- 1 -主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を次のとおり変更する。 ⑴法務大臣は,控訴人に対し,別紙不開示決定処分目録記載の行政文書不開示決定処分を各取り消す。 ⑵法務大臣は,控訴人に対し,別紙行政文書目録記載の各行政文書の開示決定をせよ。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2事案の概要 控訴人は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律4条1項の規定に基づいて,法務大臣に対し,司法試験委員会の第11回ないし第17回の会議に係る会議内容を録音したもの及び発言者名の分かる会議内容を記録した文書(別紙行政文書目録記載の本件文書①ないし⑬)の開示請求をしたところ,開示請求に係る文書を行政文書として保有していないことを理由に不開示決定を受けた(別紙不開示決定処分目録1ないし5。 )本件は,控訴人が被控訴人に対し,上記不開示決定1ないし4の取消し(第1事件,本件文書①ないし⑩の開示決定(第2事件,上記不開示決定5の))取消し及び本件文書⑪ないし⑬の開示決定(第3事件)を求めたところ,被控訴人は,本件文書①,③,⑤,⑦及び⑨ないし⑪は同法2条2項の「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」に該当しない,本件文書⑨ないし⑪を除く文書は物理的に存在せず同項の「当該行政機関が保有しているもの」に該当しない,本件文書⑨ないし⑪については,同法5条1号の「個人に関する情報」又は同条5号の「公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の- 2 -中立性が不当に損なわれるおそれ」のある不開示情報に当たるとして,これを争った事案である。 原審は,上記各不開示決定の取消請求に関し,本件文書のうち議事の内容を録音したもの(①, 決定の- 2 -中立性が不当に損なわれるおそれ」のある不開示情報に当たるとして,これを争った事案である。 原審は,上記各不開示決定の取消請求に関し,本件文書のうち議事の内容を録音したもの(①,③,⑤,⑦及び⑨ないし⑪)は,いずれも同法2条2項の「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」に該当するが,上記録音に係る,,文書のうち⑨ないし⑪以外の文書は当該文書に係る不開示決定の時において明らかに存在していたと認めることは困難であり,同項の「行政機関が保有するもの」に該当しないから行政文書には当たらず,また,本件文書のうち上記録音に係る文書以外の文書(②,④,⑥,⑧,⑫及び⑬)については,明らかに作成されていたとは認められないとし,さらに,本件文書⑨ないし⑪については,同法5条5号に規定する国の機関の内部における審議,検討又は協議に関する情報に該当するところ,これらの情報を公にすることにより,司法試験委員会の会議における率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあり,同号の不開示情報に該当するとして控訴人の請求を棄却し,上記各文書の開示決定の義務付けを求める部分については,上記各不開示決定が実体的に取り消されるべきものではなく,同各決定が無効又は不存在でないことも明らかであるとして,これを却下した。控訴人がこれらを不服として控訴した。 前提となる事実,本件各不開示決定の取消請求に係る当事者の主張,本件各文書の開示決定の義務付けの訴えに係る当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」1ないし3(原判決4頁11行目から30頁9行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における補充主張)⑴開示請求は行政手続法の観点からは申請という性格を有するところ,行政文書に該当し 決4頁11行目から30頁9行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における補充主張)⑴開示請求は行政手続法の観点からは申請という性格を有するところ,行政文書に該当しないとする処分は,不開示事由該当性の実体判断を行わなという意味では,実質的に申請の却下処分の性質を有するものであるのに対し,- 3 -不開示事由に該当するとの理由による不開示決定は,申請の棄却処分の性質を有し,文書不存在を理由とする不開示決定と不開示事由該当性を理由とする不開示決定は性質を異にするものであるから1つの処分で行うことはできない。