令和2(ワ)1378 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月26日 京都地方裁判所
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判決文本文32,761 文字)

主文 1 被告は、原告Aに対し、1428万5153円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、467万0384円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、467万0384円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Dに対し、467万0384円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、これを10分し、その7を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。 7 この判決は、第1項ないし第4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、4668万4612円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、1537万8204円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、1537万8204円及びこれに対する平成30年1 1月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Dに対し、1537万8204円及びこれに対する平成30年11月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告Aの夫であり、原告B、原告C及び原告Dの父であるEが、被告 が開設する京都大学医学部附属病院(以下「被告病院」という。)の精神科に医療 保護入院中、無断離院をし(以 要本件は、原告Aの夫であり、原告B、原告C及び原告Dの父であるEが、被告 が開設する京都大学医学部附属病院(以下「被告病院」という。)の精神科に医療 保護入院中、無断離院をし(以下「本件事故」という。)、その後自殺したことについて、原告らが、被告病院の医師らには、①自殺防止義務としての自殺リスク評価検討義務並びに②無断離院防止義務としての情報共有義務及び付添義務があったにもかかわらず、これらを怠ったと主張して、被告に対し、債務不履行による損害賠償請求権(民法415条)又は使用者責任による損害賠償請求権(民 法715条1項本文)に基づき、原告Aについては4668万4612円及びこれに対する平成30年11月5日(本件事故の日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前の民法。以下同じ)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、原告B、原告C及び原告Dについては各1537万8204円及びこれに対する前同様の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める 事案である(請求合計額9281万9224円)。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)⑴ 当事者等ア原告ら Eは、昭和▲▲年▲▲月▲▲日生まれ(本件事故当時43歳)の男性である。 原告AはEの妻であり、原告B(平成▲▲年▲月▲▲日生)、原告C(同▲▲年▲月▲▲日生)及び原告D(同▲▲年▲月▲▲日生)はいずれもEの子である。(甲3) イ被告被告は、被告病院を開設する国立大学法人である。 F医師、G医師、H医師、I医師及びJ医師は、いずれも本件事故当時被告病院の精神科に勤務していた医師である(以下、これらの医師を併せて「被告病院医師ら」といい、 病院を開設する国立大学法人である。 F医師、G医師、H医師、I医師及びJ医師は、いずれも本件事故当時被告病院の精神科に勤務していた医師である(以下、これらの医師を併せて「被告病院医師ら」といい、それぞれを姓のみで略称する。)。被告病院医師らの うち、F医師がEの主治医(基本的な治療方針等を定め、担当医を指導する 医師)、H医師が担当医であり、I医師及びJ医師は研修医であった。なお、J医師は、本件事故当日が精神科での研修初日であった。(乙A7、証人F医師)⑵ 本件事故に至る経緯の概要ア被告病院への入院以前の経過の概要 Eは、平成30年2月1日(以下、同年の出来事は月日のみでいう。)、インフルエンザに罹患した後、右耳の難聴や耳鳴を発症し、7月頃から多様な身体症状を訴えてK病院を受診した。 Eは、8月頃から、次第に人格変化や思考能力の低下などを呈するようになり、9月21日には、希死念慮を伴ううつ病と診断され、L病院に医療保 護入院をした。 Eは、9月25日、L病院を退院したが、その後、再度症状が悪化し、K病院の精神科に外来通院することとなった。(甲6p7、甲7p159)イ被告病院における経過の概要Eは、10月23日、K病院の紹介によって、被告病院に医療保護入院す ることとなり、その際、危険回避のため、行動制限の範囲を病棟内のみ・家族同伴外出可と定められた。Eは、同日の診察後、原告Aの付添いで外出した帰りに被告病院外来棟のホールにあるトイレ(以下「本件トイレ」という。)の窓から無断離院した後、医師・看護師同伴の場合のみ外出可と行動制限の範囲が変更された。(甲6p10、11、乙A2p2、6、7) Eは、11月5日午後2時頃、外出のためにH う。)の窓から無断離院した後、医師・看護師同伴の場合のみ外出可と行動制限の範囲が変更された。(甲6p10、11、乙A2p2、6、7) Eは、11月5日午後2時頃、外出のためにH医師及びJ医師の同伴の下で被告病院の閉鎖病棟を出た。その際、同病院の外来棟のホールにおいて、H医師が上着を取りに行くためにその場を離れた。その後、Eは、J医師に対してトイレに行きたい旨述べ、J医師はこれを承諾した。Eは本件トイレに入り、J医師は、同トイレの出入り口が見えるホール内のソファーに座っ て待機していたが、数分後に本件トイレ内を見に行くと、Eの姿はなく、E が本件トイレの窓から無断離院したことが発覚した。 (本件事故。乙A2p80)⑶ Eの死亡11月10日、Eの遺体が琵琶湖内で発見された(乙A2p92~97)。Eの死亡時期は11月5日頃(推定)、死亡の原因は溺死と診断され、自殺と判断された(甲2、6p38、弁論の全趣旨)。 2 争点⑴ 被告病院医師らの自殺防止義務としての自殺リスク評価検討義務違反(争点1)⑵ 被告病院医師らの無断離院防止義務としての情報共有義務違反(争点2)⑶ 被告病院医師らの無断離院防止義務としての付添義務違反(争点3) ⑷ 上記⑴~⑶の各過失とEの死亡との相当因果関係(争点4)⑸ 過失相殺等(争点5)⑹ E及び原告らの損害(争点6) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 自殺防止義務としての自殺リスク評価検討義務違反(争点1)について (原告らの主張)ア Eは、2月にインフルエンザに罹患した後、様々な身体症状を伴ううつ病を発症し、9月には「木に登って飛び降りてやろうと思っていたがやめた」旨述べたほか、舌を噛んで流血するなどして、K病院 ア Eは、2月にインフルエンザに罹患した後、様々な身体症状を伴ううつ病を発症し、9月には「木に登って飛び降りてやろうと思っていたがやめた」旨述べたほか、舌を噛んで流血するなどして、K病院において希死念慮を伴ううつ病と診断されており、自殺企図歴や自死リスクの高まり等の事情が記 載された診療情報提供書が作成された。 被告病院の入院後においても、Eは、原告Aに対して、複数回にわたり、悲観的な発言をしていたほか、11月4日には、身体症状及び不安の増強が見られた。 以上の経過からすれば、Eは、被告病院入院当初から自殺リスクが高いと うかがわれる状況にあったということができ、実際、F医師やG医師におい ても、本件事故後、被告病院のカルテに、Eが自傷行為に及ぶ危険性が否定できない旨記載している。 イその上で、一般に、自殺の危険性は変動するため、自殺念慮の評価や危険因子(過去の自殺企図・自傷行為歴、うつ病を含む精神疾患等)の評価を継続的に繰り返すことが重要であるとされていることを踏まえると、被告病院 医師らは、①Eの自殺念慮の有無を確認し、②過去の自殺企図歴、うつ病を含む精神疾患の可能性、離院リスクの高まり、その他の危険因子に関する情報を適切に収集し、③上記①、②の情報を踏まえて自殺リスクの評価検討を継続的に行う義務を負っていたということができる。 しかるに、被告病院医師らは、①Eに対し、入院時から本件事故時までの 間、自殺念慮・希死念慮の有無の確認を行わず、②Eが、医療者に対して、取り繕う傾向を認め、本心を秘めることも想定していたにもかかわらず、原告Aから、Eの自殺念慮や自殺リスクに関する情報を聴取せず、③上記①、②の情報を踏まえた自殺リスクの評価検討を継続的に行わなかった。 り繕う傾向を認め、本心を秘めることも想定していたにもかかわらず、原告Aから、Eの自殺念慮や自殺リスクに関する情報を聴取せず、③上記①、②の情報を踏まえた自殺リスクの評価検討を継続的に行わなかった。 (被告の主張) ア精神科医療において、法的な自殺防止義務が認められるのは、患者に自殺の具体的かつ切迫した危険が認められる場合に限られる。 患者に具体的かつ切迫した自殺の危険がない場合、医療機関が患者をどのように管理するかは、医療機関の診療行為そのものとして、患者の精神症状や治療効果を考慮しつつ、医療機関の裁量の範囲内で判断すべき事項である。 イ本件において、Eは、被告病院入院後は、不眠の訴えは継続したものの、穏やかな様子であることが多く、幻覚や奇異な言動、危険行動は認められなかったこと等からすると、Eの自殺リスクが高まっていると評価することは困難であり、具体的かつ切迫した自殺の危険が認められないから、自殺防止義務としての具体的義務が認められる余地はない。 また、被告病院では、Eにつき、Eは医療者に対してよく思われようとし て取り繕う傾向が認められたこと等を踏まえ、時間をかけて信頼関係を築いていくという診療方針を採用していたところ、本件事故時は未だ入院後2週間を経過したばかりであり、かつ、ようやく病歴聴取を終えた段階であったから、信頼関係は未だ十分には構築されておらず、そのような段階で希死念慮の有無等を継続的に確認する義務は観念できない。 ウなお、K病院精神科主治医の診療情報提供書の記載を踏まえても、Eには明らかな自殺企図歴はなく、原告AがEから聞いた悲観的な発言についても被告病院医師らは把握していなかったから、これらの事実は被告病院医師らの自殺防止義務を基礎づ 情報提供書の記載を踏まえても、Eには明らかな自殺企図歴はなく、原告AがEから聞いた悲観的な発言についても被告病院医師らは把握していなかったから、これらの事実は被告病院医師らの自殺防止義務を基礎づけるものには当たらない。また、本件事故後のカルテの記載も、本件事故という衝動的な行動があったことを前提としているの であるから、本件事故以前の被告病院医師らの認識を示すものではない。 ⑵ 無断離院防止義務としての情報共有義務違反(争点2)について(原告らの主張)Eは病識がなく、被告病院における治療に対して拒否的な発言をしていた。 また、Eは、被告病院に入院した10月23日に本件トイレから無断離院し、 翌24日にも自動販売機業者の後ろについて病棟を出たほか、同月27日にも離院をうかがわせる行動をとっていた。 以上からすると、Eには無断離院のリスクがあったから、被告病院医師らは、Eの無断離院及び離院後の自殺等を防止するため、入院初日に精神科外来トイレの窓から逃げたとの情報を医療スタッフ間で共有する義務を負っていたに もかかわらず、これを怠ったほか、J医師に対しては、入院初日に同トイレから離院したとの情報自体を共有していなかった。 (被告の主張)被告病院スタッフは、Eが被告病院への入院初日に離院した際、本件トイレの窓から離院したことは知らなかったから、その情報共有を求めることは不可 能であった。 他方、Eが家族の付添中にトイレから無断離院したこと自体はカルテに記載して情報を共有しており、その結果、「医師・看護師の付添外出可」へと変更し、行動制限を強化している。 ⑶ 無断離院防止義務としての付添義務違反(争点3)について(原告らの主張) ア行動制限がなされている患者に対 、「医師・看護師の付添外出可」へと変更し、行動制限を強化している。 ⑶ 無断離院防止義務としての付添義務違反(争点3)について(原告らの主張) ア行動制限がなされている患者に対する付添いは、患者の側から離れない付添いが求められ、被告病院におけるマニュアル等にもその旨の記載がある。 イ本件においても、Eには無断離院のリスクがあり、かつ、離院後に自殺に及ぶリスクがあったから、被告病院医師らは、Eの離院及び離院後の自殺等を防止するため、Eにトイレの中まで離れず付き添い、又は少なくともトイ レの出入口で待機してEの動静に注意を払うべき義務を負っていたというべきであり、仮にH医師が付添いから離脱するのであれば、J医師にトイレの中まで離れずに付き添い、又は少なくともトイレの出入口で待機してEの動静に注意を払うよう指導すべき義務を負っていたにもかかわらず、被告病院医師らはこれを怠った。 (被告の主張)ア精神科医療においては、患者の病状や挙動等から認められる離院リスクの程度と離院した場合の結果の重大性(自傷他害のおそれの程度)に照らし、当該患者の無断離院を防止するために必要な程度・方法の措置を講じる義務が課せられるに止まり、医療保護入院中の患者に対し、一律に患者から離れ ない付添いが求められるものではない。 イ Eは、入院初日や翌日には無断離院を計画し、実行しているが、10月29日に医師同伴の下で外出した際には、そのような計画を実行していないから、同時点では、退院の希望はあるものの、精神症状が改善していたため、無断離院を実行する可能性は相対的に低下していたと認められる。 また、Eは、被告病院医師らに対しては、自らの症状を隠していたから、 被告病院医師らにおいて、Eの自 改善していたため、無断離院を実行する可能性は相対的に低下していたと認められる。 また、Eは、被告病院医師らに対しては、自らの症状を隠していたから、 被告病院医師らにおいて、Eの自傷他害のおそれは低く、仮に離院しても重大な結果が生じる可能性は低いと判断されており、同判断は相当である。 以上からすると、被告病院医師らに、Eが本件トイレを利用する際、本件トイレの中まで同伴して動静を監視する義務は認められず、本件トイレの正面にあるソファーで待機することで足りるから、被告病院医師らに無断離院 防止義務違反はない。 ⑷ 因果関係(争点4)について(原告らの主張)ア被告が、自殺リスク評価検討義務又は情報共有義務を履行していれば、本件事故当日、Eの外出に付き添う医師らがEから離れないようにする、本件 トイレの窓にストッパーを設置するなどの対策が取られたはずであり、Eが無断離院をすることはなく、その結果自殺に至ることもなかった。 イまた、付添義務についても同様に、これを履行していれば、Eが無断離院することはなく、その結果自殺に至ることはなかったということができる。 ウそして、一般に精神科患者の無断離院には重大なリスクがあり、無断離院 が発生した場合、自殺等の二次的事故が発生することは予見可能である。 また、本件における事情に照らしても、離院前のEの状態からすれば、離院した場合には自殺する可能性があることを予見できたといえるから、上記義務違反行為と自殺との間には相当因果関係がある。 (被告の主張) ア原告らの主張ア(自殺防止義務に関する主張)について、本件トイレは、閉鎖病棟ではなく外来棟の1階にあるトイレであるから、同トイレの窓に鍵付きのストッパーを設置する (被告の主張) ア原告らの主張ア(自殺防止義務に関する主張)について、本件トイレは、閉鎖病棟ではなく外来棟の1階にあるトイレであるから、同トイレの窓に鍵付きのストッパーを設置するなどして開放制限をする義務を生ずることはなく、これを前提とする因果関係に関する原告らの主張は失当である。 イ自殺の具体的かつ切迫した危険がない場合には、無断離院したからといっ て自殺することを予見できないから、自殺の結果との間に相当因果関係はな いと考えられるところ、本件事故当日の朝も、Eには自殺の具体的かつ切迫した危険があることを疑わせる言動はなかったから、無断離院後の自殺を予見することはできず、自殺の結果との間に相当因果関係はない。 ⑸ 過失相殺等(争点5)について(被告の主張) ア原告Aは、Eから悲観的なメッセージを何回も受け取っており、また、被告病院医師らに対して嘘を述べた旨の発言も聞いていたにもかかわらず、これらの言動を医師や看護師等に全く伝えていない。 本件事故の前に、原告Aが、Eの精神状態を判断するための重要な情報を被告病院医師らへ伝えていなかったことは、被害者側の過失として評価すべ きである。 イ Eについて、自殺リスクが相当高く、医療者に言わなくても家族にはそれを打ち明けている可能性が高いと想定できる事情がなかった以上、原告Aに事情を聴取することは困難であったから、被告病院医師らが、本件事故までに原告Aに対し、Eの自殺念慮の有無を聴取しなかったことには特段問題は ない。 (原告らの主張)ア Eの精神状態を判断するために必要な情報収集は、医療者である被告病院医師らの責任において行うべきであるところ、被告病院医師らが、原告Aに対し、Eの精神状態を判断す 。 (原告らの主張)ア Eの精神状態を判断するために必要な情報収集は、医療者である被告病院医師らの責任において行うべきであるところ、被告病院医師らが、原告Aに対し、Eの精神状態を判断するための事情を聴取しなかったにすぎず、被告 病院医師らの責任を原告Aに転嫁することは許されない。 イ原告Aは、被告病院の看護師やM精神保健福祉士(以下「M精神保健福祉士」という。)の対応が不親切であったことなどから不信感を抱いていたため、同人らに対して積極的に情報提供をしなかったものの、自ら医師との面談を求め、本件事故の翌日に予定されていた面談の場において直接Eの異変 等の事情を伝えようとしていた。 ウしたがって、本件において過失相殺等を行うべきではない。 ⑹ E及び原告らの損害(争点6)について(原告らの主張)ア Eの損害(ア)逸失利益 4988万9224円 aEは、死亡時43歳で、バスの運転手として稼働してきたものであり、精神疾患発症前の年収は516万5040円であった。 b 本件事故に関する被告病院事故調査委員会による医療事故調査報告書によれば、Eは、身体症状症及び関連症群(身体表現性障害)を伴ううつ病と診断されたが、精神疾患が寛解する見通しがないとの評価はさ れていない。 c したがって、逸失利益は、次のとおり4988万9224円とするのが相当である。 