平成10(行コ)191 損害賠償請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成8年(行ウ)第64号)

裁判年月日・裁判所
平成11年11月29日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文12,989 文字)

主文 一原判決主文第二項及び第三項を次のとおり変更する。 二被控訴人Aは、伊勢原市に対し、金一〇三万円及びこれに対する平成八年一二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 三控訴人の被控訴人Aに対するその余の請求並びにその余の被控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。 四訴訟費用は、控訴人と被控訴人Aとの間では、第一、二審を通じて、これを三分し、その一を被控訴人Aの、その二を控訴人の負担とし、被控訴人とその余の被控訴人らとの間では、控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一控訴人 1 原判決中、主文第一項(訴えの一部却下部分)以外の部分を取りけす。 2 被控訴人らは、伊勢原市に対し、連帯して、二九八万七〇〇〇円(ただし、被控訴人Bは二〇六万円)及びこれに対する平成八年一二月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第一、第二審を通じて、被控訴人らの負担とする。 二被控訴人ら 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 第二事案の概要一本件訴訟の概要及び争いのない事実等本件訴訟の事案及び争いのない事実等は、原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の冒頭部分及び「一争いのない事実等」に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、原告を「控訴人」に、被告を「被控訴人」に改め、争いのない事実5として、次の事実を、原判決一四頁三行目の次に改行の上加える。)。 「5 伊勢原市は、平成元年ころ以降、市道用地取得に伴う分筆登記業務の土地家屋調査士への委託に際し、資料調査、現地調査、測量業務の全行程を委託してきていたところ、平成九年度から、従来の方式を改め、既に丈量図が作成されその作成の過程で測量が行われている場合には、既存の測量成果の確 士への委託に際し、資料調査、現地調査、測量業務の全行程を委託してきていたところ、平成九年度から、従来の方式を改め、既に丈量図が作成されその作成の過程で測量が行われている場合には、既存の測量成果の確認業務を主とし、現地調査の業務(事前調査・多角測量・復元測量・立会)と測量業務のうち、境界点測設の業務を委託しないことにした(甲一八参照。以下、右の方式を「平成九年度新方式」という。)。」二争点と双方の主張について原審においては、「被控訴人Bが、二号契約に関する公金支出についての訴えの部分に関し被告適格を有するか」が、本案前の争点となり、原判決は、被控訴人Bは、地方自治法二四二条の二第一項にいう「当該職員」に該当せず、二号契約に係る本件訴え部分について被告適格を有しないと判断したところ、控訴人は、この点につては控訴の対象としていない。 したがって、争点と双方の主張については、原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の「二争点と双方の主張」のうち、争点1(本案前の争点)についての記載を除いた、本案についての争点(本件各契約の締結及びこれに基づく公金の支出に関与した被控訴人らに財務会計上の違法があるか)に関する部分の記載(原判決一五頁一〇行目から二九頁六行目まで)のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決二一頁七行目の「被告B」及び八行目から9行目にかけての「、被告Bは二号契約の各」を削除する。)。 そして、当事者らは、当審で、次のとおり主張を加えた。 