平成24年12月13日判決言渡平成22年(行ウ)第519号追加的併合請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求北区福祉事務所長が平成18年7月4日付けで原告に対してした生活保護法63条の規定に基づく費用返還金額決定処分(ただし,平成23年9月13日付け決定による一部取消し後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,中国残留邦人である原告が,生活保護法による保護の実施機関である北区長から保護の決定及び実施に関する権限の委任を受けた北区福祉事務所長による保護開始決定を受けて同法に基づく保護を受けていたところ,その夫で原告世帯の世帯員であったAの中国への帰国等を理由として,北区福祉事務所長から,平成18年7月4日付けで,同法63条の規定に基づく費用返還金額決定処分を受けたため,同決定処分は同法19条又は63条の規定に違反する違法な処分であると主張し,北区福祉事務所長の所属する北区を被告として,上記決定処分(ただし,平成23年9月13日付け決定による一部取消し後のもの。以下「本件費用返還金額決定処分」という。)の取消しを求める事案である。 1 法令の定め本件に関係する法令の定めは別紙1(関係法令の定め)のとおりである。なお,同別紙の中で定めた言葉の意味は,以下の本文中においても同一の意味であるものとする。 2 前提事実(顕著な事実,争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)当事者等ア原告は,昭和▲年▲月▲日に現在の中華人民共和国(以下「中国」という。)遼寧省で生まれた中国残留邦人であり,平成9年6月12日に夫であるA及び2人の子と共に我が国に (1)当事者等ア原告は,昭和▲年▲月▲日に現在の中華人民共和国(以下「中国」という。)遼寧省で生まれた中国残留邦人であり,平成9年6月12日に夫であるA及び2人の子と共に我が国に帰国し,平成10年1月30日に日本国籍を取得したものである。Aは,▲年(昭和▲年)▲月▲日に現在の中国河北省で生まれた中国国籍を有する外国人男性である。(乙ハ2,3)イ北区福祉事務所長は,北区の福祉に関する事務所設置条例(昭和40年北区条例第1号)に定める福祉に関する事務所の長であり,保護の実施機関である北区長から生活保護法19条4項,北区生活保護法施行細則(昭和40年北区規則8号)1条の規定により保護の決定及び実施に関する権限の委任を受けたものである。 (2)原告に対する保護の決定及び実施原告は,平成9年10月1日,A及び2人の子との世帯の世帯主として,北区福祉事務所長に対し,生活保護法24条1項の規定に基づいて,生活保護の開始申請をし,北区福祉事務所長は,同日,原告に対し,生活保護の開始決定をした。(乙ハ2,3)原告は,その後,北区福祉事務所長から,生活扶助,住宅扶助及び医療扶助の支給を受けていた。なお,原告は,平成20年4月以降は,生活保護法に基づく保護ではなく,「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立支援に関する法律」(平成6年法律第30号)に基づく支援給付の支給を受けている。 (3)原告及びAの中国への渡航又は帰国Aは,平成17年4月14日に本邦を出国して,中国に帰国し,平成18年2月23日に本邦に入国した。(乙ハ7の2)原告は,平成17年9月17日に本邦を出国して,中国に渡航し,同年10月1日に本邦に帰国した。(乙ハ7の1)(4)本件費用返還 年2月23日に本邦に入国した。(乙ハ7の2)原告は,平成17年9月17日に本邦を出国して,中国に渡航し,同年10月1日に本邦に帰国した。(乙ハ7の1)(4)本件費用返還金額決定処分(一部取消し前のもの)北区福祉事務所長は,平成18年7月4日,原告に対し,生活保護法63条の規定に基づいて,生活扶助費及び医療扶助費のうち67万8672円を平成21年7月31日までに返還することを命ずる旨の本件費用返還金額決定処分をした。(甲1,乙ハ13)本件費用返還金額決定処分の理由は,上記(3)の原告の中国への渡航及びAの中国への帰国により,原告らは国内で生活していないこととなり,生活保護法の適用除外の期間が発生したというものであるところ,その返還対象期間は,原告の中国への渡航について,平成17年9月18日から同月30日まで,Aの中国への帰国について,同年4月15日から平成18年2月22日までである。 (5)審査裁決原告は,平成18年8月2日,東京都知事に対し,行政不服審査法5条1項1号,生活保護法64条の規定に基づいて,本件費用返還金額決定処分の取消しを求める審査請求をしたところ,東京都知事は,同年11月30日,原告に対し,原告の審査請求を棄却する旨の審査裁決(以下「本件審査裁決」という。)をした。(甲2,甲6の2)本件審査裁決の理由は,生活保護法の適用上,国外にいる者に生活保護を適用するということはなく,同法は国外に要保護者が滞在している期間は適用されないというものである。 (6)再審査裁決原告は,平成18年12月8日,厚生労働大臣に対し,生活保護法66条1項の規定に基づいて,本件費用返還金額決定処分及び本件審査裁決の各取消しを求める再審査請求をしたところ,厚 )再審査裁決原告は,平成18年12月8日,厚生労働大臣に対し,生活保護法66条1項の規定に基づいて,本件費用返還金額決定処分及び本件審査裁決の各取消しを求める再審査請求をしたところ,厚生労働大臣は,平成22年2月9日,原告に対し,原告の再審査請求を棄却する旨の再審査裁決(以下「本件再審査裁決」という。)をした。(甲3,甲8の2)本件再審査裁決の理由は,生活保護法は我が国の領土内でのみ効力を有する国内法であり,同法による保護は国内に存在しているときに限り実施され,国外にある者については期間の長短,理由のいかんを問わず同法の効力が及ばないというものである。 (7)本件訴えの提起原告は,平成22年8月6日に国を被告とする本件再審査裁決の取消しの訴え(当庁平成○年(行ウ)第○号裁決取消請求事件。以下「本件基本事件」という。)を提起したところ,同年9月10日には本件訴えを本件基本事件に併合して提起し,さらに,平成23年4月15日には東京都を被告とする本件審査裁決の取消しの訴え(当庁平成○年(行ウ)第○号追加的併合請求事件。以下「別件追加的併合事件」という。)を本件基本事件に併合して提起した。 (8)本件費用返還金額決定処分の職権による一部取消し北区福祉事務所長は,平成23年9月13日,原告に対し,本件費用返還金額決定処分のうち原告の中国への渡航に係る3万4463円の部分を職権により取り消す旨の決定をした。(乙ハ1)上記取消しの理由は,原告の中国への渡航はその期間が短期間であり,かつ,親族訪問を目的とするものであると認めることができるというものである。 上記取消決定による一部取消し後の本件費用返還金額決定処分が返還を命じた金額の内容は,別紙2(本件費用返還金額決定処 ,親族訪問を目的とするものであると認めることができるというものである。 上記取消決定による一部取消し後の本件費用返還金額決定処分が返還を命じた金額の内容は,別紙2(本件費用返還金額決定処分の内容)のとおりである。 (9)本件訴えの審理経過当裁判所は,平成23年9月29日に開かれた本件基本事件の第1回口頭弁論期日において,本件基本事件及び別件追加的併合事件の口頭弁論と本件訴えの口頭弁論とを分離した上,本件基本事件及び別件追加的併合事件の口頭弁論を終結した。当裁判所は,平成24年3月27日に開かれた本件訴えの第3回口頭弁論期日において,本件訴えの口頭弁論を終結し,判決言渡期日を同年6月12日と指定し,同年3月27日,本件基本事件及び別件追加的併合事件の判決言渡期日を同年6月12日と指定した。当裁判所は,被告の口頭弁論の再開の申出を受けて,同月7日,本件訴えの判決言渡期日の指定を取り消し,口頭弁論の再開を命じた。当裁判所は,同月12日,本件基本事件及び別件追加的併合事件について,本件再審査裁決及び本件審査裁決の各取消請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。当裁判所は,同年7月26日に開かれた本件訴えの第4回口頭弁論期日において,本件訴えの口頭弁論を終結した。 