行政文書性を否定することは,1つの拒否処分であって,この処分中に,文書の存在を前提とする仮定的な不開示事由の理由を付記し,理由を並記することは許されない。本件において,本件文書⑨ないし⑪については,その不開示決定に上記のような仮定的な理由が付されているが,上記各文書が物理的に存在し,組織共用文書に該当するものである以上,裁判所は,不開示事由該当性の判断に入ることなく,上記各文書に係る不開示決定を取り消さなければならず,不開示事由該当性は,義務付けの訴えの部分において判断されなければならない。 ⑵本件各文書は物理的に存在していることア国家の保有する情報は原則として国民に開示されるべきであるとする情報公開法の趣旨からすれば,物理的不存在の場合は開示請求に係る文書が開示されない例外的な場合であって,この場合にも行政事件手続法8条に基づく理由の提示が必要とされ不存在の理由を行政機関側が十分に説明しなければならないことからすれば,文書の不存在の立証責任は行政機関である被控訴人側にあるというべきである。したがって,文書が明らかに存在していたと認めることは困難であることを理由に本件不開示決定を違法ではないとし ことからすれば,文書の不存在の立証責任は行政機関である被控訴人側にあるというべきである。したがって,文書が明らかに存在していたと認めることは困難であることを理由に本件不開示決定を違法ではないとし,文書の存在の立証責任を控訴人に課すのは誤りである。 イ本件文書①,③,⑤及び⑦について被控訴人が本件文書⑨ないし⑪の存在を認めているのは,会議の当日又は翌日に開示請求されたことから,その存在を認めざるを得なかったにすぎない。これに対し,本件文書①,③,⑤及び⑦については,会議から一定期間経過後に開示請求されたのであるから,物理的に存在しても存在しないと主張することに実益がある。したがって,被控訴人が本件文書⑨な- 4 -いし⑪が現存することについて認めているからといって,そのことから,本件文書①,③,⑤及び⑦も存在しているのであれば,これらの文書についてもその存在を認めるはずであるということはできない。 そして,本件文書①,③,⑤及び⑦は組織共用文書として,それぞれの議事要旨について出席委員による確認作業が終わるまでは,録音内容が消去されずに保存されていた蓋然性が高いものと考えられるところ,被控訴人は,これらを消去したとする時期を不当に早める主張をしていることからすると,被控訴人が,これらの文書が存在しているにもかかわらず不存在と主張している蓋然性が高いというべきである。 ウ本件発言者名記録文書(本件文書②,④,⑥,⑧,⑫及び⑬)について議事の記録を作成するためには発言者名の特定は確実にされなければならず,相当程度可能であればよいというものではなく,また,会議開催から50日程度という長い期間をかけて確認作業を行うのであるから,出席者の記憶により必ず完全に発言者名が特定できるとは言い切れない。そして,そのような事態に適切に対処するために なく,また,会議開催から50日程度という長い期間をかけて確認作業を行うのであるから,出席者の記憶により必ず完全に発言者名が特定できるとは言い切れない。そして,そのような事態に適切に対処するために録音したり,録音物を起こしたりするのであるから,仮に録音物が消去された段階で確認作業を確実に行うのであれば,録音物から起こした発言者名の記載文書がなければ一貫せず,およそ行政機関としての業務運営の合理性を有しない。 ⑶情報公開法5条5号該当性についてア司法試験委員会の会議が非公開とされた趣旨司法試験委員会を含む国家行政組織法8条の合議制の機関(審議会等)について,中央省庁等改革基本法30条5号が「会議又は議事録は,公開することを原則とし,運営の透明性を確保すること」としている趣旨は,審議会の議論をリードするのは事務局(官僚)であって,審議会が行政の政策立案を正当化する隠れ蓑になっている点を払拭し,運営の透明性を確保し,政策形成の過程が適正であることを市民に知らせ,審議会の有する- 5 -。 ,行政の政策形成機能への信頼を保持することにあるこのことに照らせば審議会の会議及び議事録を非公開とする場合は,非公開にしなければ,当該審議会の任務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある場合等に限定されるべきであり,司法試験委員会の会議を非公開とする運用が許されるのは,司法試験委員会が,司法試験の出題内容や成績判定の基準など司法試験の秘密にわたる事項を審議しているため,これが公になれば司法試験を公平かつ適正に実施することができなくなることに尽きるのであって,こ,,れ以外に会議の場における発言の正確さや措辞の適切さを気にする余り各委員の発言が消極・低調に流れてしまうことを防止し,議論が自由かつ活発に行われるようにすることによって,司法試験委員会 ,こ,,れ以外に会議の場における発言の正確さや措辞の適切さを気にする余り各委員の発言が消極・低調に流れてしまうことを防止し,議論が自由かつ活発に行われるようにすることによって,司法試験委員会の意思決定を適正なものにするために会議の非公開が認められているのではない。 イ開示による支障は認められないこと,,(ア)上記のとおり司法試験委員会の会議が非公開とされている趣旨は司法試験の秘密にわたる事項が公になることを防ぐことにほかならず,委員が自由・活発な議論ができる会議の場を設けることではないから,自由・活発な議論ができる会議の場を設けることの妨げとなるということが開示による支障ということはできない。 少なくとも司法試験の合格者数の議論については,それが司法試験の秘密にわたる事項でなく,法曹養成検討会等においても同様の議論が行われているのであって,司法試験委員会であることから導き出される特別な性質・立場があるわけではない。 実質的にも,委員が言い間違いや論理の先後関係,多少の措辞の不適切さ等を気にするとしても,その程度は率直な意見の交換等を不当に損,,なうおそれを生じさせるものではないし委員の発言に対する批判等は司法試験委員という重責を担う委員に就任している以上,甘受すべき負担である。 - 6 -(イ)司法試験委員が,自己の発言中のささいな言い間違いや論理の乱れ等に対するいわれのない誹謗中傷等の危険を厭うあまり,各委員が発言を自制ないし躊躇するという不利益については,委員個人の心持ち1つで,ささいな言い間違いや論理の乱れ等に対する誹謗中傷等の危険など気にせずに自由・活発な議論を十分行い得る。 また,ささいな言い間違いや論理の乱れ等に対するいわれのない誹謗中傷等がされたこと又はされるおそれがあることが被控訴人によって具体 る誹謗中傷等の危険など気にせずに自由・活発な議論を十分行い得る。 また,ささいな言い間違いや論理の乱れ等に対するいわれのない誹謗中傷等がされたこと又はされるおそれがあることが被控訴人によって具体的に立証されているわけでもない。被控訴人が提出した証拠は,いずれも司法試験委員会に寄せられた正当な意見の表明であって,誹謗中傷等ではない。被控訴人は,本件録音物を開示する場合,将来の同種の審議に際して支障が生ずる具体的なおそれがあることについて何らの立証もしていないのであり,これでは,一般的抽象的なおそれをもって,情報公開法5条5号に該当すると判断することになり,同法の制定過程において示された懸念のとおり,同法5条5号の解釈は何らの限定もされず,その不開示の範囲は拡大することになる。 ウ本件文書を公開することによる利益(ア)本件文書⑨,⑩及び⑪に係る司法試験委員会において審議された具体的な内容は,法科大学院のあり方,新司法試験のあり方,現行司法試験と新司法試験との関係,今後の司法試験における合格者数の見込み及びその公表など,司法試験制度の中核に関わる重要な議題を取り扱っており,これらの議題に関する議論は,今後の法曹制度のあり方に重大な影響を与えるものである。国民が,前記のような重要な議論を正確に知るには,各発言者が,どのような立場からいかなる発言をしたかその背景事情も含めて正確に理解する必要があるから,開示による利益は,音声等から発言内容が若干理解しやすくなる程度の利益に限られるものではなく,開示による不利益と比較して価値の低い情報ということはでき- 7 -ない。また,上記議論の重要性にかんがみれば,発言者の語気,語調,会場の反応その他その場の音を含めた形での議論の当否を検証すべきであり,むしろ,それらを全て公開することが情報公開法 でき- 7 -ない。また,上記議論の重要性にかんがみれば,発言者の語気,語調,会場の反応その他その場の音を含めた形での議論の当否を検証すべきであり,むしろ,それらを全て公開することが情報公開法の趣旨にかなうというべきである。 (イ)前記中央省庁等改革基本法30条5号の趣旨によれば,審議会の議論において,発言者が誰であるかを明示することは,審議会の会議又は議事録の公開が定められた趣旨すなわち審議会の議論のリードが誰によってされているのか,審議会が行政立案の隠れ蓑になっていないかを検証し,市民の審議会の行政政策機能への信頼を保持するために不可欠な情報であるという意味においても,議事録の公開は,審議会の議論の内容のみを明らかにすれば足りるのではなく,当然に発言者の公開も含まれる。 そして,中央省庁等改革基本法30条5号は「会議又は議事録は,,公開することを原則」とすると定め「会議」と「議事録」を運営の透,明性の確保の手段として,並列して掲げている以上,審議会が会議の公開を採る場合と議事録の公開を採る場合とで,その運営の透明性の確保は同じでなければならないはずである。会議を公開しない代替手段として議事録を公開する場合には,議事録については,会議の公開と同程度の透明性が確保されていなければならず,この観点から,本来発言者と発言内容の両方が原則として議事録に記載されていなければならない。 (ウ)また,司法試験委員会の下に設置された「新司法試験実施に係る研究調査委員会」の全体会及びそのワーキンググループとして新司法試験「」の基本的な枠組みについて検討した新司法試験の在り方検討グループでは発言者名を明らかにした基本的な逐語の議事録を作成し特に新,,「司法試験の在り方検討グループ」は,本件訴訟の対象となっている新旧司法試験合格 について検討した新司法試験の在り方検討グループでは発言者名を明らかにした基本的な逐語の議事録を作成し特に新,,「司法試験の在り方検討グループ」は,本件訴訟の対象となっている新旧司法試験合格者数についても発言者名が明らかになった形で議論をして- 8 -いる。このように,ほぼ同一の議論をしている2つの会議において,一方は発言者を匿名にしなければならないが,他方は発言者を顕名にできるという不統一な取扱いには何の合理性もない。 (エ)以上のとおり,本件録音物の開示の利益は大きく,司法試験委員会の率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が損なわれるという一般的抽象的な懸念をはるかに上回るものである。 ⑷部分開示が可能であること,,,仮に本件録音物の中に司法試験の秘密にわたる事項が混じっていたり司法試験委員会の委員の言葉の用い方が極端に不適切であり,一般人を基準として,その発言についていわれのない誹謗中傷が惹起される可能性が著しく高いと思われる部分が存在し,そのことが,今後の司法試験委員会の審議に不当に支障を及ぼすものがあるとすれば,その部分を消去した形での開示をすれば足りるのであって,本件録音物すべてについて,不開示とする理由はないし,実際にも,これまで審議機関の審議の内容を記録した録音テープが部分開示された例も存する。 ⑸義務付けの訴えについて取消訴訟中心主義から脱却しようとする試みの1つとして,行政事件訴訟法が改正され義務付け訴訟が新設された趣旨に照らせば,義務付けの訴えの訴訟要件は,取消原因の存在することを主張すれば足り,処分が実体的に取り消されるべきことまで要求していないと解される。 ,,仮に不開示決定が実体的に取り消されることが訴訟要件であるとしても本件では,行政文書性が肯定される以上,当該文書に係る各不開示 分が実体的に取り消されるべきことまで要求していないと解される。 ,,仮に不開示決定が実体的に取り消されることが訴訟要件であるとしても本件では,行政文書性が肯定される以上,当該文書に係る各不開示決定は取り消されるべきものであるから,原判決が行政文書性を認めた本件第3ないし第5不開示決定は取り消されるべきものであり,訴訟要件は満たされている。そして,本件では,不開示事由がない以上,上記不開示決定に係る文書の公開が義務付けられなければならない。 - 9 -第3当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の本件各請求のうち,本件各文書の開示決定の義務付けを求める部分は不適法であり,本件各不開示決定の取消しを求める部分は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」1ないし3(原判決30頁11行目から48頁下から6行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における控訴人の補充主張について)(1)控訴人は,文書不存在を理由とする不開示決定と不開示事由該当性を理由とする不開示決定は性質を異にするものであるから1つの処分では行いえない。