1 控訴人の主張(一) 地方公共団体が、道路用地取得に伴う分筆登記図面作成のために土地家屋調査士への業務委託をするに際しての内容や単価決定について、行政裁量が認められているとしても、それは、社会通念上、妥当性、合理性がなければならないところ、本件各契約における委託料は、 ために土地家屋調査士への業務委託をするに際しての内容や単価決定について、行政裁量が認められているとしても、それは、社会通念上、妥当性、合理性がなければならないところ、本件各契約における委託料は、他の地方公共団体に比較して高額であり、地方財政法四条一項が定める、必要かつ最小の限度を超えていて裁量権の踰越、濫用があり地方自治法二条一三項に反する違法行為である。 (二) 右の理は、以下の事実に照らしても明らかである。 神奈川県、伊勢原市及び伊勢原市土地開発公社の三者が、平成七年八月一日に締結した協定書(甲第二二号証の一)に基づいて、伊勢原市内の県道六一一号線の道路改良工事事業が実施された。この道路改良事業の用地取得に伴う表示登記等の事務については、神奈川県が準用している「土地事業用地の調査事務及び登記事務委託要領」に基づいて処理すること、すなわち、分筆登記手続のための委託料単価は、一筆あたり三万円程度で実施することとされた(伊勢原市が締結した本件各契約のように全工程を委託内容として、一筆あたり一五万円という不当に高額な委託料単価とはされていない。)。 そして、伊勢原市土地開発公社は、被控訴人公嘱協会に右県道六一一号線の道路改良事業の用地取得に伴う表示登記事務について委託したが、その内容は基本的に、一筆当たりの単価三万円程度の地積測量図作成のみであって、現実に、その単価三万円程度で作成された地積測量図は、十分な精度を持ち、何らの支障なく分筆登記手続もされている。 (三) このように、伊勢原市も関与して、ほぼ同時期になされた県道六一一号線に係る分筆登記については、一筆当たりの単価約三万円の神奈川県方式の必要最小限度の業務しか委託されず、他方、本件各契約の対象である伊勢原市道に係る分筆登記の一筆当たりの単価は約一五万円であったのであって、かか 記については、一筆当たりの単価約三万円の神奈川県方式の必要最小限度の業務しか委託されず、他方、本件各契約の対象である伊勢原市道に係る分筆登記の一筆当たりの単価は約一五万円であったのであって、かかる不当な契約内容や単価の決定が、地方公共団体の裁量を逸脱することは明らかである。 なお、被控訴人Bは伊勢原市総務部管財課用地担当参事兼伊勢原市土地開発公社理事長の職であり、被控訴人Gは、伊勢原市総務部管財課用地担当主幹兼伊勢原市土地開発公社事務局長の職であるのであるから、右被控訴人両名及び被控訴人公嘱協会は、神奈川県方式の業務を委託すれば、地積測量図が作成でき分筆登記にも支障がなく使用できること、単価約三万円で、必要にして十分な精度を持つ地積測量図(伊勢原市土地開発公社が被控訴人公嘱協会に対して、平成七年度に行った用地取得に伴う分筆登記図面作成を委託した結果、被控訴人公嘱協会が作成した分筆図面である甲第二六号証参照)が作成できることを熟知しながら、支出命令を発して、伊勢原市に故意に無駄な支出をさせたものである。 (四) また、伊勢原市は、市道用地取得に伴う分筆登記の委託に際し、従前方式を改め、平成九年度新方式を採用したのは、従前の委託業務が不必要であったことの証左である。 (五) なお、被控訴人Cは、伊勢原市の決裁規程により部下に専決の権限を委任していても、市長としての統括責任を免れない。 2 被控訴人Cらの主張(一) 本件各契約当時、測量業者が作成した丈量図が存在したことから、本件各契約においても右丈量図そのもの、あるいはその作成過程で収集された資料を利用することがあれば、契約額はかなり低額なものとなったはずであるとの議論もあり得るが、従前の方式によった本件各契約は、地積測量図を作成するために一般に必要とされる業務の全行程を被控訴人公嘱協会 を利用することがあれば、契約額はかなり低額なものとなったはずであるとの議論もあり得るが、従前の方式によった本件各契約は、地積測量図を作成するために一般に必要とされる業務の全行程を被控訴人公嘱協会へ委託することにより、より精度が高く、かつ、信頼性のある結果を得ることを企図したものであり、その細目や単価の定め方も土地家屋調査士報酬表に則ったものであるから、当時、より低額で発注する方式が存在していた中で、市がそれによらず従前の方式で発注したことは、地方公共団体に与えられた合理的な裁量の範囲内で適法である。 (二) 伊勢原市が、平成九年度新方式を採用したのは、従前は、分筆登記に十全を期すため、より高い精度の地積測量図を得るべく土地家屋調査士が分筆登記業務を実施する上で行い得るとされている業務をほぼ網羅する内容であったが、我が国経済が不況から脱し得ない状況が続いたことを受けて、市財政が厳しくなってきたことから、市においては、各種事務事業の経費節減を図ることが肝要となったので、その一環として分筆登記に係る業務委託についても検討を加え、その結果、平成九年度の右業務委託については、行程の合理化、単価の低減等により対処することとしたものである。