主文 1 原告が,被告の設置するP1大学外国語学部英語学科教授の地位にあることを確認する。 2 被告は原告に対し,毎月21日限り,平成19年4月から同20年3月まで金73万1986円,同20年4月以降本判決確定まで金69万3736円並びにこれらに対する各支払期の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は原告に対し,平成19年4月以降本判決確定まで毎年6月末日限り金176万3517円及び毎年12月末日限り金203万1878円並びにこれらに対する各支払期の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は原告に対し,金50万円及びこれに対する平成19年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用はこれを4分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 7 この判決は,第2項ないし4項につき,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1項同旨 2 被告は原告に対し,平成19年4月から本判決確定に至るまで毎月21日限り金76万4466円及びこれらに対する各支払期の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は原告に対し,毎年6月末日限り金182万3903円及び毎年12月末日限り金210万1453円並びにこれらに対する各支払期の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は原告に対し,金500万円及びこれに対する平成19年6月2日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,大学教授である原告がP1大学を設置する被告に対し,被告のした懲戒として解雇は無効であると主張して, 月2日から 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,大学教授である原告がP1大学を設置する被告に対し,被告のした懲戒として解雇は無効であると主張して,教授の地位の確認や平成19年4月以降の賃金(76万4466円)及び各支払期の翌日から民法所定の遅延損害金並びに賞与(毎年6月に182万3903円,12月に210万1453円)及び各支払期の翌日から民法所定の遅延損害金の各支払を求めるほか,被告のした本件懲戒は不法行為にあたる旨主張して慰謝料500万円(及び訴状送達の日の翌日である平成19年6月2日から民法所定の遅延損害金)の支払を求めるものである。 1 前提となる事実(1) 原告の地位原告は被告との間で,昭和57年4月以降,P1大学教員としての労働契約を締結してきた。その経過は以下のとおりである。(争いのない事実)① 昭和57年4月1日から同62年3月31日まで嘱託講師としての契約を1年ごとに更新② 昭和63年4月1日から平成2年3月31日まで嘱託講師としての契約を1年ごとに更新③ 平成2年4月1日以降,教員として期間の定めのない契約(平成2年4月1日から同4年3月31日までは専任講師,同4年4月1日から同11年3月31日までは助教授,同年4月1日以降は教授の地位にあった。)(2) 本件懲戒被告は原告に対し,平成19年3月29日,同月31日付をもって懲戒として解雇する旨の意思表示(以下「本件懲戒」という。)をした。(争いのない事実)なお,被告は,平成19年3月29日以降,「P2掲示板」と称する学内 の教職員が閲覧できる学内ネットワーク上の掲示板に,原告が,P1学院就業規則4条,24条,33条及び34条に該当する行為による懲戒処分として解雇され 29日以降,「P2掲示板」と称する学内 の教職員が閲覧できる学内ネットワーク上の掲示板に,原告が,P1学院就業規則4条,24条,33条及び34条に該当する行為による懲戒処分として解雇された旨公示している。(争いのない事実,弁論の全趣旨)被告は原告に対し,平成19年3月29日に解雇予告手当として75万8820円を,同年4月2日に退職金として810万5184円をそれぞれ支払った。(乙88,89,弁論の全趣旨)(3) 賃金ア原告の本件懲戒時の給与は基本給57万2400円,調整手当8万0136円,家族手当2万2000円,住居手当5000円,通勤手当3万2480円,超過勤務手当2万5500円であった。(甲17,18)イ平成19年4月以降,原告の基本給は59万5300円に,調整手当は7万1436円とされるはずであった。また,支払が見込まれる期末手当の額は,平成19年6月期が176万3517円,同12月期が203万1878円であった。(争いのない事実)ウ被告には,教員に配偶者がなく,扶養家族として満22歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある子がふたりいる場合には,当該教員から年度ごとに申請書等の提出を受けて,家族手当として2万2000円を支給することとされているところ,原告には配偶者がなく,平成19年4月1日現在,15歳の子と21歳の子がいる。(争いのない事実,乙95)エ超過勤務手当は基本定額に超過率(平均授業担当時間×30÷240-1)を乗じて算出されるところ,原告の基本定額は5万1000円(教授)であり,また,平成19年4月以降に14コマの授業を担当したとすると平均授業担当時間は14で超過勤務手当の額は3万8250円となる。 (甲54,55,乙95)(4) 本件懲戒処分に関連する事実 あり,また,平成19年4月以降に14コマの授業を担当したとすると平均授業担当時間は14で超過勤務手当の額は3万8250円となる。 (甲54,55,乙95)(4) 本件懲戒処分に関連する事実 ア 「無許可の兼職又は事業」関係(ア) 語学学校の講師原告は平成13年4月から同18年8月にわたり継続してP3校(東京都千代田区<以下略>)における通訳本科Ⅱ又は同時通訳科の講師を担当した。授業回数は,平成13年4月から同年9月に18回,同年10月から同14年2月に15回,同年4月から同年9月に17回,同年10月から同15年2月に13回,同年10月から同16年2月に12回,同年4月から同年9月に15回,同年10月から同17年3月に15回,同年4月から同年8月に16回,同年10月から同18年3月に18回,同年4月から同年8月に8回である。平均講師料は授業1回(2時間)につき4万8000円である。原告はこの兼職について被告の許可を受けていない。(争いのない事実)(イ) 語学講座の経営原告は平成10年から継続して「P4講座」(以下「土曜教室」という。)を営んでいる。