平成13(わ)950 有印公文書偽造,同行使,有印私文書偽造,同行使,詐欺未遂,詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年2月17日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,999 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。 押収してある市民税・県民税(所得・課税)証明書(写)1部(平成13年押第172号の3)及び住民票(写)1部(同押号の4),自動車運転免許証コピー1通(同押号の5)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,大阪市A区Ba丁目b番c号に本店を置き,広告宣伝に関する企画,制作及び管理等を目的とする株式会社C(以下「C」という。)の代表取締役であったものであるが,第1(平成13年12月28日付け起訴状記載の公訴事実)Cの債務返済等に窮し,大阪市A区Ba丁目b番d号に本店を置き,情報管理,情報提供サービス業等を目的とする有限会社D(以下「D」という。)の代表取締役Eと共謀の上,中小企業金融安定化特別保証制度(F信用保証協会平成10年10月1日制定の「中小企業金融安定化特別保証制度要綱」に基づく制度)を利用して,F信用保証協会を欺いてその保証を得た上,金融機関を欺いて被告人がその業務を実質的に統括管理するDに対する融資を実行させて財産上不法の利益を得ようと企て,真実は,Dの改名,改組前の会社である有限会社G(以下「G」という。)には営業実態がなく,Dが平成12年6月ころから初めて情報管理,情報提供サービス事業を開始したもので,同一事業を大阪市内で1年以上営み,事業による大阪市市民税を納めている中小企業者等に該当しないため,F信用保証協会の信用保証を受ける資格がないのに,あたかも,Gが平成10年1月ころから大阪市A区He丁目f番g号等に本店を設けて同事業を営み,平成12年6月20日,DがGの商号,本店所 当しないため,F信用保証協会の信用保証を受ける資格がないのに,あたかも,Gが平成10年1月ころから大阪市A区He丁目f番g号等に本店を設けて同事業を営み,平成12年6月20日,DがGの商号,本店所在地を変更する等して組織変更を行って同事業を継続する等しており,その運転・設備資金等が必要であるように装い,かつ,その融資金を直ちにCの債務返済等に費消する意図であるのに,その情を秘し,同年8月24日,大阪市A区Ih丁目i番j号所在の株式会社J銀行(以下「J銀行」という。)I支店において,融資担当係員である同支店調査役補Kに対し,「Gは,平成10年1月,各企業間の情報ネットワークを基本に情報処理を提供することを目的として設立開業し,IT事業の拡大に併せてDと改名,改組し,Dは,ネットワークソースの確立のため,オリジナルサイトを設立し,各種コンテンツの制作販売を拡張している。Dの運転・設備資金を調達するため,J銀行から2000万円を借入したいので,その信用保証の委託を申し込む。」旨のF信用保証協会に対する内容虚偽の信用保証委託申込書1通を,G名義の内容虚偽の平成10年12月期及び平成11年12月期の法人税確定申告書控その他の関係書類とともに提出し,平成12年8月25日ころ,Kを経由して,前記関係書類一式を大阪市L区Mk丁目l番m号所在のF信用保証協会に送付させ,同月29日,同協会事務所において,F信用保証協会保証部特別保証一課課長N及び同協会常務理事Oらをして,Dが前記保証対象資格を有する中小企業者等に該当するものと誤信させ,貸付(保証)金額2000万円の保証決定をさせてF信用保証協会会長P作成に係る信用保証書を発行させた上,これを関係書類一式とともにJ銀行I支店に回付させ,K及び同支店長Lをして,Dが適正にF信用保証協会の信用保証を受け, 