平成九年度新方式により合理化等を図った部分は、予算上の制約からであり、決して不必要な業務であったからというわけではない。 また、平成九年度新方式によらない従前の発注が違法であるということになれば、伊勢原市のみならず、各地方公共団体で行財政改革として進められている事務事業の見直しにより簡素合理化される業務についても違法な支出であったと評価されることにもなりかねず、その結果が不合理であることも明らかである。 なお、仮に、本件各契約の対象物を、平成九年度新方式で委託した場合は、従前方式の価格と比較すると、概ね三分の一程 であったと評価されることにもなりかねず、その結果が不合理であることも明らかである。 なお、仮に、本件各契約の対象物を、平成九年度新方式で委託した場合は、従前方式の価格と比較すると、概ね三分の一程度の額となる(なお、甲第一八号証中の平成九年度新方式によった場合「概ね三分の一程度の削減が見込まれる」旨の記載は、「概ね三分の一程度に削減が見込まれる」旨の誤記である。)。ただし、平成九年度新方式において、伊勢原市が被控訴人公嘱協会に委託しなくなった境界確定業務や登記嘱託手続などの業務は、伊勢原市の職員によって行われており、その業務は不要な業務ではないし、これからの業務を市の職員が行うことになる業務コストが発生している。 (三) 控訴人の指摘する県道六一一号線の道路改良に伴う事業については、その事業主体は神奈川県であって、伊勢原市土地開発公社は県の主導のもとに所定の業務を遂行する受託者、伊勢原市はその債務保証者として登場したものにすぎず、被控訴人公嘱協会に委託する方法も神奈川県の方式により行われたにすぎない。すなわち、控訴人の指摘する右事例は、伊勢原市が市の事業を、本件とは異なってより低額の県の方式で被控訴人公嘱協会に委託したものではないのであるから、本件請求を正当化する根拠となり得ない。 (四) 仮に、本件契約に控訴人の主張する問題点があったとしても、被控訴人Cらが損害賠償責任を負うことはない。すなわち、伊勢原市においては、分筆登記に必要な地積測量図等の作成を目的とする土地家屋調査士らとの契約は、従前から繰り返し行われてきた通常業務の一つともいえるものであって、本件各契約における価額委託項目については、特に従前と異なる点はなかったものである。かかる状況の下で、会計上の行為を担当する被控訴人らが、その職務に属する多種多様の事務を処理すべき るものであって、本件各契約における価額委託項目については、特に従前と異なる点はなかったものである。かかる状況の下で、会計上の行為を担当する被控訴人らが、その職務に属する多種多様の事務を処理すべき責務があるなかで、従前の方式を踏襲し、控訴人が指摘する専門的・技術的な事項である価額や委託項目については、精査をしなかったとしても、やむを得ないものであって、被控訴人らが損害賠償責任を負うことはない。 (五) 被控訴人Cの責任について被控訴人Cは、市長の地位にあるが、本件各契約の締結及び支出命令とも専決によって処理された。専決制度のもとでの事務の処理が行われた場合には、本来の権限者は、専決を任された補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により補助職員が違法行為をすることを阻止しなかったときに限り賠償責任を負う。被控訴人Cには、右のような義務違反はない。 (六) 被控訴人Hの責任について被控訴人Hの職務は、市長の支出命令に基づき支出をすることであるから(地方自治法二三二条の四参照)、支出命令のある場合は、支出するのが当然であるところ、本件の場合、その支出命令は関係規程に定める手続に従って成立しているものであって、被控訴人Hがその職務に反するところはない。 3 被控訴人公嘱協会の主張(一) 地積測量図と丈量図が一致している場合、土地家屋調査士の行う業務が無駄のようにも思えるが、測量業者の測量図は、歴史的機能や本質的な職能の相違から、登記のための地積測量図として利用できないものもかなり存在しており、測量業者の作成した丈量図があっても土地家屋調査士のなす登記のための調査や測量が不可欠となる。 (二) 被控訴人Cらは、本件各契約の対象物を、平成九年度新方式で委託した場合、地積測量図作成業務に限定す 業者の作成した丈量図があっても土地家屋調査士のなす登記のための調査や測量が不可欠となる。 (二) 被控訴人Cらは、本件各契約の対象物を、平成九年度新方式で委託した場合、地積測量図作成業務に限定すると、概ね三分の一程度の額となる旨を主張するが、伊勢原市が被控訴人公嘱協会に委託しなくなった境界確定業務や登記嘱託手続などの業務は、伊勢原市の職員によって行われており、その業務は不要な業務ではないし、これらの業務を市の職員が行うことによる業務コストが発生しているものである。 第三当裁判所の判断一当裁判所は、本件各契約の委託内容の設定及びこれに伴う委託料の額については、支出負担行為である本件各契約の締結に関して、地方公共団体(本件では、決裁規程に基づく専決処理として、一号契約は、伊勢原市の助役である被控訴人A、二号契約は、伊勢原市の総務部長である訴外Dが締結した。)に与えられた合理的裁量の範囲を一部逸脱して、違法と言わざるを得ない部分があると判断する。その理由は次のとおりである。 1 まず、道路用地取得に伴う分筆登記図面作成についての業務委託の趣旨及び性質等及び本件各契約についての業務委託の内容及び工事単価が決定された経緯については、原判決三二頁四行目から三八頁末行までの記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決三三頁四行目の末尾に続けて、「昭和六三年ころまでの右の地積測量図及び公図写し作成に係る委託単価は、一筆当たり二〇〇〇円弱の安価であった。」を加える。)。また、被控訴人公嘱協会は、伊勢原市から委託を受けた本件各契約に定められた業務のすべてを履行し、一連の図面等をまとめた成果簿を伊勢原市に納品していることも、原判決四六頁五行目の「証拠」から四七頁八行目末尾の記載のとおりであるから、これを引用する。 2 ところで、地方自治法 務のすべてを履行し、一連の図面等をまとめた成果簿を伊勢原市に納品していることも、原判決四六頁五行目の「証拠」から四七頁八行目末尾の記載のとおりであるから、これを引用する。 2 ところで、地方自治法二条一三項は、「その事務を処理するに当たって・・・最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定し、また、地方財政法四条一項は、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない」と規定しているが、これらのことは、執行機関に対する当然の義務を定めたものであって、地方公共団体が土地家屋調査士に対し用地買収に伴う分筆登記に必要な地積測量図の作成を委託するに際しどの範囲の業務を委託するかについての具体的な規制をするものではない。 右の業務委託は、予算の制約や図面の信頼性の問題とも関連し、ある程度の範囲では当該地方公共団体の裁量にゆだねられているというべきであるが、その裁量権も合理的なものでなければならないことは明らかである。この裁量権が合理的なものであるか否かは、その業務委託の必要性、目的、効果等を総合的に判断して決することになる。 3 本件各契約の対象土地については、いずれも既に伊勢原市の委託により、測量が丈量図(事業用土地全体の測量の結果を一枚の図面に記載した用地求積図)を作成し、これを同市に納品済みであることは当事者間に争いがなく、その過程で、当然、同社により資料調査、現地調査、測量調査が実施されたものと推認される。 そして、伊勢原市は、昭和六三年ころまでは、土地家屋調査士資格を有しない測量業者に分筆登記の嘱託書に添付する地積測量図及び公図写しの作成を、一筆当たり二〇〇〇円弱の安価な単価で委託していたが、平成元年ころ以降、市道用地取得に伴う分筆登記の委託に際し、土地家屋調査士 い測量業者に分筆登記の嘱託書に添付する地積測量図及び公図写しの作成を、一筆当たり二〇〇〇円弱の安価な単価で委託していたが、平成元年ころ以降、市道用地取得に伴う分筆登記の委託に際し、土地家屋調査士に対して、資料調査、現地調査、測量業務の全行程を委託してきたこと、市は、平成九年度から、従来の方式を改め、既に丈量図が作成されその作成の過程で測量が行われている場合には、既存の測量成果の確認業務を主とし、現地調査の業務(事前調査・多角調査・復元測量・立会)と測量業務のうち、境界点測設の業務を委託しないという、土地家屋調査士に対する業務委託内容を限定したより単価の安い平成九年度新方式を採用したことも、前判示のとおりである。 