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判決平成14年1月24日神戸地方裁判所平成10年(ワ)第977号損害賠償請求本訴事件(甲事件)平成11年(ワ)第1311号損害賠償等請求反訴事件(乙事件)平成11年(ワ)第68号損害賠償請求事件(丙事件) 主文 1 被告Aは,原告に対し,5508万円及びこれに対する平成10年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 原告の被告Aに対するその余の請求を棄却する。3 被告Aの原告に対する請求を棄却する。4 原告の被告Bに対する請求を棄却する。5 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。6 この判決は,主文1項につき仮に執行することができる。事実及び理由 第1 請求(甲事件)被告A(以下「被告会社」という)は,原告に対し,1億0375万6967円及びこれに対する平成10年6月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(乙事件)原告は,被告会社に対し,600万円及びこれに対する平成11年7月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(丙事件)被告Bは,原告に対し,1億0375万6967円及びこれに対する平成11年2月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要(事案の骨子)原告を注文主,被告会社を請負人とする鉄骨造三階建居宅の建築工事請負契約が締結され,工事がなされた。甲事件は,工事に瑕疵があることなどを理由とする原告からの損害賠償請求事件(不法行為,債務不履行,瑕疵担保)であり,乙事件は工事残代金及び慰謝料などを請求する被告会社 約が締結され,工事がなされた。甲事件は,工事に瑕疵があることなどを理由とする原告からの損害賠償請求事件(不法行為,債務不履行,瑕疵担保)であり,乙事件は工事残代金及び慰謝料などを請求する被告会社からの反訴事件であり,丙事件は,被告会社の代表者である被告Bが,工事の瑕疵に気づきながら放置して工事を続行したとして,原告からの不法行為責任を理由とする損害賠償請求事件である。 慰謝料などを請求する被告会社 約が締結され,工事がなされた。甲事件は,工事に瑕疵があることなどを理由とする原告からの損害賠償請求事件(不法行為,債務不履行,瑕疵担保)であり,乙事件は工事残代金及び慰謝料などを請求する被告会社からの反訴事件であり,丙事件は,被告会社の代表者である被告Bが,工事の瑕疵に気づきながら放置して工事を続行したとして,原告からの不法行為責任を理由とする損害賠償請求事件である。(甲事件) 1 請求原因(1) 建築の経過ア請負契約は,平成7年2月に締結され,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。物件目録の掲載は省略。)につき,総額7000万円,平成7年9月完成の約束であったが,期限内に完成しなかった。原告は,被告会社が残り工事は年内に完成させるというので,平成7年12月10日に入居した。その後の交渉の結果,平成8年3月7日,原告と被告会社は次のとおり合意した。(ア) 総工費7000万円と現在完了している外構費のうち,訴外C会社業などを通じて購入したり施行したものは原告が直接その業者に支払い,被告会社の請求金額は減額分(材質を落としたり量の減少があったもの)を含め消費税込みで6000万円とする。うち5200万円は支払済みであり,残額は800万円である。(イ) 残額800万円のうち,400万円は本日支払い,残り400万円は残工事及び補修工事完了後引渡と引き換えに支払う。(ウ) 残工事及び補修工事の期間は1週間とする。外構は途中で止まっているが,完全に仕上げるときは調整する。イ原告は,同日400万円を被告会社に支払い,業者には直接その代金を支払った。しかるに被告会社は前記工事をしない。未完了工事は,電話線の入線,給湯設備工事,床暖房設備工事等である。また 円を被告会社に支払い,業者には直接その代金を支払った。しかるに被告会社は前記工事をしない。未完了工事は,電話線の入線,給湯設備工事,床暖房設備工事等である。また,被告会社が未完了工事や屋上の防水等の補修工事を行わなかったため,他の工務店に依頼して屋上コーキング防水塗料塗布などの工事をした。(2) 本件建物の欠陥本件建物には,被告会社の責任に基づく欠陥(瑕疵)がある(甲1)。