平成11(ワ)1516 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月20日 名古屋地方裁判所
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判決文本文27,784 文字)

主文 1被告は,原告に対し,金249万4500円及びこれに対する平成11年1月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2原告のその余の請求を棄却する。 3訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1原告の請求1被告は,原告に対し,3120万5000円及びこれに対する平成11年1月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2訴訟費用は被告の負担とする。 3仮執行宣言第2事案の概要本件は,原告が,農業振興地域内に養鶏場建設を企図して,被告の行政指導に従い,農用地利用計画の用途区分変更の申出を行ったが被告に受理されず,養鶏場を建設できなかったとして,主位的に被告の行政指導等の違法を理由に国家賠償法1条に基づく損害賠償を,予備的に憲法29条3項に基づく損失補償を求めた事案である。 1前提となる事実当事者間に争いのない事実と,甲3号証,後記各証拠,及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1)当事者等ア原告は,鶏卵の生産及び販売等を目的として平成6年10月5日設立された資本金300万円の有限会社である。 原告代表者のAは,昭和56年に鶏卵の生産,販売を目的として有限会社A農場を設立して代表取締役を務め,岡崎市a町b,同市c郡d町e,及び同町fの3か所に養鶏場を持ち,合計約13万羽の成鶏を飼育して鶏卵を生産している。 イ被告は,平成7年10月1日現在,人口5336人の村であり,全体の80パーセント以上が森林で占められている(甲10号証)。 被告代表者村長のBは,昭和41年被告の職員に採用され,昭和58年6月1日から平成3年5月6日まで経済課に勤務し,同7年9月1日,被告村長に就任した(乙8号証)。 C 占められている(甲10号証)。 被告代表者村長のBは,昭和41年被告の職員に採用され,昭和58年6月1日から平成3年5月6日まで経済課に勤務し,同7年9月1日,被告村長に就任した(乙8号証)。 Cは,昭和36年被告職員に採用され,平成3年6月1日から同8年3月31日まで被告経済課長を務めていた(乙4号証)。 Dは,被告の大字gに在住し,昭和56年度,平成3年度及び同10年度に,g区長を務めた(乙5号証)。 (2)被告は,昭和46年,愛知県知事より,農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」という。)に基づく指定を受けて農業振興地域整備計画を定めて農業振興事業(以下「本件農業振興事業」という。)に着手し,被告地内にある県営農地開発事業h地区(以下「パイロット地区」という。)で,花卉園芸,茶,畜産の3つを基幹作物とする農地造成を推進してきた。パイロット地区には,村有地だけでなく私有地も含まれ,牛牧場,牛の調教施設,村営牛糞処理施設,茶畑及び温室等が点在するが,平成8年当時,造成後10年を経過しても,未利用部分を残す現状であった(甲10号証,証人C)。 (3)Aは,平成元年ころから養鶏場の建設用地を探し始め,平成2年ころから別紙図面表示のh村大字g字iの村有地(以下「本件村有地」という。)の払い下げを受けることを計画したが,平成4年ころ,地元である大字gの部落の住民の反対で断念せざるを得なくなり,その後の平成5年,本件村有地の近隣にある別紙物件目録1ないし8記載の土地(甲1号証の7ないし14。以下「本件予定地」という。)で,養鶏場を建設することを計画した。 本件村有地及び本件予定地は,いずれもパイロット地区内に存在するが,同地区は,昭和57年に愛知県から農振法6条に基づき農業振興地域に指定されている。 (4)農業振興地域を区域内に有する市町村 画した。 本件村有地及び本件予定地は,いずれもパイロット地区内に存在するが,同地区は,昭和57年に愛知県から農振法6条に基づき農業振興地域に指定されている。 (4)農業振興地域を区域内に有する市町村は,農振法8条1項及び4項に基づき,都道府県知事の認可を受けて農業振興地域整備計画を定めなければならず,その際,農用地利用計画も立案して知事の認可を受けることとされているが(同法11条,8条4項),これらの計画を変更する場合には,さらに知事の認可を受ける必要がある(同法13条,8条4項)。 被告は本件村有地及び本件予定地の用途区分をいずれも「農地」と定めていたため,原告がここに養鶏場を建設するには,農用地利用計画中の用途区分を「農地」から「農業用施設用地」に変更する必要があった(同法3条)。そのための手続きとして,①原告が被告に対し用途区分の変更の申出(以下「用途変更の申出」という。)をして,②これを受けた被告が愛知県知事に対し用途区分の変更のための事前協議及び変更申請を行い,③最終的に用途区分の変更についての知事の認可を受けることが必要であるが,用途変更の申出があった場合,被告は必ずしもこれを受理して愛知県知事に対して申請を行う義務を負うものではない。なお,本件予定地に養鶏場を建設するには,さらに農振法15条の15に基づき,農用地開発行為に対する愛知県知事の許可を得なければならない。 (5)本件村有地及び本件予定地はともにg地区内にあって,g地区の西側には被告の大字jの部落が隣接していた。 g地区には約42戸の住民がおり,各年度毎に全住民の選挙で区長が選ばれ,毎月25日には定例会が開かれていた(証人D)。 Aの本件村有地又は本件予定地での養鶏場建設計画(以下「本件入植」ともいう。)に関するg地区の対応方法は,区長,生産組合長及び会計の三役と, が選ばれ,毎月25日には定例会が開かれていた(証人D)。 Aの本件村有地又は本件予定地での養鶏場建設計画(以下「本件入植」ともいう。)に関するg地区の対応方法は,区長,生産組合長及び会計の三役と,茶業組合の関係者又は住人の代表者が具体的に対応し,g地区のその他の住民はこれら代表者の意見を尊重し,定例会で報告を受けてg地区住民全員の総意として了解するというものであった。三役は各年度ごとに交替するが,茶業組合関係者及び住人の代表者は固定していた(乙5号証,証人D)。 Aは,原告設立後の平成6年10月,同年12月,同8年3月,同9年4月に,本件入植に関しg地区で説明会を行ない,同地区の住民の理解を得ようとしたが,g地区から本件入植に対する同意を得ることはできなかった(甲3号証,乙1,9号証)。 (6)平成7年11月22日,原告は,o簡易裁判所に,被告を相手方として農業振興地域の用途区分変更を求める民事調停を申し立てた(平成7年(ノ)第○○号,以下「前件調停」という。)。これに対し,被告は,同変更申立は法的権利とは位置づけられていないから裁判所における調停手続になじまないと主張して却下を求めたので,前件調停は平成8年5月13日,不調に終わった(乙1号証)。 一方,被告は平成8年9月,パイロット・k湖周辺活用構想策定調査報告書(甲10号証)を作成して,パイロット地区及びk湖周辺地区での農業公園計画(以下「農業公園計画」という。)の策定を開始した。 (7)原告は平成9年6月25日,被告に対し用途変更の申出を行った(甲1号証の1ないし47,以下「本申し出」という。)が,被告は受理しなかった。 原告は平成10年12月,o簡裁へ,被告を相手方として損害賠償を求める民事調停(同年(ノ)第□□□号,以下「本件調停」という。)を申立てたが,平成11年4月12日不 う。)が,被告は受理しなかった。 原告は平成10年12月,o簡裁へ,被告を相手方として損害賠償を求める民事調停(同年(ノ)第□□□号,以下「本件調停」という。)を申立てたが,平成11年4月12日不成立に終わったので,同月20日,本訴を提起した。 2争点(1)原告の養鶏場建設計画に対する被告の行政指導ないし政策変更が違法で,被告に国家賠償法1条に基づく損害賠償責任が生じるか。 (原告の主張ー主位的請求原因)ア被告のAないし原告に対する行政指導(ア)平成2年ころ,被告がAに対し,養鶏場建設地として被告の村有地の利用をすすめ,主体的に本件入植を支援する旨の態度を表明したので,Aは被告での養鶏場の建設を決断し準備を行った。平成5年2月に村有地の払い下げ断念後も,被告は,Aの本件予定地での養鶏場建設計画に協力する姿勢であった。被告は,平成7年4月13日の行政指導でも,同意がとれない場合にはとれない理由及び交渉の経過等を記した書類の提出を指導しており,さらに平成9年6月の段階でも被告はAに不受理の理由として,農業公園計画と適合しないことを説明するのみで,同意書が本申し出の受理の要件であるとの行政指導をしなかった。 (イ)被告の政策変更とその後の行政指導a被告は,平成5年2月4日に開催されたg地区の臨時常会で,住民が同意しないことには村有地の払い下げはもとより本件入植ができないと認識し,g地区の住民に対して,反対がある以上村有地の払い下げも本件入植も許可しない旨約束した。 これにより,被告は,g地区の住民の同意がなければ本件入植そのものを許容しないという政策に変更したが,この変更をAに伝えなかった。のみならず,当時,被告の村長であったF村長は,Aが本件予定地で養鶏場を建設する計画を有していることを知った際にも,C課長に対して「民間同士の話し合いには口 に変更したが,この変更をAに伝えなかった。のみならず,当時,被告の村長であったF村長は,Aが本件予定地で養鶏場を建設する計画を有していることを知った際にも,C課長に対して「民間同士の話し合いには口を入れるな。」と命じ,本件予定地で行う場合であってもg地区の住民の同意がない場合には,養鶏場の建設が困難だという見込みをAに一切伝えなかった。 そのため,Aは,本件予定地に養鶏場を建設するため,住民への説明を継続的に行い,平成6年10月5日,原告を設立した。 bAは,平成7年1月に当時のF村長に面会して,協議の状況を説明したところ,同村長は「ここまで反対するのは野暮だ。県の農業会議に相談してみる。」と約束したので,Aは被告の対応を信頼して養鶏場建設の準備を進め,同年2月4日,本件予定地の賃貸借契約を締結した。 c原告は,平成7年3月10日,被告に対し用途変更の申出を行った。被告は原告に対し,同年4月13日付の被告の事務連絡文書(甲2号証)で様々な行政指導を行い,C課長は「法的には要求されていないが,村長が必要だと言うので」という理由で,g及びj両地区の住民の同意をとることをAに指導した。Aはこれを受けて詳細な造成図面の作成や糞尿処理計画等の詳細な説明書を被告に提出した。 Aは,g地区の住民と協議を重ねたが,同意を得ることができなかったので,その顛末を記載して申出を受理することを求める上申書を被告に提出した。 平成7年秋ころ,原告は話し合いを合理的に進めようと被告に対し調停を申し立てたが,被告はこの席上でも,住民の同意を得ること,同意書がとれない場合はその理由書を提出することとの指導を行った。 d平成9年4月のg地区の集会でも,住民全員からの同意が得られなかったため,原告は被告の指導に従って,住民との協議の顛末を記載した申入書(甲11号証)を作成し, 由書を提出することとの指導を行った。 d平成9年4月のg地区の集会でも,住民全員からの同意が得られなかったため,原告は被告の指導に従って,住民との協議の顛末を記載した申入書(甲11号証)を作成し,これを添付して本申し出を行ったが,B村長は,本件予定地が被告が計画している農業公園計画の中心地であることを理由に,本申し出を受理できないと表明した。 (ウ)同意書の提出を求める不合理性被告は,g地区の住民が養鶏場建設に反対する旨の署名を被告に提出したころから本件入植に消極的な態度を見せはじめた。平成6年10月10日の集会に参加していたのは,g地区の一般住民でなく,本件予定地の隣地,近隣のg地区の事業者であって反対理由の合理性もないのに,被告はこれを知りながら,原告に対しあえて同意書の提出を求めるという行政指導をした。 (エ)本申し出の不受理理由の不合理性a本件予定地は,養鶏場の建設計画を策定した時点では,j地区に属しており,最近になってg地区に編入された。また,本件予定地の水系はj地区に属しg地区には影響しないし,g地区の一番近い家でも本件予定地から2キロメートルも離れている。当時,j地区の住民は同意していたのに,被告はg地区の住民の不同意を問題として不受理判断をした。 b被告の農業公園計画は何ら具体化されていなかったのに,B村長は,農業公園計画を不受理の理由として説明しており,不受理の理由が変遷している。 イ被告の行政指導の違法性(ア)信義則違反被告の行政指導は,一貫性がなく,信義則に反し違法である。 被告は,Aを一旦誘致しながら本件村有地の売買契約を撤回し,その後,Aが村有地以外で鶏舎を建設することに一旦同意して前記のとおり様々な行政指導を行った。かかる状態を基礎とすれば,被告は,近隣住民の同意が要件である旨の説明を遅くとも本件村有地の売 を撤回し,その後,Aが村有地以外で鶏舎を建設することに一旦同意して前記のとおり様々な行政指導を行った。かかる状態を基礎とすれば,被告は,近隣住民の同意が要件である旨の説明を遅くとも本件村有地の売却を断念した平成5年までに行うべきであったのに,説明をせず,はっきりした理由を示すことなく本申し出を受理しないことで原告の用途変更手続きに協力せず,原告の養鶏場の建設計画を頓挫させた。 このように,近隣住民の同意が要件である旨の説明をせずに一貫しない行政指導をした被告の行為は,信義則に反し違法である。 (イ)条例違反被告の平成5年2月の政策変更後の原告に対する行政指導及び一連の対応は,h村行政手続条例(甲5号証,以下「被告条例」という。)33条及び5条に違反し,社会相当性を逸脱していて違法である。 被告は,平成5年2月のg地区の集会で,Aに対する従前の政策を変更したにもかかわらず,Aに対しg地区の住民の同意が必要条件であることを説明せず,同意がとれない場合であっても申出を受理する余地がある旨の被告の政策とは異なる行政指導を,その後の平成7年4月13日などに行っている。 被告が本申し出の受理にはg地区の住民の同意が必須の条件であることを明言しなかったことは,少なくとも被告条例が施行された平成9年1月1日以降においては,当該行政指導の趣旨及び内容を明確に示すことを求めた被告条例33条,申請について定めた同5条2項,3項の趣旨に反する。 また,被告条例施行前であっても,政策の変更を前提とした行政指導をせずにそれとは相容れない行政指導をすることは許されず,とりわけ本件においては,被告がAに企業誘致を勧誘してきたこと,本件入植の実現のために被告が見学会の開催のアドバイスをはじめとする相当の支援を行ってきたことに鑑みれば,被告の行政指導は社会相当性を逸脱して 本件においては,被告がAに企業誘致を勧誘してきたこと,本件入植の実現のために被告が見学会の開催のアドバイスをはじめとする相当の支援を行ってきたことに鑑みれば,被告の行政指導は社会相当性を逸脱している。 (ウ)比例原則及び法の下の平等違反被告の行政指導は,比例原則及び法の下の平等に反し,違法である。 被告の行政指導は,g地区の住民全員の同意をとることを求める点で,隣地など利害関係人の承諾をとることを求めた愛知県農地林務部による行政指導よりも厳しい内容となっている。被告が愛知県農地林務部の行政指導を誤解して原告に対してg地区の住民全体の同意を求めていた場合は,他の申出人と比較して原告に不利な扱いをしている点で,比例原則及び法の下の平等に反し,違法である。 ウ被告の平成5年2月の政策変更は,Aとの信頼関係を違法に侵害した。本件は,最高裁昭和56年1月27日判決(民集35巻1号35頁,以下「56年判決」という。)が,行政と私人間の信義則違反を理由として行政主体が私人に対し損害賠償責任を負う場合の基準としてあげた3要件にほぼあてはまる。そして,政策転換をAに説明しなかったことにより,政策転換後に原告に損害を被らせたという点で,単に政策転換した以上にAの信頼を侵害しており,56年判決の事例と比較しても違法性が高い。 