令和3年12月15日判決言渡令和2年(行ケ)第10100号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和3年10月4日判決 原告有限会社オオタニメデイカルサプライ 同訴訟代理人弁護士遠藤直哉同村谷晃司同中村智広 被告リプロジェネティクスリミテッドライアビリティーカンパニー 主文 1 特許庁が取消2017-300733号事件について令和2年7月20日にした審決のうち,「登録第5834594号商標の指定役務中,第44類「全指定役務」については,その商標登録は取り消す。」との部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実 ⑴ 被告は,アメリカ合衆国ニュージャージー州に所在する会社である(甲8, 47)。 ⑵ 原告は,不動産の賃貸及び管理,給食業,これらに附帯する一切の事業を目的とする,昭和53年(1978年)9月30日に設立された特例有限会社であり,その取締役はA である(弁論の全趣旨)。原告とは別の会社である有限会社REPROGENETICSは,遺伝子の検査,医療及び健康 に関するカウンセリング,これらに附帯する一切の業務を目的とする,平成16年(2004年)8月20日に設立された特例有限会社であり,その取締役は,A と,被告の代表者であったB(甲8,47)である(甲9)。Aは,大 ング,これらに附帯する一切の業務を目的とする,平成16年(2004年)8月20日に設立された特例有限会社であり,その取締役は,A と,被告の代表者であったB(甲8,47)である(甲9)。Aは,大谷レディスクリニックを運営する産婦人科医であり,C はA の子であり,医師である(甲8,10,47,51,52)。 2 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告は,次の商標(以下「本件商標」といい,その商標権を「本件商標権」という。)の商標権者である(甲1)。 登録番号第5834594号登録出願日平成27年(2015年)9月18日 登録査定日平成28年(2016年)2月8日設定登録日平成28年(2016年)3月18日登録商標 「 Reprogenetics」(標準文字)商品及び役務の区分第42類指定役務細胞遺伝子検査 商品及び役務の区分第44類指定役務医療を目的とした遺伝子検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリングなお,本件商標の出願人及び設定登録時の権利者は有限会社REPROGENETICSであり,本件商標権は,平成28年(2016年)6月17 日にC に移転され,平成29年(2017年)6月20日に原告に移転され た(甲1)。 ⑵ 被告が,パリ条約の同盟国,世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利を有していることを主張するために提示した商標は,別紙1のとおりである(本件審決において,別紙1記載1ないし11の各商標は,その番号により,例えば「引用商標1」などといわれて おり,それらをまとめて「引用商標」といわれていたことから,本判決でも同様とする。)。 ⑶ 被告は,平成29年(20 ないし11の各商標は,その番号により,例えば「引用商標1」などといわれて おり,それらをまとめて「引用商標」といわれていたことから,本判決でも同様とする。)。 ⑶ 被告は,平成29年(2017年)9月26日,商標法53条の2に基づいて本件商標の商標登録取消審判を請求した。 特許庁は,上記取消審判を取消2017-300733号事件として審理 し,令和2年(2020年)7月20日,結論を「登録第5834594号商標の指定役務中,第44類『全指定役務』については,その商標登録は,取り消す。その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。審判費用は,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同月30日,原告 に送達された。 ⑷ 原告は,令和2年(2020年)8月26日,本件審決のうち,「登録第5834594号商標の指定役務中,第44類『全指定役務』については,その商標登録は取り消す。」との部分を取り消すことを求めて本件訴訟を提起した。 3 審決の理由の要旨審決の理由は別紙審決書(写し)記載のとおりであり,その要旨は,①被告は,本件商標の登録出願時には,パリ条約の同盟国であるアメリカ合衆国において商標権に関する権利(引用商標6)を有していたと認められる(本件審決第5の1⑴キ),②本件商標と引用商標6とは類似の商標と判断するのが相当 である(本件審決第5の1⑵ウ),③本件商標の指定役務中,第44類「医療を 目的とした遺伝子検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」と引用商標6の指定役務とは類似の役務と認められる(本件審決第5の1⑵エ),④出願人は,本件商標の出願の日前1年以内に,被告の代理人の地 た遺伝子検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」と引用商標6の指定役務とは類似の役務と認められる(本件審決第5の1⑵エ),④出願人は,本件商標の出願の日前1年以内に,被告の代理人の地位を有していた者と見て差し支えない(本件審決第5の2⑵イ),⑤本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでな されたものであると認められる(本件審決第5の2⑶ウ)というものである。 第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(「被告の承諾がない」という判断の誤り)⑴ 本件審決の判断本件審決は,被告とA(以下「A」という。)が,2004年(平成16年) 8月27日付けで合弁契約(以下「本件原契約」という。)を締結し,2008年(平成20年)3月10日付けで,それを修正する修正合弁契約(以下「本件修正契約」という。)を締結したとし,本件修正契約の契約書に,知的財産権について,被告は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する旨記載されていること(本件 審決第5の2⑴エ(ア),(イ))を根拠として,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでなされたものであると認められると判断した(本件審決第5の2⑶ア~ウ)。 しかし,本件審決の上記判断は誤りである。その理由は,後記⑵以下のとおりである。 ⑵ 知的財産権の帰属関係ア本件原契約の締結日本件修正契約の契約書には,被告とA との間で,2004年(平成16年)8月27日付け合弁契約が締結されたと記載されているが(甲8),この日付は誤記であり,本件原契約は,同年7月11日に締結されたもので ある(甲47)。 ,2004年(平成16年)8月27日付け合弁契約が締結されたと記載されているが(甲8),この日付は誤記であり,本件原契約は,同年7月11日に締結されたもので ある(甲47)。 イ本件原契約の定め本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」において,商標を含むすべての知的財産権は,被告とA の共有であることが定められており,同項の「D.」において,この知的財産権を保護し,完全なものにするために行動することがA に許諾されていることが記載されて いる(甲47)。 ウ本件修正契約の定め本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の「A.」において,被告は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的財産権の所有権を保持すると定められているが,ここにいう「合弁における 知的財産」は,本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」において,被告とA の共有とされた,商標を含む全ての知的財産権を指す。そして,本件修正契約の上記の定めは,「合弁における知的財産」から派生する知的財産権を被告が単独で有すると定められているにとどまり,被告とA の共有に属する「合弁における知的財産」を,被告が単 独で有するように修正したものではない。