主文 1 被告は,原告に対し,11万5962円及びこれに対する平成10年11月9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。ただし,被告が7万円の担保を供するときは,この仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,618万4166円及びこれに対する平成10年11月9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,A県警察警察官(以下,単に「警察官」ということがある)の請求により発せられた令状に基づき,警察官らが行った建物及び建物内に在所する者の身体についての捜索差押に関して,令状の請求あるいは捜索差押の執行に違法があったなどとして,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償とこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等以下の各事実は,当事者間に争いがないか又は後掲各証拠等によって認められる(証拠を掲記しない部分は争いがない)。 ・ B社C支社は,D主義派のC地方における活動拠点となっている権利能力なき社団であり,原告はその代表者である。別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)は,B社C支社が所有し,その事務所として使用しているものであり,原告は,代表者就任に伴い,平成7年8月11日,本件建物の所有権移転登記を受けた。本件建物の各階見取図は,別紙のとおりである。 ・ A県E警察署司法警察員は,後記被疑事実について,E簡易裁判所裁判官に対し令状の発付を請求し,同裁判官は,平成10年11月5日,別紙捜索差押許可状目録1,2記載の捜索差押許可状(以下「本件令状 ・ A県E警察署司法警察員は,後記被疑事実について,E簡易裁判所裁判官に対し令状の発付を請求し,同裁判官は,平成10年11月5日,別紙捜索差押許可状目録1,2記載の捜索差押許可状(以下「本件令状」という)を発付した。これに基づいて,A県警察本部F部公安G第H課所属の司法警察員I,同Jが指揮する警察官(私服警察官,機動隊員)ら70余名は,同月9日午前9時55分ころから,本件建物及び本件建物内に在所する者(以下「在所者」という)に対し捜索差押(以下「本件捜索差押」等という)を実施した。 ・本件捜索差押の結果,別紙押収品目録記載1~14の物件(以下「押収品1」のようにいう)が差し押さえられた。また,在所者の一人であるKが,別件の免状不実記載被疑事件により通常逮捕されたため,それ以降は,同人に対する同被疑事件の捜索差押も併せて実施された。 ・上記押収品の一部はその後還付されたが,残りの6点(押収品1,5,8~10,14)については,原告がL地方裁判所に本件差押に対する準抗告の申立をし,同裁判所は被疑事実と差押物件の関連性がないか,希薄であるとして準抗告を認め,平成10年12月16日,本件差押処分を取り消した。これに対し,Jは,最高裁判所に特別抗告の申立をし,併せて2点(押収品8,14)については取消決定の執行停止の申立をして,それを理由に還付を拒絶したが,最高裁判所は,同月25日,特別抗告を棄却したので,平成11年1月13日に上記の押収品6点全部が還付された。 ・本件令状請求の被疑事実(以下「本件被疑事実」という)は,平成5年2月3日,E市内に居住していたM派の関係者と認められるN,O夫婦(以下「Nら」という)方において,同人らが不在中に,複数の者が侵入し,室内に放水したりペンキをまき散らしたりするとともに,室内の印刷機や電化製 E市内に居住していたM派の関係者と認められるN,O夫婦(以下「Nら」という)方において,同人らが不在中に,複数の者が侵入し,室内に放水したりペンキをまき散らしたりするとともに,室内の印刷機や電化製品を破壊した上で,同人ら所有の住所録等のM派の内部書類,預金通帳,キャッシュカード,印鑑等を窃取したという,窃盗等の事案であった。(乙17,証人I)・本件被疑事実については,平成5年3月11日,本件建物に対しA県警察により捜索差押が実施され,D派機関紙,フロッピーディスク等が押収された(以下「第1次捜索」という)が,この際には本件建物内に在所する者の身体は捜索の対象とされなかった。捜索の結果,本件被疑事実に係る被疑者を特定するに足りる証拠資料や被害品は発見されなかった。 また,本件建物に対しては,平成10年4月15日及び同年9月30日,別件被疑事件について,いずれもA県警察により捜索差押が実施された。 2 争点・令状請求の違法性・捜索差押方法の違法性ア令状呈示の不備イ立会権の侵害ウ不必要な破壊行為エ身体に対する捜索方法の違法性オ原告に対する暴行・押収品と被疑事実との関連性の欠如・押収品還付拒否の違法性・本件捜索差押による損害及びその額 3 争点に対する当事者の主張(以下,本件建物の内部等の状況については,別紙各見取図参照)・争点・(令状請求の違法性)について(原告の主張)ア本件建物は,既に同一被疑事実について第1次捜索によって捜索を受けているのであるから,再度捜索する場合は,捜索の必要性や証拠物の存在の蓋然性についての特別の事情が必要である。また,本件建物及び在所者の捜索には,押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のあることが必要である(刑訴法222条1項,102条2項)。 イ被告主張の本 性についての特別の事情が必要である。また,本件建物及び在所者の捜索には,押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のあることが必要である(刑訴法222条1項,102条2項)。 イ被告主張の本件捜索差押の必要性は,理由がない。すなわち,・本件捜索差押は,本件被疑事実の発生後5年も経過してからなされている。ところが,本件建物は,事件発生の直後に第1次捜索を受けているほか,その後別件で平成10年だけでも2度にわたり捜索を受けており,とりわけ2度目の捜索は同年9月30日に実施されたばかりであるから,本件被疑事実に関する証拠が存在していれば,警察官らがこれを見逃すはずはなかった。 ・本件建物の在所者が入れ替わったからといって,証拠品が引き継がれているとは考えられないし,M派関係者の集会の妨害事案と本件被疑事実の被害品である内部資料とがいかなる関係にあるかも不明である。また,第1次捜索の際に在所者の身体を捜索対象から外していたのは,当時の担当警察官が在所者の身体に証拠物が存在する蓋然性がないと判断したからにほかならない。 ・以上のとおり,本件令状請求の際に,本件建物に証拠が存在する蓋然性や身体捜索の必要性についての疎明がなかったものであるから,同請求は違法である。 (被告の主張)ア本件被疑事実について,D派は機関紙において同派の犯行であることを自認し,M派も機関紙において同様の見解を示していた。また,本件被疑事実の犯行態様からも,D派が対立するM派の関係者であるNらに対して行ったものであると認められた。