0万円の保証決定をさせてF信用保証協会会長P作成に係る信用保証書を発行させた上,これを関係書類一式とともにJ銀行I支店に回付させ,K及び同支店長Lをして,Dが適正にF信用保証協会の信用保証を受け,かつ,同保証の下に融資を受ける資金を前記運転・設備資金に充ててJ銀行に約定どおり返済するものと誤信させ,よって,同月31日,あらかじめ前記I支店に開設したD名義の普通預金口座に2000万円を入金させてJ銀行に前記融資を実行させ,もって,それぞれ人を欺いて財産上不法の利益を得た第2(平成13年11月2日付け起訴状記載の公訴事実)C等の債務返済に窮し,兵庫県内で事業を営む中小企業者を装い,M信用保証協会を欺いてその信用保証を得た上,金融機関を欺いて融資を実行させて財産上不法の利益を得ようと企て,平成13年5月30日ころ,前記C本店事務所内において,行使の目的をもって,ほしいままに,かねてより,明石市長作成名義の真正なN名義の住民票をスキャナで文書画像としてパソコンに取り込んだ上,世帯主欄に「O」,住所欄に「P町n丁目o番p号Qq号」等と各入力する等し,同パソコンのハードディスク内に保存していた内容虚偽の住民票様の文書画像データを,プリンタで印刷してコピーするとともに,かねてより,明石市長作成名義の真正なN名義の市民税・県民税(所得・課税)証明書をスキャナで文書画像としてパソコンに取り込んだ上,住所及び氏名欄に「明石市P町n丁目o番p号Qq号O」,年税額欄に「¥265,300」等と各入力する等し,同パソコンのハードディスク内に保存していた内容虚偽の平成12年度分の市民税・県民税(所得・課税)証明書様の文書画像データを,プリンタを用いて印刷し,もって,有印公文書である明石市長作成名義の住民票(写)1部(平成13年押第172号の4)及び市民税 の平成12年度分の市民税・県民税(所得・課税)証明書様の文書画像データを,プリンタを用いて印刷し,もって,有印公文書である明石市長作成名義の住民票(写)1部(平成13年押第172号の4)及び市民税・県民税(所得・課税)証明書(写)1部(同押号の3)を各偽造した上,同月31日,兵庫県伊丹市Rr丁目s番t号所在の株式会社S銀行(以下「S銀行」という。)伊丹T(以下「T」という。)において,T融資審査担当係員Uに対し,前記偽造に係る住民票及び市民税・県民税(所得・課税)証明書をいずれも真正に成立したもののように装ってその他関連書類とともに提出行使して,真実は,被告人が,兵庫県内に事業所又は営業所を有し,同一事業による営業実績が1年以上あって,引き続き同一事業を経営している中小企業者ではなく,しかも,個人事業者が会社を設立し,自分が代表取締役になって個人事業の営業譲渡を受け,債権債務を承継し,前記事業を継続していると認められる場合でもないから,M信用保証協会の信用保証を受ける資格がないのに,あたかも,被告人が,兵庫県明石市P町n丁目o番p号Qq号に居住し,平成12年1月から同所に事務所を構えて「V」との名称で情報通信関連事業(「ソフトプログラム・システム設計,企画制作」事業)を個人で経営し,平成13年4月20日に設立した被告人が代表取締役を務めるW株式会社(以下「W」という。)が,被告人から同事業を承継する等して同県川西市内で同事業を継続しており,その業務拡張に伴う設備増設資金等の事業資金が必要であるように装い,かつ,その融資金を直ちにCの債務返済等に費消する意図であるのに,その情を秘し,S銀行に対しWに対する前記事業資金としての3500万円の融資を,M信用保証協会に対しその信用保証をそれぞれ申し込み,Uを経由して,同年6月4日ころ,前記 等に費消する意図であるのに,その情を秘し,S銀行に対しWに対する前記事業資金としての3500万円の融資を,M信用保証協会に対しその信用保証をそれぞれ申し込み,Uを経由して,同年6月4日ころ,前記各偽造文書その他の関係書類を兵庫県尼崎市X町u丁目v番w号所在のM信用保証協会尼崎支所に送付させ,同月28日,同所において,同支所副支所長Yをして,Wが前記の保証対象資格を有するものと誤信させ,貸付(保証)金額3500万円の保証決定をさせた上,M信用保証協会理事長Z作成に係る保証書を関係書類とともにTに回付させ,U及びT部長AAをして,Wが適正にM信用保証協会の信用保証を受け,かつ,同保証の下に融資を受ける資金を前記事業資金に充ててS銀行に約定どおり返済するものと誤信させ,よって,同年7月10日,あらかじめS銀行川西支店に開設したW名義の普通預金口座に前記融資金額から利息及び収入印紙代を差し引いた3491万2313円を入金させてS銀行に前記融資を実行させ,もって,それぞれ人を欺いて財産上不法の利益を得た第3(平成13年9月17日付け起訴状記載の公訴事実)Eと共謀の上,自動車運転免許証(以下「運転免許証」という。)