現に,本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の「C.」には,契約の当事者は,共有に係る知的財産権を保護し,完全なものとするために行動することが定められている。 そのため,本件修正契約は,被告とA との間で共有に属する商標を保護するために,A が代表者を務める有限会社REPROGENETICSが 本件商標の登録出願をすることを否定するものではない。 エ判断の誤りの有無前記ウのとおり,本件修正契約は,「 保護するために,A が代表者を務める有限会社REPROGENETICSが 本件商標の登録出願をすることを否定するものではない。 エ判断の誤りの有無前記ウのとおり,本件修正契約は,「合弁における知的財産」から派生する知的財産権を被告が単独で有すると定められているにとどまり,被告とA の共有に属する「合弁における知的財産」を,被告が単独で有するよう に修正したものではない。それにもかかわらず,本件審決が,本件修正契 約の契約書に,知的財産権について,被告は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する旨記載されていることを根拠として,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでされたものであると認められると判断したのは誤りである。 ⑶ アメリカ合衆国法の先使用主義による先使用関係本件修正契約20条は,アメリカ合衆国法及びニュージャージー州法を準拠法とする旨定める。そして,それらの法律によれば,商標権は,先使用主義により,使用によって権利が発生する。A は,本件修正契約7条「A.」において,商標の使用を許諾されているから,被告は,A が我が国において商 標を出願することを許諾する意思を有していたといえる。 したがって,本件審決が,本件商標の登録出願は,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでされたものであると認められると判断した(本件審決第5の2⑶ア,ウ)のは誤りである。 2 取消事由2(「正当な理由がない」という判断の誤り) 本件審決は,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでされたものであると認められると判断した(本件審決第 な理由がない」という判断の誤り) 本件審決は,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでされたものであると認められると判断した(本件審決第5の2⑶イ,ウ)。 しかし,そもそも前記1で主張したとおり,本件では承諾を得て出願した場合に該当するので,正当な理由があることは明らかである。 また,本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」及び本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「C.」においては,被告とA は,合弁事業により創設された共有に係る知的財産権を保護するために行動する旨定められているところ,A は,第三者に 「 Reprogenetics」(標準文字)という商標が取得されることを防ぐために,A が代表者を務め る有限会社REPROGENETICSにより本件商標を登録出願したもの であるから(甲10),本件商標の登録出願には正当な理由がある。 したがって,本件審決が,本件商標の登録出願は正当な理由がないのになされたものであると認められると判断したのは誤りである。 3 取消事由3(「代理人若しくは代表者」の判断の誤り)本件審決は,本件商標の出願人(有限会社REPROGENETICS)は, 本件商標の出願の日前1年以内に,被告の代理人の地位を有していた者と見て差し支えない(本件審決第5の2⑵)と判断した。 しかし,商標法53条の2の趣旨は,輸入商品の代理店等が,当該輸入商品に使用されている商標を必ずしも輸入先のメーカーや商社の承諾を得ないで登録出願する場合において,公正な国際取引を確保することにある。本件商標 は,本件原契約及び本件修正契約により被告とA の共有とされた商標権を保護するために登録出願され や商社の承諾を得ないで登録出願する場合において,公正な国際取引を確保することにある。本件商標 は,本件原契約及び本件修正契約により被告とA の共有とされた商標権を保護するために登録出願されたものであり,商標法53条の2の趣旨が当てはまる場合に該当しない。また,A は,本件商標の出願人である有限会社REPROGENETICSの代表者として被告と本件原契約及び本件修正契約を締結したものではないし,A と有限会社REPROGENETICSは,実質的な 同一人ではない。A と有限会社REPROGENETICSは,いずれも被告とは互いに独立して業務を行う者であり,被告の代理人若しくは代表者ではない。さらに,A 及び有限会社REPROGENETICSは,被告が開発した出生前診断試験プロセス及び技術を使用した業務を行っていない。そのため,本件商標の出願人(有限会社REPROGENETICS)は,本件商標の出 願の日前1年以内に,被告の代理人の地位を有していた者に当たらない。 したがって,本件審決が,本件商標の出願人(有限会社REPROGENETICS)は,本件商標の出願の日前1年以内に,被告の代理人の地位を有していた者と見て差し支えないと判断したのは誤りである。 4 取消事由4(商標の類否の認定及び判断の誤り) ⑴ 本件審決の判断 本件審決は,本件商標と引用商標6とは,観念において比較できないとしても,外観において近似した印象を与え,称呼においては同一であるから,これらを総合的に考慮すれば,両者は類似の商標と判断するのが相当であるとした(本件審決第5の1⑵ウ)。 しかし,本件審決の上記判断は誤りである。その理由は,後記⑵のとおり である。 ⑵ 判断の誤りの理由ア本件商標本件商標 商標と判断するのが相当であるとした(本件審決第5の1⑵ウ)。 しかし,本件審決の上記判断は誤りである。その理由は,後記⑵のとおり である。 ⑵ 判断の誤りの理由ア本件商標本件商標は,「Reprogenetics」という文字を標準文字で表すものであり,「リプロジェネティクス」という称呼を生じ,生殖遺伝学と いう観念を生じる。 イ引用商標6引用商標6は,上部に図形部分を表し,下部に「REPROGENETICS」という文字を表したものであり,図形部分は,欧文字で色が異なる「Y」二つが組み合わされて全体として「X」となっており,これは生 物学におけるヒト染色体たる「X染色体」と「Y染色体」を意味するものである。 引用商標6は,「エックスワイリプロジェネティクス」という称呼のみを生ずる。 引用商標6の図形部分からは,X染色体,Y染色体というヒト染色体の 観念が生じ,文字部分からは,生殖遺伝学の観念を生じる。 ウ類否引用商標6の図形部分と文字部分は,指定役務との関係ではいずれも出所識別力が弱く,不可分一体として認識されるから,本件商標と引用商標6は,図形部分の有無という大きな差異があり,外観において類似しない。 本件商標は「リプロジェネティクス」という称呼を生じるのに対し,引 用商標6は「エックスワイリプロジェネティクス」という称呼のみを生じ,「エックスワイ」という部分の有無が異なるから,本件商標と引用商標6は,称呼において類似しない。 本件商標は生殖遺伝学の観念を生じるのに対し,引用商標6は,X染色体とY染色体からなるヒト染色体の観念を生じるから,本件商標と引用商 標6は,観念において類似しない。 したがって,本件商標と引用商標6は,外観,称呼,観念のいずれ に対し,引用商標6は,X染色体とY染色体からなるヒト染色体の観念を生じるから,本件商標と引用商 標6は,観念において類似しない。 したがって,本件商標と引用商標6は,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なり,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して考察すると,本件商標と引用商標6は,類似しない。 5 取消事由5(役務の類否判断の理由不備)本件商標の指定役務中の「心理検査」は,一般に,受検者の知能や心理特性などを科学的,客観的に測定するものと考えられる。本件審決には,本件商標の指定役務中の「心理検査」と,引用商標6の指定役務の「人間の生殖に関する医療検査及び医療相談」とが類似する理由が記載されていないから,本件審 決は,審決にその理由を記載すべきことを定めた商標法56条1項,特許法157条2項4号に違反する。 