3 争点本件の争点は,本件費用返還金額決定処分の適否,具体的には,本件費用返還金額決定処分は生活保護法19条又は63条の規定に違反する違法な処分であるか否か,すなわち,① Aは中国への帰国期間中,国内に同法19条の居住地を有していたか否か(争点1),及び,② 原告は上記期間中,Aに係る保護費について同法63条の「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであるか否か(争点2)である。 4 当事者の主張の要旨 点1),及び,② 原告は上記期間中,Aに係る保護費について同法63条の「急迫の場合等において資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであるか否か(争点2)である。 4 当事者の主張の要旨(1)原告の主張の要旨本件費用返還金額決定処分は,生活保護法19条及び63条の規定に違反する違法な処分であり,取り消されるべきである。 ア争点1について(本件費用返還金額決定処分が生活保護法19条の規定に違反すること)(ア)居住地主義生活保護法が居住地主義(19条)等を採用した趣旨は,要保護者が国内に居住地を有する限り,そこにおける継続的,安定的な生活に着目して生活状態,資産状況等の事項を把握し,それを基に必要な扶助を与えるとともに,自立の援助のための措置を講ずるためであると解されるのであり,国外に現在している者であっても,同条の居住地に当たると認められる居住の場所を国内に有しているのであれば,同法による保護を受けることができる。 (イ)Aが国内に居住地を有していたことAは,○による○を負っているところ,日本語を使用することができず,我が国の病院では意思疎通をすることができないため,中国の病院で○の治療を受ける目的で,併せて,当時体調を崩していた原告の養母の介護をも目的として,中国に帰国したのであり,中国遼寧省所在の原告の養母の家に滞在し,○の治療を受けるとともに,原告の養母の介護をしていた。Aは,一時的に中国に帰国したにすぎず,その期間中,生活保護法19条の居住地に当たると認められる居住の場所を国内に有していたのであり,同法による保護を受けることができる。 (ウ)したがって,本件費用返還金額決定処分は,Aが中国への帰国期間中,国内に居住地を有していなかった と認められる居住の場所を国内に有していたのであり,同法による保護を受けることができる。 (ウ)したがって,本件費用返還金額決定処分は,Aが中国への帰国期間中,国内に居住地を有していなかったことを理由とするものとしても,生活保護法19条の規定に違反する違法な処分である。 イ争点2について(本件費用返還金額決定処分が生活保護法63条の規定に違反すること)生活保護法63条の規定は,被保護者が急迫の場合等において「資力があるにもかかわらず」保護を受けたときについての定めであるところ,原告及びAは,Aの中国への帰国期間中,利用し得る資産,能力等を有していなかったのであって,原告は,上記期間中,Aに係る保護費について「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものではないというべきである。 したがって,生活保護法63条の規定に基づいてされた本件費用返還金額決定処分は,同条の規定に違反する違法な処分である。 (2)被告の主張の要旨本件費用返還金額決定処分は,生活保護法19条又は63条の規定に違反する違法な処分ではない。 ア争点1について(本件費用返還金額決定処分が生活保護法19条の規定に違反しないこと)(ア)居住地主義生活保護法は,要保護者の居住地を所管する都道府県知事等を原則的な保護の実施機関とする居住地主義(19条)と生活扶助を原則として要保護者の居住地で与える居宅保護の原則(30条)とを採用しているところ,その趣旨は,要保護者が居住地を有する限り,そこにおける継続的,安定的な生活に着目して,生活状態,資産状況等を把握し,それを基に必要な扶助を与えるとともに,自立の助長のための措置を講ずるためであると解される(最高裁平成17年(行ヒ)第47号同20年 る継続的,安定的な生活に着目して,生活状態,資産状況等を把握し,それを基に必要な扶助を与えるとともに,自立の助長のための措置を講ずるためであると解される(最高裁平成17年(行ヒ)第47号同20年2月28日第一小法廷判決・裁判集民事227号313頁参照)。そして,ここに居住地というのは,客観的な人の居住事実の継続性及び期待性が備わっている場所を意味し,人が現にその場所に居住していないとしても,それが一時的な便宜のためで,一定期限の到来とともにその場所に復帰して居住を継続することを期待することができる場合には,なおその場所を居住地として認定すべきであるところ,居住地主義等の上記趣旨に加えて,同法2条の規定をも考慮すると,同法による保護の対象となる者は19条の居住地に当たると認められる居住の場所を国内に有している者に限られ,被保護者が,当初の居住地を離れ国外に滞在し続けるなどした結果,国内に居住地も現在地も有しないこととなった場合に は,保護を受ける本来的な資格を失うというべきである(前掲最高裁平成20年2月28日第一小法廷判決参照)。 (イ)Aが国内に居住地を有しないこととなったことAは,平成17年4月14日に本邦を出国してから平成18年2月23日に本邦に入国するまで,10か月以上にわたり国内で生活していなかったのであり,その中国への帰国が一時的な便宜のためのものであると認めることはできず,特段の事情のない限り,Aは,上記帰国期間中,国内に居住地を有しないこととなる。 原告は,Aの中国への帰国の事情について種々主張するが,それらの事実を認めるに足りる証拠はない上,仮にそれらの事実が認められるとしても,それによれば,Aは,本邦に再入国する時期を定めることなく,相当長期にわたり滞在する予定で中国 ついて種々主張するが,それらの事実を認めるに足りる証拠はない上,仮にそれらの事実が認められるとしても,それによれば,Aは,本邦に再入国する時期を定めることなく,相当長期にわたり滞在する予定で中国に帰国し,数次再入国許可の有効期間が平成17年7月22日までであることを知りながら,同期間を超えて中国に滞在したため,それまで有していた「永住者」の在留資格を失ったというのであるし,また,Aは,長期にわたり原告の養母の家に滞在し,継続的,安定的な生活を構築していたということができるのであって,これらの事実は,Aが上記帰国期間中も国内に居住地を有していたとする特段の事情たり得るものではなく,かえって,Aが上記期間中,国内に居住地を有しないこととなったことを基礎付ける事情となる。 (ウ)このように,Aは,中国への帰国期間中,国内に居住地を有しないこととなり,保護を受ける本来的な資格を失っていたものであるから,本件費用返還金額決定処分は,生活保護法19条の規定に違反する違法な処分ではない。 イ争点2について(本件費用返還金額決定処分が生活保護法63条の規定に違反しないこと)(ア)生活保護法63条の趣旨及び適用範囲 生活保護法は,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるとして(4条1項),保護の補足性の原則を定めるとともに,保護の程度についても,保護は,要保護者の需要のうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行われるとし(8条1項),被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,その他生活の維持,向上に努めなければならないとして(60条),生活保護が,自己責任の 不足分を補う程度において行われるとし(8条1項),被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,その他生活の維持,向上に努めなければならないとして(60条),生活保護が,自己責任の原則を前提とした上で,憲法25条の理念に基づいて,生活に困窮する全ての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する補足的な制度であることを明らかにしている。