土曜教室の受講料は入学金(1回限り)2万円のほかに,各学期(春学期,秋学期,冬学期)6万5000円,夏期集中講座5万円であり,各学期及び夏期集中講座のクラス定員は20名である。原告は,P1大学の授業の際に土曜教室を紹介し,同教室の案内ビラを研究室扉に設置している。(争いのない事実)(ウ) 通訳業原告はP1大学採用前から継続して同時通訳の業務に従事している。 (争いのない事実)イ 「職務専念義務違反」関係(ア) いわゆる「代講」関係① P5によるいわゆる代講原告は学生であるP5をして平 時通訳の業務に従事している。 (争いのない事実)イ 「職務専念義務違反」関係(ア) いわゆる「代講」関係① P5によるいわゆる代講原告は学生であるP5をして平成17年6月(6日,23日,不 明)に計4回,原告不在のもとで授業類似の措置(原告が予め用意しておいたVTRを上映するにつきP5にビデオデッキの操作等の代行をさせた。)を遂行させた。この授業遂行は,原告が同時通訳のため講義を不在とすることから原告の依頼によってなされたものであり,P5は無償でこれを行った。(争いのない事実,弁論の全趣旨)② 非常勤講師によるいわゆる代講原告は外国語学部非常勤講師P6をして平成18年5月(15,17,18日)及び同年6月(8日)に計9回,原告に代わって講義を行わせた。このいわゆる代講は,原告が同時通訳のため講義を不在とすることから原告の依頼によってなされたものである。このいわゆる代講は無償であった。(争いのない事実,弁論の全趣旨)(イ) 休講原告の休講は,休講届による記録が残っているものとして,平成11年度28回,同12年度15回,同13年度16回,同14年度13回,同15年度7回,同16年度9回,同17年度25回,同18年度22回である。このうち,原告が同時通訳を実施するために授業を休講にしたのは,被告が調査対象とした平成15年度ないし同17年度において,同15年度に4回(国際決済銀行総裁会議の同時通訳等のため),同16年度に7回(国際決済銀行会議の同時通訳等のため2日休んだ。),同17年度に24回(①ソウルにおけるアジア農業協力国際会議に参加し,同時通訳等のため5月9日から同月12日までの3日間休み休講8回。②フランクフルトにおける中央銀行総裁会議に出席し,同時通 。),同17年度に24回(①ソウルにおけるアジア農業協力国際会議に参加し,同時通訳等のため5月9日から同月12日までの3日間休み休講8回。②フランクフルトにおける中央銀行総裁会議に出席し,同時通訳等のため11月7日から同月11日まで3日間休み休講8回。③香港におけるWTO香港閣僚会議に参加し,同時通訳等のため12月11日から同月18日までの3日間休み休講8回。)である。(争いのない事実)ウ 「学院の規程等に違反する行為」関係 (ア) 「無許可の海外渡航」関係原告は同時通訳等のために海外渡航を繰り返している。平成15年度から同17年度に同時通訳等のため授業を休講とした海外渡航はいずれも出張記録にない無許可のものである。(争いのない事実)(イ) 施設管理規程の違反① 研究室における語学講座原告は平成17年5月から同18年2月にわたって,原告の研究室(2号館901号室)において土曜教室を開催した。その研究室使用は,春学期後半の4回4日間,夏期集中講座の3日間,秋学期10回10日間,冬学期の前半5回5日間に及んでいる。この施設利用について原告は許可を得ていない。(争いのない事実)② 研究室における宴会原告は,平成17年4月8日金曜日にその研究室において部外者3人及びP5とともに酒食を伴う会合をもった際,同日夕刻から翌日午前零時前後まで,複数のロウソク(アロマキャンドル)を灯した。この火気使用について原告は許可を得ていない。(争いのない事実)エ 「P1大学教授としての信用を傷つける行為」関係① 授業遂行の委任又は補助前記イ(ア)①記載のとおり,原告はP5をして原告不在のもとでの授業類似の措置を遂行させた。P5は原告からこれを依頼されるにあ しての信用を傷つける行為」関係① 授業遂行の委任又は補助前記イ(ア)①記載のとおり,原告はP5をして原告不在のもとでの授業類似の措置を遂行させた。P5は原告からこれを依頼されるにあたってこれを断らず,授業類似の措置を遂行した。(争いのない事実)② 宴会の補助原告は研究室における飲食を伴う会合に際して,P5をして翌日午前0時ころまで前記会合に同席させた。(争いのない事実)(5) 就業規則等ア被告には以下の内容を定める「P1学院就業規則」が存する。(甲1 3)(ア) 教職員は,次に定める行為をしてはならない。(4条)学院の名誉を毀損し,教職員としての信用を傷つけるような行為(1号)許可なく公職若しくは学院外の職務に就き,又は事業を営むなどの行為(4号)(イ) 教職員が次の各号の1に該当するときは,審査の上これを懲戒する。 (33条)学院の規程等に違反したとき(1号)第4条各号に掲げる行為があったとき(2号)職務上の義務に違背し,又は職務を怠ったとき(3号)(ウ) 懲戒処分は,戒告,減給,出勤停止,降格及び解雇の5種とする。 (34条)イ被告には以下の内容を定める「P1学院懲戒委員会規程」が存する。 (甲14)(ア) この規程は,P1学院就業規則(以下「就業規則」という。)第33条第2号に基づき,就業規則に定める教職員の懲戒処分を公正に行うため,懲戒委員会の設置及び懲戒の審査,手続き等について定める。(1条)(イ) 懲戒委員会(以下「委員会」という。)は,該当懲戒事案の発生の都度,理事長がこれを設置する。(2条)(ウ) 委員会は,理事長が諮問した該当懲戒事案に関する事項についてのみ審査議決し,理事長に答申する。(4条1項)委員長は,諮 ,該当懲戒事案の発生の都度,理事長がこれを設置する。(2条)(ウ) 委員会は,理事長が諮問した該当懲戒事案に関する事項についてのみ審査議決し,理事長に答申する。(4条1項)委員長は,諮問がなされた懲戒事案に関する事項に係る該当者から顛末書の提出を求め,これを議案として委員会を招集し,その議長となる。(4条2項) 前項にかかわらず,委員長は,教員に係る懲戒事案の場合には,委員会の審査を行う前に,所属学部長,短期大学学長若しくは社会福祉専門学校校長(以下「所属長」という。)を通して,所属学部教授会,短期大学教授会若しくは社会福祉専門学校運営委員会(以下「教授会」という。)の意見を求めなければならない。所属長は,委員会に対して教授会等の意見を提出するものとする。(4条3項)委員会は,所属長から提出された教授会等の意見を尊重して,委員会の審査を行うものとする。(同条4項)(エ) 第4条及び第5条の審査ならびに決定について不服がある者で,前条第4項に基づき所定の期間に不服申立書を提出した該当者は,理事長に再審査請求をすることができる。