そして,本件建物は,D派のC地方の活動拠点であるから,被疑者以外の者が居住する建物には当たらない。 イ仮に,本件建物が被疑者以外の者が居住する建物であるとしても,以下のとおり証拠の存在する蓋然性がある。 ・ D派のC地方の活動拠点であるから,被疑者以外の者が居住する建物には当たらない。 イ仮に,本件建物が被疑者以外の者が居住する建物であるとしても,以下のとおり証拠の存在する蓋然性がある。 ・ A県警察は,第1次捜索後も捜査を継続していたところ,平成10年7月ころ及び同年9月6日になって,M派関係者の集会をD派活動家が妨害する事案が発生した。これらの犯行も,本件被疑事実の際に窃取された住所録等の資料に基づいてなされたものであると思料された。 ・平成10年4月15日及び同年9月30日の別件の捜索に際し,本件建物内の在所者が大幅に入れ替わっていることが判明し,これらの者が本件被疑事実に関する証拠資料を持ち込んでいる蓋然性があること,第1次捜索の際に在所者の身体に対する捜索がなされていないことから,再度の捜索の必要性があった。 ・本件被疑事実と上記・の集会妨害事件は,その動機,背景等を一にするものであり,本件被疑事実の動機,組織性等を明らかにする証拠資料は,第1次捜索の時点で存在したものに限られない。 ウしたがって,本件令状請求は適法である。 ・争点・(捜索差押方法の違法性)について(原告の主張)ア令状呈示の不備について本件令状の記載からは,被疑事実の具体的内容が分からなければ,捜索差押の対象を理解できないし,再度の捜索である以上,その必要性についての説明をすべきであった。 ところが,本件捜索差押の際,警察官らはこれらの点について何の補足説明もせず,しかも極めて早口で令状を読み上げただけであり,原告その他立ち会った者たちは,その内容を全く認識できなかった。 イ立会権の侵害について原告が,立会人を排除しての捜索は違法である旨抗議したにもかかわらず,Jは,原告に対し,「全員外に出せ」「各部屋を点検する」などと ,その内容を全く認識できなかった。 イ立会権の侵害について原告が,立会人を排除しての捜索は違法である旨抗議したにもかかわらず,Jは,原告に対し,「全員外に出せ」「各部屋を点検する」などと通告し,原告らの立会を一方的に排除して本件捜索を実施した。 これは,刑訴法に定められた立会権を保障せずに行われた捜索として,違法である。 ウ不必要な破壊行為について・刑訴法222条1項,111条1項によれば,捜索差押の際には「必要な処分」をなし得るが,器物損壊行為がこれに当たるというためには,捜索差押の目的達成のため,必要かつ妥当で,方法も社会的に相当なものでなければならず,損壊の程度も必要最小限のものである必要がある。 本件捜索差押に際し,原告らがドアの開錠を拒絶したのは,警察官らが,事前の各室内の点検を立会人なしで行うという方法に固執したためであり,これが違法であることは上記のとおりであるから,原告の対応は何ら不当なものではない。したがって,このような対応をもって損壊行為の必要性を基礎付けるものとはいい得ない。また,在所者が罪証隠滅を行っていた事実もない。 ・ 1階内側ドア横小窓(以下「小窓」という)の切断について上記事情に加えて,Iは,本件建物に何度も捜索に訪れており,1階内側ドアが二重に施錠されており,ドアノブの錠を開けてもドアが開けられないことは熟知していた。 また,小窓の切断を開始した後も,Iらは時折切断を中断して,「ドアを開けるなら今のうちだ」,「全員を外に出せ」などと言っていた。 したがって,小窓の破壊は開錠目的ではなく,原告らに対する威嚇を目的としたものにすぎない。 そうすると,小窓の破壊は必要最小限の損壊行為ということはできない。 ・ 2階事務室東側窓(以下「2階窓」という)の破壊につ 開錠目的ではなく,原告らに対する威嚇を目的としたものにすぎない。 そうすると,小窓の破壊は必要最小限の損壊行為ということはできない。 ・ 2階事務室東側窓(以下「2階窓」という)の破壊について上記のとおり,原告らは捜索を拒否したものではなく,交渉を求めたことには正当の理由があるのだから,Iらが新たな破壊行為を開始する必要性も妥当性もなかった。 しかも,2階窓を破壊し始めたのは午前11時40分ころであって,この時点では捜索開始から既に1時間40分以上も経過しており,新たな破壊行為に着手する必要性はなかった。 また,警察官が,2階窓の破壊に用いた工具は,警棒などではなく,先が斧状の特殊な工具である。 そうしてみると,2階窓の破壊行為はその必要性を欠き,その程度も相当でなく,必要最小限の損壊行為とは言えない。 ・ 2階事務室入口ドア(以下「2階ドア」という)の破壊について事務室内に侵入した警察官らは,在所者をいきなり窓際に押さえ付けるなどした上,2階ドアの破壊作業に取り掛かった。錠前師が開錠作業に取り掛かる以前から警察官らはドアノブをいじり,窓ガラスを叩き割って窓枠から身を乗り出し,外側からドアを開けようとしていた。錠前師が連れて来られたときには,警察官がバールのような物を鍵穴に突っ込んでドアをこじ開けようとした後であり,そのために錠前師が開錠できず,エンジンカッターによる破壊を開始したものである。 そうしてみると,2階ドアの損壊も必要最小限の破壊行為とは到底いい難く,違法である。 ・アコーディオン式門扉(以下「門扉」という)の破壊行為警察官らは,本件建物内にいた在所者全員を暴力的に外に排除し,1階のシャッター前に連れて行き,門扉の方へ押しやったため,門扉は外側にふくれ,これを歩道側から別の 扉(以下「門扉」という)の破壊行為警察官らは,本件建物内にいた在所者全員を暴力的に外に排除し,1階のシャッター前に連れて行き,門扉の方へ押しやったため,門扉は外側にふくれ,これを歩道側から別の警察官らが押し戻したため,門扉下部のキャスター付き脚が破壊された。 上記破壊行為が本件捜索差押の執行に何ら必要のない損壊行為であることは明らかであり,違法である。 エ身体に対する捜索方法の違法在所者の身体に対する捜索に際しても,Jの令状の読み聞かせは早口で何を言っているか分からなかったし,原告らが抗議したところ,Jらが勝手に立会意思がないと解釈して,原告らを本件建物外に暴力的に連れ出し,外から丸見えの玄関で身体捜索を実施するとともに,原告らの顔写真を正面から撮影した。 このような身体に対する捜索の方法は,令状呈示がなされていない点,立会権を侵害している点,原告らのプライバシーを侵害する方法,態様でなされている点から,違法である(刑訴規則93条参照)。 オ原告に対する傷害原告に対する身体捜索が実施される際に,原告は,2名の機動隊員に両腕を取られて玄関に連れ込まれ,もう1名の機動隊員が原告の胴体を後ろから叩いたり,防具を付けた両腕で強く締め付けたりしたため,平成10年11月17日(診察日)から全治1週間を要する右側腹部打撲・皮下出血の傷害を負った。 (被告の主張)ア令状呈示の不備について青木は,本件建物外に出て来た原告が責任者である旨述べたことから,原告に対し,本件令状2通の記載事項を順次読み聞かせた。 原告が,本件建物内の在所者に本件令状の内容を告げていたことからも,原告がその内容を理解していることは明らかである。 