ア躯体の傾き基礎のレベルで狂っているか,鉄骨の施工に問題があるのか,あるいは両方の原因のためか,躯体自体が傾いている。現状での測定では,床梁に傾きがあり,建物内部床レベル両端で約30ミリメートルのレベル差がある。 の防水等の補修工事を行わなかったため,他の工務店に依頼して屋上コーキング防水塗料塗布などの工事をした。(2) 本件建物の欠陥本件建物には,被告会社の責任に基づく欠陥(瑕疵)がある(甲1)。ア躯体の傾き基礎のレベルで狂っているか,鉄骨の施工に問題があるのか,あるいは両方の原因のためか,躯体自体が傾いている。現状での測定では,床梁に傾きがあり,建物内部床レベル両端で約30ミリメートルのレベル差がある。イ屋上と窓周囲やコーキング部の外壁からの雨漏り屋上の防水シートを保護モルタル施工時に破損させた可能性が高く,また,窓周囲の防水を怠っている様子でコーキングも不完全なために,屋上と窓周囲やコーキング部の外壁からの雨漏りが生じている。ウ躯体中央部のねじれ躯体の傾きを是正せず,鉄骨を無理矢理施工したため,躯対中央部(ホール階段寄り)にねじれが発生していると思われる。それを解放するための力が建物を徐々に動かし,内外部に亀裂を発生せしめており,屋上のシート防水もこの力により破断が増し雨漏りが助長される可能性がある。エ床,壁,天井の傾斜,壁の亀裂,床の凹凸内部においては,躯体の傾き及び躯体中央部のねじれのため,床,壁,天井が傾斜し,壁に亀裂が生じたり,床が波打ち約50ミリメートルの凹凸がある。オ陸屋根,保護モルタル,塔屋のALC板の亀裂,鋼板屋根の施工の不完全陸屋根に新築間もない建物とは到底考えられない程の亀裂が多数生じて が波打ち約50ミリメートルの凹凸がある。オ陸屋根,保護モルタル,塔屋のALC板の亀裂,鋼板屋根の施工の不完全陸屋根に新築間もない建物とは到底考えられない程の亀裂が多数生じている。躯対中央部のねじれが原因と思われる保護モルタルから塔屋のALC板に至る新しい亀裂もある。また,鋼板屋根の施工が不完全である。カ窓に風雨の侵入窓がゆがんで取り付けられているため,風雨の侵入がある。キ入り口ドアと内装ドアのゆがみ,破損ドアはほとんど全てにゆがみがあり,破損しているものもある。ク和室の造作材がモルタルにより汚染されている。ケ高断熱・高気密住宅として機能していない。(3) 損害額 1億0375万6967円ア本件建物の補修費用相当額金 8878万1967円前記欠陥を全て除去するには本来なら取り壊して再建築するしかないが,それでは1億円以上の大工事になるので,次善の策として補修することにする。 と内装ドアのゆがみ,破損ドアはほとんど全てにゆがみがあり,破損しているものもある。ク和室の造作材がモルタルにより汚染されている。ケ高断熱・高気密住宅として機能していない。(3) 損害額 1億0375万6967円ア本件建物の補修費用相当額金 8878万1967円前記欠陥を全て除去するには本来なら取り壊して再建築するしかないが,それでは1億円以上の大工事になるので,次善の策として補修することにする。しかし,本件建物は新築注文住宅であるから,新築建物としての交換価値を回復する必要があり,つぎはぎではなく,美匠上からも新築性を回復する補修でなければならない。これに要する費用は8878万1967円を要する(甲2,3)。イ補修期間中の賃借建物賃料相当額 240万円本件建物と同程度の床面積を有する建物の賃料は1か月60万円であり,補修に4か月を要する。ウ慰謝料 200万円欠陥住宅は居住者の心を傷つけるものである。エ欠陥調査費用 157万5000円原告は建築に素人であり,前項に指摘した建物構造上の欠陥,補修方法,補修費用の見積もりは専門家に依頼するしかない。それに要した調査,見積もり費用であ 調査費用 157万5000円原告は建築に素人であり,前項に指摘した建物構造上の欠陥,補修方法,補修費用の見積もりは専門家に依頼するしかない。それに要した調査,見積もり費用である。オ弁護士費用 900万円本件訴訟には弁護士への依頼は不可欠である。(4) 被告会社の責任原因(ア,イ,ウは選択的主張である)ア不法行為責任本件欠陥のうち,躯体の傾きや躯対中央部のねじれは本件建物の根本的欠陥であり,建築の専門家である被告会社が気づかない筈がない。おそらく,かなり早い段階でこの瑕疵に気づきながら放置していたと推測され,このような根本的欠陥を放置して工事を続行したことは極めて悪質であり,不法行為を構成する。イ債務不履行責任被告会社には,民法415条の不完全履行の債務不履行責任がある。ウ瑕疵担保責任被告会社には,民法634条の瑕疵担保責任がある。