また、甲第二二号証の一、二、第二三ないし第二六号証及び弁論の全趣旨によれば、平成七年度の伊勢原市内の県道六一一号線の道路改良事業は、神奈川県が事業主体となり、伊勢原市土地開発公社は県の主導のもとに所定の業務を遂行する受託者、伊勢原市はその債務保証者として実施されたものであるところ、右県道の改良事業の用地取得に伴う表示登記等事務について、伊勢原市土地開発公社から被控訴人公嘱協会への業務委託は、本件各契約に定められた従前方式(一筆あたりの単価一五万円程度)ではなく、より単価の安い神奈川県の方式(一筆当たりの単価三万円程度)より行われたものであること及び現実に、その方式によって作成された地積測量図によって分筆登記手続に支障が発生したことはないことが認められる。 4 右の各事実に照らせば、分筆登記図面作成業務委託契約である本件各契約の対象地のように用地買収が既に実施されて、丈量図が作成され、その作成の過程で、現地調査がなされている場合に、改めて、現地調査等を重複して行う必要性に乏しく、少なくとも、本件新方式の限度によるもので足りるもの ように用地買収が既に実施されて、丈量図が作成され、その作成の過程で、現地調査がなされている場合に、改めて、現地調査等を重複して行う必要性に乏しく、少なくとも、本件新方式の限度によるもので足りるものであって、これを本件各契約のように業務の全行程を土地家屋調査士に委託するのは屋上屋を架する類のものであってその必要性を欠くものというべきである。したがって、本件各契約の締結をするにあたって、伊勢原市(一号契約の専決権者である被控訴人A及び二号契約の専決権者である訴外D)は、少なくとも、平成九年度新方式の限度に委託業務を限定した上で、入札に付するべきであったと解される。 この点について、被控訴人Cらは、改めて現地調査等を行うことは、なお地積測量図の精度と信頼性を高める可能性があり、この目的のために全行程を委託した旨を主張するが、従前方式によって、どの程度、地積測量図の信頼性が高まるのかも不明であるし、仮に高まるとしても、費用対効果の問題を考慮した場合、それだけの費用を投下しただけの効果が発生するとも認め難く、かかる多額の費用をかけてまでの全行程を委託する正当性があるとはいえない。なお、原審証人Eの証言によれば、丈量図の測定結果を復元したところ元の位置と数ミリメートルずれがあったことは認めるが、そもそも測量結果を復元すれば、ある程度の誤差が発生するのは当然であり、仮に再度の現地調査等で、数ミリメートルのずれがあることが発見されたからといって、重複して現地調査をすることによる無用な費用支出を正当化することはできない(また、丙第四号証の四及び原審証人Eの証言によれば、被控訴人公嘱協会の社員で本件各契約における業務を行った土地家屋調査士Fは、結局、従前の測量結果と整合性を保つことを理由として、従前の丈量図作成の際の測量のデーターに基づいて地積測量図を によれば、被控訴人公嘱協会の社員で本件各契約における業務を行った土地家屋調査士Fは、結局、従前の測量結果と整合性を保つことを理由として、従前の丈量図作成の際の測量のデーターに基づいて地積測量図を作成したことが認められる。)。 5 以上の事情を総合すれば、伊勢原市が、既に丈量図が存在している土地を対象とする分筆登記図面作成を土地家屋調査士に委託する本件各契約の締結に際して、平成九年度新方式に定められた業務内容を超えて資料調査、現地調査、測量業務の全行程をその委託内容としたことは、その限度で、地方公共団体の裁量権を逸脱した違法があるというべきである。 なお、被控訴人Cらは、平成九年度新方式は、経費節減の見地から必要最小限の作業工程等にとどめるものであって、平成九年度新方式により合理化等を図った部分は、予算上の制約からであり、決して不必要な業務であったからというわけではないなどと主張するが、従来の全行程の業務委託が真に必要なものなら、平成九年度以降も、予算に計上して実施すべきであったというべきである。また、被控訴人Cらは、平成九年度新方式によらない従前の発注が違法であるということになれば、伊勢原市のみならず、各地方公共団体で行財政改革として進められている事務事業の見直しにより簡素合理化される業務についても違法な支出であったと評価されることにもなりかねない旨を主張するが、裁量権を逸脱して必要性がないものに公費を支出していたことが違法であると判断されることは当然であって、右の主張も失当である。 