6 結論以上のとおり,本件審決は,その判断に誤りがあり(前記1~4),審決にその理由を記載すべきことを定めた商標法56条1項,特許法157条2項4号 に違反しており(前記5),これらは本件審決の結論に影響を及ぼすから,本件審決は取り消されるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(「被告の承諾がない」という判断の誤り)及び取消事由2(「正当な理由がない」という判断の誤り)について ⑴ 本件審決の判断 本件審決は,「(イ)請求人とA 氏は2008年(平成20年)3月10日付けで,上記(ア)の契約の修正合弁契約を締結した。当該契約書には,知的財産権について,請求人は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する。ただし,A 氏は係る財産権を日本で利用する永久的かつ移転不可能な 契約書には,知的財産権について,請求人は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する。ただし,A 氏は係る財産権を日本で利用する永久的かつ移転不可能な権利を保持する旨記載されている (甲8)。」(本件審決第5の2⑴エ(イ))とした上で,「ア上記⑴エ(イ)のとおり,請求人とA 氏との契約において知的財産権は,請求人が全ての権利を保持するものであり,また,上記エ(エ)のとおり,請求人は,A 氏が『Reprogenetics』の商標を出願する権利を有していないにもかかわらずこれを登録した旨をA 氏に通知していることから,A 氏と実質的な同一人 である出願人は,請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願を行ったものと認められる。」(本件審決第5の2⑶ア)とし,「ウ本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでなされたものであると認められる。」(本件審決第5の2⑶ウ)と判断した。 ⑵ 被告とA との間の契約の文言 被告とA との間で締結された本件原契約と本件修正契約は,次のとおりであった。(以下,訳文は原告提出のものによる。)ア本件原契約(ア) 本件原契約の締結被告とA は,2004年(平成16年)7月11日,着床前遺伝子診 断に関する研究と実験を行うことを目的とする共同事業に関する合弁事業契約として本件原契約(JOINTVENTUREAGREEMENT)を締結した(甲47)。 なお,本件修正契約の契約書には,被告とA との間で,2004年(平成16年)8月27日付け合弁契約が締結されたと記載されているが(甲 8),この日付は誤記であり,本件原契約は,同年7月11日に締結され た 告とA との間で,2004年(平成16年)8月27日付け合弁契約が締結されたと記載されているが(甲 8),この日付は誤記であり,本件原契約は,同年7月11日に締結され たもの(甲47)と認められる。 (イ) 前文の定め本件原契約は,前文において次のように定めていた。 「Reprogenetics とA 博士は,共同事業に従事することを望んでおり,その目的は,ここに記載されている協力の原則と誓約と合意に従うこと を条件に,着床前遺伝子診断(以下「PGD」)に関する合意された一定の研究と実験を行うことである。 A 医師は,以下に定める条件に基づき,合弁事業を支援するために,一定のオフィススペース,設備,スタッフ,および適切な患者と紹介医師の紹介を提供することを希望する。Reprogenetics は,技術サポート, トレーニングと支援,品質管理と科学的方向性,情報,および以下に示す条件に基づく合弁事業のサポートの改善を提供することを望んでいる。 以上のことから,両当事者は,善良かつ価値ある検討のために,その受領をここに認め,法的に拘束されることを意図して,以下のように合意するものとする。」(WHEREAS, ReprogeneticsandDr. Adesireto engageinajointventure, thepurposeofwhichistoperformcertainagreeduponresearchandexperimentationconcerningPre-ImplantationGeneticDiagnosis ("PGD"), subjecttotheprinciplesofcooperationandth erningPre-ImplantationGeneticDiagnosis ("PGD"), subjecttotheprinciplesofcooperationandthecovenantsandagreementscontainedherein; andWHEREAS, Dr. Adesirestoprovidecertainofficespace, equipment, staffingandreferralsofsuitablepatientsandreferringphysiciansinsupportofthejointventureuponthetermsandconditionshereinaftersetforth; andWHEREAS, Reprogeneticsdesirestoprovidetechnicalsupport,trainingandassistance, qualitycontrolandscientificdirection, informationandimprovementsinsupportofthejointventureupon thetermsandconditionshereinaftersetforth;NOW, THEREFORE, forgoodandvaluableconsideration, thereceiptofwhichisherebyacknowledged, andintendingtobelegallyboundhereby, thePartiesagr receiptofwhichisherebyacknowledged, andintendingtobelegallyboundhereby, thePartiesagreeasfollows:)(ウ) 準拠法の定め 本件原契約は,準拠法について,「XXII.準拠法と管轄地」(XXII.CHOICEOFLAWANDFORUM)の項において,「本契約は,ニュージャージー州およびアメリカ合衆国の法律に準拠し,それに基づいて解釈されるものとする」(ThisAgreementshallbegovernedbyandconstruedinaccordancewiththelawsoftheStateofNewJerseyand theUnitedStatesofAmerica)と定めていた(甲47)。 (エ) 知的所有権等に関する定め本件原契約は,知的所有権の帰属等について,次のとおり定めていた(甲47)。 a 本件原契約は,「VI .所有権;所得制限;意思決定権」 (VI.OWNERSHIP; INCOMEDISTRIBUTION; DECISION-MAKINGAUTHORITY)の項の「B.」において,「各当事者は,製品と結果,および商標,すべての文書とコンピューターに記録されたデータ,製品と結果の開発に使用されたすべての技術,プロセスとその他の要素,およびすべての収益を含む,関連するすべての知的所有 権およびその他の財産権を認め,同意する。材料または製品の両方は,両当事者が共同で,分割されていない50%の株式で共同で所有するものであり,他の個人または企業体とその一部またはその収益を共有するという両当事者の合意に 権を認め,同意する。材料または製品の両方は,両当事者が共同で,分割されていない50%の株式で共同で所有するものであり,他の個人または企業体とその一部またはその収益を共有するという両当事者の合意によって減少またはその他の影響を受けることはない。」