そして,その一方で,生活保護法4条3項は,保護の補足性の原則を形式的に貫くことによる不都合を避けるため,同条1項及び2項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではないとする。すなわち,保護の補足性の原則によれば,資産,能力等を有する者は保護を受ける本来的な資格を有しないが,実際には,その資産,能力等を直ちに活用することができないなどの事情により,そのような者であっても生活困窮者となることがあることから,同条3項は,急迫した事由があるときには例外的に保護を行うものとしているのである。もっとも,同項に基づく一時保護は,保護の補足性の原則からみれば例外的な措置にすぎず,保護を受ける本来的な資格を有しない者に,急迫した事由がある限りで,そのときの状況において必要と認められる保護を行うにとどまるのであるから,その状況が解消された後は,保護の補足性の原則に立ち返り,保護の費用を返還させなければならないことは当然である。同法63条は,そのような見地に立ち,保護の補足性の原則からすると例外的に保護を受けた者はその受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならないものとし,もって,保護の補足性の原則からすると本来的には予定されていない保護が実施された場合にお た保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならないものとし,もって,保護の補足性の原則からすると本来的には予定されていない保護が実施された場合における清算を行い,生活保護制度の本来の趣旨を全うするための事後的調整規定として設けられたものである。 このことに照らすと,生活保護63条は,同法4条3項に基づく一時保護が行われた場合に限らず,被保護者が本来受けるべき保護の範囲を超えて保護を受けたことが事後的に判明した場合も含めて,広く保護費の過支給により事後的な清算,調整を図る必要が生じている場面一般に適用されると解すべきである。 (イ)生活保護法63条の適用要件a 「急迫の場合等」の意義上記(ア)によれば,生活保護法63条の「急迫の場合等」には,同法4条3項にいう「急迫した事由がある場合」が含まれることはもとより,被保護者の作為又は不作為により保護の実施機関が当該被保護者には資力がないと誤認して保護を行った場合など過支給の場合一般が含まれると解すべきである。 b 「資力があるにもかかわらず」の意義上記(ア)によれば,生活保護法63条の「資力がある」というためには,最低限度の生活を維持するのに必要な限度で資産,能力等を有することをもって足り,同条の「資力があるにもかかわらず」保護を受けたとは,最低限度の生活を維持するのに必要な資産,能力等を有するにもかかわらず保護を受けたことをいうと解すべきである。そうすると,最低限度の生活の需要を満たすのに十分な額を超えて保護費の支給を受けた過支給の場合も,過支給分については「資力があるにもかかわらず」保護を受けたこととなる。なお,同法が世帯単位の原則(10条)を採 生活の需要を満たすのに十分な額を超えて保護費の支給を受けた過支給の場合も,過支給分については「資力があるにもかかわらず」保護を受けたこととなる。なお,同法が世帯単位の原則(10条)を採用していることからすれば,保護の補足性の要件も世帯単位で捉えるべきであるから,同法63条の「資力がある」か否かも世帯単位で判断すべきである。 (ウ)原告が「急迫の場合等」において「資力があるにもかかわらず」保護を受けたことAが,中国への帰国期間中,国内に居住地を有しないこととなり,保護を受ける本来的な資格を失っていたものであることは,前記ア(ウ)のとおりであり,原告は,上記期間中,Aに係る保護費の支給を受けることができなかったものであるところ,それにもかかわらず,原告は,上記期間中,Aに係る保護費の支給を受けていたのであって,次のとおり,「急迫の場合等」において「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであるということができる。 a 原告が「急迫の場合等」において保護を受けたこと生活保護法は,被保護者に対し,世帯の構成に異動があったとき等にはすみやかに保護の実施機関等にその旨を届け出る義務を課している(61条)ところ,Aの中国への帰国の事実については,A自身はもとより,世帯主としてAに係る保護費の支給を受けていた原告においても,北区福祉事務所長に対する届出をしなかったのであり,北区福祉事務所長が上記帰国の事実を認識したのは,平成18年3月14日のことであった。北区福祉事務所長は,上記帰国期間中,Aが国内に居住地を有しないこととなり,保護を受ける本来的な資格を失っているものであり,原告はAに係る保護費の支給を受けることができないものであることを知らないまま,原告に対し,Aに係る保護費の支 が国内に居住地を有しないこととなり,保護を受ける本来的な資格を失っているものであり,原告はAに係る保護費の支給を受けることができないものであることを知らないまま,原告に対し,Aに係る保護費の支給をしたのであって,この過支給がされたのは,A及び原告が届出義務に違反して北区福祉事務所長に上記帰国の事実を届け出なかったためであるから,原告は,上記期間中,Aに係る保護費について「急迫の場合等」において保護を受けたというべきである。 b 原告が「資力があるにもかかわらず」保護を受けたこと原告は,Aの中国への帰国期間中,原告世帯にAが含まれることを前提とする額の保護費の支給を受けていたところ,Aは,上記期間中,国内に居住地を有しないこととなり,保護を受ける本来的な資格を失っていたものであり,原告世帯の最低限度の生活の需要を満たすのに十分な額は,上記期間中,Aに係る保護費の分だけ減少していたものである。そうすると,原告が上記期間中に支給を受けたAに係る保護費は,最低限度の生活の需要を満たすのに十分な額を超える資産として取得したものであるということができるのであり,原告は,上記期間中,Aに係る保護費について「資力があるにもかかわらず」保護を受けたというべきである。 (エ)このように,原告は,Aの中国への帰国期間中,Aに係る保護費について「急迫の場合等」において「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであるから,本件費用返還金額決定処分は,生活保護法63条の規定に違反する違法な処分ではない。 (オ)保護の変更,停止又は廃止による処理の余地はないことa 保護の停止又は廃止による処理の余地はないこと生活保護法26条の保護の停止及び廃止は,保護を全一的なものと把握して 保護の変更,停止又は廃止による処理の余地はないことa 保護の停止又は廃止による処理の余地はないこと生活保護法26条の保護の停止及び廃止は,保護を全一的なものと把握してするものであり,併給の際における個々の扶助の停止的及び廃止的処分は,同法25条2項の保護の変更にほかならない。また,保護は,本質的には個々の世帯員に対して行われるものであるが,世帯単位の原則により世帯主を名宛人として行われるため,特定の世帯員のみに保護を継続すべきでない事由が生じたときは,当該世帯員をその世帯から分離し,保護の停止又は廃止をし,他の世帯員に対しては保護の変更をすることとなる。本件の場合,Aは,中国への帰国により保護を受ける本来的な資格を失ったが,他の世帯員はこれを失っていないから,Aを原告世帯から分離し,保護の停止又は廃止をし,原告に対しては保護の変更をすべきこととなる。 b 保護の変更による処理の余地はないことしかし,前記(ウ)aのとおり,北区福祉事務所長がAの中国への帰国の事実を認識したのは,Aが平成17年4月14日に本邦を出国してから既に11か月が経過した平成18年3月14日のことであった。 保護費の減額事由が後日判明した場合,すみやかに保護の変更をしたとしても,過支給が残ることは避けられず,それを返還させる手段としては保護の遡及的な変更(一部職権取消し)があるが,保護の職権取消しは,被保護者に不利益を及ぼし,変更前の保護を前提に被保護者との法律関係に入った第三者にも影響を与え,それらの行政に対する信頼を裏切ることとなるのであり,平成17年4月15日に遡及して保護の変更をすることは相当ではなかった。 