昭和20(オ)50 所有權取得登記抹消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和23年1月30日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破毀する。      本件を仙臺高等裁判所に差戻す。          理    由  上告理由は別紙上告理由書記載の通りである。  そこで、先づ上告理由第一點について

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判決文本文2,556 文字)

主文 原判決を破毀する。 本件を仙臺高等裁判所に差戻す。 理由 上告理由は別紙上告理由書記載の通りである。 そこで、先づ上告理由第一點について判断するに、原審の認定した事實によれば、上告人は大正十四年十二月二十七日に被上告人Aに對し、本件不動産を代金七千五百圓で内金五百圓は契約成立と同時に、内金三千圓は大正十五年一月十日に、残金四千圓は同年十月二十日にそれぐ支拂うとと、所有權移轉登記は同年一月末日限りするが買主の都合によつて後日に延期し得ることを定めて、賣渡す契約をした。被上告人Aは大正十五年二月二十四日までに四囘に右代金の内合計金三千百七十一圓二十七錢を支拂つたが、同人の求めによつて、同月二十七日兩者間に右代金を六千六百八十圓に減額し、既に支拂われた右金額を控除した残額金三千五百八圓七十三餞の内金三千圓は同年十月二十日限り、残金五百八圓七十三錢は大正十六今(昭和二年)五月二十日限り支拂う約定が成立した。 被上告人Aはその後、大正十五年七月十九日に金二百圓を又同年八月七日に金八百圓をそれぞれ上告人に支拂つたので、その支拂額は合計金四千百七十一圓三十七錢に達した。上告人は同年十二月米國に渡航する直前、被上告人Aに對し何時所有權移轉登記をしても異議がない、残金は米國に送金せられ度いと申入れ、右登記申請に使用する爲めの白紙委任状數通を交付して、その登記手續をAに一任した。しかし被上告人Aは登記費用、不動産取得税等の支辨に窮したので、登記手續を遷延していたが、上告人から交付を受けた白紙委任状には大正の年號が記載してあり、その訂正に必要な檢印がなかつたので、昭和年中に入つてからは使用できない状態になつた。そとでAは滞米中の上告人に對して、屡々窮状を述べて、更に残代金の減額を求めると共に、改 正の年號が記載してあり、その訂正に必要な檢印がなかつたので、昭和年中に入つてからは使用できない状態になつた。そとでAは滞米中の上告人に對して、屡々窮状を述べて、更に残代金の減額を求めると共に、改めて資買契約書、登記申請書等を作成して送付するからそれに捺印してもらいたいと懇請したが、上告人が應じなかつたので、上告人の實印によく似ておる印判を他から入手して、上告人名義の登記申請委任状、賣買契約書等登記に必要な書類を作成したうえ、昭和九年五月二十二日に福島區裁判所小濱出張所にこれを提出して、上告人から被上告人Aに對する本件不動産の所有權移轉登記を申請し、その登記を経由したと云うのである。 原審が上記の事實を認定し且つ本件賣買では所有權移轉の時期について別段の約定がなかつたから、本件不動産の所有權は賣買契約成立と同時に、上告人から被上告人Aに移轉したものと判定したうえ、論旨に引用してある通り、被上告大Aが上告人の偽印を使用して登記申請の委任状等登記官吏に提出すべき書類を作成したことは不法も甚しいが、その登記申請が受理せられて登記が完了した以上は、登記が實質上の權利關係に一致し且つ登記を経由することについて、豫め上告人の承諾を得ておる限り、上告人の登記義務の履行として爲された有効の登記と解するのが相當であつて、上告人はその登記の抹消を請求することができないと判示したことは、判文上明かである。 <要旨>しかし、不動産登記が有効になされる爲めには、その登記が單に實體上の權利關係に一致するのみでなく、不</要旨>動産登記法の定めておる形式上の要件を完備したものでなければならないことは、既に大審院判例の示す通りであるが(明治四十五年二月十二日言渡、明治四十四年(オ)第三百七十八號事件参照)被上告人Aが上告人の實印に酷似する印章を使用して、上告人名義 たものでなければならないことは、既に大審院判例の示す通りであるが(明治四十五年二月十二日言渡、明治四十四年(オ)第三百七十八號事件参照)被上告人Aが上告人の實印に酷似する印章を使用して、上告人名義の登記申請委任状、賣買契約書等を僞造しこれを登記官吏に提出して、前記登記を経由したことが、原審の認定した通りだとすれば、右登記は明かに不動産登記法第三十五條第一項の規定、殊に同項第五號に違反して爲された登記であり、同號は登記が申請人の意思に基づいて爲されることを保障する爲めの方式を定めておる重要な規定であるから、これに違反して爲された前記登記は、他の比較的輕微な方式に違反する場合と異つて、たとえそれが實體上の權利關係に合致しておるとしても、又被上告人Aが豫て上告人から前記登記を爲すことを委託されていたとしてもそれだけでこれを有効と解するととはできない。蓋し、被上告人Aは上告人から登記手續を委託せられてはおつたがそれは上告人が作成した委任状等を用いて爲すことであつて、上記のように勝手に委任状を作成し、これを用いて登記手続をする權限までは與えられておらなかつたとみるべきだからである。(この點は原審も同様に認定しておる。)而して、前記登記が無効である以上、特別の事情のない限り、上告人に於で、被上告人Aに對し、その抹消登記手続を爲すべきことを請求し得るのは云うまでもない。従つて右と異る前記原審の判断は法律の解釋適用を誤つた違法があるものと云うべきであり、この違法は本訴請求中獨り被上告人Aに對する部分ばかりでなく、同人から本件不動産の一部を買受けた被上告人Bに對し、又その他の部分を競落によつて取得した被上告人Cに對し、それぞれの取得登記の抹消登記手続を請求する部分にも影響すること勿論であるから、原判決はこの點に於て全部の破毀を免れない。 而して本 に對し、又その他の部分を競落によつて取得した被上告人Cに對し、それぞれの取得登記の抹消登記手続を請求する部分にも影響すること勿論であるから、原判決はこの點に於て全部の破毀を免れない。 而して本件記録は戦災によつて焼失し、他の上告理由の當否を判断する資料にも缺けておるから、更に原審の審理判断を必要とする。 以上の次第によつて、他の上告理由についての判断を省略し、民事訴訟法第四百七條によつて主文の通り判決する。 (裁判長判事箕田正一判事大野璋五判事柳川昌勝判事渡邊葆判事多田威美)

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