平成14(ワ)168 ジェーアール九州労組積立金返還請求

裁判年月日・裁判所
平成15年10月27日 大分地方裁判所
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判決文本文14,319 文字)

【労働組合を脱退した組合員が,同組合に積み立てた「ストライキ生活基金」について返還を求めたところ,同基金は組合財産であり返還を求めることはできないとして,請求を棄却した事例】平成15年10月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(ワ)第168号積立金返還請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告目録記載の各原告に対し,各金9万2000円及びこれに対する平成14年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,被告の組合員であった原告らが,被告に対し,被告を脱退したときは,原告らが「ストライキ生活基金」として積み立てた金員の返還を求めることができるとして,その返還と訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定の遅延損害金の支払を求め,被告は,原告らが返還を求める「ストライキ生活基金」は,組合員が被告を脱退したときには返還を求めることができないものであるとして争った事案である。 1 争いのない事実及び証拠等により容易に認定できる事実(証拠等により認定した事実は各項末尾掲記の証拠等によって認定した。)(1) 原告らは,九州旅客鉄道株式会社(以下「訴外会社」という。)に勤務する者であり,もと九州旅客鉄道労働組合に所属していたが,平成3年12月21日ころ,同組合から分裂するようにして被告が結成されると,そのころから,被告の組合員となった。(甲1,2,3,11,19の1ないし41,弁論の全趣旨)(2) 被告は,平成4年7月4日,被告の第3回定期大会において,「ストライキ生活基金」という名称の基金(以下「本件基金」といい,各組合員が同基金として積 ,11,19の1ないし41,弁論の全趣旨)(2) 被告は,平成4年7月4日,被告の第3回定期大会において,「ストライキ生活基金」という名称の基金(以下「本件基金」といい,各組合員が同基金として積み立てた金員を「本件積立金」という。)を設けることとし,下記のとおりの「ストライキ生活基金規則」(乙3。以下「本件規則」という。なお,被告の「JR九州労規約」を単に「規約」ともいう。)を定めた。(乙3,20,弁論の全趣旨)記第1条(規則根拠) この規則は,JR九州労規約36条に基づいて定める。 第2条(目的) この基金は,ストライキ時における生活資金及び闘争力の充実化をはかることを目的とする。 第3条(特別会計) この基金は特別会計とする。 第4条(基金の積立) この基金の積立は,組合員一人9万円とする。 第5条(基金の管理) この基金を管理するために基金管理委員会を設置する。 1 この委員会は,大会または中央委員会の決議にもとづいて基金を管理する。 2 基金管理委員会は,中央執行委員会から選出された3名と各地方本部から選出された1名の計8名で構成し中央本部大会の承認を得るものとする。 第6条(基金の使用) この基金運用については基金管理委員会で決定する。尚,報告については大会又は中央委員会で報告する。 第7条(基金の還付) 組合員が規約7条に該当し,又死亡したときは,積立基金の中から第5条により使用した組合員一人当たりの金額を控除した金額を還付する。 第8条(基金の利息) この基金の運用により生じた利息,この基金の管理に必要な経費を除いて,連帯活動基金に繰り入れる。この経費及び連帯活動基金の繰り入れ金額ならびに方法は基金管理委員会で決定する。 第9条(規則の実施) この規則は1992(平成4)年8月1日から実施する。 (3) 除いて,連帯活動基金に繰り入れる。この経費及び連帯活動基金の繰り入れ金額ならびに方法は基金管理委員会で決定する。 第9条(規則の実施) この規則は1992(平成4)年8月1日から実施する。 (3) 被告は,原告らから,平成4年8月ころから平成9年ころまでの間にかけて,一般組合費の外に本件積立金として,それぞれ少なくとも9万2000円を徴収した。(争いがない)(4) 平成12年10月ころ,原告らほか多くの組合員が,被告を脱退し,原告a及び同b以外の原告らは,その後,九州旅客鉄道労働組合に加入した。(甲11,12,19の1ないし41,弁論の全趣旨)(5) 原告らは,被告に対し,平成14年1月22日到達の書面によって,同日から2週間以内に,上記本件積立金を各原告らに返還するように催告したが,被告はこれを支払わず,同年2月12日付けで,本件積立金は被告の財産であって,原告らへの返還には応じられない旨を回答した(甲9の1及び2,10の1)。 (6) 被告は,平成14年3月9日,解散し,cが清算人となった。(乙1) 2 争点被告を脱退した原告らは,被告に対する本件積立金返還請求権を有するか否か。 (原告らの主張)(1) 被告は,本件基金の制度を導入する際,被告の組合員に対し,本件基金は,ストライキ実施時における,組合員の賃金減額の補償及び闘争費用に充当することを目的として全組合員について一人9万円を積み立てること,本件積立金は組合員へ還付することを提案し,原告ら組合員はこれを前提として本件基金の設立に応じた。したがって,本件積立金は,ストライキを実施した際の組合員の生活補償と闘争費用に充当することを目的として,原告ら組合員が被告に交付して積み立てた,消費寄託(民法666条)又はその類推を受ける法律関係に基づくものである。 原告らは,本件積立金と の組合員の生活補償と闘争費用に充当することを目的として,原告ら組合員が被告に交付して積み立てた,消費寄託(民法666条)又はその類推を受ける法律関係に基づくものである。 原告らは,本件積立金としてそれぞれ少なくとも9万2000円を積み立てたが,被告を脱退したことによって,被告の組合員としてストライキ等の団体行動を行うことはなくなり,原告らには本件基金の目的が成就する可能性はなくなった。 したがって,被告は,原告らに対し,本件積立金を返還すべき義務を負う。 (2) 確かに,本件規則(乙3)には,脱退者に対して本件積立金を還付する旨の定めはないが,本件規則は本件訴訟になって初めて被告から開示されたものであって,本件基金が設立された当時も原告ら組合員には公表されておらず,そもそも被告の内規として存在していたかどうか疑わしい。 仮に,本件規則が存在していたとしても,本件規則は組合を脱退した者に対して本件積立金を返還しないとは定めていない。また,本件規則は,ジェーアール西日本九州労働組合(以下「JR西日本労組」という。)の「ストライキ生活基金」を参考にして制定されたものであるところ,JR西日本労組の規則では,脱退者を含む組合員資格喪失者に対し,同基金の積立金を還付すると定めている。JR西日本労組においても,本件訴訟と同様に,ストライキ生活基金の返還を求める訴訟が提起されたところ,同訴訟では,JR西日本労組が脱退者に対して積立金を返還する形で和解が成立した。したがって,被告は,原告らに対して,本件積立金を返還すべきである。 なお,本件規則7条のうち「組合員が規約7条に該当し」という部分は意味のない不自然な規定となっており,本来,組合員の資格喪失を定めた規約11条を引用して「組合員が規約11条に該当し,又死亡したときは」とすべきところを誤っ 「組合員が規約7条に該当し」という部分は意味のない不自然な規定となっており,本来,組合員の資格喪失を定めた規約11条を引用して「組合員が規約11条に該当し,又死亡したときは」とすべきところを誤って「規約7条」と記載したものと理解するのが自然である。 (3) 被告は,訴外会社を退職した組合員及び死亡した組合員の遺族に対しては,本件積立金から,一人当たり9万2000円を返還している。組合員が被告を脱退した場合であっても,組合員が死亡した場合や退職した場合と同様,ストライキ実施時の賃金減額への補償等という本件基金の目的が成就する可能性がなくなることになるから,被告は,脱退者に対しても本件積立金を還付すべきである。 本件積立金が組合財産であれば,組合員が死亡した場合や退職した場合であっても,これを返還することはあり得ず,このような場合に返還していたことからも,本件積立金は組合財産ではないというべきである。 (4) 被告は,本件基金について,ストライキに限らず,闘争力の充実化を図る目的で設立されたものであって,実際にもストライキ実施時以外の闘争費に本件基金が使用された旨主張する。しかしながら,本件基金の目的は前記(1)のとおりであり,また,原告らは本件基金の使用実態について被告から知らされていない。仮に,本件基金がストライキ実施時以外の闘争費に使用されていたとしても,それは被告の幹部が本件基金を目的外に流用していたということにすぎない。 また,被告は,本件積立金について,各月の給与から組合費とともに一括して徴収されていたと主張するが,原告らはこのような徴収方法を確認していない。原告らは,本件積立金は賞与から1万円ずつ9回に分けて積み立てられるものと理解しており,組合費とは別に徴収され,特別会計で別途管理されていると理解していた。 (5) 原告 徴収方法を確認していない。原告らは,本件積立金は賞与から1万円ずつ9回に分けて積み立てられるものと理解しており,組合費とは別に徴収され,特別会計で別途管理されていると理解していた。 (5) 原告らは,平成12年10月ころ,被告の方針と指導に基づいて,被告を脱退し,その後,九州旅客鉄道労働組合に加入した。その際,被告の機関である大分地方本部委員長であったdや同副委員長であったeは,原告らに対し,原告らが被告から脱退した時には本件積立金を返還する旨を説明し,原告らはこの説明を信じて被告から脱退した。このような経緯からすると,被告が原告らに対して本件積立金を返還しないことは,信義則ないし禁反言の法理に違反する。 (被告の主張)(1) 被告においては,平成4年3月に結成後初めてのストライキを実施したところ,闘争費が肥大化して財政状況が悪化し,財政基盤の脆弱さが認識された。本件基金は,全組合員が参加した職場討議等を経た上で,組合の闘争費の充実と闘争力を強化することを目的として導入されたものであって,被告の財政状況を改善するために被告の一般財産として徴収されたものであるから,個々の組合員が持分を有する預託金ではない。 (2) 労働組合において,闘争とはストライキ(争議)に限られず,労使交渉,省庁交渉,自治体交渉,街頭宣伝,職場集会,本部や地方本部(以下「地本」と略記する。)主催の集会,ビラ撒き等,様々な形態で行われており,ストライキは,労働組合が行う「闘争」の一態様にすぎない。本件規則2条は,本件基金の目的について「ストライキ時における生活資金及び闘争力の充実化をはかる」と定めており,後者の「闘争」が「ストライキ」に限られないことは明らかである。実際に,被告は,本件基金の目的に沿って,本件基金から,ストライキに限らず広く闘争に要した費用を支出し の充実化をはかる」と定めており,後者の「闘争」が「ストライキ」に限られないことは明らかである。実際に,被告は,本件基金の目的に沿って,本件基金から,ストライキに限らず広く闘争に要した費用を支出しており,その支出については,毎年,組合の大会の決算に報告し,組合員の了承を得ている。なお,原告f,同g及び同hは,大会代議員として大会に出席し,組合の決算を承認したこともあり,原告らが本件基金の使用実態について知らないということは考えられない。 また,本件基金は,訴外会社との労基法24条に係る協定により,組合員の毎月の給料から1000円(賞与からは3000円)が,一般組合費とともに一括して控除され,一括して被告の口座に入金されていた。これは毎月の給与明細に記載されており,このことを知らない旨の原告らの主張は不自然である。また,被告は,組合員ごとに納入状況等を把握するため,組合員ごとに本件基金に関する一覧表を作成していたが,原告らの預金ではないため,各組合員ごとの残高の記載はなく,各月の納入の有無のみが記載された。以上からも,本件基金が被告の一般財産であることは明らかである。 (3) JR西日本労組において本件基金と同じ名称で設けられている基金の目的は,「同盟罷業による賃金の減額の補償」に限定されており,また,同基金の規定には,組合からの脱退者に対しても還付する旨が定められている。したがって,本件基金は,JR西日本労組の基金とは異なる規定を置き,異なる趣旨で設立され,運営されてきたのであって,JR西日本労組の基金とは何ら関係がない。 (4) 組合員の死亡・退職時の扱いをめぐっては制度設立の際に議論があり,本件規則上,組合員が死亡した場合には,その遺族に本件積立金を還付することが定められた。また,退職時まで被告の組合員であり,経済的に被告を支え続け ・退職時の扱いをめぐっては制度設立の際に議論があり,本件規則上,組合員が死亡した場合には,その遺族に本件積立金を還付することが定められた。また,退職時まで被告の組合員であり,経済的に被告を支え続けた者に対しては,その態度に報いるという意味も含め,本件積立金から一定額を控除して還付する取扱いをしており,退職者に対しては,平成13年3月ころまでは4000円を,同月以降は2万円を積立額から控除した額を還付した。 他方,脱退者は,いわば被告とその組合員を裏切った者であり,そもそも還付すべきであるという議論はされておらず,本件規則にもそのような規定はない。また,被告からは,結成から解散までの約10年間に,約800名(平成12年10月の737名の大量脱退者を含む。)が脱退しているが,原告らが請求するまで,脱退者からは還付の請求は行われておらず,還付した実績もない。 (5) 平成12年10月の組合員の大量脱退は,被告内部において中央本部の方針に反対する各地本の役員等が中心となって起こしたものである。仮に,大分地本における役員が,原告らに対して本件積立金の返還を約束したとしても,被告の代表者でも役員でもない者がそのような約束をする権限はない。したがって,これによって,被告につき,原告らの返還請求に応ずる義務が発生するものではない。 第3 争点に対する判断 1 各項末尾掲記の証拠等によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 本件基金の設立の経緯ア被告は,平成3年12月21日結成時から,簡単にストライキの手段はとらないが闘う時は闘う,組合費を値上げしないという方針を明らかにし,結成時の組合費は九州旅客鉄道労働組合と同額の基本給の1000分の17,定額部分600円加算とされたが,同年度末の春闘でストライキを実施したことに伴って闘争費用が増大し,財政 いう方針を明らかにし,結成時の組合費は九州旅客鉄道労働組合と同額の基本給の1000分の17,定額部分600円加算とされたが,同年度末の春闘でストライキを実施したことに伴って闘争費用が増大し,財政状況が悪化して年間3000万円程度の赤字が予測されるという事態に至った。そのような状況下で,被告では,平成4年4月以降,被告の機関である組織財政検討委員会において,組合の財政基盤の確立に関して議論が行われ,同委員会や職場集会等を通じて,組合費の値上げや闘争費用の確保について議論がなされた。 組織財政検討委員会は,同年4月以降の議論を経て,同年6月15日付けで,健全な財政を確立するためには組合費の値上げが不可避であり,組合員一人当たり月2000円程度の値上げが適当と報告し,ストライキを実施した際の賃金減額の補償や闘争費等の確立のため「スト生活基金」の積立てが必要である旨を答申した。 被告は,上記答申を受け,同月中旬ころ,組合員に職場討議用の資料(甲4)を作成・配付して「スト生活基金」の設立を提案し,その中で,制度の基本的な考え方については,①「ストライキ時における賃金減額の補償及び闘争費用に充当すること」を目的とする,②積立額は,全組合員が1週間のストライキを行った場合の補償額相当である約1億円を目標とし,③基金の保管・運用・管理・還付などの細部については,本部・地本の代表者で構成する管理委員会を設置して,公平を期することとされ,また,本件積立金の徴収方法については,「A案;毎月1000円を60か月,ボーナス時3000円を10回,B案;毎月1000円を50か月,ボーナス時5000円を8回,C案;ボーナス時1万円を9回」という3つの案(なお,いずれの案の場合でも,満55歳となった組合員については,その月から積立てを止めるものとされている。)が示さ 0か月,ボーナス時5000円を8回,C案;ボーナス時1万円を9回」という3つの案(なお,いずれの案の場合でも,満55歳となった組合員については,その月から積立てを止めるものとされている。)が示された。 