令和3年8月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和元年(ワ)第23407号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和3年5月20日判決 原告東田商工株式会社 同訴訟代理人弁護士田中成志山田徹沖達也 被告テイエヌネット株式会社 被告仲本建設株式会社 被告有限会社明城建設 上記3名訴訟代理人弁護士山下清兵衛山下功一郎田代浩誠西潟理深山口雄也上記3名訴訟代理人弁理士橘哲男藤本正紀佐藤大輔 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求等 1 被告テイエヌネット株式会社(以下「被告テイエヌネット」という。)は,別紙対象製品目録記載1の製品を製造し,譲渡してはならない。 2 被告テイエヌネット及び被告仲本建設株式会社(以下「被告仲本建設」という。)は,原告に対し,連帯して1153万1550円及びこれに対する被告テイエヌネットについては令和元年9月8日から,被告仲本建設については同月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告テイエヌネット及び被告有限会社明城建設(以下「被告明城建設」という。)は,原告に対し,連帯して1 ら,被告仲本建設については同月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告テイエヌネット及び被告有限会社明城建設(以下「被告明城建設」という。)は,原告に対し,連帯して1187万0580円及びこれに対する被告テイエヌネットについては令和元年9月8日から,被告明城建設については同 月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,原告が,①被告テイエヌネット及び被告仲本建設は別紙対象製品目録記載1の製品を設置して原告の有する特許第3598508号の特許権(以 下「本件特許権」という。)を侵害したと主張して,差止請求権(特許法100条1項)に基づき,被告テイエヌネットに対し,別紙対象製品目録記載1の製品の製造及び譲渡の差止めを求めるとともに,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告テイエヌネット及び被告仲本建設に対し,連帯して1153万1550円及びこれに対する不法行為より後の日である訴状送達日の翌日 (被告テイエヌネットについては令和元年9月8日,被告仲本建設については 同月10日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②被告テイエヌネット及び被告明城建設は別紙対象製品目録記載2の製品を設置して本件特許権を侵害したと主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告テイエヌネット及び被告明城建設に対し,連帯して,1187万0580円及びこれに対する 不法行為より後の日である訴状送達日の翌日(被告テイエヌネットについては令和元年9月8日,被告明城建設については同月10日)から支払済みまで上記同様の遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間 の日である訴状送達日の翌日(被告テイエヌネットについては令和元年9月8日,被告明城建設については同月10日)から支払済みまで上記同様の遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお,書証は特記しない限り枝番を全て含む。以 下同じ。)⑴ 当事者原告は,ウインチ(ワイヤの巻き揚げ機)の製造販売等を目的とする株式会社である。 被告テイエヌネットは,防球ネット及びフェンス等設置請負工事等を目的 とする株式会社である。 被告仲本建設は,土木建築請負業等を目的とする株式会社である。 被告明城建設は,建築工事の設計,施工等を目的とする有限会社である。 (本項につき,争いがない事実)⑵ 本件特許権 原告は,以下の本件特許権を有する。(甲1)特許番号特許第3598508号優先日平成15年7月17日出願日平成16年3月3日登録日平成16年9月24日 発明の名称屋内のネット等の吊張体の吊張り方法,及びその装置 ⑶ 特許請求の範囲の記載等本件特許権に係る特許(以下「本件特許」といい,本件特許の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項2の記載は次のとおりである。(甲2)【請求項2】体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で 複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状の吊張体を吊張りするのに使用すべく,円弧状の天井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,該ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウ 複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状の吊張体を吊張りするのに使用すべく,円弧状の天井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,該ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチと,前記ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側にネット等の吊張体の設けられた吊 り上げワイヤーとから構成された屋内のネット等の吊張り装置において,前記吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側には,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワ イヤーとの取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段が設けられていることを特徴とする屋内のネット等の吊張り装置。 上記請求項に係る発明(以下「本件発明」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,符号に応じて「構成要件A」等という。)。 A 体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状の吊張体を吊張りするのに使用すべく,B1 円弧状の天井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,B2 該ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチと, B3 前記ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側にネット等の 吊張体の設けられた吊り上げワイヤーとから構成された屋内のネット等の吊張り装置において,C 前記吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側には,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接 している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの の他端側には,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接 している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段が設けられているD ことを特徴とする屋内のネット等の吊張り装置。 ⑷ 被告らの行為等 ア被告仲本建設は,a(以下「沖縄市物件」という。)の建設工事を請け負った。被告テイエヌネットは,被告仲本建設から同工事の一部を更に請け負い,沖縄市物件に,電動昇降式ネット吊張り装置(以下「被告製品1」という。)を設置した。被告仲本建設は,平成30年2月,沖縄市物件を完成した。(争いがない事実) 被告製品1の概要は,別紙対象製品説明書1の【図1】から【図8】及び別紙被告製品説明図のとおりであり,円弧状の天井部を有する屋内運動場において,運動場を複数に区画するため,また,球技における防球用としてネットを吊り張りするため,円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤー,同ウインチワイヤーを移動するウインチ及び複数の吊り上げ ワイヤーが設けられている。各吊り上げワイヤーは,一端側がウインチワイヤーに,他端側が連結材を介してネットを取り付けた1本又は複数の棒状のバトンに連結されている。したがって,被告製品1は,構成要件A,B1,B3及びDを充足する。(争いがない事実のほか,弁論の全趣旨) 被告製品1においては,各吊り上げワイヤーの上端(ウインチワイヤー への連結位置,別紙被告製品説明図の【図1】の「連結点」。)から連結材の下端までの長さはほぼ同程度であり,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤー(以下「基準吊り上げワイヤー」という。)以 イヤー への連結位置,別紙被告製品説明図の【図1】の「連結点」。)から連結材の下端までの長さはほぼ同程度であり,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤー(以下「基準吊り上げワイヤー」という。)以外の各吊り上げワイヤーの長さは,各吊り上げワイヤーがウインチワイヤーに合流する位置(別紙被告製品説明図の【図1】の「滑車」付近。以下,各吊 り上げワイヤーがウインチワイヤーに合流する位置を「合流位置」という。)と床面の距離よりも,各吊り上げワイヤーの合流位置と基準吊り上げワイヤーの合流位置との間に生じる高さの差に概ね応じて長くなっている。(争いがない事実)なお,上記ウインチワイヤーは紐状で,一端がウインチによって巻き取 られるものであり,このような方式のウインチを「巻取式ウインチ」という。被告製品1においては,ウインチワイヤーの他端はネットに取り付けられ吊り上げワイヤーとして機能している(なお,この点は,別紙被告製品説明図に反映されていない。)。(乙7,弁論の全趣旨)上記各吊り上げワイヤーと上記各バトンは,シャックル(別紙対象製品 説明書1の【図6】の番号5),錘(同番号6),リングキャッチ(同番号7)及びチェーン(同番号8)から成る連結材を介して連結されている。(弁論の全趣旨)イ被告明城建設は,b(以下「伊江村物件」という。)の建設工事を請け負った。被告テイエヌネットは,被告明城建設から同工事の一部を更に請 け負い,伊江村物件に,電動昇降式ネット吊張り装置(以下「被告製品2」という。)を設置した。被告明城建設は,平成28年5月,伊江村物件を完成した。(争いがない事実)被告製品2の概要は,別紙対象製品説明書2の【図1】から【図6】及び別紙被告製品説明図のとおりであり, 設置した。被告明城建設は,平成28年5月,伊江村物件を完成した。