(5) 結語よって,原告は被告会社に対し,請求の趣旨記載の判決を求める。(6) 甲鑑定について鑑定人甲は,①躯体の傾き,③躯体中央部のねじれ,④壁の亀裂,床の凸凹,⑤陸屋根保護モルタル,ALC板の亀裂,⑦入り口ドアと内装ドアのゆがみの各事実を認めたうえで,これらの事項はいずれも鉄骨建方に起因する瑕疵であると判定し,また,②屋上の窓周囲やコーキング部の外壁からの雨漏り,⑥窓に風雨の侵入,⑨気密性が保持されていないの各事実を認めたうえで,これらの事項は高気密性住宅用サッシの取り付けの瑕疵と判定し,⑧和室造作材の汚染の事実を認めたうえで,これは躯体のねじれなどと複合的に生じたもので瑕疵と判定し,その補修費用として5878万円と判定した。 実を認めたうえで,これらの事項はいずれも鉄骨建方に起因する瑕疵であると判定し,また,②屋上の窓周囲やコーキング部の外壁からの雨漏り,⑥窓に風雨の侵入,⑨気密性が保持されていないの各事実を認めたうえで,これらの事項は高気密性住宅用サッシの取り付けの瑕疵と判定し,⑧和室造作材の汚染の事実を認めたうえで,これは躯体のねじれなどと複合的に生じたもので瑕疵と判定し,その補修費用として5878万円と判定した。原告の依頼したD建設株式会社(以 瑕疵と判定し,⑧和室造作材の汚染の事実を認めたうえで,これは躯体のねじれなどと複合的に生じたもので瑕疵と判定し,その補修費用として5878万円と判定した。原告の依頼したD建設株式会社(以下「D建設」という。))の見積もりによれば,補修費用は8044万4855円であり(甲1,2),甲鑑定はこれを約2166万円下回っているので,甲鑑定の補修方法では十分な補修が出来るのか疑問がないわけではないが,鑑定の結論は尊重する。2 請求の原因に対する認否及び反論(1) 被告会社は,平成7年4月ころ,毎月の出来高で支払う約束で本件建物建築工事を請け負った。総工費7000万円との約束もなければ,平成7年9月完成との約束もない。原告が入居したのは,若干の手直しがあっても完成していたからであり,残工事を年内に完成させると被告会社が言ったことはない。なお,請負代金は,最終的には(平成8年3月7日ころには)本件工事6000万円と外構工事412万円(内消費税12万円を含む)の合計6412万円と合意した。(2) 原告主張の瑕疵の存在は全て否認する。(3) 甲鑑定の内容は価値がない。ア瑕疵の内容が具体的に示されず,また,その瑕疵によりどのような不都合があるのかその理由も示されていない。イ本件で最も重要な事項である躯体の傾き及び躯体中央部のねじれについて瑕疵があるとするが,すべて推測や推定でしかなく,理論的な裏付けがない。ウ別途工事として杭工事が施工されたことによる地盤の沈下等による建物の傾き,ねじれが生じたものとは判断し得ないとしているが,なぜそう言えるのかの説明が全くない。エ鉄骨工事について墨出しの誤差が生じたため,建物にねじれが生じたと推定しているが,何を根拠に墨出しの誤差が生じたとしている いとしているが,なぜそう言えるのかの説明が全くない。エ鉄骨工事について墨出しの誤差が生じたため,建物にねじれが生じたと推定しているが,何を根拠に墨出しの誤差が生じたとしているのか裏付けがない。 ねじれが生じたものとは判断し得ないとしているが,なぜそう言えるのかの説明が全くない。エ鉄骨工事について墨出しの誤差が生じたため,建物にねじれが生じたと推定しているが,何を根拠に墨出しの誤差が生じたとしている いとしているが,なぜそう言えるのかの説明が全くない。エ鉄骨工事について墨出しの誤差が生じたため,建物にねじれが生じたと推定しているが,何を根拠に墨出しの誤差が生じたとしているのか裏付けがない。オ躯体の傾き「躯体そのものの傾きは確認できなかった」と記載しながらどうして傾きの瑕疵があると判断できるのか理解できない。カ躯対中央部のねじれ「躯体そのもののねじれは確認できなかった」と記載しながらどうしてねじれの瑕疵があると判断できるのか理解できない。キ壁の亀裂,床の凸凹壁の亀裂やクロスの目地切れなどは,さまざまな原因(たとえば,下地仕上,各材料の熱による収縮や膨らみ)により生じるものであり,直ちに鉄骨建方に起因するとはいえない。ク保護モルタル,ALC板の亀裂仮に存在するとしても,これもいろいろな原因で起こるものである。ケ入り口ドアと内装ドアのゆがみ仮に存在するとしても,内装ドアは調整できるし,また,長期間使用しているとビスのゆるみや乾燥,収縮などによって調整を必要とするのは当然のことである。これがなぜ鉄骨建方に起因するといえるのか理解できない。