また、被控訴人Cらは、本件各契約の業務委託内容は、従前の方式を踏襲したものであって、委託内容の精査を担当者に求めることは困難である旨を主張するが、本来、市民の税金を用いて公金の支出に関与している市の職員としては、ただ漫然と前例を踏襲をしていれば足りる 方式を踏襲したものであって、委託内容の精査を担当者に求めることは困難である旨を主張するが、本来、市民の税金を用いて公金の支出に関与している市の職員としては、ただ漫然と前例を踏襲をしていれば足りるものではなく、不必要な経費の節減に努めるのは当然である上、本件各契約の締結と同じ時期に実施された神奈川県が事業主体、伊勢原市土地開発公社が県の主導のもとに所定の業務を遂行する受託者、伊勢原市がその債務保証者として実施された平成七年度の伊勢原市内の県道六一一号線の道路改良事業において、右県道の改良事業の用地取得に伴う表示登記等事務について、伊勢原市土地開発公社から被控訴人公嘱協会への業務委託は、本件各契約に定められた従前方式(一筆あたりの単価一五万円程度)ではなく、より単価の安い神奈川県の方式(一筆当たりの単価三万円程度)により行われたものであることに照らせば、不当な前例を改める契機は、現実にも存在していたものということができる。 6 なお、控訴人は、本件各契約に関して、右の裁量権逸脱以外の違法不当な点を縷々主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。 その理由は、原判決四四頁五行目から四九頁一〇行目記載のとおりであるからこれを引用する。 二次に、右の本件各契約締結における裁量権の逸脱によって、伊勢原市に発生した損害額について検討する。 この点について、被控訴人Cらは、本件各契約の対象物を、平成九年度新方式で委託した場合、概ね三分の一程度の額となることは自認しているが、伊勢原市が被控訴人公嘱協会に委託しなくなった境界確定業務や登録嘱託手続などの業務は、伊勢原市の職員によって行われており、その業務は不要な業務ではないし、これらの業務を市の職員が行うことによる業務コストが発生していること、その他の諸事情を勘案するときは、少なくとも、被控訴人公嘱協 伊勢原市の職員によって行われており、その業務は不要な業務ではないし、これらの業務を市の職員が行うことによる業務コストが発生していること、その他の諸事情を勘案するときは、少なくとも、被控訴人公嘱協会に支払われた一号契約の委託料二〇六万円の二分の一の一〇三万円と、二号契約の委託料九二万七〇〇〇円の二分の一の四六万三五〇〇円の合計一四九万三五〇〇円は、裁量を逸脱した本件各契約の締結によって生じた損害と認められるが相当である。 三続いて、各被控訴人らの責任について、個別に検討する。 1 被控訴人公嘱協会(本件各契約の相手方)について被控訴人公嘱協会に全行程を委託する本件各契約の締結については、本来不必要な業務まで委託した限度で裁量権を逸脱した違法性があることは前判示のとおりであるが、被控訴人公嘱協会は、不必要な業務が含まれるとしても本件各契約に定められた業務内容を現実に履行したものであること(その際、同被控訴人の社員であるF土地家屋調査士は、Eを補助者として使用したにすぎないこと)は、前判示のとおりであって、被控訴人公嘱協会は、本件各契約に基づいて伊勢原市に対して委託料支払債務を有しており、その対価を受領することは違法とはいえないから、被控訴人公嘱協会には損害賠償義務を認めることはできない。また、被控訴人公嘱協会が、控訴人の縷々主張する違法な行為を行ったことを認めるに足りる証拠もない。 2 被控訴人C(市長。指揮監督者)について伊勢原市においては、決裁規定により、市長である被控訴人C以外の者により、本件各契約の締結やこれに基づく公金支出の専決処理がされていたことは前判示のとおりである。 右専決を任された補助職員が市長の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は、市長は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止 理がされていたことは前判示のとおりである。 右専決を任された補助職員が市長の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は、市長は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、地方公共団体に対し、右補助職員がした財務会計上の違法行為により当該地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である。