イ大分地本では,上記基金の設立について,同年6月10日に地本代表者会議,同月17日に分会拡大代表者会議,同月22日から24日にかけて職場集会を行って諮ったところ,組合員からは反対意見が出されることはなく賛同が得られた。ただし,組合員の一部からは,組合員が退職した場合には還付してほしい旨の意見が出された。また,徴収方法については,大分地本の執行部や組織財政検討委員会の委員であったdらがA案への支持を呼びかけたところ,概ねA案の支持で意見の集約がなされた。 ウ同年7月に行われた中央本部の第3回定期大会において,上記「スト生活基金」を具体化した本件基金の設立が決定された。徴収方法については,前記A案が採用され,同年8月から本件積立金が徴収されることとなった。そして,上記大会後,本件基金の目的,徴収金額,管理等について,前記第2の1(2)のとおり本件規則が定められた。 前記のとおり,本件規則第1条(規則根拠)には,「この規則は,JR九州労規約36条に基づいて定める。」と規定され,規約の第36条(連帯活動基金)には,「争議・救援・福祉などの特定の事業を行うため,一般会計より連帯活動基金を積み立てる。なお運営の細部について別に定める。」と規定されている。また,被告には,「連帯活動基金」という制度も設けられ,その「連帯活動基金規則」と題する規則にも,第1条(規則の根拠)に,「この規則はJR九州労規約第36条に基づいて定める。」との規定が,第2条(目的)に,「この規則はJR九州労組合員の争議,福祉ならびに災害等に関する資金援助等の連帯活動につい 第1条(規則の根拠)に,「この規則はJR九州労規約第36条に基づいて定める。」との規定が,第2条(目的)に,「この規則はJR九州労組合員の争議,福祉ならびに災害等に関する資金援助等の連帯活動について,必要な資金の積立および支出について定めその適正な運用をはかることを目的とする。」との規定がある。 なお,本件規則の末尾には,参考として,被告の規約7条が記載されている。 エ被告は,第3回定期大会後,本件規則の内容等,本件基金の詳細について,各組合員に対し,文書を配布するなどして伝達することはしていない。しかしながら,大分地本では,その役員が本件基金の目的や還付対象者等について組合員に対して説明しており,また,一般組合費の値上げのために同年8月ころ作成した討議資料(乙9)の中で,本件基金の性格について触れ,「闘うための組織活動資金です。組織を裏切る組合員に返還するような積立金の性格ではありません。」と記載している。 (以上(1)全体につき,甲4,11,16,乙2,3,4,6の1,8,9,12,14,17ないし19,証人d,弁論の全趣旨)(2) 本件積立金の徴収方法及び額,本件基金の管理状況ア本件基金を設立するに伴い,被告は,平成4年8月分以降の一般の組合費及び本件積立金として,基本給の1000分の17に定額部分1600円を加算したもの(10円未満は切り捨て)を各月の給与から,さらに本件積立金として3000円を年2回の賞与から徴収することとして,訴外会社に依頼して,いわゆるチェックオフの方法で被告の口座に振り込ませた。 上記の組合費定額部分1600円のうち1000円が本件積立金の徴収部分であるが,毎月の給与からの徴収については,一般の組合費と本件積立金とが区別されず,給与内訳明細書上にも,「労組費」として本件積立金と一般組合費の合計額が 00円のうち1000円が本件積立金の徴収部分であるが,毎月の給与からの徴収については,一般の組合費と本件積立金とが区別されず,給与内訳明細書上にも,「労組費」として本件積立金と一般組合費の合計額が記載されている。 なお,その後の同年10月18日,第2回臨時中央委員会において,一般組合費が900円値上げされることが決定された。また,本件基金は,平成9年に積立額がほぼ目的額(組合員一人当たり9万円)に達したため,いったん徴収が中断されたが,平成10年7月18日に行われた被告の第9回定期大会において,退職者の増加や財政状況,今後の運動の強化の観点から,毎月500円の積立てが再開されることが決定され,同年10月以降,被告の解散まで月500円が徴収された。 イ本件基金の会計は,一般会計の収支とは別に特別会計で管理され,積立金は実際には,被告名義の預金口座に入金されている。