(6条1項)(オ) 再審査の委員会における審査,議決及び決定は,第4条による。 (8条2項)(6) 懲戒委員会の設置等ア被告の理事長は,P7を委員長とする懲戒委員会(以下「P7委員会」という。)を設置し,平成18年2月1日付諮問書をもって,P5から苦情申立てがあった原告の行為(P5が,原告に代講を命じられたりして心理的,労力的,時間的に負担となっている一方,授業の成績がC評価であり,かつ人格否定等の暴言がされたというもの)について懲戒の審査を行うようにと諮問した。同委員会は被告の理事長に対し,同年3月17日,本事案は,教員の授業運営・学生指導という学事上の問題 C評価であり,かつ人格否定等の暴言がされたというもの)について懲戒の審査を行うようにと諮問した。同委員会は被告の理事長に対し,同年3月17日,本事案は,教員の授業運営・学生指導という学事上の問題が中心になっているので,学部・学科が調査委員会を設置して事実関係の調査を実施する等の措置が必要と報告した。そこで,P8副学長を委員長とする調査委員会(以下「P8委員会」という。)が設置され,P5,P6,原告,外国語学部長及び英語学科長に対する事情聴取等を行った。P8委員会は,同 年10月27日,学長に宛てて,P5からの苦情申立てに関しては懲戒委員会を設置して検討を開始すべき事案であると報告したが,報告書末尾に[補遺]として,同委員会の調査の直接の目的ではないが,調査の過程で原告の休講回数の過多が明らかになったと付記した。被告の理事長は,同年11月20日付の諮問書により,P7委員会に対し,P8委員会の結論をふまえ,懲戒事由となる事実を調査・確認したうえで審理を行うよう諮問した。P7委員会は,原告に関する懲戒を調査・審議した結果,所属学部の教授会の意見を求めることなく,原告を懲戒として解雇すべきとする平成19年2月22日付答申書をとりまとめ,その旨被告の理事長に報告した。(甲11,乙3ないし9)イ原告がP7委員会の答申に不服申立をしたことから,P9を委員長とする再審査のための懲戒委員会(以下「P9委員会」という。)が設置されたが,同委員会は,所属学部の教授会の意見をも聴取し,原告を諭旨解雇とする旨の平成19年3月26日付答申書をとりまとめた。(甲12)ウ P9委員会に意見を求められた教授会の意見は原告に対する解雇処分は不当であるとするものであり,調査・審査過程における手続には問題があり遺憾とするものが投票総数40名中30名で, た。(甲12)ウ P9委員会に意見を求められた教授会の意見は原告に対する解雇処分は不当であるとするものであり,調査・審査過程における手続には問題があり遺憾とするものが投票総数40名中30名で,調査・審査過程における手続き上の不備のため解雇処分は認められないとするもの40名中5名,上記のいずれにも賛成できないとするものが40名中5名であった。(甲12,29,53,乙13,27)エ被告の理事長は,P9委員会の答申をふまえ,原告を平成19年3月31日付で解雇(諭旨解雇に相当するものとする。)する旨の本件懲戒をした。(甲12) 2 争点(一) 地位確認及び未払賃金請求について(1) 本件懲戒の適否(懲戒事由の存否及び懲戒としての相当性) (被告)原告には以下の懲戒事由が存し,本件懲戒(諭旨解雇にあたる処分)には理由がある。 ア無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)被告がP1大学を本務校とする教員の兼職や兼業を許可するのは,本務に支障・影響を及ぼさない限りにおいてであって,申請に基づき個別的に許否の判断をしてきたものである。無許可兼職・兼業について過去に明示の注意が与えられなかったとしても,それは被告がそれらを放任していたからではなく,教員である原告を信頼していたからである。 (ア) 語学学校の講師原告は平成13年4月から同18年8月にわたり継続してP3校における通訳本科Ⅱ又は同時通訳科の講師を担当した。授業回数は,平成13年4月から同年9月に18回,同年10月から同14年2月に15回,同年4月から同年9月に17回,同年10月から同15年2月に13回,同年10月から同16年2月に12回,同年4月から同年9月に15回,同年10月から同17年3月に1 10月から同14年2月に15回,同年4月から同年9月に17回,同年10月から同15年2月に13回,同年10月から同16年2月に12回,同年4月から同年9月に15回,同年10月から同17年3月に15回,同年4月から同年8月に16回,同年10月から同18年3月に18回,同年4月から同年8月に8回である。平均講師料は授業1回(2時間)につき4万8000円である。原告はこの兼職について被告の許可を受けていない。 (イ) 語学講座の経営原告は平成10年から継続して土曜教室を営んでいる。土曜教室の受講料は入学金(1回限り)2万円のほかに,各学期(春学期,秋学期,冬学期)6万5000円,夏期集中講座5万円であり,各学期及び夏期集中講座のクラス定員は20名である。原告は,P1 大学の授業の際に土曜教室を紹介し,同教室の案内ビラを研究室扉に設置している。 (ウ) 通訳業原告はP1大学採用前から継続して同時通訳の業務(以下「副業」という。)に従事している。原告クラスの同時通訳に対する報酬は1日拘束で30万円程度である。 イ職務専念義務違反(就業規則33条3号後段)副業を理由とする休講は正当な理由によるものではないが,原告のそれは副業を理由とする休講が大多数を占めている。 (ア) いわゆる代講原告は実施すべき授業時間帯にその場に現在せず,休講その他の措置をとらずに学生であるP5及び非常勤講師であるP6に下記の行為をさせた。 ① P5によるいわゆる代講原告はP5をして平成17年6月に計4回,原告不在のもとで授業類似の措置を遂行させた。この授業遂行は副業を理由とする原告の依頼によるものであり,この授業遂行は無償であった。 ② 非常勤講師によるいわゆる代講 7年6月に計4回,原告不在のもとで授業類似の措置を遂行させた。この授業遂行は副業を理由とする原告の依頼によるものであり,この授業遂行は無償であった。 ② 非常勤講師によるいわゆる代講原告はP6をして平成18年5月及び同年6月に計9回,原告に代わって講義を行わせた。このいわゆる代講は副業を理由とする原告の依頼によるものである。このいわゆる代講は無償であった。 (イ) 休講原告の休講は,休講届けによる記録が残っているものとして,平成11年度28回,同12年度15回,同13年度16回,同14年度13回,同15年度7回,同16年度9回,同17年度25回, 同18年度22回であるところ,このうち副業を理由とする休講は,調査の対象とした平成15年度ないし同17年度において,同15年度に4回,同16年度に7回,同17年度に24回である。 