c 費用返還金額決定処分による処理が相当であることそし に対する信頼を裏切ることとなるのであり,平成17年4月15日に遡及して保護の変更をすることは相当ではなかった。 c 費用返還金額決定処分による処理が相当であることそして,生活保護法63条は,保護の決定の効力は維持しながら保護の実施機関が裁量的に定める金額のみを返還させるという仕組みを採用しているため,保護の遡及的な変更によるときに生ずる不都合は生じないのであり,北区福祉事務所長が費用返還金額決定処分による処理を選択したことは適切であった。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について(本件費用返還金額決定処分が生活保護法19条の規定に違反しないこと)(1)国内に居住地も現在地も有しない者は生活保護法による保護の実施を受けることができないこと生活保護法は,19条1項において,都道府県知事等は,「その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者」(1号)及び「居住地がないか,又は明らかでない要保護者であって,その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの」(2号)に対して,保護を決定し,かつ,実施しなければならないと規定しており,このことによれば,同法は,国内に居住地を有する者や現在地を有する者は同法による保護の実施を受けることができるとするものであることがうかがわれるが,国内に現在地を有しない者が同法による保護の実施を受けることができるか否かを明示し又はこれを直ちにうかがわせる規定は存在しない。 そこで検討するに,生活保護法19条は,1項において,上記のとおり規定した上,2項において,居住地が明らかである要保護者であっても,その者が急迫した状況にあるときは,その急迫した事由がやむまでは,その者の現在地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事等 とおり規定した上,2項において,居住地が明らかである要保護者であっても,その者が急迫した状況にあるときは,その急迫した事由がやむまでは,その者の現在地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事等が保護を行うものとしている。保護の方法に関しても,同法30条が,生活扶助は原則として被保護者の居宅において行うものと規定している。同法がこのような居住地主義及び居宅保護の原則を採用した趣旨は,要保護者がその居住地を有する限り,そこにおける継続的,安定的な生活に着目して生活状態,資産状況等の事項を把握し,それを基に必要な扶助を与えるとともに自立の助長のための措置を講ずることとしたものであると考えることができる。 以上のことに生活保護法2条の規定をも考慮すると,国外に現在し国内に現在地を有しない者であっても,同法19条所定の「居住地」に当たると認められる居住の場所を国内に有しているものは,同条の規定に基づいて当該居住地を所管する保護の実施機関から同法による保護の実施を受けることができると解すべきである(このように解しても,その居住地における被保護者の生活状態,資産状況等の事項を調査して把握し,その結果に基づいて所要の保護の変更,停止又は廃止を決定し,また,自立の助長のための措置を講ずることは可能であるから,保護の決定及び実施に関する制度の趣旨が損なわれるということはできない。)が,国内に現在地を有しない者が,当初の居住地を離れて国外に滞在し続けるなどした結果,国内に居住地も現在地も有しないこととなった場合には,もはや同法による保護の実施を受けることはできず,保護の実施機関において保護の停止又は廃止の決定をすべきであることとなると解すべきである(最高裁平成17年(行ヒ)第47号同20年2月28日第一小法廷判決・裁判集民事227 施を受けることはできず,保護の実施機関において保護の停止又は廃止の決定をすべきであることとなると解すべきである(最高裁平成17年(行ヒ)第47号同20年2月28日第一小法廷判決・裁判集民事227号313頁参照)。 (2)Aは,中国への帰国期間中,国内に居住地も現在地も有しないこととなったものであることアこれを本件についてみると,前提事実に加えて,証拠(甲17,乙ハ8,乙ハ17ないし19)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (ア)Aの中国への帰国直前の居住地Aは,平成17年4月14日に本邦を出国し,中国に帰国する直前,原告及び四女と共に,肩書住所地に所在する都営住宅(以下「北区α所在の居宅」という。)に居住していた。 (イ)Aの中国への帰国の目的Aは,東京都から○による○(身体障害程度等級3級)の認定を受けている(乙ハ8)ところ,日本語を使用することができず,我が国の病院では意思疎通をすることができないことから,母国である中国の病院で治療を受ける必要があったため,○の治療を目的として,また,それに併せて,当時体調を崩していた原告の養母の介護をも目的として,平成17年4月14日に本邦を出国し,中国に帰国した。 (ウ)Aの中国への帰国の予定期間Aは,法務大臣から平成17年7月22日までを有効期間とする数次再入国許可を受けていた(甲17)が,中国への帰国に際して,自らの○の治療及び原告の養母の介護にどれだけの期間が必要となるかが明らかでなかったことから,本邦に再入国する時期を確定することができなかった。 (エ)Aの中国への帰国期間中の行動及び従前の在留資格の消滅Aは,中国への帰国期間中,中国遼寧省所在の原告 なかったことから,本邦に再入国する時期を確定することができなかった。 (エ)Aの中国への帰国期間中の行動及び従前の在留資格の消滅Aは,中国への帰国期間中,中国遼寧省所在の原告の養母の家に滞在し,○の治療を受けるとともに,原告の養母の介護をしていたが,その間に,数次再入国許可の有効期間が経過し,Aがそれまで有していた「永住者」の在留資格は消滅した(乙ハ17)。そのため,Aは,在留資格認定証明書の交付を受け(乙ハ18),平成18年2月23日に「日本人の配偶者」の在留資格をもって本邦に上陸するまで,本邦に入国することができず(乙ハ19),上記期間は10か月余りにわたることとなった。 (オ)Aの中国への帰国期間中の北区α所在の居宅の状況Aは,北区α所在の居宅に帰来したところ,同所には,Aの中国への帰国期間中(原告が中国に渡航していた期間を除く。),原告が四女と共に(平成17年4月15日から同年6月1日まで)又は一人で(同日以降)居住していた。 イ上記アで認定した事実によれば,Aの中国への帰国は,当初は一時的な便宜のためのもので,一定の期限の到来とともに北区α所在の居宅に復帰して上記帰国前の居住を継続することが予定されていたが,その後事情が変わり長期化したというようなものではなく,当初から相当長期にわたるものであることが予定されており,しかも,本邦に再入国し北区α所在の居宅に復帰する時期さえも明らかとなってはいなかったものであるということができるのであり(結果的にも,数次再入国許可の有効期間が経過し,Aがそれまで有していた「永住者」の在留資格は消滅している。),また,Aは,上記帰国期間中は,原告の養母の家に継続的に滞在し,○の治療を受けるとともに,原告の養母の介護をしていたのであって,原 し,Aがそれまで有していた「永住者」の在留資格は消滅している。),また,Aは,上記帰国期間中は,原告の養母の家に継続的に滞在し,○の治療を受けるとともに,原告の養母の介護をしていたのであって,原告の養母の家を生活の本拠としていたとみることができるから,Aは,上記帰国期間中,国内に現在地を有していなかっただけではなく,居住地も有しないこととなったと認めるのが相当である。そうすると,Aは,上記期間中,国内に居住地も現在地も有しないこととなったものであり,生活保護法による保護の実施を受けることができなかったということができるのであって,原告が上記期間中に支給を受けたAに係る保護費は本来支給されるべきではなかったものであるということとなる。 (3)以上によれば,原告に対しAの中国への帰国期間中に支給を受けたAに係る保護費を返還することを命ずる本件費用返還金額決定処分が生活保護法19条の規定に違反する違法な処分であるということはできないものというべきである。 