コ以上によれば,まず,鉄骨建方時に墨出しの誤差があり,それが原因で躯体のねじれや傾きがあるという結論が先にあり,全てそれが原因であるとしているもので,いずれも何の根拠にも基づかない,何の立証もされていないものである。また,原告は平成7年12月に本件建物の引き渡しを受けた後,本件建物で平穏に生活しており,危険性は見あたらないのであるから,本件建物に構造的な欠陥はない。サ補修方法は,躯体の傾き及び躯体中央部にねじれがあるとの前提で,大部分を解体する方法でなされてい 物で平穏に生活しており,危険性は見あたらないのであるから,本件建物に構造的な欠陥はない。サ補修方法は,躯体の傾き及び躯体中央部にねじれがあるとの前提で,大部分を解体する方法でなされているが,躯体の傾きやねじれの立証がないのであるから,その方法自体失当であり,費用の算出も誤りである。(4) 鑑定書添付の写真を見れば,被告会社の工事終了後,原告はさまざまな工事をしている。完成後の工事であるから,どうしても本体に影響が出ることがある。 見あたらないのであるから,本件建物に構造的な欠陥はない。サ補修方法は,躯体の傾き及び躯体中央部にねじれがあるとの前提で,大部分を解体する方法でなされているが,躯体の傾きやねじれの立証がないのであるから,その方法自体失当であり,費用の算出も誤りである。(4) 鑑定書添付の写真を見れば,被告会社の工事終了後,原告はさまざまな工事をしている。完成後の工事であるから,どうしても本体に影響が出ることがある。したがって,仮に原告主張の瑕疵が存在するとしても,原告が施工した工事に起因する可能性は大きい。3 除斥期間の抗弁(1) 原告の請求は,つまるところ,本件工事の瑕疵に対し施工業者である被告会社に対する修補に代わる損害賠償である。右請求は,契約上の債務不履行責任の特則であるから,瑕疵担保責任以外の債務不履行責任は追及できない。もちろん,不法行為責任も追及できない。(2) この瑕疵担保責任は,a連合約款によれば,本件建物の場合2年である。本訴請求は,本件建物の引渡から2年を経過しているから,除斥期間経過により,請求できない。それだけでなく,滅失または毀損のときから1年以内に請求しなければならない(民法638条2項)のに,2年以上経過後に請求している点からも,本訴請求は失当である。4 除斥期間の抗弁に対する再抗弁(1) 民法638条1項によれば,建物の建築請負業者は,木造の場合は引渡から5年間,鉄骨その他堅固は構造の場合は10年間欠陥担保責任を負う。(2) a連合約款に被告会社主張の2年間の期間制限の特約があっても,それは,美匠や仕上げ,設備など通常消費者がその期間内に容易に気付き発見できるような欠陥についてであって,本件のような基礎や骨組み (2) a連合約款に被告会社主張の2年間の期間制限の特約があっても,それは,美匠や仕上げ,設備など通常消費者がその期間内に容易に気付き発見できるような欠陥についてであって,本件のような基礎や骨組みといった構造欠陥については,この特約の範囲外である。けだし,1年や2年では,通常,基礎や骨組みの手抜きなどの構造欠陥はなかなか発見できないので,このような場合まで2年以内にしか請負業者の責任が追及できないとなると,消費者保護に欠けるからである。(3) また,a連合約款でも,瑕疵が請負人の故意または重過失によって生じたものである場合には,期間が10年間に延長されている(甲20)。 のような基礎や骨組みといった構造欠陥については,この特約の範囲外である。けだし,1年や2年では,通常,基礎や骨組みの手抜きなどの構造欠陥はなかなか発見できないので,このような場合まで2年以内にしか請負業者の責任が追及できないとなると,消費者保護に欠けるからである。(3) また,a連合約款でも,瑕疵が請負人の故意または重過失によって生じたものである場合には,期間が10年間に延長されている(甲20)。 本件は基礎の墨出し位置の誤りであるから,重過失であることは明らかであり,a連合約款によっても10年となる。(乙事件) 1 請求原因(1) 被告会社が請け負った本件建物の請負代金について,最終的には(平成8年3月7日ころには)本件工事6000万円,外構工事412万円(うち消費税12万円)の合計6412万円で合意がなった。(2) 原告は,5900万円を支払ったが,残金512万円の支払いがない。(3) 原告は,残金を支払わず,1億円以上払えとの本訴請求をなしている。これは不当な請求であり,被告会社は精神的苦痛や弁護士費用などの損害を被った。その損害は500万円を下回らない。