、使わないようにしているんですけれども、万々一、出血が起こって困った場合、命に関わるような出血の場合には使う可能性はある」と述べた(以下「本件発言」という。)。本件発言からすると、本件出産当時、本件病院では、緊急事態のためにフィブリノゲン製剤の在庫が残っていたと 考えられる。 ⑵ 原告は、第2子の娩出後、陣痛促進剤の副作用である過強陣痛の影響で、大量出血をし、急遽、子宮摘出手術をした。加えて、輸血の必要が生じ、輸血用血液を取り寄せたにもかかわらず、血液型の誤認があり、血液を再度取り寄せなければならなくなり、止血剤を必要とするような緊急事態に陥った。 ⑶ 原告は、平成4年2月頃、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し たところ、その線維化の程度から、同月時点では、感染してから間もない時期にあったと考えられること、本件病院では、妊婦に対する感染症のスクリーニング検査が徹底されていたにもかかわらず、出産前に原告にはC型肝炎ウイルスの感染の有無について何 では、感染してから間もない時期にあったと考えられること、本件病院では、妊婦に対する感染症のスクリーニング検査が徹底されていたにもかかわらず、出産前に原告にはC型肝炎ウイルスの感染の有無について何ら告知されていなかったことなどを総合すると、原告は、本件出産の機会にC型肝炎ウイルスに感染したと認められる。 そして、本件出産当時、輸血後肝炎の発症例が激減していたことからすると、輸血による感染は考えられないから、原告は、本件出産時の特定フィブリノゲン製剤の投与によってC型肝炎ウイルスに感染したとしか考えられない。 ⑷ したがって、本件出産の際、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認められる。 (被告の主張)⑴ 本件病院には、昭和60年9月を最後に特定フィブリノゲン製剤は納入されておらず、約2年後の昭和62年7月に特定フィブリノゲン製剤が3本返品されているところ、この返品は、ミドリ十字社による自主回収の動きを踏まえた対応であったと考えられることからすると、本件出産当時、本件病院 に使用可能な特定フィブリノゲン製剤の在庫はなかったと認められる。 仮に、昭和62年7月の返品以後に特定フィブリノゲン製剤の在庫が残っていたとしても、特定フィブリノゲン製剤の有効期間は3年であるから、同月から約4年1か月後の本件出産当時、本件病院に使用可能な特定フィブリノゲン製剤が残存していなかったことは明らかである。 ⑵ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フ ィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、原告については本件出産時に約1500㎖の出血が生じたことが認めら ブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくはその予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、原告については本件出産時に約1500㎖の出血が生じたことが認められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかに産科DICスコアの点数を算定すべき事情は認められない。 看護師長から大量の出血及び輸血をした、呼吸が止まったと言われたという原告の供述は、本件出産の際、原告について高次医療施設に搬送することを検討した経過がうかがわれないことからしても、信用できない。 ⑶ ・・医師の本件出産時における投与方針を明らかにする証拠はない。・・医師に特定フィブリノゲン製剤の使用について質問したとする・・医師 の供述は、・・医師において、万が一の場合には、特定フィブリノゲン製剤を使用すると考えていた旨を述べるにとどまり、・・医師の具体的な投与方針を明らかにするものではない。 ⑷ 当時のHCV抗体検査の精度からは、妊婦検診時にスクリーニング検査が行われて陰性であったとしても、その当時、原告がC型肝炎ウイルスに感染 していなかったと断定できるものではない。また、平成4年の肝生検で線維化の程度がF1だったとしても、それにより直ちに本件出産の機会にC型肝炎ウイルスに感染したことが推認されるものではない。 ⑸ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件納入データ上、本件病院では、昭和62年7月に非加熱製剤3本が返品されて以降、非加熱製剤と加熱製剤のいずれも納入されていないところ、同データは、①ミドリ十字の保有する納入実績データが卸売業者からの支払代金額やリベートなどの額を決定 2年7月に非加熱製剤3本が返品されて以降、非加熱製剤と加熱製剤のいずれも納入されていないところ、同データは、①ミドリ十字の保有する納入実績データが卸売業者からの支払代金額やリベートなどの額を決定する要素であったこと、②平成3年前後の 本件病院への納入記録に関し、データの入力ミスが生じる要因は見当たらな いことからすると、信用できる。 特定フィブリノゲン製剤の在庫がない以上、原告に投与されていないことは明らかである。 ⑵ フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症に対して投与することが推奨されてきた製剤であって、そもそも出血性疾患に対して一般的に投与され るものではない。そして、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤の投与事実の有無を判断するには、少なくとも・・医師の当時の投与方針及び原告の当時の病態を踏まえた個別具体的な検討が必要不可欠であるところ、・・医師の証言は、・・医師の投与方針を正確に表現したものとは評価できない。 また、本件出産当時、フィブリノゲン製剤に代わる代替薬が登場していた にもかかわらず、肝炎リスクが報告されていた特定フィブリノゲン製剤をあえて使用する合理的理由はないから、・・医師において、本件出産当時、フィブリノゲン製剤を投与する方針を有していたとはおよそ考えられない。 ⑶ 当時の原告の病態について、低フィブリノゲン血症であることをうかがわせる事情はなく、・・医師のいう「命にかかわるような出血の場合」であっ たことを示す客観的な事情もないから、原告の病態を踏まえても、フィブリノゲン製剤の投与は推認できない。 ⑷ C型肝炎ウイルスの感染源は血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故、観血的 えても、フィブリノゲン製剤の投与は推認できない。 ⑷ C型肝炎ウイルスの感染源は血液製剤の投与に限られるものではなく、輸血、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故、観血的民間治療、歯科治療時の感染事故、母子間感染、性交感染、かみそり、歯ブ ラシの共用、覚せい剤の静注注射、麻薬の鼻孔吸引、入れ墨、保因者による咬傷など様々な感染経路が指摘されており、感染源が不明な場合も相当多いから、原告がC型肝炎に感染している事実は、特定フィブリノゲン製剤の投与を何ら根拠づけるものではない。 ⑸ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与 された事実は認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成4年2月にC型肝炎ウイルスに感染したことが判明した。 (被告の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されていないため、 否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外にC型肝炎ウ イルスに感染する原因はないから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間の因果関係の存在は明らかである。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、平成4年2月頃、慢性C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため 原告は、平成4年2月頃、慢性C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実は、認められない。理由は以下のとおりである。 ⑴ 原告は、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された 事実が認められると主張するが、本件出産の際、原告に対し特定フィブリノ ゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠は見当たらない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認で きるかどうかを検討する。 ⑵ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の在庫の有無ア本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入状況に関し、①本件納入データ上、昭和60年9月に3本納入したのを最後に本件病院が特定フィブリノゲン製剤を納入した記録はなく、昭和62年7月には3本返品さ れていること(前提事実⑶)、②昭和62年4月以降、非加熱製剤が原因と疑われる肝炎の集団感染の事実が新聞報道されたこと(丙C16204ないし06)、③同月以降、ミドリ十字は非加熱製剤の出荷を停止し、納入先医療機関や卸売業者から非加熱製剤の回収を行っていたこと(丙C16202、03)などを総合すると、本件病院は、フィブリノゲン製剤投 与による肝炎リ ミドリ十字は非加熱製剤の出荷を停止し、納入先医療機関や卸売業者から非加熱製剤の回収を行っていたこと(丙C16202、03)などを総合すると、本件病院は、フィブリノゲン製剤投 与による肝炎リスクが認識されたことを受けて、昭和62年7月にその時点で在庫のあった特定フィブリノゲン製剤をすべて返品し、それ以降加熱製剤を含めて特定フィブリノゲン製剤を納入しなかったものと推認できる。 また、特定フィブリノゲン製剤の有効期間が3年間であること(乙統31ないし57)からしても、平成3年8月の本件出産時点で、本件病院に 使用可能な特定フィブリノゲン製剤があったとは考え難い。 イこの点、原告は、補助参加人が納入データについて①1980年代に手書き伝票を手作業でコンピュータに入力していたデータにつき、入力ミスの可能性があること、②特約店の医療機関コードと弊社の医療機関コードにマッチングミスがあり得ることを理由に、正確性を保証できるものでは ない旨説明した「納入実績資料のお取扱いについて」と題する文書(甲A 48)を援用し、本件納入データの正確性には疑義がある旨主張する。 しかし、本件病院において非加熱製剤が返品された経緯については上記アで説示したとおりであるから、仮に本数に多少の誤差があったとしても、昭和62年7月に本件病院における特定フィブリノゲン製剤の在庫が全て返品されたものと認められる。その際、非加熱製剤の納入実績データが残 存しながら、本件病院における加熱製剤の納入データが医療機関コードのマッチングミス等により一切入力されなくなることは想定し難い。 そうすると、原告の上記主張は、本件納入データに誤りがある抽象的な可能性があると指摘するものにすぎず、本件病院に関する限り、採用できない。 グミス等により一切入力されなくなることは想定し難い。 そうすると、原告の上記主張は、本件納入データに誤りがある抽象的な可能性があると指摘するものにすぎず、本件病院に関する限り、採用できない。 ウまた、原告は、平成2年頃、・・医師が・・医師に対し、フィブリノゲン製剤について、命に関わるような出血の場合に使う可能性があると述べたこと(本件発言)からすると、少なくとも平成2年当時には、まだ本件病院に特定フィブリノゲン製剤が残存していたと認められる旨主張する。 そして、・・医師の証言によれば、本件発言に関し、①産婦人科で集団 感染が発生し、フィブリノゲン製剤による肝炎リスクが周知されていたことから、産婦人科でフィブリノゲン製剤投与についてどう考えられているか気になり、・・医師の考えを質問すると、同医師が本件発言のとおり返答したこと(・・証人9、18頁)、②・・医師と上記会話をしたのは、平成元年10月に・・医師が留学先から帰国し、少し落ち着いた時期であ る同年の年末又は平成2年初頭であったこと(同9、15、18頁)が認められる。 しかし、上記アの納入及び返品の経過からすると、本件病院において在庫を一部残して返品する可能性があるという推論は成り立ちにくい。むしろ、特定フィブリノゲン製剤の在庫を管理していた主体が、各診療科では なく、本件病院の薬剤部であったこと(同10頁)、・・医師は常勤医で はあったが、本件病院の統括的立場にあったとはうかがわれないこと(同45頁)などからすると、・・医師が本件発言当時、本件病院における特定フィブリノゲン製剤の在庫について正確に把握しないまま本件発言に至った可能性が十分考えられる。 したがって、・・医師から・・医師に対し本件発 、・・医師が本件発言当時、本件病院における特定フィブリノゲン製剤の在庫について正確に把握しないまま本件発言に至った可能性が十分考えられる。 したがって、・・医師から・・医師に対し本件発言がされたとしても、 本件発言の存在から直ちに、本件出産当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤の在庫があった事実を推認することはできない。 エ以上、本件出産時点で、本件病院に使用可能な特定フィブリノゲン製剤が存在していたと認めることはできない。 したがって、本件出産時点で、本件病院において特定フィブリノゲン製 剤の使用可能性がない以上、原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実は認めることができない。 ⑶ 原告の病態や・・医師の投与方針等からも原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与が推認できないことア原告の病態 本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)、原告本人の供述(3ないし7、18頁)及び・・医師の証言(5、6頁)から、本件出産時の原告の病態に関し、①原告は、陣痛促進剤として服用したプロスタグランジンE2の副作用で過強陣痛が生じ、子宮に過剰な負担がかかったことにより出血が止まらない状態になったこと、②院長による内診後間もなく原告 の意識状態が低下したこと、③原告に対して輸血が開始されようとしたところ、その直前に原告が取り寄せた血液とは異なる血液であることが判明したこと、④原告には全身麻酔が施されて、緊急子宮摘出手術が行われたこと、⑤本件出産の際の出血量は約1500㎖に及んだこと、⑥原告に輸血が実施されたことが認められる。 