2 争点2について(本件費用返還金額決定処分が生活保護法63条の規定に違反しないこと)(1)保護金品の返還等に関する生活保護法の定め等ア生活保護法に基づく保護生活保護法は,保護の補足性の原則を定め,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるとし(4条1項),保護の程度についても,保護は,要保護者の需要のうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする(8条1項)が,他方で,保護の補足性の原則は,急迫した事由がある場合に,必要な保護(いわゆる一時保護)を行うことを妨げるものではないとする(4条3項)。また,同 分を補う程度において行うものとする(8条1項)が,他方で,保護の補足性の原則は,急迫した事由がある場合に,必要な保護(いわゆる一時保護)を行うことを妨げるものではないとする(4条3項)。また,同法は,保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとするとして(7条1項本文),申請保護の原則を定めつつ,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができるとする(同項ただし書)。 そして,保護の要否及び程度の決定については,昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」が,保護の要否及び程度は,原則として,当該世帯につき認定した最低生活費と,同通知によって認定した収入(以下「収入充当額」という。)との対比によって決定することとしている。 イ保護の変更,停止及び廃止生活保護法は,被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならないとして(61条),被保護者に届出義務を課し,また,保護の実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査しなければならないとして(25条2項),保護の実施機関に調査義務を課した上,保護の実施機関は,保護の変更を必要とすると認めるときは,すみやかに,職権をもってその決定を行わなければならず(同項),被保護者が保護を必要としなくなったときは,すみやかに,保護の停止又は廃止を決定しなければならないとして(26条),保護の実施機関は,上記届出及び調査の結果等により,職権をもって保護の変更,停止又は廃止をするものとしている。この保護 きは,すみやかに,保護の停止又は廃止を決定しなければならないとして(26条),保護の実施機関は,上記届出及び調査の結果等により,職権をもって保護の変更,停止又は廃止をするものとしている。この保護の変更(ただし,保護費の額を減額するもの。以下同じ。),停止及び廃止は,保護の決定が適法にされた後,保護の変更を必要とする事由又は被保護者に対する保護を必要としなくなる事由が発生し,保護の決定の一部又は全部が後発的に違法となった場合に,保護の決定の効力を当該事由が発生した時点から将来に向かって変動させ,その一部又は全部を消滅させる行為(保護の決定の一部又は全部撤回)であり,保護の変更,停止又は廃止がされると,被保護者に給与された保護金品のうち消滅した保護の決定の効力に係るものを公法上の不当利得としてその費用を支弁した都道府県又は市町村に返還させることとなる。さらに,同法は,保護の実施機関は,保護の変更,廃止又は停止に伴い,前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において,これを消費し,又は喪失した被保護者に,やむを得ない事由があると認めるときは,これを返還させないことができるとして(80条),返還の免除についても定めている。 なお,保護の決定の一部又は全部が原始的に違法な場合には,行政行為の職権による一部又は全部取消しとしての保護の変更又は取消しがされ,保護の決定の効力の一部又は全部が当該保護の決定の時に遡及して消滅することなる。また,昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」は,最低生活費又は収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は,生活保護法80条を適用すべきとき等を除き,当該事由に基づいて扶助費支給額の変更決定を行なえば生ずること いて」は,最低生活費又は収入充当額の認定を変更すべき事由が事後において明らかとなった場合は,生活保護法80条を適用すべきとき等を除き,当該事由に基づいて扶助費支給額の変更決定を行なえば生ずることとなる返納額(確認月及びその前月までの分に限る。)を,次回支給月以後の収入充当額として計上して差し支えないこと(この場合,最低生活費の認定変更に基づく扶助費支給額の遡及変更決定処分を行なうことなく,上記取扱いの趣意を明示した通知を発して,次回支給月以後の扶助費支給額決定処分を行なえば足りるものであること)として,確認月及びその前月のみに遡及して保護金品を返還させる場合に,当該保護金品に相当する金額を次回支給月以後の収入充当額として計上し,保護の決定の効力を次回支給月から将来に向かってのみ変動させ,その一部を消滅させる非遡及的な保護の変更をする処理を許容している。 ウ費用返還金額決定処分生活保護法は,被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならないとしている(63条)。この費用返還金額決定処分は,被保護者が,同法4条3項に基づく一時保護を受けるなど,保護の補足性の原則に反して資力があるにもかかわらず保護を受けた場合に,保護の決定の効力そのものは維持したままで,被保護者に対し,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関が裁量的に定める額を返還する義務を課する行為であり,費用返還金額決定処分がされても,保護の決定の効力には何らの変動も生じないが,被保護者は,上記の範囲内において保護の実施機関の定める額を 実施機関が裁量的に定める額を返還する義務を課する行為であり,費用返還金額決定処分がされても,保護の決定の効力には何らの変動も生じないが,被保護者は,上記の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還する義務を負う。 (2)生活保護法63条の規定は国内に居住地も現在地も有しない世帯員に係る保護金品の給与を受けた世帯主に当該保護金品を返還させる場合にも適用されることア上記(1)を前提として,生活保護法61条の届出義務に違反し国内に居住地も現在地も有しない世帯員に係る保護金品の給与を受けた世帯主に当該保護金品を返還させる場合に,同法63条の費用返還金額決定処分によることができるか,及び,同法25条2項,26条の保護の変更,停止又は廃止によることができるかについて検討すると,次のイ及びウのとおり,上記場合には,費用返還金額決定処分によることができるし,また,当該世帯員を当該世帯主の世帯から分離した上,当該世帯員に対しては保護の停止又は廃止により,当該世帯主に対しては保護の変更により,保護の決定の効力を当該世帯員が国内に居住地も現在地も有しなくなった時点から将来に向かって消滅させ,公法上の不当利得として返還させる方法によることもできると解するのが相当である。 