昭和46(あ)1100 業務上過失死傷

裁判年月日・裁判所
昭和47年5月4日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 仙台高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決および第一審判決を破棄する。      本件を仙台地方裁判所に差し戻す。          理    由  弁護人人見孔哉の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当

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判決文本文3,465 文字)

主    文      原判決および第一審判決を破棄する。      本件を仙台地方裁判所に差し戻す。          理    由  弁護人人見孔哉の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であ つて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。  しかし、職権により調査するに、原判決が是認する第一審判決の確定するところ によれば、本件は、国道四号線(巾員一〇・八米)と国道一〇八号線(巾員一一米) が、宮城県古川市a町b番c号先で交差している交差点内で、国道四号線(南北道 路)を北進していた被告人運転の七屯積大型貨物自動車が、国道一〇八号線(東西 道路)を東進し、対面信号が赤色灯火の表示をしていたのに、左右道路(国道四号 線)の信号機が黄色灯火を表示しているのをみて、まもなく対面信号機が青色灯火 に変化するものと軽信して、該交差点に進入したA運転の普通乗用自動車に衝突し、 次いでその衝撃で滑走した被告人運転車両が、対向中のB運転の普通貨物自動車に 衝突した事故に関するものであり、記録によれば、該交差点は、三点式交通信号機 により交通整理の行なわれている交差点で、国道四号線上の車両の対面信号は、赤 四五秒、青四五秒、黄五秒、国道一〇八号線上の車両の対面信号は、赤五〇秒、青 四〇秒、黄五秒の周期のものであり、本件事故当時各正常に作動していたことがう かがわれる。  前記第一審判決を通読すると、右判決は、被告人の注意義務違反の内容として、 (1)信号の推移に注意を払い、信号が黄色灯火表示に変つたら道路交通法施行令 二条所定の停止位置に確実に停止することができるよう速度を調整しつゝ交差点に 接近すべきであるのにこれを怠つたこと、(2)制限速度四〇粁毎時のところを時 速約五五粁で交差点を通過しようとしたこと、(3)対面信号が黄色灯火表示に変 - 1 - つたのを看過し、所定 しつゝ交差点に 接近すべきであるのにこれを怠つたこと、(2)制限速度四〇粁毎時のところを時 速約五五粁で交差点を通過しようとしたこと、(3)対面信号が黄色灯火表示に変 - 1 - つたのを看過し、所定の停止位置に停止しなかつたことの三つを掲げているものと 解せられる。  本件事故発生当時の道路交通法施行令(昭和四五年政令二二七号による改正前の もの)二条一項の表の「信号の種類」「注意」の項、「信号の意味」の欄中第二号 には、「車両等は、交差点にあつてはその交差点(交差点の直近に横断歩道がある 場合においては、その横断歩道の外側までの道路の部分を含む)の直前において停 止しなければならず、また、交差点に入つている車両等は、その交差点の外に出な ければならない。」旨定められており、同号にいう「交差点に入つている車両」に は、交差点または横断歩道の外側の直前において進め信号から注意信号に変つたた め、制動距離の関係で交差点内に進入してしまう車両をも含むものと解すべきであ る(昭和四五年政令二二七号による改正後の道路交通法施行令二条一項「信号の種 類」「注意」の項「信号の意味」の欄第二号中には、「ただし、注意の信号が表示 された時において当該位置に近接しているため安全に停止することができない場合 を除く。」旨の但書が加えられ、この趣旨が明白にされている)。  車両の運転者に、信号の推移に注意を払い、青色灯火が黄色灯火表示に変つた場 合、法定の停止地点で停止できるよう速度を調整しつつ交差点に接近すべき注意義 務があることは疑いないが、信号機が青色灯火を表示する時間は交差点ごとに異な り、また交通量に応じ青色灯火表示時間が変化する信号機もある状況下においては、 一つ手前の交差点の信号の変化から、次の交差点の信号機が青色灯火を表示する時 間を予測することは困難であり、黄色灯火表示に変つた また交通量に応じ青色灯火表示時間が変化する信号機もある状況下においては、 一つ手前の交差点の信号の変化から、次の交差点の信号機が青色灯火を表示する時 間を予測することは困難であり、黄色灯火表示に変つた場合法定の停止地点で停止 できるよう速度を調整しつつ交差点に接近すべき注意義務があるからといつて、特 段の指定や標識があれば格別、そうでないかぎり、該道路の最高制限速度以下に減 速して、信号機により交通整理の行なわれている交差点に接近すべき注意義務があ るということはできない。