- 1 -主文 本件申立てを却下する。 申立費用は申立人の負担とする。 理由 第1申立ての趣旨 処分行政庁は,申立人に対し,本案訴訟の第1審判決言渡しまで,仮に,退去強制令書の発付をしてはならない。 申立費用は相手方の負担とする。 第2事案の概要 本案事件は,韓国国籍を有する外国人である申立人が,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という)入国審査官から,申立人が出入国管理及び難民認定。 法(以下「入管法」という)24条4号ロに該当し,かつ出国命令対象者に。 該当しない旨の認定を受け,大阪入管特別審理官から,前記認定が誤りがない旨の判定を受けたため,処分行政庁である大阪入管主任審査官から退去強制令書の発付処分をされることにより重大な損害が生ずるおそれがあるとして,その差止めを求めた抗告訴訟(差止めの訴え)である。 本件は,申立人が,処分行政庁から退去強制令書発付処分をされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり,かつ,本案について理由があるとして,行政事件訴訟法37条の5第2項に基づき,仮の差止めを求める事案である。 当事者の主張,「」(),「()」本件申立の理由は別紙仮の差止め命令申立書写別紙主張書面1(写,別紙「主張書面(2(写)及び別紙「主張書面(3(写)各記載))」)」のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙「意見書(写)及び別」紙「意見書(2(写)各記載のとおりである。 )」第3当裁判所の判断- 2 - 一件記録によれば,以下の事実が一応認められる。 ( )申立人の身上等 申立人は,昭和▲年(▲年)▲月▲日,中華人民共和国において出生した外国人女性である(疎甲1,2,申立の全趣旨。 )申立人は,平成8年(1996年)4 が一応認められる。 ( )申立人の身上等 申立人は,昭和▲年(▲年)▲月▲日,中華人民共和国において出生した外国人女性である(疎甲1,2,申立の全趣旨。 )申立人は,平成8年(1996年)4月1日,韓国国籍を有するAと婚姻し,韓国国籍を取得した。なお,平成13年(2001年)10月10日,申立人とAとの間で離婚判決が確定している(疎甲1,2。 )( )申立人の本邦への入国経緯 ,,,申立人は平成11年4月15日大阪入管関西空港支局入国審査官から在留資格を入管法別表第1の3所定の「短期滞在(在留期間15日)とす」る上陸許可を受けて本邦に入国し,その後,残留期限である同月30日を超えて本邦に残留した(疎乙1,2。 )( )違反調査等の経緯 ア申立人は,平成19年8月26日,和歌山東警察署員により,入管法違反(不法残留)により現行犯逮捕されたが,同年9月6日,和歌山地方検察庁において,不起訴処分とされた(疎乙2。 )イ大阪入管入国警備官は,申立人について入管法24条4号ロに該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,平成19年9月5日,大阪入管主任審査官から収容令書の発付を受け,同月6日,同令書を執行し,申立人を法務省入国者収容所西日本入国管理センターに収容した(疎乙3。 ),,ウ大阪入管入国審査官は大阪入管入国警備官から申立人の引渡しを受け同年10月12日,申立人に対する違反審査を行い,申立人が入管法24条4号ロに該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨認定し,申立人にこれを通知したところ,申立人は,特別審理官による口頭審理を請求した(疎乙4,5。 )エ大阪入管特別審理官は,同月19日,口頭審理を行い,同日,入国審査- 3 -官の認定が誤りがないと判定したところ,申立人は,同月22日,法務大 審理官による口頭審理を請求した(疎乙4,5。 )エ大阪入管特別審理官は,同月19日,口頭審理を行い,同日,入国審査- 3 -官の認定が誤りがないと判定したところ,申立人は,同月22日,法務大臣に対し,異議を申し出た(申立の全趣旨。 )オなお,申立人は,平成19年9月26日,日本人男性であるBと,和歌山市長に対し婚姻届をし,同日受理されている(疎甲23,24。 )( )本案訴訟の提起及び本件の申立て 申立人は,平成19年9月28日,相手方を被告として,大阪入管主任審査官は申立人に対し退去強制令書を発付してならない旨求める差止めの訴えを提起するとともに(当庁平成19年(行ウ)第174号,本件仮の差止)めを申立てた(顕著な事実。 ) 「処分(中略)がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要(行政事件訴訟法37条の5第2項)について」( )申立人は,本件における「処分(中略)がされることにより生ずる償う ことのできない損害を避けるため緊急の必要」について,大要次のとおり主張する。 ア退去強制令書が発付されると,無期限の収容により人身の自由を奪われるという不利益を被る。そして,人身の自由に対する侵害は,個人の生命,,を奪うことに次ぐ人権に対する重大な侵害でありその者に対して精神的肉体的に重大な損害をもたらす。 また,退去強制令書の発付処分は,司法が全く関与しないにもかかわらず,法務大臣の裁決のみで無期限の身柄拘束を認める効力を有するものであり,我が国の法体系の中でも異例のものであるから,このような処分がされるべき場合においては,裁判所はその処分の扱いに慎重を期すべきである。 イまた,申立人に対して退去強制令書の発付及びこれに基づく送還が行われると,本邦における生活そのものが奪われるば な処分がされるべき場合においては,裁判所はその処分の扱いに慎重を期すべきである。 イまた,申立人に対して退去強制令書の発付及びこれに基づく送還が行われると,本邦における生活そのものが奪われるばかりか,少なくとも5年以上は本邦への入国が認められなくなるので,Bとの夫婦関係は決定的に- 4 -破壊される。 ウさらに,退去強制令書が発付され送還されてしまうと,差止め訴訟はもちろん,取消訴訟も含めて訴えの利益が消滅し,本案訴訟による救済も受けられなくなる。仮に訴えの利益を肯定して,本案訴訟において請求が認容されても,現行法上,送還前に申立人が置かれていた原状を回復する制度的保証がないから,退去強制により申立人は回復不能な損害を受けることになる。 また,退去強制令書が発付されると,寸時に退去強制が行われるのが通常であり,執行停止の申立てでは権利救済はできない。 ( )ア入管法は,52条3項本文において,入国警備官は,退去強制令書を 執行するときは,退去強制を受ける者に退去強制令書又はその写しを示して,速やかにその者を同法53条に規定する送還先に送還しなければならない旨規定する一方,同条5項において,入国警備官は,退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは,送還可能のときまで,その者を入国者収容所,収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる旨規定している。 このような入管法の規定からすると,退去強制令書の執行は,通常,その発付を受けた者を,入国者収容所,収容場その他法務大臣又はその委任(「」。),を受けた主任審査官が指定する場所に収容し以下収容段階というその後に,その者を入管法53条所定の国に送還すること(以下「送還段階」という)が予定されているということができる 委任(「」。),を受けた主任審査官が指定する場所に収容し以下収容段階というその後に,その者を入管法53条所定の国に送還すること(以下「送還段階」という)が予定されているということができる。 。 ,,,そして本件において申立人が主張する損害もその執行の段階に応じ前記2( )アは,退去強制令書の執行の収容段階において生じる損害につ いて主張するものであり,同イ及びウは,退去強制令書の執行の送還段階において生じる損害について主張するものであると解される。 したがって,退去強制令書発付処分がされることにより生ずる「償うこ- 5 -とのできない損害」の有無の判断は,上記各段階に応じ,その内容に即して具体的に検討するのが相当である。 イなお申立人は退去強制令書発付前において審理の対象となるのは退,,「去強制令書の発付処分」ただ一つであって,収容部分と送還部分に分けることはできないとか,あるいは退去強制令書に基づく執行の収容部分は付随処分である旨主張し,損害の有無については送還部分のみを判断の対象とすべき旨主張している。 しかし,退去強制令書の発付処分によって生じる損害は,退去強制令書の発付及びそれに基づく執行という一連の事実によって発生するものであるから(申立人の主張する具体的損害も,そのことを前提にしていると解されることは上述のとおりである,審理対象として区別できるのか,あ。)るいは退去強制令書に基づく執行の収容部分が付随処分であるのか否かという理論的な問題はさておき,損害の有無程度の判断は,上述のとおり,執行の各段階に応じ,その内容に即して具体的に検討すべきである。これと異なる申立人の主張は採用できない。 ( )退去強制令書の執行の収容段階における損害について ,,,申立人は前記2( )アのとおり退 じ,その内容に即して具体的に検討すべきである。