ウ学院の規程等に違反する行為(就業規則33条1号) (ア) 無許可の海外渡航原告は副業による海外渡航を繰り返している。平成15年度から同17年度の休講となった副業によるものはいずれも出張記録にない無許可の海外渡航である。 (イ) 施設管理規程の違反 ① 研究室における語学講座原告は平成17年5月から同18年2月にわたって,原告の研究室(2号館901号室)において土曜教室を開催した。その研究室使用は,春学期後半の4回4日間,夏期集中講座の3日間,秋学期10回10日間,冬学期の前半5回5日間に及んでいる。この施設利用について原告は許可を得ていない。 ② 研究室における宴会大学施設内では許可なく火気を使用してはならないとしている。 原告は,平成17年4月8日金曜日にその研究室において部外者3人及びP5とともに酒食を 得ていない。 ② 研究室における宴会大学施設内では許可なく火気を使用してはならないとしている。 原告は,平成17年4月8日金曜日にその研究室において部外者3人及びP5とともに酒食を伴う会合をもった際,同日夕刻から翌日午前零時前後まで複数のロウソク(アロマキャンドル)を灯した。 この火気使用について原告は許可を得ていない。 エ P1大学教授としての信用を傷つける行為-P5に対する権限濫用(就業規則33条2号,4条1号) (ア) 授業遂行の委任又は補助原告はP5をして原告不在のもとでの授業類似の措置を遂行させた。P5は原告からこれを依頼されるにあたってこれを断り切れず, 心ならずも授業類似の措置を遂行せざるを得なかった。 (イ) 宴会の補助原告は研究室における飲食を伴う会合に際して,P5をして翌日午前0時ころまで前示会合に同席させた。P5はこの会合に同席するにつき心理的負担を感じていた。 (原告) ア無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)被告は無許可の兼職を理由に教員を懲戒したことは1度しかなく,教員の意識としては無許可の兼職行為が懲戒の対象とされるという意識をほとんど有していない。被告はそれにもかかわらず,何らの注意喚起もせず,原告のケースだけ取り上げて懲戒としての解雇をしており,本件懲戒は解雇権を濫用したものとして無効である。 (ア) 語学学校の講師授業時間外に行われたものであり,教授としての任務遂行に影響したものではない。 (イ) 語学講座の経営授業時間外に行われたものであり,教授としての任務遂行に影響したものではない。また,被告は原告の行為を知りながら過去に注意したことは一度もなかったし,かえってP1大学の公式サ ) 語学講座の経営授業時間外に行われたものであり,教授としての任務遂行に影響したものではない。また,被告は原告の行為を知りながら過去に注意したことは一度もなかったし,かえってP1大学の公式サイトには原告のプロフィールとしてこれを掲載している。 (ウ) 通訳業原告は通訳者としての実務経験を学生の教育に生かし,そのことが多くの学生の支持を集めてきた。教授昇任にあたっても,原告の通訳者としての仕事が業績として高く評価されていた。被告は原告の行為を知りながら過去に注意したことは一度もなかったし,かえってP1大学の公式サイトには原告のプロフィールとしてこれを掲 載している。なお,国際会議の同時通訳料は大手エージェントのAクラス通訳で日当7万円程度である。 イ職務専念義務違反(就業規則33条3号後段) (ア) いわゆる代講 ① P5によるいわゆる代講原告が予め用意したVTRを原告が不在の際にビデオデッキを操作させて上映させた事実はあるが,これは解雇事由には該当しない。 なお,P5に授業の代講をさせた事実はない。 ② 非常勤講師によるいわゆる代講原告が非常勤講師に代講を依頼した事実はあるが,解雇事由には該当しない。原告は,平成18年6月14日に学科長から授業の代講は学科教授会の承認を得る必要があると指摘されて以降は誰にも代講をさせていない。 (イ) 休講同時通訳等のために国際会議に参加等することは非難されるものではない。原告が担当した講義のコマ数は非常に多く,1日大学を空けただけでも数コマが休講になるという実情にあった。原告が副業を理由とする休講であると主張するものはいずれも懲戒事由に該当しない。被告には副業を理由とする休講をすれば解雇につながるというルー を空けただけでも数コマが休講になるという実情にあった。原告が副業を理由とする休講であると主張するものはいずれも懲戒事由に該当しない。被告には副業を理由とする休講をすれば解雇につながるというルールはなかった。 平成15年度の4回は国際決済銀行総裁会議の同時通訳等のためのものであり,同16年度の7回は,同年11月8日と同月11日に国際決済銀行会議の同時通訳等のために2日休んだためのもの,同17年度の24回は①ソウルにおけるアジア農業協力国際会議に参加し,同時通訳及びアジアにおける異文化間コミュニケーションの実情と課題の実態調査・資料収集のため5月9日から同月12日 までの3日間休み休講8回と,②フランクフルトにおける中央銀行総裁会議に出席し,同時通訳及び世界金融・経済システムの比較調査と国際会議の現場における東西南北異文化間コミュニケーション分析研究と資料収集のため11月7日から同月11日まで3日間休み休講8回と,③香港におけるWTO香港閣僚会議に参加し,同時通訳及び世界貿易の現状と課題の調査・研究を行うため12月11日から同月18日までの3日間休み休講8回である。 ウ学院の規程等に違反する行為(就業規則33条1号) (ア) 無許可の海外渡航海外渡航の際に被告に届けを提出していないことがあったことは事実であるが,この点に関する被告の規制は徹底されていなかったのであり,この点を捉えて原告だけを処分するのは懲戒権の濫用である。 (イ) 施設管理規程の違反 ① 研究室における語学講座無許可で研究室を使用していたことは事実であり,平成18年2月15日に被告から指摘されて以降,直ちに謝罪し以後一切使用していない。 ② 研究室における宴会原告が使用したのは専用のグ 無許可で研究室を使用していたことは事実であり,平成18年2月15日に被告から指摘されて以降,直ちに謝罪し以後一切使用していない。 ② 研究室における宴会原告が使用したのは専用のグラスにすっぽりと蝋及び芯が収まったアロマキャンドルであり,火を灯した状態でも炎が高く立ち上がることはない。なお,被告においてこの点に関する規制は徹底されておらず,教員で研究室で煮炊きをする者などもいたが,そのことにつき被告が注意をした事実はない。 エ P1大学教授としての信用を傷つける行為-P5に対する権限濫用(就業規則33条2号,4条1号) (ア) 授業遂行の委任又は補助P5は自ら進んで原告の補助をしていたのであり,原告がその権限を濫用してこれを行わせていたわけではない。 (イ) 宴会の補助P5は自らの意思で参加しており,原告が参加を強制した事実はない。 (2) 本件懲戒の手続的な相当性(原告)ア教授会への求意見被告は懲戒委員会規程を定めているが,同規程4条3項は被告の教員に係る懲戒事案については所属学部の教授会の意見を求めなければならないとしているところ,P7委員会は教授会に意見を求めることなく,解雇の意見を答申しており,本件解雇処分には前記規程違反の瑕疵がある。再審査にあたるP9委員会での審査にあたっては教授会の意見を求めているものの,再審査のための懲戒委員会が教授会に意見を求めたからといって,その瑕疵が治癒されるものではない。 イ教授会の意見の拘束力懲戒委員会規程4条4項は「委員会は,所属長から提出された教授会等の意見を尊重して,委員会の審査を行うものとする。」としているが,その趣旨は懲戒委員会は教授会の意見に拘束されるという意味で 力懲戒委員会規程4条4項は「委員会は,所属長から提出された教授会等の意見を尊重して,委員会の審査を行うものとする。」としているが,その趣旨は懲戒委員会は教授会の意見に拘束されるという意味であり,教授会の意見と異なる答申をしたP9委員会の答申には瑕疵がある。 (被告)ア教授会への求意見懲戒委員会規程4条3項は,懲戒手続の公正・公平を確保するために懲戒対象者の同僚によって構成される教授会等をして審議させたも のにすぎないから,より公正・公平な手続を経由すれば,例外的に教授会に意見を求めることなく懲戒審査を遂行することも許容されている。P7委員会は教授会に意見を求めなかったが,P5の就学環境を維持すべきであるという事情がある一方,教授会では有益な意見集約できる可能性がなかったという事情等が存したため,同委員会は,P1大学におかれた調査委員会の調査内容を参酌し,かつ,外国語学部長及び英語学科長に対して意見を求めたことをもって,公正・公平な手続を経由したと判断したのである。 イ教授会の意見の拘束力教授会の意見に拘束力を認めるべき根拠はない。教授会は諮問機関にすぎず,その議決は被告を拘束しない。 (3) 賃金額如何(原告)平成19年4月以降,毎月の賃金としては,基本給59万5300円,調整手当7万1436円,家族手当2万2000円,超過勤務手当3万8250円,住居手当5000円,通勤手当3万2480円,以上合計76万4466円の支払が,毎月21日になされるべきである。期末手当については,毎年6月に182万3903円,12月に210万1453円の支払がなされるべきである。 (被告)争う。家族手当は教員からの申請が前提である。超過勤務手当は,平 る。期末手当については,毎年6月に182万3903円,12月に210万1453円の支払がなされるべきである。 (被告)争う。家族手当は教員からの申請が前提である。超過勤務手当は,平成19年4月以降の原告の担当授業時間数が不明確であり,既得の給与とはいえない。また,通勤手当は原告が事業所への通勤の費用を要していない以上支払義務がない。被告事業所における期末手当の平成19年度における支給率は,6月期が基本給及び調整手当の2.30か月分,12月期が2.65か月分であり,原告のそれは平成19年6月期が1 76万3517円,12月期が203万1878円である。 (二) 不法行為を理由とする損害賠償請求について(原告)本件懲戒は,被告が自ら定めた規程に違反し,大学の自治の根幹をなす教授会及びその意見を無視し,到底懲戒としての解雇たりえない事情を取り上げて無理矢理懲戒としての解雇にこぎつけられたものであって,このような被告の行為は不法行為を構成する。 また,被告は,平成19年3月29日以降,P2掲示板と称する学内の教職員が閲覧できる学内ネットワーク上の掲示板に,原告が,P1学院就業規則4条,24条,33条及び34条に該当する行為による懲戒処分として解雇された旨公示している。しかしながら,個人名を掲げる必要性はないし,雇用関係の終了を伝達するという側面があったとしても,1年以上にわたって公示の継続を続ける合理性は見出しがたい。原告以前に,解雇等が公示された例もない。被告は原告をさらし者とし,原告が懲戒処分として解雇されるような人物であることを見せしめにするために記載を継続しているといわざるを得ず,被告のかかる行為は不法行為に該当する。 被告の不法行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するためには して解雇されるような人物であることを見せしめにするために記載を継続しているといわざるを得ず,被告のかかる行為は不法行為に該当する。 被告の不法行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するためには慰謝料500万円とするのが相当である。 (被告)争う。本件懲戒としての解雇は不法行為に該当しない。また,被告は原告に対する処分をP2掲示板に掲示しているが,同掲示板にアクセスできるのは被告の専任教職員に限られる上に,単に事実を被告の構成員に伝達し周知徹底したにすぎない。同掲示板には被告が教職員に通知又は周知した様々な文書を掲載しており,教職員の人事関係の文書も同様であって,他の者に対する懲戒にかかる文書も存在している。被告は,同掲示板に掲載した人事文書は概ね5年間程度の期間保持することを通例としている。 第3 争点に対する判断 1 地位確認請求及び賃金等支払請求について(1) 本件懲戒の適否(懲戒事由の存否及び懲戒としての相当性)についてア本件は,被告が原告にした懲戒としての解雇(被告は諭旨解雇としている。)が有効か否かが争点とされているが,使用者がした具体的な懲戒の適否を判断するにあたっては,懲戒が労働者の企業秩序違反行為を理由として使用者によって労働者に課される一種の秩序罰であることから,当該労働者をとりまく一切の事情が斟酌されるのではなく,使用者が懲戒の理由とした非違行為との関係において判断されるべきものと解される(最判平成8年9月26日判例時報1582号131頁参照)。 本件において被告が懲戒の理由とした非違行為はP9委員会の答申書(甲12)に記載されているとおりであるが,本件訴訟においては,被告がこれを答弁書記載の別紙「懲戒事由」として整理しているのであるから,本件訴訟においては上記懲戒事 した非違行為はP9委員会の答申書(甲12)に記載されているとおりであるが,本件訴訟においては,被告がこれを答弁書記載の別紙「懲戒事由」として整理しているのであるから,本件訴訟においては上記懲戒事由(上記「争点」欄に被告の主張として記載した。)の存否をもって本件懲戒処分の適否が判断されることになる。 イそこで,以下被告の主張する懲戒事由につき検討するに,被告は前記のとおり原告が無許可で兼職したと主張し,また,被告の就業規則には無許可兼職を懲戒事由としている事実が存するのであるが,就業規則は使用者がその事業活動を円滑に遂行するに必要な限りでの規律と秩序を根拠づけるにすぎず,労働者の私生活に対する使用者の一般的支配までを生ぜしめるものではない。