主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が,控訴人の平成13年9月18日付け上水道料金免除申請に対し,平成13年11月16日付けでした上水道料金免除の認定をしない旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 事案の概要は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決の「事実及び理由」中「第 2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁8行目の「上水道料金の免除を受けたい旨の申請をした」の前に「生活の困窮を理由として」を付加する。 (2) 原判決2頁11行目の「そのころ原告に通知した。」とあるを,「そのころ控訴人に書面(甲7)で通知した(以下「本件通知書」という。)。本件通知書には「認定できない理由」として「奈良市水道事業給水条例第34条に該当しないため」とのみ記載されていた。」と改める。 2 原審は,本件給水条例34条の審査基準が「地下漏水等に係る水道料金減免基準」(乙4)であることは,本件決定の前の控訴人と被控訴人との間の折衝の過程における被控訴人側の説明等により控訴人に明らかにされており,かつ,「地下漏水等に係る水道料金減免基準」は,その2条の「使用者の善良な管理にもかかわらず発見できなかった」か否かの判断を除いては要件が客観的に明白であり,控訴人の申請が「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当しないことは申請書の記載自体から明らかであるから,本件手続条例第8条第1項ただし書に該当するとして,本件決定に本件手続条例第8条(理由提示義務)の違反はないとしたほか,控訴人の他の主張もいずれも認めず,控訴人の請求を棄却する内容の判決を言い渡した。 控 8条第1項ただし書に該当するとして,本件決定に本件手続条例第8条(理由提示義務)の違反はないとしたほか,控訴人の他の主張もいずれも認めず,控訴人の請求を棄却する内容の判決を言い渡した。 控訴人は,原判決には,不服があるとして本件控訴を提起した。 第3 当裁判所の判断 1 本件手続条例第8条(理由提示義務)違反の主張について(1) 上水道の利用関係は,法律によって当然に成立するものではなく,水道事業者と需用者との間に,継続的給水とその料金の支払を内容とする給水契約が締結されることによって成立するものであるが,奈良市水道事業においては上水道料金の減免に関する規定がわざわざ条例に設けられており,大量に発生する上水道料金の減免に関する法律関係を明確ならしめ,その平等な取扱いを図り,これらの法律関係を全体として統一を保って処理して行くことが条例によって要請されているとみられるうえ,本件通知書(甲7)には,「(教示)この決定に不服がある場合には,この通知を受け取った日の翌日から起算して,60日以内に市長に対して書面で,審査請求をすることができます。」と行政不服審査法5条による審査請求ができる旨を教示する取扱をしていることが認められるほか,甲9(裁決書)によれば,奈良市長において,前記教示に基づく審査請求に対し,行政不服審査法40条による裁決をする取扱いをしていることが認められるところであり,これらの条例の規定並びに被控訴人及び奈良市の行政実務を総合して考えると,需用者から申請があった上水道料金の減免を認定できない旨の決定には処分性が付与されているものと解される。 そうすると,被控訴人は,本件給水条例34条により,上水道料金の減免申請に係る処分権限を付与されており,上水道料金の減免に関し,本件手続条例8条1項本文に規定する行政庁 いるものと解される。 そうすると,被控訴人は,本件給水条例34条により,上水道料金の減免申請に係る処分権限を付与されており,上水道料金の減免に関し,本件手続条例8条1項本文に規定する行政庁に当たるものということができ,被控訴人による上水道料金を減免しない旨の決定は,同項本文に規定する「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当するのであるから,被控訴人は,上水道料金の減免申請に対し,これを拒否する処分をする場合には,同項ただし書の場合に該当しない限り,申請者に対し,当該処分の理由を示さなければならず(同項本文),当該処分を書面でするときは,上記理由を書面により示さなければならないものである(同条2項)。 (2) 本件手続条例は,「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって市民の権利利益の保護に資することを目的とする」(同条例1条1項)ところ,このような同条例の目的に照らせば,同条例8条1項本文が行政庁に対して課している理由提示義務は,拒否事由の有無の判断についての行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を申請者に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由提示義務の趣旨に鑑みれば,当該拒否処分が書面によってなされる場合に,書面により示されなければならない理由としては,いかなる根拠に基づきいかなる法規を適用して当該申請が拒否されたのかということを,申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならず,単に,当該拒否処分の根拠規定を示すだけでは,それによって当該規定の適用の基礎となった根拠をも当然知り得るような場合は格別,同条1項本文の理由提示として不十分というべきである。そして,同項本文の規定する理由提示義務が,行政庁の拒否事 けでは,それによって当該規定の適用の基礎となった根拠をも当然知り得るような場合は格別,同条1項本文の理由提示として不十分というべきである。そして,同項本文の規定する理由提示義務が,行政庁の拒否事由の有無の判断についての判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制する趣旨を含むことに照らせば,申請者が当該拒否処分理由を推知できると否とにかかわらず,当該拒否処分がされた時点において,上記に述べた程度の理由が示されていなければ,理由提示義務違反として,当該拒否処分は違法なものとして,取消しを免れないものというべきである。 (3) これを本件についてみるに,被控訴人が主張する本件決定の理由は,本件給水条例34条にいう「特別の理由」に該当する事由とは「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当する事由を意味するところ,控訴人の申請は「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当しないというものであるが,本件の拒否処分に当たって,被控訴人が申請者である控訴人に対して本件通知書において示した処分理由は,前記のとおり,「奈良市水道事業給水条例第34条に該当しないため」というのみであり,本件給水条例34条には上水道料金の減免の要件として「特別の理由がある者」と抽象的にしか定められていないのであるから,前記の処分理由では,いかなる根拠に基づきいかなる法規を適用して当該申請が拒否されたのかということを,申請者においてその記載自体から了知し得る場合に該当しないことは明らかである。 