この点、原告は、①看護師長から、「出血がかなりあって、輸血もた くさんしている」、3000と2500という数字を覚えているが、どちら が実施されたことが認められる。 この点、原告は、①看護師長から、「出血がかなりあって、輸血もた くさんしている」、3000と2500という数字を覚えているが、どちらが出血量で、どちらが輸血量かははっきりしない、②意識を失っている間に呼吸も止まったという話も聞いたと述べる(原告本人8頁)が、①につき、本件出産の際の出血は娩出直後に生じたもので、本件母子手帳に記載されるべき出血量と異なる出血があるとは認められないから (同8頁)、看護師長が述べる上記数字をもとに出血量や輸血量を認定することはできない。そして、出血量が約1500㎖であるという事実から、出血性ショックにより呼吸停止に至ったと認めるのは困難で(乙統89(21頁))、②の供述内容も信用できない。 上記アのとおり、原告が本件出産後、約1500㎖に及ぶ後産期大量 出血があり、軽症ショックの状態(乙統89(21頁))に陥っていたと認められる。 しかし、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、止血機構の機能を改善・増強することによる 一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在する(乙統83(394頁)、98(28頁))ほか、新鮮凍結血漿の有効性も確認されている(乙A8)。また、原告の上記出血は、子宮に過剰な負担が掛かったことによる子宮の破裂又は重度の頸管裂傷などを原因とすると考えられる(・・証人6頁)ところ、最終的には子宮 摘出術により出血原因が除去されているから、特定フィブリノゲン製剤の投与がなければ、止血に至った機序が説明できないというものではない。 この点、原告は、当初取り寄せた血液が原 終的には子宮 摘出術により出血原因が除去されているから、特定フィブリノゲン製剤の投与がなければ、止血に至った機序が説明できないというものではない。 この点、原告は、当初取り寄せた血液が原告の本来の血液型と異なり、再度取り寄せる必要が生じたから、フィブリノゲン製剤を投与しなけれ ばならないような緊急事態に陥ったと強調するが、本件出産の際の出血 量が約1500㎖であること、当時、血液センターから30分程度で輸血用血液の取寄せが可能であったと考えられること(・・証人52頁)などを総合すると、輸血の実施を待たず、直ちにフィブリノゲン製剤を投与しなければ全身状態を維持できないような緊急事態にあったとまでは認められない。 イ本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針・・医師の証言によれば、平成2年頃、・・医師が特定フィブリノゲン製剤の投与について、投与すれば患者をC型肝炎に感染させてしまう危険があることを承知の上、極力使わないという方針を有しながら、なお「命に関わるような出血の場合に使う可能性がある」と述べていたと認められ (・・証人9頁)、そもそもこれを投与方針として位置付けること自体相当でないように思われるが、この点をおいても、・・医師は、当時、まずは上記製剤を投与しないという方針を有しつつ、「正に生死をさまようような重篤な全身状態に陥っているほどの病態に限って」投与することがあるという限度で「投与方針」とみる余地があるものと解する(ただし、そ の内容から、このような危険な方針が本件病院の方針として行われているとはおよそ考えられない。)。 しかしながら、上記アで認定した原告の病態は、出血量が1500㎖と多量で、軽症ショックに陥るなど、全身状態が相応に悪化していると認めら 件病院の方針として行われているとはおよそ考えられない。)。 しかしながら、上記アで認定した原告の病態は、出血量が1500㎖と多量で、軽症ショックに陥るなど、全身状態が相応に悪化していると認められるものの、「生死をさまようような重篤な全身状態」とはかけ離れて おり、少なくとも・・医師の上記「投与方針」に照らしても、特定フィブリノゲン製剤の投与を合理的に推認することはできない。 ウ他原因の存否原告は、平成4年2月にC型肝炎ウイルスに感染したことが判明した際に線維化が進んでいなかったこと、出産前に本件病院から肝炎ウイルスの 感染について告知された事実がないことからすると、原告が、本件出産の 機会にC型肝炎ウイルスに感染したと考えられるところ、本件出産当時の輸血後肝炎発症率の低さからすると、原告は、本件出産時の特定フィブリノゲン製剤の投与によってC型肝炎ウイルスに感染したとしか考えられないと主張する。 しかし、本件出産当時のHCV抗体検査は、慢性でも陽性が出ない症例 が4分の1程度存在していたほどの精度にとどまっていたこと(・・証人42頁)、感染後、無症候性キャリアのまま感染が持続していた場合には、線維化が進展しない場合も想定されること(同43、44頁)などからすると、上記検査結果等から、本件出産の機会にC型肝炎ウイルスに感染したと断定するのは困難であり、原告の上記主張は前提を欠く。 エよって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは 他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個43(原告番号163番) 以下、本別紙中では、原告番号163番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、①昭和46年12月10日、 ・・・・・・(現・・・・・・・・。以下「本件病院1」という。)において、帝王切開術により第1子を出産(以下「本件出産1」という。)した際、②昭和48年4月16日、・・・・・・・・・(以下「本件病院2」という。)において、帝王切開術により第2子を出産(以下「本件出産2」といい、2回の出産を総称するときは「本件各出産」という。)した際、それぞ れ特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産1 ア原告は、昭和46年12月10日、本件病院1において、帝王切開術により第1子を出産した(本件出産1。甲C16302)。 イ本件出産1に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」には、「分娩経過」欄の「特記事項」として「骨盤位」に〇印が付けられ、「出産時の産科手術及び処置」として「帝王切開」の 記載があり、「出血量」欄には「少量」に〇印が付けられ、数値の記載はなく、「分娩介 娩経過」欄の「特記事項」として「骨盤位」に〇印が付けられ、「出産時の産科手術及び処置」として「帝王切開」の 記載があり、「出血量」欄には「少量」に〇印が付けられ、数値の記載はなく、「分娩介助者氏名」欄は「医師」、「助産婦」とも記載がない。 (甲C16302)。 ⑵ 本件出産2原告は、昭和48年4月16日、本件病院2において、帝王切開術により 第2子を出産した(本件出産2。甲C16304の2、05)。 ⑶ 原告は、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患した(争いがない)。 ⑷ 本件病院1及び本件病院2は、いずれも厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C16307)。 ⑸ 本件出産1に関し、当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳は現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。 本件出産2に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存せず、母子健康手帳も、紛失のため現存していない。 (以上、弁論の全趣旨) 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 本件出産1原告は、骨盤位(逆子)のため帝王切開術となり、麻酔から覚め、腕がだ るいと看護師に伝えると、「点滴が漏れたので大丈夫」といわれたもので、これが特定フィブリノゲン製剤の注射である蓋然性が高い。 ⑵ 本件出産2昭和47年秋頃からキリキリと腹痛があったため痛み止めの注射を打っていたが、主治医からあまり痛み止めを打つと胎児によくないと言われ、予定 日より1か月前に帝王切開で手術した。本件病院2は特定フィブリノゲン製 らキリキリと腹痛があったため痛み止めの注射を打っていたが、主治医からあまり痛み止めを打つと胎児によくないと言われ、予定 日より1か月前に帝王切開で手術した。本件病院2は特定フィブリノゲン製剤の納入医療機関であり、原告の甥も同病院で生まれたが、へその緒がしっかりと結んでいなくて出血し、止血剤を打たれてC型肝炎した事実があるので、当時本件病院2では多数の使用があったと思われる。 ⑶ 原告には、本件各出産の際以外、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考 えられないから、本件各出産の際に、特定フィブリノゲン製剤を投与され、 そのためC型肝炎ウイルスに感染したものと推定すべきである。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件各出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるが、原告の供述を 前提としても、本件各出産時にそのような病態に陥る原因となるものは、出血以外には想定できない。 しかし、一般にそのような病態の原因となり得る出血は大量出血に限られるところ、本件母子手帳によれば、本件出産1の際の出血は、具体的な分量が明らかでない上、「少量」にとどまる。また、本件出産2の際の出血につ いては、母子手帳等の証拠が提出されておらず、具体的な出血量はもとより、そもそも相当量の出血があったこと自体を裏付ける客観的な証拠はない。 また、原告の供述を前提としても、本件各出産時の原告の記憶は全体として曖昧であり、出血の有無や量は不明で、輸血や止血剤、点滴の投与を受けた記憶もなく、医師等からそれらの説明を受けた記憶もないというのである から、本件各出産時における出血が、低フィブリノゲン血症又はそ あり、出血の有無や量は不明で、輸血や止血剤、点滴の投与を受けた記憶もなく、医師等からそれらの説明を受けた記憶もないというのである から、本件各出産時における出血が、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性を生じさせるほどの大量出血であったとは認められない。 そして、そのほかに、本件各出産時において、原告が低フィブリノゲン血症を発症していたことや、産科DICスコアの点数を算定すべき事情等があ ったことを認めるに足りる的確な証拠もない。 したがって、原告について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件各出産時における各担当医師の投与方針を明 らかにする証拠はなく、原告の供述によっても、上記各投与方針はいずれ も不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件各出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件各出産の際、それぞれ特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件各出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医 リノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件各出産の際、それぞれ特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件各出産に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件出産1について本件母子手帳及び原告の供述その他本件各証拠によれば、原告の病態について、本件出産1の際、帝王切開術により児娩出に至ったもので、帝王切開術はDICの誘因となる産科疾患に当たるとされているものの(乙統97(255頁))、出血量は「少量」であったと認められる。 そして、原告の供述によれば、①本件出産1の後、麻酔から覚め、腕が だるいと看護師に伝えると、「点滴が漏れたので大丈夫」といわれたこと(原告本人9、10頁)、②輸血をしたとか、止血剤を投与したとか、出産時に母体に異常な経過があった事実は聞かされていないこと(同10頁)が認められるところ、出血が少量にとどまったことを併せて考えると、原告に対する点滴の内容は、失われた水分等を補う目的で投与される輸液、 補液であったことが十分考えられる。 また、仮に止血処置が行われたとしても、多量の出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法のうち、薬剤療法としては、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたことからして、これら一 般的な止血剤の投与がさ のうち、薬剤療法としては、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたことからして、これら一 般的な止血剤の投与がされた可能性は十分に考えられる。 そうすると、上記の原告の病態からは、本件出産前後を通じ、原告にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったことはうかがわれないから、原告の供述を前提としても、本件出産1の際 に特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 イ本件出産2について本件出産2の際の原告の病態に関し、これを裏付ける資料は母子手帳を含め一切現存しないところ、原告自身も、本件出産2に関し、出血状況、輸血や止血処置の有無に関する記憶は保持しておらず、担当医師から聞か された内容の記憶もないと供述する(原告本人12頁)。 