516万5040円×(1-0.3)×13.7986(24年のライプニッツ係数)=4988万9224円 (イ)Eの慰謝料 2800万円Eは死亡時43歳であり、原告Aと若年の子3人を残して死亡する無念は大きいものであったと考えられるから、Eの慰謝料は2800万円を下らない。 (ウ)弁護士費用 (イ)Eの慰謝料 2800万円Eは死亡時43歳であり、原告Aと若年の子3人を残して死亡する無念は大きいものであったと考えられるから、Eの慰謝料は2800万円を下らない。 (ウ)弁護士費用 778万円 (エ)Eの損害額合計((ア)~(ウ)) 8566万9224円イ相続原告Aは、Eの妻として、法定相続分に従い、上記アの損害賠償請求権の2分の1(4283万4612円)を相続し、原告B、原告C及び原告Dは、Eの子として、同様に、上記アの損害賠償請求権を6分の1(1427万8 204円)ずつ相続した。 ウ原告A固有の損害 385万円(ア)葬儀費用 150万円(イ)原告Aの固有の慰謝料Eは死亡時43歳であり、残された原告Aの悲しみは大きく、原告Aの固有の慰謝料は200万円を下らない。 (ウ)弁護士費用 35万円エ原告B、原告C及び原告Dの固有の損害各110万円(ア)原告B、原告C及び原告Dの固有の慰謝料父であるEを失った子らの悲しみは大きく、原告B、原告C及び原告Dの固有の慰謝料は各100万円を下らない。 (イ)弁護士費用各10万円(被告の主張)ア否認又は争う。 イ Eの逸失利益について(ア)Eは、8月21日にK病院精神科を受診した後、症状が増悪したため、 9月21日にL病院へ医療保護入院することになり、同月25日に退院したが、その後、徐々に症状が悪化したため、被告病院の精神科神経科へ入院加療の依頼がなされ、その結果、10月23日に被告病院で再び医療保護入院するようになった。 このような被告病院へ入院するまでの経緯に照らせば、Eが死亡した当 時、同人の精神疾患が寛解する見通しは全く認められなかった。 上記精神疾患が寛 告病院で再び医療保護入院するようになった。 このような被告病院へ入院するまでの経緯に照らせば、Eが死亡した当 時、同人の精神疾患が寛解する見通しは全く認められなかった。 上記精神疾患が寛解しない限り、Eがバスの運転手として勤務できないことは明らかであり、死亡当時、Eには仕事に復帰できる蓋然性が認められない以上、仕事に復帰できることを前提とする逸失利益は認められないというべきである。 (イ)仮に、仕事に復帰できたとしても、原告ら主張の基礎収入は、長期休職 を要する精神疾患を発症する前の就労状況によるものであるから、その後も同様の給与収入を得られたかは疑わしい。 ウ E及び原告らの慰謝料について原告らが主張する合計3300万円は高額に過ぎる。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(当事者間に争いのない事実並びに前記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)⑴ 被告病院への入院に至る経緯ア Eは、2月1日、インフルエンザに罹患し、その後、右耳の難聴を自覚して、K病院の耳鼻科を受診し、突発性難聴と診断され、入院した。Eは約2 週間で退院したがその後も耳鳴が持続した。(甲6p7)イ Eは、7月頃から、左耳鳴、頭部・顔面・頚部の違和感、手足のしびれ、全身の痛みを発症し、K病院の皮膚科、神経内科及び整形外科を受診したが明確な診断は得られず、エチゾラム等の抗不安薬の処方を受けていたが、その後も上肢の脱力感や耳鳴等が持続し、次第に不安焦燥感や不眠を呈するよ うになった。(甲6p7)ウ Eは、8月に、K病院の精神科を受診し、抗不安薬や睡眠薬の調整による経過観察を受けたが、次第に人格変化や思考能力の低下を呈し、何をするかわからない危険性を感じる目つきの変化等も 。(甲6p7)ウ Eは、8月に、K病院の精神科を受診し、抗不安薬や睡眠薬の調整による経過観察を受けたが、次第に人格変化や思考能力の低下を呈し、何をするかわからない危険性を感じる目つきの変化等もみられた。 Eは、9月19日、同病院受診時に待合室からいなくなり、病院の裏手に ある竹やぶに行ったのち病院に戻って来るという行動をとったが、後日、その際の心情について、精神科の薬がつらくて木に登って飛び降りようと思ったが勇気がなくやめた、死んだほうがましだと思ったなどと述べた。 Eは、同月20日の夜間に、涎を垂らしながら舌を噛んで流血した。 Eは、同月21日、悲観的、自責的な発言、意欲低下等の症状が認められ るとして、希死念慮を伴ううつ病と診断され、K病院の紹介で、L病院に医 療保護入院をすることとなった。(甲6p7、甲7p105、110、111)エ Eは、L病院に入院した後、入院環境がつらいと訴え、L病院の主治医も、入院後のEの精神状態は落ち着いていると判断したことから9月25日に退院した。退院時、ミルタザピン(抗うつ薬)とゾルピデム(睡眠薬)が処方され、退院後はK病院の精神科に外来通院することとなった。 なお、L病院の担当医が作成した、K病院に対する診療情報提供書には、診断名として「うつ病」と記載されており、症状経過について「入院直後は、やや焦燥感や困惑症状がありましたが、翌22日、奥様やこどもさんの面会後は、ほぼ安定され、22日に開放病棟に移棟され、任意入院に変更しました。」「9月25日に、精神状態が軽快のため、ご家族の了解のもと、自宅へ 退院されました。」との記載がある。(甲6p7、甲7p133)オ Eは、L病院を退院後、数日間は症状が安定していたが、ミルタザピンによる強い便秘、倦怠感、眠 め、ご家族の了解のもと、自宅へ 退院されました。」との記載がある。(甲6p7、甲7p133)オ Eは、L病院を退院後、数日間は症状が安定していたが、ミルタザピンによる強い便秘、倦怠感、眠気を訴え、手足に広がるしびれ等の症状が再燃した。そこで、10月1日、K病院精神科主治医は、抗うつ薬をミルタザピンからデュロキセチンに変更した。なお、この時点においても、Eは希死念慮 を伴ううつ病と判断されている。(甲6p7、8、甲7p128)カ K病院精神科主治医は、10月15日、同月1日の抗うつ薬の変更後よりEに幻聴、独語、不眠、食欲低下、悪夢があり、奇異な行動(自分の名前はミノムシだなどといって30分ほど廊下を腹ばいする行動、兵士と称して飛行機のパイロットになりきって空を飛ぼうとする行動等)が出現したことか ら、Eについて精神病症状、うつ病症状があると判断した上で、抗うつ薬の副作用が生じている可能性やてんかん性障害の可能性も念頭に置きながら、精神病圏の疾患の可能性を考えて、デュロキセチンを中止し、主剤をブロナンセリン(抗精神病薬)に変更した。 そして、Eについて、今後も病状がどのように変化していくか予想できず 注意が必要としたほか、混乱が今後さらに悪化していく可能性もあり、再度 入院治療が望ましくなる可能性もあるが、その場合は、L病院ではなく、被告病院などのより急性期に対応する療養しやすい病院が相当であるとされた。(甲6p7、8、甲7p140、158、159)キ K病院精神科主治医は、10月19日、前回の治療薬の変更後、Eの身体愁訴や幻聴は改善したものの流涎及び構語不良を認めたことから、ブロナン セリンを中止し、ブレクスピプラゾール1mg(抗精神病薬)に変更した。 (甲6p8、甲7p148、158、1 変更後、Eの身体愁訴や幻聴は改善したものの流涎及び構語不良を認めたことから、ブロナン セリンを中止し、ブレクスピプラゾール1mg(抗精神病薬)に変更した。 (甲6p8、甲7p148、158、159)ク K病院精神科主治医は、10月22日、前回の治療薬の変更後、Eの構語不良は改善したことを確認し、幻聴などの精神病症状もましにはなっているが、不安は強く、現時点では何らかの精神病症状(身体的愁訴もその一環) を有し、抗精神病薬の対象となると判断した。 同日、K病院の一般内科及び精神科の各主治医は、Eにつき被告病院への入院依頼をすることとし、要旨次の記載を含む診療情報提供書を作成し、被告病院に送付した。(甲6p8、甲7p140、151、158、159、乙A1)(ア)K病院一般内科主治医作成の医療機関用診療情報提供書 Eの主訴又は傷病名は「気分障害あるいは不安障害の疑い」であり、症状経過及び検査結果、治療経過等としては、「ご本人はこれらの回復しない経過を苦にされて自死リスクも高まり」、K病院精神科の医師に診察をしてもらいながら今日に至っている(甲7p156)。 (イ)K病院精神科主治医作成の医療機関用診療情報提供書 主訴又は傷病名は「精神病圏の精神疾患の疑い(幻聴、解離症状、各種身体愁訴、倦怠感、混乱)」である。 症状経過及び検査結果、治療経過等としては、「症状のある方で、見立て・診断に苦慮しつつ薬物治療を行い、当院の精神科と内科で経過フォローしている方です。ご本人は精神的疲労から休憩入院を希望しており、内 科でも精査必要と言われていることも有り貴院に紹介させていただく運 びとなりました。」「一時の自殺念慮や混乱は軽減して現在は一定の安定を得ており、総室での療養が可能であると考えま 科でも精査必要と言われていることも有り貴院に紹介させていただく運 びとなりました。」「一時の自殺念慮や混乱は軽減して現在は一定の安定を得ており、総室での療養が可能であると考えます。」と記載されている。 また、病歴に関して、9月21日に診察を行い、「全般的な病状を聴取し、また本人を診察した結果からは希死念慮を伴ううつ病と判断した。」