【DRY-RUN】主 文 原判決中、被控訴人らに関する部分を取消す。 被控訴人らの請求を棄却する。 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。 事 実 控訴人は、主文同旨の判決を求め、
主文 原判決中、被控訴人らに関する部分を取消す。 被控訴人らの請求を棄却する。 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。 事実 控訴人は、主文同旨の判決を求め、被控訴人らは「本件控訴を棄却する。控訴人は、被控訴人P1、同P2、同P3に対し、金一六〇万四、四五二円及びその余の被控訴人らに対し各別紙「個人別請求金額表」記載の金員ならびにこれに対する昭和三四年九月二〇日から支払済みまで年五分の割合いによる金員の支払いをせよ。訴訟費用は、第一、二審とも、控訴人の負担とする。」との判決並び仮執行の宣言を求めた。 当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、次につけ加えるほか、原判決事実摘示(ただし、原判決書添付別紙五「怠業期間(昭和三四年五月一九日以降同年六月一日まで)における職場別生産能率算出表」中(一)の「受註先名及び製作機器名」欄の第一行目に「治池栓」とあるを「溜池栓」に、同表(二)の「作業者名」欄の第六行目に「○○○」とあるを「○○○」に、同じく第一四行目に「○○○○」とあるを「○○○○」に、同じく第一八行目に「○○○○」とあるを「○○○○」に、同表(三)の「製作の仕様」欄の第二区劃末尾に「高×二×巾」とあるを「高×二+巾」に改める。)のとおりであるから、ここにこれを引用する。 一、事実上の陳述(一) 被控訴人らは、次のように述べた。 (1) 原審の選定当事者たるP5は当審で訴を取り下げ、その資格を失つたので、別紙選定当事者目録記載の八〇名は、当審で改めて被控訴人P1、同P2、同P3を選定当事者に選定した。よつて、右選定当事者たる被控訴人らは控訴人に対し原判決添付別紙二の「賃金明細表」中末段の「三五日間の賃金」欄に掲げる前記選定者八〇名の賃金合計額金一六〇万四、四五二円、その余の被控訴人らは同欄に掲げる各 、右選定当事者たる被控訴人らは控訴人に対し原判決添付別紙二の「賃金明細表」中末段の「三五日間の賃金」欄に掲げる前記選定者八〇名の賃金合計額金一六〇万四、四五二円、その余の被控訴人らは同欄に掲げる各自己の賃金額に相当する金額とそれぞれこれに対する昭和三四年九月二〇日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 (2) 被控訴人らの請求の原因第一〇項(原判決書六枚目裏七行目から同八枚目表三行目まで)の主張は撤回する。 (3) 控訴人主張の後記(1)及び(2)の事実はすべてこれを争う。控訴人の右主張は誇張にすぎるか、または事実と著しく相違するものである。 (二) 控訴人は、次のように述べた。 (1) (暴力行為)被控訴人らの行なつた暴力行為ないしはこれに近い不当行為として、次の事実を追加主張する。 (イ) 昭和三四年五月一五日午后一時四〇分ごろ、機械工P6及び木工P7らは、就業時間中にもかかわらず、自己の職場を離なれ、非組合員の機械・倉庫班長P8を取り囲んで吊し上げ、職場の秩序を混乱におとしいれた。 (ロ) 同月一六日午後三時二〇分ごろ、組合代議員で機械工のP9が就業時間中会社構内でビラ配りを行なつたので、工務部長P11が同人に注意を与え保安室で事情を聴取していたところ、組合副執行委員長で機械工のP12、クレーン運転工のP13、前記P6、機械工のP14らは、各自、就業時間中の職場を離なれ他の組合員をも煽動して保安室前に集合し、保安要員の業務を妨害するばかりか、前記工務部長に対し、口々に罵詈を浴びせ、職場の秩序を混乱におとしいれた。 (ハ) 同月一九日午後三時三五分ごろ、組合執行委員で木工のP15は、工場内の組合員を煽動しその全員を職場から離脱させ、会社ないしは会社役員を誹謗する文言を記載した違法な組合ビラを剥がしていた た。 (ハ) 同月一九日午後三時三五分ごろ、組合執行委員で木工のP15は、工場内の組合員を煽動しその全員を職場から離脱させ、会社ないしは会社役員を誹謗する文言を記載した違法な組合ビラを剥がしていた前記工務部長及び保安係員を取り囲んで罵倒し、同人らを吊し上げ、職場秩序を混乱におとしいれ、また、同日終業後約二〇名の組合員が翌朝まで無届で会社構内に残留し、会社の施設管理の権限を踏みにじつた。 (ニ) 同月二〇日午前七時五〇分ごろ、組合員全員が会社事務所わきに集合してスクラムを組み、会社構内をジグザグでデモを行なつた際、前記P15及びP13はこれを煽動し、会社事務所内部に喚声を上げてデモ行進を行わせ、同事務所内での仕事を妨害し、職場の秩序を混乱におとしいれた。 (ホ) 同日午後〇時一五分ごろ、組合員全員が会社事務所わきに集まりジグザグデモをした後、社長宅の板塀を乱打し、再び前記P15及びP13の先導で事務所内に乱入し、執務中の常務取締役P16を取り囲こみ、床を踏みならしあるいは太竹で床板を突き鳴らすなど傍若無人の振舞をなし、職場の秩序を混乱におとし入れた。 (ヘ) 同日執行委員長で事務所職員のP5、前記P12、書記長で事務職員のP17、前記P15らは始業前より職員更衣室に携帯拡声器を持ち込み、就業時間であるかどうかを問わず、随時会社を誹謗する放送を行ない、従業員の執務並びに作業を著しく妨害した。 (ト) 同日終業後、組合員二〇数名が会社構内に残留し、会社からのしばしばの退去要求にもかかわらず、残留を強行し、会社の施設管理の権限を踏みにじつた。 (チ) 同月二一日昼休み後、保安係が控訴会社ないしその役員を誹謗する文言を記載した違法なビラを剥がしに廻つたところ、製罐工場所属の殆んどの組合員が持場を離なれて右保安係を包囲し、集団的圧力で保安係を威嚇して追 二一日昼休み後、保安係が控訴会社ないしその役員を誹謗する文言を記載した違法なビラを剥がしに廻つたところ、製罐工場所属の殆んどの組合員が持場を離なれて右保安係を包囲し、集団的圧力で保安係を威嚇して追い帰し、同人の職務を妨害する著しい不法行為を行なつた。 (リ) 同日午後の休憩時間後、前記P15の先導で組合員全員が会社事務所内に乱入し、前記P16、取締役P18らの周囲を包囲し、労働歌を高唱して威嚇し、職場の秩序を混乱におとしいれた。 (ヌ) 同日も前日同様前記P17、事務職員のP19らは拡声器を用いて会社を誹謗する放送を行なつて業務を妨害し、さらに同夜組合員二〇数名が会社構内に残留を強行し、会社の施設管理の権限をふみにじつた。 (ル) 同月二二日、製罐工のP20、前記P13らが会社及びその役員を誹謗する文言を記載した違法なビラの貼付を控訴会社の強い阻止にもかかわらず強行したので、前記P16、総務部長P21が証拠写真を撮ろうとしたところ、前記P15、製罐工のP22ら多数の組合員が実力でこれを妨害し、職場の秩序を混乱におとしいれた。 (ヲ) 同日、取締役P18、工務部長P11が工場内の作業巡視に廻るや各所より組合員が奇声を挙げ、手近な鉄板や機器類を甚だしく乱打して同人らを威嚇しその業務を妨害し、ことに見習工の兵主定明はスピンドルを肩にして通路に立ち塞がり同人らの巡視を妨害するなどして職場を混乱状態におとしいれた。 (ワ) 同日午後、前記P15は終業時にいたるまで、各工場内を徘徊して組合員の怠業煽動に当り、従業員の正常な業務遂行を妨害し、前記P16の現場巡視にあたつては拡声器を携帯して同人の身辺につきまとい、嫌がらせを行い、機会があればその通行を阻止しようとして、同人の業務を妨害した。 (カ) 同日も、前日同様前記P17や事務職員のP23らが就業時間中 あたつては拡声器を携帯して同人の身辺につきまとい、嫌がらせを行い、機会があればその通行を阻止しようとして、同人の業務を妨害した。 (カ) 同日も、前日同様前記P17や事務職員のP23らが就業時間中拡声器を用いて会社を誹謗する放送を行ない、業務を妨害した。 (ヨ) 同月二五日、保安係が作業場を巡視するため同所に立ち入るや組合員はそれぞれ鉄板をハンマーで打ち鳴らしてこれを威嚇し、保安係の業務の遂行を妨害した。 (タ) 同月二六日午前一〇時ごろ、前記P11が作業巡視を始めたところ前記P15はこれを妨害し、また同日午後四時三〇分ごろ、前記P18が仕上工場を巡視して仕上工P24にその怠業を注意したところ現場に居合せた組合員多数が、右P18を取り囲んで吊し上げを行ない、同人の業務を妨害した。 (レ) 同月二八日、前記P11並びにP18がそれぞれ工場内に巡視に出向くや組合員は随所で奇声を挙げて反抗的態度を示すばかりか、前記P15やP13らは組合員を集めて、吊し上げを行なおうとして、職場の秩序を混乱におとしいれた。 (ソ) 同月三〇日、組合員は同様に前記P18の巡視に対し嫌がらせを行ない多人数で同人を取り囲こみ吊し上げを行ない、同人の業務を妨害した。 (ツ) 同年六月一日、前記P16、P18、P21、P11らが、それぞれ、正常な業務に従事するよう組合員に指示し巡視に廻つたところ、組合員全員が同人らをそれぞれ取り囲み、多数の圧力で威嚇し、罵詈雑言を浴びせその混乱と無秩序振りは筆舌に尽し難い状態を作り、同人らのそれぞれの業務を妨害した。 (2) (怠業行為)被控訴人らは、右(1)の暴力行為等を意識的に行ない職場を混乱させ、その結果職場に怠業的な状態を惹起させたが、さらに、次のような怠業行為を行なつた。 (イ) 昭和三四年五月二二日の午後には、作業場の組合員は、ほ 、右(1)の暴力行為等を意識的に行ない職場を混乱させ、その結果職場に怠業的な状態を惹起させたが、さらに、次のような怠業行為を行なつた。 (イ) 昭和三四年五月二二日の午後には、作業場の組合員は、ほとんど怠業の態度を露骨に示し、とくに製罐部のほとんどの者は作業位置につかず、三々五々たむろして腰を下し、雑談に時を過ごしている状態であつた。 (ロ) 同月二三日には終日製罐部を最大とする全般的な怠業が著しくなり、会社職制による作業巡視を強化したところ、さきに述べたように(原判決事実摘示中控訴人の主張二の(二)の(1)の(ハ))これらの者に対する暴行事件が発生したのであるが、このことは、その日の怠業がいかに計画的かつ巧妙に行われたかを示すものである。 (ハ) また同日午後〇時四〇分の始業のサイレン後、事務職員の組合員らはP19、P25らの煽動により、全員事務机の前に立つたままで約四〇分にわたり事務関係の執務の怠業行為を行なつた。 (ニ) 同月二五日、組合員のほとんどは仕事に従事せず、倉庫部のP26、P13、P27らは始業直後から約三〇分間ほども塗装場で雑談に時を過ごし、引続いてP28を加えて塗装台に腰をかけて作業台を叩きながら労働歌を高唱する有様で、他の各部においてもこれと同様に各所で作業につかずそれぞれ立話しをしたり、腰を下して雑談している状態であつた。 (ホ) 同月二六日の怠業状態も前日と同様であつて、塗装場で台に腰をかけている者ら、北クレーンの歪取り台を囲こんで屯する者ら、仕上場で作業台に背をもたせかけて遊んでいる者らなど、終日、各部署においてほとんど全面不就業の状態であつた。 (ヘ) 同月二七日から三〇日まで及び同年六月一日の各日もいずれも、右(ニ)、(ホ)と同じ状態であつて、組合員らは、各部を歩き廻わり、あるいは製品倉庫の二階に隠れ込ん ど全面不就業の状態であつた。 (ヘ) 同月二七日から三〇日まで及び同年六月一日の各日もいずれも、右(ニ)、(ホ)と同じ状態であつて、組合員らは、各部を歩き廻わり、あるいは製品倉庫の二階に隠れ込んでいたり、腰を下して雑談にふけつたりして、正常な作業に従事する組合員は皆無の状態であつた。 (3) 控訴人主張の部分ストとは、出張拒否並びに正副班長の一斉休暇をいうものである。 二、証拠関係(省略) 理由 一、控訴人が水門の製作、請負工事等を業とする株式会社であり、別紙選定者目録記載の八〇名及びその余の被控訴人ら合計一二〇名の者がいずれも当時控訴会社の従業員であつて、かつ日本労働組合総同盟P29水門製作所労働組合の組合員であり、またはあつたこと、右P29水門製作所労働組合(以下、組合という。)が、昭和三四年五月二日の労使協議会の席上で、その執行部を通じ、口頭で、控訴会社に対し、一ケ月金三、〇〇〇円の賃上要求の意思表示をなし、これに対して控訴会社が一ケ月金八〇〇円の賃上げに応ずる旨の回答をなしたこと、その後組合は右の賃上要求につき控訴会社と数回団体交渉をかさね、同月一八日にもさらに交渉を行つたが妥結に至らなかつたので、翌一九日控訴会社に対して闘争宣言を通告したこと、同年六月二日控訴会社が組合に対し、「会社は組合の怠業及び部分ストに対抗してやむなく昭和三四年六月二日始業時から当分の間事業場を閉鎖する。この間組合は事業場(組合事務所及び通用門より組合事務所にいたる通路を除く。また寮生は従来どおり社長宅勝手門から出入すること。)に立ち入つてはならない。