エ本申し出の不受理は条例違反被告が本申し出を不受理とすることは,「行政指導に携わる者は,その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない。」と規定する被告条例30条2項に反し,違法である。 (被告の主張)ア原告の前記主張はいずれも否認する。本件農業振興事業は愛知県が主体であって,その推進は県の指導要領に基づいて行われた。被告は,そもそも本件農業振興事業として,茶と花卉園芸を主体に考えていたのであり,予 告の前記主張はいずれも否認する。本件農業振興事業は愛知県が主体であって,その推進は県の指導要領に基づいて行われた。被告は,そもそも本件農業振興事業として,茶と花卉園芸を主体に考えていたのであり,予め養鶏業開設のためAを特定して勧誘したものではなく,行政主体としてAの養鶏事業の誘致を決定していない。 被告は当初から地元住民の意向を尊重しており政策変更はしていない。同意書がとれない場合にその理由を説明した文書の提出を要求したのは,あくまでも地元住民の真意を知ることが重要であったからである。 また,被告は,Aに対し,部落集会に出席し説明の機会を与え,地元住民の同意が必要な旨を指導してきたから,Aは地元住民の同意が不可欠であることを十分認識できたはずである。Aが,前件調停でo簡裁に提出した「事業計画の説明及び交渉の経緯」(乙1号証)によれば,A自身,地元住民の同意が必要であることを十分認識していたことは明らかである。 イ不受理に至る経緯Aに対するg地区の地元住民の対応は,平成4年8月13日の定例会では「一応反対とし,どうしても受入れの場合は誓約条件を交換する」との意向であったものが,順次反対の意向が強まった。平成6年8月13日には,C課長がAに対し利害関係者の承諾が必要であることを行政指導したにもかかわらず,同年10月10日の集会で,Aが「地域の同意がなくとも何ら法的には問題なく入植できる」と発言したため紛糾し,出席者全員が反対の意向を示した。そして,平成7年4月25日,Aが地元のGに対して脅迫的態度に出た旨の報告を受け,被告に対して絶対反対の「嘆願書」が提出された。 このように,説明会におけるAの態度・背信行為が地元住民の反対を生み,同意を得られなくなって,本申し出の不受理となった。Aは,地元住民の意向を無視して,平成6年10月,原告を設立 書」が提出された。 このように,説明会におけるAの態度・背信行為が地元住民の反対を生み,同意を得られなくなって,本申し出の不受理となった。Aは,地元住民の意向を無視して,平成6年10月,原告を設立して,平成7年2月,本件予定地の地主と賃貸借契約を締結した。原告の本申し出は,反対意見があっても合理的な理由がなければ申立を通すべきであるとの独断でなされたものである。 ウ被告が地元住民の同意を要求したのは,愛知県の指導を受けてのものである。被告の農業振興事業は,地元住民の理解と協力なしでは成り立たず,農振法11条も地元住民の意思を重視した規定を置いているから,地元住民の同意書を必要とする行政指導は合理的な根拠がある。 被告のB村長は,不受理の理由として,平成9年6月ころ,被告役場で,Aらに対し,以前もg地区上流で養豚による畜産公害があったこと,本件予定地の場合もj地区の下流にg地区があって同じ川の水がg地区に流れること,そのため,本件予定地への入植を受け入れるとg地区とj地区の争いが生じ行政上支障があることを説明した。 被告の不受理の理由はあくまでも地元住民の反対であり,農業公園計画とは関係ない。 エ被告の行政指導に違法性は認められない。 (ア)前記のとおり,被告は,当初から地元住民の意向を尊重しており,政策変更はしておらず,また,原告も地元の同意が必要であることを十分認識していたから,被告の行政指導は,信義則に反せず,社会相当性も逸脱していない。 (イ)被告の行政指導に比例原則及び法の下の平等違反はない。 本件農業振興事業は農業の活性化を目的とし,農業の健全な発展と優良の農地の保全を図るために策定されたものであるから,地域農林家と営農者との共存共栄が必須の要件であり,地域住民及び営農者等の理解と協力なしでは成り立たない。特に畜産公害が懸念される 健全な発展と優良の農地の保全を図るために策定されたものであるから,地域農林家と営農者との共存共栄が必須の要件であり,地域住民及び営農者等の理解と協力なしでは成り立たない。特に畜産公害が懸念される事業については,その影響を受ける隣地住民のみならず広く地域住民の同意が不可欠である。本件入植も,畜産公害が騒がれていた時期でもあってg地区住民が非常に神経質になっていたため,被告としては,隣地ないし利害関係人だけでなく住民全体の同意を得ることが,地域住民の利益を守るのみならず原告の将来の事業発展にも必要不可欠と判断した。 以前,本件予定地と同じ地区に養豚業者が養豚場を建設する際にも,住民の代表者たる区長が,「地元の承諾書」(乙7号証)を作成しているから,原告にも同様に地元住民の承諾書を求めることがむしろ比例原則に合致する。 このように,被告は,愛知県の指導を誤解したのではなく,原告の事業の近隣部落民への影響を配慮して,現実に対応した判断を行っていたから,比例原則にも法の下の平等にも反しない。 (ウ)原告が問題とする被告の行政指導は,被告条例制定以前の問題であるので,遡及効がない限り,被告条例を根拠に違法性を主張できない。 被告は,平成3年から,地元の住民の同意が必須の要件であることを具体的かつ明確にAに明示してきており,被告条例制定以前にもその趣旨に沿った行政指導をしてきた。 また,被告条例30条2項の「不利益な取扱い」とは,当該者が行政指導を受ける以前には得られていた利益を損なわしめ,またはそれまで被っていなかった不利益を与えることを制裁的な意図をもって行う行為をいうのであり,要件を欠いた本申し出の「不受理」とは趣旨を異にする。 (2)原告は,憲法29条3項に基づく損失補償請求権を有するか。 (原告の主張ー予備的請求原因)ア法令に補償規定が存在し 行う行為をいうのであり,要件を欠いた本申し出の「不受理」とは趣旨を異にする。 (2)原告は,憲法29条3項に基づく損失補償請求権を有するか。 (原告の主張ー予備的請求原因)ア法令に補償規定が存在しない場合であっても,行政の行為によって特別の損害を被った者は直接,憲法29条3項に基づいて損失の補償を請求できる(最高裁昭和43年11月27日大法廷判決・刑集22巻12号1402頁参照)。 イ原告は,本申し出の不受理により,養鶏場建設に向けて投下した資金という財産権を侵害された。 被告から誘致の勧誘を受け,その行政指導に従って養鶏場建設の準備行為を行い資金を投下した原告の地位を前提とすれば,原告は,農振法による開発行為の規制を受ける地権者の土地所有権に対する制限以上に正当な経済的利益や投下資本の回収の利益を有する者であって,被告の行政指導や農業政策の変更により侵害された原告の経済的利益は,農振法の規制により不利益を被る地権者と比較して明らかに個別的,具体的なものである。 本件における憲法29条の「財産権」の内容は,原告が養鶏場の建設に向けて投下した資金であるが,この額は社会通念上受忍限度内のものとはいえず,行政の行為により被った特別の損害である。 ウしたがって,仮に被告の行政指導や農業政策の変更が違法でないとしても,原告は,被告の農業政策の変更により農振法による用途変更が受けられなくなったことにつき,被告に対し,憲法29条3項に基づく損失補償請求権を有する。 (被告の主張)ア原告の前記主張は否認する。被告は,原告を特定して,本件養鶏施設建設事業の計画に賛同し,誘致の勧誘をしたのではない。 原告が養鶏場建設のための準備行為として多額の投資をしたとしても,これは被告の行政指導に従ってなされたものではなく,原告の独断によりなされたものにすぎない。 イ本 同し,誘致の勧誘をしたのではない。 原告が養鶏場建設のための準備行為として多額の投資をしたとしても,これは被告の行政指導に従ってなされたものではなく,原告の独断によりなされたものにすぎない。 イ本申し出の不受理理由は,あくまでも地元住民の同意が得られなかったことであり,被告に農業政策の転換の事実はないし,政策変更が不受理の理由でもない。 (3)原告の損害ないし損失(原告の主張)原告は,被告の行為により,次のアないしウのとおり合計3120万5000円の損害を被った。よって,原告は,被告に対し,3120万5000円及びこれに対する本件調停の呼出状が被告に郵送されて,被告が原告の損害を了知したことが明らかな平成11年1月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ア逸失利益2250万円本件予定地で農場を開設した場合,原告は1羽あたり年間300円程度の経常所得を得ることができたことはほぼ確実であるから(甲8号証の1ないし3),年間1500万円,1か月あたり125万円の経常所得を確保できた。 本件入植については,愛知県の農協の経済連や生協からも推進に対する要望があり,鶏卵を順調に販売することが可能であった。被告が農振法15条の5に基づく手続を開始した場合,原告は遅くとも平成10年5月には鶏卵の生産が可能であった。 したがって,原告の得べかりし利益として,平成11年10月まで18か月分の2250万円を原告の損害として請求する。 計算式300円×5万羽÷12×18=2250万円イ行政指導に従ったことによる損害440万円後記(ア)ないし(ウ)の合計457万5600円の内金440万円を請求する。 (ア)本件予定地の測量,造成図面の作成及び鶏舎の設計費用等原告は,H測量設計株式会社に測量及び造成図面の作成等を依頼し,合計3 (ア)ないし(ウ)の合計457万5600円の内金440万円を請求する。 (ア)本件予定地の測量,造成図面の作成及び鶏舎の設計費用等原告は,H測量設計株式会社に測量及び造成図面の作成等を依頼し,合計313万5000円を支出した(甲7号証の1,2)。 (イ)鶏舎の開設準備費用原告は,本件予定地の地主に役員報酬名目で地代を平成7年10月20日に48万円,平成8年11月25日に48万円の合計96万円支出した。原告は,その他に,平成7年6月16日に本件予定地の草刈り作業の費用として4万5000円を,平成8年11月25日に交渉等の会食費用として3万5600円をそれぞれ支出した。 したがって,原告は,開設準備費用として少なくとも合計104万0600円を支出した。 (ウ)被告との交渉に要した弁護士費用原告は,被告との交渉に要した弁護士費用として合計40万円を支出した。 ウ弁護士費用430万5000円本訴遂行に関し,原告が日弁連の規定により支払いを要する弁護士費用(被告の主張)ア原告の前記主張は否認する。 イ原告が主張する損害ないし損失は,原告自らが招いたものである。 被告は,当初から地元住民の意向を尊重し,その旨を指導してきたから,原告も地元の同意が必要であることを十分認識していたはずであるのに,g地区の同意が得られなかったにもかかわらず,原告を設立して本件予定地の賃貸借契約を締結し,用途変更の申出を行ったものである。したがって,原告が養鶏場建設のための準備行為に関し多額の投資をしたとしても,これは,原告が同意を得る見込みがないことを承知の上で,反対意見があっても合理的な理由がなければ本申し出を通すべきであるとの独断により,自らの営利を目論み先走った結果である。 第3当裁判所の判断1本申し出の不受理に至る経緯当事者間に争いがない事実と甲1号証の1ない ても合理的な理由がなければ本申し出を通すべきであるとの独断により,自らの営利を目論み先走った結果である。 第3当裁判所の判断1本申し出の不受理に至る経緯当事者間に争いがない事実と甲1号証の1ないし47,甲2,3,6,10ないし12号証,乙1ないし5,8,9号証,証人C,同Dの各証言,原告,被告各代表者尋問の結果,及び後記各証拠,並びに弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 (1)昭和58年1月,被告に対し,パイロット地区の開発事業に関する会計検査院の検査が行われ,その結果,被告は荒廃地の解消を要求され,以後毎年農地開発事務所から解消計画及びその実績書の提出が求められた。被告は,荒廃地解消策の1つとして,愛知県l事務所,愛知県農業会議,愛知県農地開発事務所,h村議会等の関係機関に,パイロット地区への入植希望者の紹介を依頼し,村有地,私有地を問わず入植を期待していた。しかし,茶栽培等を志して被告を訪問する者はいたが,入植まで決意する者はいなかった(乙4号証,証人C)。 (2)平成元年ころから,Aは,養鶏施設の建設地を探し,愛知県m村や同c町の町村役場に赴き,建設用地や建設に伴う要綱等についての情報を収集していた。Aは,被告の村役場を訪問し,当時のF経済課長から被告には養鶏場の建設についての指導要綱がないとの説明を受けて,養鶏場の建設用地として被告に着目するようになった。 その後,Aは,被告地内に在住するI(現在,原告の取締役。)に相談したところ,被告で村有地の払い下げを受けられるかもしれないとの話を聞いた。そこで,F課長に話を聞いたところ,「パイロット地区の造成事業で村有地が余っていて困っている。ぜひ使ってほしい。」と言われ,平成2年7月ころ,本件村有地を紹介された。この際,本件村有地の隣接地である本件予定地も紹介されたが, ところ,「パイロット地区の造成事業で村有地が余っていて困っている。ぜひ使ってほしい。」と言われ,平成2年7月ころ,本件村有地を紹介された。この際,本件村有地の隣接地である本件予定地も紹介されたが,Aは本件村有地の方がよいと判断し,以後,本件村有地の払い下げについて被告と具体的な交渉を開始した(甲3号証,原告代表者)。 被告は,パイロット地区への入植希望者がなかなかいない中,Aがかなりの面積を使用する計画であったことから,被告の議会にも相談した結果,本件村有地を養鶏場用地としてAに使用してもらおうということになった(乙4号証,証人C)。 被告は,愛知県農地林務部の指導要綱に,原則として地元の同意をとる旨記載されていたこともあり,Aの養鶏場建設に関して,当然,地元であるg地区の住民の同意をとる必要があると考えた。そして,同意をとるために,以後,被告が主導して,本件入植に関してg地区で説明会を行ったり,養鶏場の見学会を開催したりした(甲3号証,乙1,4号証,証人C,同D)。しかし,被告は,Aに対し,愛知県農地林務部の指導要綱についての説明や地元の同意がなければ用途変更の申出は受理できないとの指導は行わなかった(証人C)。 (3)平成3年春ころ,F課長が被告村長に就任し(甲3号証),同年6月,Cが経済課長に就任した。 同年5月から平成4年8月にかけて,被告の経済課,g地区の役員及び住民,議員等が出席して複数の養鶏場への見学会が数回開催された(甲3号証,乙1,5,9号証,原告代表者,証人C,同D)。 平成4年7月23日,本件入植に関する関係者への説明会が開催され,C課長及びAが説明した(乙9号証)。以後,g地区の定例会で,F村長,J村会議長,C課長及び環境課長から本件入植に関する依頼説明がなされたが,g地区としては,一応反対との意見が多かった(乙5 され,C課長及びAが説明した(乙9号証)。以後,g地区の定例会で,F村長,J村会議長,C課長及び環境課長から本件入植に関する依頼説明がなされたが,g地区としては,一応反対との意見が多かった(乙5,9号証)。 平成5年2月4日,被告のF村長,J村会議長,C課長及び環境課長が出席してg地区の臨時常会が開かれ,本件村有地の払い下げ及び本件入植について再度依頼がなされたが,g地区としては7割が反対しているため議会に報告して入植取消を求めるとの結論となり(乙9号証),この席上,F村長は,g地区の住民に対し,地元住民の反対がある以上,本件村有地の払い下げや本件入植を認めないと約束した(甲3号証,乙1号証,証人C)。F村長は,本件村有地でのAの養鶏場建設が不可能となった旨を議会に報告し,Aに対する本件村有地の払い下げの計画は破談となった(乙4号証)。 (4)そのため,Aは,Iと連絡を取りながら本件予定地に養鶏場を建設することを検討した結果,平成5年2月下旬ころ,本件予定地を賃借して養鶏場を建設することを決意し,F村長とC課長に報告したところ,F村長は「頑張って下さい。」と言った。 Aは,村有地払い下げの経過の轍を踏んではいけないと思い,地域住民の同意が必要かを被告に確認した。