(EachpartyacknowledgesandagreesthattheProduct andResults, andallassociatedintellectualandotherproperty rights, includingtrademarks, alldocumentationandcomputerrecordeddata, alltechniques, processesandotherelementsusedincultivatingtheProductand/orResults, andallproceedsoftheMaterialorProduct, areproprietarytobothPartiesjointly, inequal,undivided, 50% shares, thatmaynotbediminishedorotherwise affectedbyeitherparty'sagreementtoshareitsportionortheproceedsthereofwithanyotherpersonorentity.)と定めていた(原文によれば,上記訳の「50%の株式」は,「50%の割り前」との意味と解される。)。そして,同項の「D.」において,「当事者は,本契約に基づき作成,考案,ま orentity.)と定めていた(原文によれば,上記訳の「50%の株式」は,「50%の割り前」との意味と解される。)。そして,同項の「D.」において,「当事者は,本契約に基づき作成,考案,または開発された共同の知的財産権を保護し, 完全なものとするために,相互に合意して行動するものとし,そのような手続きにかかる費用を平等に負担するものとする。」(Thepartiesshallactinmutualagreementtoprotectandperfecttheirjointintellectualpropertyrightscreated, conceivedordevelopedhereunder, andshallequallybeartheexpensesofsuchprocedures.) と定めていた。 b 本件原契約は,「VII.所有権」(VII.PROPRIETARYRIGHTS)において,「各当事者は,Reprogenetics とA 博士が本契約の対象となる材料と製品の共同で対等な所有者であり,当該研究を行う当事者にかかわらず,当該材料または製品を利用した内部研究に関連する知的財産 権の共同所有者であることに同意する。」(EachpartyagreesthatReprogeneticsandDr. AarejointandequalownersoftheMaterialandtheProductthatarethesubjectofthisAgreementandofanyintellectualpropertyrightsrelatedtoanyinternalresearch subjectofthisAgreementandofanyintellectualpropertyrightsrelatedtoanyinternalresearchutilizingsuchMaterialorProduct, regardlessoftheparty conductingsuchresearch)と定めていた。 イ本件修正契約(ア) 本件修正契約の締結被告とA は,2008年(平成20年)3月10日,本件原契約を修正する本件修正契約(AMENDEDJOINTVENTUREAGREEMENT)を締結した(甲8)。 (イ) 前文の定め本件修正契約は前文において次のように定めていた。 「Reprogenetics は特殊な遺伝子研究所であり,出生前診断(PGD)試験の開発に従事しており,A 博士は,体外受精クリニックである大谷レディスクリニック及び臨 床遺伝子試験研究所であるReprogeneticsJapan の運営に従事しており, 2004 年以来,当事者らは合弁を行っており,これによりReprogeneticsがA 博士に対して,A 博士の体外受精クリニック及び臨床試験研究所で使用するために,Reprogenetics がA 博士に提供し,開発したPGD 試験プロセス及び技術を利用しており, 当事者らは合弁の促進のために,2004 年8 月27 日付け合弁契約(「2004 年契約」)を締結し,当該日付より本合弁を継続的に運営しており,当事者らは2004 年契約を修正して,合弁の性質及び目的をより正確に記述し,確実に継続的運営を行うことを相互に合意した。 よってここに,約束,相互の より本合弁を継続的に運営しており,当事者らは2004 年契約を修正して,合弁の性質及び目的をより正確に記述し,確実に継続的運営を行うことを相互に合意した。 よってここに,約束,相互の表明,合意,契約及び本契約に記載されている条件を約因として,そして有効かつ有価の約因として,これらの受領をここに承認し,当事者らは以下のように合意する:」(WHEREASReprogeneticsisaspecializedgeneticslaboratoryengagedinthedevelopmentofPreimplantationGeneticDiagnostics ("PGD") testing; and WHEREASDr. Aisengagedintheoperationofaninvitrofertilizationclinic, theOtaniLadiesClinic, andaclinicalgeneticstestinglaboratory, ReprogeneticsJapan; andWHEREASsince 2004 thepartieshavebeenengagedinajointventurewherebyDr. AhasbeenutilizingPGDtestingproceduresand techniquesdevelopedandsuppliedbyReprogeneticstoDr. AforuseinhisIVFclinicandhisclinicaltestinglaboratory; andWHEREASthepart eticstoDr. AforuseinhisIVFclinicandhisclinicaltestinglaboratory; andWHEREASthepartiesheretoforeenteredintoaJointVentureAgreement ("2004 Agreement") datedAugust 27,2004 infurtheranceofthisjointventureandhavecontinuouslyoperatedthisjointventure sincethatdate; andWHEREASthepartieshavenowmutuallyagreedtoamendthe 2004 Agreementsoastomoreaccuratelydescribethenatureandpurposeoftheirjointventureandtoensureitscontinuedoperation.NOW, THEREFORE, forandinconsiderationofthepromisesand ofthemutualrepresentations, covenants, agreementsandconditionssetforthherein, andforothergoodandvaluableconsideration, thereceiptofwhichisherebyacknowledged, thepartiesagreeasfollows:)(上記の「2004 年8 月27 ion, thereceiptofwhichisherebyacknowledged, thepartiesagreeasfollows:)(上記の「2004 年8 月27 日付け合弁契約」は,本件原契約のことを指すので,「2004 年7 月11 日付け合弁契約」(甲47)が正しく,上記の 日付は誤記であるものと認められる。)(ウ) 準拠法の定め本件修正契約は,準拠法について,「20.法律及び法廷の選択」(20.ChoiceofLawandForum.)の項において,「本契約は,米国ニュージャージー州により規律され,かつ解釈される」(ThisAgreementshallbe governedbyandconstruedinaccordancewiththelawsoftheStateof NewJerseyandtheUnitedStatesofAmerica)と定めていた(甲8)(原文によれば,「ニュージャージー州とアメリカ合衆国の法律が適用され,それらに従って解釈される」という意味と解される。)。 (エ) 知的所有権等に関する定め本件修正契約は,知的所有権の帰属等について,次のとおり定めてい た(甲8)。 a 本件修正契約は,「7.所有権及び財産権」(7. OwnershipandProprietaryRights)の項の「A.」