また,組合員ごとの徴収及び積立ての残高を記載した明細書等は作成されていない。 なお,被告は,各組合員から,本件積立金を徴収した日付等を記載した一覧表(乙31の1ないし7参照)を作成しているが,上記一覧表には,各組合員一人当たりの本件積立金の徴収総額,使用額,残額等を記載する形式にはなっていない。 (以上(2)全体につき,乙4,6の1ないし5,15,16の1ないし4,18,19,31の1ないし7,証人d,弁論の全趣旨)(3) 本件基金からの支出被告においては,結成から解散までの間,平成4年ないし平成6年の各3月に合計3回にわたりストライキを実施しているが,それ以降はストライキを実施していない。しかしながら,平成6年度以降も,本件基金から,「闘争費」として,別表記載のとおり支出された。そして,本件基金を含めて被告の会計については,平成11年度までは毎年半年毎に,平成12年度は ていない。しかしながら,平成6年度以降も,本件基金から,「闘争費」として,別表記載のとおり支出された。そして,本件基金を含めて被告の会計については,平成11年度までは毎年半年毎に,平成12年度は1年間に対して,会計監査がなされ,各年度毎に決算報告書が作成され,毎年の大会で決算報告がなされているが,本件基金から闘争費として支出されたことについて,問題となったことはなく,決算は承認されている。原告らのうちにも,大会代議員としてこれらの大会に出席したものもいる。 なお,被告の規約及び規則では,争議活動・闘争支援活動等が別の特別会計である連帯活動基金から支出されると定められ,連帯活動基金は組合員による一人月100円の積立てと一般会計からの剰余金の積立てが財源とされていたが(規約36条,会計規則3条,連帯活動基金規則2条,3条,9条,10条),実際には積立てはなされず,一般会計から剰余金を積み立てる余裕もなく,同基金は存在しなかった。 (以上につき,乙2,7の1ないし7,19,証人d,弁論の全趣旨)(4) 本件積立金の還付の運用ア本件基金を設立するに当たって,組合員の中から,退職者については還付してほしいなどの意見が出されたところ,被告においては,組織財政検討委員会の検討においても退職者には返還するのが相当という意見が多数を占めていたこと,組合員の中には毎月一定額の積立金が徴収されることに対する抵抗もあったこと等を考慮し,本件基金の運用上,組合員が退職した場合には還付することと決定し,基金管理委員会においてそのような運用をしていた。ただし,退職前に被告から脱退した組合員に本件基金を還付すべきであるとの意見が出されたということはなく,その後,実際に脱退者に対して還付されたこともない。 イ退職者等に対する還付額は,徴収額から一定金額を控除 前に被告から脱退した組合員に本件基金を還付すべきであるとの意見が出されたということはなく,その後,実際に脱退者に対して還付されたこともない。 イ退職者等に対する還付額は,徴収額から一定金額を控除するという方法で決定されており,その際に,組合員ごとに当該組合員当たりの使用額を求めて控除額を算出するというような計算はなされていない。被告は,平成13年3月までの退職者に対しては原則として4000円(徴収額が少ない者については,例外的に控除しないか4000円未満の額),同月以降の退職者に対しては原則として2万円を各控除した額を還付している。 (以上(4)全体につき,甲16,乙17,19,32の1ないし11の各1・2,33の1・2,証人d,弁論の全趣旨) 2 前記第2の1の各事実並びに前項に認定した事実を前提に,原告らが被告に対して本件積立金の返還を求めることができるかについて検討する。 (1) 本件基金の性質ア本件基金が設立された経緯には,被告における財政基盤を強化するための議論の中で,一般組合費の値上げとともに提案されて設立されたという事情があり,また,本件規則上,本件基金は「ストライキ時の賃金減額の補償及び闘争費用の充実」を目的としている。実際にも,本件基金は,ストライキ以外の闘争費用にも広く使用されていた。その使用の状況は,本件基金の利息のみを使用するとか,本件基金を担保として運用するとかいうものに限られず,本件基金自体の一部,平成6年度以降については別表記載の額が,闘争費として支出されている。