兼職(二重就職)は,本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから,兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても,職場秩序に影響せず,かつ,使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については,兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。 被告は,原告が語学学校の講師をしたことや土曜教室を営んだことを無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたると主張するが,原告がこれらを実施したのはいずれも夜間ないし土曜日と認められるのであり(原告本人,弁論の全趣旨),本件全証拠に照らしても,原告が行うべき授業等の労務提供に支障が生じたとは認めることはできないし,原告がこれらを実施したことによって,職場秩序に影響が生じたとも認めることはできない。また,土曜学校については,P1大学外国語学部英語学科の公式サイトに原告がこれを一般向けに開講している旨原告のプロフィー れらを実施したことによって,職場秩序に影響が生じたとも認めることはできない。また,土曜学校については,P1大学外国語学部英語学科の公式サイトに原告がこれを一般向けに開講している旨原告のプロフィールに記載してさえしているのであり(甲2),原告が,被告もこれらの活動を容認していると考えたとしても無理からぬところでもある。してみれば,原告が語学学校の講師をしたことや土曜教室を営んだことをもって無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたるとする被告の主張は採用できない。 同時通訳についても,以上と同様の趣旨から,原告が行うべき授業等の労務提供に支障が生じたとは認められないものについては無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたるとすることはできない。 なお,同時通訳については,原告が,講師,助教授及び教授に昇任等する際に被告に提出した履歴書には提出直前までの同時通訳としての活動歴が明記されているほか,P1大学外国語学部英語学科の公式サイトに原告が現在まで産官学各会のトップクラスの現役会議通訳者として活躍中である旨原告のプロフィールに記載されていたり,P1大学の大学案内に「現在も現役の通訳者として活躍」などと原告のプロフィールを紹介している事実も存するのであり(甲2,21,56ないし58,原告本人),これらの事実に照らすと,原告が,被告もこれらの活動を容認していると考えたとしても無理からぬところである。原告が同時通訳を引き受ける際には,直接依頼者から依頼がある場合と登録の有無に関わらずエージェントを通 して依頼がある場合とがあるようであるが(乙77の2,原告本人),被告は,許可を必要とする「事業とは社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行う事務をさし,報酬を伴うものであるか否かによって該当性が判 て依頼がある場合とがあるようであるが(乙77の2,原告本人),被告は,許可を必要とする「事業とは社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行う事務をさし,報酬を伴うものであるか否かによって該当性が判断されるものではない。第三者の依頼によりその都度行う講演会での講師役や報酬を伴う新聞雑誌等への寄稿は報酬を伴うものであっても兼業にあたらない。(平成20年1月15日付準備書面20頁)」としているのであり,被告の解釈によれば,例えば,政府の要人等の第三者が依頼者としてその都度依頼してくる同時通訳については報酬を伴うものであっても兼業にはあたらないとする余地もある。被告には,従前,教授が許可なく他の大学の専任教員であったとして助教授に降格したという事例の存することが認められるが(乙30),これは一般企業の従業員がいわゆる競合会社に無許可で兼職した場合と規則違反の程度を同じくしており,本事例とは事案を異にしている。 ウ被告は,学院の規程等に違反する行為(就業規則33条1号)として,無許可の海外渡航,施設管理規程の違反(①研究室における語学講座,②研究室における宴会)を主張し,また,P1大学教授としての信用を傷つける行為(就業規則33条2号,4条1号)として,P5に対する権限濫用((ア)授業遂行の委任又は補助,(イ)宴会の補助)を主張する。 しかしながら,海外渡航を許可制とするのは,本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為を規制するものであるから必要最小限度のものに限られるべきものであるところ,交通機関が発達した今日,海外渡航につき承認を求めることとする根拠は,教職員が国外にいることによって連絡がつかないこと等のないように遺漏なきを期するためとする点にあると解さざるをえないのであって,許可なく海外渡航をしたこと 外渡航につき承認を求めることとする根拠は,教職員が国外にいることによって連絡がつかないこと等のないように遺漏なきを期するためとする点にあると解さざるをえないのであって,許可なく海外渡航をしたことをもって懲戒事由とするためには,許可なく海外渡航がなされたことにより,教職員に緊急かつ不可欠な連絡できずに,職場秩序に影響 が生じ,あるいは,使用者に対する労務提供に支障が生じた場合に限られるものと解される。本件における原告の無許可の海外渡航については,本件全証拠に照らしても,被告が原告に緊急かつ不可欠な連絡できずに,職場秩序に影響が生じ,あるいは,被告に対する労務提供に支障が生じたとは認めることはできない。なお,被告も,無許可の海外渡航に関しては,要旨「海外渡航の承認手続は教職員が国外にいる場合の連絡・指導等に遺漏なきを期するための措置にすぎず,これを経由せずに海外渡航することが直ちに解雇という重い懲戒処分を基礎付けるとはまではいえない。(平成20年1月15日付準備書面66頁)」としているところである。 また,被告主張の施設管理規程違反も,当該事実をもって懲戒としての解雇を基礎付ける事実とは到底いえないのであり,この点は,被告自身,「火災発生という実害が生じていない等の事情にかんがみると,直ちに解雇という重い懲戒処分を基礎付けるとはまではいえない。(平成20年1月15日付準備書面66頁)」としているところである。 