において,「Reprogenetics は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する」(Reprogeneticsshallretainownershipof anyintellectualpropertyd 分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する」(Reprogeneticsshallretainownershipof anyintellectualpropertyderivedinwholeorinpartfromitsintellectualpropertyinthejointventure)と定めていた。 b 本件修正契約は,「7.所有権及び財産権」(7. OwnershipandProprietaryRights)の項の「C.」において,「当事者らは相互契約により,本合弁の結果として創設され,生成され,開発されたあらゆる 共有に係る知的所有権を保護し,完全なものにするために行動し,各当事者は,かかる努力の結果としてかかったあらゆる経費を等しく負担する。」(Thepartiesshallactinmutualagreementtoprotectandperfectanyjointintellectualpropertyrightscreated, conceivedordevelopedasaresultofthisjointventureandeachpartyshallbear equallyanyexpensesincurredasaresultofsucheffort.)と定めていた。 ウ再修正契約被告とA は,2015年(平成27年)12月10日付けで,本件修正契約を更に修正する契約を締結した(甲8)。 ⑶ 被告とA との間の契約の解釈 ア契約の目的本件原契約の前文の定め(前記⑵ア(イ))によれば,被告とA は,着床前遺伝子 修正する契約を締結した(甲8)。 ⑶ 被告とA との間の契約の解釈 ア契約の目的本件原契約の前文の定め(前記⑵ア(イ))によれば,被告とA は,着床前遺伝子診断(PGD)の研究と実験を行うことを目的とする合弁事業を行うために本件原契約を締結したものと認められる。そして,本件修正契約の前文の定め(前記⑵イ(イ))によれば,本件原契約を修正するために本件修 正契約が締結されたものと認められる。 イ知的財産権の帰属(ア) 本件原契約本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ア(エ)a)によれば,「allassociatedintellectualandother propertyrights, includingtrademarks」(商標を含む,全ての関連する知的そして他の財産権。以下「商標を含む知的財産権等」という。)は,等しい50%の割合で被告とA の共有に属するものと認められる。同項の「D.」の定め(前記⑵ア(エ)a)は,被告とA の共有に属する知的財産権が存在することを前提とするものであり,また,本件原契約の「VII. 財産権」の定め(前記⑵ア(エ)b)は,本件原契約に基づく合弁事業における研究に関連する知的財産権が被告とA の共有に属することを定めており,これらの定めがあることによっても,「商標を含む知的財産権等」が被告とA の共有に属するという,本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定めの上記解釈は,裏付けられるもの といえる。 (イ) 本件修正契約a 本件修正契約は,本件原契約を修正することを目的として締結されたものであるから(前記イ),本件原契約に定められた「商標を含む 解釈は,裏付けられるもの といえる。 (イ) 本件修正契約a 本件修正契約は,本件原契約を修正することを目的として締結されたものであるから(前記イ),本件原契約に定められた「商標を含む知的財産権等」の帰属について修正する旨の条項がなければ,「商標を含 む知的財産権等」は,本件原契約が定めるとおり,被告とA の共有に 属するものと認められる。 b 本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「A.」の「Reprogenetics は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する。」という定め(前記⑵イ(エ)a)の「合弁における知的財産」は,本件原契約の「VI.所有 権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」に定められた「商標を含む知的財産権等」(前記⑵ア(エ)a)を含むものであると解する余地がある。そして,「商標を含む知的財産権等」は,本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」によれば,被告とA の共有に属するものと定められている(前記⑵ア(エ)a)。 他方,本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「A.」により被告(Reprogenetics)が保持するとされる知的所有権は,「合弁における知的財産」ではなく,それから「全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権」とされているから,被告が単独で保持するのは,「合弁における知的財産」とは異なるものであると認められる。 そうすると,本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「A.」は,「商標を含む知的財産権等」(前記⑵ア(エ)a)が等しい50%の割合で被告とA の共有に属するものとする本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ の「A.」は,「商標を含む知的財産権等」(前記⑵ア(エ)a)が等しい50%の割合で被告とA の共有に属するものとする本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ア(エ)a)を変更するものではなく,「商標を含む知的財産権等」とは別の,そのよう な財産権から派生する知的財産権を,被告が単独で有することを定めたものであると解する余地がある。 本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「C.」は,「本合弁の結果として創設され,生成され,開発されたあらゆる共有に係る知的所有権」が存在することを前提としているから(前記⑵イ(エ)b), それによれば,「商標を含む知的財産権等」が等しい50%の割合で被 告とA の共有に属するものとする本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ア(エ)a)が,本件修正契約によって変更されていないことが裏付けられているといえる。 ウ準拠法との関係なお,前記ア,イの解釈は,本件原契約及び本件修正契約において準拠 法がアメリカ合衆国とニュージャージー州の法律と定めていること(前記⑵ア(ウ),イ(ウ))(法の適用に関する通則法7条)を前提として,妥当するものである。 ⑷ 本件商標権の帰属ア有限会社REPROGENETICSは,遺伝子の検査,医療及び健康 に関するカウンセリング,これらに附帯する一切の業務を目的とする特例有限会社であり,その取締役は,A と,被告の代表者であったB である(前記第2の1)。そして,有限会社REPROGENETICSは,2004年(平成16年)7月11日に本件原契約が締結されて間もない同年8月20日に設立された(前記第2の1)。そのため,同社は,本件原契約に定 )。そして,有限会社REPROGENETICSは,2004年(平成16年)7月11日に本件原契約が締結されて間もない同年8月20日に設立された(前記第2の1)。そのため,同社は,本件原契約に定 められた合弁事業を行うために設立された特例有限会社であると認められ,本件修正契約書の前文(前記⑵イ(イ))にいう「ReprogeneticsJapan」に当たるものと認められる。他方,本件商標は,「 Reprogenetics」(標準文字)で,同社が出願したものであり,商品及び役務の区分と指定役務は,第42類の「細胞遺伝子検査」と,第44類の「医療を目的 とした遺伝子検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」である。