(4) よって,被告会社は原告に対し,上記1012万円の内金600万円とこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金を請求する。2 請求原因に対する認否及び相殺の抗弁(1) 請求原因事実は全て否認する。本件建物は完成していないし,また,被告会社は約束した補修工事をしていないから,原告に支払い義務はない。甲事件請求原因事実に記載したとおり,被告会社について 1) 請求原因事実は全て否認する。本件建物は完成していないし,また,被告会社は約束した補修工事をしていないから,原告に支払い義務はない。甲事件請求原因事実に記載したとおり,被告会社については代金6000万円で合意が成立し,既に5600万円は支払済みであり,残金400万円は1週間以内の残工事及び補修工事完了引き渡しと交換の約束であったのに,現在に至るまで残工事及び補修工事はなされていない。(2) 仮に被告会社の工事残代金請求が一部認められるとしても,原告は,甲事件の損害賠償請求権と対等額で相殺する旨を,平成11年8月3日の第7回口頭弁論期日で意思表示した。(丙事件) 1 請求原因(1) 被告Bは,被告会社の代表取締役である。(2) 甲事件の請求原因に記載のとおり,本件建物には欠陥があり,原告は1億0375万6967円の損害を被っている。 に至るまで残工事及び補修工事はなされていない。(2) 仮に被告会社の工事残代金請求が一部認められるとしても,原告は,甲事件の損害賠償請求権と対等額で相殺する旨を,平成11年8月3日の第7回口頭弁論期日で意思表示した。(丙事件) 1 請求原因(1) 被告Bは,被告会社の代表取締役である。(2) 甲事件の請求原因に記載のとおり,本件建物には欠陥があり,原告は1億0375万6967円の損害を被っている。(3) 被告Bは,本件工事に当初から関与し,被告B自身が直接指示していたもので,建築については素人である原告にはわからない本件建物の欠陥についても建築の専門家である被告Bは気づいていた。特に,躯体の傾きや躯体中央部のねじれは本件建物の根本的欠陥であり,建築の専門家である被告Bが気がつかない筈がない。被告Bは,かなり早い段階でこれらの瑕疵に気づきながら放置して工事を続行したものであって,極めて悪質である。よって,原告は,被告Bに対し,民法709条に基づき,請求の趣旨記載の金員を支払うよう求める。2 請求の原因に対する認否及び反論甲事件に付いての認否,反論と同じであり,被告Bに損害賠償責任はない。第3 当裁判所の判断(甲事件) 1 本件建物につき,原告を注文者,被告会社を請負人とする建築請負契約が締結されたこと,原告が平成7年12月10日 ,反論と同じであり,被告Bに損害賠償責任はない。第3 当裁判所の判断(甲事件) 1 本件建物につき,原告を注文者,被告会社を請負人とする建築請負契約が締結されたこと,原告が平成7年12月10日本件建物に入居したこと,代金額は最終的に本体工事につき6000万円と合意され,5600万円を原告が支払済みであることは,当事者間に争いがない。2 瑕疵について(1) 躯体の傾き,ねじれア本件建物の補修見積もりをしたD建設作成の意見書(甲1)には,”基礎のレベルで狂っているか,鉄骨の施工に問題があるのか,あるいは両方の原因のためか,躯体自体が傾いている。現状での測定では,床梁に傾きがあり,建物内部床レベル両端で約30ミリメートルのレベル差がある。躯体の傾きを是正せず,鉄骨を無理矢理施工したため,躯対中央部(ホール階段寄り)にねじれが発生していると思われる。それを解放するための力が建物を徐々に動かし,内外部に亀裂を発生せしめており,屋上のシート防水もこの力により破断が増し雨漏りが助長される可能性がある。 いは両方の原因のためか,躯体自体が傾いている。現状での測定では,床梁に傾きがあり,建物内部床レベル両端で約30ミリメートルのレベル差がある。躯体の傾きを是正せず,鉄骨を無理矢理施工したため,躯対中央部(ホール階段寄り)にねじれが発生していると思われる。それを解放するための力が建物を徐々に動かし,内外部に亀裂を発生せしめており,屋上のシート防水もこの力により破断が増し雨漏りが助長される可能性がある。”旨記載されている。なお,D建設は本件建物を見ている(原告)。イ 1級建築士乙作成の意見書(甲14)には,”①この建物は,鉄骨の柱と梁が組まれ各階の床は梁の上にキーストンといわれる5センチメートルの凸凹のある鉄板を敷き,梁と溶接し,その上にコンクリートを8センチメートルの厚さで流して床を作るという,ごく一般的な工法である。