主文 被告人を懲役30年に処する。 未決勾留日数中220日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,平成17年11月17日午前3時30分ころ,A(当時25歳)らが居住する大阪市a区所在のマンションに,帰宅した同女の後に続いて自転車駐輪場通用口ドアから侵入し,そのころ,同マンションのエントランス内において,同女に対し,背後から手で口を塞ぎ,持っていたカッターナイフを示し,「大声を出すと殺すぞ。お金を持って帰るだけや。」などと語気鋭く申し向け,持っていたガムテープでその両目と口を塞ぐなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧した上,同女を同マンション北側の通路に連れて行き,同所において,同女の手提げ鞄から同女が所有又は管理する現金約3万2000円及び運転免許証等3点在中の財布1個及び携帯電話1台(時価合計10万円相当)を強取し,引き続き,その下着を脱がせるなどして同女を姦淫した第2金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,平成18年1月5日午前4時ころ,Bらが居住するa区所在のマンションに帰宅した同女の後に続いて自転車駐輪場通用口ドアから侵入し,同女が乗ったエレベーターに3階から乗り込み,同エレベーター内において,同女に対し,手でその口を塞ぎながら,「騒ぐな。殺すぞ。お金をもらうだけや。」と申し向けるなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧したが,同女が機転を利かせて,「旦那は怖い人やから,このまま一緒に逃げて。」などと被告人を困惑させる言動をしたため,同マンションから逃走し,いずれの目的も遂げなかった第3金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年3月13日午前2時52分ころ,a区所在のマンションの一室に,無施錠の玄 をしたため,同マンションから逃走し,いずれの目的も遂げなかった第3金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年3月13日午前2時52分ころ,a区所在のマンションの一室に,無施錠の玄関扉から侵入し,そのころ,同所において,C(当時22歳)に対し,手でその口を塞ぎながら,「大声を出すな。しゃべったら首絞めて殺すぞ。俺は,お金が目当てやねん。」と申し向けるなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧した上,同女が財布内から差し出した同女が所有する現金約9000円を強取し,さらに,持っていたガムテープでその両手首を緊縛し,目と口を塞ぐなどの暴行を加えて,同女を同室内に敷いてあった布団の上まで連れて行ったが,同女所有の携帯電話が鳴り出したため,犯行の発覚を恐れてその場から逃走し,姦淫の目的を遂げなかった第4金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同月24日午前2時ころ,D(当時22歳)らが居住するa区所在のマンションに帰宅した同女を見つけ,同マンションの自転車駐輪場通用口ドアから侵入し,そのころ,同マンションのエレベーターホール内において,同女に対し,「おとなしくしろ。 金だけ出せば何もせえへんから。」などと語気鋭く申し向けた上,その腕を引っ張るなどして同女を転倒させ,さらに,同マンションのエントランス内において,立たせた同女が声を上げようとした際,その口を手で押さえてその後頭部を後方の壁に打ち付け,持っていたガムテープでその口を塞ぎ,両手首を緊縛し,手又は腕を抵抗する同女の腹部に2回当てるなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧し,金品を強取するとともに同女を姦淫しようとしたが,同女に激しく抵抗されるなどしたため,いずれの目的も遂げず,その際,前記一連の暴行により,同女に全治約8日間を要する後頭部及び腹部打撲等の傷害を負わ ,金品を強取するとともに同女を姦淫しようとしたが,同女に激しく抵抗されるなどしたため,いずれの目的も遂げず,その際,前記一連の暴行により,同女に全治約8日間を要する後頭部及び腹部打撲等の傷害を負わせた第5金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年8月19日午前4時ころ,E(当時21歳)らが居住するa区所在のマンションに,帰宅した同女の後についてオートロック式のドアから侵入し,そのころ,同女が乗り込んだエレベーター内において,同女に対し,手で口を塞ぎ,持っていたカッターナイフを示し,「声出すな。