そうすると,本件商標権は,同社及びA が,我が国において,本件原契約に基づく合弁事業を行うために必要とされるものであり,同事業にとって重要な意義を有するものであって,本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の「商標を含む知的財産権等」(前 記⑵ア(エ)a)に該当すると解する余地がある。そして,本件原契約の「VI. 所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ア(エ)a)によれば,「商標を含む知的財産権等」は,等しい50%の割合で被告とAの共有に属する。そうすると,本件商標権は,被告とA との間では,被告とA の共有に属し,両者が持分割合50%ずつの権利を有すると解する余地がある。 イ前記⑶イ(イ)bで検討したように,本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「A.」は,「商標を含む知的財産権等」が等しい50%の割合で被告とA の共有に属するものとする本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ア(エ び財産権」の項の「A.」は,「商標を含む知的財産権等」が等しい50%の割合で被告とA の共有に属するものとする本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」の定め(前記⑵ア(エ)a)を変更するものではないと解する余地があるから,本件原契約により,本件商標権が, 被告とA の共有に属するとされるのであれば,本件修正契約により,その帰属が,被告が全ての権利を有するように変更されたとは認められない。 ⑸ 本件審決の誤りの有無ア前記⑷のとおり,本件商標権について,被告とA との間では,両者が持分割合50%ずつの権利を共有すると認められる余地があり,被告とA と の契約において,本件商標権を含む知的財産権について,被告が全ての権利を保持するとされているとはいい切れない。被告とA との間において,被告が本件商標権に関する権利を単独で有すると認定するためには,①本件商標権が,本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」(前記⑵ア(エ)a)の「商標を含む知的財産権等」に該当するか否か, ②本件原契約の「VI.所有権;所得制限;意思決定権」の項の「B.」に定められた知的財産権の帰属が,本件修正契約により変更されたか否か,③本件商標権は,本件修正契約の「7.所有権及び財産権」の項の「A.」(前記⑵イ(エ)a)における「合弁における知的財産」に当たるのか,それとも,そのような知的財産から「全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有 権」に当たるのか,④本件商標権は,本件修正契約の「7.所有権及び財 産権」の項の「C.」(前記⑵イ(エ)b)における「本合弁の結果として創設され,生成され,開発されたあらゆる共有に係る知的所有権」に当たらないのか等の点を審理判断する必要 及び財 産権」の項の「C.」(前記⑵イ(エ)b)における「本合弁の結果として創設され,生成され,開発されたあらゆる共有に係る知的所有権」に当たらないのか等の点を審理判断する必要がある。 したがって,本件審決が,上記①から④で指摘したところの本件原契約との関係における本件修正契約の解釈について言及することなく,本件修 正契約の「Reprogenetics は,合弁における知的財産から全体的又は部分的に派生するあらゆる知的所有権の所有権を保持する。」との定めに基づいて,被告とA との契約において知的財産権は被告が全ての権利を保持すると判断したのは誤りであり,そのような判断を前提として,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の 承諾を得ないでされたものであると判断したのは誤りである。 イなお,本件審決は,被告が,2017年(平成29年)6月2日付けで,A に,本件原契約及び本件修正契約による合弁契約を同年8月4日に終了させる旨のレターを送付し,同レターには,A 又は有限会社REPROGENETICSが「 Reprogenetics」の商標を出願する権利 を有していないにもかかわらずこれを登録した旨が記載されている(甲10)こと(本件審決第5の2⑴エ(エ))をも,同社が,正当な理由がないのに被告の承諾を得ないで本件商標の登録を出願したという判断の根拠とする(本件審決第5の2⑶)。 しかし,被告がA に送付した上記レターには,A 又は有限会社REPR OGENETICSが「 Reprogenetics」の商標を出願する権利を有していないという被告の主張の根拠は記載されておらず,また,A は,上記レターに対する返信において,被告の主張を争っている(甲10)。さ Sが「 Reprogenetics」の商標を出願する権利を有していないという被告の主張の根拠は記載されておらず,また,A は,上記レターに対する返信において,被告の主張を争っている(甲10)。さらに,前記⑷アのとおり,本件商標権は,有限会社REPROGENETICS及びA が,我が国において,本件原契約に基づく合弁事業を 行うために必要とされるものであり,同事業にとって重要な意義を有する ものである。商標登録について先願主義を採用する我が国において,合弁事業を行うために設立され,被告の代表者であるB も取締役を務める有限会社REPROGENETICSが本件商標を出願することは,合弁事業の趣旨に反することが明らかであるとは考え難く,被告の上記レターにおける主張の根拠は明確であるとはいえない。したがって,被告が上記レタ ー(甲10)を送付したことを考慮しても,本件審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。 2 取消事由3(「代理人若しくは代表者」の判断の誤り)について⑴ 商標法53条の2の「代理人若しくは代表者」とは,商標に関する権利を有する者から代理権を与えられた者,又は商標に関する権利を有する法人の 代表者に限られず,商標に関する権利を有する者との間で,契約に基づき継続的な法的関係があるか,あるいは少なくとも,継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され,商標に関する権利を有する者の事業遂行の体系に組み込まれている者であれば足りると解すべきである。 ⑵ これを本件について検討するに,本件商標の出願人は有限会社REPRO GENETICSであるところ,前記1⑷アのとおり,同社は,2004年(平成16年)8月20日に,被告と本件原契約及び本件修正契約を締結したA を取締役として,本件原契約に定 会社REPRO GENETICSであるところ,前記1⑷アのとおり,同社は,2004年(平成16年)8月20日に,被告と本件原契約及び本件修正契約を締結したA を取締役として,本件原契約に定められた合弁事業を行うために設立された特例有限会社であり,本件修正契約の前文にいう「ReprogeneticsJapan」に当たるものと認められるから,A と上記出願人とが実質的な同一人である かどうかを問うまでもなく,上記出願人は,本件原契約及び本件修正契約による継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され,商標に関する権利を有する被告の事業遂行の体系に組み込まれた者に該当すると認めるのが相当である。 そして,本件商標の登録出願日は2015年(平成27年)9月18日で あるから,有限会社REPROGENETICSは,本件商標登録出願の日 前1年以内に代理人若しくは代表者であった者に該当すると認められる。 ⑶ したがって,本件審決が,本件商標の出願人(有限会社REPROGENETICS)が,本件商標の登録出願の日前1年以内に,被告の代理人若しくは代表者であった者に該当するとした判断に誤りはない。 3 取消事由4(商標の類否の認定及び判断の誤り)について ⑴ 商標の類否判断商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第 三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標 110号同43年2月27日第 三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標 識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。 ⑵ 本件商標 ア本件商標は,「Reprogenetics」という文字を標準文字で表すものである。 イ本件商標は,「リプロジェネティクス」の称呼を生じるものと認められる。 ウ本件商標(Reprogenetics)は,生殖を意味する「reproduction」という語と遺伝学を意味する「genetics」という語を組み 合わせた造語であり,生殖遺伝学を意味する語として使用される例があっ たとしても(甲59),我が国においては,辞書類に採録されておらず,また,本件商標の指定役務である「細胞遺伝子検査」(第42類),「医療を目的とした遺伝子検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」(第44類)の分野においても,その他の分野においても,一般的に使用されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件商標から は特定の観念を生じないものと認められる。 ⑶ 引用商標6ア引用商標6は,別紙2記載2のとおり,上部に図形部分を表し 用されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件商標から は特定の観念を生じないものと認められる。 ⑶ 引用商標6ア引用商標6は,別紙2記載2のとおり,上部に図形部分を表し,下部に「REPROGENETICS」という文字を表したものであるから,結合商標であると認められる。引用商標6の図形部分は,二又に分かれた曲 線よりなる図形が,開口部が上及び下に位置するように上下逆向きに組み合わせられたものである。 イ引用商標6においては,上部の図形部分と下部の文字部分が明確に分けられており,下部には,「REPROGENETICS」という文字が表されており,同文字は造語であると認められるから,構成全体からすると, その部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから,引用商標6の称呼は,下部の「REPROGENETICS」という部分により生じるものと認められる。したがって,引用商標6は,「リプロジェネティクス」という称呼を生ずるものと認められる。 この点に関し原告は,引用商標6の図形部分は,「Y」二つが組み合わされて「X」となるものであり,引用商標6は「エックスワイリプロジェネティクス」という称呼のみを生ずると主張する。 しかしながら,図形部分において上下に組み合わされた各図形は,二又に分かれていることは認識し得るとしても,連結部分から伸びる線が短い から,「Y」と認識されるものとはいい切れない。また,図形部分の形状全 体は,曲線からなり,一般的に使用されている文字や下部の「REPROGENETICS」という文字のフォントの「X」とはかなり形状が異なる上,図形自体が上下に分けられているから,図形部分は,文字を表すものとは認識さ り,一般的に使用されている文字や下部の「REPROGENETICS」という文字のフォントの「X」とはかなり形状が異なる上,図形自体が上下に分けられているから,図形部分は,文字を表すものとは認識されるとは限らず,かえって単なるデザインであると認識されるものと認められる。したがって,本件商標の図形部分から称呼を生じる ことはないものと認められ,ましてや「エックスワイ」との称呼が生じる余地はないというべきであって,原告の上記主張は,採用することができない。 ウ上記のとおり,引用商標6の図形部分は,文字を表すものとは認識されないし(上記イ),その図形部分から特定の観念を生じない。また,引用商 標6の文字部分の「REPROGENETICS」は,造語であり,一般的に使用されていとは認められないから(前記⑵ウ),特定の観念を生じない。そのため,引用商標6全体からも特定の観念を生じないものと認められる。 この点に関し原告は,引用商標6の図形部分は生物学におけるヒト染色 体である「X染色体」と「Y染色体」を意味するから,ヒト染色体という観念が生じると主張するが,上記のとおり,そもそも上記図形部分が「X」と「Y」というヒト染色体を表すと読み取ることはできず,したがって,上記図形部分から原告が主張するような観念が生じると認めることはできない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 類否以上のとおり,本件商標と引用商標6は,外観において,図形部分の有無という差異があるが,本件商標(Reprogenetics)と,引用商標6の文字部分(REPROGENETICS)は,「R」以外の文字が小文字か大文字かの差異はあるものの,つづりを共通にするから,本件商標と引 用商標6は,外観において類似する。 と,引用商標6の文字部分(REPROGENETICS)は,「R」以外の文字が小文字か大文字かの差異はあるものの,つづりを共通にするから,本件商標と引 用商標6は,外観において類似する。 本件商標と引用商標6は,「リプロジェネティクス」という称呼を同一とする。 本件商標と引用商標6は,いずれも特定の観念を生じないから,観念を比較することはできない。 そうすると,本件商標と引用商標6は,外観において類似し,称呼を同一 とし,観念を比較することはできないから,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して考察すると,本件商標と引用商標6は,類似するものと認められる。 ⑸ 本件審決の判断の誤りの有無したがって,本件商標と引用商標6を類似の商標とした本件審決の判断に 誤りはない。 4 取消事由5(役務の類否判断の理由不備)について本件審決は,本件商標の指定役務中の第44類「医療を目的とした遺伝子検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」と引用商標6の指定役務とが類似の役務と認められる理由について,「共に医療行為に関する役務 であって」(本件審決第5の1⑵エ)という理由を記載しているから,本件審決は,商標法56条1項,特許法157条2項4号に違反することはない。 この点に関し原告は,本件審決には,本件商標の指定役務中の「心理検査」と,引用商標6の指定役務の「人間の生殖に関する医療検査及び医療相談」とが類似する理由が記載されていないと主張する。しかし,本件商標の指定役務 中の「心理検査」と,引用商標6の指定役務中の「人間の生殖に関する医療検査」には重なる部分があり,本件商標の指定役務中の「医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」と,引 標の指定役務 中の「心理検査」と,引用商標6の指定役務中の「人間の生殖に関する医療検査」には重なる部分があり,本件商標の指定役務中の「医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」と,引用商標6の指定役務の「人間の生殖に関する医療検査及び医療相談」が類似することは,それらの文言により理解することができるから,原告主張の点を本件審決が具体的に記載していないとして も,本件審決が,本件商標の指定役務中の第44類「医療を目的とした遺伝子 検査,医業及び健康のための心理検査及びカウンセリング」と引用商標6の指定役務とが類似すると認められる理由を記載していないとはいえず,原告の上記主張は,採用することができない。 5 結論前記1のとおり,本件審決が,本件商標の登録出願は,正当な理由がないの に,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでなされたものであると判断したのは誤りであり,その判断の誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすから,取消事由1,2には理由がある。 