とされ、L病院を退院した後「数日は落ち着いていたようだが、徐々に症 状が再度悪化」「家族には病状が不安定で今後も予断を許さないこと、薬物調整には時間がかかること、仕事が出来ていないことや家族からどう思われているのかを気にして自責的になっていることから家庭を離れて休憩するのも一定の意味はあるだろうことを説明した。」とされる(甲7p158、159、乙A1)。 ⑵ 被告病院における診療経過被告病院におけるEの診療経過等は、以下のとおりである。 ア 10月23日(被告病院への入院当日)(ア)Eは、被告病院に入院したが、健忘を残す異常行動が続いており、入院の上での医療と保護が必要な病像であるが、本人は病識を欠如しておりそ の必要性を十分に理解できないことなどから、原告Aを同意者とする医療保護入院とされた。入院に際し、危険回避に必要なため、行動制限の範囲を病棟内のみ・家族同伴外出可と定められた。なお、上記「危険」には、その程度をどのように見積もるかは病状次第であるものの、自傷・自殺の可能性という危険も含まれている。 F医師は、K病院からの診療情報提供書を確認した上で、Eを診察し、Eには典型的なうつ病の症状だけでなく、非典型的な症状を含む多様な症状が発現しているため、1つの病名によってすべての症状を説明するのは困難であり、詳細な情報を収集した上で 確認した上で、Eを診察し、Eには典型的なうつ病の症状だけでなく、非典型的な症状を含む多様な症状が発現しているため、1つの病名によってすべての症状を説明するのは困難であり、詳細な情報を収集した上でなければ診断等の見立てをすることは難しいと考えた。 また、上記診察の際、Eは、落ち着いているから大丈夫などと述べて入 院には拒否的であり、不満げな表情であったが妻同意のもと入院となることに最終的には納得した。(乙A2p2、5、証人F医師)(イ)Eは、午後1時30分頃、原告Aの同伴の下で買い物に行った帰りに、本件トイレの窓から脱出し、無断離院をした。本件トイレの入口で待っていた原告Aが、不審を感じて中を覗いたところ、Eが窓から外に飛び降り るのを認めた。そこで、原告Aは、Eを追うために、ホールを通って外来棟の外に出ようとしたところ、ホールの階段にいたM精神保健福祉士に会い、同人と共にEを捜しに外来棟を出た。Eは、被告病院敷地外で発見され、原告AとM精神保健福祉士に付き添われて病棟に戻った。 その後、午後3時頃、F医師、H医師、I医師、看護師長を含む看護師 ら及びM精神保健福祉士が出席してカンファレンスが行われ、被告病院医師らは、Eの行動制限に関して、安定した状態が続くようになるまでは、医師・看護師同伴の場合のみ外出可とすることが決定され、離院リスクがあるため注意が必要であることが確認された。(乙A2p6、7、証人M精神保健福祉士、原告A本人) (ウ)Eは、H医師の診察に対し、自身の症状は7月に整体で首をひねったことが原因であり、仕事について特に心配事等はなかった、休職を続けると辞めないといけない、退院したいなどと述べた。H医師は、Eの状態について、落ち着いて話すことができ、意思疎通良好だが 首をひねったことが原因であり、仕事について特に心配事等はなかった、休職を続けると辞めないといけない、退院したいなどと述べた。H医師は、Eの状態について、落ち着いて話すことができ、意思疎通良好だが、病識に欠けるとした上で、器質性、統合失調症のほか、解離による症状も考慮し、心理検査 をすることや、健忘が薬剤性の症状である可能性を考慮した投薬等の方針や検討事項をカルテに記載した。(乙A2p12)イ 10月24日(ア)Eは、H医師に対し、●曜日(▲月▲▲日)に外泊したい旨述べ、入院生活はしんどい旨述べた。 (イ)Eは、その後診察したF医師に対しても▲月▲▲日が誕生日であるので 外泊したい、ここにいたらおかしくなる、変わらない、自身の症状は薬のせいであるから問題ない、入院前の異常行動についてはちょっとは覚えているなどと述べたが、F医師は、薬で説明がつかない症状もある、何が起きているかわからない状況で外泊等は許可できない旨伝えた。 なお、本件事故後に行われた原告Aからの聞き取りによれば、Eは、原 告Aに対しては、入院前のことについては覚えていないが、覚えていると言った方が早く退院できると思ったため、嘘をついたと述べていた。 (ウ)Eは、自動販売機業者が出口から出る際に、その後ろについて病棟を出ていったため、看護師が病棟に戻るよう声をかけた。Eは、指示には従ったものの、表情は硬く、外出制限には納得していない様子がみられた。 (以上(ア)ないし(ウ)につき、乙A2p18、21、22、84)ウ 10月25日Eは、原告Aに対し、医師から、退院できるわけがない、一生この病院にいなければならないかもしれないと言われた、ストレスが溜まる等と訴えた。 (甲6p16、17) 10月25日Eは、原告Aに対し、医師から、退院できるわけがない、一生この病院にいなければならないかもしれないと言われた、ストレスが溜まる等と訴えた。 (甲6p16、17) エ 10月27日Eは、廊下の窓を開け、顔を外に出そうとしたり、ライトコート内(廊下の吹き抜けスペース)を何度ものぞいたりしており、離院リスクが高く、突発的な行動も予測されるため、看護師は、不審な行動がないかモニターにて注意して観察する必要があると評価した。(乙A2p36) オ 10月29日(ア)Eは、外出を希望し、午後1時30分頃から午後2時頃までの間、I医師同伴の下、コンビニエンスストアに買い物に行き、雑誌を10分ほど立ち読みした後、雑誌を購入して帰院した。 その際、Eは、周りの風景をきょろきょろと眺めるなどしていたものの、 特段気になる行動は見られなかった。(乙A2p44) (イ)Eは、午後7時30分頃、看護師に対し、もう退院させてほしい旨述べたが、切迫感はなく会話途中で笑顔も認められた。(乙A2p45)カ 10月30日Eは、H医師に対し、頭が抜けた感じがする、自分が自分ではないように感じるといった感覚が被告病院入院時から継続している旨訴え、落ち着かな いと話す等焦燥感が見られた。Eは、病歴聴取には応じ、K病院精神科に通院中、状態が改善しないこと、薬でおかしくなること等からいらいらして逃げ出したくなったため、待合室から逃げた後、死にたくなって近くの竹やぶに入り、山をうろうろして高い木に登ったが、落ちる勇気がなくてそのまま降りたことがあったといった話などをした。(乙A2p47) キ 10月31日Eは、H医師に対し、食欲不振を り、山をうろうろして高い木に登ったが、落ちる勇気がなくてそのまま降りたことがあったといった話などをした。(乙A2p47) キ 10月31日Eは、H医師に対し、食欲不振を訴えたほか、L病院を退院した後、抗うつ薬を服用していた間は、ほぼ毎日、寝ているときに幻聴等の症状があったが、薬をレキサルティ(抗精神病薬)に変更してからはそれがなくなった旨述べた。また、Eは、H医師に対し、原告Aが、心理検査終了後、翌週にで も病状説明を希望している旨を伝えた。(乙A2p54、55)ク 11月1日(ア)Eは、午後1時頃訪室した臨床心理士に対し、今日はずっと体調が悪い、体と顔がしびれている、さっきちょっと漏らしてしまった、しんどくて起き上がるのに時間がかかる、ご飯も全然食べられないなどと訴え、今日は 検査を受けられないと思うと述べた。(乙A2p60)(イ)Eは、午後2時頃、原告Aと面会したが、その際には落ち着いた様子で話をしており、再度訪室した臨床心理士に対して検査の予定をいつにするかなどと話しかけた。(乙A2p60)(ウ)Eは、I医師の診察に対し、四肢と顔の右側がしびれる、顎のしびれも 止まらない、昼は食欲もなかった、だるい感じもあって、昼間から寝込ん でいるなどと訴えた。I医師は、診察の結果、四肢顔面のしびれがあるが顔面運動・感覚に問題はなく、症状もこれまで出現したものにとどまっているため、経過観察としつつ、精神病症状の出現がないか注意を払っていく旨カルテに記載した。(乙A2p61)(エ)Eは、診察後も、看護師及びI医師に対し、右耳から頭にかけて、今ま でにない感じの痛みがずっとある、昼から調子が悪い旨を訴え、また、キーンという高い音とカリカリという骨がこすれるよう )(エ)Eは、診察後も、看護師及びI医師に対し、右耳から頭にかけて、今ま でにない感じの痛みがずっとある、昼から調子が悪い旨を訴え、また、キーンという高い音とカリカリという骨がこすれるような音が聞こえる、聴覚が低下している、しびれやだるさが続いている旨を訴えた。I医師は、疼痛時カロナール使用を指示した上、経過観察とし、翌日も症状が続くなら耳鼻科受診とすることとした。(乙A2p62、63) ケ 11月2日(ア)Eは、朝、I医師の診察に対し、右耳の痛みは弱くなったが、右顔面のしびれは残っている旨述べたほか、鴨川を散歩したいとして外出を希望した。I医師は、11月6日に妻への病状説明を行う予定であることをカルテに記載し、午後6時頃、Eに外出希望がある旨を引き継いだ。(乙A2 p65)(イ)Eは、午前中、H医師の診察に対し、昨日は全く眠れなかった、顔面のしびれがひどくなってきた、7月から腹部からのしびれがあり、10月には胃けいれんと診断されたが、入院してから悪化している、下の歯が小刻みに震える、などと述べた。その際、Eの表情はさえないが話し方は穏や かであった。(乙A2p66)コ 11月3日(ア)Eは、朝、看護師に対し、局部が硬い、起きてから精巣が固い、痛みはないがリンパが変、今までなかった症状である旨述べた。(乙A2p68)(イ)Eは、午前11時40分頃から、そわそわする、尿意があるが排尿がな い旨述べ、導尿が実施されたが蓄尿が少なく、不安の増強の可能性がある とされ、頓服薬が使用されたところ、投薬の1時間後頃にはちょっとましになった、これでご飯も食べられると述べた。