これに対し,C課長は,本件予定地は同じg地区内にあって本件村有地から数百メートルしか離れていないため,少なくともg地区の住民に反対されることは容易に予測がつくと考えたが,民間同士の話し合いには口を入れるなとF村長から忠言されていたため,私有地であれば被告を介さず民間同士で話し合いをすることは自由だという趣旨で「私有地だからいいだろう。」「自由に話し合ってください。」と答えた。しかし,Aは,この回答を私有地であれば地主が同意すれば養鶏場の建設は問題ないという意味であると理解した( ことは自由だという趣旨で「私有地だからいいだろう。」「自由に話し合ってください。」と答えた。しかし,Aは,この回答を私有地であれば地主が同意すれば養鶏場の建設は問題ないという意味であると理解した(甲3号証,乙1,4号証,証人C)。 (5)平成5年3月ころ,C課長はAに対し,本件予定地に養鶏場を建設するには,g及びj両地区の了解をとるよう指導したが,了解が必ず必要とまでは言わなかった(乙1号証,証人C)。 同年4月,Aは,j地区の常会に出席して養鶏場建設についての説明を行ったところ,特に異議もなく承諾された(乙1号証)。 同年6月20日,j区長とIがg区長を訪れ,本件入植の説明と部落への取り纏めを依頼したが,同月25日のg定例会で本件入植に対する反対決議がなされた(乙9号証)。 同年7月,Aは,養鶏が茶栽培に及ぼす影響について,農林水産省茶業試験場等で取材を行い,同年9月,茶業組合の関係者らと話し合いを持った(乙1,5,9号証)。同年9月,10月のg地区の定例会で本件入植について,さらに検討された(乙9号証)。 (6)平成6年8月13日,C課長はAに対し,用途変更の申出,給水計画,排水計画,資金計画及び地元との協定の締結の時期等について指導し,また利害関係者の承諾が必要である旨指導を行った(乙1号証,証人C)。 同年10月5日,Aは,本件予定地の所有者を含む7名を取締役とし,自らを代表取締役として原告を設立し,その旨,被告に報告した(甲1号証の6,原告代表者)。 同年10月10日,A,本件予定地の所有者,g区長,副区長,村議,茶業組合,本件予定地近隣の事業者ら関係者との間で話し合いが行われた。Aは,現地見学の結果や調査データ等について説明したり,万一の事故に備えて供託金を積む提案をしたが,本件入植に対する強い反対意見が出され,話し合いは紛糾 隣の事業者ら関係者との間で話し合いが行われた。Aは,現地見学の結果や調査データ等について説明したり,万一の事故に備えて供託金を積む提案をしたが,本件入植に対する強い反対意見が出され,話し合いは紛糾した(甲3号証,乙1,9号証,原告代表者)。 同年12月10日,再び関係者による話し合いが持たれたが,本件入植に対する同意は得られず平行線であった(甲12号証,乙9号証)。 (7)ア平成7年2月4日,原告は,K,L,Mから本件予定地を賃借し,鶏舎建築準備を開始して養鶏場建設の準備に着手した。Aは,本件予定地の賃貸借契約を締結したことを被告に報告した(甲1号証の4,5,甲3号証,証人C,原告代表者)。 同年2月から3月にかけて,被告の役場等で,j地区の代表者,本件予定地の所有者,g地区の代表者らが本件入植について数回話し合いを持ったが,g地区の不同意との総意は変わらなかった(乙9号証)。 イ平成7年3月10日,Aは,C課長から作成するように指導された本件予定地の造成図面及び鶏舎の設計図面を添付して,用途変更の申出書を被告に提出した(甲3号証,原告代表者)。 被告は,原告の申出書を愛知県l事務所と精査した結果,書類等の整備が必要であったため,同年4月13日付事務連絡で,原告に対し次のとおり行政指導を行い(以下「本件行政指導」という。),前記申出書を返戻した(甲2号証,証人C)。 ①10万羽を5万羽に縮小して変更すること②造成計画を明確にすること③一般車両の交通に対する衛生上の対策及び鶏舎から排出される埃対策を施すこと④隣地の同意をとること⑤g及びj地区の同意をとること(とれない場合は,とれない理由及び交渉の経緯等を記した書類を添付すること)⑥計画平面図に緑地を明確にすること⑦n川沿岸水質保全対策協議会(以下「n水協」という。)の同意書を添付するこ 意をとること(とれない場合は,とれない理由及び交渉の経緯等を記した書類を添付すること)⑥計画平面図に緑地を明確にすること⑦n川沿岸水質保全対策協議会(以下「n水協」という。)の同意書を添付すること⑧糞尿処理計画及び排水計画を明確にすること⑨資金計画を明確にすることウ本件行政指導の⑤は,被告が,愛知県l事務所から,基本的には同意書が必要だが,どうしてもとれなければ同意書に代わるものでもいいと聞いたため行ったものである。Aは,これを受けて,同意書がとれない事例はままあるから,納得できる理由であれば計画を進めていけると理解した。ただ,同意がとれれば役場にも迷惑を掛けずに計画を進めることができると考え,以後,同意を得るため説明会を行った(証人C,原告代表者)。 エAは,本件行政指導に従って,詳細な造成図面の作成や糞尿処理計画,排水計画についての詳細な説明書を追完して,平成7年8月,申請許可の上申書とともに被告に提出した(甲1号証の15,17ないし20,25ないし35,甲12号証)。なお,本件行政指導の①及び⑦に対して,Aは,愛知県経済課との折衝により原告については10万羽の飼育が認められる見込みであること,及びn水協は被告が同意すれば同意書を提出する意向であることを確認し,その旨を被告に報告した(甲3,12号証)。 (8)g地区の住民であるDらは,本件入植に対し当初から反対との対応を示しているのに,Aや被告が理解してくれないと考え,平成7年5月2日,本件入植に対する反対の意思を表明する趣意書を,g地区の住民48名(但し,愛知県o市の住民3名及び同岡崎市の住民2名を含む)の署名を付して被告に提出した(甲1号証の46,甲3号証,乙5号証,証人D)。 平成7年9月1日,被告の村長がFからBに代わった。B村長は,本件入植の話を聞き,本件のように 同岡崎市の住民2名を含む)の署名を付して被告に提出した(甲1号証の46,甲3号証,乙5号証,証人D)。 平成7年9月1日,被告の村長がFからBに代わった。B村長は,本件入植の話を聞き,本件のように公害が懸念されるような事案については,地元の意見が非常に重要であるから,地元の同意がなければ行政としては当然認めることはできないと経済課の課員らに指示したが,この方針を原告に伝えるようには指示しなかった(乙8号証,被告代表者本人)。 (9)平成8年3月25日,g地区の定例会にA,弁護士,本件予定地の所有者が出席して協議を行ったが,g地区側からは,あくまで反対の意見が多かった(乙9号証)。 Aは,o簡裁での前件調停(平成7年(ノ)第○○号)と並行して,住民が懸念する埃対策を徹底するため,鶏舎の構造を密閉式に変更した(甲3号証)。 平成9年4月,g地区の集会で,Aは弁護士とともに,鶏舎の構造を変更して埃やにおいに対し科学的にも万全を尽くしたこと,鶏糞は肥料として加工し無償配布を検討していることを説明したが,同意は得られなかった。その後,g区長からもう集会には来て欲しくないとの連絡があったため,Aはこれ以上の話し合いによる歩み寄りは難しいと判断した(甲3,11号証)。そこで,原告は,同年6月25日,代理人弁護士に委任して,被告の指導に従ってg地区の住民と協議した顛末を記載した理由書を作成して,愛知県に対する事前協議の申出開始を求める申入書(甲11号証)とともに,被告に対し再び用途変更の本申し出(甲1号証の1ないし47)を行った。 同年7月ころ,Aが弁護士とともにB村長と面会したところ,B村長は,被告が畜産公害の問題で難儀をしてきた経緯を踏まえ,地元住民があくまでも反対の態度を表明している現状からは本件入植を受け入れることはできず,ましてg地区とj地区 にB村長と面会したところ,B村長は,被告が畜産公害の問題で難儀をしてきた経緯を踏まえ,地元住民があくまでも反対の態度を表明している現状からは本件入植を受け入れることはできず,ましてg地区とj地区の争いになっては今後の行政運営に大きな支障を来すことになるから,本申し出を受理できないと説明した。また,この際,B村長は,被告が平成8年9月から農業公園計画を策定していること,本件予定地がこの計画の中心地にあることを説明した(乙8号証,被告代表者)。 (10)平成10年4月,Aは,被告の顧問弁護士に有限会社A農場の閉鎖型鶏舎を見てもらい,埃やにおいの問題がないことを説明した。被告の顧問弁護士は,前記視察結果及び今後の方針を被告の経済課宛に報告し,その中で,g地区が原告からの協議会開催の申し入れを拒否した場合,同意書を添付しないまま,同意書不添付の理由書を作成して役場を通じて愛知県へ申立書を提出し,あとは愛知県の決定を見て対応するよう指示した(乙2,3号証)。 g地区の住民は,原告からの再度の協議会開催の申し入れを拒否し,被告はその後も本申し出を受理しなかったため,原告は本件予定地に養鶏場を建設できなかった(甲3号証)。 2争点(1)(被告に対する国家賠償請求)について(1)本件における被告の行政指導の性質行政指導とは,法令の根拠の有無にかかわらず,行政主体が一定の行政目的を達成するため,行政客体の一定の行為(作為・不作為)を期待して,それ自体法的拘束力なく行政客体に直接働きかける行政作用の一種たる事実行為である。行政上の各種の申請において,申請前に行政指導を行い行政主体の意向に応じた申請書を提出させるというような,受理手続に至る前段階で行われるいわゆる事前指導は,一般に法的根拠があるものではなく,行政目的の実現又は促進のために言わば事実上の慣 指導を行い行政主体の意向に応じた申請書を提出させるというような,受理手続に至る前段階で行われるいわゆる事前指導は,一般に法的根拠があるものではなく,行政目的の実現又は促進のために言わば事実上の慣行としてなされているものと解されるが,行政の申請受理権限を背景としてなされる点で,国家賠償法1条にいう「公権力の行使」に当たると解するのが相当である。 愛知県知事の認可を受けた農地利用計画中の用途区分を変更するためには,被告の申請による愛知県知事の認可が必要であり,本件は,その前提となる,原告の被告に対する用途変更の申出の受理に関する被告の行政指導であるから,同様に「公権力の行使」に当たるといえる。 (2)行政指導の違法性原告は,地元の同意が要件である旨の説明をせずに一貫しない行政指導を行った被告の行為は信義則に反して違法であり,また,平成5年2月以後の被告の行政指導は被告条例33条及び5条に違反し,社会相当性を逸脱していて違法であると主張するので検討する。 ア本件における被告の注意義務の内容(ア)申請受理手続の前段階で行われる事前相談において公務員からなされる情報提供ないし教示は,申請受理権限を背景としていることから,一般私人によってなされる場合と異なり,相談者は特段の事情のない限り提供された情報を信用し,その教示内容に従って行動するのが一般である。そして,申請が受理されるか否かは,申請者にとって当該申請にかかる事業計画を推進するか否かを判断する上で極めて重要な意味を持つから,公務員による受理の要件や受理の見通しに関する情報は,申請者に正確である必要があり,国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務する公務員としては,正確な情報を提供すべき義務があるものといえる。行政手続法(平成5年11月12日法律88号。平成6年10月1日施行),及びこ 要があり,国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務する公務員としては,正確な情報を提供すべき義務があるものといえる。行政手続法(平成5年11月12日法律88号。平成6年10月1日施行),及びこれに基づき平成8年9月24日公布された被告条例5条では,申請により求められた許認可等の審査基準はできる限り具体的に定めるものとし,同条例33条では,行政指導に携わる者は相手方に対し当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならないと規定しているが(甲5号証),申請受理手続を担当する者から提供される情報が申請者にとって極めて重要であることを考慮すれば,これらの規定は,申請者に対する行政指導においては,審査基準やその内容を具体的かつ明確に示して行うことを改めて明文で定めた趣旨と解される。 そうすると,被告は,被告条例の制定の前後を問わず,受理の要件や見通しに関して申請者から相談を受けた場合は,申請者に対し,誤解を生じさせないように正確な情報を伝える義務を負うと解するのが相当である。 (イ)本件における原告にとって,用途変更の申出が受理されるか否かは,養鶏場の建設計画を進めるか否かを判断する上で,極めて重要な意味を持つものであるから,原告からの申出の受理手続を担当する者は,受理の要件やその見通しに関し,申出人である原告ないしAに対し,正確な情報を伝える義務を負うというべきである。 イ被告の注意義務違反(ア)乙8号証,証人Cの証言,被告代表者尋問の結果によると,被告は,愛知県の指導要領と関係なく,公害が懸念される入植については,村有地・私有地と区別なく,地元の同意書を必要と考えていたこと,Aの入植希望に対しても,被告が荒廃地解消策の一環として説明会や見学会を主導的に開催して地元の同意を得ようと努力していた事実,及びBが村長に就任した と区別なく,地元の同意書を必要と考えていたこと,Aの入植希望に対しても,被告が荒廃地解消策の一環として説明会や見学会を主導的に開催して地元の同意を得ようと努力していた事実,及びBが村長に就任した後も,本件入植に関しては,反対の理由に関係なく住民の同意がない以上は受理しない方針であった事実が認められる。 そうすると,Aが本件入植に関して相談を受けた当初から,被告は地元の同意を要件としていたものであるから,C経済課長を始めとする被告の担当者は,その要件を十分に把握し明確に情報提供すべき義務があったといえる。 なお,原告は,平成5年2月のg地区の臨時常会で,被告が地元の同意がなければ本件入植そのものを認めないとの方針に変更したと主張するが,前示のとおり,被告は当初から,住民の同意を本申し出受理の要件としていたから,被告の方針変更によるものではない。 (イ)これについて,被告は,平成3年から地元住民の同意が必須の要件であることを具体的かつ明確にAに示してきたと主張する。 しかし,甲2号証,乙8号証,証人Cの証言,原告,被告各代表者尋問の結果によると,被告は当初から,本件入植を積極的に推進する姿勢を示していて,Aが本件村有地の払い下げをg地区住民の反対により断念した後の平成5年2月ころ,本件予定地での養鶏場の建設計画につき地元住民の同意の要否を確認したのに対し,C課長は,「私有地だからいいだろう。自由に話し合ってください。」と曖昧な回答をしたにとどまった。また,原告設立後の平成7年2月ころ,C課長は,Aに本件予定地の造成図面や鶏舎の設計図面を作成するよう指導し,これを受けたAが図面を作成して同年3月10日に用途変更の申出を行ったのに対し,被告は,同年4月13日付のh村経済課長名の事務連絡による本件行政指導(甲2号証)で,「g地域及びj地域の同意書 導し,これを受けたAが図面を作成して同年3月10日に用途変更の申出を行ったのに対し,被告は,同年4月13日付のh村経済課長名の事務連絡による本件行政指導(甲2号証)で,「g地域及びj地域の同意書を取ってください。(取れない場合は取れない理由及び交渉の経緯等を記した書類を添付してください。)」と記載して,地元地区の同意書がなくても受理できる旨の指導を行った。そして,原告は,平成9年7月に初めて,被告のB村長から地元住民の反対意見を無視できず,g地区の同意が得られないまま本件入植を受け入れるとg及びj両地区の争いになるおそれがあるため本申し出を受理できないとの説明を受けた。以上の事実が認められ,平成9年7月以前に,Aないし原告が,被告担当者から本申し出受理には地元住民の同意が不可欠の要件であることを明確に説明された事実を認めるに足りる証拠はない。 そして,原告は,被告担当者による,原告設立前の平成5年2月の行政指導,原告設立後の平成7年2月ころの行政指導及び同年4月13日の行政指導を始めとする一連の行政指導(以下「本件一連の指導」という。)