またこの間の賃金は支払わない。」旨通告してロツクアウトを宣し、以後同年七月六日まで右ロツクアウトを継続して、その間被控訴人ら一二〇名を含む組合員全員の就労を拒否したこと、以上の事実は当 ならない。またこの間の賃金は支払わない。」旨通告してロツクアウトを宣し、以後同年七月六日まで右ロツクアウトを継続して、その間被控訴人ら一二〇名を含む組合員全員の就労を拒否したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。 二、被告訴人らは、控訴会社の右ロツクアウトにより被控訴人らを含む前記一二〇名の者ら(以下たんに「被控訴人ら」と略称する)は右ロツクアウト期間中労務に服することができなかつたが、右の就労不能は控訴会社の違法なロツクアウトによるものであつて、控訴会社の責に帰すべき履行不能であるから、被控訴人らは右ロツクアウト期間中の控訴会社に対する賃金請求権を失わないと主張するのに対し、控訴人は、本件ロツクアウトは組合側の一連の熾烈な暴力化した争議行為に対抗して会社の企業防衛のためやむなく行つたものであるから、正当な争議行為であり、これにより被控訴人らが就業不能に陥つたことにつき控訴会社には何らの責任がなく、従つて該期間中の賃金支払義務はない旨抗争するところ、使用者側の争議手段としてのロツクアウトは、雇傭契約関係を存続させながら集団的に労働者の就労(労務の提供)を拒否し、その効果としてロツクアウト期間中の賃金支払義務を免がれることを主たる目的としてなされるものであるが、ロツクアウトは右のように使用者側の労務の受領拒否行為にほかならないのであるから、使用者が争議手段としてロツクアウトに訴え、労働者が労働契約上の義務の履行としての労務の提供をするにもかかわらず、その受領を拒否するときは、それは原則的には使用者側における受領遅滞を招来すべく、これがための就労不能によつて当然に使用者をしてその反対給付たる賃金支払義務から免除させることにはならないものというべきである(民法五三六条二項本文)。ただ個々の具体的事情のもとにおいて、そのロツクアウトが使用 労不能によつて当然に使用者をしてその反対給付たる賃金支払義務から免除させることにはならないものというべきである(民法五三六条二項本文)。ただ個々の具体的事情のもとにおいて、そのロツクアウトが使用者として、労働者側の争議行為から企業を防衛するため真に緊急やむを得ない手段と認められる場合にあつては、使用者の労務受領拒否がその責に帰することができない事由によるものとして、反対給付たる賃金支払債務についても免責される結果になる(前条一項)と解するのが相当である(ロツクアウトの正当性)。 三、そこで右の見解に基づいて、以下控訴人の本件ロツクアウトにおける前記正当性の有無について判断する。 (一) 本件ロツクアウトに至るまでの経過前記一の当事者間に争いのない事実に、成立に争いのない乙第一号証、第四号証の一ないし一九、第八号証、第一五号証の一ないし四(ただし、抹消部分の記載は当審証人P11(第二回)の証言により成立を認める。)、原本の存在及びその成立に争いのない甲第一、二号証、乙第二号証の一、二(ただし、甲第二号証の記載中、後記認定に反する部分は除く。)、証人P11(当審第一回)の証言により成立が認められる乙第一〇号証、第一一号証の一ないし六、第一二及び第一三号証(ただし、いずれもその記載のうち、後記認定に反する部分を除く。)、当審証人P21の証言により成立が認められる第一四号証、弁論の全趣旨によりいずれも控訴人主張の日時に控訴会社の工場、事務室、応接室等を撮影した写真であると認められる検乙第一号証の一ないし二一、原審証人P2、同P30、同P17、同P31、同P32、同P33、原審及び当審における証人P15、同P21、同P11(原審及び当審とも各第一、二回)の各証言及び原審における第一審原告(選定当事者)P5本人尋問の結果(以上、いずれも後記認 1、同P32、同P33、原審及び当審における証人P15、同P21、同P11(原審及び当審とも各第一、二回)の各証言及び原審における第一審原告(選定当事者)P5本人尋問の結果(以上、いずれも後記認定に反する部分を除く。)をあわせ考えると、次の事実が認められる。 (1) 控訴会社は、昭和三四年当時その主たる事業所を肩書住所地に置き、従業員は約一四〇名で、その職制を総務、営業、資材、技術、工務の五部の分ち、工務部は主として受註から納入までの生産計画、生産の実施、工場の保全管理等を担当し、その現場としては機械工場、仕上(組立)工場、製罐工場、木工工場の四工場とそれに関係する倉庫等があり、その各工場に正副班長各一名を配置していた。控訴会社の営業方法は、水門その他これに関する機械器具につき注文主からの注文に応じて製品を作成、取り付けるいわゆる受註生産を主とし、一般の商品としての規格品の製造はそのごく一部に限られていた。控訴会社においては、その従業員からなる日本労働組合総同盟P29水門製作所労働組合が昭和三三年八月六日に結成され、組合は、同年中二回にわたり合計一ケ月金三、〇〇〇円の賃上げを獲得し、翌昭和三四年四月当時における従業員の平均賃金は、本俸のみを基準とした場合は一ケ月金一万五、五〇〇円、これに諸手当を合したものを基準としたいわゆる基準内賃金は一ケ月金一万六、五四五円であつたところ、組合は当時における同業他社の平均賃金は一ケ月金二万一、〇〇〇円であると判断し、控訴会社の右賃金は右同業他社に比し低廉であるとして、同月二八日の組合大会において、定期昇給分金一、〇九〇円を含め一律一ケ月金三、〇〇〇円の賃上げを要求することを決定し、同年五月二日の労使協議会の席上、その執行部を通じ口頭で控訴会社に対し、右一ケ月金三、〇〇〇円の賃上げ要求を申し入れたと 金一、〇九〇円を含め一律一ケ月金三、〇〇〇円の賃上げを要求することを決定し、同年五月二日の労使協議会の席上、その執行部を通じ口頭で控訴会社に対し、右一ケ月金三、〇〇〇円の賃上げ要求を申し入れたところ、控訴会社は当時における控訴会社の従業員の平均年令や平均勤続年数を考慮し当時における控訴会社の平均賃金は同業他社に比べて低廉ではなくかえつて金一、三〇〇円余り高額であると判断し、かつ当時の会社の事業について先行不安があると考えていたので、これらを理由に組合の前記要求は一ケ月金八〇〇円の限度でしか応じられないとして、同月九日の労使協議会において組合に対しその旨回答をしたが、組合はこれを不満とし、その後同月一三日及び一五日の両日に開かれた団体交渉においても話合いがつかず、さらに同月一八日重ねて団体交渉がもたれ、その交渉は翌一九日早朝に及んだが、双方とも従来の自己の主張を固執して譲らず、依然として妥結に至らなかつたので、組合側はこれ以上交渉を重ねてもその要求する賃金額を獲得することは難かしいと考え、同日午前八時三〇分控訴会社に対して、組合要求貫徹のため団体交渉の方法によらず、闘争態勢による実力行使に入る旨を口頭で通告し、いわゆる闘争宣言をするに至つた。 (2) 一方前記団体交渉の過程において、組合の控訴会社に対する不満の感情が漸次増大し、同月一二日には、会社の総務部長が組合の全員集会に赴いて賃上要求に対する会社の意向を説明した後退出しようとしたところ、「帰すな」と叫んで同部長ら会社側の交渉委員を取り囲み、罵言を浴せ、同月一五日には、団体交渉を終えて会社側の委員が退場しようとした際多数の組合員が会場に乱入して出入口を封鎖し、総務部長に詰めよつて口口に罵言を浴せ、かつ会社側の委員に集団的威圧を加え、また翌一六日午前九時ごろ、製罐工場の組合員であるP 側の委員が退場しようとした際多数の組合員が会場に乱入して出入口を封鎖し、総務部長に詰めよつて口口に罵言を浴せ、かつ会社側の委員に集団的威圧を加え、また翌一六日午前九時ごろ、製罐工場の組合員であるP34、P22、P35、P36、P20らに対し同月二一日から二三日までの間農林省津風呂ダムに既納鉄管並びに調圧弁のバフ掛けと塗装コンクリート打ち立合のため出張するよう命じたところ、同人らはこれを理由もなく拒否するなどのことがであつたが、同月一九日前記闘争宣言がなされた後はさらにこれが激しさを加え、(イ) 