(乙A2p69~71)(ウ)他方、Eは、原告Aに対しては、暗い表情で、朝食中に陰部のしびれを感じた後尿失禁し、看 ころ、投薬の1時間後頃にはちょっとましになった、これでご飯も食べられると述べた。(乙A2p69~71)(ウ)他方、Eは、原告Aに対しては、暗い表情で、朝食中に陰部のしびれを感じた後尿失禁し、看護師に伝えると、「えーっ」と引かれたとショックを受けた様子を見せ、昨日の夜から眠剤を飲んでも寝れない、追加のゾピ クロンを飲んでも寝れない、おなかも減らないし食べたくない、トイレもうまくできない、ご飯も食べられないし人間として生きる意味ある?一緒にいると不幸になるから離婚しようなどと述べた。 もっとも、同日の担当看護師は、本件事故後のヒアリングにおいて、尿失禁に関する発言はなかった旨述べており、被告病院の診療記録上も、同 日について失禁に関する記載はない。(甲6p28、29、乙A2)サ 11月4日(ア)Eは、病室を移された。(乙A2p72)(イ)原告Aは、午後9時49分頃、看護師に対し、Eの残尿感が続いているので、泌尿器科にコンサルテーションをしてもらえるかと尋ねた。(乙A 2p73)(ウ)Eは、原告Aに対し、病室を移されたことによって窓からの景色が見えなくなったことや被告病院医師ら及び看護師らについての不満を述べたほか、頭の中が変になっている、たぶん仕事はできない、自分と一緒にいたら不幸になるから別れよう、今までありがとう、さようなら等と述べた。 (甲6p29、30)シ 11月5日(ア)Eは、午前9時22分頃、昨日は残尿感があったが、今日は全くない、心因性のものであったとも思う旨述べた。(乙A2p75)(イ)Eは、午後0時21分頃、J医師に対し、眠れていない、手足がしびれ ている、尿と便のとき力が入らない、今朝は胃の辺りもしびれた、全体と も思う旨述べた。(乙A2p75)(イ)Eは、午後0時21分頃、J医師に対し、眠れていない、手足がしびれ ている、尿と便のとき力が入らない、今朝は胃の辺りもしびれた、全体と して調子は良くない旨述べた。 J医師は、現在までの検査で器質的原因は明らかでなく、訴えが多い背景には不安の強さもあると思われるとして、心理検査の結果を確認した上、主治医団で今後の方針を決定することとした。(乙A2p76)(ウ)午後2時頃、Eからの外出の希望があり、H医師及びJ医師の同伴の下、 20分程度の外出が行われることとなった。 E、H医師及びJ医師が、外出するために精神科の閉鎖病棟を出て、精神科の外来棟のホールに至ったところで、H医師が白衣を着替え、上着を取りに戻るためその場を離れた。 その後、Eは、J医師に対し、H医師を待っている間にトイレに行きた い旨申し出た。J医師は、これを承諾し、外来棟の本件トイレ付近まで同伴したが、本件トイレ内まで付き添うことはなく、同トイレの入口が見える位置のホール内に設置されたソファーに座って待機していた。 数分後にH医師が戻り、J医師と共に本件トイレ内を見に行くと、Eの姿はなく、Eが本件トイレの窓から無断離院したことが発覚した(本件事 故)。(乙A2p78、80、弁論の全趣旨)なお、J医師は、同日が精神科での研修初日であったが、本件事故までに、被告病院作成の「精神科神経科医員の業務について(2018 年度版)」(乙A6)に基づき、外出を制限されている患者の付添いで病棟外に出るときには、患者から離れないこと等のオリエンテーションを受けていた。 また、J医師は、Eは医療保護入院中であるので外出時には付添いを必要とする旨の申し送りを受けており、 の付添いで病棟外に出るときには、患者から離れないこと等のオリエンテーションを受けていた。 また、J医師は、Eは医療保護入院中であるので外出時には付添いを必要とする旨の申し送りを受けており、Eが入院に納得していないということは把握していたが、精神の安定している患者であると考えていた。(甲6p49)ス無断離院後の経過等 11月6日、F医師は、Eについて、明らかな自傷行為は認めておらず、 遁走様のエピソードはあるが、本人の記憶は保たれており解離症状とはいえず、(おそらく)回避的な傾向から衝動的に唐突な行動をとったと考えられるエピソードはある、入院後種々の身体症状の訴えは認めたが、明らかな希死念慮の訴えはなく、自傷のリスクが著しく高いとはいえないが、衝動的な行動が自傷行為に結びつくリスクはある、と評価した。 その後、F医師が原告Aに架電したところ、同原告から、Eが入院前のことを覚えていると言っていたのは嘘で、そう言った方が早く退院できると思った旨、面会の際に聞いたとの話があった。また、11月8日の電話の際に、原告Aは、11月4日に面会したとき、Eが、食べられないし生きている意味がないなどと発言した旨の話をした。(乙2p83、84、88) ⑶ 本件トイレの状況等ア本件トイレとJ医師が待機していたソファーの位置関係本件トイレは外来棟の玄関を入ったところにあるホールの西側にあり、J医師が待機していたソファーは同ホール内にある。同ホールは受付窓口、会計窓口等があり、誰もが出入りできる場所となっている(証人M精神保健福 祉士、証人F医師)。 本件トイレの入口は、外来棟のホールから通路を少し入った突き当りの左右に、右側(北側)が男性用、左側(南側)が女性用に分かれて扉が向かい なっている(証人M精神保健福 祉士、証人F医師)。 本件トイレの入口は、外来棟のホールから通路を少し入った突き当りの左右に、右側(北側)が男性用、左側(南側)が女性用に分かれて扉が向かい合う形で設置されている。J医師が待機していた3人掛けソファーは、本件トイレの出入口の間の西側壁から約6.65m(ソファーの西端)~8.4 m(ソファーの東端)の位置に、北向きに置かれている。 なお、同ソファーから本件トイレの入口は確認できるが、入口扉が開いていても本件トイレの内部は見ることができず、本件トイレ内にいる者の動静を認識することはできない。(甲6p32、弁論の全趣旨)イ本件トイレの窓の設置状況 本件トイレの窓は、建物西側の外壁にあり、横開きで90度まで開扉可能 である。窓の横幅は62cm、縦幅は150cmで、高さは本件トイレの床から99cm、建物外の地面から167cmである。(乙A8、甲20、弁論の全趣旨)⑷ 精神科医療に関する医学的知見ア離院リスク、自殺リスクの評価に関する知見 (ア)日本精神神経学会精神保健に関する委員会作成の「日常臨床における自殺予防の手引き」(甲12p7、13)a 社会生活を送る中で、自殺の危険因子に対して保護因子が不足する場合に、例えば自殺念慮を抱くというハイリスクな状態となり、自殺の危険性を有するに至ると考えられる。 自殺の危険因子としては、個人的因子(過去の自殺企図、精神疾患、絶望感、大きな身体的または慢性的な疾患など)、社会文化的因子(支援を求めることへのスティグマなど)、状況的因子(失業、関係性又は社会性の喪失、自殺手段への容易なアクセスなど)があり、保護因子としては、家族の支援に対する強い結びつきな など)、社会文化的因子(支援を求めることへのスティグマなど)、状況的因子(失業、関係性又は社会性の喪失、自殺手段への容易なアクセスなど)があり、保護因子としては、家族の支援に対する強い結びつきなどがある。 b 自殺念慮の評価につき、評価の基本は患者の訴えを真摯に聞くことであり、繰り返し確認することも必要であること、患者は心理的に追い詰められていても「大丈夫です」と返答する場合があるところ、症状が重篤なために自殺念慮を否定する場合もあり、患者の言葉を鵜呑みにするのは危険である。患者が自殺念慮を否定している場合でも①自殺念慮を 表面上否定している、②自殺念慮を表出できない、③自殺念慮を確認できない状態である可能性も検討する。 (イ)日本精神科救急学会作成の「2009年12月9日版精神科救急医療ガイドライン⑶(自殺未遂者対応)」(甲17p20、31)a 主要な危険因子として、過去の自殺企図・自傷行為歴、職業問題、身 体疾患の罹患及びそれらに対する悩み、自殺につながりやすい精神疾 患・心理状態・性格等がある。 b 自殺の危険性は変動するため、自殺念慮の評価や危険因子の評価を継続的に繰り返すことが大切である。特に、外出、外泊、退院等の治療環境の変更や精神状態の変化があった場合、ライフイベントが出現した場合などが再評価を行う時期であると考えられる。 (ウ)被告病院事故調査委員会作成の「2019年5月24日付け医療事故調査報告書」(甲6)患者が、観察上、落ち着き問題ないとみられる状態で、自分の意志で症状を隠す時には、医療者であってもその症状を容易に見抜くことはできない。(甲6p41) (エ)その他の知見一般に身体症状を伴ううつ病は、そうでないうつ病と比較すると衝動 の意志で症状を隠す時には、医療者であってもその症状を容易に見抜くことはできない。(甲6p41) (エ)その他の知見一般に身体症状を伴ううつ病は、そうでないうつ病と比較すると衝動的な自殺のリスクは低くないとはいえるが、実際に自殺のリスクがあるかどうか、あったとしてその程度については、患者の状態から類推するほかない。(乙B3p1) イ無断離院に関する医学的知見(ア)精神科の入院患者のうち、病識に欠ける者は、治療等の必要がないと考え、無断離院しやすい。(証人F医師)(イ)被告病院事故調査委員会作成の「2019年5月24日付け医療事故調査報告書」(甲6) a 離院した事態をもって直ちに自殺リスクがあるとはいえず、離院が治療への抵抗や同意できない状態であると考えれば、自殺のリスクとは分けて検討すべきである。(甲6p43)b 精神科患者の離院は、重大なリスクとみなして共有し、注意喚起することが必要である。