また,本件令状に被疑事実の記載はないが,捜索差押を受ける原告らは差し押さえるべきものがいかなる 内の在所者に本件令状の内容を告げていたことからも,原告がその内容を理解していることは明らかである。 また,本件令状に被疑事実の記載はないが,捜索差押を受ける原告らは差し押さえるべきものがいかなる事件に関係するものか理解していた。 よって,令状呈示は適法に行われたものである。 イ立会権の侵害についてJは,本件捜索差押に際し,まず室内に在所者がいないかを確認し,次に1階踊り場において在所者の身体捜索を行い,その後各階各室の捜索を行うという方法をとった。これは,証拠隠滅の防止や不要な混乱を防止するため,適切な処置であり,仮に,原告らが主張するように在所者全員を外へ出すことを要求していたとしても,その後に立会人とともに室内を確認することは容易であって,Jがとった捜索方法には何ら違法性は認められない。 それにもにもかかわらず,原告は正当な理由なく立会を拒否したものであり,警察官らはやむを得ず地方公共団体職員による立会によって捜差押を実施したものであるから,原告らの立会権を侵害したことにはならない。 ウ不必要な破壊行為について・小窓の切断についてJが本件令状を原告ほか1名に読み聞かせ,1階出入口ドアを開けるように告げるとともに,原告に立会人となる意思を確認したところ,原告はこれに応じなかった。そして,午前10時13分ころ,原告が本件建物内の在所者に本件令状の内容を告げたことから,Jは,罪証隠滅のおそれが高まったものと考え,原告ほか1名を本件建物出入口前から1階車庫前に移動させ,待機させていた地方公共団体職員に令状を呈示して捜索に立ち会わせた上,内側ドアを開けない場合には強制的に開けることを警告したが,在所者らは従わなかった。そこで,錠前師による開錠 1階車庫前に移動させ,待機させていた地方公共団体職員に令状を呈示して捜索に立ち会わせた上,内側ドアを開けない場合には強制的に開けることを警告したが,在所者らは従わなかった。そこで,錠前師による開錠を試み,錠は開いたが,ドアを開けるには至らなかったため,小窓を切断し,切断箇所から本件建物内に警察官を入れて内側からドアを開錠することにし,原告らにその旨を告げ,午前10時29分ころからエンジンカッター,電気カッターによる切断作業を実施した。 したがって,上記小窓破壊行為は,何ら違法なものではない。 ・ 2階窓の破壊について警察官らは,上記のとおり小窓の切断作業を実施したものの,在所者の抵抗に遭い,成功しなかったため,これを断念し,2階窓からの進入を試みることとした。 Iは,原告に対し1階内側ドアを開けなければ2階窓を開ける旨告げたが,原告はこれに応じなかったので,午前11時45分ころ,2階にはしごを掛けて警察官に登らせ,在所者に窓を開けるように告げさせたが,これに応じる様子がなかった。そこで,まず窓ガラスの施錠部分のガラスを割ることにし,施錠部分の周囲にガムテープを貼り,警棒,工具による破壊を試みたができなかったので,窓枠の透き間から工具を差し込み施錠部分を外すことを試みて,ようやく午前11時55分ころ2階窓を開けることに成功した。 以上のように,2階窓の破壊は,それに至る経緯及び破壊の程度からして,必要最小限の破壊行為であったことは明らかである。 ・ 2階ドアの破壊について2階ドアは施錠されており,同室内及びドアの向こう側の通路には在所者がいたものの,警察官の開錠要求には応じなかった。そこで,錠前師に開錠を試みさせることとしたが,窓ガラスが割れており,錠前師が負傷するおそれがあったため,あらかじめガラスを除去させた 通路には在所者がいたものの,警察官の開錠要求には応じなかった。そこで,錠前師に開錠を試みさせることとしたが,窓ガラスが割れており,錠前師が負傷するおそれがあったため,あらかじめガラスを除去させたが,在所者がドアを揺らす等したため,開錠作業はできなかった。 そのため,2階ドアの施錠部分を破壊することとし,エンジンカッターで施錠部分を切断し,ドアを開けさせ,機動隊員がそこから進入して,午後0時25分ころ,1階内側ドアのかんぬき錠を開錠した。 したがって,2階ドアの破壊行為も必要最小限のものである。 ・門扉の破壊について警察官らは,原告の主張する門扉の破壊行為自体を行っていない。 エ身体に対する捜索方法の適法性について・本件建物1階内側ドアが開けられた後,Iは,本件建物内の在所者による罪証隠滅を防止し,在所者に対する捜索を実施するため,在所者を本件建物1階車庫前に集めるように命じた。在所者は,建物外にいた原告ほか1名のほかに9名おり,いずれも車庫前に集まることを拒否して抵抗したため,警察官らが在所者の手足を抱え込んで車庫前に集めた上,警察官らもすべて一旦本件建物内から退出した。 そして,午後0時33分ころ,Jは,集められた在所者らに対し令状を示し,立会人となる意思を確認したが,これに応じなかったので,引き続き地方公共団体職員を立会人として身体等の捜索を実施することとし,在所者らを1階踊り場へ一人ずつ移動させた。 捜索を実施した場所は,1階の踊り場の位置であり,出入口ドア及び内側ドアは開放されていたが,出入口ドア付近には警察官らが多数配置されており,一般人が捜索の状況を見ることはできなかった。 ・上記のとおり,原告ら在所者の身体の捜索に際し警察官らのとった措置は,抵抗を抑えるために必要最 入口ドア付近には警察官らが多数配置されており,一般人が捜索の状況を見ることはできなかった。 ・上記のとおり,原告ら在所者の身体の捜索に際し警察官らのとった措置は,抵抗を抑えるために必要最小限のものであり,原告らのプライバシーを侵害した事実はない。 また,警察官が写真撮影を行ったのは,身体捜索を受ける者を特定し,捜索の適法性を担保するための措置であり,適法である。 オ原告に対する傷害について警察官が原告主張のような暴行を原告に加えた事実はないし,原告が本件捜索差押の際に負傷したとの事実も疑わしい。 ・争点・(押収品と被疑事実の関連性の欠如)について(原告の主張)ア捜索差押に際しては,その物が令状に記載されており,被疑事件と具体的かつ明白な関連性があって,かつ差押の必要があることが必要である。 イところが,押収品1~14は,いずれも次のとおり,本件被疑事実と関連性がないことが明らかである・押収品2~4,6,7,11~13は,平成10年12月2日にA県警察より返還された物である。さらに,同2~4,6,7は,各所持人が使用する個人的な物であり,同11は本件被疑事実発生後の平成7年に事業が開始されたPHSの電話機であり,同12,13は,本件被疑事実以降に契約したものである。 警察官らは在所者に対し携帯電話等の契約状況等について質問したことはなく,在所者が本件被疑事実とは関係ないものだと抗議しても,有無をいわさず押収した。 ・押収品1,8,9は,本件捜索差押現場を撮影していたフィルムであるところ,警察官らはその撮影現場を見て知っていたもので,その中身も十分に認識し得た。 ・押収品5(フィルム)は,パトローネから先端が出ている状態にあり,一見して未使用であることが明らかで,現に一部の警察官は未使用で その撮影現場を見て知っていたもので,その中身も十分に認識し得た。 ・押収品5(フィルム)は,パトローネから先端が出ている状態にあり,一見して未使用であることが明らかで,現に一部の警察官は未使用である旨述べていた。 ・押収品10(カセットテープ)は,原告と警察官との本件捜索差押の際のやり取りを録音した物であり,その場で再生すればそのことが即座に判明した。警察官は,録音機から取り出させて差し押さえており,再生は容易であった。 ・押収品14は,その記載から明らかなように,平成9年2月8日以降の発行である。 ウなお,現場において関連性の判断が困難であるから一応押収するということは許されない。記録内容を確認する作業によって内容を消去することが可能であるという特殊性を持つフロッピーディスクの場合と異なり,本件各押収品については,いずれも物理的,機械的手段を積極的にとらない限り,内容を消去,損壊することは不可能である。 (被告の主張)ア押収品1~14は,いずれも本件令状に記載された物件に該当する。これらを差し押さえる際,捜査員が記録された内容について質問をしても,原告らは十分な回答をしなかったため,その場では本件被疑事実と関連性がないことは分からなかった。 イ押収物のうち,フィルムについては,外観からは,使用,未使用の区別や,撮影された被写体を識別することは,不可能であった。 カセットテープについても,発見時には所持者が録音機を所持しておらず,録音内容を把握する余地はなかった。 携帯電話等についても,過去に押収されたことがある旨の申告はなく,外見からもその旨は把握できなかった。また,本件被疑事実の組織性,動機,背景等を明らかにする証拠資料は,事件発生時に存在したものに限られないことからして,関連性がない れたことがある旨の申告はなく,外見からもその旨は把握できなかった。また,本件被疑事実の組織性,動機,背景等を明らかにする証拠資料は,事件発生時に存在したものに限られないことからして,関連性がないとはいえない。 そして,フィルムは感光により,カセットテープは再録音等により,携帯電話やポケットベルの受発信記録等は一括消去の操作により,いずれも瞬時に消去することが可能であるから,原告らの協力が得られない以上,これらの記録内容等を捜索現場で確認することは,不可能である。 ウしたがって,本件差押処分には何ら違法な点はない。 ・押収品還付拒否の違法性について(原告の主張)L地方裁判所が,平成10年12月16日に本件差押を取り消したにもかかわらず,警察官は,押収品8,14について原告らの返還要求を拒絶した。 このような行為は,明らかに違法である。 (被告の主張)ア警察官のした差押処分が準抗告により取り消された場合にも,特別抗告とともに,併せて執行停止の申立てをした場合には,その判断に必要な合理的時間内は,押収品の還付に応じる義務はないと解すべきであるから,本件においても警察官が押収品を還付しなかったことは違法ではない。 イ押収物の還付は,警察官が押収物の還付を決定し,これを還付を受ける者に通知したときにその効力が発生し,同時に押収の効力も消滅すると解するのが相当である。したがって,本件においては,押収の効力は,平成10年12月28日に警察官が原告らの弁護士に還付通知をなした時点で消滅しており,違法に押収を継続した事実はない。 ・本件捜索差押による損害及びその額について(原告の主張)ア物的損害 37万3746円警察官らによって破壊された次の各物件の修繕費用の合 差押による損害及びその額について(原告の主張)ア物的損害 37万3746円警察官らによって破壊された次の各物件の修繕費用の合計額である。 ・門扉 10万6911円・小窓 3万2335円・ 2階窓 8万5000円・ 2階ドア 14万9500円イ診療費等 1万0420円原告が警察官の暴行により被った傷害について,病院で診察を受け,支払った診療費等である。 ウ慰謝料 500万円原告は,警察官らの違法な本件捜索差押により,傷害を被り,自己のプライバシーを著しく侵害されたほか,自己の管理する物件や本件建物を押収又は損壊された。これに対する慰謝料としては,上記金額が相当である。 エ弁護士費用 80万円オ合計 618万4166円(被告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点・(令状請求の違法性)について・証拠(乙3の1~4,乙4,21~29,38~40,47,証人I)に弁論の全趣旨と上記争いのない事実等を総合すれば,次の各事実が認められる。 ア平成5年2月3日に発生した本件被疑事実については,同月22日発行のD派機関紙「P」紙上に,同派の犯行を自認する趣旨の記事が掲載されたのをはじめ,繰り返し同紙上に同旨 ,次の各事実が認められる。 ア平成5年2月3日に発生した本件被疑事実については,同月22日発行のD派機関紙「P」紙上に,同派の犯行を自認する趣旨の記事が掲載されたのをはじめ,繰り返し同紙上に同旨の記事が掲載された。他方,D派と対立関係にあるM派の機関誌と目される「Q」紙上においても,同旨の記事が掲載された。 イ本件被疑事実につき,Nらから被害届は提出されていなかったが,D派の機関紙「P」によれば,M派の内部文書や連絡メモ等(住所録を含む)が盗難に遭ったことが窺われた。 ウ A県警察は,平成5年3月10日にNら宅についての検証を行い,次いで,同月11日にD派のC地方の活動拠点である本件建物について捜索(第1次捜索)を行ったが,在所者の身体に対する捜索は行わなかった。このときの捜索では,被害品等は発見されなかった。 エその後も,D派とM派の対立抗争は続き,平成10年9月6日にL市内で開かれたM派が関係すると思われる労働組合の集会に関し,関係者に脅迫電話が掛けられたり,会場にD派構成員十数名が押し掛けたりして,妨害行為が行われたことがあった。 オ A県警察は,同年4月15日と9月30日に,別件について本件建物を捜索したが,その際に在所者が大幅に入れ替わっていることが判明した。そこで,警察官は,本件令状請求をし,E簡易裁判所裁判官がこれを認めて本件令状を発したものである。 ・上記認定事実等に基づいて,本件令状請求の違法性について判断する。 ア本件令状請求時において,本件被疑事実に係る氏名不詳の被疑者がD派に所属する者であることが推定されたにしても,その者が特定されていない以上,被疑者が本件建物に所在する蓋然性は十分とはいい難いから,本件捜索は被疑者以外の者の身体又は住居その他の場所に対する捜索に当たると解すべきであり,捜査機関は,押収 も,その者が特定されていない以上,被疑者が本件建物に所在する蓋然性は十分とはいい難いから,本件捜索は被疑者以外の者の身体又は住居その他の場所に対する捜索に当たると解すべきであり,捜査機関は,押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があることを疎明しなければならない(刑訴法222条1項,102条2項,刑訴規則156条3項参照)。そのほかに,本件建物については同一被疑事実に係る再捜索であるのだから,再捜索の必要性についても疎明しなければならないと解される。 