被告主張の信用失墜行為についてみるに,本件全証拠に照らしても,原告がP5の明示の意志に反してP5に授業遂行や宴会の補助を強制したとの事実は認めることができないことなどに照らすと(P5の陳述書【乙34】からも上記事情は全く窺えない。),これをもって懲戒としての解雇を基礎付ける懲戒事由とすることのは相当でないし,その 強制したとの事実は認めることができないことなどに照らすと(P5の陳述書【乙34】からも上記事情は全く窺えない。),これをもって懲戒としての解雇を基礎付ける懲戒事由とすることのは相当でないし,その旨は被告自身が要旨「一定の教育的観点からなされたものとみる余地がある等の事情から,直ちに解雇という重い懲戒処分を基礎付けるとはまではいえない。(平成20年1月15日付準備書面68頁)」と自認しているとおりである。 エ結局のところ,本件懲戒の適否は,原告が同時通訳を行うために,授業を休講にしたこと,あるいはP5やP6に代講等をさせ自ら授業をしなかったことが,正当な理由による休講等にあたらず,実質的に無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたり,職務専念義務にも 違反する(就業規則33条3号後段)かという如何によることになる。 被告は,これらはいずれも,同時通訳という副業を行うことは正当な理由とはいえず,それにもかかわらず,原告が本来実施すべき授業時間帯にその場に現在しなかったのであるから,前記懲戒事由に該当するとしている。 しかしながら,被告が懲戒事由とする平成15年度ないし同17年度の原告が同時通訳を行ったことを理由とする休講についてみると,前記のとおり,同15年度は4回であるが,これは原告が国際決済銀行総裁会議において同時通訳等を行うために休講としたものであること,同16年度は7回であるが,これは原告が国際決済銀行会議において同時通訳等を行うために2日休んだだめに生じたものであること,同17年度に24回であるが,これは原告が①ソウルにおけるアジア農業協力国際会議において同時通訳等を行うために同年5月9日から同月12日までの3日間休んだために休講8回が生じ,②フランクフルトにおける中央銀行総裁会議におい ,これは原告が①ソウルにおけるアジア農業協力国際会議において同時通訳等を行うために同年5月9日から同月12日までの3日間休んだために休講8回が生じ,②フランクフルトにおける中央銀行総裁会議において同時通訳等を行うために同年11月7日から同月11日まで3日間休んだために休講8回が生じ,③香港におけるWTO香港閣僚会議における同時通訳等を行うために同年12月11日から同月18日までの3日間休んだために休講8回が生じたものであることがそれぞれ認められる上に,P5がいわゆる「代講」をした際(平成17年6月)も,原告は北京でのIMC金融会議,東京でのOECD/Japan セミナーで各同時通訳をしており(乙7,32),P6が代講をした際も(平成18年5月15,17及び18日並びに同年6月8日)も,原告はソウルでのAFGC/IFAP会合,岩手での「平泉の文化遺産の顕著な普遍的価値と保存管理に関する国際専門家会議」で同時通訳をしていること(乙3,8,32)がそれぞれ認められるのであって,原告が授業を休講等にして同時通訳を行ったのはいずれも政府機関等が実施する国際会議においてであり,収入を伴うも のではあっても,原告が行った同時通訳は公的な職務と評し得ないこともないのであって,これらの休講等が正当な理由に欠けることが明白なものであるとまでは断ずることはできない。現に,本件懲戒事由とされる事実の後のことではあるが,原告が平成18年11月にパリで実施されるユネスコ本部での生涯教育フォーラムに同時通訳として出席することを希望し,教授会に休講を願い出たところ,教授会はこれを許可しているのであり(甲24,乙59の2),英語学科においては「英語学科専任教員服務内容」において,副業のための休講は認めないとされながらも(乙38),教授会は原告が行う同時 ころ,教授会はこれを許可しているのであり(甲24,乙59の2),英語学科においては「英語学科専任教員服務内容」において,副業のための休講は認めないとされながらも(乙38),教授会は原告が行う同時通訳の中には休講することに正当な理由があるものを認めているといえる。してみれば,原告が同時通訳を行うために,授業を休講にしたこと,あるいはP5やP6に代講等をさせ自ら授業をしなかったことが,正当な理由による休講等にあたらないとは断ずることはできないのであって,実質的に無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたるとも,職務専念義務にも違反する(就業規則33条3号後段)とも認めることはできない。 また,被告の設置するP1大学の教員の中には,兼職の許可を得て司法試験考査委員,法制審議会少年法部会委員,最高裁判所入札監視委員会委員,検察官適格審査会予備委員,大学評価学位授与機構法科大学院認証評価専門委員等の多数の公的な職務に就きながら一切授業を休講とすることなく教授の任にあたっている者もいるとのことであり(乙86,弁論の全趣旨),もとよりこれが教員として最も望ましい姿であることは当然のことではあるけれども,授業を休講にしこれら公的な職務を優先させるやたちまち懲戒事由に該当するとするのはあまりに厳しい感が否めない。しかも,本件においては,原告に休講や代講が少なくないことは学部長や学科長も概ね事実を把握していたにもかかわらず,原告に対して公式に注意処分がなされたことは一度もなく,P8委員会の同委員長も述べるとおり, 「大学としても問題があったのは確か」であること(乙7,8,29,36,51,59の1),仮に,原告が専任講師に就任するにあたり,学科長から,学期中の通訳活動は極力避けるようにと忠告されたり,あるいは,助教授昇 問題があったのは確か」であること(乙7,8,29,36,51,59の1),仮に,原告が専任講師に就任するにあたり,学科長から,学期中の通訳活動は極力避けるようにと忠告されたり,あるいは,助教授昇任以前に,外人教授から,休講が多いという勤務態度は許されないと注意されたという事実があったとしても,原告が助教授,教授と昇任する際に,被告や大学当局が休講や代講の点を問題にした形跡は窺えず,かえって,原告の同時通訳者として活躍が評価されて教授に昇任したことが窺われること(甲29,53,56ないし58,乙29,33,59の1,94,弁論の全趣旨),原告は被告に対し,ソウルにおけるアジア農業協力国際会議で同時通訳等を行うために平成17年5月9日から同月12日まで3日間休んだ際には「AFGC/IFAP 国際会議出席」と記した海外渡航届を提出しており(乙18),また,平成18年5月にP6に代講を依頼した際にも,「国際会議出席のため,代講教員が担当,補講は行わない。」