令和6年3月14日判決言渡令和5年(行ケ)第10112号商標登録取消決定取消請求事件口頭弁論終結日令和6年1月30日判決 原告株式会社IBSTrading 同訴訟代理人弁理士山田朋彦同土橋 編 被告特許庁長官同指定代理人阿曾裕樹同冨澤武志同清川恵子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が異議2022-900511号事件について令和5年9月1日に した異議の決定を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告は、令和4年7月25日、「Haqihana」の文字を標準文字で表してなり、指定商品を第18類「愛玩動物用引きひも、愛玩動物用のハーネス」と する商標(以下「本件商標」という。)について商標登録出願をし、同年9月 30日に設定登録を受けた(登録第6622434号)。本件商標に係る商標掲載公報は同年10月11日に発行された。(甲1~3)⑵ イタリア共和国の法人であるハキハナ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ(以下「ハキハナ社」という。)は、令和4年12月6日、本件商標について登録異議の申立てをした。ハキハナ社が登録異議の申立ての理由 において引用した商標は、「Haqihana」の文字からなる商標及び以下の構成からなる商標(以下、これ 年12月6日、本件商標について登録異議の申立てをした。ハキハナ社が登録異議の申立ての理由 において引用した商標は、「Haqihana」の文字からなる商標及び以下の構成からなる商標(以下、これらの商標を併せて「引用商標」という。)であった。 (甲3) ⑶ 特許庁は、令和5年9月1日、「登録第6622434号商標の商標登録を 取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、本件決定の謄本は同月13日に原告に送達された。 ⑷ 原告は、令和5年10月6日、本件決定の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 本件決定の理由の要旨 本件決定の理由は、別紙「異議の決定」(写し)のとおりであり、その理由の要旨は次のとおりである。 ⑴ 原告は、ハキハナ社との間に契約関係及び取引関係がある状況下において、同社が引用商標を我が国において商標登録していないことを奇貨として、ハキハナ社及びその関係者(販売代理店及び再販事業者などを含む。)の我が国 における事業活動を阻害し、我が国における引用商標に係る商品販売及びそれにより生じる利益を独占するという不正の利益を得る目的で、本件商標を登録出願したものといわざるを得ず、このような出願目的及び経緯に鑑みれば、原告による本件商標の登録出願は、適正な商道徳に反し、著しく社会的 妥当性を欠く行為であり、これに基づいて原告を権利者とする本件商標の登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からも妥当ではない。したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから、商標法4条1項7号に該当する。 ⑵ 引用商標は、日本国内又は外国における需要者の間において広く認識され ている商標ではないから、本件商標は商標法4条1項19号に該当しない。 商標であるから、商標法4条1項7号に該当する。 ⑵ 引用商標は、日本国内又は外国における需要者の間において広く認識され ている商標ではないから、本件商標は商標法4条1項19号に該当しない。 ⑶ 本件商標の登録は、商標法4条1項7号の規定に違反してされたものであるから、同項19号の規定に反しないとしても、同法43条の3第2項の規定により取り消すべきである。 3 取消事由 ⑴ 取消事由1商標法4条1項7号該当性に関する判断の誤り⑵ 取消事由2判断の遺脱又は審理不尽第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法4条1項7号該当性に関する判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 原告は、平成30年8月29日、ハキハナ社との間で、引用商標を使用した愛玩動物用のハーネス(以下「本件商品」という。)に関し、原告が我が国を対象地域とする販売代理店として本件商品を販売することに関する「海外 販売契約書」に署名して契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 その後、原告は、他の者がハキハナ社の商品を売っていることを知ったので、同社に対し、原告以外に日本の販売代理店があるのか否かを確認し、もし多数の販売代理店があるならば広告にかける予算を検討すると伝えた。これに対し、ハキハナ社は、原告以外に販売代理店はない、将来的に原告以外 の販売代理店を探す意向はない、日本から新たな引き合いがあったときには 原告に第一に連絡をとるようにすると原告に回答した。これにより、事実上原告のみが日本国内での唯一の販売代理店という立場になり、本件商品の営業活動を展開することとなった。 原告は、広告や販売促進活動のみならず、本件商品の包装の装飾、説明書の翻訳、保証書の明確さなど、日本独自の付加価値をつけるような工夫をし 場になり、本件商品の営業活動を展開することとなった。 原告は、広告や販売促進活動のみならず、本件商品の包装の装飾、説明書の翻訳、保証書の明確さなど、日本独自の付加価値をつけるような工夫をし た結果、本件商品の売上げは2年間で7.5倍に激増し、その売上高は本国イタリアに次いで世界第二位となった。また、需要者の間には原告が日本の総代理店であるかのような認識が広まった。 しかしその後、原告は、ハキハナ社が、原告と本件契約を締結する前に、Aが運営する「Sabine’sDogVacation」(以下「サビーネ」という。)と販売 代理店契約を締結していたことを知った。原告は、ハキハナ社が上記事実を隠していたことを認識し、同社との信頼関係は損なわれていったが、本件商品に多大な広告費を投じており、本件商品の輸入販売が原告の事業の屋台骨となっていたので、本件商品の販売を中止することができない状況となっていた。 令和4年ころから、本件商品の品質の劣化や不具合に関するクレームや問合せが増加し、ハーネスが表示サイズと異なっていることもあった。しかし、原告からの報告及び確認依頼に対するハキハナ社の対応は芳しくなく、日本の品質意識に対して非難めいた発言もたびたびあった。同社が欠陥品でないと考えていても、原告としては、購入品が欠陥品であるとして返金を求めら れれば返金をせざるを得なかったが、ハキハナ社から返金が認められないケースもたびたび発生した。 