を偽造し,これを使用して消費者金融業者からキャッシングカードを詐取しようと企て,平成13年8月16日ころから同月20日までの間,前記C本店事務所内及び兵庫県川西市ABx丁目y番地のz所在の被告人方において,被告人が,行使の目的をもって,ほしいままに,大阪府公安委員会の記名押印のある前記E名義の運転免許証をスキャナでパソコンに画像データとして取り込み,その氏名欄をACと変更するなどした上,それを光沢フィルムに印刷し,これをラミネートフィルムではさみ込むなどして運転免許証様に整形し,もって,有印公文書であるAC名義の大阪府公安委 として取り込み,その氏名欄をACと変更するなどした上,それを光沢フィルムに印刷し,これをラミネートフィルムではさみ込むなどして運転免許証様に整形し,もって,有印公文書であるAC名義の大阪府公安委員会作成名義の自動車運転免許証1通(平成13年押第172号の1)を偽造した上,同月20日午後6時35分ころ,兵庫県川西市ADaa丁目ab番ac号所在のAE株式会社AF自動契約機コーナーにおいて,前記Eが,行使の目的をもって,ほしいままに,ボールペンを用いて同コーナー備付けの借入申込書のお名前欄に「AC」,ご住所欄に「兵庫県川西市AGad丁目aeーaf」等と各記入し,もって,有印私文書であるAC作成名義の借入申込書1通(同押号の2)を偽造し,これを前記偽造運転免許証と共に前記自動契約機コーナーに設置された自動契約受付端末機のスキャナに読み取らせ,同端末機と回線で接続された神戸市L区AHagーahAIビルai階所在の同社近畿支社AJ内の端末機画面にこれを表示させるなどし,これに対応した同係員AKに対し,前記偽造に係る運転免許証及び借入申込書を真正に成立したもののように装って呈示して行使し,同人をして,前記EがACであり,真実の借入申込みをしているものと誤信させ,同人から同社発行に係るAC名義のAEカード(キャッシングカード)1枚を詐取しようとしたが,AKに前記運転免許証が偽造であることを看破されて警察官に通報されたため,その目的を遂げなかった第4(平成14年1月30日付け起訴状記載の公訴事実)「AL(注:被告人の旧姓による氏名である。)」の名称で多重債務を負う被告人の戸籍上の氏名が「O」であることを消費者金融業者に知られていないことを奇貨として,消費者金融業者から「O」名義で借入金名下に金員を詐取しようと企て,平成13年8月20日ころ, 多重債務を負う被告人の戸籍上の氏名が「O」であることを消費者金融業者に知られていないことを奇貨として,消費者金融業者から「O」名義で借入金名下に金員を詐取しようと企て,平成13年8月20日ころ,前記被告人方において,兵庫県公安委員会作成名義の真正のAL名義の運転免許証をスキャナでパソコンに取り込み,これにAMの顔写真の画像データを合成するとともにその氏名欄を「O」と変更する等して作成した「O」名義の運転免許証様の文書画像データをプリンタで印刷して,行使の目的をもって,ほしいままに,そのころこれをコピーし,もって,有印公文書である「O」あての兵庫県公安委員会作成名義の運転免許証のコピー1通(同押号の5)を偽造した上,同月21日ころ,前記C本店事務所において,株式会社ANAO支店の融資審査担当係員APに対し,前記偽造運転免許証のコピー1通を真正に成立したもののように装ってその他関係書類とともに提出して行使し,真実は,「O」は被告人の氏名であってAMの氏名ではないのに,これを秘し,あたかもAMが「O」であるのように装って「O」が同人の経営するW株式会社の運転資金等として300万円の融資申込みをする旨虚偽の事実を申し向ける等し,さらに,AMに対し,同人において「O」になりすまし,株式会社ANから金銭を借り受ける契約をしてほしい等と依頼し,ここに同人と共謀の上,同月22日ころ,前記C本店事務所において,同事務所に電話してきたAPに対し,被告人においてAMが「O」であると紹介し,AMにおいて自ら「O」と名乗る等して同人になりすまし,同月24日午後5時ころ,兵庫県川西市AQ町aj番ak号ARal階所在の料理店「AS」川西店において,AMにおいて,APらの面前で「O」であると詐称して同人のごとく振る舞い継続的極度内借入契約書等に署名押印する等し