そして,上記の使用状況に,本件積立金は,組合員の任意によって積み立てられたものではなく,全組合員が一律に一定額を支払ってきたこと,本件基金の会計は特別会計とされていたが,その管理のために各組合員ごとの明細書等が作られるということはなく,本件基 任意によって積み立てられたものではなく,全組合員が一律に一定額を支払ってきたこと,本件基金の会計は特別会計とされていたが,その管理のために各組合員ごとの明細書等が作られるということはなく,本件基金の徴収は一般の組合費とともに一括して組合員の給与から控除され,被告の預金口座に入金されていたこと,平成9年に積立額がほぼ目的額(組合員一人当たり9万円)に達していったん徴収が中断されたが,退職者の増加や被告の財政状況,今後の運動の強化の観点から徴収が再開されたことに照らせば,本件基金は,組合員の個別財産としてではなく,組合の財産として管理されていたと認められる。 なお,原告らは,本件基金は,ストライキ時における賃金減額補償のみに使用されると説明され,そのように考えていた旨供述(甲16,19の1から41,原告g)するが,前記のとおり,本件規則にも,また,原告らが証拠として提出する本件基金設立前の職場討議資料(甲4)にも,本件基金の目的は,ストライキ時における賃金減額補償及び闘争費用に充当すると記載されていること,前記認定のとおりの本件基金が設けられた経緯,さらに,これまで実際にストライキ時に限らず「闘争費」のために支出され,その支出には,監査及び決算の手続がとられていること等に照らすと,これらの供述は採用できない。 イ前項の本件基金の設立経緯,設立目的,徴収,管理及び使途の実態に照らせば,本件基金の名称には「積立金」という表示がなされているものの,その性格は,各組合員の被告に対する預託金ではなく,拠出金であると認められる。したがって,本件基金の性格に照らし,明文の規定ないし慣行が存しない限り,組合員はその返還を求めることはできないというべきである。 (2) 本件積立金の還付に関する規定等ア本件基金について定めた本件規則には,脱退者に対 格に照らし,明文の規定ないし慣行が存しない限り,組合員はその返還を求めることはできないというべきである。 (2) 本件積立金の還付に関する規定等ア本件基金について定めた本件規則には,脱退者に対して本件積立金を返還する明文の規定はない。 原告らは,本件規則の存在及び内容自体を疑わしいと争うが,これまで本件規則が原告らの目に触れたことがなかったことをもって,本件規則が被告中央本部第3回定期大会後制定されたとする前記認定を覆すに足りない。また,本件基金につき,本件規則と異なる内容を定めた規則が存在することを認めるに足る証拠はない。 原告らは,本件規則7条の「規約7条」という記載は組合員資格の喪失を定めた条文である「規約11条」の誤記である旨主張する。確かに,規約7条は組合員資格を定めた条文であって,還付の要件を定める本件規則7条に「組合員が規約7条に該当し」とあるのは不自然であり,証人dはこれを脱退した場合を含めないとするためにした表現であると証言するが,その趣旨であれば,適切な表現がなされたとは言い難い。しかしながら,本件規則の末尾に「参考」として規約7条が記載されていることからみると,「規約7条」が原告ら主張のように規約11条の誤記であると認めることはできない。 イなお,前記のとおり,本件規則は,本件基金の使用について「運用」との用語を使用し,①前記の本件基金の目的のために,組合員一人が9万円を積み立てること,②本件基金は特別会計であること,③本件基金の運用によって生じた利息は,本件基金の管理に必要な経費を除いて「連帯活動基金」に繰り入れられること等を定めている。このような記載内容からすると,規則上は,組合員一人につき9万円の積立金が確保されることを予定しているようにもみえる。しかしながら,本件規則は,本件基金の目的につ 繰り入れられること等を定めている。このような記載内容からすると,規則上は,組合員一人につき9万円の積立金が確保されることを予定しているようにもみえる。