同じ頃、合同会社アブレイズ(以下「アブレイズ」という。)が、原告から仕入れていない本件商品を、原告から仕入れた商品であるかのように見せて、ショッピングサイト「楽天市場」の中の商品販売サイトで販売するようにな り、令和4年3月以降、上記サイトで販売された本件商品について、欠陥品 品を、原告から仕入れた商品であるかのように見せて、ショッピングサイト「楽天市場」の中の商品販売サイトで販売するようにな り、令和4年3月以降、上記サイトで販売された本件商品について、欠陥品 であるとのクレームが原告にたびたび寄せられるようになった。 また、原告は、令和4年、本件商品に関し、タグに記載されたリードの長さの表示と実際の長さに不一致があるとして消費者庁から注意を受けた。原告は、原告であればこのような長さの違いに気付く可能性が高いから、アブレイズが販売した商品かもしれないとの疑惑を抱いたが、消費者庁の注意を 受けるしかなかった。 日本で販売されている本件商品は原告により輸入、販売されたものであるとの認識が需要者の間に存在している状況において、アブレイズのような会社が模倣品や欠陥品を扱えば、原告の信用や利益を損なうとともに、需要者の利益も損なうこととなるため、原告は強い危機感を覚え、アブレイズへの 対処が必要であると認識した。しかし、アブレイズへの対応を求める原告の要望に対し、ハキハナ社は、日本国外から本物の本件商品を買い付けて日本国内で販売することは可能であり、原告が阻止できるものではないと回答し、どのような商品が日本で流通しても問題がなく、どのような代理店・販売店が日本で商品を流通させようともそれを管理する意図がないとの姿勢を示し た。原告がたまりかねて、ハキハナ社が原告のことを守ってくれないのかと問い合わせたところ、同社は、この件では誰も守る必要がない、市場は自由であって全ての競合他社に開かれているなどと回答した。さらに、原告は、ハキハナ社の回答内容から、海外の販売代理店が日本で孫請けのような販売店を設けて本件商品を販売することが可能であるとの実情があることを認識 した。本件契約の当時 どと回答した。さらに、原告は、ハキハナ社の回答内容から、海外の販売代理店が日本で孫請けのような販売店を設けて本件商品を販売することが可能であるとの実情があることを認識 した。本件契約の当時にした原告とハキハナ社との約束はなかったかのような状況となり、原告はこれまでの努力は何だったのかという思いに駆られた。 原告は、令和4年7月22日、ハキハナ社に対し、原告の立場に立って考え直してほしい、アブレイズの販売を停止させることにはハキハナ社のサポートが必要であり、助力してほしいこと等を記載したメールを送ったが(甲2 0の10⑦)、同社からの返信はなかった。 このような状況に至ったため、原告は、上記メール送信の3日後である令和4年7月25日、本件商標について商標登録出願を行った。 ⑵ 商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、健全な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く出願行為に係る商標も含まれると解されるが、一方で、むやみにこれを私的領域まで拡 大して判断することは法的安定性を害することは過去の裁判例からも明らかにされている。そして、以下のとおり、上記⑴の事実関係からすれば、原告による本件商標の出願登録は、「健全な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く」とはいえず、本件商標は同号に該当しないものであり、これに反する判断をした本件決定は違法であって、取り消されるべきである。 ア原告が本件商標の商標登録出願を行ったのは、上記⑴の原告とハキハナ社間でやり取りされたメールの内容から明らかなとおり、アブレイズへの対応が主目的であり、ハキハナ社の事業を阻害する意図で行ったものではない。 原告は、ハキハナ社が「Haqihana」の商標登録の帰属主体になる方が良 いことは理解し なとおり、アブレイズへの対応が主目的であり、ハキハナ社の事業を阻害する意図で行ったものではない。 原告は、ハキハナ社が「Haqihana」の商標登録の帰属主体になる方が良 いことは理解していたし、同社に頼んで商標登録出願をしてもらうことが筋であることも承知していたが、これまでのやりとりから、同社にそのような話をしても埒があかないことも認識していた。 また、ハキハナ社自身、EUでは商標登録を取得しており(甲16の5の1・2)、国際商標登録出願も各国で行っている(甲19の6)ことか ら見ると、単に日本での商標登録の取得を怠っていただけであり、商標登録を取得すること自体が同社の事業活動に反する行為ではない。 そもそも、原告が、日本における本件商品の売上げを飛躍的に伸ばし、日本の需要者に対しハキハナ社の総販売代理店であるかのような立ち位置になったのは、契約当初における同社からの約束を原告が信用したから であって、そのような原告について何ら法律上の保護を図られないことこ そ、健全な商道徳に反する状態である。 したがって、原告が本件商標の登録を取得した目的は、決して健全な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠くようなものではない。 イアブレイズが原告に対して数々の違法行為を行っていたことは上記⑴のとおりであるから、原告がアブレイズに対して何らかの法的措置を講じる ことは何ら咎められるものではない。 アブレイズが取り扱っていた本件商品が模倣品であれば、原告が権利行使をしたとしても、ハキハナ社の事業活動に何ら影響はない。 仮にアブレイズが取り扱っていた本件商品が模倣品ではなく、海外から輸入されたものであったとしても、令和4年における本件商品には欠陥品 等も多く存在していたが、アブレイズが本件商品の品質の是非を 仮にアブレイズが取り扱っていた本件商品が模倣品ではなく、海外から輸入されたものであったとしても、令和4年における本件商品には欠陥品 等も多く存在していたが、アブレイズが本件商品の品質の是非をチェックしていた可能性は低い。ハキハナ社においても欠陥品を市場に流通させる意図はなかったはずであるから、欠陥品を差し止める行為は、原告が権利行使をしたとしても、ハキハナ社の事業活動に影響はない。 また、本件商品には、良品とは言えない品質のものも混在していたが、 各販売代理店側で勝手に処理できるものも多数存在していた。一例として、水溶性のチョークの跡が本件商品に残っていたことがあるが、これを水で流せばきれいになるものの、商品が縮むことがあり、そうなればハキハナ社の意図した品質と異なるものが市場に流通する。