により,実際,g地区の住民の同意書がとれなくても納得できる理由があれば計画を進めていけると理解していたのであり,加えて,本件入植に反対意見を表明し続けてきたg地区の住民が,平成7年5月に至ってさらに反対の趣意書まで提出した事実をも考慮すれば,本件一連の指導を行った被告の真意に関係なく,被告は少なくとも外形的には同意がなくても受理できる旨の,被告の前記考えに沿わない指導を行っていたと認めるのが相当である。 (ウ)このように,被告の担当者によるAないし原告に対する本件一連の指導は,受理の要件やその見通しに関する情報を明確に伝えず,原告が受理を期待して養鶏場建設のための準備を行うに任せている点で,注意義務に )このように,被告の担当者によるAないし原告に対する本件一連の指導は,受理の要件やその見通しに関する情報を明確に伝えず,原告が受理を期待して養鶏場建設のための準備を行うに任せている点で,注意義務に違反したものと言わざるを得ず,これに反する被告の主張は採用できない。 ウ本件一連の指導を受けた原告の認識及びその対応(ア)甲3号証及び原告代表者尋問の結果によると,Aは,本件一連の指導を受けて,g地区の同意はとれた方がいいが不可欠の要件ではなく,最終的には被告が合法的に判断してくれ,反対の理由が合理的でなければ養鶏場の建設はできると認識し,それため,平成6年10月に原告を設立して,同7年2月に本件予定地の賃貸借契約を締結するとともに,g地区の同意書が得られれば役場にも迷惑をかけずに計画を進められると考えて,養鶏の茶栽培に対する影響を調査したり,g地区での説明会を行ったりしていた事実が認められる。 前示のとおり,Aは,g地区の会合でデータによる説明や万一の事故に備えての供託金を積む提案を行ったり,被告の行政指導に従って本件予定地の造成図面や鶏舎の設計図面を作成したり,調停と並行して鶏舎の構造を密閉式に変更したりして,g地区の同意をとろうと様々な努力をしてきたと認められるのであり,加えて,原告の施設は適当であるから同意が得られれば進出できたと思う旨の証人Cの証言を考慮すれば,Aが計画していた養鶏場の設備等には特に問題がなかったと考えられる。 そして,被告は,パイロット地区の有効利用に苦慮していた際にAから本件入植を持ちかけられ,当初は積極的にこれを推進する態度を示していた(甲3,10号証,乙4号証,証人C,同D,原告代表者)。また,Aは,近隣住民の同意がなくても畜舎を建築できた他の自治体の事例を確認したり,法的には必要がないということを調べていて( 度を示していた(甲3,10号証,乙4号証,証人C,同D,原告代表者)。また,Aは,近隣住民の同意がなくても畜舎を建築できた他の自治体の事例を確認したり,法的には必要がないということを調べていて(原告代表者),本件予定地で他の農用地利用の具体的な計画を策定している話やこれを前提とした行政指導を被告から受けていなかった(甲11号証,原告代表者)。g地区内でも,本件村有地や本件予定地は遊休地であるから,養鶏場が建築されれば雇用にも繋がるとして,Aの入植に賛成する意見の人も当初は存在し,g地区の反対は,あくまでg地区における代表者の意見を尊重した総意であって住民全員が反対しているとは限らなかった(証人D)。そして,被告における農業振興事業は愛知県が主体となって行うもので,受理するか否かは窓口である市町村が判断するが,最終的には愛知県の判断であり,したがって,被告の行政指導の根拠も愛知県の指導要綱に基づいているところ,愛知県の指導要綱には同意がなければ受理してはならないとまでは規定されていない(被告代表者)。 以上を総合考慮すると,被告による本件一連の指導を受けたAが,g地区の同意書がとれなくても被告が本申し出を受理してくれると期待したのもやむを得ないというべきである。 (イ)これに対し,被告は,Aにg地区の集会で説明の機会を与え,地元住民の同意が必要な旨を指導してきたから,Aは地元の同意が不可欠であることを認識できたはずであると主張する。 確かに,被告はAにg地区の集会での説明の機会を与えており,また,C課長は,平成5年3月ころAにg地区とj地区の了解をとるように指導し,平成6年8月13日には利害関係者の承諾が必要との指導を行っている(乙1号証)。しかし,証人Cの証言によれば,C課長は,平成5年3月の前記指導でもg地区とj地区の了解が必ず必 解をとるように指導し,平成6年8月13日には利害関係者の承諾が必要との指導を行っている(乙1号証)。しかし,証人Cの証言によれば,C課長は,平成5年3月の前記指導でもg地区とj地区の了解が必ず必要だとまでは言わなかったのであり,平成6年8月13日の前記指導で承諾を要求した「利害関係者」とは,g地区の住民全般でなく本件予定地に隣接する住民を意味すると認められるから,これらの指導によりg地区の同意が不可欠との受理の要件が明確に示されたとは認めがたい。また,前示のとおりC課長は,Aから地元の同意の要否を確認されても明確な回答をせず,平成7年4月13日の本件行政指導では同意がとれない場合は代用書面を提出する旨の指導を行っている(甲2号証)。 (ウ)以上によると,被告の本件一連の指導によりAが当然に地元の同意が不可欠であることを認識できたとまでは認められず,この認定に反する被告の主張は採用できない。 なお,証人Cの証言及び原告代表者尋問の結果によれば,Aは原告の設立及び本件予定地の賃貸借契約の締結について被告に連絡しており,被告はこれを知り又は知り得たのであるから,被告は,Aがg地区の同意がとれなくても受理してもらえると期待していることを十分認識できたと認められる。 エまとめ前示のとおり,被告担当者による原告ないしAに対する本件一連の指導は,受理の要件やその見通しに関する正確な情報を伝える義務に反しており,しかも,本件では,受理に関する被告の方針をAが誤解していることを被告が認識しうる状況にあり,また,本申し出の不受理の理由は結局,g地区の同意がないことのみである(証人C,被告代表者本人)。 そうすると,被告は,なおさらAの誤解を正すため地元の同意書がなければ本申し出を受理できないと明確に伝える必要があったと解される。ところが,被告担当者は, とのみである(証人C,被告代表者本人)。 そうすると,被告は,なおさらAの誤解を正すため地元の同意書がなければ本申し出を受理できないと明確に伝える必要があったと解される。ところが,被告担当者は,Aから同意の要否について確認されても,同意がなければ受理しないとの方針を伝えずにかえって誤解を生じさせるような指導を行い,また,従前の経緯からg地区の同意を得るのは難しいとの認識を有していたにも関わらず,平成7年4月13日付書面(甲2号証)を原告に交付して被告の方針に沿わない指導を行い,受理の見通しに関する正確な情報を伝えなかったのであり,そのため,Aは本申し出の受理を期待して本件入植に向けて様々な準備を行った。 したがって,前記注意義務に反した被告担当者の本件一連の指導のうちの本件行政指導は,そのなされた経緯,時期,程度,内容等からみて,違法と評価せざるを得ない。 (3)原告が主張するその他の違法性ア原告は,被告の行政指導が比例原則及び法の下の平等に反し違法であると主張する。 確かに,愛知県農地林務部の指導要綱は地域の同意がなければ受理してはならないとまで規定していない(被告代表者)ので,地元の同意がとれないことを本申し出の不受理の理由とする被告の対応は,愛知県の定める指導要綱よりも厳しいと言える。しかし,被告代表者尋問の結果によれば,被告は,畜産問題で難儀をしてきた経緯を踏まえ,公害が懸念されるような事業の入植については地元の意見が非常に重要であると判断して,同意がなければ受理しないとの対応を行ったものであり,ゴルフ場でも産廃施設でも全て地元の同意をとるよう指導しているのであるから,被告が他の申出人と比較して原告に対してのみ不利な扱いをしていたと認めることはできない。そもそも本申し出の受理については,被告の義務ではなく,これを受理して被告 をとるよう指導しているのであるから,被告が他の申出人と比較して原告に対してのみ不利な扱いをしていたと認めることはできない。そもそも本申し出の受理については,被告の義務ではなく,これを受理して被告が愛知県知事に用途区分の変更申請を行うかどうかは被告自身の判断に関わることであるから,愛知県農地林務部の用途区分の変更申請の受理の要件より厳しい要件を設けたとしても,法の下の平等に反するものでもない。