同日正午過ぎから、組合は、多数の古新聞紙に、墨、インキ等で「一人一人の団結が成功の鍵」とか「戦い抜こう我等の要求……」「会社の泣言を吹飛ばせ」等と記載したアジビラや、「まだ見覚めぬか経営者、大正時代は過ぎている」「ドンと儲けて自分達ばかりで山分けするP29経営者」とか、「P29の番犬工務」「腰抜け工務さん、お盆に戦うか、養子はつらいね」とか「吸血鬼P29一家をたたきのばせ」、「国賊P10一家を葬れ」とか、そのほか控訴会社ないし控訴会社の役員を誹謗する文言を記載したビラを控訴会社の工場、事務室、応接室等の窓ガラス、壁、天井、什器、カレンダーその他控訴会社の正門前の塀、会社門標等に乱雑に貼りつけ、これがため、会社正門脇の保安室の窓はほとんど右のビラで覆われ、事務室等も外光が著しく減ずる有様となり、同日午後三時三〇分過ぎごろ、工務部長P11が臨時保安係二、三名とともに事務室窓に貼られた右ビラを剥がしていたところ、木工部の工員で組合執行委員のP15等が現場工場の組合員全員を煽動して職場を離脱させてこれらの者をしてP11部長を包囲させこれを罵倒して、同人らの職務を妨害し、また終業後約二〇名の組合員は無届で翌朝まで会社構内に残留した。 なお同日午後二時ごろ の組合員全員を煽動して職場を離脱させてこれらの者をしてP11部長を包囲させこれを罵倒して、同人らの職務を妨害し、また終業後約二〇名の組合員は無届で翌朝まで会社構内に残留した。 なお同日午後二時ごろ、資材部長から仕上工で組合員たるP4に対し、山口県厚狭干拓事務所にスピンドル中間軸承八式据付のため同月二一日から同月二四日までの間出張を命じたところ、同人は「一ケ月前に出張したばかりだから」との理由でこれを拒否したため、他の仕上工で組合員であるP37、P2、P38らにこれを命じたが同人らもまた正当の理由がないのにいずれもこれを拒否した。 (ロ) 同月二〇日午前七時五〇分ごろ、出勤した組合員全員が会社事務所わきに集合してスクラムを組み会社構内をジグザグデモを行なつた際、前記P15、クレーン工のP13はこれを煽動して、会社事務所内部に喚声を上げてデモ行進を行なわせ、同事務所で執務中の職員の執務を妨害し、午後〇時一五分ごろ組合員全員が事務所わきに再び集まり、ジグザグデモを行なつた後、隣接の社長宅の板塀を乱打し、再び前記P15、P13の煽動で事務所内に乱入し、折から執務中の常務取締役P16を取り囲み、こもごも、床を踏み鳴らし、あるいは手にした太竹で床を突き鳴らすなどして気勢を挙げ同人の執務を妨害したが、これより先午前八時ごろから組合幹部は会社の構内中央にあつた組合事務所の窓に控訴会社に無断で携帯拡声器二基を備えつけ(当時、マイクロホン及び拡声器を備えつけるには控訴会社の許可を得ることとなつていた。)、就業時間休憩時間を区別せず、会社や役員を誹謗する内容の放送や、控訴会社が保安要員として雇入れた人夫の退去を求める放送をなし、さらには携帯拡声器を持つて放送しながら会社工場内を歩き廻り、終業後組合員二〇数名が会社構内に残留し控訴会社からのたびたびの退去要求に 、控訴会社が保安要員として雇入れた人夫の退去を求める放送をなし、さらには携帯拡声器を持つて放送しながら会社工場内を歩き廻り、終業後組合員二〇数名が会社構内に残留し控訴会社からのたびたびの退去要求にも応じなかつた。 なお、同日も前記(イ)記載のように山口県厚狭干拓事務所に出張を再度命ぜられたのにかかわらず、前記P4らはこれを正当な理由なく(P2、P38は前日と異つた理由で出張できない旨申し出でた。)これを拒否したので、控訴会社はやむなく出張の目的たる据付け作業を下請会社に依頼せざるを得なくなつた。 (ハ) 同月二一日、早朝出勤の組合員はビラ貼りをなし、出勤する会社役員に奇声を上げて面罵し組合幹部は始業後も拡声器により会社役員を誹謗する放送をなし、昼休時機械工場の北及び東側にビラを貼り、この情況を撮影に赴いたP16常務に対し組合代議員P9は大声に「阿呆」と面罵し、昼休後、臨時保安係がビラを剥がしに廻つたところ製罐工場ではほとんどの組合員が持場をはなれ、右保安係を取り囲こみこれを威嚇してその業務を不能にさせ、午後休憩時間中総同盟本部員が組合員を事務所脇に集めて応援演説した後、組合員はジグザグデモを行ないながら前記P15の先導で事務所内に乱入し、執務中のP16常務、P18資材部長を取り囲んで労働歌を高唱し、終業後も前夜と交替した約二〇名の組合員が会社内に残留した。 (ニ) 同月二二日も、前日同様始業前のビラ貼り、出勤する会社役員に対する拡声器による揶揄、始業後の就業時間中組合幹部による拡声器を用いての事務室及び作業場に向つての会社役員誹謗の放送をなしたほか、昼休時間再び制止をきかず事務室内部にまでビラ貼りをなし製罐工P20らはカレンダーや額椽の上にまで、また組合青年行動隊員らは前記P13などの先導で来客中の事務所応接室に乱入し壁、衝立等所かまわず 、昼休時間再び制止をきかず事務室内部にまでビラ貼りをなし製罐工P20らはカレンダーや額椽の上にまで、また組合青年行動隊員らは前記P13などの先導で来客中の事務所応接室に乱入し壁、衝立等所かまわずビラを貼りつけ、これが情況を写真に撮ろうとしたP16常務、P21総務部長らに対し、前記P15はその前に立ち塞がつてこれを妨害した。 (ホ) 同月二二日頃から、製罐工場を中心として組合員らの間に出勤はしても各自の職場において正常に仕事に就かず、持場を離れて雑談にふけるなどの怠業状態があらわれはじめ、会社ではこれが防止のため職制による巡視を強化したが、その巡視に対して各工場の組合員らは奇声を発して面罵したり、後をつけ廻つて暴言を吐いたり、さらに鉄板をハンマーでたたくなどして嫌がらせをしたりするほか、同月二三日には、製罐工場を巡視中の工務部長P11に向つて製罐工のP22が鉄板やハンマーを投げつけ、さらに同部長が「仕事をせよ」と注意したところ、その場に居つた多数の組合員が同部長を取り囲こんで気勢を挙げ、その際、同行の保安係員P39は組合員に押し倒されて左脚に治療約三日を要する打撲傷を負つた。 (ヘ) その後も組合員の怠業状態は日を追つて著しくなり、これがため五月二七日頃における控訴会社の各工場における作業能率は平均して少くとも平時の半分程度に低下し、この状態は同月末日頃に至るも一向改善されず、却つて悪化の傾向もないではなかつた。 (ト) なお、控訴会社においては業務の性質上、納入製品については取引先に対して現地でその据付を行い、試運転を終えるまでの契約上の義務を負担する場合が多く、かかる場合には会社の従業員が現地に出張してその業務にあたることになつているのであつて、控訴会社は同月一九日、二〇日、二五日にわたり右業務のためP4ほか八名の者に対して山口県厚狭 担する場合が多く、かかる場合には会社の従業員が現地に出張してその業務にあたることになつているのであつて、控訴会社は同月一九日、二〇日、二五日にわたり右業務のためP4ほか八名の者に対して山口県厚狭干拓事務所外一箇所に出張すべきことを命じたが、同人らはいずれも原判決添付別紙七「出張拒否の状況」の「拒否理由」欄記載の事実を理由に、右出張に応じなかつた。 (チ) さらに同年六月一日には、控訴会社の木工工場、仕上工場、機械工場、製罐工場及び倉庫係の正副班長で組合員たる者八名のうち木工工場の班長一名を除くP30(仕上工場班長)、P40(同上)、P41(同副班長)、P42(機械工場副班長)、P43(倉庫係副班長)、P44(製罐工場班長)、P45(同副班長)の七名が一斉に休暇をとつたため、これら各工場の作業過程が麻痺し、正常な作業が不能に陥り、他方現場各作業所入口で少年工を見張らせて会社側の行動を監視させ、全員ほとんど作業に従事せず、終日怠業状態が続き、会社職制の巡視に対してはこれを妨害するなど、職場の秩序は極度に混乱した。 (3) かくして、控訴会社は組合の連日にわたる上述のような争議行為と、これに伴う怠業状態や出張拒否ならびに作業工場の正副班長の一斉休暇等により、作業能率が著しく低下し、正常な業務の遂行が困難となつたので、このままの状態では会社の経営にも危殆を招く虞があると考え、六月二日組合に対してロツクアウトを通告した。 以上の事実が認められ、前記各書証、証言、本人尋問の結果中右の認定に反する部分は措信できない。 (二) 右の事実によると、組合は控訴会社との団体交渉の中途において、組合側の賃上要求貫徹のためより強力な手段に訴えるべく前記闘争宣言を発して争議行為に入つたのであるが、その争議行為は暴力行為を伴う相当熾烈なものであつて、漸次怠業状態 