このように、元が真正品でも、わずかな欠陥があるが故に、流通過程で海外の販売代理店によっ て商品に手が加えられる可能性が大いにあり、そのような商品をアブレイズが輸入していた可能性も否定できず、このような場合もハキハナ社が意図した商品が販売されていないことになるから、原告が権利行使をしたとしてもハキハナ社の事業活動に影響はない。 さらに、原告は、本件商品に包装を施すことやオリジナルの保証カード を付すなどの工夫をし、欠陥品が増えた令和4年頃には原告自らが商品の チェックを入念に行ってから本件商品を販売するなど、本件商品に一定の固有の付加価値を付けていたのであり、単なる並行輸入による真正品と原告が販売する本件商品とでは、需要者の期待する品質が大きく異なり、品質の同一性が担保できない。とりわけ、アブレイズは、本件商品に5年保証が付されているにもかかわらず、本件商品に対するクレームに適切に応 答しておらず、原告にクレームが する品質が大きく異なり、品質の同一性が担保できない。とりわけ、アブレイズは、本件商品に5年保証が付されているにもかかわらず、本件商品に対するクレームに適切に応 答しておらず、原告にクレームがいくように仕向けていた。本件商品のセールスポイントである5年保証の対応がされなければ、需要者に不利益が生ずるばかりでなく、ハキハナ社にとっても極めて大きな損害が発生する。 このように、仮に、アブレイズが販売する本件商品が真正品だったとしても、原告が販売する本件商品その他ハキハナ社の本件商品一般とは、明ら かに商品の品質に差があるといえるから、アブレイズが本件商品を販売することに対して、原告が権利行使をしたとしても、ハキハナ社の事業活動には何ら影響はない。 ウ原告は、本件商標に係る商標権(以下「本件商標権」という。)のハキハナ社への譲渡を拒む意図はなかったし、同社との取引を完全に終了させ たいとか、同社に本件商標権を高額で売りつけたいなどと思っていなかった。原告としても、本件商品の販売によって企業の経営が成立していた状態であったのであるから、ハキハナ社の業務を阻害することは原告自らの首を絞めることになる。 そして、原告代表者が陳述書(甲29)において述べるとおり、原告は 今でも、ハキハナ社と話合いができれば本件商標権の譲渡を拒む理由はないと考えている。 〔被告の主張〕原告は、本件契約が独占的販売契約ではないことを承知していたが、同社との取引や従業員とのメールでのやりとりなどを通じて、原告以外にも正規販売 代理店(サビーネ)がいること、原告を独占的販売代理店にしてくれないこと、 海外の正規品の日本での再販売(アブレイズによるものを含む。)を許容していることなどのハキハナ社の経営方針に不満を持つに至った。そし ーネ)がいること、原告を独占的販売代理店にしてくれないこと、 海外の正規品の日本での再販売(アブレイズによるものを含む。)を許容していることなどのハキハナ社の経営方針に不満を持つに至った。そして、原告は、それまでのやりとりからハキハナ社に事前相談しても無駄であると思い、自らが支出した広告宣伝費などに裏付けられたビジネスを守るとの名目で、同社に何ら告げることなく、引用商標と構成文字を共通にする本件商標を、引用商標 の使用に係る商品と一致する商品「愛玩動物用引きひも、愛玩動物用のハーネス」を指定商品として登録出願及び設定登録をしたものである。 その後、原告は、本件商標権に基づき、引用商標を付した商品を販売するアブレイズに対して、商品の販売停止及び金銭的な対価を求めており、そのことにより、ハキハナ社及びその商品の販売事業者の我が国における事業活動が阻 害されている。 また、そのような事態を受けた原告とハキハナ社の間における本件商標権の譲渡交渉は成立せず、結局は両者の取引関係は終了されるに至ったもので、その後も、原告はハキハナ社の商品が日本市場では流通しなくなることを通告しているから、今後も同社の日本における事業活動は、本件商標により阻害され る可能性が極めて高い。現に、同社は、「Haqihana」ブランドの使用を中止してロゴを変更することを余儀なくされており、我が国における事業活動が阻害されている。 そうすると、原告は、ハキハナ社との間に販売契約関係及び取引関係がある状況下において、同社が引用商標を我が国において商標登録していないことを 奇貨として、同社及びその関係者(販売代理店及び再販事業者などを含む。)の我が国における事業活動を阻害し、同社との交渉における自己の立場を有利にするためなどの目的及び我が国にお いないことを 奇貨として、同社及びその関係者(販売代理店及び再販事業者などを含む。)の我が国における事業活動を阻害し、同社との交渉における自己の立場を有利にするためなどの目的及び我が国における引用商標に関連する商品販売により生じる利益を独占する目的で、同社に何ら告げることなく、本件商標の登録出願をしたものといわざるを得ない。このような出願目的及び経緯に鑑みれば、原 告による本件商標の登録出願は、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を 欠く行為であり、これに基づいて原告を権利者とする本件商標の登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からみても妥当ではない。 原告は、アブレイズに対してであれば本件商標の権利行使が正当化される旨の主張をするが、ハキハナ社から、同社はアブレイズの我が国における本件商品の販売を問題視しておらず、原告が阻止できる違反ではない旨を明確に伝え られていながら、自らの利益を確保するため、ハキハナ社の意向や利益に反する行為に及んでいるのだから、その行為が正当化されるものではない。 また、仮に、原告が、本件商標の登録出願時に、本件商標権をハキハナ社に譲渡する意図を有していたのであれば、本件商標の登録出願の目的は、同社との交渉における自己の立場を有利にすること、並びに同社及びその関係者の我 が国における事業活動を阻害することに加えて、同社に高額で本件商標権を売り付けることも目的としていたと考えられ、やはり本件商標の出願目的及び経緯を正当化するものではない。原告代表者の陳述(甲29)については、本件商標に関する係争の経緯や原因からすれば、ハキハナ社との取引継続が期待できないのであれば、本件商標の登録が取り消されるよりは、今まで費やした広 告宣伝費等を回収するために同社に高額で譲渡し 件商標に関する係争の経緯や原因からすれば、ハキハナ社との取引継続が期待できないのであれば、本件商標の登録が取り消されるよりは、今まで費やした広 告宣伝費等を回収するために同社に高額で譲渡して利益をあげようとの意図がうかがわれる。 2 取消事由2(判断の遺脱又は審理不尽)について〔原告の主張〕⑴ 本件決定は、販売代理店による違法な出願と頭から決めてかかって「結論 ありき」で判断している印象が拭えない。 