そうすると、原告の病態については、帝王切開術による出産であったということ以外具体的な事実は不明であり、出血状況も不明であるから、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を合理的に推認できる根拠が見当たらない。 この点、原告は、原告の甥が本件病院2で止血剤投与によりC型肝炎に 罹患したことを強調するが、当該甥の症例の内容が明らかでない点をおいても、特定フィブリノゲン製剤の投与がされるかどうかは、各症例における患者の病態を踏まえた医師の判断により行われるものであるから、仮に上記の事情があっても、本件出産2の際の原告に対する同製剤の投与事実を推認させるものではない。 ⑵ 本件病院1、2又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針原告の供述によれ ら、仮に上記の事情があっても、本件出産2の際の原告に対する同製剤の投与事実を推認させるものではない。 ⑵ 本件病院1、2又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針原告の供述によれば、本件出産1の担当医師が・・某医師、本件出産2の担当医師が・・・・医師であると認めることはできるが(原告本人6、7、11頁)、本件各証拠によっても、本件各出産時の本件病院1、2又は上記各担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、こ の観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑶ したがって、本件各出産の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件各出産の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当 たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例 も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、原告は、昭和46、7年頃に妊娠中絶をしたこと、昭和49年頃に胆石の手術を受けたこと、昭和50年代後半に痔の手術を受けたなどと供述していること(原告本人14頁)などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ち に本件各出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認するこ とはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献 C型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ち に本件各出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認するこ とはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件各出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件各出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤 が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個44(原告番号164番) 以下、本別紙中では、原告番号164番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、・・・・(・・・・・・・・・・生、平成20年2月26日死亡。 以下、「・・」という。)が、昭和51年3月20日、・・・・(以下「本件病院1」という。)及び・・・・・・・・・・(以下「本件病院2」といい、本件病院1と併せて「本件各病院」という。)において分娩後出血に対する止血処置(以下「本件処置」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝 炎が進行して死亡したと主張して、・・の相続人の一人である原告が、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の一部である3000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者 ア原告は、・・の第1子である(争いがない)。 イ・・は、平成20年2月26日、死亡した。・・の死亡届の「死亡の原因」欄には「直接死因」として「肝細胞癌」、「 の原因」として「C型肝硬変」とある ・の第1子である(争いがない)。 イ・・は、平成20年2月26日、死亡した。・・の死亡届の「死亡の原因」欄には「直接死因」として「肝細胞癌」、「 の原因」として「C型肝硬変」とある(甲C16401)。 ⑵ 本件病院1における出産(甲C16402、弁論の全趣旨) ア原告は、昭和51年3月6日、本件病院1において、第2子を出産した(以下「本件出産」という。)。 イ本件出産は、・・・医師(以下「・・医師」という。)が担当した。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C16402。以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」では、「分娩経過」欄の「特記事項」に は「微弱陣痛」、「廻旋異常」に〇印が付けられており、「その他」部分 には「ゆ着胎盤」とある。また、「分娩経過」欄の「出産時の産科手術及び処置」には、「吸引分娩」、「用手剥離」に〇印が付けられ、「その他」部分には「急性貧血(ショック様)」と記載がある。さらに、「分娩経過」欄の「輸血・輸液」には「輸血400㎖」、「輸液2500㎖」とある。 「出血量」欄では、「多量」に〇が付けられているが、「( )㎖」 の部分は空欄である。 ⑶ ・・のC型肝炎ウイルスへの感染等ア・・が本件病院2において平成5年3月に受けたHCV抗体検査(定性)の結果は、陽性であった(甲C16404)。 イ・・・・・・・・・病院の・・・・医師が・・に関して平成19年7月 14日付けで作成した診療情報提供書には、「病名」として「肝細胞癌、C型肝硬変非代償期、食道静脈瘤、甲状腺機能低下症」とあり、「総合所見」には平成5年に同病院でC型慢性肝炎と診断し、経過観察していたことなどが記載されている(甲C16404)。 ⑷ 本件各病院に対する特定フィブリノ 、食道静脈瘤、甲状腺機能低下症」とあり、「総合所見」には平成5年に同病院でC型慢性肝炎と診断し、経過観察していたことなどが記載されている(甲C16404)。 ⑷ 本件各病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入 厚生労働省が公表しているフィブリノゲン製剤の納入先医療機関のリスト(以下「本件リスト」という。)には、本件病院2の記載があり、納入期間は、昭和55年から同61年までとされている(甲C16403)。 ⑸ 本件出産及び本件処置に関し、本件出産及び本件処置の当時に作成された医療関係記録としては、本件出産に関する本件母子手帳が現存するものの、 診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ ・・は、第2子の出産の際、大量出血をし、本件病院1において輸血と 輸液を使用され、止血のための治療を受けた。その後、出血が多く、昭和 51年3月20日に本件病院2に転院して治療を受けた。 本件病院2では、その当時フィブリノゲン製剤が使用されていたと認められるから、・・に対しても特定フィブリノゲン製剤が投与されたと考えられる。 ⑵ ・・には、本件処置時のフィブリノゲン製剤の投与以外に、C型肝炎ウ イルスに感染する原因は考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ア特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要がある。 イ・・については、本件出産当時、400㎖の輸血及び2500㎖の輸液を受けていることからして、相当程度の出血量があった ICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要がある。 イ・・については、本件出産当時、400㎖の輸血及び2500㎖の輸液を受けていることからして、相当程度の出血量があったと推認することはできるが、具体的な出血量は明らかでなく、産科DICスコアにおいてショック症状の1点しか算定できない。分娩後の輸血量や病態も不明である。 ウまた、本件病院2について、・・がフィブリノゲン製剤の投与を受けた ことを裏付ける客観的な証拠の提出はなく、転院した昭和51年3月20日当時の病態も全く不明である。 ⑵ア本件病院1には特定フィブリノゲン製剤が納入されていないから、本件病院1において・・に同製剤が投与されたとは考えられない。 イ昭和55年以降本件病院2に特定フィブリノゲン製剤が納入されていた とする本件リストの記載は、本件処置のあった昭和51年にも本件病院2にフィブリノゲン製剤が納入されていたことを裏付ける事情にはならない。 ⑶ よって、・・について、本件処置当時、本件各病院において、特定フィブリノゲン製剤の投与が考えられる病態にあったとは認められない。 ⑷ 担当医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によ っても投与方針は不明である。 ⑸ したがって、本件処置時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎が進行して、肝がんに罹患した事実の有無 (原告の主張)・・は、慢性C型肝炎が進行して肝硬変、肝細胞癌に罹患し、肝細胞癌を死因として死亡した。 (被告及び補助参加人の主張)新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等が提 出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告は、本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤の投与がされた事実が認められると主張するが、本件処置の際、・・に特定フィブリノゲン製剤が 投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑸)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを 合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア原告は、本件処置当時の・・の病態に関し、多量の出血をして、本件病院2に転院したと述べる(甲C16407)が、これを裏付ける客観的資料はない。 本件母子手帳の記載及び原告の供述(原告本人3、4頁)によれば、本 件出産当時の・・の病態について、癒着胎盤であり、吸引分娩及び用手剥離が行われたこと、その際急性貧血のためにショック様の状態に陥り、輸血400㎖及び輸液2500㎖の処置がされたことが認められる。 しかしながら、原告が本件 ついて、癒着胎盤であり、吸引分娩及び用手剥離が行われたこと、その際急性貧血のためにショック様の状態に陥り、輸血400㎖及び輸液2500㎖の処置がされたことが認められる。 しかしながら、原告が本件処置を受けたと主張する昭和51年3月20日(本件出産の約2週間後)に、・・が出血した事実を裏付ける証拠はな く、・・により作成されたメモ(甲C16405の1、2。以下「本件メモ」という。)の記載及び原告の供述(原告本人2、9頁)によっても、本件処置前後を通じ、・・に生じた具体的な出血量及び出血状況、そして、出血原因は不明である。 したがって、本件処置当時の・・の病態について、DICの原因となる 基礎疾患があったとか、出血性ショックに陥り全身状態が著しく悪化していたなどの事実は認められず、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 イ原告は、・・が看護師から「血を増やす薬」を使用したと聞いた旨述べる(甲C16408)が、・・が本件出産時に急性貧血になっていること に照らし(前提事実⑵ウ)、仮に看護師からそのような説明があったとしても、それは貧血治療のための薬剤を指した説明と考えられるのであって、看護師からの上記説明の存在をもって、・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針 本件各証拠によっても、本件病院2において、昭和51年3月20日に原 告の出血に対する何らかの処置が行われたことすら明らかでない。また、本件病院1が特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関であったことを示す証拠もない。したがって、原告が主張する本件処置に関し、本件各病院やその担当医師の特定フィブリ われたことすら明らかでない。また、本件病院1が特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関であったことを示す証拠もない。したがって、原告が主張する本件処置に関し、本件各病院やその担当医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針から同製剤の投与事実を推認することはできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件処置の際の特定フィブリノゲン製剤の投与以外に・・がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、 医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、本件出産時に・・が輸血を受けていること、昭和51年当時の輸血後肝炎発症率が約14.3%と報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲ ン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与 されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個45(原告番号185番) 以下、本別紙中では、原告番号185-1番ないし185-4番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号185-1番を 棄却することとする。 