イ費用返還金額決定処分の規定の適用まず,生活保護法63条の規定が上記場合に適用されることについてみると,同条の費用返還金額決定処分は,被保護者が保護の補足性の原則に反して資力があるにもかかわらず保護を受けた場合に,保護の決定の効力そのものは維持したままで,被保護者に対し,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関が裁量的に定める額を返還する義務を課する行為であることは,上記(1)ウのとおりであり,同条の規定は,被保護者 ままで,被保護者に対し,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関が裁量的に定める額を返還する義務を課する行為であることは,上記(1)ウのとおりであり,同条の規定は,被保護者が「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであるとき,すなわち,被保護者が保護の補足性の原則に反して保護を受けたものであるときに,適用されるものであるところ,例えば,国内に居住地も現在地も有しない1人世帯の世帯主が保護金品の給与を受けたのであれば,当該世帯主は,本来受けるべきではない保護金品の給与を居住地主義に反して受けたものであり,保護の補足性の原則に反して受けたものではないのであるから,被保護者が「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであることという同条の適用要件を満たすものではないということとなる。しかし,上記アに示した場合には,当該世帯の最低生活費の額は,国内に居住地も現在地も有さず同法による保護の実施を受けることができない世帯員の分だけ減少することとなる一方,当該世帯員に係る保護金品の給与を受けた世帯主は,当該保護金品を当該世帯において利用し得る資産として取得したものであるということができるのであって,当該保護金品をその最低限度の生活の維持のために活用することが保護が行われる要件となるのであるから,当該世帯主は当該保護金品について「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであるということとなる。そうすると,国内に居住地も現在地も有しない世帯員に係る保護金品の給与を受けた世帯主は,当該保護金品について本来受けるべきではない保護金品の給与を保護の補足性の原則に反して受けたものであるということができるのであって,上記1人世帯の世帯主とは異なり,被保護者が「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであることという同条の適用 品の給与を保護の補足性の原則に反して受けたものであるということができるのであって,上記1人世帯の世帯主とは異なり,被保護者が「資力があるにもかかわらず」保護を受けたものであることという同条の適用要件を満たすものであるということとなる。したがって,上記場合には,同条の規定が適用され,同条の費用返還金額決定処分により国内に居住地も現在地も有しない世帯員に係る保護金品の給与を受けた世帯主に当該保護金品を返還させることができるものというべきである。 ウ保護の変更,停止又は廃止の規定の適用一方,国内に居住地も現在地も有しない世帯員は,特段の事情がない限り,世帯主と生計を一にしているものではないということができるから,当該世帯員を当該世帯主の世帯から分離するのが相当であり,また,生活保護法25条2項,26条の保護の変更,停止及び廃止は,保護の決定が適法にされた後,保護の変更を必要とする事由又は被保護者に対する保護を必要としなくなる事由が発生し,保護の決定の一部又は全部が後発的に違法となった場合に,保護の決定の効力を当該事由が発生した時点から将来に向かって変動させ,その一部又は全部を消滅させる行為であることは,上記(1)イのとおりであるところ,世帯員が国内に居住地も現在地も有しなくなったという事実は,当該世帯員に対する保護を必要としなくなる事由であるということができるし,また,当該世帯の世帯員が国内に居住地も現在地も有しなくなったという事実は,当該世帯主に対する保護の変更を必要とする事由であるということができるのであって,上記場合には,当該世帯員に対しては同法26条の保護の停止又は廃止により,当該世帯主に対しては同法25条2項の保護の変更により,保護の決定の効力を当該世帯員が国内に居住地も現在地も有しなくなった ,上記場合には,当該世帯員に対しては同法26条の保護の停止又は廃止により,当該世帯主に対しては同法25条2項の保護の変更により,保護の決定の効力を当該世帯員が国内に居住地も現在地も有しなくなった時点から将来に向かって必要な範囲で消滅させ,当該世帯員に係る保護金品に相当する金額を公法上の不当利得として返還させることもできるものというべきである。 もっとも,生活保護法56条は,被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがないとするのであって,保護の実施機関は,正当な理由がない限り,世帯員及び世帯主に対し,保護の変更,停止又は廃止をすることができないが,上記のとおり,当該世帯の世帯員が国内に居住地も現在地も有しなくなったという事実は,当該世帯員に対する保護の停止又は廃止とともに,当該世帯の世帯主に対する保護の変更を必要とする事由となるというべきであり,被保護者が同法61条の届出義務に違反し,国内に居住地も現在地も有しない世帯員に係る保護金品の給与を受けたことは,当該事由が発生した時点に遡及し,その時点から将来に向かって,既に決定された保護を不利益に変更する正当な理由となるものというべきである。 (3)原告は,Aの中国への帰国期間中,急迫の場合等において資力があるにもかかわらずAに係る保護費の支給を受けたものであることア上記(2)で検討したところを本件についてみると,原告世帯の世帯員であるAは,中国への帰国期間中,国内に居住地も現在地も有しないこととなったものであり,生活保護法による保護の実施を受けることができなかったということができ,原告世帯を離れていたことにもなるのであって,原告が上記期間中に支給を受けたAに係る保護費は本来支給されるべきではなかったものであること による保護の実施を受けることができなかったということができ,原告世帯を離れていたことにもなるのであって,原告が上記期間中に支給を受けたAに係る保護費は本来支給されるべきではなかったものであることは,前記1(2)イのとおりであるところ,乙ハ第13号証(原告に係る生活保護のケース記録)及び弁論の全趣旨によれば,A及び原告は,上記帰国に当たり,同法61条の規定により,その居住地又は世帯の構成に異動があった旨を北区福祉事務所長に届け出る義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったものであって,そのため,北区福祉事務所長は,平成18年3月14日に至るまで,Aが国内に居住地も現在地も有しないこととなったため,同法による保護の実施を受けることができず,原告世帯の保護費のうちAに係る保護費は本来支給されるべきではないものであるということを認識しておらず,上記期間中,原告に対し,Aに係る保護費の支給をしたものであると認めることができる。 イ上記アで認定した事実によれば,原告は,生活保護法61条の届出義務に違反し,Aの中国への帰国期間中,国内に居住地も現在地も有しない世帯員であるAに係る保護費の支給を受けたものであるということができるのであり,上記(2)イで説示したとおり,原告は,Aに係る保護金品について本来受けるべきではない保護金品の給与を保護の補足性の原則に反して受けたものであると解するのが相当である。そうすると,原告は,上記期間中,急迫の場合等において資力があるにもかかわらずAに係る保護費の支給を受けたものであるということができるのであって,原告に上記期間中に支給を受けたAに係る保護費を返還させる場合には,同法63条の費用返還金額決定処分によることができることになる。 (4)以上によれば,北区福祉事務所長が生活保護法63条 あって,原告に上記期間中に支給を受けたAに係る保護費を返還させる場合には,同法63条の費用返還金額決定処分によることができることになる。 (4)以上によれば,北区福祉事務所長が生活保護法63条の規定を適用して原告に対しAの中国への帰国期間に支給を受けたAに係る保護費を返還することを命ずることとしたことが違法であるということはできない。 なお,このような場合,Aを原告世帯から分離した上,Aに対しては生活保護法26条の保護の停止又は廃止により,原告に対しては同法25条2項の保護の変更により,保護の決定の効力をAが国内に居住地も現在地も有しなくなった時点である平成17年4月15日から将来に向かって消滅させ,公法上の不当利得として返還させる方法によることもできるものではある(仮に同日に遡及して保護の変更をすることにより,原告又はAに不利益を及ぼし,その行政に対する信頼が害されるとしても,上記(3)アで認定した事実によれば,そのような信頼は,北区福祉事務所長が有する保護の決定の権限を制限してまでも保護するに値するものではないというべきである。