正当な理由があれば、代理店であっても商標登録を取得することができるから、代理店が無断で海外メーカーの商標を取得することが常に無効理由を有するわけではない。本件のように取引関係がある当事者同士の案件においては、両者間の契約や状況は極めて重要であると言える。 しかし、本件決定は、ハキハナ社と原告との間で交わされた約束や、ハキ ハナ社の原告に対する信義則違反(合意遵守に対する意識の欠如)の責任について一切判断をしていない。 加えて、本件決定は、商標法4条1項7号に該当する理由の一つとして、アブレイズに権利行使をしたことについて、「申立人及びその商品の販売事業者の我が国における事業活動が阻害されている。」と判断しているが、契 約当初のハキハナ社と原告との合意について認定しているにもかかわらず、アブレイズを適法な販売事業者と直ちに認定できるのかが理解できない。原告とハキハナ社との間に、独占の代理店契約をされていなくても、他に販売代理店が存在せずに、新たに探すつもりがないという合意があれば、新しい販売代理店は存在していないはずである。その過程に何かあったと認定する ならば、その部分についても事実認定が必要なはずである。 このように本件決定は、重要部分に関する判断の遺脱がある。 ⑵ 本件訴訟において していないはずである。その過程に何かあったと認定する ならば、その部分についても事実認定が必要なはずである。 このように本件決定は、重要部分に関する判断の遺脱がある。 ⑵ 本件訴訟において、新たに明らかになった事実関係はアブレイズと原告との関係における違法行為のみであり、それ以外について、両者間に認識の齟齬等の何らかの事情があることは、異議申立手続で提出された双方の主張及 び証拠からも十分に推測できたはずである。そのような事情に関して、疑義ある点があれば必要に応じて、双方に審尋を求めることや口頭審理に切り替えるなども異議申立手続においても実施可能だったはずであるから、本件決定は審理が十分に尽くされていない状態でされたものである。 ⑶ 以上のとおり、本件決定は、判断の遺脱又は審理不尽の状態で出されたも のであって、手続上の違法があるから、取り消されるべきである。 〔被告の主張〕⑴ 本件決定は、原告による本件商標の登録出願が、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為であり、これに基づいて原告を権利者とする本件商標の登録を認めることは公正な取引秩序の維持の観点からみて妥当でな いとの結論を導き出すために、必要十分な事実認定をしている。 本件決定に記載されていない事実関係として原告が主張するものは、本件商標の出願目的及び経緯を正当化しないから、上記結論を導き出すために不可欠な事実関係ではなく、本件決定の結論を左右しない。 また、アブレイズの我が国における本件商品の販売行為については、ハキハナ社が問題視しておらず、同社の経営方針に沿うものであるのだから、原 告がアブレイズへの対応の目的で本件商標の登録出願をしたものであったとしても、これによって本件商標の出願目的及び経緯が正当化されることはな しておらず、同社の経営方針に沿うものであるのだから、原 告がアブレイズへの対応の目的で本件商標の登録出願をしたものであったとしても、これによって本件商標の出願目的及び経緯が正当化されることはない。なお、原告は、アブレイズが販売する本件商品が模倣品である可能性があるという漠然とした主張をするにすぎず、模倣品であることを裏付ける具体的な証拠は提出していない。 したがって、本件決定に、判断の遺脱はない。 ⑵ 特許庁は、ハキハナ社による異議申立てがされた後、取消理由を通知し、原告から提出された意見書を踏まえた上で、両当事者の主張立証を踏まえて異議決定ができる程度に審理が熟したと判断し、本件決定をしたものであり、その手続に何ら瑕疵はない。 登録異議の申立てについての審理は、原則として書面審理による(商標法43条の6)もので、本件商標に係る異議申立てについて口頭審理とすべき理由は特段見出し難い。書面審理によって行ったことは、審判合議体に与えられている審判指揮の裁量権の範囲内のものである。 したがって、本件決定に係る審理手続に違法な点はない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法4条1項7号該当性に関する判断の誤り)について⑴ 前記第2の1の事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 アハキハナ社は、イタリアの法人であり、犬用のハーネスや引きひもを販 売している。同社は、引用商標を、その販売する商品である犬用のハーネ ス(本件商品)及び引きひもに使用してきた。(甲16の6の3)イ引用商標は、「Haqihana」の文字からなる商標及び前記第2の1⑵に掲げた構成の商標である。このうち、前者の商標は、本件商標と同一の文字で構成されている。また、後者の商標は、「Haqi )イ引用商標は、「Haqihana」の文字からなる商標及び前記第2の1⑵に掲げた構成の商標である。このうち、前者の商標は、本件商標と同一の文字で構成されている。また、後者の商標は、「Haqihana」の文字のうち最初の「H」の文字が、犬の顔や尾などを付けた図柄となっているが(甲16 の2)、これが「H」の文字を表し、全体として「Haqihana」の文字から構成されている商標であると理解することができるものであるから、やはり本件商標と同一の文字で構成されているものと理解される商標である。 ウ原告は、平成30年9月、ハキハナ社との間で、原告が日本におけるハキハナ社の商品の正規販売代理店となることや、その取引条件等を定めた 本件契約を締結した。本件契約には、原告が本件商品を含むハキハナ社の商品の日本国内における独占的販売権を有するとの内容や、原告が日本国内における唯一の販売代理店であるとの内容は含まれていない。(甲19の5)エ原告の代表取締役であるB(以下「原告代表者」という。)は、平成30 年10月、原告以外の者が同年7月頃に日本国内でハキハナ社の商品を販売していたとの話を聞き、同社のマーケティングマネージャー(以下「ハキハナ社担当者」という。)に対してメールを送付し、原告以外に日本における代理店が存在するのか確認するとともに、日本での販売代理店を原告のみにしてほしいと希望しているが、将来的に何か考えがあるなら知らせ てほしい、原告はフルスロットルで販売しているが、もし多くの販売代理店があるのであれば広告予算を検討すると伝えた。 これに対し、ハキハナ社担当者は、同社には他に販売代理店はなく、多くの輸入業者を探すつもりもない、その女性(サビーネ〔SabineFriedrich-Nishino〕)は、 を検討すると伝えた。 