ころ,兵庫県川西市AQ町aj番ak号ARal階所在の料理店「AS」川西店において,AMにおいて,APらの面前で「O」であると詐称して同人のごとく振る舞い継続的極度内借入契約書等に署名押印する等して,APを経由して前記偽造運転免許証のコピー1通その他の関係書類の送付を受けた静岡県静岡市AT町am番an号所在の株式会社AN本店審査部部長AUから「O」に対する貸付極度額300万円の範囲内での継続的貸付の決裁を受けていたAPらをして,AMが「O」であり,AMに対する同貸付が可能であると誤信させ,即時同所において,APらから現金150万円及びANカード(ローンカード)1枚の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(補足説明)第1 争点の整理等弁護人は,判示第1につき,①被告人は,Cが現に進めていた情報通信関連事業をDに承継・独立させようと計画し,J銀行に判示の融資を申し込んだに過ぎず,Dは,被告人らによる判示欺罔行為が行われなくても,スタートアップ資金として同銀行から融資を受けることができたし,現にDは,Cに対し,その設立時において,設備投資を受けたことによる買掛債務を負っており,被告人も前記融資申込みの際,Kに対し,本件融資金をDのCに対する債務返済に充てる旨伝えていた,②F信用保証協会は保証債務を履行しておらず,また,その履行を拒否しており,実被害を受けていないなどとして,詐欺罪は成立せず被告人は無罪である旨主張し,被告人も当公判廷でこれに沿う供述をする。当裁判所は,判示第1につき詐欺罪の成立は優に認められると判断したのであるが,以下若干補足して説明する。 なお,検察官は,判示第4の犯行中,有印公文書偽造,同行使についても, に沿う供述をする。当裁判所は,判示第1につき詐欺罪の成立は優に認められると判断したのであるが,以下若干補足して説明する。 なお,検察官は,判示第4の犯行中,有印公文書偽造,同行使についても,被告人とAMとの間で共謀があった旨主張するが,前掲関係各証拠を精査しても,被告人の判示の偽造有印公文書行使の時点以前に前記両名の間で共謀がなされたことを認めるに足りる証拠はないから,検察官の前記主張は採用できない。 第2 争点についての判断 1 前掲関係各証拠によれば,(1)F信用保証協会の信用保証を受けるためには,大阪市内に事業の本拠を有し,同一事業を大阪市内で1年以上営み,事業による大阪市市民税を納めている中小企業者等であることが要件であること,(2)本件融資は,判示の中小企業金融安定化特別保証制度によるもので,(1)の要件に加え,固有の要件として対象資金が事業経営の安定に必要な運転,設備資金であること等が必要であり,特に保証決定の留意事項として粉飾決算等を行っている場合等には保証対象にしない旨定められていること,(3)J銀行は,融資決定に当たり,申込業者の返済能力の有無,万一の場合の債権回収方法の有無を審査しており,Kらも,被告人らが提出した関係書類に基づき,DがG時代から優良企業であり,その返済能力が十分であると判断して融資決定に至ったこと,(4)F信用保証協会は,申込業者のこれまでの業績・資力・債務状況等を勘案して保証の可否及び保証額の算定を行っており,Nらも,被告人らが提出した関係書類に基づきDに返済能力があり,保証金額も内規に合致するとして保証決定に至ったこと,(5)Gは,平成10年1月20日に設立されたが,平成11年2月以降活動を全く行っておらず,したがって,実際に情報通信関連事業を行ったことはなく,被告人らがJ銀行等に提出 として保証決定に至ったこと,(5)Gは,平成10年1月20日に設立されたが,平成11年2月以降活動を全く行っておらず,したがって,実際に情報通信関連事業を行ったことはなく,被告人らがJ銀行等に提出したGの決算報告書等も全て内容虚偽であったことが認められる。 2 被告人は,当公判廷において,本件融資はスタートアップ資金制度を利用したものであり,独立開業資金なので過去の実績は必要ない旨供述するが,そうだとすると,同制度を利用するつもりの被告人がGの決算報告書等に虚偽の記載をする必要もないのであって,K,伊藤弘明及びN並びに被告人自身の前掲各供述調書に照らし,被告人の前記公判供述は到底信用できない。 