よって,本件審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官 上田卓哉 裁判官 中平健 別紙1 (引用商標) 1 引用商標1国際登録第1323083号商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第42類 中平健 別紙1 (引用商標) 1 引用商標1国際登録第1323083号商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第42類「DNAanalysisservicestodeterminepaternity; genetic mappingforscientificpurposes; genetictestingforscientificresearchpurposes; laboratoryresearchinthefieldofgeneticreproduction; medicalandscientificresearchinthefieldofreproductionandgenetics; medicalresearchlaboratoryservices; medicalresearch; researchanddevelopmentinthefieldofreproductionandgenetics; researchinthefieldofreproduction andgenetics; scientificresearchanddevelopment; scientificresearchformedicalpurposesinthefieldofreproductionandgenetics.」及び第44類「Medicallaboratoryservices, namely, medicaltestingandpatientcounselingservicesregardinghumanreproduc boratoryservices, namely, medicaltestingandpatientcounselingservicesregardinghumanreproduction.」国際登録日:2016年5月24日 指定国官庁:域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠),ノルウェー等 2 引用商標2出願第256800号 国名:アラブ首長国連邦商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第42類「科学・技術のサービス及びこれらに関する研究及びデザイン,工業上の分析及び研究,コンピュータハードウェア及びソフトウェアの設計及び開発」 出願日:2016年7月19日 登録日:2017年1月18日 3 引用商標3出願第256801号国名:アラブ首長国連邦 商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第44類「医業,動物の治療他」出願日:2016年7月19日登録日:2017年1月18日 4 引用商標4登録番号1437022764国名:サウジアラビア王国商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第42類「科学・技術のサービス及びこれらに関する研究及びデ ザイン,工業上の分析及び研究,コンピュータハードウェア及びソフトウェアの設計及び開発」出願日:2016年7月18日登録日:2016年10月26日 5 引用商標5登録番号1437022765国名:サウジアラビア王国商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第44類「医業,動物の治療他」 出願日:2016年7月18日 登録日:2016年1 名:サウジアラビア王国商標の態様:別紙2記載1のとおり指定役務:第44類「医業,動物の治療他」 出願日:2016年7月18日 登録日:2016年10月26日 6 引用商標6登録第3014461号(甲11)国名:アメリカ合衆国 商標の態様:別紙2記載2のとおり指定役務:第44類「medicallaboratoryservices, namelymedicaltestingandpatientcounselingservicesregardinghumanreproduction」出願日:2003年8月25日登録日:2005年11月15日 7 引用商標7登録番号2654316国名: アルゼンチン共和国商標の態様:「REPROGENETICSARGENTINA」 指定役務:第44類「全指定役務」出願日:2013年4月10日登録日:2014年6月11日なお,引用商標7の移転前の権利者は「TANGOGENICSS.A.」である。 8 引用商標8登録番号2687690国名:アルゼンチン共和国商標の態様:別紙1記載1のとおり 指定役務:第44類「医業及び動物の治療,人及び動物のための衛生および 美容のためのケアに関する役務の提供」出願日:2013年3月15日登録日:2014年10月23日なお,引用商標8の権利は,2016年3月18日に「TANGOGENICSS.A.」から被告に譲渡された。 9 引用商標9登録番号2687689国名:アルゼンチン共和国商標の態様:別紙1記載1の 016年3月18日に「TANGOGENICSS.A.」から被告に譲渡された。 9 引用商標9登録番号2687689国名:アルゼンチン共和国商標の態様:別紙1記載1のとおり 指定役務:第42類「科学的及び技術的な研究開発」出願日:2013年3月15日登録日:2014年10月23日なお,引用商標9の権利は,2016年3月18日に「TANGOGENICSS.A.」から被告に譲渡された。 10 引用商標10登録番号2654315国名:アルゼンチン共和国商標の態様:「REPROGENETICSARGENTINA」 指定役務:第42類「全指定役務」出願日:2013年4月10日登録日:2014年6月11日なお,引用商標10の移転前の権利者は「TANGOGENICSS.A.」である。 11 引用商標11登録番号003615325国名:EuropianUnion商標の態様:別紙2記載3のとおり指定商品及び指定役務:第16類「Paper, cardboardandgoodsmadefrom thesematerials, notinotherclasses; printingmaterials; bookbindingmaterial; photographs; sationery; adhesivesforstationaryorhouseholdpurposes; artistsmaterial; paintbrushes; instructionalorteachingmachines(exceptapparatus); plas poses; artistsmaterial; paintbrushes; instructionalorteachingmachines(exceptapparatus); plasticmaterialsforpacking (notincludedinotherclasses); printingtypes; printingblocks; inparticular, publications, magazines, periodicalsandcatalogues.」,第41類「Provisionofeducation;providingoftraining; entertainment; culturalactivities; inparticular,arrangingandconductingcolloquiums, conferences, congresses, seminars,symposiumsandtrainingworkshops, publicationofbooks; electronicpublicationofbooksandperiodicalsonline.」及び第42類「Scientificand technologicalservicesandresearchanddesignrelatingthereto; industrialanalysisandresearchservices; inparticular, analysisofembryosandgametes.」出願日:2004年1月9日登録日:2005年6月23日 権利者:REPROGEN articular, analysisofembryosandgametes。出願日:2004年1月9日登録日:2005年6月23日 権利者:REPROGENETICSSPAINS.A. 別紙2 1 (引用商標1~引用商標5,引用商標8.引用商標9) 2 (引用商標6) 3 (引用商標11)
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