これに対し、ハキハナ社担当者は、同社には他に販売代理店はなく、多くの輸入業者を探すつもりもない、その女性(サビーネ〔SabineFriedrich-Nishino〕)は、5月に群馬でセミナーを開催しようとしており、その際、 ハキハナ社の商品を購入してセミナーの顧客に販売できるかについて同 社に問い合わせてきた、サビーネはドッグランを運営しているドッグトレーナーである、6月にハキハナ社からオファーを送ったが返事がなかった、サビーネは原告から直接買い付けたいのだと思われるが、もしイタリアから購入するとしても、彼女の小規模なビジネスのためわずかな商品が欲しいだけであり、原告とは比較にならない、機会があれば原告と連絡を取る ようサビーネに伝える、今後の日本からの依頼についても同様の対応をとるとメールで回答し、「フルスロットルで行きましょう!」ともメールに書いた。 (以上、甲20の1⑥、⑦)オ原告は、その運営するウェブサイトにおいて、本件商品の販売を行った。 原告は、この販売の際、包装に工夫を凝らすことや、5年保証が付されている本件商品に購入日を明記した原告独自の保証書を付すなど、顧客の満足度を高め、本件商品の販売を増やすための方策を行った。原告が販売した本件商品にも引用商標が用いられていた。(甲24の1~3)カ原告は、ハキハナ社が日本の需要者に直接同社の商品を販売しているこ と、及びサビーネがハキハナ社の商品を販売していることを知った。原告代表者は、令和3年6月、ハキハナ社担当者に対し、本件商品が日本で人気を得るようになったのは原告が広告費用を支出したからであり、原告は単なる販売代理店ではなく、原告の大使(アンバサダー)のようなものである、ハキハナ社が今後も原告にアンバサダー 、本件商品が日本で人気を得るようになったのは原告が広告費用を支出したからであり、原告は単なる販売代理店ではなく、原告の大使(アンバサダー)のようなものである、ハキハナ社が今後も原告にアンバサダーとしての役割を続けてほし いと考えているのであれば商品価格を下げてほしい、それができないのであればハキハナ社において日本の市場における宣伝活動をすべきであるなどとメールで伝えた。これに対し、ハキハナ社担当者は、既に日本市場は独占契約でカバーされないと伝えてある、販売価格を下げることも、同社が日本での広告費用を支払うことも不可能であるとメールで回答し、原 告はいつでも日本でのハキハナ社の商品の販売をやめることができるが、 日本市場は成長しており、商品に対する原告のマージンはハキハナ社のものより高いので、原告において現状に不平を述べる理由はないと思われるとも伝えた。さらに、このメールでは、サビーネがハキハナ社との間で、同社の商品の販売に関する契約を締結していることが明らかにされた。 (甲20の2①、②) キ原告代表者は、サビーネが原告より低価格での販売を始めており、原告の宣伝活動のコストがサビーネに利用され、原告の利益が下がっているとして、ハキハナ社が新たな販売代理店から連絡を受けた際、原告に連絡をするように伝えてくれれば、原告として安心して販売できる旨、ハキハナ社担当者にメールで伝えたが、これに対してハキハナ社側から明確な回答 はなかった。その後のハキハナ社担当者から原告代表者へのメールにおいて、ハキハナ社が、原告と本件契約を締結する前にサビーネと商品の販売に関する契約を締結していたことが明らかにされた。(甲20の2③、20の3④)ク原告は、本件商品の中に首回りと胴回りのサイズがサイズ表より5cm 件契約を締結する前にサビーネと商品の販売に関する契約を締結していたことが明らかにされた。(甲20の2③、20の3④)ク原告は、本件商品の中に首回りと胴回りのサイズがサイズ表より5cm ほど大きいものが複数あると認識し、令和4年6月、原告代表者からハキハナ社担当者に対し、このことをメールで伝えた。これに対し、同社担当者は、5cmは測定の誤りであろうとした上で、本件商品は工芸品であって、多少の差はハンドメイド工法の特徴であり、世界中の同社の顧客はこの良さを認めており、このような苦情が出るのは日本だけである、日本で 販売するものの全てを計測する理由が分からないとメールで回答し、「狂った世界ですね!」とも記載した(ただし、笑顔の顔文字が付されていた。)。 (甲20の9①、②)ケアブレイズは、令和4年初めころから、インターネット上の商品販売サイト「楽天市場」の中の「BeautyL」という名称の販売サイトにおいて、 本件商品の販売を開始した。その後、アブレイズの上記販売サイトから本 件商品を購入した顧客が、原告に対し、本件商品が不良品であるなどとクレームを述べてくることが生じた。原告代表者は、同年6月にハキハナ社担当者に送ったメールにおいて、アブレイズに商品を卸しているか尋ねたが、ハキハナ社担当者は、アブレイズを知らないと記載するとともに、送られてきた写真からすれば、アブレイズは日本国外から本物の本件商品を 買い付けていると思われ、それは可能であって合法的であるから、原告が対応したり阻止したりできるような違反ではない、市場は完全に自由であるなどとメールで回答し、ハキハナ社がアブレイズに何らかの措置を講じる意図がなく、原告としても対応や阻止をすることができるものではないとの考えを示した。(甲20の9①、② ない、市場は完全に自由であるなどとメールで回答し、ハキハナ社がアブレイズに何らかの措置を講じる意図がなく、原告としても対応や阻止をすることができるものではないとの考えを示した。(甲20の9①、②、④) コ原告代表者は、令和4年7月20日、ハキハナ社担当者に対し、「Haqihana」ブランドを使って不正販売をしている企業がある、多くの苦情が来ており、消費者庁からも問合せがあって、原告は損害を受けているとして、こうした不正行為を行う企業と話し合うために一時的な独占契約を締結してほしいとメールで求めた。これに対し、ハキハナ社担当者は、 一時的独占契約を締結することは解決方法とならない、模倣品が存在するのであればそのサンプルを入手して同社に送付されたい、楽天のウェブサイトでは本物の本件商品が販売されていると思われる、今回の件で誰も守る必要がない、市場は自由であり全ての競合他社に対して開かれている、などとメールで回答した。原告代表者は、同月21日、ハキハナ社担当者 に対し、原告は資金と労力を費やして本件商品の知名度を上げてきたのであり、なぜ独占契約の必要性を理解してくれないのかなどと記載したメールを送り、重ねて一時的独占契約の締結を求めたが、ハキハナ社担当者は、ハキハナ社の再販業者同士で争いがあってはならない、同社にとって原告は非常に重要なクライアントであり、原告とのコラボレーションを長期的 に継続したいと思っているが、あらゆる競合他社の存在を受け入れてもら うことも重要であるなどとメールで回答し、原告代表者の求めを拒絶した。 