最高制限速度四〇粁毎時の道路においては、時速四〇粁 - 2 - の車両が安全に停止することができる制動距離に相応する距離が、交差点入口まで にある地点で、対面信号が黄色灯火表示に変れば、時速四〇粁を超過して走行して いる車両にも、交差点入口手前で停止すべき注意義務があつたといえるが、時速四 〇粁の車両が安全に停止することができる制動距離に相応する距離が、交差点入口 までにない地点で、対面信号が黄色灯火表示に変つた場合には、時速四〇粁を超過 して走行している車両が交差点を通過しようとしたからといつて、黄色灯火表示を 看過または無視した注意義務違反を問うことはできない。  第一審判決は、被告人は黄色灯火表示を看過しかつ時速約五五粁で交差点を通過 しようとしたと認定しているが、時速四〇粁の車両が安全に停止することができる 制動距離に相応する距離が、交差点入口までにある地点で、対面信号が黄色灯火表 示に変つたかどうかという点については、事実を確定していないし、この点は、原 判決によつても確定されていない。  しかも、原判決が引用するCの司法警察員に対する供述調書中には、「店の椅子 に腰を下しているとバアーンバアーンと連続して高い音がしたので、あつ事故では ないかと反射的に感じすぐ立上つて道路に出てa町の交差点をみ 原判決が引用するCの司法警察員に対する供述調書中には、「店の椅子 に腰を下しているとバアーンバアーンと連続して高い音がしたので、あつ事故では ないかと反射的に感じすぐ立上つて道路に出てa町の交差点をみたのです。その時 は、すぐ信号をみましたが、その時の国道四号線のD果物店(古川市a町b番c号) 脇の信号は黄色でした。その信号は、すぐ赤色にはなりませんでした。」という趣 旨の記載があり、同信号が黄色灯火を表示する時間は、五秒間であること前記のと おりであることに鑑れば、被告人運転車両の対面信号が青色灯火から黄色灯火表示 に変つたのは、被告人の車両が本件交差点入口に近接してからであつて、その時点 における被告人運転車両の位置から交差点入口までに、被告人の車両が時速四〇粁 で走つていたとしても安全に停止しうる制動距離に相応する距離がなかつたのでは ないかという疑問がある。  してみれば、対面信号が黄色灯火表示に変つた地点について事実の確定をするこ - 3 - となしに、黄色灯火の表示を看過し交差点入口手前で停止しなかつたことを注意義 務違反の内容としてとらえ、本件被告人の所為につき業務上過失致死傷罪にあたる として有罪を言い渡した第一審判決には、法令の解釈を誤り、ために審理を尽くさ なかつた違法があり、またこの違法を看過して第一審判決を是認した原判決にも判 決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、第一審判決および原判決を破棄しなけれ ば著しく正義に反するものといわなければならない。  よつて刑訴法四一一条一号、四一三条本文により、原判決および第一審判決を破 棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を第一審裁判所に差し戻すこととし、裁判 官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。  検察官山室章 公判出席   昭和四七年五月四日      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁 め、本件を第一審裁判所に差し戻すこととし、裁判 官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。  検察官山室章 公判出席   昭和四七年五月四日      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎             裁判官    岩   田       誠             裁判官    藤   林   益   三             裁判官    下   田   武   三             裁判官    岸       盛   一 - 4 -

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