イこれを本件についてみるに,上記・の各事実に照らせば,本件被疑事実はD派関係者による犯行である蓋然性が高いこと,平成10年9月6日にL市内で開かれたM派が関係すると思われる集会に関し,関係者に脅迫電話が掛けられたり,会場にD派構成員が押し掛けられたりなどしているが,これらの行為には,本件被疑事実の被害品と窺われるM派の内部文書や連絡メモ等(住所録を含む)が使用されている蓋然性があること,同年4月15日と9月30日の別件についての捜索に際し,本件建物の在所者が大幅に入れ替わっていることが判明し,第1次捜索後,新たな在所者が本件被疑事実に関する証拠資料をM派のC地区における活動拠点である本件建物に持ち込んでいる蓋然性があったこと等から,本件令状請求時に,本件被疑事実について,本件建物を再捜索するとともに,在所者の身体に対する捜索及び差押も行う必要があるとした警察官の判断は,根拠のないものとは認められない。 したがって,本件令状請求は違法であるとは認められない。 2 争点・(本件捜索差押方法の違法性)について・証拠(甲2,27,31,34,乙1の1~4,乙9,10,16,17,19,32の1,2,乙33~36,37の1,2,乙42,45,53~56,証人I,同J,原告本人)及び弁論 違法性)について・証拠(甲2,27,31,34,乙1の1~4,乙9,10,16,17,19,32の1,2,乙33~36,37の1,2,乙42,45,53~56,証人I,同J,原告本人)及び弁論の全趣旨に上記争いのない事実等を総合すれば,以下の各事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 ア平成10年11月9日午前9時55分ころ,I,J以下の警察官らは,本件建物1階の門扉を開けて敷地内に入り,インターホンを通じて在所者に対し,警察の捜索である旨を告げるとともに,責任者に応対に出るよう促した。 イ午前10時01分ころ,原告が,本件建物の捜索差押の立会人として,録音機(テープ内蔵)とメモ板を所持し,Rとともに本件建物の外に現れた。Jが原告に対し,捜索である旨告げ,責任者を確認したところ,原告は,自分が責任者であると名乗った。 ウ Jは,1階出入口ドアのところで,原告に対し本件令状2通を左手に持ち,3分間程度の時間を掛けて,右の指で被疑者氏名,事件名,裁判所,裁判官名,捜索すべき場所,差し押えるべき物を指しながら,順に読み聞かせ,被疑事実についても平成5年2月3日のM派活動家Nの事件である旨を伝えた。 エその後,Jは,原告に対し,捜索方法の手順について,まず在所者を一旦外に出して本件建物内に人が隠れていないか確認し,その後1階踊り場で在所者の身体捜索を実施し,それから本件建物の捜索差押を実施する,建物内に人が隠れていないか確認する際には立会人を付けて中を確認すると説明した。これに対し,原告は,本件令状の記載内容をメモ板にメモしながら,在所者全員が立会人になるので,立会人を排除するのは違法である旨抗議した。これに対しJは,立会するなら中のドアを開けるように言ったところ,原告は,違法捜索である旨抗議して内側ド モ板にメモしながら,在所者全員が立会人になるので,立会人を排除するのは違法である旨抗議した。これに対しJは,立会するなら中のドアを開けるように言ったところ,原告は,違法捜索である旨抗議して内側ドアを開けようとはせず,2階にいる在所者に対し,本件令状の内容等を告げた。 オこのような状態が続いたが,原告らが内側ドアを開ける様子を見せないため,午前10時35分ころ,Iは,原告は捜索に応じてこれに立ち会う意思はないものと判断して,消防署員を立会人として捜索を行うこととして,抗議行動を繰り返す原告やRを車庫前に移動させ,錠前師に指示して内側ドアのノブ付近の錠を開けさせたが,扉の内側からかんぬき錠がかけられていたため,結局開けることはできなかった。そこで,Iは,エンジンカッターを用いて内側ドアの横にある小窓を切断することとし,その旨原告らに警告したが,同趣旨の抗議を繰り返すのみであったため,警察官に指示してエンジンカッターで小窓の切断作業をさせた。これに対し,在所者らは,内部からエンジンカッターをハンマーでたたくなどして抵抗を繰り返し,途中でエンジンカッターの刃が破損し,切断作業ができなくなった。警察官が,できた透き間から手を差し入れて,ドアノブを内側から回したが,別にかんぬき錠が掛けられていたため開けられなかった。 カ午前11時35分ころになって,Iは,2階窓を破壊して進入することとし,原告らに対しその旨警告した上,本件建物南側にはしごを掛けて警察官がこれを昇り,在所者に窓の鍵を開けるよう求めたものの,これに応じなかったので,同11時49分ころから,警棒や特殊工具で窓ガラスを叩いて破壊しようとしたが,割ることができなかった。そこで,警察官らは,同11時55分ころ,2枚の窓ガラスの重ね部分の透き間から特殊工具を差し込んで錠を外して窓ガラ ろから,警棒や特殊工具で窓ガラスを叩いて破壊しようとしたが,割ることができなかった。そこで,警察官らは,同11時55分ころ,2枚の窓ガラスの重ね部分の透き間から特殊工具を差し込んで錠を外して窓ガラスを開け,2階事務室内へ入った。2階事務室から階段に通じる2階ドアは施錠されており,事務室内にいた在所者に鍵を開けるように求めたものの,これに応じなかったため,Iは,錠前師に開錠させることとした。2階ドアは,上半分が網目状に鉄線入りのガラス窓となっていたが,ガラスにひび割れが入っていたため,窓ガラスが割れて錠前師がけがをすることを避けるために,窓ガラスをすべて割って取り除き,開錠しようとしたが,在所者が妨害したため,開錠できず,結局施錠部分をエンジンカッターとバールで破壊してドアを開けた。警察官らは,そこから出て階段を降りて1階に向かい,1階内側ドアのかんぬき錠を開け,他の警察官らを中に入れた。 キ Iらは,1階で身体捜索をする意図であったが,2階で在所者が警察官らに詰め寄って騒ぐなどしており,本件令状を呈示できる状況ではなかったため,在所者らを一旦本件建物外に出すことにし,午後0時35分ころまでに,原告やRを含む11名を1階車庫前の西側隣家との間の境界壁付近に集めた。その場所の東側には機動隊員らが楯を構えて隊列をなして壁を作り,北側には本件建物があり,南側には歩道との境界となる門扉があった。在所者らは,機動隊に対し,違法捜索である旨の抗議を繰り返していたが,門扉の脚が折れたことを抗議する声は挙がっていなかった。 ク午後0時35分ころから1階車庫前に集められた原告を含む在所者らに対し,Jが本件令状2を両手で高く持って掲げ,内容を読み聞かせたが,これに対し,在所者らは抗議のシュプレヒコールを繰り返した。青木は,原告に立会の意思を確認し 車庫前に集められた原告を含む在所者らに対し,Jが本件令状2を両手で高く持って掲げ,内容を読み聞かせたが,これに対し,在所者らは抗議のシュプレヒコールを繰り返した。青木は,原告に立会の意思を確認したところ,明確な返答がなかったため,消防署員を立会人として身体捜索を実施することとしたが,車庫前付近には一般住民もいたため,本件建物内の1階踊り場付近で身体捜索を行うこととした。