柱と梁が正確であれば,必然的にキーストンは水平になり,その上に流されたコンクリートはプラスマイナス5ミリメートル以内の凸凹が生じたとしてもほぼ水平になり,それをレベル用モルタルで再度水平にするのが常識である。本件建物の床は,各階で3ないし4センチメートルの傾きがあり,これは構造体である鉄骨そのも リメートル以内の凸凹が生じたとしてもほぼ水平になり,それをレベル用モルタルで再度水平にするのが常識である。本件建物の床は,各階で3ないし4センチメートルの傾きがあり,これは構造体である鉄骨そのものに問題があり,床が歪んでいることを証明している。厚さ8センチメートルのコンクリートの施工不良で4センチメートルを超える凸凹が生じることは理論上考えられず,キーストンが傾いていること,すなわち梁が傾いていることを示しており,予想を超えた手抜きの結果と判断する。②床が歪んだ原因は二つ考えられ,その1は鉄骨の加工ミス,その2は基礎の位置出しのミスである。鉄骨はJIS規格を持った専門業者がコンピューターによる裁断をして加工しているので,その狂いは考えられない。③乙8に記載されているように建物が垂直に建っていれば,各階床面にこの様な常識を逸脱した凸凹は絶対に生じ得ない。基礎の墨出しの過誤を是正せずに強引に鉄骨を施工した根本的な手抜きが原因と考えられる。鉄骨を組み立てる現場には,大きな力を加えることのできる大型のクレーン車や,高温で鉄を炙り曲げたりボルトの穴を広げることのできる溶接機も必ず用意されており,無理矢理の施工も容易である。 その狂いは考えられない。③乙8に記載されているように建物が垂直に建っていれば,各階床面にこの様な常識を逸脱した凸凹は絶対に生じ得ない。基礎の墨出しの過誤を是正せずに強引に鉄骨を施工した根本的な手抜きが原因と考えられる。鉄骨を組み立てる現場には,大きな力を加えることのできる大型のクレーン車や,高温で鉄を炙り曲げたりボルトの穴を広げることのできる溶接機も必ず用意されており,無理矢理の施工も容易である。”旨記載されている。なお,乙は4回にわたり現地を訪れて本件建物を実際に見ている。ウ鑑定人甲の鑑定によれば,”基礎構造は,地質調査が実施されており,支持地盤,基礎根入れ,杭工事が施工されているから,地盤の沈下などによる建物の傾き,ねじれが生じたとは判断しがたい。”旨記載されている。そして,甲の証言及び鑑定によれば,鉄骨自体の傾きは外装,内装の全てを剥がさないと計測できないので,数値的には計っていないこと,目視した感じでは,本件建物は傾いているように見えたこと,床の傾斜については水準器で計ったこと によれば,鉄骨自体の傾きは外装,内装の全てを剥がさないと計測できないので,数値的には計っていないこと,目視した感じでは,本件建物は傾いているように見えたこと,床の傾斜については水準器で計ったことが認められる。エ他方,1級建築士丙作成の意見書(乙8)には”アンカーボルト間の寸法が柱間の寸法より10ミリ大きければ,2階の梁は無理をして取り付けられても,3階やR階は,いかなる外力を加えても取り付けは不可能である。取り付けられていることからして,鉄骨は設計図どおり垂直に建っているものと思われる。躯体中央部ねじれについても,全ての梁が設計図どおり収まっているのであれば,ねじれといわれる様に平行四辺形に建物がなっているとは考えられない。又,そうでなければ鉄骨の組立(建方)はできない。ゆえに,甲鑑定のいうような,内部化された応力が解放される状態で各部分に支障が出てきたのではなく,各部分にそれなりの理由があっての事と思われる。”旨記載されている。なお,丙は現地を訪れたことはなく,本件建物を実際には見ていない(被告B)。オ本件建物3階の和室の工事をしたEの証言及び同人作成の陳述書(甲7)によれば,同人の印象では,被告会社のした窓枠の取り付けはかなりずさんであり,また,目測で床レベルにうねりがあり,柱もバラバラの方向に傾いているように感じたことが認められる。 出てきたのではなく,各部分にそれなりの理由があっての事と思われる。”旨記載されている。なお,丙は現地を訪れたことはなく,本件建物を実際には見ていない(被告B)。オ本件建物3階の和室の工事をしたEの証言及び同人作成の陳述書(甲7)によれば,同人の印象では,被告会社のした窓枠の取り付けはかなりずさんであり,また,目測で床レベルにうねりがあり,柱もバラバラの方向に傾いているように感じたことが認められる。カ原告作成の陳述書(甲8,11),写真(甲9の1ないし7),図面と説明図(甲10の1ないし3)及び原告本人尋問の結果によれば,本件建物の床にかなりの凸凹のあること,原告がD建設及びF会社に本件建物を見てもらったところ,立て直さなければならない程の欠陥があるといわれたことが認められる。