精神科における離院の定義は幅が広く、職員が少し 目を離した隙に、患者の姿が見えなくなるような場合、患者本人は離院 するつもりでなかったとしても、離院とみなす認識を持つことが求められるほどの重大性がある。(甲6p45、52)c 一般的に精神科で求められる「患者から離れない」とは文字どおり患者から離れない付添いを意味する。(甲6p49、51)⑸ 被告病院のマニュアル等の記載 ア被告病院の無断離院時対応マニュアル(乙A4、5)(ア)被告病院の無断離院時対応マニュアルには、無断離院の要因として、「病識に乏しく、入院の理由が理解できないため退院の希望が強い」、「自由に行き来できないことに対し不満を抱き、また、閉じ込められているという意識が強く、入 対応マニュアルには、無断離院の要因として、「病識に乏しく、入院の理由が理解できないため退院の希望が強い」、「自由に行き来できないことに対し不満を抱き、また、閉じ込められているという意識が強く、入院環境そのものや疾患による不安が強い。このような患者 が離院する危険性が高い。」との記載がある。 (イ)上記マニュアルには、無断離院の対策として「無断離院の恐れのある患者情報を多職種で共有し、離院防止に努める。」、「医療保護入院中の患者が本館に他科受診や検査に行くときには、入院他科依頼表を『精神保健福祉法により行動制限中です』とかかれた紙と共にクリアファイルはさみ、そ れを持って出棟する。出棟に付き添うスタッフは患者の側からはなれないようにする。」との記載がある(なお、平成30年2月に改訂された乙A5には後段の記載が欠落しているが、修正しようとして、意図せず脱落したままとなったものであり、医師向けのマニュアルには記載されていた。(甲6p49))。 イ被告病院の「精神科神経科医員の業務について(2018 年度版)」(乙A6、以下、上記アのマニュアルと併せて「被告病院マニュアル等」という。)患者の付添いについて「外出を制限されている患者さんが西病棟を出る必要がある時は医員もしくは研修医が付き添う必要がある。付添中は患者さんから離れない。病棟外で患者さんの付き添いを他のスタッフに引き継ぐ際に はしっかり確認をとること。(重要)」と記載されている。 2 無断離院防止義務としての付添義務違反(争点3)について本件事案の内容に鑑み、争点3につき、まず判断する。 ⑴ア Eは、医療保護入院患者であり、医学的に入院強制が必要とされた患者であったことからすると、一般的に、無断離院等の危険行動に及ぶ危 て本件事案の内容に鑑み、争点3につき、まず判断する。 ⑴ア Eは、医療保護入院患者であり、医学的に入院強制が必要とされた患者であったことからすると、一般的に、無断離院等の危険行動に及ぶ危険性があったといえる。もっとも、精神病院における閉鎖処遇下の患者であっても、 患者ごとにその病状は様々であり、病状の内容・程度により必要となる措置にも差異があるといえるから、被告病院が、Eについて無断離院等の危険行動を防止するための具体的な措置を講じるべき注意義務を負うというためには、本件事故当時のEの病状その他の言動及び本件事故当時の様子を踏まえて判断する必要があるというべきである。 イそこで、前記認定事実に基づき、Eの被告病院入院時、入院後の病状、本件事故当時の状況等を検討するに、以下の点を指摘することができる。 (ア) Eは、被告病院入院前、K病院において希死念慮を伴ううつ病と診断され、病状が不安定で今後も予断を許さないとされ、自責的な様子もみられた(認定事実⑴ク(イ))。 なお、この点につき、被告は、10月22日付の診療情報提供書(乙A1)には、9月21日の診察時は希死念慮を伴ううつ病と判断されたが、その後、精神病圏の疾患と考えてサインバルタ(抗うつ薬)からロナセン(非定型抗精神病薬)に処方薬が変更されており、希死念慮を伴ううつ病との診断は変更されていると主張し、上記提供書は、傷病名を「精神病圏 の精神疾患の疑い」と記載していることが認められるが、上記提供書記載の経過をみると、9月21日の診察時の所見(希死念慮を伴ううつ病)をもとにL病院に医療保護入院し、その後数日で退院したが、症状が再度悪化し投薬処方を変えて様子を見ている中で被告病院へ紹介されたもので、10月22日時点では一時の自殺念慮や混 希死念慮を伴ううつ病)をもとにL病院に医療保護入院し、その後数日で退院したが、症状が再度悪化し投薬処方を変えて様子を見ている中で被告病院へ紹介されたもので、10月22日時点では一時の自殺念慮や混乱は軽減していたものの、病状 が不安定で今後も予断を許さないとされ、Eが自責的になっていること等 の病状説明に基づき、被告病院へ紹介されていることからすると、9月21日以降大きな病状変化が生じていたとは認め難い。 (イ) Eには、病識がなく、被告病院における入院治療に対して拒否的な態度であった(認定事実⑵ア(ア))。病識に欠ける者は、治療等の必要がないと考え、無断離院しやすいとされる(同⑷イ(ア))。 (ウ) Eは、被告病院への入院初日である10月23日に、家族同伴外出可とする行動制限を受けている中で、妻を同伴者とする外出の際、本件トイレの窓から脱出し、病院敷地外で発見された。Eに無断離院があった経緯を受けて、医師・看護師同伴の場合外出可へと行動制限が強化された(認定事実⑵ア(イ))。 (エ) 10月24日には出入り業者の後ろに続いて病棟を出た(認定事実⑵イ(ウ))。 (オ) 10月27日、廊下の窓を開けて顔を外に出そうとしたり、ライトコート内を何度ものぞいていたことがあり、離院リスクが高い、突発的な行動も予測されるため、不審な行動がないかモニターで注意し観察する必要 があると判断された(認定事実⑵エ)。 (カ) 10月30日、H医師の病歴聴取の際、Eは、K病院精神科通院時の話として、薬でおかしくなること等からいらいらして逃げ出したくなったため、待合室から逃げた後、死にたくなって近くの竹やぶに入り、高い木に登ったが、落ちる勇気がなくそのまま降りた旨を話した(認定事実⑵カ)。 (キ) と等からいらいらして逃げ出したくなったため、待合室から逃げた後、死にたくなって近くの竹やぶに入り、高い木に登ったが、落ちる勇気がなくそのまま降りた旨を話した(認定事実⑵カ)。 (キ) 11月1日、I医師の診察の際、四肢と顔の右側のしびれ、顎のしびれ、だるい感じ等を訴え、顔面運動・感覚には問題はないとされたものの精神病症状の出現がないか注意を払う必要があるとされた。Eは、その後も右耳から頭にかけて今までにない感じの継続的な痛みを訴え、同月2日から4日にかけても、顔面の痺れ、局部の硬さや排尿困難、残尿感等を訴 えており、不安の増強が疑われた(認定事実⑵ク(ウ)(エ)、同ケ、コ、 サ)。 (ク) 本件事故当日、Eは、不眠、手足のしびれ等があり、全体として調子は良くない旨訴えていたが、現在までの検査で器質的原因は明らかではなく、訴えが多い背景には不安の強さもあると考えられた(認定事実⑵シ(イ))。 ウ以上に認定した被告病院入院前の状況(9月21日に希死念慮を伴ううつ病と診断され、病状が不安定で予断を許さない状態とされた状況から大きな病状変化があるとは認め難い状況で被告病院入院に至った)、被告病院入院後の経緯・状況(病識がなく入院に拒否的で、入院初日には、本件事故と同様本件トイレの窓から脱出し無断離院をしており、その後の行動からも離院 リスクが高い、突発的な行動も予測されるとして、注意して観察する必要があるなどとされた)、本件事故当日の状況(不眠や体調の不良の訴えがあり、不安が強いことが確認された)を総合考慮すると、本件事故当時、Eには病状が不安定で、不安が強い状況が認められ、衝動的な自傷・自殺のリスクが相応にあるとともに無断離院等の危険行動に及ぶ具体的な危険性があった といえ、被告病院 合考慮すると、本件事故当時、Eには病状が不安定で、不安が強い状況が認められ、衝動的な自傷・自殺のリスクが相応にあるとともに無断離院等の危険行動に及ぶ具体的な危険性があった といえ、被告病院においてもこれを予見することが可能であったということができる。 そして、無断離院やその危険性のある行動をとっていたこと等を含むEの状況に加え、被告病院マニュアル等において、患者の出棟に付き添うスタッフは患者の側から離れないようにしなければならないとされていたことを 踏まえると、本件事故当時、閉鎖病棟外でEに付き添うに際し、H医師及びJ医師は、Eの側を離れないようにすべきものであり、随時本件トイレの中の様子をうかがうなど本件トイレ内にいるEの動静を確認することができる状態で付添いをすべき義務を負っていたというべきであるし、H医師において一時的に付添いを離れるのであれば、J医師が精神科における研修初日 の研修医であることに鑑み、Eの上記入院時の状況等を伝えるなどして、E の動静を確認できる状態で付添いをすべきことを指導すべき義務を負っていたといえる。 エところがH医師は、J医師に対して上記指導をすることなく付添いから離れ、かつ、J医師は、Eの動静を確認することができない位置で数分程度待機していたというのであるから、H医師及びJ医師は、上記義務を怠った注 意義務違反があるといわざるを得ない。 ⑵アこれに対し、被告は、本件事故当時Eの症状は安定し、離院リスクも軽減していた上、自傷他害のおそれは低く、仮に離院しても重大な結果が生じる可能性は低かったことからすると、医師同伴の外出中に本件トイレを利用するときのEの動静を監視する義務はなかった旨主張し、被告提出の意見書 (乙B2、B3。以下「被告意見書」という。)に 生じる可能性は低かったことからすると、医師同伴の外出中に本件トイレを利用するときのEの動静を監視する義務はなかった旨主張し、被告提出の意見書 (乙B2、B3。