と記した休講届を提出しているにもかかわらず(乙18),被告及び大学当局は,これらの提出を受けた時点では即座にこれを問題視する対応を示していないこと(弁論の全趣旨)等の事情が存するのであり,原告がこれらの事情から年次有給休暇(甲13)等をとらずとも,授業を休講にして政府機関等が実施する国際会議で同時通訳を行うことが許されると考えていたとしても,やむを得ないものというべきであり,処分歴のない原告に対して(弁論の全趣旨),いきなり懲戒として最も重い「解雇」という手段を選択したのは処分としては重すぎるものといわざるを得ない。してみれば,以上の諸事情が認められる本件においては,仮に実質的にも無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたり,職務専念義務に違反する(就業規則33条3号後 のといわざるを得ない。してみれば,以上の諸事情が認められる本件においては,仮に実質的にも無許可の兼職又は事業(就業規則33条2号,4条4号)にあたり,職務専念義務に違反する(就業規則33条3号後段)と解したとしても,本件懲戒権の行使は,客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができず,権利の濫用として無効になるものと認められる(最 判昭和58年9月16日労働判例415号16頁等参照)。被告が解雇という最も重い処分を選択した理由として,懲戒委員会において反省の念や改悛の情をみせず,強弁や詭弁による自己正当化に努めるばかりで本人に反省がみられなかった(乙93)という事情の存することも一応窺われるけれども,本件懲戒において懲戒事由とされた事実は,同時通訳を優先させた授業を休講にしたという事由を除くと専ら形式的な手続違反を問うものであり,休講の点についても前記のとおり原告がこれを許されると考えていたとする点には斟酌すべき事情も認められるのであるから,原告が懲戒委員会において反省の念や改悛の情をみせなかったからといって,解雇という重い処分を肯認することもできない。 オ以上のとおりであるから,本件懲戒は無効である。 (2) 賃金額如何について以上のとおり,本件懲戒は無効であるから,被告は原告に対し,平成19年4月以降,毎月の賃金としては,基本給59万5300円,調整手当7万1436円,家族手当2万2000円,超過勤務手当3万8250円,住居手当5000円,以上合計73万1986円(但し平成20年4月以降は超過勤務手当を除いた69万3736円)の支払が毎月21日になされるべきであるし,期末手当については,毎年6月に176万3517円,12月に203万1878円の支払がなされるべきである。 なお,被告は 務手当を除いた69万3736円)の支払が毎月21日になされるべきであるし,期末手当については,毎年6月に176万3517円,12月に203万1878円の支払がなされるべきである。 なお,被告は,家族手当は教員からの申請が前提であるとするが,本件懲戒がなければ原告からの家族手当の申請はなされたであろうし(弁論の全趣旨),証拠(甲54,55)によれば,原告は平成19年度には14コマの授業を担当することが予定されていたと認められるから,前記前提となる事実(3)記載のとおり,超過勤務手当については,給与規程(乙95)に従い,平成19年度は3万8250円とするのが相当である。もっとも平成20年度以降は原告が担当する授業数は不明であるから,平成20度以降は超過勤 務手当を認めることはできない。また,通勤手当は実費補償的性質を有するものであり,原告が通勤の費用を要していない以上,被告に支払義務を認めることはできない。また,被告事業所における期末手当の平成19年度における支給率は,6月期が基本給及び調整手当の2.30か月分,12月期が2.65か月分であり,被告は一律に期末手当を支給しているのであるから(弁論の全趣旨),これに反する格別の証拠も存しない本件においては,原告のそれは6月期に176万3517円,12月期に203万1878円とするのが相当である。 2 不法行為請求について本件懲戒は無効であることは前記のとおりであり,それにもかかわらず,被告は,平成19年3月29日以降1年以上にもわたって,P2掲示板と称する学内の教職員が閲覧できる学内ネットワーク上の掲示板に,原告が,P1学院就業規則4条,24条,33条及び34条に該当する行為による懲戒処分として解雇された旨公示しているのであるから,被告の行為が原告の名誉を侵害する不 きる学内ネットワーク上の掲示板に,原告が,P1学院就業規則4条,24条,33条及び34条に該当する行為による懲戒処分として解雇された旨公示しているのであるから,被告の行為が原告の名誉を侵害する不法行為にあたることは明らかである。 もっとも,原告は,「被告の不法行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するためには慰謝料500万円とするのが相当である。」と主張するが,本件懲戒自体によって被った精神的苦痛については,本件訴訟において被告のした本件懲戒が無効であることが確定することによってもっぱら慰謝されるべきものであるから,本件においては公示による前記の事実をも斟酌し,本件における慰謝料は50万円とするのが相当である。 3 結論以上のとおりであるから,原告の請求は,①労働契約に基づき,原告が,被告の設置するP1大学外国学部英語学科教授の地位にあることの確認を求めること,②被告が原告に対して,毎月21日限り,平成19年4月から同20年3月まで各月の賃金として73万1986円,同20年4月以降本判決確定に 至るまで各月の賃金として69万3736円並びにこれらに対する各支払期の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をすること,③被告が原告に対して,期末手当として毎年6月末日限り176万3517円及び毎年12月末日限り203万1878円並びにこれらに対する各支払期の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をすること,④被告が原告に対して,慰謝料として50万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をすることの限度で理由がある。 東京地方裁判所民事第36部 裁判官三浦隆志 送達の日の翌日である平成19年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をすることの限度で理由がある。 東京地方裁判所民事第36部 裁判官三浦隆志
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