原告代表者は、さらに、同月22日、同年上半期の注文が期待していた売上高より低下している、楽天の業者は韓国から商品を買い付けて原告よりも低価格で販売し、顧客はより低価格を求めて楽天の を拒絶した。 原告代表者は、さらに、同月22日、同年上半期の注文が期待していた売上高より低下している、楽天の業者は韓国から商品を買い付けて原告よりも低価格で販売し、顧客はより低価格を求めて楽天の業者から購入している、原告はHaqihana ブランドを拡大するために4年間大きな努力を積 み重ねてきたが、ハキハナ社の考えによって押しのけられるのは辛い、何とか楽天の業者の販売を停止させたいと思っており、ハキハナ社のサポートが必要であると、同社担当者にメールで伝えたが、これに対する回答はなかった。 (以上、甲20の10の③、⑤、⑥、⑦) サ原告は、令和4年7月25日、本件商標について商標登録出願を行い、同年9月30日に本件商標の設定登録を受けた。 シ原告は、令和4年10月27日付けの内容証明郵便により、アブレイズに対し、本件商標と同一又は類似の標章を本件商標の指定商品と同一又は類似の商品に付して販売することは、原告の有する本件商標権の侵害に当 たるとして、商品の販売の停止及び150万円の支払を求めた。(甲16の12)スハキハナ社は、令和4年11月12日、原告に対し、ハキハナ社CEO名義のレターを送付し、原告が本件商標の登録を受けたことについて、ハキハナ社は許可しておらず、同社と原告との取引関係に関する重大な違反 であり、取引を直ちに停止する、ハキハナ社は本件商標の登録に対して異議を申し立ててこれを取り消すための準備を日本の弁理士及び弁護士に指示した、両者の取引関係を再生するためには、原告がわずかな費用で本件商標権をハキハナ社に譲渡すること、原告が日本における本件商品の販売者に対して行った全ての申立てを取り下げること、及び今後ハキハナ社 の商品等に関する独占権を主張しない旨約束する宣言に署名するこ 標権をハキハナ社に譲渡すること、原告が日本における本件商品の販売者に対して行った全ての申立てを取り下げること、及び今後ハキハナ社 の商品等に関する独占権を主張しない旨約束する宣言に署名することが 必要であると伝えた。 これに対し、原告代表者は、ハキハナ社に対し、原告が本件商標の登録を得たのは、ハキハナ社から独占的販売権を得ることを目的としたものではなく、もっぱら原告のビジネスを守ることを目的としたものであり、一般的な公正競争規約に違反しない、日本の市場で本件商品、ひいてはハキ ハナ社の商品が広まったのはひとえに原告の貢献によるものであり、同社の要求は前提を誤るものであって原告としては受け入れられない、ハキハナ社の対応は、原告の販促活動により日本の市場でハキハナ社の商品の販売が伸びるや否や、原告の貢献及び功労を無視し、ハキハナ社の利益のために原告が拡大した日本の市場を奪おうとする行為のように思われ、原告 とハキハナ社の今後のビジネスとして何が最も良いのかを考えて、現在の要求を撤回し、新たな提案をいただきたいと伝えた。 ハキハナ社は、原告に対し、原告の回答はハキハナ社が期待していたものと全く異なっており、原告とハキハナ社との取引関係は完全に終了した、同社は原告からのいかなる注文も受け付けないと伝えた。 これを受け、原告代表者は、ハキハナ社に対し、広告掲載は全て中止し、注文は全てキャンセルする、既に同社から購入した商品における本件商標の使用をやめるつもりはないと伝えるとともに、本件商品が日本の市場に出なくなることは残念であるが、原告としては日本の犬と飼い主のためによりよい製品を探して紹介していく、と伝えた。 (以上、甲16の13~16)セ原告による本件商標権の設定登録により、現在、ハキハナ社 は残念であるが、原告としては日本の犬と飼い主のためによりよい製品を探して紹介していく、と伝えた。 (以上、甲16の13~16)セ原告による本件商標権の設定登録により、現在、ハキハナ社は、日本の市場において引用商標を付した商品を販売することができないため、「H」のロゴを付したハーネスを日本において販売している。(甲19の2の2)⑵ 前記⑴の事実を前提に、商標法4条1項7号該当性について検討する。 ア引用商標に関する原告の認識について 原告は、ハキハナ社の販売代理店として本件商品を含む同社の商品を販売していたのであるから、同社が本件商品を含む同社の商品に引用商標を使用していることを認識しながら、引用商標と構成文字を共通にする本件商標について、引用商標が用いられている商品と同種の商品である第18類「愛玩動物用引きひも、愛玩動物用のハーネス」を指定商品として、商 標登録出願を行い、登録を受けたものと認められる。 イ原告が本件商標の登録出願を行った意図及び目的について(ア) 前記⑴の認定事実によれば、原告がハキハナ社との間で締結した本件契約は原告に独占的販売権を与える内容ではなかったが、原告は、自らが行った本件商品の広告宣伝や、本件商品の販売促進のための方策によ って、日本国内における本件商品の知名度が上がり、販売が増えたものであって、このような貢献を行った原告にはハキハナ社の商品に係る独占的販売権などの契約条件や待遇が同社から与えられるべきと考えていたが、同社はそのような意向を有さず、原告以外の者が並行輸入により入手したハキハナ社の商品を日本において販売することを問題視し ない販売戦略を採っており、原告にもこれを伝えていたこと、その後、アブレイズが原告よりも安価で本件商品を販売するよ 並行輸入により入手したハキハナ社の商品を日本において販売することを問題視し ない販売戦略を採っており、原告にもこれを伝えていたこと、その後、アブレイズが原告よりも安価で本件商品を販売するようになり、原告は、アブレイズの販売活動は、原告の宣伝活動や方策によって向上した知名度にただ乗りするものであって、アブレイズへの対応が必要であると考え、ハキハナ社に対し、一時的な独占的販売権を原告に与えるなどの手 段によって、原告がアブレイズに対応することに協力するよう求めたが、ハキハナ社がこれを拒絶したこと、そのわずか数日後、原告は、ハキハナ社が引用商標又はこれに類似する商標につき国際商標登録出願をしていたものの、我が国においては商標登録していないことを奇貨として、同社に一切知らせることなく、秘密裏に本件商標の登録を出願したこと が認められる。 原告が本件商標の登録を得た後、ハキハナ社が原告との取引を打ち切ると伝えてきた際、原告は、本件商品が日本の市場に出なくなることは残念であるとハキハナ社に伝えている。これは、原告が、原告以外の者による日本国内における本件商品の販売を認めないこと、すなわち、このような者による本件商品の販売を妨害、阻止する意向を有しているこ とを示したものといえる。 