この点につき,被控訴人は,本件決定前の控訴人との折衝の過程における被控訴人側の説明等により,控訴人は,本件決定がいかなる理由によりなされたかということを,本件の通知書に記載された程度の記載を見ただけで十分了知し得る状態にあったと主張するが,申請者が当該拒否処分理由を推知できると 等により,控訴人は,本件決定がいかなる理由によりなされたかということを,本件の通知書に記載された程度の記載を見ただけで十分了知し得る状態にあったと主張するが,申請者が当該拒否処分理由を推知できると否とにかかわらず,当該拒否処分がされた時点において,いかなる根拠に基づきいかなる法規を適用して当該申請が拒否されたのかということを,申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならないことは,先に説示したとおりである。 (4) もっとも,本件手続条例8条1項ただし書には「条例等に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって,当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類から明らかであるときは,申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」との規定が設けられている。 そして,被控訴人が本件給水条例34条にいう「特別の理由」に該当する事由とは「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当する事由に限られていると主張する同基準には,同基準2条の「使用者の善良な管理にもかかわらず発見できなかった」か否かの判断を除いては要件が客観的に明白であり,控訴人の申請は生活の困窮を理由になされているのであるから,申請書自体から本件申請が「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当しないことは明らかである。 しかしながら,乙7によれば,本件給水条例には,同条例34条にいう「特別の理由」の審査基準をどのようにして定めるかが規定されていないことが認められ,また,乙4によれば,「地下漏水等に係る水道料金減免基準」にも,その1条に「この基準は,奈良市水道事業給水条例(昭和33年奈良市条例第14号)第34条の規定に基づき,地下漏水等(以下「漏水」という。)に係る水道料金の ,「地下漏水等に係る水道料金減免基準」にも,その1条に「この基準は,奈良市水道事業給水条例(昭和33年奈良市条例第14号)第34条の規定に基づき,地下漏水等(以下「漏水」という。)に係る水道料金の減免について必要な事項を定めるものとする。」,2条に「使用者の善良な管理にもかかわらず発見できなかった計量器以降の給水装置の破損等により漏水したと認められる場合に限り適用する。」と定められているに過ぎないことが認められ,これらの規定からすると,地下漏水等が本件給水条例34条にいう「特別の理由」に該当することと,地下漏水等を理由とする減免が認められるのは上記基準の2条に該当する場合に限られることは明らかであるものの,本件給水条例34条にいう「特別の理由」が地下漏水等に限られ,それ以外の事由が同条にいう「特別の理由」に該当しないことまでが明らかにされているとは言い難い。そうすると,「地下漏水等に係る水道料金減免基準」をもって,「条例等に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合」に該当するとはいえないから,本件決定は本件手続条例8条1項ただし書が適用される場合に当たらない。 もっとも,乙2,3によれば,控訴人は平成13年8月1日付け「上水道料金減免制度に関する照会書」(乙2)を被控訴人に提出し,被控訴人は同年9月11日付け「上水道料金の減免制度について(回答)」と題する書面(乙3)において,「地下漏水等に係る水道料金減免基準」を添えて,上水道料金減免制度としては地下漏水等に係る水道料金の減免があり,生活困窮者等に対する減免制度はない旨を回答していることが認められるところであるが,本件手続条例8条1項本文の規定する理由提示義務が,行政庁の拒否事由の有無の判断についての判断の慎 料金の減免があり,生活困窮者等に対する減免制度はない旨を回答していることが認められるところであるが,本件手続条例8条1項本文の規定する理由提示義務が,行政庁の拒否事由の有無の判断についての判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制する趣旨を含むことに照らせば,控訴人が,本件決定前の被控訴人との折衝の過程における被控訴人側の説明等により,本件給水条例34条にいう「特別の理由」に該当する事由が「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当する事由に限られていることを推知できると否とにかかわらず,「地下漏水等に係る水道料金減免基準」をもって,「条例等に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合」に該当するとはいえない(なお,乙2,3によれば,控訴人が被控訴人に提出した平成13年8月1日付け「上水道料金減免制度に関する照会書」には,上水道料金減免制度の有無及び奈良市水道局の法的地位を問う記載はあるものの,本件給水条例34条にいう「特別の理由」の審査基準を問う記載はなく,被控訴人の同年9月11日付け「上水道料金の減免制度について(回答)」と題する書面にも,地下漏水等に係る水道料金の減免制度はあるが,生活困窮者等に対する減免制度はない旨が記載されているものの,本件給水条例34条にいう「特別の理由」の審査基準について回答するものであるとはされていない上,上水道料金の減免が地下漏水等の場合に限られるとまでの記載はないことが認められることからすれば,控訴人が,本件決定前の被控訴人との折衝の過程における被控訴人側の説明等により,本件給水条例34条にいう「特別の理由」に該当する事由が「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当する事由に限られていることを推知できる状態にあったとも認めるに足りない ける被控訴人側の説明等により,本件給水条例34条にいう「特別の理由」に該当する事由が「地下漏水等に係る水道料金減免基準」に該当する事由に限られていることを推知できる状態にあったとも認めるに足りない。)。 (5) 以上によれば,本件決定は,本件手続条例8条1項本文に規定する理由の提示を欠く違法な処分として,取消しを免れないものというべきである。 2 以上の次第であるから,控訴人の請求を棄却した原判決は失当である。 よって,原判決を取り消し,控訴人の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部裁判長裁判官太田幸夫裁判官大西忠重裁判官細島秀勝
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