よって,原告の前記主張は採用できない。 イまた,原告は,被告が平成5年2月に政策変更したことが原告との信頼関係を侵害して違法であると主張する。 しかし,前示のとおり,被告は当初から地元の同意が必要と考えていたと認められ,平成5年2月のg地区の集会で被告が政策変更したと認めるに足りる証拠はないから,原告の主張は採用できない。なお,最高裁判所昭和56年1月27日判決は,行政主体が行った行政指導自体の注意義務違反を問題とするものではなく,その後の政策転換により企業誘致をしないことを決定した場合の不法行為の要件を判断したものであり,前記のとおり,行政主体が行った行政指導自体に注意義務違反が認められる本件とは事例を異にするものである。 ウさらに,原告は,被告が本申し出を不受理とすることは,被告条例30条2項に違反して違法であると主張する。 被告条例30条2項は,行政指導に携わる者はその相手方が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な扱いをしてはならないと規定している(甲5号証)。 しかし,原告の本申し出を被告が受理しないのは,被告が受理の要件と考えているg地区の住民の同意を原告が得ることができず,被告としてはあくまでg地区の住民からの反対という現実を重視して本申し出を受理しなかったものと認められ,原告が被告の行政指導に従わなかったことを理由として被告が受 住民の同意を原告が得ることができず,被告としてはあくまでg地区の住民からの反対という現実を重視して本申し出を受理しなかったものと認められ,原告が被告の行政指導に従わなかったことを理由として被告が受理しなかったものとは認められないので,原告の前記主張は採用できない。 (4)被告の賠償責任以上によると,本件一連の指導のうち,原告設立後の平成7年4月13日付書面による本件行政指導は,地方公共団体である被告の公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うにつき負担する職務上の法的義務に違背して過失により行った違法な行政指導であると認められるから,被告は,国家賠償法1条1項に基づき,これにより原告が被った損害を賠償する責任がある。 3争点(2)(被告に対する損失補償請求)について(1)原告は,被告から誘致を受け,その行政指導に従って養鶏場建設の準備を行ったのに,被告の農業政策の転換のため農振法による用途変更が受けられなくなったとして,予備的に,養鶏場建設に向けた原告の投下資金につき憲法29条3項に基づく補償請求権を有すると主張する。 しかし,養鶏場建設に向けて原告が投下したと主張する資金は,原告が将来的に養鶏場を建設して鶏卵の生産及び販売事業を行い,これにより利益を得ることを見込んで行った事前の投資に過ぎないから,憲法29条3項の損失補償の対象とされるべき「財産権」に当たると認めることはできない。 (2)したがって,原告の予備的な損失補償の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 4争点(3)(損害)について(1)甲1号証の23ないし28,30ないし35,甲3号証,甲7号証の1,2及び原告代表者尋問の結果によると,原告は,被告の本件行政指導を受けて,用途変更の申出に必要な添付書類を追完し,そのための本件予定地の測量,造成図面の作成 ,30ないし35,甲3号証,甲7号証の1,2及び原告代表者尋問の結果によると,原告は,被告の本件行政指導を受けて,用途変更の申出に必要な添付書類を追完し,そのための本件予定地の測量,造成図面の作成費用等を負担し,そのため合計313万5000円を要した事実が認められ,これは原告の損害ということができる。 (2)原告は,養鶏場の開設準備費用として,そのほか,①原告の役員給料96万円,②交渉のための会食費用3万5600円,③本件予定地の草刈り費用4万5000円がかかったと主張している。 しかし,①原告の役員給料は,原告を法人として設立して活動をする以上,原告自身の経費として当然に必要とする費用であり,養鶏場の開設準備費用と認めることはできない。②交渉のための会食費用は,原告の主張する会食が養鶏場の開設準備のために必要な費用であったかどうか判然とせず,これを認めるに足りる証拠がない。③草刈り費用も,本件予定地の一般的な管理として必要な費用であり,養鶏場の開設準備のために必要な費用とは認められない。そうすると,これらを,被告の違法な行政指導と相当因果関係のある原告の損害と認めることはできない。 なお,原告は,被告との交渉に要した弁護士費用を別個に請求するが,弁護士費用については,後記(5)において,一括して考慮する。 (3)また,原告は,逸失利益も損害として主張するが,前示のとおり,本件において違法と評価されるのは,同意がなければ受理しないとの方針や受理の見込みに関する正確な情報を原告に伝えなかった被告の行政指導であって,本申し出を受理しなかった行為自体を違法と評価することはできない。 そうすると,仮に被告が適切な指導を行っていたとしても,地元の同意がとれない以上,原告が本件予定地に養鶏場を建設できなかった結果に変わりはないと解されるから,本件にお 違法と評価することはできない。 そうすると,仮に被告が適切な指導を行っていたとしても,地元の同意がとれない以上,原告が本件予定地に養鶏場を建設できなかった結果に変わりはないと解されるから,本件における被告の公務員による不法行為と原告の主張する逸失利益との間に因果関係は認められず,これを損害と解することはできない。 (4)過失相殺被告の原告に対する行政指導が注意義務に反した違法なものであったと認められることは前述したとおりであるところ,本件において被告から明確な過失相殺の主張はないが,前示のとおり,被告は自らの行政指導の違法性を否定し,原告主張の損害は原告自らが招いたものであるとの原告側の過失を主張しているから,これを考慮して民法722条2項に基づく過失相殺を行うのが相当である。そして,被告が原告に対し受理を確約したとは認められないこと,本件入植に対するg地区での反対意見は平成5年ころ以降次第に強くなり,Aもこれを認識していたと解されること(甲3号証,乙1号証),平成7年1月ころAや本件予定地の所有者らが見切り発車だと話していたこと(乙1号証)等を考慮すれば,g地区での反対意見が次第に強まる状況下で,本申し出が確実に受理されることを確認しないまま,養鶏場建設の準備行為に着手した原告にも落ち度があったと言わざるを得ない。 そうすると,前記損害の全てを被告に負担させるのは妥当ではなく,損害の公平な分担の見地から,その3割を相殺するのが相当である。 したがって,原告が被告に対し賠償請求できる損害額は,219万4500円となる。 計算式313万5000円×0.7=219万4500円(5)弁護士費用原告が被告に対し,被告の公務員による不法行為と相当因果関係のある損害賠償として求め得る弁護士費用としては,本訴提起前の交渉も考慮して,30万円が相当 ×0.7=219万4500円(5)弁護士費用原告が被告に対し,被告の公務員による不法行為と相当因果関係のある損害賠償として求め得る弁護士費用としては,本訴提起前の交渉も考慮して,30万円が相当である。 (6)まとめそうすると,原告が被告に請求できる損害は,合計249万4500円となる。 5結論よって,原告の被告に対する主位的請求は,249万4500円及びこれに対する損害発生後であることが明かな平成11年1月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるから認容し,その余の主位的請求,及び予備的請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条を,仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官水谷正俊裁判官佐藤真弘裁判官松田敦子(別紙省略)

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