(争いがない事実)被告製品2の概要は,別紙対象製品説明書2の【図1】から【図6】及び別紙被告製品説明図のとおりであり,円弧状の天井部を有する屋内運 動場において,運動場を複数に区画するため,また,球技における防球 用としてネットを吊り張りするため,円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤー,同ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチ及び複数の吊り上げワイヤーが設けられている。各吊り上げワイヤーは,一端側がウインチワイヤーに,他端側がネットを取り付けた1本又は複数の棒状のバトンに連結されている。したがって,被告製品2は,構成要 件AからB3及びDを充足する。(争いがない事実のほか,弁論の全趣旨)被告製品2においては,各吊り上げワイヤーの長さはほぼ同程度であり,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さは,各吊り上げワイヤーの合流位置と床面の距離よりも,各吊り上げワイヤーの合流位 置と基準吊り上げワイヤーの合流位置との間に生じる高さの差に概ね応じて長くなっている。(争いがない事実)なお,上記ウインチは,両端が接続された円環状のウインチワイヤーを緊張した状態で移動させるものであり,このような方式のウインチを「エンドレスウインチ」という。(弁論の全趣旨) 上記各吊り上げワイヤーと上記各バトンは,吊り上げワイヤーの先端を折り返してロック加工し,又は,折り返された先端部とこれと重なる吊り上げワイヤーの部分を複数のワイヤークリップで係止して,環状となった部分にリングキャッチを取り付け,リングキャッチにバトンを取り付ける方法により連結されている。上記の複数のワイヤークリップで係 止された の部分を複数のワイヤークリップで係止して,環状となった部分にリングキャッチを取り付け,リングキャッチにバトンを取り付ける方法により連結されている。上記の複数のワイヤークリップで係 止された吊り上げワイヤーの部分は黒い保護材によって覆われている(別紙対象製品説明書2の【図6】の番号6)。(乙34,弁論の全趣旨)⑸ 引用例以下の文献が存在する。 ア平成5年7月27日公開の特開平5-187134号公報(乙3。以下, 同公報に記載された発明を「乙3発明」という。)イ平成7年10月17日公開の特開平7-265553号公報(乙2。以下,同公報に記載された発明を「乙2発明」という。)ウ平成15年4月22日公開の特開2003-117046号公報(乙1。 以下,同公報に記載された発明を「乙1発明」という。) ⑹ 権利関係に係る事実経過被告テイエヌネットは,令和元年12月11日,本件特許について特許無効審判を請求し,令和3年4月6日,請求項4に係る発明についての特許を無効とする,請求項1から3に係る発明(本件発明を含む。)についての審判請求は成り立たない旨の審決がされた(無効2019-800107)。 被告テイエヌネットは,これに対し審決取消しの訴えを提起した。(甲21,弁論の全趣旨) 2 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,①被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するか。 ②被告製品2が本件発明の技術的範囲に属するか。 ③本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。 無効理由1 明確性要件違反無効理由2 サポート要件違反無効理由3 実施可能要件違反 無効 許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。 無効理由1 明確性要件違反無効理由2 サポート要件違反無効理由3 実施可能要件違反 無効理由4 乙1発明からの進歩性欠如無効理由5 発明非該当④被告製品1の使用について損害の発生及び額⑤被告製品2の使用について損害の発生及び額である。 ⑴ 争点①(被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するか。)について (原告の主張)被告製品1は,別紙対象製品目録記載1の製品であり,構成要件A,B1,B3及びDのほか,構成要件B2及びCを充足し,したがって,本件発明の技術的範囲に属する。 ア構成要件B2について 被告製品1は,ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチを備えており,構成要件B2を充足する。 本件発明におけるウインチに巻取式ウインチを含むことは本件明細書にウインチワイヤーが「一定距離を前後移動」する場合が開示されていること等から明らかである。なお,巻取式ウインチを用いてネットを吊り 上げる方法は当時周知であった。 そして,ウインチワイヤーを巻き取ってネットを上下に移動させる際には,ウインチワイヤーにネットの重さが加わるため,ウインチワイヤーは必ず緊張した状態となるのであり,ウインチワイヤーを緊張させずにネットを上下に移動させることは物理的に不可能である。 イ構成要件Cについて本件明細書の記載によれば,構成要件Cの「高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段」とは,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さを,ネットを床面まで下ろすのに必要な長さよりも,高さ方向の距離に対応した長さ分だけ 「高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段」とは,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さを,ネットを床面まで下ろすのに必要な長さよりも,高さ方向の距離に対応した長さ分だけ長くするよう調整するため の調整手段と解すべきであり,この調整手段は特定の構成に限定されず,吊り上げワイヤーの長さを調整するためのあらゆる手段が含まれ,また,実際に装置を設置した際に事前の計算と微妙に異なって生じた長さの差の調整や,設置後に経年により吊り上げワイヤーが伸びて長さが変わってしまうために必要となる微調整をも目的とする。 被告製品1においては,シャックル,リングキャッチ,チェーンが吊り 上げワイヤーの一部を構成し,シャックル,リングキャッチ,チェーンの数を増減したり,取付位置を変えたりすることにより,吊り上げワイヤーの長さを微調整することができる。したがって,これらは,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さを,ネットを床面まで下ろすのに必要な長さよりも,高さ方向の距離に対応した長さ分だけ長 くするよう調整するための調整手段に当たり,被告製品1は構成要件Cを充足する。 (被告テイエヌネット及び被告仲本建設の主張)被告製品1は,構成要件B2及びCを充足せず,したがって,本件発明の技術的範囲に属しない。 ア構成要件B2について被告製品1においては,巻取式ウインチが採用されているところ,構成要件B2のウインチはエンドレスウインチを意味し,巻取式ウインチは含まないと解すべきであり(本件明細書には巻取式ウインチを採用した場合の具体的な構成については何ら記載がなく,当業者が本件発明のウ インチとして巻取式ウインチを実施することができる程度に明確十分な記 と解すべきであり(本件明細書には巻取式ウインチを採用した場合の具体的な構成については何ら記載がなく,当業者が本件発明のウ インチとして巻取式ウインチを実施することができる程度に明確十分な記載がされているとはいえない。),また,巻取式ウインチはウインチワイヤーの一端を巻き取るものであり,ウインチワイヤーを常に緊張した状態で移動するものではない。したがって,被告製品1のウインチは構成要件B2のウインチに該当せず,被告製品1は構成要件B2を充足 しない。 イ構成要件Cについて円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤーが設けられ,これに複数の吊り上げワイヤーを取り付ける場合には,各吊り上げワイヤーの合流位置に高さの差が生じるものの,被告製品1においては,高所でネットの上 端を天井部の形状に合わせて円弧状に裁断しており,各吊り上げワイヤ ーは,単に連結材を介してこのネット上部に取り付けられているバトンに連結されているだけである。各吊り上げワイヤー及び連結材の全長はほぼ同程度であって,連結材は各吊り上げワイヤーの合流位置の高さの差を調整する手段を備えていない。 本件明細書によれば,構成要件Cの調整手段は,吊り上げワイヤーの下 端部に固定状態で設けられた球状のストッパーと,該ストッパーの上部側で吊り上げワイヤーに挿通して設けられた筒状体と,ネット体に設けられたリング状のワイヤー挿通体とから構成されるもの(第1の態様)と解すべきであり,単に各吊り上げワイヤーが連結材を介してネット上部に取り付けられているバトンに連結されただけの被告製品1は上記構 成の調整手段を有するとはいえない。 仮にそうでないとしても,上記調整手段は天井部の円弧形状から生じる「高さ方向の距離に対応した れているバトンに連結されただけの被告製品1は上記構 成の調整手段を有するとはいえない。 仮にそうでないとしても,上記調整手段は天井部の円弧形状から生じる「高さ方向の距離に対応した長さ」を調整するものであり,これと無関係な長さを微調整するものは含まない。加えて,被告製品1においては,吊り上げワイヤーはステンレス製であることなどから経年劣化による伸 びはほとんどない一方,摩耗による劣化が生じ得るため数年ごとの交換が予定されており,経年劣化による伸びに対応するために吊り上げワイヤーを微調整することは全く想定されていない。 また,被告製品1の連結材はいずれも一般的に複数の部材を連結する目的で使用されるものであって,被告製品1においても同様に単に吊り上 げワイヤーとバトンを連結する用途で使用されているにすぎず,円弧状の天井部の高低差に基づいて連結材の数や大きさ等を変更することはない。本件発明における調整対象は吊り上げワイヤーの長さであり,被告製品1において仮に連結材の数を増減したり取付位置を変えたりしたとしても吊り上げワイヤーの長さを変えることはできないから,上記連結 材は構成要件Cの調整手段には該当しない。 以上から,被告製品1は構成要件Cを充足しない。 ⑵ 争点②(被告製品2が本件発明の技術的範囲に属するか。)について(原告の主張)被告製品2は,別紙対象製品目録記載2の製品であり,構成要件AからB3及びDのほか,構成要件Cを充足し,したがって,本件発明の技術的範囲 に属する。 被告製品2においては,吊り上げワイヤーの他端を折り返してワイヤークリップで係止することにより吊り上げワイヤーの長さを微調整することができ,本件明細書において開示された「吊 範囲 に属する。 被告製品2においては,吊り上げワイヤーの他端を折り返してワイヤークリップで係止することにより吊り上げワイヤーの長さを微調整することができ,本件明細書において開示された「吊り上げワイヤーにネット体への係止体(例えば着脱クリップ等)を設ける」構成そのものである。したがって, これらは,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さを,ネットを床面まで下ろすのに必要な長さよりも,高さ方向の距離に対応した長さ分だけ長くするよう調整するための調整手段に当たり,被告製品2は構成要件Cを充足する。 (被告テイエヌネット及び被告明城建設の主張) 被告製品2は,構成要件Cを充足せず,したがって,本件発明の技術的範囲に属しない。 すなわち,円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤーが設けられ,これに複数の吊り上げワイヤーを取り付ける場合には,各吊り上げワイヤーの合流位置に高さの差が生じるものの,被告製品2においては,高所でネットの上 端を天井部の形状に合わせて円弧状に裁断しており,各吊り上げワイヤーは,単にこのネット上部に取り付けられているバトンに連結されているだけである。各吊り上げワイヤーの長さはほぼ同程度であって,各吊り上げワイヤーの合流位置の高さの差を調整する手段は備わっていない。 本件明細書によれば,構成要件Cの調整手段は,吊り上げワイヤーの下端 部に固定状態で設けられた球状のストッパーと,該ストッパーの上部側で吊 り上げワイヤーに挿通して設けられた筒状体と,ネット体に設けられたリング状のワイヤー挿通体とから構成されるもの(第1の態様)と解すべきであり,単に各吊り上げワイヤーがネット上部に取り付けられているバトンに連結されただけの被告製品2は上記構成の調整手段を有するとはいえな 状のワイヤー挿通体とから構成されるもの(第1の態様)と解すべきであり,単に各吊り上げワイヤーがネット上部に取り付けられているバトンに連結されただけの被告製品2は上記構成の調整手段を有するとはいえない。 仮にそうでないとしても,上記調整手段は天井部の円弧形状から生じる 「高さ方向の距離に対応した長さ」を調整するものであり,これと無関係な長さを微調整するものは含まない。加えて,被告製品2においては,吊り上げワイヤーの経年劣化による伸びに対応するために吊り上げワイヤーを微調整することは全く想定されていない。 また,被告製品2のロック加工又はワイヤークリップによる係止は,吊り 上げワイヤーをバトンと連結するため端部を環状とする目的でされているにすぎず,円弧状の天井部の高低差に基づいて吊り上げワイヤーの長さを変更することはない。 ⑶ 争点③(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。)について (被告らの主張)本件特許は,次のとおり無効理由があることから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア無効理由1(明確性要件違反)本件発明は,「高さ方向の距離に対応した長さ」,すなわち,天井の円 弧形状に起因する各吊り上げワイヤーの取付位置の高さの差を,どのように「調整」,すなわち,長くしたり短くしたりして適度な状態に変更するかについて,その方法及び手段が,特許請求の範囲及び本件明細書の記載によっても明らかであるとはいえず,明確であるとはいえない。 イ無効理由2(サポート要件違反) 本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず,サ ポート要件に違反する。 すなわち,調整手段について,本件明細書によれば,本件発明の課 (サポート要件違反) 本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず,サ ポート要件に違反する。 すなわち,調整手段について,本件明細書によれば,本件発明の課題は,円弧状の天井からネット体を吊り張りする場合に,吊り上げワイヤーの微調整を簡易かつ安全に行うことができ,また,保守管理の作業を安全に行うことができることであり,同課題を解決するためには天頂部付近 において吊張体を他の部分と比べて上方(天井側)に引き上げる手段が必要となる。しかし,請求項2には「前記吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側には,…調整手段が設けられている」という包括的な記載がされており,本件明細書に記載された上記の課題を解決する手段が反映されておらず,出願時の技術常識に照らしても,発明の詳細な説 明に開示された内容を,特許請求の範囲の内容まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 また,調整手段の設置位置についても,本件明細書には,吊り上げワイヤーの他端側並びに吊張体及び吊り上げワイヤーの他端側の2つが明らかにされているのみである一方,請求項2には,これらに加えて,本件 明細書には記載も示唆もされていない「吊張体に設けられている」場合も記載されており,発明の詳細な説明に開示された内容を,特許請求の範囲の内容まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 ウ無効理由3(実施可能要件違反)本件発明は,発明の詳細な説明の記載が,発明の属する技術の分野にお ける通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず,実施可能要件に違反する。 すなわち,本件明細書には,調整手段の態様として「吊り上げワイヤーに,ネット体への係止体(例えば,着脱可能なクリップ等 できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず,実施可能要件に違反する。 すなわち,本件明細書には,調整手段の態様として「吊り上げワイヤーに,ネット体への係止体(例えば,着脱可能なクリップ等)を設けることで,吊り上げワイヤーの長さ調整を行うことも可能である」とされて いるが,その態様については吊り上げワイヤーと吊張体とを係り合って 止めるための係止体を備えることしか明らかにされていない。 また,仮に本件発明に巻取式ウインチを採用した構成を含むとしても,本件明細書には,巻取式ウインチが使用可能であることしか記載されておらず,これを使用した場合の本件発明全体の具体的構成について何ら記載されていない。 エ無効理由4(乙1発明からの進歩性欠如)本件発明と乙1発明との間には,「体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状の吊張体を吊張りするのに使用すべく,円弧状の天井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,ウインチワイヤーを緊張し た状態で移動するウインチと,ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側にネット等の吊張体の設けられた吊り上げワイヤーとから構成された屋内のネット等の吊張り装置において,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部との高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段が設けられているこ とを特徴とする屋内のネット等の吊張り装置である」という一致点がある一方で,「本件発明では,調整手段が吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側(床側)に設けられているのに対し,乙1発明では,連結管がウインチワイヤーに設けられ,係止具が吊り上げワイヤーの一端側(天 一方で,「本件発明では,調整手段が吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側(床側)に設けられているのに対し,乙1発明では,連結管がウインチワイヤーに設けられ,係止具が吊り上げワイヤーの一端側(天井側)に設けられている」という相違点があるが,保守管理等を容易に行う ことを目的として部材の取付位置を天井側から床側に変更することは,当業者であれば容易に可能であり,設計変更にすぎず,そうでないとしても,乙1発明に乙2発明,乙3発明を適用して容易に想到できた。なお,本件発明と乙1発明は,いずれも吊張体が吊り上がるタイミングを変えるものであり,タイミングを調整する対象の相違は存在しない。 このほか,「本件発明ではウインチを採用しているのに対し,乙1発明 ではエンドレスウインチを採用している」,「本件発明では,任意の吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部,又は,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置との高さ方向の距離に対応した長さを調整するのに対し,乙1発明では,吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーにお けるウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部との高さ方向の距離に対応した長さを調整する」という相違点があるが,いずれも,実質的な相違点ではない。 オ無効理由5(発明非該当)本件明細書によれば,本件発明は,吊り上げワイヤーの長さを調整する こと,収納が円滑であることをという課題を解決するものであり,ネット又はネット上端部より下の吊り上げワイヤーの部分に調整手段が設けられるものとされているが,このような調整手段はネットに絡まったりするなどしてネットを円滑に吊り張りすることはできないものであり,したがって,本件発明は,上記課題を全 ワイヤーの部分に調整手段が設けられるものとされているが,このような調整手段はネットに絡まったりするなどしてネットを円滑に吊り張りすることはできないものであり,したがって,本件発明は,上記課題を全く解決することができない不完 全な技術であって,発明に該当しない。 (原告の主張)ア無効理由1について本件発明は明確であり,本件特許の特許請求の範囲の記載は明確性要件に違反しない。 すなわち,本件明細書によれば,構成要件Cの「高さ方向の距離に対応した長さ」とは,高さ方向の距離に対応した吊り上げワイヤーの長さを意味することは明確であり,これを調整するための「調整手段」の具体的構成としてワイヤー挿通体及び筒状体を用いる方法が明確にされており,第三者にも容易に理解可能である。なお,本件発明の調整手段は,ネット等 の吊張体を天井側に折り畳んだ状態で収納する態様に限定されるものでは ない。 イ無効理由2について本件明細書には,調整手段の具体的な構成としてワイヤー挿通体及び筒状体を用いる方法等が実施例として開示されており,構成要件Cの「前記吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側に…調整手段が設けられて いる」について記載され,当業者は本件特許発明の課題を解決できると認識できるから,本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反しない。 ウ無効理由3について本件明細書には,高さ方向の距離に対応して調整すべき吊り上げワイヤ ーの長さを調整することにより,ネット等の吊張体を円弧状の天井部に沿って吊り上げることを可能とするネット吊張り装置の施工やメンテナンス等を容易に行えるようにすることが記載されており,また,当業者は,本件明細書の記載により, り,ネット等の吊張体を円弧状の天井部に沿って吊り上げることを可能とするネット吊張り装置の施工やメンテナンス等を容易に行えるようにすることが記載されており,また,当業者は,本件明細書の記載により,巻取式ウインチを用いて吊り上げワイヤーを上下に移動させる構成により,本件特許を実施することが可能である。