- 1 -主文 本件各控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴人ら(1)原判決を取り消す。 (2)被控訴人が平成14年2月27日付けの平成11年分所得税の更正・加算税の賦課決定通知書(新所特第205号)で控訴人Aに対してした,同控訴人の平成11年分所得税に係る更正処分のうち納付すべき税額157万1400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 (3)被控訴人が平成14年2月27日付けの平成11年分所得税の更正・加算税の賦課決定通知書(新所特第204号)で控訴人Bに対してした,同控訴人の平成11年分所得税に係る更正処分のうち納付すべき税額14万0900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 (4)被控訴人が平成14年4月26日付けの平成11年分所得税の更正・加算税の賦課決定通知書(新所特第297号)で控訴人Cに対してした,同控訴人の平成11年分所得税に係る更正処分のうち納付すべき税額83万6500円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 (5)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 被控訴人主文と同旨第2事案の概要等 事案の概要本件は,修正申告書に外国税額控除に関する所得税法95条4項所定の記載事項を記載するなどして修正申告をした控訴人らが,被控訴人から,控訴人らの確定申告書には同項所定の記載事項の記載等がなかったので,外国税額控除を認めるための要件を欠くとして,所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから,上記各処分は違法であると主張して,その取消しを求めている事案である。 原審は,控訴人らの主張を排斥して,その請求をいずれも棄却したところ,控訴人らが び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから,上記各処分は違法であると主張して,その取消しを求めている事案である。 原審は,控訴人らの主張を排斥して,その請求をいずれも棄却したところ,控訴人らがこれを不服として控訴した。 所得税法等の定め及び前提となる事実本件において適用される所得税法等の定め及び本件における前提となる事実は,原判決5頁7行目の「別表1」を「原判決別表1」に,同頁8行目の「別表2」と「別表3」をそれぞれ「原判決別表2」と「原判決別表3」に改めるほか,原判決事実及び理由の「第2事案の概要」の「1所得税法等の定め」及び「2前提となる事実」の各欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 当事者の主張及び争点本件における当事者双方の主張及び争点は,原判決23頁16行目の「別表4」を「原判決別表4」に,同31頁24行目の「別表5」を「原判決別表5」に改め,次項に当- 2 -審における控訴人らの補足的主張を付加するほか,原判決事実及び理由の「第2事案」「()」,「」の概要の 本件各課税処分の根拠及び適法性被告の主張 当事者の主張及び「5争点」の各欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における控訴人らの補足的主張(1)原判決は,所得税法95条4項の規定する確定申告書の意義について,外国税額控除の要件をどのように定めるかは立法政策の問題であるとして,これに修正申告書が含まれないと解することは不合理でないと判断するが,外国税額控除は,現在国際社会における常識であり,これがなければ日本人及び日本法人は二重課税という不利益を被ることから,日本に帰属する動機付けに影響がでることは明白であり,その意味で原判決の外国税額控除における認識は極めて時代遅れな考えである。その結果,単なる翌年 及び日本法人は二重課税という不利益を被ることから,日本に帰属する動機付けに影響がでることは明白であり,その意味で原判決の外国税額控除における認識は極めて時代遅れな考えである。その結果,単なる翌年以降の税額に影響がでるからとして,申告制度という素人に税金の申告をさせるということによる事務コストの軽減という膨大な利益を享受しながら,外国税額控除に際して修正申告を認めないという極めて不当な制度を容認しているものであり不当である。 (2)原判決は,控訴人らが所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」の有無に関して主張している①申告の必要がないと誤解していた,②会計税務に必要な手続は完了した旨のファックスを受領したので,本件各報酬に係る我が国での税務手続も終わったものと理解していた,③外国所得税の納付に関する書類が手元になかった,という事情を採用せず,その結果として,控訴人らについて所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」を認めなかったが,この点については事実認定及び法令解釈の誤りがある。そもそも,控訴人らは,数億円にわたる投資をしており,本件投資に際して税務並びに会計処理に何千万円もの経費を支払っているのに対し,控訴人らが本件において所得を申告しないことによる利益(税務申告を誤魔化し,それが発覚しな),,いことにより不当に取得しうる額は本件各報酬を給与所得であるとしたとしても高々合計250万円程度にすぎないのであり,まして控訴人らの本件各報酬は退職所得であって,控訴人らにとってほとんど利益がないことからすれば,本件において,控訴人らに上記①のような誤解がないにもかかわらず外国税額控除を省略するという動機はあり得ないのであり,原判決の判断は,このような経済人たる自然人の判断としてごく当たり前の経験則すら失念しているものであり, に上記①のような誤解がないにもかかわらず外国税額控除を省略するという動機はあり得ないのであり,原判決の判断は,このような経済人たる自然人の判断としてごく当たり前の経験則すら失念しているものであり,極めて不当である。 (),「」 控訴人らは本件のような事案においても税務署長の裁量によりやむを得ないとの認定を受けているという事例があると聞いているので,原審において,被控訴人,,に対してそのような事例があるかという点に関し度々返答を求めていたのであるが被控訴人はそれを全く無視している。この事実は本件のような事案においても税務署長の裁量により「やむを得ない」と認定している場合があることを認めていることの証である。しかし,原判決は,その点についての判断を全くしていないのであり,ある意味では控訴人らが判断を求めた最も重要な事項を判断していないのであり,判断に遺漏がある。 (4)原判決は,本件各報酬が退職所得でないことを認定するに際し,本件各報酬を支払うことは既に平成11年6月期に定まっており,本件各報酬が同期において未払報酬として経理処理されているとして,単に本件各報酬の支払時期が遅れ,そのため本- 3 -件各報酬の支払時期と控訴人らの役員退任の時期が近接したにすぎないから,本件各報酬が控訴人らの役員退任を契機に支給されたものといえないと判断しているが,本件法人は,1月1日から12月31日までを決算期とする会社であり,事情は不明であるが,アメリカの税理士が最終決算期を平成11年6月末として処理し,その最終決算期において,報酬を役員退職金として経理処理したものである。原判決がいうように本件各報酬が既に同年6月期に定まっており,同期において未払報酬として経理処理されたなどということはないのであり,乙19号証の所得税申告書写に最終 職金として経理処理したものである。原判決がいうように本件各報酬が既に同年6月期に定まっており,同期において未払報酬として経理処理されたなどということはないのであり,乙19号証の所得税申告書写に最終決算書との記載があるのに,原判決はこれを無視したものであり,事実認定に明らかな誤りがある。そもそも,原判決は,解散を決意した者が,あえて税務上不利な政策決定をすることがあり得ないという,ごく当たり前の経験則を無視した判断を前提としており,その結果,退職の決意と本件各報酬を極めて不自然に分断し,経験則に違反する極めて不自然な判断を行っているものであって,事実認定及び法令解釈において誤りがある。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,原判決39頁17行目の「別表4」を「原判決別表4」に改め,次項に当審における控訴人らの補足的主張に対する判断を付加するほか,原判決事実及び理由の「第3争点に対する判断」欄の記載と同旨であるから,これを引用する。 控訴人らの当審における補足的主張に対する判断(1)控訴人らは,外国税額控除は,現在国際社会における常識であり,これがなければ日本人及び日本法人は二重課税という不利益を被ることから,日本に帰属する動機付けに影響がでることは明白であるとして,外国税額控除の要件をどのように定めるかは立法政策の問題であるとした原判決は誤りであり,所得税法95条4項の規定する確定申告書の意義について,これに修正申告書が含まれないとした原判決は不当であるという趣旨の主張をする。 しかしながら,外国税額控除により国際的二重課税を排除するか否かは,各国家の政策的判断により決定される事項であり,控訴人らの主張するような事情は,外国税額控除制度を設けることとした政策目的の範疇に しかしながら,外国税額控除により国際的二重課税を排除するか否かは,各国家の政策的判断により決定される事項であり,控訴人らの主張するような事情は,外国税額控除制度を設けることとした政策目的の範疇に属する事柄にほかならないものである。所得税法95条4項にいう確定申告書に修正申告書が含まれないのは明らかであり,原判決の判断に控訴人らの主張するような誤りはない。 (2)控訴人らは,原判決が所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」として控訴人らの主張する①申告の必要がないと誤解していた,②会計税務に必要な手続は完了した旨のファックスを受領したので,本件各報酬に係る我が国での税務手続も終わったものと理解していた,③外国所得税の納付に関する書類が手元になかった,という事情を採用せず,その結果として控訴人らについて所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」を認めなかった点について事実認定及び法令解釈の誤りがある旨主張する。 しかしながら,控訴人らが上記①のような誤解をしていたと認めるに足りる証拠がないこと,また上記①のような誤解があったとしても,これが所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」と認められないことは前記(原判決の引用)のとおりであ- 4 -る。また,上記②の点についても,控訴人らが指摘するファックスは甲21号証であると考えられるが,同ファックスはD税理士が平成12年2月4日付けで控訴人Aに宛てたものであり,そこには「E社等の清算手続はとりまして通知が来るのを待っております。だいたい60日間位かかります。会計税務の必要な手続は完了しております」という趣旨が記載されているのであるから,このファックスにおける「会計税務。 の必要な手続は完了しております」との文言は,E社等の清算に伴う米国での会計税。 務が完了したことを意味するもの ります」という趣旨が記載されているのであるから,このファックスにおける「会計税務。 の必要な手続は完了しております」との文言は,E社等の清算に伴う米国での会計税。 