3 1認定の事実によれば,Dは,F信用保証協会の保証対象資格を有しておらず,現に粉飾決算を行っていたのであるから,Dが本件融資を受けられなかったことは明らかであり,仮に粉飾決算を行っていなかったとしても,被告人主張のとおり情報通信関連事業を実際に進めていたか否か,したがって,その段階まで至れば前記融資申込書に融資金の使途として記載されていたように,DがCに対する設備投資関係の債務を現実に負担することがありえたか否かは別として,融資申込時点では前記事業に採算性がなかったことは被告人が当公判廷で自認するとおりであって,また,Dが他の事業による収益や担保不動産も現実に有していなかったことを併せ考慮すると,Dがその実態を明らかにして融資を申し込んだ場合には,F信用保証協会による信用保証を得た上でJ銀行の融資を受けられなかったものと認められ,被告人もそのことを認識していたからこそ,Gの決算報告書等に虚偽の記載をするなどしたものと優に認められる。したがって,被告人の判示各欺罔行為と本件融資との間に因果関係の認められることは明らかであり,弁護人の前記①の を認識していたからこそ,Gの決算報告書等に虚偽の記載をするなどしたものと優に認められる。したがって,被告人の判示各欺罔行為と本件融資との間に因果関係の認められることは明らかであり,弁護人の前記①の主張は理由がない。 4 次に,財産上の損害の発生の点について検討すると,判示第1のとおり,被害者であるF信用保証協会が本件融資に係るJ銀行に対する保証債務を負担していることは明らかであるところ,F信用保証協会がその履行を拒否し,現に前記保証債務を履行していないとしても,詐欺罪の成立には何ら影響がないというべきであるから,弁護人の前記②主張も理由がない。 (法令の適用)被告人の判示第1の各所為は包括して刑法60条,246条2項に,判示第2の所為のうち,各有印公文書偽造の点はいずれも同法155条1項に,その各行使の点はいずれも同法158条1項(155条1項)に,各詐欺の点は包括して同法246条2項に,判示第3の所為のうち,有印公文書偽造の点は同法60条,155条1項に,その行使の点は同法60条,158条1項(155条1項)に,有印私文書偽造の点は同法60条,159条1項に,その行使の点は同法60条,161条1項(159条1項)に,詐欺未遂の点は同法60条,250条,246条1項に,判示第4の所為のうち,有印公文書偽造の点は同法155条1項に,その行使の点は158条1項(155条1項)に,詐欺の点は同法60条,246条1項にそれぞれ該当するが,判示第2の偽造有印公文書の一括行使は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,有印公文書の各偽造とその各行使と詐欺との間にはそれぞれ順次手段結果の関係があり,判示第3の偽造有印公文書及び偽造有印私文書の一括行使は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,有印公文書の偽造とその行使と詐欺との間,有印私 と詐欺との間にはそれぞれ順次手段結果の関係があり,判示第3の偽造有印公文書及び偽造有印私文書の一括行使は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,有印公文書の偽造とその行使と詐欺との間,有印私文書の偽造とその行使と詐欺との間にはそれぞれ順次手段結果の関係があるから,同法54条1項前段,後段,10条により結局以上を1罪として判示第2の罪について刑及び犯情の最も重い住民票に関する偽造有印公文書行使罪の刑で,判示第3の罪について刑及び犯情の最も重い偽造有印公文書行使罪の刑で,判示第4の有印公文書の偽造とその行使と詐欺との間には順次手段結果の関係があるから,同法54条1項後段,10条により1罪として刑及び犯情の最も重い偽造有印公文書行使罪の刑でそれぞれ処断することとし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予期間中保護観察に付し,押収してある市民税・県民税(所得・課税)証明書(写)1部(平成13年押第172号の3)及び住民票(写)1部(同押号の4)は,それぞれ判示第2の,自動車運転免許証コピー1通(同押号の5)は,判示第4の,各偽造有印公文書行使罪の犯罪行為を組成した物で,いずれも何人の所有をも許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収することとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,資金繰りに窮し,(1)共犯者と共謀の上,自らがその業務を実質的に統括管理するDがF信用保証協会の保証対象資格を有するように装って各担当者等を騙し,同信用保証協会の保 