行政文書性を否定することは,1つの拒否処分であって,この処分中に,文書の存在を前提とする仮定的な不開示事由の理由を付記し,理由を並記することは許されないから,本件文書⑨ないし⑪について,物理的に存在し,組織共用文書に該当するものである以上,裁判所は,不開示事由該当性の判断に入ることなく,本件不開示決定を取り消さなければならず,不開示事由該当性は,義務付けの訴えの部分において判断されなければならないとの主張をする。しかし,文書の不存在と不開示事由該当性は,いずれも不開示決定の理由であって,両者を区別する訴訟法上の規定は存在せず,1つの不開 義務付けの訴えの部分において判断されなければならないとの主張をする。しかし,文書の不存在と不開示事由該当性は,いずれも不開示決定の理由であって,両者を区別する訴訟法上の規定は存在せず,1つの不開示決定において,文書の不存在と不開示事由該当性の両者を対象とすることが不適法ということはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 ⑵本件各文書の物理的な存在についてア控訴人は,物理的不存在の場合において,文書の不存在の立証責任は行政機関である被控訴人側にある旨主張する。しかし,情報公開法3条によれば,何人も,行政機関の長に対し,当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる旨定めているのであって,これによれば,開示を請求する者において,当該行政機関が開示請求に係る行政文書を保有- 10 -すること,すなわち,当該文書が物理的に存在することについて立証責任を負っているものと解されるから,控訴人の主張は採用することができない。 イ本件文書①,③,⑤及び⑦について控訴人は,記録の対象とする会議から一定期間が経過した後に開示請求があった本件文書①,③,⑤及び⑦については物理的に存在しても存在しないと主張することに実益があるから,被控訴人が本件文書⑨ないし⑪が現存することについて認めているからといって,そのことから,本件文書①,③,⑤及び⑦も存在しているのであれば,これらの文書についてもその存在を認めるはずであるということはできず,それぞれの議事要旨について出席委員による確認作業が終わるまでは,録音内容が消去されずに保存されていた蓋然性が高い旨主張する。しかし,本件開示請求があった当時,被控訴人において,本件文書が行政文書であるとの認識はなく,これらを保存すべき文書として認識していなかった点も考慮すると,被控訴人が ていた蓋然性が高い旨主張する。しかし,本件開示請求があった当時,被控訴人において,本件文書が行政文書であるとの認識はなく,これらを保存すべき文書として認識していなかった点も考慮すると,被控訴人が消去したと主張する時期が不合理ということはできず,したがって,本件文書①,③,⑤及び⑦が各不開示決定当時において明らかに存在したということはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 ウ本件発言者名記録文書(本件文書②,④,⑥,⑧,⑫及び⑬)について控訴人は,議事の記録を作成するためには発言者名の特定は確実にされなければならず,出席者の記憶により必ず完全に発言者名が特定できるとは言い切れず,確認作業を確実に行うためにも,録音物から起こした発言者名の記載文書がなければ一貫せず,およそ行政機関としての業務運営の合理性を有しない旨主張する。しかし,本件各会議について記名文書が明らかに作成されていたと認められないことは前記引用に係る原判決の第,「 当裁判所の判断」2(2)ウにおいて説示したとおりであるから,控訴人の主張は採用することができない。 - 11 -⑶情報公開法5条5号該当性についてア控訴人は,中央省庁等改革基本法30条5号が会議又は議事録の公開を原則としていることに照らせば,司法試験委員会の会議が非公開とされた趣旨は司法試験の秘密にわたる事項が公になることを防ぐという点に限定すべきであって,自由・活発な議論ができる場の確保は含まれないと解すべきところ,少なくとも司法試験の合格者数の議論については,それが司法試験の秘密にわたる事項でなく,法曹養成検討会等においても同様の議論が行われていることなどに照らせば,司法試験委員会であることから導き出される特殊性はなく,また,委員個人の心持ち1つで,ささいな言い間違いや論理の乱 事項でなく,法曹養成検討会等においても同様の議論が行われていることなどに照らせば,司法試験委員会であることから導き出される特殊性はなく,また,委員個人の心持ち1つで,ささいな言い間違いや論理の乱れ等に対する誹謗中傷等の危険など気にせずに自由・活発な議論を十分行い得るから開示に伴う不利益はないとし,他方,開示の利益については,本件文書⑨,⑩及び⑪に係る司法試験委員会の会議にお,,いては司法試験制度の中核に関わる重要な議題を取り扱っており国民が前記のような重要な議論を正確に知るには,各発言者が,どのような立場からいかなる発言をしたかをその背景事情も含めて正確に理解する必要があるから,開示による利益は,開示に伴う不利益をはるかに上回るとの主張をする。 しかし,司法試験委員会は,司法試験の実施機関として,毎年司法試験を実施し合格者を決定していくことに中心的な役割があるという点において他の政策決定型の審議会とはその役割,性質が基本的に異なるものであるところ,司法試験委員会の会議の内容が開示されると,出題者に関する情報,将来の司法試験の出題傾向や成績判定の在り方,方向性といった司法試験の秘密にわたる事項を推測し得るような情報が明らかになり,これにより将来の司法試験の円滑な実施に支障が生ずるおそれがあることが肯認されるから,司法試験委員会の会議は基本的に公開に馴染むものではなく,このような試験実施機関としての司法試験委員会の特殊性から議事の- 12 -非公開が規定されているものと解される。 そして,証拠(甲14,乙2,5)によれば,本件文書⑨,⑩及び⑪に係る第15回から第17回までの司法試験委員会の会議においては,併行実施期間中の現行司法試験及び新司法試験の合格者数に関する方針に関して,委員の間で活発に意見が交換されていることが認められる び⑪に係る第15回から第17回までの司法試験委員会の会議においては,併行実施期間中の現行司法試験及び新司法試験の合格者数に関する方針に関して,委員の間で活発に意見が交換されていることが認められるところ,これらは,当該年度の司法試験の合否判定が直接の議題となったものではないが,期待される法曹の適性といった合否判定に関連する事項が随時協議されているほか,従来の司法試験の実施との比較などの文脈において,問題作成,成績評価,合否判定に関する情報を推測し得る事項が議論の対象とされているものと認められるのであって,これらの議事がそのままの形で公開された場合には,将来の司法試験の出題傾向や成績判定の在り方,方向性といった司法試験の秘密にわたる事項を推測し得るような情報が明らかになるおそれが払拭できないというべきである。 加えて,司法試験委員会の会議は,あらかじめ非公開とされているのであって,出席委員らは,議事がそのままの形で公開されないことを前提として,それぞれの出身母体から離れ,司法試験の秘密に関連する事項とそうでない事項を区別することなく,自由闊達に意見交換をし,これによって,試験実施機関である司法試験委員会の意思決定が円滑に行われているものと推測される。 そうすると,第15回から第17回までの司法試験委員会の会議をそのままの形で録音したミニディスクである本件文書⑨,⑩及び⑪が開示された場合には,司法試験の秘密にわたる事項を推測し得るような情報が明らかになるおそれがあるほか,試験実施機関である司法試験委員会の円滑な意思決定を阻害するおそれがあり,今後の司法試験の円滑な実施に支障が生ずる等の不利益が予想されるのに対し,控訴人が開示による利益であると主張する音声等による発言者の特定については,議事内容の理解に資す- 13 -るという程度の利 後の司法試験の円滑な実施に支障が生ずる等の不利益が予想されるのに対し,控訴人が開示による利益であると主張する音声等による発言者の特定については,議事内容の理解に資す- 13 -るという程度の利益はあるものの,発言者に関する情報は,その発言内容と相俟って,成績評価,合否判定等の司法試験の秘密の推測につながりかねないものであるから,開示による利益を過大視することはできないことからすると,開示による不利益との比較衡量においても,開示による利益がそれを上回るものということはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 イまた,控訴人は,中央省庁等改革基本法30条5号が「会議又は議事録は,公開を原則とする」と規定していることからすれば,会議を公開しない代替手段として議事録を公開する場合には,議事録については,会議の公開と同程度の透明性が確保されていなければならない旨主張する。