以上の事情に加え、原告が、本件商標の登録を取得したのと近接した時期に、本件商標権に基づき、アブレイズに対して本件商品の販売を中止するよう実際に求めたことも考慮すれば、原告は、本件商標の登録出願の時点から、本件商標の登録を得た後、本件商標権に基づき、アブレ イズによる本件商品の販売を差し止めるとともに、将来的に、並行輸入等で入手した本件商品等のハキハナ社の商品を日本国内で販売する者が現れたときに、その販売活動を差し止めるなどし 基づき、アブレ イズによる本件商品の販売を差し止めるとともに、将来的に、並行輸入等で入手した本件商品等のハキハナ社の商品を日本国内で販売する者が現れたときに、その販売活動を差し止めるなどして、原告以外の者が日本国内においてハキハナ社の商品を販売することを妨害、阻止する意図を有していたものと認めることができる。 (イ) 原告が本件商標の登録出願をする以前に伝えられていたハキハナ社の意向の内容からすれば、原告は、ハキハナ社の意向に反して無断で本件商標の登録を得れば、ハキハナ社が原告に対する信頼関係を喪失し、原告との取引を打ち切る可能性があることを容易に認識することができたといえる。 そして、原告は、ハキハナ社から、本件商標権をわずかな費用でハキハナ社に譲渡することなどの条件を満たさない限り原告との取引を打ち切る旨伝えられたが、これに対する原告の応答(前記⑴ス)は、ハキハナ社との契約あるいは取引の継続を模索するものではなく、原告の貢献に報いる内容の条件を出すようハキハナ社に迫る内容であるといえ、ハ キハナ社が原告との取引を終了すると伝えてきたことに対しても、契約 や取引の継続のための交渉を行おうとしなかった。 また、本件商標は引用商標と同一の文字で構成されているから、原告は、原告が本件商標の登録を受けた場合、本件商標権をハキハナ社に譲渡しなければ、同社が、本件商品など引用商標を用いた商品を日本国内で販売することができなくなると認識していたものと認められる。 これらの事情を総合すれば、原告は、本件商標の登録出願を行った時点で、原告が本件商標の登録を受ければハキハナ社が引用商標を用いた本件商品等を日本国内で販売することができなくなる事態が生じ得ることを認識し、そのような事態が生じても構わないと考 登録出願を行った時点で、原告が本件商標の登録を受ければハキハナ社が引用商標を用いた本件商品等を日本国内で販売することができなくなる事態が生じ得ることを認識し、そのような事態が生じても構わないと考えていたと認められ、かつ、原告の本件商標の登録出願は、ハキハナ社との契約関係や取 引における原告の利益を守ることよりも、むしろ原告以外の者による本件商品の販売を妨害、阻止することに主たる目的があったと認めることができる。 ウ上記ア及びイの事情を総合すると、原告は、ハキハナ社が本件商品を含む同社の商品に引用商標を使用していることを認識し、かつ、原告が本件 商標の登録を受ければ、ハキハナ社が引用商標を用いた本件商品等を販売することができなくなることも認識しつつ、そのような事態が生じても構わないと考えて、原告以外の者が日本国内で本件商品を販売することを許容するハキハナ社の意図ないし販売戦略に反し、本件商標権に基づいてアブレイズによる本件商品の販売を差し止め、将来的にも、並行輸入等で入 手したハキハナ社の商品を日本国内で販売しようとする者の販売活動を妨害、阻止することを主たる目的として、本件商標の登録出願を行ったものと認められる。 このような原告の本件商標の登録出願は、商標登録出願について先願主義を採用している我が国の法制度を前提としても、「商標を保護すること により、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の 発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的(同法1条)に反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであり、かつ、健全な法感情に照らし条理上も許されないというべきであるから、本件商標は同法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべ 秩序を乱すものというべきであり、かつ、健全な法感情に照らし条理上も許されないというべきであるから、本件商標は同法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。 ⑶ 原告の主張に対する判断原告は、前記第3の1〔原告の主張〕のとおり、本件の事実関係からすれば、原告による本件商標の出願登録は、健全な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠くとはいえず、本件商標は商標法4条1項7号に該当しないと主張する。 ア前記第3の1〔原告の主張〕⑵アの主張について原告は、本件商標の商標登録出願を行ったのはアブレイズへの対応が主目的であり、ハキハナ社の事業を阻害する意図で行ったものではない旨主張する。 しかし、そうであるなら、商標登録出願の事実をハキハナ社に隠す理由 はなく、少なくとも一度は、原告による商標登録出願の許否を願い出るのが当然であるにもかかわらず、あえてハキハナ社に知らせることなく秘密裏に商標登録出願していることを考慮すれば、上記主張は信用することができない。むしろ、本件商標の出願登録は、アブレイズへの対応も目的であったが、これにとどまらず、将来、並行輸入等で入手したハキハナ社の 商品を日本国内で販売しようとする者の販売活動を妨害、阻止することも目的としていたと認められる。また、アブレイズへの対応が本件商標の出願登録の目的に含まれるからといって、本件商標が商標法4条1項7号に該当しないことにはならない。 原告が、ハキハナ社の事業を阻害する意図で本件商標の登録出願を行っ たとまではいえないとしても、本件の事実関係によれば、同社が引用商標 を用いた本件商品等を販売することができなくなること、すなわち同社の事業が阻害される可能性があることを原告が認識して たとまではいえないとしても、本件の事実関係によれば、同社が引用商標 を用いた本件商品等を販売することができなくなること、すなわち同社の事業が阻害される可能性があることを原告が認識しており、かつ、そのような事態が生じても構わないと考えていたと認められることは、前記⑵イのとおりである。 ハキハナ社が引用商標について商標登録出願をしていなかったことに よって、原告による本件商標の登録出願がハキハナ社の事業活動に反しないことにはならない。そして、本件商標の登録出願に関する事実関係を総合考慮すれば、先願主義の下においても、本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当すると認められる。 