別紙個45(原告番号185番) 以下、本別紙中では、原告番号185-1番ないし185-4番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号185-1番を「原告185-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、・・・・・(・・・・・・・・・・生。以下「・・・」という。)が、昭和56年1月27日、・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、右人工股関節全置換術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染したと主張して、・・・の相続人である原告らが、被告に対し、特措法 6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 ただし、原告らは、上記のとおり、特措法6条1号による給付金の支払を求める一方、特定C型肝炎ウイルス感染者の区分については、・・・が同条3号に該当する無症候性キャリアである旨主張し、同条1号該当性に関する主張は行わない。そこで、・・・が同条3号の無症候性キャリアに当たるかど うかについて、以下判断する。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告らは、いずれも・・・の子である(争いがない)。 イ・・・は、平成21年11月23日、腹膜炎により死亡した(甲C1 8513、弁論の全趣旨)。 ⑵ 本件手術等ア・・・は、昭和56年1月27日、本件病院において、RA両前足部変形に対する治療として、本件手術を受けた(甲C18501、02、05)。 イ本件手術の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)で ある(甲C18513、弁論の全趣旨)。 ウ・・・の血液型は、A型Rh(-)である(甲C18503)。 イ本件手術の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)で ある(甲C18513、弁論の全趣旨)。 ウ・・・の血液型は、A型Rh(-)である(甲C18503)。 ⑶ 他の手術ア・・・は、本件手術の後、本件病院において、次の各手術を受けた。 昭和63年6月21日左人工膝関節置換術(甲C18502) 平成2年6月26日関節形成術(甲C18502、07)平成8年8月8日右膝鏡視下滑膜切除術(甲C18503)平成8年10月15日右人工膝関節置換術(甲C18504)平成16年1月8日右人工股関節抜去、病巣掻爬術、抗生物質入りセメントスペーサー設置術(甲C18505) 平成16年4月15日右人工股関節再置換術、骨移植(甲C18506)イ上記アの手術の際の手術記事には、「術中出血量」として「315ℊ」と記載されている(甲C18506)。 ⑷ 平成8年10月15日に行われた右人工膝関節置換術(上記⑶ア)の 手術記事(甲C18504)には、「HCV」欄の「+」に〇印が付けられている。 その後、平成8年9月13日から平成18年4月4日にかけて、・・・が受けたHCV抗体検査の結果は、いずれも陽性又は基準値以上の数値であった(甲C18511の1ないし6)。 ⑸ 本件病院において、本件手術当時、フィブリノゲン製剤が納入されていたという記録がある(甲C18509)。 ⑹ 本件手術に関し、当時作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存していない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告らの主張)⑴ 切現存していない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告らの主張)⑴ 原告185-1は、本件手術の前に、医師から、・・・のRh血液型は(-)であり、赤十字から取り寄せるのに時間がかかる旨説明を受けた。人工股関節の手術は出血量が多いとされているから、出血量をできるだけ少なくするために特定フィブリノゲン製剤を投与したことが強く推認される。 ⑵ア本件病院には、本件手術当時、特定フィブリノゲン製剤の納入があった。 イ本件手術を・・医師とともに担当した・・医師は、原告ら代理人に対し、電話で、本件手術に関し、「骨を切った上に人工関節をはめ込んでセメントで固定することが多く、一般的にはそれをする前の止血効果としてフィブリノゲン製剤が使われたかもしれない」旨話した。 ⑶ ・・・については、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤を投与されたこと以外にC型肝炎ウイルスに感染する原因は考えられない。 ⑷ したがって、本件手術の際、・・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたものと認められる。 (被告の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠を見ても、・・・が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。・・・について、DICの原因となる基礎疾患や臨床症状等は不明 であり、DICの治療若しくは予防の必要性も認められない。 原告185-1は、・・・の血液型がRh(-)であることから、フィブリノゲン製剤投与によりで 因となる基礎疾患や臨床症状等は不明 であり、DICの治療若しくは予防の必要性も認められない。 原告185-1は、・・・の血液型がRh(-)であることから、フィブリノゲン製剤投与によりできるだけ出血を少なくしたと思うと述べるが、客観的裏付けを欠いており、憶測にすぎない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用された かどうかを検討しても、本件手術時における担当医師である・・医師の投 与方針を明らかにする客観的証拠はない。また、・・医師との通話記録によっても・・医師の投与方針は不明であるし、そもそも、・・医師が本件手術に関与したことを認めるに足りる証拠はない。 (補助参加人の主張)⑴ インターネット上の文献(甲C18508)を見ると、「一般的な人工股 関節置換術の平均的な術中出血量は300-500㎖で、術後にも同程度の術後出血があります。」との記載はあるが、原告らが主張するような、出血量が多いとの記載は見当たらない。 本件手術時の・・・の病態は、客観的証拠によって明らかにされておらず、輸血用血液を取り寄せる必要のある状態であったかも不明であり、仮に取寄 せが行われていたとしても、そのことをもって、フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認することはできない。 ⑵ 原告らが、本件手術当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたことの根拠とする非加熱製剤在庫期間と題する記録(甲C18509)は作成者や作成日、作成経緯等が不明であり証拠価値がない。 また、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたからといって、病態が一切不明な・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑶ 原告らが主張する・・医師の回 また、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたからといって、病態が一切不明な・・・に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑶ 原告らが主張する・・医師の回答は、あくまでも一般論として述べたに過ぎず、これにより本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が使用されたこと の証明にはならない。 2 ・・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告らの主張)・・・は、平成8年までにC型肝炎ウイルスに感染していると判明した。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の 事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告らの主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と・・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 ⑴ 原告らは、本件手術の際に止血剤として特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張するが、本件手術に当たり、・・・に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑹)。 そこで、残存する医療記録(本件手術後のものを含む。)、供述証拠、医 療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認で む。)、供述証拠、医 療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・・の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・・の病態ア原告185-1は、本件手術の際の・・・の出血量は多量に及んだとこ ろ、・・・の血液型がRh(-)であり、血液センターからの取寄せに時間を要することから、・・・に対し、輸血だけではなく止血剤を併用してできるだけ出血を少なくする処置が行われたと思うと述べる(甲C18513)が、上記原告の推測を述べるものに過ぎず、直ちに採用できない上、本件手術当時の・・・の具体的な出血量及び出血状況、・・・に対して行 われた処置の内容が明らかでないなど、・・・の病態が明らかでなく、上 記陳述内容を裏付ける客観的資料は全くないから、・・・の病態について、直ちに低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 イこれに対し、原告らは、一般的に人工股関節全置換術は出血量が多い旨 主張するが、人工股関節置換術に関する浜松医療センターのホームページ上の記載(甲C18508)には、平均的な術中出血量は300㎖から500㎖で術後にも同程度の術後出血がある旨記載されているにとどまるし(なお、上記証拠には、ほぼ全例で術前に400㎖の貯血をしており、これ以外の輸血が必要になることはほとんどない旨記載されている。)、・ ・・が平成16年4月15日に受けた右人工股関節再置換術の際の出血量も、315ℊにとどまり、輸血は行われていない(甲C18506)。 そうすると、本件手術当時、・・・ 記載されている。)、・ ・・が平成16年4月15日に受けた右人工股関節再置換術の際の出血量も、315ℊにとどまり、輸血は行われていない(甲C18506)。 そうすると、本件手術当時、・・・に輸血を要するような多量の出血があったと認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針 非加熱製剤在庫期間に関する記録(甲18509)によれば、本件手術当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたことが認められるものの、本件手術を担当した・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針は明らかではない。 本件病院に在籍していた・・医師は、「骨を切った上に、そこに人工のも のを、人工関節をはめ込んでセメントで固定したりすることが多いですね、一般的には。それをする前の止血効果としてフィブリノゲン製剤が使われたかもしれませんね。」と述べる(甲C18512の1及び2)が、その直後に「それは私も記憶にはないんですけど、当時フィブリノゲン製剤というのをそういうために、なるたけ出血量を抑えるために使った可能性はあります。 そういうことだけしか、ちょっと分かりません。」と述べていることからも、 ・・医師の上記供述は、自身の記憶に基づくものではなく、通常人工股関節全置換術において出血が生じるという臨床経験から、特定フィブリノゲン製剤使用の抽象的な可能性があることを推測するに過ぎないから、・・医師の上記供述から、本件病院又は・・医師が、上記⑵イのとおり、輸血を要しない程度の出血にとどまる本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤を投与する 方針を有していたとは認められない。 ⑷ 他原因の存否原告らは、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤を投与されたこと以外にC型肝炎ウイルス 手術の際に特定フィブリノゲン製剤を投与する 方針を有していたとは認められない。 ⑷ 他原因の存否原告らは、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤を投与されたこと以外にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であると ころ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものが指摘されており、原因が特定できない症例が相当数あることからすると(乙統2(15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)、・・・がC型肝炎ウイルスに感染しているとしても、それをもって、直ちに本件手術の際に特定 フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の・・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、・・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投 与されたとは認められない。 