キよって検討するに,計測するのが非常に困難なため傾斜角などの数値は計ら がD建設及びF会社に本件建物を見てもらったところ,立て直さなければならない程の欠陥があるといわれたことが認められる。キよって検討するに,計測するのが非常に困難なため傾斜角などの数値は計られていないが,床の傾きの程度などから見て,本件建物には躯体の傾き,ねじれといった構造的な欠陥があると推認され,同推認を覆すに足りる証拠はなく,かつ,その原因は被告会社の工事にあると認めるのが相当である。この点につき,被告会社は,立証が尽くされていない旨主張するが,他に合理的な説明が付かない以上,前掲各証拠からみて,そのように判断せざるを得ない。(2) その他D建設,乙,丙作成の各意見書(甲1,14,乙8),甲鑑定及び前掲各証拠を比較,検討すれば,甲鑑定の結果は妥当なものであると認められ,本件全証拠によるもこれを覆すに足りるものはない。そうであれば,瑕疵は以下のとおりとなる。ア屋上と窓周囲やコーキング部の外壁からの雨漏り,窓に風雨の侵入イ床,壁,天井の傾斜,壁の亀裂,床の凸凹ウ入り口ドアと内装ドアのゆがみエ和室の造作材の汚染オ断熱性,気密性 3 責任(1) 被告会社には,民法634条の瑕疵担保責任があると認められる。(2) 被告会社は,a連合約款によれば,本件建物の場合2年であるところ,本訴請求は,本件建物の引渡から2年を経過しているから,除斥期間経過により,請求できない旨主張する。しかしながら,本件のような基礎や骨組みといった構造欠陥については,1年や2年ではなかなか発見できないこと,a連合約款でも,瑕疵が請負人の故意または重過失によって生じたものである場合には,期間が10年間に延長されていること,本件に適用はないが,平成12年4月1日以降に締結された住宅 合2年であるところ,本訴請求は,本件建物の引渡から2年を経過しているから,除斥期間経過により,請求できない旨主張する。しかしながら,本件のような基礎や骨組みといった構造欠陥については,1年や2年ではなかなか発見できないこと,a連合約款でも,瑕疵が請負人の故意または重過失によって生じたものである場合には,期間が10年間に延長されていること,本件に適用はないが,平成12年4月1日以降に締結された住宅 なか発見できないこと,a連合約款でも,瑕疵が請負人の故意または重過失によって生じたものである場合には,期間が10年間に延長されていること,本件に適用はないが,平成12年4月1日以降に締結された住宅新築又は新築住宅の売買契約に適用される住宅の品質確保の促進等に関する法律では,10年未満の瑕疵担保責任期間の約定は片面的強行規定となって無効とされていることなどを考え併せると,本件のような躯体の傾き,ねじれといった瑕疵については,期間を2年に制限するとの特約の範囲外であると解するのが相当である。なお,被告会社は,滅失または毀損のときから1年以内に請求しなければならないのに,2年以上経過後に請求している点からも,本訴請求は失当であるとも主張するが,滅失または毀損のときから1年以内に請求しなければならないとされているのは,滅失または毀損したときは瑕疵が明白になるからであるところ,本件建物の瑕疵は明白とはいえないから,この点に関する被告会社の主張は採用できない。4 損害額(1) 鑑定の結果によれば,補修費用は合計5878万円と査定されること,工事期間としては3か月程度であることが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。(2) 原告は,この外に,工事中に借りる住宅の賃料,慰謝料,欠陥調査費用,弁護士費用なども請求している。このうち,賃料については,本件建物と同程度の面積の住宅を借りなければならない理由はないから,原告の家族が居住するに足る通常の住宅を基準にその金額を算定するのが相当であるところ,民訴法248条の趣旨に鑑み,月額10万円,3か月分合計30万円を損害として認容する。慰謝料請求についてであるが,財産的損害については,その賠償がなされれば,特段の事情のない限り,それに加えて慰謝料を支払う程の違法性があ 10万円,3か月分合計30万円を損害として認容する。慰謝料請求についてであるが,財産的損害については,その賠償がなされれば,特段の事情のない限り,それに加えて慰謝料を支払う程の違法性があるとはいえないところ,本件ではそのような特段の主張があるとまでは認められないから,原告の請求は失当である。 財産的損害については,その賠償がなされれば,特段の事情のない限り,それに加えて慰謝料を支払う程の違法性があ 10万円,3か月分合計30万円を損害として認容する。