したが って,本件特許の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に違反しない。 エ無効理由4について本件発明と乙1発明との間には,「体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状の吊張体を吊張りするのに使用すべく,円弧状の天 井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチと,ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側にネット等の吊張体の設けられた吊り上げワイヤーとから構成された屋内のネット等の吊張り装置において,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部との高さ 方向の距離の差が生じる屋内のネット等の吊張り装置である」という一致 点があるが,「本件発明では高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段が設けられていることを特徴とするのに対し,乙1発明ではそのような調整手段について開示されていない」,「本件特許発明では,高さ方向の距離に対応した吊り上げワイヤーの長さを調整するための調整手段が,吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側に設けることによ り,各吊張体が吊り上がるタイミングを変えているのに対し,乙1発明では,吊り上げワイヤーと連結している連結管と高さ方向の距離に応じてウインチワイヤーに固定された停止具を用いることにより,各 よ り,各吊張体が吊り上がるタイミングを変えているのに対し,乙1発明では,吊り上げワイヤーと連結している連結管と高さ方向の距離に応じてウインチワイヤーに固定された停止具を用いることにより,各吊り上げワイヤーが吊り上がるタイミングを変えている」という相違点がある。そして,これらの相違点は,吊り上げワイヤーやウインチワイヤーというネット吊 張り装置としての基本部分に係る構成の違いであり,部材の取付位置についての設計的事項とはいえないし,乙2発明及び乙3発明には,上記相違点に係る構成が開示されておらず,乙1発明に乙2発明及び乙3発明に係る事項を適用しても本件特許発明を想到することはできない。本件発明は進歩性を有する。 なお,このほか,本件発明と乙1発明には,被告らが主張する「本件発明ではウインチを採用しているのに対し,乙1発明ではエンドレスウインチを採用している」,「本件発明では,任意の吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部,又は,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置との高 さ方向の距離に対応した長さを調整するのに対し,乙1発明では,吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部との高さ方向の距離に対応した長さを調整する」という相違点があるが,いずれも実質的な相違点ではない。 オ無効理由5について 本件発明が,実施可能であって(前記ウ),課題を解決することができ るものであることは明らかである。 ⑷ 争点④(被告製品1の使用について損害の発生及び額)について(原告の主張)沖縄市物件における電動昇降式ネットの施工に係る工事代金は3843万8500円で 明らかである。 ⑷ 争点④(被告製品1の使用について損害の発生及び額)について(原告の主張)沖縄市物件における電動昇降式ネットの施工に係る工事代金は3843万8500円であり,その利益率は約3割であるから,被告テイエヌネット及 び被告仲本建設は,被告製品1の設置により,少なくとも1153万1550円の利益を得た。したがって,同利益額が原告の損害額と推定される(特許法102条2項)。 (被告テイエヌネット及び被告仲本建設の主張)否認ないし争う。 ⑸ 争点⑤(被告製品2の使用について損害の発生及び額)について(原告の主張)伊江村物件における電動昇降式ネットの施工に係る工事代金は3956万8600円であり,その利益率は約3割であるから,被告テイエヌネット及び被告明城建設は,被告製品2の設置により,少なくとも1187万058 0円の利益を得た。したがって,同利益額が原告の損害額と推定される(特許法102条2項)。 (被告テイエヌネット及び被告明城建設の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明について⑴ 本件明細書の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。なお,図面は,別紙本件発明図面のとおりである。(甲2)【技術分野】【0001】本発明は,体育館,屋根付き雨天練習場,屋根付き球場(通称,ドーム球場という)等の大きな空間部を有し,天井部が 略円弧状の屋内を,使用目的(例えば,テニス等のコートを複数面取り する場合,又は野球の練習分け(内野外野の連携練習と打撃練習等に分ける場合)等)に応じて確実に区画分けしたり,球技における防球用(観客席への球の飛び込み防止,又は隣り合うコートで 複数面取り する場合,又は野球の練習分け(内野外野の連携練習と打撃練習等に分ける場合)等)に応じて確実に区画分けしたり,球技における防球用(観客席への球の飛び込み防止,又は隣り合うコートでの球の飛び込み防止等),又はカゴ状のネット体を吊張りするのに使用する屋内のネット等の吊張体の吊張り方法とその装置に関する。 【背景技術】【0002】体育館等の屋内を,2面(,又は多面)に分けて球技で同時に使用(試合,練習等)する場合は,試合,練習等をスムーズ(コート間でボールの飛び込み等がないように)に行うため,又は安全性のために,ネット体を用いて屋内を区切って使用する。 この場合に,従来使用されているネット等の吊張装置は,ネット体を吊 張りするのに,屋内の側面側に設けられた複数の手巻きウインチと,天井側に設けられた滑車と,手巻きウインチより滑車を介して床面に垂らした複数の吊り上げワイヤーと,該吊り上げワイヤーに取り付けたネット体とから構成され,それぞれの手巻きウインチを巻き取る方向に回転することで,吊り上げワイヤーを移動しネット体を吊張りする。 また,ネット体を取り外す場合は,手巻きウインチを引き出す方向に回転することで,吊り上げワイヤーを移動し床面に吊り上げワイヤーを垂らしてネット体を取り外する。 【0003】また,観客席部分の防球用としてネットを吊張りする際も,同様にワイヤーにネットを取り付けた後,手巻きウインチでワイヤーを天井 周縁の一方より他方側へ緊張することによりネットを吊張りしていた。 【0004】上述のような手動による方法では,近年の大型化した体育館や,屋根付き(ドーム)球場のような大空間部のある屋内の場合,ネットを吊張りするのに時間(数時間)がかかり,又多大な労力を要 た。 【0004】上述のような手動による方法では,近年の大型化した体育館や,屋根付き(ドーム)球場のような大空間部のある屋内の場合,ネットを吊張りするのに時間(数時間)がかかり,又多大な労力を要するために,ネットを吊張りする準備が大変で,作業効率が悪く,特に,複数に分割して ネットを吊張りする際は,さらなる準備に時間を要する等ネットの吊張り に関しての問題があった。 【0005】特に,屋根付き(ドーム)球場のような場合,天井部分が円弧状になっているために天井部分は,斜めにワイヤーを設けネットを吊張りしなければならないが,これでは円弧部を確実な区分けができない。さらに,円弧状の天井部にネットを張る場合は,斜めにネットを移動するため に手動式では,さらに多くの労力を必要とするという欠点があった。 【0006】そこで,体育館等の円弧状の天井部を有する屋内を複数に区画するため,又は球技における防球用としてネットを吊張りするために,略円弧状の天井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,一端側が前記ウインチワイヤーに連結体を介して連結された吊り上げワイヤーと,ウイン チワイヤーを移動するためのウインチと,吊り上げワイヤーの他端側に連結されたネット体とからなり,しかも連結体がウインチワイヤーに沿って天頂部との距離に応じて移動するように構成されている装置が考えられた…。 【0007】この装置は,エンドレスウインチを作動させるとウインチワイ ヤーが円弧状の天井部に沿って移動し,該ウインチワイヤーに設けられた吊り上げワイヤーが上方に移動することとなる。 そして,各吊り上げワイヤーは,天頂部との距離に応じて連結体の移動距離が決められているために,先ず,天頂部の吊り上げワイヤーがネット体を持ち上げ,他の吊り上げワイヤ 上方に移動することとなる。 そして,各吊り上げワイヤーは,天頂部との距離に応じて連結体の移動距離が決められているために,先ず,天頂部の吊り上げワイヤーがネット体を持ち上げ,他の吊り上げワイヤーは,連結体のみが天頂部との距離に 応じてウインチワイヤーの移動方向と逆方向に移動する。その後,天頂部からの距離の短い順に各吊り上げワイヤーがネット体を持ち上げ,円弧状の天頂部に沿ってネット体を吊張りすることができる。 【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0008】しかしながら,上述のようなネット吊張り装置では,円弧状の天井部分に設けられたウイ ンチワイヤーに沿って連結具が移動するために,連結具の移動を天頂部と の距離に応じて停止するための停止体を各吊り上げワイヤー毎に少なくとも2個設ける必要があり,その調整作業(特にウインチワイヤー設置後に行う微調整)は天井側で行わなければならず,クレーン車等を屋内に用いて行う必要があり,コストの面で高くなるとともに,その調整作業そのものが煩雑となるという欠点があった。 【0009】また,ネット体の天井側の吊り張を床面に対して水平方向に変更する等の場合,その都度連結具の取り付け位置の変更が必要となり,その作業も天井側で行わなければならず煩雑であるとともに,メンテナンスの面においてもその作業が煩雑であるという問題点があった。 【0010】本発明は,このような従来の構成が有していた問題を解決する ものであり,吊り上げワイヤーの微調整が簡易で,且つ安全に行え,メンテナンスの面でも安全に作業できることを目的としている。 【課題を解決するための手段】【0011】そして,本発明は上記目的を達成するために,体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で複数に区画,球 も安全に作業できることを目的としている。 