これと異なる申立人の主張は採用できない。 ( )退去強制令書の執行の収容段階における損害について ,,,申立人は前記2( )アのとおり退去強制令書が執行され収容されると 償うことのできない損害が生じると主張する。 しかしながら,入管法は,52条5項で収容について規定する一方,61条の7第1項において,被収容者には入国者収容所又は収容場の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない旨規定し,同条2項及び3項において,寝具の貸与,糧食の給与,給養の適正及び設備の衛生を保障するとともに,同条6項の委任に基づく被収容者処遇規則において,被収容者の属する国の風俗習慣に基づく生活様式の尊重,戒具使用の制限,運動の機会の付与,娯楽用具の使用等を定めている。これらの規定を通覧すると,被収容者は,身体の自由を制限されているとはいえ,その- 6 -自由について可能な限りの配慮がされていることは明らかであって,こうした事情にもかんがみると,本件における申立人主張の各事実をしんしゃくしたとしても,退去強制令書の執行の収容段階において生じる損害は,社会通念上金銭賠償による回復をもって満足することもやむを得ないというべきである。したがって,この段階においては「処分(中略)がされることによ,り償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があるとはいえない。 ( )退去強制令書の執行の送還段階における損害について ア申立人は,前記2( )イ,ウのとおり,退去強制令書が執行されて送還 されると,本邦における生活そのものが奪われるばかりか,少なくとも5年間は本邦への入国が認められなくなるので,Bとの夫婦関係が決定的に破壊され,さらに,差止め訴訟はもちろん,取消訴訟も含 て送還 されると,本邦における生活そのものが奪われるばかりか,少なくとも5年間は本邦への入国が認められなくなるので,Bとの夫婦関係が決定的に破壊され,さらに,差止め訴訟はもちろん,取消訴訟も含めて訴えの利益が消滅し,本案訴訟による救済も受けられなくなり,仮に訴えの利益が肯定され本案訴訟の請求が認容されても,現行法上送還前に申立人が置かれていた原状を回復する制度的保証がないから,回復不能な損害を被ると主張する。 しかしながら,申立人が主張するこれらの損害は,いずれも退去強制令書発付処分の取消訴訟を提起し,行政事件訴訟法25条2項に基づく執行停止を受けることによって避けることのできる性質のものであるから,行政事件訴訟法37条の5第2項にいう「処分(中略)がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があるとはいえないというべきである。 イ申立人は,取消訴訟の提起及び執行停止の申立てといった事後的救済手続により争えばよいというのでは,仮の差止めが機能する余地はなくなってしまうから,仮の差止めの判断においては事後的救済手段は考慮すべきではないと主張する。 しかし,仮の差止めの本案となる差止めの訴えが,取消訴訟や執行停止- 7 -制度によるのでは実効的な権利救済が困難である場合に対応するために平成16年の行政事件訴訟法改正により新たに法定された訴訟類型である以上,かかる差止めの訴えの提起を前提とする仮の差止めについても,取消訴訟及び執行停止制度によって権利救済を図ることができるか否かが,考慮されるべきである。これと異なる申立人の主張は採用できない。 ウまた,申立人は,退去強制令書が発付されると,寸時に退去強制が行われるのが通常であり,執行停止の申立てでは権利救済はできない旨主張するが,一件記録によってもかかる る申立人の主張は採用できない。 ウまた,申立人は,退去強制令書が発付されると,寸時に退去強制が行われるのが通常であり,執行停止の申立てでは権利救済はできない旨主張するが,一件記録によってもかかる事情は窺われず,申立人の主張は採用できない。 ( )以上説示したところによれば,申立人が仮の差止めを求める退去強制令 書発付処分について「処分(中略)がされることにより生ずる償うことの,できない損害を避けるための緊急の必要」があるとはいえない。 結論 以上によれば,本件申立は,その余の点について判断するまでもなく却下を免れない。 よって主文のとおり決定する。 平成19年11月1日大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官森崎英二裁判官小野裕信裁判官釜村健太
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