黙れ。金取ったら,なんもせえへんから。」などと語気鋭く申し向け,さらに,同女を6階の非常階段まで連れて行き,同所において,その両目と口を持っていたガムテープで塞ぎ,両手首をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧した上,財布内から同女が所有する現金4万5000円を強取し,引き続き,同女を同マンション内の同女方に連れて行き,同所において,同女を全裸にするなどして姦淫した第6金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年10月7日午前3時50分ころ,F(当時27歳)らが居住する同市b区所在のマンションに,帰宅した同女の後についてオートロック式の自動ドアから侵入し,そのころ,同マンション1階に設置されたエレベーター付近において,同女に対し,背後から手で口を塞ぎ,「騒ぐな。騒ぐと殺す。金黙って出せ。金出したら痛いことはせえへんから。」などと語気鋭く申し向け,その両目と口を持っていたガムテープで塞ぎ,両手首をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧した上,同女を階段踊り場まで連れて行き,同所において,財布内から同女が所有する現金1万5000円を強取し,引き続き,同所において をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧した上,同女を階段踊り場まで連れて行き,同所において,財布内から同女が所有する現金1万5000円を強取し,引き続き,同所において,同女の下着を脱がすなどして同女を姦淫し,その際,前記一連の暴行により,同女に約15日間の加療を要する左肘部,右前腕,頚部及び腰部打撲の傷害を負わせた第7金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,平成19年3月26日午前1時40分ころ,G(当時20歳)らが居住するc区所在のマンションに,帰宅した同女の後についてオートロック式の自動ドアから侵入し,そのころ,同女が乗り込んだエレベーター内において,同女に対し,手で口を塞ぎ,「お金をもらうだけやから静かに言うことを聞け。騒いだら殺すぞ。」などと語気鋭く申し向け,さらに,同女を5階の非常階段踊り場まで連行し,同所において,「騒いだら殺すぞ。手を頭の上にして目をつぶれ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,その両目と口を持っていたガムテープで塞ぎ,両手首をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,財布内から同女が所有する現金1万1000円を強取し,引き続き,同女を同マンション内の同女方に連行し,同所において,同女の下半身を裸にするなどして同女を姦淫するとともに,同女が室内に置いていた写真1枚を強取した第8金品を強取するとともに強いて女子を姦淫する目的で 同年9月26日午前4時10分ころ,Hらが居住するc区所在のマンションに,帰宅した同女の後についてオートロック式のドアから侵入し,引き続き,同マンション内の同女及びI方の無施錠の玄関扉を開けて,下駄箱上に置かれていたIが所有する鍵付きキーケース1個(時価1万円相当)を窃取した 同日午前5時6分ころ,前記窃取に係 ら侵入し,引き続き,同マンション内の同女及びI方の無施錠の玄関扉を開けて,下駄箱上に置かれていたIが所有する鍵付きキーケース1個(時価1万円相当)を窃取した 同日午前5時6分ころ,前記窃取に係る鍵を使用して,前記マンションにオートロック式のドアを解錠して侵入した第9金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年10月5日午前8時40分ころ,同市d区のJ(当時19歳)方に無施錠の玄関から侵入し,そのころ,同所において,同女に対し,「目を閉じろ。