務が完了したことを意味するものであることは明らかであり,控訴人らは我が国における平成11年分の確定申告をF税理士に委任していること(乙5ないし7)からしても,上記ファックスの記載をもって,控訴人らが本件各報酬について我が国における税務手続が完了したものと理解したとは到底考えられない。さらに,上記③の点についても,前記(原判決の引用)のとおり,D税理士からの上記ファックスに「役員退職金の明細に関して,税務当局より連絡があれば提出致します。それまで私共の方でファイルしておきます」との記載があることからして,必要書類はD税理士が所持していたことが推認でき,また,控訴人らは必要に応じて同税理士からこれを取り寄。 ,,せることができたものというべきであるそうすると控訴人らの申告手続において確定申告書に所得税法95条4項所定の記載がされず,必要書類の添付がなかったのは,控訴人らが必要な情報及び資料をD税理士から入手してF税理士に提供すること。 ,,を怠ったことによるものといわざるを得ないしたがって上記③の事情についても単に控訴人らの個人的な事情にすぎないのであって,これが所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」に当たらないのは明らかである。 なお,控訴人らは,数億円にわたる投資をしており,本件投資に際して税務並びに会計処理に何千万円もの経費を支払っているのに対し,控訴人らが本件において所得を申告しないことによる利益は高々合計250万円程度にすぎないことなどから,本件において,控訴人らに上記①のような誤解がないにもかかわらず外国税額控除を省略するという動機はあり得ず, 件において所得を申告しないことによる利益は高々合計250万円程度にすぎないことなどから,本件において,控訴人らに上記①のような誤解がないにもかかわらず外国税額控除を省略するという動機はあり得ず,原判決の判断は,このような経済人たる自然人の判断としてごく当たり前の経験則すら失念している旨主張するが,控訴人らのいう経験則の存否はさておき,控訴人らの主張するような誤解があったとしても,これが所得税法95条6項所定の「やむを得ない事情」に当たらないことは前記(原判決の引用)のとおりである。 (),「」 控訴人らは本件のような事案においても税務署長の裁量によりやむを得ないとの認定を受けているという事例があると聞いているので,被控訴人に対して,そのような事例があるかという点に関し度々返答を求めていたのであるが,被控訴人はそれを全く無視しているという事実は,本件のような事案においても税務署長の裁量により「やむを得ない」と認定している場合があることを認めていることの証である旨主張する。しかしながら,控訴人らの主張は伝聞を根拠とするものである上,その伝聞内容の正確性についても本件においては何ら立証がなされていないし,被控訴人が控訴人らの上記要求に対し何らの返答をしていないことをもって,被控訴人が本件のような事案においても税務署長の裁量により「やむを得ない」と認定している場合があることを認めたものであるとの推論も到底成り立ち得ないものであるから,控訴人らの上記主張は理由がない。 - 5 -(4)控訴人らは,原判決が本件各報酬について給与所得に該当すると判断したことは極めて不当な事実認定であり,原判決は,乙19号証の所得税申告書写に最終決算書との記載があるのにこれを無視している旨主張する。 しかしながら,前記認定事実(原判決の引用)によれ 当すると判断したことは極めて不当な事実認定であり,原判決は,乙19号証の所得税申告書写に最終決算書との記載があるのにこれを無視している旨主張する。 しかしながら,前記認定事実(原判決の引用)によれば,E社は,本件パートナーシップから平成11年4月に売却益を受けたことから,同年6月期に100万ドル近い投資売却益を計上し,これに伴い,控訴人らに本件各報酬を給付することをその時点までに既に決定していたものである一方,控訴人Aは,本件パートナーシップが清算手続に移行したことから,平成11年4月の時点でE社等を解散して清算することを決定していたものの,同年7月12日付けの書面(甲35の1)で,D税理士に対し,E社等の清算方法については,タックスプランニングについて十分説明を受けたうえで慎重に意思決定していきたいと考えている旨を述べていることからすれば,少なくとも平成11年7月12日時点において,E社等の解散の具体的な時期やこれに。 ,伴う控訴人らの役員退任の時期は定まっていなかったというべきであるしたがって本件各報酬は退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されたものというよりも,むしろ,平成11年6月期にE社が利益を上げたことを契機として支給が決定されたものと認めるのが相当であり,本件各報酬を給与所得に該当するとした原判決の判断は正当である。なお,控訴人らは,原判決が乙19号証の所得税申告,,書写において最終決算書との記載があることを無視している旨批判するが原判決はこれに最終申告書であることが明記されていたものと認定したうえで,この事実を考慮したとしても本件各報酬を給与所得と認めるのが相当であると判断したものであって,控訴人らの上記批判は当たらない。 以上のとおり,控訴人らの主張はいずれも理由がなく。 よって,原判決 この事実を考慮したとしても本件各報酬を給与所得と認めるのが相当であると判断したものであって,控訴人らの上記批判は当たらない。 以上のとおり,控訴人らの主張はいずれも理由がなく。 よって,原判決は相当であり,本件各控訴は理由がないからいずれもこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部裁判長裁判官西田美昭裁判官高野伸裁判官小池喜彦
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