しかし,上記のとおり,司法試験の実施機関である司法試験委員会の会議は,他の政策決定型の審議会とはその役割,性質が基本的に異なるものであるから,同法の趣旨がそのまま当てはまるものではなく,司法試験委員会の議事はそもそも非公開とされているのであって,会議の公開と同程度の議事録の開示をした場合,その趣旨が没却されることになるから,控訴人の主張は採用することができない。 ウさらに,控訴人は,司法試験管理委員会の下に設けられた「新司法試験実施に係る研究調査委員会」の全体会及びそのワーキンググループである「新司法試験の在り方検討グループ」では,発言者名を明らかにした基本的な逐語の議事録を作成し,特に「新司法試験の在り方検討グループ」,では,新旧司法試験合格者数についても発言者名が明らかになった形で議論をしているとして,ほぼ同一の議論をしている2つの会議において不統 語の議事録を作成し,特に「新司法試験の在り方検討グループ」,では,新旧司法試験合格者数についても発言者名が明らかになった形で議論をしているとして,ほぼ同一の議論をしている2つの会議において不統一な取扱いがされていることには何の合理性もないとの主張をする。 しかし,上記の「新司法試験実施に係る研究調査委員会」等は,その権限や議事の内容が司法試験委員会とは異なることに加え,原則的に顕名で議事録を作成することがあらかじめ決定されており(甲55,発言者は)- 14 -氏名が公開されることを前提に会議に臨み発言をしているのであって,公開に馴染まない事項については発言を差し控えるなどの対応が可能なのであるから,あらかじめ議事を非公開とする司法試験委員会の会議と同列に扱うことはできず,控訴人の主張は採用することができない。 ⑷部分開示について控訴人は,本件録音物の中に,司法試験の秘密にわたる事項等の不開示情報が含まれていたとしても,その部分を消去した形での開示をすれば足りるとの主張をする。しかし,前記のとおり,司法試験委員会における会議は,そもそも非公開であることに加え,問題作成,成績評価,合否判定に関する情報を推測し得る事項が,随時,議題と密接不可分な形で議論されているものと認められ,情報公開法6条1項にいう「不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるとき」には該当しないというべきであるから,控訴人の主張は採用することができない。 ⑸義務付けの訴えについて控訴人は,不開示決定が実体的に取り消されることが訴訟要件であるとしても,本件では,行政文書性が肯定される以上,当該文書に係る各不開示決定は取り消されれるべきものであるから,原判決が行政文書性を認めた本件第3ないし第5不開示決定は,取り消されるべきものであるところ, も,本件では,行政文書性が肯定される以上,当該文書に係る各不開示決定は取り消されれるべきものであるから,原判決が行政文書性を認めた本件第3ないし第5不開示決定は,取り消されるべきものであるところ,本件では,不開示事由がない以上,上記不開示決定に係る文書の公開が義務付けられなければならないとの主張をする。しかし,前記⑴のとおり,行政文書性が肯定されても不開示事由が存在する場合には,当該不開示決定を取り消すべきものということはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 以上によれば,控訴人の本件各請求のうち,本件各文書の開示決定の義務付けを求める部分は不適法であり,本件各不開示決定の取消しを求める部分は理由がなく,前者を却下し,後者を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は- 15 -理由がないから,これを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部裁判長裁判官大谷禎男裁判官細野敦裁判官鈴木昭洋- 16 -
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