お金をとるだけやから,じっとしとけ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,その口を持っていたガムテープで塞ぎ,両手首をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,同女所有のバッグ内を物色し,引き続き,同女の下半身を裸にして膣内に手指を挿入するなどしたが,その直前に同女の居室を訪れてきた同女の母親と顔を合わせるなどしていたため,その場から逃走し,いずれの目的も遂げなかった第10金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,平成21年3月25日午前6時ころ,同市b区所在のマンション内のK(当時26歳)方に,無施錠の玄関扉から侵入し,そのころ,同所において,同女に対し,口を手で押さえながら,「騒ぐな。騒いだら殺すぞ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,その両目と口を持っていたガムテープで塞ぎ,両手首をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,同女が室内に置いていたバッグ内の財布から同女が所有する現金8万5000円を抜き取って強取し,引き続き,同女を全裸にするなどして強いて姦淫した第11金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年4月10日午前3時ころ,b区所在のマンション内のL(当時21歳)方に,無施錠の玄関扉から侵 ,同女を全裸にするなどして強いて姦淫した第11金品を強取するとともに強いて女子を姦淫しようと企て,同年4月10日午前3時ころ,b区所在のマンション内のL(当時21歳)方に,無施錠の玄関扉から侵入し,そのころ,同所において,同女に対し,「静かにしろ。騒いだら殺すぞ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,その両目と口を持っていたガムテープで塞ぎ,両手首をガムテープで後ろ手に緊縛するなどの暴行を加えてその反抗を抑圧した上,同女を全裸にするなどして姦淫するとともに,同女が室内に置いていたバッグ内の財布から同女が所有する現金約5万4000円を強取したものである。 (証拠の標目):省略(事実認定の補足説明)第1争点(以下,判示第1ないし第11の各事実をそれぞれ「第1事件」ないし「第11事件」という。)争点は,(1)第1事件及び第5事件について,被告人がカッターナイフを被害者に突きつけたのか,(2)第4事件について,①被告人が被害者を仰向けに押し倒したのか,②被告人が被害者の腹部を意図的に手拳で2回殴ったのか,(3)第7事件について,エレベーターの中及び5階の非常階段の踊り場で,被告人が被害者を「騒いだら刺すぞ。」と言って脅したのか,である。 そこで,以下,判示のとおりの事実を認めた理由について,補足して説明する。 第2当裁判所の判断 第1事件及び第5事件について(1)第1事件の被害者A及び第5事件の被害者Eは,いずれも,被告人から首付近にカッターナイフを突きつけられたと供述している。 (2)アA及びEは,被告人に襲われた際の状況について,具体的に述べており,あえて虚偽の供述をする理由もない。 イカッターナイフで脅されるという体験は,被害者にとっては確かに恐怖感を覚えるものであり,記憶が混乱する可能性はあるが,他方で強く印象に残る 体的に述べており,あえて虚偽の供述をする理由もない。 イカッターナイフで脅されるという体験は,被害者にとっては確かに恐怖感を覚えるものであり,記憶が混乱する可能性はあるが,他方で強く印象に残る出来事でもある。 ウA及びEは,別々の事件の被害者であるにもかかわらず,いきなりカッターナイフで被告人に脅迫されたという点で,一致した供述をしており,また,第6事件の被害者Fも,カッターナイフを一連の脅迫の早い段階で示されたという点についてはA及びEと同様の供述をしている。このように,3名がそろって被害時の状況を誤って記憶しているとは考えにくい。 エしたがって,A及びEの供述は信用できる。 (3)アこれに対して,被告人は,「片手にカッターナイフを持っていると被害者の抵抗を封じることが難しくなるし,けがをさせるおそれがあるから,被害者を拘束していない状況で,カッターナイフを突きつけてはいない。」と供述する。 イしかし,被告人は,連続して10件以上強盗強姦目的の犯行を重ねていること,被告人自身,逮捕されるまでは事件についてなるべく思い出さないようにしていたと述べていること,被告人が事件について捜査官に初めて供述した時期は,第1事件からは3年以上,第5事件からでも2年以上経過していることなどからすると,個々の事件の内容を区別して正確に記憶できていたか疑問がある。