そこで,機動隊員らは,数人がかりで,抵抗する原告その他の在所者らを1人ずつ抱えるようにして連行しようとしてもみ合いの状態になったが,結局原告らの抵抗を実力で排除して踊り場まで連行し,そこで身体捜索を実施した。本件建物の1階出入口付近には警察官らもおり,外部から身体捜索の状況を容易に見通せる状況ではなかった。 ケ在所者らは,いずれもヘルメット又は帽子をかぶり,原告ほか1名を除く者らはマスクやタオルで覆面をしており,これを外そうとせず,氏名を確認する警察官に答えなかったことから,特定のため,一人ずつ番号札を持たせて,帽子,ヘルメット,マスク等を剥ぎ取り,正面から写真撮影を実施した。身体捜索に際しては,着衣のポケット等のほか,ベルトをゆるめてズボンを少し下げるなどしての捜索も実施された。 コ在所者らに対する身体捜索の結果,別紙押収品目録1~11記載の各人物から,同記載の物件がそれぞれ押収された。押収品1,8,9のフィルムは,いずれもカメラに装填されていたものであった。午後1時40分ころまでに,身体捜索と差押は終了した。その際,在所者らの一人であるKが別件の免状等不実記載罪で逮捕され,Iは,この者を連行するのに付き添って本件建物を離れ,以後Jが責任者となって捜索差押を実施した。Jが再度原告に立会の意思の確認を行ったところ,原告が立会の意思を明確にしたため,原告及び で逮捕され,Iは,この者を連行するのに付き添って本件建物を離れ,以後Jが責任者となって捜索差押を実施した。Jが再度原告に立会の意思の確認を行ったところ,原告が立会の意思を明確にしたため,原告及び在所者を立会人として,本件建物の捜索差押が実施され,本件建物2階において押収品12,13が,3階で同14が,それぞれ差し押さえられた。 ・上記認定事実等に基づいて判断する。 ア令状呈示の不備について捜査機関による捜索差押許可状の呈示(刑訴法222条1項,110条)は,原則として捜索差押開始前に,処分を受ける者が内容を閲読,認識できるような方法で行わなければならない。しかしながら,被呈示者が故意に令状の閲読を拒んだりして呈示を受ける権利を放棄したとみなされる場合は,呈示を行わずに捜索差押に着手できると解される。また,処分を受ける者とは,差押物件,捜索場所等の現実の支配者をいい,法律上の権限に基づいて占有管理する者に限らず,事実上その物又は場所を支配している者であれば足りる。 上記・認定の事実によれば,Jは捜索差押に先立ち,本件建物を所有するB社C支社の代表者である原告や身体捜索の対象となった在所者に対し,本件令状の内容を閲覧,認識できるような方法でこれを呈示したものと認められるから,この点についての原告の主張は理由がない。なお,原告は,再度の捜索の必要性について説明する義務がある旨主張するが,そのように解する根拠はない。 イ立会権の侵害について捜査機関が捜索差押をする場合は,捜索差押の開始前に立会人に立会を求めるのが原則である(刑訴法222条1項,114条2項)。しかしながら,捜査機関は,捜索差押の実効性を確保するために必要な処分をとることができる(刑訴法222条1項,111条)のであるから,立会人となるべき者の行動などの具 法222条1項,114条2項)。しかしながら,捜査機関は,捜索差押の実効性を確保するために必要な処分をとることができる(刑訴法222条1項,111条)のであるから,立会人となるべき者の行動などの具体的な状況によっては,立会を求める以前に証拠隠滅の防止のために必要な措置をとっても直ちに違法となるものではない。 これを本件についてみるに,上記・エ認定のとおり,警察官は,本件建物捜索中の罪証隠滅行為を防ぐために,本件建物の捜索に着手する前に一旦在所者を建物外に退去させ,本件建物内に在所者が存在しないことを確認して本件建物の証拠保全を図った上,在所者の身体捜索を実施し,その後本件建物の捜索を実施することを企図し,その旨原告に対し説明したと認められる。そして,本件建物の規模,利用状況,予想される在所者の人数等に照らせば,本件建物の一部を捜索中に他の部屋等で罪証隠滅行為を行うことは不可能ではなく,これを防ぐために証拠保全を図ろうとすることは,捜索差押の準備行為として,十分に理由があるものと認めることができる。また,Jは,証拠保全の際にも立会人を伴うことを前提に捜索方法の説明していたと認められる。 これに対し,原告は,Jが原告らの立会を一方的に排除して本件捜索を実施した旨主張するが,上記認定のとおり,Jは,捜索差押に着手する前に,準備行為として一旦在所者を建物外に出した上,立会人とともに本件建物の捜索差押に当たることを原告に伝えたと認められ,この認定に反する原告本人の供述は直ちに措信し難い。したがって,原告がこれに対し抗議して立会を拒絶したことは正当な理由がなく,警察官が,原告は立会を拒否したものと判断し,消防署員を立会人として捜索差押に着手したことは妥当であって,原告らの立会権を侵害したものとはいえない。 よって,この点に関する原告の主 な理由がなく,警察官が,原告は立会を拒否したものと判断し,消防署員を立会人として捜索差押に着手したことは妥当であって,原告らの立会権を侵害したものとはいえない。 よって,この点に関する原告の主張は理由がない。 ウ不必要な破壊行為について・捜査機関は,捜索差押の際に必要な処分をすることができる(刑訴法222条1項,111条)が,それには当該処分の性質上おのずから限界があって,執行目的達成のために必要かつ妥当で,方法も社会的に相当なものでなければならず,相手方に損害を与えるものは,やむを得ない場合に,必要最小限の方法によるべきである。 ・小窓の切断について警察官らが本件建物に立ち入るためにとった方法を検討するに,警察官らが錠前師に1階内側ドアの錠前を開けさせて立ち入ろうとしたが,結局開けることができず,次に小窓を切断しようとしたが,在所者らの抵抗等により失敗したのは上記認定のとおりである。そして,警察官らがまず1階ドアないし小窓を通じて立ち入ろうとしたことは,建物の構造上特に不当ということはできず,そのとった具体的方法も,在所者らのとった抵抗行為に照らすと,やむを得なかったものと認められる。 これに対し,原告は,Iらは1階内側ドアが二重に施錠されており,開くことが困難であることを知っており,威嚇の目的で破壊行為を行った旨主張するが,それを認めるに足りる証拠はない。 ・ 2階窓の破壊について次に,警察官らが2階窓のガラスを破壊しようとしてできず,結局これを外して立ち入った行為についても,捜索差押の目的を達成するためにやむを得なかったものと認められる。 ・ 2階ドアの破壊について上記認定のとおり,2階ドアにはひび割れが入っていたのであるから,開錠作業に当たる者がけがをすることを防ぐために,警察官がガ るためにやむを得なかったものと認められる。 ・ 2階ドアの破壊について上記認定のとおり,2階ドアにはひび割れが入っていたのであるから,開錠作業に当たる者がけがをすることを防ぐために,警察官がガラス部分を破壊したことは相当と認められ,特に違法な点があるとは認められない。 ・門扉の破壊行為について原告は,警察官らが内側から在所者らを門扉に押しやり,それを反対側から他の警察官らが押し戻したため,門扉のキャスター付きの脚が破壊された旨主張するが,このような行為が行われたとしたら,当然その場で在所者らの抗議の声が挙がっているはずであるのに,これが認められないことは上記認定のとおりであり,その他原告主張のような過程を経て門扉が破壊されたことを認めるに足りる証拠はない。 エ身体に対する捜索方法の違法性について・原告らは,在所者の身体に対する捜索に際し,Jの令状の読み聞かせは聞き取れず,警察官らは,原告らを立ち会わせず,本件建物外に暴力的に連れ出し,外から丸見えの玄関で身体捜索を実施するとともに,顔写真を正面から撮影した旨主張する。 ・しかしながら,上記・ク認定事実によれば,Jは原告ら在所者に対して本件令状2を読み聞かせたが,原告らがシュプレヒコールを繰り返していたと認められる。そうすると,原告ら在所者の身体に対する捜索において,令状を呈示しなかったものとは認められない。 また,男子の身体捜索について第三者の立会を要する旨の規定は存しない上,身体捜索を実施した1階踊り場付近は,外部から容易に見通せる状況ではなく,ベルトをゆるめるなどしたことも,証拠品発見のために必要な処分であったと認められる。 さらに,在所者は帽子,ヘルメット,マスク等により覆面をしており,氏名を答えなかったことから,捜索対象者の人物特定のために,顔写真 したことも,証拠品発見のために必要な処分であったと認められる。 さらに,在所者は帽子,ヘルメット,マスク等により覆面をしており,氏名を答えなかったことから,捜索対象者の人物特定のために,顔写真を撮影したこと及びその方法に不当な点があったとは認められない。 その他,警察官らのした在所者らの身体に対する捜索方法に違法な点があったとは認められない。 オ原告に対する傷害について・上記認定のとおり,身体捜索が実施される前に,複数の機動隊員らが抵抗する原告の両腕を取るなどして1階踊り場に連行しようとしてもみ合いの状態になったことが認められる。 そして,証拠(甲8,原告本人)によれば,その過程で原告が機動隊員に腹部を小突かれ,平成10年11月17日(診察を受けた日)から起算して全治1週間の見込みの右側腹部打撲,皮下出血の傷害を負ったことが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 ・確かに,原告が令状に基づく適法な身体捜索に実力で抵抗しようとしたのを抑止し,身体捜索の目的を達成するために,警察官らがある程度の実力を行使したことは違法でないとしても,上記のような傷害を負わせるまでの実力を加えたことは,明らかに行き過ぎであるといわざるを得ず,この意味で機動隊員の上記行為は違法である。 3 争点・(押収品と被疑事実との関連性)について・押収品2~4,6,7,11~13は,いずれも在所者が所持していたポケットベル又は携帯電話であるが,これらは,本件令状2の差し押えるべき物に含まれ,かつ押収時に在所者が所持していたという状況から,押収の時点では,犯行の組織性や動機等の背景事情を含む本件被疑事実との関連性がある疑いがある物と認められ,警察官らがこれを押収した判断は相当というべきである。なお,これらのうちの一部は,押収後の調査によって関連 ,犯行の組織性や動機等の背景事情を含む本件被疑事実との関連性がある疑いがある物と認められ,警察官らがこれを押収した判断は相当というべきである。なお,これらのうちの一部は,押収後の調査によって関連性がないことが判明したが,それによっても上記結論は左右されない。 これに対し,原告は,押収品2~4,6,7,11~13は,平成10年12月2日にA県警察より返還された各所持人の使用物であり,殊に同11は平成7年に事業が開始されたPHSの電話機であり,同12,13は,本件被疑事実以降に契約したものであるなどとして,押収が違法であると主張する。 しかしながら,押収の時点で関連性の疑いが存する以上,これを押収したこと自体が違法であるとはいえないし,押収の現場で関連性のないことを即座に確認することが可能であったとも認められない。また,原告は,関連性がない旨の在所者の抗議を無視して押収した旨主張するが,在所者らの申告だけに基づいて関連性の有無を確認できないとした警察官の判断に誤りがあるとは認められない。 ・押収品1,5,8,9は,いずれも在所者が所持していたフィルムであるが,これらは,本件令状2の差し押えるべき物に含まれ,かつ押収時に在所者が所持していたという状況から,同様に本件被疑事実との関連性の疑いが存する物と認められ,特にフィルムの性質上,現像しなければ内容は分からないものであるから,警察官らがこれを押収した判断は相当というべきである。 これに対し,原告は,押収品1,8,9は,現場を撮影していたものであり,同5は未使用のフィルムであることが明らかである旨主張するが,本件捜索差押当時の状況からいって,在所者らがそのように告げたとしても,関連性がないことが明らかであったとは認められないし,フィルムの使用,未使用が外見上区別の付かないことがある( る旨主張するが,本件捜索差押当時の状況からいって,在所者らがそのように告げたとしても,関連性がないことが明らかであったとは認められないし,フィルムの使用,未使用が外見上区別の付かないことがある(乙13,14の各1~4)ことからいって,差押の必要性を認めた警察官らの判断に誤りがあるとは認められない。 ・同10のカセットテープは,在所者が所持していたものであり,本件令状2の差し押えるべき物に含まれ,かつ押収時の状況から,同様に本件被疑事実との関連性の疑いが存する物と認められる。 これに対し,原告は,同物件は,本件捜索差押の際のやり取りを録音した物であるから,その場で再生すればそのことが即座に判明し,それは容易であった旨主張する。 証拠(甲31,乙32の1,2,乙50)によれば,押収品10は,当日の捜索押収の模様を身体捜索の開始直前まで録音したカセットテープであるから,直前まで録音機にセットされていたものと推認されるが,警察官らは再生のための機械を所持していなかった(乙44,証人J)上に,押収の現場で時間を掛けてテープを初めから終わりまで再生して聴取することは,必ずしも適当な方法ではないと考えられるから,これを押収した警察官の判断に誤りがあるとは認められない。 ・押収品14のビラについては,本件建物の捜索に際して押収されたものであって,本件令状1記載の差し押えるべき物に含まれる。そして,上記のとおり,押収の要件としての被疑事実との関連性は,動機,背景等の関連性を含むと解されるところ,同ビラは,本件被疑事実の被害者であるNらをM派の関係者として非難するものであって,D派とM派が対立関係にあることを示す証拠として,本件被疑事実の背景事情と全く関連性がないとはいえない。 しかしながら,証拠(乙5)によれば,上記ビラが破壊活動防止法に関する 難するものであって,D派とM派が対立関係にあることを示す証拠として,本件被疑事実の背景事情と全く関連性がないとはいえない。 しかしながら,証拠(乙5)によれば,上記ビラが破壊活動防止法に関する内容であることは一見して明らかであり,本件被疑事実に関する動機,背景を明らかにする証拠としても関連性が極めて薄いといわざるを得ず,差押の必要もない物であり,そのことは,本件捜索差押の時点でも警察官に判断可能であったと認められる。 