刑の理由)本件は,被告人が,資金繰りに窮し,(1)共犯者と共謀の上,自らがその業務を実質的に統括管理するDがF信用保証協会の保証対象資格を有するように装って各担当者等を騙し,同信用保証協会の保証を得た上,J銀行から2000万円の融資を受けたという詐欺の事案(判示第1),(2)自らがM信用保証協会の保証対象資格を有する中小企業者であるように装い,住民票等を偽造・行使する等して各担当者を騙し,同信用保証協会の保証を得た上,S銀行から約3491万円の融資を受けたという有印公文書偽造,同行使,詐欺の事案(判示第2),(3)共犯者と共謀の上,架空人名義の運転免許証や契約申込書を偽造し,これらを一括行使する等して消費者金融業者からキャッシングカードを詐取しようとしたが,未遂に終わったという有印公文書偽造,同行使,有印私文書偽造,同行使,詐欺未遂の事案(判示第3),(4)被告人において運転免許証を偽造・行使し,共犯者と共謀の上,共犯者において被告人の戸籍上の氏名を名乗らせる等して,消費者金融業者から150万円及びローンカード1枚を詐取したという有印公文書偽造,同行使,詐欺の事案(判示第4)である。 被告人は,自らが経営するC等のグループ会社の債務返済資金を調達するため本件各犯行に及んだというのであるが,目的のために手段を選ばず,企業人として最低限の規範を踏みにじったその動機は短絡的かつ自己中心的で厳しい非難を免れない。その犯行態様をみるに,被告人は,判示の各会社が経営実態を有する健全な財務状況の会社であるように装い,多数の内容虚偽の確定申告書や決算書類等を次々と作成提出したほか,パソコンを用いて極めて精巧な偽造運転免許証のコピーや偽造住民票等を作成提出し,金融機関等の各担当者に言葉巧みに虚偽の説明をし,共犯者らを経営者として振る舞わせる等し 類等を次々と作成提出したほか,パソコンを用いて極めて精巧な偽造運転免許証のコピーや偽造住民票等を作成提出し,金融機関等の各担当者に言葉巧みに虚偽の説明をし,共犯者らを経営者として振る舞わせる等して,金融機関等の信用審査を誤らせたのであり,大胆巧妙な計画的犯行というべく,犯情は極めて悪質である。さらに,本件各犯行の被害総額は高額であり,公共機関による中小企業保護のための制度を悪用し,金融機関の信用審査の前提となる各種証明文書の信用性を損なう等,本件各犯行が社会に与えた影響も軽視できない。 以上の諸点に加え,いずれの犯行も,被告人が積極的かつ綿密に計画し,共犯者や妻を誘い込む等して実行したものであって,その間,特段犯行を逡巡した形跡も窺えないことをも併せ考慮すると,被告人の刑事責任は重大であり,被告人に対しては,本来,実刑をもって臨むべき事案とも考えられる。 しかしながら,他方で,本件各犯行の契機となったC等の債務が専ら事業資金等に関するものであって,本件各犯行後も被告人らが判示各融資金等の一部を弁済していたこと,判示第3の犯行が未遂に終わったこと,被告人は,Cを解散し,所有不動産の任意売却や一部弁済を実施する等して,本件の各被害者を含む全債権者との間で任意整理手続を鋭意進めており,当公判廷で今後も被害弁償等に努める旨誓約していること,被告人には養うべき妻子があり,前科前歴もないこと,未決勾留期間が相当期間に及んでおり,その間に反省悔悟の念を深めたことなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで,以上諸事情を総合考慮し,被告人には,主文掲記の刑を科した上,今回に限り,その刑の執行を猶予し,今後も誠実に被害弁償を続けさせるためにも,併せてその執行猶予期間中保護観察に付することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平 主文 掲記の刑を科した上,今回に限り,その刑の執行を猶予し,今後も誠実に被害弁償を続けさせるためにも,併せてその執行猶予期間中保護観察に付することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年2月17日 神戸地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官 杉森研二 裁判官 橋本一 裁判官 林史高

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