また,大柄な被告人(身長181センチメートル,体重約100キログラム)であれば,手にカッターナイフを持っていたとしても,被害者の抵抗を封じることは十分可能であるから,カッターナイフを示さなかった理由として被告人が述べるところは,必ずしも納得できるものではない。 (4)以上から,被告人は,第1事件及び第5事件において,A及びEにカッターナイフを示したものと認められる。ただし,A及びEは た理由として被告人が述べるところは,必ずしも納得できるものではない。 (4)以上から,被告人は,第1事件及び第5事件において,A及びEにカッターナイフを示したものと認められる。ただし,A及びEは,カッターナイフの先端を現に首付近に押し当てられたなどとは供述していないことから,首付近に突きつけたとまでは認定できない。 第4事件について(1)第4事件の被害者Dは,「被告人のねらいはお金だと思ったので,もみ合いになりながらも持っていたバッグを投げた。ところが,被告人は,バッグを拾いに行くことなく,私の腕をつかんで押したり引っ張ったりしたので,被告人の力に負けて仰向けに押し倒された。被告人は,私をマンションのエントランスに連れ出し,ガムテープで口を塞ぎ,両手首をガムテープでぐるぐる巻きにした。さらに抵抗すると,右拳で2回腹を殴られた。被告人は,『金はいらんから,逃げるまで騒ぐな。』と言い,両目にガムテープを貼り付け,マンションの外に出て行った。」と供述する。 (2)アDの供述は,被告人に襲われた状況等について具体的に述べており,あえて虚偽の供述をする理由もない。 イ第1及び第5事件の被害者と同様,本件の体験は強く印象に残っているものと考えられる。 ウしたがって,Dの供述は基本的に信用することができる。 (3)被告人がDを押し倒したかDの供述から,Dが抵抗し,被告人ともみ合う状況の中でDが転倒したことは認められる。しかし,被告人は,Dをマンション北側の通路に連れて行った上で姦淫しようとしていたのであるから,エレベーターホール内でDを押し倒す必要はないのであり,被告人が意図的にDを押し倒したとまでは認められない。 (4)被告人がDの腹部を意図的に手拳で2回殴ったか被告人の体格からして,Dの身体を意図的に殴打すれば,容易にDの抵抗 倒す必要はないのであり,被告人が意図的にDを押し倒したとまでは認められない。 (4)被告人がDの腹部を意図的に手拳で2回殴ったか被告人の体格からして,Dの身体を意図的に殴打すれば,容易にDの抵抗を封じることが可能であるにもかかわらず,エレベーターホール内においてDがかなり激しく抵抗しても,被告人はDを殴打してはいない。また,被告人は抵抗するDを何とか静かにさせようとしていたというのであり,被告人がDの抵抗を封じようと手や腕に力を入れれば,その体格差からして,Dの身体にかなり強い力が加わったと考えられる。そうすると,必死で抵抗を試みていたDが,被告人ともみ合う中で腹部に強い衝撃を感じた際に,これを意図的に殴打されたものと認識したということは十分あり得るところである。 したがって,被告人がDの抵抗を封じようとした際に被告人の手や腕がDの腹部に強く当たったという可能性は否定できず,被告人がDの腹部を手拳で意図的に2回殴打したとまでは認められない。 (5)なお,被告人は,当公判廷において,一旦外に出たのは,外の様子を見に行くためではなく,そのまま逃走するつもりであった旨供述する。 被告人は,Dの両手首を身体の前で縛っていること(第6及び第7事件において,被告人は,姦淫行為を終えて逃走する際,被害者を後ろ手に縛っていたのを前手に縛り直している。),Dも「金はいらんから,逃げるまで騒ぐな。」と言われたと供述していることなどからすると,被告人が一旦,正面出入口から外に出たのは,逃走するためであったものと認められる。そのため,公訴事実にある「同女を同マンション北側の通路に連行しようとした際」との事実については,認定から除外した。 第7事件について(1)第7事件の被害者Gは,エレベーター内及び非常階段の踊り場で,被告人から「騒いだら刺すぞ。」 ョン北側の通路に連行しようとした際」との事実については,認定から除外した。 第7事件について(1)第7事件の被害者Gは,エレベーター内及び非常階段の踊り場で,被告人から「騒いだら刺すぞ。」と言われたと供述する。これに対し,被告人は,「刺すぞ。」という言葉は使っておらず,「騒いだら殺すぞ。」と脅迫したと供述する。 (2)Gは,何度か脅迫され,途中でカッターナイフの刃を出し入れする音も聞いていることからすると,Gが具体的な脅迫文言を一字一句正確に記憶するのは困難であったと考えられるのに対し,被告人の,エレベーター内においてはカッターナイフを出していないのであるから,「刺すぞ。」という言葉を使うはずはないという説明はそれなりに合理的である。また,脅迫文言は,「騒いだら殺すぞ。」であったとの被告人の供述もそれ自体不自然とはいえないし,他のほとんどの事件において,被害者が「騒いだら殺すぞ。」と脅迫されたと述べていることとも整合している。また,脅迫文言が「刺すぞ。」ではなく「殺すぞ。」であったとしても,被告人にとって有利になるとはいえず,被告人がこの点についてあえて虚偽を述べる理由もない。 (3)したがって,被告人は,Gに対し,「騒いだら殺すぞ。」と言ったものと認められる。 (法令の適用)被告人の判示第1,第5ないし第7,第10,第11の各所為のうち,各住居侵入の点はいずれも刑法130条前段に,各強盗強姦の点はいずれも同法241条前段に,判示第2ないし第4,第9の各所為のうち,各住居侵入の点はいずれも同法130条前段に,各強盗強姦未遂の点はいずれも同法243条,241条前段に,判示第8の1の所為のうち,住居侵入の点は同法130条前段に,窃盗の点は同法235条に,判示第8の2の所為は同法130条前段にそれぞれ該当するが,判示第1,第5 ずれも同法243条,241条前段に,判示第8の1の所為のうち,住居侵入の点は同法130条前段に,窃盗の点は同法235条に,判示第8の2の所為は同法130条前段にそれぞれ該当するが,判示第1,第5ないし第7,第10,第11の各住居侵入と各強盗強姦との間にはいずれも手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条によりいずれも1罪として重い強盗強姦罪の刑でそれぞれ処断することとし,判示第2ないし第4,第9の各住居侵入と各強盗強姦未遂との間にはいずれも手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条によりいずれも1罪として重い強盗強姦未遂罪の刑でそれぞれ処断することとし,判示第8の1の住居侵入と窃盗との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い窃盗罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示第1ないし第7,第9ないし第11の各罪についていずれも有期懲役刑を,判示第8の1,2の各罪についていずれも懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第6の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役30年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中220日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が約3年半の間に,10回にわたり,強姦して現金を奪う目的でマンション等に侵入し,うち6回は被害女性を強姦して現金等を強取し(判示第1,第5,第6,第7,第10及び第11),さらにそのうち1回は被害者に傷害を負わせ(判示第6),4回は強姦については未遂に終わったものの(判示第2,第3,第4及び第9),そのうち1回は現金を強取し(判示第3),また1回 第10及び第11),さらにそのうち1回は被害者に傷害を負わせ(判示第6),4回は強姦については未遂に終わったものの(判示第2,第3,第4及び第9),そのうち1回は現金を強取し(判示第3),また1回は被害者に傷害を負わせ(判示第4),さらに,強姦して現金を奪う目的で,マンションに侵入して被害者方の鍵を盗み(判示第8の1),その鍵を使用して同マンションに侵入した(判示第8の2)という事案である。 被告人は,自己の性欲を満たし,自由に使える金を得たいと考えて各犯行に及んだものであって,その動機は,被害者の人格を無視した身勝手極まりないものであり,酌むべきところは全くない。被告人は,事前にガムテープやカッターナイフ,マスク等を用意した上,深夜車で徘徊して女性(被害者)を物色し,現金を持っていそうな被害者の後をつけ,被害者に続いてオートロックのマンション内に侵入したり,被害者方が無施錠であることを利用して犯行に及んでおり,犯行は計画的で狡猾である。