第4 結論以上、・・・は、特措法2条3号の「特定C型肝炎ウイルス感染者」に当たらないから、同法6条1号及び同条3号のいずれの感染者区分にも該当しないもので、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理 由がないからこれらを棄却することとする。 別紙個46(原告番号186番) 以下、本別紙中では、原告番号186番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、昭和39年8月5日、・・・ ・・・・(以下「本件病院」という。)において、帝王切開術により第 告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、昭和39年8月5日、・・・ ・・・・(以下「本件病院」という。)において、帝王切開術により第二子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産(甲C18601、弁論の全趣旨)ア原告は、昭和39年8月5日午後8時46分頃、帝王切開術により第二子を出産した(本件出産)。 イ本件出産は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)が担当した。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C18601。以下「本件母子手帳」という。)8頁「お産の記事」では、「分べん」欄の「異常」に〇印が付けられ、その横の「種類原因」には「骨盤早期破水」と記載があるほか、「出血」欄に「多量」及び「800瓦」とある。また、「お産の記事」の上部の「記事」欄には「当日400ℊと止血剤、翌日400ℊの輸血する」 と記載されている。 エ本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。 また、本件母子手帳にフィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 原告は、C型肝炎ウイルスに感染している(争いがない)。 原告は、遅くとも平成24年2月21日にはC型肝硬変症の診断を受け、令和2年11月5日には慢性肝炎(C型)との診断を受けた(甲C18603の1、08)。 第2 争点及び争点に 原告は、遅くとも平成24年2月21日にはC型肝硬変症の診断を受け、令和2年11月5日には慢性肝炎(C型)との診断を受けた(甲C18603の1、08)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無 (原告の主張)⑴ 原告には、本件出産時の大量出血を止めるためのフィブリノゲン製剤投与以外にC型肝炎ウイルスに感染する原因は考えられない。 ⑵ ①本件母子手帳の記載及び出産後の原告の記憶から、800ℊの出血に対し、計800ℊの輸血をした上に止血剤を投与したと認められること、②本 件出産当時、フィブリノゲン製剤の止血剤としての利用が注目されており、本件病院は医療の第一線にあったことなどから、本件出産の際、輸血と同時にフィブリノゲン製剤が止血剤として投与されたことが高度の蓋然性をもって推認されるというべきである。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、本件各証拠をみても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。 原告は、800ℊの出血をした事実が認められるものの、産科DICスコ アが加算されるほどの出血量とはいえず、このほかにDICの原因となる基礎疾患、本件出産時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状及び本件出産後における原告の身体症状等は不明であり、点数を算定すべき事情は認められない。 ⑵ 原告に対しては、本件出産の日に400ℊの輸血と止血剤の投与、翌日に は400ℊの輸血をされたことがうかがわれるが、出産時の出血に対する止 あり、点数を算定すべき事情は認められない。 ⑵ 原告に対しては、本件出産の日に400ℊの輸血と止血剤の投与、翌日に は400ℊの輸血をされたことがうかがわれるが、出産時の出血に対する止 血処置の具体的内容は不明である上、原告が医師から出血量や止血剤の使用等についての説明を受けていないことも併せて考えれば、原告に止血剤が使用されたとしても、それが特定フィブリノゲン製剤であるかは明らかでない。 ⑶ 原告は、本件処置後、看護師から、投与された止血剤がミドリ十字のフ ィブリノゲン製剤であると教えられた旨供述するが、①同供述は、本件処置当時特段記憶に残るような事情があったとは考え難いやり取りの詳細を約50年後に至っても記憶していたという不自然なものであること、②本件処置時は特定フィブリノゲン製剤の薬価収載前であり、市場での流通量が少なく、保険が適用されなかったという客観的事情と整合しないもので あること、③陳述書から供述内容が変遷している上、変遷の経緯や理由について合理的な説明がないことから、およそ信用できない。 ⑷ 本件出産時の・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によっても、・・医師の投与方針は不明といわざるを得ないから、担当医師の投与方針に照らして特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めるこ ともできない。 ⑸ したがって、本件出産時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の 係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変に罹患した事実の有無 (原告の主張)甲C18608号証の診断書によれば、原告は慢性C型肝炎と診断されており、肝硬変レベルに達しているとされている。 (被告及び補助参加人の主張)否認する。提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、 新犬山分類を満たすことが確認できない。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告は、本件出産の際、止血剤としてフィブリノゲン製剤が投与された事実が認められると主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲン 製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが 合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告の供述(原告本人7頁)からすると、原告の病態に関し、本件出産時、原告が約800ℊの出血をし、本件出産当日及びその翌日に400ℊずつ輸血を受けたこと、本件出 産当日には輸血と同時に止血剤の点滴を受けたことが認められる。 イしかしながら、上記の原告の病態からは、本件出産前後を通 し、本件出産当日及びその翌日に400ℊずつ輸血を受けたこと、本件出 産当日には輸血と同時に止血剤の点滴を受けたことが認められる。 イしかしながら、上記の原告の病態からは、本件出産前後を通じ、原告にDICを発症するおそれのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していたなどの事情があったことはうかがわれない。 加えて、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方 法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナなど)により止血する方法等が存在している(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98 (28頁))から、多量の出血があったという事実をもって、直ちに原告に使用された「止血剤」が、特定フィブリノゲン製剤であると合理的に推認されるとまではいえない。 ウ原告は、本件出産から数日後、看護師から、止血剤として使用された薬剤が「ミドリ十字のフィブリノゲン」であると教えられたと供述する(原 告本人8、18ないし19頁)が、本件出産当時、原告がフィブリノゲン製剤については知らなかったこと(同19頁)、C型肝炎に関する講演会を聴講する過程で「ああ、そんな薬やったかって後で自分で思うようになりました」と原告自ら述べていること(同25頁)などに照らし、原告の上記供述は信用できない。 ⑶ 本件病院又は・・医師の投与方針ア本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りな 告の上記供述は信用できない。 ⑶ 本件病院又は・・医師の投与方針ア本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 イそもそも本件出産のあった昭和39年8月は、同年6月の特定フィブリノゲン製剤の製造承認からわずか2か月後であり、昭和40年11月の薬 価収載より前であったことからすると(乙統16、236)、本件出産当時、フィブリノゲン製剤の適応である低フィブリノゲン血症又その要因となるDICの診断を待たず、フィブリノゲン製剤を止血剤として適応外使用する治療方針が定着していたとは考えられないし、本件病院が先行してそのような試みを行っていたことをうかがわせる事情もない。 そうすると、上記⑵の原告の病態に対し、フィブリノゲン製剤を投与す る方針を本件病院ないし・・医師が有していたとは認められない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産時の他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感 染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告に対しては、本件出産の際に計800ℊの輸血が行われたこと(上記⑵ア)、昭和39年当時、輸血後肝炎発症率は約31.1%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、原告がC型 肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存 ば、原告がC型 肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個47(原告番号192番) 以下、本別紙中では、原告番号192-1番及び192-2番を併せて「原告ら」といい、個別に原告番号192-1番を「原告192-1」などという。 第1 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、承継前原告の・・・・(・・・・・・・・・生、平成24年12月25日死亡。以下「・・」という。)が、昭和43年1月31日、・・・・・・・・・・・・・・・(現・・・・・・・・・・・・・・。以下「本件病院」という。)において、経膣分娩により、第1子である原告192-2を出産(以下「本件出産」という。)し、子宮全摘手術(以下「本件手術」 という。)を受けた際、止血処置(以下「本件処置」という。)として特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、・・の相続人であり、訴訟承継人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告192-1は、・・の夫で ・・の相続人であり、訴訟承継人である原告らが、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 当事者ア原告192-1は、・・の夫であり、原告192-2は、・・の長男である(争いがない)。 イ・・は、平成24年12月25日、死亡し、原告らが訴訟上の地位を承 継した。・・の直接の死因は、C型肝炎を原因とする肝硬変と診断されている。(甲C19202、弁論の全趣旨)⑵ 本件出産等ア・・は、昭和43年1月31日午後1時19分頃、経膣分娩により第1子である原告192-2を出産した(本件出産。甲C19203)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。) である(甲C19203)。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁には、「出産の状態」として、「出産開始時の状況」欄の「胎位」の横に「頭位」、「在胎期間」欄に「第10月」、「陣痛発来の時期」欄に「1月30日23時頃」と記載され、人工に〇印が付けられ、「出血量」 欄に「1300㎖」と記載され、「多量」に○印が付けられている(甲C19203)。 エ平成5年8月19日から10月20日までの・・の入院に関する本件病院の病歴要約(以下「本件病歴要約」という。)には、入院経過として、「25才時分娩時輸血施行」とある(甲C19205)。 ⑶ ・・は、平成5年7月5日にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し、同年8月頃、C型慢性肝炎と診断され、平成24年2月9日には、肝硬変及び肝細胞癌と診断された(甲C19201、05)。 ⑷ 本件病院における本件出産及び本件手術に関する診療録その他の医療記録は、・・が昭和43年2月 炎と診断され、平成24年2月9日には、肝硬変及び肝細胞癌と診断された(甲C19201、05)。 ⑷ 本件病院における本件出産及び本件手術に関する診療録その他の医療記録は、・・が昭和43年2月22日に本件病院の婦人科を退院したことが記載 された退院一連番号台帳を除き、現存していない(甲C19204)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告らの主張)⑴ ・・は、昭和43年1月31日の本件出産の際に1300㎖の大量出血を し、出血が止まらなかったため、輸血を受けるとともに、子宮摘出(本件手術)に至った。出血が止まらず子宮摘出にまで至った場合には、低フィブリノゲン血症ないしDICに至っていた可能性も大きく、輸血と同時に止血のためのフィブリノゲン製剤を使用した可能性が高い。 ⑵ ・・は、C型肝炎に感染したことが判明した平成5年以前に、本件出産時 以外に大量出血をしたり、手術を受けたりしたことなどはなく、親族にC型 肝炎に感染した者もいないから、本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外にはC型肝炎罹患の原因が存在しない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治 療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠を見ても、・・が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。・・については、1300㎖の出血をした事実が認められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害やショック症状の有無 ・については、1300㎖の出血をした事実が認められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件出産時における重篤な障害やショック症状の有無 等の臨床症状、本件手術後における・・の身体症状等は不明であり、点数を算定すべき事情は認められない。 なお、本件出産時の輸血量等は不明であり、本件母子手帳及び平成5年に本件病院に入院した際の病歴要約に本件手術の記載はない。仮に本件手術が行われ、止血のために子宮が摘出されていたとしても、そのことのみ から直ちにDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 したがって、・・について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用された かどうかを検討しても、本件処置時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はないと言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件処置時、・・がフィブリノゲン製剤の投与を必要とする状態であっ たかは不明であり、・・医師の投与方針も明らかでないから、本件母子手 帳の記載のみから本件処置の際に・・に対してフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑵ 子宮摘出が行われたからといって、出血が続いていたとは限らず、むしろ子宮摘出によって・・の出血が止まった可能性も否定できないから、本件手術が行われたことをもって、・・が低フィブリノゲン血症又はDIC に至っていたこと、輸血と同時にフィブリノゲン製剤が使用されたと即断することはできず 血が止まった可能性も否定できないから、本件手術が行われたことをもって、・・が低フィブリノゲン血症又はDIC に至っていたこと、輸血と同時にフィブリノゲン製剤が使用されたと即断することはできず、投与を推認することもできない。 2 ・・のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告らの主張)・・は、平成5年7月5日に人間ドックを受け、C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と・・のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告らの主張)本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と・・のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、肝がんに罹患した事実の有無(原告らの主張)・・は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患し、これが進行して肝硬変から肝細胞癌になり、平成24年12月25日に死亡した。 (被告及び補助参加人の主張) 新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等及び肝がんの診断根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の・・に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告らは、本件処置の際、・・が輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の 投与を受けた可能性が高いと主張するが、本件処置の際に・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと ン製剤投与の有無⑴ 原告らは、本件処置の際、・・が輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の 投与を受けた可能性が高いと主張するが、本件処置の際に・・に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる・・の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間 接事実から、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことが合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ ・・の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑵)、その他の証拠(甲C19205、06)及び弁論の全趣旨によれば、・・の病態について、本件出産後、1 300㎖の出血があり、輸血が行われたこと、子宮全摘手術(本件手術)が行われたことが認められるところ、分娩後24時間以内の1000㎖以上の後産期出血は、DICの原因となる基礎疾患に当たる。 イしかしながら、本件各証拠によっても、当時の・・の具体的病態や輸血量は明らかでなく、輸血と子宮全摘手術が行われたこと以外に、止血のた めにどのような処置が執られたかを示す資料や供述証拠はないから、本件出産・本件手術の前後を通じ、・・の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 この点、原告らは、出血が止まらず子宮摘出に至った事実をもって、・・が低フィブリノゲン血症又はDICに至っていた可能性があると主張す るが、本件母子手帳の分娩経過の記載すらなく、上記のとおり、当時の・ ・の出血原因や具体的な病態(重篤な障害やショック症状の有無、身体症状を含む。)が明らかでない以上、・・の病態に対して執る 件母子手帳の分娩経過の記載すらなく、上記のとおり、当時の・ ・の出血原因や具体的な病態(重篤な障害やショック症状の有無、身体症状を含む。)が明らかでない以上、・・の病態に対して執るべき処置の内容は明らかにならないもので、・・に対し子宮全摘術という処置が行われたことから、その間の処置の内容を直ちに推認することは困難である。 ウまた、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法 としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在している一方で(乙統83(394頁)、94(27 7頁以下)、98(28頁))、特定フィブリノゲン製剤の効能及び効果は、低フィブリノゲン血症の治療であって、これらの産後出血に対する一般的な止血方法の一つとして位置づけられるものではないから(乙統97(252、256、257頁)参照)、大量出血があったという事実及び子宮摘出に至った事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事 実が合理的に推認されるとまではいえない。 ⑶ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否 原告らは、・・が本件出産後の大量出血以外には大量出血をしたことなどはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主 の大量出血以外には大量出血をしたことなどはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるところ (乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)等)、・・に対して は、輸血が行われていること、昭和43年頃の輸血後肝炎発症率は31. 1%ないし16.2%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、・・がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、・・の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、・・に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個48(原告番号193番) 以下、本別紙中では、原告番号193番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和46年8月6日、・・・ ・・・・・・・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、第1子を自然分娩により出産(以下「本件出産」という。)した後、弛緩出血があり、止血処置(以下「本件処置」という。)として特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、 件病院」という。)において、第1子を自然分娩により出産(以下「本件出産」という。)した後、弛緩出血があり、止血処置(以下「本件処置」という。)として特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を 求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等ア原告は、昭和46年8月6日、本件病院において、第1子を出産した(本件出産)。本件出産の担当医師は、・・某医師(以下「・・医師」と いう。)である。(甲C19304)イ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」には、「出産開始時の状況」欄に「頭位」との記載があり、「分娩経過」欄のうちの「特記事項」の「前早期破水」に○印が付けられ、「出産時の産科手術及び処置」欄の「その他」に「弛緩性出血」の 記載があり、「輸血・輸液」欄に「輸液 500㎖ 2本」「輸血 3本」の記載があり、「出血量」欄に「1200㎖」の記載があり、その横の「多量」に○印が付けられている(甲C19304)。 ⑵ 原告は、C型肝炎ウイルスに感染した(争いがない)。 原告は、遅くとも平成24年2月7日、C型慢性肝炎の診断を受けた(甲 C19301) ⑶ 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲C19303)。 ⑷ 本件出産、本件処置に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、 本件出産、本件処置に関する陳述は得 された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。また、・・医師その他本件病院の医療関係者から、 本件出産、本件処置に関する陳述は得られていない。(原告本人6頁)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件出産の後の本件処置として、多量の出血を止血するために 特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が極めて高い。 すなわち、①昭和40年代前半に刊行された各種の医療文献上、昭和40年代において弛緩性出血に対する治療法として、低フィブリノゲン血症ないしDICに至っていたか否かにかかわらず、フィブリノゲン製剤が有効であることが広く認識され、使用されていたことは明らかであること、 ②本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入実績のある医療機関であることを併せ考えると、原告について、本件出産時の弛緩性出血を原因とする多量出血を止血するために特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性は極めて高い。 ⑵ 原告の第2子出産の際は、正常分娩で、出血量も180㎖の少量であり、 特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性はない。本件出産の際以外には、原告がC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件出産の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若し くは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠を みても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。 原告には、1200㎖の出血が認められ、産科DICスコア 要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠を みても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。 原告には、1200㎖の出血が認められ、産科DICスコアが1点加算される可能性があるものの、このほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件処置時の重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、身体症状等は不明であるなど、産科DICスコアを加算すべき事情は認められない。 また、本件処置時、原告は、輸血をされたこと、点滴を投与されたことは認められるものの、それ以外の原告の病態は不明であり、原告の供述を前提としても、いかなる止血処置がとられたかの具体的内容は不明である。