以下「被告意見書」という。)にはこれに沿う部分がある。 しかし、Eには、本件事故当時、無断離院等の危険行動に及ぶ具体的な危険性があり、自傷・自殺リスクも相応に認められることは前記⑴のとおりである。 自傷・自殺のリスクに関して補足するに、診療情報提供書(乙A1)に記 載のとおり、Eが、9月19日死にたくなって近くの竹やぶに入り、高い木に登ったが落ちる勇気がなくてそのまま降りた旨述べていたこと、9月21日K病院において希死念慮を伴ううつ病と診断されたこと、その後も病状が不安定で今後も予断を許さないとされていたことからすれば、被告病院への入院時点において、Eに、自傷・自殺のリスクが相応にあったことは否定し 難い。そして、Eは、被告病院入院後も、多様な身体症状を訴え続けており、突発的な行動に出る危険性が指摘され、本件事故当時まで、不安の増強も考えられていた状態であり、Eの状態が安定していたとか、寛解していたとはいえない。なお、Eは10月29日に医師の付添いにより30分ほどの外出ができているが、Eの上記病状経過からすると、上記の認定に影響を及ぼす ほどの事情であるとは解されない。また、本件事故当時は、被告病院入院か ら約2週間しか経過しておらず、病歴聴取を終えた段階であり、今後さらに症状の把握に努め、治療方針等を決定する予定で、病名等の診断は未了の段階であり、現に、本件事故当時も未だEの行動制限の程度は緩和されていなかった。 これらの点を踏まえると、本件事故当時、Eの自傷・自殺リスクがほとん どない状態であるとか、自傷・自殺のリスクを念頭に置い 、現に、本件事故当時も未だEの行動制限の程度は緩和されていなかった。 これらの点を踏まえると、本件事故当時、Eの自傷・自殺リスクがほとん どない状態であるとか、自傷・自殺のリスクを念頭に置いた処置が不要といえるような状態であったとまでは認められない。 以上によると、本件事故当時のEの状態が、行動制限に従って付添いを行う医師において、Eの動静を確認することができない方法による付添いが許容されるほどの状態であったとは認め難く、付添義務に関し、被告病院マニ ュアル等に沿った前記⑴認定の内容から緩和される状況であったとはいえないから、被告の上記主張は採用することができない。 イ被告意見書において、付添いの方法について、本件トイレの中まで付添いを行った場合のEの不快感等を考慮すれば、本件トイレの外で待機することは適切な付添方法であったと考えられる旨の指摘がある。 しかし、本件事故当時、Eの動静を確認することができない方法による付添いが許容されるほどの状態であったとはいえないことは上記ア認定のとおりであり、Eに一定の不快感等を与え得るとしても、付添いの必要性、重要性を考慮すれば、Eの動静を確認することができる状態での付添義務を課すことが不当であるとはいえない。 ウまた、被告意見書には、精神科に入院する患者による無断離院をなくそうとすると強度な行動制限を課すことになり開放医療の必要性に反するとの指摘がある。 しかし、Eは閉鎖処遇で行動制限を課されている患者であり、本件で問題となる注意義務は、Eに無断離院等の危険行動に及ぶ具体的な危険性、自傷・ 自殺のリスクが相応にあるといえる状況下において、医師同伴の外出時に、 以前に本件トイレの窓から脱出したことがあることを含む病状や に無断離院等の危険行動に及ぶ具体的な危険性、自傷・ 自殺のリスクが相応にあるといえる状況下において、医師同伴の外出時に、 以前に本件トイレの窓から脱出したことがあることを含む病状や行動歴を踏まえ、Eが本件トイレを利用する際の付添の在り方に関する注意義務であって、既に課されている行動制限の適切な実施を求めるものにすぎず、より強度な行動制限を課すことを求めるものではないから、上記指摘は本件に係る判断を左右しない。 ⑶ なお、以上の認定判断に関し、被告は、被告病院のスタッフは、Eが被告病院への入院初日に本件トイレから離院したことは共有していたが、同トイレの窓から離院したことは知らなかった旨主張し、M精神保健福祉士は、当時、原告AからEが本件トイレから逃げたと聞いたのみで、その余の情報については聞いていない旨証言する。 しかし、原告Aは、M精神保健福祉士に対して、買い物の帰りに、Eが本件トイレから出てこないので確認したところ、Eが本件トイレの窓から離院したと伝えた旨、相反する供述をする。そして、被告病院の診療記録(乙A2p6)には、入力者をM精神保健福祉士として、「妻と一緒に買い物に行った帰り、外来のトイレに行ったが中々トイレから出て来なかった為、不信(ママ)に思っ た妻がトイレを確認。本人はトイレにいなかった。『逃げ出した~。』と妻が言い病院の外を探しに行った。」という記載があるところ、本件トイレの外で待機していた妻がトイレの中を確認すると、いなかったとのことで、本件トイレの窓の設置状況等を踏まえれば、トイレの出入口を通らずに外出した可能性をうかがわせる記載である。原告Aの上記供述は、かかる診療記録の記載にも沿 うものであり、その内容としても特に不自然な点はなく、信用することができる。 イレの出入口を通らずに外出した可能性をうかがわせる記載である。原告Aの上記供述は、かかる診療記録の記載にも沿 うものであり、その内容としても特に不自然な点はなく、信用することができる。 他方、M精神保健福祉士の証言に関しては、診療記録には買い物の帰りに離院が発生したといった情報等も記載している点で、現時点での上記証言は、診療記録の記載に照らしても客観的正確性に疑問が残る。また、無断離院が精神 科において、重大なリスクとみなして共有し注意喚起することが必要とされる (認定事実⑷イ(イ))ことからすると、無断離院を避けるための行動制限下で無断離院が発生し、患者を捜索する際には離院の具体的状況等について聴取をするのが自然と解されるし、原告Aが伝えないということも考えにくい。 そうすると、前記M精神保健福祉士の証言部分は、信用性の認められる原告Aの供述に照らし、採用できないといわざるを得ない。 したがって、Eが、被告病院の入院初日に、本件トイレの窓から無断離院をしたことは、被告病院のスタッフに報告されており、共有し得た事実というべきであり、前記認定判断が前提とする同事実に対する被告の上記主張は採用できない。 もっとも、診療記録の記載からも、行動制限下で同伴者のいる外出時に外来 棟のトイレに行き、同伴者がEの動静を確認しにくい状況を利用して無断離院をしたとの情報が被告病院のスタッフに共有されていたことは明らかである。 かかる情報を前提として、Eに対して、医師・看護師同伴の場合のみ外出可とする行動制限が定められ、そこで要求される付添義務の内容は、前記認定のとおりと解されるところであって、被告病院において、本件トイレの窓から離院 したとの離院方法が明確に共有されていなかったとしても、本件に が定められ、そこで要求される付添義務の内容は、前記認定のとおりと解されるところであって、被告病院において、本件トイレの窓から離院 したとの離院方法が明確に共有されていなかったとしても、本件における付添義務の具体的内容が異なるとはいえない。 原告らは、上記離院方法に関する情報共有義務違反も主張するが、無断離院防止義務の一内容として、付添義務の内容の前提となるものと解されるから、別途評価すべきものとはいえない。 3 自殺防止義務としての自殺リスク評価検討義務違反(争点1)について原告らは、Eが被告病院入院当初から自殺リスクが高いとうかがわれる状況にあったことを前提に、被告病院医師らには、Eの自殺念慮の有無を確認し、過去の自殺企図歴、うつ病を含む精神疾患の可能性、離院リスクの高まり、その他の危険因子に関する情報を適切に収集し、それらの情報を踏まえて自殺リスクの評 価検討を継続的に行う義務があったにもかかわらず、これを怠ったと主張する。 しかし、Eに自傷・自殺のリスクが相応にあったことは前記2のとおりであるが、前記認定事実によれば、被告病院入院当時、Eは、同病院入院前にみられた一時の自殺念慮や混乱については、その程度が軽減した状態であったとみられ、被告病院入院後におけるEの一連の言動をみても、具体的な自殺の危険性が切迫していたとか、危険性が高まっていたとうかがわせるほどの言動まではみられな い。したがって、上記原告らの主張は前提を欠き、採用できない。 4 無断離院防止義務(付添義務)違反とEの死亡との相当因果関係(争点4)について⑴ 被告は、自殺の具体的かつ切迫した危険がない場合は、Eが無断離院をしたからといって、自殺することを予見できないから、無断離院防止義務違反と結 果発生(自殺)と 果関係(争点4)について⑴ 被告は、自殺の具体的かつ切迫した危険がない場合は、Eが無断離院をしたからといって、自殺することを予見できないから、無断離院防止義務違反と結 果発生(自殺)との間に相当因果関係はないと主張する。 そこで、本件事故当時のEの状態に鑑み、被告病院医師らの上記注意義務違反により無断離院したことと自殺との間に相当因果関係が認められるか検討する。 Eは、被告病院入院の約1か月ほど前に、希死念慮を伴ううつ病と診断され てL病院に医療保護入院したことがあり、その際は、入院後落ち着いていると判断され数日で退院したが、病状が再度悪化し、薬による悪影響の可能性や見立ての変更などを行う状況で、家族には病状は不安定で今後も予断を許さない、薬物調整には時間が掛かる、Eは自責的になっていることなどの説明がなされ、被告病院が紹介されていること(認定事実⑴)からすると、被告病院入院時に は症状は相当不安定であったといえる。