【課題を解決するための手段】【0011】そして,本発明は上記目的を達成するために,体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状 の吊張体を吊張りするのに使用すべく,ウインチを用いてウインチワイヤーを緊張した状態で円弧状の天井部に沿って移動し,該ウインチワイヤーに一端側を連結された吊り上げワイヤーを移動することで,吊り上げワイヤーの他端側に設けられた吊張体を吊張りする屋内のネット等の吊張り方法において,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーにお けるウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さを,吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側に設けられた調整手段であらかじめ調整した後,吊り上げワイヤーを移動してネット等の吊張体を吊張りすることを特徴と する。 【0013】また,具体的には,体育館等の円弧状の天井部を有する屋内をネット等の吊張体で複数に区画,球技における防球用として吊張体を吊張り,又はカゴ状の吊張体を吊張りするのに使用すべく,円弧状の天井部に沿って設けられたウインチワイヤーと,該ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチと,前記ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端 側にネット等の吊張体の設けられた吊り上げワイヤーとから構成された屋内のネット等の吊張り装置において,前記吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側には,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接して の吊張り装置において,前記吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側には,前記吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付 け位置との高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段が設けられていることである。 【0014】さらに,調整手段が,吊張体に設けられたワイヤー挿通体と,該ワイヤー挿通体より延出した吊り上げワイヤーに設けられたストッパーとから構成されていることである。 【0015】また,ウインチワイヤーを床面に対して平行状態に設けるべく水平移動体が設けられていることである。 【0016】上記本発明の作用は,体育館,屋根付き球場等の大きな空間部のある屋内をネット等の吊張体を用いて区画したり,防球用として吊張したり,又はカゴ状の吊張体を使用する際,天井周縁近傍の片側,又は両側 に設けられたウインチを作動することで円弧状の天井に沿って設けられたウインチワイヤーを移動し,該ウインチワイヤーに設けられた吊り上げワイヤーを上方に吊り上げることにより,吊り上げワイヤーに設けられたネット等の吊張体を吊張りする。 【0017】この際,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り 付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げ ワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さを,吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側に設けられた調整手段であらかじめ調整した後,吊り上げワイヤーを移動することで,ネット等の吊張体は,上部側を円弧状の天井に沿って吊り張りされ,下部側を床面に水平状態として吊り張りされることとなる。 【00 整手段であらかじめ調整した後,吊り上げワイヤーを移動することで,ネット等の吊張体は,上部側を円弧状の天井に沿って吊り張りされ,下部側を床面に水平状態として吊り張りされることとなる。 【0018】また,ネット等の吊張体を下ろす際は,ウインチを逆方向に作動しウインチワイヤーを上記と逆方向に移動し,基準となる天頂部の吊り上げワイヤーより順に天頂部に近い位置の吊り上げワイヤーが下方に移動することで,前記ネット等の吊張体の下部側(床面側)を床面に水平状態に保ちながら床面に下ろすことができる。 【0019】ネット等の吊張体の収納に関しては,長期間使用しない場合は,床面に下ろした後,吊り上げワイヤーより取り外して収納する。 【0020】また,第2の課題解決手段による作用は,ネット等の吊張体の上部側,又は吊り上げワイヤーに設けられた調整手段を用いて,ネット等の吊張体の上部側の吊り上げワイヤーをフリーの状態とし,この状態で吊 り上げワイヤーをネット等の吊張体の吊る張りする位置よりさらに上方に移動することにより,ネット等の吊張体を折り畳むように天井側に移動して円弧状の天井に沿って収納することができる。 【0021】この際も上記と同様に,吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側に設けられた調整手段を微調整することで,ネット等の吊張体の 折り畳み状態(上下方向の幅,折り畳みむ回数等)を調整することができる。 【0022】また,調整手段の吊り上げワイヤーのストッパーを,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワイヤー との取り付けとの高さ方向の距離に対応した長さの位置に設けることで, ウインチワイヤーの移動により天頂部,又 ,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワイヤー との取り付けとの高さ方向の距離に対応した長さの位置に設けることで, ウインチワイヤーの移動により天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーが上方(又は下方)に移動してネット等の吊張体を吊り上げる(下方に下ろす)しても,任意の吊り上げワイヤーは高さ方向の距離分吊り上げワイヤーのみを吊張体に設けられたワイヤー挿通体内を移動することとなる。その後,ワイヤー挿通体にストッパーが当接す ることで,その部分のネット等の吊張体を吊り上げる(下方に下ろす)こととなる。 【0023】また,天井側には,ウインチワイヤーを床面に対して平行状態に設けるべく水平移動体が設けられているために,ウインチワイヤーの移動により,同時に吊り上げワイヤーを上方(又は下方)に移動してネット 等の吊張体を吊り上げる(下方に下ろす)ことができる。 【発明の効果】【0024】上述したように本発明の体育館等の屋内のネット等の吊張り装置は,天井部分の移動はウインチワイヤーのみであるために,ネット体の吊張り,収納時において故障,トラブルの発生が従来の装置に比し少なくという効果を発揮するものであります。 【0025】また,調整手段がネット等の吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの下端(床面)側に設けられているために,ネット等の吊張体を床面側に吊り下ろすのみでメンテナンス等が容易に行えることとなる。 【0026】また,調整手段の構成も簡易であり,且つネット等の吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの下端(床面)側に設けられているために, 室内に施工する場合の施工時間の短縮,施工工程の短縮を図ることができる。 【0027】さらに,ネット等の吊張体の上部側の吊 又は/及び吊り上げワイヤーの下端(床面)側に設けられているために, 室内に施工する場合の施工時間の短縮,施工工程の短縮を図ることができる。 【0027】さらに,ネット等の吊張体の上部側の吊り上げワイヤーをフリーにすることで,ネット等の吊張体を天井側に折り畳んだ状態で収納することができるので,屋内の区画をより多目的にでき,使用範囲広げること ができる。 【実施の実施するための最良の形態】【0028】以下,本発明の体育館等の屋内のネット吊張り装置の実施の形態を…説明する。 【0029】図1は,屋内のネット吊張り方法を説明する概略説明図であり,図2はネット吊張り装置を示す概略説明図であり,図3はウインチワイヤーと吊り上げワイヤーとを連結する連結具を示す概略側面図であり,図4 は吊り上げワイヤー,及びネット体に設けられた調整手段を示す概略側面図であり,図5は吊り上げワイヤー,及びネット体に設けられた調整手段を示す概略正面図であり,…図8は他の屋内のネット吊張り方法を説明する概略説明図であり,図9は他の屋内のネット吊張り方法を説明する概略説明図である。 【0030】屋内のネット吊張り装置1は,体育館等の屋内の天井2の枠等に設けられ,且つ下方側に吊り上げ滑車3の取り付けられた複数の支持具4…と,該支持具4の上方側に一対設けられた滑車5…と,該滑車5…間に設けられたウインチワイヤー7と,該ウインチワイヤー7とを移動するウインチ10(図中ではエンドレスウインチを使用。尚,ウインチ10の 種類はエンドレスウインチに限定されるものでなく,巻き取り式ウインチ等,使用する屋内の大きさ,設置位置等により自在に決定されるものである。)と,連結具8を介して一端側を前記ウインチワイヤー7に連結し,且つ吊り上げ滑車3に巻 限定されるものでなく,巻き取り式ウインチ等,使用する屋内の大きさ,設置位置等により自在に決定されるものである。)と,連結具8を介して一端側を前記ウインチワイヤー7に連結し,且つ吊り上げ滑車3に巻回された吊り上げワイヤー9と,該吊り上げワイヤー9の他端側に設けられた吊張体としてのネット体12とから構成され ている。 【0031】前記吊り上げワイヤー9には,任意の吊り上げワイヤー9aのウインチワイヤー7への取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤー9bのウインチワイヤー7への取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さ(L)を調整する調整手段が 設けられている。 【0032】上記調整手段は,吊り上げワイヤー9の下端部に固定状態で設けられた球状のストッパー14と,該ストッパー14の上部側で,吊り上げワイヤー9に挿通して設けられた筒状体15と,ネット体12に設けられたリング状のワイヤー挿通体16とから構成されている。 【0035】前記連結具8は,ウインチワイヤー7に挿通後その前後への移 動を固定し該ウインチワイヤー7に対してその位置で回動自在な連結具本体8aと,該連結具本体8aの側面に回動自在に設けられた補助連結体8bとから構成され,補助連結体8bは前後の連結部8c,8dがそれぞれ回動すべく構成されている。 【0037】上記装置1を使用する際は,先ずそれぞれの吊り上げワイヤー 9…の他端側をネット体12に設けられたワイヤー挿通体16に挿通後,該吊り上げワイヤー9…の端部にストッパー体15…をそれぞれ取り付ける。その後,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤー9bのウインチワイヤー7への取り付け位置と,それぞれの吊り上げワイヤー9a…のウインチワイ パー体15…をそれぞれ取り付ける。その後,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤー9bのウインチワイヤー7への取り付け位置と,それぞれの吊り上げワイヤー9a…のウインチワイヤー7への取り付け位置との高さ方向 の距離に対応した長さ(L1,L2)を調整してその距離を一対の筒状体15で決定する。 