本件契約の締結の頃にハキハナ社担当者が原告代表者に送ったメール (前記⑴エ)は、ハキハナ社がサビーネと商品販売に関する契約を既に締結していることを明らかにしておらず、当該メールの内容全体からすると、ハキハナ社が取引に関して原告を優遇するかのような印象を与える内容であったといえるものの、独占的販売権を原告に付与するとの誤解を与えるものとはいえず、上記メールがハキハナ社側から原告に送付されたこと をもって、原告以外の者によるハキハナ社の商品の販売を妨害、阻止することを目的として本件商標の登録出願をした行為が正当化されるものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ前記第3の1〔原告の主張〕⑵イの主張について アブレイズが販売していた本件商品が模倣品であったと認めるに足りる証拠はない。 そうすると、原告は、ハキハナ社が日本国内での独占的販売権を原告に与える意向を有しておらず、販売代理店でない者が並行輸入等により入手した本件商品を日本国内で販売することを許容する販売戦略をとっ 。 そうすると、原告は、ハキハナ社が日本国内での独占的販売権を原告に与える意向を有しておらず、販売代理店でない者が並行輸入等により入手した本件商品を日本国内で販売することを許容する販売戦略をとってい ることを認識しながら、アブレイズが販売していた本件商品が模倣品であ るとの証拠がないにもかかわらず、アブレイズによる本件商品の販売を妨害、阻止することを一つの目的として本件商標の登録出願をしたものといえ、原告が、法的に又は契約上保護されるべき利益を守るために上記登録出願を行ったものと認めることはできない。 アブレイズが並行輸入により本件商品を入手していたとして、これが海 外の販売代理店によって手が加えられていた可能性があるというのは、単なる推測にすぎず、アブレイズが実際に販売していた本件商品に、海外の販売代理店による加工がされたものが含まれていたことを示す証拠はない。 アブレイズが、その販売した本件商品のクレームが原告に向かうよう仕 向けたと認めるに足りる証拠はない。 その他、原告が前記第3の1〔原告の主張〕⑵イで挙げる事実は、それが仮に認められるものであったとしても、本件で認められるその余の事実関係に照らし、本件商標が商標法4条1項7号に該当するとの結論を左右しない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ前記第3の1〔原告の主張〕⑵ウについて原告が、本件商標権をハキハナ社に譲渡する意図を全く有していなかったものでないとしても、原告が本件商標の登録を受けた後のハキハナ社とのやり取り(前記⑴ス)において原告がハキハナ社に伝えた内容は、原告 のこれまでの貢献に報いる内容の契約条件ないし待遇を与えるようハキハナ社に求め、そのような契約条件ないし待遇をハキハナ社が原告に与え (前記⑴ス)において原告がハキハナ社に伝えた内容は、原告 のこれまでの貢献に報いる内容の契約条件ないし待遇を与えるようハキハナ社に求め、そのような契約条件ないし待遇をハキハナ社が原告に与えなければ、原告はハキハナ社に本件商標権を譲渡しないとの意向であったといえる。これは、原告が、ハキハナ社の意向に反して本件商標の登録を受け、これを基に同社に対して原告の求める契約条件ないし待遇を実現す るよう請求したものということができる。また、原告の望んでいた契約条 件等が法的に又は契約上保護されるべき利益であったとは認められない。 そして、ハキハナ社が原告の請求を拒絶した後、原告はハキハナ社とその後の交渉をせず、本件商標権はハキハナ社に譲渡されていない。 これらの事情を総合すれば、原告が、本件商標権をハキハナ社に譲渡する意図を全く有していなかったものでないとしても、本件商標が商標法4 条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するとの結論は左右されない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 2 取消事由2(判断の遺脱又は審理不尽)について原告は、前記第3の2〔原告の主張〕のとおり、本件決定には判断の遺脱又 は審理不尽があり、本件決定は違法であると主張する。 しかし、本件商標の登録異議を申し立てたハキハナ社は、本件商標は商標法4条1項7号及び同項19号に該当するものであるから、その商標登録は同法43条の2第1号により取り消されるべきであると主張したのに対し、本件決定は、本件商標が同法4条1項19号には該当しないが、同項7号に該当する と認められ、本件商標の登録は同法43条の2第1号により取り消されるべきであると判断しており、本件決定に判断の遺脱があるとは認められない。 法4条1項19号には該当しないが、同項7号に該当する と認められ、本件商標の登録は同法43条の2第1号により取り消されるべきであると判断しており、本件決定に判断の遺脱があるとは認められない。 前記第3の2〔原告の主張〕⑴における原告の主張は、本件決定が、商標法4条1項7号の判断において、原告の主張する事実の一部について、当該事実が認められるか否かの判断をしなかった、又は事実認定が不十分である旨の主 張であるといえ、これは同号該当性に関する本件決定の判断に不服を述べるものにすぎず、本件決定に判断の遺脱があることにはならない。そして、同号該当性に関する本件決定の判断に誤りがあると認められないことは、前記1のとおりである。 また、商標の登録異議の申立てに係る審理は原則として書面審理であって、 審判長が、商標権者、登録異議申立人若しくは参加人の申立てにより、又は職 権で、これを口頭審理によるものとすることができるにすぎないところ(商標法43条の6第1項)、前記第3の2〔原告の主張〕⑵において原告が挙げる事情、その他本件において認められる事情を考慮しても、審判長が、ハキハナ社による本件商標の登録異議の申立てに係る審理を口頭審理によるものとしなかったことについて、その裁量を逸脱したとはいえず、したがって、審理不尽そ の他手続上の違法があるとは認められない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 結論以上のとおり、取消事由1及び2は、いずれも理由がない。 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のと おり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林 主文 おり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 水野正則(別紙異議の決定写し省略)
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