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与されたかどうかを検討しても、本件処置時における・・医師の投与方針を明らか にする客観的証拠はなく、また、原告の供述によっても、同医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、上記観点からも、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑶ 原告は、昭和40年代前半に刊行された各種医療文献の記載からすれば、昭和40年代における弛緩性出血に対する特定フィブリノゲン製剤の投与 が推認されるためには、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要はないと主張するが、ここで原告が指摘している文献も、出血性ショックの治療方法の一つとして止血剤の投与を挙げ、有効な止血剤を列挙する中で、その一つとして特定フィブリノゲン製剤を挙げているにすぎず、出 血性ショックの症例に対して特定フィブリノゲン製剤が投与される一般的可能性があることを明らかにしているにすぎないから、これをもって原告に特定フィ 定フィブリノゲン製剤を挙げているにすぎず、出 血性ショックの症例に対して特定フィブリノゲン製剤が投与される一般的可能性があることを明らかにしているにすぎないから、これをもって原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張) 本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 3 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無 (原告の主張)原告は、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより慢性C型肝炎に罹患し、これが進行して肝硬変を発症した。 (被告及び補助参加人の主張)診断書の診断の根拠となった検査結果は提出されておらず、6か月以上の 肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産時の弛緩性出血を原因とする多量出血を止血するために 特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性は極めて高いと主張するが、本件処置に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事 実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認で る医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事 実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載及び原告の供述によれば、原告の病態について、自然分娩の際に会陰裂傷し、娩出後には弛緩性出血し、出血量が1200㎖ に及んだという事実が認められ、1000㎖以上の後産期出血はDICの 原因となる基礎疾患に当たる(乙統200(120頁))。 イしかしながら、本件各証拠によっても、本件出産前後を通じ、原告の全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとして、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、弛緩性出血が生じた場合の一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存 在していたことのほか、いかなる止血法も無効な場合にはやむを得ず子宮摘出術を行うこととされていること(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、97(252頁)、98(28頁))、本件では子宮摘出に至っていないことなどからして、弛緩性出血により1000㎖以上の出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実 が合理的に推認されるとはいえない。 ウこれに対し、原告は、昭和40年代前半に刊行された医療文献からは、昭和40年 出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実 が合理的に推認されるとはいえない。 ウこれに対し、原告は、昭和40年代前半に刊行された医療文献からは、昭和40年代において弛緩性出血に対する治療法として、低フィブリノゲン血症ないしDICに至っていたか否かにかかわらず、フィブリノゲン製剤が有効であることが広く認識され、使用されていたことは明らかである と主張する。 しかしながら、特定フィブリノゲン製剤は、血液中のフィブリノゲンが減少ないし欠乏したと認められる場合に、これを補充して凝固系の障害を解消することにより、止血機構の正常な機能を回復させて止血させるために投与される血液製剤であり、単に多量の出血があったことを理由に投与 されるものとはいえない。原告が指摘する各医療文献も、当然ながら、上 記製剤が有する止血機能の内容を踏まえ、大量出血や出血性ショックに対する治療方法として、有効な止血剤を列挙する中で、その一つとして同製剤を挙げたものであるから、同各文献を基に、低フィブリノゲン血症ないしDICの予防の必要性がない症例に対しても、特定フィブリノゲン製剤投与が推奨されていたとみることはできない。 したがって、原告の上記主張は、採用できない。 エそうすると、原告の病態について、出血状況は不明であり、また、輸血3本(600㎖)と輸液500㎖2本の点滴がされたということ及び裂傷箇所の縫合措置以外、どのような処置が行われたかが明らかでないことになるから、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しく は予防が必要とされる病態にあったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブ の要因となるDICの治療若しく は予防が必要とされる病態にあったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件処置時の本件病院又は・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 ⑷ したがって、本件各証拠によっても、本件処置の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が合理的に推認されるとはいえない。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件出産以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染 しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(72 2頁)、221(89頁)等)、原告に対しては、本件出産の際に輸血 が行われたこと(甲C19304)、昭和46年当時、輸血後肝炎発症率は14.3%であったと報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、原告に対し、特定 、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個49(原告番号198番) 以下、本別紙中では、原告番号198番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、昭和41年10月頃、・ ・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、切迫流産による大量出血に対する止血処置(以下「本件処置」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによって、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件処置の状況等ア原告は、第1子を妊娠中であった昭和41年10月頃、本件病院を受診し、1週間程度入院した(甲C19804、弁論の全趣旨)。 イ原告は、昭和42年4月15日、本件病院において、第1子を出産した。 同出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)10頁「出産の状態」の「出血量」欄は、「少量」に〇印が付けられている(甲C19802)。 ⑵ ・・・・・・・医院の・・・・医師作成の平成24年2月3日付け診断書には、「傷病名」として「C型肝硬変」の記載がある(甲C19801)。 ⑶ 原告は、昭和44年4月5日、・・・・・・・・・医院にお ・・医院の・・・・医師作成の平成24年2月3日付け診断書には、「傷病名」として「C型肝硬変」の記載がある(甲C19801)。 ⑶ 原告は、昭和44年4月5日、・・・・・・・・・医院において、第2子を出産した。同出産に関する母子健康手帳10頁「出産の状態」の「出血量」欄は、「少量」に〇印が付けられている(甲C19803)。 ⑷ 本件処置に関し、本件処置の当時作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存していない(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、妊娠が判明して2か月ほど経った昭和41年10月頃、切迫流産により出血し、本件病院を受診した。 本件病院の・・・某医師(以下「・・・医師」という。)は、本件処置に 当たり、原告に対し、「出血が止まらないので、新薬を使いましょう。美智子妃殿下が第2子を妊娠したときにこの新薬を使われましたが、残念ながら流産してしまったので100%効果があるとは限りませんけど。」などと言った。この「新薬」が特定フィブリノゲン製剤を指すことは明らかである。 原告は、本件処置により出血が止まり、流産することなく1週間ほどで退 院できた。 ⑵ 原告が第1子と第2子を出産した際、出血量は少量であり、フィブリノゲン製剤が使用された可能性はない。原告がC型肝炎ウイルスに感染した原因は、本件処置時に止血剤として特定フィブリノゲン製剤が使用されたこと以外に考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若 と以外に考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められることが必要である。しかし、原告が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は認められない。 また、原告について、DICの原因となる基礎疾患や臨床症状は不明であり、DICの治療又は予防の必要性も認められない。 ⑵ 本件母子手帳には、切迫流産に対する処置が行われたことをうかがわせる記載はなく、他にこれを裏付ける客観的な証拠はない。かえって、切迫流産は、流産の進行が止まり、妊娠が維持できる場合には自然に止血するのが一 般的であることからすれば、原告の主張⑴及びこれに沿う原告の陳述は医学 的な観点からも信用性に疑問がある。また、原告の陳述内容を前提にしても、その当時の記憶は曖昧で、出血状況等は不明というほかない。 ⑶ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件処置時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はない。 (補助参加人の主張)⑴ ・・・医師が「出血がおさまらないので、新薬を使いましょう」と説明したとする原告の陳述は、これを裏付ける客観的証拠が提出されておらず、・・・医師がそのような説明をしたか定かでない。仮に、・・・医師が「新薬」を使用すると説明したとすれば、昭和40年に新薬として発売された止血剤 である「トランサミン」が使用されたと考えるほうが自然である。 ⑵ 特定フィブリノゲン製剤は、昭和39年6月に製造承認がなされ、薬価基準に収載されたのは昭和40年11月であり、昭和41年10月当時の製 ある「トランサミン」が使用されたと考えるほうが自然である。 ⑵ 特定フィブリノゲン製剤は、昭和39年6月に製造承認がなされ、薬価基準に収載されたのは昭和40年11月であり、昭和41年10月当時の製造本数はごくわずかであり、本件病院のような開業医に納入できる状況ではなかった。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成元年5月に受けた健康診断で肝臓の数値が高いことが分かり、その後C型肝炎との診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるか ら、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、平成24年2月3日、C型肝硬変との診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張)新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠及び肝硬変の診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件処置の際、止血のためにフィブリノゲン製剤が投与されたと認められる旨主張するが、本件処置の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提 告は、本件処置の際、止血のためにフィブリノゲン製剤が投与されたと認められる旨主張するが、本件処置の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア原告は、妊娠判明してから約2か月後、切迫流産により出血が始まり、その日に本件病院に入院したが、出血が止まらない状態にあったと主張し、陳述書(甲C19804)の記載はこれに沿うが、同陳述内容を裏付ける客観的資料が全くない。 原告の陳述に裏付けがない点をおき、同陳述を前提としても、原告の病 態について、出血量、出血状況とも不明であり、原告に対しどのような処 置が行われたかが明らかでないから、原告の病態から、直ちに低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったとは認められず、特定フィブリノゲン製剤の投与事実が合理的に推認されるとはいえない。 