社との団体交渉の中途において、組合側の賃上要求貫徹のためより強力な手段に訴えるべく前記闘争宣言を発して争議行為に入つたのであるが、その争議行為は暴力行為を伴う相当熾烈なものであつて、漸次怠業状態が深刻化し、さらに出張拒否や正副班長の一斉休暇という部分ストにも発展し、これら一連の争議行為によつて控訴会社の正常な業務の遂行が著しく阻害され、作業能率も低下して、このままで経過するときは控訴会社(資本金一、四〇〇万円程度の中小企業)の経営にも支障をきたす虞が生じたので、控訴会社としてはかかる緊急事態に対処するため組合の争議行為に対抗して一時的に作業場を閉鎖し、上述の如き組合員の不完全な労務の提供を拒否し、その結果としての賃金の支払を免がれることによつて当面の著しい損害の発生を阻止せんとしたものであつて、右の如き事情のもとに行われた本件ロツクアウトは控訴会社の企業防衛のために真にやむを得なかつたものというべく、そして右ロツクアウトは七月六日まで継続されたが、この間組合は会社のロツクアウトの宣言の不当であることを主張するのみで、争議の状況は何ら改善されることがなく、その後組合の上部団体である日本労働組合総同盟本部より組合員を正常な業務に就かせるからロツクアウトを解除してもらいたい旨の申入れをうけたので、その申入れを信頼して七月六日右ロツクアウトを解くに至つたものであることが原審及び当審証人P21の証言によつて認められるので、右ロツクアウト期間中における労務の受領拒否は控訴会社の責に帰すべからざる事由に基づくものというべきである。 (三) 被控訴人らは(1) 本件争議にあたり、組合としては当初から組合員の生活難を深刻化する怠業、罷業等の闘争方法を回避し、組合幹部二、三名以外はすべて平常通り就業し、控訴会社の業務運営を阻害しないように努めてきたと主 1) 本件争議にあたり、組合としては当初から組合員の生活難を深刻化する怠業、罷業等の闘争方法を回避し、組合幹部二、三名以外はすべて平常通り就業し、控訴会社の業務運営を阻害しないように努めてきたと主張するけれども、仮りに組合において当初そのような方針を決定し、これを標榜していたとしても、前記認定のように、その争議の過程における組合員の闘争の実態はとうていその主張の程度にはとどまらなかつたものであるから、右の主張をそのままに採用することはできない。 (2) 次に、控訴会社は保安要員と称して多数の暴力人夫を雇い入れ、これを工場内に立入らせて就業中の組合員に悪罵威迫を加え或はその執務を妨害したりしたのであつて、組合員の作業能率が若干低下したとすれば、それは右の人夫らの上叙妨害行為によるもので組合員側の怠業によるものでないと主張するところ、前掲各証拠によると、控訴会社は組合が闘争宣言をした前後から保安要員が不足したため下請会社として出入していた生野建設株式会社に依頼してその人夫を臨時保安要員として雇い入れたが、これらの者はもつぱら会社内の各所に貼付された組合のビラを剥がしたり、組合員のデモ等に対する会社側の保安に従事していたのであつて、自然右の者らと組合員との間に時に小ぜり合いを生ずることはあつたが、殊更らに組合員の正常な作業の遂行を妨害する如き行動に出たことの事実は認められないので、右の弁疎もまた採用の限りでない。 (3) さらに、控訴会社の作成した原判決添付別紙五及び六の各表の数字はいずれも不正確なもので、かえつて被控訴人らの計算によると、同じく別紙九の表に示す如く、その作業能率は七〇パーセントを上廻る数字となり、さらに対象を全作業員に求めるとすれば恐らく一〇〇パーセントに近い数字になることが容易に推測できるというが、被控訴人ら主張の右第九 九の表に示す如く、その作業能率は七〇パーセントを上廻る数字となり、さらに対象を全作業員に求めるとすれば恐らく一〇〇パーセントに近い数字になることが容易に推測できるというが、被控訴人ら主張の右第九の表に示された数字が正確なものであると認める証拠は十分でないので、直ちに右の主張を採用することはできない。 四、以上説示のように、控訴会社のなした本件ロツクアウトは組合の争議行為に対し、控訴会社に生ずる著しい損害を避けるためやむことをえずになされた正当なものであつて、これにより、被控訴人ら一二〇名の労務の提供が不能となつたとしても、右は控訴会社の責に帰すべからざる事由に基づくものというべく、その結果、被控訴人らはこれが反対給付である右ロツクアウト期間中の賃金を控訴会社に請求することができないものであるから、被控訴人らの控訴人に対する本訴請求は理由がない。 したがつて、これと異なる原判決は不当であつて取消しを免がれず、本件控訴は理由がある。 よつて、原判決を取り消し、被控訴人らの請求を棄却し、控訴費用は、第一、二審とも、敗訴の当事者である被控訴人らに負担させることとして、主文のように判決する。 (裁判官小石寿夫宮崎福二舘忠彦)(別紙省略)
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