また,同項の保護の変更により,保護の決定の効力の一部を変更事由が発生した時点から将来に向かって消滅させ,被保護者に給与された保護金品のうち消滅した保護の決定の効力に係るものを公法上の不当利得として返還させる場合であっても,保護の実施機関は,同法80条の返還の免除の規定に基づいて,被保護者に対し,保護金品の返還を一部免除することにより,返還させるべき保護金品に相当する金額の範囲内において裁量的に定める額のみを返還させることができる。)が,上記(3)イのとおり,同法63条の適用要件を満たす以上は,北区福祉事務所長が同条の費用返還金額決定処分によることを選択したことが違法であるということ のみを返還させることができる。)が,上記(3)イのとおり,同法63条の適用要件を満たす以上は,北区福祉事務所長が同条の費用返還金額決定処分によることを選択したことが違法であるということはできない。 3 本件費用返還金額決定処分の適法性原告は,上記1及び2で検討した点のほかには,本件費用返還金額決定処分の違法を主張しておらず,その余の違法もうかがえないから,本件費用返還金額決定処分は適法な処分であるということができる。 第4 結論よって,本訴請求は失当であるからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神裕 裁判官内野俊夫 裁判官日暮直子(別紙1)関係法令(生活保護法)の定め 1条(この法律の目的)この法律は,日本国憲法25条に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする。 2条(無差別平等)すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護(以下「保護」という。)を,無差別平等に受けることができる。 3条(最低生活)この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。 4条(保護の補足性)(1)保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆる 障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。 4条(保護の補足性)(1)保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。 (1項)(2)前2項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。(3項) 7条(申請保護の原則)保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。 8条(基準及び程度の原則)(1)保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。(1項)(2)前項の基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえないものでなければならない。(2項) 10条(世帯単位の原則)保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し,これによりがたいときは,個人を単位として定めることができる。 19条(実施機関)(1)都道府県知事,市長及び社会福祉法に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は,次に掲げる者に対して,この法律の定めるところにより,保護を決定し,かつ,実施しなければならない。 (1項)アその管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者(1号)イ居住地がないか,又 この法律の定めるところにより,保護を決定し,かつ,実施しなければならない。 (1項)アその管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者(1号)イ居住地がないか,又は明らかでない要保護者であって,その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの(2号)(2)居住地が明らかである要保護者であっても,その者が急迫した状況にあるときは,その急迫した事由が止むまでは,その者に対する保護は,前項の規定にかかわらず,その者の現在地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事又は市町村長が行うものとする。(2項)(3)前3項の規定により保護を行うべき者(以下「保護の実施機関」という。)は,保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を,その管理に属する行政庁に限り,委任することができる。(4項) 24条(申請による保護の開始及び変更)保護の実施機関は,保護の開始の申請があったときは,保護の要否,種類,程度及び方法を決定し,申請者に対して書面をもって,これを通知しなければならない。(1項) 25条(職権による保護の開始及び変更)(1)保護の実施機関は,要保護者が急迫した状況にあるときは,すみやかに,職権をもって保護の種類,程度及び方法を決定し,保護を開始しなければならない。(1項)(2)保護の実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とすると認めるときは,すみやかに,職権をもってその決定を行い,書面をもって,これを被保護者に通知しなければならない。(2項前段) 26条(保護の停止及び廃止)保護の実施機関は,被保護者が保護を必要としなくなったときは,すみやかに,保護の停止又は廃止を決定し,書面をもって,これを被保護者に通知しなければならない。 26条(保護の停止及び廃止)保護の実施機関は,被保護者が保護を必要としなくなったときは,すみやかに,保護の停止又は廃止を決定し,書面をもって,これを被保護者に通知しなければならない。(前段) 30条(生活扶助の方法)生活扶助は,被保護者の居宅において行うものとする。(1項本文)31条(1)生活扶助は,金銭給付によって行うものとする。(1項本文)(2)居宅において生活扶助を行う場合の保護金品は,世帯単位に計算し,世帯主又はこれに準ずる者に対して交付するものとする。(3項本文) 56条(不利益変更の禁止)被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。 60条(生活上の義務)被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,その他生活の維持,向上に努めなければならない。 61条(届出の義務)被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。 63条(費用返還義務)被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。 80条(返還の免除)保護の実施機関は,保護の変更,廃止又は停止に伴い,前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において,これを消費し,又は喪失した被保護者に,やむを得ない事由があると認めるときは,これを返還させないことができる。 ( 止に伴い,前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において,これを消費し,又は喪失した被保護者に,やむを得ない事由があると認めるときは,これを返還させないことができる。 (別紙2)本件費用返還金額決定処分の内容 1 原告に支給された保護費の額(1)原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの保護費は257万6950円であり,その内訳は次の(2)から(5)までのとおりである。 (2)原告に支給された生活扶助費の額生活扶助費は,世帯員ごとにその年齢を基準として決定される第1類の基準額,世帯ごとにその人数を基準として決定される第2類の基準額及び各種加算を積算することにより算定されるものであるところ,原告に対する生活保護の開始決定がされた平成9年10月1日当時の原告世帯の世帯員は,原告(当時56歳),A(当時58歳),三女(当時26歳)及び四女(当時24歳)の4人であったが,平成11年9月20日に三女が,平成17年6月1日に四女がそれぞれ原告世帯から分離されたため,原告に支給された第1類及び第2類の基準額は,① 同年4月及び同年5月の第1類の基準額の月額11万2470円(20歳から40歳までの世帯員1人分と60歳から69歳までの世帯員2人分との合計額)と第2類の基準額の月額5万3290円(3人世帯分)との合計月額16万5760円の2か月分である33万1520円,② 同年6月から同年10月までの第1類の基準額の月額7万2200円(60歳から69歳までの世帯員2人分)と第2類の基準額の月額4万8070円(2人世帯分)との合計月額12万0270円の5か月分である60万1350円,③同年11月から平成18年2月までの第1類の基準額の月額7万2200円と第2類の基準額の月額5万2070円(2人世 円(2人世帯分)との合計月額12万0270円の5か月分である60万1350円,③同年11月から平成18年2月までの第1類の基準額の月額7万2200円と第2類の基準額の月額5万2070円(2人世帯分と冬季加算との合計額)との合計月額12万4270円の4か月分である49万7080円の総合計142万9950円であった。 また,原告に支給された各種加算の額は,① Aに係る介護保険料加算として,平成17年4月の2200円と同年5月から平成18年2月までの月額1600円の10か月分である1万6000円との総合計1万8200円,②Aに係る障害者加算として,同年1月及び同年2月の月額1万7890円の2か月分である3万5780円であった。 原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの生活扶助費の額は,以上の合計148万3930円である。 (3)原告に支給された住宅扶助費の額原告世帯に係る住宅扶助費は月額2万5300円であり,原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの住宅扶助費の額は合計27万8300円である。 (4)原告に支給された医療扶助費の額原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの医療扶助費の額は,Aに係る24万8250円と原告に係る52万5510円との合計77万3760円である。 (5)原告に支給された一時扶助費の額原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの一時扶助費(その他の生活扶助費)の額は,平成17年12月の期末一時扶助費2万8360円と平成18年1月の一時扶助費1万2600円との合計4万0960円である。 2 本件費用返還金額決定処分が返還を命じた金額(1)北区福祉事務所長は,Aの中国への帰国を理由として,次の(2)のとおりの 成18年1月の一時扶助費1万2600円との合計4万0960円である。 2 本件費用返還金額決定処分が返還を命じた金額(1)北区福祉事務所長は,Aの中国への帰国を理由として,次の(2)のとおりの計算により,原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの保護費257万6950円のうち64万4209円を返還金額として定めた。 (2)返還金額の計算ア生活扶助費(介護保険料加算は除く。)原告に支給された平成17年4月から平成18年2月までの生活扶助費(ただし,Aに係る介護保険料加算は除く。)の額は,上記1(2)の第1類及び第2類の基準額の総合計142万9950円に,Aに係る障害者加算の合計3万5780円を加えた146万5730円である。そして,Aが中国に滞在していた平成17年4月15日から平成18年2月22日までの間においては,原告世帯にはAが存在しなかったのであるから,原告に支給された上記期間の生活扶助費の額と原告に本来支給されるべきであった上記期間の生活扶助費の額との差額は,① 上記1(2)の第1類及び第2類の基準額の総合計142万9950円を308日分に日割計算(以下,2月を除く各月が30日であるものとし,2月のみは実際の日数により計算する。)した金額から,(ⅰ) 平成17年4月及び同年5月の第1類の基準額の月額7万6370円(20歳から40歳までの世帯員1人分と60歳から69歳までの世帯員1人分との合計額)と第2類の基準額の月額4万8070円(2人世帯分)との合計月額12万4440円の2か月分である24万8880円,(ⅱ) 同年6月から同年10月までの第1類の基準額の月額3万6100円(60歳から69歳までの世帯員1人分)と第2類の基準額の月額4万3430円(1人世帯分)との合計月額7万95 4万8880円,(ⅱ) 同年6月から同年10月までの第1類の基準額の月額3万6100円(60歳から69歳までの世帯員1人分)と第2類の基準額の月額4万3430円(1人世帯分)との合計月額7万9530円の5か月分である39万7650円(なお,Aのほかに原告も中国に滞在していた同年9月18日から同月30日までの13日間の生活扶助費のうち原告に係る部分の額は,平成23年9月13日付け決定による一部取消し前の本件費用返還金額決定処分においては,原告の中国への渡航を理由とする返還金額とされていたから,Aの中国への帰国を理由とする返還金額の計算では,原告に本来支給されるべきであった生活扶助費の額であることとする。),(ⅲ) 平成17年11月から平成18年2月までの第1類の基準額の月額3万6100円と第2類の基準額の月額4万6520円(1人世帯分と冬季加算との合計額)との合計月額8万2620円の4か月分である33万0480円の総合計97万7010円を308日分に日割計算した金額を控除した残額と,② 上記1(2)のAに係る障害者加算3万5780円から,同額を6日分に日割計算した金額を控除した残額との合計45万6679円である。 イ介護保険料加算,医療扶助費及び一時扶助費生活扶助費のうちの介護保険料加算は,日割計算の対象とならず,その対象となる世帯員が1日でも存在した月については支給されるところ,平成17年4月1日から同月14日まで及び平成18年2月23日から同月28日までにおいては,原告世帯にはAが存在したのであるから,原告に支給されたAに係る介護保険料加算と原告に本来支給されるべきであったAに係る介護保険料加算との差額は,前記1(2)の1万8200円から平成17年4月の2200円及び平成18年2月の1600円の合計3 給されたAに係る介護保険料加算と原告に本来支給されるべきであったAに係る介護保険料加算との差額は,前記1(2)の1万8200円から平成17年4月の2200円及び平成18年2月の1600円の合計3800円を控除した残額1万4400円である(住宅扶助費も,日割計算の対象とならず,その対象となる世帯に世帯員が1日でも存在した月については支給されるところ,平成17年4月から平成18年2月までの各月においては,原告世帯には原告ほかの世帯員が存在したのであるから,前記1(3)の原告に支給された住宅扶助費の額と原告に本来支給されるべきであった住宅扶助費の額との差額は零円である。)。 原告に支給された医療扶助費の額と原告に本来支給されるべきであった医療扶助費の額との差額は,前記1(4)の医療扶助費の額のうち16万2560円である。 原告に支給された一時扶助費の額と原告に本来支給されるべきであった一時扶助費の額との差額は,前記1(5)の一時扶助費の額のうち1万4180円である。 ウそうすると,原告に支給された平成17年4月15日から平成18年2月22日までの保護費の額と原告に本来支給されるべきであった上記期間の保護費の額との差額は64万7819円であり,北区福祉事務所長は,その範囲内において64万4209円をAの中国への帰国を理由とする返還金額として定めたものである。
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