【0038】その後,吊り上げワイヤー9…の一端側を連結具8の補助連結体8b…に連結する。 【0039】この状態で,ウインチ10を作動すると,ウインチワイヤー7 がエンドレス状態(又は,一定距離を前後移動)で天井2の円弧に沿って滑車5…間を移動する…こととなる。 【0040】そして,ウインチワイヤー7に連結具8を介して連結された吊り上げワイヤー9…のうち,天頂部の吊り上げワイヤー9bが,先ず上方に移動することとなる。この際,他のそれぞれの吊り上げワイヤー9aは, ネット体12に設けられたワイヤー挿通体16内を筒状体15で調整され たそれぞれの距離(L1,L2)まで移動する。 【0041】それぞれの吊り上げワイヤー9aが調整されたそれぞれの距離(L1,L2)移動した後,天頂部に近い吊り上げワイヤー9bより順次ワイヤー挿通体16部分で筒状体15が停止し,ネット体12を上方に持ち上げることとなる。 【0042】すべての吊り上げワイヤー9がネット体12を上方に持ち上げると,円弧状の天井2に沿ってネット体12を吊張りすることができることとなる。 【0045】このように,円弧状の天井2に対して,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤー9bのウインチワイヤー7 への取り付け位置と,それぞれの吊り上げワイヤー9a…のウインチワイヤー7への取り付け位置との高さ方向の距離に対応し 頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤー9bのウインチワイヤー7 への取り付け位置と,それぞれの吊り上げワイヤー9a…のウインチワイヤー7への取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さを,ネット体12側で調整するために,その調整(微調整を含む)がスムーズで,且つそのメンテナンスも容易に行えることとなる。 【0057】…上記実施例では調整手段は,吊り上げワイヤー9の下端部に 固定状態で設けられた球状のストッパー14と,該ストッパー14の上部側で,吊り上げワイヤー9に挿通して設けられた筒状体15と,ネット体12に設けられたリング状のワイヤー挿通体16とから構成したが,本発明における調整手段はこれに限定されるものでない。 【0058】例えば,吊り上げワイヤー9に,ネット体12への係止体(例 えば,着脱自在なクリップ等)を設けることで,吊り上げワイヤー9の長さ調整を行うことも可能であり,ネット体12に,吊り上げワイヤー9の係止体(例えば,着脱自在なクリップ等)を設けることで,吊り上げワイヤー9の長さ調整を行うことも可能であり,又簡易にネット体12にワイヤー挿通体16を設け,吊り上げワイヤー9の下端部に球状のストッパー 14を設けることで調整することも可能である。 ⑵ 本件明細書の記載によれば,本件発明は,次のような技術的意義を有するものと認められる。 本件発明は,体育館等の大きな空間部を有し,天井部が略円弧状の屋内を,使用目的に応じて区画分けするためなどに使用する屋内のネット等の吊張体の吊張り方法とその装置に関するものである(段落【0001】)。 従来の吊張り装置においては,斜めにワイヤーを設けてネットを吊張りするために,天井部が略円弧状の屋内をネットで確実に区分けすることができな とその装置に関するものである(段落【0001】)。 従来の吊張り装置においては,斜めにワイヤーを設けてネットを吊張りするために,天井部が略円弧状の屋内をネットで確実に区分けすることができない上に手動で斜めにネットを移動するために労力を要し(段落【0005】),これを解決するためにウインチワイヤーを略円弧状の天井に沿って設け,ウインチワイヤーと吊り上げワイヤーとを連結する連結体が,天頂部 との距離に応じてウインチワイヤーに沿って移動するよう構成した場合であっても,連結具の移動を天頂部との距離に応じて停止するための停止体を各吊り上げワイヤーに少なくとも2個設ける必要があり,ウインチワイヤー設置後に行う微調整を含むその調整作業を天井側で行わなければならず費用がかかり煩雑であったり,天井側の吊張りを床面と平行に変更するなどのメン テナンスの場合には連結具の取付位置の変更作業を天井側で行わなければならないなどの問題があった(段落【0006】【0008】【0009】)。 本件発明は,このような課題を解決するため,円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤーを設け,ウインチを用いてウインチワイヤーを緊張した状態で天井部に沿って移動することによりウインチワイヤーに一端側を連結した吊 り上げワイヤーを移動することとし,かつ,任意の吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置と,天頂部又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーにおけるウインチワイヤーとの取付位置との高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段を,吊張体若しくは吊り上げワイヤーの他端(下端,床面)側又はその両方に設け,上記距離に 対応した長さをあらかじめ調整した後,吊り上げワイヤーを移動して吊張体 を吊張りする構成とした(段落【0 体若しくは吊り上げワイヤーの他端(下端,床面)側又はその両方に設け,上記距離に 対応した長さをあらかじめ調整した後,吊り上げワイヤーを移動して吊張体 を吊張りする構成とした(段落【0011】【0013】【0017】)。 このことにより,天井部分の移動はウインチワイヤーのみであることから,ネット体の吊張り,収納時において故障,トラブルの発生が従来の装置に比し少ないこと,簡易な構成の調整手段をネット等の吊張体又は吊り上げワイヤーの下端(床面)側に設けることにより,ネット等の吊張体を床面側に吊 り下ろすのみでメンテナンス等を容易に行え,室内に施工する場合の施工時間の短縮,施工工程の短縮を図ることができること等から,吊り上げワイヤーの微調整を含む調整,メンテナンス等の作業を簡易,安全,かつ,円滑にできるようにするという効果を奏するものである(段落【0010】【0024】~【0026】【0045】)。 2 争点①(被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するか。)について⑴ 構成要件B2及びCについてア構成要件B2は,「…ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するウインチ」を備えるというものである。この文言から,本件発明のウインチは,ウインチワイヤーを緊張した状態で移動するものと理解することが できる。 そして,本件発明のウインチについて,特定の構成のウインチに限定されることは特許請求の範囲に記載されていない。本件明細書においても,ウインチは,ウインチワイヤーをエンドレス状態で移動させるエンドレスウインチに限定されるものではなく,使用する屋内の大きさや設置位 置等により自在に決定されるものであることが記載され,ウインチワイヤーについて一定距離を前後移動させるウインチ,巻取式ウインチ スウインチに限定されるものではなく,使用する屋内の大きさや設置位 置等により自在に決定されるものであることが記載され,ウインチワイヤーについて一定距離を前後移動させるウインチ,巻取式ウインチ等の構成も開示されている(段落【0030】【0039】)。また,前記1⑵のとおりの本件発明の技術的意義に照らしても,ウインチはウインチワイヤーを緊張した状態で移動するものであれば足りると解され,エ ンドレスウインチでなければ本件発明の効果を奏しないと解する理由も ない。被告テイエヌネット及び被告仲本建設は,構成要件B2の「ウインチ」はエンドレスウインチを意味すると主張するが,採用できない。 イ構成要件Cは,「…吊張体,又は/及び吊り上げワイヤーの他端側には,…吊り上げワイヤーのうち,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置と,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準と なる吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取り付け位置との高さ方向の距離に対応した長さを調整するための調整手段が設けられている」というものである。 本件発明の技術的意義や本件発明における調整手段の位置付けについてみると,従来の吊張り装置としては,略円弧状の天井部に沿って設けら れたウインチワイヤーと吊り上げワイヤーとを連結する連結体が,天頂部との距離に応じてウインチワイヤーに沿って移動するよう構成されている装置が考えられたが,複数の停止体の設置等の調整作業を天井側で行わなければならず費用がかかり煩雑である等の問題点があった(段落【0006】【0008】)ところ,本件発明は,略円弧状の屋内の天 井部に沿ってウインチワイヤーを設け,吊り上げワイヤーを一端側でウインチワイヤーに連結しその他端側に吊張体を設けるなどの構成をとる 06】【0008】)ところ,本件発明は,略円弧状の屋内の天 井部に沿ってウインチワイヤーを設け,吊り上げワイヤーを一端側でウインチワイヤーに連結しその他端側に吊張体を設けるなどの構成をとるとともに,天頂部,又は天頂部に最も近接している基準となる吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取付位置と,任意の吊り上げワイヤーのウインチワイヤーとの取付位置との「高さ方向の距離に対応した長さ」 (構成要件C),すなわち,取付位置の高さの差の長さ(以下「本件差分」という。)に基づく吊り上げワイヤー等の長さの変更,すなわち調整を,ネット等の吊張体若しくは吊り上げワイヤーの下端(床面)側又はその両方に調整手段を設け,あらかじめ行うことにより,上記問題点を解決するものである(段落【0010】【0025】【0026】 【0045】。前記1⑵)。 また,「調整」とは,「①調子の悪いものに手を加えてととのえること。 ②ある基準に合わせてととのえること。過不足なくすること。③釣り合いのとれた状態にすること。折り合いをつけること。」(大辞林第4版)などとされる。 上記のとおりの本件発明の技術的意義,調整手段の意義や,「調整」の 一般的意味からすると,本件発明に係る吊張り装置において吊張体を過不足なく適切に吊り張りするためには,本件差分が認識された上で,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更する必要があり,本件発明の「調整手段」は,そのためのものであって,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー 等の長さをあらかじめ変更する構成であり,その調整を行うことにより,吊張体を過不足なく適切に吊り張りするための手段であると理解することができる。 本件明細書の具体的な実施例についてみて ー 等の長さをあらかじめ変更する構成であり,その調整を行うことにより,吊張体を過不足なく適切に吊り張りするための手段であると理解することができる。 