イこれに対し、原告は、・・・医師から、切迫流産のため出血が止まらな いので「新薬」を使うなどと言われた旨述べる(甲C19804)が、切迫流産に対する薬物療法としては、ホルモン剤やビタミンC、Eの投与の他、子宮弛緩剤の内服や注射があり(乙統109(100頁))、また、産科出血が生じた際の一般的な止血剤としても、アドナ、トランサミンなどがあるから(乙統83(394頁)、98(28頁))、・・・医師が 「新薬」を使用する旨説明したことを前提としても、その「新薬」が特定 生じた際の一般的な止血剤としても、アドナ、トランサミンなどがあるから(乙統83(394頁)、98(28頁))、・・・医師が 「新薬」を使用する旨説明したことを前提としても、その「新薬」が特定フィブリノゲン製剤を指すとは認められない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件処置当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたか否か、仮に納入されていたとして、・・・医師がどの ような投与方針の下でこれを投与していたのか認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、C型肝炎に感染した原因は本件処置の際の投与以外に考えられない旨主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染し ているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)からすると、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに 本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはでき ない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 したがって、本件処置の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与さ れたと認めることはできない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理 2 したがって、本件処置の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与さ れたと認めることはできない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個50(原告番号206番) 以下、本別紙中では、原告番号206番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和58年11月22日、・ ・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、第1子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実 ⑴ 本件出産(甲C20601)ア原告は、昭和58年11月22日午前10時46分頃、本件病院において第1子を出産した(本件出産)。 イ本件出産は、自然分娩による出産であり、本件病院の・・・・医師(以下「・・医師」という。)が担当した。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「妊娠期間」欄に「妊娠満40週」、「娩出日時」欄に「58年11月22日午前10時46分」、「分娩の経過」欄の「頭位」に○印が付けられ、「会陰中央切開縫合(デキソン)」、「分娩所要時間」欄に「8」の記載があり、「出血量」欄の「中量」に○印が付け られているが、数値の記載はない。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等原告は、平成18年頃、慢性C型肝炎の診断を受け、平成19年12月にはC型代償性肝硬変、令和 の「中量」に○印が付け られているが、数値の記載はない。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等原告は、平成18年頃、慢性C型肝炎の診断を受け、平成19年12月にはC型代償性肝硬変、令和3年6月に肝細胞癌の診断をそれぞれ受けた(甲C20602、05、06)。 ⑶ 本件病院へのフィブリノゲン製剤の納入 厚生労働省が公開した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関のリスト上、本件病院の記載がある。なお、「医療機関のコメント」欄には、「平成13年4月に先代より医院継承した。先代は老齢化し病んでおりますので、昭和63年以前のフィブリノゲン製剤使用の有無等については、現在、全く不明です。」(以下「本件コメント」という。)とある。 ⑷ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が現存するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。また、担当医師その他の医療関係者からは、本件出産に関する供述は得られていない(甲C20606、弁論の全趣旨)。 第2 争点及び当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告の手術の経験は、24歳の頃に卵巣嚢腫軸捻転の摘出手術を受けたことしかなく、これは出血が問題となる手術ではなかったから、C型肝炎に罹患した原因は本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたこと以外 に考えられない。 ⑵ 原告は、本件出産後、出血が止まらず、だらだらといつまでも出ている様子であったところ、・・医師が何度も「おかしいなー」といっているのを聞いた。原告が心配になって・・医師に聞いてみると、「子宮の収縮が悪く出血が止まらないので止血剤を使おう。」と言われた。こ ている様子であったところ、・・医師が何度も「おかしいなー」といっているのを聞いた。原告が心配になって・・医師に聞いてみると、「子宮の収縮が悪く出血が止まらないので止血剤を使おう。」と言われた。このように、・・医師 が、出血が止まらないために止血剤を使うと述べていたことからすれば、原告にフィブリノゲン製剤が投与されたことは明らかである。 ⑶ 以上に加え、本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入先であったことからすれば、原告が本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたものと認められる。 (被告の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められることが必要である。しかし、原告が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は認められない。 また、原告については、本件母子手帳の記載から中量の出血があったこと は認められるが、具体的な出血量は明らかでなく、本件出産時に低フィブリノゲン血症やDICを生じさせる原因となるような大量出血があったと認めることはできない。 原告は、・・医師から「子宮の収縮が悪く出血が止まらないので止血剤を使おう。」と言われた旨陳述するが、そのような発言があったとしても、同 医師のいう「止血剤」が特定フィブリノゲン製剤であったか否かは不明であり、むしろ、アドナやトランサミンといった一般的な止血剤であった可能性が高い。加えて、子宮収縮が不良である場合には、通常は子宮収縮薬が使用されることや、輪状マッサージなどの処置がなされるところ、原告の陳述書にはそれらの処置についての記載がないことからすれば、子宮収縮が不良で て、子宮収縮が不良である場合には、通常は子宮収縮薬が使用されることや、輪状マッサージなどの処置がなされるところ、原告の陳述書にはそれらの処置についての記載がないことからすれば、子宮収縮が不良で あったか否かも明らかとは言えない。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が使用されたかどうかを検討しても、本件出産時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はない。 ⑶ 本件病院は、本件コメントにおいて、昭和63年以前のフィブリノゲン製 剤使用の有無等については、全く不明である旨コメントしており、本件出産時に本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたかは明らかでない。 ⑷ したがって、原告に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 (補助参加人の主張) ⑴ ・・医師から止血剤を使おうと言われたという原告の陳述は、これを裏付 ける客観的証拠が提出されておらず、信用できない。また、本件母子手帳の記載からも、原告の出血量は中量にとどまっていたと認められ、フィブリノゲン製剤の投与を必要とするものであったとは全くいえない。その上に、・・医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針も全く明らかになっていない。 ⑵ 本件コメントからして、本件病院において昭和63年以前にフィブリノゲ ン製剤が投与された患者は特定不可能であり、原告に対してフィブリノゲン製剤が投与された事実を確認することはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成6年頃に、C型肝炎ウイルスに感染したことが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事 張)原告は、平成6年頃に、C型肝炎ウイルスに感染したことが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成6年に慢性C型肝炎であることが判明し、インターフェロン治療を受け、ウイルスは消滅したが、令和3年6月にはC型肝硬変を原因とする肝細胞癌が見つかった。 (被告及び補助参加人の主張) 新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠となる各種検査結果等及び肝がんの診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際に原告に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実の有無⑴ 原告は、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が 高いと主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、本件母子手帳の記載、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認 、本件母子手帳の記載、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の当時の投与方針等の間接事実から、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認 できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア原告は、本件出産の際の原告の病態について、大量出血の事実があった旨主張するが、これを裏付ける客観的資料はなく、本件母子手帳に出血量が「中量」と記載されていること(前提事実⑴ウ)からも、大量出血の事 実は認められない。 その他本件各証拠によっても、原告にDICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として大量出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったとは認められない。 イ原告は、本件出産後、・・医師から、子宮の収縮が悪く、出血が止まら ないから止血剤を使うと言われた旨主張し、これに沿う陳述をする(甲C20606)ところ、原告の上記陳述内容を前提とすれば、原告に弛緩性出血があり、これに対して何らかの薬剤投与を行うと説明したものと解する余地がある。 しかしながら、弛緩出血を含む産科出血に対する一般的な止血方法とし て、手術療法のほか、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止 血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))から、原告の上記陳述内容を前提としても、・・医師が使用すると説明した止血剤は、上記の一般的な止血剤であったことが十分考えられ、直ちに特 定フィブリノゲン製剤であったと推認することはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の としても、・・医師が使用すると説明した止血剤は、上記の一般的な止血剤であったことが十分考えられ、直ちに特 定フィブリノゲン製剤であったと推認することはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時、本件病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたか否か、仮に納入されていたとして、・・医師がどのような投与方針の下でこれを投与していたのかを認めるに足りないから、この 観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、C型肝炎ウイルスに感染した原因は本件出産の際のフィブリノゲン製剤の投与以外に考えられない旨主張する。しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染 経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)などからすると、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤 が投与されたと推認することはできない。 2 したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたと認めることはできない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない からこれを棄却することとする。

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