そして、被告病院入院後も、前記2⑵のとおり、Eの状態は特に安定していたとか、寛解していたといえる状態ではなく、突発的、衝動的な自傷・自殺のリスクは相応にある状態であった。 このようなEの状況に加え、Eが無断離院をし、直ちに同人を発見、確保できない場合には、被告病院の看護下を離れたことで適切な治療等を受けられな いことや環境変化等による症状の悪化等が生じ得るといえるし、行動が何ら制 限されていないことから自殺も容易となるといえる。 ⑵ 以上のEの被告病院入院時の状況、その後本件事故までの経過の中で症状が安定したとか寛解したなどとはいえないこと、無断離院後の病状悪化の可能性、自殺の容易性等を踏まえると、Eが無断離院をして自殺に至る可能性は十分に認められ、被告病院医師らに 事故までの経過の中で症状が安定したとか寛解したなどとはいえないこと、無断離院後の病状悪化の可能性、自殺の容易性等を踏まえると、Eが無断離院をして自殺に至る可能性は十分に認められ、被告病院医師らにおいてもかかる経過について予見することは可能 であるし、予見すべき範囲内のものといえる。 したがって、被告病院医師らの付添義務違反とEの自殺との間には相当因果関係があると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。 5 過失相殺等(争点5)について前記認定事実によれば、Eは、被告病院への入院時、希死念慮を伴ううつ病と の診断を受けた経緯があり、病状が不安定で予断を許さない、自責的になっているとされていたものの、自殺の具体的な危険が切迫したという状況にはなかったこと、本件事故当時、まだ被告病院入院から約2週間程度経過したところで、被告病院においては、Eの治療方針等につき、今後決定していく予定とされ、病名等の診断は未了の段階であったこと、E自身、早く退院するために医療関係者 らに意図的に嘘をついていたなど、Eの病状の把握が困難な面もあったといえること(かかる嘘をついていたことや原告Aに対するメッセージ等について、原告Aも、切迫した危険の徴候として被告病院のスタッフに報告することなどはしておらず、上記の治療段階に照らせば、原告Aからの情報収集をしていなかったことが被告病院医師らに直ちに帰責されるべきものとまではいえない。そう すると、上記の事情は、被告病院医師らによる病状把握が困難であった事情として、被告の損害分担を軽減する事情と解するのが相当である。)、そして、Eの死は、上記状況の下で、Eが自殺に及んでしまったことによって生じたものであることなどの事情が認められる。 これらの事情に鑑みれば、損害の公平な分担を趣 る事情と解するのが相当である。)、そして、Eの死は、上記状況の下で、Eが自殺に及んでしまったことによって生じたものであることなどの事情が認められる。 これらの事情に鑑みれば、損害の公平な分担を趣旨とする民法722条2項、 418条の法理を類推適用し、上記各事情その他本件に顕れた一切の事情を考 慮した上、原告らの損害のうちその5割を減額して、被告に負担させるのが相当である。 6 E及び原告らの損害(争点6)について⑴ Eの損害ア逸失利益 (ア)原告らは、Eの基礎収入に関し、精神疾患発症前の平成29年度の年収を基礎とすべきである旨主張する。 (イ)しかし、前記認定のとおりの、Eが精神疾患を発症した平成30年2月1日から本件事故に至った同年11月5日までの間のEの病態や病状の推移等を踏まえると、本件事故当時、精神疾患が寛解して精神疾患発症前 と同程度の収入を安定的かつ継続的に得る見込みがあったと認めることはできない。他方で、Eは、本件事故時点において精神疾患を発症してから1年を経過しておらず、寛解による就労の可能性が低かったともいい難い。 これらの事情を総合し、就労可能年数を通じ、平均して精神疾患発症前 の平成29年度の収入額516万5040円(甲15)の50%相当額を基礎収入とするのを相当と解する。 そして、Eの労働能力喪失期間を24年(平成30年11月当時43歳)としたときのライプニッツ係数(中間利息控除率を年5%とするもの)は13.7986であり、Eの生活状況等に照らし生活費控除率を30%と して算定すると、Eの逸失利益は2494万4612円(1円未満切捨て。 以下同様)となる。 (計算式)516万5040円×50%×(1-30%)×13.7986イ慰謝 を30%と して算定すると、Eの逸失利益は2494万4612円(1円未満切捨て。 以下同様)となる。 (計算式)516万5040円×50%×(1-30%)×13.7986イ慰謝料被告病院医師らの過失態様、Eの病状及び自殺による死亡の結果等の本件 事故態様に加え、Eの身上関係、原告ら固有の慰謝料に関する後記認定等、 その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮し、E自身の死亡慰謝料として2000万円を認めるのが相当である。 ウ上記合計額以上の合計は、4494万4612円となる。 ⑵ 原告ら固有の損害 ア原告Aの損害(ア)葬儀費用弁論の全趣旨により、葬儀費用として150万円を相当因果関係のある損害と認める。 (イ)慰謝料 前記⑴イにおける認定額その他の各事情に加え、夫であるEを失った原告Aの心情等(甲23、原告A本人)など諸般の事情を考慮し、近親者固有の慰謝料として、原告Aにつき200万円を認めるのを相当と解する。 (ウ)小括以上の合計は350万円となる。なお、弁護士費用については後述する。 イ原告B、原告C及び原告Dの損害前記⑴イにおける認定額その他の各事情に加え、原告B、原告C及び原告Dが、中学1年生ないし小学3年生の時に父を失った心情等(甲24,25)など諸般の事情を考慮し、近親者固有の慰謝料として、原告B、原告C及び原告Dにつき各100万円を認めるのが相当である。なお、弁護士費用につ いては後述する。 ⑶ 原告らが請求しうる損害額ア Eの相続Eの死亡により、原告Aは2分の1の割合で、原告B、原告C及び原告Dは各6分の1の割合で、Eを相続した。 は後述する。 ⑶ 原告らが請求しうる損害額ア Eの相続Eの死亡により、原告Aは2分の1の割合で、原告B、原告C及び原告Dは各6分の1の割合で、Eを相続した。 計算の便宜上、前記⑴ウ記載の損害合計額4494万4612円を上記割 合により各原告の損害額として割り当てると、原告Aにつき2247万2306円となり、原告B、原告C及び原告Dにつき各749万0768円となる。 イ原告Aの損害額(ア) 前記5(過失相殺等)による5割相当額控除 上記のとおりEの損害のうち原告Aの相続分に応じた2247万2306円に、固有の損害額350万円を加えた合計2597万2306円から、5割相当額を控除すると、損害額は1298万6153円となる。 (イ) 弁護士費用前記認定に係る損害額、本件事案の内容及びその他本件に顕れた一切の 事情を考慮し、本件訴訟の提起追行に要した弁護士費用のうち、129万9000円を損害として相当と認める。 (ウ) 合計額以上の合計額は、1428万5153円となる。 ウ原告B、原告C及び原告Dの損害額 (ア) 前記5(過失相殺等)による5割相当額控除上記のとおりEの損害のうち原告B、原告C及び原告Dの相続分に応じた各749万0768円に、固有の損害額各100万円を加えた合計849万0768円から、5割相当額を控除すると、損害額は各424万5384円となる。 (イ) 弁護士費用前記認定に係る損害額、本件事案の内容及びその他本件に顕れた一切の事情を考慮し、本件訴訟の提起追行に要した弁護士費用のうち、各42万5000円を損害として相当と認める。 (ウ) 合計額 記認定に係る損害額、本件事案の内容及びその他本件に顕れた一切の事情を考慮し、本件訴訟の提起追行に要した弁護士費用のうち、各42万5000円を損害として相当と認める。 (ウ) 合計額 以上の合計額は、各467万0384円となる。 7 小括以上によれば、原告らの被告に対する使用者責任による損害賠償請求の一部については理由があり、被告は、原告Aに対し、1428万5153円及びこれに対する不法行為の日である平成30年11月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負い、原告B、原告C及び原告Dに 対し、各467万0384円及び前同様の遅延損害金の支払義務を負うというべきであるが、その余の請求は、いずれも理由がない。 なお、債務不履行による損害賠償請求により認められる損害額は、上記認容額を上回ることはないから、判断を要しない。 第4 結論 よって、原告らの請求は、被告に対し、原告Aについて1428万5153円及びこれに対する不法行為の日である平成30年11月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告B、原告C及び原告Dについて各467万0384円及び前同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し,その余はいずれも理 由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官池町知佐子 裁判官鈴木紀子及び裁判官山田覚己は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官池町知佐子 及び裁判官山田覚己は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官池町知佐子

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