本件明細書の具体的な実施例についてみても,ネット吊張り装置において,天頂部の吊り上げワイヤー(9b)の取付位置と,他の吊り上げワ イヤー(9a)の取付位置との「距離に対応した長さ」であるL1等の長さ(L)が認識された上で,一対の筒状体(15)を吊り上げワイヤーに挿通し,その一対(2個)の筒状体の間の距離を「距離に対応した長さ」(L 本件差分)とすることによって,調整を行う調整手段が記載されており(段落【0036】【0037】【図1】【図4】【図5】 等)ここでは,ネット体を過不足なく適切に吊り張りするため,吊り上げワイヤーに挿通する一対の筒状体が設けられ,その筒状体の間の距離を認識された差(L 本件差分)と同じにすることができることが記載されており,本件差分(L)を基準としてこれに合うように筒状体の間の距離の長さをあらかじめ変更する構成が調整手段として記載されてい る。 以上のとおり,本件発明の「調整手段」(構成要件C)とは,吊張体を過不足なく適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更するための手段であると解される。 なお,吊張体の吊張り装置は,複数の部材を組み合わせて構成され,そ こには当然に連結部材や係止部材が含まれ,それらの連結部材や係止部材において,何らかの長さの変更を行うことができる場合もあり得る。 しかし,本件発明の「調整手段」等の技術的意義は,上記のとおりのものであり,吊張り装置に何らかの長さ変更を行う構成があったとしても,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さ る。 しかし,本件発明の「調整手段」等の技術的意義は,上記のとおりのものであり,吊張り装置に何らかの長さ変更を行う構成があったとしても,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあ らかじめ変更するための手段であると認められないものは,本件発明の「調整手段」とはいえないと解される。仮に,本件発明において,単に長さを変更する手段のみをもって調整手段に該当すると解するとすれば,吊張体の施工やメンテナンスに際して吊り上げワイヤー等の長さを変更するに当たり,他の手段によって,本件差分を基準としてこれに合うよ うにしなければならないことになるが,そのような作業を床面側のみで行うことが可能であることは本件明細書の記載等によっても明らかではなく,このような構成によっては本件発明の課題を解決することができない。ここで,本件明細書には,吊り上げワイヤーにネット体への係止体を設けることで,又は,ネット体に吊り上げワイヤーの係止体を設け ることで,吊り上げワイヤーの長さの調整を行うこともできることが記載されている(段落【0058】)。これまで述べてきたところから,そのような係止体が,認識された本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更するための手段といえる場合には,本件発明の「調整手段」といえ,上記記載はその趣旨のもの と理解することができる。それに対し,そのような手段とはいえず,通 常の係止体としての構成,機能を超える構成,機能等を有しないものは,これまで述べたところに照らせば,本件発明と関係なく用いられている係止体であり,本件発明の「調整手段」が有する効果を奏するものではなく,本件発明の「調整手段」に該当するとは認められない。 他方,被告らは,本件発明の「調整手段 ば,本件発明と関係なく用いられている係止体であり,本件発明の「調整手段」が有する効果を奏するものではなく,本件発明の「調整手段」に該当するとは認められない。 他方,被告らは,本件発明の「調整手段」が筒状体など本件明細書に記 載された具体的な実施例に限られる趣旨の主張もするが,本件発明の技術的範囲が上記の範囲に限定される理由はなく,前記のとおり,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更する構成を備えたものであれば,本件発明の「調整手段」といえる。 ⑵ 被告製品1について前提事実(前記第2の1⑷ア),証拠(各項に掲記のほか,甲7,乙6~9,13~17,20,21,23,34),弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア被告製品1においては,円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤーが設 けられ,同ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側をネットを取り付けた複数の棒状のバトンに連結した吊り上げワイヤーが設けられている。 なお,ウインチワイヤーの一端は,ネットに取り付けられ吊り上げワイヤーとして機能している。 イ被告製品1を施工するに当たっては,工場において各吊り上げワイヤー の一端にロック加工を施して環状にし,現場において,各吊り上げワイヤーを,ウインチワイヤーに,各合流位置(別紙被告製品説明図の【図1】の「滑車」付近)の間隔を空けて連結する。この連結は,2本のワイヤーをそれぞれ一旦ほどいて併せて編み合わせるさつま加工(アイスプライズ加工)という方法により行う。また,長方形のネットを,吊り上げワイヤ ーに連結材を介して両端を連結されたバトンに仮吊りし,実際に天井部の 形状に合わせ,かつ,ネットの編目が真っ直ぐになるよう円弧状に裁断した上, 。また,長方形のネットを,吊り上げワイヤ ーに連結材を介して両端を連結されたバトンに仮吊りし,実際に天井部の 形状に合わせ,かつ,ネットの編目が真っ直ぐになるよう円弧状に裁断した上,再度バトンに取り付ける。現場におけるこれらの作業は,いずれも高所作業車を使用して行う。(乙27)各吊り上げワイヤーのウインチワイヤーへの連結位置(別紙被告製品説明図の【図1】の「連結点」)から連結材の下端までの長さはほぼ同程 度である。このことにより,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さは,各吊り上げワイヤーの合流位置(別紙被告製品説明図の【図1】の「滑車」付近)と床面の距離に比べ,各吊り上げワイヤーの合流位置と基準吊り上げワイヤーの合流位置との間に生じる高さの差(本件差分に対応する長さであり,最大約7.7m)に概ね応じた分長 くなっていることとなる。 ウ各吊り上げワイヤーと各バトンを連結する連結材は,シャックル(別紙対象製品説明書1の【図6】の番号5),錘(同番号6),リングキャッチ(同番号7)及びチェーン(同番号8。リング1個の大きさは約3cm。)から構成されている。具体的には,各吊り上げワイヤーの先端を折 り返してロック加工により係止してできた環状部分にシャックルを取り付け,これに錘を連結し,さらに,7個程度のリングによって成るチェーンを折り返して,折り返し部分に該当するリングをリングキャッチで錘に連結し,チェーンの両端部分のリングをそれぞれリングキャッチでバトンに連結するなどしている。 被告製品1においては,隣接するバトンどうしが衝突してネットの上下動を阻害することを回避するためにチェーンの連結位置を変えている場合があるが,連結材によって吊り上げワイヤー等の長さの調整は行っていな 被告製品1においては,隣接するバトンどうしが衝突してネットの上下動を阻害することを回避するためにチェーンの連結位置を変えている場合があるが,連結材によって吊り上げワイヤー等の長さの調整は行っていない。 エ被告製品1においてネットが吊り上げられた状態では,各バトンは全体 として天井部の形状と概ね同様の円弧状に形成されているが,天井部と各 バトンとの間には約数十cmの間隙がある。この状態から,ウインチを稼働させて吊り上げワイヤーを下降させると,別紙被告製品説明図の【図2】のとおり,全体として円弧状に形成された各バトンが下降し,天井部と床面との距離が短い端部のバトンがまず床面に到達する。更にウインチを稼働させ,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーが取り付けられたバトン が床面に到達するまで下降を継続させると,先に床面に到達したバトンに取り付けられた各吊り上げワイヤーは,下方に移動できないことから上記の高さの差に応じて長くなった分がたわんだ状態となる。(乙8,15)⑶ 被告製品1が本件発明の技術的範囲に属するかについて原告は,被告製品1において,各吊り上げワイヤーと各バトンを連結する シャックル,リングキャッチ,チェーン(以下,これらを「本件連結材」という。)が本件発明の調整手段であると主張する。 ここで,本件発明の「調整手段」(構成要件C)とは,吊張体を過不足なく適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更するための手段である(前記⑴イ)。 本件連結材は,ワイヤーとバトンを連結する際に通常用いられる連結材と認められるところ,それは,単に連結のために通常用いられる複数の構成部品から成っているものにすぎず,認識された本件差分を基準としてこれに合 材は,ワイヤーとバトンを連結する際に通常用いられる連結材と認められるところ,それは,単に連結のために通常用いられる複数の構成部品から成っているものにすぎず,認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更する構成を有するものであるとは認められず,そのような調整作業をするための手段とはいえない。 また,被告製品1において,もともと各吊り上げワイヤーのウインチワイヤーへの連結位置から連結材の下端までの長さはほぼ同程度であり(前記⑵イ),天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーが取り付けられたバトンが床面に到達した状態においては,他の各吊り上げワイヤーはたわんだ状態となるのであって(同エ),本件連結材によって吊り上げワイヤー等の長さの変 更は行っていない(同ウ)。本件連結材による長さの変更が想定されている ことを認めるに足りる証拠もなく,本件連結材は,そもそも長さの変更を行うための手段ではないともいえる。 したがって,被告製品1の連結材は,構成要件Cの調整手段には該当しない。 以上から,被告製品1は,構成要件Cを充足せず,本件発明の技術的範囲 に属しない。 3 争点②(被告製品2が本件発明の技術的範囲に属するか。)について⑴ 被告製品2について前提事実(前記第2の1⑷イ),証拠(各項に掲記のほか,甲8,乙10~12,18,19,22,26,29~34)及び弁論の全趣旨によれば, 次の各事実が認められる。 ア被告製品2においては,円弧状の天井部に沿ってウインチワイヤーが設けられ,同ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側をネットを取り付けた棒状のバトンに連結した吊り上げワイヤーが設けられている。 イ被告製品2を施工するに当たっては,工場において各吊り上げワイヤ けられ,同ウインチワイヤーに一端側を連結し,他端側をネットを取り付けた棒状のバトンに連結した吊り上げワイヤーが設けられている。 イ被告製品2を施工するに当たっては,工場において各吊り上げワイヤー の一端にロック加工を施して環状にし,現場において,各吊り上げワイヤーを,ウインチワイヤーに,各合流位置(別紙被告製品説明図の【図1】の「滑車」付近)の間隔を空けて連結する。この連結は,さつま加工という方法により行う。