ただし、市長が訓令等により法令上その権限に属する財務会計上の行為を特定の補助職員に専決させることとしている場合においては、当該財務会計上の行為を行う法令上の権限が右補助職員に委譲されるものではないが、内部的には、右権限は専ら右補助職員にゆだねられ、右補助職員が常時自らの判断において右行為を行うものとされるのであるから、右補助職員が、専決を任された財務会計上の行為につき、違法な専決処理をし、これにより地方公共団体に損害を与えたときは、右損害は、自らの判断において右行為を行った右補助職員がこれを賠償すべきものであって、市長は、前記のような右補助職員に対する指揮監督上の帰責事由が認められない限り、右補助職員が専決により行った財務会計上の違法行為につき、損害賠償責任を負うべきいわれはないものというべきだからである(以上について、最高裁判所平成三年一二月二〇日第二小法廷判決、民事四五巻九号一四五五頁参照)。 本件において、市長である被控訴人Cが、専決を委ねられた補助職員に対する指揮監督の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったことを認めるに足りる証拠はない。 よって、被控訴人Cに対する損害賠償請求は理由がない。 3 被控訴人A(助役。決裁規程に基づく は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったことを認めるに足りる証拠はない。 よって、被控訴人Cに対する損害賠償請求は理由がない。 3 被控訴人A(助役。決裁規程に基づく専決処理として一号契約の締結した支出負担行為者)について被控訴人Aは、一号契約を締結者として、その契約内容等に不当違法なものがないかを調査、研究しなければならない注意義務があるのにこれを怠り、前判示のとおり、裁量権を逸脱して必要のない業務を委託し、結果的に高い価格で発注し、伊勢原市に損害を与えたものと言わざるを得ない。 したがって、被控訴人Aは、一号契約における公金支出二〇六万円のうち二分の一に相当する一〇三万円について、損害賠償義務を負う。 4 被控訴人B及び被控訴人G(支出命令者)について被控訴人B(総務部管財課用地担当参事。決裁規程に基づく専決処理として一号契約の委託料二〇六万円の支出命令をした者)は一号契約の、被控訴人G(総務部管財課用地担当主幹。決済規定に基づく先決処理として二号契約の委託料九二万七〇〇〇円の支出命令をした者)は二号契約の各支出命令者として、いずれも公金の支出が適正に行われるよう常に注意すべき義務がある。 しかしながら、被控訴人公嘱協会によって、本件各契約に定められた内容が履行されてその成果品も納品されたこと、したがって、被控訴人公嘱協会は本件各契約に基づいて伊勢原市に対しては委託料支払請求権を有していたことは前記判示のとおりであり、かかる状況においては(本件各契約締結における裁量権の逸脱はあっても)、委託料の支払命令を発せざるを得ないと解される。 よって、右支出命令を発した右被控訴人両名に対して、損害賠償義務を認めることはできない。 5 被控訴人H(公金の支出者)について被控訴人H(収入役)は支出の権限を有 発せざるを得ないと解される。 よって、右支出命令を発した右被控訴人両名に対して、損害賠償義務を認めることはできない。 5 被控訴人H(公金の支出者)について被控訴人H(収入役)は支出の権限を有する収入役として、支出命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反しないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認しなければならない(地方自治法二三二条の四第二項)。 本件の場合、本件各契約の締結においては裁量権逸脱の違法はあったものの、被控訴人Hが受けた当該支出命令は関係規程に定める手続に従って成立しているものであって、被控訴人Hにおいて、その職務に反するところはないというべきである。 よって、被控訴人Hに対して、損害賠償義務を認めることはできない。 四結論以上の次第で、控訴人の被告Aに対する請求は前記判示のとおり一部理由があるが、その余の被控訴人らに対する請求は理由がない。 よって、これと異なる原判決を主文の限度で変更することとし、訴訟費用の負担について、行政訴訟法七条、民事訴訟法六七条二項、六四条本文、六一条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第三民事部裁判長裁判官高木新二郎裁判官北澤晶裁判官白石哲

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