慰謝料請求についてであるが,財産的損害については,その賠償がなされれば,特段の事情のない限り,それに加えて慰謝料を支払う程の違法性があるとはいえないところ,本件ではそのような特段の主張があるとまでは認められないから,原告の請求は失当である。請負金額6000万円の工事につきほぼ同額の損害賠償を認容する本件においては,欠陥調査費用についてまでの賠償は被告会社に命じないこととする。本件では,被告会社の行為に不法行為責任があるとまでは認め難いから,弁護士費用の支払まで被告会社に命じるのは相当でない。(3) 以上によれば,甲事件については,5908万円とこれに対する平成10年6月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由がある。(乙事件) 1 本件工事の代金が6000万円と合意されたこと,うち5600万円が原告から支払われていることは,当事者間に争いがない。2 被告会社は,それに加えて外溝工事が412万円との合意が成立した旨主張し,被告Bは主尋問において同主張にそう供述をして合意書(乙5)及び見積訂正書(乙6)を提出するが,これに反論する原告作成の陳述書(甲15)及び被告Bに対する反対尋問並びに弁論の全趣旨を総合すれば,外溝工事412万円の合意があったとまでは認められない。3 原告からの甲事件の請求は不当請求ではないから,これが不当請求であることを前提とする被告会社の請求は,その余の点につき判断するまでもなく失当である。4 原告は,未払400万円分の工事はなされていないから,400万円については支払義務がない旨主張する。しかしながら,引渡を受けて入居したのであれば,完成していたの までもなく失当である。4 原告は,未払400万円分の工事はなされていないから,400万円については支払義務がない旨主張する。しかしながら,引渡を受けて入居したのであれば,完成していたのであろうと一応推認されるところ,完成前の引渡であることを証する書面などは作成されていないこと,本件においては,被告会社以外の業者に原告が直接工事を依頼して施工してもらった工事もあり,どこまでが被告会社の責任で工事すべきなのかその範囲が判別し難いこと,などからすれば,未払分400万円に相応する工事が未施工であるとの原告の主張は採用し難い。 。しかしながら,引渡を受けて入居したのであれば,完成していたのであろうと一応推認されるところ,完成前の引渡であることを証する書面などは作成されていないこと,本件においては,被告会社以外の業者に原告が直接工事を依頼して施工してもらった工事もあり,どこまでが被告会社の責任で工事すべきなのかその範囲が判別し難いこと,などからすれば,未払分400万円に相応する工事が未施工であるとの原告の主張は採用し難い。5 以上によれば,乙事件については,400万円とこれに対する平成11年7月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由がある。(丙事件)本件全証拠によっても,被告B個人に不法行為責任があるとまでは認め難い。(相殺について) 1 本件記録によれば,原告が,平成11年8月3日の第7回口頭弁論期日において,乙事件の請求権と甲事件の損害賠償請求権とを対等額で相殺する旨の意思表示したことが認められる。2 甲事件債権の履行期は,請求がなされた平成10年6月4日(訴状送達の日)であり,乙事件債権の履行期は,請負代金額を6000万円とする合意が成立した平成8年3月7日ころであるから,相殺摘状に達した平成10年6月4日をもって400万円についての相殺の効力が発生している。(まとめ)よって,被告会社に対し,5508万円及びこれに対する平成10年6月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を原告に支払うよう命じ,原告の被告会社に対するその余の請求,原告の被告Bに対する請求,被告会社の原告に対する請求をいずれも棄却することとして,主文の 払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を原告に支払うよう命じ,原告の被告会社に対するその余の請求,原告の被告Bに対する請求,被告会社の原告に対する請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。神戸地方裁判所第1民事部 裁判官古川行男・
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