また,長方形のネットを,吊り上げワイヤーに両端を連結されたバトンに仮吊りし,実際に天井部の形状に合わせ,かつ,ネッ トの編目が真っ直ぐになるよう円弧状に裁断した上,再度バトンに取り付ける。現場におけるこれらの作業は,いずれも高所作業車を使用して行う。 (乙27,30~33)各吊り上げワイヤーの長さはほぼ同程度である。このことにより,基準吊り上げワイヤー以外の各吊り上げワイヤーの長さは,各吊り上げワイ ヤーの合流位置と床面の距離に比べ,各吊り上げワイヤーの合流位置と 基準吊り上げワイヤーの合流位置との間に生じる高さの差(本件差分に対応する長さであって,最大約8.9m)に概ね応じた分長くなっていることとなる。 なお,被告製品2においては,当初,エンドレスウインチワイヤーの片側のみに吊り上げワイヤーを連結したため不均衡となって不具合が発生 したことから,吊り上げワイヤーの半数を付け替えることにより,エンドレスウインチワイヤーの両側に吊り上げワイヤーを半分ずつ連結し負荷を均等にする是正工事を行うことになったが,工期が短く,交換用の吊り上げワイヤーについて工場でロック加工を施す時間を確保できなかったため,ワイヤークリップにより折り返した部分を係止して環状にし たものを用いることになった。(甲14 ,工期が短く,交換用の吊り上げワイヤーについて工場でロック加工を施す時間を確保できなかったため,ワイヤークリップにより折り返した部分を係止して環状にし たものを用いることになった。(甲14~17)ウその結果,各吊り上げワイヤーと各バトンは,半数は,吊り上げワイヤーの先端を折り返してロック加工により係止してできた環状部分に,半数は,吊り上げワイヤーの先端を折り返してワイヤークリップで係止してできた環状部分にリングキャッチを取り付け,リングキャッチにバトンを取 り付ける方法により連結されている。 ワイヤークリップにおいて,ワイヤーの先端を折り返してワイヤークリップで係止するというのは通常の用法であり(甲14~17),被告製品2のワイヤークリップは,そのような通常の用法に従って使用されている。 被告製品2においては,ワイヤークリップによる係止態様を変えることに よって吊り上げワイヤーの長さの調整は行っていない。 エ被告製品2においてネットが吊り上げられた状態では,各バトンは全体として天井部の形状と概ね同様の円弧状に形成されているが,天井部と各バトンとの間には約数十cmの間隙がある。この状態から,ウインチを稼働させて吊り上げワイヤーを下降させると,別紙被告製品説明図の【図2】 のとおり,全体として円弧状に形成された各バトンが下降し,天井部と床 面との距離が短い端部のバトンがまず床面に到達する。更にウインチを稼働させ,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーが取り付けられたバトンが床面に到達するまで下降を継続させると,先に床面に到達したバトンに取り付けられた各吊り上げワイヤーは,下方に移動できないことから上記の高さの差に応じて長くなった分がたわんだ状態となる。(乙26) ⑵ 被告製品2が本件発 ると,先に床面に到達したバトンに取り付けられた各吊り上げワイヤーは,下方に移動できないことから上記の高さの差に応じて長くなった分がたわんだ状態となる。(乙26) ⑵ 被告製品2が本件発明の技術的範囲に属するかについて原告は,被告製品2において,吊り上げワイヤーの他端を折り返してワイヤークリップで係止することにより吊り上げワイヤーの長さを微修正することができ,このワイヤークリップが本件発明の調整手段であると主張する。 ここで,本件発明の「調整手段」(構成要件C)とは,吊張体を過不足な く適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更するための手段である(前記2⑴イ)。 そして,被告製品2のワイヤークリップは,ワイヤーを係止する際に通常用いられる連結材と認められるもので(前記⑴ウ),通常連結材として用いられているもの以上の何らかの構造を有するとは認められず,被告製品2の ワイヤークリップが単にワイヤーを折り返して係止するものであるという構造であることに照らせば,そこに認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更する構成があるとは認められない。 また,被告製品2において,もともと各吊り上げワイヤーの長さはほぼ同程度であり(前記⑴イ),天頂部に最も近接した吊り上げワイヤーが取り付 けられたバトンが床面に到達した状態においては,他の各吊り上げワイヤーはたわんだ状態となるのであって(同エ),ワイヤークリップによる係止態様を変えることによって,吊り上げワイヤーの長さの変更は行っていない(同ウ)。ワイヤークリップによる係止状態を変えることによって長さの変更が想定されていることを認めるに足りる証拠はなく,ワイヤークリップは 単に係止手段であり,そ ーの長さの変更は行っていない(同ウ)。ワイヤークリップによる係止状態を変えることによって長さの変更が想定されていることを認めるに足りる証拠はなく,ワイヤークリップは 単に係止手段であり,そもそも長さの変更を行うための手段ではないともい える。 そうすると,被告製品2のワイヤークリップは,吊張体を過不足なく適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更するための手段とはいえない。 原告は,被告製品2のワイヤークリップについて,本件明細書に開示され た構成そのものである旨主張するが,ワイヤークリップが本件発明の「調整手段」となる場合があるとしても,前記2⑴のとおり,それは,そのワイヤークリップが先に述べたとおりの手段と認められる場合であり,被告製品2のワイヤークリップについては,そのような手段であるとは認められない。 したがって,被告製品2のワイヤークリップによる係止態様の変更方法は, 構成要件Cの調整手段には該当しない。 以上から,被告製品2は,構成要件Cを充足せず,本件発明の技術的範囲に属しない。 第4 結論以上のとおり,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなくいず れも理由がないから,これらを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史 別紙対象製品目録 1 別紙対象製品説明書1記載の構成を有する屋内運動場の電動 裁判官仲田憲史 別紙対象製品目録 1 別紙対象製品説明書1記載の構成を有する屋内運動場の電動昇降式ネット吊張り装置 2 別紙対象製品説明書2記載の構成を有する屋内運動場の電動昇降式ネット吊張り装置以上 別紙対象製品説明書1a 円弧状の天井部を有する屋内運動場において,運動場を複数に区画するため及び球技における防球用としてネット1が吊張りされている(図1)。 b1 円弧状の天井部に沿って,ウインチ2に取り付けられたウインチワイヤー3が設けられている(図2,図4,図5)。 b2 ウインチワイヤー3を緊張した状態で移動するウインチ2が設けられている(図2~図5)。 b3 吊り上げワイヤー4の一端がウインチワイヤー3と連結しており,吊り上げワイヤー4の他端が,シャックル5,錘6,リングキャッチ7,チェーン8から成る連結材を介して,ネット1を取り付けた棒状のバトン9に連結している(図5,図6)。 c 天井部が円弧状となっているため,ネット1を天井部まで吊り上げると,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤー4の位置と,その他の吊り上げワイヤー4の位置との間に,高さの差が生じる(図1)。特定の吊り上げワイヤー4の長さが,ネット1を床面まで下ろすのに必要な長さよりも,上記高さの差分に応じて余分に長くなっている(図7,図8)。吊り上げワイヤー4の他端と連結しているシャックル5,リングキャッチ7,チェーン8の数を増減する,及び/又は,取付位置を変えることにより,吊り上げワイヤー4と一体となってネット1を吊り上げている連結材の長さを微調整することができる(図6)。 d 上記aからcの構成を有する屋内運動場のネット 及び/又は,取付位置を変えることにより,吊り上げワイヤー4と一体となってネット1を吊り上げている連結材の長さを微調整することができる(図6)。 d 上記aからcの構成を有する屋内運動場のネット吊張り装置。 【図1】(施設内部の全体図) 【図2】(ウインチ2及びウインチワイヤー3) 【図3】(ウインチ2の全体図) 【図4】(施設の天井部) 【図5】(施設の天井部) 【図6】(ネット吊り上げワイヤー4のウインチワイヤー3と連結していない側(他端側)) 4’ 【図7】(ネットを一番下まで下ろした状態から,ウインチ2を作動させて,ネット1を吊り上げたときの状態) 【図8】(ネットを一番下まで下ろした状態から,ウインチ2を作動させて,ネット1を吊り上げたときの状態) 以上 4’ 別紙対象製品説明書2a 円弧状の天井部を有する屋内運動場において,運動場を複数に区画するため及び球技における防球用としてネット1が吊張りされている(図1)。 b1 円弧状の天井部に沿って,ウインチ2に取り付けられたウインチワイヤー3が設 する屋内運動場において,運動場を複数に区画するため及び球技における防球用としてネット1が吊張りされている(図1)。 b1 円弧状の天井部に沿って,ウインチ2に取り付けられたウインチワイヤー3が設けられている(図2)。 b2 ウインチワイヤー3を緊張した状態で移動するウインチ2が設けられている(図3)。 b3 吊り上げワイヤー4の一端がウインチワイヤー3と連結しており,吊り上げワイヤー4の他端4’が,ネット1を取り付けた棒状のバトン5と連結している(図4,図6)。 c 天井部が円弧状となっており,ネット1を天井部まで吊り上げると,天頂部に最も近接した吊り上げワイヤー4の位置と,その他の吊り上げワイヤー4の位置との間に,高さの差が生じる(図1,図5)。特定の吊り上げワイヤー4の長さが,ネット1を床面まで下ろすのに必要な長さよりも,上記高さの差分に応じて余分に長くなっている。吊り上げワイヤー4の他端4’を折り返してクリップ6で係止することにより吊り上げワイヤー4の長さを微調整することができる(図6)。 d 上記aからcの構成を有する屋内運動場のネット吊張り装置。 【図1】(施設内部の全体図) 【図2】(ウインチ2及びウインチワイヤー3) 2 3 【図3】(ウインチ2の全体図) 【図4】(施設の天井部) 4 3 4’ 5 1 【図5】(施設の天井部) 【図6】(図5の赤丸で示した部分の拡大図) 4 6 4’ 【図5】 (施設の天井部) 【図6】 (図5の赤丸で示した部分の拡大図) 464’5以上 別紙被告製品説明図【図1】 【図2】 以上吊り上げワイヤーBウインチワイヤー滑車連結点連結点滑車吊り上げワイヤーA吊り上げワイヤーBウインチワイヤー滑車連結点連結点滑車吊り上げワイヤーA吊り上げワイヤーはウインチワイヤーと同方向に移動(a)(b)端部のバトンが接地するまではバトンは全体的に円弧状を維持する。(a)(b)(c)(a)(b)(c)全ての状態において、各吊り上げワイヤーの長さは等しい。端部が最も撓んでいるバトンはつぶれて円弧形状を維持できない 別紙本件発明図面【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図8】 【図9】 以上
▼ クリックして全文を表示