そうすると,押収品14を差し押さえた警察官の行為は違法であったと認められる。 4 争点・(押収品還付拒否の違法性)について上記争いのない事実等・のとおり,平成10年12月16日にL地方裁判所の準抗告審において差押処分取消決定がされたのであるから,警察官は速やかに押収品を還付する義務を負うというべきであり,特別抗告と併せて押収品8,14についての執行停止の申立をしたからといって,これを免れるものではないことはいうまでもない。 もっとも,特別抗告審が執行停止の申立をするか否かを検討するに必要な相当期間は,警察官がなお留置を継続したとしても直ちに違法とはならないと解されるが,その期間はあくまで極めて短期間に限られるべきものであり,本件のように同月28日に至るまで還付をしなかったことは,明らかに上記の相当期間を超えるものであって,違法であると認められる。 5 争点・(損害)について・上記のとおりであるから,本件請求原因のうち,被告の公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に原告に損害を加えたと認められるのは,①原告に対する傷害,②押収品14の差押,③押収品8,14の還付の遅延の3点である。 なお,押収品8,14については,証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,所有権は 加えたと認められるのは,①原告に対する傷害,②押収品14の差押,③押収品8,14の還付の遅延の3点である。 なお,押収品8,14については,証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,所有権はB社C支社にあるものと推認されるが,原告はB社C支社の代表者であり,本件建物やその内部にある物についての管理権を有するものと認められるから,これらの品の押収ないし還付の遅延によって,原告も損害を被ったものと認められる。 ・損害額ア診療費等証拠(甲8,9,原告本人)によれば,原告は,機動隊員らの暴行によって被った上記傷害のために,平成10年11月17日L市所在のS病院において診察を受け,同日,診療費及び文書料として5420円を支払ったことが認められるが,それを超えて支払ったことを認めるに足りる証拠はない。 イ慰謝料原告の被った傷害については,それが法の適正な執行に当たるべき警察官の行為によって生じたものであることや,傷害の程度等にかんがみると,決して軽視すべきものではない。しかしながら,このような事態を招くに至った原因の一つとして,原告の側でも,警察官らの適法な捜索差押に理由なく抵抗し,これを妨げたことがあると認められるので,そのような事情も十分に斟酌する必要がある。 押収品8,14については,これらの財産的価値は少額のものであると推認されることや,差押の継続した期間ないし還付が遅延した期間もさして長いものではないことから,これらが還付されたことによって原告の損害は十分回復されたものと認めるのが相当である。 そこで,これらの点を総合考慮して,本件における原告に対する慰謝料の額としては,10万円を相当と認める。 ・弁護士費用本件について警察官の行為と相当因果関係のある弁護士費用としては,診 そこで,これらの点を総合考慮して,本件における原告に対する慰謝料の額としては,10万円を相当と認める。 ・弁護士費用本件について警察官の行為と相当因果関係のある弁護士費用としては,診療費等と慰謝料の合計額10万5420円の10%相当額の1万0542円を相当と認める。 6 結論以上の次第で,国家賠償法1条1項に基づく原告の請求は,損害(診療費等,慰謝料,弁護士費用)合計11万5962円と,これに対する不法行為の日である平成10年11月9日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は失当である。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第10部裁判長裁判官西尾進裁判官山下美和子裁判官横井健太郎・別紙物件目録 所在 L市a区bc丁目d番地家屋番号 e番種類鉄筋コンクリートブロック造陸屋根3階建床面積 1階 f㎡2階 g㎡3階 h㎡・別紙捜索差押許可状目録 1 被疑者の氏名不詳被疑事件名窃盗捜索すべき場所,身体又は物L市a区bc丁目d番e号 B社C支社差し押えるべき物本件に関係あると認められる・ D派組織の主義主張・活動方針に関する規約,綱領,議案書,会議録,軍報,機関紙(誌),ビラ,連絡・調査報告等の文書類及び写真,フィルム,ビデオテープ,カセット に関係あると認められる・ D派組織の主義主張・活動方針に関する規約,綱領,議案書,会議録,軍報,機関紙(誌),ビラ,連絡・調査報告等の文書類及び写真,フィルム,ビデオテープ,カセットテープ,並びにこれらのデータを電磁記録として記憶していると思料される電子計算機その他の記録媒体・葉書,手紙,住所録,電話帳,電話メモ等の文書類及び携帯電話,ポケットベル・ M派及び同派傘下団体に関する内部文書,活動記録等文書類・ T銀行及び他銀行発行の「N」名義の預金通帳・ U銀行及び他銀行発行の「N」及び「O」名義のキャッシュカード・ 「N」等と刻された印鑑 2 被疑者の氏名,被疑事件名,差し押えるべき物 1と同じ捜索すべき場所,身体又は物L市a区bc丁目d番e号 B社C支社に在所する者の身体・着衣・所持品・別紙押収品目録 1 フィルム1本。但し24枚撮り押収品目録交付書2枚目(「写真①の男」のもの)記載 2 ポケットベル1個。 押収品目録交付書3枚目(「写真②の男」宛のもの)記載 3 ポケットベル1個。 押収品目録交付書3枚目(「写真②の男」宛のもの)記載 4 ポケットベル1個。 押収品目録交付書4枚目(「写真③の男」宛のもの)記載 5 フィルム1本。但し24枚撮り押収品目録交付書4枚目(「写真③の男」宛のもの)記載 6 ポケットベル1個。 押収品目録交付書5枚目(「写真⑤の男」宛のもの)記載 7 ポケットベル1個。 押収品目録交付書5枚目(「写真⑤の男」宛のもの)記載 8 フィルム1本。24枚撮り押収品目録交付書5枚目(「写真⑤の男」宛 主文 (「写真⑤の男」宛のもの)記載7ポケットベル1個。押収品目録交付書5枚目(「写真⑤の男」宛のもの)記載8フィルム1本。24枚撮り押収品目録交付書5枚目(「写真⑤の男」宛のもの)記載9フィルム1本。但し24枚撮り押収品目録交付書6枚目(「写真⑥の男」宛のもの)記載カセットテープ1本。押収品目録交付書7枚目(「写真⑦の男」宛のもの)記載11携帯電話1台。押収品目録交付書8枚目(「写真⑨の男」=原告宛のもの)記載12携帯電話1台。押収品目録交付書9枚目(「2階立会人」宛のもの)記載13携帯電話1台。押収品目録交付書9枚目(「2階立会人」宛のもの)記載14ビラ1枚。但しM派の秘密同盟員NとO等と記載のあるもの押収品目録交付書10枚目(「3F立会人」宛のもの)記載
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