また,被告人は,帰宅した被害者や就寝中の被害者にいきなり襲いかかり,カッターナイフを用いて被害者の抵抗を封じたり,ガムテープを用いて被害者を緊縛するなど,犯行態様は危険なものであり,「お金が目当てやねん。」などと嘘を言って被害者をおとなしくさせたり,写真撮影するなどした上で,ガムテープで緊縛され抵抗できない被害者を姦淫するなどもしていて,卑劣極まりない。さらに,姦淫後には,被害者の心をさらに傷つけるような言動をするなど,犯行後の情状も悪い。被告人は,平成17年から平成21年までの間,連続して同種の犯行に及んでおり,この種の犯罪に対する常習性が認められるところであり,本件犯行に表れた性的傾向が改善されなければ,今後の再犯の可能性も危惧される状況にある。 被害者らは,殺されるかもしれないとの恐怖感の下で姦 おり,この種の犯罪に対する常習性が認められるところであり,本件犯行に表れた性的傾向が改善されなければ,今後の再犯の可能性も危惧される状況にある。 被害者らは,殺されるかもしれないとの恐怖感の下で姦淫され,姦淫が未遂に終わった被害者らも,同じく強い恐怖感や屈辱感を味わっているのであり,被告人による暴行の結果,判示第4の被害者は全治8日間,判示第6の被害者は全治15日間を要する傷害を負っている。夜1人で出歩けなくなったり,転居や心療内科への通院を余儀なくされるなど,被害者らは日常生活に多大の支障を来しており,その被った精神的,肉体的苦痛には極めて大きなものがある。被害者らが一様に被告人に対する厳しい処罰を求めているのももっともなところである。強取された現金等の被害金額も合計で36万円余りと高額であり,以上によれば,本件の結果は誠に重大である。 しかしながら,他方において,被告人は,各犯行において,ことさらに被害者の身体を傷つけるような攻撃をしてはいないこと,第6及び第7事件では,姦淫後,被害者が自分で拘束を解くことができるよう,後ろ手に縛っていた両手首を身体の前で縛り直すなどしていること,逮捕直後から犯行を認め,逮捕事実以外についても自ら供述し,事件全体の解明に寄与していること,自分がなぜ本件のような犯行に及んだのかについて,現時点で十分に理解が深まっているとはいい難いものの,被害者に対する謝罪の言葉を述べ,反省の態度を示していること,被告人の妻が,同人の兄から400万円,被告人の両親から50万円をそれぞれ借り受けて示談金を工面し,姦淫が既遂に達している第1,第5,第6及び第10事件の各被害者との間で,それぞれの被害者に100万円ずつを支払う内容の示談を成立させており,既に示談金が全額支払われていること,また,第8事件の各被害者との間でも している第1,第5,第6及び第10事件の各被害者との間で,それぞれの被害者に100万円ずつを支払う内容の示談を成立させており,既に示談金が全額支払われていること,また,第8事件の各被害者との間でも示談が成立し,示談金のうち一部が支払われていること,示談は成立してはいないものの,第11事件の被害者に対しても50万円が支払われていること,このような借金をしてまで示談に尽力した妻が,被告人を見捨てることなく,社会復帰がどんなに先になったとしても被告人を待ち続け,更生に力を尽くすと述べているほか,被告人の母親も社会復帰を待っていること,被告人には罰金前科があるが,公判請求されるのは今回が初めてであることなど,被告人にとって有利に斟酌すべき事情もある。 以上のような諸事情に基づいて検討すると,被告人の刑事責任が極めて重大であることからすると,検察官が主張するように,被告人を無期懲役に処するという選択も十分あり得るところではある。しかし,一部とはいえ,複数の被害者との間で示談が成立し,合計450万円余りの示談金が支払われていることや,被告人の更生に力を尽くす旨を述べる妻らが存在することは,本件において軽視することができない事情であり,被告人の前科関係やその性格傾向等からして,更生の可能性も十分残されていると思われることにも照らすと,無期懲役の選択は,仮釈放の可能性を考慮に入れてもなお躊躇されるところであり,被告人に対しては,法律の許す最も長期の有期懲役刑を科するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑無期懲役)平成22年6月15日大阪地方裁判所第5刑事部裁判長裁判官中川博之裁判官仁藤佳海裁判官植村一仁 5日大阪地方裁判所第5刑事部裁判長裁判官中川博之裁判官仁藤佳海裁判官植村一仁
▼ クリックして全文を表示