しかしながら,本件規則は,本件基金の目的につき前記のように定め,本件基金の還付につき組合員が死亡したとき以外について定めていないこと,被告の規約上は,被告を脱退しようとする者は,被告に納入した組合費及びすべての被告の資産の返還又は分与を請求することができないと規定され(規約9条2項),本件積立金の還付については何らの定めがないことに照らせば,本件規則に上記のような記載部分があることから,直ちに,組合員が被告を脱退したときに,本件積立金の返還を求める権利が生ずるということはできない。 ウ前記1(4)アのとおり,本件基金の設立に際しての組合員からの要望や,組織財政検討委員会の検討結果等も考慮し,基金管理委員会において,組合員が退職した場合には本件積立金を還付する運用がなされていたが,退職前に被告から脱退した組合員については,本件基金を還付すべきであるとの意見が出されたことはなく,その後,実際に脱退者に対して還付された実績もないというのであるから,被告を脱退した組合員に対して本件積立金を還付する慣行があったとは到底いえない。 エ以上のとおり,被告組合を脱退した者に対して還付するという規定はなく,また,そのような慣行も存しないので,この点からみても,脱退者である原告らが被告に対し,本件積立金の返還を求めることはできないというべきである。 なるほど,被告が本件基金を設立するにあたって参考にしたJR西日本労組の「ストライキ生活基金」を定めた規則には,同労組が脱退者に対しても積立金を還付する旨定められていた(乙10,11)。しかしながら,JR西日本労組における上記基金は,「同盟罷業による賃金の減額 労組の「ストライキ生活基金」を定めた規則には,同労組が脱退者に対しても積立金を還付する旨定められていた(乙10,11)。しかしながら,JR西日本労組における上記基金は,「同盟罷業による賃金の減額を補償すること」を唯一の目的とし,還付についても広く組合員資格を喪失した者を対象としているから,被告における本件基金とは,その性格も規則の内容も大きく異なるというべきである。 (3) 原告らは,原告らが被告から脱退する際,大分地本の役員d及びeらが,原告らに対し,本件積立金をいずれ返還すると約束したのであるから,本件積立金を返還しないことは信義則ないし禁反言の法理に反する旨主張し,dらがその旨の発言をしたと供述する(甲20,原告g)。 しかしながら,被告が,dらに当時そのような発言をさせ,もしくはこれを承認していたことを認めるに足りる証拠はない。また,本件積立金の返還請求権は,本件基金の性格や規則の内容によって判断されるべきものであって,信義則ないし禁反言の法理に反することから,直ちに請求権が発生するとはいえない。 3 上記2の検討結果によれば,本件基金を定めた本件規則に基づいても,あるいは,本件基金の設立経緯,目的,性格並びに管理,使用及び還付の実態に照らしてみても,被告を脱退した原告らが本件積立金の返還を請求する権利を有する根拠はないというほかない。 4 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないことに帰するから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担については民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日平成15年7月16日)大分地方裁判所民事第2部裁判長裁判官関美都子裁判官西村英樹裁判官家原尚秀別表支出額(円)摘要※平成6年度 (口頭弁論終結日平成15年7月16日)大分地方裁判所民事第2部裁判長裁判官関美都子裁判官西村英樹裁判官家原尚秀別表支出額(円)摘要※平成6年度1,088,000闘争費平成7年度2,193,606闘争費平成8年度306,442闘争費会計へ平成9年度125,1231,895,000闘争費会計へ闘争費平成10年度340,1432,220,000闘争費会計へ闘争費平成11年度115,8323,722,000闘争費会計へ闘争費平成12年度10,499,735闘争費※ なお,平成6年度及び平成7年度の「闘争費」の支出は,本件基金の会計とは別の特別会計である闘争費会計に繰り入れられている。この点は,平成8年度ないし11年度の「闘争費会計へ」の支出も同様である。

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